2014年01月22日

◆安重根記念館は中韓反日心理戦様相

杉浦 正章


米国は一線を越えた朴に警告せよ


中国が安重根(アンジュングン)の記念館を中国・ハルビン駅に開館したことが意味するものは、国家主席・習近平が韓国大統領・朴槿恵を完全に取り込んだことを意味する。その狙いは独自に展開してきた「反日心理戦」を「中韓反日心理戦同盟」にまで発展させるところにある。


この習近平戦略は、北朝鮮と対峙する米国の極東戦略にくさびを打ち込む結果となり得ることである。米国はことの深刻さを理解する必要がある。朴槿恵の度が過ぎた反日路線は自らの安全保障を危うくするものであることを気付かせる必要があり、米政府は早期に朴の“対中大接近”を戒める必要がある。


日本政府もこれ以上の中韓心理戦拡大を阻止しなければならない。もはや場当たり的対応をしているときではない。


記念館開館は世界中に「反日言いつけ外交」を展開している朴の昨年6月に習に対して行った「言いつけと懇願」が成功した結果となった。それも要請した安重根の肖像ばかりではなく記念館の開設という朴にとって願ってもないプレゼントとなった。


かねてから中国政府内部には安重根がテロリストであり、これを祭ることはテロリスト礼賛となり、国内の不穏な動きを増幅するという慎重論があった。それにもかかわらず習が格上げの開館に踏み切った背景は、いうまでもなく首相・安倍晋三の靖国参拝に対する報復である。


これに加えて習には極東戦略を念頭に置いた深い思惑がある。それは膠着状態に陥っている尖閣をめぐる日中のせめぎあいを心理戦で日本を追い込むことによって打開を図ろうという戦術である。


ロシアがスパイを東京や北京において日中戦争の可能性に探りを入れていることは常識だが、そのロシアの軍事専門家の間では、日中戦争が勃発すれば日本単独でも中国に勝つという見方が強い。兵器の質と自衛隊の練度が違うというのだ。


ましてや中国が日米同盟を相手に戦争することになれば「屈辱的な敗北になる」というのがロシア軍事専門家の分析である。また対日戦争を引き起こせば、これを機に抑圧された少数民族が各地で反乱を起こし、中国国内は内乱状態に落ちいるという見方も有力だ。ロシア革命の中国版となりかねないのだ。


このため習は現在のところもっぱら心理戦で日本を追い込む選択しか方法がないのである。その大きな布石が一方的な防空識別圏の設定である。海からの公船の領海侵犯でゆさぶり、識別圏では空からの侵入で日本を追い込む。


これで領土問題は存在しないとしている日本政府を「存在している」に方向転換させることを狙うのだ。もう一つが外交安保の常識を全く知らない朴の接近を飛んで火に入る夏の虫のごとく“活用”することにある。幸いにも朴の「反日」は徹底しており、中国とは歴史認識において共通する部分が多い。


極東の戦略地図を読めば38度線で米国と対峙しているのは北朝鮮ばかりではなく中国でもあるのが常識である。中国は米国と国境で対峙することは何が何でも避けたいのであり、北のクッションは必要不可欠の存在である。しかし米韓同盟と日米同盟の圧力をひしひしと感じないわけにはいかない。


この日米韓のトライアングルにくさびを打ち込めるかどうかが最大のポイントなのだが、朴の存在はまさに地殻変動を生じさせているのだ。


朴の対中接近の度が強まれば強まるほど、相対的にトライアングルの結束は弱まるのであり、安重根記念館は習のくさびが見事に成功したことを意味するのだ。国家間の心理戦とは情報の計画的な活用・操作・宣伝などの行為により、政治的目的あるいは軍事的な目標の達成に寄与することを狙った戦術の形態である。


心理戦における主要な手段は政治的なプロパガンダであり、日本はプロパガンダ戦において、常に受け身の態勢となっている。米国が小泉純一郎の靖国参拝に異を唱えず、首相・安倍晋三の参拝に「失望」したのは小泉以後8年間でいかに中韓の対米ロビー工作とプロパガンダが利いたかを物語っている。


両国ともロビー工作に莫大(ばくだい)なカネを注ぎ込んでおり、逆に日本は外相・田中真紀子の誤判断で縮んでしまったままだ。


中韓の攻勢に対して日本はせいぜい大使が講演するか現地紙に反論を投稿するくらいだが、もはや中韓心理戦同盟はそのような場当たり的な対応では対処しきれなくなっている。まさに国家安全保障会議(NSC)マターとして心理戦問題を取り上げ、統合的に対処すべき段階に入った。


米国も「失望した」などと言っているときではない。極東戦略が朴を中国に取り込まれて危うくなっているのだ。スーダンで自衛隊が善意の弾薬譲渡を韓国軍に対して行ったにもかかわらず、韓国は謝意も表さずに突っ返してきたが、これでは極東の安全保障は維持できない。


朴はいつ発生するか分からない北の軍事攻勢に日本の支援がなくて勝てるとでも思っているに違いない。まさに習近平の思うつぼにはまってしまった朴を、引き戻すには米国が警告するしかないのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月21日

◆細川が「言い訳選挙」になってきた

杉浦 正章


「原発即ゼロ」でオリンピックは無理


清和源氏の流れを汲むだけあって自分の方が偉いと思っているのだろう。同じ殿様の、秋田県知事の佐竹敬久が東京の「ご乱心の殿」の批判を展開した。記者会見で「細川さんはそんなに古い大名じゃない。たかだか700年くらいだ。うちの方が400年くらい先輩だ」と“格”の違いを強調。


その上で生活の党代表・小沢一郎が細川支持に回ったことをとらえて「殿様に悪代官が付いた。小沢一郎さんとか色々付録が付いてきた。孤高の戦いならいいが変なのが付くとあいまいになる」と真っ向幹竹割り。


あらぬ方向から弾が飛んできた細川護煕は22日になってようやく正式記者会見をすることになったが、ここに来て「原発ゼロ」のプラス要因より、「オリンピック返上」などのマイナス要因が目立ち始め、選挙はワンフレーズ・ポリティックの小泉戦略が利かなくなってきたことは確かだ。


都知事選をめぐる政策論議の構図は、どんどん変化をしている。小泉が打ち出した「原発ゼロ一点集中」戦略が“蚕食”されてきているのだ。


小泉の「原発はゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なしで日本は発展できないというグループの戦いだ」というセリフは、主要候補がみな「私も脱原発」と唱え始めて、あえなくつぶれる気配となってきている。


小泉の神通力は2度も効かないのだ。そうした傾向もあってか、殿様はどうも最初の勢いが鈍ってきているような気がする。記者会見を2度も先延ばしにした上に、日本記者クラブが主催する共同会見も断った。どうやらマイナス要因のクローズアップが“怖い”に違いない。


そのマイナス要因とは何かと言えば冒頭の小沢悪代官説はさておいて、佐川急便からの一億円借入問題、オリンピック返上・反対論、連合東京の舛添要一支持、宇都宮健次との一本化断念などひしめいている。佐川急便問題は22日の会見の焦点になるが、結局これまで主張してきた「自宅の塀の修理に使った」などあいまい答弁の域を出ないだろう。


したがってこの問題は投票日まで引きずるだろう。ジャーナリストの池上彰の著書のインタビューで細川が「安部さんが『オリンピックは原発問題があるから辞退する』と言ったら、日本に対する世界の評価が格段に違ったものになっていた」と語ったオリンピック反対・返上論も焦点となる。


細川周辺は選挙に打撃になることが避けられないとみて、弥縫策(びほうさく)を講ずるのに懸命だ。マラソンの東北開催などの案が出ているが、オリンピック委員会を無視してできる話ではない。


原発問題も小泉と歩調を合わせて「即ゼロ」を打ち出すのだという。都知事選挙を左右する浮動票を狙ってのポピュリズムの極致のような愚策だが、果たしてこれだけで戦えるか。既に大きな打撃が生じている。連合東京が民主党の方針と真逆の舛添支持に回ったのだ。

連合東京は原発推進の東電労組の力が大きく、会長の大野博も同労組出身だ。大野は「連合は、自然エネルギーなどと組み合わせて徐々に原発を減らす考え。すぐに原発をなくす立場ではない」と正面から細川にチャレンジしている。


加えて自民党は「原発即ゼロ」とオリンピックを絡めて批判を強めている。元首相・森喜朗は「6年先の五輪にはもっともっと電気が必要。今から原発をゼロにしたら、五輪を遠慮するしかなくなる。世界に対してご迷惑おかけすることになる」と発言している。


確かに「原発即ゼロ」は細川の「オリンピック反対」と確実に絡む形で選挙戦に突入することになるだろう。したがって、オリンピックで弥縫策を打ち出しても、効果は薄くなるというジレンマを抱えることになるのだ。


そもそも東電は柏崎刈羽原発の再稼働を申請しており、早ければ夏か遅くても秋には再稼働にこぎつける流れだ。その原発が作る電力を都知事が都民に「使うな」と言う権限はない。知事室も朝日新聞も使わざるを得ない。「原発ゼロ」は初めから絵に描いたもちに過ぎないのだ。


このような流れはマスコミの論調にも如実に表れ始めている。最初に一面トップで持ち上げてあとではしごを外すのはマスコミの習癖であり、最近では「卒原発」を主張した日本未来の党のケースがそうであった。最後まで細川を熱烈に支援する新聞は限られるだろう。


1995年の都知事選挙でタレントの青島幸男に敗れた元内閣官房副長官・石原信雄が、毎日新聞で切実に訴えている。地方自治のエキスパートであるだけに傾聴に値する。


「都民は猪瀬さんに434万票も与えた揚げ句に裏切られたのを奇貨として、もっと切実に都政に目を向けてほしい。何しろ首都直下地震が迫っている。高齢化が進む巨大都市の被害を減らすには、国や近隣自治体と緊密な関係を築き、危機管理ができるリーダーを選ばないといけない。いたずらに中央政府を敵視して対抗軸を探しているような人物では都民を救えない」。


くだらない知事ばかりを選択してきた都民は、確かに目を覚ますべき時だ。途中で投げ出す性癖のある知事では極めて危険だ。



◎盟友浅野勝人氏の著書を、毎日新聞の「余録」が紹介しています。是非ご一読ください。以下全文。

「西洋覇道か、それとも東洋王道か」。三民主義を唱え中国の国父とも呼ばれる孫文が日本国民に対し、どちらの道を歩むのか慎重に考えてもらいたい、と訴えたのは、1924年11月。大アジア主義の理念を説いた神戸での著名な演説だった▲日本がこの警告に耳を傾けず、日中、太平洋戦争へと破滅の道を歩んだのは歴史の教えるところだ。

それから90年後、中国の最高学府・北京大学で「日本を中国に置き換えて読み返すと、孫文の演説が今に蘇る」と逆転させ、大国化した中国に自覚と責任を求める日本人がいる▲浅野勝人(あさの・かつひと)元衆院議員(75)。

NHK政治記者から政界に転じ第1次安倍内閣では副外相をつとめた。記者時代、日中国交正常化を取材して以来40年にわたり関係改善に尽力、中国側からの要請で2011年11月から13年9月まで7回同大学で日中関係について連続講義を行った▲尖閣問題で日中が冷え切った時期だったが、階段教室には毎回300人の学生が詰めかけた。

浅野氏も、孫文の引用のみならず、中国の反日教育に注文をつけるなど、将来の中国を背負うエリートに対し率直な持論を展開した▲質疑も活発だった。学生たちは浅野氏が中国政府の施策に厳しい指摘をした時も拍手で応え、

ある女子学生は「相手を許すことができないままでは共に発展することはかなわないと悟りました」との感想をくれた▲そんな講義録と学生の反応をこのほど「日中反目の連鎖を断とう」(NHK出版)にまとめた。

いわば中国版白熱教室だ。アカデミックな自由さがしこりを解く。尖閣、靖国で凝り固まる両国だが、まだやるべきことがある


          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月20日

◆普天間移設は粛々と進めよ

杉浦 正章



ヘリ活用大作戦で激突を回避せよ


一自治体の選挙にどうだろうこのマスコミの仰々しさは。朝日など一部全国紙は名護市長選の名を借りて自己のイデオロギーを主張しているとしか思えない。それも時代遅れの反米思想が根底にあって、極東を取り巻く安保情勢の緊迫化などさらさら念頭にはない。


朝日の那覇総局長は「私たち民主主義社会は投票で意志を示すというルールで動いていると教えられてきた」と勝ち誇ったような論調を展開しているが、ピントが大きくずれている。または意図的にずらしている。普天間移転は日米同盟の要であり、国の安全保障は国政の専権事項である。


その国政の有りようは国政選挙で決まるのであり、一市長選が帰趨を左右すべき問題ではない。ましてや移設反対が日本国民の“民意”などではさらさらない。政府は粛々と移設工事を推進すべきである。


選挙結果は4000票の開きがあり、自民党が完敗したことは確かだ。辺野古への移設派が3連勝してきた選挙が、前回以降連敗となったのは紛れもなく鳩山由紀夫の「最低でも県外」発言が影響している。ひとたび無能な首相をいただくとその祟りは何年たっても続くのだ。


加えて創価学会婦人部の絶対平和主義が公明投票を分断した。公明党代表・山口那津男は連立政権であるにもかかわらず、恐らく意図的に自民党候補へ票をまとめることを回避した可能性がある。自民党幹部の言う「出遅れ」など言い訳にもならない。


当選した稲嶺進はかさにかかって埋め立て協議など、市政にかかわる問題への「拒否権」行使を明言した。政府が埋め立てを実行するに当たって市側との調整を必要とする事項は約10項目にのぼると言われているが、稲嶺は次々に拒否を打ち出して、工事の妨害にでる作戦である。恐らく妨害の座り込みなどにも先頭に立つ構えであろう。
 

その実力行使は政府のハンドリングがまずいと本土の応援部隊も参入して成田闘争並みの広がりを見せる可能性がある。加えて11月には沖縄知事選があるが、焦点は普天間移設になるに決まっている。これに敗れると仲井真弘多の辺野古移転容認の決断が覆される可能性がある。


したがってずるずる工事を引き延ばせば事態は悪化しこそすれ好転はしまい。官房長官・菅義偉が「仲井真知事が辺野古埋め立ての判断を下した。そこは決定している」と述べ、市長選結果に左右されることなく、知事の埋め立て承認を根拠に辺野古移設を推進していく考えを強調したが当然であろう。


菅は同時に「普天間飛行場の固定化があってはならない。地元の皆さんの理解を得ながら粛々と進めていきたい」と述べているが、大義はまさにそこにある。市街地の真ん中でいつ事故があってもおかしくない普天間の固定化は何としても避けなければならないのであって、仲井真も全く同様の考えから承認しているのだ。


一方で稲嶺を主軸にして反対闘争は盛りあがる方向にある。一部マスコミや特に現地紙の沖縄タイムズと琉球新報があおりにあおることは目に見えている。扇動者が市長であるから、とどめようもなく暴力化する可能性も否定出来ない。


かつて04年には掘削地質調査を反対派が妨害するためカヌーで近づき、足場にしがみついて抵抗したケースがある。反対派の実力行使はエスカレートの一途をたどるだろう。問題は座り込みを見れば分かるように老人が多いことだ。これらの老人を警察が排除に出て、死傷者でも出したらたいへんだ。それこそ移設自体が頓挫しかねない問題に発展する。


どう対応するかだが、政府は頭を使うことだ。幸いにも移設先のキャンプ・シュワブは塀で囲まれている。しかし道路を経由した運搬は座り込みで難しい。


これを解決するには「史上最大のヘリコプター作戦」を展開することだ。知られていないが自衛隊のヘリの輸送能力は世界最大規模であり、大震災でも大変な活躍ぶりを見せた。自衛隊は輸送用中型ヘリ「UH―60ブラックホーク」を28機、大型の「CH-47チヌーク」を70機保有している。


ブラックホークは積載量1.2トンであり、チヌークは9トンも運べる。機体下面の吊り下げ装置で吊り下げて、移動することが可能だ。空飛ぶ10トントラックだ。輸送艦「おおすみ」やヘリコプター護衛艦「ひゅうが」などの貨物用のデッキや航空機の格納デッキなどを利用すれば、大量の貨物を運べるのだ。


事前に別の場所で作っておいた構造物をどんどん空輸するのだ。トラックで資材を運べば、身を投げ出すような過激派が出てくる。このような反対運動の実力行使に肩透かしを食らわせ、死傷者を出さない最良の方策だ。いわば豊臣秀吉の墨俣城(すのまたじょう)の現代版だ。辺野古ヘリ作戦だ。


首相・安倍晋三は仲井真に5年以内の普天間運用停止と早期返還で対米交渉をすることを約した。運用停止を実現するためには早期着工と早期完工しかない。


工事が遅れれば普天間の継続が続くだけだ。政府は今月中にも設計を発注するとともに、ボーリング調査などの工事に入る。知事のお墨付きは出ているのであり、市長選の結果に関わりなく粛々と工事を進めるべきである。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月17日

◆朴の対中接近阻止は日米共通の課題

杉浦 正章



動き出す米国の極東外交


首相・安倍晋三の靖国参拝は極東の緊張を岩盤化して、これを解きほぐすのは容易でない事態に立ち至った。対米関係については事態沈静化の流れが出てきており、安倍は春に予定される大統領オバマの来日でこれを確定して日米同盟の再構築を目指すことになろう。


ここにきて米国の最大の懸念は最悪の日韓関係の修復に絞られつつある。北朝鮮の恐怖政治がいつ外に向けて暴発するか分からない中で、日韓のいがみ合いが、米極東戦略の最大の支障となっているからだ。安倍も大統領・朴槿恵も今年は「岩盤溶解」に向けて小異を残して大同につくべき時だ。


新年になって安倍の意を受けたものなのであろう、中曽根弘文ら自民党日米議連や外務副大臣・岸信夫による靖国参拝収拾工作がワシントンで活発化した。参拝に「失望」した米国に対する説明行脚だ。この結果元国務副長官・アーミテージは安倍の参拝について「選挙公約を実行したまでで、もう終わったことだ」と述べ、ことをこれ以上問題化する方向にはないという見通しを明らかにした。


もっとも米国サイドでは日米関係の専門家である「ジャパン・ハンド」からなお反発が上がっている。前米国務次官補キャンベルのように「参拝で日中間で緊張のレベルが高まり、ともに米国の緊密な友邦である日本と韓国の間でも緊張が高まっている。それを米政府は懸念している」と指摘する空気も依然存在している。


元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長マイケル・グリーンに至っては「失望を表明したのは正しい反応だった」と述べている。米国は完全に納得したわけではなく、知日派外交官らは2度目の参拝のけん制の意味も込めて発言しているのだ。


したがって安倍が再度参拝すれば日米関係は抜き差しならぬ段階に突入すると心得るべきだ。首相周辺には「こちらも失望した」などと軽佻浮薄(けいちょうふはく)な発言する者がいるが、こういった側近は即刻遠ざけるべきであろう。


安倍は参拝による失点の大きさに気付いて、大局を見据えた極東外交に取り組まなければなるまい。その対応は対韓“個別撃破”に尽きる。


安倍外交に対する米国の最大の懸念は、中国による同盟の分断に利用されることである。日米同盟と米韓同盟のトライアングルで極東の安全を確保する戦略が、成り立たなくなっては極東戦略にとって壊滅的なダメージとなる。韓国の中国接近にはくさびを打ち込まなければならないのだ。


朴の習近平へのすりよりは、中国にとってなによりの対日、対米けん制材料なのであり、習は訪韓を年内に実現させてより一層の中韓蜜月を演出しようとしているのだ。その構図はまさに「反日同盟」の様相であり、捨てておけば朴は中韓安保関係の樹立にまでゆきかねない側面がある。


こうした構図の中でオバマが来日することになる。これに先立って米国の極東外交も足踏み状態から離脱しそうな気配だ。その手始めとして米国務副長官・バーンズが来週、韓国、中国、日本を訪問する。


日本にとっては安倍の靖国参拝以来、最初の米政府高官の訪日となる。バーンズは当然日本に対韓自制を求めるだろう。韓国に対しても度を過ごした対中接近をけん制することになろう。米国は何をするか分からない北朝鮮に対する、同盟国の体制再構築が急務と感じているのだ。


こうした根回しの上でオバマのアジア諸国歴訪があるのだが、訪日は大統領の極東戦略にとって好むと好まざるとにかかわらず最重要のポイントとなる。靖国参拝を除けば日本の外交安保路線は米国にとってもっとも好ましい流れを見せている。


国家安全保障会議(NSC)を発足させ、秘密保護法を作り、普天間の辺野古移転にメドを付け、今や対米公約となっている集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更は通常国会中に実現する流れだ。安倍はオバマとの会談でこうした状況を説明して、同盟強化を確認することになるだろう。


オバマにしてみれば日本が突出して対中軍事衝突を巻き起こすことが最大の懸念材料なのであり、日本が中国の海洋進出の防波堤としての役割にとどまる限りにおいては、これ以上にありがたい存在はないのだ。


GDP1位の米国と3位の日本が組むと言うことは、考えられる最強の対中同盟であり、日本は米国の「失望」くらいで動揺したり反発したりする必要は無い。国力衰退の兆候が見られる米国にとって、極東における日本の存在は安保戦略上不可欠であることは言を待たない。


集団的自衛権に関しては首相補佐官・礒崎陽輔が通常国会中の閣議決定で踏み切るとの見通し述べている。確かに閉会してからの閣議決定では論議から逃げる印象をもたらす。


国民世論の動向もNHKの世論調査で注目すべき傾向が出た。集団的自衛権の行使をできるようにすべきだと「思う」と答えた人は27%、「思わない」と答えた人は21%で行使容認が上回ったのだ。


迷わずに容認に踏み切るべきであろう。そして年末に予定されている日米防衛協力の指針(ガイドライン)改訂へと結びつけるのだ。これで初めて対中抑止力は完成することになり、中国の軍事挑発は一層困難になる。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月16日

◆小泉“原発集中選挙”が早くも頓挫

杉浦 正章



細川の「五輪返上論」の焦点化確実


不偏不党を標榜しているのが全国紙各社だが、細川護煕立候補の都知事選をめぐってなりふり構わぬアンフェアぶりを示し始めた。そのトップを走るのが朝日新聞であり、社説で原発ゼロの争点化をもろ手を挙げて歓迎。これに毎日と東京が追随する。


朝日は紙面構成の照準を明らかに「細川寄り」に定めており、16日付の朝刊でも巧妙な世論誘導ぶりを展開している。


一方読売は新たに細川が五輪返上論であることを暴露して、細川陣営に痛烈な打撃を与えた。産経も反細川だ。細川をめぐるマスコミのバトルが選挙選の帰趨を左右しかねない状況だが、主要紙は原発一点集中選挙だけは一致して反対している。
 

まあ朝日が臆面もなく反安倍政権を露出するのは、特定秘密法案をめぐっての一連の“風評”報道など毎度のことで、今度も驚かない。しかし、16日の紙面はいかにも異様だ。いくら人気があるとは言え復興政務官・小泉進次カの発言を一面4段でデカデカと報じたのだ。


内容は自民党の支持する舛添要一に対して「私は応援しない。応援する大義はない」と述べた点だ。後ろ足で砂をかけて離党した舛添を支援する自民党もだらしがない極みだが、まだ雑巾がけの身であり、当選2回の陣がさ議員の発言を鬼の首を取ったように報道して、恣意的紙面を作成しているのだ。


朝日の狙いは細川を知事に祭り上げて、「原発ゼロ」を唱えさせ、安倍政権を揺さぶろうというところにあるのは言うまでもないが、いくら何でも「自民党をかき回す小泉親子」の表現はないだろう。小泉純一郎は自民党への裏切り行為に出たが、進次カは朝日の期待とは別に“スジ論”を言っているにすぎないからだ。


一方これに対して読売も黙ってはいない。2面トップで「細川叩き」を展開している。細川陣営が公約作りに当たって、佐川急便からの1億円借入問題と「5輪返上発言」で一貫性に苦慮していると言う内容だ。


借入問題は間違いなく問題化して焦点になるが、5輪返上論は国民的祝賀ムードに水を差すだけでなく、細川に5輪対応を委ねて大丈夫かという選挙戦の重要ポイントを惹起(じゃっき)する。


その内容は細川が親しいジャーナリストの池上彰の著書のインタビューで「安部さんが『オリンピックは原発問題があるから辞退する』と言ったら、日本に対する世界の評価が格段に違ったものになっていた」と語ったというものだ。これは脱原発よりもインパクトが大きい。


なぜなら脱原発は各候補が一様に唱え始めているのに対し、5輪反対は一人だけであるからだ。舛添はじめ他の候補が佐川疑惑とともに追及することは確実であり、小泉純一郎も真っ青の焦点浮上だ。


総じて、朝日が「世論誘導の陰謀」の臭気をふんぷんとさせているのに対して、読売は事実関係を淡淡と報じており、その意味では選挙報道の王道を行っている。


社説でも主要紙の論調はくっきりと分かれている。まず「脱原発の争点化」については読売と、産経が都知事選とそぐわないと主張しているのに対して、焦点になるのは当然とするのが朝日、毎日、東京の3紙だ。


読売は「そもそも原子力発電は、国のエネルギー政策の根幹にかかわる問題だ。脱原発を都知事選の争点にしようとするのは疑問である」と主張。産経も「都知事選をてこに脱原発の世論を一気に拡大する狙いだろうが、原発というエネルギー政策の根幹を決めるのは国の役割である。どうしても原発ゼロを実現したいなら、今一度国政に打って出て問うべきだ」と述べている。


両社とも「原発ポピュリズム選挙」の否定であり、まっとうな姿勢だ。


これに対して朝日は「都民が当事者として考えるにふさわしいテーマ」、毎日「国政の大きなテーマである原発問題も主要な争点」、東京「国の原子力政策は間違いなく主要な争点」と焦点化を当然のことと主張している。脱原発を何が何でも知事選に持ち込みたい姿勢だ。


この分裂傾向は原発推進か脱原発かという各社の従来からの主張をくっきり反映したものであって事新しいものではない。


しかし賛成派、反対派に共通した一致点が一つだけある。それは小泉の狙う原発シングルイシュウでの一点突破選挙への反対である。読売、産経はもとより反対だが、朝日と毎日が小泉戦術に真っ向から反対論を展開しているのだ。


朝日は「選挙を原発にイエスかノーかの一色に染め上げ、スローガンの争いにすることには賛成できない」ときっぱり反対。毎日も「細川氏に望むのはワンフレーズ的に脱原発を主張せず、電力供給や使用済み核燃料の最終処分問題などエネルギー政策の具体像を論じることだ」と反対だ。


こうした新聞論調の傾向を分析すれば、小泉が郵政改革選挙の再来を狙ってもマスコミは同調しないということだ。まさに敵味方峻別方式の一点集中選挙は頓挫した。


年を取って頭が固くなると、昔取ったきねづかへの郷愁が湧き、まだ自分ならやれるととんでもない誤算に陥るものだが、マスコミは小泉劇場に2度も3度も踊らされるほど甘くはないということだ。


それにつけても主要紙はこれだけくっきりと支持不支持を鮮明にするなら、不偏不党の綱領などやめて、米国のように支持政党をはっきりさせるべきではないか。支持政党をはっきりさせないまま朝日のように世論誘導を計るのは、森喜朗が小泉を評したのと同様に「卑怯」であろう。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月15日

◆小泉の原発ゼロ一点突破選挙は無理

杉浦 正章



逆に細川の佐川疑惑が蒸し返される


記者会見での「殿ご乱心」はそのままであったが、けしかけた変人・小泉純一郎の目つきが異様に光っていた。まるで耳を切ったゴッホのようにこわばり付いた顔つきであった。


そして両者の関係は主役のドンキホーテが小泉で、佐川疑惑で汚れたサンチョパンサ・細川護煕がこれについて行くという“真逆”の様相でもあった。


小泉は会見をあえて舛添要一の出馬会見に、意図的にぶつけたのであり、桝添は見事に霞んでしまった。全国紙の一面トップはすべてかっさらった。都知事選最初の出だしは小泉戦略が見事に奏功したが、問題は最初のうまさが持続するかどうかだ。


どうして小泉をここまで怒らせてしまったかだが、「年寄りを粗末にするとたたる」ということわざがそのまま当てはまる。小泉はかねてから首相・安倍晋三を育ててやったのは自分だと言う思いが強い。森内閣で、安倍を官房副長官に推挙したのは小泉だった。小泉政権では異例のサプライズ人事で安倍を幹事長に抜擢した。


ところが安倍は首相になってから何の“恩返し”もしない。小泉をどこかの小さい国でも「特使」か何かで使ってやればよかったものを、外交や内政で元首相としてお出まし願うのは森喜朗ばかりで、小泉は蚊帳の外だ。


とりわけ小泉が頭にきたのは自らの「原発ゼロ」の主張を安倍政権が無視したことだ。「そうか無視するならやってやろうじゃないか」と、ドンキホーテは槍を手にして立ち上がったのだ。嫉妬に狂った遺恨試合の様相だ。


ところが立ち上がったはよいが、展望は開けるのか。14日の会見では早くも馬脚を現した。なぜ馬脚かというと、かつての郵政選挙と同じ手法を踏襲したからだ。その手法とはシングルイシュウでの一点突破だ。郵政改革を抵抗勢力の峻別で戦ったあの方式だ。


小泉は「原発はゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なしで日本は発展できないというグループの戦いだ」と原発を最大の争点に位置づけようとしたのだ。ところが柳の下にいつも泥鰌(どじょう)はいない。小利口な桝添がまんんまとこれに乗るわけがない。


あえて激突を避けて「すぐにゼロは無理でも、原発に依存しない社会がふさわしい」と発言、論争を回避した。主要候補のうち「原発維持」を唱えるのは泡沫すれすれの田母神俊雄くらいのものであり、他の候補は全て小泉のようにすぐにゼロかどうかは別にして、「将来は依存しない」だ。将来が百年後か千年後かは別にして、そう言っておけば格好が付く話だ。


したがって小泉の「原発ゼロ」戦略は最初からつまずく形となったのだ。陶芸家をやって「新聞も読まないテレビも見ない」世捨て人の生活を送ってきた細川が、「原発問題は国の存亡にかかわるという危機感を持っている」と突然言い出しても国民への説得力の方が「ゼロ」だ。国の存亡にかかわるのは本人の存在であることに「ご乱心」の殿は分かっていない。


だいたい小泉も細川も東京都知事の座を奪ったからと言って、原発をゼロに出来るという論理構成が成り立たない事を知らない。支持票を集めたからといってこれが原発ゼロにつながる構図などあり得ない。


そもそも原発問題も含めたエネルギー政策は国家の専権事項であり、原発が「ゼロ」の東京都が口を出すべき問題ではない。東京都は原発立地自治体ではなく、都は東電の大株主と言ってもわずかに1.34%しか保有していない。1.34%で会社の方針が決まることはない。


加えて東電には大震災で国の資金が大量に入っており、株式の50%超を政府の原子力損害賠償支援機構が握っている。小泉が逆立ちしても、現在の発言権は国にあるのだ。


国は原子力規制委員会の結論を待って粛々と原発を再稼働する方針である。すでに有力規制委員が審査が進む6原発10基の名を挙げ、「基準に不適合とされる原発が出てくるとは想像していない」と発言している。夏までには都知事選があろうがなかろうが再稼働するのであって、疝気筋が口を出せる問題ではない。


そもそも二人とも首相時代は原発を推進していたではないか。民度の低い東京都民はそれでもスローガンに動かされる可能性が強いが、灯油が2000円の高値になった上に、電気料金の大幅値上げで家計が青息吐息なのは原発が動かないからだということを、教えてやらなければ殿様や女どもは分からない。


こうして小泉戦略は「空回り」のながれだ。読売は社説で「原子力発電は、国のエネルギー政策の根幹にかかわる問題だ。脱原発を都知事選の争点にしようとするのは疑問である」と主張している。


朝日ですら15日付の社説では原発ゼロの主張を「都民が考えるにはふさわしい」と述べながらも「原発一色に染めるスローガンの争いには賛成できない」とまるで読者にまた裂きを食らわすような社説を書かざるを得ない羽目になっている。


それよりもなによりも小泉ドンキホーテにとってサンチョパンサの佐川問題をどうするかが喫緊の課題だ。官房長官・菅義偉はさすがに鋭い。論点を佐川疑惑に絞ってガチンコ勝負に出た。


菅は「猪瀬さんがカネの問題で辞職した。細川さんについても総理大臣当時に佐川急便から猪瀬さんの倍のお金の問題で辞任した。都民はどう受け止めるか」とどぎつい一発を食らわせたのだ。たしかに細川は返済時の領収書の写しを国会に提出したが、佐川急便の社名も押印もなく国会は空転、結局政権を投げ出した。


投げ出したから追及はそこでストップしているが、猪瀬のケースと同じ疑惑が晴れたわけでは全くない。ここに「脱原発」は主要候補が総論賛成で、細川の佐川問題だけが猪瀬辞任と絡んでクローズアップする構図が出てきているのである。

  <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月14日

◆手がつけられぬ細川「ご乱心」

杉浦 正章



直下型地震でまたも投げ出すのか


荘子に「寿(いのちなが)ければ則ち辱多し」があるが、肥後細川家18代当主は御年75歳のご高齢だ。はっきり言っておやめになった方がよい。6年後のオリンピックまで都政に責任を持てるのか。


今あっても遅くはない直下型大地震に、かって国政でそうしたように殿様の身勝手で知事の座を投げ出されては、辛酸をなめるのは都民にほかならない。猿が水に映った月を取ろうとして溺れることを「猿猴(えんこう)月を取る」というが、その月を取ろうとしているのだ。


都知事の職は激職だ。おまけに朝日新聞の狙い通りに「原発ゼロ」を訴えて、国政を揺るがすのは邪道としか言いようがない。


それにつけても都知事というのはどうしてこうまともな政治家が少ないのだろうか。マルクス主義者の美濃部亮吉に財政をくしゃくしゃにされたかと思うと、極右の石原慎太郎に尖閣購入費と称する募金をされて、16億円も集まったままたなざらし。


天皇に直訴する芸能人を参院議員に当選させたことなどを考え合わせれば、都民のガバナビリティ(被統治能力)自体に問題があるとしか考えられない。今回も永田町では「嫌なやつ」で定評のある舛添要一と、「ご乱心」の殿と、共産党の三つどもえの絡み合いになりそうだが、やはり一番お粗末なのが細川だ。


引きこもってロクロを回していれば、まだ「文人」的で好印象となるが、その「文人」的好印象をいつの日か政治に使おうとしていたのかと思うとその権力欲にはあきれるしかない。都民は「文人」にころりと参ってしまう体質がある。そこを狙ったのだろうか。


父の護貞は細川が衆院に出馬しようとしたときに反対し、「そんなヤクザな道に入るのなら、家とは縁を切ってくれ。カネも含めて今後一切の面倒は見ない」と勘当を言い渡した。父親は息子の本質を見抜いていたのだろう。


首相になって何をしたかというと、あのルーピー鳩山由紀夫に勝るとも劣らぬ暗愚さをさらけだした。殿は記者など下僕としか思っていないのか、夜中に突然記者会見を招集して「消費税を引き上げて7%の国民福祉税とする」と宣うた。


小沢一郎がかねてからの持論「御輿は軽くてパーがいい」を地でゆくもので、小沢の掌で踊ってしまったのだ。直ちにつぶされたが鳩山の「最低でも県外」の普天間移転論に匹敵する政治誤判断だった。


これで「首相失格」は確定したが、これに追い打ちをかけたのが佐川疑惑だ。その内容は猪瀬直樹の徳洲会疑惑そっくりで、金額もさすがに殿様だけあって、猪瀬の倍の1億円借り入れだ。国会に返済の証拠として提出した領収書も猪瀬のケースと同じで、印鑑も押してないし誰が発行したのかも分からない。


ついに進退窮まって、たったの8か月で政権を投げ出したが、立候補すればまずこの佐川問題がぶり返される。そもそも殿は自分の年齢をどう思っておられるのだろうか。年齢で差別をするわけではないが、どうしてもハンディがある。


戦後最高齢で首相になった政治家の例を挙げれば、旧憲法下では幣原喜重郎が73歳、新憲法下では石橋湛山が72歳。幣原は5か月、石橋は3か月しか在任していない。美濃部亮吉は都知事を13年務めたが、退任は75歳であった。


殿は当選すれば6年後のオリンピックは81歳で迎えることになるが、それまで体力、気力が持つのか。一番気になるのがいつあってもおかしくない首都圏直下型大震災だ。これに不眠不休で陣頭指揮に当たれるのか。


殿の首相在任中の政治姿勢は、国政より自らの“都合”を重視する傾向が顕著であった。一身をなげうつほどの政治力が求められるときに「自己都合退任」されては都民はたまらない。


唯一の主張らしい主張が「原発ゼロ」である。これは狙い所としてはうまい。しかし元首相・森喜朗が「卑怯だ。フェアではない。原発を絡めて通ろうとする人は心がやましい」と口を極めて批判しているが、まさにその通りだ。


国の生命線であるエネルギー政策を、己の栄耀栄華のために“活用”するのだから「卑怯者」呼ばわりされても当然だ。おまけに「変人」小泉純一郎が応援しそうだという。「変人」が「ご乱心」を推すのであるから、当選すれば都政ははちゃめちゃだ。


ポピュリズムを狙う政治家は、どうも「原発ゼロ」の誘惑に駆られる傾向がある。しかし国政選挙では見事に失敗している。


あの小沢ですら起死回生の仕掛けを「原発ゼロ」に持っていった。一昨年末の総選挙である。琵琶湖周辺に潜む山姥のようなお方を担ぎ上げ「日本未来の党」と称する政党を結成、“卒原発”で旗揚げしたが、見るも無惨に惨敗。


昨年の参院選挙では、自民党以外の政党すべてが「原発ゼロ」を掲げたが、首相・安倍晋三も幹事長・石破茂も堂々と「原発再稼働」を唱えて圧勝した。


国政選挙とともに惨敗したのは朝日であったが、懲りずに今回も9日の朝刊一面トップの“スクープ”で殿を担ぎ上げた。狙いは紛れもなく東京都を「原発ゼロ」で固めて、にっくき安倍政権を揺さぶろうというところにある。


細川は「殿もおだてりゃ木に登る」で乗ってしまった。問題は国民は国政選挙で「原発ゼロ」を排除したが、都知事選でそれができるかと言うことだ。原発立地県も含めて国民は総じて正しい判断をしたのだが、るる述べてきたように東京都は別だ。


ガバナビリティがなく、民度が地方より低いのだ。「原発ゼロ」は結構いい票を稼ぎそうだ。選挙予測は、この場合世論調査を抜きにやれるものではないが、晩節を汚す元首相が一人でることは確定的。せめて小泉が支援に加わって二人にならないことを祈る。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月10日

◆「好循環国会」より「安保国会」様相

杉浦 正章



集団自衛権は政策的“歯止め”で公明説得


首相・安倍晋三が24日招集の通常国会を「好循環実現国会」と銘打って経済重視の姿勢を示したが、その実態はどうなるだろうか。どうも60年安保の時に匹敵する「安保国会」の色彩が濃くなりそうな気がする。


安倍は秋の臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置づけたが、その実は特定秘密保持法案に全精力を傾注した。これと同様に極東情勢は安保論争を避けて通れないほど緊迫感を強めている。


野党は靖国参拝を始め、集団的自衛権、安倍の外交姿勢などに焦点を当てて追及しようとしている。安倍は予算成立後に集団的自衛権行使への解釈変更の閣議決定に踏み切るものとみられ、とりわけ後半国会は激しい論争が展開されそうだ。


秘密保護法をめぐる対応が支持率急落に影響したことに懲りてか、安倍や幹事長・石破茂らは羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くような慎重発言を繰り返している。これを見てNHKなどに「軌道修正」というような浅薄な論説が生じているが、なかなかどうして安倍はそう簡単に方向転換などする男ではあるまい。


補正予算案や来年度予算案の早期成立を確実にしなければならないから鎧(よろい)の上に衣をかぶっているだけで、成立後はその衣を脱ぎ捨てるのだ。現に安倍は8日のテレビで「安保法制懇に結論を出していただいて、法制局を中心に政府としての解釈の判断をする」と明言している。


法制墾は既に従来の「集団的自衛権は保有するが憲法上行使できない」という解釈を「行使できる」に変える方向を固めており、内実はいつでも打ち出せる準備が完了しているのだ。


予算審議や政局への影響を考えて時期を見ているだけであり、4月には答申を出す可能性が強い。集団的自衛権は対米公約でもあり、日米防衛協力のための指針( ガイドライン)の再改定を年末に断行するためにも不可欠の要因となっている。


解釈変更に当たっては、公明党や中国、韓国など周辺国の反対にどう対処するかが焦点となる。公明党代表・山口那津男は新年早々から解釈反対の牽制球を投げている。「地球の裏側まで米国について行って戦争する」という「地球の裏側論」で反対しているのだ。


政府・与党はこの「裏側論」を軽視すると、秘密保護法で朝日が「風評」を垂れ流しにして妨害したケースと同じになりかねないと警戒している。そこで公明党対策は“けん制”と“説得”の両面から取りかかる方針だ。


まず“説得”材料で最近出てきている流れは「憲法解釈と政策判断の分離」である。期せずして安倍と石破が同様のことを言っているから、政府・与党で統一した戦術なのであろう。安倍は「集団的自衛権の行使が認められたから、行使しなければならないと思っている人が多い。


しかし集団的自衛権は権利であって、使うか使わないかは政策判断だ」と述べている。石破も「地球の裏側まで行って戦争することではない。行使できると行使するは異なる。何が何でも行使するわけではない」としている。


つまり憲法解釈は変更するが、実行については“歯止め”をかけるというものだ。この方針を変更の閣議決定と同時に打ち出すことで、公明党を納得させようとしているのだ。


公明党がこれに応じるかどうかだが、石破は「公明党さんとは有事法制やインド洋の給油支援活動、自衛隊のイラク派遣などでかんかんがくがくの議論をしてきたが最後には認めてもらった」と述べている。結局“落ちる”とみているのだ。


しかしそれでも応じなかったらどうするかだが、ここで“けん制”が出てくる。安倍は年末、かねてからじっこんの維新共同代表・橋下徹と3時間以上にわたって会談している。これに先立ってみんなの党代表・渡辺喜美とも会食している。以来渡辺は「自民党渡辺派」と称して、政権にべったり寄り添う姿勢だ。


渡辺は「自公で」連立の組み替えが出来るかどうかは分からないが、そのときはみんなの党は集団的自衛権についてこう考えるという答えを出す」と露骨な発言するに至っている。渡辺は公明党に取って代わって連立を組みたくてしょうがないのだ。


一方で、中韓からの解釈反対論は最近とみに勢いを増している。中国外務省の副報道局長・洪磊は「わざと大げさに争いをつくり出し、軍拡や戦略変更の口実にするべきではない」と反対。韓国に至っては国会決議で、日本の集団的自衛権の行使容認に向けた議論に「深刻な懸念」を表明し、「韓国政府の同意なしに朝鮮半島で集団的自衛権を行使しないことを明確にするべきだ」と強調している。


しかし中韓とも国連の加盟国であるどころか、中国は常任理事国であり、韓国は事務総長を出している。その両国が国連憲章の核心部分であり、どの国も認めている集団的自衛権行使の権利を自ら否定するとは、問題を理解していないか知識が足りないかと言うことになる。


とくに韓国は集団的自衛権があるから米韓同盟がなり立っていることを、理解していない。両国とも日本にだけ「ノー」と言えば国際常識を疑われる論理破たんになるのだ。


マスコミも秘密保護法の仇討ちとばかりに朝日、毎日、東京を中心に攻撃材料とすることは火を見るより明らかだ。


しかし総じて反対論は日本の安全保障が天から降ってくるというノーテンキなものが多く、極東における一触即発の現実を棚上げにしている。


安倍は北朝鮮を名指しで「北のミサイルがグアムに向かっているときどうする。グアムには2万人の米国人が居る。これを打ち落とす能力があるのに無視すれば同盟が持たない」と述べているが、そのような事態を日本が看過すればたしかに同盟関係は維持できまい。ただ政府・与党は通常国会で解釈変更と連動した自衛隊法の抜本改正など法整備まで行う姿勢はない。


日程的にも無理があり、秋の臨時国会に持ち越されるだろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月09日

◆靖国参拝から見る中韓の“堀”の深さ

杉浦 正章



対外ロビー工作強化が不可欠


長年外交・安保をウオッチしているとわずかな兆候から事態が大きく発展するケースが多い事が分かる。首相・安倍晋三の“ちゃぶ台返し”とも言える靖国参拝に対する動きをみれば、中国外相・王毅による対日包囲網は失速し、外交を女の感情で展開する韓国大統領・朴槿恵は新年早々なにやらしおらしい。


しかし、依然極東の安全保障環境は史上まれに見る厳しさにあり、一触即発の危機が継続しているが、米国の対日同盟重視の方針には変化の兆しはない。中韓両国の「反日接近」は継続しそうだが、これに日本外交が米国の戦略を“活用”していかにくさびを打ち込むかが今年の焦点だ。


まず何をするか分からないのが北朝鮮の第一書記・金正恩だ。叔父殺しの血刀を提げて、今度は恐怖政治の矛先を海外に向けかねない。1〜3月中に核実験、ミサイル打ち上げ、韓国攻撃のいずれかの動きに出るという憶測が絶えないのだ。


一方防空識別圏を一方的に設定をした中国は繰り返される暴動・テロ行為がまるで“内乱”の様相を示しており、苦し紛れに習近平が“対日カード”を切りかねない事態に変化はない。尖閣をめぐって偶発的軍事衝突の危機は続く。極東冷戦は今年も最高潮に達する要素があると見ておいた方がよい。


こうした中での安倍の靖国参拝が、国家の安全保障を危機に陥れる側面を有していることは否めない。安倍は「どこの国のリーダーでも、戦争で命を捧げた英霊に尊崇のの念を表明する」と持論を繰り返すが、参拝する靖国神社の英訳が「War Shrine(戦争神社) Yasukuni」の表現になっていることを知らなければなるまい。


この書き出しを使われては、「戦争賛美」と受け止められ最初から勝負に負けてしまうことになるからだ。米国をはじめとする主要国大使館を通じて報道各社にこの表現の訂正を求めることから始めなければ説得は不可能だ。


加えて現段階での靖国参拝は安倍が自ら唱える「戦後レジュームからの脱却」と矛盾する。むしろ戦後レジュームを拡大強化する効果しかない。なぜなら中国に「戦勝国の結束」の口実を与えるからである。


王毅が狙うのはまさにこの一点に尽きるし、現実にこの線でのプロパガンダを展開している。ロシア外相・セルゲイ・ラブロフはこれに完全同調している。また中韓接近をより強める効果をもたらす。習近平は年内に訪韓する可能性が強いとみられており、中韓蜜月を誇示するだろう。


このように靖国参拝の影響は中韓を刺激し、外交の閉塞状況をいよいよ深める結果を招いた。しかし、参拝ははからずも、そのマイナス効果がどの程度のものかという「状況偵察」の役目を果たした。丸橋忠弥のように江戸城の堀の深さを測れるのである。


まず米国は声明で「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」と異例の反応をした。しかし声明後半の下りでは「米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する」と書き加えている。


これは安倍の「不戦の誓い」が一定の理解を得たことを意味する。米国にしてみれば、馬鹿なことをしてくれたが、これ以上はやめてくれと言うところが本音だろう。なぜなら昨年10月の国務長官ケリーと国防長官ヘーゲルの訪日による日米同盟再構築・強化の路線は、米国の極東戦略から見て変えようがないからだ。


しかし小泉の参拝では出てこなかった「失望している」の表現はきつい。これは中韓両国による対米ロビー工作が過去8年間にいかに進展しているかを物語っている。防衛費に金を使うのもよいが、大使館が使う対外工作費などは防衛予算に比べれば微々たるものだ。


もっとジャブジャブ回さなければロビー工作は中韓に対抗出来ないことを安倍は知るべきだ。


日米関係にとって普天間基地の辺野古移転実現は、近年にない快挙であり、臆せずに対米宣伝をしてもよい。米国は極東戦略の中核基地を獲得することになるからだ。


この米国の極東戦略を“活用”して日本がやらねばならないことは、中韓接近へのくさびの打ち込みであろう。それにつけても外相・岸田文雄の臨機応変の動きが見られない。ミスキャストが露呈している。


朴はいくら経済上の利害得失があっても、対中接近の度が過ぎる。中国は朝鮮戦争での敵国であり、北が再び戦端を開けば、中国は北を見捨てることはまずあるまい。その際頼りになるのは米韓同盟に加えて日米同盟にほかならない。朴の先見性はここに目が行かないレベルなのである。


現在のまま習近平に媚びを売り続ければ、韓国の安全保障に重大な危機を招くことを朴は知らなければならない。


一方で朴の“変化”の兆しも見られなくもない。年頭記者会見で「私は今まで韓日首脳会談をしないと言ったことはない」「事前の十分な準備の下で推進されなければいけない」などと述べているのだ。恐らく国内世論に朴の反日一辺倒路線への批判が頭をもたげ始めていることを意識しているに違いない。
 

一方王毅による靖国参拝批判の対日包囲網は失敗に終わった。電話をあちこちかけまくったが、ラブロフと韓国外相の尹炳世(ユンビョンセ)だけの同調では想定内だ。ロシアとの関係は安倍と大統領・プーチンの個人的関係でリカバー可能だ。


東南アジア諸国連合(ASEAN)各国は一部マスコミは別として首脳による反発の声は出ていない。肝心の中国も日本で言えば次官クラスの外相の動きが目立つだけで、習近平はもとより閣僚級の国務委員クラスからは何らの反応も漏れてこない。


学生などの反日デモも抑えられている。デモを勢いづければ、矛先が腐敗著しい共産党独裁政権に向かいかねないから抑えているのであろうが、この流れは注目に値する。


このように安倍の靖国参拝は辛うじてその反発を中韓両国に封じ込めることに成功しつつあるが、どうみても1回で打ち止めにすべきである事は言うまでもない。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月08日

◆再増税、靖国なしなら3年越えは可能

杉浦 正章



新年に安倍長期政権を占う


テレビの新春政局放談会はどの局も馬鹿と阿呆の絡み合いだったが、その“白眉”は共同通信出身評論家の「安倍さんは2020年のオリンピック開会式で挨拶する」だ。これを筆者は「新年初誤報」と名付ける。


なぜなら首相・安倍晋三がやっと箱根の手前の大山を越えた段階で、気の遠くなるようなエベレスト越えを予言するようなものだからだ。現実の政治状況を見れば靖国参拝でケチがついたが、確かに「安倍一人勝ち政局」であることは間違いない。

だからといって安倍晋三が最長の佐藤栄作を超えて8年の長期政権を維持するなどということは、さすがの筆者の「未来展望虎の巻」の中にもない。


ただ今年の政権に立ちはだかる3つの難題をクリアすれば過去6人の首相しか達成していない「3年越え」は達成できるだろう。3年を超えた首相とは吉田茂、岸信介、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘、そして小泉純一郎だ。


そもそも長期政権の第1の条件とは何かと言えば衆参で多数の与党を形成していることだ。その点衆院で自民単独で294議席、参院で公明などと会わせて133議席を達成したことは盤石の基盤である。

おまけにみんなと維新が補完勢力として作用しており、民主党は代表就任一年になるのに海江田万里は党をまとめるにはほど遠く、ボロボロと離党者を出している。ねじれがない強い政権ということは、秘密保護法案などで傷つくのは野党だけという結果をもたらす。まさに自民党絶頂期と同様の政治状況となっているのだ。


この第1の条件に匹敵する第2の重要な条件は好調な経済である。アベノミクスは当たりに当たり、税収は7兆円を超える増収であった。デフレ脱却も手の届くところに来たという印象を強めている。数を背景に順調な経済運営が出来ている政権が倒れた例は過去にがんで倒れた池田勇人以外にない。


それではこの長期政権志向を阻害する要因は何かといえば、数で優位に立つ構図が崩れ、経済が停滞することである。安倍が長期政権を目指すなら、そのために必要なことといえば図式は簡単だ。公明党を切らないことと消費税の10%への再引き上げを先送りすること、さらなる右傾化を戒めバランスを取ることの3点に尽きる。


集団的自衛権の憲法解釈変更に向けて安倍は維新やみんなとの接近をいよいよ強める傾向にある。公明党は代表・山口那津男が政権内野党とばかりにスピッツのように吠えまくり、安倍が感情的な対応をしそうな兆候が見える。


安倍は長期政権を目指すなら、スピッツは無視しつつも各選挙区で数万になる公明党票を意識しなければならない。同党の票もはや自民党候補にとって必要不可欠な構図となっているのであり、これをみすみす手放す手はない。


集団的自衛権は極東の安保情勢を見れば紛れもなく必須項目だが、山口が「地球の裏側まで行ってアメリカを助けるな」というのなら、その運用で地球の裏側まで行かない歯止めをすればよいのだ。


一方で創価学会は公明党が政権党であるからなり立っている側面があり、同党にとっての最大の弱みである。政権を離れるに離れられないのだ。その辺の間隙を狙って球を投げ、関係を維持するのだ。


消費再増税は二つの側面から無理がある。一つはアベノミクスをつぶす恐れがあること。もう一つは1政権で2度の大幅増税はかつてなく、政権を確定的に直撃、弱体化することである。


アベノミクスをつぶすということはせっかく離脱の流れが生じているデフレを再び底なし沼に陥らせる可能性がある。いうまでもなくアベノミクスとデフレ脱却は車の両輪である。


そもそも消費増税を首相・野田佳彦が2度に分けて行うことを決めた背景には自民3代、民主3代と6代にわたり1年しか政権が続いていないことから、一内閣一仕事の思想が底流にあったのだ。


ところが安倍政権は長期政権化の流れである。幸い税収も大幅な伸びを見せており、財務省の思惑にはまって再増税を断行し、政権を投げ出す事態になってしまうことはない。14年度のGDPの伸びも減速必至で政府試算で1.4%、民間エコノミストの判断平均で0.8%でしかない。4〜6月期は駈け込み需要の反動で大幅に下げるが、焦点となる7〜9月期も大幅に改善を示すことはあるまい。


安倍は年末に再引き上げかどうかの判断をするが、今度ばかりは先送りが正解だろう。10%に引き上げて、さらなる財政出動となる事態は悪夢とも言えよう。加えて1日100億円の国富が流出する原発停止は放置できない。早期再稼働に踏み切らなければアベノミクスを直撃する。


極東をめぐる安保情勢は安倍にとって追い風となる。防空識別圏設定の習近平と「千年恨」の朴槿恵の存在は、国民の反中、反韓感情を駆り立てて、安倍の保守寄り政治姿勢とマッチングするからだ。北朝鮮の恐怖政治も追い風となる。しかし靖国参拝のように極右だけが喜ぶような政治行動は慎むべきだろう。


ところが過去の首相で長期政権を維持した首相は皆靖国参拝を熱心に実施している。吉田茂5回、佐藤栄作11回、中曽根康弘11回、小泉純一郎6回、といった具合だ。長期政権は7年8か月の佐藤に続いて、吉田、小泉、中曽根の順だが、靖国問題は中曽根時代に朝日が近隣諸国をたきつけて政治問題化させてしまって以来困難の度合いを増している。


参拝は国論を2分させて、長期政権の条件などにはとてもなり得ない状況に立ち至った。とりわけ韓国、中国の対米ロビー工作が功を奏しており、小泉参拝で異を唱えなかった米政府が今回に限って「失望」したのも、中韓の米議会や新聞への工作が効いている証拠でもある。


安倍は長年に渡るデフレの泥沼に苦しんだ日本にとってうまくいくと戦後の「中興の祖」になり得る。今年は昨年の“突撃”姿勢を改めて、バランス重視の政権運営に戻ることだ。そうすれば16年夏の衆参同日選挙までは政権は続く。消費再増税は法改正して見送り、同日選の結果を見た上でも十分だ。

<今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)

2013年12月27日

◆参拝で日本外交「靖国孤立」の危機

杉浦 正章


★冬休み特別出稿★


安倍の「独走」を止める側近がいない


まさに「戦後レジームからの脱却」を行動によって現す結果となった。首相・安倍晋三の靖国参拝は中国と韓国を激怒させ、ガラス細工のような極東の平和と安定を何とか維持しようとする米国の意図をも粉砕した。安倍は一体何を考えているのだろうか。


マスコミや学者の分析は群盲象を撫でるが如き見方しか出ていないが、安倍のその発言から見えてくるものは、冷徹な政治家としての姿勢でなく、個人的な信条を優先させる「靖国教徒」としての姿でしかない。

まさか首相たるものが「ネット右翼」だけを喜ばそうとしているとは思いたくないが、そう思えてくるような振る舞いだ。一番の危機は首相官邸にこの安倍の「独走」を止める力量のある側近がいないことであろう。


安倍の行動は確信犯的であった。周辺によると既に10月の段階で秋季例大祭に参拝しようとしていたが、伊豆大島の台風災害で断念している。その辺の事情を説明して首相側近の自民党総裁特別補佐官・萩生田光一は10月20日の民放番組で「今のまま中国や韓国と会談すると『参拝しない』との前提を付けられた会談になる。それを首相は考えていない」と指摘。

「就任1年の中でその姿勢を示されると思う」と、1周年を機会に参拝する決意を固めていることを明らかにしている。つまり安倍は靖国を参拝しないことを中韓との首脳会談の前提条件にされることを回避するためにも参拝する必要があると考えていたことになる。


しかし、この判断は大局を見失っている。なぜなら中国と韓国に絶好の対日批判の材料を与えてしまったからだ。その批判の激しさは小泉純一郎の参拝の時とは比べものにならない。


今回はそれだけではない。小泉の時は日本の内政問題としてきた米国までが「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」とこれまでにない深い憂慮の声明を発する結果を招いた。


日本の最重要の同盟国までが異例の批判をしたのである。まさに極東における日本の「靖国孤立」を招いてしまったのだ。米国は安部が就任して以来、その「戦後レジュームからの脱却」発言とこれに連動した安倍の靖国参拝実行が持つ危険性を懸念材料としてきた。


その理由は、安倍の姿勢がサンフランシスコ講和条約体制に対する挑戦になり得るからである。つまり米国にしてみればA級戦犯を処刑した東京裁判を受諾した1952年の講和条約でスタートさせた「戦後レジューム」から日本だけが“脱却”して、歴史の修正という独自の右傾化路線を進まれては極東の平和と安定にとって支障となるという判断なのである。


この危険を察知した米国はあの手この手で安倍の靖国参拝をけん制してきた。一番の象徴が10月の国務長官・ケリーと国防相・ヘーゲルによる異例の千鳥ヶ淵戦没者墓園の参拝である。明らかに米国の立場を行動を持って示したのだ。それにもかかわらず「靖国教徒」のごとき安倍の行動となった。米国の「失望」はまさに本物と言える。


中国がこのチャンスを見逃すわけがない。中国は米中二大国による太平洋支配を唱えており、その根源は第2次大戦戦勝国による対日押さえ込みにある。防空識別圏の設定で米国を怒らせたが、安倍の靖国参拝を今後“活用”して、日米分断のとっかかりにするだろう。


同様に大喜びしているのが韓国大統領・朴槿恵だ。韓国では低迷する経済に打つ手を知らない朴の支持率が低下。朴にとって残されたのは「反日カード」しかない状況となっていた。安倍の靖国参拝は願ってもない好機の到来であろう。


こうした事態を安倍は予知していたのだろうか。安倍は明らかにこの外交的大損失には考えが及ばなかったのであろう。安倍は靖国を参拝した歴代首相の名前を弁明のように列挙したが、極東情勢の危機的状況は当時の比ではない。


昔田中角栄が「首相の座は1年たつと、キツネが憑(つ)いて自分が逆さまに座っていても気付かない」と述べていたが、その“キツネ憑き”の気配が安倍の靖国参拝から感じられる。首相動静を見れば分かるが日本の首相ほどの激務はないといってもよい。


とくに田中や安倍のように職務に専念しすぎると、一時的に思考力が混迷して判断力が落ち、とんでもない決断をしてしまう危険を帯びるのだ。1年が経過して暫くすると落ち着くというのだが、まさに一年目の危機に、あらぬ方向への「独走」となって現れた。


特定秘密法の成立という大事業を成し遂げた安倍は、今後は経済に専念する方針を表明していたが、その政治手法はどうも順調なるアベノミクスを土台にして、ドラスティックな「信条」を優先処理させる傾向が出てきている。


衆参選挙で圧勝して、経済で順調な安倍を降ろそうとするような空気は、民主党の政調会長・桜井充が「一日も早く安倍政権を打倒しなければならない」と語っているだけだ。これは冬の蚊が飛んでいるようなもので勢いなど全くない。


しかし、高転びに転ぶ危険性は常に存在することが靖国参拝で分かった。大きなリスクを伴う行動を独断でしてしまうのだ。問題は冒頭述べたように官邸に安倍にストップをかける者がいないことだ。官房長官・菅義偉が思いとどまるように説得したと言うが、こういう時は両手を広げていさめなければ止まるものではない。


安倍の人事の傾向をみると「殿ご乱心」に直言するような人材は回りに置かない。自民党幹事長・石破茂にしても、安倍から参拝を事前に聞いて、その危険性はすぐに気付いたはずだが、これを止めなかった。安倍が弱れば次はチャンスと考えれば直言などしない。こうして安倍は裸の王様となりつつある。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年12月26日

◆「新辺野古基地」は中国極東戦略に楔

杉浦 正章


★冬休み特別出稿★

安倍・仲井真会談は出来レース
 
普天間基地の辺野古への移転実現は、極東における日米安保体制維持発展への礎石となるものであろう。

25日の首相・安倍晋三と沖縄県知事・仲井真弘多の実質合意は、普天間をめぐって日米間に亀裂が生ずることを期待する中国など周辺諸国の思惑が見事に外れたことを意味する。

その意味で「新辺野古基地」は中国が突破を図ろうとしている沖縄ー尖閣ー台湾ーフィリピンとつながる第1列島線確保の中核としての存在価値を今後一層高めることになる。
 
仲井真も変われば変わるものである。かっては辺野古移転を主張していたものの、民主党政権時代には移転反対の急先鋒と化してしまっていた。「銃剣とブルドーザーで基地を作るのか」とまで発言、すごんでいた。

それが安倍に対しては「驚くべき立派な内容を提示いただき、140万沖縄県民全体も感謝している」である。

この仲井真のオーバーなまでの大変身も無理はない。戦後の暗愚首相の筆頭である鳩山由紀夫の「最低でも県外」が、自民党政権が96年の普天間返還合意以来積み上げてきた辺野古への移設の「ガラス細工」を打ち壊してしまったからだ。

鳩山発言は、知事を二階に上げてはしごを外したようなものであり、“自暴自棄”的に仲井真も県外をいわざるを得なかったのだ。

しかし仲井真ほどの洞察力のある政治家なら、辺野古移転が普天間固定化を防ぐ唯一の方策であることくらいは十分理解していたことだろう。

普天間固定化をどうしても避けなければならないことは、まさに沖縄の政治家にとって選択肢のない常識なのである。仲井真は大迂回して再び辺野古に戻ったのだ。

安倍自民党政権は誕生早々から、民主党政権を反面教師とするかのように、普天間問題を突出型対応から、自民党独特の根回し型政治へと大変換させた。首相以下、外相、防衛相、官房長官、自民党幹事長らがひっきりなしに「那覇詣で」を繰り返し、「沖縄懐柔」につとめた。

その結果、あれだけ固かった沖縄の政治家たちが徐々に安倍政権へとなびき始め、発足以来ちょうど1年で180度の転換を実現させてしまったのである。

最終根回しは東京で行われた。検査入院など那覇でも十分出来るものを、わざわざ東京で入院させたことが、既に仲井真が“半落ち”状態にあったことを物語る。言うまでもなく官房長官・菅義偉の“寝技”が功を奏したに違いない。
 
こうして25日の安倍・仲井真会談となったのだが、こじれにこじれた普天間移設問題が、たったの25分の会談で事実上の合意となった。会談は安倍が満額回答を出すための「式典」であったのだ。

その証拠に25分のうち15分間はテレビに公開したほどであり、すべては「出来レース」の会談であった。もちろん仲井真の要求である普天間の5年以内の運用停止やオスプレイの訓練の過半を県外に移転することなどほぼ満額回答である。

今後、辺野古埋め立ての早期実施に向けて動き出すことになるが、「辺野古闘争」がどの程度盛りあがるかが焦点になろう。かつて海上での調査に対して、反対派がカヌーで妨害活動を展開した事件があり、生やさしい反対運動ではないと見るべきだろう。

辺野古は既に米軍基地であり、基地内からの埋め立てが沖に向かって進展することになるだろうが、反対派は基地周辺での座り込みやピケを戦術とするだろう。年寄りや女性も参加する可能性が強く、機動隊による強引な排除で死傷者などが出れば、反対派の思うつぼになる。

全国の反戦活動家を刺激して、反対闘争をこじらせ「成田闘争」や「砂川闘争」レベルにまで盛り挙げてしまってはなるまい。慎重なる対応が必要となろう。来月行われる沖縄県名護市の市長選挙の帰趨も反対運動の動向を見る上で欠かせない。

移設に反対の現職稲嶺進と、自民党が一本化に成功した移設推進派の末松文信の戦いになる見通しだが、沖縄の特殊事情もあり予断はできない。

民主党政権の普天間大失政は、極東の安全保障問題に大きな影を落とし、その日米亀裂の間隙を突くかのように中国は2010年に尖閣諸島で漁船衝突事件を巻き起こした。

フィリピンから米軍が引き揚げた途端に、南沙諸島の軍事基地化を加速した事例と全く同一の動きを見せたのだ。

今中国政府は普天間の辺野古移転の実現に青ざめているに違いない。普天間での日米の亀裂を突けるという判断そのものが誤判断であったからだ。なぜなら、辺野古は今後中国の海洋進出に対する防波堤の役割を果たすからである。

一方で米国は沖縄という地政学上の要衝を今後長期にわたり確保出来ることになった。思いやり予算で米軍の基地のコストを7割も負担している国はなく、オバマ政権の「縮軍」政策ともマッチする方向なのである。

環境調査などでの新協定作成へ向けての譲歩などは、実際にはそれほどの痛痒を感じるものでもあるまい。沖縄の基地の維持とその近代化を図れれば取るに足りない代償でしかあるまい。

他国の米軍基地問題に波及しかねない地位協定の改定でなければ、「環境協定」などは難しい問題ではない。飛行場建設も急げば、5年以内の完成も無理ではあるまい。普天間の5年以内の運用停止も実現性が高いと見るべきであろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
 

2013年12月13日

◆猪瀬進退窮まった、早期辞任しかない

杉浦 正章



居座りは五輪精神に反する


まさにトラではなくてタヌキが虎挟みにかかってしまった。トラバサミは絶対に抜けられないわなだ。ここまで追い詰められると都知事・猪瀬直樹の辞任は避けられないように見える。


邪悪追及のノンフィクション作家で名を挙げ、史上最高の得票で当選した男の末路は、耳から汗をぽたぽた落としてまさに野垂れ死に寸前の様相だ。2日間にわたる都議会集中審議は疑惑を深めこそすれ解消するにはほど遠い結果だった。


猪瀬は五輪招致の成果をまとめた著書「勝ち抜く力」を近く出版するが、もう勝ち抜く力は無い。良心があるのなら潔く辞任して都政が五輪精神に基づく再出発を出来るようにすべきだ。


あまりにその発言がバレバレなのにもあきれる。ノンフィクション作家とは空想の世界に遊んでいて、実務には全く疎いに違いない。「5000万円の金を見てびっくりした」というが、それが入るカバンを事前に用意しておいてびっくりするだろうか。


大金を闇から闇に葬るために銀行の口座に入れず、貸金庫にしまうのもびっくりしたからか。貸金庫も大きなものでなければ入らない。


ポイントとなる金の移動がどうであったかというと11月19日午前、衆院議員・徳田毅から「5千万円を貸す。借用証を書いてくれ」と連絡があり、妻に貸金庫を契約させた。翌20日夕、受け取った現金をもって都庁に戻り、これまでの答弁では「自宅に直帰した」というものであった。


ところが、読売のスクープした公用車運用の記録からうそがばれた。猪瀬は都庁から事務所にいったん立ち寄り20分滞在して、そこにまた公用車を呼んで帰宅したのだ。タクシーを使えばばれなかったところを、町田の自宅までのタクシー代1万5千円を節約したのがたたった。
 

したがって猪瀬は金を持ったまま事務所に入ったことになる。猪瀬は「秘書と打ち合わせた」と証言しているが、大金を受け取った後の打ち合わせとは何か。事務所に入ったということは、事務所の職員に金を渡した可能性があるのだ。


そうとなれば、「個人で借りた。親切な人がいるものだと思った」などという証言が一段と偽証性を帯びてくる。政治資金に記載しない政治資金規正法違反につながるのだ。


地方自治体には職員が、業者から無利子無担保で金を借りた場合は、即懲戒免職となる規定がある。 都職員であれば、利害関係者からの借金は「都職員服務規程」違反に当たり、懲戒免職処分となる。事実過去には100万円近い金を受け取った都職員が懲戒免となっている。猪瀬の受け取った額はけた外れである。


あらゆる状況証拠は「クロ」を指している。そもそも医療法人徳洲会前理事長の徳田虎雄に立候補のあいさつをし、何日かして次男の毅と会食した。ほどなく、現金5千万円が用立てられたのはなぜか。猪瀬は「落選した場合の生活資金が困るから借りた」というが、いくら徳田虎雄でも初対面の人間に「生活資金」で5000万円を無利子無担保で貸すかということだ。


猪瀬は副知事時代、高齢者のケアつき住宅や、周産期医療の検討チームを束ねていた。徳洲会は病院のほかに福祉施設を営み、都の補助金も受けている。徳田がその辺をにらんで、金を渡したことは想像に難くない。贈収賄には波及しないと思うが、腐臭ふんぷんではある。


今後知事を続ければ徳田と猪瀬の腐れ縁が延々と続くことになる。9月の徳洲会に対する強制調査直後に返済したのも、ノンフィクション作家としての想像力が欠如したとしか言い様がない。まずいから返したのであって、それがどう受け取られるかは作家なら事件の核心として使う部分であろう。


驚くのは政界には与野党共に猪瀬を弁護する空気がまったくないことだ。これは普段から「怒る、威張る、出しゃばる」が評判だった猪瀬の人徳に帰するところが大きい。官房長官・菅義偉も12日、「日本を挙げて五輪招致に成功したので、差し支えのないようにしてほしい」と述べ、事実上辞任を促した。


もはや永田町では辞任を前提にして「ポスト猪瀬」の都知事選候補が取りざたされている。11年の都知事選で次点だった東国原英夫はさっそく議員辞職までしてうごめいている。舛添要一もチャンスとばかりに意気込んでいる。石原慎太郎の息子・石原伸晃、小池百合子、小泉純一郎、小泉進次郎などの名前が取りざたされているが、まだ混沌としている。


猪瀬は「都政のために粉骨砕身働くことが私の責任」と強気に辞任を否定したかと思うと、都議会で「自らの判断で職を辞し信を問わないのか」と問われ、「そういうことも一つの在り方かもしれない」と述べるなど弱気の側面も見せている。


トラバサミにかかった政治家は、必ず強気と弱気を交錯させながら、最後は辞任へと追い込まれてゆく。例外はまずない。当初から筆者が述べてきたように、猪瀬の存在はオリンピック憲章の精神に反する。現状ではオリンピックの準備もままならぬ上に、都政が渋滞して都民に被害が及ぶ。都議会の追及は来週以降も続く。


猪瀬は早期辞任こそ自らの取る道と心得るべきである。 

【筆者より】今年はこれで打ち止めといたします。再開は1月9日とします。どうかよいお年をお迎えください。