2013年09月12日

◆公明代表が集団的自衛権で軟化の兆し

杉浦 正章



ワシントンで党首会談を提唱


集団的自衛権の憲法解釈変更に真っ向から反対だったはずの、公明党代表・山口那津男が、ワシントンで「帰国後党首会談」と言い出した。集団的自衛権歓迎の米国の空気を知った上で、連立決裂のための党首会談を提唱することはあり得ない。恐らく集団的自衛権に“歯止め”をかけるなど条件闘争に転ずる兆候ではないか。


山口は本当に米政府が集団的自衛権を求めているのかを確認して、求めていなかったら、これをてこに首相・安倍晋三を思いとどまらせようという“魂胆”であったが、どうもこれが外れたようだ。ミイラ取りがミイラの様相なのである。


シリア問題で目がつり上がっていた米政府高官も、ロシアの斡旋で一段落の流れが見えたようで11日は国務省でバーンズ副長官が山口と1時間会った。これに先立つ10日には国防長官首席補佐官・リッパートと会談した。


リッパートは「日本が集団的自衛権の行使を解禁し、国際社会でより積極的な役割を果たすことを米政府は歓迎する方向だ」と米政府の立場を鮮明にしている。


山口は「この問題は慌てずに議論することが大事だ」と、改めて慎重な姿勢を示したが、リッパートは面食らったはずだ。決めるのは安倍であってリッパートではないからだ。山口は言われっぱなしでは国内向けに格好が付かないため、創価学会向けに発言したのだろう。しかし、米政府の明確な方針を改めて直接聞いたことは、胸に響いたようだ。
 

その後同行記者団との懇談で従来の集団的自衛権問題への“極左も真っ青”な反応を転じて、安倍との党首会談に踏み込んだ。「連立与党だから、合意形成に努めるという姿勢があるべきだ。それがないと国民も同盟国も不安に思うだろう」と述べたのだ。


参院選の最中に「断固反対」と述べ、党幹部らには「皆さんは集団的自衛権のことで連立を離脱したくないでしょうねぇ」と連立離脱の可能性までほのめかしていた態度は急変である。


自公党首会談については幹事長・石破茂も近く党首会談が実現するとの見通しを示し、「協議をいつスタートさせるかは党首会談にかかるところが大きい」と指摘している。要するに党首会談を集団的自衛権に関する自公協議をスタートさせる入り口にしようというものだ。


安倍は基本的には年内にもこれまでの政権が維持してきた「集団的自衛権については国際法上は保有するが、憲法上は行使不可」との憲法解釈の変更を閣議決定する方向だ。集団的自衛権の行使は、自衛のための必要最小限度の実力行使に含まれる方向を打ち出すものとみられる。


既にそのための環境整備は整いつつある。辞任で抵抗しそうな内閣法制局長官を更迭、解釈変更論の小松一郎に差し替えた。そのための理論武装を整える安保法制墾も近く再スタートさせ、結論を受けた上で年内に閣議決定する防衛計画の大綱に反映させる。


同時並行的に国家安全保障戦略を策定するための「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・国際大学学長・北岡伸一)の初会合を12日に開催する。同懇談会は包括的な安保政策をうち出す方針である。


北岡はNHKとのインタビューで集団的自衛権の行使について、「結束していれば個々の国が襲われる可能性が低く、個別的自衛権はよいが集団的自衛権はだめだというのは、最初から間違った考え方だ」と述べている。安倍がとりまとめを求めている「国家安全保障戦略」に集団的自衛権の行使容認を盛り込む提言にしたい考えであろう。


このように安倍は既成事実をどんどん固めており、通常国会には関連法案を提出する流れである。まるで公明党の存在を無視するかのような展開である。安倍には中国と北朝鮮の軍事圧力に対抗するには、憲法改正を待っている余裕はないという判断がある。


第1次安保法制墾が提出した報告書が強調した「先例墨守や思考停止の弊害に陥ることなく、憲法規定を虚心坦懐(たんかい)に見つめ直す必要がある」という路線を推進しようというわけだ。極東の環境変化に対応できていない憲法解釈を後生大事に守っていられる時ではないというのが安倍の腹だろう。


野党も維新共同代表・橋下徹が10日、「時代や状況とともに憲法解釈が変わるのは当たり前だ。今の国際情勢からみれば、認めないといけない」と述べ、憲法解釈の見直しを容認する考えを示したことは大きい。これに民主党内右派の同調を得て、場合によっては公明党抜きでも不自由しない状況を作り得るからだ。


山口はこの時期の訪米を、自らの「断固反対」発言で振り上げた拳の降ろしどころを模索するための方便として設定したのだろう。山口は米国で「両党間で接点を見い出せるかは分からないが、一番足りないのは、これまでの考え方を変えようとする側の主張や論証だ。最終的に、国民が理解できるかどうかが必要条件だ」と述べている。


本当は「国民が理解できるかどうか」ではなく「創価学会婦人部が理解できるかどうか」の説得材料が欲しいに違いない。


したがって安倍は山口の「条件闘争」を実現可能にすることも考慮に入れる必要がある。地球の裏側まで米軍に付いていって、戦争に参加するような誤解を解かなければなるまい。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月11日

◆「尖閣打開策」が浮き沈みの内幕

杉浦 正章



石原慎太郎の姑息(こそく)さが露呈


尖閣国有化から一年を振り返ると、日中双方の失ったものの大きさを今さらながらに想起せざるを得ない。すべての問題は、都知事であった石原慎太郎による「東京都の尖閣購入」発言という“仕掛け”に端を発するが、本人は卑劣にも民主党政権のせいにして“頬被り”を決め込んでいる。


水面下では元外務省首脳などが打開策の動きを見せたが、首相・安倍晋三はこれを却下して、事態は一触即発の状態のまま推移している。


しかしG20 での日中首脳立ち話会談など一歩前進の動きも生じている。これを一歩前進二歩後退でなく、せめて一歩前進半歩後退にとどめる動きにつなげなければならない。裏話を披露しながら、1年間を検証する。


色々政治家を見てきたが、石原ほどいけしゃあしゃあと姑息(こそく)なうそをつく政治家は見たことがない。11日付の朝日新聞のインタビューでは自らの発言を覆して「地方自治体が買った方がよかった」と東京都が買うべきだったと述べている。


「都が購入すればどんな因縁の付け方がある?」なのだそうだ。加えて「野田政権がこれは人気取りになると思っただけの話。民主党政権は読みも浅くて目先のことしか考えない」と首相・野田佳彦をこき下ろしている。


しかしこれは全く“史実”と異なる上に詭弁(きべん)だ。石原は昨年4月に尖閣購入を米国で表明した後、「国が買うならそれでもよい」と発言、集めた寄付金を国の購入資金に回すことまで提案しているではないか。昨年8月19日野田と首相官邸で極秘裏に会談して、国が購入する方向で一致している。


そもそも石原が東京都が購入などという荒唐無稽な構想を打ち出した意図は、野田に国の購入を促すための策略であったのだ。詭弁と言う理由は、都が購入して、石原が職員を常駐させたり、船だまりを作ったりすれば、それこそ日中激突に発展していただろうからだ。都購入による日中戦争だ。


それを「野田の人気取り」というのは、卑怯未練なる責任転嫁に他ならない。


しかし野田の対応にも大きな失策がある。野田は石原との極秘会談を経て、当時の外務副大臣・山口壮を8月末に中国に派遣、国務委員・戴秉国に「国が購入する方針だが、これは石原の動きを押さえ混乱を回避するための措置でもある」「建造物など建てないという従来の方針は変えない」ーなどの方針を伝えた。


これに対する戴秉国の感触を山口は野田に「甘く伝えた」(政府筋)というのだ。これが9月9日の野田と国家主席・胡錦濤との立ち話会談にまで及んだ。英語の通訳しかいない要領を得ない会談で「野田はそれほど強く胡錦濤は反対しなかったと感じ取ってしまった」(政府筋)というのだ。


これが会談後たった二日で購入の閣議決定に踏み切った“誤算”につながる。反対したにもかかわらず、こけにされたと激怒した胡錦濤がかってないほどの反日デモ扇動を指示したのは言うまでもない。野田は明らかに“詰め”が甘かったのだ。


この反日路線は党内基盤が確立していない習近平も受け継いだ。習はいまだに基盤が確立しておらず、国内の情勢も貧富の差の拡大や汚職批判などが原因となる暴動やデモが繰り返されるなど極めて不安定だ。元共産党幹部・薄熙来の裁判などで垣間見せる党内の権力闘争の激しさは習の基盤の脆弱さのみを際立たせる。


習は尖閣なしでは基盤の構築が困難とも言える状況なのだ。しかし、中国政府がこのままでいいと思っていない事情は、主として経済問題から台頭している。


今年1〜6月の日中貿易は前年同期比10・8%減、日本の対中投資は同31%減に落ち込んだ。日本企業が1千万人超の雇用を生みだしている現実も無視できないのだ。


これを反映して尖閣問題でも微妙な変化が生じている。国有化の当初は「購入による国有化取り消し」を要求していたが、今の対応は「日本は領土問題の存在を認めるべきだ」にまで柔軟化している。


こうした事情を背景にさる6月に日中間で一つの打開策が水面下で生じた。元外務省首脳筋が中国の人脈を通じて動いたのだ。政府筋によるとその中から生じた打開策の骨子は「日本側は領土問題の存在は認めない。ただし中国が領有権を主張することは妨げない。その上で問題を棚上げする」というものだ。


同筋によるとこの打開策は安倍にまで上がったが、安倍は棚上げは領土問題の存在を認めることになるとの立場から、これを却下したといわれる。


しかし、安倍にしてみれば東京オリンピックを視野に入れた場合、筆者の主張するように「五輪デタント」は何が何でも達成したいところであろう。


元外務次官・栗山尚一が 「国際的な紛争を解決する方法は三つ。外交交渉、司法的解決、解決しないことでの解決。最後の方法は棚上げとか先送りとか言えるだろうが、尖閣問題を沈静化させるにはこの方法しかない」と述べている通りだ。棚上げが嫌なら先送りでの問題凍結を実現するしかない状況に立ち至っているのだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月10日

◆北東アジアは「五輪デタント」好機到来

杉浦 正章


安倍はフルに活用して中韓と“共栄”を目指せ


2020年東京オリンピックが北東アジア情勢にいかなる影響をもたらすかだが、日中にせよ日韓にせよ一種の“緩衝材”的な役割を果たす可能性が大きい。北朝鮮に対しても活用できる。これを奇貨として安倍は「五輪デタント(緊張緩和)」を目指して、北東アジアの政治情勢改善へのイニシアチブを発揮すべきである。


スポーツの祭典を前にして中国が尖閣への軍事攻勢を強めれば、アフガニスタン侵攻でモスクワオリンピックがボイコットを受けたのとは“真逆(まぎゃく)”に、世界中から「オリンピック妨害」の総スカンを食らい孤立することは必至である。


ここは少なくとも開催までの7年間のデタントが共通の利益になり得る。五輪を北東アジア“共栄”への礎とすべきであろう。


オリンピック東京開催で中国と韓国の代表紙の社説をつぶさに検証したが、まず東京開催そのものについては両紙とも歓迎している。


中国共産党機関紙で人民日報傘下の国際情報紙・環球時報が「われわれはここに日本人に祝意を表すとともに、彼らが今後7年間で順調に準備を進め、五輪を成功させることを祈りたい」と祝意を表明。「日本での五輪開催は中国人にとって、地理的なメリットもある。テレビ中継を見るにも時差はほとんどないし、現地に観戦に行くにも都合がいい」と歓迎している。


中央日報も「東京の五輪招致を祝い、開催の成功を祈る」と歓迎の意を表明した。中央日報はこれまで、「放射能問題の安全より五輪招致が重要なのか」と題する社説を掲載「期限内に汚染水問題を解決できなければ、五輪招致を自主的に放棄するという覚悟を示せ」と、韓国政府と歩調を合わせて招致妨害工作の一端をになってきたが、手のひらを返した。


しかし、東京招致を受けた安倍政権の今後の路線については正反対の分析を展開している。環球時報は「今後7年間日本はおそらく少し温和になり、それほど居丈高でなくなるだろう」と予想している。


これにたいして中央日報は「国内の一部からは、安倍政権の右傾化が五輪招致を契機に加速するという懸念が提起されている」と分析している。


両紙の主張でもっとも注目すべき点は環球時報が「常識的に考えて、日本は五輪開催まで中国との軍事摩擦を回避し、東中国海(東シナ海)の平和と安定を維持する必要がある」と主張していることである。


加えて歴史認識問題に言及「日本政府が今後数年間に靖国神社問題で再びごたごた動いた場合、中韓は五輪への国際世論の特殊な関心を利用して、第2次大戦の戦犯に政府が頭を下げる国が、平和を発揚する五輪を開催するのに一体適しているのだろうかと世界中の人々に問うことができる」と“どう喝”している。


中韓共同戦線で「反東京五輪プロパガンダ」を展開するという姿勢だ。中央日報も「 日本は歴史認識・領土などの問題で周辺国との葛藤・緊張を高める措置を自制しなければならない。局地的な紛争でもあれば、五輪の雰囲気に冷や水を浴びせる」と類似のけん制を展開している。


両紙とも尖閣諸島と竹島問題を念頭に置いているのであろう。いずれも主張は、唯我独尊的である。尖閣諸島の領海内に公船をたびたび立ち入らせ、大統領がこれ見よがしに竹島に上陸して挑発行為を繰り返すという自らの対日強硬策を棚上げしている。


しかし、両紙とも、共通して言えることは極東でオリンピックが開催されること自体は歓迎なのである。反対すれば国民感情から浮き上がる側面があるのかも知れない。今後の日本外交にとってのポイントはここにある。


尖閣については筆者は「先送り」しかないとたびたび主張している。次世代までの先送りが望ましいが、ここは少なくとも五輪までの7年間の先送りを意識すべきだ。


日中両国とも東京オリンピックへの世界の期待を裏切るわけにはいくまい。ソ連によるアフガニスタン侵攻が1980年のモスクワ・オリンピックボイコットにつながったことを忘れてはならない。戦争や紛争は五輪を台無しにする。極東に刺さったとげである尖閣の取り扱いは、東京開催で国際社会が絡む問題となったのだ。


環球時報も中央日報も、日本が紛争を起こすかのような論調だが、全く逆だ。習近平も朴槿恵も国内の不満のはけ口を日本に向けるという安易な政治姿勢を取り続けると、災いは必ず自らに降りかかることを肝に銘ずるべきだ。


安倍も改憲や集団的自衛権問題、敵基地攻撃能力確保は自らの信念に従って推進して行けばよい。いずれも基本的には国内問題であり、中韓が内政干渉するべき問題でもない。また、自らの姿勢を棚上げにして「右傾化」と批判することは全く当たらない。


しかし、首相による靖国参拝は、誤解を生ずるだけであり、思いとどまるべきだ。東京オリンピックは天の配剤か極東に新たな、そして共通の価値観が必要とする状況をもたらしたのだ。安倍はこのチャンスを見逃すべきではない。


オリンピックの成功は中国、韓国との経済関係好転も重要なポイントとなる側面が大きい。中韓両国にとっても観光事業などでプラスとなることは必至だ。環球時報が「もし日本がオリンピックで“第2の台頭”果たせれば、東アジア地域の経済全体に新たな活性化をもたらし、国家間の協力を刺激することになる。中国への脅威にはならない」と指摘している通りである。


オリンピックは“共存共栄”を果たすチャンスとしてフル活用すべきである。まかり間違っても逆コースをたどってはならない。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月09日

◆デフレ・消費増税に“神風”の東京五輪

杉浦 正章



韓国による妨害工作は“空振り”に終わった


こともあろうに隣国・韓国による“究極の妨害工作”にもかかわらず、圧勝の形で2020年オリンピック開催が決まった。首相・安倍晋三の強運はもちろんのこと、日本の「国運」の強さにまで思いをはせざるを得まい。アベノミクスはさらに一層勢いづき、デフレ脱却への“神風”となり得ることは間違いない。


安倍にとって消費増税8%の4月実施決断に向けて追い風になるものでもある。マラソン銀メダリストの君原健二が「オリンピックは精神的に生きる力を与えてくれる。感動とか夢とか希望とか勇気とか若い青少年に与える影響はとても大きい」と青少年への影響の大きさを涙ながらに語っているとおり、日本は出口なしの閉塞状態からの離脱をはかるチャンスが到来した。


韓国政府は日本の圧勝にあ然として、敗北感をかみ締めているだろう。


そもそも相手が弱すぎた側面が濃厚だ。まさにイスタンブールとマドリードが消去法で消された勝利だった。だが、そうしためぐり合わせになったこと自体も幸運であるとしか言いようがない。


ところが誘致運動が佳境に入った6日の段階で韓国が究極の禁じ手を打ってきた。福島県など日本の計8県の水産物を全面輸入禁止にすると発表したのだ。ただでさえ福島発の風評が投票結果に影響するのではないかという懸念が生じていた時点でのことである。


相変わらず「読めない」日本のマスコミは「何でこの時点で」といぶかる論調が支配的であったが、筆者は即座に「オリンピック妨害」と看破した。まずタイミングが国際オリンピック委員会総会直前である上に、海のない栃木、群馬両県を対象に入れていたからだ。


その狙いは東京が汚染県で囲まれている印象を演出、風評を一気に盛り上げようとしたのだ。結果的には安倍のプレゼンテーションにおける数字を挙げての全面否定が、率直に委員らの胸に響いた。安倍は「福島の近海の汚染の数値は最大でも世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1」とか、「0.3平方キロの湾内でブロックしている」など数字を示して風評のポイントを論破したのだ。


こうして史上まれに見るアンフェアな妨害は失敗に終わった。アラビア半島諸国と同じ半島国家で、大国からいじめられ続けてきた歴史を持つ国の、恐ろしいまでの陰険さと手段を選ばぬ陰謀の根深さをまざまざと思い知らされた形だ。


これにはなんと中国までがあきれかえっており、中国大手検索サイト「百度」の掲示板に「韓国は病気か?全力で東京五輪開催を妨害」というスレッドが立てられた。中国のネットユーザーからは、「一番嫌いなのが韓国だ。バカ国家だ」、「韓国はまともな国じゃない」、「われわれは低俗な生物と言い争う必要はない」などの批判が登場しているという。


「韓国の敗北」は、今後の2020年に向けての日本経済の振興ぶりで一層明らかになるだろう。アベノミクスの登場でただでさえ息も絶え絶えの韓国経済は、「日本が振興すると低迷する」パターンをとりつつある。


両国間にはウインウインの関係はなり立たないのである。なぜなら韓国の技術はすべて日本のそれの模倣で成り立っており、これ以上お人好しの技術移転や過去にあったような金融危機での支援などはまず行われないし、円安も続く方向だからだ。


そこで日本への経済効果だが、まずアベノミクスが予期できなかった相乗効果を得ることになった。これまでアベノミクスの成長戦略と言っても原発再稼働が最大の目玉としてあるほかは、これといった材料はないのが実情だ。


それがオリンピックという「具体的な目標と希望と未来が与えられた」(安倍)のだ。安倍は「15年続いたデフレと縮み志向の経済をオリンピックを起爆剤として払拭する」と言明、チャンスを最大限活用する意思を表明した。


成長戦略が焦点となる秋の臨時国会に向けて、政権にプラス材料になることは言うまでもない。野党が反対しようにもできない「掌中の玉」を得たのだ。


安倍の言うようにはっきりと7年後が見えるようになったことは、企業にも、所得環境にも大きなプラスの効果を生んでいくだろう。東京都の発表した経済波及効果(生産誘発額)は全国総計で約2兆9600億円。施設整備など需要増加額は東京都だけで約9600億円、全国総計で約1兆2200億円となっている。


招致活動のスローガンである「ニッポン復活」にプラスとなる数字が並ぶ。インフラ整備の前倒しなどにより、100兆円を超えると指摘する専門家もいる。


大和証券シニアストラテジスト・木野内栄治は「150兆円くらいの経済効果が出てくる可能性がある。これまで、1年先すらも見通せない経済情勢が続いてきた。7年後が見えるということは、企業にも、所得環境にも大きなプラスの効果を今の段階で生んでくれる」と分析している。


安倍がこのチャンスを利用しないはずはない。まさにアベノミクスにとっては神風の到来だ。安倍はオリンピック招致を消費増税の決断に結びつけることにはまだ慎重だが、4〜6月のGDP2.6%という好材料に加えてのオリンピックである。まさに消費増税の環境は整ったのであり、来月初めの判断は、8%に「ゴー」とならざるを得ない。


故松下幸之助が「日本の国運は不思議に強いものがあるというような感じがする。まさにつぶれんとしてつぶれない」と述べているが、その通りだ。明治以来40年周期で日本の興亡が訪れるという説がある。


維新から日露戦争までの40年は上り坂。以後第2次大戦までの40年は下り坂。戦後の40年は上り坂。1985年のプラザ合意で下り坂に入り2025年までは下り坂というものだ。


しかし2020年のオリンピック招致は、安倍のかじ取り次第で下り坂28年で、上昇に転ずる絶好の好機が生まれてきたことを意味する。それにしても安倍は運がいい。つきがある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月06日

◆オバマに大きな“貸し”を作った日本

杉浦 正章



安倍は事実上のシリア攻撃支持


日本は言うことは何でも聞くと高を括っていた大統領・オバマに、3日の電話会談で首相・安倍晋三が「安保理決議を得る努力をして欲しい」と実現不可能な難題を持ちかけたのが図に当たった。


シリア攻撃を決断したものの、孤立感を深めていたオバマは5日、サンクトペテルブルクで手のひらを返したように、安倍と会談、シリア攻撃への賛同を求めた。


安倍は「支持という言葉を使わない支持」を表明した。オバマには大きな“貸し”を作り、攻撃反対の習近平は対米関係においてかすんだ。日本は中国と北朝鮮に強いけん制球を投げることにも成功したのだ。


オバマは半年前の首脳会談の時が象徴したように、安倍つまり日本を一段と軽く見る感じが濃厚だった。国際会議の度に日米首脳会談を求めた安倍につれない態度で応じて、電話会談でお茶を濁してきた。今回もその手を使ってG20での日米首脳会談を避けようとしたが、甘かった。


安倍が電話会談でも孤立化したオバマに救いの手をさしのべると読み間違ったのだ。安倍が求めた安保理決議は、シリア攻撃に猛反対のロシアと中国が拒否権を使って成立しない事が確実であり、英国は参戦しない。これに日本までが加わったらまさに完全孤立だ。


普通ならせいぜい30分の首脳会談に、オバマは1時間をさき、シリアは言うに及ばず、北朝鮮、日中関係、TPP、集団的自衛権など幅広く話し合ったのだ。それも各国首脳との会談に先駆けて会談するという厚遇ぶりだ。


オバマとしては日本の支持を得て厳しいG20での「瀬戸際の根回し工作」の“突破口”としたかったに違いない。日本外交はオバマに対する処し方を学んだことになる。けん制しないと分からない男なのだ。


会談では安倍がぎりぎりの表現でオバマのシリア攻撃を“支持”した。アサドに「責任がある」として、オバマの攻撃決断に「理解している」と述べ、「非人道的行為を食い止める米国の強い責任感に敬意を表する」と述べれば、誰がどう見ても事実上の支持表明だ。


会談後大統領副補佐官のベン・ローズが記者団への説明で、「化学兵器に関する国際的な規範を守らせるために我々がやろうとしていることについて、安倍首相から広い意味での支持の表明があったと考えている」と述べたのが、その証拠だ。


親中派のバリバリのケリーを国務長官に据えるなどとかく日本を“袖”にしがちのオバマはいま、「困ったときの友こそ真の友」ということわざをかみ締めているに違いない。


しかし日本にとってもここでオバマに“貸し”を作ることは決して悪いことではない。まず第一に公船を繰り出して尖閣諸島を隙あらば掠め取ろうと狙っている中国への強いけん制になる。中国はロシアと並んでシリアへの攻撃反対であり、オバマには日本の存在感を改めて感じさせるものとなる。


さらに重要なのが新「悪の枢軸」対策である。悪の枢軸とはG・W・ブッシュが、2002年の一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクを指して使った言葉だが、イラクは牙を抜かれたからこれにシリアが入っている形だ。


北とシリアの結びつきは極めて大きい。シリアにガスマスクを売ろうとした北朝鮮の船が4月にトルコに摘発された事が物語るように、北の化学兵器がシリアのアサド政権に渡っていることは周知の事実である。また北のミサイル技術やミサイルそのものも渡っていることは明白だ。


NHKは8月29日、シリアが射程100キロ余りの短距離ミサイルおよそ40基を北朝鮮から購入したと報じている。北は化学兵器の開発が一番進んでいる国の一つとされており、これがミサイルに搭載されて日本を狙えば、核兵器に勝るとも劣らない破壊力を発揮する。


要するに他人事ではないのだ。オバマがシリアの化学兵器使用を黙認すればイランや北朝鮮の大量兵器使用に道を開くことになることに懸念を表明しているとおりなのだ。


こうした国際情勢をみれば日本にとってもアサド政権の化学兵器使用は無視できないことなのである。テレビのコメンテータレベルでは、10年前に米国がイラクの大量兵器の存在を間違って認識したから今回もあり得るという議論が幅を利かせているが、アメリカの情報機関がそうたびたび間違えるわけがない。


政府筋も「今度ばかりは本筋情報に基づいている」と漏らしており、安倍も根拠があっての“支持”なのだろう。


米議会は上院外交委員会が10対7の賛成でオバマに対シリア軍事行動を認める決議案を承認した。上院本会議の採決は来週末頃になる見込みであるが、下院の動向はまだ定かではない。オバマは上院の賛同を得られれば、下院を無視して攻撃に出る可能性も排除できない。


攻撃にともないシリアが破れかぶれのイスラエル攻撃に踏み切ったり、戦火が拡大する可能性も否定出来ない。また石油、天然ガスの輸入に支障が生ずる可能性もある。ここ1,2週間は固唾をのんで情勢の推移を見守る必要がある。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月05日

◆海江田「6人組」取り込みに失敗

杉浦 正章
 


野田の動きが再編の焦点となろう 
 

蟹は甲羅に合わせて穴を掘ると言うが、民主党代表・海江田万里は4日、能力以上の大穴を掘ろうとして前首相・野田佳彦ら「6人衆」の取り込みに失敗した。根底には参院選大敗にもかかわらず代表を辞任しない海江田への不信がいかに根強いかを物語っている。


怨念の戦いと言うより、それ以前の「海江田蔑視」が存在して、物事が動かないのだ。野田は「役職よりもプロレス」と決め込んで、4日「週刊プロレス」の表紙に登場した。野田独特の表現方法で「どっこい生きている」と“やる気”を示したのだ。


とにかく海江田のやることなすこと筋が一本かけている。幹事長に労組出身の大畠章宏を据えて、党内左派に「支えられる」態勢を作ったまではよかったが、右派の筆頭野田をはじめ、岡田克也、前原誠司、玄葉光一郎、枝野幸男、安住淳ら「6人衆」の存在が気がかりでたまらない。何とか取り込めないかと考えた。


それには役職で取り込むしかないと党の最高機関として「総合政策調査会」なるものを作って、6人を起用しようとした。政策ごとにトップを決めようという構想だが、淺知恵もいいところであった。そもそも海江田の指図など受けたくもない6人衆が、「役職」だからといって蔑視の対象にしている海江田の下に嬉々として参集するわけがないのだ。


案の定野田は「税制」のトップになることを固辞し、海江田構想はガラガラと崩れた。このため名称を「総合調査会」と“格下げ”して、前原らに頼み込んで「枝野憲法」「前原行政改革」「玄葉経済・農業」などの役員人事にこぎ着けた。


しかし前原らも渋々引きうけたと見えて、人事発表の両院議員総会にも欠席。だいたい前原を安全保障、玄葉を外交に持ってくるならそれなりの対外的な意味を持つところだが、この人事では本人たちもやる気を起こすわけがない。最初から全く機能しない感じの党機関も珍しい。それを分かっていないのが今度の失策だ。


そこで今後の焦点になるのは「6人衆」の動向であり、野田と前原がどう動くかだ。とりわけ野田は謹慎期間が過ぎたと判断したのか沈黙を破り始めている。


「週刊プロレス」のインタビューでは昨年11月の党首討論に関して「議員バッジを外すつもりだったから負ける気はしなかった」と述懐している。あの「定数是正やりましょうよ。そうすれば16日に解散します」発言で、安倍を圧倒した討論だ。その時点で議員辞職まで考えていたとは驚きの発言である。


自身のホームページでも「党より天下国家だ」と消費増税に突っ走った経緯について「他に選択肢はありませんでした。“ネクスト・エレクション”(次の選挙)よりも“ネクスト・ジェネレーション”(次の世代)を重んじた選択に悔いはありません」と述べた。


小沢らの離党もやむを得ないという論調だ。また野田は安倍が消費税実施になかなか踏ん切りを付けないことについても、珍しく舌鋒鋭く批判している。安倍について「社会保障と税の一体改革の議論については、ずっと蚊帳(かや)の外にいました。だから、常に他人事のようでパッション(情熱)を全く感じません」と批判。


さらに「60人もの有識者のヒアリングを行い、そもそも論を聴取していること自体、奇異に映ります。要は、総理の肚一つです」と「安倍官邸」によるヒヤリングの愚を戒めている。まさに正論であり、野田にしてみれば命がけで成立させた消費増税法を、安倍が軽々しく扱うことに我慢できないところなのであろう。


警護に迷惑をかけると控えていた船橋駅前の辻立ちもちょくちょく始めた。8月1日夜開かれた野田グループの会合での野田の発言が永田町に波紋を呼んでいる。「最後の1人になっても党に残り、立て直していくつもりでいたが、このままでいいのだろうか、と思わざるを得なくなった」と述べたのだ。


「つもりでいた」とは確かに意味深長な表現である。そこには海江田への求心力はなく、遠心力が強く感じられる。一方で前原も政界再編志向が強い。維新の会の共同代表・橋下徹とは肝胆相照らす関係になってきており、定期的に会合を開いている。8月には大阪で秘密裏に橋下と会談し政界再編に向けて連携を保つ事で一致している。
 

こうした中で安倍は民主党に対して際どいボールを投げようとしている。改憲と集団的自衛権の行使、そしてTPP(環太平洋経済連携協定)だ。とりわけ集団的自衛権の問題が厳しい。通常国会には関連法案も提出される方向だからだ。


そうなれば民主党は是認論の野田、前原らと左派との間に決定的な溝ができる。民主党の保守からリベラルまで抱える党の体質は何も変わっていない。国の安全保障政策への態度を明確にせざるを得ない状況が生まれるのは確実だ。


海江田が「6人衆」の掌握に失敗して、今後はさらなる遠心力が働く流れとなっていくだろう。2009年の政権交代時には400人を超えた民主党議員は、現在は約3割の116人(衆院57人、参院59人)となったが、さらなる分裂再編もありうる状況である。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月04日

◆最大の成長戦略は原発再稼働しかない

杉浦 正章



市場も好感、景気への影響は大きい


やっぱり小泉進次カは大物だ。父親の重圧にあえいでいるかと思っていたら、純一郎の「原発ゼロの暴論」には耳を貸していないことが分かった。大飯原発が全面ストップして1年2か月ぶりに「原発ゼロ」になるが、このゼロは無限大の可能性を秘める数字だ。


なぜなら長期にわたってゼロになることは日本が国家としてつぶれることを意味するからだ。逆転の発想でみれば安倍政権は秋の成長戦略の最重要の柱にその“ゼロの貯金”を取り崩せることになるのだ。


原発再稼働を最大の景気対策に出来るのだ。化石燃料輸入による3兆9千億の国富の流出を止めることができ、6社が値上げを断行した電力料金の引き下げにつながる原発再稼働だ。大飯原発は冬にも再稼働の流れが確定、その他の原発も来年初めにかけて次々に再稼働へと動く。当然市場ははやす。


大飯原発は、2日深夜に3号機が停止し、定期検査が始まった。15日には4号機も止まり、2012年7月以来、国内で稼働中の原発は再びゼロになる。マスコミは番組中に女子アナに痴漢行為を働いてもTBSが降板させない下劣の極みのみのもんたと、それにへつらう「コメンテーター一家」をはじめ、朝日新聞などは大喜びだ。


ところが先の見えない代表格として新たに登場したのが、元首相・小泉純一郎だ。先月26日の毎日新聞の風知草が「小泉さんは原発ゼロだ」と喜んでいる。小泉はフィンランドの世界で唯一着工された最終処分場を見学して舞い上がった。


「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」と発言したのだ。


使用済み核燃料を10万年、地中深くに保管して毒性を抜くというのだが、その10万年が小泉の気に食わないらしい。「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」なのだそうだ。


悠久の地球の歴史から見れば、別に地球から取り出したものを地球に返して何が悪いのかと思うが、小泉の科学知識の“想定外”なのであろう。日本は国有地をボーリングすればよい。


まさか息子まで親父と同じ考えではないだろうと思って調べてみると、進次カは健全そのものだった。テレビで、とうとうと再稼働論を述べている。


「これまで歯を食いしばりながら日本国内で耐えてきた企業が、原発ゼロを機に一気に海外に流出していくだろうということです。日本の産業は空洞化します。そのような事態を招かないようにするのが政治の責任なのです」と述べていた。鳶が鷹を生むとはこのことだ。


小泉一家の話はさておき、首相・安倍晋三は成長戦略に原発の再稼働を想定せざるを得ない状況となっている。これといって成長の柱になるものが見当たらない中で、最大の景気対策は再稼働しかないからだ。


マスコミは放射能漏洩事故が続いている中での再稼働に難癖を付けるに決まっているが、目明き千人盲千人の世の中だ。だいいち総選挙と参院選挙で再稼働を安倍や幹事長・石破茂がテレビで公言、公約とした上での圧勝である。


朝日は卑怯未練にも、「原発や憲法などの争点は浮かび上がらなかった。いや、安倍が、たくみに「争点」を浮かび上がらせなかった」と主張しているが、冗談ではない。事実に曲解がある上に、マスコミの先頭を切って原発を争点にしたのは朝日自身だったではないか。


原子力規制委員会はストップする大飯原発の地下には活断層がないことがようやく分かって冬にも再稼働にゴーを打ち出す。それにしても学者の判断の悠長さにはあきれる。当初から活断層ではなく地滑りの跡とみる専門家もいたにもかかわらず、一人東洋大教授・渡辺満久だけが「活断層だ」と主張して譲らず結論に10か月もかかった。


日経によると調査団でただ一人の地質学者である産業技術総合研究所主任研究員・重松紀生が、鉱物の分析結果などから断層が40万年前より大幅に古いことを認定し(関電の言い分は)おおむね妥当」と表明。調査団の判断を方向付けたのだという。


だいたい一人の頑固者のために原発が長期にわたり止まるというシステムに問題がある。規制委は人数が足りないことを理由に、対応が遅すぎるし、委員長以下視野狭窄(きょうさく)で全体像を見失っている。


それでも大飯が動き出すことは突破口となる。既に原子力規制委の新規制基準の施行を受け、4電力会社が計5原発10基の再稼働に向けた安全審査を申請している。いずれも基準合致が有力視される原発ばかりであり、やはり冬には第一号の再稼働が実現する段取りだ。


そもそも自然エネルギーなどは3年たってもほとんど開発が進んでいない。全体に占める割合は1.4%に過ぎず、これが一挙に原発エネルギーに取って代わることはあり得ないことが立証されつつある。


朝日は参院選前の社説で、「原発が『安くて安定』はもはや色あせた言い回しだ。脱原発を訴える野党は、その矛盾をあぶりださなければならない」とけしかけていたが、その「安くて安定」は原発しかないことは歴史が証明するだろう。


科学技術というのは不断の進歩の歴史であり、新技術が必ず開発されて「原発ゼロ」が夢物語になるときが確実に来るだろう。


今自民党が「最終的にはゼロ」と言っているのは、その方向が読めるからだ。時間稼ぎに過ぎない。安全なる原発製造の中核は、事故をノウハウに生かせる日本しかないのだ。なぜなら世界のすう勢は放射能の危険性を制御の上活用していくしかないというところに到達、日本への期待は高まる一方だからだ。


直接原発事故で死んだ例は事実上の核爆発のチェルノブイリが10万人と言われているが、日本では直接の死者はゼロだ。世界的に見れば死者数は自動車事故の方がけた外れに多い。


安倍は原発再稼働を成長戦略の柱に据えて、産業流出と電気料金の値下げをはかるしかアベノミクスの維持継続はないと考えるべきだ。市場の期待も大きい。

3日は、汚染水対策を国が負担することになって東京電力株が続伸、大飯原発が「活断層ではない」との見解を好感して関西電力株がやはり続伸している。原発再稼働はもっと市場が好感する要素になる。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)






2013年09月03日

◆安倍ロビーイング外交が奏功しだした

杉浦 正章


さらに首相、外相経験者も動員せよ


中韓両国による米国内での反日ロビー活動は勢いを増す一方だが、その割には効果が上がっていない。一例を挙げれば尖閣諸島の領有権問題での米上院による日本支持の決議だ。これが象徴するものは、依然日米両国には太い相互依存の同盟関係が健在であることを物語ってをり、日本の米議会ロビー活動の成果だ。


首相・安倍晋三のひた向きなまでの外交努力は、公平に見て尖閣プロパガンダでじりじりと中国を追い詰めている。


韓国も薄汚い慰安婦像などを全米各地に建てようとしているが、米国人が“参拝”に詣でる気配はない。対米ロビー工作は気を抜いてはならないが、中韓がスリのように掠め取る手法なら、日本は逆張りの正攻法でいくべきだ。長い目で見ればその方が勝ち目がある。


安倍がひた向きに外遊で首脳外交に専念していると思ったら、“官邸ロビー活動”も展開していた。2日には米下院外交委員会の欧州・ユーラシア・新脅威小委員長・ローラバッカーを団長とする超党派の米議員団と会談、日米同盟を強化していく方針で一致した。


さる8月15日に米上院外交委員長・メネンデス(民主党)、21日には上院実力者である共和党のマケインと会談した。安倍は、尖閣沖で領海侵犯を繰り返す中国公船の実態や、日本が対話を求めても首脳会談に応じない中韓両国の姿勢やその背景などを直接説明した。


マケインは会談後「日本が集団的自衛権を行使できるようになれば、日米同盟は一層強化されるだろう」とのべ、安倍の集団的自衛権行使の方針を強く支持している。尖閣問題についても「日本の領土であることは議論の余地がない。南シナ海と東シナ海で中国から脅威を受けている国々は、共同戦線を張るべきだ」と訴えた。


こうした安倍や外交当局の不断の訴えが奏功して、米上院は7月29日に尖閣問題で重大な決議を採択した。決議は中国軍艦のレーダー照射や今年4月に中国の海洋監視船8隻が領海内に侵入したことを挙げて「緊張をさらに高めた」と批判。


尖閣諸島は日本の施政下にあり、日米安保条約が適用されるとの米政府の立場を明記。あらゆる関係国に、地域の安定を損なうような活動を自制するよう求めた。これは年間1兆円の対外広報予算のかなりの部分を対米ロビー活動やプロパガンダに費やしている中国の完敗を意味する。


中国でも、できることとできないことがあることを思い知ったに違いない。ニューヨークタイムズやワシントンポストなどリベラル系の新聞には宣伝費と称する工作費をばらまき、対日批判の社説に導くなどの“買収成果”を治めているが、さすがに米議会の買収は一部の議員を除けば容易ではない。


その一部の議員の代表が下院で反日の急先鋒となっているご存じマイク・ホンダだ。何でも言うことを聞いてくれるとあって中韓両国からジャブジャブ政治資金が注ぎ込まれている。費用全額中国持ちの豪華中国旅行もありだ。民主主義のモデルのような米議会でも下院議員のレベルは低く、露骨な反日の言動が通じるから、日本政府への慰安婦に対する謝罪要求決議が可決されてしまう。


しかしせいぜい慰安婦までだ。日米安保体制を揺るがすような動きはできない。韓国は在米170万人の韓国人をフルに活用して草の根レベルの反日工作を展開しており、ホンダはその御輿に乗っているのだ。グレンデール市の公園に慰安婦像を造ったが、ど田舎につくった慰安婦像など米国人は全く関心がないのが実態だ。


日本のマスコミも対日嫌がらせをいちいち大げさに報道すべきではない。相手のペースに踊らされるだけだ。


韓国は慰安婦以外でも議会にロビー工作を展開している。これまでに竹島領有権問題、日本海の呼称を「東海」へと変更する問題などを働きかけているが、ことごとく失敗している。最近秘密裏に行っているのが、安倍が進める集団的自衛権行使容認に反対するロビー活動だが、失敗だ。


集団的自衛権の問題はオバマの極東戦略に合致するものであり、政府議会一致して支持される方向だ。大統領・朴槿恵の米議会演説実現はロビー工作が成功した著しい例だが、狂ったように挑発を繰り返す北朝鮮への反感が可能にした側面もある。


こうして最近の中韓による反日ロビー工作は“空転”気味だ。日本は議員を買収するような邪道は避けなければならない。また金をもらっている議員のところに外交官が出かけて、説得活動をしようとしても無駄だ。そのうちに天罰が下るのを待つことしかない。


だからホンダなどは相手にせず、ロビーイングを展開するのだ。それには安倍だけに任せておいては体力が持たない。自民党を中心とする議員外交が極めて重要だ。小選挙区制になって外交は票にならないから、最近の自民党は米国に人脈を持った議員がいないが、これを育てることが肝要だ。


さらに即戦力になる議員や前議員らも活用すべきだ。歴代の首相、外相経験者を活用するのだ。中曽根康弘、小泉純一郎、川口順子、町村信孝、高村正彦、中曽根弘文、野田佳彦、岡田克也、前原誠司、玄葉光一郎などに“お出まし”を願い、その人脈をフルに活用してもらうのだ。民主党だからといって敬遠することはない。


なぜなら鳩山由紀夫と菅直人を除外すれば首相、外相経験者には外交安保では我が国の方針に齟齬(そご)を来すような人物はいないからだ。超党派によるロビーイングだ。逆に民主党も悪い気はしまい。


これに加えて安倍が検討している「内閣情報局」新設を早期に実現し、対外ロビー工作やプロパガンダを受け持たせることも重要なポイントだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月02日

◆安倍は来月早々に消費税実施判断へ

杉浦 正章

 

官房参与大敗北で論議終息


政治は全く素人の内閣官房参与の二人が政局絡みの口出しをして大失敗したというのが、政府主催の消費増税ヒヤリングの図式だ。首相・安倍晋三もあわよくばと増税回避の突破口を狙ったが、逆効果となった。7割が増税賛成だったが数よりも説得力ある増税推進論が展開され、かえって増税への地盤固めとなってしまった。


勝負はついた。あとは増税是認に向けて、企業の投資減税や法人税減税など財務省との“条件闘争”の段階に入り、月末か来月早々には安倍が8%増税への最終決断に踏み切るしかない情勢となった。


近ごろの新聞記者は右往左往した去年の解散判断と同じで、全く政治の展望が読めなくなったようだ。判断する度胸もないのだろう。60人のヒヤリングを終えた段階の紙面で「首相、消費増税決断へ」と踏み切った新聞は1社もない。


それどころか逆に読売が筆者の“友情ある説得”も聞かないで、「10倍返しだ」とばかりに社説で「来春の8%は見送るべきだ」とやってしまった。これもマスコミ界で孤立の様相だ。主筆のナベツネは振り上げた拳をどう下ろすのか見物だ。


もともと、有識者なるもののヒヤリングなどは、筆者が「馬鹿馬鹿しい」と書いたとおり、無意味なものであった。なぜなら肝心の政治の動向への視点が欠けているからだ。消費税という超ど級政策マターは政治が判断すべきもので、民間人の意見を聞くような筋合いのものではない。


そもそも消費税法成立の経緯を見れば、首相・野田佳彦が「党より天下国家だ」と、勇敢にも民主党の分裂まで巻き起こして3党合意を達成して、やっと通過させたものだ。政治家が命がけでやらなければならないほどの“政局銘柄”なのであり、ど素人が口を出すようなものでもない。


そのど素人が官邸の首相側近なのだから安倍官邸も度し難い。しょっちゅう薄気味悪いにたにた笑いをしている官房参与の浜田宏一と、一見思考が深そうで、しゃべると浅い本田悦朗だ。


必死になって「1%ずつの引き上げ」などという荒唐無稽(むけい)の説得をしようとするが、その主張をことごとく直接、間接に論破されたというのが集中点検会合と称するヒヤリングの実態だ。両参与ともアベノミクスの“功労者”だが、もてはやされて舞い上がり、政治の火中のクリまで拾えると誤判断したのだ。


“政治音痴”の両者を諭すかのように説明すれば、消費税法案を撤回するには臨時国会で法案を成立させなければ間に合わない。新法案を成立させるためには1からやり直しとなる。1党の分裂を招いた法案を最初からやり直すことになるのだ。


やる場合は自民党は正式機関で審議することになるが、筆者の聞く限りにおいては幹部で見送りや“なし崩し型引き上げ”に賛成する者はいない。不可能だが、たとえ法案をまとめ得たとしても国会審議がある。民主党や連立相手の公明党は黙っていない。


前外相・玄葉光一郎は「党分裂までして通したのは日本の将来を見通した戦略的判断だった」と述べ、反対だ。元官房長官・町村信孝も1日「あまり『内閣官房何とか』という人がたくさんいると、スピーディーな意思決定の逆になる」と痛烈に二人を批判。


このところ難癖ばかり付けている公明党代表・山口那津男に至っては、「数字も良くなっている状況なので、このチャンスを逃すと『消費税の決断いつやるの?今でしょう』と心の中で思っている」と茶化しながらも安倍官邸をいさめている。


もちろん自民党執行部も反対だ。自民党副幹事長の中谷元も「機関決定が必要だが法案を作れるか、それを国会にかけられるかといえば不可能だ。それにとても4月までに間に合わない」とテレビで発言している。


また「消費税を変更すれば1年後には倍返し、2年後には5倍返し、3年後には10倍返しになる」と流行語で安倍官邸を脅している。筆者が最初から指摘してきたとおり、見送り即政局の局面なのだ。安倍には見送りが達成できるほどの調整力も、エネルギーもない。


だいいち秋の臨時国会は何のための国会かと言えば、アベノミクスの仕上げのための国会だ。安部自身が唱えた3本の矢のうちの成長戦略が焦点となるのだ。消費税法案などを出せばそれにかかりっきりになって何も手が付かなくなる。審議も不毛の論議に終始するだろう。かえってアベノミクスつぶしの国会になってしまうのだ。


世界各国はこれを見て「何も出来ない政治の日本に戻った」と判断、中韓両国は小躍りするに違いない。従って冒頭述べたように勝負はついたのだ。議論は浜田、本田の大敗北で終息へと向かっている。予定通り8%の増税が4月から実施となる方向だ。


もっとも安倍は引き下がる以上は財務省の譲歩を勝ち取ろうとするだろう。それは激変緩和策だ。いかに8%へのショックを和らげるかだ。企業への投資減税や法人税減税が俎上(そじょう)に登るだろう。場合によっては所得減税も検討課題だ。また増税で来年度のGDPは4兆円は落ちる。これに相当する補正予算も必要不可欠になる。


荒唐無稽な8%引き上げ反対論はこうして終息の段階に入った。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年08月30日

◆軽減税率は「新聞」を外し食品限定で

杉浦 正章



マスコミの甘えを認めるべきでない


読売新聞の消費税に関する社説のトーンが変わったからどうもおかしいと思っていたら、会長の渡辺恒雄が来年4月の引き上げに反対なのだそうだ。読売と言えば昨年8月の3党合意による消費税法成立に向けて旗振り役の先頭を切っていたのだが、なぜだろうか。


その理由は来年4月の8%への引き上げに際して、新聞への軽減税率が適用されないからだという。永田町には大手新聞が消費税推進で“団結”した背景には財務省との間で、米、味噌、しょうゆの3品目と並んで新聞も軽減税率の対象にするという“密約”があったからだといううわさが流れ始めている。


大震災の被災地ですら「反対できない」と悲壮な覚悟を固めている消費増税だ。マスコミは本来なら率先して協力すべきところではないのか。


新聞の消費増税への態度は「賛成だが自らへの課税に反対」というまさに唯我独尊的態度である。今回の消費増税に関しては、朝日の会長・秋山耿太郎が社長時代の2012年6月に「新聞購読料に対する消費税率をこれ以上引き上げるのは、民主社会の健全な発展を損なう懸念がある。


国民の活字離れが一段と進むような方向での知識課税は望ましくない」と軽減税率の適用をあからさまに求めて、ひんしゅくをかったのが始まりだ。最近に至っては読売新聞グループ本社社長・白石興二郎(新聞協会会長)が「欧米先進国は新聞や出版物に軽減税率を導入して、容易に廉価に情報が国民の手に行き渡る制度を担保している。


軽減税率は国民の文化的知的水準を維持向上させるために必要だ」と、軽減税率を新聞に導入して、消費税を現行5%にとどめるよう主張している。朝日と読売は連携して、新聞協会を軸に軽減税率導入へとリードしている形だ。


これに対し政界の反応は、新聞首脳の要望にはすぐに胡麻を擦る如く反応する公明党が前向き対応をし始めているが、自民党はさすがに毅然(きぜん)としている。


税調会長・野田毅は来年8%段階での導入には応じない方針であり、10%段階での導入についても「やるとは言っていない。目指して勉強するだけだ」としている。それはそうだろう。政府の消費税点検会合では被災地である福島県相馬市市長の立谷秀清ですら「被災地といえども、反対できない」と述べているのだ。


新聞がかつてこぞって主張したように将来世代にツケを回さないためにも今増税するしかないというのが良識ある国民の判断なのだ。これをおろそかにしては遠山の金四郎ではないが御政道が成り立たない。


ところが読売の紙面作りがここに来て急旋回の様相である。去る13日付社説では「2.6%成長 消費増税に耐えられる体力か」と銘打って、「消費増税によって景気が腰折れし、デフレ脱却のチャンスを逃しては元も子もない。日本経済が消費増税に耐えられる体力を回復しているかどうか、難しい見極めが求められよう」と、4月増税には反対ともとれる意志表示だ。


これまでと180度トーンが変わった。政界からこぞって批判されている内閣官房参与・浜田宏一による点検会合での「先送り論」についても、2面3段で「浜田氏『消費税先送りを』」と仰々しく報じた。他紙はほとんど無視している。


傑作なのは新潟粟島浦村議会による新聞の軽減税率を求める請願書や意見書採択まで報じていることだ。何でこんなものが決まったのか背景は知るよしもないが、たかが「村議会」の話を全国紙が報ずることか。


こうした読売の姿勢は、ナベツネ御大の意向が反映されているのだ。昔の記者仲間である読売の幹部筋からちゃんと耳に入ってくる。「うちのボスは軽減税率が4月に実現しない限り反対だと言っている」というのだ。老いたりとはいえ、まだまだ読売グループでは泣く子も黙る存在であることを物語っているわけだ。


社長・白石は30日の点検会議に新聞協会長として出席して見解を述べるが、恐らくナベツネの意向を忖度(そんたく)した発言となるに違いない。


どうも首相・安倍晋三ですらナベツネの意向に左右されているフシが見られる。首相たるものマスコミと時には対峙しなければならない。国民大多数の利益を最優先すべきであるからだ。 


そもそもマスコミは何様だと思っているのだろうか。中小企業やサラリーマンや年金受給者が泣く泣く支払う消費税を、「知識課税は望ましくない」などという屁理屈をこねて、自分だけ免れようとして恥ずかしくないのか。


知的課税を言うなら、いまやパソコンや携帯などの通信料金への課税の方が問題となる状況であることを知るべきだ。我が国国民の新聞への信頼度は極めて高いものがあるが、その新聞が自らの矜持(きょうじ)を忘れているではないか。消費税は新聞料金に堂々と反映すればよい。


政府・自民党は軽減税率を新聞が勝手に作った「コメ、みそ、しょうゆ、新聞」から「新聞」を外して、食料品に限定して実施に移すべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年08月29日

◆政府、敵基地攻撃能力保持へ見切発車

杉浦 正章



公明党の“神経逆なで”の形


日米両国の防衛トップが日本の敵基地攻撃能力保有に向けての協力で合意したことは、集団的自衛権行使の容認とともに安倍政権が安保政策の大転換に見切り発車の形で踏み切ったことを意味する。日米両国は防衛協力のための指針(ガイドライン)策定に向けて調整を開始する。


これほどの重大マターであるから本来なら合意に先立つ閣議決定が必要になるところだが、緊迫する極東情勢を考慮すればやむを得ない対応とも言えよう。自民党内は既に方針は了承済みだが、同方針に反対する公明党は“神経逆なで”の形となり、連立問題も含めて対応を迫られる。


日本の敵基地攻撃能力については従来「米国が矛、日本が盾」の役割分担としてきたが、今後は日本が「矛」の 役割も分担する方向となった。


日本の大きな方針転換の理由として第1に挙げられるのは、今年春の北朝鮮による一連の挑発である。北はミサイルの発射準備を整えた上で、労働党機関紙で「東京、大阪、横浜、名古屋、京都には日本の全人口の3分の1が暮らしている。これは日本の戦争維持能力が一撃で消滅する可能性を意味する」と大都市の実名を挙げて核攻撃の威嚇を表明した。


加えて北は米軍基地のある三沢や沖縄も攻撃すると威嚇している。米ソ核対決の時代でもこれほどの威嚇はなく、自民党筋は「中東ならこれだけで戦争勃発だ」と漏らしていたものだ。


幹事長・石破茂も「北朝鮮からミサイルを撃たれて何万人が死んでからでは遅すぎる」として国民の生命財産を守る手段としての敵基地攻撃能力確保の必要を強調。第一撃甘受という受け身の姿勢を妥当としない方針を打ち出した。具体的な手段を含めて敵基地攻撃能力確保を明言したのだ。


一方首相・安倍晋三は「敵基地攻撃について言えば、F−35Aにその能力がある。検討しなければならない」と次期主力戦闘機として逐次42機の導入が決まっているF−35Aを使う可能性に言及した。しかし安倍政権としては、公明党がやみくもに絶対平和主義の立場から慎重論をとなえていることには一定の配慮をする姿勢を維持してきた。


7月に決めた防衛計画の大綱作成に向けての中間報告でも、敵基地攻撃能力への直接的な言及を避け、「弾道ミサイル攻撃への総合的な対応能力を充実させる必要がある」と指摘するにとどめたのだ。


ところが28日の国防長官・ヘーゲルとの会談で防衛相・小野寺五典は大きく実現へとかじを切った。


小野寺は、北朝鮮が日本の大都市の名前や、アメリカ軍基地のある日本の地名を具体的に挙げて、威嚇したことを念頭に、「こうしたたび重なる威嚇に対して、日本として対応するためにはどのようなことが必要か、また、日米の役割をどうするか議論が必要だ」と述べるとともに、「打撃力についても慎重にだが、日米で検討していくことが大切だ」と発言したのだ。


北朝鮮のミサイルによる脅威に対抗するため、自衛隊の敵基地攻撃能力の保有を日米で検討したいという考えを明確に伝えたことになる。ヘーゲルは、「日本が置かれている立場を理解している。日本の対応に協力したい」と述べ賛同した。ここに日本の敵基地攻撃能力保持で日米間の協力態勢が整ったことになる。


小野寺としては今後日米ガイドラインの策定の最重点項目とする方針であり、1〜2年かけて役割分担を含めた具体的な内容を決定する予定である。問題は集団的自衛権の行使すら「断固反対」(代表・山口那津男)としてきた公明党の対応である。


同党は2009年にやはり敵基地攻撃能力の保持が問題になったときにも幹部が「体を張って阻止する」と息巻いて、連立離脱を辞さない姿勢を見せた。山口もさる5月に記者会見で「日米安保体制の下で対応するというのが基本で、この体制が内外のこれまでの予見を培ってきた」と述べ、従来どおり攻撃は米軍に委ねるべきとの姿勢を鮮明にさせている。


この結果、勢い“政権内野党”のような公明党対策が不可欠の様相となっている。安倍は年末に防衛大綱を閣議決定する方針だが、日米防衛トップが合意した問題を大綱に盛り込まないわけにはいかないだろう。従って閣議決定が必要になるが、放置すれば国土交通相・太田昭宏が署名するかどうかの問題に発展しかねない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年08月28日

◆山口は集団的自衛権で二元外交するな

杉浦 正章



公明党は政教分離の原点に戻れ


「皆さんは集団的自衛権のことで連立を離脱したくないでしょうねぇ」と公明党代表・山口那津男が党幹部らに話しかけたという。8月初旬のことだ。山口は「だからしっかり話し合わなければ」とも付け加えたが、この発言は永田町に伝わり、山口は連立離脱まで考えているのかという憶測を生んだ。


しかし首相・安倍晋三の集団的自衛権容認へ向けて憲法解釈を見直す意思は固い。法制局長官を更迭したことの意味は、安倍が賽(さい)を投げてルビコンを渡ったことに他ならない。このままではまさに連立の危機だが、山口にその度胸はないとみる。しょせんは条件闘争に移行するだろう。


山口の集団的自衛権容認反対の姿勢は一見筋金入りのようである。参院選最中も「断固反対」と発言している。その根拠は「憲法9条をどう読んでも集団的自衛権を認める解釈は出てこない」というところにある。


同党が1998年に決定した基本政策大綱は、集団的自衛権について「我が国の自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考える」と明記している。この路線に沿って発言しているわけだ。


第1次安倍政権の時は当時の代表・太田昭宏も安倍に「集団的自衛権の行使は認められない」とねじ込んでいる。太田は現在国土交通相であり、安倍が閣議決定する場合にはこのままでは最大の難関となり得る。


公明党の強硬姿勢の背景には、創価学会の絶対平和主義がある。参院選挙でも学会の集会では実働パワーの婦人部から「日本が戦争に巻き込まれる」という無知に根付いた強い反対の声が上がり、山口の「断固反対」発言につながったようである。


しかし山口は、憲法の「政教分離」の原則に基づき、公明党が「王仏冥合」の言葉を党綱領から削除していることをよもや忘れてはいまい。


70年に当時の学会会長・池田大作が言論出版妨害批判に耐えきれずに政教分離を明言して、公明党は学会の影響を極力排除した政党に脱皮したはずではなかったか。その立党の基本を党首が無視してはいけない。今の同党の姿勢は国の安全保障より創価学会大事となってしまっているのだ。


また、公明党の集団的自衛権容認反対の方針は、同党の憲法改正案とも全く矛盾する。同党は「加憲」と称する改憲へと動き始めているが、その焦点となるのは9条だ。山口は9条に3項を新設して自衛隊の存在を明記する構想のようだが、これは当然集団的自衛権の容認が前提となる。


憲法改正で容認する以上、改正前でも事実上容認すべきと考えていなければ行えないことではないか。山口は集団的自衛権の行使について「近隣諸国の見方も合わせて考える必要がある」と発言しているが、問題をはき違えている。


中国、北朝鮮など近隣諸国がにわかに好戦的かつ挑戦的に転じて、我が国を取り巻く安全保障の環境ががらりと変ぼうした結果の、自衛権容認であるのだ。韓国も集団的自衛権の容認に筋違いの懸念を示しているが、米韓同盟は同自衛権を認めて、日本は認めないのは大矛盾だ。


安倍が法匪の如く旧来の解釈に固執する法制局長官を更迭したのは、極東の現実に全くそぐわない「旧説墨守と思考停止」を改める必要に迫られているからに他ならない。公明党も「思考停止」から離脱しなければなるまい。


ただ連立政権である以上、公明党の立場を考慮して安倍が26日「今まで政府内だけの議論だったが、公明党にも理解をしていただく努力をする必要がある」と述べているのは正しい。


公明党の懸念は「地球の裏側まで行って米国を助ける」(山口)というようなところにあるが、集団的自衛権行使に当たっての“歯止め”の明確化が必要だろう。


手続きの立法化や自衛隊の派遣を国会の事前承認を前提とする事などは安保法制懇の第1次報告でも明確化しており、これに地域の限定を付け加えてはどうか。例えば行使の範囲を安保条約の極東の範囲であるフィリピン以北と明示することなどである。


山口は来月8日から13日まで訪米して、米政府要人と会談する方針だが、集団的自衛権の問題を避けては通れまい。現在のまま米国で独自の主張を繰り返せば、まさに安倍政権は二元外交の危機に直面する。


すでに安倍は大統領・オバマとの会談で集団的自衛権容認を表明しており、これは対米公約となっている。山口は、米国が本当に集団的自衛権の容認を日本に求めているかどうかを探りたい思惑があるようだが、恥をかくだけだからやめた方がよい。


国務省も国防総省もようやく日本が国連憲章も認める安全保障の思想を取り入れ普通の国になろうとしているという判断であり、安倍の路線をもろ手を挙げて歓迎しているからだ。そこを突っついて片言隻句を取り出そうとしても、無理だ。


もっとも外務省は米側の勉強不足で高官がとんちんかんな発言をしないように、会談予定者にあらかじめ公明党の立場と安部の方針を明確に説明しておく必要がある。これは早急に手を打たねばなるまい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年08月27日

◆薄公判象徴の共産党独裁体制の矛盾

杉浦 正章

 

汚職摘発が権力闘争の手段となった


中国国家主席・習近平は蔓延する汚職について「トラもハエも叩く」と宣言したが、一匹たたいても群がるハエは「ワーン」と羽音を立てて一斉に飛び上がり、場所を変えて群がるのが実態だろう。


26日結審した元重慶市共産党委員会書記(元党中央政治局員)・薄熙来被告の公判が物語るものは、共産党独裁政権64年がもたらしたこの国の汚職と腐敗の闇の深さとその広がりであろう。明らかに土台は清朝末期にも似て腐り始めており、やがては1党独裁が致命傷となって、国の有り様(よう)を行き詰まらせるに違いない。


日本にとって、もっとも危険なのは習近平が国民の不満をそらすために「尖閣」を活用しようとすることであろう。


収賄と横領、職権乱用の罪に問われた薄被告への判決が注目されるが、おそらく国内支持勢力の反作用を避けるために死刑は避けるというのが大方の見方だ。薄熙来は冒頭から検察の起訴内容を全面的に否認し、中央政府と対決する姿勢を見せたが、客観的に見て「赤い収賄貴族」であることは誰も否定出来まい。


「赤い貴族」とは共産党幹部の家族、親族であり、人脈血縁を生かした事業や不正蓄財で巨万の資産を生んでいる階層を指す。中国では収賄官僚は高級腕時計を付けているケースが多いため「時計アニキ」と呼称されるが、薄熙来の場合のその収入はけたはずれであり時計アニキどころではない。


米国留学中の息子がアメリカではポルシェを飛ばし、北京では赤いフェラーリを乗り回す。まさか「バイトで稼いだ」とは言えまい。
 

英国人ニール・ヘイウッド毒殺事件の主犯として逮捕された妻の谷開来は有罪判決を受け服役中だ。毒殺の動機は夫妻の金銭管理人であった


ヘイウッドが外国への不正蓄財を進める見返りを要求して“ゆすり”の動きに出たことにある。これにたいして口封じのため青酸カリを飲ませて毒殺してしまうのだからすさまじい。薄熙来の甘さは、中国共産党幹部には何をしても火の粉は降りかからないという“神話”を信じたことであろう。


しかし重慶に“左遷”されてからの動きに党中央の胡錦濤政権は神経を尖らせた。毛沢東の平等主義路線を主張し、「唱紅」という革命歌を歌う運動を展開、格差社会を否定、共産党幹部にとって必要不可欠のマフィアとの癒着の否定などことごとく北京の神経逆なでの路線をとった。


逆に低価格の住宅建設など弱者対策を重視し、その人気は高まる一方だった。北京は「重慶発の革命」を懸念するまでに至ったのだ。


そもそも共産党幹部にとって不正蓄財などは常識の部類であり、首相・温家宝ファミリーの蓄財説をニューヨークタイムズが報道したのは記憶に新しい。普段ならお互い見て見ぬ振りをするのが習いだが、いったん政争絡みとなれば、脇腹をえぐられることになるのだ。薄熙来失脚の実態はまさにこれだ。


背景には長年にわたる1党独裁体制の歪みが紛れもなく存在する。とりわけケ小平の改革開放路線以来儲けにもうけた層が共産党幹部に限定されているのだ。その利益誘導の構図はこうだ。


国有銀行は共産党幹部が操る国営企業、地方政府に資金を回し、民間には貸し渋る。従って圧倒的に有利な国営企業と地方政府が潤沢な資金を背景に事業を展開、アリが砂糖に群がるように民間業者が賄賂を懐に接近する。こうして地方の大都市には大小の共産党財閥のような組織が形成される結果を招いているのだ。


「賄賂を拒んだら『ちょっとおかしい』と言われる」「賄賂を貰わなかったら官僚になる意味が無い」と官僚が公言する風潮が生じているのだ。それが2008年から2012年までの収賄での起訴数を25万人という天文学的な数字に至らしめているのだ。


けた外れの規模が元鉄道相・劉志軍が25年間君臨した間の10億円の賄賂だが、これは氷山の一角であり、鉄道省全体で見れば賄賂の額は「兆」の単位に登ると言われている。


こうして共産党内部に強固なる利益集団が発生した。院政を敷きたがる党長老とこれを引き継ぐ子弟による「太子党」がその核心部分だ。それが高邁(まい)なる社会主義革命の理想などとっくに忘れた “銭ゲバ” の風潮を巻き起こして、怪物のように成長してしまっているのだ。


こうした風潮が「時計アニキ」がネットに出た写真で摘発されて逮捕されているうちはよいが、薄熙来クラスの事件にまで発展すると話は別だ。汚職摘発が権力党争の手段として新たに登場したことを意味する。蓄財専念の共産党幹部はいつ自分がやり玉に挙げられるか気が気ではあるまい。


金も家族も海外に移していつでも逃げられるようにしている役人を「裸官」と称するそうだが、それを一手に引きうけるマフィアの地下組織「逃がし屋」もうけに入っている。中国や香港からの“逃亡移民”が多いカナダのバンクーバーは今や香港のようだから「ホンクーバー」と呼ばれる。人口は約213万人のうち約40万人が中国系移民だ。


こうして中国の共産党1党独裁体制は、その内包する矛盾撞着がいつ噴出してもおかしくない状況に到達しつつある。中国の動きは政治も民衆もその国土を流れる大河の如く一見緩慢に見えるが、ひとたび火が付けばそれこそ燎原の火のごとく拡大する。


問題はこれを食い止め、国民の愛国心を鼓舞する絶好の材料が「尖閣」にあることだ。習近平は最後の手段としてこれを手放さないだろう。日本も覚悟して安保体制を盤石なものにしておく必要がある。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)