2017年02月16日

◆中韓、安倍訪米で牽強付会の論調

杉浦 正章



中国は「朝貢外交」と批判、韓国はひがむ
 

どうして中韓両国の論調はかくまでも牽強付会なのであろうか。日米首脳会談をめぐるメディアの論説が15日までに出そろったが、世論を誘導するマスコミが道理をねじ曲げ、都合の良いように理屈を無理にこじつけている。中国が首相・安倍晋三の訪米を「朝貢外交」と決めつければ、韓国の場合はひがみ根性丸出しの論調すらある。中国の論調は誤解、誤認の山だ。これら感情丸出しの論調がいかに自国の民度を低く押し下げているかが分かっていない。
 

まず公的な見解を披露すれば中国外務省の耿爽・副報道局長は13日の定例会見で、トランプが尖閣諸島を日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認したことに対し、「誰が何を言おうと、何をしようと、釣魚島が中国のものだという事実は変えられない。国家主権と領土を守るという中国の意志と決心を動揺させることもできない」と全面否定。「日本が不法な領土を主張し、安保条約を名目に米国を抱き込むことに反対する」と言い切った。


東シナ海で古来実効支配もしていない島々を自分のものだと主張し、虎視眈々(こしたんたん)と領土領海を広げようとする自らの主張を棚上げにしてよく言えたものである。
 

中国共産党機関誌人民日報のニュースサイト人民網は15日、「まるで朝貢外交?安倍首相の訪米、経済面で譲歩」との見出しで、「首脳会談の結果、安倍首相は今回の訪問の核心的な目的を達成したようにみえ、米日同盟が変化するのではないかとの外部の懸念をある程度払拭することができた。だが実際の得失を考えると、安倍首相の今回の訪米で採用したまるで『朝貢』のような外交政策は、日本国内からの批判にさらされてもいる」との分析を掲載している。
 

まず「よく言うよ」と言いたいのは、「朝貢外交論」だ。筆者は14年の中国におけるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、習近平が各国首脳を出迎える姿を「APEC史上見たこともないけばけばしい朝貢外交的な演出は国内対策である」と看破したが、「朝貢」とは中国王朝時代に外国人が来朝して、皇帝に三拝九拝して貢ぎ物を奉ることであり、共産党一党独裁国家にはあり得ても、民主主義国間ではあり得ないことである。


トランプは自動車も為替も言及はなく、日本側も提示しなかった。問題は日米の「枠組み」に先送りされたのであり、事実誤認も甚だしい。さらに「日本国内からの批判にさらされてもいる」との指摘は全く当たらない。その証拠に共同の調査によれば日米首脳会談を「よかった」と評価する回答が70.2%、「よくなかった」は19.5%だった。内閣支持率も前回1月より2.1ポイント増えて61.7%となっている。こんな批判のない首脳会談は佐藤・ニクソンの沖縄返還実現会談以来のことである。
 

さらに人民網は14日「同盟関係を盲信、日本は道を誤った」と題して「在日米軍の駐留経費の負担問題はひとまず話題に上らなかったが、トランプ大統領は日本に負担増を求めることを示唆しており、日本を含め同盟国が負担を求められることは確実だ」と大きく誤報している。


なぜ誤報かと言えば、トランプは駐留費問題に関して日本が75%を負担していることを指して「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と述べている。米国はさっそく日本の高負担を参考に北大西洋条約機構(NATO)にも負担増を求めている。米国防長官マティスは15日からのNATO国防相理事会に出席、負担問題を協議する。事前の根回してNATO諸国は国防支出拡大に応える方針だ。日本にこれ以上の負担増を求めるというのは誤報だ。
 

一方韓国は朝鮮日報が「北ミサイル発射に米日が蜜月演出、韓国は置いてけぼり」と社説で嘆いた。ミサイル発射と同時に安倍とトランプが共同記者会見に臨んだことについて「トランプ大統領の安倍首相に対する際だった配慮と二人の緊密な関係を目の当たりにするとき、本来韓半島(朝鮮半島)でわれわれが当事者のはずの一連の問題がどこか他人ごとのようにも感じられる。それはわれわれにとってより心配すべきことかもしれない」と論じた。これも偏狭なる“ひがみ”の分析である。


そもそも朝鮮半島の防衛は「日米蜜月」があってこそ成り立つ問題である。日米どちらが欠けても成り立たない構図であることが分かっていない。韓国は「置いてけぼり」と嘆く筋合いではない。


この点中央日報は大人の論調を掲げている。社説は「安倍首相の対米外交をめぐる解釈が分かれている。『朝貢外交』やら『屈従外交』やらと批判する面々があるかと言えば、『実利外交」とは何かを見せてくれた』という評価もある」と韓国内の空気を正直に書いている。そして「韓国の大統領が安倍首相のようにしたら、どのように評価されただろうか。屈辱外交などとさんざん非難を浴びたかもしれない。名分に捕われて外交の基本も逃してしまうのではないか、考える時だ」と結んでいる。韓国も同様の外交をしなければならないと言いたいのだ。


しかし、誰が大統領になっても「安倍外交」ほどの成果を上げあれるかは別だが、まずは釜山の慰安婦像撤去から始めることが外交成果へのカギと心得るべきであろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月15日

◆安倍は朝日に勝った、トランプはNYTに負けた

杉浦 正章



リスクの伴う対メディア戦


首相・安倍晋三とトランプの会談を評して、前原誠司が「猛獣に従うチキン」と評すれば、脇から後藤祐一が「ポチだ!」と野次る。


前原は続いて「近づきすぎるとリスクがある」と指摘した。民主党は誰が見ても成功裏に終わった日米首脳会談をこの程度にしかとらえられない政党であったか。猛獣にチキンは従わない。逃げる。「近づきすぎ」と言うが、虎穴に入らずんば虎児を得ずの格言を知らないのか。北のミサイルや中国の軍事挑発は、より大きなリスクではないのか。


衆院予算委の追及は、浅薄でどうもやっかみが先に立つ。「負け犬の遠吠え政党」そのものだった。それにつけても産経の「私は朝日新聞に勝った」「俺も勝った!」のスクープは見事であった。安倍とトランプの意気投合ぶりを端的に言い表している。リークした方も、他の新聞でなく産経を使ったのは、産経しか大きく扱わないからだろう。狙いを定めた「リーク」であろう。
 

産経が11日付けの2面トップで報じた記事の内容は、「大統領選で日本に対しても厳しい発言を繰り返してきたトランプが、これほど安倍を厚遇するのはなぜか」と問いかけ、「実は伏線があった」と続く。


以下は、昨年11月の米ニューヨークのトランプタワーでの初会談で、軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出した。「実はあなたと私には共通点がある」。怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」。


これを聞いたトランプは右手の親指を突き立ててこう言った「俺も勝った!」と。トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。というものだ。
 

問題は、ここで安倍が「勝った」と胸を張った理由は何かということになるが、直感的には慰安婦強制連行をめぐる安倍と朝日との10年戦争を指すものと推定される。安倍は第一次安倍内閣の2007年に「政府発見の資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定した。


朝日はこれをを無視し続けたが、14年になってついに慰安婦報道をめぐり、朝鮮人女性の強制連行の虚偽を認め、記事を取り消した。社長以下陳謝の記者会見に臨んだものだ。安倍はその後「閣議決定は批判されたが、改めて間違っていなかったことが証明されたのではないか」と強調した。


さらに「報道によって多くの人たちが悲しみ苦しむことになったのだから、そうした結果を招いたことへの自覚と責任感の下、常に検証を行うことが大切ではないか」とも述べた。まさに対朝日戦は安倍の圧勝に終わったことになる。
 

一方トランプの対NYT戦だが、これは選挙中の戦いが選挙後も白熱戦を展開した。朝日などの報道によるとNYTは大統領令で中東・アフリカの7カ国の国民が米国に入るのを禁止した問題を大きく報じ、1月28日の社説では「臆病で危険」と断定した。また、別の社説では「トランプ氏が真実に耐えられるのか」と、迫った。これに対してトランプは29日朝には、NYTを「偽ニュースで経営不振」とこき下ろし、「誰か適性と確信を持つ人が買収し、正しく経営するか、尊厳をもって廃刊させるべきだ」とツイッターで発信した。


トランプはこれを称して「勝った」と唱えたのだろう。もちろん大統領選で勝ったことも確かだ。しかし、NYTは逆に購読者数を伸ばし、昨年11月の大統領選後わずか7日間で約4万人を獲得。電子版の有料購読者は昨年10〜12月期に27万6000人増え、5年ぶりの大幅な伸びとなった。これが物語るものは、その実トランプは勝ってはいないとも言えることになる。おそらくトランプ支持層ではなく、国論分断でインテリ層がNYTに付いたものとみられる。
 

安倍の発言は昔1960年代末から1970年代にかけて日本で発生した言論出版妨害事件を若干ほうふつとさせる「危うさ」がないわけではない。同事件は、新宗教団体・創価学会と同団体を支持母体とする公明党が自らに批判的な書籍の出版、流通を阻止するために、著者、出版社、取次店、書店等に圧力をかけて妨害した事件だ。


当時の日本のマスコミは戦前戦中の軍部による言論抑圧へのアレルギーがなお後を引いており、こぞって批判を展開、公明党がその路線を大きく転換するきっかけとなった。これを他山の石として自民党政権は言論抑圧と受け取られることに細心の注意を払ってきた。
 

安倍のようにメディアの報道を勝ち負けで判断する発言は、ともすれば民主主義にとって「危うさ」が大きいと受け取られやすい。憲法のうたう言論の自由に抵触しかねないからだ。しかし、安倍にそこまでの意図はない。ことの本質は長年の“宿敵”朝日に対する意趣返しであろう。ヒトラーや日本の軍部なら批判などせずに、弾圧を実行に移す。安倍からはその気配など全く感じられない。


一方朝日は報道機関としての中立性を社是で標榜しながらも、実態はそれを否定している。安倍は14年に国会答弁で「安倍政権打倒は朝日の社是」と発言している。この発言は同社の元朝日新聞主筆の故・若宮啓文が、評論家から「朝日は安倍というといたずらに叩(たた)くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか」と聞かれて「できません。社是だからです」と答えたことに立脚している。


朝日がなすべき事は、この「社是」を見直し、自民党政権への“偏見”から脱却することだろう。まあ、無理だろうが。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月12日

◆日米会談は安倍優勢勝ちの様相

杉浦 正章



トランプ、経済ナショナリズムを封印
 

「聞く耳を持つ」側面が出た
 

たった30数分の首脳会談が物語るものは、首相・安倍晋三もトランプも事務当局の作った文書を確認しただけということだろう。従ってアジア太平洋の安全保障では、満額回答。貿易経済に関してはトランプがあえて持ち出さず、新たに作る「財務相麻生・副大統領ペンスらの枠組み」への先送りで激突は回避。欧州、メキシコ、豪州首脳から総スカンで四面楚歌のトランプは明らかに安倍との会談に活路を求めたことになる。


この結果首脳会談から見る限り、6対4で安倍が優勢勝ちした。トランプは選挙中の過激な発言を修正した結果となった。トランプは経済ナショナリズムを封印し、日米安保重視の共和党の姿勢を踏襲したことになる。今後安倍に“つけ”が回ってくることはあっても、日米関係は好調な滑り出しとなった。
 

といっても、尖閣に安保条約適用など極東安保関係はオバマとの合意が踏襲されただけだ。従ってこれはトランプ流の高値をふっかけ、値引きする交渉の術中にあったといえる。しかし、トランプが「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と言明したのには驚いた。歴代大統領の基本姿勢は「日本を防衛してやる」であり、トランプ自身も選挙戦で米軍撤退に言及するなど、一番強硬であった。おそらく歴代の安全保障政策を踏襲する国防長官マティスや国務長官ティラーソンが極東情勢の重要さをトランプに進言し、これをを聞いたことが最大のポイントだろう。


つまりトランプは「聞く耳」を持っているということだ。加えて緊迫感を増す極東の情勢への対処は、米国の世界戦略の礎であり、トランプはようやくこれが分かって来たことを意味する。
 

さらに安保関係で重要な点は前日トランプが習近平と電話し、「一つの中国」を確認したことだ。ホワイトハウスによると、両首脳の電話会談は「非常に和やか」なもので、幅広い話題について長時間にわたり意見交換したという。


トランプは、昨年12月、台湾総統の蔡英文と異例の電話会談を行い、米メディアに対して「一つの中国」政策を疑問視する発言をしたが、これを明確に修正したことになる。これは歴代米政権が維持してきた「一つの中国」政策に戻ったことになり、米中関係ののどに刺さったとげは、いとも簡単に抜いてしまった。おそらくキッシンジャーが影響しているのだろう。


ということは日本にとってはニクソンの悪夢「日本頭越しの米中接近」がいつ起きるか分からないことを意味している。警戒する必要がある。トランプとしては安倍と安保上の接近をすることで、中国が「誤解」して暴発することを避けたとも言える。こうしてトランプは選挙でのドラスティックな発言から現実路線へと舵を切りつつあるということになる。
 

一方貿易経済問題は経済閣僚の議会承認が遅れており、本格的に動き出すのはまだ先であろう。安倍の提案した「枠組み」はその意味でトランプの独断専行を阻止することでもきわめて有効な一打であった。「枠組み」は、誰も気付いていないが池田内閣で1961年に発足した日米貿易経済合同委員会と酷似する構想だ。


両国閣僚による同委員会は佐藤内閣では日米繊維交渉が最大の議題になった。当時の通産相田中角栄が、アメリカの主張に譲歩し、繊維業者の機織り機を政府のカネで買い上げて廃棄するという奇策に出てまとめた。その後休止状態にある。「枠組み」は自動車問題、金融為替問題、インフラへの事業協力などを話し合うことになる。日本側としては時間稼ぎになるが、なかなか安倍の目指す「日米の相互利益の追及」というわけにもいくまい。


会談後トランプが「貿易関係では自由で公平を重視し、日米両国が恩恵を受けなければならない」と発言したが、これはかつての赤裸々な保護貿易主義からの明らかなる転換を意味する。会談では円安批判も出ないし、自動車輸出への批判も出なかった。ディールの先送りで安倍、トランプ双方の利益が一致する。安倍にしてみれば時間を稼げるし、環太平洋経済連携協定(TPP)にしても、トランプを翻意させるよう根回しが可能となる。


一方で、トランプは、日米激突の構図を避けることにより、世界的な孤立無援の状況に突破口を開くことができるのだ。今年中と決まったトランプ来日までにめどを付けるよう迫られるかもしれない。
 

こうした中で米国のマスコミは、トランプに“荷担”した安倍にかんかんだ。中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一時禁止した大統領令ついて安倍は「入国管理や難民政策は内政問題なのでコメントを差し控えたい」などと突っぱねたのが気に入らなかったとみえる。


朝日によると、 NBCニュースの政治担当ディレクター、チャック・トッドはツイッターで「メイ英首相よりもさらに、日本の安倍首相はトランプ大統領に取り入ろうとしている」と投稿。米タイム誌(電子版)は「首相は記者会見で大げさに大統領をほめた」などと皮肉った。ニュース専門局MSNBCのアナリスト、デビッド・コーンもツイッターで「こんなに大統領におべっかを使う外国の首脳は見たことがない」と述べているという。


これは坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの類いで、他国の首相に対して失礼千万であり、極東の緊迫した情勢下での日米蜜月は米国の利益に直結するという大局など全く頭に入っていないうつけの類いだ。ホワイトハウス記者団も質が落ちたものだ。
 

一国の首相のフロリダの滞在費まで問題にした。問題が提起された背景には、トランプの不動産ビジネスが大統領職と利益相反を起こさないかとの懸念がある。米メディア記者は八日の大統領報道官スパイサーの定例会見で追及したが、ホワイトハウス側は、安倍夫妻の滞在費はトランプが負担し、日本側が支払うことはないとの考えを示した。一国の首相の滞在費まで問題として追及するとは、あきれかえる。大局を見よといいたい。


少なくとも日本の記者はこれほど失礼な発言は恥ずかしくて出来ない。まるで何でも扇情的に報道する米国伝統のイエロー・ジャーナリズムの復活のようだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2017年02月09日

◆首脳会談の“陰の主役”は中国

杉浦 正章
 


日米同盟は対中抑止力強化で一致 
 
南シナ海のさらなる侵略は米中激突を生む
 

10日の日米首脳会談の“陰の主役”はどう見ても中国だ。トランプ側近らの対中強硬発言はただ事ではない。対中戦争を公然と口にしてはばからない。来日した国防長官ジェームス・マティスは“狂犬”と呼ばれる紳士だが、ホワイトハウス側は“極右の火炎放射器”スティーブン・バノンを始め“対中主戦論者”が占めている。


トランプは今のところその主戦論に乗っているかに見える。対ソ冷戦における“極東の番犬”と日本を位置づけ岸信介を安保改定に駆り立てたのはアイゼンハワーだが、同じドイツ系移民の子孫トランプも首相・安倍晋三をけしかけ、日米同盟を対中牽制色の強いものとするだろう。その思惑にどこまで安倍が乗るかだが、中国と北朝鮮を意識した場合、懸念の共有は当然であり、東・南シナ海をにらんだ対中抑止力の強化での一致は確定的であろう。
 

誤解を避けるためにマティスの日米安保に関する姿勢を分析すれば、きわめて落ち着いたものだ。記者会見で「外交官による解決がベストであり、今のところ劇的な軍事行動をとる予定はない」と対中戦には否定的だ。しかし「中国は南シナ海で、この地域の国々の信頼を引き裂いた」と批判、オバマの「航行の自由作戦」を引き継ぐ考えを強調した。また北朝鮮に関しては「アメリカと同盟国に対するあらゆる攻撃は撃退され、あらゆる核兵器の使用も圧倒的な攻撃に遭う」と、強い牽制色を打ち出している。
 

威勢がよいのはホワイトハウス側だ。まずバノンは「米国が5年から10年の間に南シナ海で戦争をすることになると思わないか」と発言した。5年から10年とは遠い先のことで、トランプ政権がまだ続いているかどうかは分からない。しかし、南シナ海での戦争に直接言及した大統領側近は初めてであり、いかにもダイナミックな構想を抱いているかのようである。中国がパラセル諸島、スプラトリー諸島にに続いて最後のとりでとして狙っているフィリピン沖のスカボロー礁の軍事基地化に乗り出せば、トランプは黙っていないだろう。


バノンと双璧をなすのが反中国のばりばりで大統領補佐官のピーター・ナバロだ。外交専門誌「フォーリン・ポリシー」で、南シナ海におけるオバマの無策が中国の進出を許した点を強調「アジアの同盟国を支援するためレーガン政権時代の『力による平和構築』に回帰すべき」と主張している。


さらに目をみはるのは、著書『米中もし戦わば−戦争の地政学』で、「世界史を概観すると、1500年以降、中国のような新興勢力がアメリカのような既存の大国に対峙した15例のうち11例において 戦争が起きている」と分析、超大国と新興大国の激突は避けられないとの見通しを述べている。またナバロは「歴史を振り返って分かることは、中国共産党が政権獲得以来60年以上にわたって武力侵略と暴力行為を繰り返してきたという事実である」と看破。


チベットやウイグル、中ソ国境紛争、台湾海峡危機、沖縄県・閣諸島をめぐる日中の緊張などを紹介した上で、軍事力など「力による平和」で日本などの同盟国を守る必要を訴えている。トランプと台湾総統蔡英文との電話会談を実現させ、トランプに「一つの中国」政策の見直しを示唆させたのもナバロであるようだ。怒り心頭に発した中国が厳重抗議したのは言うまでもない。
 

中国側はこれらの発言に関して外務省報道官が「一つの中国の原則は中米関係の政治的基礎であり、交渉は不可能だ」と発言。英字紙チャイナ・デイリーは「トランプ氏が一つの中国の見直し発言を繰り返すなら、中国は本気で立ち向かう」と警告している。しかし習近平以下首脳らは「唖然(あぜん)」として見守っているかどうかは別として、一切沈黙を守っている。まだ、トランプ独特のディールの可能性があると見ているようでもある。


トランプが中国がもっともいらだつ問題をあえて取り上げるのは、貿易、為替などで成果を勝ち取るためのディールであるという判断があるのではないか。事実、中国側が怒れば怒るほどディールは成功へと導かれるのであり、商売人トランプの真価はここで発揮されるというわけだ。米国の貿易赤字の47.3%が中国に対するものであり、日本は8.4%で5分の1にすぎない。「貿易赤字が二番になった」と日本のマスコミや経済界が騒いでいるが、トランプの最大のターゲットは中国にあると見ておいた方がよい。
 

しかし、ディールとだけ軽々に判断することは、読みを間違えるかもしれない。トランプの対中包囲網作りは並大抵ではない。就任前後から欧州諸国首脳やプーチン、蔡英文らとの電話会談などを繰り返しているが、中国とは何の接触もしない。これは無言の対中包囲網へと動いていると見ることが可能だ。中国首脳はひしひしと無言の重圧感を感じているはずだ。そしてトランプは安倍との会談にその流れを収れんしようとしているのだ。


英国首相のメイ、ヨルダン国王のアブドラに次いで3人目の首脳会談だが、その厚遇ぶりはゴルフ会談が象徴しているように並大抵ではない。丸2日の会談は、明らかにメイを大きく上回る待遇だ。この安倍への大接近は、確実に対中戦略での安倍取り込みにある。米戦略は祖父岸を冷戦で取り込み、孫の安倍を対中戦略で取り込むというわけだ。


その危険性を左翼や一部マスコミは指摘するが、中国の軍事大国としての膨張路線の方がもっと危険で現実味がある。日米が親密に結託して初めて抑制できることは言をまたない。北の核ミサイルを事実上容認し、野放しにしている中国の戦略に対抗するためにも日米同盟強化は不可欠の流れであろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月08日

◆日米ゴルフ会談は極東安保の基軸となる

杉浦 正章



首脳会談の最重要ポイントで快挙だ
 

民放のコメンテーターなる者どもが口をそろえて首相・安倍晋三のトランプとのゴルフ会談を批判しているが、方向音痴で浅薄だ。大状況を見失っている。日米ゴルフ会談は祖父岸信介がアイゼンハワーと行って以来の快挙だ。岸はゴルフ会談で日米安保条約改訂の基礎を築いたのだ。日本を取り巻く安保情勢を見るがよい。


国防長官マティスが就任早々日本に駆けつけたのは、中国と北朝鮮による極東の危機がそれだけ切迫していることを意味する。安倍がたとえ短期で終わりそうな不人気大統領でも接触を深めるのは、日米同盟を最重視するからにほかならない。たとえゴルフでも接触時間が長いということは、肝胆相照らす仲になり得るということであり、安保上の問題が発生したときに、この個人的な関係がいかに役立つかは今後の歴史が証明するだろう。
 

ゴルフ会談批判は、中東7か国の移民受け入れ問題批判と絡めたものが多いが、筆者が前から述べているように、移民問題は受け入れている西欧諸国と米国に限定された問題である。おまけに米国内で訴訟の応酬が続いていることが物語るように国内問題である。国内問題を一国の首相が批判すれば内政干渉になる。


コメンテーターらは、批判してシリア難民を日本が受け入れよというのか。冗談ではない。中東の権益で歴史的にあまたの利益と繁栄を享受してきた米欧と、日本とは自ずと異なる対応があってしかるべきなのだ。
 

そこでゴルフ会談だが、安倍が最初の会談でゴルフクラブを贈呈したことが端緒になっているのだろう。四面楚歌のトランプにとっては「安倍はういやつ」との感情が芽生えてもおかしくない。安倍から働きかけたようなことをトランプは言っているが、そうではあるまい。しかしこればかりは鐘が鳴ったか撞木がなったかの類いかもしれない。ゴルフクラブ贈呈には、“布石”があったであろうからだ。官房長官菅義偉も「最初に会談したときに安倍総理大臣からゴルフクラブをプレゼントした。


そういう中で『今度やりましょう』ということになった」と説明している。安倍は、首脳会談のあと、トランプとともにアメリカの大統領専用機・エアフォース・ワンで、大統領の別荘があるフロリダを訪れ、ゴルフや夕食会に臨む。1957年の岸訪米の際と酷似している。違うのが岸のケースはサープライズであったことだ。


産経によると、会談後アイクは「午後は予定がありますか?」と尋ね、岸が「別にありませんが…」と答えると、アイクが、「それではゴルフをしよう!」と誘ったという。昼食後、岸とアイクらはワシントン郊外の「バーニング・ツリー・カントリークラブ」に向かったが、岸の体格にぴったりあったベン・ホーガン製のゴルフセットも用意されていたという。スコアはアイク74、岸99、だった。1ラウンド終えてロッカー室に行くと、アイクは「ここは女人禁制だ。このままシャワーを浴びようじゃないか」と誘い、岸と2人で素っ裸でシャワー室に向かい、汗を流した。


アイクは記者団に「大統領や首相になると嫌なやつとも笑いながらテーブルを囲まなければならないが、ゴルフだけは好きな相手とでなければできないものだ」と最大のリップサービスを行ったという。
 

まさに破格の歓待であった。時は米ソ冷戦時代の初期であり、極東の備えを重視したアイクは、岸の取り込みに好きなゴルフを最大限活用したのだ。これが岸を勇気づけ、不平等条約であった日米安保条約の改訂に乗り出す端緒となったのだ。


そこで、孫の安倍が受ける歓待はまずエアフォース1での同乗である。筆者はフォードによる米大統領初来日の際に日本人記者代表としてただ一人エアフォース1に同乗したが、内部はホワイトハウスの機能がそのままだ。進行方向向かって左の窓際に廊下があり最後尾に記者や随行が数人座れるスペース。テレックスが所狭しと置かれて作動していたが、いまはIT機器の進歩でおそらく別室にこじんまりとしているだろう。


右が大統領の使用する空間だが最前列に会議室、次いで応接室、寝室、浴室などがある。最近写真で内部を見たがほとんど変わりはないとみられる。この応接室で安倍は打ち解けた雰囲気の中でトランプと会談するのだろう。
 

次いでゴルフ会談だ。NHKによるとトランプは5日、アメリカのスポーツ専門のラジオ局のインタビューに答え日米首脳会談のあと、みずからの別荘がある南部フロリダ州で安倍とゴルフを行うことを明らかにした。そのうえで、「すばらしいことだ。ゴルフのほうが昼食以上に親しくなれる」と述べ、ゴルフを通じて安倍と親睦を深めたいという考えを示した。これはアイクの岸に対する対応と酷似している。


また、「安倍総理大臣はいいゴルファーか」と質問されたのに対し、トランプは「わからないが、安倍総理大臣がゴルフを好きなことは知っている。私たちはおおいに楽しむだろう。うまいかどうかは問題でなく、安倍総理大臣は私のパートナーになるだろう」と述べた。これはトランプが、娘のイバンカと同様に安倍に好感を抱いていることを物語る。


トランプはイバンカから「あなたは安倍晋三首相に従っていればいいのよ」と忠告を受けたとの話を、日米電話会談で安倍に紹介したという。イバンカが安倍を「非常にクレバーな人だ」と評価していたとも話したという。一方安倍は側近に「トランプ大統領は民主的な手続きで選ばれた唯一の同盟国の正当なリーダーであり、敬意を持って対応するのは当然だ」と語っている。菅も「少なくとも選挙によって当選した大統領だ。その大統領と信頼関係を築くことは極めて重要だ。」と意義を強調している。
 

日米関係を長年観察しているが、最初の首脳会談前にこれほど、大統領と日本の首相の“対話の環境”が整った例を知らない。安倍がいち早く就任前のトランプと会談したことが奏功したことは言うまでもない。加えて最重要の安保上の問題も安倍・マティス会談でおおむね処理された。大統領との個人的な関係樹立と安保での合意は、トランプ政権下での日米緊密化の方向を確かなものにしたと言える。


もちろん自動車問題、米国の雇用問題、公共事業への参画の問題など通商経済問題の難問は横たわるが、対話の環境が確立した限り、問題の解決策は「後から貨車で来る」くらいのものであろう。言うべきことを言える仲を作るのが先なのである。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月04日

◆マチス、中国・北の「誤算」回避を狙う

杉浦 正章



安倍は“切れ者”を味方に付けた


日米関係の急所である安全保障問題が、マッチポンプのごとき米国の対応急転でオバマ政権の方針継承で落ち着いた。首相・安倍晋三にとっては米国防相マチスとの会談は10日の首脳会談に向けて、大きなブレークスルーとなる。まず安保で合意しなければ、経済も通商も進まないからだ。トランプにしてみれば、安保に無知なるが故に核の傘の否定と米軍撤退示唆という高値を吹きかけ、値引きして元のさやに収めただけのことだ。


期せずしてか、それとも狙ったか、一銭もかけずに日本に恩を売る形となった。だから政府はもちろん、マスコミも「尖閣、日米安保適用」などと諸手を挙げて喜ぶ話ではあるまい。人がよすぎる。


もっとも、より重要な側面がある。それは中国と北朝鮮の誤算による武力行使を未然に防ぐという意味だ。極東に「力の空白」ができたという誤算をさせないことが必要なのだ。国防総省は全世界を見渡して、トランプ発言修正の優先度を北大西洋条約機構(NATO)でなく、日米同盟に置く緊急性があったのだ。加えて日本の軍事大国化を未然に防止する意味合いも大きい。
 
日米合意は要約すれば@日米が同盟の強化を確認Aマティスは、対日防衛義務や核の傘による拡大抑止提供などを明言 Bマティスは尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用範囲であると再確認C北朝鮮の核・ミサイル開発への対応では、日米、日米韓の安全保障協力が重要との認識で一致、といったところだろう。国防長官が政権発足2週間で来日した例はない。


最近ではオバマ時代にゲーツが9か月後、ブッシュ時代にラムズフェルドが2年10か月後といった具合だ。政府筋によると来日を早めたのは極東情勢に緊急性があったからだ。同筋はマチスが「日米関係は試すまでもない。米国の政権移行期に乗じて、中国や北がつけ込んでくるのを防ぐためだ。」と漏らしたと言うが、その通りだろう。事実、北はICBM の実験を行おうとしており、中国は尖閣への接近、領海侵犯、空母による示威行動を繰り返している。
 
もともと米国は尖閣問題でのコミットメントを明言してこなかったが、オバマ政権になってから、中国は首相・野田佳彦の尖閣国有化発言への反発とオバマの安保政策の“やわ”なところに目を付けてか公船の尖閣接近が頻繁となった。この結果、安保条約5条の適用を国務、国防両相も、オバマ自身も14年になって初めて明言せざるを得なくなった経緯がある。尖閣を失うと言うことは米国の極東戦略の拠点を失うに等しい象徴性があるのであり、トランプ政権も継承せざるを得ないのは火を見るより明らかなことであった。
 
マチスによるトランプ発言修正のポイントは「日米がともに直面しているさまざまな課題、そして北朝鮮の挑発などにも直面し、私としては1年前、5年前と同じく、日米安全保障条約第5条が本当に重要なものだということを、とにかく明確にしたいと思った。それはまた5年先、10年先においても変わることはないだろう」と述べた点だろう。そこには長期にわたり日米協調で極東、ひいては南シナ海から中東にかけての安全保障の「礎」を確保したいという思惑がある。


トランプの言うように、駐留経費を理由に米軍を撤退させ、日本の核武装が進めばこの基本戦略が成り立たなくなるのだ。とりわけ、日本の核武装は米国にとって極東に軍事大国が出現することを意味しており、米国の基本戦略に甚大な影響をもたらす。だからこそ「5年先、10年先」においても変えたくないのであろう。
 
トランプの「日本の防衛を続けるにしても公平な支払いが必要」という、駐留米軍経費の増額要求については、マチスは言及しなかったといわれる。訪日の狙いはトランプ発言への日本の懸念を掌握するところにあり、米国からの具体的要求は避けたいという気持ちがあったものとみられる。しかし、今後米国が駐留経費の負担像を要求してくるかと言えば、まずないだろう。年間7600億円の分担と負担割合が74.5%は世界の中でもぬきんでており、要求の根拠に欠けるからだ。


もっとも日本の軍事費は世界第8位だが、対GDPの防衛費の割合が1%で世界で102位という現状を、今後米側が指摘してくれば、弱いところを突かれることになる。今後トランプが“禁じ手”の貿易と安保を両天秤にかけて、ディールを求める可能性は依然残っていると見なければなるまい。
 
懸案の普天間基地の辺野古移転についても、トランプ流理論でいけば不要と言うことになるが、マティスは方針を変えなかった。「解決策は二つしかない。一つは辺野古、もう一つも辺野古だ」と明言している。これも米戦略の重要な要(かなめ)を失いたくないのであり、当然だ。


こうしたマチスの姿勢をトランプが支持するかどうかだが、トランプは就任後もマティスを「専門家」として信頼する発言をしており、おそらく極東安保の大きな俯瞰図を変更する可能性はないだろう。いずれにせよ、安倍は切れ者マティスを“味方”に付けた感じが濃厚であり、会談そのものは成功と見るべきであろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月02日

◆安倍は硬軟両様で“トランプ調教”に臨め

杉浦 正章



切り返せば耳を傾ける習性も
 

トランプを理解させるために首相・安倍晋三は子供の絵本のような数枚のペーパーを渡し、やさしく図解して説明する必要があるのではないか。まるでかみつき犬のように手当たり次第に牙をむきだしているトランプが、今度は認識を誤り、筋違いの対日為替政策批判に出た。安倍は予算委できっぱり「円安誘導は当たらない」と全面否定した。これが10日の会談前に伝わる事は言うまでもない。


安倍は硬軟両様を使い分け、自動車、為替、環太平洋経済連携協定(TPP)ではゲーリー・クーパーのごとく毅然として「友情ある説得」を展開すればよい。一方で、ウインウインの関係樹立を目指した前向きの提案を、安全保障、新幹線、橋梁建設技術などの公共事業の面で行うことが必要だ。首脳会談は知性対感情の戦いになりそうであるが、トランプはごまをすれば馬鹿にして、切り返せば耳を傾ける習性がある。


またイスラム圏と「特別な関係にある」西欧諸国首脳の「トランプの移民排除はけしからん」論に同調する必要などさらさらない。安倍とトランプがゴルフをすることは日米連携の大局からはいいことだが、発言に気をつけないと目立ちすぎて、世界のマスコミが“皮肉る”危険性がある。
 

トランプは人の意見をすぐに採用するたちである。誰も気付いていないが対日為替批判もフォードCEOの入れ知恵だ。トランプは先月24日、ホワイトハウスで米自動車メーカー大手3社の首脳と会談した。この席でフォードCEOのフィールズが、自社の対日売り込み努力の欠如を棚に上げて、「TPPは貿易相手国による為替相場への介入に対処していない」と指摘、大統領の脱退決定を高く評価。その上で「すべての貿易障壁の根源は為替操作だ。TPPはこの問題に適切な対応を取っていない。悪い取引からの撤退を決めた大統領の勇気に感謝している」とお追従をしたのだ。


これにトランプは悪乗りして対日批判となったに違いない。だからトランプが「中国や日本がやってきたことを見てみろ。米国が黙って座っている間に為替を操作した。日本は円安に誘導して、われわれはばかを見た」と発言したのであろう。通貨問題は総じて国家主権の問題であり、他国首脳が異例の口先介入すべき問題ではない。
 

安倍は予算委で「通貨安誘導は当たらない。必要があればそういう説明をする」ときっぱり否定した。もしトランプに日銀の異次元の金融緩和を否定する意図があったとなれば、アベノミクスの根幹の否定であり、デフレ脱却という国家目標にまで切り込んだ内政干渉ということになる。世の中には黙認できることとできないことがあることをトランプに“よく分かるように”知らさなければなるまい。一部でささやかれるように貿易協定の中に為替制限条項など挿入すれば、まさに貿易・為替戦争になりかねない事態であり、論外である。
 

安倍は絵本でドイツ車が日本でいかに売れているかを説明する必要がある。15年の数字ではフォルクスワーゲンが前年比4.4%増の68万5,669台、メルセデス・ベンツが5.3%増の28万6,883台、アウディが3.7%増の26万9,047台だ。なぜ売れるかと言えば高級志向が日本の国民性に合致するからだ。だいいち日本の関税はゼロで、米国の関税は2・5%だ。加えて欧州車に比べてアメリカ車のメーカーは日本で全然広告を出していない。米国は最大の自動車市場であり、米国メーカーはわざわざ日本向けに右ハンドルの小型高級車を製造して販売するまでに至らないのだ。ペイしないと見ているのだ。デザインも日本人好みではない。日本車も米国好みのデザインのものは日本でも全く人気が沸かない。デザインも高級感も日本車や欧州車に劣るものを製造しておいて、為替操作のせいにするフォードの根性はあきれる。


筆者はフォードのムスタング・マッハ1で音より早くワシントン市内を駆け回っていたが、70年代のアメ車のような魅力はもう日本人は感じない。ひとえに米国メーカーの努力不足だ。安倍はこの実情を諄々(じゅんじゅん)と説けばよい。自動車メーカーが米国で作り出した雇用は150万人だ。
 

また安倍はトランプにTPPの重要性、とりわけ対中包囲網という戦略的色彩の濃い協定であることを絵本で説明する必要がある。国会で安倍は「1対1のFTAではなく、成長著しいアジア地域においてマルチのルールを作ることの重要性を説く」と説明した。


トランプは「永久に離脱」と意気軒昂だが、安倍が「腰を据えて説明する」としており、長期戦でよい。その間英国との自由貿易協定(FTA)やEUとの経済連携協定(EPA)などを、TPPを参考にどんどん推進して、米国を置いてけぼりにしてしまえばよい。やがてトランプも自らの立脚点が保護貿易でなく自由貿易であることに気付くであろう。途中で政権がつぶれれば新政権に働きかければよい。
 

同盟関係については、電話会談でトランプが国防長官ジェームズ・マティスの訪日について「よろしく」と述べたことが物語るように、かつての核保有論は影を潜めた。おそらく75%を超える日本の米軍基地の負担をさらに求める非常識さも薄れているだろう。


問題は防衛費をGDPの1%以内とする三木武夫が決めた方針の撤回を求める可能性があるが、これには柔軟に応じた方がよい。極東をめぐる環境悪化はそれを必要としているのではないか。
 

また朝日が「トランプ国会首相守勢」と報じたのに乗じてか、民主党が、トランプの7か国移民の入国禁止を安倍が欧州諸国首脳のように批判していない点を、鬼の首を取ったように追及している。しかし、問題の実相をとらえていない。米欧はもともとイスラム圏との結びつきが強く、それこそ「特別な関係」にあるから、トランプを批判するのであって、日本までが同調する必要などさらさらない。難民受け入れが世界の安定につながるように、日本のアジア、中近東、アフリカなどへの政府開発援助(ODA)や各種援助がどれほど難民流出防止に役立っているかを知るべきである。


日本の支出総額は過去10年間で10兆4000億円に達し、対中ODAは、1979年に開始されて以来6兆円を上回る額である。中国難民やフィリピン難民などが発生しなかったのは日本の貢献によるところが大きい。


そもそも中東難民は日本では生きていけない。イラン人の日本への渡航が80年代末期から急増して社会的な混乱を招き、ビザ相互免除協定を終了させて減少させた事は記憶に新しい。難民が生じる前に、経済的に手を打って防止するのがイスラム諸国の住民にとってももっとも幸せなのであって、安倍が明言したようにシリア難民を受け入れる必要などない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)  

2017年02月01日

◆「トランプ政局」はニクソン政局と酷似

杉浦 正章
 


米紙、「側近バノン」で破滅に向かうと予測
 

半世紀前のウオーターゲート事件によるニクソン辞任をホワイトハウス記者団の端くれとして実際に取材した経験から言わせてもらうと、「早くもトランプ政局か」ということになる。さらに加えれば、ニクソン同様にトランプは死んでも国葬にされないのではないかとすら思いたくなる。移民排除の大統領令に端を発した政局は役者には事欠かない。


ニクソンを辞任に追い込んだなつかしい「院内総務」という政党トップの名称も使われ始めた。民主党院内総務チャック・シューマーが活躍し始めた。ニクソンは副大統領にやはり共和党下院院内総務のジェラルド・R・フォードを任命したが、側近は「彼が次期大統領になると思うと追及の手も緩むだろう」とうそぶいたものだ。ところがニクソン政局は「後任は誰でもいい」というところまでに至り、ニクソン辞任・フォード就任となったのだ。


トランプの場合ニクソンと根本的に異なるのは怨嗟の声が米国内だけにとどまらず、西欧、中東、アジアにまで広がり、内外呼応した政局に発展しつつあることだ。さらに異なるのは政権発足早々という異例の政局であることだ。この流れは増幅しこそすれとどまることはないだろう。
 

世界中に高まる批判、そして米国内では違憲訴訟が各地で相次ぐ。司法省ではトップから批判の声が上がり、トランプは同省長官代行イェイツを音より早く「You're fired」とクビにした。イェイツは「大統領令が合法かどうかは確信が持てない」として、省内に「大統領の弁護をするな」と通知したのだ。


さらに火の手は国務省にも及ぶ。省内で大統領令に反対する職員が数百人の署名を集め、反対の声明を打ち出そうとしているのだ。政権内部からの造反は、ウオーターゲート事件と相似形をなす。政権中枢からディープスロートとして、ワシントンポスト紙ににリークし続け、ニクソンを追い詰めた例と似ているのだ。米国の民主主義は衰えていない。ワシントン州では司法長官・ファーガソンが、違憲訴訟を提起した。


同州知事ジェイ・インスリーは「移民の人々が苦しんでいる惨状をトランプ氏が『ナイスでビューティフル』などというのは許せない」と訴えた。異例なことに前大統領オバマまでが我慢しきれないとばかりに、「大統領令は基本的には賛成しない」と、批判の火ぶたを切った。


前述の院内総務・ チャック・シューマーは上下両院の議員100人余りとともに並んで演説し、「この大統領令でアメリカはより危なくなり、アメリカらしさも失われる」と厳しく非難したうえで、「すべての力を使って大統領令を無効にする」と述べ、トランプ政権との対決姿勢を鮮明に打ち出した。シューマーは目に涙を浮かべて演説したが、トランプの反応はゲスの極みのようであった。「誰かが演技指導したのじゃないか。シューマーを知っているが泣き虫ではない。あれは嘘泣きだ」と毒づいたのだ。他人の愛国の涙を臆面もなく「嘘泣き」と批判する神経は異常だ。


このトランプの政治姿勢はきわめて興味深い。なぜなら、その反応は確実に国民やマスコミを挑発して「倍返し」に遭うからだ。普通の正常な政治家はこうした場合は、挑発に出れば批判を増幅してしまうから損だと判断する能力があるが、トランプは逆だ。その判断能力がなく、政治家にとって最大の欠陥となる“感情丸出し政治”を予感させる。


移民排除の大統領令はいみじくも首席戦略官で大統領最側近のスティーブン・バノンの存在を改めて浮き上がらせた。トランプはまるでヒトラーの最側近ハインリヒ・ヒムラーのごときバノンによって、まさに自分こそ“演技指導”を受けているようだ。


バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わいしばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にしており、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、右翼ポピュリズム、排外主義などを中核的な思想としている。移民排除の大統領令はバノン独走という見方が強い。


本来は国土安全保障長官ジョン・ケリーが担当する問題だが、発表当日はマイアミ主張中で、知らされていなかった。次期国務長官ティラーソンや国防長官ジェームズ・マティスも発表まで知らされていなかったという。いわばクーデター的に大統領令を打ち出したのだ。君側の奸のごとくバノンがホワイトハウスで頭角を現し、米国の政治を牛耳ろうとしているのだ。
 

ウオール・ストリート・ジャーナル紙も社説でバノンを取り上げ「米国の民主主義にとって最悪なのは、白人寄りの不満政治を正当化することだろう。トランプ氏が約束したように、大統領は全国民を代表するべきなのだ。バノン氏が示す政治的傾向を注意深く見守る価値はある。こうした勢力を好きなようにさせておけば、トランプ政権は破滅に向かうだろう」と警鐘を鳴らしている。このバノンとメディアの戦いは、最終的にはメディアが勝つだろう。邪悪対正義の戦いであるからだ。
 

今後の焦点は議会がマスコミと並んでニクソンを辞任に追い込んだように、議会の動きが注目される。議会共和党も、2年後の中間選挙を考えたら、トランプでは勝てないことを早々に悟るだろう。


まず大統領令を阻止するには@大統領令に反対する法律を成立させるA関連予算を認めないBまだ4人しか承認していない閣僚の承認手続きを先延ばしにするーなどの対抗策が考えられる。最終的にはimpeachment
(弾劾)に至るかもしれない。ニクソンは弾劾が成立すると分かって、事前に辞任を表明した。また、最高裁が違憲の判決を下すかどうかも注目点だ。
 

ニクソンはウオーターゲート事件が発覚して辞任に至るまで2年間かかった。ホワイトハウス記者団の追い込みが本格化したのは1974年の1月頃からだから、それから8月の辞任まで半年以上かかった。トランプも容易には辞めない。


しかしニクソンの場合、突っ張りに突っ張ったが、辞めるときは押している記者団がつんのめるほどもろい崩れ方であった。どうも似たようなことになるような気がする。米国のマスコミの執拗さは尋常ではない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年01月31日

◆見えてきたトランプの“本性”

杉浦 正章



ディールの“弱点”も露呈
 

世界中がトランプの“本性”を探ろうと躍起になっている。外交ルートはもとより諜報機関を通じて情報を得て、その“真の姿” を描き出そうとしている。CIAのスパイ活動は公になった情報の分析が97%であると聞いたが、それなら筆者の手法と同じだ。


筆者は公開情報を数日かかって集めて、その上で“推理”を働かせる。したがって、記事の90%は推理である。しかも書く記事は情報量の10分の1である。情報収集には1つの記事で7時間から12時間かけている。


そこでまず就任前と就任後10日間のトランプの言動を分析・推理すれば、そこに見えるのは浅ましいほどの商人根性である。多くが「高くふっかけて値引きする」ところにある。それが英国首相メイ、メキシコ大統領エンリケ・ペニャ・ニエトとの会談に如実に表れている。これは早くもトランプの“弱点”が露呈したことになり、首相・安倍晋三を始め各国首脳は、今後この駆け引きの掛け値に引っかからないだろう。


なぜなら世界の名だたる指導者たちは、“政治駆け引き”でぬきんでているから存在しているのだ。ディールは、政治ど素人のトランプの専売特許ではない。まだいかなる会談もしていない中国とのディールが最大の焦点だ。
 

それでは米外交防衛の要である国務長官レックス・ティラーソン、国防長官ジェームズ・マティスら政権中枢は何をしているのだろうか。議会の公聴会を聞く限り、正常な感覚の持ち主だ。この米国の超エリートが、事態を掌握する能力がないはずはない。おそらく今のところは“ご乱心の殿”トランプに世界・国内の「反発」を実感させて、「方向を転換」を悟らせるような対応を基本としているのではないか。


両者共官僚組織の進言を重視している。とりわけマティスは国防総省からのアドバイスで最初の訪問国を日本とした可能性が高い。誰が見ても膨張政策の中国をにらんだ在日米軍基地は、米国の世界戦略の第一の要であり、これを毀損するような発言をしたトランプ路線を引き継げば、より窮地に立つのは日本ではなく米国であるからだ。横須賀の米第7艦隊は中東までをにらんだ存在なのである。
 

それでは、トランプ流「値引き」である譲歩の手法を実際の会談から分析する。まずニエトとの会談である。トランプはニエトに対して国境の壁の建設資金を要求したうえに、譲歩しなければ「会談しない」と脅しをかけていた。しかしハンサムな上に反トランプで世界的に男を上げているニエトは、会談しなくて結構とけつをまくった。トランプがどう出たかと言えば妥協である。両者は電話会談で「壁の負担については協議を通じて解決を目指す」事で合意した。ここにトランプの弱点が露呈した。強く反発すれば折れるのだ。
 

同様に値引きはメイとの会談でも如実に表れた。トランプはかねてから北大西洋条約機構(NATO)の存在を批判し続け、「NATOはテロに対応できていないから古い」などと表明し続けた。しかし、メイはおそらくトランプにNATOの軽視は自殺行為などと警鐘を鳴らしたのだろう。


メイが記者会見で暴露した「大統領、あなたはNATOを100%認めると言いましたね」という言葉は、おそらくトランプの本音であろう。それを公の記者会見で暴露するメイも相当な女だ。トランプがホワイトハウスの回廊で手を握ったくらいでは、“落ちない”のだ。トランプはメイ発言におたおたしていたが、熟練の政治家は単純なトランプを手玉に取るくらいわけもないことを知らされた一幕であった。
 

さらにトランプの変節を挙げれば、日本の核武装論である。選挙中トランプは在日米軍の撤退を示唆したかと思うと、北に対抗して核武装を勧めるといった具合だったが、最近では一切口にしなくなったばかりか、「そんなこと言っていない」と打ち消している。淺知恵で思いつき発言をしたが、日本の核武装は、世界戦略の激動を意味すると、専門家などから忠告を受けたフシがある。忠告したのはキッシンジャーあたりかもしれない。
 

また水責めなど拷問についてトランプは「拷問は間違いなく効果的で有用だと考えている。IS(イスラム国)が中世以来誰も聞いたことのないような行いをしているという時に、水責めがなんだというのか。私としては、『毒をもって毒を制す』べきだと考える」と意気軒昂だったが、マチスが否定的な発言をした。これに対するトランプの反応は「マチス氏は専門家なので尊重する」であった。ここで露呈した弱点は専門家の言辞には左右されるという側面だ。
 

では対日関係でどう出るかだが、トランプは選挙中二つの重要な発言をしている。その第一は「日本が攻撃を受ければ米国は軍事力を全面的に行使しなければならないが、米国が攻撃を受けても連中はテレビを見ている」と発言した点だ。


この誤謬はどこから来ているかと言えば、やはり70年代80年代の「安保ただ乗り論」からだろう。しかし安保条約には5条で米国の日本防衛義務、6条で日本の基地提供義務が明記されており、日本はその線に沿って対応しているだけだ。さらに昨年成立した安保法制で、米国に向かうミサイルの阻止など大きく戦略が転換されたことが分かっていない。無知という弱点をここでも露呈している。


第二は「公平な駐留経費の支払いが必要だ。さもなければ軍を撤退させる」発言だが、これも無知から来る弱点の最たるものだ。日本が駐留経費の75%を分担しており、これが、衰退気味の米国の世界戦略の要になっていることを知らない。これも無知の弱点だ。NATOや韓国が「100%重要」なら、「日本は180%」と言えといいたい。
 

さらにトランプは日本の規制が米国制自動車の輸入を制約していると繰り返すが、無知の弱点もいいところだ。米国製は大きすぎる上に、日本の消費者の精密指向にそぐわない。その証拠には日本車に匹敵する精密指向のドイツ車は売れまくっているではないか。


15年の数字ではフォルクスワーゲンが前年比4.4%増の68万5,669台、メルセデス・ベンツが5.3%増の28万6,883台、アウディが3.7%増の26万9,047台だ。買ってほしかったら他国に文句を付ける前に、米国メーカーに製品向上を指導すべきだろう。関税はゼロで門戸は開かれている。


トランプは克明にメモを取って人の話を聞くタイプであるらしい。見えてきたものは話せば理解出来る能力があると言うことでもある。

      <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)

2017年01月25日

◆安倍、「米国抜きTPP」不採用で“待ち”の姿勢

杉浦 正章
 

トランプ、的外れの「自動車譲歩」を狙う
 

環太平洋経済連携協定(TPP)問題の焦点は、日本がアメリカ抜きで発足に踏み切るか、それとも米国の翻意を促すかに絞られているが、どうやら後者の対米説得路線を取る方向が強まったようだ。24日の閣僚発言もその方向を示している。


一方トランプがTPP離脱の大統領令の中で「アメリカがTPP交渉から永久に離脱することを指示する」と述べていることが判明、少なくともトランプ説得は当面は困難な状況に立ち至った。これにより、TPPは当分実現性がないまま漂流状態に陥り、日本は“待ちの姿勢”で転機をうかがう可能性が強まった。トランプはさらに日本からの自動車輸入にまで無知をさらけ出した要求をし始めた。安倍は2月の首脳会談では言うべきことは言う姿勢を貫かなければなるまい。
 

トランプは日本からの自動車輸入について「日本では我々の車の販売を難しくしているのに、大きな船で数十万台の車が入ってくる」と選挙中の発言を繰り返し、自動車貿易で譲歩を迫る姿勢を示した。しかし、これは事実誤認に基づいた的外れの要求であり、無知をさらけ出している。日本からの対米自動車輸出には2・5%の関税が課せられる半面、米国からの対日輸出の関税は既にゼロであり、売ろうと思えば売れるが性能が悪くて売れないだけだ。おまけに現在ではホンダは9割超、トヨタは7割を米国で生産しており今後75%になる方向だ。日本の自動車メーカーは米国の雇用に大きく貢献していることをトランプは理解していない。


要するに先に指摘したように80年代の思考しかできない大統領であり、たとえ2国間交渉を呼びかけてきても安易に乗る必要はない。交渉の前提がでたらめでは、交渉のしようがないではないか。おみおつけで顔洗って出直して来いと言いたい。
 

一方TPPについて安倍は11月にブエノスアイレスで「米国抜きでは意味がない。根本的な利益のバランスが崩れてしまう」と述べていたが、その意味については米国を説得するつもりなのか別の方途を考えるのか不明であった。トランプの離脱方針決定後、オーストラリア、メキシコ、ペルーなどから米国抜きでも発足させるべきだとの主張が出されていた。


オーストラリアのターンブル首相は23日安倍に電話で米国抜きの発足に同調するよう求めた模様であり、安倍はことわった可能性が強い。その証拠に閣僚らが24日の閣議後の会見で一斉に米国抜き論への否定的見解を述べ始めた。
 

農水相山本有二は「日本としては協定の発効を目指して、粘り強く働きかける方針で、大統領令に署名したことは日本の姿勢に何ら影響していない」と述べるとともに「政権が始まったばかりで、全体が機能してくれば、TPPの考え方もおのずから変わってくるという期待感を持っている」と変化の可能性を強調。TPP参加国がアメリカを除く形での発効を検討していることについて、山本は「そうした道に進む考えは持っていない。アメリカ抜きという判断をした段階で、アメリカのTPP参加の可能性は無くなるので、従来のTPPの枠組みの中で貿易ルールを仕上げたい」と全面否定した。
 

官房副長官萩生田光一も「TPP協定は米国抜きでは意味が無く、米国抜きでは根本的な利益のバランスが崩れてしまうという認識だ。11か国での行動ということを前提として考えていない」と述べた。TPPを担当する経済再生担当相石原伸晃も「腰を据えてアメリカの理解を求めていくということに尽きる」と発言、副総理麻生太郎、外相岸田文男も同様の見解を述べている。
 

安倍自身は明言をしていないが「腰を据えて理解を求めていきたい」と述べるとともに「TPPは今後の通商交渉のモデルとなり、21世紀の世界のスタンダードとなることが期待される」と述べ、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や中国を含む東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの交渉に好影響があると説明した。


この首相発言から見る限り、当面は不可能にしてもトランプの説得に当たり、変心か、トランプ政権が早期に行き詰まり新大統領が方針転換するまで待つという“待ちの姿勢”を維持する方針のようだ。逆に安倍はEUとの交渉を促進し、早期に妥結にこぎ着ける方針であり、その土台としてTPPを活用してゆくことになろう。RCEPについては中国主導であり、これを日本主導に切り替えられるかどうかの瀬踏みを続けることになろう。


こうしてTPPは11か国の内部に異なる見解を抱えたまま漂流せざるを得ない状況となった。安倍があくまで対米交渉にこだわり、11か国での発足を選択しない背景には、基本的に損得勘定があるものとみられる。TPPに占めるGDPの構図は米国が60.4%、日本が17.7%で合計2国だけで78%を占める。多国間協定ではあるが日本にとって米国が占める割合がきわめて大きい。


簡単に言えば、オーストラリアの原料で日本が製造し米国に製品輸出すれば、関税はゼロになる図式だ。最大の消費国米国が抜けた場合、他の加盟国ではこれを補うことはできない。2国間交渉では達成できない譲歩を勝ち取ることができた側面もある。加盟していない中国や韓国の製品は低関税とはならないから、日本は有利になる。
 

逆に「米国抜き」なら日本は10か国の食品、原材料を無関税・低関税で輸入しなければならず、製品輸出の市場は限られる。米国が参加してこそ日本の帳尻は合うわけである。安倍が「米国抜きでは意味がない」と述べた謎はこれで解ける。


オバマはそれでも米国は帳尻が合うと判断する能力があったが、感情丸出しの保護貿易主義のトランプは理解する能力に欠けているのが実情だ。加えてTPPのプラス面は安全保障面でも大きなものがあった。膨張政策を続ける中国に対して環太平洋の「経済同盟」は包囲網としての役割を果たすことになったはずだ。いずれにしてもここはTPPの灯は消さないで長期的なスパンで対応すべきであろう。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年01月24日

◆日欧協調の対米同盟確認で突破口を開け

杉浦 正章



英独首相と安倍は軌を一にしている
 
本会議前に「首相は外交安保を得意分野だと思っている。そこからほころびが生ずる」と漏らして民進党幹事長・野田佳彦が本会議の代表質問に臨んだ。たしかに切り口は鋭かったが、ほころびを見出すまでには至らなかった。なぜほころばないかと言えば、野田発言はことを政争の具にしたいという下心があり、トランプ問題を長期的世界観から俯瞰すべき時という決定的要素に欠けているからだ。


英独など主要国首脳が、首相・安倍晋三と同様に安全保障重視の姿勢からトランプを説得にかかろうとしている。この流れは自由主義諸国にとって不可欠なものだ。日本は日米安保条約重視、欧州は北大西洋条約機構(NATO)重視でロシア、中国の野望を食い止める必要があるのだ。この線でトランプを説得し同盟を再確認する。まずこの突破口ができれば、自由貿易も経済問題もそれほど難しいものではない。
 

野田質問の鋭い部分を挙げれば「TPPでトランプ氏を説得出来るというなら説得出来るという根拠を示せ」「トランプを信頼すべき指導者と述べたが変わっていないか」の部分であろう。安倍の答弁はTPPについて「戦略的、経済的意義について腰を据えて理解を求める」と長期戦で取り組む構えを打ち出した。TPPは今後米国の変化を待つか米国抜きで推進するかの選択を迫られる。オーストラリア首相のターンブルは23日、安倍に電話して米国抜きでのTPP発効について打診しており、いずれにしても野田の「もう無理」との考えは時期尚早だ。
 

「信頼すべき指導者」発言への野田の疑問提示について、安倍は「信頼できる指導者であると確信が持てる会談であり、この考えは現在も変わっていない」と突っぱねた。これは政治感覚の問題であり、野田がさらに予算委などで追及するに値する問題だ。ただし米国民の過半数は安倍と逆の感情を抱いており、一国のリーダーとして今後トランプにサービスしすぎると、将来にわたって禍根を残すだけでなく、世界的に「ごますり首相」とされかねないから注意が必要だろう。トランプにそれほどの義理はない。
 

焦点の安保問題について、安倍は「日米は自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値の絆で固く結ばれた揺るぎない同盟国だ。できるだけ早期に会談し、信頼関係のもとに揺るぎない日米同盟の絆をさらに強化していきたい」と言明したが、この発言は物事を長期的なスパンでとらえている。


1951年に締結された日米同盟の絆は、無知蒙昧大統領が出現しようがしまいが変化するものではなく、変化させてはならないものの中核である。なぜなら南シナ海や台湾を「核心的利益」と位置づけ、東シナ海でも臆面もなく膨張政策を維持する中国と、大ロシア主義で領土を拡張し続けるロシアの存在は地球規模で見ても、看過できないものである。両国との対峙が極東と欧州でぐらつけば、喜ぶのは習近平とプーチンだけであろう。
 

この点でトランプに「NATOは古い」と批判された欧州諸国の首脳の発言を分析すれば、英国首相メイは「イギリスとアメリカが築いてきた特別な関係は、自由や民主主義、利益といった価値観に基づくものだ。我々は現在も、そしてこれからも貿易や安全保障の分野で強力なパートナーであり続けるだろう」と発言している。


移民政策をトランプに批判されたドイツ首相メルケルも「ドイツとアメリカを結びつけているのは、民主主義、自由、そして法律と人の尊厳を大事にする価値観だ。次期アメリカ大統領とは、このような価値観に基づいて緊密に連携したい」と発言している。両者の発言は安倍の発言と軌を一にしており、日米独のこの姿勢は5月のシチリアサミットに向けて、トランプの説得材料になる。


もっともメイはトランプの下品な女性蔑視発言について「女性に関するトランプ氏の発言には受け入れられないものがある。今後そうした発言があれば、ためらわずトランプ氏に指摘する」と強調しており、是々非々の姿勢ではある。
 

欧州では仏大統領オランドが「トランプ氏の行動には吐き気がする」と言っていたが、当選すると「アメリカ国民は、ドナルド・トランプ氏を選んだ。トランプ氏を祝福する」と変化した。筋が通っているのはメキシコの大統領ニエトの発言だ。ニエトは「壁に対する費用は払うつもりはないと」反発しただけではなく、「ムッソリーニやヒトラーはトランプ氏のような手法で台頭し、人間社会が経済危機後に経験していた状況や問題につけこんだ」と発言、警鐘を鳴らした。大国に対しても自国のために言うべきは言うという姿勢は、好感が持てる。31日にもトランプと会談する方向で調整中だ。
 

こうした情勢の下で、日本がどう動くべきかだが、安倍・トランプ会談は早いにこしたことはない。しかし、安倍が「様々なレベルで議論してゆきたい」と答弁しているとおり、外交は首脳外交ばかりではない。国務長官ティラーソンや国防長官マティスらは、議会での証言を見ても常識的な閣僚であろう。閣僚や自民党幹部が首脳会談に先行して訪米するのもいいだろう。政権移行チームへの事務当局同士の接触も頻繁に行うべきだ。こうした総合的な外交を通じて、安倍のいう「主張すべきは主張する」姿勢を貫けばよい。多国間で巻き狩りのように連携を取りトランプを翻意させるのだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年01月22日

◆米国版“がめつい奴”が矛盾撞着を露呈

杉浦 正章

 

虚構の“失業発言”と品位に欠ける国粋主義 


就任演説は選挙のプロパガンダから一歩も出ず
 

「米国第一」と唱えるのは自由だが、すべてを外国のせいにしてはいけない。トランプの大統領就任演説をつぶさに分析すればするほど、菊田一夫の戯曲「がめつい奴」を思い起こす。攻撃的な言葉の羅列、怒りの露骨な表現。そして想像を絶するような国粋主義。アメリカの利益は善であり、不利益は悪。虚構の矛盾撞着演説の根底に潜むのは白人至上主義。白人と言ってもトランプはWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)の国米国では一段下に見られるドイツ系の先祖を持つ。


戦後の大統領ではアイクと親しまれたアイゼンハワーがドイツ系だが、そのモットーは「物腰は優雅に、行動は力強く」だ。トランプは、似ても似つかぬ姿を露呈した。米国の分断を一層深くして、米国人の心の中に「南北戦争」時代をほうふつとさせる、深い亀裂をもたらした。
 

要するに大統領就任演説は、これまでトランプが選挙戦で発言してきた選挙のプロパガンダを国政のプロパガンダに格上げしただけのレベルであった。大統領職に就けば変化するのではないかという期待を見事に裏切り、自らが国民統一の核である事すら気付いていない。これまでの大統領が就任演説で述べてきた、敗者への配慮などかけらもない。


過半数を超えるクリントン支持者を「ドヤ顔」で、押さえつけるかのような品位に欠けるものであった。危険な国粋主義の兆候は紛れもなくその発言から分かる。「アメリカ第一主義」「アメリカ製品を買う」「アメリカ人を雇う」「アメリカを偉大な国にする」などなど、アメリカ賛美だ。
 

きわめて重要で看過できない矛盾撞着がある。それは「政治家は潤ったが、職は失われ、工場は閉鎖された」「工場は錆びつき、アメリカ中に墓石のごとく散らばっている」「こうしたアメリカの殺戮(さつりく)は、今ここで終わる」などと発言した部分だ。そして「雇用を取り戻す」とつながるが、そこには虚構の問題提起がある。なぜなら米国の失業率は昨年12月で4.6%であり戦後まれに見る完全雇用の状態だ。


米連邦準備理事会(FRB)が同月利上げに踏み切った最大の根拠として挙げたのはこの完全雇用である。完全雇用とは自発的な失業はあっても非自発的な失業は存在しない状態を言う。要するに働く意欲のないものが「失業状態」にあるのが現実なのであり、トランプはあたかも米国が失業者で満ちあふれており、これが中国、日本、メキシコのせいだというのだ。
 

中西部のラストベルト地帯から獲得した票を意識したのであろうが、ラストベルト地帯が鉄鋼生産や製造業から離脱、転換し始めたのは半世紀も前だ。70年代の同地域の労働運動の合い言葉はsteel(鉄鋼)とsteal(窃盗)をかけた「ジャップ・スティール」だったが、これが「チャイナ・スティール」に代わり、産業構造の大転換を迫られた結果、さび付いた鉄工所や製鉄炉が残存するのだ。日本ならすぐに片付けるが、国土の広い米国ではいちいち片づけてはペイしない。


トランプは墓石と言うが、問題の上面しか見ていない。アメリカの製造業は労働集約型の生産工程では低賃金の国に負けるのでこの領域から離れ、高付加価値製品の生産と先進的無人化生産方式に移行している。移行に成功したから現在の繁栄があるのだ。ラストベルト地帯はアメリカでも輸出量で一番の地域である。むしろ好況を謳歌しているのだ。トランプは選挙運動でいったい何を見ているのかと言いたい。そもそもの彼の世界観の多くが、対日関係を見ても70年代80年代の発想から成り立っており、認知症老人に多い若い頃の思い込みの幻影かと思えるほどの発言だ。
 

さらに北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しで、メキシコからの輸入に35%の関税をかけるというが、これも矛盾そのものだ。演説でも「保護こそが偉大な繁栄と力に繋がる」と驚くべき保護主義丸出しの方針を示したが、高関税政策はトランプの大切にする白人貧困層を直撃する。物価は高騰し中国製の安物でかすかすの生活をしている貧困層をさらに窮乏させることになるのだ。


もちろん財政出動による公共投資は一時的に景気を上向かせることができるが、せいぜい持って1年という見方が強い。だいいち、閣僚は誰を見ても大富豪か、株屋ばかりであり、これらの閣僚が弱者に対する的確な政策を打ち出せるかは疑問だ。2年後の中間選挙では馬脚が現れて、共和党が惨敗して過半数を割り、トランプがレームダック化するとの見方がある根拠はそこにある。
 

さらに危険な兆候は、政治も軍事も経験のないトランプが、“禁じ手”に出る事だ。それは安全保障と貿易不均衡を両てんびんにかけた得意のディールである。拡張主義の中国に「一つの中国」政策の見直しで圧力をかけ、貿易で譲歩を勝ち取ることはやむを得ない。


しかし同盟国日本に通商問題で脅して、在日米軍の経費負担や防衛費の増額、中東などでの軍事協力などを求めてくる可能性がある。多国間交渉を嫌い2国間交渉を主張する魂胆はその辺にあるのかもしれない。筋違いもいいところであり、首相・安倍晋三はなめられてはいけない。
 

演説はヨーロッパでもトランプへの警戒論を強めこそすれ弱めてはいない。演説で「古い同盟を強化し新しい同盟も作る」とロシアに秋波を送った発言が、EUに衝撃を及ぼしている。イスラム国対策だというが、ロシアと対峙している長年の北大西洋条約機構(NATO)の同盟関係ですら、根底から揺るがしかねない発言だ。ロシアに対する世界観が甘すぎるのだ。


アメリカの世界のリーダーとしての存在すら危うくする同盟国への“揺さぶり”は、必ず自分の頭に落ちてくるダモクレスの剣であることを初歩から教育しなければならないのがトランプだ。言葉をもてあそぶ王者には常に危険がつきまとっているというイロハを悟らせるまでが大変だ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年01月19日

◆トランプの2国間貿易協定には応ずる必要ない

杉浦 正章
 


安倍は「友情ある説得」を忍耐強く続けよ
 

ノーベル賞受賞の経済学者ステイグリッツがトランプの保護貿易主義と孤立主義は、トランプを支持した中間層をいっそう窮地に追いやるとダボスで警鐘を鳴らしている。逆効果だというのであるが、もはや映画「馬鹿が戦車でやってくる」レベルであり止まらない。世界各国もはらはらしながらかたずをのんで20日の就任後の政策を見守っている。次期報道官のスパイサーは17日、「就任初日に大統領の権限を使っていくつかのことを行う」と予告した。


また「23日に大きな問題に集中的に取り組む」とも言明した。内容が注目されるが既にトランプは11月22日に、初日に大統領令で行う6項目の政策リストをテレビ放映している。その中で第一に挙げたのが環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退である。撤退して、2国間の自由貿易協定(FTA)締結を求めるというのであるが、日本の場合TPPと比較して格段に不利な立場に追い込まれる事は避けられず、もはや事態は危機管理の段階に入りつつある。首相・安倍晋三は自由貿易の旗を、より一層先頭に立って掲げなければならない状況に入った。
 

トランプは就任時の支持率がオバマのたったの半分の40%でスタートする。トランプは最初の政策のリストに関する演説の冒頭で「貿易に関しては災いとなるTPPからの撤退を通知する。その代わりに雇用と産業をアメリカに取り戻すために公正な2国間の貿易協定の交渉を行う」と明言している。これに加えてオバマが推進した医療保険制度改革いわゆるオバマケアの撤廃、メキシコ国境の壁などで具体的方針を打ち出す可能性が高い。


TPPに関しては、最後の望みの綱はトランプの翻意だが、米議会などでも悲観論が強い。TPPの実現度を探るため訪米した自民党政調会長茂木敏充は17日、米共和党の上院軍事委員会海軍力小委員長ウィッカーと会談したが、ウィッカーもTPPについて「トランプ次期大統領は脱退すると言っており、すぐに動かすのは難しい。辛抱強くやっていく必要があるのではないか」と助言した。
 

多国間のFTAは2国間のFTAが壁にぶつかったから推進されてきたのであり、2国間のFTAに巻き込まれるのは実に危うい。多国間なら一方で譲歩をしても別の部門で成果をあげて総合的にはプラスに持ち込むことができるが、2国間だと要求が正面からぶつかる。一方的な市場開放要求を突きつけてくる可能性がある。トランプはほぼ確実にTPPで日本が譲歩した水準を2国間でも要求してくることが目に見えているからだ。従って日本は安易に2国間交渉に応じる必要はない。条約、協定優先の国際法を縦に蹴飛ばせばよい。
 

まずどう対応すべきかだが一番影響を受ける日本が先導して、各国に自由貿易推進、保護貿易排除の国際世論を盛り上げることだろう。安倍はまずアメリカを除くTPP加盟11か国の団結を維持してトランプに翻意を促してゆく必要があるのだろう。トランプ政権短期説や「4年を全うするのがせいぜい」という見方も出ており、早まってTPPを漂流または空中分解させてはならない。11か国でも維持することによって、さらなる発展が期待できるからだ。


その点では安倍が東南アジア4か国を歴訪して、豪州、ベトナムなどとTPP推進を確認したのは正しい動きだ。とりわけ豪州は資源ブームの終息で経済減速に苦しんでおり、TPPを景気回復の起爆剤としたい思いが強い。議会では近くTPP関連法案の審議が始まるが、首相ターンブルは安倍との会談に勇気づけられたのか「 TPPに反対する野党はポピュリズムの保護主義だ」と激しい論戦を展開している。
 
さらに重要なのは欧州連合(EU)とのFTAだ。EUは貿易量が10%に達しており、メガ交渉の中で現在唯一の野心的で希望が持てる対象である。英国の単一市場脱退など保護貿易の動きがあるが、早期に
合意に至る必要がある。

とりわけドイツ、フランス、オランダは選挙の年であり、保護主義が台頭しつつある。これを食い止める一助にするためにも早期実現が不可欠だ。安倍は「TPPの成果を礎としてRCEP(東アジア地域包括的経済連携)などより大きな協定を目指す」と発言しているが、RCEPは国営企業が50%を占める中国主導であり、自由化の度合いも低い。TPPと融合させるなら、日本が主導権を取るくらいの覚悟が必要だろう。
 

このような動きを日本が率先して展開することにより、トランプの保護主義・孤立化をけん制し、食い止めるべきである。従って早期に日米首脳会談が行われる場合は、明確にトランプ路線を否定する必要がある。ゲイリー・クーパーではないがそれが何よりの「友情ある説得」になるのだ。
【明日は休みます。先に連絡したように以後午前7時前後に記事がないときは休みです