2014年11月12日

◆大義なき自己都合解散に反対する

杉浦 正章




党利党略の「安倍ポピュリズム」では勝てない
 

あれよあれよという間に、政局が「無謀なる解散」へと突き進んでいる。それも消費増税の先送りが選挙にプラスに作用するという誤判断が根底にある。


そもそも国民が望んでいるのはアベノミクスの一刻も早い成功とデフレ脱却であり、そのための増税先送りなのだ。首相・安倍晋三はそれを無視して、野党の態勢が整っていないのをこれ幸いに、議席確保のためだけの党利党略で解散を断行、これが大向こううけするとでも思っているのだろうか。


思っているとすればポピュリズムも極まる。予言しておく。確実に有権者のしっぺ返しを食らう。


自民党は「反民主党政権の嵐」に支えられて2年前の総選挙で圧勝、現在294議席を確保しているが、これは目一杯の数字である。「大義なきき自己都合解散」では20〜30議席は減少する。議席を減らした首相が来年の自民党総裁選で再選されるだろうか。確実に政権は弱体化する選択であることが分かっていない。


そもそも解散権を持つ唯一の政治家は安倍であり、安倍が不在の間にまるで「解散クーデター」のような、報道が続いている。問題は安倍ががなぜこれに両手を広げてストップをかけないかである。11日の記者会見はこの流れを止める絶好のチャンスであったが、否定のトーンがまるで弱いのである。


その内容は「解散のタイミングについて私は何ら決めていない。国内では憶測に基づいた報道があると聞いているが、それに答えることはしない。私は解散について言及したことは一度もない」だ。


外遊前は「考えていない」と全面否定だったが、「決めていない」にトーンを落とした。「言及したことは一度もない」とはまるで“他人事”であり、止める気があるならこの言葉は使わない。


この背景には、安倍とその側近の間で謀略があるとしか思えない。謀略とは安倍の外遊中に解散風を吹かせるだけ吹かして、帰国したらすぐ解散できるようにしておくというものであろう。繰り返すが解散の大権は首相にあり、その承諾なくして「官邸筋」が大うちわで煽るような発言をするわけがないのだ。


首相が完全否定すれば止められたがその最後のチャンスが11日であった。これでは解散風はいよいよ高まり、帰国する17日には各党も選挙態勢が整い、本会議で「解散バンザイ」をするだけとなっているだろう。


この安倍の「奇襲解散」は、その根幹において大きな誤算がある。まず第一の誤算は増税先送りまたは3党合意の解消が、解散の大義にはならないことだ。延期が有権者うけするというのは誤算である。


残念ながら日本の有権者はそれほどレベルが低くない。むしろアベノミクス隠しと受け取るだろう。なぜなら増税先送りは、紛れもなく成否が正念場を迎えたアベノミクスを成功に導きデフレからの脱却を図るためのものであるからだ。


それを唐突にも選挙に“転用”しようとしているのだから、国民が見抜けないわけがない。アベノミクスの正念場に解散・総選挙で2か月の政治空白を作って、しかも予算編成に支障を来すことが政権トップのやることであろうか。


だいいち増税先送りは消費増税の付則に景気条項があり首相判断でできることになっている。官邸には自民党内の反対派を押さえつけるためという説があるが、それこそ首相自身がリーダーシップを発揮して説得すべき仕事であり、反対派の寝首をかくような解散で対処することでもあるまい。


今のまま選挙に突入すれば、増税延期派と実施派が分裂選挙となり、結局延期派が有利な選挙を展開できるだろう。当選してきた増税派は恨み骨髄に徹して党内は政権抗争ムードが横溢する可能性がある。側近らはさらなる4年の長期政権が確保出来るという甘い判断があるが、逆に政権基盤は揺らぐのだ。


総選挙で勝利すれば増税派も首相に従わざるを得なくなるというが、これは支持率への過信だ。小選挙区制になってから国政選挙は「風」によって左右されるのであり、無党派層が増加していることを見逃している。


さらに野党の選挙準備が出来ていないのがチャンスという主張がある。これも解散の大権を党利党略のためにのみ使うという自己都合だけが目立つ。国民から「解散で信を問え」という声はゼロであり、無理矢理選挙を押しつけられた有権者が、自民党に投票するという根拠はない。


むしろ、まやかしを感じ野党の「アベノミクス隠し」の主張の方が説得力を生じさせる可能性がある。自民党にとって不利に働く原発再稼働や集団的自衛権の行使も争点化することは避けられない。これらの論議が生ずる前に解散をすると言うが、これもまっとうな政治判断ではない。むしろ卑しい。


とりわけ集団的自衛権法制はその成否が解散に直結しうる問題であり、情勢によっては再度解散に追い込まれる事だってあり得る。アベノミクスの失敗も解散に追い込まれる要因だ。すぐにまた解散という可能性もあることが分かっていない。


かねてから述べているが、294議席は天が与えた僥倖(ぎょうこう)であり、首相たるものこれを安易に毀損してはならないのだ。300議席近く取った政権は、次の選挙では確実に票を減らす。おそらくよくて270台がいいところであり、風によっては250〜260台にまで落ちる可能性がある。そうなれば9月の総裁選挙への影響は避けられない。


要するに政局を展望すればするほど、戦後政治史上まれな馬鹿げた解散をするものだということになるのだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月11日

◆経済、文化先行型で協調を積み上げる

杉浦 正章




中国の膨張路線に力の均衡は崩せない
 

工場の操業停止と自動車乗り入れ規制で北京に青空が戻ったが、これもつかの間、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の外国要人が去った13日からは毒ガスPM2.5の世界に逆戻りする。土砂降りだった日中関係も首脳会談を契機に青空が垣間見えるが、これもつかの間いつ暴風雨が到来するかは予測できない。


不測の事態回避の海上連絡メカニズムは、まだ不測の事態が起こり得るから合意したのだ。つかの間の晴れ間を戦略的互恵の本格的晴天に移行させるのは、両国のさらなる努力が必要だが、基本的には中国国家主席・習近平が力による現状変更路線を転換するかどうかに全てがかかっている。


5か月前に筆者が「APECにおける日中首脳会談説」を唱え始めたのは、ごくわずかな兆候がきっかけだ。それは習近平が「APEC主催に向けて北京市にオリンピック並みの整備を命じた」とするベタ記事だ。それほど重視する国際会議を開催する以上、対日関係をそのままに出来ないと見抜いたからだ。


事実オープンセレモニーを見れば、まるでにわか成金が、来客を歓待するかのようなけばけばしい演出が展開されている。そして習は歴代皇帝のごとく朝貢する来賓を出迎え、これを放映させた。中国国民は「どんなもんだい」と大国意識をくすぐられる。


そして習の地位はいよいよ固まる。その一環から見れば、首相・安倍晋三との会談冒頭の横柄な態度もなるほどと分かる。これまで先頭に立って反日を煽(あお)った習にしてみれば、にこやかに出迎えることは国民を裏切ることになる。


だから習は安倍がきっと話しかけてくるから、シカトしてやろうと心に決めて臨んだに違いない。逆に朴槿恵とオバマと会った際はこんなお愛想顔が、その仏頂面のどこから出てきたのかと思うほどにこやかであった。アウェイでの勝負だから、安倍もこれくらいは我慢するしかない。


しかし、習の態度も表向きの話で、実際の会談はたったの25分間、通訳の時間を差し引けば10分そこそこだったが、紳士的な雰囲気の中で行われたという。内容がつまったものだったが、これは両者が事前に決めた発言内用に沿って話し合った結果だろう。筋書き通りに話し合わなければ出来るものではない。


海上連絡メカニズムの推進が中心になることは予想したとおりだった。


予想外だったのは安倍の「中国の平和的な発展は国際社会と日本にとって好機だ」という発言。明らかに習が首脳会談の眼目の一つとして重視している日中経済関係再構築への期待を読み取っての発言だ。案の定習は「中国の平和的発展は好機だという安倍首相の発言を重視している」と乗ってきた。


日中経済関係は「政冷経熱」どころか、対中投資が43%も減少「政経結氷」となっている。これがGDPを直撃しており、習にしてみれば対日改善事項では最優先課題であろう。


日中関係改善の糸口は真冬の経済に春風を吹かすことにあるのだろう。もっとも対中投資がおいそれと戻るかと言えば、企業がチャイナリスクを感じていることに加えて、人件費の高騰という構造要因があり、一朝一夕には無理だろう。


ここは中断している経済閣僚による日中ハイレベル経済対話を復活させるなど、1歩1歩前進させていくしかあるまい。北京の空を恒常的に晴天にするための環境技術の提供も、一般市民レベルの対日感情好転につなげられる要素だ。


問題なのは政治・安保の側面だ。東・南シナ海で力による現状変更を目指し、無謀なる軍拡路線を拡大し続ける中国にその路線を転換させられるかどうかだが、極めて困難と見るしかあるまい。


尖閣諸島への公船の領海侵犯は既成事実化の魂胆が丸見えであり、頻度は少なくなってもやめないだろう。一方的に敷いた防空識別圏の設定も解消することはあるまい。来年は「抗日戦争勝利70周年記念」で様々な行事が予定されており、歴史認識に照準を当てた動きが生ずることは必至とみなければなるまい。


しかし注目すべき動きもある。習と朴槿恵が10日、日中韓3か国の協力を進めるため、日中韓外相会談を年内に開催することが必要との認識で一致したことだ。これが中断している日中韓首脳会談につなげられれば、大きな動きになる可能性がある。


同首脳会談は2008年から2012年まで年に一度開催されていたが、尖閣国有化で途絶えたままとなっている。要するに日中首脳会談は関係改善への一歩を踏み出したに過ぎない。


安倍はこれまで通り、日米同盟の強化を進め、アジア各国との連携で中国封じ込めの政策を維持せざるを得ない。力の均衡を崩してはなるまい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月10日

◆日中合意文書は6対4で日本判定勝ち

杉浦 正章  




事実上の尖閣先送りで長期化へ
  

尖閣問題についてケ小平は将来の対立を恐れて棚上げとしたが、日中両国はその対立と軍事衝突の危機を現実に直面して問題を「解決しない解決」とした。つまり「先送り」である。


首脳会談では「先送り」することを関係改善の糸口とする選択肢をつかみつつある。その意味で首脳会談に先立って発表された合意文書は首相・安倍晋三と中国国家主席・習近平が衝突回避でぎりぎりの選択をしたことになる。


内容を分析すれば、中国側の固執した「領有権」と「靖国参拝」の文字が入っておらず、習がよく認めたと思える内容だ。


習は当面日本とのいざこざがアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に波及することを避けた形だ。玉虫色の外交修辞学が発揮された結果、今後両国で解釈の違いが顕著になる可能性があるが、「領有権」と「靖国参拝」の文字を回避しただけで6対4で日本側が判定勝ちだ。


合意文書についてはあまりにも玉虫色であるため、当初の報道では十分咀嚼(そしゃく)し切れていない。


焦点は第2項と第3項にある。第2項は「双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた」であり、いわば歴史認識条項である。


3項は「双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた」で尖閣条項である。


まずこの玉虫色を焦点の尖閣条項から解きほぐすと、ポイントは「尖閣諸島で近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し」をどう解釈するかだ。中国側の従来の主張は「尖閣諸島の領有権問題の存在を認めたうえで棚上げすべきだ」であった。


これに対して日本側は「日本固有の領土であり領有権は存在しない」の一点張りであった。なぜ妥協文が成立したかといえば日中で解釈が異なる修辞技術があるからだ。中国側は「尖閣諸島で異なる見解」と解釈でき、日本が領有権問題の存在を認めたと解釈できる。日本側は「緊張状態の発生で異なる見解」と解釈するのだ。


これは首相・安倍晋三が「日本としては領海に公船がはいってきていること、中国側には中国側の考えがあり、そのファクトを書き込んだ」と事実関係を書いただけとの解釈をしていることからもうかがえる。


中国側は人民日報が「始めて文字による明確な合意」と報じて、領土問題の存在を日本側が認めたとの「官製解釈」を請け売りしている。習にしてみればそう解釈しなければ対日強硬派の突き上げを食らいかねないからである。


一方で靖国問題について中国は、最後まで「安倍首相自身が参拝しないと確約すること」を会談の条件とした。しかし安倍は交渉担当者に「絶対譲るな」と指示して靖国の言葉を入れさせなかった。


2項目目を要約すれば「歴史を直視し、未来志向で政治的困難を克服」するのであり、中国側は「政治的困難克服」は靖国参拝を指すと解釈する。これに対して安倍は「(靖国参拝という)個別の問題を含むものでは全くない」と全面否定している。


しかし交渉の過程を想像すれば完全否定は出来まい。なぜなら交渉では靖国問題をどうするかがテーマとして話し合われ、中国側が靖国神社の固有名詞に固執し、日本がこれを拒否するというやりとりの中で出てきた玉虫化の修辞技術であるからだ。


当然中国側は靖国問題であると指摘することができる。しかし、靖国の言葉は入っておらず、時間の経過と共に外交文書は状況など考慮されない解釈が確立するから、中国側にとっては不利な条項となった。


安倍が在任中は参拝しないことは政治的にも外交的にも常識化しており、その方針は内々中国側に伝わっているから妥協に到ったのであろう。


文中の「若干の認識の一致」も変な表現だと思ったら、日本語では若干は「少しばかり」のマイナスイメージだが、中国語では「幾つか,幾らか」のプラスイメージだ。これも修辞技術が発揮された欺瞞であり、日米共同声明などでもよく使われる手だ。


玉虫色の外交文書というのは、両国の力関係によって解釈が一変してしまうものである。従って安倍が賢明にも維持してきた日米安保体制の維持強化とアジア各国とによる中国包囲網への動きは維持せざるを得ないだろう。


力の均衡がもたらした合意文書なのであり、日本が油断すれば紙くず同様となる。日本は国力を充実させて隙を作ってはならない。


過去に条約ですら破棄された例もある。第2次大戦末期に息も絶え絶えの日本に対してソ連が日ソ中立条約を破棄して北方領土へと侵攻したことを忘れてはならない。息も絶え絶えになれば、隣国は蹂躙(じゅうりんしてくるのだ。海上連絡メカニズムなどは必要ではあるが、油断大敵なのである。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月07日

◆安倍は尖閣、靖国で譲歩する必要無い

杉浦 正章
 



珊瑚密漁は中国反体制派の策謀か


どうも中国は時代錯誤の朝貢外交「皇帝が会ってつかわす」の伝統に戻ったような気がする。周辺国が貢ぎ物を捧げる代わりに、中国皇帝は安全を保障し莫大(ばくだい)な賞賜(しょうし)を与えるような姿だ。


その意味で日本はまるで東夷(とうい)とみなされかかっている。日本の報道もそのペースに巻き込まれて、愚かだ。最も愚かなのはNHKで「中国側は、首脳会談に応じるかどうか明確にしていません」とやっている。問題のとらえ方は「中国が応じる」のではない、全く逆だ。


会談の必要を感じているのは中国側であることが分かっていない。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を成功裏に終わらせたいのは中国国家主席・習近平であり、そのための「軟化」は既に半年前から始まっている。


習が愕然としたのは5月のシャングリラ会議だ。地球俯瞰外交が成功して、力による現状変更を批判した首相・安倍晋三の主張に、ASEAN諸国や米国が同調、中国は完全に孤立した苦い経験がその教訓となっている。同じ事をAPECでやられることを何が何でも回避したいのが中国だ。


だから南沙諸島や尖閣諸島での刺激的行動を控えているのだ。とりわけ9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に当たって、習は「中国政府と人民は中日関係の長期的な安定と発展を望んでいる」と言明、これが大きなきっかけとなって、日本側もAPECにおける首脳会談に向けて本格的に動き出したのだ。
 

ところがこれに「日本が引っかかった」と見た中国側はまるで「会ってやる」の傲慢なる朝貢外交に変わり、無理難題を持ちかけるようになったのだ。


焦点の靖国問題では、福田康夫は7月の習との会談で暗に安倍が靖国参拝をもう行わないであろうとの見通しを説明している。これに先立つ自民党副総裁・高村正彦の訪中でも、安倍のさらなる靖国参拝を否定している。


それにもかかわらず中国側は「首脳会談をやるなら安倍自身が参拝しないと明言する」ように裏で主張し始めたのだ。安倍にしてみれば、靖国参拝は精神の領域の問題であり、外交問題ではない。「私は在任中行きません」などという屈辱的な発言が出来るわけがない。


尖閣諸島の領有権問題の存在も、日本が実効支配している以上譲れる訳がない。


こうして国家安全保障局長・谷内正太郎が6日訪中して、ぎりぎりの詰めを行うことになった。筆者は以前から領土問題は先送りという「解決しない解決しかない」として、万一の衝突を避ける海上連絡メカニズムで首脳同志が一致すれば十分だと主張してきたが、その対応が一番よい。


儀礼に毛が生えた程度でも会うこと自体が両国関係にとってプラスであり、下手な譲歩をして将来に禍根を残してはならない。安倍を無視するかのように習近平は中間選挙大敗のオバマを「買い」に出ようとしている。


長時間の会談はもちろん、あらゆる趣向を尽くしてもてなし、駐米中国大使は「サープライズまで用意している」という。米国内で相手にされないオバマを「落ち目買い」で恩を売って、伝統行事の日米分断を図ろうとしている。


見え透いた田舎の村長のような心理作戦だ。安倍は構ったことはない、シャングリラ会議と同様に力による現状変更を是認しない方針を首脳会議で堂々と主張して、中国の膨張主義への批判の先頭に立てばよい。


さらなる弱みが習近平にある。最近の宝石珊瑚密漁事件について日本の右翼の間では中国政府の息がかかっているというもっともらしい主張が強い。評論家・桜井よしこがテレビで燃料代300万もかけて2000キロもやってくるわけがないと強調「政治的な背景がある」などと勝手な断定をしているが、単純すぎて噴飯物だ。


中国でAPECをにらんだ反習近平派の政権揺さぶりの動きが生じていることを見逃している。香港の民主化要求デモの背後に中国反体制派の影があるのは常識である。どうも普通なら正面から批判する安倍が大人しいし、台風での漁船の一時領海内への避難を認めたりして対応が優しいと思ったら、理由がある。


日中外交筋によれば珊瑚事件も香港のケースと類似して、反体制派が反日団体を使って、漁民を駆り立てている大陰謀の可能性が強いというのだ。反体制派は日本を使って習体制を揺さぶろうとしているのだ。安倍も官房長官・菅義偉も慎重なのはその手に乗ってはならないからではないか。
 

珊瑚はバブルの象徴で投機の対象になっている。漁民に珊瑚を見せびらかせて「日本近海にいっぱいある。儲かるよ」と持ちかければ、もともと武装訓練まで受けた海賊のような漁民はすぐ扇動される。


確かにAPEC直前になって習がなによりも大事な会議の成功を毀損するような動きに出るわけがない。その証拠には中国外務省の対応も珍しく「猫撫で声」なのだ。副報道官・洪磊は最近2度にわたって日中協力を口にした。「日中お互いの法執行機関が良好な協力を行い、問題を適切に解決して欲しい」なのだそうだ。


「協力」とは「泥棒では世間体が悪いからAPECで発言しないよう協力してくれ」ということでもある。


しかし安倍は「協力」するのは考え物だ。珊瑚事件で問われているのは習の統治能力であり、習近平体制はAPECを前にして極めてまずい内情をさらけ出しているのだ。珊瑚事件は他人の家に忍び込んで300年物の盆栽を盗むと同じ窃盗行為であり、安倍は遺憾の意を表明、早期に統治能力を発揮するよう指摘して当然だ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月06日

◆共和党圧勝は安倍外交・安保にプラス

杉浦 正章



TPPは牛・豚肉で厳しい局面も


政府関係者もマスコミも「日米関係に変化はない」の大合唱だが、変化を予知する能力がないから変化がないといっているのだろうか。


米上下両院での共和党圧勝は日米関係にも変化をもたらすのである。まず首相・安倍晋三路線にとってのプラスは日米外交・安保関係にある。議会で伝統的に対中強硬路線を取る共和党が多数を占めた結果、これがオバマの対中外交に影響を及ぼさざるを得ないということだ。


アジア・太平洋での同盟関係には強化へと作用する。マイナスは共和党は農林関係者の支持層が厚く、牛・豚肉の関税などをめぐって環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でオバマの対日妥協をけん制する動きが出る可能性があることだ。外交は微妙な変化でもこれを予感する能力がないと方向を誤る。民主党大敗は紛れもなくオバマの大敗であり、日米関係にも影響は不可避なのだ。


まずオバマと議会との関係は、2年後の大統領選挙に向けて次第に対決色を増して行くと予想される。民主党は国務長官を務めたヒラリー・クリントンが「一強」のまま選挙まで続くことが予想され、オバマはクリントンとの盟友関係を折に触れて発揮してゆかざるを得ないものとみられる。


共和党が議会両院で多数を占めた結果、議会におけるねじれは解消したが、大統領府とのねじれは一段と深刻化した。


過去の大統領で議会の作る法案に最も多くのveto(拒否権)を発動した大統領はフランクリン・ルーズベルトで何と635回に達している。大統領はvetoで議会の影響を払いのけようとするが、議会はこのvetoを覆す3分の2の多数による再可決overrideでさらなる対抗が可能だ。


筆者がワシントン特派員時代に、ニクソンと議会の間でこの鋭い対決がありニクソンが負けている。泥沼化したベトナム戦争を背景に戦争での議会の権限を強める戦争権限法案で議会が勝ったのだ。


議会と大統領府のねじれはクリントンが1994年の中間選挙以来そうであったし、2006年以降のブッシュ政権もねじれていた。クリントンは早々に議会との妥協に動いて成果を上げている。従って珍しい事でもない。


さらに喫緊の課題は狂気のテロリスト組織イスラム国への対応だ。オバマの残る2年の任期において、これだけはレームダックでは済まされない事態だ。放置すれば批判はオバマにかかってくる。空爆だけで対応できる可能性は少なく、壊滅させるには地上軍の投入が不可欠になる可能性もある。


共和党はさらなる関与を主張しており、地上軍投入となれば当然日本にも何らかの貢献の要請が生ずることはあり得る。安倍は集団的自衛権の行使がらみでの参加は完全否定しているが、後方支援の必要が出る可能性はある。
 

内政ではオバマの推進する医療保険制度改革、いわゆるオバマケアで共和党が反対の姿勢を強めている。オバマケアつぶしの法案が提出される可能性があり、妥協が成立しなければvetoを行使せざるを得なくなるかも知れない。


オバマは議会の影響を直接的に受ける内政よりも、外交・安保でレームダック化の是正に動く可能性が高い。


さっそく登場する外交課題は10日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)における米中首脳会談だ。APEC成功を極めて重視する習近平が、よもやオバマの足元を見透かすような露骨な対応に出ることは予想されないが、底流にオバマ軽視の姿勢があっても不思議はない。


一方で共和党にはかねてから中国によるサイバー攻撃への批判を軸に対中批判が強く、対中強硬政策への注文が強まりこそすれ弱まることはあるまい。
 

ともすれば中国に傾斜していたオバマは、尖閣諸島や南沙諸島の中国進出という現実を前に日米豪を軸とするリバランス・対中抑止路線を取らざるを得ない状況に置かれた。その中での共和党圧勝は習近平に対して“甘い顔”がさらに許されなくなった事を意味している。


日米外交・安保面ではオバマがレームダック化しても事実上のナンバー2に近い立場の国務長官・ケリーや 国防長官・ヘーゲルとの関係はかつてなく良好な状況にある。集団的自衛権の行使を前提にした新日米防衛協力の指針(ガイドライン)などの作成作業に支障を来すことはあるまい。むしろ共和党圧勝は安倍の目指す日米基軸外交の外交・安保路線を後押しをするものとなろう。


安倍は9日から9日間の日程で、中国で開かれるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議、ミャンマーで開かれるASEAN=東南アジア諸国連合の関連首脳会議、オーストラリアで開かれるG20サミットに出席する。


日米豪3国は豪州のブリスベーンで15、16両日に開かれるG20の場で首脳会談が開催されることになっているが、オバマにとってアジア太平洋での同盟関係再構築の場となろう。またこれら国際会議の合間を縫って日米首脳会談が開催され関係強化を確認することになろう。


TPP交渉に関しては総じて共和党は推進論だ。しかし個別分野では厳しい局面が生ずるかも知れない。


共和党は自由貿易主義者は多いが、農業団体関係者も多い。とりわけ焦点の牛・豚肉分野の輸入関税に関しては共和党は業界の支援を受けている。8月には共和党の下院議員らがオバマに対して書簡を送り日本の農産物市場の大幅開放を要求している。大統領がより厳しい対応を迫られる可能性は十分にある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月05日

◆政局の象を有識者の「群盲」が評する

杉浦 正章



延期反対論はTVコメンテーターと同じ


世に言う有識者なる人々は、政治の専門家であろうか。政局を理解している人なのであろうか。否、紛れもなく素人である。


一方で消費再増税は、経済マターであろうか。それとも政局であろうか。紛れもなく政局である。


なぜなら過去の首相は竹下登も橋本龍太郎も消費税でつぶれた。その政局の「象」を、言っては悪いが「群盲」がなでて評するようなものが4日始まった有識者点検会合である。


政局を知り尽くした首相・安倍晋三が「政局運営をどうしましょう」と聞いているのと同じだ。政治度外視のご意見を拝聴して、それを判断材料にするのだから、民主主義は手間暇かかる。もっとも実態は12月の首相判断までの時間稼ぎだから、仕方がないと言えば仕方がない。


そこで初会合における延期反対の発言を見れば、テレビのコメンテーターの域を出ない。8人中5人が反対したが「政治コストが高い」はコメンテーターが毎日しゃべっていること。引き上げ実施で解散・総選挙に追い込まれる方が政治コストは格段に高いことを知らない。


「先延ばしのリスクの方が引き上げのリスクより高い」は、引き上げがアベノミクスを直撃して政権基盤そのものを揺るがすことを知らない。「3党合意で粛々と」は思考停止。「実施して経済対策を」は、5兆円の税収で5兆円の補正を組むなら先延ばししても同じ。今後、この種のひらめきのない主張を安倍が延々と聞くのかと思うと可哀想になる。


それにつけても日銀総裁の黒田東彦は「おぬしも悪よノウ」と言いたい。何としてでも増税延期を阻止しようと、際どさ極まりない金融追加緩和に打って出た。


このまま株高を定着させるほど、海外の投資家も甘くはあるまい。「劇薬」が逆効果となるリスクを日銀が抱え込んだのだ。おそらく円安、株高も一過性で、実態経済には反映していかないだろう。


昔竹下登は消費増税に際して「歌手1年、総理2年の使い捨て」と述べたものだが、消費税とはそれほど政権にとって負担の重いものであるのだ。要するに首相にとって政治生命をかけたものである。


だから竹下は「1内閣1仕事」とも述べた。1回増税するだけで首相としての役目は終わると言うことだ。それにもかかわらず安倍は2回の増税を強いられている。それも当時の首相・野田佳彦と自民党総裁・谷垣禎一が1内閣で2度にわたって増税という制度設計上の大誤算をしたのが原因である。


谷垣は自分は次には首相になれそうもないから、次の首相に全てを負わせて、そのダメージの上に首相を狙うという長期迂回作戦を取ったのかと勘ぐりたくなる。


だいたい世論調査では、最初の8%への増税で5割が理解を示した国民も、10%への増税は「悪乗りしないでくれ」と言っているのに等しい。7〜8割が再増税反対なのである。7〜8割という数字は国民の全てが反対と言っているのと同じだ。


その反対を押し切って増税したらどうなる。竹下は3%まで支持率が落ち、政権を手放した。安倍の高支持率は中国と韓国の「理不尽」に支えられているところが大きいが、これも長続きする話ではない。いずれは隣国との関係を良好なものにしなければならないのである。
 

要するに増税判断は支持率を急速に下げる可能性が高いのだ。支持率が下がって総選挙になれば、まさに僥倖(ぎょうこう)であった衆院294の議席を大幅に減らさなければならないのだ。それでは今後の政局展望との絡みで消費増税を見るとどうなるかだ。


まず最初にダメージを受けるのがデフレ脱却を目指すアベノミクスの崩壊である。安倍政権にとって何より重要なのは、表看板のアベノミクスの成功であるが、再増税判断は消費の低迷と実質所得の減少、税収の大幅減で、デフレ経済への逆行がほぼ確実である。


安倍の言う「税収が減少しては元も子もなくなる」という状態を招くのだ。あらゆる経済指標が判断材料の7−9月のGDPの悪化を予想させるものである。当初の予想通り4%の回復などは夢のまた夢であり、プラスは確実でもせいぜい1%程度がいいところだと見られている。
 

さらに、日程的に政局を見るとまず再増税した場合は15年10月1日が実施となる。1年半延期した場合は17年4月1日の実施だ。この1年半の延期は政権運営にとって決定的な要因として作用する。


まず12年暮れの衆院選後2年も経過すれば政局運営の最大のカギは解散をいつにするかである。解散をほのめかしつつ、主導権を握るのが首相の役目だ。それが握れなくなる。野党は「再増税選挙」となれば願ってもないことであり、15年は焦点が解散に追い込むか追い込まれるかに移行してしまうのだ。


再増税しなければ総選挙の可能性は春の地方選挙との同日選挙、通常国会会期末の解散、夏の選挙。秋の臨時国会の解散、年末解散など大きなチャンスがあるが、15年10月の再増税実施はこの選択肢を極めて困難なものにする。


本来ならば16年の参院選挙とのダブル選挙を狙うのがベストの選択だが、この選択肢すら危ういものにする。要するに「アベノミクス失敗」の旗印を野党に与えてしまったら終わりなのだ。安倍の人気急落は15年9月の自民党総裁選挙までも流動化させかねない。対立候補が乱立し得るからだ。
 

これに対して1年半の延期、つまり17年4月の実施なら、それまで政局選択の自由を安倍が獲得できることになる。安倍はアベノミクスを成功させ、16年夏にはデフレ脱却を宣言できる可能性がある。デフレ脱却を旗印に衆参ダブル選挙を断行すれば長期政権は確実となる。1年半の延期で政局の舞台は暗転を避け、希望が見えてくるのだ。


今政局をやっているときではない。国民の期待は好むと好まざるとにかかわらず、アベノミクスの成功しかないのだ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月31日

◆自民党「傲慢二奉行」の増税論は欠陥

杉浦 正章



再増税の制度設計に誤りがある


30日の予算委員会の発言から見ると、どうも首相・安倍晋三の出す雰囲気が消費再増税延期の方向に棚引いているような気がする。財政再建目標が国際公約であることを否定、増税して景気が腰折れする懸念を表明するなどトーンに変化が見られる。


一方で自民党幹部らは、何かの一つ覚えのように再増税実施を強硬に唱えだした。その主張も傲岸不遜だ。とりわけ総務会長・二階俊博と税調会長・野田轂がひどい。「胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり」と述べた江戸時代の勘定奉行・神尾春央並みだ。


まるで庶民の窮状などはとんと念頭になく「傲慢二奉行」の様相。自民党幹事長・谷垣禎一も含めて、一体この人たちは「財務省イエスマン」で、肝心の選挙に勝てると思っているのだろうかと思いたくなる。


二奉行の発言を見ると、情け容赦などあればこそだ。野田は「リーマンショックに匹敵する経済変動があるわけではない。予定通り引き上げるのが“当然の姿”」なのだそうだ。一方二階は「国際的な信用にもかかわる。約束通り実行することが最重要政治課題」と言ってはばからない。


まるで古証文をたてに借金を取り立てる高利貸しの因業おやじのような口ぶりで、そこには4月の増税で実質賃金が目減りしてあえぐ庶民へのまなざしは感じられない。自民党も野党がだらしがないとここまで高姿勢になるかという見本だ。


総じて理論武装もなっていない。国際金融危機の引き金となったリーマンショックは100年か200年に一度おきるかどうかの事態であり、そんなものを引き合いに出して税調会長がよく務まると首を傾げる。


一方二階は国際的信用論をたてにする。1000兆に達した国債の暴落、債務不履行のデフォルトが発生すると言いたいのだろうが、これもあり得ない。


首相側近の官房参与・本田悦朗は「デフォルト論は嘘だ。日本の国債は海外の投資家から絶大の信用を受けている。確率を計算すればデフォルトは250年に一度くらいのリスクしかない。ロンドンとニューヨークの国際投資機関70社を回ったが、1社として危惧(きぐ)しているところはなかった。デフォルトを心配している専門家も皆無だ」と反論している。


財務省の“吹き込み”だけで理論武装してはいけない。また党執行部は、5兆円規模の補正予算の景気対策を増税と同時に打ち出す方針のようだが、本田は「2%の税収増で5兆円。5兆円増税して5兆円ばらまくなら延期するのと変わらない」と主張するがもっともだ。


この本田の理論武装は卓越しており、「財務省イエスマン」らのそれは到底及ばない。安倍の本田への信頼も厚く、8月の夏休みには山梨県内の別荘で5時間も話し込んでいる。その安倍が予算委で微妙なトーンの変化を見せている。


まず2015年にプライマリーバランスを半減させる国際公約が増税延期で果たせなくなる問題について「もともと国際公約とは違う。経済は生き物だから何が何でも絶対にという約束はない。日本としては最大限の努力をするというコミットメントでしかない」と固執しない方針を打ち出した。消費税の可否を判断するに当たってとらわれない柔軟さを強調したのだ。


さらに安倍は「消費税を増やして景気の腰折れを招いては、当然税収が落ち、デフレに逆戻りしてしまう危険性がある」とも強調した。再増税がデフレ脱却を目指すアベノミックスを直撃してしまっては元も子もなくなるという意味だ。


安倍周辺では、再増税しないことによるデフレ脱却を最優先する戦略を立てている。1年半延期して2017年4月実施への延期論の背景は、16年9月ごろにはデフレ脱却を宣言できるという読みがあるのだ。


再増税の可否の判断は7−9月の国内総生産(GDP)を見て行うが、その速報値は11月17日に出る。安倍は12月8日の改定値を見てから判断したいとしているが、数値が大幅に悪化した場合は改定値で好転する可能性は少なく、事実上速報値で判断せざるを得なくなる可能性がある。


この再増税方針は、12年に谷垣と首相・野田佳彦らがとりまとめた方針だが、一内閣で二度も増税が出来るのかどうかという政局判断が皆無の暗愚決定であった。つまり1年半後に再度増税をするという制度設計自体が間違っているのだ。


財務省の役人ペースに乗せられたのだ。辛うじて消費税法案付則に景気条項があることが救いである。安倍はこの景気条項を発動して少なくとも1年半延期に踏み切り、政局運営の自由度を確保すべきであろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月30日

◆ゴミスキャンダルにはブーメラン返し


杉浦 正章




枝野スキャンダルで泥仕合の様相


首相・安倍晋三も近ごろは「脅し」がうまくなった。さすがに首相だから露骨ではないが、よく考えると野党は怖くなるはずだ。


その脅しとは民主党幹事長・枝野幸男の後援会が平成23年分の政治資金収支報告書に新年会の会費収入を記載していなかったことに関して「これで撃ち方やめになればいい」という発言だ。これは裏を返せば民主党がいい加減に“ゴミスキャンダル”追及をやめないと、政府・自民党側も「狙い撃ち」するという意味に受け取れる。


先に書いたように政府筋は「うちわ程度の話は野党の方が多い。腐るほど握っている」と漏らしている。官房長官・菅義偉も「政治資金のあり方は、与野党を問わず個々の政治家が責任を自覚し、国民に不信を持たれないように常に襟を正すことが大事だ」と指摘、野党をけん制している。


これは民主党がくだらない追及で国会を空転させるなら泥仕合となり、かつての「ブーメラン政党」に逆戻りする事を意味する。


追及の急先鋒に立っていた枝野は、政治資金収支報告書に新年会の会費収入約243万円を記載していなかった問題に関して「あまりにも単純かつ軽率なミス」などという身勝手な説明で言い逃れようとしている。枝野自身がこれまで閣僚スキャンダルに関して「事務的なミスと言われてもはいそうですかとはいかない」と発言しており、おそらく内心じくじたるものがあるだろう。


「最終チェックでも気づかなかった」と述べるが、これは民主党が追及する閣僚も全く同じ理由がなり立つ。閣僚は皆「気が付かなかった」で済むことになる。


枝野を巡っては過去にも様々な政治資金上の問題が指摘されてきた。1996年の総選挙の際何と革マル傘下と言われるJR総連及びJR東労組の掲げる綱領を「理解し、連帯して活動する」ことを前提に、JR東労組から4年間にわたって総額404万円の資金提供を受けていたのだ。


その後予算委員会で答弁に立って「今後はJR総連・JR東労連から献金の申し出があっても断る」と発言している。また財務省所管の公益法人「印刷朝陽会」の理事の義父から毎年献金を受けていることが判明、「天下り法人理事から献金を受け取る不適切な関係」と週刊誌に書かれている。


そもそも民主党は「ブーメラン政党」と言われたほど政府・自民党からの逆襲を食らいやすい体質がある。


2004年には小泉内閣閣僚の年金未納問題を「未納3兄弟」などと追及していた菅直人本人が、1996年当時の所管大臣の厚相であったにも関わらず年金に未加入だったことが判明。代表を辞任し、お遍路に出た。


「小泉さんは兼職の疑いがある、国家公務員法違反だ」と追及した岡田克也は、公務員在職当時に実家の取締役を兼務していて公務員法違反を指摘された。小泉の年金未納を批判していた小沢一郎には不動産取得疑惑が浮上するといった具合だ。


「枝野ブーメラン」は他の幹部にも波及する可能性がある。抜け目のない小泉は、民主党のスキャンダルをいつでも引き出せるよう情報を常に確保して、国会運営に役立てた。


安倍は小泉内閣の官房副長官で後に抜擢されて幹事長を努めており、「民主党ブーメラン政党化」のノウハウは一番詳しい。したがって安倍が「撃ち方やめになればいい」という発言をすれば、それなりのすごみが生ずるのである。


枝野は「今後も閣僚を追及する」とめげずにやる気を示しているが、民主党国対委員長・川端達夫が「こうした話が出ると出はなをくじかれる」と嘆いているとおりだ。だいいち国民は民主党の姿勢を支持していない。世論調査の支持率は4〜5%で変化しない。


このところ女性2閣僚の辞任で負けが込んできた安倍政権だが、政権を握っているということは強い。全くくだらないスキャンダルを民主党が取り上げ続けるなら、安倍ノウハウを駆使して“ブーメラン倍返し”をするだけだ。


自民党国対委員長・佐藤勉が「枝野氏に問題があるのかもしれないが、追及していく気持ちにはなれない。


そろそろ落ち着いて議論すべきだ。政策で議論を戦わせるような国会に早くなってもらいたい」と「猫なで声」を駆けているが、刑事が犯人を落とすときによく使う一方で脅し、一方で慰める作戦だ。安倍は「誹謗中傷合戦になると、国民から見て美しくない」と述べているが、もういい加減に泥仕合はやめて、まっとうな国会論議に戻るべき時だ。


  <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月29日

◆ゴミスキャンダル解散などあり得ない

杉浦 正章




俗悪メディアは「魔女狩り」をやめよ


民主党が「すわ解散!」と喜んでいるそうだが、支持率4%でろくろく候補も立てられない政党が大丈夫かと心配になる。


こういう時には解散風が吹くとは思っていたが、案の定読売と毎日が早期解散説を書いた。読売が「自民に早期解散論」、毎日が「じわり解散ムード」だという。裏を見れば読売は野党に対する脅しのにおいがするし、毎日は「負けが少ないうちに」となにやら政局の本筋を逸脱している。


両紙は立派だが、そもそも最近の俗悪メディアの風潮は週刊誌やスポーツ紙、タブロイド紙、民放テレビやラジオの浅薄極まりないゴミスキャンダルあさりが盛んだ。特に顔が見えないことをいいことにラジオ評論家の言いたい放題は聞いている方が恥ずかしくなるほどレベルが低い。


これに野党が乗って、再びかつて十年間続いた盲目の政見揺さぶりの泥仕合に陥ろうとしている。揚げ句の果てが解散説となっているが、今解散総選挙で2か月の政治空白を作れるときだろうか。


一体この国の低級マスコミは世界を見る目を持たないのか。自民党政権が1年おきに交代し、揚げ句の果ては鳩山、菅による亡国の民主党政権へと導いてしまった過去をもう忘れたのか。鳩山が世界の嘲笑を買い、菅の判断がこともあろうに原発事故を悪化させてしまったように、くだらぬスキャンダルにうつつを抜かして、エボラ・パンデミックへの対応を誤ってもいいのか。


民主党政権は周辺国からまで舐められて、竹島や北方領土には韓国、ロシアの大統領が上陸、尖閣は隙あらばと中国に狙われる事態を招いたのだ。悪夢の時代を再来させている暇が今の日本にあるのか。


折から世界は、紛争が多発して激動期に突入、極東情勢もいつ変事が生じてもおかしくない状況だ。国民の期待はアベノミクスの成功にあることは論を待たない。国民の政治への期待は第一が経済、第二が安全保障だ。ゴミスキャンダルで政権が停滞することなど望んでいる国民はよほどのノーテンキに限られている。


その証拠に、小渕優子ら2閣僚が辞任した後の内閣支持率は、朝日は落ちると期待していたのだろうが、逆に上昇した。なんと3ポイント増の49%という結果が出た。読売も53%、日経48%、産経53%と50%前後の高支持率を維持しているのだ。


これが物語るものは国民の政治判断の成熟度であろう。国民の期待はくだらないゴミ箱あさりのスキャンダルにはなく、安倍政権の安定した政治・外交運営にあるのだ。麻生を識字率で辞めさせ、結果は民主党政権をもたらした愚を繰り返してはならないと思っているのだ。


こうした中での解散風にはなにやらうさんくささが伴う。読売は「消費税先送りを争点に、野党の態勢が整う前にやる」という説だが、そもそも消費税先送りが争点になるだろうか。遅れても1年半後には実施するのであって、選挙戦になれば民主党の「アベノミクスが失敗して先送りした」という主張の方に説得力が出てしまう。


親安倍派の読売のことだから、解散で脅して、ゴミスキャンダルムードに冷水をかけようとしているのかもしれない。毎日は自民党執行部に近い中堅議員が「再増税の判断を保留し、12月解散に踏み切ってはどうか」とつぶやいているそうだ。


また増税慎重派議員が「当面消費税を上げない」または「消費増税の見送り」を旗印にすれば、衆院選で国民の支持を得やすいと主張しているという。

中堅議員や陣笠に解散権があるわけでもないし、責任ある党首脳が主張しているわけでもない。ましてや安倍が漏らしているのでもない。そもそも「解散様」を陣笠代議士が弄んではいけない。


おりからアベノミクスは正念場にさしかかっている。ここで年末解散や正月解散に踏み切って、来年度予算編成やその成立に支障をもたらすようなことは、まず安倍の第1選択肢にはないだろう。


さすがに新聞も社説で「解散して信を問え」等という論調はない。ゴミスキャンダル解散などいくら何でも主張できないのだろう。


要するに安倍の右寄りの政権運営を批判したくてしょうがない左傾マスコミが、スキャンダルを逆手に江戸の敵を長崎で討とうとしているのが本質だ。魔女狩りは閣僚二人の辞任で十分だ。


3流メディアにそれを求めても、八百屋でたこをくれというようなものだろうが、せめて一流紙はゴミスキャンダルの追及をやっているときではない。安倍は衆院自民党294議席のパイをできる限り守らなければなるまい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月28日

◆イスラム国のエボラ自爆テロに警戒を

杉浦 正章




主要国首脳会談も必要ではないか


今主要国の諜報機関が血眼になってその活動を集中させているのが、イスラム国が目指している可能性の強い「エボラ自爆テロ」の動きだ。人間に感染させて狙いをつけた国の都市に潜入させて、エボラ出血熱の細菌をばらまく。まさに「人間細菌兵器」である。


最悪の場合は爆発感染・パンデミックへと発展しかねないローテク兵器である。世界の大都市は人間兵器に潜入されたらひとたまりもない。

バイオテロを想定したものかどうかは不明だが首相・安倍晋三は27日「今後、何が起きるか分からない。危機対応は盤石なものにする必要がある」と述べ関係閣僚会議の早期開催を指示。


同時にエボラ出血熱への対応は国の安全保障上の問題だとして、厚労相・塩崎恭久に国家安全保障会議に感染の広がりや政府の対応などを報告するよう指示した。


狂気の武装勢力イスラム国が、細菌兵器に関心を示す兆候は既に8月から見られた。米誌フォーリン・ポリシー電子版が、「イスラム国のシリア北部の拠点に残されたノートパソコンに、ペスト菌などを使った生物兵器の作製手順や実験方法が記された文書が保存されていた」と報じたのだ。


同誌は「イスラム国が生物兵器を既に所持しているかどうかは不明だが、少なくとも生物兵器の取得に力を入れていることを示している」と警鐘を鳴らしている。ノートパソコンには、生物兵器を含む大量破壊兵器の使用を正当化するイスラム教のファトワ(宗教見解)が記された文書も見つかっている。


さらにアメリカ海軍大学校の国家安全保障問題教授・シム・アルカスは6日、世界有数の経済誌であるフォーブス(Forbes)にイスラム国がエボラ・ウイルスをローテク生物兵器として使う可能性があると警鐘を鳴らした。


アルカスは、その方法について 「西アフリカで故意に自分自身を感染させ、そして発達した航空網を使うことで全世界のどこにでも致命的なウィルスを簡単に運搬できる。テロ組織は運び屋として人間を使用するだけだ。感染すれば、あとは移動するだけなので難しいことはない。イスラム国が実行を決定すれば、少数の人間をエボラ流行地に派遣。感染させれば後は”選りすぐった都市”に彼らを渡航させればよい」と述べている。


このアルカス警告は注目する必要がある。絵空事と見てはならない。国家の安全保障はあらゆる危険の可能性を除外すべきではないからだ。


エボラ熱の細菌の潜伏期間は2日から21日であり、発症すれば接触感染で他人に伝染する。イスラム国は2万人に達する外国人傭兵の志願者に伝染させるか、帰国予定者をだまして伝染させるかして「人間エボラ兵器」を製造する。帰国者は他人への接触を繰り返し、伝染を拡大する。


街娼などを利用すれば、その伝搬力は大きく、当局の掌握も困難だろう。また旅客機、地下鉄など閉鎖空間でウイルスの入った液体を噴霧させれば、伝染効果は極めて大きい。対象の都市はまずニューヨークやロンドン、パリなどが狙われるだろうが、油断していれば東京だって危ない。


そのようなテロがニューヨークで発生した場合、大統領オバマはほぼ確定的に地上軍を投入して、イスラム国壊滅作戦に出るだろう。


日本政府の水際作戦も万全のものであろうが、未然に防ぐための措置は、いくら取っても取り過ぎることはない。安倍がエボラ出血熱への対応を国家安全保障上の視点で捉えたのは正しい。


今後は、主要国首脳が一堂に会するエボラ・パンデミック防止のための国際会議を提唱してもよいのではないか。世界的協力態勢の確率が一刻も早く必要であるからだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)

2014年10月27日

◆遺骨ペースを「拉致ペース」に戻す

杉浦 正章




日朝会談「拉致での進展」は望み薄
 

拉致問題を巡る日朝交渉でどうしても解せない部分があった。それは5月のストックホルム合意の際、「夏の終わりから秋の初めにかけて第1次回答」としてきたにもかかわらず、北朝鮮が先延ばしに出たことである。


なぜ出すと言っていたものを出さないかというと、事前の調整で日本側が出されては困る内容であったことが分かってきたのだ。その内容とは拉致問題にほとんど触れてないで日本人妻や遺骨の調査結果を出そうとしたのだ。


政府筋によると、「こんな報告は受け取れるわけがない」と言うやりとりが続いた模様だ。その結果、本国と日本側の間に立って音を上げた国交正常化交渉担当大使・宋日昊(ソンイルホ)が9月29日の会談で外務省アジア大洋州局長・ 伊原純一に「調査の詳細な現状について、平壌に来て特別調査委員会のメンバーに直接会って話を聞いてほしい」と提案するに到ったのだ。


要するに「上に直接聞いてくれ」とたらい回しをした形だ。このいきさつから見れば、きょう27日に平壌入りする日本政府訪朝団が、拉致問題で具体的な結果を持ち帰るのは極めて困難視される。首相・安倍晋三の拉致問題解決が最優先という路線に戻せるかが焦点となる方向だろう。


拉致問題に関して北朝鮮側は、かねてから日本政府が拉致被害者と認定した安否が未確認の12人について、「8人死亡、4人は入境せず」と説明してきている。しかし8人の死亡は被害者の遺骸が一切存在しておらず、北朝鮮はこれまで6人の遺骨は豪雨で流出したと説明。


提供された二人分の遺骨とされるものからは本人らのものとは異なるDNAが検出された。解せないのは20代〜30代の若さでガス中毒、交通事故、心臓麻痺、自殺など不審な死に方ばかりである。


入境未確認としている4ケースのうち、曽我ひとみと一緒に拉致された母親ミヨシは、年配であるから拉致の途中で「処分」されたと最初から報道されてきた。このいったん「死んだ」とする者を「生き返らせる」ことはまずあり得ないことであろう。


要するに日本側が「出せ」と要求しても、出すに出せない状況であろうと推察される。だから北が当初から「特別調査委員会」の四つの分科会を、〈1〉日本人遺骨〈2〉残留日本人・日本人配偶者〈3〉拉致被害者〈4〉行方不明者――の順序としたのは、「遺骨」を最重要の分科会と位置づけたいのだ。


北が遺骨にこだわるのは、「カネ」になるからだろう。米兵の遺骨採集で、米政府は1柱あたり1万ドルから3万ドル支払っているといわれる。交渉の過程で一番容易に調べられる遺骨等についての報告を「夏の終わりから秋の初め」にしようとしたに違いない。


一方日本政府は言うまでもなく拉致を最優先課題と認識しており、この認識のずれが、1次報告をめぐって相克を生じさせたに違いない。では安倍が遺族会の反対の主張を押し切って代表団を派遣するという外交上の大方針を選択した背景は何か。


安倍自身が「拉致問題解決が最優先という方針を伝えるのが目的だ。派遣しないことによる今後調査できなくなるリスクを考えた」と言明している。これは北の「遺骨ペース」を「拉致ペースに」に引き戻すのが目的だ。12人は望みが少なくても、警察庁が拉致の疑いあがあるとする行方不明者883人での、進展は期待されるところであろう。


日本側は特別委側との会談で拉致問題の解決最優先の方針をまず伝達することになろう。特別委トップの徐大河や拉致被害者分科会の責任者と会って、調査がどの程度進んでいるか、どのような作業をしたか、今後の調査の進め方などを質すことになろう。


5月の合意以来安倍は「これからが正念場」と述べてきたが、その正念場第一段階が2日間の会談となる。日本側としては北から「誠意」を引きだす事に主眼を置いている。


北は拉致被害者12人について「準備段階」とか「初期段階」と言い逃れをしているが、2002年の小泉訪朝以来、12人については調べが完了しているはずであり、そこからいったんは「8人死亡、4人入境せず」の結論が出されているはずだ。


これを覆す新展開があるかどうかについては極めて難しいと言わざるを得ない。政府も拉致被害者に関して具体的な調査結果が得られる見通しはほとんどないとしている。12人の内1人でも数人でも生存者があれば、それを北が“活用”しないことは現段階ではあり得ないのだ。実際に出すに出せないのが現状と見るべきであろう。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月24日

◆民主党は不毛の追及に小躍りするな

杉浦 正章



「SM]には法的問題はない
 

最初に聞いたときは宮沢洋一本人かと思った。うちわ→ネギ→SMで三題噺(さんだいばなし)のドミノ倒しかと“悪夢”がよぎった。


大蔵出身と言えばノーパンしゃぶしゃぶをすぐに思い出すし、きっと東大出で大蔵省という超エリートは、頭を使いすぎて時々「好色の人」になってしまうのかも知れないと思った。顔を見てもそんな感じがしないでもない。


しかしまてよあの浮き世離れした人物が、そんな下品な場所に行くわけはないと思い直していたら、やっぱり秘書だった。本人も「秘書が秘書が」と懸命に弁明。おまけに「私はその種の店に行ったことはありません。値段的にも安い店のようでございまして」と付け加えたところなどはさすがだ。


宮沢喜一の血縁の名門の出身は、1人4000円の「安い店」などには行かないのである。


まあ当日夜は上京の飛行機に乗っていたとアリバイまで主張しているのだから、まず信用出来る話だろう。野党は幹事長・枝野幸男が「あぜんとした。こうした問題を国会で取り上げざるを得ないのは大変情けない」と言いながら、「喜々として」責任追及の構えだ。


しかし問題はその責任追及ができるかと言うことだ。もちろん宮沢がうちわ大臣のように「雑音」失言などをしてしまえば別だが、まともに答弁すれば、追及には自ずと限界がある。


法的問題が問われているうちわや観劇とは違い、SMの場合は政治資金規正法上の問題はない。飲食に使うことについての規制がかけられていないからだ。たとえSM店に秘書が行っても飲食経費として落とせる仕組みだ。


もちろん監督責任や収支報告書をチェックしていなかった責任は問われる。政治資金の使途は国民が納得しうるものでなければならない。また年間320億円もの血税が、地元秘書の遊興費に使われているという法律の盲点も問題であろう。
 

現行政治資金規正法は収支報告のチェックを事実上報道機関に全て委ねている。同法1条で「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の収支の公開の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保する」と立法目的をうたっているのだ。


これは公開、つまり報道機関のチェックで公明・公正を確保することを基本に置いているのだ。だから宮沢の例に見られるように、政治家本人のチェックが甘いと、メディア側からの“摘発”を食らうことになる。


メディアにしてみても国会議員全ての報告書をチェックすることは不可能に近い。だから社会部は怪しい政治家、うわさの政治家が入閣すると、その人物に絞ってチェックするのだ。宮沢の場合は不祥事辞任の後任人事だから、念入りにチェックされたのだろう。


従って法制度が変えられない限り、メディアが暴く構図はなくならない。解決策としては法制度を改正して、公的なチェックを入れて、SMのようなケースは受理しない制度にすることも考えられる。


しかしそれだけで膨大な機構と人員を要するから事実上困難だろう。結局は政治家が多忙で目が届かないなら、専門家等第三者に依頼してチェックするしかないのだろう。それが出来ない政治家はそもそも入閣などという高望みをすべきではない。 


朝日が「自民党が民主党政権時代、問責決議案を出して攻撃した荒井聰国家戦略相(当時)と似た構図になる。荒井氏は秘書が事務所費でキャミソールを買ったことで批判され、内閣改造を機にわずか3カ月で交代した。」と分析している。


なるほど似ていることは似ているが、菅直人は荒井を辞任させたわけではない。次の改造で入閣させなかっただけだ。新聞の扱いは朝日が政治面3段、毎日が5面の3段で大人しい。読売は何と朝刊では報じていない。報じないばかりか宮沢の原発に関する発言を一面4段で扱っている。


これは、週刊誌やスポーツ紙の報道にいちいち踊らされないという大新聞の矜持を自ら示しているのだろう。これはこれで立派な見識である。


下らぬ不祥事より政策を重視せよという編集方針であろう。枝野が小躍りしても、1日1億円の国会経費を馬鹿馬鹿しいうちわやSM論議などに費やしていい訳がない。


民主党もかさにかかってSMなどを追及している暇があったら、態度表明を逃げまくっている消費再増税の可非について庶民の側に立って延期を主張すべきではないのか。言っておくが追及して民主党の支持率が大幅に上がることはあり得ない。不毛の追及はいいかげんにした方がよい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月23日

◆消費増税「自民党大激論」が幕開け

杉浦 正章




結局、思考停止の党幹部が負ける


世の中には道理の分かる者もいるが、分からない者もいることを「目明き千人盲(めくら)千人」というが、自民党内の消費税を巡る論議は、とりあえず目明き42人対盲70人であった。


もともと23日に会合を予定していたのは消費増税延期派だが、これに対して悪知恵のはたらく税調会長・野田毅が若手議員を動員して税調を開催、対抗して気勢を上げた。ようやく最重要政策の消費税問題を巡って自民党らしい雰囲気が出てきた。


官房長官・菅義偉は「消費税は、国民に極めて影響力のある問題だ。自民党は国民からさまざまな声を聞いて党内で大激論する政党だ」と述べているが、その大激論の幕開けだ。昔なら総務会で灰皿が飛んだものだが、今回もそこまで行きかねない雲行きだ。


しかしガス抜きが終われば最後にはまとまるのが自民党だ。増税派議員も手心出来ずに突出する者が必ず出るが、こういう議員はまず出世しない。首相・安倍晋三が鉛筆舐め舐め通信簿をつけているからだ。悪いことは言わない。若手増税派議員は野田などにだまされていないで判断を増税延期に切り替えた方がよい


推進派は幹事長・谷垣禎一、副総裁・高村正彦、野田ら堂々たる党幹部だが、谷垣は安倍の意向で変わる可能性がある。延期派はろくろく名前も知らぬ百姓一揆のような連中だ。


しかし、その百姓一揆を陰で支えているのが何を隠そう官房長官・菅義偉といわれる。同日も「本人出席が40人を越えて真剣な議論を行うことはいいことだ」と述べたが、ちゃんと「本人出席」が何人かを調べている。菅は安倍の意向を受けている。


安倍は表向き完全中立を維持しているが、時々本心を吐露するようになった。英経済紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「消費税率の10%への引き上げが経済に大きな打撃を与えるなら、無意味になる」と述べたのだ。同紙記者は当然、首相が増税延期の可能性を示唆したと受け取って、そう報じた。


野田は「10%に上げない場合のリスクは10倍以上」と脅迫めいた発言をするようになってきたが、果たしてそうか。重要な変化を見逃してはならない。


報道ステーションの朝日新聞論説委員・恵村順一郎が大きく延期論にかじを切ったのだ。「超大物野田に対して朝日の論説委員如きの発言を引用するヤツがあるか」と言う読者は読みが浅い。


惠村は23日夜「私はこれまで再増税から逃れられないと言ってきたが、足元の景気を見る限り何が何でも10%に上げなければならないという勇気を持てない」と述べたのだ。惠村はこれまで忠実に朝日の論説の動向を見極めて発言しており、その発言は朝日の編集方針を完璧に踏襲している。


発言は論説の内部で延期論が力を占めてきたことを意味するのだ。政局で揺さぶる邪心がある自民党一部幹部や民主党幹事長・枝野幸男などを別にすれば、政局動向と経済動向の双方が読める向きは延期論に傾いている。


筆者の感触では延期派の方が自民党内で多数である気がする。統一地方選や、国政選挙を前にして増税しようとすれば、大平正芳や菅直人のように敗北必至であることくらい陣笠でも分かる。


なぜ延期論が力を占めてきたかと言えば紛れもなく景気回復の足踏みにある。10月の月例経済報告は、景気の基調判断を「一部に弱さもみられる」から、「このところ弱さがみられる」に引き下げた。下方修正は2か月連続だ。さらに重要なのは実質賃金の減少だ、


厚生労働省の8月の毎月勤労統計調査は実質賃金指数は前年同月に比べて2.6%減で14か月連続で減少している。消費が戻らない急所はここだ。消費低迷は生産活動を直撃しているのだ。


危険なことに現在の経済状況を過去のケースと比較すれば、97年の橋本龍太郎による5%への消費増税後と酷似してきた。橋本は消費税増税など総額約10兆円の緊縮財政を行ったが、国内総生産(GDP)は前年度比マイナス2%の503兆円まで約10兆円縮小し、GDPデフレーターはマイナス0.5%に落ち込んだ。


以後長期にわたり深刻なデフレ経済が蔓延する結果を招いた。驚くべきは10月の経済指標はその97年10月の数字よりも悪化しており、ここで消費再増税を断行すれば、アベノミクスは失速し、せっかくのデフレ脱却の気運は消え去る。日本経済は再びデフレ・スパイラルの底知れぬ闇に落ち込んで行くのだ。
 

自民党幹部は口を揃えて、延期すれば世界の市場から財政再建が一段と遠のいたとみられて、財政への信任が失われると強調するが、デフレに逆戻りした方が信任が失われることに気が付かない。


要するに財務省の理論構築をおうむ返しに言っているだけだ。しかし聞くところによるとその財務省も極秘裏に1年延期した場合のケーススタディーに着手したという。


野田らは日本売りが生ずると懸念するが、不況に戻った方が日本は売られるのだ。日本売りを回避する最大の方策は、引き上げ時期を明示すれば足りるのだ。1年半延期と決定すれば、ハゲタカファンドも日本売りには出ようがない。


現に国際世論をみれば、消費再増税に関しては米国からも慎重論が強まっている。ニューヨークタイムズが社説で慎重論を説いている。


米財務長官・ジェイコブ・ルーも10日、日本の再増税延期論を唱えている。要するに財務省の入れ知恵で自民党幹部は「思考停止」に陥っており、この頑迷固陋(ころう)幹部らを説得するには安倍の相当強力なリーダーシップが必要となろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)