2014年12月03日

◆自民党のテレビ偏向への要望は当然だ

杉浦 正章




明らかに中立を逸脱しているケースが多い



選挙の戦いとは別に選挙報道の中立性を巡って安倍政権とテレビ局との間ですさまじい裏バトル・暗闘が展開されている。


一部民放やNHKの番組の「偏(かたよ)り」についてはかねてから筆者も指摘してきたところであるが、自民党が堪忍袋の緒が切れたとばかりに四項目にわたる「お願い」の文書を民放キー局5社とNHKに送った。


朝日は社説でこれを取り上げ批判しているが、要望をよく読んでみれば、至極当たり前のことで、とても言論弾圧などと呼べるものではない。普段のテレビによる「政権弾圧」の方がよほど問題がある。この際、テレビの偏向報道についても選挙の争点にしてはどうか。
 

公平中立の要望書は自民党筆頭副幹事長・萩生田光一、報道局長・福井照の名前で出された。その内容は@出演者の発言回数や時間に公平を期していただきたいAゲスト出演者の選定についても中立公平を期していただきたい


Bテーマについても特定の出演者への意見が集中しないよう中立公正を期していただきたいC街角インタビューや資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることがないよう公平中立、公正を期していただきたいーというもの。


また要望書では、「過去にはあるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、大きな社会問題になった事例も現実にあった」とテレビ朝日の「椿事件」とみられる事例を挙げている。


直感的に安倍の指示かと思ったが、安倍は党首討論で聞かれ「いちいちそんな指示はしない。党としてそういう考え方でやったのだろう」と述べたが、過去のケースを見れば安倍の関与は一目瞭然。


安倍は幹事長時代の衆院選挙を控えた2003年11月にテレビ朝日が、「民主党の菅直人の政権構想を過度に好意的に報道した」として抗議。2004年7月の参院選の際の選挙報道に対してもテレビ朝日に文書で抗議している。2度やることは3度やるのであろう。


しかし安倍の主張は全く妥当である。公平に見て日本のテレビ局の場合、放送法で定められている報道の中立性などどこ吹く風の報道ばかりである。申し入れの4項目も、これによって報道の自由が規制され、日本が全体主義になる気配などみじんも感じられない。「公平に報道してくれ」と頼み込んでいるだけだ。


4番目の「街角インタビュー」について言えば、あらゆるテレビの報道のうちでこれほど客観性、公平性に欠ける報道はない。放送局の思うがままに発言を選択するからだ。一番ひどいと思ったのは特定秘密保護法案が衆院を通過した昨年11月26日午後7時のNHKのニュースだ。


街の声は全てが反対論で統一されていた。これが公共放送の報道かと思った。それでは自民党と犬猿の仲にあるテレビ朝日が要望をどう受け止めたかだが、まさにぬかに釘であった。


選挙公示の2日夜の報道ステーションでは「街の声」が大いに偏っていた。7人聞いたうち、1人はほぼ中立、2人は「投票しない」、後の4人は「年金カットが心配」「世の中きな臭い」「仮設住宅は限度超える」「就職が不安」で皆批判的。政権を肯定する声は1人もいなかった。


さすがにメインキャスターの古舘伊知郎は「私も言うことがいっぱいあるんですが、ここまで出てくるんですが、この時期だと叱られちゃうんですよ」とぼやくにとどまって、朝日新聞論説委員・恵村順一郎にふった。惠村は「ぴったりくる政党がない方が多いだろうが、例えば重要政策だと思う政策で2つの政党を選んで一つは小選挙区で入れ、もう一つは比例区に入れることがあっていい」との投票方法を勧めた。


まさかステーションが自民と公明の2党に入れよと言うわけがないから、野党への投票の勧めであろう。自民党の要望などいくらでも抜け道があって、海千山千のテレビ様にはかなわない証拠だ。


朝日の社説は先に挙げた自民党要望書の「偏向報道」の部分について「当時の郵政省も放送法違反はないと認めた。文書がこの件を指しているとすれば、偏向報道は誤りだ」と噛みついている。


しかしテレビ朝日報道局長の椿貞良は「なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」と他局に偏向報道を働きかけたのである。


郵政省は厳重注意する旨の行政指導を行うとともに、1998年のテレビ朝日への再免許の際に、政治的公平性に細心の注意を払うよう条件を付した。偏向報道には至らなくても「偏向報道の勧めと扇動」は明かであり、社説で弁護する価値はない。


椿が具体的に社内に指示し、その通りの報道をしていれば、確実に放送法違反として電波法第76条に基づく無線局運用停止がありえたであろう。つまりテレ朝は放送免許停止でなくなっていた。その後もテレ朝は“改心”どころではなかった。


2009年にはコメンテーター・吉永みち子が「鳩山首相が審議そっちのけで衆議院本会議中に扇子に揮毫(きごう)する一幕があった」というニュースに関連して、「こういう大変な時にね、一生懸命、我々も支持率を下げないでね、辛抱して支えてるのに、何なんだよと。そういうことになってしまうんで。ささいなことのようだけど、重なるとボディーブローのように利いてくる」と発言している。


「我々も鳩山政権を支えている」とは偏向もいいところで、明らかなる放送法違反だ。普段のテレ朝内部の空気が馬脚を現したものに他ならない。自民党は言われっぱなしで泣き寝入りする必要は無い。日本を支える政党としての矜持をもって、テレビ報道の偏向にチャレンジすべきである。


     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月02日

◆自公で、266の絶対多数議席維持か

杉浦 正章



安倍有利の「景気・雇用」に焦点
 


比例区投票先調査から見る限り、衆院選挙自民党独走の流れが生じている。全社出そろった同調査結果を自民圧勝の12年のケースと比べると、自民党への投票が倍増または倍増近くなっている。


選挙の焦点も「景気・雇用」重視の傾向が強く、首相・安倍晋三の「アベノミクスの流れを進めるか止めるかの選挙」という訴えがかなり利いている感じが濃厚だ。過去2回にわたって政権を交代させた「風」は吹きそうもなく、風なき選挙の争点がアベノミクス論争となった。


投票率も下がりそうだがこれは組織政党としての自民にプラスに作用する。野党の候補擁立調整が進んで、自公で326の現有議席は減らしそうだが、自公が狙う合わせて266議席の絶対多数は達成できる公算が出てきている。したがって政権交代はまずあり得ないというのが潮流だ。


注目すべきは国民の関心が経済に集中する傾向を見せ、野党や一部マスコミが狙う集団的自衛権の法制化、原発再稼働の争点化が空回りする流れとなっていることだ。


朝日の調査では有権者の重視するポイントは「景気・雇用対策」が47%で最も多く、「原発再稼働」は下位の15%、「集団的自衛権の行使容認」は12%だった。「景気・雇用対策」と答えた人の比例区投票先は自民が43%で、12%の民主などを引き離した。


最大のポイントは集団的自衛権行使容認を「評価しない」とした人や原発再稼働に「反対」の人でも、比例区投票先は「自民」が最も多かったことだ。


読売の調査でも安倍内閣の経済政策を「評価しない」と答えた人のうち、比例選で自民党に投票すると答えた人は18%で、民主党の23%と小差である。また、安倍首相の衆院解散を評価しない人の30%が投票先を自民党としており、民主党とした人の17%を引き離している。


この結果はアベノミクスの評価、とりわけ「景気・雇用」の動向が投票行動につながる流れを意味している。そしてそのアベノミクスの評価は朝日で「成功だ」が37%で、「失敗だ」の30%より多かった。この傾向は安倍の「雇用100万人増加、賃金も上昇している」という訴えが利いて、評価と言うより期待感が生じていることを物語っている。


つまり、この流れを推し進めて欲しいとの選択であろう。逆に民主党代表・海江田万里の「雇用が増えたと言っても非正規だ」は言いがかりじみて訴求力がない事を意味している。有権者は見るところを見ているのだ。


政権の交代については、毎日の調査で、安倍が衆院選の勝敗ラインとして言及した「自民、公明両党で過半数」について聞いたところ、自公の与党で過半数をとって政権を維持した方が「よいと思う」と答えた人が52%と半数を超えたことだ。


自公過半数を望む層の中で「自民党に投票する」は66%、公明党は10%で計76%に上る。選挙民は基本的には政権交代を望んでいない事を意味する。「野党に投票」は計51%どまり。内訳は民主党26%、共産党11%、維新の党10%など。


とりわけ注目すべきは読売の調査では、比例区で自民党に投票すると答えた人は41%で、政権を奪還した2012年衆院選の26%など過去3回の同時期の調査に比べて群を抜いて高い。09年8月の衆院選で圧勝した民主党の42%に匹敵する数値となった。


一方、民主党は14%で、政権から転落した12年と同じ水準だった。「郵政選挙」で大敗を喫した05年の20%にも達しておらず、党勢の回復傾向はうかがえない。


各社の比例区で自民党への投票も同様の傾向を見せている。朝日が12年の22%→34%、毎日17%→38%、産経22%→42%、日経23%→35%という数字だ。倍増したのが読売、毎日、産経だが各社も同様の傾向だ。12年の数字で圧勝したのだから、この数字から見る限り自民党が独走の傾向を強めていることが分かる。


まだ小選挙区別の調査結果が出ていないから、即断は出来ないが、通常比例区の投票志向が総選挙の大きな流れを示す傾向がある。加えて維新など第3極への風が、ぱたりと吹かなくなった。これは国民が浮ついてなく、それだけ投票を生活に結びつけて真剣に考えている事の左証であろう。


したがって安倍が勝敗の基準として設定した自公で238議席の過半数は、クリア出来ることは間違いあるまい。むしろ249の安定多数を越えて266の絶対安定多数議席を獲得する流れが生じているのかも知れない。


それでも公明党が31議席の現状維持程度と見れば、自民党は60議席程度を失うのだから、やらずもがなの選挙と言うことにはなる。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月01日

◆海江田が党首言論戦で“不振”

杉浦 正章




理路整然と数字を間違った
 


NHKの党首討論を録画して綿密に分析したが、野党は肝心の民主党代表・海江田万里がろくろく理論武装もせずに臨んだとみえてめろめろ。焦点の雇用を巡って首相・安倍晋三から完膚なきまでに討ち取られてしまった。


海江田発言は他党からも攻撃の対象になって、昼間視力が衰えるフクロウがほかの鳥からいじめに遭っているのとそっくりで、可哀想になった。


民主党も運が悪い。党首が冴えないために、絶好のチャンスを生かせないまま選挙に突入することになる。新聞報道はありきたりのことしか伝えないが、公平に分析すればするほど、海江田の「訴求力欠如」が露呈する。
 

討論の焦点はアベノミクスの是非に集中した。その中のキーポイントが景気の動向を占うメルクマールの雇用問題だ。安倍は「政権発足後100万人の雇用を作った。非正規社員が増えたが民主党時代は、雇用そのものが減った。有効求人倍率は1%を越えた」と指摘した。


これに対して海江田は「安倍さんは自分の都合のいい数字ばかり話して都合の悪い数字は言わない。1%と言うが正規の社員で比べると有効求人倍率は0.68%にとどまっている」と切り返した。


ところが待っていましたとばかりに安倍は「それでも過去最高だ。正社員の求人倍率0.68%は過去最高だ」と反論した。くしゅんとなるかに見えたが海江田は「増えたのは非正規であり、正規は9万人減少した。」と噛みついた。しかし安倍は「正規については7-9月は10万人増えた」とやりかえした。


すさまじい言論戦であったが、ここで海江田の完敗が確定。海江田は経済評論家だったにしては理路整然と数字を間違って、数字に弱いところを暴露してしまった。


一方国内総生産(GDP)について海江田は「あまり民主党のことを批判するのはやめた方がいい。民主党政権はGDPが5%伸びている。安倍政権は1.7%だ。これから期待できると言うが大きく間違っている」と開き直った。


ところが横から公明党代表・山口那津男が「2008年のリーマンショックのどん底から這い上がるために我々の(自公)政権が経済対策を打った。その効果が民主党政権時代に現れただけだ。民主党政権は配布(ばらまき)に力が入って経済成長には力が入らなかった」と指摘して勝負ありとなった。


民主党の公約にある「分厚い中間層」を海江田は繰り返し強調したが、これも維新共同代表・橋下徹が「分厚い中間層と言うが財源については何も言わない」と民主党政策の無責任さを指摘。


たしかに分厚い中間層といってもその道筋は全く提示しておらず、「財源はいくらでもある」として政権を取ったでたらめ政策の過去を“継承”している。その証拠に公約では悪名高き最低保障年金の創設を財源のめどもなく再び表明、やはりばらまきの指摘を受けた農家に補助金を配る「個別所得補償制度」も維持したままだ。


外交・安保問題で海江田は 集団的自衛権の行使を限定容認する7月の新たな政府見解について、「立憲主義に反する。許せない撤回すべきだ」と強く撤回を求めた。これには橋下が「憲法解釈の変更は内閣でも出来る。合憲か違憲かは最高裁が判断する」と、3権分立のイロハを教える始末。


確かに民主党は公約で立憲主義に反すると主張しているが、政府の新見解は、従来の見解とも一定の整合性を維持した憲法解釈の変更であり、これを立憲主義に反するというのは無理筋の話だ。


だいたい民主党の公約は「集団的自衛権の行使一般を容認する憲法の解釈変更は許さない」としただけとなっている。党内右派は行使推進論であり、行使容認是非の判断は示せないのが実情である。


最後に噴飯物の発言は海江田が、アジア太平洋経済協力会議(APEC)での日中首脳会談の実現について「私が訪中したとき首脳間で協力すべきだと言った。それが実現したのは喜ばしい」と述べた点。まるで海江田が取り持ったから首脳会談が実現したかのような口ぶりだが、認識が根本的に間違っている。


民主党側は当初、国家主席・習近平との会談を要請していたが、会えたのは中国共産党の序列5位・中央政治局常務委員の劉雲山だけ。自民党副総裁の高村正彦は序列3位、社民党の訪中団ですら4位の幹部と会談しており、海江田が取り持ったからといって、首脳会談が実現できる性質のものではあるまい。


要するに、安倍の急襲解散で民主党内は態勢が整っておらず、肝心の論争でボロが丸出しになった事を意味する。背後に党首に完璧な資料を渡す能力のない民主党の体たらくを感じさせる。これでは自民党へのアンチテーゼどころではあるまい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月28日

◆温暖化阻止への再稼働を主張せよ

杉浦 正章




野党の「原発ゼロ・ポピュリズム」に踊らされるな
 


過去2回の国政選挙と都知事選挙は自民党が原発再稼働を主張、他党がゼロを前面に出して戦い、自民党の圧勝となったが、今回は原発論争に新たな要素が加わる。


それは来年末にパリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)だ。1997年の京都議定書に代わる排出削減の枠組みが決められる。化石燃料による温暖化が原因の大災害が地球上で頻発しており、まさに「地球の存否」が問われる会議だ。


既に欧州連合(EU)と米中両国は野心的な温暖化ガス削減目標を提示している。先進諸国の中で日本だけが原発の位置づけが確定せずに目標数値を決められないでいる。「フクシマ」から4年も過ぎた段階ではもう「フクシマ」は理由にならない。提示できなければ日本批判の大合唱となる。


この際野党の「原発ゼロ・ポピュリズム」にとどめを刺すためにも、自民党は「温暖化阻止に不可欠な原発再稼働」を前面に押し出して選挙戦を展開すべきだ。


安全保障上の対峙だけが際立った米中首脳会談で一番驚いたのは、両国が二酸化炭素排出量(CO2)の削減目標で合意したことだ。温室効果ガス総排出量の3分の1を排出している米中は、米国がCO2を2025年までに05年比で26〜28%削減、中国は30年ごろを頂点に減少に転じさせる。


中国が減少に転じさせる目標を提示したのは極めて大きな意義がある。総排出量では増えると見込まれていた中国が、総量で減少に転じると打ち出すのは画期的だ。北京の微小粒子状物質「PM2.5」を含む汚染の深刻さがGDP一辺倒の国をようやく目覚めさせたことを意味する。


両国とも原発稼働が前提になっていることは言うまでもない。一方で欧州連合(EU)は先陣を切って90年比で30年に40%減という野心的目標を発表した。米中両国の今回の合意で世界各国の削減目標制定作業が加速するのは間違いない。
 
なぜ、気運が盛り上がってきたかは、温暖化による災害の頻発だ。世界中で未曾有の洪水が続発、日本でも広島市で発生した土砂災害は、痛ましい限りだ。台風被害も拡大。米国では史上空前のハリケーン被害が続出。明らかに地球温暖化がもたらす異常気象だ。


そして温暖化の主因は誰が見ても化石燃料が排出するCO2の垂れ流しだ。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書は「20世紀後半に観測された地球温暖化の主因は95%が人間だ」と断定している。


ニューヨークタイムズは社説で「原子力に危険が伴うのは事実だ。しかし過去に起こった原子力事故は石炭、ガス、石油といった化石燃料が地球に及ぼすダメージとは遠く及ばない」と主張するに至っている。


チェルノブイリの死者は31人だが火力発電の死者数はその何千倍にも及ぶ。大気汚染による肺がんなどの死者数は年間100万人を超え、その3割は火力発電による。これを放置できないというのがCOP21なのである。


こうした中で先進国で日本だけが化石燃料を90.6%も燃やし続けて、温暖化ガスを垂れ流しにしていても世界で通用すると野党と一部マスコミは思っているのだろうか。冒頭述べたように世界は福島の事故を死者ゼロとみて、日本は事故を抑えつつあると判断している。その事故を理由に温暖化を放置することは全く理由にならない。


「化石燃料で電力は足りている」という主張が朝日などイデオロギー的に再稼働に反対するメディアの論拠になっているが、これも地球規模で物事を見ていない。老朽化した化石燃料発電設備で辛うじて乗り切っているのだ。


反対派は再生可能エネルギーの利用を主張するが、電力5社が、太陽発電の買い入れを保留していることが物語っているように、まだ高すぎてペイしないのだ。安易に太陽エネルギーに補助金を出していたスペインは財政破たん。


ドイツも太陽エネルギーの価格を家庭にのみ転嫁して企業優遇措置を取った結果、反対運動が巻き起こり矛盾を露呈させている。一方ブラジルのようにオークション制度を取ってキロワットあたり9円にまで値下げに成功した例もある。42円の高固定価格で家庭の電気料金に跳ね返らせてきた日本は、行き詰まったのだ。


原発は来年早々に川内原発が再稼働する。現在全国12原発 19基が再稼働を目指しており、今後もその基数を次々と増やしてゆくべきであることは言うまでもない。


川内は申請から2年もかかったが、ほかの原発はもっと大幅に期間を短縮して処理されるべきであろう。また新増設や、改修による活用も視野に入れる必要がある。


野党の原発ゼロの主張は原発を重要なベースロード電源と位置づける政府・自民党とは全く相いれない。野党は首相・安倍晋三の主導する原発輸出を批判するが、自分で自分の首を絞めていることが分からない。


単に日本が儲かるだけではないのだ。福島事故の教訓を生かした深層防護の徹底により日本の原発の安全性は飛躍的に高まっている。日本の高度な原発製造技術が、中国や東南アジアに伝達されることの方が大事なのだ。


かつて中国の原爆実験で日本が放射能被害を被ったように、中国や東南アジアで過酷事故が発生すれば偏西風でもろに粉じんが日本に至る。地球的規模で見ても中国、韓国の安全度外視原発を世界に広めてはならないのだ。


さらに国富が原発不稼働によって年間4兆円も流出する。これがデフレ脱却を目指しているアベノミクスの足を引っ張るのだ。川内原発の再稼働は、地球規模で見ればまぎれもなくクリーンエネルギーを目指さなければならない人類の戦いの端緒でもある。今回の総選挙でも「原発ゼロ・ポピュリズム」に勝たせてはならない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月27日

◆第3極はまるで馬糞川流れでばらばら

杉浦 正章


トップが皆戦意喪失で失速
 

第2次大戦末期ニューギニア戦線などで米軍の猛攻を前に部隊長らが「各自自活して生き延びよ」と事実上の日本軍解体を涙ながらに宣言しているが、いまそれが第3極で起きている。


生活の党代表・小沢一郎がついに所属議員らに「好きにしていい」と事実上の解体を認めた。みんなの党代表の浅尾慶一郎も「手法の違いによる解党ということだと思う」と変な理屈を付けて解党を宣言した。維新代表・橋下徹も出馬を断念した。物語るものは何か。


第3極とはしょせんはマスコミに踊らされた風に漂う浮き草に過ぎなかったということだ。今のところ野党には第3極の軒並み失速という事態が起きて遠心力のみが働き、求心力が働かない。


このバラバラの事態を政界用語では「馬糞の川流れ」という。「せめて牛糞で固まりたい」と思っても、「この指止まれ」と手を挙げるカリスマと求心力のある指導者がいない。一昔前なら小沢がそれであったが、今は落ち目の三度笠だ。


しかし小沢の動物勘というか予知能力はすごい。既に9月の段階で「再増税の判断をする前に騒ぎがおきる」と臨時国会終盤の「消費税政局」を予測しているのだ。おそらく小沢は各種経済指標を見て7−9月のGDPが壊滅的になると予測、臨時国会の最中に政局に持ち込む“最後の決戦”の作戦を編みだした。


しかし解散までは予想していなかったと見えて「野党側が候補者を決めて走らせるには、半年は必要だ。そんなに時間はない。来年の4月の統一地方選挙の後ではもう遅い」と、早期に野党が民主、維新を中心に収れんして、小沢の生活の党も民主党と合併して、野党2党が候補者を一本化する作戦を明らかにしていた。


その場合に候補者を調整出来るのは自分しかないと思っていたようで「お役に立てれば、調整する。要するに実務だ」と意欲的であった。


実際に、小沢は安倍が消費増税延期を決断したことを理由に「消費税が延期になれば、わだかまりはないはず」と親しい関係にある参院民主党のドン輿石東を通じて、民主党に打診をした。民主党を中心に第3極を糾合して新党を結成、自民党に対抗しようとしたのだ。

しかし、同党幹部は「とんでもない」と拒絶。“小沢アレルギー”は全く消えていなかったのだ。これが冒頭の「好きにしていい」との投げ出し発言につながるのだ。本人は気付かないだけで、もう小沢の活躍出来る時代ではなくなっていたのだ。


一方で、もう1人第3極復活の鍵を握っていたのが維新代表の橋下徹だ。橋下が衆院選に立候補すれば、維新に「微風」くらいは吹いたかも知れない。当初橋下は「公明党にやられたので、このままでは人生を終わらせることはできない」と事実上出馬を宣言していた。


公明党の佐藤茂樹が出馬する大阪3区で出馬する構えであった。大阪都構想を巡って決裂した公明党への私怨が募ったのだが、結局勝てるかどうかの自信が持てなかったのだろう。24日朝の街頭演説で不出馬を表明した。


橋下が出馬すれば少なくとも維新は固まった。しかし共同代表・江田憲司では「風」は吹かない。逆に風で当選した維新の1年生議員らに動揺が走り、既に10数人が民主党からの出馬を打診しているといわれる。


これに対して江田は、22日の講演で、選挙後に民主党の一部勢力と合流を目指して協議を始める考えを示した。「信頼関係をつないできた民主党の閣僚経験者と投票日の夜から話をし、自民党に対抗し得る新しい一大勢力をつくりたい」と述べたのだ。


閣僚経験者とはかねてから橋下らとの親交がある前原誠司や細野豪志を念頭に置いている。しかし普通は選挙前に新党結成を打ち出すのだが、あえて選挙後としたのはなにやらいぶかしい。選挙後では勢いも出ない。結局、離党を食い止めるのに懸命の発言なのだろう。


一方みんなの党の浅尾も、さじを投げた。もともと渡辺喜美という強烈な個性で持ってきた党であり、渡辺がつぶれては、ひ弱なインテリの浅尾では政治家集団を維持するのは無理だったのであろう。渡辺の個人商店を番頭が経営しても限界があるのだ。こうして第3極は次々に「自活して生き延びよ」になってきた。


風で当選してきた議員らはそよ風程度の逆風でも倒れるのだ。ところで焦点は、民主党代表・海江田万里の動向だ。この馬糞の川流れ現象を、せめて牛糞にできるかどうかは全て海江田の力量にかかっているといっても過言でない。


小沢の言うように新党結成が一番の訴求力があり、事実前原、細野らは衆院解散前、海江田に維新の党などとの新党結成を求めたが、応じなかったと言われている。受けていれば橋下も立候補した可能性がある。


民主党にとっての不幸は総選挙惨敗を受けて、有能な政治家が代表選に出馬することを尻込みし、二戦級の海江田を党首にしてしまったことだ。夏に「海江田降ろし」が起きたが、不発に終わった。せめて維新などとの間で選挙区調整を進めなければならないが、どのくらいの選挙区で候補者調整ができるかは不明だ。


民主、維新は約30選挙区で競合しており、この調整が焦点となるが、2日の公示が迫る中で強力なリーダーが存在しないということは痛い。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月26日

◆金王朝3代目が怒り狂って 日本水葬

杉浦 正章




国連でお尋ね者にされメンツ丸つぶれ
 


中国の YouTubeで金正恩登場のパロディーが爆発的な視聴率を集めている。抱腹絶倒間違いなしだ。"金三胖版小苹果"で「ぐぐる」とすぐに出てくる。


ベストセラーの「小苹果」(小さなリンゴちゃん)という曲に乗って金三胖(金王朝3代目のデブ)の金が踊りまくるという趣向。首相・安倍晋三も出てきて空手で対戦、一発で安倍が負ける。オバマは金にパンチを食らわせぶっ飛ばすといった内容で、賢いことに中国首脳は出てこない。


検閲が厳しい中国がこれを認めているということは、いかに中国国家主席・習近平の「嫌金感情」が高いかを物語る。その金に対して国連が「Wanted」(お尋ね者)の決議案を採択したのだから大変だ。おそらく金が怒り狂ったのだろう、北は日本名指しで「水葬にする」と息巻いている。


北の人権侵犯批判の国連決議は過去9回行われているが、今回はとりわけ厳しい。金が国際指名手配犯になりかねない決議だからだ。


国連総会第3委員会の決議は@国家の最高レベルによる政策で「人道に対する罪」を犯した疑いがあるA国際刑事裁判所への付託と責任者への制裁について安保理への検討を促すーという内容。明らかに「最高レベル」の表現で金を特定している。決議は111か国が賛成、反対は19か国であった。


決議は日本と欧州連合(EU)が主導したが、その背後に米国がいることは言うまでもない。来月本会議でも可決されるが中国とロシアは反対に回っており、これは安保理で拒否権を使うことを意味する。従って、成立はしないが国連外交としては勝利だ。


なぜなら、想像以上に北に対する効果があった上に、中国とロシアに悪名高い拒否権を使わせる事に成功しそうだからだ。国連外交というのはそういうものだ。


北は国防委員会が23日声明を発表し、米国や日本、韓国などとの“未曽有の超強硬対応戦”に突入すると反応した。「国連を利用して仕立て上げた人権決議を全面的に拒否、排撃する」と反発。「人権騒動のもたらす想像を超えた破局的結果に対する責任は、全面的に米国と、その追従勢力が負うことになる」と非難した。


米国に次いで日本を挙げ、「日本は近くて遠い国程度ではなく、わが方の目の前から永遠になくなる存在となることを肝に銘じるべきだ」と警告。「ひとたび聖戦を開始すれば、日本も丸ごと焦土化され、水葬されなければならない」とけん制した。


「水葬」とは穏やかでないが、どうやって水葬するのだろうか金に聞いてみたい。金が怒り心頭に発した事が意味するものは、いかに決議案のダメージが大きかったかを物語る。


将軍様が「Wanted No1」になって、逮捕される図式なのだ。成立しないから逮捕はされないが、成立した場合は国外に出ただけで逮捕されるのだから、誇り高い金王朝のメンツ丸つぶれだ。それは怒るだろう。


北は去年春にも、韓国、ハワイ、グアム、日本を特定して核ミサイルを打ち込むと脅迫。日本に対しては軍のミサイル部隊が戦闘勤務態勢に入るとして、東京、大阪、名古屋はもちろん横須賀、三沢、沖縄のアメリカ軍基地の名前も出して、「われわれの射撃圏内にある」と威嚇した。


まあ半島は日本を上回るテンション民族だから、「また狂ったか」と「一時の狂気」を気に留めないことが大事だ。ただ水葬されないように集団的自衛権の行使や秘密保護法の必要は選挙でも訴えなければなるまい。


国全体を「水葬」するのだから、もともと生存している可能性は少ない拉致被害者を巡る日朝交渉などは一層期待が持てなくなった。


北は中国からは相手にされず、日本から当面金を取れないとみたか、ロシアに急接近している。金正恩の特使として朝鮮労働党書記の崔竜海(チェ・リョンヘ)が17日から24日までロシアを訪問した。大統領・プーチンとの会談では、2国間の経済協力や朝鮮半島情勢などについて、意見を交わした。


明らかに習近平が朴槿恵とばかり接触して金正恩を無視しているのをけん制しているのだ。プーチンもシベリア鉄道や天然ガスパイプラインを伸長させ、韓国や日本への経済利益を追及したいのだろう。


金は対中貿易で空いた穴を埋められるのは有り難いのだろう。ロシアもウクライナ情勢を巡って欧米との対立が深まるなかで、アジア重視の一環として北朝鮮との経済協力を進める姿勢を示そうということだろう。


言ってみれば「つまはじきグループ」への結合であろう。両者は首脳会談をする可能性がある。また北が核実験に踏み切る可能性もある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月25日

◆アベノミクスの数字に訴求力

杉浦 正章


第3極失速で、与野党逆転の余地なし
 

アベノミクス解散の緒戦の論戦を分析すれば、かさにかかって「景気失速」を追及する野党に、自公政権側は過去2年間の「経済実績」で対抗する形が浮かび上がっている。


野党はいわば足元の景気実感、与党は実績を背景にしたデフレ脱却への期待感を説く。総じて野党の攻撃に与党は「言い訳」するように見えるが、逆に数字上の説得力は与党側にある。


解散に大義あるなしの「大義論争」は明らかに首相・安倍晋三の負けだが、選挙戦が進むにつれて具体的な政策論争に移行せざるを得ない。


雇用にしても賃上げにしても民主党政権時代と比較された場合、反論の余地がないだろう。その上で、「デフレ脱却へあと一歩」を訴える安倍に、有権者の多くが希望を託さざるを得ないだろう。


要するに今回の選挙は訴求力、アピール度の勝負だ。第3極はブームが完全に去って失速、初期の論争から見る限り、政権交代が実現するほどの風は吹きようがないと見る。


解散の大義があるかどうかが当初の議論の焦点となっていたが、いざ解散されてしまうと野党も大義にこだわってばかりはいられない。もともと今回の解散は党利党略・個利個略解散であるから大義はないのだが、大義という漠然とした用語は訴求力に欠ける。


安倍は「アベノミクス解散」と位置づけ、「景気回復この道しかない」の旗印の下に、自らに有利な経済論争に引き込もうとしている。野党も不承不承ながら事実上これに応ずるしかないように思える。


不況かどうかを測るバロメーターは何と言っても「雇用」にある。不況下では「街に失業者があふれ」が常套文句だが、アベノミクス以来雇用は100万人増加し、うち女性は80万人だ。


有効求人倍率は1.09倍、完全失業率は3.6%で先進国中もっとも良好な水準にある。野党は非正規雇用が増えただけと主張するが、非正規であろうとなかろうと雇用は雇用だ。「失業」とは天と地の違いがある。


賃上げも春は過去15年間で最高の2%に達した。野党は合唱のように実質賃金の目減りを主張するが、民主党政権時代までは賃金の長期低落が続いたのであり、賃上げなどと言う言葉は夢のまた夢であった。


上がるだけでも、デフレ経済のトンネルの先に明るさが見えてきたという主張の方がアピールするだろう。倒産件数も2割以上減少し、24年ぶりの水準となった。


さらに野党は7-9月のGDPがマイナス1.6という異常な下がり方を見せたことを指摘するが、筆者は異常気象や自然災害による部分があり、一時的ではないかと思う。10-12月期以降の数字を見なければ分かるまい。


7-9でも個人消費が0.4%上向いていることが、改善の兆しと見る専門家も多い。


自民党がこうしたアベノミクスの「実績」を前面に打ち出した論争に引き込むことに成功すれば、かなり説得力が生じて来るのだ。野党は選挙を前にして狡(こす)っ辛くも増税延期に踏み切った民主党が象徴するように、解散が急襲であったため、攻撃の突破口を見つけるのに四苦八苦なのだ。


おまけに「マニフェスト」という虚飾の呼称も完全に色あせ、民主党は公約に数値目標も入れられない体たらくだ。同党幹事長・枝野幸男は「豊かなものが豊かになるだけで大部分の皆さんはそのしわ寄せで苦しくなっているのがアベノミクスの実態」と、昔の左翼政党のように感情に訴える“格差強調”戦術に出ているが、これは一部国民の「ひがみ根性」に訴えるものであり、何の生産性もない。


経済のイロハも知らずに政権を担当した鳩山由紀夫が象徴するように、民主党政権は株価を上げるすべも知らなかったのだ。株価は未来を予測しているのであって、下がるより上がった方がよいに決まっている。


こうして経済論争では6対4か、5.5対4.5で安倍有利に展開すると思う。一方で外交・安保論争に至っては、野党が付け入る隙がない。他国の領海に侵入を繰り返す中国が存在し、ミサイルと核を弄ぶ北朝鮮。


間違った歴史認識を金科玉条とする女性大統領の韓国。これら近隣諸国の「理不尽」は国民の誰もが感じていることである。


安倍が地球俯瞰外交で中国を封じ込め、日米豪準軍事同盟で対峙(たいじ)する路線は、国民に支持されている。民主党は対案を出さずに集団的自衛権の撤回を求めているが、まるで何でも反対の社会党に先祖返りしたとしか思えない。集団的自衛権の閣議決定と秘密保護法実施も含めて、外交・安保論争は9対1で安倍の勝ちだ。


一方で原発論争だが、反対派は何回国政選挙で負けたら気が済むのかと言いたい。衆院選挙では未来の党などという原発否定だけの政党が壊滅し、参院選挙でも野党は過半数割れをした。いずれも原発維持の自民党が大勝だ。それにもかかわらず、左傾化マスコミが今度は原発再稼働を軸に、有権者のマインドコントロールをして争点に押し出そうとしている。


電気料金と石油価格高騰に悩む庶民のことなど知ったことではないとばかりに、再燃させようとしている。しかしこの問題も過去2回と同じように反対派の敗北に終わるだろう。7対3で安倍の勝ちだ。


第3極は橋本徹の不出馬、みんなの党の空中分解が象徴するように完全に失速した。共同代表・江田憲司では守りが精一杯で維新拡大に弾みはつかない。


ただしNHKの日曜討論を見る限り、自民党政調会長・稲田朋美は論争能力と技術に欠けている。企業の海外移転について「企業がどんどん戻ってきて、どんどん移転をやめている」と述べたのを、民主党政調会長の福山哲郎に「あまりいいかげんなことを言わない方がよい」と指摘されて一本取られた。


福山に「少なくとも政府・与党の政策責任者ですよ。もっと根拠のあることを言ってもらわないと困る」とたしなめられたが、多くの視聴者が頼りないと感じただろう。選挙という食うか食われるかの場面であり、テレビ討論には出さない方がよい。野党がチャンスとばかりに攻撃の対象とする。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
      

2014年11月21日

◆政治詭道をえらんだアベノミクス解散

杉浦 正章



国民に見抜かれた“策略臭”
 

朝日川柳に「国民にアベノリクツを無理強いし」とあったが、言い得て妙だ。解散を命名するなら本来ならこの「アベノリクツ解散」がよいところだが、解散史には「アベノミクス解散」と残るだろう。

最大の争点がアベノミクスとその成功を期するための消費増税延期問題となるからだ。首相・安倍晋三もそこに照準を合わせる選挙にしたいのであろう。しかし、有権者の反応は総じて「なんで今なのか」である。

戦後の解散を大別すれば「打って出る解散」と「追い込まれ解散」に分けられるが、安倍の場合は「打って出る」と「過剰防衛」が同居した解散だ。内情が明らかになるにしたがって、川柳の通りに無理矢理に安倍が理屈づけをしている匂いがふんぷんとしてくる。

国民の直感は鋭い。「なんで今なのか」の背景にある“策略性”を見逃さないのだ。

歴代首相にとって最大の仕事は解散のチャンスを見定めることである。政権党にとっていつが有利かの判断である。そこに党利党略があるのは当然であり、政権延命のための個利個略があってもおかしくない。

しかし、最初からその策略を見破られてはどうしようもないし、その実態が策略が全てであってはなるまい。今日の解散はそういう解散だ。朝日の世論調査では安倍の挙げたアベノミクスの成否を問うという解散理由になんと65%が「納得しない」で「納得する」は25 %にとどまった。

安倍の支持率も支持39%、不支持40%でついに逆転した。国民は直感で何のための解散かが分かるのだ。国民をだませると思ってはいけない。

そもそも、解散風が吹きだした当初から永田町には「今後支持率を悪化させる問題がひしめいている。支持率が高いうちにやった方がよい」という説が飛び回った。原発再稼働や集団的自衛権の法制化などで支持率が落ちるという判断である。

しかしその発生源がどこなのかが分からなかったが、元朝日新聞政治部記者で桜美林大教授・早野透が朝日デジタルのコラムで「そういえば思い出した、渡邉恒雄読売新聞グループ本社会長兼主筆がある席で『いま、解散のチャンスなんじゃないか。これから先、安倍政権もいいことはあまりない。いまなら勝てる。いまのうち解散だよ』と言っていたのを聞いた」と書いている。

どうやら発生源はナベツネらしい。早野は続けて「ナベツネさんとよばれる古い政治記者、読売新聞のトップのこの話が安倍首相に伝わったかどうかは知るところではないが、果たして11月9日、読売新聞に初めて『解散』を予測する記事が出た。解散風はそこから始まったのである」と述べている。ここまで書けば玄人はナベツネの進言で安倍が踏み切ったと捉える。

謀略に明け暮れた戦争直後の政治混乱の中で、政治記者を長く務めたナベツネらしい「今のうち解散」の発想だが、解散の大義にまで頭が回らなかったのはブンヤの親玉の限界だろうか。

誰の進言かはともかくとしてとにかく安倍は「今のうち解散」論に乗ったのである。解散の動機がまるで不純である。700億円の血税を「今のうち解散」のために使うのは、遠山金四郎ではないが「やいやいてめえら、お天道様はお見通しだい」と言いたくなる。

安倍が勝敗分岐点について「自民、公明の連立与党で過半数を維持できなければ、アベノミクスを進めていくことはできない。過半数を得られなければ、私は退陣します」と、自民党が208議席まで86議席も減らしても退陣しないと言明したが、この発言も選挙の先頭に立つものの言葉ではない。

初めから負けを宣言しているのがどうも腑に落ちなかったが、やはり師匠の小泉純一郎の郵政解散の請け売りであった。

朝日が「この表現は、小泉純一郎元首相が2005年郵政解散での記者会見で語った『自民党と公明党が国民の審判によって過半数の議席を獲得することができなかったら、私は退陣する』という表現に酷似する」と看破している。朝日は「退陣という言葉で、覚悟や潔さを強調する狙いがある」と分析しているが、見事だ。

さすがに自民党も、安倍の勝敗設定を訂正せざるを得なかった。公明党と合わせて絶対安定多数を上回る270議席としたが、それでも公明が取るであろう30議席を引けば240議席だ。

295議席から55議席も失っても「勝ち」であろうか。野党の体たらくは依然「低水準」にありまだ勝ち負けは予断できないが、安倍の策略が前面に出た「今のうち解散」は、議席減が前提なのである。

議席確保は政局運営の要であり、わざわざ議席を減らす「何のため解散」は、せっかく自民党を圧勝させた国民の気持ちを裏切り、政局の詭道を歩むものに他ならない。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2014年11月20日

◆安倍の平成大はしご外し 裏側を読む

杉浦 正章




自民、財務、日銀ががん首並べて討ち死に
 


「敵を欺かんと欲すれば、まず味方を欺け」は古来兵法の要諦。かつて「角さんには何度だまされたことか」と側近中の側近・二階堂進が田中角栄の政治手法を嘆いていたが、優秀な政治家ほど味方を欺く術に長けている。


解散断行につながった消費増税の延期に関して首相・安倍晋三もまず味方を欺いた。増税延期という大目的のために、梯子(はしご)を片っ端から外したのである。


まず自民党幹部を幹事長・谷垣禎一と組んで二階に上げて外した。財務省に至っては幹部がまだ乗っているのに外して頭から落とした。二人三脚のはずの日銀総裁・黒田東彦も屋根に上げたまま外した。世にも珍しい「平成同時三大梯子外し」である。その内幕を晒すことにしよう。


まず安倍が梯子外しに着手したのは9月の内閣改造人事だ。増税派の谷垣をなんと幹事長に据えたのだ。大マスコミに対して孤軍奮闘しているブロガーの筆者も時には自慢しないと、素人の読者は当たり前だと思ってありがたがらないからあえて自慢するが、この人事の「真意」を世の中でただ1人看破したのは筆者だけだ。


半年前からの「増税引き延ばし方針」と「日中首脳会談実施」予想とともに、今年の3大予想的中だ。もっとも73歳になるまで現役政治記者を貫き通せば、それくらいの読みは誰でも出来る。「谷垣落とし」の証拠の記事が「安倍は谷垣と消費税で“握って”いる」と題した9月3日付の「今朝のニュース解説」だ。


内容は「浅薄なマスコミが『谷垣幹事長人事で消費増税が10%に引き上げられる』と報じている。果たして首相・安倍晋三が、再増税に前向きな谷垣禎一を、クギを刺さないまま幹事長に任命するだろうか。まずあり得ないと思う。


むしろ安倍と谷垣は再増税問題でなんらかの“密約”をかわしている公算が強い。“握った”のだ。」と断定した。そして「安倍が谷垣の顔を立てて、例えば期限をつけて増税を延期するなどの方策を決めれば谷垣もノーとは言えないのではないか。」と洞察している。全て的中した。


安倍はまず谷垣を取り込んだのだ。19日付の朝日だけが、この話を“立証”している。「安倍の課題はまず、増税を主張する与党首脳の説得だった。『景気が後退したら消費税は上げません』。9月の党役員人事で谷垣を幹事長に起用した際、安倍は谷垣に念を押していた。


増税派の谷垣さえ納得すれば、増税見送りでも党内を抑えられると踏んだ安倍は10月下旬から、谷垣に消費増税の先送りと早期解散の相談を始めた」と報じているのだ。安倍はまず谷垣を落とした。3党合意を作った谷垣が延期に賛成すれば、党内は延期になびくと踏んだからだ。


一方で副総裁・高村正彦、総務会長・二階俊博、税制調査会長・野田穀らには心中を明らかにしなかった。だからこの3者は首相の意向を確かめもせずにあちこちで予定通りの実施を唱えた。特に野田と二階が急先鋒だった。


野田が「リーマンショックに匹敵する経済変動があるわけではない。予定通り引き上げるのが“当然の姿”」と主張すれば、二階は「国際的な信用にもかかわる。約束通り実行することが最重要政治課題」と言ってはばからなかった。


ところが本来なら安倍は説得で黙らせるべきところだが、解散という奇襲戦法で黙らせた。梯子外しだ。これには党内せきとして声なしとなった。勝負は一挙についたのだ。小泉の郵政解散に似て、反対派の掃討作戦が始まり、官邸筋からは野田の選挙公認に反対する声が出ている。


一方ノーテンキといってもいいのが財務省。安倍の心中を最後の最後まで読めなかった。官邸中枢の官房副長官に旧大蔵省出身の加藤勝信を“派遣”しておきながら、ろくな情報も得られなかった。だから大蔵省は省を上げて政界への「多数派工作」を展開したのだ。


この結果、官房長官・菅義偉の肝いりで作った延期派の「アベノミクスを成功させる会」も、最初は45人集まったが切り崩されて10人そこそこにまで減らされた。安倍が激怒したのは言うまでもない。頼みにするのはただ1人財務相・麻生太郎だけとなった。


麻生太郎には事務次官・香川俊介が自ら「総理の説得を」と頼み込んだ。安倍とはツーカーの麻生太郎が最後の砦となった。


しかしブリスベンのG20から帰国する飛行機の中で安倍の意向を打診した麻生は、安倍の解散までする決意を直接聞いてあえなく討ち取られてしまった。消費増税先延ばしを規定した同法付則を外すことが精一杯であった。香川は男なら辞任して抗議すべきだが、しそうもない。


最後に外されたのが黒田だ。黒田はもともと財務官僚だ。安倍はアベノミクス推進で黒田に異次元の金融緩和を打ち出させ、二人三脚の色彩を濃くしていた。日銀は2%の物価上昇を分担、政府は経済成長と財政再建の役割を果たすという車の両輪であった。


しかしもともと財務省で増税論者であった黒田は、安倍がまさか延期に出るとは思ってもいなかった。政局を読めない官僚のさがであろう。だから黒田は国際金融市場からの信任が失われるとして増税実施論を当初からぶったのだ。そして明らかに安倍の増税実施を促すかのように金融緩和のパズーカ第2弾を打ち上げたのだ。


おまけにいささか図に乗ったのか日銀の中立性を毀損する発言までした。12日の衆院財務金融委員会で黒田はパズーカを「2015年10月に予定される消費税率10%への引き上げを前提に実施した」と答弁したのだ。こともあろうに、金融政策を担う日銀のトップが財政の根幹に関わる消費再増税の実施を後押しする発言をしたのだ。


中立毀損(きそん)どころか越権もいいところであり、安倍は激怒したと言われる。こうして黒田外しの延期となったのである。黒田の予言のように国際金融市場が動いて国債の長期金利が急騰する気配もない。


こともあろうに日銀総裁が、市井の三流経済評論家並みに、大きく見通しを外したことになる。深手を一番負ったのは黒田ではないか。中立の立場を維持せず、出しゃばるからこうなる。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月19日

◆安倍は解散の大義を言い切れなかった

杉浦 正章




小泉流無理矢理解散を踏襲
 


解散の大義を言うかどうかが焦点となった18日の記者会見だったが、首相・安倍晋三の主張にはやはり無理があった。


安倍の大義は消費増税を1年半延期し、17年4月に10%に引き上げ、同時にアベノミクスの是非を問うというものであったが、空々しい。


なぜかというと本音を語っていないからである。この解散の「手口」は明らかに師匠の小泉純一郎が郵政法案で使ったやり口だ。参院での同法否決を理由に衆院を解散するという無理矢理解散の手法と酷似している。


加えて注目されるのは進退を問われる選挙の勝敗ラインを過半数238議席に設定したことだ。しかも公明党と合わせての数だ。これは大敗しても辞めない姿勢を浮き彫りにするものである。


誰もが腑に落ちないのは大義を、あまりにも自己都合に設定していることだろう。安倍の支持率は50%前後と極めて高い。支持率が高いということが何を意味しているかと言えば、政策を国民が支持していることに他ならない。


その政策の中核は外交安保政策に加えてアベノミクスにある。国民は改めて解散・総選挙でアベノミクスの是非を問う必要がないと判断しているのだ。それでもやる背景には政権維持への政局上の思惑が大きく絡んでいる。


思惑とは支持率が高く、野党の選挙態勢が整わないうちに選挙をやった方が長期政権につながるという個利個略だ。また小泉が反対派を黙らせることを狙ったように、自民党内の増税実施派を黙らせるための絶好の手法と考えたフシもある。


事実、だらしがないことに財務省に踊らされて実施論だった幹事長・谷垣禎一や税制調査会長・野田毅は、節操もなく事実上黙ってしまった。2閣僚辞任など悪い雰囲気もこの際一掃したいという狙いもあるのだろう。


安倍周辺は「総選挙を経ればリセットでき4年間の安定を確保出来る」と述べているが、この長期政権狙いの戦略にも疑問がある。政局はリセットされないからだ。


来年早々には原発が再稼働し、4月には統一地方選挙があり、選挙後は集団的自衛権の法整備が待っている。野党は普通、総選挙後はトーンダウンするのが通例だが、これらの課題を前にすれば、かさにかかって対決姿勢を前面に出すことは確実だ。


さらに消費税は延期に視点が移りがちだが、安倍の発言によれば「2017年4月の(税率)引き上げは確実に実施する」のであり、これは2年5か月後の10%への増税を確定させたことに他ならない。国会は増税を巡る論議に発展せざるを得ないのだ。


「4年間の安定」も絵に描いたもちにすぎない。自民党の減り方によっては安定どころではなくなる恐れがある。要するに294議席のまま政権運営した方が安定するか、総選挙の洗礼を受けた方が安定するかの選択であった。筆者はどう見ても前者の方が安定すると思う。


294議席は本来少なくとも3年間は選挙をしないで済む議席であり、国民が混乱続きの民主党政権の政局のごたごたに強く反発して選択したものであった。


もともと消費税法に書いてある延期をしたからといって、数を減らして政局を流動化させるような選択は、多くの国民が望んではいないのである。安倍が政治家なら自民党内の増税派を説得したうえで延期に踏み切るのが筋であろう。


それを説得なしのいきなり解散は短絡そのものであり、小泉的な政治手法の踏襲だ。しかし安倍に欠けているのは小泉の「劇場型政治」手法であり、小泉はこれで選挙に勝った。しかしこればかりは小泉の天性であり、安倍は真似することが出来ない。


安倍は会見で勝敗ラインを問われて「自民党、公明党の連立与党によって過半数を維持できなければ、3本の矢の経済政策、アベノミクスも進めていくことはできない。過半数を得られなければアベノミクスが否定されたことになるから、私は退陣する」と言明した。


自民・公明両党で過半数である238議席以上の獲得が出来なければ退陣するというのだが、このハードルは冒頭述べたように低すぎる。公明党の過去5回の選挙結果を見れば、第45回の21議席以外は42回32議席、43回34議席、44回31議席、46回31議席と全て30議席を上回っている。


平均は30議席 である。安倍の発言では公明の30議席を差し引いて、自民党が208議席ま で86議席も減らしても退陣しないといっているに等しい。
ここまで議席を 減らした首相が政権を維持したケースは過去にない。


常識的な勝敗ライン は自民党単独で269の安定議席を確保出来るかどうかが焦点であろう。無 理矢理解散である以上、目減りは25議席程度が許容範囲だろう。


<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2014年11月18日

◆景気直撃の「GDP大誤算解散」

杉浦 正章



しかし政権交代はないだろう
 

驚くというより愕然とした2期連続マイナス成長である。景気は失速して坂道を転げ落ちている。その最中にこれといった大義がない解散断行を首相・安倍晋三が今日18日に表明する。

これまでの安倍の発言から類推する限り、形勢を一変させる「回天の大義」を記者会見で表明することはできないだろう。おそらく消費増税延期とアベノミクスの成否を問うことになろう。

これは自らを不利な立場に導く「誤算の表明」に他ならない。野党の態勢不備を突くという「あざとい解散」に加えて、景気失速が意味するものは「GDP大誤算解散」の側面を濃厚にしているからだ。

現有294議席の維持などは夢のまた夢。しかし公明党と合わせて政権維持は可能と見られ、政権交代劇までには至らないだろう。

安倍が7日に自民党幹事長・谷垣禎一と公明党代表・山口那津男に解散の意向を極秘裏に伝えた段階で、この年率マイナス1.6%という数字を知っていたとまことしやかに言う評論家がいるが、噴飯物だ。

この数字を知っていたら、政治家なら誰でもその対策が第1で、解散など考えようもないだろう。安倍も固めていた解散の判断にブレーキをかけただろう。

安倍は外遊中の数日前に官邸から報告を受けて知ったが、国内は既に安倍自身が「解散風を吹かせよ」と指示してその方向で動き出しており、止めようにも止まらなかったのだ。

安倍は民間の予測であるプラス2.47%に引っ張られた可能性がある。延期か実施か判断に迷う数字だが、延期としてもおかしくない数字だ。これが第1の誤算であり、宿命的に来月14日投開票の総選挙に影響を与えざるを得ないだろう。

今回の解散は誤算の上に誤算を積み重ねた感が濃厚だ。第2の誤算は消費増税実施延期を有権者が囃(はや)すと思った誤算である。4月の増税で息も絶え絶えの庶民にさらなる増税は自民党執行部の思考停止を露呈させた。

筆者が半年前から先送りを洞察し、安倍の心中をピタリと言い当ててきたように、もともと不可能なのだ。消費税法の付則にある延期をしたからといって有権者が囃すことはないし、解散の大義名分にはほど遠い。

さらにアベノミクスの実績を訴えるというが、開始して2年。確かに大企業の業績は上がり、失業率も改善された。しかし、肝腎の輸出が伸びない。

なぜかといえば企業の海外移転で円安のメリットが薄れてしまったのだ。この構造的な変化に気付かなかったのが第3の誤算だ。こうした誤算を野党が突かないはずがない。

師走総選挙の焦点はアベノミクスの評価に集中せざるを得ないだろう。これは大義の説明がつかないまま党利党略、個利個略で解散を断行するという安倍の「あざとい邪心」がまねいたものに他ならない。

それでは年末解散が過去に時の政権にプラスに働いたかどうかを検証する。師走選挙は69年の佐藤栄作による沖縄返還解散、72年の田中角栄による日中復交解散、76年の三木武夫によるロッキード解散、83年の中曽根康弘による田中判決解散、12年の野田佳彦による近いうち解散に基づく5回がある。

このうち時の政権が勝ったのは、佐藤の圧勝と田中の安定議席獲得の2例にとどまり、三木も、中曽根も、野田も不利な戦いを余儀なくされて敗北を喫した。

とりわけ野田の選挙は投票率が59.32%と極めて低調で、これが自民党を得票率がわずか27.62%で61.25%の294議席を獲得するという結果をもたらした。民主党の失政に加えて、政党の乱立で野党票が分散したのが原因だ。

今回の選挙を展望すれば、安倍が大義を提示できない限り「何のため解散」の色彩が濃厚であり、有権者はしらけている。従って投票率は下がるだろう。下がった場合の選挙は組織政党に有利に働くケースが多い。

12年の選挙のように自民党に圧勝をもたらしたし、公明党や共産党にも有利に働く。しかし、今回の選挙が政権党に有利に働くかどうかは全く予断を許さない。師走選挙で勝った佐藤も田中も明確で有利な争点があった。ほかの3例はマイナス要因を抱えての選挙であった。

三木、中曽根はロッキード裁判、野田は鳩山由紀夫、菅直人という史上最低の大失政政権の尻拭いという負の側面を背負った選挙である。

安倍の場合も、野党からGDPマイナスをもとにアベノミクスの失敗を突かれ、これに言い訳をする形の選挙となる。3例と同じように言い訳型選挙を強いられる。言い訳の選挙で勝つことは極めて難しい。

野党も統一候補擁立や、新党結成の動きを強めており、12年の乱立による得票分散を回避しようとしている。冷静に見れば日本経済は好むと好まざるとにかかわらす、アベノミクスを成功させるしか生きる道はない。野党に対案が提示できるかと言えばその能力はない。

一方、有権者は自らの生活困窮に「仕返し」の投票行動に出る傾向が高い。同じ1票でも深い展望を持つ層と、刹那的な判断に生きる層に分けられるのだ。しかしポイントは「風」が左右する小選挙区制にあるのだが、今回はどちらにも風は吹かないだろう。

繰り返すが有権者はしらけているのだ。従って294議席を自民党が減らすことは間違いないが、最低でも公明との連立で政権を維持することは可能であろう。自民党が269の安定議席を確保するかどうかは極めて困難であろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2014年11月17日

◆勃興中国に日米豪包囲網でストップ

杉浦 正章




孤立化で限界露呈の習近平路線
  


一連の首脳会議を俯瞰・分析する


中南海に米大統領・オバマを招き入れての“大歓待”とこれに先立つAPECでの「朝貢外交」は、国内向けに中国国家主席・習近平の地位を確立するための演出であった側面が濃厚だ。


外交・安保面では「中華民族の偉大なる復交」という習近平の大国主義に、米国が日米豪同盟を基軸に対峙し、これを封じ込める姿がより一層鮮明となった。


APEC、ASEAN、G20という一連の首脳会議を俯瞰・分析すれば、中国孤立化・封じ込めの流れが一段と鮮明化し、中国が国際社会からその膨張路線の“修正”を迫られている姿が浮かび上がった。


オバマのブリスベン演説は、勃興する大国・中国に対し既存の大国米国が明確にストップをかけたものに他ならない。一見緊張緩和に見える極東情勢も、力による米中対峙の上に成り立っている姿を露呈させた。


APEC史上見たこともないけばけばしい朝貢外交的な演出、オバマだけを特別扱いして米中2大国を見せつける演出、首相・安倍晋三と会って靴下の匂いを嗅いだような顔をする演出、これら全ては一体何であったかと言えば、国内対策である。


中国国家主席・習近平は国内基盤確立の総仕上げにAPEC首脳会議をフル活用したのだ。まだそれだけのことをしなければ国内的な支配の構図が確立できない脆弱な一面があることを意味する。しかしその戦略が中国外交で成果をおさめたかと言えば、限界を露呈したと言わざるを得まい。
 

その証拠にAPECで米中首脳が一致したのは地球温暖化対策での新目標の設定と偶発的軍事衝突防止策くらいのものであり、あとは齟齬(そご)が目立った。習はその口癖である「太平洋は米中両国を受け入れる十分な空間がある」と、日本などは歯牙にもかけない新型大国関係論を繰り返したが、オバマは乗らなかった。


香港の民主化デモを巡って透明な選挙を主張するオバマと、これを内政干渉として排除する習の主張は平行線をたどった。オバマは東・南シナ海への中国進出を意識して「航行の自由」を主張、中国の挑発的行動を強くけん制した。


東シナ海では日米との偶発的衝突防止のメカニズム設立へと動いたが、南シナ海では具体化は足踏みしている。中国は明らかにフィリピン近海での滑走路建設など実効支配の確立までの時間稼ぎをしているのだ。


一方で中国は豊富な資金を背景に経済対策でASEAN分断への動きを強めた。アジア・インフラ投資銀行の設立で、日米主導のアジア開発銀行に対抗、ミャンマーなどへの経済援助でASEANを切り崩す動きを露骨に示した。


これに対してオバマは、北京、ミャンマーでは鳴りを潜めるかのようであったが、ブリスベンで習の「供応接待」を全て忘れたかのごとき演説をした。重心をアジア・太平洋地域に移す再均衡(リバランス)の維持を明言するとともに、感情的な表現を使ってまでも、太平洋国家としての立場を明確にさせた。


感情的表現とは「太平洋国家として米国は人命と財産を捧げてきた。誰も我々の決意を疑うべきではない。米国のアジア太平洋地域における指導力発揮は私の外交政策の基盤だ」とするくだりである。


また「アジアの安全保障の秩序は、大国の小国に対する威嚇などではなく、国際法や同盟による安全保障に基づかなければならない。米国は同盟国との協力を強化し続ける」と言明、露骨な中国の海洋進出をけん制した。


これらの発言は習の太平洋2分割論への明確なる反論を意味するものであった。また日本、韓国、フィリピン、豪州の各同盟国を列挙し、その重要性を指摘。とりわけ日豪両国に関して「日本とは日米防衛協力の指針(ガイドライン)を見直し、米軍を再編する。豪州では、地域安定のため米海兵隊員が駐留する」と軍事協力の推進を強調した。


根底には中国の対日軟化などは「一時的な調整」とみなして信用せず、中長期的には膨張路線に戻るとの確信がある。


オバマのアジア回帰路線は明らかに口先だけではなく本気であることを物語っている。その締めくくりが日米豪首脳会談であろう。


同会談では中国の軍事的な台頭によるアジア太平洋地域情勢の変化に対応し、安全保障分野を含めた連携を強化する方針を確認した。三か国は合同軍事演習などで安全保障上の結びつきを強める。日豪は潜水艦共同開発など準同盟的な色彩を一層強めた。


米国はウクライナ問題、イスラム国対策など中東・ヨーロッパでの対応を迫られており、二正面、三正面作戦を強いられているが、基本はリバランスにあることが鮮明となった。


オバマは首相・安倍晋三の対中関係、日韓関係是正の動きを歓迎しているが、これは日中が「予期せぬ軍事衝突」を起こして、介入せざるを得なくなることを危惧(きぐ)したものであろう。


基本はリバランスにあり、その路線を推進するためにも、同盟国には「コントロールされた中国との対峙」の維持を求めたいのであろう。安倍にとっては、外交・経済で対中緊張緩和を取りつつ、安保では米・豪との結びつきを強め、フィリピン、ベトナムへの軍事支援などを推進してゆくことになろう。


オバマ発言は安倍の地球儀俯瞰外交の路線とも合致することが証明され、今後も継続が期待されるところであろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月14日

◆選挙対策は珊瑚密漁への自衛艦出動だ

杉浦 正章




海上警備行動を発令して海賊を一網打尽にせよ
 


解散を決意した首相・安倍晋三は自ら最悪の経済状況をテーマに総選挙に臨むという大誤算をしようとしている。選挙の政策論争にあえて消費増税延期という経済マターを掲げるという不利な選択をしようとしているのだ。


折から17日に発表される国内総生産(GDP)速報値は目も当てられない数値が予想されており、野党は金看板のアベノミクスの失敗と位置づけ攻勢をかける。まさに政策上は四面楚歌の選挙になりかねない情勢だ。しかしただ一つ隘路がある。


それは中国漁船による珊瑚密漁事件に対処することだ。自衛隊法82条の「海上警備行動」を閣議決定し、自衛艦を派遣して根こそぎ拿捕して、取り調べるのだ。それくらいの作戦は現行法で十分可能だ。これしか自民党が選挙に勝つ方法はない。
 

解散を決断した以上全ては選挙戦略をどう展開するかに移行する。安倍が考えているのは消費増税の3党合意を延期するのだから、その是非を問うというものだが、これは素人でも考えつかない愚策だ。野党にわざわざ弱い脇腹をさらして、「刺してくれ」と言っているようなものだ。


なぜなら、庶民の感覚では「延期」は当然であり、誰も褒めそやすテーマではない。逆にアベノミクスの真価を問う選挙戦に突入してしまう。アベノミクスはデフレ脱却の妙手として国民の喝采を浴びたが、4月の増税は明らかにこれに水を差している。


17日のGDP速報値発表に先立って民間の日本経済研究センターが発表した7〜9月期のGDP予測は実質で2.47%。14年度の成長率は実質平均で0.18%と辛うじてプラスを維持するに到っている。選挙戦になれば野党は増税延期を逆手にとって確実にアベノミクスの失敗と捉えて宣伝する。


受けて立つ安倍は実質賃金の低下であえぐ一般国民を前にして説得力のある経済対策を提示しにくい。言い訳になってしまう選挙は必ず敗北する。経済問題は選挙のテーマになる状況ではないのだ。


一方で安倍の成功している分野は外交・安保だ。中国の尖閣侵犯に対する毅然とした対応、米国、豪州、アジア諸国との中国封じ込め路線は多くの国民の支持を受けている。支持率が高いのも中国、韓国、北朝鮮が存在するおかげだ。


しかし珊瑚密漁事件に関してはあ然とするほど有効な手を打っていない。シリア、アフガニスタンで「何も出来ないオバマ」が中間選挙で大敗したが、日本でも全く同じで「何も出来ない安倍」が珊瑚事件で露呈している。明確なる領海侵犯、明確なる窃盗行為がそこにあるのに手をこまねいている。


おそらく中国国家主席・習近平との会談に向けて慎重行動を取ったのであろうが、習は仏頂面で出迎えて、会談時間は通訳を入れればわずか10数分。元米国務副長官・アーミテージから「2人の首脳の表情は互いの靴下の臭いを嗅ぎ合っているようだった」とやゆされた。


アーミテージは「戦後70年の来年は中国にとって逃すことのできない(日本批判の)好機で、あと数年、日中関係は大きくは改善しない。会談を過大評価すべきでない」と述べたがもっともだ。やらないよりましの会談であったというくらいの評価しか出来まい。


珊瑚密漁に関しては度重なる外交的な要求にもかかわらず中国は有効な手段を講ぜず、密漁を放置。13日は117隻が密漁を行っている。安倍はまるで若年性のぼけが発生したかのように何も出来ないままだ。おそらくあの民主党政権でも拿捕の実力行使に出たであろうが、安倍は手をこまねいている。


打つ手はないのか、処置なしなのか。そうではない。現行法でも十分な対処が出来る。それは海上保安庁の対応能力を超えていると判断されたときに、防衛相の命令により発令する自衛隊の海上における治安維持のための海上警備行動である。


既にソマリア沖の海賊の海賊行為から付近を航行する船舶を護衛する目的で行われている。1999年「能登半島沖不審船事件」に際し、初めて発動された。防衛相が海上警備行動の発令を決断すれば可能となる。実際に珊瑚密漁の海賊船は海上保安庁では船舶の不足もあって対処しきれない。


地方創生相・石破茂が「ソマリア沖でやっていることであり、国内で出来ないことでは全くない。海上自衛隊の船に海上保安官を乗せて警察権を執行することは今すぐにでも出来る」と発言している。今すぐにも出来るのならやらない手はない。


自民・公明両党は、外国人による日本領海内や排他的経済水域(EEZ)内での違法操業に対する罰則を強化する関連法案を今国会に提出する方針だが、これこそ「泥棒を見て縄をなう」そのものだ。


経済問題で苦戦を強いられることが必至の選挙戦を、海上警備行動の発令で中国の「海賊」を一網打尽にして、国民の喝采を受けるのだ。 P-3C 哨戒機もフルに活用して、胸のすくような海賊対策をするのだ。


国際世論も国務省の報道官・サキが12日の記者会見で中国の密漁放置を「違法な行為はサンゴを含む多様な種(の存続)を脅かす」と批判。「米国は(野生生物の)有害な取引を撲滅するため、2国間・多国間の枠組みで友好国と協力して取り組んでいく」と述べている。


国務省はおそらく日本の無策にあきれているのだろう。日本政府が「海賊」を一網打尽にして批判する国はどこにもあるまい。通常普通の国が行う普通の警察活動に他ならないからだ。


中国は密漁の弱みがあり、日本政府を批判することは出来ない。中国は意図するかしないかは別として「何も出来ない安倍」を試しているのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)