2014年10月03日

◆夢のオリンピック花道はW選しかない

杉浦 正章




安倍は野党に対抗して公明と候補一本化に動け
 

政権は首相本人も側近も長期政権の夢を持つことが肝要だ。夢がなくなって「長きが故に貴からず」などと言い出したらすぐにつぶれる。安倍政権の場合の夢は何と言っても2020年の「オリンピック花道論」だろう。


そのための展望を組み立てるとしたら2016年夏の衆参同日選挙(ダブル選挙)しかない。中曽根康弘がダブルに勝って自民党総裁任期を1年おまけしてもらったように、首相・安倍晋三も来年再選して2018年9月となる任期を2年おまけしてもらうのだ。今の人気が維持できればそれができる。
 

それではダブル選挙を実現するためにはまず何が必要かだが、秘策がある。明らかにしてしまっては秘策ではなくなるが、筆者が書かないと半年遅れで誰かが気付いて唱えるからまあいいだろう。


それは公明党との選挙区調整を早期に行い、自民党が大幅譲歩することだ。ダブルで自民党は300議席が可能となるが、270−80議席でも十分円滑な政局運営が出来る。


ところが例によって何でも反対の公明党代表・山口那津男が、ダブルにさせないことが自らの使命のような発言をしている。山口は「可能な限り、多様で新鮮な民意を絶えず国会に供給する、というのが憲法の考え方だ。


一遍に民意を取り込むダブル選は、憲法の精神にはあまりふさわしくない」というのだ。法律屋らしく憲法まで持ち出して反対するが、過去2回のダブル選挙で最高裁から違憲の判決が出たことはない。


若い記者は公明の反対が最大の障害のように書くが、ダブル選挙に公明党が反対するのは毎度のことで、結局はダブルを結構こなしている。要するに宗教団体・創価学会が煩雑な選挙運動を面倒くさがるのだ。衆院と参院で選挙区が異なるから、投票で学会員がまた裂きになるというのだ。


過去のダブルを見れば、公明は結構いい戦いをしている。大平正芳が選挙中に死んだ80年のダブルでは、自民284議席,公明33議席で健闘した。中曽根康弘がやった86年のダブルでは、自民300議席、何と公明は56議席だ。小選挙区の直近の2012年の選挙では自民294議席に対して公明31議席。議席率は86年が10.9%で12年が約12%と大差ない。


従ってダブル選挙は公明にとって不利とは言えないのだ。過去のダブルの際には公明と自民はもちろん選挙区調整などしていないのに結果は良好なのだ。調整をすればもっとよくなる可能性がある。山口が嫌がる根拠を除去するのだ。
 

それに野党が、小沢一郎の唱えたとおりの流れになりつつある。民主、維新両党共闘の流れは最終的には両党で選挙区調整をして野党候補を一本化しようと言うところにある。


民主党代表代行・岡田克也(国政選挙担当)は2日の時事とのインタビューで次期衆院選で野党の共倒れを回避するため、他の野党との間で候補者調整に関する協議の場を設置する方針を明らかにすると共に、必要に応じ党公認内定者の選挙区替えなどにも柔軟に対応する考えを示した。


自公はこの流れを放置してはならない。小選挙区制は「風」が選挙結果を左右する。民主党が133選挙区に立てるのが精一杯でも、野党全体で300選挙区に統一候補を立てれば、小沢の狙い通りにことは進みかねないのだ。


それには自民党が有力公明党候補と競合する選挙区で降りることだ。高齢化候補を抱えていたり、無能が歴然とする候補の選挙区で、公明候補に有力な新人がいれば譲歩して、統一候補として野党に対抗することだ。民主党のように選挙区替えをしてもよい。そうすれば、公明党も納得する。いや、せざるを得なくなるのだ。そうした動きが生ずれば政局は粛々としてダブル選挙へ向かって流れることになる。


もう一つ重要な点は、筆者が唱え新聞も書き始めた政局フリーハンド論である。


それは消費税の延期に他ならない。予定通り年末に実施の判断をして来年10月から実施するとなると、確実に安倍は解散総選挙へのフリーハンドを失う。これを1年か1年半延期すれば、増税実施は再来年10月か17年春となり、ダブル選挙への影響を回避できるし、その間も「解散の脅し」を効かせて政局運営が出来る。


有利とみれば解散に踏み切ることも可能だ。実施を延期すれば来年の通常国会末の「安保法制解散」や、来秋の臨時国会の解散も視野に入れることが可能だ。この「脅し」が利くということほど政権運営を円滑化させることはない。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月02日

◆小沢が終盤国会の消費税政局化を狙う

杉浦 正章



野党をあおり、候補者調整に意欲
 


自民党幹部の2人から「最近小沢一郎さんはどうしていますか」と聞かれた。政局がざわついてくると「必殺政局マン」の生活の党代表・小沢一郎が何を考えているかを知りたがるのだ。


そう言う問いには「たまにはネットでも検索しなさいよ」と言っている。PRESIDENT Online(http://president.jp/articles/-/13509)に安倍政権をどう倒すかの秘策を全部ぶちまけているのだ。


小沢の政局予想は、消費税再増税問題が政局になるというものであり、首相・安倍晋三が政権を投げ出す事態に到ると判断している。


小沢は「再増税の判断をする前に騒ぎがおきる」と臨時国会終盤の「消費税政局」を予測しているのだ。この小沢の読みに対抗し「政局化」を回避できる道は、消費税法付則18条を援用して再増税を1年または数年先延ばしするしかないと思う。


沖縄辺野古近くの美しい海を臨む宜野座村に、しょうしゃな別荘を建てた小沢は現在72歳。もうご隠居かという話になるが、なかなかどうして潮騒(しおさい)どころか“血騒”(ちさい)なのだ。


民主党政権時代は100人を超える勢力のトップに立って政局を思うがままに動かしていたが、消費増税決定が不満で党を分裂させたのが落ち目の三度笠。現在衆参会わせてたった9人のトップで無聊(ぶりょう)を託って居るかと思いきや、依然ふつふつと政局への血を騒がせていたのだ。


今年の初め頃から小沢は「巨大自民党に対抗するには野党が小選挙区で候補を一人に調整して戦うしかない」と唱えていたが、昨今の民主と維新の接近ぶりをみると、この小沢構想がきっかけであるようなのだ。誰も小沢の構想とは言わないが、知恵だけはちゃっかりと頂いているのだ。
 

そこで小沢がPRESIDENT Online で何を言っているかだが、これまたドラスチックだ。まず政局展望について再増税問題がきっかけで安倍政権が倒れると予測しているのだ。


「消費税増税に対する影響は、再増税を判断する前、今年中に来る。その結果、安倍政権がどうなるかわからないというのが僕の判断だ。再増税を判断する前に、今年中に騒ぎになる。経済指数とか、海外の情勢とか、いろいろ問題になって、安倍さんでいくかどうかということになると僕は思っている」と述べている。


安倍が再増税をするかどうかは12月9日頃に出る7−9月の経済指標を見てからということになっているから、その前の臨時国会で政局になるというのだ。「なる」というより「する」ということだろう。


おそらく各種経済指標を見て7−9月のGDPが壊滅的になると予測、11月30日に終わる臨時国会の最中に政局に持ち込む戦術だ。小沢は「安倍政権は続かないのではと見ている」と断言している。
 

そして総選挙の見通しについて「1年後の来年の夏、あるいは12月じゃないか」と述べ、その前の野党選挙協力体制の確立が必要だと強調する。


「野党側が候補者を決めて走らせるには、半年は必要だ。そんなに時間はない。来年の4月の統一地方選挙の後ではもう遅い」と、早期に野党が民主、維新を中心に収れんして、小沢の生活の党もどちらかと合併して、野党2党が候補者を一本化する作戦を明らかにした。


そして選挙区情勢に詳しい自らの立場を「実際に候補者の調整や選挙をどうするんだという類の話でお役に立てれば、僕はする。要するに実務だ」と位置づけた。「実務」であって「野望」でないと言いたいのだ。


加えて「いまはとても政権は取れないと思っているから、みんな尻込みしているが、政権が取れるとなったら、絶対にみんな出る。再増税を判断する前に騒ぎになる」との見通しを述べた。


そして小沢は「政権を狙わない政党や政治家は辞めたほうがいい」と述べた。この部分は民社党委員長・西尾末広の「政権を取らない政党は、ネズミを捕らぬネコと同じだ」のコピーだろうが意気込みだけは並大抵ではない。


要するに小沢は野党をあおって、終盤臨時国会を「消費税政局」にして、「アベノミクスの破たん」を突破口に、安倍政権崩壊へとつなげたいのであろう。おりから民主、維新の接近が始まろうとしており、マスコミが連動して盛り上げるだろう。


これにどう臨むかだが、現在安倍は「消費税率の引き上げで景気の悪化を招き税収が増えない事態は絶対に避ける」と述べながらも、財政再建重視の立場も強調、まだ心中が揺れ動いている状況だ。


国会の議論は、まるで再増税するかしないかに二分されたような状況にあるが、この論議は間違っている。法律が通っている以上「再増税しない」はあり得ないのだ。逆にあい路はここにある。消費税法の付則を活用して、アベノミクスの失速が確定的となる再増税を「延期する」かどうかなのだ。


財政再建への意欲を疑われないようにさまざまな歯止めをかけて延期して、海外のハゲタカファンドの来襲を防げば、延期が最善の落としどころとなるのだ。


「再増税実施」に踏み切れば、まさに小沢の術中に落ちて「消費税政局」となるのは覚悟しなければなるまい。自民党も首相側近もこのポイントを外すべきではない。ノーテンキに政局を無視する財務官僚などは首を切ってでも延期を選択、政権を維持すべき時なのだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月01日

◆解散のかの字もなく臨時国会開幕

杉浦 正章




民・維、“やらせ拍手”で“わら束共闘”



案の定冒頭の代表質問は解散のかの字も出なかった。従って安倍は答弁する必要すら無かった。さすがの民主党代表・海江田万里も、維新の党共同代表・江田憲司も恥ずかしくてピント外れの解散質問などできなかったのだろう。


産経などが一時は本気で今秋解散を報道したのは、そのレベルの判断能力と見れば済むことだ。


テレビ評論家・田原総一郎が内閣改造後に「安倍さんは、是が非でも自民党総裁に再選されたいと願っている。そのためには、今回の内閣改造を経て、経済、外交で支持率を上げて、このタイミングで国会を解散すれば、総選挙に勝つことは間違いない。ボクは踏み切ると思う」ともっともらしく述べていたのも、そのレベルの政治評論でしかないと思えば済むことだ。


筆者が指摘してきたとおり今国会の解散などあるわけがないのである。


しかし民主党幹事長・枝野幸男の誤判断だけは痩せたりとはいえ一党を率いる幹部の発言としては看過できない。枝野は「私が安倍さんならこの秋に衆院選をやると思っている。下手をすると解散は臨時国会の冒頭かもしれない。覚悟はしていなければならない」と警鐘を鳴らした。


最近では「11月9日投票」とまで言及した。冒頭解散などなかった。この間違いは大きい。幹事長がこれだけはっきり見通しを述べれば、党員は「すわっ」とばかりに選挙準備に取りかかる。おまけに民主党は9月30日の常任幹事会で国政選挙対策本部まで新設している。幹事長が狼少年になって、政局判断を間違えたのでは就任早々から失格の烙印を押さざるを得ない。


それにしても海江田も江田も「アベノミクスの失敗」で共闘して対決姿勢を打ち出すのなら、「首相は国民の信を問え」と緩んだ政局をすこしはピリッとさせる発言くらいすべきであったが、触れない。きっと解散が怖いのに違いない。


その共闘姿勢だが、江田の代表質問後に民主党席がやんやの拍手をしたからおかしいと思って調べたら、民主党は事前の代議士会で国対副委員長・笠浩史が「維新の質問に激励をお願いしたい」と異例の呼びかけをしていたということだ。


要するにやらせの拍手だ。なぜそこまでやるかと言えば、“束になって”かからないと一強自民党政権にかなわないからに他ならない。この結果、代表質問では一応“束”にはなった。しかし、民主党内にも維新にも野党再編論などはまだまだ本気で語られる段階にはなく、「竹の束」にも到らぬせいぜい「わら束共闘」だ。


おまけに代表質問を聞いていて、この二人の質問は本当に党を“代表”した質問なのかと疑いたくなった。党内論議をクリアしていない重要事項を独断で質問しているからだ。海江田は集団的自衛権の行使容認の閣議決定について「立憲政治の否定だ」と党内左派の立場だけを代弁したが、右派は容認であり決着はついていない。


江田に到っては自らの左傾化姿勢を露骨に打ち出して、まさに独断専行型の質問であった。少数の手勢を引き連れて入ったにしては態度が大きすぎるのだ。基本的に共同代表・橋下徹と江田は安倍政権に対する距離感が離れすぎている。


原発再稼働でも江田は「安全に誰が責任を持つのかはっきりしないで再稼働すべきでない」と反対の立場を鮮明にさせたが、橋下は再稼働容認だ。集団的自衛権の行使については橋下が容認、江田が事実上の反対論だ。両者はこれら亀裂要因に蓋をしたまま新党を立ち上げたが、自民党からちょっとくさびを打ち込めば早期分裂もあり得る状況にあると見てよい。


焦点の消費税に関しては自民党幹事長・谷垣禎一の質問に「おやっ」と思った。谷垣は総じて安倍に対する「盲目の愛」のようなヨイショ質問を延々と繰り返したが、消費税に関しても持論を抑制した質問をしたのだ。


谷垣はこれまで「上げたときのリスクは手の打ちようがあるが、上げなかったときのリスクは非常に不安がある。上げられるよう対策を打つことが必要だ」とか「再増税は法律もあり自明のこと」と再増税に前のめりの発言をしてきた。


ところが、代表質問では「デフレ脱却を柱とする日本経済再生と持続可能な社会保障制度の確立のための財政健全化はいずれも喫緊かつ重要な課題。これを踏まえた上での消費税引き上げについてうかがいたい」と、明らかにトーンダウンした。首相官邸との事前の調整があった証拠であり、谷垣に対して官邸サイドから持論を封ずる何かがあったのだろう。
 


一方海江田も消費増税をした場合の社会保障の充実を確約するように安倍に求めるにとどまったが、最後に「安倍政権と異なる選択があることを国民に示す」と不気味な締めくくりかたをした。


これを枝野が、定数削減が実現しない場合を想定し「本当に定数削減の約束を最後まで守ってもらえないのであれば、(引き上げに反対するという)ちゃぶ台返しもせざるを得ないということは当然視野にある」と述べ、自民、公明、民主の3党で合意した消費税率引き上げに反対する可能性を鮮明にしたことと考え合わせると興味深い。


定数是正を口実にして消費再増税反対に踏み切る可能性が出てきたことを意味するからだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月30日

◆安倍は安保・消費税国会に逡巡するな

杉浦 正章




「地方創生」への誘導は無理筋だ
 


何事にも真っ正面から取り組むのが首相・安倍晋三の持ち味だと思っていたが、最近はなにやら“びびり”が目立つようになってきた。


集団的自衛権の閣議決定を通常国会の後にし、同関連法案は来年の通常国会後半に先送り。有志連合のシリア爆撃を「理解」にとどめ、開幕した臨時国会を激動する世界情勢を尻目に、具体策に乏しい「地方創生国会」と位置づける。


所信表明演説では集団的自衛権や10%消費増税への言及がない。再増税の判断も臨時国会後へと先送りしようとしている。首相就任後2年になろうとしているが、外交内政に渡る激務を休み返上でこなす希有な首相であることは確かだが、最近の「マイナス志向」は疲れが出てきたのか気がかりである。
 

安倍は自民党両員議員総会で今国会の位置づけを「地方創生国会」として、そのための法案も提出した。しかし法案はいわば観念論で理念を述べるにとどまっており、地方創生担当相・石破茂が自ら「何をやるかの具体策がまだ出てこない」と言うようでは、語るに落ちた。


要するに安倍は臨時国会の論議を無理矢理地方創生と女性の活用に誘導しようとしているのだ。これにはみんなの党幹事長の水野賢一が「地方創生とか女性の活用とか誰も異論のないものばかりをテーマとしている。安保とか消費税とかが先送りされるのは問題だ」と述べたが、至極もっともだ。


緊張する極東情勢、激動の中東・ウクライナ情勢など世界は大波乱時代に突入している。国内は消費増税を2年で倍増するのか、出来るのかという難問に直面。どう見ても国会は安倍の意図・思惑とは逆に、所信表明で触れなかった外交・安保、消費増税論争が焦点とならざるを得ないのだ。


その議論の動向を見定めれば、まず野党は消費増税では民主党がヌエ的な立場であるほかは全野党が10%への引き上げ反対である。


民主党は首相・野田佳彦が増税に踏み切り、2段階で10%を決めた張本人だから対応を決めかねているのだ。その中で、このところ左傾化して対決色をあらわにしている幹事長・枝野幸男は、安倍追い込みの奇策を思いついたようだ。


それは「増税延期」を「アベノミクスの失敗」と決めつけることだ。決めつけることで再増税を延期をさせずに10%への増税に踏み切らせ、その上で政権を支持率急落で失速させようとする作戦だ。統一地方選や総選挙を考えたら民主党は安倍が増税してくれることを祈るような気持ちでいることがよく分かる。


しかし筆者に見破られてはどうしようもない。もっとも枝野の“小細工”に対しては「増税延期はアベノミクスを成功に導くため」という反論の方が説得力がある。


その他の野党は共産党を除けば極めて常識的な反対論である。総じて現在の景気状況から見て10%への増税は税収増加につながらないとみている。


維新の党幹事長・小沢鋭仁は「今のタイミングでは反対だ。今のマクロ経済の状況では税率を上げても税収にはつながらない」と言明。次世代の党幹事長の山田宏は「これから高齢者が増えていくなかで、中期的な財源確保は必要だが、コストの削減や経済を温めるための成長戦略を進めることが優先だ。経済を冷え込ませてしまったら、仮に消費税率を引き上げても税収は上がらない」と述べている。


いずれもまっとうな物の見方をしている。みんなの党の水野も「今いちばん大切なのはデフレからの脱却であり、景気に悪影響を与えることはすべきではない。景気の指標を見ると、消費税率を3%から5%に引き上げたときと比べても経済へのダメージがあり、増税は間違いだ」と強調している。


これらの主張は首相側近の再増税慎重論とも一致する様相を呈している。一部に「増税延期は政治的なエネルギーが大変だ」というもっともらしい意見があるが、延期は消費税法付則に書かれており、民主党以外の党が賛成ならそれほどのエネルギーは必要としない。


一方、自民党幹事長・谷垣禎一は、理論武装不足の感が濃厚だ。増税に当たっては景気対策の補正予算を組むとしているが、公共事業は人手不足もあってこれまでの予算が使い切れていない。未執行予算が13兆円もあるというのだ。補正など組んでもまさにぬかに釘となるだけだ。


谷垣は「社会保障の安定財源のためにも必要」と訴えるが、8%に増税しても年金が減額されている現実を知らない。「だまされた」という意識の強い国民に、もう消費税の社会保障財源論は効かなくなっていることを知るべきだ。おまけに再増税して法人税減税では、枝野の絶好の追求テーマになってしまう。


やがては谷垣も期限を区切った増税延期あたりを落としどころとせざるを得ないのではないか。谷垣は再増税で党内根回しをしていると言うが、それにしては反対論者が減らない。なにやら腰が入っていないのだ。安倍と手を握ったポーズだけなら世上を惑わすだけだと心得るべきだ。


外交・安保も論戦の焦点となることは間違いない。とりわけ国会の最中11月9,10の両日に北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催され、日中、日露首脳会談、場合によっては日韓首脳会談もあり得る情勢だ。極東安保情勢がデタントに入るかどうかの正念場を迎えようとしている。


集団的自衛権問題も閣議決定後予算委の閉会中審査を行っただけで、十分な審議は行われていない。議論のないまま既成事実化しようとしていると勘ぐられても無理はない。


おりから中東ではイスラム国爆撃で長期戦の様相が生じており、集団的自衛権の行使絡みでの論戦は避けられない。安倍ははっきり言って具体策のない地方創生にうつつを抜かすひまはないだろう。地方創生は内容が整ってから来年の通常国会で行えばよい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月29日

◆シリア空爆は「支持する」に転換を

杉浦 正章




戦争長期化で日本の貢献不可避に
 


シリアへの空爆が意味するものは「逃げたいオバマ」が、再び中東戦争に引きずり込まれたことを意味する。あらゆる専門家が戦争の長期化を予想しており、好むと好まざるとにかかわらず日本も軍事的、経済的関与を迫られることになろう。


首相・安倍晋三はシリア空爆をややトーンを下げた外交用語の「理解する」にとどめたが、米国の戦いは邪悪なるものに対する正義の戦いとしてアラブ世界や国際世論のまれに見る支持を受けている。


「巻き込まれ論」は日本の民放コメンテーターや、低級極まりないラジオ評論くらいのものだ。まずは日本も「支持する」に転換すべきであろう。


注意すべきは経済支援だけでは、湾岸戦争と同様に世界中から嘲笑の対象となる恐れがある。テロに対して備えを強化し、状況の変化によっては国連平和維持活動(PKO)、後方軍事支援、医療活動まで視野に入れた対応が必要になるのではないか。


安倍は23日ニューヨークで有志連合によるシリアのイスラム国空爆について「米国を含む国際社会のイスラム国に対する戦いを支持する。米軍によるシリア領内の空爆も事態の深刻化を食い止める措置として理解する。日本は国際社会と緊密に連携して、難民支援や周辺国への人道支援など軍事的貢献でない形で、できる限りの支援を行う」と言明した。


戦いは「支持する」が空爆は「理解する」にとどめた理由は何か。安倍がトーンを下げたのは様々な要素が複合的に作用したと見るべきであろう。官房長官・菅義偉が「空爆の詳細について我が国は掌握をしていない」と述べた。これは米国が戦果を挙げるための極秘対応か、日本軽視かは分からないが事前の詳細なる説明をしてこなかったことを意味する。


内容も知らないままもろ手を挙げて賛成するようでは政府が軽率のそしりを受けることになり、無理もない対応と言える。


2003年のイラク戦争の際は小泉純一郎が世界の先陣を切って「支持」を表明して、ブッシュを喜ばせた。事前に米国の連絡があったことはもとより、英国首相・ブレアから「私も支持表明するので是非支持して欲しい」という要請があった。


小泉は「こういう時ははっきり言った方がよい」と、外務省の「理解する」という案を「支持する」に変えて先陣を切って表明したのだ。


一方、安倍は集団的自衛権の行使容認の閣議決定に当たって「湾岸戦争のケースにもイラク戦争のケースにも自衛隊は派遣しない」と明言しており、集団的自衛権の行使関連法案はまだ作成の端緒についたばかりである。ここで前のめりになって野党の追及を浴びたくない気持ちがあったのであろう。


シリア空爆は40回を越えている。当初の爆撃で資金源である石油精製施設は壊滅したが、イスラム国側の戦闘員はそれほどの打撃を受けていないと見られている。スンニ派武装勢力を中心とするイスラム国は、配下に2万ー3万人の戦闘員を抱えているとされている。


米軍はマッハ2の最新戦闘機F22まで使った空爆であったが、蠅叩きでスズメバチの巣を打ち壊すようなものではないかと思う。追い散らすことは出来てもまた巣を作られて、壊滅的な打撃には到らないだろうからだ。


しかし、イスラム国が戦術の転換を迫られたことは間違いない。大きな侵攻の動きがあれば上からは丸見えであり、集中攻撃の的になる。当然無人偵察機や無人爆撃機もフル動員される。


このためイスラム国勢力は制圧したイラク第2の都市モスルを始め大きな都市に潜入する戦術を採り始めており、事実上の“市民人質戦術”に出るだろう。爆撃での壊滅は市民を巻き添えにするため不可能に近い。


オバマは将来的にはシリアの反政府勢力やイラク軍にテコ入れすることによって、空爆と連動した地上からの制圧に頼らざるを得なくなるものとみられる。ところがこれは百年河清を待つに等しい戦いではないかと思う。


やはりテロ組織を一掃するには、米軍の特殊作戦部隊(SOF)や顧問団を出し、イラク軍とスンニ派部族、クルド人民兵組織、シリア反体制派組織などと共同作戦を展開する地上戦が不可避とみられる。地上軍を投入してひとつひとつ拠点をつぶさなければ決着はつかないのである。
 

爆撃だけではベトナムの北爆と同じでゲリラには効果が少ないのだ。いずれにせよ戦いは長期化が予想される。空爆が継続している限りにおいて、日本の当面の立場は「理解」から「支持」へと一歩前進させることくらいしかないと言ってよい。もちろん難民への人道支援での経済援助も推進せざるを得まい。


だが湾岸5か国の参加に加えてヨーロッパもイギリスが参戦。慎重だったフランスも方向を転じ、ベルギー、デンマーク、オランダまでが空爆に参加する流れとなっている。有志連合は60か国以上に達している。将来地上戦へと事態が発展した場合、日本の出方によっては、下手をすると「日本フリーライダー論」に火が点く可能性がある。


思い出すのは99年の湾岸戦争でアメリカに130億ドルも“ふんだくられ”ながら、国際的には嘲笑の的となったことである。この苦い経験がイラク戦争での自衛隊派遣となり、インド洋での給油活動となり、集団的自衛権の行使容認への流れとなってきたのである。


国際情勢の目まぐるしい展開は法案が出来ていないうちから日本の貢献を必要とする要因を生じさせているのである。ことは国際正義の遂行であり、日本も戦争の長期化とともに将来的には経済援助に限定せず、積極的にPKO活動に参加し、後方支援、医療活動などでの軍事的貢献などを迫られるケースが出ると覚悟した方がよいかも知れない。


臨時国会では集団的自衛権問題も絡んだ安保論争となるだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月26日

◆APECの「極東デタント」へ動き急

杉浦 正章




安倍外交に中韓が軟化
 


国連を舞台に首相・安倍晋三と外相・岸田文男による多様な外交が展開されているが、俯瞰すれば全てが「極東雪解け・デタント(緊張緩和)」へとつながっていることが分かる。


中国とは「海上連絡メカニズムによる不測の事態回避」、韓国とは「史経分離」、ロシアとはウクライナ問題での緊張の中での対話維持だ。


これが11月10日の北京・アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向けて収れん、定着する流れになりつつある。民主党政権のイデオロギーと無知から来る右往左往外交を修復し、49か国を回った安倍外交が突破口を開きつつあるように見える。


端的に言えば、まず中国が安倍外交に折れた。というか折れざるを得なくなった。安倍は座標軸を日米安保体制強化に据えて、中国の力による尖閣諸島の現状変更を認めず、米国はもとより、オーストラリア、インドなど大国との間で安保上の対中認識を共有した。


南シナ海に進出する中国に対してフィリピン、ベトナム支持を明確に打ち出し、ASEAN諸国の支持を獲得した。この結果、5月の「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」では、中国を孤立させることに成功したのだ。


他方、習近平は汚職摘発という権力闘争に成功、国内的な主導権を握った。外交上もフリーハンドを握りつつあると見てよい。その習にとって最大の政治ショーは北京でのAPECであり、この成功は不可欠の最優先課題なのである。


中国は国際会議など外交の舞台を伝統的な朝貢外交のように演出し勝ちだが、APECも同様であろう。国民にどう見せるかに腐心する。


各国首脳が人民大会堂に参集し、習は歴代王朝の皇帝のようにそれを迎え、いかに習が国際的に信頼され、指導力があるかを国内的に宣伝しなければならないのだ。それが安倍主導で再び孤立となっては、政権の基盤が揺るぎかねない。


だから折れたのだ。その兆候は7月末の元首相・福田康夫との会談でAPECでの日中首脳会談に前向き姿勢を示したことに始まる。


明らかにこれを受けて8月18日には訪中した「日中次世代交流委員会訪中団」に急きょ副主席・李源潮が会談、「小異を捨てて大同につくことが日中双方に求められている」と何度も発言している。


そして習は9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に当たって、「中国政府と人民は中日関係の長期的な安定と発展を望んでいる」と言明したのだ。


より具体的な動きも出てきた。まず安全保障面で進展があった。日中両国政府は24日、防衛当局が海上の艦船や航空機による不測の事故を防ぐため、海上連絡メカニズムの運用開始に向けた協議の再開で大筋一致したのだ。筆者がかねてから展望していたとおりにことは進展しつつあるように見える。


APECで日中首脳会談が行われた場合には「不測の事態回避」での一致が一番実現性のある合意点であり、尖閣問題は先延ばしするしかないのだ。尖閣は先延ばしして経済文化の交流を優先させる。日中関係改善はこれしかない。


次に日中経済協会(会長・張富士夫トヨタ自動車名誉会長)の訪中団に24日副首相・汪洋(対外経済担当)が2010年8月を最後に中断している閣僚級の会合「日中ハイレベル経済対話」の早期再開を提案した。


背景には今年1〜8月の日本の対中投資は前年同期比で約4割も減少、中国側が危機感を強めた事が挙げられる。ただしまずないとは思うが、中国がAPEC向けにだけ軟化、終われば戻るのではないかという点は要警戒でもある。


一方、中国が折れたのを察知して朴槿恵も折れ始めた。24日の国連演説で慰安婦問題に触れるかどうかが注目されたが、慰安婦の言葉は使わなかった。「戦時の女性に対する暴力」に言及したが、これでは一般論である。


尹炳世(ユン・ビョンセ)がさきに「韓国は歴史問題と他の分野を結びつけていない。経済交流は積極的に支援したい」と述べたのは、極東での孤立を避けて“史経分離”へとかじを切ったことを意味する。


しかし、国内的には反日世論もあり、慰安婦で対日妥協と受け取られたくないから朴の「戦時の女性」発言となったのだ。国内と対日外交両にらみの苦し紛れの発言である。韓国経済の落ち込み、これに同調するかのような朴支持率の低下。対日経済の改善は韓国経済にとって待ったなしなのであろう。
 

元首相・森喜朗の訪露の根回しの上に実現した安倍とプーチンの電話会談も興味深い。安倍はAPECでの会談を要望したが、国際社会で完全孤立のプーチンにしてみれば、芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」のようにありがたいことだろう。


この首脳会談もウクライナはさておいて、両首脳の親交を確認するだけで十分だ。7か国による対露制裁の基調は崩すわけにはいかないが、安倍は“孤立プーチン”とのパイプ役を果たすだけでもよいだろう。


こうして極東情勢は依然危うさを内包しながらも雪解けへと向かっているのだ。米国がこの極東デタントを歓迎しないわけがない。ただし対露、北朝鮮外交は米国の疑心暗鬼を招かぬよう密接な連絡が必要なことはいうまでもない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2014年09月25日

◆小渕首相候補生は原発再稼働がカギ

杉浦 正章




泥をかぶってでも推進せよ
 

婆さん閣僚が多い中で40歳の経産相・小渕優子は何と言っても花だ。父親の恵三は田中派時代からよく知っているが、優子の政治センスは明らかに親父を上回る。


麻生政権の少子化担当相の時に第2子を懐妊するなどという離れ業は並大抵のセンスでは出来るものではない。内閣改造で原発再稼働が最大の課題である重要閣僚に就いた。これで女性首相候補としては今は落ち目だがまだ目のある野田聖子、窓際の小池百合子、パフォーマンスの蓮舫などを尻目にリードした感じが濃厚だ。


政調会長・稲田朋美がなかなか行動力あるが、ちょっと右寄りにバランスを崩しすぎだ。もっとも小渕には最大の難関が待ち構えている。在任中に再稼働申請中の12原発19基の稼働を実現できるかどうかだ。それが出来ればフォークランド紛争で圧勝した英国首相・サッチャーのような“鉄の女”に昇格できるかも知れない。


女性政治家につきものの「危惧」を払しょくするためにも不可欠だ。クリアすれば、石破茂の次に首相の座を狙うことも現実味を帯びてくるだろう。
 

小渕はNHKで原発再稼働について「原子力発電を持たない選択をすることは将来を視野に入れたエネルギー政策を考えれば難しい選択だ」と言い切った。安倍政権で一番泥をかぶる要素の強い課題に真正面からチャレンジしようとしている。


川内原発の再稼働に「国が責任を持つ」として事故対応への関与を強調した文書を鹿児島県知事・伊藤祐一郎に渡し、知事は「政府の考え方が明確に示された」と歓迎した。しかし川内再稼働は皮切りにすぎない。原発反対派が手ぐすねを引いて待ち構える原発は多く、ひとつひとつを解決してゆくには極めて強靱な意志と決断力が不可欠だ。


政府は川内再稼働の後は規制委がゴーのサインを出せば、いちいち個個の原発再稼働に政治判断を下さなくてもよい「自動再稼働」の方向に持ってゆくべきだが、小渕はそれに先鞭(せんべん)をつけることも必要となろう。


それが実現できれば他の女性候補に大きな差をつけられる。まさに政治家としての力量が訪われる人生最大の難関と言ってもよい。小渕は、物腰が柔らかくソフトな印象を受けるが、芯は強い。


麻生太郎が「崖っぷち解散」に追い込まれた2009年の総選挙は、臨月で選挙戦を展開することになったが、自民党逆風の中でただ1人圧勝。自分ばかりか他の候補も「ここで産んでもいい覚悟で来ました」と応援したというのが伝説となっている。


ブルームバーグ通信とのインタビューでは「私がどうしてもやらなければならない仕事なのに『子育てがあるのでやりません』というわけにはいかない。できるだけ子どもがいることが言い訳にならないようにやろうと思ってやってきている」と述べ育児と政治を切り離す決意を鮮明にした。


また女性首相の誕生について「決して遠い未来ではない」と意欲的ともとれる発言をしている。


頭の回転も速いエピソードがある。第2次安倍内閣発足時に入閣を打診されたが固辞。財務副大臣に就任したが、これを副総理に内定していた麻生太郎が「大臣をやって副大臣というのはいかがなものか」と茶化したが、小渕は「総理をやってから副総理をやっている人もいる」と切り返したといわれる。


酒も強く野田聖子とは酒友だ。「日本酒を愛する女性議員の会」の会長は野田だが、幹事長は小渕。野田は小渕がバーボン・ウイスキーをラッパ飲みする姿を見たことがあるという話しが永田町で出回っている。


その野田は女性議員で首相候補生になりそうな議員の最右翼であったが、いまは落ち目の三度笠。総務会長でありながら集団的自衛権で安倍に楯突いて干された。


ブログで「大きな役職を離れ、初心に戻るために、自民党ではフリーとなる」と宣言しながらも「沈んだときこそ、大切なこと、大切な人、見えてきますよ」としおらしい。再び台頭しそうだ。


小池百合子は全くぱっとしない。蓮舫が海江田降ろしの先頭に立ったが、どうもパフォーマンス臭がしていけない。民主党でしかも参院議員では駄目だ。稲田朋美が政調会長になって注目されるところだが、首相候補になりたいのなら右寄り姿勢を改めないと無理。「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらう制度はどうか」などと自衛隊体験の義務化を唱えているようでは話にならない。


女性の首相候補が出てくることはよいことであるが、まだまだ政治の世界は男社会だ。


世界経済フォーラムが毎年発表する男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数では日本は105位。企業の課長以上などを「管理的職業従事者」というが、内閣府の調査ではこれに女性の占める割合はフィリピン52.1%、米国43.1%、イギリス34.5%、ドイツ30.3%なのに日本は11.1%にとどまっている。


儒教の影響、封建社会の風習など歴史的に女性は家庭を守り、夫を差し置いて表に出ない伝統が数字となって現れている。小渕がこれを破る突破口となるかどうかは分からないが、自民党が危機的な状態に陥ったときの“女神”の役割を果たしうるかもしれない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月24日

◆読売の政局誤判断も問題だ

杉浦 正章




政治記事は朝日の方が正確だ
 

慰安婦強制連行をめぐる朝日新聞の誤報は長期に意図的な国を貶めるはかりごとがあって、これはそう簡単に許せるものでもない。一方で、その朝日に対抗して意気軒昂の読売のセンセーショナリズムはどうか。


自分の欠陥は他人しか分からないところがあるからあえて頂門の一針を下せば、読売は政局記事の勇み足というか誤判断が多すぎる。

「小渕優子幹事長」の誤報などは氷山の一角だ。約50年に渡って新聞記事を精読・分析してきた筆者からみると、最近の読売は政局判断では朝日に負けている。


読売が朝日の誤報で発行部数を伸ばそうとするのは自由だが、将来この誤報体質が国にダメージを及ぼさないとは限らない。自らの報道ぶりを顧みて、読売は朝日の誤報を「以(も)って他山の石」とすべきである。


朝日の長期意図的な誤報に比べて、読売のそれは勇み足的であって訂正すれば許せる。どう見ても無理筋の「小渕幹事長」の報道を8月31日の朝刊一面トップでやって、すぐに「谷垣幹事長」が実現して誤報と判明したが、後がいけない。


[スキャナー]で「幻の小渕幹事長」と見出しを取り、いかに「小渕幹事長」の情報が本物であったかをるる釈明している。政局記事というのは、いったん見出しで踏み切ったら、言い訳は効かない。あっさり間違いを認めて「後講釈」をしないことが政治部記者の鉄則だ。


とりわけ一面トップに見出しを取った原稿は社運をかけるほどの自信を持ったものであるはずだ。それを後講釈でごまかしてはいけない。


しかも、お家柄か訂正記事がまるでなっていない。スキャナーの最後で政局取材班による事実上の訂正を掲載している。


その全文は「読売新聞政治部は、内閣改造・自民党役員人事に向け、約1か月間にわたり、最大で30人の記者による取材態勢を組んだ。人事に関わる自民党や首相官邸などの取材対象者に日夜、接触を重ね、総合的な判断の下に報道した。


『小渕幹事長で調整』のほか、大島理森・前党副総裁の入閣、高市総務相の経産相での起用の見通し記事を掲載し、結果的に読者に誤った印象を与えた。日々流動する政局に際しては、多角的な取材と慎重な判断により、今後とも正確で迅速な報道に努める。」というものだ。


読めば分かるように大きな人事を3本も間違ったのに、全然反省していないし、おわびの言葉もない。「日夜接触を重ね総合的判断の下に報道した」にしては結果がお粗末すぎる。「今後とも正確で迅速な報道」の「今後とも」の後は「誤報のないように努力をします」と続くべきところだ。


誤報をしておきながら読者に威張っている様な印象を与える文章を初めて見た。


はっきり言って最近の読売は政局原稿に弱い。前回の民主党代表選では「細野豪志立候補」を決め打ちして、「細野不出馬」の朝日に大敗北。自民党総裁選では、「石原伸晃優勢」一辺倒で、これまた大間違いだ。


昔の読売は政局に強かった。佐藤政権時代ある晩夜回りで読売の記者から聞いたが「今晩はデスクがトップがないからトップを書いたものにはこれやる」とデスクの上に1万円おいて「さあさあ誰が取る」とやっていたそうだ。


当時の1万円は今の5万円くらいの価値があって筆者などはうらやましかったものだ。その効果があるとは言わないが、結構立派な政局原稿が出ていた。


精読していると朝日の政局原稿は蒙古来襲で言えば集団戦法で書かれていることが分かる。読売の政局原稿はこれに鎌倉武士が「やあやあ我こそは」と単騎で臨んで討ち取られるようなケースが多い。朝日は一つの記事の中に特ダネ的な情報が数多くちりばめられているが、読売は最初に見出しありのケースが多いような気がする。


だから朝日の政局記事にはこくがあるが、よみうりのそれはスカスカだ。つまり朝日は多数の記者が自分の持っている最上の情報を全て「書き屋」に出して、それを統合して書いているような気がする。


読売も朝日も夜討ち朝駆けは十分すぎるほどやって情報は豊富に違いないが、読売に欠けるのは記者が情報を出し惜しみしているかのように見えることだ。


こう見てくると政治原稿に関する限り、先にも書いたが朝日が10とすると、読売は7のレベルだ。読売が5のレベルの時すらある。ましてや他社は朝日には遠く及ばないケースが多い。


だから政治家や霞が関の官僚の多くが朝日の原発、秘密保護法、集団的自衛権などの「偏向報道」に舌打ちしながらも、毎朝朝日を最初に読むのである。


読売も産経も朝日の慰安婦強制連行取り消し記事をチャンスとばかりに、販売が攻勢を仕掛けている。自社の購読を勧誘するチラシを大量に配布している。これにジャーナリスト・池上彰が苦言を呈しているが、報道機関といえども企業だ。欠陥商品を出した企業にライバル企業がネガティブ・キャンペーンをするのは当然だ。


受信料が自動的に入ってくるNHK的な発想で、きれい事を言っても説得力がない。しかし朝日も読売も誤報は意図するしないにかかわらず読者迷惑であることを肝に銘ずるべきである。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2014年09月19日

◆韓国は「史経分離路線」にかじを切る

杉浦 正章




孤立懸念で対日融和を優先
 


韓国外交が対日融和に大きくかじを切りだした。その基調は「歴史認識」はさておいて、「経済文化交流重視」という流れだ。端的に言えば「史経分離路線」である。


突然“軟化”し始めた原因はどこにあるかと言えば、一にかかって大統領・朴槿恵が日中、日朝関係の進展で極東での孤立をひしひしと感じ、米国の圧力もあって渋渋ながら方向転換せざるを得ないと気付いたことにある。主たる事情は日本側にはない。これが意味するところのものは、我慢比べに首相・安倍晋三が勝ちつつあるということだ。


かねてから政府高官は「韓国は捨てておけばいい」と漏らしていた。「捨てておいても向こうから音を上げてくる」ということである。案の定韓国は“折れて”きた。


それも日中関係改善を追い越しそうなスピードなのである。今思えば顕著なターニングポイントは8月の光復節における朴槿恵の発言だ。2015年が国交50周年になることをとらえて「来年を両国民が新しい未来に向う出発の年としたい」と表明したのだ。


朴槿恵自身は基本的な立場は変えていない。依然慰安婦問題について「被害者らに謝罪し、名誉を回復出来るよう日本の指導者は勇気ある決断をして欲しい」と述べている。


しかし、みっともない“言いつけ外交”で、各国首脳に同調を求めることはこのところ控えている。韓国政府全体の動きをボディーランゲージ的に捉えれば、ここに来て修復への流れが一挙に出てきたのだ。
 

まず外相・尹炳世(ユン・ビョンセ)が変わった。「変わっていない」と言いながら変わった。尹は14日「韓国はもともと歴史問題と他の分野を結びつけていない。経済、文化、国民の交流は積極的に支援したい」と発言したのだ。誰が見ても結びつけていたと思うが、ここに来て「史経分離」を唱え始めたのだ。


こうした基本路線の上に、外務当局の接触も活発化する流れとなった。19日には2か月ぶりに東京で日韓局長級会議が開催され、10月1日には外務次官級による戦略対話が開催される。対話は、韓国側が日本側に開催を打診し、両政府が日程調整を続けていたものだ。政治家レベルの接触も動きだした。
 

元首相・森喜朗が19日から訪韓して、朴槿恵と会談する。森は安倍の親書を携えてゆく。おそらく11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の機会に安倍との会談を実現する流れを作ることを目的としている。


場合によっては安倍と朴は来週ニューヨークで各国首脳が気候変動問題について話し合う「国連気候サミット」のなどの場で接触の機会がある可能性が出てきた。少なくとも挨拶程度はするに違いない。


こうした韓国側の急変の原因はどこにあるのだろうか。


一つは極東における孤立をひしひしと感じ始めたのであろう。明らかに中国は北京APEC成功に向けて対日関係是正へと動いている。日朝関係は、拉致問題で急進展しかねない要素を秘めている。


中東やウクライナ情勢で手一杯の米国は、極東の安定を強く望んでおり、日韓関係改善で朴に対して「相当な圧力をかけている」(政府筋)といわれる。3月に朴を無理矢理安倍と会談させた大統領オバマのメンツもかかっているのだ。朴は不承不承ながら方向を転換せざるを得なくなったのだ。


さらに韓国経済の問題がある。アベノミクスを契機に日本が円安路線を取り始め、これが輸出に頼る韓国経済を直撃しているのだ。おりから日本の嫌韓ムードは横溢して観光客は激減している。韓国世論も日本との経済関係改善の主張が高まり始めており、放置できない段階にまで到っているのだ。


「歴史認識ではメシを食っていけない状況となったのは事実」(日朝関係筋)ということなのであろう。韓国政府はあきらかに朝日の慰安婦強制連行取り消しで激昂した日本の世論もみて、歴史認識での「壁」を認識したのであろう。


こうして韓国の駐日大使・柳興洙が「日韓関係は少しずつ氷が溶けてゆくような雰囲気」と述べる事態となってきたのだ。


日本側としては、この流れを事実上の「慰安婦問題棚上げ」へと結びつければ良いことになる。官房副長官・加藤勝信が朴の慰安婦への謝罪と名誉回復要求に対して「日韓の間で請求権問題は既に終わっている」とにべもない見解を返したのもその辺を読んでのことだろう。


対韓外交は歴史認識でこれ以上譲歩をすべきではないし、譲歩をすればますます要求を高める国民性を理解した対応が正解だ。

【筆者より】22日は休みます。再会は24日。

2014年09月18日

◆首相は“ギャンブル”に手を染めるな

杉浦 正章




カジノ法案は政権のアキレス腱になる
 

驚いた。自民党筋によると首相・安倍晋三の臨時国会での最大の狙いは「カジノ法案」成立にあるというのだ。これまで大ニュースの影に隠れていたが、確実に同法案が浮上して年末までに成立する流れだという。


しかもこともあろうに一国の首相が、日本史上初めて「賭場・鉄火場」を公認する法案の旗振り役なのだ。だらしがないことに止める者は1人も居ない。安倍政権は戦後まれに見る一強体制を維持してきたが、ようやくアキレス腱が見えてきた。


兆候はあった。5月にはシンガポールで、 カジノやホテルがある統合型リゾート施設を見学「カジノを成長戦略の目玉にしたい」と意気込んでいた。先の内閣改造では太田昭宏を何で国交相に留任させたかと思っていたが、カジノ対策であった。公明党の反対をにらんで太田を取り込んだのだ。


太田はカジノ法案を担当するよう指示されている。もともと安倍は「国際観光産業振興議員連盟」(通称カジノ議連)の最高顧問だ。古くからあるパチンコ議連の別動隊のような組織である。


もとよりパチンコ業界はカジノ推進論であり、政治資金もそのために政界に注入してきた。安倍とパチンコ業界の接近ぶりは有名だが、それが秋の臨時国会でベールを脱いで法案成立に走るのだ。


カジノ法案については自民党は古くから推進論があった。石原慎太郎などはその筆頭であった。しかし歴代首相は自ら旗を振るようなことはしてこなかった。なぜなら首相には高い倫理観が求められていることを知っているからだ。


米国ではカジノがマフィアの巣であり続けているし、世界各地の賭場もやくざ絡みのものが多い。日本も昔から賭場はやくざの仕事場と相場が決まっていた。首相ほど高い倫理観を求められるポジションはないのに、安倍はそれをなげうつのか。


加えて日本人の特性がある。賭博に対する精神的弱さだ。


厚労相の最近の調査では日本には「病的なギャンブラー」が536万人存際する。成人の4.8%であり、諸外国は1%にとどまっている。男性の8.7%、女性の1.8%が賭博中毒になっているのだ。日本では首相が旗を振ってこれらの“患者”を増大させるのだろうか。昔から博打で泣くのは家族と相場が決まっていた。


現在認められているギャンブルだけでも社会に深刻な問題を起こしている。毎日新聞の記事によると、金銭的困窮や配偶者への暴力、児童虐待をするケースが多いだけでなく、中には無差別殺人事件を起こした容疑者にギャンブルによる借金苦の親から幼少期に捨てられた経験があった例もある。


さらに毎日は女性の中毒患者も多いと指摘する。「20歳前後でギャンブルを始め、7〜9年たつと借金に手を出す。治療を受けたりやめるためのグループ療法を始めたりするのにさらに10〜15年かかる。この間に1000万〜2000万円をつぎ込む。大多数は家庭で盗みをはたらき、子どものお年玉や親の葬儀の香典にも手をつける。借金とうそを重ね、家族を精神的な病気に追い込むこともある」のだそうだ。
 

馬鹿な自民党の推進論者は「競馬、競艇など公営ギャンブルやパチンコがあってなぜカジノが駄目なのか」というが、現在あるものだけでも社会的な問題を引き起こしているのに、さらに加速させるのがまっとうな政治かと言いたい。「世界120か国で合法化されている」と主張するが、日本は数少ない合法化しない立派な国なのだ。


既にカジノ推進法案は国会に議員立法で提案されており、自民党と維新、生活の党が賛成だ。通常国会では継続審議になっているが臨時国会では成立の可能性が強い。公明党は反対しているが、公明党抜きでも成立を図ろうと思えば出来る。


しかし、これほどの重要法案をめぐって、反対の国論が巻き起こらないことはあり得ない。既に朝日と毎日は反対の社説を展開している。


安倍が強硬に推し進めようとするなら、反対論者は支持から離反する。高支持率を維持できると思ったら甘い。また、同法案処理は安倍自身がギャンブル的な危うい橋を渡ることを物語っている。


万が一にも業界との癒着が新聞によって公になれば、政権を直撃する問題になりかねないからだ。いずれにしても悪いことは言わない。今からでも遅くはない。首相が瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れ、李下に冠を正してはならない。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月17日

◆100億使って一本釣りの秘策

杉浦 正章



民主党議員が“政権構想”
 


「寝言は寝て言え」「民主が復活しそうなら他の野党に投票する」とネットでこてんぱんに叩かれている民主党議員がいる。


英国労働党が、ブレアやブラウンという無名の新人で政権を取ったように、オリンピックまでに民主党も無名の新人が首相の座に就いているというのだ。何しろ100億円あるという選挙積立金で他の野党議員を「一本釣りする」というのだから気宇壮大だ。


おりから民主党は左翼片肺飛行を是正して、右寄り6人衆の一部を取り込んだ新体制を作ったが、しょせんはパッチワーク。これといった政権獲得戦略など出てくる気配もない。支持率4%では政権戦略など出せば笑われると執行部は思っているのだろうが、政党だから少しは夢を語ってもおかしくはない。


「夢想議員」は財務省出身、当選2回の衆議院議員・岸本周平だ。民主党政権では内閣府政務官や経産省政務官をやっている。岸本は「冗談のように聞こえるかも知れないが」と前置きしてブログで語る。


まず「現在、民主党の衆議院の議席は55。これでは、風が吹いても、次の総選挙で480議席の過半数240の議席獲得は無理。しかし2009年の総選挙で民主党は、2005年の113議席から308議席となり政権を取った。2012年の総選挙で自民党は、2009年の119議席から294議席となり政権を奪い返した」と指摘する。


そしてこれが意味するところのものとして「三桁、100以上の議席数さえ有れば、小選挙区の戦いでは、過半数の議席を取る可能性がある。民主党にとって、次回の総選挙は100以上の議席を目指す選挙だ」と計算しているのだ。


岸本はそのために現在、現職55人、公認候補75人の計130人しか小選挙区の候補者を立てていないが、他の野党の政治家の一本釣りでこれを補うべきだというのだ。他の野党の中道保守の政治家を、政党間の選挙協力よりも、一本釣りで公認にすれば、150人から180人の候補者が立てられる」と計算する。


その資金として「民主党には100億円の選挙積立金がある。逆に、他の野党はできたばかりで、資金面に不安がある。一本釣りが可能だ」というのだ。


たしかに本当に100億円もの積立金があれば、かなりの議員を集められる。そして岸本は「民主党が100以上の議席を獲得できれば、その次の総選挙で過半数の議席獲得を目指すことが可能になる」と計算する。つまり、2020年の東京オリンピックまでに政権を取り戻すという長大な計画で臨むべきだというのだ。


そしてそのときの首相候補は「名前も聞いたことのない若手が抜擢される」と予言する。その手本として「英国労働党が、ブレアやブラウンという若手政治家に党の未来を託し、『第3の道』を掲げ政権を奪回する過程は示唆に富んでいる」ことを挙げている。


岸本の主張はネットで叩かれるだけあってすきだらけだが、政界一寸先は闇だ。0.3%の可能性でも夢を説く議員は偉い。それにくらべると新執行部は、「民主党失政政権」が昔の名前で出ていますといった具合だ。6人衆の内、激しく海江田を批判しなかった順に取り込んでいる。


幹事長の枝野幸男は海江田批判の声はゼロ。代表代行の岡田克也もちょっぴりしか批判していない。逆に公然と代表選挙繰り上げの「海江田降ろし」を主張した、前原誠司や玄葉光一郎は干された。


枝野や岡田は人事が狙いで大人しかったことが分かる。いずれにしてもトップが代われば少しは目新しくなるが、トップが海江田のままでは、支持率4%の体たらくを脱するのは極めて難しい。枝野が「エダノミクス」など唱えても、空しいだけだ。


ひたすらアベノミクスの失敗で首相・安倍晋三がずっこけるのを日夜祈るしかないのであろう。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月16日

◆慰安婦取り消しで社会部と政治部確執

杉浦 正章




朝日OBが内幕を語る
 


朝日新聞出身のコラムニスト早野徹は政治部時代の記者仲間であった。今は桜美林大学の教授で朝日Webに「新ポリティカにっぽん」という政治論を書いている。昔の花形政治記者だ。その早野がBS朝日の「激論!クロスファイア」と「ポリティカ」で朝日の慰安婦強制連行訂正・謝罪に到る内幕を吐露している。


端的に言えば訂正論の政治部中心勢力と反対論の社会部の相克であり、その暗闘が繰り返されて36年間も訂正が行われなかった構図が目の辺りに現出する。その内容は早野が「多少の確執」と表現したが、他の関係者によるとかなり強い対立があったようである。
 

どうもマスコミは社内的に社会部が強い朝日、毎日、NHKは、左傾化の傾向が強く、政治部が強い読売、産経は右寄り路線を取る傾向がある。


とりわけNHKは政治部出身の海老沢勝二がやめてから社会部の天下になった。重要な政治ニュースがあったときでもくだらない事件事故を延々と報じている。バランス感覚が広いか狭いかの問題であろう。


それはともかくとして、まず早野はポリティカで2度訂正の機会があったのにそれを逸したことを明らかにした。


最初は「1992年4月に産経新聞が疑問を提起、私が残念に思うのは、すでにかくも疑問が出ていたのに、なぜその時点で徹底的に調べ直さなかったのかという点である」と指摘した。次ぎに「1997年3月に従軍慰安婦問題の特集記事を掲載したときにも、吉田氏に電話で虚偽かどうか問うた。


結局、裏付けがとれないため『真偽は確認できない』と表記した。この2回の真偽を確認する機会に、なぜ真相把握を逸してしまったのか」と慨嘆している。


社内で訂正を公然と主張したのは政治部長出身で主筆を長年勤めた若宮啓文だったという。BS朝日で早野は「若宮君が訂正すべきと思って提案した。


これに対して社会部の慰安婦問題を発掘してきた人たちには、大阪社会部も含まれるが、『ひょっとしたらどこかでそういう事があったかも知れない』という思いがあった。吉田氏の書いたようなことはないにしても、朝日としては同情を持って扱いたいという気持ちがあって、それが失敗につながった」と内実を語っている。


吉田清治の“小説”は虚偽であっても日本軍のことだから「ひょっとしたらどこかであった」という立証なしでの訂正拒否を社会部は主張したことになり、驚くべき報道姿勢が維持されたことになる。


早野は訂正すべきと「ポリティカ」に書くに当たって社内の空気を聞いてみた。するとこれまた驚くべき反応が返ってきた。


「産経や読売に挑戦されているので戦うのだと言っていた」というのだ。さすがの早野も「メディアにおけるバトルという観点が強すぎたのではないか。バトルとなるとおわびをすればつけ込まれるという気持ちもある」と述べた。


メディア間の戦争に負けるという意識で謝罪を拒否してきたというのだ。確かにそこには読者の存在などは眼中にない。


さらに5日の訂正と記事取り消し紙面で編集担当・杉浦信之が一面で「慰安婦問題の本質直視を」と強調していることが、問題のすり替えと批判されていることに対して指摘した。


「主張は正しいにしても、まずは訂正しておわびしますという見出しを取り、もう一つ慰安婦問題の直視をという2本見出しで行くべきだった」と述べているが、もっともだ。最初から「本質直視を」という見出しで、しかも一面に書かれても、何が始まったのか読者には分からない。編集担当の能力が問われる問題だ。


次ぎに早野は勤労動員の女子挺身隊と慰安婦の混同をした記者・植村隆が慰安婦が親によって売られたことを訴状に書いていたにもかかわらず、そこに触れずに記事を作成、意図的な捏造であったとも指摘されている問題に言及した。


「ボクの下で記事を書いていたこともある。誠に素直な記者で策略をめぐらすなんてことはできない。未熟な取材不足であった。彼の奥さんも向こうの人だから疑問を持たれたこともある」と擁護した。


しかし早野も、この後に続けた言葉がいけない。「この問題が出始めたときの混沌の中で書いている。だいたい新聞記事は永遠に途中経過なんですよ。その時点で分かったことを精一杯書くと言うことの積み重ねだから」と結んだのだ。


言わんとすることは分からないでもないが、これは「永遠に途中経過」の記事が、繰り返し書き続けられるという、誤報の連鎖を生み続けて世界中で日本という国家だけを「性奴隷国家」としてを貶(おとし)めたことに考えが及ばない発言であることを意味する。


早野も文藝春秋に書いている若宮もそうだが、やはり朝日は慰安婦強制連行問題を、慰安婦一般の是非とすりかえて言い逃れしようとしている姿勢がありありだ。


慰安婦一般を論じるなら世界中の大国や朝鮮戦争後の韓国も含めての戦時慰安婦問題を論じなければ不公平だ。慰安婦制度を正当化する気はさらさらないが、調べれば日本軍と大同小異であることが分かるはずだ。


現在の慰安婦問題の本質は誰が見ても、朝日の「軍が組織的に人さらいのように強制連行した」という誤報とその取り消しにある。慰安婦の一般論で覆い隠そうとしてはいけない。

筆者が精読している普段の政治記事から得た印象では、2大紙の情報量、正確度は朝日が10とすれば、これを追う読売は7くらいの開きがある。この国民にとって貴重な情報源が、“ぐれ”て道を誤り続けてはならない。反省して“真っ当な人間”に早く立ち戻ってほしい。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月12日

◆ますます社長国会招致が必要となった

杉浦 正章




謝罪の背後に開き直りの欺瞞姿勢
 


ついに朝日新聞が報道史に残る2大誤報で謝罪し、社長が辞任することになった。これだけ世上を惑わしたのだから当然である。


しかし、社長と編集担当の記者会見から見えてくるものはなお残る欺瞞(ぎまん)性である。慰安婦強制連行問題では、「広い意味での強制性があった」と問題すり替えの姿勢を維持して開き直った。


「逃げた」と世界中に日本の恥をさらした原発撤退報道は、本質が反原発のキャンペーンであるにもかかわらず、「吉田調書の評価を誤った」と単なる誤報で逃げを打った。2大誤報はそれぞれ第三者委員会が調査すると言うが、これも国会の追及逃れのための逃げ口上だ。


誤報によって受けた国益の損失は甚大なものがあり、国会はあらためて社長・木村伊量を招致して、問題の解明を図る必要が生じてきた。


地方創生相・石破茂はさすがに頭がいい。マスコミの在り方の問題なのにポイントの掌握力が抜群だ。11日のBS日テレの「深層ニュース」で、社長記者会見の問題点を鋭く指摘している。


石破はまず社長が吉田調書で「読み取る過程で評価を誤り、命令違反で撤退という表現を使った」と弁明した点について、「読み間違ったと言うが朝日新聞はどれだけの国語能力を持っているのか。どこにも『逃げた』とは書いてないのだから、どう見ても間違えようがない。国語力が足りないのかそれとも他の理由なのか」と首を傾げた。「朝日は相当の国語能力がないと採用されない」とも述べた。


石破は、もっと深いところに狙いがあると踏んでいるのであろう。筆者があえてそれを言えば、吉田証言誤報は、朝日新聞の反原発キャンペーンの一環であり、「結果としてチェックが足りなかった」(編集担当・杉浦信之)などというレベルのものではないということだ。


朝日は大方針のもとに記事を組み立てる“習性”があり、調書に「逃げ出した」などと書いてなくても、「逃げ出した」にしてしまうのである。問題の根幹は朝日の左傾化編集方針にあるのだ。


慰安婦強制連行について石破は「朝日が誤りに気づいたのはいつだろうか。社長は『遅きに失した』というが、今気付いたならしょうがない。しかしかなり前から指摘されていたことではないか。それが何で今になったかよく分からない」と指摘した。


済州島における強制連行の虚報は「吉田清治というペテン師」(首相・安倍晋三)の“小説”をうのみにした1993年の河野談話直後からインチキ説が指摘され始めている。それにもかかわらず朝日は36年間にわたりペテン師の記事を“あえて”真に受けた形にして16回も書き続けたのである。


そこに時の自民党政権を貶(おとし)める意図を感じない政治家はいまい。石破は朝日の狙いの“深さ”を示唆しているのだ。


さらに石破は木村が「読者におわび」を繰り返したことについて「おわびは読者だけか。それより名誉を傷つけられた国と、日本の尊厳、国際社会に与えた影響はどうなるのか。私の感覚からすると違和感がある」と強調した。もっともである。


解約続出のようだから社長が読者を大切にする気持ちは分かるが、吉田調書の誤報はフクシマの英雄を唾棄すべきセオル号船長なみだと世界に報じられ、命がけでフクシマを押さえ込んだ職員らの功績を無にした。そればかりか日本人の尊厳まで傷つけた。


慰安婦強制連行では、国連の無能な委員会が真に受けて「性奴隷」の表現でいまだに日本を貶め続けている。謝るべきは朝日が寄って立つところでもある国家の尊厳毀損に対してでなくて何であろうか。


石破は指摘していないが、さらなる問題は記者会見で杉浦が強制連行取り消しについて「虚偽だろうと取り消した。しかし、慰安婦が自らの意思に反した、広い意味での強制性があったと認識している」と強調した点である。


これは8月5日に紙面で強制連行の誤報を取り消しながら、「自由を奪われた強制性があった」と問題をすり替えた“路線”を継承している。社内で「記者会見でここだけは譲るな」という駄目押しがあったことを物語っている。


朝日新聞慰安婦報道の本質は、国による強制連行があったかどうかの一点に絞られるべきものであり、戦時慰安婦制度の一般論にすり替えるのはおかしい。自らの意志に反したかどうかは個個の慰安婦の“思い”の部類の問題である。戦時における世界中の軍隊が共通に抱える問題であり、日本に特化して語るべきものでもない。


朝日はこれらの問題を第三者委員会に丸投げして「過去の記事作成、訂正に到る経緯、日韓関係始め国際社会に与えた影響について徹底して検討していただく」(木村)というが、そのような問題は第三者委員会で行わなくても社長自らが判断すれば良いことだ。


辞任の時間稼ぎと、国会への招致を避ける思惑があるとしか考えられない。招致されても「第三者委員会で検討中」と言い逃れができる。国会は毎日新聞などの言論弾圧の指摘などに惑わされるべきではない。


先に書いたように国家として直接被害を被った「言論災害」が本質なのであり、国会は社長以下幹部を招致して問題を解明すべきである。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)