2014年07月17日

◆岸田はケリーに「釈明」する必要無い

杉浦 正章




朴の対中軍事傾斜の危険を指摘せよ
 


韓国による対米宣伝が利いたと見えて、米国務長官ケリーが日朝接近におかんむりである。来週急きょ外相・岸田文男が訪米して釈明することになったが、よい機会である。


岸田は日米韓の結束を乱しているのは、習近平の手のひらで踊っている大統領・朴槿恵であることを指摘すべきである。


とりわけ習・朴会談で日本が行おうとしている集団的自衛権の行使容認に一致して反対した点を取り上げ、朝鮮半島有事が日本の後方支援なしでは絶対になり立たない構図にあることを強調すべきだ。そして、朴の中国への軍事的接近に歯止めをかけるべきである。


米国は拉致問題について国務省のサキ報道官が5月の段階で、日本政府から事前に連絡があったことを明らかにしたうえで、「透明性のある方法で拉致問題を解決するため、日本の取り組みを支援していく」と好意的な発言をしていた。


外務省が連絡を密にしていた証拠である。ところが15日になって、さる7日の岸田とケリーの電話会談でケリーが「日本だけが前に出るのは望ましくない。北朝鮮の核やミサイルの問題を巡る日本とアメリカ、韓国、3か国の足並みが乱れかねない」などと懸念を表明したことが明らかになった。


ケリーはさらに「日米は同盟国だ。北朝鮮との交渉については透明性をもって、事前にきちんと相談してほしい」「首相が訪朝することを検討する場合についても、事前通告ではなく、相談してほしい」とクギを刺したという。


この米側の急変はどう見てもつじつまが合わない。どうも背景には韓国の対米工作、朴得意の「言いつけ外交」があったと見られている。


岸田は、拉致問題の解決が日本の悲願であり、国務省とも連絡を取った上で拉致問題を進展させてきたことや、「拉致、核、ミサイル一括解決」の方向に変わりがないことを説明することになろう。制裁解除も日本独自のものに限られていることを強調する。


首相・安倍晋三の訪朝についても未定であることを説明することになろう。さらに加えて説明すべき点は、2008年以来中国主導で行われてきた6か国協議が、中朝関係の冷却化で実現が不可能である点を指摘し、拉致問題解決が朝鮮半島の緊張緩和の突破口となり得ることを強調すべきである。


さらに加えて最重要の問題は、朴槿恵の対中接近で中国が日米、日米韓分断に成功しつつある点を指摘すべきであろう。


とりわけ集団的自衛権行使容認の閣議決定に関して、中韓首脳会談で「一致して憂慮を表明した」と大統領府が発表したことを看過すべきではない。これは経済関係で切っても切れない関係にある中韓が、安保問題での協調に踏み込んだことを意味するからである。


中韓は共同軍事演習まで行う予定であると言われ、明らかに北東アジアの安保構造が変化の兆しを見せていることに他ならない。


北との関係が悪化しているとはいえ、中国が北を見捨てることはあり得ない。中国は国境まで米国の影響が来ることは避ける戦略を基本としている。金正恩もできるできないは別として、核ミサイルの開発で米国をどう喝しつつ、朝鮮半島を北のペースで統一する機会をうかがうのが基本戦略だ。


従ってミサイル発射も、核開発もやめないだろう。こうした中で朴が、集団的自衛権の行使という「日米同盟の強化」を批判する限り、韓国は対中軍事接近しか道がなくなることに思いが到らないのだ。集団的自衛権の行使容認を習と一緒になって批判することの危険性が分かっていないのだ。


日本は、朝鮮半島有事の際には、決定的に重要な戦略上のポジションを占める。国連軍の後方司令部は座間にあり、米海軍、空軍は日本の基地から発進するしかないのだ。その日本の集団的自衛権の行使を批判するのは、たこが自分の足を食らうのに等しい愚挙なのだ。


このような安保構造は朴槿恵の理解能力の範疇(はんちゅう)を越えるのだろう。


おそらくケリーもこの構図への深い理解に到っていない可能性がある。言われているように韓国の“工作”に乗って、拉致問題での懸念を表明したとすれば、余りに発言が軽い。


岸田は釈明に追われるのではなく、北東アジアにおける米戦略が、朴の対中軍事接近で危機的状況にあることを強調して、米国が対韓圧力を強めるときであることに思い至らしめる必要がある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月16日

◆川内を皮切りに原発基幹電源化を推進

杉浦 正章 



より深刻な温暖化被害を直視すべきだ



遅れに遅れたが、原子力規制委員会がようやく原発再稼働第1号機を出す事を認めた。16日に規制委は、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機について事実上の合格証となる「審査書案」を提示する。地元の了承手続きなどを経て秋には稼働する方向だ。


これを突破口として窮迫した日本のエネルギー事情に明るい日差しがさしはじめることになる。一部国民の原発アレルギーが次第に除去され、世界の原発ブームの潮流に乗ることが出来る。


政府は地球温暖化による気候大変動と、これによる死亡事故続出に歯止めをかけるためにも再稼働だけでなく、新設も視野にエネルギーのベストミックスを推進しなければなるまい。


それにしても夏の電力最需要期に間に合わなかったのは問題である。世界一厳しい基準を規制委が発表したのが昨年の7月8日だった。当初は半年で稼働1号機が出ると予想されていたが、遅れに遅れた。


規制委の一地質学者がブレーキをかけ続けたことに加えて、審査の大幅遅延、電力会社の書類の不備などが重なったのが原因である。


この結果、我が国が原発導入して以来半世紀ぶりに原発ゼロの夏に入った。停電にならないための電力供給余力は3%以上必要とされるが、関西電力は1.8%、九州電力は1.3%しかない。東電などからの支援でやりくりしているが、火力発電所は、老朽化で事故が頻発、いつ停電が起きてもおかしくない。


停電となれば病院の重症患者などに死者が続出すると予想されている。冷房だけではない、電力が命綱の患者は多いのだ。


日本の原発の停止を狡猾なる石油産出国やLNG輸出国は商機とみて、足元を見る動きに出た。LNGは平均より2割高で買わされており、折からの中東危機も加わって石油価格も高騰を重ねている。


国富は年間4兆円流出し、日本人1人あたり4万円が化石燃料費に消えている。電気料金は上昇し続け、東電で4割、関電で3割の上昇だ。何よりの問題は原発のストップで地球温暖化の原因である二酸化炭素が垂れ流しになっていることだ。


最近の気候大変動は紛れもなく地球温暖化が原因であり、世界的な自然災害は増加の一途をたどっている。世界的に見ても原発事故による死亡者より発電ダムの決壊による死亡者の方が断然多い。


去る5月に米紙ニューヨーク・タイムズは、「チェルノブイリ原発で起きた事故でさえ、化石燃料を燃やすことで地球が被るダメージとは比較にならない」として温暖化対策のため当面、原発が必要とする社説を掲載した。


「チェルノブイリからの正しい教訓」と題した社説で「原子力発電の危険性は現実のもの」と指摘しながらも「再生可能資源が全ての化石燃料や原子力の燃料を代替できるのは遠い先のこと」とし、それまでは原発が大気中の温室効果ガス濃度を上げずに発電する「重要な手段となる」と位置づけたのだ。


全く同感であり、日本の一部新聞は、NYタイムズの爪の垢でも煎じて飲むべきだ。日本でも原発事故での死亡者はないが、集中豪雨や洪水など異常気象での死者が増大している現実を直視する必要がある。


それにもかかわらず国内では、原発アレルギーに立脚した観念論が依然幅を利かせている。


今や自民党にとって“お荷物”そのものになった小泉純一郎や、国家にとって“お荷物”の菅直人が「原発ゼロ」で金切り声を張り上げている。


福井地裁では大飯再稼働訴訟で厳しい地震基準についてなんと「それを超える地震が来ないという確たる根拠はない」と支離滅裂な判決を出した。「100万年に一度の地震があるから駄目」といっているに等しい。無知蒙昧(もうまい)をさらけ出した判決である。


まさに原発再稼働反対論は秘密保護法反対、集団的自衛権の行使反対とともに「日本の三大非常識」となっている。いずれも根拠のない風評をメディアが垂れ流し続け、これに国民が踊らされるという亡国の構図である。


滋賀県知事選で卒原発なる主張をした知事が誕生したが、1知事選の動向に左右されるべきでもない。最近では原発が最大の焦点になった都知事選で「原発ゼロ」を主張した細川護煕と小泉が大敗北を喫しているではないか。


二度の国政選挙でも原発ゼロ派は見る影もなく敗北している。官房長官・菅義偉が「卒原発」について「再稼働への影響はまったくない。原子力規制委員会が『安全』と認めた原発は再稼働する」と言い切ったのは当然であるし、頼もしい。


今後、川内再稼働を皮切りに、再稼働申請中の12原発19基の稼働を着々と推進すべきであろう。電力会社にとって川内原発が合格することの意義は大きい。なぜならば、申請書類や手順においても川内がモデルケースとなるからだ。いわば合格のためのノウハウを川内が示したことになるからだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月15日

◆海江田が前代未聞のずっこけ質問

杉浦 正章

 


事実誤認、判断ミスの連発



「民主が政権に対抗する野党としての信頼感を取り戻せるかが焦点だ」 と朝日新聞に期待された民主党代表・海江田万里の代表質問であったが、最初からずっこけた。


集団的自衛権の行使閣議決定に「国会の事前承認がない」と事実に反する指摘をしたり、イラク戦争の自衛隊による復興支援を「後方支援」と述べるなど事実誤認の連発。首相・安倍晋三から野党第1党の党首としての適性を指摘されてしまう結果となった。


海江田は閉会中審査が2日間では少ないと主張していたが、初歩的な問題でつまずくようでは審査の意味がなくなる。野党はみんなと、維新、次世代の各党が賛成に回り、政権与党自公と合わせれば、関連法案成立に支障がない流れが鮮明となった。
 

集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定を受けて14日に行われた衆院予算委員会は、野党とりわけ民主党にとって満を持しての論戦となるはずだった。


筆者は一言も聞きもらさぬよう録画して聞き直したが、海江田の質問の稚拙さにはあきれるばかりであった。仮にも党首であるから、事務局も協力して最強の論陣を張らせなければならないところだが、多くの重要問題で事実誤認を頻発させた。


まず集団的自衛権の行使に当たっての閣議決定について「国会承認の項目がない」と指摘した。安倍から「閣議決定の最後の部分に原則として国会の承認を求めることを法律に明記すると書いてある」と指摘されて、ぐうの音も出なかった。こともあろうに「歯止め」の最重要ポイントを知らなかったことになる。


さらに海江田はイラク戦争で自衛隊が「復興支援」したことを「後方支援」と発言、防衛相・小野寺五典からやんわりとたしなめられた。「近隣諸国への説明がない」と噛みついたが、自分が知らなかっただけ。


安倍から「38か国を回ったが全ての国で集団的自衛権の行使を説明、全ての国で支持を受けた」と反論され、二の句が継げなかった。


状況判断をめぐっても仰天の判断ミス。海江田は「このままどんどん軍拡を続ければ中国との軍拡競争になる」と指摘したが、これも全くの事実誤認。中国は10年間で軍事費を4倍に増大させたが、日本は縮小してきている。


安倍も「中期防で5年間に0.8%ずつ増やすことになったが、5年間増やし続けても2002年の水準でしかない」と反論した。
 


「抑止力」をめぐっても安倍から党首としての能力に疑問を呈される始末。海江田は「日独伊3国同盟も米国やソ連が攻め込むことが出来ないという論理だったが、戦争に突き進んだ。


安倍首相は抑止力万能主義だ」と噛みついた。安倍は「日米同盟と日独伊同盟を同列に扱うのは間違っている」と指摘した。たしかにファシズムの同盟と民主主義の価値観を共有する日米同盟とを同一視出来るわけがない。


安倍は「野党第1党の党首なんですから、私はそれで本当にいいのかなぁと思う。抑止力も認めないのはさすがに民主党だ」と皮肉を交えて党首としての適性を指摘した。


海江田は前日の滋賀県知事選で支援候補が勝ったことと集団的自衛権の行使の関連を突いたが、安倍は「影響していないと言うつもりは毛頭ない」と開き直った。


そもそも勝った三日月大造は、徹底した民主隠しで選挙戦を戦ったのであり、海江田が後になって胸を張ることの方がおかしい。続いて質問にたった岡田克也も湾岸戦争停戦後の機雷掃海の際に「護衛艦を出していた」と全くの事実誤認する始末。安保の論客のはずが馬脚を現す結果となった。


総じて言えば野党第1党の党首にとっては、閣議決定後最初の政府追及の場面であるわけだが、理論武装も、追及能力もお粗末すぎた。


要するにろくろく研究もせずに何も知らないまま代表質問に立つというお粗末さを露呈したのだ。民主党は右派が集団的自衛権の行使に賛成であり、賛否を明確にできないままの代表質問の弱点が露呈した結果となった。


一方他の野党も統一会派を組んだはずの維新は橋下徹グループと結いの党の間で早くも亀裂が生じた。維新の松野頼久が相手国からの要請を受けた集団的自衛権の行使を容認したのに対して、結いの柿沢未途は反対の立場を明らかにした。国政の最重要ポイントで食い違っては、先が思いやられるところだ。


野党は民主党左派、共産党、社民党、生活の党が反対。みんな、民主党右派、維新、次世代の各党が賛成に回る方向となった。今後関連法案の内容をめぐってこの構図が変化しうるが、総じて圧倒的多数の支持が固まる方向となった。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月14日

◆日米ガイドラインは対中抑止が前面に

杉浦 正章




米国の“過剰な期待”をどうかわす
 


1978年にソ連侵攻、97年に北の核・ミサイルを意識して策定された日米防衛協力のための指針(ガイドライン)は、極東情勢の激変を念頭に「対中抑止」を前面に打ち出すことになるだろう。


これは好むと好まざるとにかかわらず、日本が米大統領・オバマのリバランス(再均衡)政策の一翼を担うことになり、日米軍事協調路線は一段と深化する。


しかし、ガイドラインをめぐっては米軍に、北大西洋条約機構(NATO)に匹敵する防衛協力に拡大できるという過剰ともいえる期待感が台頭してきている。早ければ9月に予定される中間報告をめぐって政府は出来ることより出来ないことを明確にして交渉に臨む必要がある。


ガイドラインは年末までに改定する方針が日米両国で確認されている。防衛相・小野寺五典の訪米は、これを再確認したことになる。


会談したヘーゲルがもろ手を挙げて受け入れたことは間違いない。「この大胆かつ画期的な決定により、法整備が行われると、地域および世界に対する貢献が増大する。米政府は強力に支援する」と賛辞を惜しまなかった。


米国にしてみれば、「男子3日会わざれば刮目(かつもく)して見よ」の「男子」を「日本」に置き換えたいくらいの気持ちであろう。まさに変われば変わるものだという感情がよく現れている。


米政府は財政難から軍事費を削減しなければならないのにもかかわらず、イラク、パレスチナ、ウクライナではモグラ叩きのように争乱が頻発。これに加えて極東までも緊張の度を増しては猫の手でも借りたいところであった。


そこに日本の集団的自衛権の行使容認である。ヘーゲルが喜ばないわけはない。そしてヘーゲルは「日本政府の決定によって日米ガイドラインは画期的な形での改訂が可能となる」と踏み込んだ。


具体的な改訂内容については言及しなかったが、米国としては、この機をとらえて極東戦略を一挙に有利に展開できると踏んだのだろう。中国に抜かれたとはいえ日本はGDP3位の経済大国である。1位と3位が軍事協力を強めれば、2位の出る幕ではなくなるというのが基本戦略だ。


それでは画期的なガイドライン改定とは何か。米海軍制服組トップの作戦部長・グリナートが米国の期待の一端を去る5月に明らかにしている。グリナートはまず「集団的自衛権の行使が認められれば、アメリカ軍は空母部隊やミサイル防衛の任務で自衛隊と共同作戦を行うことができるようになる。


日米がさまざまな任務で1つの部隊として共同運用できるようになる」と日米両軍の統合的運用への期待を表明している。加えて「将来的にはNATOの同盟国と同じような共同作戦を展開することも、われわれは考えるべきだ」とも述べている。


「統合的運用」は日米共通の敵が極東に現れた場合には当然作戦も統合的にならざるを得ないし、効率面からもそうすべきことは言うまでもない。


しかし「NATO並み」は今の日本にはいささかきつい。英国などのようにイラク戦争や湾岸戦争に参戦して、多数の戦死者を出したりすれば、時の政権は「サドンデス」となりかねない。「普通の国」になるには日本はまだ20年かかる話であろう。


従ってガイドラインは「普通の国への萌芽」が見える程度にしかコミットメント出来ないであろう。


首相・安倍晋三は関連法案の処理は通常国会に先送りする方針であるが、年末のガイドラインで限定行使の枠を越えた方針を打ち出せば、離反する野党も出てくるし、公明党も“転向”しかねない。法案の成立も危うくなりかねないのだ。


したがって米国は過剰な期待をすれば、全てがぶちこわしになるという特殊な日本の国内政治情勢を知るべきであろう。


考えられるガイドライン策定作業の重点項目は(1)中国への抑止力の確立(2)完成段階に入った北の核ミサイルへの対応(3)尖閣グレーゾーンの事態への対応(4)湾岸戦争やイラク戦争などの事態に日本がいかにかかわるかーなどに絞られるものとみられる。


対中抑止力と北の核ミサイルは日米安保条約の最優先課題であり、条約に沿った形で米国はコミットするだろう。


調整の焦点は、グレーゾーンへの対応と中東有事などの事態への対応だ。グレーゾーンへの対処については日本側は米軍の関与を期待しているが、漁民などに装った中国軍兵士が、“ちょっかい”かけてきたような事態まで米軍に頼るのはいかがなものか。最初からやる気がないと受け取られる。


グレーゾーン事態へは自衛隊が警察権に基づく海上警備行動や治安出動でまず対処すべきであろう。米軍の役割としては、次ぎに続くと考えられる中国軍の参戦を空母艦隊で警戒し、けん制することであろう。


既にグレーゾーンを想定したと見られる日米合同演習は、今年2月の「アイアンフィスト(鉄拳)」作戦などで行われており、まず自衛隊が対処すればよい。


中東有事などへの対応であるが、首相・安倍晋三は日本がイラク戦争や湾岸戦争での戦闘に参加することはないとたびたび発言している。しかし米国としては当然「色をつけてもらわにゃ困る」と言ってくるだろう。その「色」をどうつけるかがやりとりの焦点となろう。


例えば「戦闘には参加しない」が、機雷の除去や後方支援には対応せざるを得ないし、対応すべきであろう。いずれにせよ集団的自衛権の行使容認は、公明党を引き込むために「神学論争」をしていた段階から「実戦論」へと移行する。安倍は褌(ふんどし)を締め直してかかる必要がある。


     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月11日

◆習の「新型大国関係」は事実上破たん

杉浦 正章




米中対話は「協調」から「対峙」へと変質
 


中国国家主席・習近平が提唱する「新型大国関係」とは「米中両国が厳しく対峙する新たな関係」ということかと思えてきた。2日間にわたって北京で開かれた米中戦略・経済対話は、米国と中国が「新型」という「同床」で「異なる夢」を見ている姿が浮き彫りとなった。


1979年の米中国交樹立以来最悪の関係ともいえる。背景には東・南シナ海での海洋進出、防空識別権の敷設、対米サイバー攻撃など中国の傍若無人ともいえる振る舞いがあり、これに対する米国のいら立ちが正面切って衝突したとも言える。


会談に先立って米側は「中国がもっとも嫌う問題でもどんどん提起する」(米外交筋)と意気込んでいたようだが、その通りの展開になった。


国務長官・ケリーはサイバー攻撃の問題について、国際会議では珍しい「盗む」という表現まで使って中国側を非難した。「インターネットを通じて企業情報が盗まれたことは大きな問題だ。革新や投資の意欲を削ぐ」と強調したのだ。


米国は5月には捜査当局が人民解放軍の現役将校らをハッキング容疑で起訴するという異例の対応に踏み切っており、その怒りを生の言葉でぶつけた形である。


中国は臆面もなく反論して、事実上物別れとなった。加えてケリーは「習主席は“新しい形の大国同志の関係”という言葉を何度も繰り返したが、新しい形の関係は言葉ではなく、行動によって示されるものだ。」とねじ込んだ。


習近平が9回にもわたって繰り返した「新型大国関係」に対しての米国の広報活動は鮮やかであった。習近平の演説が終わったころを見計らってホワイトハウスは大統領・オバマの声明を発表したのだ。


当然マスコミは習の一方的な主張を報ずるだけでなく、オバマの主張も報ずるから、報道は会談にオバマが参加しているような効果となる。そこで際立ったのが「新型大国関係」をめぐる主張の違いである。オバマは習の「新型大国関係」という言葉はあえて使わず「新たな形」という表現に徹した。


両者の主張の違いを、習対米首脳の発言から分析すると次のようになる。


まず習は昨年の訪米で主張したとおり「太平洋は両国を受け入れるのに十分な空間がある」として、米中による太平洋2分割論を提唱した。簡単に言えば米国はハワイより先に出てくるなということだ。そして「中国と米国が対抗すれば世界の災いとなる」として領有権問題などでの米国の介入をけん制している。


これは習が5月に主張した「アジアの安全はアジアで解決出来る」と米国の介入を排除した「新安全保障観」に結びつくものである。要するにチベット・ウイグル問題や、東・南シナ海に口を出すなという「大国関係」なのだ。


これに対してオバマの「新たな形」は、国際法と国際規範に従って法の秩序を守る大国関係であり、中国の覇権主義に待ったをかけるものである。ケリーは「習氏が何度も大国関係の新しい形について話すのを聞いた。だが新しい形とは言葉ではなく、行動によって定義される」と真っ向からけん制している。


米中は「新型大国関係」をめぐって、全く異なる構想をあらわにした形となった。
 

もちろんこうした対峙の構図は両国とも、事前に予期した上での発言であり、とりわけ習の発言は国内と海外をにらんだプロパガンダの色彩が濃厚ともいえる。


国務委員・楊潔篪(ヤンチエチー)が「領土問題では一切妥協しない。米国が一方に肩入れしないことを要求する」と述べている通り、妥協をすれば習体制が国内的にも影響を受けることになりかねないのだ。もともと米国が新型大国関係の構想に乗って来るとは期待していないのだ。


習としては南シナ海などで既成事実をどんどん積み重ねていくための、時間稼ぎの方便として「新型大国関係」を主張しているのに過ぎないのだ。そのためには対中軍事同盟の強化はなんとしでも阻止したいのが本音だ。
 

逆に米国は、日本、オーストラリア、フィリピンなど同盟国との絆を強め、中国との対峙を鮮明にする構えだ。


ケリーは習の新安保観に反論して「米国は太平洋国家であり、日本やフィリピンなどとの同盟に深く関与してゆく」と明言した。


しかし、米国はウクライナ、イラク、東・南シナ海と多正面作戦を強いられている形であり、アジアへのリバランス(再均衡)とはいえ、武力衝突への発展は極力避ける方針に変わりはない。ケリーがリバランスを説明して「中国封じ込めの意図はない」と述べたのは、当面「抑止強化」でいくということだ。


米国にしてみれば日本が集団的自衛権の行使に踏み切る方針であり、これに基づき年末には日米間で日米防衛協力のための指針も強化出来る。


豪州への海兵隊展開も進んでおり、日豪間も対中準軍事同盟の色彩を濃厚としている。東南アジア諸国も総じて中国の覇権に対する警戒心が強い。実態は「中国封じ込め」はしないのではなく「する」のである。


こうして6回目にして米中戦略・経済対話は、協調から対峙へと大きく変質した。習は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)を主催するに当たって、日米豪の離反を際立たせない方策を模索せざるを得ない状況に追い込まれつつある。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月10日

◆中国は反日教育の前に反核教育をせよ

杉浦 正章



誇大妄想の「見識小国」を離脱すべきだ
 


昔、名優森繁久弥が「中国人のマンマンデ」を説明していたのをラジオで聞いた。広辞苑によるとマンマンデとは「ゆっくりしたさま」を指す。中国人の大人(たいじん)ぶりを説明して森繁はNHKアナウンサーとして満州に赴任していた頃の思い出を語る。


「家を新築して、中国人を招待したが、子供が白い壁にいたずら書きをした。私が子供を呼びつけてしかろうとしたら、中国の客は『森繁さん、近くで見ないで遠くから見れば分からないよ』と、止めた。中国人の気持ちが分かった気がした」と述べていた。これを聞いて、中国人の大局観とはそういうものかと思った。


マンマンデぶりが好きになったものだが、今の中国を見ると心が痛む。その鷹揚なる性格がかけらも見えなくなってしまったからだ。
 

逆に、金で総入れ歯をしたかつての日本の“成金”そっくりである。物欲の固まりとでもいうか、カネで横っ面を叩けば物事は動くと思っているような傍若無人の振る舞いばかりが目立つ。


南シナ海ではベトナム沖にまで進出して石油を掘削、ベトナム漁船を体当たりで沈没させる。東シナ海では自衛隊機に戦闘機が30メートルまで接近して、ドイツの新聞をして「驚きのあまり息が止まった」と書かせる。


ケ小平が主張した「中国は国力の無いうちは、国際社会で 目立った行動をせずに、じっくり力を蓄えておこう」という韜光養晦(とうこうようかい)路線をかなぐり捨てると、こうなるかという見本であり、まさに「陶器店に迷い込んだ象」のような振る舞いである。


中国国家主席・習近平は9日始まった第6回米中戦略・経済対話で「中米が対抗すれば両国と世界に災難をもたらす。広大な太平洋には中米二つの大国を受け入れる十分な空間がある」と発言した。昨年の訪米で提案した新型大国関係の核心であるが、これを9回も繰り返したのだ。


まるで明の永楽帝が鄭和に大船団を組ませて南洋・インド洋を制覇させたころのような帝国主義思想の復活であり、日本などは眼中にないといいたいのであろう。


米国はこれに応ずるどころか日米、米豪の安全保障上の結びつきを強め、誇大妄想の習近平帝に立ちはだかっている。新型大国関係が初日の対話ですれ違いの様相を見せたのは当然である。


上がそうなら下はもっとひどい。あきれたのは中国内陸部・重慶市の共産党の青年組織「共産主義青年団」系の週刊新聞「重慶青年報」の3日付けの最新号の報道だ。「日本は再び戦争をしたがっている」というタイトルとともに、日本への原爆投下を連想させる全面広告を掲載した。


日本の地図の広島と長崎にきのこ雲を描き、原爆投下を連想させている。広島・長崎の被爆者を愚弄したばかりではない。問題は地図に東京の地名を書き込んで、「次は東京に原爆が落ちる」と暗示をかけている点だ。まさに我が国は原爆を保有する大国であると脅迫しているつもりなのだろう。


加えて同紙は「我々は過去に日本に友好的すぎたのではないか」というタイトルの評論も乗せて「過去40年間、中国の対日政策は、感情や行動面での寛容が過ぎた。警戒感を高めなければならない」などの主張を繰り広げている。


官房長官・菅義偉が「誠に不見識で、耐えがたい苦しみを経験した被爆者と家族の感情を逆なでし、唯一の核被爆国として容認できない」と述べ、中国に厳重抗議したのは当然だ。まさに不見識の極みであり、大国どころか狭隘(きょうあい)なる「見識小国」そのものだ。


上が右向けば下も右向く教育が徹底しているとしかいいようがない。その反日教育の風潮は幼児教育にまで徹底している。毎日に3か月前「日本人、殴らないで!」と題する記事が掲載された。


北京市中心部の繁華街のDVD販売店で、小学1年生の女の子が、話しかけてきた。「中国語が変ね。どこの国の人?」と聞くから「日本人だよ」と妻が答えると、女の子は「日本人なの!? 殴らないで!」とおびえた表情で後ずさりしたというのだ。


「日本人はどうして殴ると思うの?」と問いかけたが、女の子は「日本人なのになぜ殴らないの?」と不思議そうに尋ね返してくるばかりだったという。


自分がやっていることをさておいて、習近平は歴史認識問題を繰り返すが、徹底した反日教育の下地があるからこそ、国内で通用するのであろう。


ゴーストタウン「鬼城」の建設ラッシュを演出してGDPで日本を追い越したまではよかったが、いまや土地バブルははじける寸前だ。国内各地で争乱が頻発し、国民の目をますます外に向ける政治を習が選択することは目に見えているが、それでごまかし通せる時期は過ぎつつあるような気がしてならない。


反日教育のまえに反核教育が必要になってきたとも言える。そうでなければ災いは吾が身に降りかかると覚悟した方がよい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月09日

◆対中国で“日豪準軍事同盟”の色彩

杉浦 正章




アジアでも多国間安保の流れ
 


海洋進出をはかる中国に対する首相・安倍晋三の安全保障戦略が、日米同盟に加えてオーストラリアとの“準軍事同盟”の色彩を一段と強めた。極東における安全保障上の主導権は日米豪の連携を軸に強化・維持される方向となった。


日豪共同声明は対中軍事けん制の色彩が濃厚に打ち出され、事実上日本が初めて安全保障上で米国以外のパートナーを獲得した意味合いを強めている。日米豪は今後共同演習などを通じて、欧州における北大西洋条約機構(NATO)と似通った一種の多国間連携を深化させることになるものとみられる。


安倍はこの3か国連携の枠をインドにまで広げる日本・ハワイ・豪州・インドの「安保ダイヤモンド構想」にまい進する方針であり、中国の孤立化は濃厚である。
 

共同声明は「21世紀のための特別な戦略パートナーシップ」と題された。あえて両国が「特別な」という文言を挿入したのは、“準軍事同盟国”としての関係を際立たせる側面がある。


声明文では明らかに中国の覇権行為をけん制する文言が際立つ。「力の使用または強制による東シナ海及び南シナ海の現状を変更するいかなる一方的な試みにも反対する」と明記されているのだ。安倍にとっては第1次安倍政権以来進めてきた構想の集大成の形となった。


既に安倍は2007年に豪州のジョン・ハワード首相との間で「国家安全保障共同宣言」を署名している。安保関係強化を目指す共同宣言を日本が米国以外の国との間でまとめたのは初めてのことであった。


その背景には豪州軍がイラク・サマーワに派遣された自衛隊の安全確保に貢献したことや、大災害での日豪協力などの実績があった。


首相アボットは中国が最大の貿易相手国であるにもかかわらず、日本との連携に踏み切った。その発言からアボットの意気込みが分かる。

記者会見で「日本は1945年から一歩一歩法の支配のもとで行動してきた。日本を公平に見るべきであり、70年前の行動ではなく、今日の行動で判断されるべきだ」と言いきった。また「日本は戦後模範的な国際市民だった」と日本の平和主義路線を賞賛した。


明らかに中国国家主席・習近平が7日の盧溝橋事件記念式典で、「少数のものが歴史を無視し、侵略を美化している」と安倍を批判したことを念頭に置いた発言である。豪州は中国の海洋進出でシーレーン確保に危機感を感じており、北朝鮮の核ミサイルの開発にも強い懸念を抱いている。
 

そのためには「法の支配」重視の立場から日本との協力が欠かせないことに加えて、米国との強い同盟関係も意識したのであろう。日豪首脳は「防衛装備品及び技術の移転に関する協定」に署名したが、豪州側の当面の期待は、日本の優秀な潜水艦技術の導入である。


とりわけ4200トンの「そうりゅう」は大気に依存しない推進システムで2週間浮上せずに航行できる。非核、非原子力潜水艦では世界最高水準であり、建造予定の新潜水艦への技術移転を期待しているのだ。さらに両首脳は首脳同士の年1回の相互訪問や自衛隊と豪州軍の共同訓練円滑化の協定締結の方針でも一致した。


これまでアジアの安全保障は米国が2国間の同盟を個別に結ぶことによりなり立ってきた。豪州はイギリスと並んで米国ともっとも緊密な同盟国であり、米国の要請に応じて朝鮮戦争、アフガン戦争、イラク戦争などに軍隊を派遣、戦死者も出している。


最近では米海兵隊がダーウインに駐留を開始した。将来的には司令部機能を備え、沖縄に次ぐ前方展開拠点にする方針だ。今後米国としては経済力ナンバー3の日本との同盟と、信頼関係のなり立っている豪州との同盟を軸に、アジアにおけるリバランス(再均衡)戦略を展開するものとみられる。


日米豪は価値観も共通しており、シーレーンにおける共通利益も極めて大きい。ここで冒頭述べたように事実上の多国間防衛協力の流れが生じてくるのは間違いない。


現在の南シナ海や東シナ海に臆面もなく進出する中国の覇権主義に対抗するには、かつて欧州がソ連にNATOを軸に結束したように、多国間の連携が欠かせない情勢になってきている。


この3か国を軸に当面は中国進出の現実に直面しているフィリピンやベトナムとも連携を取りつつ、対中戦略が展開される流れとなろう。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月08日

◆支持率低下に安保・防衛バネが利く

杉浦 正章



安倍長期政権の流れは変わらない
 


一部マスコミが内閣支持率が50%を割ったことをとらえて「政府・与党に衝撃」(読売)とセンセーショナルな報道をしているが、事の本質をとらえていない。


「衝撃」などは「20%割れ」で使う言葉だ。集団的自衛権の行使容認をめぐって多くの新聞テレビが「日本が戦争をする国になる」などと、「ありえない風評」合戦で安倍政権を袋叩きにしたのに、まだ50%前後の支持率を維持している事の方が“奇跡”である。


中国の臆面もない覇権路線で集団的自衛権に象徴される安保・防衛上の抑止力の必要は、今後強まる一方であり、多くの国民が冷静に政権の支持を判断している証拠である。いわば安保防衛バネが首相・安倍晋三に対して利いているのであり、長期政権の流れは変わらないだろう。


顔面蒼白なのは朝日の編集者であろう。なんと内閣支持率が微増しているのだ。6月に43%であったものが集団的自衛権の行使を閣議決定した7月には44%になっているのだ。あれだけ叩いたのにこんなはずではなかったと思っているに違いない。


日経の調査も53%で横ばい。一方で読売が9ポイント下落の48%、NHKが4ポイント下落の52%だ。世論調査は聞き方が大きく結果を左右するから差が出て当然だが、それでもNHKと日経で50%台を維持しているのは驚く。


調査結果で注目すべきは自民党支持が減少した分が野党に回らず、無党派層に移行していることだ。日経の調査は自民党支持率が初めて4割台を切って36%となり、無党派層が39%から44%になった。NHKも自民党が41.4%から36.9に減り、無党派層が37.2%から42.4%に増えた。
 

大まかに見て自民党が減った分が無党派層に回る傾向を見せている。ということは野党には支持率が回っていないことを意味する。合計80%前後の回答が、自民党と浮動層の間を行き来して、一強多弱の勢力地図を形成しているのだ。


これが意味するものは国民の間で、民主党政権の体たらくへの“こりごり感”がいまだに続いているのだ。有り体に言えば政権が周辺国になめられることへの屈辱感が、安倍政権へのバネになっているのだ。


尖閣の漁船衝突事件での船長釈放、ロシア大統領の北方領土上陸、韓国大統領の竹島上陸など、日本が弱いと見れば、その分進出するのが周辺国であり、民主党政権はなすすべもなく“傍観”を決め込んだ。

内閣支持率の低下について民主党幹事長の大畠章宏は「国として大きな方針を転換する手続きに瑕疵(かし)があったと言わざるをえない」と述べ、政府・与党を批判したが、自らの支持率が5%前後と低迷の極みであることの瑕疵を棚上げしてはいけない。


野党は維新も橋下徹の人気が地に落ち、みんなは再び分裂の危機。石原慎太郎も新党の党首になる気はない。野党は国政選挙大敗の脳しんとう状態が依然継続しているのであり、予見しうる将来この流れが変わる気配はない。


89年の参院選挙で与野党逆転を達成、社会党委員長土井たか子をして「山が動いた」と語らしめたのは有名だが、土井のようなリーダーが今の野党に現れる気配は皆無だ。


民主党内も海江田万里が代表を続ける限り党勢が拡大することはない。そうかといって党内右派も勢いが出ない。山は動きそうもないのだ。
 

要するに一強多弱の政界地図は、当分変化する気配はないのだ。昨年首相・安倍晋三が秘密保護法を成立させたあとも一時的に50%を割ったが、すぐに回復している。


その最大の原因は隣の国に中国国家主席・習近平と韓国大統領・朴槿恵がいて、安倍の支持率をどんどん上げてくれているからだ。


習は7日も盧溝橋事件から77年の式典で口を極めて日本を批判、「今も少数の者が歴史の事実を無視しようとしているが、歴史をねじ曲げようとする者を中国と各国の人民は決して認めない」と安倍を批判した。


これは南・東シナ海で自分が現在やっていることを棚に上げて、ぬけぬけといえるものだという国民の感情をかき立てる。言いつけ外交を再開した朴槿恵の、慰安婦発言もとどまるところを知らないが、聞き飽きた日本国民は不毛の歴史認識にいちいち反省などしない。逆に反発するのだ。
 

従ってこれらの歴史認識からの日本攻撃は、これに対峙するだけで安倍の支持率を上げる役割を果たす。今後来年の戦勝70周年に向けて、中韓両国の対日批判のボルテージは上がるだろうが、ボルテージが上がるほど支持率が上がるという奇妙な現象を安倍にもたらすのだ。


加えて安倍の積極外交は、東南アジア、豪州などの主要国の共感を呼んでおり、日米同盟の深化もあって対中封じ込めは事実上成功しつつある。
 

今後、秋には原発再稼働、11月には沖縄知事選、消費税再引き上げかどうかの判断、年末には日米防衛協力の指針(ガイドライン)改訂など重要課題がひしめいている。


しかし原発再稼働は、何度国政選挙をやっても自民党が圧勝してもう勝負がついている。マスコミや野党はガイドラインを集団的自衛権関連法案が成立する前に改訂する問題を取り上げようとしているが、これは日米で法案成立後に効力を持たせる合意をすればよいことで何ら支障はない。


最大の問題は消費税再引き上げだが、1政権で2度も大増税をやったためしは過去にない。過去は1回で政権が倒れている。こればかりはやめた方がよい。


安倍が集団的自衛権関係法案を処理を来年の通常国会に回したことは政局と密接に絡む。集団的自衛権の行使の重要性を国民に周知徹底できれば、通常国会末の解散断行も視野に入れられるからだ。総選挙以来2年半も経過すれば、政局は“解散年齢”に到達する。


大きな流れは再来年の衆参ダブル選挙だが、安倍が来年勝負に出る可能性も否定出来ない。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月07日

◆北の「遺骨」執着の背景を分析する

杉浦 正章



安倍は拉致を核・ミサイルに連結させよ



日本側が「拉致」を特別調査委員会構成の最初にあげているのに、北朝鮮側は、「日本人遺骨」を最初にあげ、大使・宋日昊がその重要性を強調しているのはなぜか。


どうみても「遺骨」をめぐる日本側の資金提供を最重要ポイントに位置づけているとしか思えない。米兵の遺骨採集も再開しており、米政府は1柱あたり1万ドルから3万ドル支払っているといわれる。


北は拉致とともに遺骨収拾は人道問題であり、米国も支払っている以上日本が支払っても文句はつけられまいと考えているようだ。


朝鮮中央通信の報道では日本人拉致被害者らに関する「特別調査委員会」の四つの分科会は、〈1〉日本人遺骨〈2〉残留日本人・日本人配偶者〈3〉拉致被害者〈4〉行方不明者――となっており、日本人遺骨を最初の分科会に位置づけた。


これに対して日本側の発表は〈1〉拉致被害者〈2〉行方不明者〈3〉日本人遺骨〈4〉残留日本人・日本人配偶者の順であった。


これは北が何よりも「遺骨」を重視していることを物語っており、明らかに温度差がある。


すでに宋は2012年に衆院予算委員長・中井洽(元拉致問題担当相)と会談したころから「遺骨」に言及、「最近、日本人墓地が各地で発見された。肉親が墓参のために訪朝を希望するのなら受け入れる。それは、日本政府からだけでなく個人の申請でも構わない」と提案、墓参が実現している。


今回「遺骨」を重視する背景には朝鮮戦争における米兵の遺骨収集が、北に資金をもたらしたことがまず想起される。米国と北朝鮮は1993年に朝鮮戦争での戦死米兵の遺骨捜索で合意し、96年から共同で収集作業を行っている。


核実験で2005年に中断したが、いったん再開で合意したものの、12年に弾道ミサイル発射で再び中断。今春から収集作業を再開しているといわれる。米兵の戦死者は8000人で、1柱につき1万ドルから3万ドルを支払っているとされる。


一方で北朝鮮にある日本人の遺骨は、厚生労働省によると2万1600柱ある。そのほとんどが戦争直後の混乱で死亡した人たちであるが、多くが70数カ所の墓地に葬られているようだ。


北朝鮮が米国と同様の計算で遺骨を日本側に返還した場合、単純計算すれば1人1万ドルで200億円、2万ドルで400億円、3万ドルで600億円となる計算だ。
 

どうも宋日昊の口から遺骨問題が頻繁に出される背景には、こうした“皮算用”がある可能性があるようなのだ。宋にしてみれば米国が人道問題として遺骨の収集を再開している限りにおいては、日本が金を支払っても問題は生じまいという打算がある。


金正日は特別調査委に「早く結果を出すように」と指示しているといわれ、まず日本からの最初の資金を「遺骨」で獲得したい思惑があるものとみられる。金の対日戦略は父親の金正日が残したといわれる「拉致問題の解決は過去の清算に絡めよ」という言葉に沿っているとの見方が強い。


すでに中国との関係は核実験と張成沢粛正で決定的な亀裂状態となっており、経済的にも穴埋めで日本を選択せざるを得ない状況下にあるものとみられる。
 

首相・安倍晋三は、制裁一部解除に踏み切ったが、肝心の経済的利益に直結するような解除の仕方をしていない。


輸出入の全面禁止、北朝鮮からの航空チャーター便の乗り入れ禁止、万景峰(マンギョンボン)号入港禁止、朝鮮総連の継続使用など核心的な部分はカードとして残している。北の狡猾かつ必死な外交に惑わされる必要は無い。


制裁を一部解除したのは恐らく拉致被害者が生存しているとの感触を得た上でのことであろうが、拉致に関する限り過剰な期待はすべきではあるまい。政府もマスコミもせいぜい2,3人くらいと考えた方がよいだろう。


問題は日本外交が拉致問題の解決を突破口にして核・ミサイル開発を断念させるところにいかに北を導くかであろう。それには北風政策に太陽政策を織り交ぜてもよいことであろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月04日

◆習の日米韓への「くさび」は失敗

杉浦 正章



反日歴史共闘で中韓蜜月を演出
 


米大統領・オバマのアジア戦略であるリバランス(再均衡)と、これに対抗して習近平が打ち出した「アジア安全保障観」のせめぎ合いが、中韓首脳会談における事実上の焦点であった。


習は極東における日米韓の軍事連携にくさびを打ち込むべく、韓国大統領・朴槿恵を説得しようとした。しかしさすがの朴も米韓軍事同盟を毀損するわけにはいかず、「成熟した同伴者関係を築く」と安保分野での高レベル協議定例化で一致するにとどまった。


その代わり一致しやすい反日歴史認識共闘でお茶を濁したというのが中韓首脳会談の実態だろう。反日で「中韓蜜月」を演出したのだ。
 

消息筋によると中韓会談を前にした米国の対韓圧力は相当なものであったようだ。オバマのリバランス政策が首相・安倍晋三の集団的自衛権の行使容認で確立しつつある状況下で、朴が習に取り込まれては元も子もなくなるからだ。


事実、習は安全保障分野で韓国を取り込むことに専念した。米国と安倍の積極外交で南シナ海と東シナ海での覇権行為に対する対中包囲網が形成され、中国の孤立化が明白になっている状況を、韓国との関係強化で突破口を開こうとしたのだ。


習の基本構想は5月の上海会議で打ち出したアジア安保観だ。アジアの問題はアジア人で守るという同構想は、米国のリバランスを強く意識したものだ。しかしこの構想に同調する国はなく、わずかに朴だけが中国国営中央テレビのインタビューで「注視している」と言明していた。
 

習はこの「注視」を「支持」に転換させることを狙った。会談に先立って中央日報など韓国紙への寄稿で本音を露呈している。


習は「中韓両国は複雑な安全保障環境の挑戦にも共に対処すべきだ」との認識を示し、政治・安保両面での共闘を呼びかけたのだ。「いったん動乱が起きれば、域内国家のだれもが無事ではいられない」とし、中韓が協力して「この地域の恒久的な平和と安定を実現するため建設的な役割を果たすべきだ」と強調した。


明らかに日米韓連携に韓国を中国寄りに引き込むことによって、亀裂を生じさせる戦略だ。これに対して、朴は反日共闘は歓迎するところであろうが、反米につながる“共闘”にはさすがにちゅうちょせざるを得なかったのだ。かくして習のくさびは実現しなかったことになる。
 

しかし、両首脳が「両国の相互信頼を基盤に共同の関心事を緊密に論議する成熟した同伴者関係を築く」ことで一致したことは、朴が政治・安保にも踏み込んだ対中関係を容認したことにほかならない。抽象的ながら、朴が習の主張に配慮した形跡が濃厚だ。これこそ日米両国が今後「注視」しなければならない問題であろう。
 

一方で歴史認識での反日路線では難なく一致した。両首脳は安倍が行った河野談話の検証に反対する立場を確認し、共同声明付属文書で「双方の研究機関が関係資料の共同研究で協力する」方針を打ち出した。資料を集め、研究することによって反日プロパガンダを長期にわたって継続する方針を選択したことになる。


加えて習は、「来年が世界反ファシスト戦争勝利70周年であり、抗日戦争勝利と朝鮮半島の『光復』の70周年でもある」と指摘。そのうえで「双方は記念活動をすることができる」と述べ、中韓共同式典の開催を呼びかけ、朴もこれに応じた。


既にロシア大統領・プーチンも共催に応じており、これで少なくとも中、露、韓の共催が固まった。しかし、歴史認識問題は一時期より国際世論に訴えなくなった。なぜなら、中国の臆面もない海洋覇権行為の「現実」が「歴史」より優先する状況を生んでいるからだ。
 

さらに会談は直接的言及は避けたものの日本の集団的自衛権容認への大転換と、拉致問題をめぐっての日朝急接近が少なからぬ影響を及ぼした。習が記者会見で核・ミサイルを協議するための6か国協議の早期開催を呼びかけたことからも明白だ。


習としては北朝鮮への影響力低下への懸念が、日朝接近で現実のものとして生じており、韓国にも頭越しの日朝接近に不快感が根強い。共同声明が強い調子で朝鮮半島での核開発に断固として反対するとの方針を打ち出したのも、両国の焦りが背景にある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月03日

◆日朝、中韓「クロス接近」内情を分析

杉浦 正章



日本対北制裁解除、中韓慰安婦共同歩調
 

極東情勢が3日朝鮮半島をめぐって目まぐるしい展開を見せようとしている。


その基軸は中韓と日朝の「クロス接近」という潮流である。中国国家主席・習近平と韓国大統領・朴槿恵との会談は対日歴史認識で共同歩調を取る公算が強い。


一方で日本政府は拉致問題をめぐって同日、対策本部の関係閣僚会議やNSC=国家安全保障会議を開き、北朝鮮に対する日本独自の制裁措置の一部を解除する方向を打ち出す公算が高い。口にこそ出さないがそれぞれの国に古来外交の鉄則である「敵の敵は味方」的なムードすら生じているのだ。
 

まず日朝関係から見れば、明らかに北朝鮮は立て続けのミサイルの発射で、中韓接近をけん制している。日本に対するけん制と見るのは間違いであろう。日本に届かない短距離ミサイルの発射に込められたメッセージは中韓首脳会談への当てつけである。


日朝局長級会談ではミサイル問題は形式上の抗議にとどまり、日本側はもっぱら拉致問題に焦点を当てた。おそらく水面下で日朝交渉を支えている金正恩側近の「2代目ミスターX」あたりから対日けん制を否定する情報が入っている可能性が高い。


加えてミスターXからは、拉致被害者、日本人妻、特定失踪者をめぐって相当詳細な情報が入っているものと予想される。


そうでなければ局長級会談で日本側が「宋日昊(ソンイルホ)国交正常化交渉担当大使から丁寧な説明があった」と説明し、宋が「協力的な会談であった」と述べただけで、日本側が制裁の一部解除に踏み切れるわけがないのだ。


解除するのは、日本が独自に実施している(1)人的往来の制限(2)北朝鮮への現金持ち出しの届け出義務(3)人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止−−などの3分野となろう。


北の対日大接近は、国際社会の包囲網に突破口を開けられるかどうかの瀬戸際であり、拉致被害者、日本人妻、特定失踪者への調査も本気で進めているのだろう。金正恩も父親のやったことでもあり、拉致問題への思い入れはないものとみられる。


日本人妻へは聞き取り調査で日本に帰りたい者は返す方針を伝えている公算が強い。中国との関係は、張成沢粛正以来最悪状態にあり、金正恩は当分関係改善は不可能と見切ったのであろう。


一方で、朴槿恵は4月の旅客船沈没事故以降低迷している支持率回復に対日カードを再び切ろうとしている。“言いつけ外交”の復活である。露骨にも中国の国営中央テレビ(CCTV)で“言いつけ”を再開した。


インタビューで朴は日本による河野洋平官房長官談話の検証報告書に初めて言及し、「談話の精神を破壊し、韓日の信頼関係を壊した」「歴史を逆行させることはできない。日本の指導者が早く正しい歴史観を持ち、周辺国との協力関係を築いてほしい」と批判した。


明らかに習近平との会談を意識して歴史認識で“共同歩調”を取ろうとしているのであろう。これにたいして中国側も中韓首脳会談で歴史認識問題を取り上げる方針を明示している。


中国外務次官の劉振民は1日の記者会見で「日本で極右勢力による歴史改ざんが現れている背景で、話さない方が不自然だ」と強調、首脳会談のテーマになると明言した。しかし共同声明などの文書で対日批判を展開することには否定的な方針を示した。
 

反日に固まる朴に対して、習近平との間には温度差が見られる。最近習は明らかに11月の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の成功を意識し始めた。シャングリラ会議で孤立した二の舞を警戒しているのだ。


従って朴との会談では経済関係の強化を重視するものとみられるが、ここにきて日米韓の連携を分断する絶好のテーマが浮上した。安倍の集団的自衛権の行使容認への閣議決定である。中韓両国は集団的自衛権行使への警戒感が強く、とりわけ中国は反対の方針を明示している。
 

一方、米国はホワイト・ハウスも国務、国防両省もオバマのリバランス戦略に合致するともろ手を挙げて評価している。米国は鉄は熱いうちに打てとばかりに、年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改訂に向けての動きを速めている。


習が日米韓にくさびを打ち込むには朴を集団的自衛権の行使反対で取り込めばかなりの成果となる。そこに朴のジレンマが発生する。


朴が集団的自衛権反対で習の口車に乗って、中韓共同で反対となれば、国防政策まで中国寄りになることを意味する。習にとっては思うつぼであり、逆に米韓軍事同盟は毀損されることになりかねない。


要するに「二股」による板挟みである。さらに今から警告しておくが朴が対中接近でのめり込めば、土地バブルがはじけた場合に、中韓抱き合い心中となりかねない側面がある。こうして極東情勢は組んず解れつの展開を見せようとしている。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月02日

◆一国平和主義の風評戦に逐一反論する

杉浦 正章



平和ぼけもいいかげんにせよ
 

集団的自衛権の限定行使の閣議決定に伴い、朝日などリベラル系新聞が先頭に立って“風評戦” を展開している。


秘密保護法の際にも同様だった。「戦前の特別高等警察のように飲み屋で秘密情報を話しただけでしょっ引かれる」と朝日は流布したが、いまだに「しょっ引かれた」例は皆無だ。今回も逐一反論しておかないと、これに無批判で踊らされる国民が出てくることを懸念する。


首相官邸の前で「戦争反対」とヒステリックな声を張り上げる女性がよい例だ。閣議決定は日本が「普通の国」へと目覚めたことに過ぎない。それも北朝鮮や中国による安全保障環境の急変に対応していることであり、その根幹は「戦争抑止」にあることはいうまでもない。


反対論者はもはや極東は一国平和主義が通用する環境にないことを知るべきだ。
 

まず反対派のキャッチフレーズの最たるものは「日本が戦争をする国になる」であるが、集団的自衛権の行使は国連憲章の中核であり、加盟国は全てこれを承認している。その結果、国連加盟193か国が全て「戦争をする国」になっているかといえば、全くそうではない。戦争をするしないは国家の主権の最たるものである。


イラク戦争の際も北大西洋条約機構(NATO)に加盟していながらフランスもドイツも米国の要請に応じず、参加を拒否している。日本は集団的自衛権の限定行使を容認するからといって、戦争する国になることはない。安倍自身も1日の記者会見で湾岸戦争やイラク戦争に参加することはないと再度明言した。
 

つぎに反対派は「日本が他国の戦争に巻き込まれる」と主張するが、これも国家主権の放棄であり、あり得ない。巻き込まれる論の根拠は、例えば日本が米艦を敵のミサイルから防御した場合、日本も敵国扱いされるというものだ。


しかし考えてみるがいい。北朝鮮や中国が米艦を攻撃するケースは、次は日本と狙いを定めているのであって、その前段階の状況が発生しているのである。他国の戦争ではなく、日本の戦争に安保条約で日本を守る義務のある米国が巻き込まれるのであって、日本が巻き込まれるケースは想定できない。


首相・安倍晋三が「閣議決定は日本と関係の深い国が攻撃を受け、日本に危険が及ぶと政府が判断すれば必要最小限の集団的自衛権の行使が可能となる」と述べている通りだ。あくまで「日本に危険が及ぶ」ケースでしか行使はあり得ないのだ。安倍は「外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は今後とも行われない」と明言している。
 

朝日の論説委員・恵村順一郎はテレビで「一内閣の閣議決定で憲法の基本原則である平和主義をねじ曲げた。立憲主義の破壊だ」と主張するが、これも噴飯物の論議だ。それではこれまで、主に国会対策上の必要から「集団的自衛権は保有するが行使しない」としてきたのは、どこの国のどの内閣だということだ。


紛れもなく日本の歴代の「一内閣」が決定してきたことであり、その安全保障上の背景もそれでよしとしてきたのである。そして現在は極東における安保情勢は中国の海洋進出と北朝鮮の核ミサイル開発でがらりと様変わりした。今までの我関せずの一国平和主義ではなり立たない状況となったのだ。


火の粉は降りかかるのであり、放置すれば家は燃える。今までは隣が火事でもバケツで水をかけることさえ出来なかったのを出来るようにするだけのことだ。自分の主義主張通りなら「一内閣の決定」を容認し、意見の異なる決定だと認めないのは、マスコミにあってはならない唯我独尊論の極みでなくて何であろうか。
 

極論の最たるものは「自衛隊員が人を殺し、殺されることになる」というものであろう。人を殺してはならないのは当然のことだが、戦時と平時をごった混ぜにしてはいけない。それでは米国の若者は日本防衛のために死んでもよいのか。自ら国を守る意志がない国は滅亡するのが世界の歴史が証明している。


自衛隊員が生死を賭けて戦う場面は、日本の国民が生死の瀬戸際に立たされている場合だけなのであることを棚に上げた議論は説得力がない。
 

「やげては徴兵制が敷かれる」という極論もあるが、これも現在の政治状況においては不可能の部類に入る。しかし、北の核ミサイルが飛来し、中国が沖縄を占領するような事態となれば話は別だ。そうならないかぎりドラスチックな政策を選択する政権は生まれない。
 

反対論は「なぜこの時点でやらなければならないのか」というが、日本人は状況の認識をしっかり持たねばならない。


冷戦終了後の極東は、まさに百鬼夜行の激動期に入っている。中国が隙あらば覇権を拡大しようとしているのは南シナ海、と東シナ海を見れば一目瞭然だ。一方的に中国が敷いた防空識別権で何が起きているか。


ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙は、中国戦闘機の自衛隊機への急接近に対して「驚きのあまり息が止まるような事案だ。これは危険なゲームだ」との論調を展開している。


世界の常識は極東で「息の止まるようなこと」が発生しているというところにある。一国平和主義と平和ぼけが通用した時代は過去のものとなったのだ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年07月01日

◆韓国外相の曲解に満ちた対日批判

杉浦 正章



極東外交は静から動へ移行
 

このような偏狭な考えで外交をリードされては韓国民も迷惑だろう。外相・尹炳世による30日の国会答弁は、1日に北京で開催される日朝外務省局長級協議について露骨な批判を行った。「韓米両国は懸念しつつ見守っている」と米国まで引き合いに出したが、事実に反する。


米国は拉致問題での日朝接触を了解しており、中国ですら期待を表明した。日本政府は拉致問題の進展を突破口に将来は核・ミサイルでの6カ国協議の再開に発展させる長期展望を抱いており、尹はこれが分かっていない。


日朝協議に加えて、3日からの中国国家主席・習近平訪韓など極東外交は静から動へとめまぐるしい展開を見せ始める。
 

官房長官・菅義偉が30日の記者会見で尹発言について「全く当たらない」と否定したが、その通りだ。


尹の発言内容は「拉致問題は安倍政権が優先順位を置く問題だが、事態が憂慮する方向に展開する可能性を排除しない」と拉致問題での日朝合意に懸念を表明。核・ミサイル問題についても「今後韓米日の協調に影響を与える側面があり、韓米両国は懸念しつつ見守っている」と言明した。


加えて「日本の制裁解除のやり方次第で、韓米日の協調に相当な影響が及ぶ」と批判した。この発言は曲解と情報不足と反日感情にあふれたものである。
 

まず制裁解除に関して言えば、日本は国際社会が課している制裁とは別に独自の制裁を行っている。 北の拉致調査開始後に解除するのは(1)人的往来の規制(2)北朝鮮への現金持ち出しなどに関する規制(3)人道目的の北朝鮮籍船舶の日本への入港禁止措置――の3点であり、韓国が口を出す性格のものでもない。


さらに「韓米両国が懸念」というが、米国は国務省副報道官・ハーフが「日本とは緊密に調整している。日本にとって(拉致問題が)非常に重要な問題であることは承知している」と述べるとともに、日米で核・ミサイル問題解決に向けた足並みが乱れる懸念はないと強調している。


一方で中国外務省報道官の洪磊は30日の記者会見で、日朝政府間協議について「日朝両国の関係改善や、地域の平和と安定につながることを期待する」と期待感を表明している。
 

いずれも尹とは真逆の発言であり、言ってみれば尹発言だけが孤立しているのである。米国も中国も尹より大きなところを見ている。それは完全な行き詰まりを見せているミサイル・核問題をめぐる6カ国協議の再開である。北朝鮮の日本への接近をテコに再開に持ち込められれば極東の緊張緩和は大きく前進するのだ。
 

一方、北朝鮮がスカッドミサイルを日本海に向けて発射した問題についても、日本ではもっぱら日朝会談に向けてのけん制と受け取られているが、これには北と中国の関係悪化に関する視点が欠けている。北がけん制するとすれば3日に予定されている習近平訪韓であろう。


習は歴代国家主席と異なり、北朝鮮訪問をせずに韓国を訪問するのである。張成沢の処刑を断行した金正恩への習の怒りの強さを物語るものであろう。
 

日朝会談では北朝鮮側が、日本人拉致被害者の再調査のための特別調査委員会の設置について説明。日本側は即答せず帰国後、特別委の権限や調査の実効性を見きわめる。


アジア大洋州局長・伊原純一は2日に首相・安倍晋三に会談内容を報告、安倍は北の提示が妥当なものと判断すれば制裁の一部解除に踏み切る。


会談の焦点は北が拉致被害者のほか拉致の疑いが残る「特定失踪者」や北朝鮮への帰還事業で渡航した日本人妻らに関して既に分かっている被害者の具体名をあげて帰国を認めるかどうかであろう。


北は最高裁が売却中断をしている朝鮮総連中央本部ビルの継続使用問題や万景峰号の寄港許可などを要求するものとみられる。また最近北は日本企業誘致を求めてきていると言われているが、日本政府は核・ミサイル問題が解決しない限り、応ずる構えにない。


極東情勢は日朝接近が具体化し、安倍訪朝にまで発展するかどうか、習近平が訪韓で対日歴史認識問題で共闘姿勢をあらわにするかどうかなど極めて重要な局面を迎えることになる。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

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