2013年09月19日

◆法人税をめぐる“閣内対立”は田舎芝居

杉浦 正章



いずれは妥協点に落ち着く



食言もここまで来ると盗っ人猛々しいというのが、消費増税と抱き合わせの法人税減税案だ。いくら首相・安倍晋三自身が約束した覚えがないにしても、国民は完全にだまされたとしか受け取れまい。


昨年8月の消費増税成立はまぎれもなく社会福祉の財源確保のためという線で3党合意にこぎ着けたのであって、法人税減税を実現するためなどではさらさらない。おまけに減税の恩恵に預かる大企業は利益の蓄積である内部留保がジャブジャブあるではないか。


一見、法人減税を主張する安倍と反対する財務相・麻生太郎の“対立”にまで発展しているように見えるが、昔の自民党政権はもっと演技がうまかった。ぎりぎりまで対立して見せた。しょせんは先延ばしでの妥協点をめぐる役割分担でしかない事が分かる。まるで大根役者の田舎芝居だ。


確かに発言からだけ見ると法人税をめぐるやりとりは安倍政権を2分してけたたましい。安倍が18日麻生に「経済対策は、景気の腰折れを防ぐためだけでなく、成長軌道を確かなものにする必要があり、一時的なカンフル剤のようなものでは不十分だ」と述べ、法人税減税を含めた具体策の検討を指示。


これに対して麻生は「消費税率の引き上げによる増収分は、原則として、社会保障に充てることになっており、消費税率の引き上げに伴う経済対策として、法人税の実効税率を引き下げることは理解が得られない」と跳ね返した。真っ向からの対立である。


これに安部側近や党幹部らも加わって、対立は鮮明化。経済財政担当相・甘利明が来年度からの引き下げを主張すれば、自民党副総裁・高村正彦が参戦して「この際、一気に法人税を下げようというのは強欲ではないか。いきなり数兆円もの実効税率下げというのは、国民の理解は得にくい」とエスカレートするばかりだ。


安倍にしてみれば後生大事のアベノミクスへの影響を何としてでも最小限に食い止めたい。景気の腰折れは避けたい。本来なら消費税3%アップも先送りしたいところだが、とても無理と分かって5兆円規模の経済対策をやることで妥協した。


消費税3%の税収が8兆円だから、2%相当分を“分捕った”わけだ。しかしそれが大型の補正予算案の編成や公共投資、低所得者層への現金給付、企業に設備投資を促すための投資減税など“一過性”の財政出動にとどまっているうちは問題ない。ところが安倍の言う本格的法人税減税となるとがらりと性格が変ぼうする。


つまり冒頭述べた政府の食言へと変わるのだ。政府は国会対策でも国民への説明でも「社会福祉の充実のため」と消費増税の社会福祉目的税化を明言してきたのだ。それを法人税に回すのでは、まさに御政道が成り立たない。法人税1%引き下げれば4000億円の減収になる。


もし5%引き下げるとすれば、2兆円を消費税8兆円から食うことになる。経済財政諮問会議の民間委員のなかには「法人税率の引き下げは、消費税率を上げることによって広がったスペースを利用してできるのではないか」と愚の骨頂の意見を述べた者がいるというが、スペースなどどこにあるのか。言った委員の顔が見たい。


要するに、アベノミクスももちろん大事だが、あまりに“嘘”の露呈が早すぎるのだ。さすがの財務省も福祉目的税で拝み倒して成立を図った以上、手のひらを返すわけには行くまい。基本的には反対だが、安倍があまりに強硬なので恐ろしくなって妥協策をにじませるようになった。


それを反映して麻生も17日の記者会見で「引き下げは来年度以降にどれくらい税収が上振れするのか見極めてからだ」と発言、中長期的な課題とするところまでおりた。少なくとも来年度は見送らなければならないという線に持ち込もうと言うわけだ。


その妥協策としては、現在38%となっている法人税のうち、14年まで上乗せすることになっている復興特別法人税の3%を一年前倒しで廃止する案がある。加えて今年実施した年間給与を5%上げた企業に対する減税を2〜3%にまで上げた企業に引き下げる構想もある。


いずれにしても本格的な法人税減税と言うより弥縫策(びほうさく)だ。自民党税調会長・野田毅は「この秋の税制改正では検討しない」とまで言い切っており、安倍が当面は本格的法人税減税に踏み込むのは容易ではあるまい。


そこで安倍と麻生の“対立”がどこへ向かうかだが、対立から妥協案をはじき出す形を取ることによって、財務省内を納得させ、企業の了解も取り付けるという両面作戦が浮かび出るのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月18日

◆思考停止の朝日の集団的自衛権論

杉浦 正章



野党の理論支柱にはとてもなり得ない
 

朝日新聞が「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の開催に合わせて17日、集団的自衛権の行使容認に真っ向から反対する社説を打ち出した。一方、首相・安倍晋三は行使容認に事実上踏み切っている。左傾化する民主党代表・海江田万里は右派を無視するかのように反対に傾斜し始めている。


この結果集団的自衛権の問題は、規模は小さいが1960年の安保改定論議に類似した左右の対決軸が構成されつつある。安保闘争との決定的な違いは、朝日の構築した反対の理論武装が、最初から破たんしていることだ。


旧態依然の安保観を墨守し、緊迫した極東情勢の変化に思考停止状態を続けているのである。何と集団的自衛権の行使は「日米同盟に亀裂を生む」と主張する“破天荒”さだ。海江田や公明党代表・山口那津男がいくら朝日の社説を勉強して理論武装しようとしても無理があることをこれから証明する。
 

まず質はともかく量だけは多い社説を大きく俯瞰すれば、現在日本が直面する国の安全保障環境に対する認識が根本から欠けていることだ。そこには北朝鮮が日本の都市を名指しして核ミサイル発射のどう喝をし、自衛隊艦船や航空機に射撃管制用レーダーを照射した中国が、今度は攻撃型無人機まで尖閣諸島近辺に向かわせている緊迫感など全くない。


ただただ安倍政権を「戦後日本の基本方針の大転換であり平和主義からの逸脱である」と批判する事だけが目標の論調だ。極東情勢の変化に目をつぶらなければ論理構築が不可能であることが、これに続く論理展開で分かる。
 

社説は「自衛隊は今日まで海外で一人の戦死者も出さず、他国民を殺すこともなかった。9条による制約があったからだ」と主張するが、それを許した環境があったことを無視している。東西冷戦の谷間で日本は出る幕はなく、近年の戦争は遠くベトナムや中東で行われた。


ところが今回の場合は極東のしかも好戦的な隣国が、どう喝を繰り返すという事態である。自衛隊員の戦死者どころか国民の戦災死が出かねない状況下である。首相・安倍晋三が法制墾冒頭で「いかなる憲法解釈も、国民の生存や存立を犠牲にするような帰結となってはならない」と言わざるを得ない情勢なのである。朝日のお得意の一国平和主義が通用しない状況なのだ。


さらに社説は「安倍政権は内閣法制局長官を交代させ、一部の有識者が議論を主導し、一片の政府見解で解釈改憲に踏み切ろうとしている」と切りつけている。これも、大きな論理の飛躍がある。自民党は2度にわたる国政選挙で党の公約に集団的自衛権行使を掲げている。その結果は衆院294議席、参院65議席の圧勝なのである。


原発再稼働とともに集団的自衛権問題は朝日が完敗して、自民党が勝ったのだ。その国民の審判を棚上げにした論理の展開はまさに唯我独尊としか言いようがない。
 

社説は具体論に入って「一緒に活動中の米艦の防護は、自国を守る個別的自衛権の範囲で対応できるとの見方がある。ミサイル防衛の例にいたっては、いまの技術力では現実離れした想定だ」と指摘している。反対論者の多くが「個別的自衛権で十分対応できる」ことを反対論の寄りどころとしている。


個別的自衛権とは自国に対する他国からの武力攻撃に対して、自国を防衛するために必要な武力を行使する、国際法上の権利を言う。しかし戦争というのは何でもありである。在日米軍基地が攻撃されない事態や日本の領土が攻撃されていない状態での戦争突入は十分あり得る。机上の空論では「ないとしている」のであって、世界の戦史を見れば十分すぎるほど事例はある。

ミサイル防衛が現実離れしていると言うが、命中の確率は日進月歩で上がっており、実用の範囲内だ。北から米本土に行くミサイルを迎撃できないというが、これも空論だ。将来艦船に搭載するようになったら北はどこからでも撃てる。中国も弾道ミサイル潜水艦である094型原子力潜水艦を運用しており、とっくに太平洋上のどこからでも発射できる態勢を整えている。
 

社説はこともあろうに「性急に解釈変更を進めれば、近隣国との一層の関係悪化を招きかねない。そんなことは米国も望んでいまい。米国が何より重視するのは、中国を含む東アジアの安定だ。日本が中国との緊張をいたずらにあおるようなことをすれば、逆に日米同盟に亀裂を生む恐れすらある」と、はちゃめちゃな論理を展開して1人“佳境”に入っている。


「一層の関係悪化路線」を進めるのは中国と北朝鮮なのであって、日本から軍事圧力を仕掛けたことなどただの一度もない。「米国は望んでいない」と言うが、社説子は一部学者の主張をうのみにして日日のニュースすら読んでいないのか。


5日のオバマとの会談で安倍が集団的自衛権行使の方針に言及し、オバマが歓迎の意を伝えているではないか。山口が「同自衛権つぶしができないか」と米国に行ったものの国防長官首席補佐官・リッパートは「日本が集団的自衛権の行使を解禁し、国際社会でより積極的な役割を果たすことを米政府は歓迎する方向だ」と明言しているではないか。
 

「日米同盟に亀裂が入る」に至ってはまさに噴飯物だ。国防予算の削減は米国の極東戦略に日本の軍事力を組み入れざるを得ない状況となってきており、安倍の方針はまさに渡りに船なのである。中国と米国の関係を経済関係だけで見るのは甘い。中国の著しい台頭とその海洋進出は米国にとって最重要な安保戦略の対象にならざるを得ないのだ。


このように野党や左翼の理論的な支柱である朝日の論調が、容易に論破できる矛盾と撞着に満ちあふれているのである。野党は臨時国会に向けて同社説を根拠に追及することはあきらめた方がいい。レベルが低すぎるのだ。別の資料で勉強し直せ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年09月17日

◆亡国の1_・シーベルト神話から離脱

杉浦 正章


政府は被害者に“本音を”語るときだ
 

見る影もなく首相官邸を追われた民主党政権が、玄関と首相執務室に二つの“不可能神話”を置き土産にした。玄関前には「賽の河原の石積み」である尖閣問題。執務室には「シジフォスの石運び」である「除染1_・シーベルト神話」である。その「苦役」に政治があえいでいる。


尖閣はさておき、除染神話はマスコミとりわけ朝日やNHKの過剰報道で作った“風評”に乗った民主党のポピュリズムがなせる業である。自然から浴びる放射能値より低い除染をどう達成するのだろうか。


できないことを永遠にやり続けるのが「シジフォスの石運び」だ。シジフォスはゼウスに巨石をコーカサスの山上に運び上げるよう命じられ、散々なる苦労の結果やっと頂上に運び上げた。


そのとたん、ゼウスによってその石は麓へと転げ落ちるのだ。まさに亡国の「1_シーベルト」であり、首相・安倍晋三はマスコミに踊らされた二重苦三重苦の避難者たちに1_・シーベルトの無意味さから説き、問題を解きほぐさなければならない。


NHKが勝ち誇ったように15日「原発ゼロ」を報じた。大飯原発が定期検査で可動をストップしたことをとらえて「再稼働は国に厳しく問われて不透明」と報じたのだ。果たして不透明か。完全なる誤報だと思う。


規制委は地下に活断層がないと分かって、定期検査後の再稼働の方向を表明しているではないか。事ほど左様にNHKと朝日は、原発に関して恣意的な報道を繰り返す。これにもっとも“洗脳”されてしまったのが福島の16万人の避難者たちだ。無理もない。


今にも白血病になるような報道を朝から晩まで続けられれば、筆者でも住んでいれば不気味になって逃げ出したくなる。ところがその報道を逆手にとってポピュリズムの極致を演じたのが民主党政権であった。


原発事故終息・再発防止担当相であった細野豪志は国会でマスコミにこびを売る答弁を繰り返した。当初は首相・野田佳彦以下「年間の追加被曝線量20_シーベルト以上」としていたが、その後、「年間5_シーベルト以上」になり、ついに細野の「年間1_・シーベルト以下」答弁に至るのだ。


1_・シーベルト以下がどういうことかと言えば、まさに達成不能の神話なのである。そもそも日本人が浴びている放射能は太陽など自然に降り注ぐものが1.5シーベルトあり、これにレントゲン検査を平均すると4_シーベルト、食物から0.5_シーベルトで合計が6_シーベルトを浴びているのだ。


あまりにも科学に無知な細野答弁がその後一人歩きすることになる。1_が基準になってしまったのだ。


原子核物理学者の元文相・有馬朗人は「日本人が太陽など自然に受けているのが1.5_シーベルト。1年間に浴びる量が20_シーベルトでも低すぎると思う。過剰に防護しています。50_シーベルトで十分」と断言している。有馬のような学者は勇気がある方で、ほとんどの学者がそう思っているにもかかわらず、口を開かない。


マスコミから干されるのがそれほど恐ろしいかと言いたい。しかしマスコミもようやく読売が「1%」に異を唱えた。12日付の社説で「1_シーベルト」への拘(こだわ)りを捨てたい」と題して「住民の中には、直ちに1_シーベルト以下にするよう拘る声が依然、少なくない。


人間は宇宙や大地から放射線を浴びて生活している。病院のCT検査では、1回の被曝線量が約8_シーベルトになることがある。専門家は、広島と長崎の被爆者に対する追跡調査の結果、積算線量が100_シーベルト以下の被曝では、がんとの因果関係は認められていないと指摘する」と主張し始めたのだ。


反対者は読売の購読を拒否しかねない主張であり、新聞としては相当勇気が要る。逆に朝日は13日付けの社説で「どこまで除染を進めるか、詰めた議論も必要になろう」と読売のように数字を掲げずに逃げている。狡猾さ丸出しの社説だ。朝日は居住可能な放射線量を明示すべきだ。
 

さらに加えて、日本人の島国根性の偏狭さを露呈しているのが、首相・安倍晋三の国際オリンピック委員会(IOC)におけるスピーチへの批判だ。共産党や脱原発政党のスピッツが何を言っても捨てておけばいいが、民主党の元厚労相・長妻昭のNHKでの発言は問題だ。


長妻は首相・安倍晋三が「コントロールできている」と発言したことを「世界に間違ったメッセージを発信してしまった。禍根を残すことになりかねない」とこき下ろしたのだ。自らの政権で事故を拡大させたことを忘れて、韓国などが風評を巻き起こす中でオリンピックを勝ち取った時の首相を批判するとは何事か。


相変わらず長妻の葦の髄から天井を覗く性格は変わらない。コントロールはできているのであって、できていなければチェルノブイリのように今頃屍累々(しかばねるいるい)ではないか。東京での開催に支障が出る可能性があるというなら証拠を示せ。示せるはずがないではないか。


一方で、馬鹿丸出し発言が自民党からまで出た。二階俊博の「あれだけスピーチを練習していくんだったら、韓国、中国に対するスピーチをちょっと練習したらどうなのか」発言だ。見当違いも甚だしい、いちゃもん発言とはこのことだ。二階も総裁候補から脱落して、方向音痴になったかのようである。


こうした馬鹿と阿呆の絡み合いもあって、右往左往の除染問題だが、これまで政府が行ってこなかったことがある。それは責任ある科学者を動員した福島の地元への勇気ある説得作業である。


シジフォスの神話を繰り返す時ではない。除染基準を大幅に緩和しても帰宅可能なことを被害者に説得するキャンペーンを展開するときだ。一部マスコミの反発は織り込み済みとして、政府は責任を果たすべき時だ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月13日

◆だらしのないマスコミの消費税判断

杉浦 正章



政治記者は“動物勘”を養え


消費増税に対する新聞の判断力の悪さは全くどうしようもない。同じ新聞でも川柳の判断の方が勝っていた。


朝日川柳では<消費税寝た子を起こす長談義> と官邸主催のヒヤリングなど頭から馬鹿にしていた。読売川柳でも<消費税自由研究まだ続き> と冷やかし、しまいには<千兆円背負う子どもに孫ひ孫>と、主筆ナベツネの指示で消費税反対に廻ったとみられる社説をぶった切っていたほどだ。


首相官邸詰め記者たちの判断は川柳にも負けたのだ。その背景には首相・安倍晋三の「政治主導」を際立たせようとする官房長官・菅義偉らの過剰なまでのミスリードがあった。“純真”なる官邸記者団はそれが見抜けなかったのだ。


筆者は純真とはほど遠いから、最初から判断は当たっていた。安倍がぶつぶつと先送り臭い発言をし出した当初から、「無理」と書いていた。特に2日朝送信の記事では「安倍は来月早々に消費税実施判断へ、官房参与大敗北で論議終息」と職を賭して踏み切った。


おっとっと職はもともとないから職を賭す意気込みで踏み切った。おまけに記事では「近ごろの新聞記者は右往左往した去年の解散判断と同じで、全く政治の展望が読めなくなったようだ。判断する度胸もないのだろう」と警鐘を鳴らしてやったものだ。


鋭い官邸記者がいたなら60人のヒヤリングを終えた段階の紙面で「首相、消費増税決断へ」と踏み切ったのであろうが、それができた社は1社もない。


その最大の原因は官邸にある。菅が最後の最後までミスリードした上に、政治音痴の官房参与の浜田宏一と本田悦朗が水戸黄門の印籠のように“デフレ対策”を掲げて「下におろう」とやっていたからだ。菅にいたっては8日の段階でもNHKの討論で「総理のデフレ脱却への思いは鬼気迫るものがある。


私は総理がデフレ脱却の鬼だと思っている。どうしたら脱却できるかが最優先だ」と“脅し”に出ていた。純真でない筆者は「たとえ鬼だって増税先送りなどできるわけがない」と高をくくったものだが、純真一途な記者たちは怖かったに違いない。


これに新聞首脳の軽減税率への思惑が絡んだ。朝日の社長が新聞への軽減税率導入を唱えれば、読売の会長で主筆の渡辺恒雄が社内でその影響力をフルに行使し始めた。


なんと読売は去年あれほど社説で「財政再建のための消費税不可欠論」を繰り返して、首相・野田佳彦の尻をひっぱたいていいたにもかかわらず、軽減税率の適用が少なくとも8%の段階では見送られるとなると、手のひらを返してしまった。


8月31日には正月に書くような大社説を掲げて「消費税率、来春の8%は見送るべきだ」と大転換。9月11日の社説に至っても「デフレ脱却を最優先し、来春の消費増税は見送るべきである」と、まるで日露戦争の木口小平のように死んでもラッパを離さない構えだった。


ところがさすがに政治部は論説に引っ張られてばかりはいない。各社に遅れをとったが12日の朝刊で「消費税来年4月8%、首相、意向固める」と踏み切った。


「安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた。増税が上向いてきた景気の腰折れにつながることを防ぐため、3%の増税分のうち約2%分に相当する5兆円規模の経済対策を合わせて実施する考えだ」と報じたのだ。

恐らくナベツネは社内的にも体裁が悪いに違いないが、読者の方は困ってしまうのだ。社説を読めば反対だし、一面トップでは実施だし、また裂きの刑に遭ってしまうのだ。


一方で朝日は読売より1日早く10日付朝刊で「安倍晋三首相は9日、来年4月に消費税率を8%に引き上げるための経済指標面での環境は整った、と判断した」と踏み切った。恐れ恐れの記事だが、格好としては読売に先んじたことになる。


11日付の社説では読売とは真逆に「消費増税―法律通り実施すべきだ」との見出しで「 反対論も強かったが、最新の経済指標は環境が整ったことを示している。安倍首相は、ぶれずに予定通りの実施を決断すべきだ」と主張した。


さすがに記事と社説は一致しており、読売のまた裂き紙面より整合性がとれている。朝日は「反対」と唱えれば「軽減税率を欲しがっている」と受け取られるとみて、ここは“矜持”を発揮せざるを得なかったのだろう。


このように消費増税という超重要政策課題で報道の判断は右往左往した。官邸が意図的にミスリードすると報道もこれほどうろたえるかということだ。昔の官邸記者団だったら間違いなく官房長官はつるし上げられていた。


昨年の解散判断でも全紙の判断がぶれたが、これは与野党を含めた情報を複合的に判断して打ち出す能力が欠けていた事に起因する。


いずれにしても政治記者の判断が弱体化していることを物語っている。企業経営と同じで、最後は必死の取材経験に基づいた“動物勘”が左右する問題である。刑事の嗅覚が衰えたといわれて久しいが、理詰めの社会で偏差値の高いだけの記者では激動期の報道はつとまらない。もっと動物勘を鍛えるべきだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月12日

◆公明代表が集団的自衛権で軟化の兆し

杉浦 正章



ワシントンで党首会談を提唱


集団的自衛権の憲法解釈変更に真っ向から反対だったはずの、公明党代表・山口那津男が、ワシントンで「帰国後党首会談」と言い出した。集団的自衛権歓迎の米国の空気を知った上で、連立決裂のための党首会談を提唱することはあり得ない。恐らく集団的自衛権に“歯止め”をかけるなど条件闘争に転ずる兆候ではないか。


山口は本当に米政府が集団的自衛権を求めているのかを確認して、求めていなかったら、これをてこに首相・安倍晋三を思いとどまらせようという“魂胆”であったが、どうもこれが外れたようだ。ミイラ取りがミイラの様相なのである。


シリア問題で目がつり上がっていた米政府高官も、ロシアの斡旋で一段落の流れが見えたようで11日は国務省でバーンズ副長官が山口と1時間会った。これに先立つ10日には国防長官首席補佐官・リッパートと会談した。


リッパートは「日本が集団的自衛権の行使を解禁し、国際社会でより積極的な役割を果たすことを米政府は歓迎する方向だ」と米政府の立場を鮮明にしている。


山口は「この問題は慌てずに議論することが大事だ」と、改めて慎重な姿勢を示したが、リッパートは面食らったはずだ。決めるのは安倍であってリッパートではないからだ。山口は言われっぱなしでは国内向けに格好が付かないため、創価学会向けに発言したのだろう。しかし、米政府の明確な方針を改めて直接聞いたことは、胸に響いたようだ。
 

その後同行記者団との懇談で従来の集団的自衛権問題への“極左も真っ青”な反応を転じて、安倍との党首会談に踏み込んだ。「連立与党だから、合意形成に努めるという姿勢があるべきだ。それがないと国民も同盟国も不安に思うだろう」と述べたのだ。


参院選の最中に「断固反対」と述べ、党幹部らには「皆さんは集団的自衛権のことで連立を離脱したくないでしょうねぇ」と連立離脱の可能性までほのめかしていた態度は急変である。


自公党首会談については幹事長・石破茂も近く党首会談が実現するとの見通しを示し、「協議をいつスタートさせるかは党首会談にかかるところが大きい」と指摘している。要するに党首会談を集団的自衛権に関する自公協議をスタートさせる入り口にしようというものだ。


安倍は基本的には年内にもこれまでの政権が維持してきた「集団的自衛権については国際法上は保有するが、憲法上は行使不可」との憲法解釈の変更を閣議決定する方向だ。集団的自衛権の行使は、自衛のための必要最小限度の実力行使に含まれる方向を打ち出すものとみられる。


既にそのための環境整備は整いつつある。辞任で抵抗しそうな内閣法制局長官を更迭、解釈変更論の小松一郎に差し替えた。そのための理論武装を整える安保法制墾も近く再スタートさせ、結論を受けた上で年内に閣議決定する防衛計画の大綱に反映させる。


同時並行的に国家安全保障戦略を策定するための「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・国際大学学長・北岡伸一)の初会合を12日に開催する。同懇談会は包括的な安保政策をうち出す方針である。


北岡はNHKとのインタビューで集団的自衛権の行使について、「結束していれば個々の国が襲われる可能性が低く、個別的自衛権はよいが集団的自衛権はだめだというのは、最初から間違った考え方だ」と述べている。安倍がとりまとめを求めている「国家安全保障戦略」に集団的自衛権の行使容認を盛り込む提言にしたい考えであろう。


このように安倍は既成事実をどんどん固めており、通常国会には関連法案を提出する流れである。まるで公明党の存在を無視するかのような展開である。安倍には中国と北朝鮮の軍事圧力に対抗するには、憲法改正を待っている余裕はないという判断がある。


第1次安保法制墾が提出した報告書が強調した「先例墨守や思考停止の弊害に陥ることなく、憲法規定を虚心坦懐(たんかい)に見つめ直す必要がある」という路線を推進しようというわけだ。極東の環境変化に対応できていない憲法解釈を後生大事に守っていられる時ではないというのが安倍の腹だろう。


野党も維新共同代表・橋下徹が10日、「時代や状況とともに憲法解釈が変わるのは当たり前だ。今の国際情勢からみれば、認めないといけない」と述べ、憲法解釈の見直しを容認する考えを示したことは大きい。これに民主党内右派の同調を得て、場合によっては公明党抜きでも不自由しない状況を作り得るからだ。


山口はこの時期の訪米を、自らの「断固反対」発言で振り上げた拳の降ろしどころを模索するための方便として設定したのだろう。山口は米国で「両党間で接点を見い出せるかは分からないが、一番足りないのは、これまでの考え方を変えようとする側の主張や論証だ。最終的に、国民が理解できるかどうかが必要条件だ」と述べている。


本当は「国民が理解できるかどうか」ではなく「創価学会婦人部が理解できるかどうか」の説得材料が欲しいに違いない。


したがって安倍は山口の「条件闘争」を実現可能にすることも考慮に入れる必要がある。地球の裏側まで米軍に付いていって、戦争に参加するような誤解を解かなければなるまい。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月11日

◆「尖閣打開策」が浮き沈みの内幕

杉浦 正章



石原慎太郎の姑息(こそく)さが露呈


尖閣国有化から一年を振り返ると、日中双方の失ったものの大きさを今さらながらに想起せざるを得ない。すべての問題は、都知事であった石原慎太郎による「東京都の尖閣購入」発言という“仕掛け”に端を発するが、本人は卑劣にも民主党政権のせいにして“頬被り”を決め込んでいる。


水面下では元外務省首脳などが打開策の動きを見せたが、首相・安倍晋三はこれを却下して、事態は一触即発の状態のまま推移している。


しかしG20 での日中首脳立ち話会談など一歩前進の動きも生じている。これを一歩前進二歩後退でなく、せめて一歩前進半歩後退にとどめる動きにつなげなければならない。裏話を披露しながら、1年間を検証する。


色々政治家を見てきたが、石原ほどいけしゃあしゃあと姑息(こそく)なうそをつく政治家は見たことがない。11日付の朝日新聞のインタビューでは自らの発言を覆して「地方自治体が買った方がよかった」と東京都が買うべきだったと述べている。


「都が購入すればどんな因縁の付け方がある?」なのだそうだ。加えて「野田政権がこれは人気取りになると思っただけの話。民主党政権は読みも浅くて目先のことしか考えない」と首相・野田佳彦をこき下ろしている。


しかしこれは全く“史実”と異なる上に詭弁(きべん)だ。石原は昨年4月に尖閣購入を米国で表明した後、「国が買うならそれでもよい」と発言、集めた寄付金を国の購入資金に回すことまで提案しているではないか。昨年8月19日野田と首相官邸で極秘裏に会談して、国が購入する方向で一致している。


そもそも石原が東京都が購入などという荒唐無稽な構想を打ち出した意図は、野田に国の購入を促すための策略であったのだ。詭弁と言う理由は、都が購入して、石原が職員を常駐させたり、船だまりを作ったりすれば、それこそ日中激突に発展していただろうからだ。都購入による日中戦争だ。


それを「野田の人気取り」というのは、卑怯未練なる責任転嫁に他ならない。


しかし野田の対応にも大きな失策がある。野田は石原との極秘会談を経て、当時の外務副大臣・山口壮を8月末に中国に派遣、国務委員・戴秉国に「国が購入する方針だが、これは石原の動きを押さえ混乱を回避するための措置でもある」「建造物など建てないという従来の方針は変えない」ーなどの方針を伝えた。


これに対する戴秉国の感触を山口は野田に「甘く伝えた」(政府筋)というのだ。これが9月9日の野田と国家主席・胡錦濤との立ち話会談にまで及んだ。英語の通訳しかいない要領を得ない会談で「野田はそれほど強く胡錦濤は反対しなかったと感じ取ってしまった」(政府筋)というのだ。


これが会談後たった二日で購入の閣議決定に踏み切った“誤算”につながる。反対したにもかかわらず、こけにされたと激怒した胡錦濤がかってないほどの反日デモ扇動を指示したのは言うまでもない。野田は明らかに“詰め”が甘かったのだ。


この反日路線は党内基盤が確立していない習近平も受け継いだ。習はいまだに基盤が確立しておらず、国内の情勢も貧富の差の拡大や汚職批判などが原因となる暴動やデモが繰り返されるなど極めて不安定だ。元共産党幹部・薄熙来の裁判などで垣間見せる党内の権力闘争の激しさは習の基盤の脆弱さのみを際立たせる。


習は尖閣なしでは基盤の構築が困難とも言える状況なのだ。しかし、中国政府がこのままでいいと思っていない事情は、主として経済問題から台頭している。


今年1〜6月の日中貿易は前年同期比10・8%減、日本の対中投資は同31%減に落ち込んだ。日本企業が1千万人超の雇用を生みだしている現実も無視できないのだ。


これを反映して尖閣問題でも微妙な変化が生じている。国有化の当初は「購入による国有化取り消し」を要求していたが、今の対応は「日本は領土問題の存在を認めるべきだ」にまで柔軟化している。


こうした事情を背景にさる6月に日中間で一つの打開策が水面下で生じた。元外務省首脳筋が中国の人脈を通じて動いたのだ。政府筋によるとその中から生じた打開策の骨子は「日本側は領土問題の存在は認めない。ただし中国が領有権を主張することは妨げない。その上で問題を棚上げする」というものだ。


同筋によるとこの打開策は安倍にまで上がったが、安倍は棚上げは領土問題の存在を認めることになるとの立場から、これを却下したといわれる。


しかし、安倍にしてみれば東京オリンピックを視野に入れた場合、筆者の主張するように「五輪デタント」は何が何でも達成したいところであろう。


元外務次官・栗山尚一が 「国際的な紛争を解決する方法は三つ。外交交渉、司法的解決、解決しないことでの解決。最後の方法は棚上げとか先送りとか言えるだろうが、尖閣問題を沈静化させるにはこの方法しかない」と述べている通りだ。棚上げが嫌なら先送りでの問題凍結を実現するしかない状況に立ち至っているのだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月10日

◆北東アジアは「五輪デタント」好機到来

杉浦 正章


安倍はフルに活用して中韓と“共栄”を目指せ


2020年東京オリンピックが北東アジア情勢にいかなる影響をもたらすかだが、日中にせよ日韓にせよ一種の“緩衝材”的な役割を果たす可能性が大きい。北朝鮮に対しても活用できる。これを奇貨として安倍は「五輪デタント(緊張緩和)」を目指して、北東アジアの政治情勢改善へのイニシアチブを発揮すべきである。


スポーツの祭典を前にして中国が尖閣への軍事攻勢を強めれば、アフガニスタン侵攻でモスクワオリンピックがボイコットを受けたのとは“真逆(まぎゃく)”に、世界中から「オリンピック妨害」の総スカンを食らい孤立することは必至である。


ここは少なくとも開催までの7年間のデタントが共通の利益になり得る。五輪を北東アジア“共栄”への礎とすべきであろう。


オリンピック東京開催で中国と韓国の代表紙の社説をつぶさに検証したが、まず東京開催そのものについては両紙とも歓迎している。


中国共産党機関紙で人民日報傘下の国際情報紙・環球時報が「われわれはここに日本人に祝意を表すとともに、彼らが今後7年間で順調に準備を進め、五輪を成功させることを祈りたい」と祝意を表明。「日本での五輪開催は中国人にとって、地理的なメリットもある。テレビ中継を見るにも時差はほとんどないし、現地に観戦に行くにも都合がいい」と歓迎している。


中央日報も「東京の五輪招致を祝い、開催の成功を祈る」と歓迎の意を表明した。中央日報はこれまで、「放射能問題の安全より五輪招致が重要なのか」と題する社説を掲載「期限内に汚染水問題を解決できなければ、五輪招致を自主的に放棄するという覚悟を示せ」と、韓国政府と歩調を合わせて招致妨害工作の一端をになってきたが、手のひらを返した。


しかし、東京招致を受けた安倍政権の今後の路線については正反対の分析を展開している。環球時報は「今後7年間日本はおそらく少し温和になり、それほど居丈高でなくなるだろう」と予想している。


これにたいして中央日報は「国内の一部からは、安倍政権の右傾化が五輪招致を契機に加速するという懸念が提起されている」と分析している。


両紙の主張でもっとも注目すべき点は環球時報が「常識的に考えて、日本は五輪開催まで中国との軍事摩擦を回避し、東中国海(東シナ海)の平和と安定を維持する必要がある」と主張していることである。


加えて歴史認識問題に言及「日本政府が今後数年間に靖国神社問題で再びごたごた動いた場合、中韓は五輪への国際世論の特殊な関心を利用して、第2次大戦の戦犯に政府が頭を下げる国が、平和を発揚する五輪を開催するのに一体適しているのだろうかと世界中の人々に問うことができる」と“どう喝”している。


中韓共同戦線で「反東京五輪プロパガンダ」を展開するという姿勢だ。中央日報も「 日本は歴史認識・領土などの問題で周辺国との葛藤・緊張を高める措置を自制しなければならない。局地的な紛争でもあれば、五輪の雰囲気に冷や水を浴びせる」と類似のけん制を展開している。


両紙とも尖閣諸島と竹島問題を念頭に置いているのであろう。いずれも主張は、唯我独尊的である。尖閣諸島の領海内に公船をたびたび立ち入らせ、大統領がこれ見よがしに竹島に上陸して挑発行為を繰り返すという自らの対日強硬策を棚上げしている。


しかし、両紙とも、共通して言えることは極東でオリンピックが開催されること自体は歓迎なのである。反対すれば国民感情から浮き上がる側面があるのかも知れない。今後の日本外交にとってのポイントはここにある。


尖閣については筆者は「先送り」しかないとたびたび主張している。次世代までの先送りが望ましいが、ここは少なくとも五輪までの7年間の先送りを意識すべきだ。


日中両国とも東京オリンピックへの世界の期待を裏切るわけにはいくまい。ソ連によるアフガニスタン侵攻が1980年のモスクワ・オリンピックボイコットにつながったことを忘れてはならない。戦争や紛争は五輪を台無しにする。極東に刺さったとげである尖閣の取り扱いは、東京開催で国際社会が絡む問題となったのだ。


環球時報も中央日報も、日本が紛争を起こすかのような論調だが、全く逆だ。習近平も朴槿恵も国内の不満のはけ口を日本に向けるという安易な政治姿勢を取り続けると、災いは必ず自らに降りかかることを肝に銘ずるべきだ。


安倍も改憲や集団的自衛権問題、敵基地攻撃能力確保は自らの信念に従って推進して行けばよい。いずれも基本的には国内問題であり、中韓が内政干渉するべき問題でもない。また、自らの姿勢を棚上げにして「右傾化」と批判することは全く当たらない。


しかし、首相による靖国参拝は、誤解を生ずるだけであり、思いとどまるべきだ。東京オリンピックは天の配剤か極東に新たな、そして共通の価値観が必要とする状況をもたらしたのだ。安倍はこのチャンスを見逃すべきではない。


オリンピックの成功は中国、韓国との経済関係好転も重要なポイントとなる側面が大きい。中韓両国にとっても観光事業などでプラスとなることは必至だ。環球時報が「もし日本がオリンピックで“第2の台頭”果たせれば、東アジア地域の経済全体に新たな活性化をもたらし、国家間の協力を刺激することになる。中国への脅威にはならない」と指摘している通りである。


オリンピックは“共存共栄”を果たすチャンスとしてフル活用すべきである。まかり間違っても逆コースをたどってはならない。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月09日

◆デフレ・消費増税に“神風”の東京五輪

杉浦 正章



韓国による妨害工作は“空振り”に終わった


こともあろうに隣国・韓国による“究極の妨害工作”にもかかわらず、圧勝の形で2020年オリンピック開催が決まった。首相・安倍晋三の強運はもちろんのこと、日本の「国運」の強さにまで思いをはせざるを得まい。アベノミクスはさらに一層勢いづき、デフレ脱却への“神風”となり得ることは間違いない。


安倍にとって消費増税8%の4月実施決断に向けて追い風になるものでもある。マラソン銀メダリストの君原健二が「オリンピックは精神的に生きる力を与えてくれる。感動とか夢とか希望とか勇気とか若い青少年に与える影響はとても大きい」と青少年への影響の大きさを涙ながらに語っているとおり、日本は出口なしの閉塞状態からの離脱をはかるチャンスが到来した。


韓国政府は日本の圧勝にあ然として、敗北感をかみ締めているだろう。


そもそも相手が弱すぎた側面が濃厚だ。まさにイスタンブールとマドリードが消去法で消された勝利だった。だが、そうしためぐり合わせになったこと自体も幸運であるとしか言いようがない。


ところが誘致運動が佳境に入った6日の段階で韓国が究極の禁じ手を打ってきた。福島県など日本の計8県の水産物を全面輸入禁止にすると発表したのだ。ただでさえ福島発の風評が投票結果に影響するのではないかという懸念が生じていた時点でのことである。


相変わらず「読めない」日本のマスコミは「何でこの時点で」といぶかる論調が支配的であったが、筆者は即座に「オリンピック妨害」と看破した。まずタイミングが国際オリンピック委員会総会直前である上に、海のない栃木、群馬両県を対象に入れていたからだ。


その狙いは東京が汚染県で囲まれている印象を演出、風評を一気に盛り上げようとしたのだ。結果的には安倍のプレゼンテーションにおける数字を挙げての全面否定が、率直に委員らの胸に響いた。安倍は「福島の近海の汚染の数値は最大でも世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1」とか、「0.3平方キロの湾内でブロックしている」など数字を示して風評のポイントを論破したのだ。


こうして史上まれに見るアンフェアな妨害は失敗に終わった。アラビア半島諸国と同じ半島国家で、大国からいじめられ続けてきた歴史を持つ国の、恐ろしいまでの陰険さと手段を選ばぬ陰謀の根深さをまざまざと思い知らされた形だ。


これにはなんと中国までがあきれかえっており、中国大手検索サイト「百度」の掲示板に「韓国は病気か?全力で東京五輪開催を妨害」というスレッドが立てられた。中国のネットユーザーからは、「一番嫌いなのが韓国だ。バカ国家だ」、「韓国はまともな国じゃない」、「われわれは低俗な生物と言い争う必要はない」などの批判が登場しているという。


「韓国の敗北」は、今後の2020年に向けての日本経済の振興ぶりで一層明らかになるだろう。アベノミクスの登場でただでさえ息も絶え絶えの韓国経済は、「日本が振興すると低迷する」パターンをとりつつある。


両国間にはウインウインの関係はなり立たないのである。なぜなら韓国の技術はすべて日本のそれの模倣で成り立っており、これ以上お人好しの技術移転や過去にあったような金融危機での支援などはまず行われないし、円安も続く方向だからだ。


そこで日本への経済効果だが、まずアベノミクスが予期できなかった相乗効果を得ることになった。これまでアベノミクスの成長戦略と言っても原発再稼働が最大の目玉としてあるほかは、これといった材料はないのが実情だ。


それがオリンピックという「具体的な目標と希望と未来が与えられた」(安倍)のだ。安倍は「15年続いたデフレと縮み志向の経済をオリンピックを起爆剤として払拭する」と言明、チャンスを最大限活用する意思を表明した。


成長戦略が焦点となる秋の臨時国会に向けて、政権にプラス材料になることは言うまでもない。野党が反対しようにもできない「掌中の玉」を得たのだ。


安倍の言うようにはっきりと7年後が見えるようになったことは、企業にも、所得環境にも大きなプラスの効果を生んでいくだろう。東京都の発表した経済波及効果(生産誘発額)は全国総計で約2兆9600億円。施設整備など需要増加額は東京都だけで約9600億円、全国総計で約1兆2200億円となっている。


招致活動のスローガンである「ニッポン復活」にプラスとなる数字が並ぶ。インフラ整備の前倒しなどにより、100兆円を超えると指摘する専門家もいる。


大和証券シニアストラテジスト・木野内栄治は「150兆円くらいの経済効果が出てくる可能性がある。これまで、1年先すらも見通せない経済情勢が続いてきた。7年後が見えるということは、企業にも、所得環境にも大きなプラスの効果を今の段階で生んでくれる」と分析している。


安倍がこのチャンスを利用しないはずはない。まさにアベノミクスにとっては神風の到来だ。安倍はオリンピック招致を消費増税の決断に結びつけることにはまだ慎重だが、4〜6月のGDP2.6%という好材料に加えてのオリンピックである。まさに消費増税の環境は整ったのであり、来月初めの判断は、8%に「ゴー」とならざるを得ない。


故松下幸之助が「日本の国運は不思議に強いものがあるというような感じがする。まさにつぶれんとしてつぶれない」と述べているが、その通りだ。明治以来40年周期で日本の興亡が訪れるという説がある。


維新から日露戦争までの40年は上り坂。以後第2次大戦までの40年は下り坂。戦後の40年は上り坂。1985年のプラザ合意で下り坂に入り2025年までは下り坂というものだ。


しかし2020年のオリンピック招致は、安倍のかじ取り次第で下り坂28年で、上昇に転ずる絶好の好機が生まれてきたことを意味する。それにしても安倍は運がいい。つきがある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月06日

◆オバマに大きな“貸し”を作った日本

杉浦 正章



安倍は事実上のシリア攻撃支持


日本は言うことは何でも聞くと高を括っていた大統領・オバマに、3日の電話会談で首相・安倍晋三が「安保理決議を得る努力をして欲しい」と実現不可能な難題を持ちかけたのが図に当たった。


シリア攻撃を決断したものの、孤立感を深めていたオバマは5日、サンクトペテルブルクで手のひらを返したように、安倍と会談、シリア攻撃への賛同を求めた。


安倍は「支持という言葉を使わない支持」を表明した。オバマには大きな“貸し”を作り、攻撃反対の習近平は対米関係においてかすんだ。日本は中国と北朝鮮に強いけん制球を投げることにも成功したのだ。


オバマは半年前の首脳会談の時が象徴したように、安倍つまり日本を一段と軽く見る感じが濃厚だった。国際会議の度に日米首脳会談を求めた安倍につれない態度で応じて、電話会談でお茶を濁してきた。今回もその手を使ってG20での日米首脳会談を避けようとしたが、甘かった。


安倍が電話会談でも孤立化したオバマに救いの手をさしのべると読み間違ったのだ。安倍が求めた安保理決議は、シリア攻撃に猛反対のロシアと中国が拒否権を使って成立しない事が確実であり、英国は参戦しない。これに日本までが加わったらまさに完全孤立だ。


普通ならせいぜい30分の首脳会談に、オバマは1時間をさき、シリアは言うに及ばず、北朝鮮、日中関係、TPP、集団的自衛権など幅広く話し合ったのだ。それも各国首脳との会談に先駆けて会談するという厚遇ぶりだ。


オバマとしては日本の支持を得て厳しいG20での「瀬戸際の根回し工作」の“突破口”としたかったに違いない。日本外交はオバマに対する処し方を学んだことになる。けん制しないと分からない男なのだ。


会談では安倍がぎりぎりの表現でオバマのシリア攻撃を“支持”した。アサドに「責任がある」として、オバマの攻撃決断に「理解している」と述べ、「非人道的行為を食い止める米国の強い責任感に敬意を表する」と述べれば、誰がどう見ても事実上の支持表明だ。


会談後大統領副補佐官のベン・ローズが記者団への説明で、「化学兵器に関する国際的な規範を守らせるために我々がやろうとしていることについて、安倍首相から広い意味での支持の表明があったと考えている」と述べたのが、その証拠だ。


親中派のバリバリのケリーを国務長官に据えるなどとかく日本を“袖”にしがちのオバマはいま、「困ったときの友こそ真の友」ということわざをかみ締めているに違いない。


しかし日本にとってもここでオバマに“貸し”を作ることは決して悪いことではない。まず第一に公船を繰り出して尖閣諸島を隙あらば掠め取ろうと狙っている中国への強いけん制になる。中国はロシアと並んでシリアへの攻撃反対であり、オバマには日本の存在感を改めて感じさせるものとなる。


さらに重要なのが新「悪の枢軸」対策である。悪の枢軸とはG・W・ブッシュが、2002年の一般教書演説で、北朝鮮、イラン、イラクを指して使った言葉だが、イラクは牙を抜かれたからこれにシリアが入っている形だ。


北とシリアの結びつきは極めて大きい。シリアにガスマスクを売ろうとした北朝鮮の船が4月にトルコに摘発された事が物語るように、北の化学兵器がシリアのアサド政権に渡っていることは周知の事実である。また北のミサイル技術やミサイルそのものも渡っていることは明白だ。


NHKは8月29日、シリアが射程100キロ余りの短距離ミサイルおよそ40基を北朝鮮から購入したと報じている。北は化学兵器の開発が一番進んでいる国の一つとされており、これがミサイルに搭載されて日本を狙えば、核兵器に勝るとも劣らない破壊力を発揮する。


要するに他人事ではないのだ。オバマがシリアの化学兵器使用を黙認すればイランや北朝鮮の大量兵器使用に道を開くことになることに懸念を表明しているとおりなのだ。


こうした国際情勢をみれば日本にとってもアサド政権の化学兵器使用は無視できないことなのである。テレビのコメンテータレベルでは、10年前に米国がイラクの大量兵器の存在を間違って認識したから今回もあり得るという議論が幅を利かせているが、アメリカの情報機関がそうたびたび間違えるわけがない。


政府筋も「今度ばかりは本筋情報に基づいている」と漏らしており、安倍も根拠があっての“支持”なのだろう。


米議会は上院外交委員会が10対7の賛成でオバマに対シリア軍事行動を認める決議案を承認した。上院本会議の採決は来週末頃になる見込みであるが、下院の動向はまだ定かではない。オバマは上院の賛同を得られれば、下院を無視して攻撃に出る可能性も排除できない。


攻撃にともないシリアが破れかぶれのイスラエル攻撃に踏み切ったり、戦火が拡大する可能性も否定出来ない。また石油、天然ガスの輸入に支障が生ずる可能性もある。ここ1,2週間は固唾をのんで情勢の推移を見守る必要がある。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月05日

◆海江田「6人組」取り込みに失敗

杉浦 正章
 


野田の動きが再編の焦点となろう 
 

蟹は甲羅に合わせて穴を掘ると言うが、民主党代表・海江田万里は4日、能力以上の大穴を掘ろうとして前首相・野田佳彦ら「6人衆」の取り込みに失敗した。根底には参院選大敗にもかかわらず代表を辞任しない海江田への不信がいかに根強いかを物語っている。


怨念の戦いと言うより、それ以前の「海江田蔑視」が存在して、物事が動かないのだ。野田は「役職よりもプロレス」と決め込んで、4日「週刊プロレス」の表紙に登場した。野田独特の表現方法で「どっこい生きている」と“やる気”を示したのだ。


とにかく海江田のやることなすこと筋が一本かけている。幹事長に労組出身の大畠章宏を据えて、党内左派に「支えられる」態勢を作ったまではよかったが、右派の筆頭野田をはじめ、岡田克也、前原誠司、玄葉光一郎、枝野幸男、安住淳ら「6人衆」の存在が気がかりでたまらない。何とか取り込めないかと考えた。


それには役職で取り込むしかないと党の最高機関として「総合政策調査会」なるものを作って、6人を起用しようとした。政策ごとにトップを決めようという構想だが、淺知恵もいいところであった。そもそも海江田の指図など受けたくもない6人衆が、「役職」だからといって蔑視の対象にしている海江田の下に嬉々として参集するわけがないのだ。


案の定野田は「税制」のトップになることを固辞し、海江田構想はガラガラと崩れた。このため名称を「総合調査会」と“格下げ”して、前原らに頼み込んで「枝野憲法」「前原行政改革」「玄葉経済・農業」などの役員人事にこぎ着けた。


しかし前原らも渋々引きうけたと見えて、人事発表の両院議員総会にも欠席。だいたい前原を安全保障、玄葉を外交に持ってくるならそれなりの対外的な意味を持つところだが、この人事では本人たちもやる気を起こすわけがない。最初から全く機能しない感じの党機関も珍しい。それを分かっていないのが今度の失策だ。


そこで今後の焦点になるのは「6人衆」の動向であり、野田と前原がどう動くかだ。とりわけ野田は謹慎期間が過ぎたと判断したのか沈黙を破り始めている。


「週刊プロレス」のインタビューでは昨年11月の党首討論に関して「議員バッジを外すつもりだったから負ける気はしなかった」と述懐している。あの「定数是正やりましょうよ。そうすれば16日に解散します」発言で、安倍を圧倒した討論だ。その時点で議員辞職まで考えていたとは驚きの発言である。


自身のホームページでも「党より天下国家だ」と消費増税に突っ走った経緯について「他に選択肢はありませんでした。“ネクスト・エレクション”(次の選挙)よりも“ネクスト・ジェネレーション”(次の世代)を重んじた選択に悔いはありません」と述べた。


小沢らの離党もやむを得ないという論調だ。また野田は安倍が消費税実施になかなか踏ん切りを付けないことについても、珍しく舌鋒鋭く批判している。安倍について「社会保障と税の一体改革の議論については、ずっと蚊帳(かや)の外にいました。だから、常に他人事のようでパッション(情熱)を全く感じません」と批判。


さらに「60人もの有識者のヒアリングを行い、そもそも論を聴取していること自体、奇異に映ります。要は、総理の肚一つです」と「安倍官邸」によるヒヤリングの愚を戒めている。まさに正論であり、野田にしてみれば命がけで成立させた消費増税法を、安倍が軽々しく扱うことに我慢できないところなのであろう。


警護に迷惑をかけると控えていた船橋駅前の辻立ちもちょくちょく始めた。8月1日夜開かれた野田グループの会合での野田の発言が永田町に波紋を呼んでいる。「最後の1人になっても党に残り、立て直していくつもりでいたが、このままでいいのだろうか、と思わざるを得なくなった」と述べたのだ。


「つもりでいた」とは確かに意味深長な表現である。そこには海江田への求心力はなく、遠心力が強く感じられる。一方で前原も政界再編志向が強い。維新の会の共同代表・橋下徹とは肝胆相照らす関係になってきており、定期的に会合を開いている。8月には大阪で秘密裏に橋下と会談し政界再編に向けて連携を保つ事で一致している。
 

こうした中で安倍は民主党に対して際どいボールを投げようとしている。改憲と集団的自衛権の行使、そしてTPP(環太平洋経済連携協定)だ。とりわけ集団的自衛権の問題が厳しい。通常国会には関連法案も提出される方向だからだ。


そうなれば民主党は是認論の野田、前原らと左派との間に決定的な溝ができる。民主党の保守からリベラルまで抱える党の体質は何も変わっていない。国の安全保障政策への態度を明確にせざるを得ない状況が生まれるのは確実だ。


海江田が「6人衆」の掌握に失敗して、今後はさらなる遠心力が働く流れとなっていくだろう。2009年の政権交代時には400人を超えた民主党議員は、現在は約3割の116人(衆院57人、参院59人)となったが、さらなる分裂再編もありうる状況である。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月04日

◆最大の成長戦略は原発再稼働しかない

杉浦 正章



市場も好感、景気への影響は大きい


やっぱり小泉進次カは大物だ。父親の重圧にあえいでいるかと思っていたら、純一郎の「原発ゼロの暴論」には耳を貸していないことが分かった。大飯原発が全面ストップして1年2か月ぶりに「原発ゼロ」になるが、このゼロは無限大の可能性を秘める数字だ。


なぜなら長期にわたってゼロになることは日本が国家としてつぶれることを意味するからだ。逆転の発想でみれば安倍政権は秋の成長戦略の最重要の柱にその“ゼロの貯金”を取り崩せることになるのだ。


原発再稼働を最大の景気対策に出来るのだ。化石燃料輸入による3兆9千億の国富の流出を止めることができ、6社が値上げを断行した電力料金の引き下げにつながる原発再稼働だ。大飯原発は冬にも再稼働の流れが確定、その他の原発も来年初めにかけて次々に再稼働へと動く。当然市場ははやす。


大飯原発は、2日深夜に3号機が停止し、定期検査が始まった。15日には4号機も止まり、2012年7月以来、国内で稼働中の原発は再びゼロになる。マスコミは番組中に女子アナに痴漢行為を働いてもTBSが降板させない下劣の極みのみのもんたと、それにへつらう「コメンテーター一家」をはじめ、朝日新聞などは大喜びだ。


ところが先の見えない代表格として新たに登場したのが、元首相・小泉純一郎だ。先月26日の毎日新聞の風知草が「小泉さんは原発ゼロだ」と喜んでいる。小泉はフィンランドの世界で唯一着工された最終処分場を見学して舞い上がった。


「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」と発言したのだ。


使用済み核燃料を10万年、地中深くに保管して毒性を抜くというのだが、その10万年が小泉の気に食わないらしい。「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」なのだそうだ。


悠久の地球の歴史から見れば、別に地球から取り出したものを地球に返して何が悪いのかと思うが、小泉の科学知識の“想定外”なのであろう。日本は国有地をボーリングすればよい。


まさか息子まで親父と同じ考えではないだろうと思って調べてみると、進次カは健全そのものだった。テレビで、とうとうと再稼働論を述べている。


「これまで歯を食いしばりながら日本国内で耐えてきた企業が、原発ゼロを機に一気に海外に流出していくだろうということです。日本の産業は空洞化します。そのような事態を招かないようにするのが政治の責任なのです」と述べていた。鳶が鷹を生むとはこのことだ。


小泉一家の話はさておき、首相・安倍晋三は成長戦略に原発の再稼働を想定せざるを得ない状況となっている。これといって成長の柱になるものが見当たらない中で、最大の景気対策は再稼働しかないからだ。


マスコミは放射能漏洩事故が続いている中での再稼働に難癖を付けるに決まっているが、目明き千人盲千人の世の中だ。だいいち総選挙と参院選挙で再稼働を安倍や幹事長・石破茂がテレビで公言、公約とした上での圧勝である。


朝日は卑怯未練にも、「原発や憲法などの争点は浮かび上がらなかった。いや、安倍が、たくみに「争点」を浮かび上がらせなかった」と主張しているが、冗談ではない。事実に曲解がある上に、マスコミの先頭を切って原発を争点にしたのは朝日自身だったではないか。


原子力規制委員会はストップする大飯原発の地下には活断層がないことがようやく分かって冬にも再稼働にゴーを打ち出す。それにしても学者の判断の悠長さにはあきれる。当初から活断層ではなく地滑りの跡とみる専門家もいたにもかかわらず、一人東洋大教授・渡辺満久だけが「活断層だ」と主張して譲らず結論に10か月もかかった。


日経によると調査団でただ一人の地質学者である産業技術総合研究所主任研究員・重松紀生が、鉱物の分析結果などから断層が40万年前より大幅に古いことを認定し(関電の言い分は)おおむね妥当」と表明。調査団の判断を方向付けたのだという。


だいたい一人の頑固者のために原発が長期にわたり止まるというシステムに問題がある。規制委は人数が足りないことを理由に、対応が遅すぎるし、委員長以下視野狭窄(きょうさく)で全体像を見失っている。


それでも大飯が動き出すことは突破口となる。既に原子力規制委の新規制基準の施行を受け、4電力会社が計5原発10基の再稼働に向けた安全審査を申請している。いずれも基準合致が有力視される原発ばかりであり、やはり冬には第一号の再稼働が実現する段取りだ。


そもそも自然エネルギーなどは3年たってもほとんど開発が進んでいない。全体に占める割合は1.4%に過ぎず、これが一挙に原発エネルギーに取って代わることはあり得ないことが立証されつつある。


朝日は参院選前の社説で、「原発が『安くて安定』はもはや色あせた言い回しだ。脱原発を訴える野党は、その矛盾をあぶりださなければならない」とけしかけていたが、その「安くて安定」は原発しかないことは歴史が証明するだろう。


科学技術というのは不断の進歩の歴史であり、新技術が必ず開発されて「原発ゼロ」が夢物語になるときが確実に来るだろう。


今自民党が「最終的にはゼロ」と言っているのは、その方向が読めるからだ。時間稼ぎに過ぎない。安全なる原発製造の中核は、事故をノウハウに生かせる日本しかないのだ。なぜなら世界のすう勢は放射能の危険性を制御の上活用していくしかないというところに到達、日本への期待は高まる一方だからだ。


直接原発事故で死んだ例は事実上の核爆発のチェルノブイリが10万人と言われているが、日本では直接の死者はゼロだ。世界的に見れば死者数は自動車事故の方がけた外れに多い。


安倍は原発再稼働を成長戦略の柱に据えて、産業流出と電気料金の値下げをはかるしかアベノミクスの維持継続はないと考えるべきだ。市場の期待も大きい。

3日は、汚染水対策を国が負担することになって東京電力株が続伸、大飯原発が「活断層ではない」との見解を好感して関西電力株がやはり続伸している。原発再稼働はもっと市場が好感する要素になる。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)






2013年09月03日

◆安倍ロビーイング外交が奏功しだした

杉浦 正章


さらに首相、外相経験者も動員せよ


中韓両国による米国内での反日ロビー活動は勢いを増す一方だが、その割には効果が上がっていない。一例を挙げれば尖閣諸島の領有権問題での米上院による日本支持の決議だ。これが象徴するものは、依然日米両国には太い相互依存の同盟関係が健在であることを物語ってをり、日本の米議会ロビー活動の成果だ。


首相・安倍晋三のひた向きなまでの外交努力は、公平に見て尖閣プロパガンダでじりじりと中国を追い詰めている。


韓国も薄汚い慰安婦像などを全米各地に建てようとしているが、米国人が“参拝”に詣でる気配はない。対米ロビー工作は気を抜いてはならないが、中韓がスリのように掠め取る手法なら、日本は逆張りの正攻法でいくべきだ。長い目で見ればその方が勝ち目がある。


安倍がひた向きに外遊で首脳外交に専念していると思ったら、“官邸ロビー活動”も展開していた。2日には米下院外交委員会の欧州・ユーラシア・新脅威小委員長・ローラバッカーを団長とする超党派の米議員団と会談、日米同盟を強化していく方針で一致した。


さる8月15日に米上院外交委員長・メネンデス(民主党)、21日には上院実力者である共和党のマケインと会談した。安倍は、尖閣沖で領海侵犯を繰り返す中国公船の実態や、日本が対話を求めても首脳会談に応じない中韓両国の姿勢やその背景などを直接説明した。


マケインは会談後「日本が集団的自衛権を行使できるようになれば、日米同盟は一層強化されるだろう」とのべ、安倍の集団的自衛権行使の方針を強く支持している。尖閣問題についても「日本の領土であることは議論の余地がない。南シナ海と東シナ海で中国から脅威を受けている国々は、共同戦線を張るべきだ」と訴えた。


こうした安倍や外交当局の不断の訴えが奏功して、米上院は7月29日に尖閣問題で重大な決議を採択した。決議は中国軍艦のレーダー照射や今年4月に中国の海洋監視船8隻が領海内に侵入したことを挙げて「緊張をさらに高めた」と批判。


尖閣諸島は日本の施政下にあり、日米安保条約が適用されるとの米政府の立場を明記。あらゆる関係国に、地域の安定を損なうような活動を自制するよう求めた。これは年間1兆円の対外広報予算のかなりの部分を対米ロビー活動やプロパガンダに費やしている中国の完敗を意味する。


中国でも、できることとできないことがあることを思い知ったに違いない。ニューヨークタイムズやワシントンポストなどリベラル系の新聞には宣伝費と称する工作費をばらまき、対日批判の社説に導くなどの“買収成果”を治めているが、さすがに米議会の買収は一部の議員を除けば容易ではない。


その一部の議員の代表が下院で反日の急先鋒となっているご存じマイク・ホンダだ。何でも言うことを聞いてくれるとあって中韓両国からジャブジャブ政治資金が注ぎ込まれている。費用全額中国持ちの豪華中国旅行もありだ。民主主義のモデルのような米議会でも下院議員のレベルは低く、露骨な反日の言動が通じるから、日本政府への慰安婦に対する謝罪要求決議が可決されてしまう。


しかしせいぜい慰安婦までだ。日米安保体制を揺るがすような動きはできない。韓国は在米170万人の韓国人をフルに活用して草の根レベルの反日工作を展開しており、ホンダはその御輿に乗っているのだ。グレンデール市の公園に慰安婦像を造ったが、ど田舎につくった慰安婦像など米国人は全く関心がないのが実態だ。


日本のマスコミも対日嫌がらせをいちいち大げさに報道すべきではない。相手のペースに踊らされるだけだ。


韓国は慰安婦以外でも議会にロビー工作を展開している。これまでに竹島領有権問題、日本海の呼称を「東海」へと変更する問題などを働きかけているが、ことごとく失敗している。最近秘密裏に行っているのが、安倍が進める集団的自衛権行使容認に反対するロビー活動だが、失敗だ。


集団的自衛権の問題はオバマの極東戦略に合致するものであり、政府議会一致して支持される方向だ。大統領・朴槿恵の米議会演説実現はロビー工作が成功した著しい例だが、狂ったように挑発を繰り返す北朝鮮への反感が可能にした側面もある。


こうして最近の中韓による反日ロビー工作は“空転”気味だ。日本は議員を買収するような邪道は避けなければならない。また金をもらっている議員のところに外交官が出かけて、説得活動をしようとしても無駄だ。そのうちに天罰が下るのを待つことしかない。


だからホンダなどは相手にせず、ロビーイングを展開するのだ。それには安倍だけに任せておいては体力が持たない。自民党を中心とする議員外交が極めて重要だ。小選挙区制になって外交は票にならないから、最近の自民党は米国に人脈を持った議員がいないが、これを育てることが肝要だ。


さらに即戦力になる議員や前議員らも活用すべきだ。歴代の首相、外相経験者を活用するのだ。中曽根康弘、小泉純一郎、川口順子、町村信孝、高村正彦、中曽根弘文、野田佳彦、岡田克也、前原誠司、玄葉光一郎などに“お出まし”を願い、その人脈をフルに活用してもらうのだ。民主党だからといって敬遠することはない。


なぜなら鳩山由紀夫と菅直人を除外すれば首相、外相経験者には外交安保では我が国の方針に齟齬(そご)を来すような人物はいないからだ。超党派によるロビーイングだ。逆に民主党も悪い気はしまい。


これに加えて安倍が検討している「内閣情報局」新設を早期に実現し、対外ロビー工作やプロパガンダを受け持たせることも重要なポイントだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月02日

◆安倍は来月早々に消費税実施判断へ

杉浦 正章

 

官房参与大敗北で論議終息


政治は全く素人の内閣官房参与の二人が政局絡みの口出しをして大失敗したというのが、政府主催の消費増税ヒヤリングの図式だ。首相・安倍晋三もあわよくばと増税回避の突破口を狙ったが、逆効果となった。7割が増税賛成だったが数よりも説得力ある増税推進論が展開され、かえって増税への地盤固めとなってしまった。


勝負はついた。あとは増税是認に向けて、企業の投資減税や法人税減税など財務省との“条件闘争”の段階に入り、月末か来月早々には安倍が8%増税への最終決断に踏み切るしかない情勢となった。


近ごろの新聞記者は右往左往した去年の解散判断と同じで、全く政治の展望が読めなくなったようだ。判断する度胸もないのだろう。60人のヒヤリングを終えた段階の紙面で「首相、消費増税決断へ」と踏み切った新聞は1社もない。


それどころか逆に読売が筆者の“友情ある説得”も聞かないで、「10倍返しだ」とばかりに社説で「来春の8%は見送るべきだ」とやってしまった。これもマスコミ界で孤立の様相だ。主筆のナベツネは振り上げた拳をどう下ろすのか見物だ。


もともと、有識者なるもののヒヤリングなどは、筆者が「馬鹿馬鹿しい」と書いたとおり、無意味なものであった。なぜなら肝心の政治の動向への視点が欠けているからだ。消費税という超ど級政策マターは政治が判断すべきもので、民間人の意見を聞くような筋合いのものではない。


そもそも消費税法成立の経緯を見れば、首相・野田佳彦が「党より天下国家だ」と、勇敢にも民主党の分裂まで巻き起こして3党合意を達成して、やっと通過させたものだ。政治家が命がけでやらなければならないほどの“政局銘柄”なのであり、ど素人が口を出すようなものでもない。


そのど素人が官邸の首相側近なのだから安倍官邸も度し難い。しょっちゅう薄気味悪いにたにた笑いをしている官房参与の浜田宏一と、一見思考が深そうで、しゃべると浅い本田悦朗だ。


必死になって「1%ずつの引き上げ」などという荒唐無稽(むけい)の説得をしようとするが、その主張をことごとく直接、間接に論破されたというのが集中点検会合と称するヒヤリングの実態だ。両参与ともアベノミクスの“功労者”だが、もてはやされて舞い上がり、政治の火中のクリまで拾えると誤判断したのだ。


“政治音痴”の両者を諭すかのように説明すれば、消費税法案を撤回するには臨時国会で法案を成立させなければ間に合わない。新法案を成立させるためには1からやり直しとなる。1党の分裂を招いた法案を最初からやり直すことになるのだ。


やる場合は自民党は正式機関で審議することになるが、筆者の聞く限りにおいては幹部で見送りや“なし崩し型引き上げ”に賛成する者はいない。不可能だが、たとえ法案をまとめ得たとしても国会審議がある。民主党や連立相手の公明党は黙っていない。


前外相・玄葉光一郎は「党分裂までして通したのは日本の将来を見通した戦略的判断だった」と述べ、反対だ。元官房長官・町村信孝も1日「あまり『内閣官房何とか』という人がたくさんいると、スピーディーな意思決定の逆になる」と痛烈に二人を批判。


このところ難癖ばかり付けている公明党代表・山口那津男に至っては、「数字も良くなっている状況なので、このチャンスを逃すと『消費税の決断いつやるの?今でしょう』と心の中で思っている」と茶化しながらも安倍官邸をいさめている。


もちろん自民党執行部も反対だ。自民党副幹事長の中谷元も「機関決定が必要だが法案を作れるか、それを国会にかけられるかといえば不可能だ。それにとても4月までに間に合わない」とテレビで発言している。


また「消費税を変更すれば1年後には倍返し、2年後には5倍返し、3年後には10倍返しになる」と流行語で安倍官邸を脅している。筆者が最初から指摘してきたとおり、見送り即政局の局面なのだ。安倍には見送りが達成できるほどの調整力も、エネルギーもない。


だいいち秋の臨時国会は何のための国会かと言えば、アベノミクスの仕上げのための国会だ。安部自身が唱えた3本の矢のうちの成長戦略が焦点となるのだ。消費税法案などを出せばそれにかかりっきりになって何も手が付かなくなる。審議も不毛の論議に終始するだろう。かえってアベノミクスつぶしの国会になってしまうのだ。


世界各国はこれを見て「何も出来ない政治の日本に戻った」と判断、中韓両国は小躍りするに違いない。従って冒頭述べたように勝負はついたのだ。議論は浜田、本田の大敗北で終息へと向かっている。予定通り8%の増税が4月から実施となる方向だ。


もっとも安倍は引き下がる以上は財務省の譲歩を勝ち取ろうとするだろう。それは激変緩和策だ。いかに8%へのショックを和らげるかだ。企業への投資減税や法人税減税が俎上(そじょう)に登るだろう。場合によっては所得減税も検討課題だ。また増税で来年度のGDPは4兆円は落ちる。これに相当する補正予算も必要不可欠になる。


荒唐無稽な8%引き上げ反対論はこうして終息の段階に入った。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)