2018年03月22日

◆政局大胆予想、6対4で安倍逃げ切り

                     杉浦 正章


 自民に政局化の潮流なし “財務省”問題で審議会設置を

新聞は「首相の連続3選が確実視されてきた秋の自民党総裁選にも、暗雲
が漂い始めた。」(読売)のだそうだが、果たしてそうか。

民放のノーテンキなトークショーはともかくとして、大新聞が書くとそう
なってしまうから怖い。しかし、小生の見たところ、6対4で首相・安倍
晋三が逃げ切る。

なぜなら政局化は虚弱野党がいくら狙っても導火線になり得なくて、自民
党内の力関係によって発生するからだ。いまのところ自民党内は、前回書
いたように魑魅魍魎しか露骨な動きを見せる者はいない。

証人喚問も佐川が破れかぶれの“舌禍路線”に転ずれば別だが、その気配は
ない。もう国会は佐川喚問を最後に不毛の論議の区切りを付けるべき時だ。

証人喚問は27日になるが、それに先だって自民党大会が25日に開かれる。
安倍は党大会で9条改正案など改憲問題を前面に据えて意見集約を進める。

総裁演説についても改憲への思いを述べ、全党員の結束と団結をよびかけ
る。いまのところ党大会で、政権を揺さぶるような不穏な空気が組織的に
生ずる動きはなく、せいぜい一部出席者の不満げな発言を民放テレビが掘
り出して、大袈裟に報道する程度にとどまりそうだ。

執行部は党員に発言 に気をつけるよう注意喚起すべきだ。公平中立な報
道を逸脱する傾向が強 い民放にも法的措置を取る必要があるかも知れない。

一方、政府・与党は前理財局長佐川宣寿の証人喚問を受け入れた。渋る
首相官邸を自民党が押し切った形だ。官邸は当初、参考人招致でしのぐべ
きだと喚問に慎重だった。

しかし、虚偽の証言をすれば偽証罪に問われる 喚問に応ぜざるを得ない
と与党が判断したのは、改ざんへの厳しい世論を 無視できなかったため
だ。加えて幹事長二階俊博は、ドスが利くのは見か けばかり。その実は
小心で、けんかの仕方を知らない。最初から妥協しか 考えないから、始
末に悪い。

しかし、喚問も一見佐川が人身御供になるかのように見えるが、過去の
例から見ても参考人招致より喚問の方が切り抜けやすいのが実情だ。

過去 の証人喚問はロッキード事件、リクルート事件、東京佐川急便事件
などが 有名だ。筆者はロッキード事件の喚問を取材したが、証人が「記
憶にござ いません」作戦を展開、野党は歯が立たなかった。

今回のように旧大蔵省 が舞台となった事件では、98年の「接待汚職」が
ある。東京地検は、金 融機関への検査情報を事前に得ようとする大手銀
行・証券会社から過剰な 接待を受けた収賄容疑で、同省や日銀などの職
員を相次ぎ逮捕、起訴し た。

同省だけでも112人に停職、減給などの処分が下った。組織が財務 省と金
融監督庁に分割される原因となった。

佐川の場合は汚職の嫌疑があるわけではなく、過去の喚問事件と比べて
スケールは格段に小さい。書き換え問題は大阪地検が捜査中である。した
がって「捜査中の案件については発言を控える」の答弁で切り抜けるしか
あるまい。

また刑事訴追の恐れのある場合は証言を拒否できる。佐川は事 務次官の
質問に対してすら、刑事訴追を理由に回答を避けた。野党が狙う 政権直
撃材料は出ない可能性が高い。証人喚問は厳しいようで攻撃する側 は壁
が高いのである。

野党内には「佐川氏が捜査を理由に答えなければ世論は納得しない」と
けん制する声があるが、爆弾発言を期待しても経緯から言って無理だ。

政 府・与党は、極東情勢が厳しい局面にさしかかっているときに、つま
らぬ 泥濘(ぬかるみ)に足を取られているときではあるまい。

昭恵夫人の喚問 を狙う共産党の国対委員長穀田恵二は与党の喚問拒否に
ついて「国民の批 判はずっと続く」と述べているが、総選挙で9議席減
らして12議席に なった政党が「国民を代表」して偉そうに発言しても
らっても困る。

そもそも安倍政権は特定秘密保護法や安保法制でいったんは30%台に 支
持率が落ちたが、その都度回復させてきた。だいいち支持率なるものが
朝日や毎日など反安倍メディアと読売・産経など安倍支持メディアで違う
のはなぜか。

質問者が悪意を持って聞くのが朝日、毎日であるからだ。与 党内には
「監督する立場の麻生氏の政治責任は避けられない」との声もあ り、こ
れで幕引きとなるかは不透明な側面がある。安倍は問題を調査する 審議
会を民間人を入れて作り、答申を得て財務省改革に着手することも検 討
してはどうか。

その上で、外交問題が一段落したあと夏にも、内閣改造 を断行して麻生
を副総理から外して党幹部にでも据えた方がよい。総裁3 選態勢を整え
るべきだ。

2018年03月20日

◆米マスコミがトランプの「独断」に警鐘

杉浦  正章


軽薄さが漂う対北外交 日本には“悪夢の構図”も
 
言ってみればただの商売人が外交をやることに対する不信感だろう。トラ
ンプの対北朝鮮政策に対して米国内で危惧の声が高まり始めた。とりわけ
5月に予定される金正恩との会談がうまく展開するかについては悲観的な
見方が強く、北が核戦力を手放すことはあり得ないというのが“常識”にな
りつつある。

トランプの秋の中間選挙への“邪心”を指摘する声も多い。日本にしてみて
も、トランプがICBM実験を抑え込んでも、日本を狙ったノドン200発の廃
棄まで実現しなければ全く意味がなく、“悪夢の構図”が現出しなねない。

なぜトランプが急に米朝首脳会談に乗り気になったかと言えば、韓国の特
使の“口車” に乗せられていると言うことだろう。トランプは、特使との
会談のその場で「よし会おう」と飛びついているが、そこには、商売人が
取引先に会うような「軽々しさ」しか感じられない。世界の片隅で虎視
眈々と好餌を狙う、北の体制への理解がないのだ。

“口約束”でしかない韓国のメッセンジャーをまるで信頼しきっており、国
務・国防両省などプロの意見を無視しているかのようだ。

情報を総合すると金正恩は首脳会談の前提として@非核化に尽くすA核・弾
道ミサイルの実験を控えるB米韓軍事演習を理解するなどを提案したとい
う。その背景には国連の制裁が紛れもなく効き始めたうえに、中国までが
本気で制裁に踏み切った結果、さすがに孤立化をひしひしと感じ取ったこ
とがあるのだろう。

トランプの姿勢に対して米国のマスコミの論調は極めて批判的だ。ニュー
ヨーク・タイムズは、トランプが外交責任者であり解任されたティラーソ
ン国務長官にも相談せず、会談の要請を受け入れたことについて「危険で
理解し難い」と批判した。「十分な準備がないまま会談に臨み、北朝鮮側
の要求を独断で受け入れてしまう恐れがある」と警鐘を鳴らした。

また、ウォール・ストリート・ジャーナルは、「トランプ大統領との会談
にこぎつけたことは金委員長の勝利だ」と皮肉っている。さらに同紙は
「金氏が核放棄に関する交渉に応じるかどうか、米国も国際社会も懐疑的
であり続けるべきだろう。

金氏の父、祖父も時間稼ぎのために協議に応じ、水面下で核開発プログラ
ムを推し進めてきた。協議に応じる見返りを手にしておきながら、すべて
の合意を破り続けてきた。」と看破した。

確かにトランプが問題なのは過去2回にわたる北朝鮮の約束が全て空約束
に終わった事すら勉強していないことなのだ。1994年の核開発凍結の約束
は、核開発継続に終わった。

2005年の6か国協議における核放棄の共同声明は、翌年の核実験で反故に
なった。北朝鮮はその民族的特性が外交でペテンにかけるところにあるこ
とが分かっていない。

トランプはいまや恒例と化した北のやり口をすこしは学ぶべきだ。そのや
り口とはまず核やミサイル開発で進展を見せ、国際社会の脅威と関心を呼
び、その後は韓国でハト派の政権が誕生するのを待ち、外交手段に切り替
え援助を得るというやり口だ。

とりわけ重要なのは既にトランプが引っかかっている「非核化の罠」をど
うするかだ。非核化と言っても日本にしてみればICBMの実験中止などで
“お茶を濁され”てはたまらない。

日本にとっての非核化とは北の核弾頭がゼロになり、製造もしないことを
意味する。まかり間違えばトランプはその日本の立場を飛び越えてICBMと
核実験の停止で妥協しかねないのだ。そのトランプの極東における核問題
の浅薄さを補うのが、安倍の4月訪米だ。ここでトランプをいかに説得す
るかが極めて重要なポイントとなる。韓国の“伝言”だけに乗っているトラ
ンプをいかに目覚めさせるかが安倍の役割だ。


2018年03月16日

◆小姑、魑魅魍魎が永田町を跋扈

杉浦 正章

「いいね」で証人喚問とは恐れ入る

『共産党宣言』の有名な冒頭の一節は「ヨーロッパに幽霊が出る− 共産
主義という幽霊である。」だが、さしずめ永田町でうごめいているのは、
魑魅魍魎だろう。

政権のあらを探して食らう魑魅魍魎だ。しかし今のところ本格的な魑魅魍
魎は出てきておらず、2線級ばかりだ。この二線級魑魅魍魎は、首相・安
倍晋三の足を引っ張ろうとしているが、決め手に欠けて空理空論ばかりだ。

魑魅魍魎の筆頭に立憲民主党幹部の辻元清美をまず挙げる。辻元はなんと
安倍昭恵の「いいね」に噛みついた。昭恵のフェイスブックに掲載された
「野党のバカげた質問」などの投稿に、昭恵が「いいね!」ボタンが押し
たことについて、辻元は14日、「もう感覚が理解できない。

なぜ『いいね!』を押したかも証人喚問に来ていただいて、お聞きした
い」だそうだ。「いいね」を押したら証人喚問とは恐れ入った。昭恵の
「いいね」は多くの人が共感を持つものであり、憲法に保障された表現の
自由の最たるものである。

「いいね」で証人喚問という発想は、戦前の軍部の発想に似ていて、女の
くせに強権的で鼻持ちがならない特権意識を感じる。審議拒否で1日3億
円もの国費を無駄遣いしてきた野党こそ、とっとと出て来るべきだった。

これまた魑魅魍魎の筆頭が元首相小泉純一郎。安倍といえば自分の内閣を
支えた中心人物の一人であるにもかかわらず、引っ張れるだけ足を引っ
張っている。文書改竄当時に財務省理財局長だった佐川宣寿の国税庁長官
起用に関し「国税庁長官になって記者会見を一度もしていない。

ひどいなあと思っていた」と述べた。その上で「安倍首相も麻生氏も長官
への起用を適材適所と言い切った。これにはあきれたね。判断力がおかし
くなったのではないか。どうしてああゆう答弁ができるのか不思議だ」と
発言したのだ。この発言は後講釈もいいところだ。

起用時には誰一人として佐川が改竄するとは予測をしていない時点の人事
であり、分かっていれば起用するわけがない。大体首相がごみ人事に口を
突っ込むわけがない。小泉純一郎はどうも狭量な小姑根性が鼻につく。

小姑が嫁いびりするたとえに「小姑一人は鬼千匹に向かう」がある。たっ
た1人でも鬼千匹に値するほど、めんどうで扱いにくい存在を指すが、首
相まで務めた者が狭量の極みである。

 なんと自民党総務のくせして組織のトップである安倍の足を引っ張る発
言を繰り返しているのが村上誠一郎。かつて竹下登がリクルート問題など
で政局混乱の責任を取って予算案の衆院通過時に退陣表明したことに言及
して「そろそろ大所高所の判断をすべき時期に来ているのではないか」と
露骨に退陣を要求した。

大男総身に知恵が回りかねとはいわないが、これが自民党議員の発言とは
恐れ入る。週刊誌レベルの情報を元に発言しているように見えて浅薄さは
極まりない。安倍が国会答弁で「書き換え前の文書を見ても私や妻が関
わっていない事は明らかだ」と述べている通り、この事件に「首相の犯
罪」の側面はゼロだ。

書き換えは国会対応を担当する理財局の一部の職員が行ったものであり、
そもそも首相が大臣や次官を差し置いて職員に直接命令を下すなどという
ことがあるわけがない。民放の馬鹿番組ばかりを見ているからこういう発
想が出る。事件の本質はごますり官僚が自らの出世を意識して、“忖度”
したところにあり、責任は間の抜けた忖度をした方にあるのだ。いずれの
砲弾も“本丸”にとどくまえにお堀に落ちて、鯉をあきれさせているだけだ。


2018年03月13日

◆国会は、不毛の森友問題に拘泥しているときか

                             杉浦 正章


緊迫の極東情勢に目を移せ

朝日は倒閣マニアと化した

問題は政府・自民党の封じ込め戦略がどこまで通用するかだ。封じ込め戦略とは森友学園への国有地売却の決裁文書が置き換えられていた事件を、財務省理財局内の不祥事にとどめられるかどうかだ。封じ込めに失敗すれば政権を直撃する「政局」マターだが、カギを握るのは、センセーショナリズムの極致を行く朝日新聞とこれに扇動される野党などではなく、自民党内の動向だ。


これまでのところ党内の空気は落ち着いており、事件を契機に政権に揺さぶりをかける動きには発展していない。様子見という状況であり、当分腹の探り合いが続くだろう。
 

揺さぶりをかける方法があるとすれば、野党は財務省トップである麻生太郎の辞任をまず求め、ついで麻生に責任を取らせ、安倍へと波及させるしか手はない。しかし、政権側は先手を打った。国税庁長官佐川宣寿の辞任と懲戒処分によるトカゲの尻尾切りである。麻生は「あくまで理財局内での一部の職員によって行われた。その最終責任者は当時の理財局の佐川局長である。私の進退は考えていない」と突っぱねた。
 

問題はこれによって事態が収束に向かうかどうかであるが、朝日の13日付け紙面作りを見れば、ますます煽りの姿勢を強めている。安倍にとって最悪の事態は麻生の辞任であるが、これは国会における与野党攻防の力関係が決める。野党は総選挙の大敗北で勢いに今ひとつかけるが、問題は与党内に反乱が起きるかどうかだ。自民党内はいまのところ筆頭副幹事長小泉進次郎がキャンキャン吠えているにとどまっている。


しかもその発言は「自民党は官僚に責任を押しつけるような政党ではない。その姿を見せる必要がある」と婉曲的に政治家の責任を求めている段階だ。一方、党内野党の元幹事長石破茂も「だんだん、つじつまがあわなくなってきたのかもしれない。なんでこんなことになるのか。仮に事実だとすれば、誰がどんな思惑でこんなことになったのかなということだ。与党側として、仮に不正な、少なくても法に照らして適正でない問題をかばっていると思われたら、自民党の名誉に関わることだ」と突き放し始めた。
 

しかし、これら潜在的反安倍勢力の弱点は、安倍に対抗しうる候補が存在しないことだ。まず政調会長岸田文雄は、まだ海のものとも山のものともつかない。安倍からの禅譲狙いしか戦略の決め手がないように見える。ここは“待ち”の姿勢が正しい。石破もその派閥勢力が20人では、立候補するのが精一杯であり、安倍支持勢力には及びもつかない。安倍支持は出身の細田派に加えて、麻生派、二階派だけで所属国会議員の半数を上回る。この3派の結束は今のところ固く、幹事長二階俊博も「安倍さんへの支持は微動だにしていない。野党のいうがままに総辞職することなどない」と発言している。
 

安倍と麻生の盟友関係は固いうえに、麻生を辞めさせれば、防波堤が除去され野党はかさにかかって安倍攻撃に戦略を移行させる。ここは安倍も麻生も布団をかぶって降りかかる火の粉を避けつつ、駆け抜けるるしかない。一方公明党も麻生の進退に関しては慎重だ。公明党代表・山口那津男は麻生の進退について「求められるのは財務省の態勢を建て直す責任をしっかり果たすこと」と、選択肢から除外している。

 そもそも決裁文書の書き換えはけしからんと鬼の首でも取ったように朝日は書き立てるが、焦点は国会への開示文書では「特例的な内容となる」「本件の特殊性」という文言が、なくなっていたことにある。しかしこの部分はあくまで主要部分の書き換えではなく、付随した部分に過ぎない。朝日や野党はこのような重箱の隅をつつくような問題ばかりをクローズアップさせて、重大事件扱いし、何が何でも安倍政権を倒閣に追い込むという姿勢が鼻につく。朝日は13日の紙面は1面から4面まで倒閣路線を貫いている。もはや倒閣マニアのレベルだ。

TBSなど民放も明らかに放送法に規定される「中立な報道」を逸脱した報道が目立つ。そこには、マスメディアにあってはならない平衡の感覚の欠如が著しく存在する。おりから極東情勢は激動含みで推移しており、米朝対話も日本抜きで進みかねない。いまこそ外交安保が喫緊の課題であるにもかかわらず、朝日と民放と野党の浅ましいばかりの挙げ足取りはいいかげんにせよと言いたい。


2018年03月11日

◆米は北朝鮮の「時間稼ぎ」に惑わされるな

杉浦正章


非核化の真偽を見極めよ モリカケばかりの野党は目を覚ませ
 
人を錯誤におとしいれて財物をだまし取る者を「かたり」という。首相・
安倍晋三は希代のかたりが隣に住んでいると用心した方がよい。祖父金日
成も父親金正日も世界を欺いて国家を生きながらえさせてきた。

今回も厳しい国際包囲網突破を目指して金正恩は着々とかたりの布石を
打っている。韓国大統領文在寅はやすやすと突破され、金は文を使ってト
ランプを籠絡しようとしている。


北は核ミサイル完成に向けて「時間稼ぎ」をしているに過ぎない。短兵急
な対応は極東に危機をもたらしかねない。安倍が、懐疑的な姿勢をくづし
ていないのは救いだ。

ここはトランプの“前のめり”にクギを刺す必要がある。トランプは自国の
防衛のため北に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を破棄させても、日本は
核兵器や細菌兵器を搭載可能なノドン200発を向けられたまま、置き去り
にされかねない。極東情勢が激動の時に国会は朝日新聞に扇動されて野党
が森友だの加計だのの論争に明け暮れしているが、いいかげんに目を覚ま
せといいたい。

米大統領は普段はホワイトハウスの小さな記者会見場に姿を見せること
はないが、韓国特使との会談後現れたトランプの姿を見て、「危うい」と
感じたのは筆者だけだろうか。

北に踊らされて、はしゃいでいる姿だ。韓国の特使の報告に全て乗せられ
て金正恩との会談を、千載一遇のチャンスと飛びついた感じが濃厚だ。ト
ランプは北との直接交渉に持ち込むことによって、4半世紀にわたって米
国大統領を翻弄(ほんろう)し続けてきた北の核ミサイル問題を一挙に解
決出来ると踏んでいるのだろうか。そうなら愚かとしか言いようがない。
まずここは真偽の見極めが先決だ。

トランプはロシアゲートのスキャンダルでメディアの攻撃にさらされ、支
持率は30%台と、歴代大統領でも最低の状態にある。秋には中間選挙が
あり共和党は指導力欠如の大統領のせいで苦戦を免れない。

ここは外交に突破口を見出すしか道はないのだ。その弱点を狙って金正恩
はまず韓国の左派大統領文在寅を落とし、ついでトランプを落とそうとし
ているのだ。北の最終的な狙いはまず包囲網を分断し、米軍を朝鮮半島か
ら撤退させることにある。

全てがそこに向けての布石であると考えるべきなのに、トランプは目先の
舞台ばかりに目を奪われているかのようである。トランプが“伝言”だけを
頼りに「彼らの声明はとてもポジティブなもので、世界にとっても素晴ら
しい」と手放しで賞賛するような事態ではないし、韓国特使らに米朝首脳
会談を「即答」するほど、軽い問題でもない。

まずトランプは韓国の「伝言」だけに頼らず、北の外交の本質を見極める
必要があるのだ。本質とは徹底した欺瞞外交である。史上数知れぬほど国
際社会を欺いてきた北朝鮮は、2005年には、6者協議で@核計画の放棄A米
国による体制の保証B北への経済支援ーに応じた。

経済援助を得た後は、どこ吹く風で核兵器の製造にいそしんだ。今回も同
様の手口を取ろうとしているのだ。金正恩が@非核化に尽くすA核・弾道ミ
サイル実験を控えるB米韓合同演習を理解する事などを条件に、米側に早
期のトップ会談を求めている。

もともと@からBまでは米国が北に条件として提示しているものであり、金
正恩はこれを受け入れる決断をしたことになる。しかし、問題は「非核
化」が何を意味するかだ。米国は合意を急ぐあまりに詳細を詰めない妥協
をしてはならない。北に関してはつねに「やらずぶったくり」を懸念しな
ければならない

。せっかく作った“貧者の宝物”である核ミサイルを手放すとでも考えてい
るとすれば甘い。そもそも10年前とは前提条件が様変わりしているのだ。
10年前の北の要求は「核兵器製造計画を放棄する代わりに体制を保証す
る」であったが、今回は「核ミサイル攻撃能力を持った上で米国と対等に
話し合う」路線となっている。

要するに核ミサイルプログラムの再稼働を常にちらつかせながら、次から
次へと譲歩を引き出す作戦なのだ。過去にジョージ・W・ブッシュもその
作戦にはまって北をテロ支援国家から削除したが、時を経ずして核開発は
再開だ。

従って、たとえ話し合い協議に入っても、現行の厳しい国際制裁を維持す
る必要があることは言うまでもない。そればかりか北が核ミサイルを全て
破棄し、国連の視察を受け入れて、それを確認するまで手綱を緩めてはな
らないのだ。北に関しては、全てを疑ってかかるのが常道なのだ。

韓国の 文在寅は4月末にも金正恩と会談、トランプは5月までに金正恩と
会談する ことになっている。しかし、一連の会談は長い非核化の道への
第一歩に過 ぎない。安倍は会談を急ぐ必要はあるまい。一連の接触を見
極めた上で行 動に移せば良いことだ。むしろ安倍は、4月のトランプとの
会談では、北 の手玉に取られないようトランプに友情ある説得をするこ
とが肝要だ。

日米は核とミサイルを放棄させるための確たる態勢を整え、最大限の圧力
を 今こそ継続しなければなるまい。韓国の文在寅は度しがたいから説得
は利 かないが、トランプには拙速を戒め、冷静な見極めを求めるべきだ。

2018年03月07日

◆トランプ式“関税爆弾”は“恐慌”を招く

                          杉浦 正章


同盟国まで敵に回す国際戦略の欠如
 
米国内に同盟国免除論

米大統領ドナルド・トランプが世界を相手に投げかけた“関税爆弾”は、70余年間続いてきた自由貿易体制崩壊の危機を生じさせている。欧州連合(EU)と中国は、連日のように米国による鉄鋼・アルミへの課税に対して独自の課税品目をちらつかせ、まさに貿易戦争も厭わぬ状況を現出させている。トランプの意図には秋の中間選挙対策の匂いがふんぷんと感じられる。報復合戦→貿易戦争→景気悪化→恐慌といういつか来た道すらほうふつとさせる。


日本も打撃を被るが首相安倍晋三は6日、オーストラリアのターンブル、カナダのトルドー両首相と相次いで電話会談し、緊密に連携して対応することを確認した。米国以外の11カ国による環太平洋連携協定(TPP)についても引き続き協力し、自由貿易圏の拡大に取り組むことで一致した。外務省の秋葉剛男事務次官は6日、ハガティ駐日米大使に対して、「日本からの鉄鋼やアルミニウムの輸入が米国の安全保障に悪影響を与えるものではない」とトランプの方針を批判した。


それにしても、どうしてトランプという大統領は、自分の行為が及ぼす結果への予測が利かないのだろうか。今回の事例で分かったことは側近までが同調しており、殿のご乱心を止められないということだ。トランプは自由貿易をまるでゼロサムゲームとでも考えているかのようである。世界の自由貿易体制を一人が総取りするようなゲームと見間違えてはならない。


貿易は世界中の何千万という売買行為によって成り立っている。米国の赤字は膨大な量の自由貿易の結果であり、トランプは、この貿易にストップをかければ米国の雇用が増えるなどという妄想にとらわれているとしか思えない。行き着く結果は自給自足経済となり、最終的には投資の崩壊と恐慌を招くのだ。


それにもかかわらずトランプは度しがたい発言を繰り返している。
2日朝のツイートは「米国が取引しているほぼ全ての国との貿易で何十億ドルもの損失を被っている時には、貿易戦争はいいことであり、勝つのは簡単だ。例えば、われわれがある国との取引で1000億ドルを失っている時にその国が厚かましい態度に出るなら、もう取引をやめよう。そうすればわれわれの大勝利になる。簡単なことだ」だそうだ。そこには度しがたい独善主義しかない。



現にブルームバーグ通信は2日の社説で、「1930年に米国がスムート・ホーリー関税法の施行後、世界的な報復関税によって大恐慌に見舞われ、世界経済も崩壊した」と指摘し、「トランプ大統領は貿易戦争で果たして何を得るつもりか」と詰問した。ノーベル経済学賞受賞者であるロバート・シラー・エール教授も、「大恐慌当時に起きたのと同じ状態だ」と指摘している。ライアン米下院議長はアルミニウムと鉄鋼に対する関税案の撤回を求める姿勢を和らげ、代わりに貿易システムを乱用する国々に絞った措置を取るようホワイトハウスに促した。


こうした状況を受けて米国の複数のメディアは、「トランプ大統領は行政命令署名までの残りの数日以内に、せめて重要な同盟国を除く必要がある。」と提案した。ワシントンポスト紙も、社説で、「数十年間構築してきた同盟関係と相互互恵的自由貿易秩序が、米大統領の気まぐれで傷つけられるようになった。カナダ、日本、韓国、ドイツなどの同盟国を、新しい関税措置から免除しなければならない」と主張した。


さらにニューヨークタイムズ紙も、「トランプ大統領は、中国の過剰生産を減らすことに興味があるなら、中国を圧迫するためにEU、カナダ、日本、韓国と協力すべきだったにもかかわらず、同盟国を怒らせた」と指摘した。米マスコミの大勢は対中制裁はやむを得ないとするものの、同盟国まで敵に回すトランプの洞察力と国際戦略の欠如に警鐘を鳴らしているのだ。

 
米国は2002年には日本からの鉄鋼製品に高度な関税をかけ、その結果、日本の鉄鋼を原材料に製品を作る自動車部品メーカーなどに収益の悪化ををもたらした。一方的な措置でツケを払わせられるのは一般国民にほかならないのだ。米国の経済専門家からは長期的には米国経済にマイナスであるとの見方が生じているが当然である。


 一方中国との貿易関係は今年に入ってから暗雲が漂う気配が生じていた。1月に中国からの太陽光パネルに高関税をかけたのだ。それにもかかわらず同盟国まで一括して含めてしまったのは戦略上の大失策だろう。現に欧州連合(EU)は委員長ユンケルが、「ハーレーダビッドソン、バーボン、リーバイスのジーンズを含めた米国製品に関税をかける準備をしている」と語った。


米メディアによると、こうした措置の対象は総額35億ドル(約3700億円)規模になるという。これに衣類や化粧品、トウモロコシ、オレンジジュースなども加わる方向だ。一方、全人代報道官張業遂は「中国の利益が損なわれることを座視するわけにはいかないが、貿易摩擦の正しい処理は協議を通じて解決方法を探ることだ」とクールダウンに出ている。


 頭に血が上ったトランプをいかに懐柔するかだが、今週TPP(環太平洋経済連携協定)11はパートナーシップ協定に各国が署名する段取りとなっている。チリの首都サンティアゴで8日(日本時間9日)に署名式を開く。日本からは経済再生相茂木敏充が出席する。参加各国の署名で最終合意となり、協定文書が正式に確定する。まさに自由貿易の砦となるものであり、かつては自由主義貿易の旗手であった米国が打ち出した“禁じ手”に、どう対応するかが焦点だ。


政府は、トランプ大統領の最終署名までの残り時間に、外交力を総動員して、世界経済の崩壊を食い止めなければなるまい。トランプ式“自給自足経済”は“恐慌指向”としかいいようがないからだ。

2018年03月02日

◆反日“ちゃぶ台返し”の文は相手に出来ぬ

                             杉浦 正章


背後に度しがたい支持率狙い

冷え切った日韓関係

まるでオリンピック終了を待つかのような韓国大統領文在寅による“ちゃぶ台返し”である。慰安婦問題の解決を合意した日本に対してまだ終わっていないと批判演説をぶった。政府が反論したのは当然だが、もう国民は韓国の蒸し返し外交に飽き飽きしているのが現実であろう。2015年12月 28日の日韓外相会談での慰安婦合意は、安倍政権と朴槿恵政権による合意だが、政権が代わったからといって手のひら返しをするのは、文在寅がいかに国際外交の基本に無知であるかを物語るものだろう。

国家間の約束は政権が代わっても責任もって実施することは、国際的に普遍的な概念である。この度しがたい左派反日政権に対しては外交交渉が通じない。当分相手にしない方が得策のような感じがする。日韓関係は冷え切った時代に入った。

日韓合意は@日韓両国政府は慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認したA安倍は、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた責任を痛感し、お詫びと反省の気持ちを伝えたB日本は元慰安婦支援の財団に10億円を拠出するC国際社会での批判非難を控えるーを骨子としている。
 
この合意に対してまず外相康京和が違反の口火を切った。康はこれまでの慰安婦対応について国連人権理事会で「被害者中心の対応を明らかに欠いている」と発言したのだ。これは明白に慰安婦合意の「国際社会での非難・批判を控える」という部分への約束違反であり、合意を確信犯的に破棄したことを意味する。

文在寅は2月9日に訪韓した首相安倍晋三との会談で、慰安婦問題について「政府間の交渉で解決出来ることではない」と指摘していたが、さらに踏み込んだ表現で1日「最終解決」を改めて拒否した。独立運動の記念式典で演説した文在寅は「加害者である日本政府が『終わった』と言ってはならない。不幸な歴史であればあるほど、その歴史を記憶して、それから学ぶことだけが真の解決だ」と述べた。また島根県の竹島について、「日本の朝鮮半島侵略の過程で最初に支配された土地で、韓国固有の領土だ。日本がその事実を否定するのは、帝国主義による侵略に対する反省を拒否することにほかならない」と強い調子で日本を批判した。
 

まさに“ちゃぶ台返し”だが、官房長官菅義偉が、「日韓合意に反するものであり、全く受け入れられない。極めて遺憾であり、韓国側に対し直ちに外交ルートでわがほうの立場を伝え、強く抗議した。わが国としては、この合意に基づいてやるべきことはすべてやった。あとは韓国が約束をしっかり履行することを強く求めていきたい」と反発したのは当然である。
 

竹島に関する文の発言は、歴史的な事実に反する。竹島は1905年に国際法上の手続きを経て島根県に編入したものであり、韓国の不法占拠こそが問題なのである。
 

こうした文の発言に対してはさすがに韓国国内からも批判が生じている。1万人が集まった保守派の集会では、元統一省次官金錫友が「文在寅大統領は国内対立を回避するために対日問題を政治利用している」と看破している。

最近の国際世論もいささかあきれている様子である。平昌五輪の開会式を中継していた米NBC放送の解説者が「日本は韓国の手本」と発言。この発言に連動して米経済誌「フォーチュン」も、「発言は重要な真実を含んでいる」との趣旨の記事を掲載した。日韓の歴史を知る解説者なら当然の反応であろう。
 

日本の朝鮮統治については、否定的な面ばかりが強調されてきた。日本の一部マスコミも、これに同調しているが、植民地時代という時代背景を忘れている。ヨーロッパの各国の過酷な植民地政策に比較して、日本は、朝鮮の経済・産業・教育などのインフラ構築に、はるかに多くの努力と費用を費やしてきた。李朝末期で腐敗しきった政治を立て直し、国民への教育制度も確立した。もっともひたすら日本叩きに精を出している反日文在寅にそんなことを言っても、聞く耳を持つわけがない。
 

冒頭述べたように、日本ではまたかという「韓国疲れ」がたまっている。今度の場合は文に譲歩する必要もないし、極東安保を考えれば超強硬策を取るわけにもいかない。この冷え切った日韓関係は、るる述べてきたように指導者としての大局観に欠ける文在寅に責任の大半があり、あえて、関係改善を図ることもないのではないか。もちろん安倍が再び謝る必要などさらさらない。

文在寅にはオリンピックが終わって、人気を維持するために反日の“禁じ手”を使う卑しい魂胆がありありと見える。こんな大統領をまともに相手にしても仕方がないと言うことだろう。

2018年02月28日

◆金正恩は“国宝”核ミサイルを手放さない

                    杉浦 正章

「ICBM発射凍結」の欺瞞(ぎまん)性

韓国大統領文在寅の対北融和姿勢がもたらすものは、はっきり言って金正
恩による“やらずぶったくり” に遭遇するだけだろう。国連の経済制裁が
効き始めたのか金正恩は、苦し紛れに南北首脳会談という呼び水をまい
て、9月の建国70周年に向けて、核・ミサイルの完成を喧伝、経済の悪化を
回避したいのだ。

まさに北の手の内で踊らされているのが文在寅だ。一方で米国が文のペー
スに乗って、大陸間弾道弾(ICBM)実験凍結と引き換えに妥協路線に移行
すれば、ノドン200発を向けられている日本は置いてけぼりを食らう可能
性がある。

日本を離反させて米極東戦略は成り立たない。金正恩みずからが苦し紛れ
に重要な戦略的な転換をしようとしているかに見えるが、その実は父親と
同様にいつか来た道、すなわち国際社会を欺く路線を歩むだけだろう。

しかし、米国がそこを読んでいないはずはない。トランプの長女イバンカ
は文在寅との晩餐会の席上、融和ムードにクギを刺している。「朝鮮半島
が非核化されるまで最大限の圧力をかけ続けることを改めて確認したい」
と文に迫ったのだ。文は「非核化と南北対話を別々に進めることはない。

2つの対話は並行して進めなければならない」と約束した。どうも文とい
う人物は両方に“いい顔”をする癖が抜けないようだが、その真の狙いは南
北首脳会談の実現にあり、北のペースにはまりかねない姿勢と言える。

 北の外交は一見巧みに見えるが、常に馬脚が現れる。妹金与正を派遣し
たことは、肉親を外交に使わなければならない切羽詰まった状況を反映し
たものだろう。なぜなら、北は文に“本気度”を示す必要に迫られたから
だ。与正のほほえみ外交の影に“氷のような微笑”を感ずるのは筆者だけで
はあるまい。文を手玉に取った与正は帰国して金正恩に報告。金正恩は、
南北関係をさらに発展させるための具体的な方途を指示したとみられている。

 その内容の一つが「ICBM発射凍結」のカードだ。日本上空を飛ぶICBM実
験を中止して、国際社会の関心を呼び、アメリカを乗せようとしているの
だ。もちろん国内向けにはミサイル開発を放棄しないし、開発はどんどん
進めることができる。

こうした北の“疑似”緊張緩和攻勢の背景には国連による制裁決議の影響が
徐々に生じ始めている実情がある。政府は、東シナ海の公海上で北朝鮮船
籍のタンカーとドミニカ船籍のタンカーによる積み荷の受け渡し「瀬取
り」を確認している。

苦し紛れに抜け道の対応が始まっているのであり、国連決議の影響は今年
後半にはもっと鮮鋭に生じることが予想される。

 しかし金正恩は、この影響をなんとしてでも回避したいのだ。最重要行
事である9月9日の建国70周年に向けて、経済の困窮は、自身の権威維持の
上で最も得策でないことなのだ。このためのとっかかりが文の融和姿勢に
あるのだ。

おそらく北の狙いは70周年に先だって、南北首脳会談を実現して、経済支
援を取り付けたいのであろう。最終的には米朝接触を実現するところにあ
るのは言うまでもない。すでに韓国は統一省報道官が「適切な機会に北朝
鮮と米国が建設的な話し合いに入ることを期待する」と、なりふり構わず
米朝対話を推進しようとしている。

日米はこの金正恩が掘った蟻地獄に文在寅がはまりつつあることを、傍観
することは出来まい。

 北朝鮮との交渉は歴史的に見て、ワンパターンである。約束をして経済
援助を獲得すれば、臆面もなく反故にする。2012年に、米朝間で合意した
核兵器と長距離弾道ミサイルの実験の凍結、国際監視下での寧辺(ヨン
ビョン)核関連施設におけるウラン濃縮の一時停止という約束はとっくに
反故にされており、何かの一つ覚えのごとく同じ手口を今回も通用させよ
うとしているかに見える。

全ての問題は北が核ミサイル開発を放棄するかどうかに絞られる。放棄し
なければ極東情勢は“気違いに刃物”の状況にさらされ続ける。しかし、北
がこの核ミサイル開発を放棄することはあり得ないだろう。

従って米朝会談が実現しても、妥協の構図は描けないのが実情だ。妥協ど
ころか物別れの連続となるのは必至だろう。なぜなら金正恩にとって核ミ
サイルは、珠玉の“国宝”そのものであり、手放せばそれこそ体制崩壊につ
ながりかねないからである。文在寅が開けられた日米韓連携弱体化の穴
を、日米が協調して塞ぐ方向へ持って行かなければなるまい。
   

2018年02月24日

◆平昌舞台に“脂粉外交”の攻防

                       杉浦 正章

米、イバンカ派遣で巻き返し狙う

平昌五輪を舞台にした外交で華々しい成果を上げたのは何と言っても金正
恩の妹金与正だ。与正の肩書きは中央委員会第1副部長だが、事実上の金
正恩の代理として訪韓し、9日から11日まで2泊3日で滞在、韓国との関係
改善の突破口を明けた。

一方で米国は大統領トランプの長女で補佐官イバンカを23日から3泊4日で
派遣して、文在寅と会談させる。まさに平昌を舞台に“脂粉外交” が展開
される。厳しい極東情勢を反映して、米朝の女の戦いが展開される形だ。
文在寅は両方にいい顔をするコウモリ外交を強いられることになり、喜ん
でばかりはいられない。

金与正は妊娠7か月だという。韓国政府は金与正が妊娠していることを昨
年暮れから知っていたといわれるが、まさか金正恩が身重の妹を派遣する
とは予想していなかった。

国連の制裁決議が真綿のように金正恩の首を締め付ける中で、北は“瀬取
り”と言われる沖合での荷渡しをするなど苦しい対応を迫られているのが
実情だ。包囲網打開への一手として苦し紛れに打った手段が、妹の派遣に
よる文の籠絡だ。局面打開に“ほほ笑み外交”を選んだのだ。

その意図については日本の新聞より米国の報道の方が的を射ている。ワシ
ントンポストは金与正を、外交舞台で影響力を行使しているイバンカ・ト
ランプになぞらえて、「北朝鮮のイバンカ・トランプ」と大きく紹介した。

同紙は、金正恩の妹でありながら富や権力を誇示しなかったことを予想外
だと評価し、「金与正は薄化粧に地味な装いで“謎めいた”微笑だけを見せ
ている」と描写した。一方、CNNは、「独裁者金正恩の妹が平昌冬季五
輪の関心を一人占めしている」と報道、「金与正の韓国訪問が平昌冬季五
輪閉会式に参加する予定のイバンカを意識して高度に計算されたものだ」
と分析している。

一方で米国内では厳しい見方もあり、元中央情報局(CIA)韓国担当研究員
のスミ・テリーは「政治家の家族としてつながっているという点や、説得
力あるセールス能力を要求されているという点で北朝鮮のイバンカだ」と
評すると同時に「人間の顔を持った全体主義だ。彼女は善意を持てない国
から来た善意を持つ大使のように行動している」と断定した。

こうした中でオリンピックで先延ばしになっていた米韓合同軍事演習がパ
ラリンピック終了後に予定通り開かれるかが焦点だ。韓国国防部長官宋永
武は20日、合同軍事演習について、「パラリンピックが終了する318日か
ら4月前に韓米両国の長官が発表するだろう」と述べた。もっとも宋は
「どうするかは、肯定も否定もしない」とも述べており、あいまいだ。」

文在寅は合同演習が北との“ほほ笑み外交”に影響を及ぼすことを極度に恐
れていると言われ、何かと理由をつけて先延ばしにする可能性も否定出来
ない。その最大の理由として、金正恩とのトップ会談の交渉が進展してい
ることを挙げる可能性がある。

金正恩は与正の成果を褒め称えて「平和と対話の良いムードをさらに昇華
させ、素晴らしい結果を生むことが重要」と発言している。金正恩の狙い
は韓国を国連制裁の枠から引き離し、経済的な利益をもたらす関係へと引
き戻すところにある。

紛れもなく文在寅の“甘さ”につけ込もうとしているのだ。こうした文在寅
の優柔不断さに対して、米国はおそらくパラリンピック終了前後に強いけ
ん制玉を投げるに違いあるまい。しかし左翼の文在寅は確信犯的に北に傾
いており、一筋縄ではいかないだろう。


2018年02月15日

◆度しがたい文在寅の対北融和姿勢

杉浦 正章

日米韓の連携に亀裂の危険 米朝対話は当分困難
 
オリンピックを舞台に展開された日米韓首脳や北朝鮮代表らとの接触は、
厳しい極東情勢を反映して微妙な展開を見せた。1つの流れは韓国と北朝
鮮による一見融和に見える動きだ。

これはとりもなおさず朝鮮労働党委員長金正恩が韓国大統領文在寅を日米
と離反させる事に成功しつつあるかのように見える。金正恩は国連制裁決
議が目指す北朝鮮包囲網に突破口を明けつつあるように見える。

一方で米国は、副大統領ペンスが、あらゆる北との接触をさけ、近くさら
なる制裁を打ち出す構えだ。米朝対話はそう簡単には実現しまい。文在寅
を挟んで日米対北朝鮮のせめぎ合いが今後さらに展開して、情勢は流動性
を秘めることになる。

まず、文の“度しがたさ”はまるで日本の民主党政権のルーピー首相と勝
るとも劣らない姿を鮮明にさせているかのようである。

首相・安倍晋三が「米韓合同演習ををさらに延期する段階ではない。予定
通り実施することが重要だ」とクギを刺したのに対して、文は、なんと
「これは我々の主権、内政に関する問題だ。首相が取り上げても困る」と
切り返したのだ。

この発言は朝鮮半島問題を近視眼的にしか見られない文の外交・安保観の
限界をいみじくも露呈させた。朝鮮半島問題はすぐれて極東安保情勢の枠
内の問題であり、半島有事の際には日本の米軍基地が活用されることは、
先の朝鮮戦争の例から見ても明白である。

また極端な例を挙げれば、北に追い詰められた場合、韓国政府や国民の逃
げ場は日本列島しかない。日本は地政学的に言って対岸の火災視出来ない
のに、火元の韓国が「内政問題」というのは、聞いてあきれる判断力の欠
如だ。

さらに文は半島情勢を見誤って、米朝対話のアレンジをしようとして失
敗した。文はあらゆる機会を通じてペンスと金正恩の実妹の金与正との会
談を実現しようと試みた。

南北対話を米朝対話に直結させようとしたのだ。しかし、ペンスは訪韓前
の安倍との会談や米政府内での事前打ち合わせの結果、北側とは一切接触
しないとの決意を固めていた。

その結果ペンスは開会式に先立つレセプションで最高人民会議常任委員長
金永南との同席を拒否、また、開会式でも金与正との同列での着席を拒否
した。拒否したばかりかレセプションでは着席もせずに、5分で会場を離
れた。

胸がすくように、ことごとく接触を拒否したのであり、この米国の方針を
知らないか、知らされていない文だけが砂上の楼閣作りに専念したことに
なる。

米国は北朝鮮と対話しないという立場表明と同時に韓国に対しても強い警
告を送ったと読み取ることができる。「独走を戒める」警告を送ったのだ。

そもそも文は北朝鮮から非核化に関するいかなる妥協策も聞いていないに
もかかわらず、北と米国の接触を意図的に演出しようとしたのだ。核心の
問題に対する文の浅慮に対して、ペンスは行動で不快感を表明したのだ。

南北の和解と対話や北朝鮮の非核化問題は、韓米が確実な協力の中で推進
する場合に限り効力を発揮する構図である。このことへの文の理解度はゼ
ロに等しいことが鮮明となった。

ペンスの警告を文が理解したかどうかは不明だ。どうも文在寅には同一民
族だから北は核ミサイルを韓国に対しては使わないし、核は米国と日本向
けだという考えが根底にあるような気がする。

これが北への融和路線の根底となっているようだ。ペンスは「北朝鮮が話
をしたいのなら話をする」と帰国後ワシントンポスト紙に語ったが、同時
に「非核化に向けた意味ある行動」も求めており、そう簡単には米朝対話
は実現すまい。

金正恩が国連の経済制裁によって、相当こたえていることは、状況証拠が
示すとおりだ。洋上での荷渡しで、しのごうとしているのがその顕著な現
れだ。

海上自衛隊のP3C哨戒機が1月20日、中国・上海沖の東シナ海の公海上
で、国連安全保障理事会の制裁対象になっている北朝鮮船籍のタンカーと
ドミニカ船籍のタンカーによる積み荷の受け渡しを確認している。

ひしひしと国際包囲網が狭まるのを感じているからこそ、金正恩は、オリ
ンピックを好機ととらえ、“甘ちゃん”の文をあの手この手で籠絡して、包
囲網の一角を崩す戦術を展開したのだ。

これを証明するかのように北の労働新聞は「内外の期待と関心を呼んだ今
回の訪問は、北南関係を改善し、朝鮮半島の平和的環境を整える上で、有
意義な契機になった」と代表団を褒め称えた。
 
さらに金正恩は金与正を通じて、「早い時期に面会する用意がある。都合
の良い時期に訪朝してほしい」と、南北首脳会談の考えを口頭で文在寅に
伝えた。

要請は、2007年10月以来3度目となる会談の開催を求めたものだが、文
は唯々諾々とこれに乗りそうだ。金正恩にしてみれば文の訪朝を実現させ
れば、国際包囲網のみならず、日米韓の連携にもひびを入れさせることが
出来る絶好のチャンスとなる。

さらに米国の限定攻撃などを避けることも 狙っているのだろう。訪朝要
請は具体的な時期を示さず、口頭での要請に とどまった。国際社会の制
裁への一時しのぎとして、対話に前向きな文在 寅への大きな仕掛けをし
たのだ。

こうみてくると、まるで文在寅は、あの“ルーピー鳩山”をほうふつと さ
せる。“ルーピー文”はまったく極東情勢をどこに持って行くか分からな
い危険性がある。韓国政府内部には首相李洛淵のように「われわれは決し
て(北朝鮮の)非核化を除いて対話をすることはあり得ない。

まさに非核 化のために対話はあるのだ」と訪韓した自民党幹部に説明す
る向きもい る。しかし、これも甘い。核・ミサイル路線の追及はまさに金
正恩の存在 理由・レゾンデートルである。“核あるが故に我あり”の路線
で、軍部を 引っ張っているのであり、非核化などは北に政変が起きでも
しない限りあ り得ない幻想なのだ。

2018年02月11日

◆日米、文の北朝鮮傾斜にクギ

杉浦 正章

金正恩に五輪活用でナチスの影響
 
北朝鮮の金正恩がオリンピックをまるで“茶番ピック”にしようとしている
かのようである。スポーツの祭典であるオリンピックの精神をはき違え
て、金正恩は、ちゃらちゃらした“美女軍団”なる楽隊や応援団を大量に送
り込み、衆目を集めて国威を発揚しようとしている。これにはまって、朝
から晩まで一挙手一投足を報道しているのは日本の民放テレビと韓国のテ
レビだけだ。

オリンピックの精神は、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、
フェアプレーの精神をもって相互に理解しあう、平和でよりよい世界をつ
くることにある。

ところが金正恩は、開会式前日8日に自国で行う軍事パレードも含めて、
オリンピックを活用して、自らの存在感を世界に誇示しようとしている。
韓国大統領文在寅は、完全に北朝鮮ペースにはめられ、オリンピックを北
のプロパガンダの場として差し出すという愚挙に出た。首相・安倍晋三と
米副大統領ペンスが文在寅の融和路線に警鐘を鳴らし、引き戻そうとして
いるのはもっともだ。

オリンピックの政治利用は、どの主催国も多かれ少なかれあるものだが、
その突出した例が1936年ナチス政権下のベルリンオリンピックだ。ナチス
政権は、オリンピックを利用して、平和的で寛容なドイツのイメージを作
りだし、多数の外国人観客や報道記者を惑わせた。

2週間の夏季オリンピック大会の開催中、アドルフ・ヒトラーはその人種
差別主義、軍国主義の特性を隠蔽し、大半の観光客や報道陣はナチス政権
が反ユダヤ人の看板を一時的に除去したことに気づかずにいた。

ところがその本質は「優秀なドイツ市民がアーリア人文化の正当な継承者
である」というナチスの人種的神話を推進するものであった。

そのヒトラーの「わが闘争」を愛読して幹部に配った金正恩が、国内で確
立した全体主義的な統治の輪を、朝鮮半島全体に広げる野望を持っている
ことは言うまでもない。

36年オリンピックはヒトラーを増長させ、終了後にユダヤ人迫害を直ちに
進め、第二次世界大戦へとつながった。金正恩が何を考えているのかは不
明だが、冬季五輪を最大限活用して自らの存在感を高めようとしているこ
とは間違いない。

日米韓による北朝鮮包囲網の突破がまず最大の課題であろうが、その一角
は文から崩され兼ねない情勢である。まず北朝鮮制裁で韓国が独自に課し
ている出入国の制限が崩された。

なにも板門店を経由してバスで選手村に入ればよいものを、北朝鮮はわざ
わざ仰々しく陸路、空路、海路を活用して選手団・応援団を送った。海路
を万景峰号を派遣してこじ開けたのだ。

さらに7日午後、北朝鮮側は、金正恩の妹で朝鮮労働党中央委員会第1副
部長の金与正(キム・ヨジョン)も五輪に出席させる方針を明らかにし
た。金与正は事実上のナンバー2で、あきらかに南北融和ムードを盛り上
げて、日米韓の結束を崩す狙いがうかがえる。

最高人民会議常任委員長の金永南(キム・ヨンナム)とともに、文在寅との
会談などなんらかの首脳間の接触を試みようとする可能性がある。ペンス
への接触も狙う可能性もある。トランプの長女イバンカがオリンピック開
会式に出席することから、金与正が接触する可能性もある。融和ムードを
演出するためだ。

こうした北のペースにはまりつつあるかに見える左傾化大統領文在寅に
対して、ブレーキをかけたのが安倍・ペンス会談だ。両者は7日、文の微
笑み外交批判で一致した。

両者は、北朝鮮に核開発などを放棄させるため最大限の圧力をかけていく
ことを確認した。日米には文が、オリンピックを突破口にして日米韓の分
断を図ろうとする金正恩の意図を理解していないとの懸念と不信感がある。

また両者は北朝鮮が非核化に向けた真摯(しんし)な意思と具体的な行動
を示さないかぎり、意味のある対話は期待できないという認識で一致し
た。ペンスは、「アメリカは、最大かつ最も強力な内容の独自制裁措置を
ちかぢか発表する」と述べるとともに、北朝鮮を「地球上でもっとも独裁
的で残虐な国」と表現、軍事行動を排除しない姿勢を示した。


こうして、金正恩のみえすいた融和戦略は、日米首脳によってその本質が
見抜かれ、「ほほ笑み外交」に惑わされつつある文をけん制し、日米対北
朝鮮で“文抱き込み合戦”が展開されている形となっている。

焦点は北がオリンピック終了以降までほほ笑み続けるかどうかだが、過去
の例から言えば、一過性とみるべきだろう。やがて、金正恩の太った顔が
青ざめるときが来る。


2018年02月08日

◆核戦力見直しで「極東新冷戦時代」へ

                              杉浦 正章
 
しかし、小型核であっても使用困難
 
「核なき世界」を掲げた前大統領オバマの方針は砂上の楼閣のごとく崩れた。もともとオバマ戦略はロシアと中国との合意なしに発表されたもので、脆弱性を秘めていた。逆に中露はオバマ戦略を“活用”して8年間にわたり核開発に精を出し、米国の裏をかいた。パワーゲームの現実を知らぬオバマのツケをトランプは払わされる結果となったのだ。したがって、米国が「核戦力体制見直し(NPR)」で、核抑止の再強化に乗り出したのは歴史の必然とも言える。
 
中国は明らかにしないがロシアの保有する小型戦術核は4000発に達しており、米国は760発だ。朝日新聞は例によって社説で「歴史に逆行する愚行」と口を極めて米政府の方針を批判しているが、それでは中国とロシアの核はよいのか。昔から左翼の論法に中露など社会主義国の核は「よい核」で、米国の核は「悪い核」というものがあったが、いまだに同じ感覚を持っているとは驚いた。

朝日は、世界は過去のいかなる時代より多種多様な核の脅威に直面している現実を、勉強し直した方がよい。
 
トランプの発表した「核戦力体制見直し」は新型の小型核兵器と核巡航ミサイルを導入して潜水艦などに配備するものだ。NPRは核の使用は「極限の事態に限る」としながらも核以外の通常兵器による攻撃にも使う方針を明記した。局地的な戦闘を想定して潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の一部の核弾頭を、爆発力を大幅に抑えた小型核に切り替える。都市に壊滅的な打撃を与える戦略核とは異なり、小型核は局地的な攻撃に使用される。

その一方で艦船や潜水艦用の核巡航ミサイルの再配備に向けた開発も始める。これは小型核を、各地域に柔軟に展開できる利点がある
 
小型核の第一の対象はロシアである。ついで中国、北朝鮮の順となる。中露は朝鮮半島の非核化を口では唱えながら、北朝鮮の核開発や核爆弾の材料の搬入に目をつむり、極東における戦略的な優位を構築しようとしてきた。狡猾なる中露の意図を掌握しないオバマの大失策は、米国や日本など同盟国が多様なる核の脅威にさらされる現実を直視しないで、ありもしない理想郷を追い求めた点であろう。

米国防情報局の調査によるとロシアは、短距離弾道ミサイルや中距離爆撃機で運搬可能な重力爆弾や水中爆雷に搭載される戦術核だけで2千発を保有すると言われている。この戦術核の先制使用をちらつかせて周辺諸国を威嚇するのがロシアであり、米国はやはり戦術核による報復で圧力をかけざるを得ないのが実情だろう。

一方北朝鮮に対してNPRは「後数か月で米国を核弾頭搭載のミサイルで攻撃できるようになる」と予測し、同時に「北朝鮮が米国を核攻撃すれば北の体制は終わる」と、報復により金王朝が壊滅する方向を明示している。NPRは「国際的安全保障環境は、大幅に悪化、世界はより危険な状態に陥った」と警告した。その上で小型核使用のケースとしては、サイバー攻撃を念頭に「インフラや国民が非核攻撃を受けた場合も含む」とした。
 
このトランプの方針は世界の核軍拡を招く恐れがあるが、中国とロシアは今のところNPRに即応する軍備を増強する気配はない。しかし、両国が、トランプの世界戦略に唯々諾々と従う事はあり得ない。両国はNPRに対抗する技術開発をいずれは打ち出すだろう。そうなれば、世界とりわけ極東は「新冷戦時代」とも言える状況に突入し、日本は好むと好まざるとにかかわらず軍備増強を迫られる。
 
それでは、米国の小型核の開発で果たして「使える核」がより現実のものとなるだろうか。技術はすぐに移転し、模倣されるから北朝鮮やイランなどが製造の研究を始め、核の野望を抱く国々が増加する可能性は否定出来ない。もっとも「使える核」が現実のものとはなりにくいと思う。なぜなら、大国間の戦争はいったん戦端を開くと歴史的に見ても極限状態に至ってはじめて収まるのが常だからだ。

だから、小型核を使用すえば堰を切ったように中型核、大型核使用への流れへと発展する。核戦争により世界が破滅する事態だ。従って小型核の使用は大型核の使用とどっちみち同じであり、普通の政治家なら抑制を利かせざるを得ないのだ。 
 
外相河野太郎がトランプのNPRについて「我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にした。高く評価する」と反応したのは当然であろう。拡大抑止とは同盟国への攻撃を自国に対する攻撃と見なして報復する意図を示し、第三国 に攻撃をためらわせて同盟国の安全を確保する考え方だ。世界唯一の核保有していない大国である日本は拡大抑止に頼らざるを得ない。 

◎片えくぼ
どうしてNHKの朝、7時からの一時間は、あんなにくらいニュースばかりを掘り下げるのだろうか。毎朝出かけるサラリーマンを暗い気持ちにさせるのが使命とでも考えているのだろうか。くらい報道になるとカチャッと明るい民放に変える。

2018年02月03日

◆中国、対日関係改善で突破口狙う

杉浦 正章


日中友好条約40周年で習近平来日か

筆者がかねてから指摘してきた極東冷戦の構図が、新年になっていよいよ
鮮明になった。米中関係は11月のトランプ訪中による蜜月関係から一転し
て険悪とも言えるムードとなった。

これを承けて米国防戦略も2008年以来の「テロとの戦い」から「中露との
長期的な競争」へと大転換した。日米同盟は好むと好まざるとにかかわら
ず、その中核に位置づけられる。

中国は対日接近で日米豪印による「インド太平洋戦略」の包囲網を突き崩
そうとしている。対中関係は改善に越したことはないが、中国の“意図”を
見据えた対応が不可欠となろう。しかし、首脳間の交流は推進すべきであ
り、習近平の来日は欠かせない重要テーマだ。

外相河野太郎の訪中は一定の成果を収めたが、中国側の出方は「日中友好
条約締結から40年の節目」が合い言葉のようであった。首相李克強を始め
国務委員楊潔チらが口をそろえて「40年の節目」を口にした。

中国政府内部のの「口裏」合わせがあった事は間違いない。中国を取り巻
く情勢を見れば、北朝鮮は言うことを聞かないし、韓国とも良好ではな
い。米国ともうまくいっていない。

東アジアでは孤立しているのが実態だ。中国は国内的には貧富の差が拡大
して国民の不満が募り、共産党が否定してきた階級社会が実現しつつあ
る。内政外交共に矛盾を抱える中での対日接近であろう。首相・安倍晋三
は背景を理解して対中外交を展開するチャンスである。

 安倍は施政方針演説で「自由で開かれたインド太平洋戦略を推し進め
る。この大きな方向の下で中国とも協力してアジアのインフラ需要に応え
る」と言明した。

中国の基本路線は「一帯一路」にのっとった世界戦略にあるが、安倍が最
初に提案したインド太平洋戦略はこれに対峙する性格が強い。従って安倍
演説は矛盾を帯びながらの現実路線と言える。

日中関係は尖閣諸島の領有権問題を抱えるだけに、この急所をあえて突か
ずに関係の改善を進めるしか方法はあるまい。昔田中角栄が周恩来との会
談で尖閣諸島の領有権問題を事実上「棚上げ」して日中関係を劇的に好転
させたのが歴史の教訓であろう。

一方米国は対中関係を180度変更させた。昨年11月のトランプ訪中では蜜
月を謳歌したものだ。トランプが「中国の人々との友情は今後強化され続
ける」と友好をうたえば、習近平は「米中関係はライバルではなくパート
ナーだ。関係発展の潜在力は無限だ」と答えた。

その後、たった2か月で急転直下舞台は暗転した。米国は昨年末には「国
家安全保障戦略」で、米国第一主義に基づく「強いアメリカ」確立を目指
す姿勢を前面に押し出した。そして中国とロシアを国際秩序の現状を力で
変更しようとする 「修正主義勢力」と位置づけた。

ついで国防相マティスが1月19日に発表した「国家防衛戦略」では「米国
と中国およびロシアとの大国間競争への回帰」を明示した。同文書では中
国を、米国の覇権に挑戦する最大の脅威とみなし、「対テロ」から、中国
とロシアとの長期的な「戦略的競争」に備える方針を打ち出した。

文書は「中国は地域的な規模で米国の主導的地位に取って代わろうとして
いる」と情勢を分析。さらに「中国、ロシアとの長期的な『戦略的競争』
が国防総省の最優先事項となる」として、同盟関係の強化を強調している。

この米国の強硬方針の背景にはマティスがアジア・太平洋地域担当の国防
次官補にランドール・シュライバーを抜擢したことも背景にあるようだ。
シュライバーは台湾との関係が深く、中国の軍拡や対外政策に否定的な立
場である。米国が、中国の東シナ海や南シナ海問題などに対して、強硬姿
勢で臨む姿勢を鮮明にした人選と言える。

これに対して中国は猛反発したことは言うまでもない。国防省のホーム
ページで「事実をねじ曲げ、中国の国防力を誇張している。米国が冷戦時
代への指向を捨てるよう希望する」と批判。

それでもたりないとばかりに国防省報道官任国は「アメリカの国防戦略は
事実を顧みず、中国脅威論を誇張し、事実に基づいていない」と口を極め
て断定した。

今後の中国の対応は、トランプ政権が中国と対峙するなら、ロシアとの関
係を一層深め、同時に「インド太平洋戦略」の国々を一つ一つ籠絡して、
無力化を図ることになろう

。ただ主要国のうち米国は対峙の中心であり、中国が懐柔することは難し
い。豪州も親中派とみられていた首相ターンブルが安倍との会談で、方針
を一転。海洋進出の中国を念頭に「太平洋やインド洋など海上の安全保障
の協力強化」で合意した。

日米豪印の枠組みでの連携も確約した。インドは中国と国境を接してお
り、歴史的にも戦略的にも相容れない傾向が強い。だから中国は、対日関
係を良好に保ち、長期的な視野で連携を崩しにかかるしかないのだ。

その最大の“呼び水”が対日首脳外交だ。その具体的戦略は、まず日中韓の
首脳会談を春に開いて李克強が訪日する。親密度を深めた上で、習近平が
訪日して関係を最良のものとする。

既に1998年の日中平和友好条約締結20周年では、江沢民が史上初めての中
国国家主席として公式に来日、30周年に当たる2008年には胡錦濤が来日し
ている。となれば40周年の今年中の来日が実現する公算が大きい。日中そ
れぞれの思惑が錯綜するが、首脳間の交流で対話を深め、関係を前進させ
るのが最良であり、何としてでも実現させるべきだ。