2013年07月25日

◆安倍は消費増税で泥をかぶる決意を

杉浦 正章



ここにきて“遁走”は許されない


消費増税の判断時期をめぐって財務相・麻生太郎と官房長官・菅義偉が空中戦を演じている。しかし、参院選自民党圧勝という“めでたい時”に政権内部で亀裂が生じたと取るのは皮相的な見方だ。


政権基盤がしっかりしている時の自民党政権は重要問題で賛否の役割を分担する傾向がある。問題を際立たせて世論の誘導を図るためだ。麻生と菅はその役を演じているにすぎない。そして消費税実施をめぐって世論がどこを向くかを見極めようとしているのだ。


最終判断をする首相・安倍晋三には新聞論調が「先延ばし」を主張してほしいという願望があるのだろう。しかし現政権は野田政権時代に新聞全社の社説が消費増税推進論であったことを知らない。まずこの傾向は変わらないのだ。安倍は自らの人気維持のために消費増税から逃げてはいけない。


「消費増税は国際公約に近いものとなっている。予定通りやらせていただきたい」と麻生が8月の首相判断の必要を述べれば、菅は「考えていない」と9月以降を主張する。安倍の側近学者の浜田宏一までが「国外の人を満足させるために日本国民が苦しむことはない」と想像を絶する暴論で、反論した。


このやりとりがなぜ今になって取って付けたように突然出てきたかということだ。麻生に近い自民党幹部筋は21日の安倍・麻生会談を指摘する。選挙当日に昼食を共にしながら1時間10分も会談しているのだ。もうとっくに圧勝が分かっている時点であり、何を話したかと言えば選挙後の政局対応に決まっている。


同筋は「消費税が焦点であった」と漏らす。どんな話が出たかは霧の中だが、対策を練ったに違いない。そして世論の動向を見極めることになったのだろう。


それが23日の空中戦となったとすれば、一種の“やらせ”と看破せざるを得まい。賛否両論を際立たせ、安倍に最終判断のフリーハンドをもたせるという自民党得意のやり口だ。


案の定このやりとりを見て全国紙は朝日が「消費税政権内で対立」と報ずれば、読売も「消費増税閣内に不協和音」と書いた。乗せられたのだ。しかし両紙とも社説で触れることに慎重だ。


朝日は選挙後全く触れていない。1月5日の社説で「消費税を政争の具にするな」と消費税最優先の主張をした読売の23日の社説は「消費増税の判断が焦点。経済成長と財政再建の両立をどう図るか。首相は厳しい決断を迫られる」となんと自らの主張から逃げている。


日経だけが「首相は逃げずに経済改革断行を」と題して「経済が大幅に落ち込む見通しがない限り、延期すべきではない」と言いきっている。


ここで重要なのは、前首相・野田佳彦がしゃにむに消費税法案成立に走ったのは、全国紙のすべてが財政再建のための消費増税やむなしを主張したことが大きな背景としてある。そして昨年8月に自民、公明、民主の3党合意で成立にこぎ着けたのだ。


問題はその付則18条に(1)平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指し総合的な施策を実施する(2)経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し経済状況等を総合的に勘案した上でその施行の停止を含め所要の措置を講ずるーという「景気条項」がついたのだ。


時の首相が景気状況を見て、停止する判断を下すこともあり得るとしたのだ。


これを意識して安倍は首相になる前の自民党総裁時代から慎重論を唱えている。GDPの数字が悪い場合には、増税を実施しない可能性を示唆し続けていた。安倍は、浜田が「デフレ」から抜け出すのを最優先に掲げ、日本銀行が金融緩和で市場に大量のお金をばらまくよう唱えていることに強い影響を受けていた。「リフレ派」の学者のペースに乗ったのだ。アベノミクスはその路線上を走っているのだ。


しかしそのアベノミクスの効果は著しいものがあり、逆に消費増税判断にプラスに作用する結果を生んでいる。1〜3月期の国内総生産(GDP)は年率換算で4.1%増。日銀景気判断は「緩やかに回復しつつある」とした。


「回復」という表現を使うのは2011年1月以来であり、先行きについては「緩やかに回復していく」との見方を示した。そこで首相判断の基となる4〜6月のGDPだが、日銀の先行き判断が正しいなら当然好結果をもたらすものとなろう。


消費増税を予定通り実施する場合は、景気の腰折れとそれによる税収低迷というリスクがつきまとう。しかしこれは増税する以上もともと避けて通れないものであり、それを一時的なものにとどめられるかどうかは時の首相の政治手腕にかかっているのである。


一方、先延ばしする場合は、財政に対する不安から、国債が売られて長期金利が上がり、それを通じて景気が減速するというリスクが伴う。海外のハゲタカファンドの餌食になるのだ。


いずれにしても前門の虎後門の狼なのであり、付則の求める「総合判断」は増税実施にならざるを得ないだろう。全国紙各社もまず消費増税推進の判断を変えまい。不況の最中でも財政再建優先を唱え続けて来たのであり、景気が好転しつつあるいま「停止」の判断に転ずることはあるまい。


従って安倍はもう泥をかぶる決意を固めた方がいい。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月24日

◆海江田続投に小沢の“再編”への思惑

杉浦 正章 


民主党を食いちぎるピラニアの群れ
 

魚が煮られるのも知らずに鍋の中で泳いでいることを「魚の釜中(ふちゅう)に遊ぶ如し」というが、今の民主党代表・海江田万里の姿がまさにそのままだ。代表職にしがみついているが、早晩煮上がって食われるのだ。誰が食うかと言えば、民主党の労組・旧社会党系グループだ。


日教組で参院議員会長・輿石東が食らい、その背後霊たる生活の党代表・小沢一郎も食うのだ。小沢の狙いは民主党分裂で自らの出番を作ることにあるが、逆に維新共同代表・橋下徹は民主党の非労組・松下政経塾系を食いちぎろうとしている。


水に落ちた犬にピラニアが寄って来ているのだ。民主党内にはこれまでも陰に陽に繰り返されてきた労組系と松下・非労組系の最終決戦の萌芽がここにあり、党分裂すらも予感させる動きである。
 

23日の民主党役員会における最大の焦点を抽出すれば、辞任の意思が固い幹事長・細野豪志が公然と海江田の辞任を求めて代表選挙の実施を主張したことだ。これに対して輿石が猛反対したことが今後の党内対立の構図を物語る。


細野は京大法学部の先輩である民主党代表・前原誠司の下で、民主党役員室長に就任して以来の前原のグループである。輿石は小沢の腹心である。その小沢は選挙後側近に「民主党は海江田でいかなければならない」と漏らしている。


輿石には「海江田でいけ」と選挙前からけしかけている。なぜ小沢が海江田かと言えば持論の「御輿は軽くてパーがいい」に尽きる。小沢は2011年の代表選でも海江田を推して、野田佳彦になだれ込んだ前原グループと対決、敗北している。


参院選挙の惨敗は言うまでもなく代表たる海江田がその責任を一身に負わなければならない。その海江田が筆者がいち早く伝えたように、選挙前から辞任を回避し始めたのはなぜだろうか。


背景には輿石ら労組グループが「辞任を一切口にしないように」とクギを刺して、支持を明確にしたからだ。それをよすがにごうごうたる批判にもかかわらず、代表職に必死ですがり付こうとしているのだ。


一方で細野の動きの背景には言うまでもなく前原や前首相・野田佳彦の影が浮き出てくる。二人とも“戦犯”扱いを気にしていて今のところ前面に出られないが、ほとぼりが冷めれば必ず水面に浮上するだろう。


「ポスト海江田」候補とされる野田、前副総理・岡田克也、前原、元財務相安住淳、元官房長官・枝野幸男、前外相・玄葉光一郎ら「6人組」が沈黙しているのは、野田を除きいずれも地元の選挙区で公認候補が落選しているからだ。自粛しているのだ。


しかし一人落とした責任と、けた外れに落とした海江田の責任とは、自ずから異なるのであって、一定の猫かぶり期間が過ぎれば浮上する。
 

こうした状況を狙って、いまや大阪限定の地域政党化が鮮明になった維新の橋下までが変化球を投げ始めた。


この口から生まれたような市長は議員バッジもないのに政界再編なのだそうだ。さっそくみんなの代表・渡辺喜美が「国会議員として、責任ある立場から発言しないと再編話は進まない」とこき下ろした。


めげずに橋下は「維新の会とみんなの党、それに民主党の一部が、話し合いをして、1つの勢力にまとまらないと国のためにならない。『維新』とか『みんな』とか『民主』という看板はなくさないとだめだ」と野党の糾合を訴えた。さらに、橋下は「今後、1年から2年かけて、1つのグループの形成に向けて水面下で動きがあると思う」と予言した。


橋下の狙いは民主、みんなの両党内の分断にある。民主党はもともと親しい関係にある前原を担いで新党を作るところに落ち着かせたいのだろう。みんなに対しては渡辺と幹事長・江田憲司の確執をてこにして、分裂を策しているのだろう。


維新との連携を重視する江田は23日、「党内の不満が鬱積している」として、25日の両院議員総会で渡辺の党運営を議題にするよう要求した。渡辺と江田の対立が一挙に表面化した状態だ。


こうして民主、みんな両党は内部要因と外部からの“干渉”で動揺をし始めたのが現状だ。これに憲法、集団的自衛権などをめぐる自民党からの働きかけが絡んで、当面混迷度を深めて行くものとみられる。


そもそも民主党は求心力の失せた海江田を労組グループや小沢の思惑で無理矢理続投させようとすることに無理があるのであり、海江田が私心を捨て去り、辞任することが党再生の道であることを肝に銘じなければならない。


冒頭で指摘した「魚の釜中に遊ぶ如し」が「釜の中に友を追う魚」となっては、全滅必至と心得るべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月23日

◆集団的自衛権は維新と民主がカギへ

杉浦 正章



公明は「下駄の雪」でついてくる
 

首相・安倍晋三の公約の1丁目1番地である集団的自衛権容認が動き始めた。安倍は秋にも容認へ政府の憲法解釈を180度転換し、通常国会に国家安全保障基本法を提出して成立を図る方針だ。


これに対して「断固反対」を旗印に両手を広げて立ちふさがっているのが公明党代表・山口那津男だ。取り扱いによっては連立の危機となりかねないが、実際にはそうはならないと思う。公明党の方向転換は日常茶飯事であるうえに、自民党内ではある戦略がささやかれている。


それは民主の一部と、維新の抱き込み先行だ。賛成派を糾合して法案成立への下地を作ってしまおうという戦略である。公明党包囲網だ。


おやっと思った発言がある。山口が22日午後安部と党首会談をした後、集団的自衛権の行使を認めることを柱とした国家安全保障基本法案については、「安保の基本法であれば閣法という考えだ」と述べたことだ。


「閣法」という全く聞き慣れない官僚の専門用語を使ったのだ。普通なら「政府提出法案」と語るべきところをなぜわざわざ専門用語を使ったかだが、これは安部が党首会談で述べたからに違いない。安部もやはり記者会見で「私は閣法であるべきだという考えだ。党とよく話したい」と述べたのだ。


集団的安保に関しては党首会談の内容が全く出ていないが、「閣法」で分かった。これは偶然ではない。法案の通常国会提出問題にまで踏み込んで話が出た証拠だ。何か二人の間で暗黙の合意がありそうな気がするが、当分外には出さないでおこうというところだろう。


山口は選挙後は「断固反対」からトーンを落とし、「憲法上、どうするのかという慎重な議論がまず必要だ」と述べるにとどまっているが、基本姿勢はまだ固いと見るべきだろう。根底には創価学会の絶対平和主義がある。安保は天から降ってくるという婦人部などの主張に、完全に引きずられているのだ。


山口は「海外での集団的自衛権の行使」に一貫して反対している。しかしこの立場は根本から矛盾している。公明は81年の党大会ではそれまでの「安保即時解消」から一転して、「日米安保条約」の容認を表明しているからだ。連立の基本条件も安保是認が根底にある。言うまでもなく安保条約は集団的自衛権の双務性を根幹としている。


同条約を容認する以上条約が適用範囲を極東としており、国会答弁で政府がその極東の範囲を「大体においてフィリピン以北、日本及びその周辺地域」と定義していることも認めていることになる。少なくとも極東と範囲を限れば公明も反対する根拠を失うことになる。


そもそも山口が反対の根拠としている内閣法制局の見解は、戦後の自民党政権が国会答弁をすり抜けるためのものだった。便宜上内閣法制局長官をして「主権国家の当然の権利として集団的自衛権は有しているが、憲法9条の下で許される必要最小限度の範囲を超えている」という“また裂き”見解を表明させたのだ。


内閣法制局長官は歴代「三百代言」といって、時の政府に都合の良い法解釈を得意としてきた。そうでなければ冷戦下の国会審議は持たないからでもある。


したがって安部が第1次政権で政府に有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置して、〈1〉米国に向かうミサイルの迎撃〈2〉国連平和維持活動(PKO)で一緒に活動している部隊が攻撃を受けた場合の武器使用―など集団的自衛権の4類型をまとめさせたのも、法制局を意識した対策の側面がある。


山口は極東の環境変化を棚上げにして、平和だけを学会のお経のように唱えていれば国家の安全を保てると思っているとしたら見当違いも甚だしい。冒頭述べたように公明党がダメなら野党があるのだ。まず民主党だ。


民主党政権では、国家戦略会議フロンティア分科会が集団的自衛権の行使容認を求める報告書を首相・野田佳彦に提出、野田は前向き対応を約している。元代表・前原誠司は米国での講演で、集団的自衛権の行使容認をすべきだと発言している。


防衛大綱に記載する動きも出たが隠れ左翼の首相・菅直人に遮られて実現に至らなかった。最近では幹事長・細野豪志が、憲法解釈の見直しについて、「神学論争はやめた方がいい」と述べ、参院選後に本格化する議論に前向きに応じ、自衛隊の役割拡大を容認する考えを示している。自民党がくさびを打ち込めば、確実に投票行動は割れる情勢である。


一方で維新共同代表・橋下徹は「基本的には行使を認めるべきだ」と述べるとともに「権利はあるが、行使はできないというのは役人答弁としか言いようがない。論理的にも言語的にも理解できない。何も政治が手立てできなかったのは政治の恥だ」と言明している。この維新だけでも参院で9議席ある。自民党の115議席と合わせて124議席で122議席の過半数を超えるのだ。


もちろん衆院は自民党だけで過半数があり、クリアできる。


したがってちょっと自民党が根回しをすれば公明党抜きでも十分国会の多数派を形成できるのだ。公明党が嫌がるのはまさにこのポイントだ。野党を抱き込まれては自らの存在価値がなくなるからだ。従って「断固反対」と振り上げた山口の拳は、宙に迷うことになるのは必定なのだ。


この山口のメンツを立てるには集団的自衛権の行使を極東に絞るなどの政治的な知恵を出せば良いことになる公算が大きい。しょせん公明党は政権にしがみつきたいのであり、口実を作ってやることだ。「どこまでもついて行きます下駄の雪」にならざるを得まい。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月22日

◆デフレ脱却の安倍長期政権に基盤

杉浦 正章


〜参院選〜


原発推進、改憲は長期戦で勢力結集


3年間じっくりデフレの脱却と経済再生に取り組めというのが参院選で自民党を圧勝させ、ねじれを解消した有権者の選択であり、期待であろう。


首相・安倍晋三自身も21日「経済再生優先だ。経済力が国力の源泉であり、まず集中する」と言明している。秋の国会を「成長戦略実行国会」と位置づけ、アベノミクス定着に向けて、新たな成長戦略を推進する構えだ。また産業競争力強化法案の成立を目指す。


一方で憲法改正は長期戦で勢力結集を目指す構えとなる。原発再稼働に関しては、推進を掲げた自民党と、原発ゼロを主張する野党や朝日・TBSなど一部マスコミとの激突の様相だったが、昨年の総選挙に続いて完膚なきまでに反対派が敗退した。衆参両院の圧勝により安倍は、病気にでもならない限り長期政権へのフリーパスを獲得したことになる。


まず選挙結果を俯瞰すれば、国家の沈滞に大きく影響してきた衆参ねじれ現象の解消がようやく達成できた。近年のねじれは1989年の橋本内閣で始まり、以来4半世紀にわたり頻発して政治家も官僚も政策推進や政治改革の意欲を大きく減退させた。


2007年の第1次安倍政権以降のねじれは、民主党が参院を活用して政権を倒し、揺さぶるという悪質な物に変ぼうした。参院発の政局と陰謀がまさに横行したのである。これが断ち切られたことは、安倍政権に果敢なる政策判断を可能にしたことを意味する。


選挙がアベノミクスの是非を選択した性格が濃厚であったことと合わせれば安倍は次の総選挙までの経済での事実上のフリーハンドを得たことになる。いかにデフレからの脱却願望が国民の間に根強かったかを物語るものである。野党は戦後まれに見るほど弱体化して、再結集のめども立たず、当分“病気入院”状態となる。


議席数を大観すると、自民公明両党で76議席と、非改選59議席を合わせてねじれを解消して129の安定多数を上回る135議席を獲得したが、140の絶対安定多数を上回ることはできなかった。


注目すべき点は自民党が65議席と非改選の50議席と合わせて115議席となり、単独過半数122議席にあと7議席に接近したことである。これは、政策ごとの部分連合で特定の法案を成立させることも可能とする数字である。


具体的には安倍が秋にも予定している集団的自衛権の保持を可能とする憲法解釈の変更とこれに関連する「国家安全保障基本法案」の通常国会での成立を可能とする。


つまり公明党が「断固反対」しても維新やみんなと組めば法案は成立できることになる。この選択肢の拡大の意義は大きく、連立政権における公明党の存在感は後退する。集団的自衛権をめぐる議論や駆け引きも秋から活発化する。


一方改憲に必要な162議席に達するには改憲政党である自民、維新、みんなを合わせて非改選が61議席あることから、改選101議席の当選が必要となるが、合計で81議席であり遠く及ばなかった。


しかし公明党の20議席か、参院民主党内の20議席が改憲に回れば可能となる。対応次第では衆院と同様参院でも3分の2議席も実現する方向となった。その際は民主党は分裂または分裂状態の危機に陥る可能性がある。


安倍は早ければ秋の臨時国会で改憲のための国民投票の年齢を18歳とする「国民投票法案」の成立を図り、改憲への一里塚としたい考えだ。同法案は当然ながら過半数で成立が可能だ。しかし改憲は「加憲」を主張する公明党との溝を埋めることは容易ではなく、調整には時間がかかるだろう。


一方で安倍は民主党改憲派にも呼びかける姿勢だが、同党への工作は水面下に潜るからまだ判明は不可能だ。自民党副総裁・高村正彦は21日「改憲は具体的な議論は生じても、息の長いものになる」と発言、一挙には進展しない見通しを明らかにした。


当面の政治日程は23日から環太平洋経済連携協定(TPP)交渉会合への日本初参加、25日から安倍の東アジア3か国歴訪、8月2日参院議長など院の構成の臨時国会召集、同月15日終戦記念日、同月下旬中東4か国訪問、9月5,6日ロシアでのG20首脳会議、下旬国連総会と内閣改造、10月上旬臨時国会と続く。


この中でまず安倍政権はTPPに待ったなしの対応を迫られる。農産品を中心に対日関税撤廃圧力との戦いとなり、厳しい政策判断を求められる。対中、対韓外交絡みで注目されるのは8月15日の終戦記念日に首相、閣僚の靖国神社参拝が行われるかだ。安倍は21日「外交問題に発展することを念頭に行くか行かないかは言わない」と態度を明確にしなかった。


しかし、高村は「総理および閣僚が賢い判断をしていただけると思う」と発言、中韓との無用の摩擦を回避すべきとの立場を表明した。


さらに注目されるのはロシアでのG20だ。中国国家主席・習近平も出席することから、正式会談は無理にしても“立ち話し会談”または“二言三言会談”または“会釈”などが行われるかどうかだ。まさか両者とも顔を背けて擦れ違いでは余りに知恵がない。


内閣改造は長期政権への布石を敷く方向となり、選挙功労者の幹事長・石破茂は再任の可能性が高い。消費増税は4月〜6月の経済指標を見て安倍が秋口にも最終判断する。安倍が消費増税法案の改正につながる同税見送りの決断をする可能性は低い。


共産党の8議席が目立つが、都議選と同様に投票率が52.61%と低かったこと、民主党が受け皿にならなかったことなど他動的要因が大きい。自民党の政策なら何でも反対するというアンチテーゼとしての存在が際立っただけであり、構造的な伸長をを意味するものではない。8議席が限界だろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月19日

◆集団的自衛権容認は実現可能な議席確保

杉浦 正章

 

事実上の“単独過半数”で安保政策大転換
 

たとえ自民党が参院選の結果単独過半数72議席に達さなくても、ぎりぎりのラインに迫るのは確実だ。これが何を意味するかと言えば外交安保政策に及ぼす影響が甚大であることだ。維新の数がある上に他党から数人切り取っただけでも単独過半数となり得る。


要するに公明党との連立の重要性が限りなく薄れ、数議席の賛成で首相・安倍晋三は集団的自衛権行使容認を軸とする外交・安保政策の大転換を達成できることになる。事実上の“単独過半数”とも言え、参院選挙後の外交安保はこの基盤を軸として、躍動的な展開を示す可能性が高い。


選挙後の外交・安保課題は何と言っても中国、韓国など近隣外交をどうするかだが、朴槿恵が対中外交を最優先し、これ見よがしに習近平との首脳会談で中韓蜜月ぶりを見せつけたことが当分“たたる”だろう。


同会談では付けたりのように共同声明で「日・中・韓首脳会談の年内開催」に言及しているが、安倍にしてみれば別に急いで首脳会談を開催しなければならない理由は見当たらない。


ここに来て日韓外務事務次官会議などが開催されているが、官房長官・菅義偉は18日「日韓には特段緊急な懸案はない」と言い切った。これは歴史認識で鬼の首を取ったように絡みつく朴槿恵のペースにはまらない事を意味している。円安で韓国経済は息も絶え絶えの状況にあり、首脳会談の必要性は韓国側に生じている。


一方で、対中外交も打開の道は見えない。中国は公船の領海侵犯を繰り返し挑発しており、そのスタンスは日本に尖閣問題の「棚上げ」を迫る形である。。領有権を主張する日本外交にとって「棚上げ」は、領有権のあいまい化をはかる中国ペースにはまる以外の何物でもない。


共同通信が8日、日本政府が先月、中国政府に「領土問題の存在は認めないが、外交問題として扱い、中国が領有権を主張することは妨げない」との打開案を提示していたとの見事なスクープを報道、政府は否定したが、火のないところに煙は立たない。


アヒルの水かきを垣間見る思いがする。しかし日中首脳会談も、中国側にその必要が台頭しつつある。経済の悪化で途絶えている日本からの投資再開が必要となる様相を呈し始めたからだ。


習近平も朴槿恵も就任以来、政治の力点を国民の反日感情を率先して煽ることで人気を得ようとするポピュリズムに置いている。これで国民を長期にわたって牽引出来ると思ったら大間違いだ。なぜなら国内の不満を外国に向ける政治は邪道そのものであり、現実逃避に他ならないからだ。必ず馬脚を現す。


こうして首脳会談実現への道はまさに“我慢比べ”の状態で推移するだろうし、安倍にとっては首脳会談を急ぐ理由もない。


むしろ尖閣問題が惹起(じゃっき)している日米安保体制の再構築へと当面かじを切るべき時だろう。その象徴となるのが集団的自衛権の行使に向けた憲法解釈の大転換だ。緊迫の度合いを増す極東情勢は改憲による集団的自衛権行使などという悠長な対応を許す状況にはない。


同盟国への攻撃を自国への攻撃とみなして防衛する集団的自衛権は国連憲章で認められている世界の常識だ。安保条約もその上に成り立っており、日本側がこれまで勝手に憲法解釈で出来ないとしてきただけだ。米艦、米国へのミサイル攻撃を、迎撃できる位置にいながら無視した場合、日米同盟は維持できなくなるのが実態だ。


集団的自衛権問題など全く知らない米国特派員が「ジャップが無視した」と報ずれば、一巻の終わりなのだ。中国、北朝鮮の挑発の現実は、攻撃されなければ分からない平和ぼけの日本が“自粛”して済む状況などとっくに通り過ぎているのだ。


選挙結果を受けて安倍は秋にも集団的自衛権容認のための憲法解釈変更に踏み切る可能性が強い。それに至るシナリオは次のような流れをたどる公算が大きい。


まず安倍は既に第1次内閣で集団的自衛権容認の答申を出した「安全保障の法的基盤再構築懇談会」から秋にも容認の再答申を受けることになろう。その上で歴代の内閣が「主権国家の当然の権利として集団的自衛権は有しているが、憲法9条の下で許される必要最小限度の範囲を超えている」としてきた解釈を変更する。


この解釈変更を将来、政権交代で再変更されないように来年の通常国会に「国家安全保障基本法案」を提出成立を図る。


集団的自衛権の問題は、かつての冷戦時代は与野党の決定的な対立点だったが、極東における安全保障環境の変化に伴い、民主党も容認論が増えるなど国会の様相も変化している。


こうした中で公明党代表・山口那津男だけが「断固反対」と、かつての社会党のような発言を繰り返している。本人はブレーキ役をもって任じているが、極東情勢を理解していない上に、古い。冒頭述べたように衆院に続いて参院でも公明党は不要になっていることに気付いていない。


自民党が72議席取れれば単独過半数で連立は必要なくなるし、取れなくても数議席足りないだけだ。自民党に主張が近い維新だけでも8人前後の陣容が生ずることになり、これは別動隊として動く可能性が濃厚だ。それに選挙後の常で無所属や諸派を取り込めば72議席に達する可能性も皆無ではない。


山口が意気込むほど公明党の存在は大きくなくなったのだ。自民党にとって公明党との選挙協力は不可欠だが、総選挙は当分ない。多少の亀裂は修復可能だ。この結果、安倍は安保政策の大転換で優位な立場に立つことになるのだ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月18日

◆選挙後は「改憲」より経済重視路線が賢明

杉浦 正章



容易でない参院“3分の2”確保
 

首相・安倍晋三がついに「9条改憲」を明言したが、参院選挙後改憲が喫緊(きっきん)かつ最大の課題となるかというと疑問である。なぜなら現下の選挙情勢では自民・維新・みんなの改憲勢力で改憲に必要な参院議席3分の2を確保することは不可能となったからだ。


改憲のためには公明党か民主党の改憲派を取り込むしかないが、公明は説得に時間がかかる。民主党改憲派を取り込めば話は早いが、流動的な要素が多すぎる。いきおい水面下での多数派工作となり、容易に浮上はしまい。


加えて、秋には消費増税の最終決断を始め、近隣諸国との関係改善、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の詰めなど超重要課題がひしめいており、流動性の高い改憲問題に専念出来る余裕は少ない。国民の期待も景気回復にある。従って安倍は当面、経済最重視路線を選択せざるを得ないし、そうすべきである。


安倍の改憲戦略は、実は橋下の慰安婦発言が狂わせたのだ。安倍が政権発足前後から改憲に意欲を示したのは、衆院と同様に参院でも自民と維新で改憲勢力を達成できると読んでいたからだ。維新が躍進を続け、参院での改憲勢力で3分の2の162議席を確保出来るという判断があった。


しかし国政政治家にはほど遠い大阪のあんちゃんの発言は、維新の躍進ムードに冷水をかけ、とても改選議員だけで改憲に必要な101議席を確保出来る情勢ではなくなった。


筆者の分析では自民党が69前後、維新7前後、みんな8前後であり101議席にはほど遠いのだ。周辺によると安倍は慰安婦発言前までは維新が20議席はいくと踏んでいたようだ。安倍はその改憲戦略を根本から見直す必要に迫られることになった。


一見すれば、安倍は改憲への強気の姿勢を維持しているように見える。15日遊説先で「われわれは9条を改正し、その(自衛隊の)存在と役割を明記していく。これがむしろ正しい姿だろう」と選挙戦に突入して以来初めて、「9条改憲」に言及した。


これまで安倍は憲法改正の発議要件を緩和する96条改正には意欲を示してきたが、改憲の核心に言及したのだ。改憲勢力が足りないことは分かっているのになぜ強気なのだろうか。発言の狙いは改憲の旗を掲げ続ける意志表示であろう。いま断念しては成るものもならない。安倍は「改憲する者この指とまれ」と表明しているのだ。


その証拠に民主党分断を意図した発言を繰り返している。「民主党にも条文によっては賛成する人がいる」と述べたかと思うと、 「政治は志(こころざし)だから、民主党の議員も党派ではなく、この歴史的な大事に自分の信念、理念に沿って参加してもらいたい。党の枠組みを超えて呼び掛けたい」とまで言い切った。

呼びかけるということは民主党分断に他ならない。酢だのこんにゃくだのを繰り返す公明党にもけん制となる。


そこで改憲の焦点は、改憲勢力プラス民主党改憲勢力か公明党かという図式になる。選挙情勢から見ると民主党は20議席を割り込み17議席前後とみられる。しかし非改選議席の貯金が42議席あるからそれでも参院で60議席近くの議席は確保出来そうである。この中で改憲派が何人いるかだが、それぞれ主張に硬軟はあるが20議席はいるものとみられている。


民主党の改憲派が離党するか、執行部が離党を恐れて党議拘束を外せば話は手っ取り早い。自民、維新、みんなで150議席弱はあるから民主の20議席で改憲の162議席はクリアできることになる。しかしこの捕らぬタヌキの皮算用がうまくいくかどうかは、自民党の分断工作の成否にかかっている。


一方で、公明党は話の持って行きようが取り込めるかどうかを決める。問題は代表・山口那津男の創価学会意識の絶対平和主義がブレーキをかけていることである。調整は簡単ではない。同党は「加憲」なる改憲にかたむいているが、山口は9条に第3項を加え自衛隊の存在を明記するなどと述べている。


現行憲法の抱える矛盾を9条に書き加えるような支離滅裂な構想であり、自民党の改憲案とは天と地ほどの違いがある。話し合いに入ったとしても調整には手間取り、いつのことになるかは判然としない。


話が付けば公明党の20議席プラスでやはり162議席はクリアできる。安倍が唱えている、改憲の条件を96条の3分の2から過半数に変える構想も、公明は国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の憲法3原則を3分の2にすれば、後は柔軟に対処する姿勢を示している。


安倍もこれに乗ることもやぶさかでない考えだ。しかし公明の酢だのこんにゃくだのに対処して一定の方向を打ち出すのは容易ではないし、早くて1年2年はかかるだろう。要するに、民主分断は不透明、公明説得は時間がかかるというのが実情だ。


一方で経済界は、改憲など望んでいない。日経によると各社調査で改憲勢力が3分の2に届かぬという報道をはやして株価が上昇している。背景には安倍が改憲でなく景気に全力を傾注せざるを得ないという“読み”がある。株屋の肩を持つつもりはないが、アベノミクスはこれからが正念場だ。


これに水をかける消費増税の判断も秋には強いられる。安倍政権は参院での3分の2確保が容易でない以上“改憲三昧”はほどほどにして、今そこにある問題処理に専念すべきであろう。焦点の民主党分断のめどが立ってから、本格的な動きをすれば良い。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月17日

◆参院発長期萎縮に「ねじれ解消」は不可欠

杉浦 正章



“陰謀の府”にようやく光明
 

通常国会会期末に朝日もその対極の産経も社説で「こんな参院いらない」と書いた。衆参ねじれが巻き起こした国会の体たらくを批判してのことである。しかし参院選挙でそのねじれが解消しそうになると、朝日は社説で「ねじれの解消で、国会運営はスムーズに運ぶようになるかもしれない。


半面、与党が暴走しても、これを止めるのは難しくなる。しかも、この与党優位の態勢が少なくとも3年続くという見方もある」と口惜しげだ。17日付の社説でも「ねじれは問題か」とぶつぶつ論旨のさだまらぬご託を並べている。


最近こうした論調を真似してか民放コメンテーターや評論家らが、しきりにねじれの方がいいと言いだした。「衆院に対する抑制が利く」のだそうだ。しかしそんなことは中学校の教科書に書いてあるので、言っても決して偉くないのだ。


低レベルのコメンテーターには理解の範囲を超えるのだろう。問題は参院が憲法の想定する「良識の府」であるかどうかなのだ。むしろ民主党によって政権抗争のための「陰謀の府」とされてしまったことにすべての原因がある。その中心人物が参院議員会長・輿石東だ。


もともと憲法はねじれを想定した上で二院制にした。参院が大所高所から衆院の独走にブレーキをかける存在と位置づけたかったからだ。戦後は緑風会に代表される良識派が主導権を握っていたが、米ソ冷戦に伴う自民党と社会党の対立激化によって政党化が進み、衆院と変わらぬ対立構造となった。


長期自民党政権の衰退もあって時の政権を作る衆院と逆の政治構造が参院に生まれ、これをねじれと称するようになった。最近では1989年の参院選で橋本内閣時代がねじれたのが始まりである。


その後1998年の小渕政権、2007年の安部政権、2010年の菅政権、2012年の安倍政権と4回にわたりねじれになるケースが生じた。


ねじれの最大の弊害は大胆な政策が打ち出せず、政治が萎縮する傾向を伴うことである。89年以来の四半世紀はねじれがもたらす萎縮の時代であった。官僚の間では「何を出しても通らないからやめとこう」が合い言葉のようになって定着し、戦後の日本を支えた意欲あふれる行政が停滞、事なかれ主義が横行した。


官僚を押さえ込んでリーダーシップを発揮する政治家も存在しなくなった。この国政の萎縮が、国民にも伝搬して陰うつな空気が日本を覆った。とりわけ2007年以降のねじれは質の悪いねじれであった。民主党が政権奪取の手段としてねじれをフルに活用し始めたのだ。その旗振り役の先頭に立ったのが輿石だ。


これもまた悪役の権化小沢一郎と手を組んで、2008年には日銀総裁人事にクレームを付けた。日銀総裁人事は戦後はじめてたなざらしとなり、首相・福田康夫は結局退陣に追い込まれた。この“成功”に味を占めて民主党はことあるごとに、参院を政権揺さぶりのとりでとして自民党政権を追及、ついに政権交代へと追い込んだのである。


輿石は民主党内で英雄的存在にのし上がり「参院のドン」として、権勢をふるうようになった。そして政権が自民党に変わってからも輿石は、生活代表となった小沢と連携をとりつつ、政権揺さぶりに参院をフル活用した。通常国会終盤にはこの姿が全容を現した。


まず民主党が賛成して成立させた定数是正法に基づく衆院の区割り法案を、採決をしないまま長期にたなざらしにして、結局自民党が衆院における3分の2の多数で成立させざるを得ない状況に追い込んだ。さらに悪質なのは参議院外務委員長・川口順子に対する問責決議可決だ。


訪中した川口は日本の国益を代表して尖閣列島の領有権を会議で主張するために帰国が一日遅れたが、これがけしからんとして問責で解任した。


極めつけは安部への問責決議を小沢と手を組んで成立させたことだ。だれがみても問責に値するようなことはやっていない時の首相の存在を、参院として否認したのだ。いずれも横暴かつ理不尽なる参院の突出である。


さすがの朝日もこれには怒った。社説で「民主党をはじめとする野党は、判断を誤ったとしかいいようがない。国会は、国の唯一の立法機関と憲法にある。それなのに、国民の生活や未来にかかわる法律づくりよりも、政争にうつつを抜かす。そんな参院ならば、もういらない」と切って捨てたのだ。


朝日は脱原発につながる電事法改正案の廃案になったことが悔しいのだ。朝日は脱原発につながらないことはすべて怒るのだ。


これだけ解説すれば中学の教科書で教わったことを金科玉条にするコメンテーターや、自民党アレルギーの評論家の“スジ論”がいかに荒唐無稽なものかが分かるだろう。


参院は良識の府どころか怪僧ラスプーチン率いる陰謀の巣窟と化していたのである。ようやくアベノミクスを掲げて安部が日本の「参院発長期萎縮」にけりを付けようとしており、これに国民がもろ手を挙げて支持しようとしているのは当然だ。


「自民党の独裁政権になる」との選挙妨害じみた批判まで登場するが、戦後の自民党政権時代に独裁政権が生まれたか。むしろ社会、共産両党の目指す社会主義1党独裁政権を辛うじて食い止めたのが実態だ。


米国など先進諸国にもねじれはあるが、政党が一院を政権奪取のための野望に使う国は皆無だ。米国でも大統領のイニシアティブが議会制度に埋め込まれていることや、議会での審議を通じて合意形成を図るという志向性が政権政党と野党の間で共有されており、ねじれ状態が審議の混乱に直結しにくい構造だ。


このレベルに参院が達するには、まずねじれを解消させ、陰謀の府から離脱させることが決定的に重要なのだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月16日

◆参院選半減でも辞めぬつもりの海江田

杉浦 正章

 

20議席割っても続投説
 

この期に及んで民主党代表・海江田万里が自らのポストにしがみつこうとしている。周辺からは「20割るかどうかがポイント」などと辞任の判断を半減以下に設定する観測気球が上げられ始めている。「海江田さんだけの責任でなく鳩山、菅、野田さんの責任も大きい」のだそうだ。


それほどまでにしがみつきたい座であるかどうかは疑問だが、実際には民主党は党首の首をすげ替える活力さえも失せてしまったような状況である。しかし改憲をめぐり自民党から分断工作が行われる可能性や、小沢一郎の再編の思惑もからみ、参院選後の混迷は避けられまい。


海江田はかつて2月24日の党大会後の記者会見で、参院選に敗れた場合の責任について、「代表にしがみつく気は毛頭ない。刀折れ矢尽きたと思った時は潔く代表を辞める」と述べ、辞任する考えを明言した。参院選の勝敗判断についても「1人区で何人とれるかだ」と分析していた。


その「刀折れ矢尽きた」状況は、紛れもなく今である。これまで3回の参院選で全国区では19,20,16議席を獲得したが、今回は一ケタ台必至。しかも海江田の指摘した1人区当選の可能性は限りなく0に近い。


「刀折れ矢尽きた」どころではない、内堀も外堀も突破され、城は燃えている状態だ。普通なら「殿お覚悟を」と家来が自刃を促す場面である。


しかし本人は最近「参院選後の進退などの話は一切言わないことにしている。私が潔い人間だなんて余計なことは言わない。危ない、危ない」と、手のひらを返すように、進退に煙幕を張るようになった。


昨年就任時に作った「粉骨碎身全此生」という漢詩を再び持ち出して「身を粉にして民主党再生のために自分自身の生をまっとうしようということでございます。もう今の私の心境はこの詩の中につきております」だそうだ。


むしろやる気なのだ。党内の動きについても「今はもう離党しようなどという人は誰もいない。よくまとまっている。党内の不穏な動きなんか全然気にならない。前原さんや野田さんとも一緒に街頭演説をやった」と団結ぶりを強調している。


殿は「お覚悟」から逃げようとしているのであるが、これが許されるのだろうか。いくら歴代党首の体たらくが凋落(ちょうらく)の原因だからといって、代表が半減以下の責任をとらずにすむのだろうか。冒頭述べたように海江田側の布石は20議席を確保出来るかどうかだ。


「20を多少割っても辞めない」という説すら出ている。「18議席なら非改選42と合わせて60議席になるから、辞任はパス」なのだそうだ。全く数合わせの逃げ口上だが、これで良しとする雰囲気もある。


海江田側が守り抜けると踏んでいる背景をみれば、第1が衆院選で脳しんとうを起こしたままの状態が継続して、危険極まりない2度目の脳しんとうが起きても、病気の体からは根本治療のエネルギーが湧き出ないところにある。


加えて代表に手を挙げる候補が、いまのところ元国土交通相・馬淵澄夫くらいしか見当たらないのだ。馬渕では海江田の方がいいと言うムードがある。永田町には、やれ「野田新党」だの、「前原離党」だのといったうわさが絶えないが、まだ海の物とも山の物ともつかない。
 

前原誠司は、一時維新共同代表・橋下徹との親密な関係から合流の核となるとみられていた。当初橋下は改憲派の前原を取り込めば、公明党抜きで参院の3分の2を確保出来、一挙に改憲へのうねりを生じさせられると踏んでいたのだ。


ところが慰安婦発言で馬脚を現して、維新は低迷、6議席がいいところだ。前原もとても合流できるような状態ではないと判断しているのだろう。


しかし、民主党は前門に虎、後門に狼が立ちふさがっている状態ではある。虎とは首相・安倍晋三だ。安部は、6月19日ポーランドで同行記者団に「3分の2以上の改憲議席を1回の参院選で取るのは不可能だ。日本維新の会やみんなの党だけでなく、民主党の中にも条文によっては賛成する人がいる」と述べている。明らかに改憲で民主党分断を狙う発言だ。


一方で狼は生活代表・小沢一郎だ。地元岩手でも議席喪失必至のていたらくで、毛も抜けて色つやも衰えた老いた孤狼だが「選挙後民主党は分裂する」と予言、腹心の参院議員会長・輿石東などを使って民主党分断し、あわよくば新党代表を狙っているのだ。


しかし、ねじれをフル活用してのし上がってきた輿石は、ねじれ解消で一挙に神通力を失いそうであり、責任論もくすぶり始めている。従って、小沢が思うようには動くまい。
 

こうして選挙後の政局は、海江田の去就をめぐって、様々な思惑が交叉しそうな雰囲気となっている。しかしるる述べてきたように、党全体が総選挙と参院選の連続アッパーカットをくらって、再起も分裂も出来ないような長患いの体たらくに陥っており、海江田が辞任表明しない限り暫く寝込んだままという状態になるかもしれない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月12日

◆安部は石破幹事長を留任させるしかない

杉浦 正章


〜内閣改造〜


“消費増税危機”の政局に不可欠
 

秋の内閣改造人事の焦点は何といっても幹事長・石破茂の処遇の一点に絞られる。自民党圧勝の流れが変わらなければ昨年の総選挙に続いて2度にわたる国政選挙を勝利に導いた最大の功労者である。


首相・安倍晋三がナンバー2叩きで下手な人事をすれば、虎を野に放つか平地に波乱を起こす結果を招くことは言うまでもない。安倍にしてみれば石破の処遇はもっとも優遇すべき人事であり、そのポストは幹事長留任しかあるまい。「石破農相」説もあるが、石破封じ込めの嫌がらせ人事をやっている余裕はない。


ところで本当に改造が行われるかだが、自民党役員の任期が9月末に切れるのだから、行われるのは当然だ。歴代自民党政権はほとんど自民党役員人事と連動させて内閣改造をしてきた。官邸筋によれば、既に安倍も石破に対して改造する可能性を示唆しているといわれる。


その人事だが、まず誰の手で国政選挙を連勝に導いたかが判断材料となる。もちろんアベノミクス人気と険悪化する極東情勢に右向きのかじを切っている安倍の人気によるところが大きい。


半年間の政治は「政高党低」であり、幹事長が目立つことは少なかった。総選挙も都議選も参院選も安倍への高支持率に支えられたところが大きい。


逆に石破は数々の地方首長選挙で敗北している。安倍周辺に、「地方首長選ではアベノミクスが争点にならないから敗北は幹事長の責任」とする見方があるが、これは近視眼的な見方の最たるものだ。


もちろん負けるより勝った方がいいが、地方の首長選は圧倒的強みを持つ現職への挑戦のケースが多く、幹事長の責任とするのは酷だ。また国政選挙圧勝が安倍の人気に支えられているからといって、安倍はこれ以上厚遇しようがない。その次の功労者は幹事長であることは言うまでもない。


安倍はその焦点の幹事長人事で何を考えているかだが、その前に選挙後の政治を展望する必要がある。安倍は9月末に改造を断行して臨時国会を召集し、「成長戦略実行国会」と位置づけると同時に、新たな成長戦略を推進する構えだ。改造内閣の最初にして最大の課題は来年の消費増税を断行するかどうかの1点に絞られる。


法律では消費税は2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられる予定であり、その最終判断は秋に首相が4月から6月の景気動向を見て決めることになっている。


首相周辺からは、はやくも安倍の経済政策ブレーンで内閣官房参与の浜田宏一が「本当に景気が良くなったら上げることができるが、現実的に見て心配だというときには延期する考え方もある」と述べるなど慎重論が出始めている。


この発言は安倍の本音が政権維持のためにも増税を延期したいところにあるということを物語っており、安倍との“あうんの呼吸”があるように見える。


しかし消費税法はその成立の経緯から言って“増税先にありき”であり、政権の恣意的な事情で先延ばしすることは想定していない。「増税からの遁走」は、これまで消費税実施を支持してきたマスコミを敵に回し、政権の信用失墜につながる要素が大きい。当然自民党内もざわつく。


野党は増税を断行したらしたで、またしなければしないで安倍を追及する。要するに消費増税の是非は、過去の首相があえなく潰えたように、もてはやされてきた安部政治が迎える最大の危機となりうるのだ。引くも地獄進むも地獄となる。国論は割れているからいずれの選択でも支持率は低下する。


だいいち自分の政権維持のための「遁走」では、余りにも見え透いている。こうした中で増税を数年遅らせて一挙に10%にする構想や、3%引き上げを予定通りに実施して、その後は毎年1%ずつ上げる構想などがささやかれているが、いずれも姑息(こそく)さが目立つ。


消費税はよほどのことがない限り法律通り実施すべきだ。日銀総裁・黒田東彦による12日の「景気回復宣言」は明らかに選挙と連動させようとする官邸の思惑と、やはり“あうんの呼吸”が感じられるが、消費増税には大きくプラスとなる。


こうした情勢が想定される中での改造人事となるのだ。るる消費税について述べてきたのは、安部は党内に敵を作っているひまなどないということだ。通常政治家も企業もトップはナンバー2を叩くことが自らのポスト維持に欠かせない。


安部は元外交官・田中均批判で意外な狭量さを垣間見せたが、よもや幹事長人事でそれを見せることはあるまいと思う。石破を外したらどうなるかと言えば冒頭述べたように不必要な波乱要因を作ることになる。石破は権力闘争が苦手だが、幹事長ポストは「安倍後継」として他の候補に圧倒的な差を付けている。


もともと昨年の総裁選で党員票のトップに立ったことが物語るように、党員の石破支持は厚い。この基盤は幹事長ポストで一層固められた要素が大きい。波乱必至の秋の政局をにらんだ場合、幹事長留任は欠かせない。人事のイロハのイだ。


ただ一つだけ石破も納得するであろうポストがある。それは外相ポストだ。現在の外相・岸田文男の外交を半年見てきたが、対中関係も韓国との関係も悪化させこそすれ、何らの打開策も見いだせない。


外務官僚の操り人形になっており、政治家としての力量が全く見えない。ここで石破を外相にすれば大きく事態は変わる気がする。首相を目指すなら外相ポストは悪いものではない。


しかし問題がある。安部は外交を自分でやりたいのだ。日経によれば安部は、事務次官・斎木昭隆と就任以来63回も会っている。官房長官・菅義偉が66回だからいかに“官邸外交”を重視しているかが分かる。したがって、改造人事の核は「石破幹事長」を軸に展開するだろうし、安部にとっても政権安泰に欠かせない人事だ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月11日

◆「共産躍進」は一過性の“漁夫の利”

杉浦 正章

  

「自共対決時代」にはならない
 

70年代に自民党副総裁・川島正次郎が唱えて、単なる幻想に終わった「自共対決」の時代が到来するのだろうか。都議選で民主党を抜く第3位。参院選でも選挙区で12年ぶりに議席を獲得することが確実。確かに同党の規模から言えば躍進といえる傾向が目立つが、政治の潮流として定着するかと言えば、しないだろう。


投票率低迷と、毛嫌いされている民主党と、第3極の馬脚露呈がもたらす“相対性選挙原理”による一時的現象だ。漁夫の利で伸びているだけだ。
 

まさに自民党旋風だ。勢いが止まらぬまま投票に突っ込むだろう。この結果自公での過半数突破は確実。日本の政治にとっての悪夢の時代であった衆参ねじれは解消される。


自民党は単独で70議席をうかがい、場合によっては単独過半数の72議席も夢ではない状況が生じている。ひとえに3年3か月の民主党政権の体たらくに対する、国民の“怨念”が総選挙を経てもまだおさまらないことが原因である。


その民主党は44議席から半減以下の10議席台への転落もこれまた「夢ではない」状況だ。維新もやっと化けの皮がはげて低迷。第三極は維新とみんなの共食いで見る影もない。


みんなの党代表・渡辺喜美は「みんなの選挙は終盤に尻上がりでぐんと伸びるのが傾向」とまだ強がっているが、人生あきらめが肝心だ。
 

こうした中で気勢を上げているのが野党で共産党だけだ。東京、京都で優位に立ち、神奈川、大阪で滑り込みセーフの感じ。選挙区では01年以来12年ぶりの議席の獲得が確実だ。5議席はいくかも知れない。比例区も3議席は確実で合計10議席も「夢ではない」。


一体どうしてこうなったのであろうか。都議選でも躍進している。議席を8から17に倍増させ、民主党を抜いて第3党に躍進した。「自共対決」と自民党をフルに活用したキャッチフレーズが効を奏した結果だ。


その「自共対決」だが、川島が予測したのは冷戦や泥沼のベトナム戦争と米国の敗北など共産主義イデオロギーの最後の閃光(せんこう)を背景としている。議席数では問題にならなかったが、一定の訴求力がある見通しであった。しかしソ連邦の衰退、89年のベルリンの壁崩壊に至ってこの「自共対決」などという構図は潰え去った。


現在再び共産党が唱えだしたのは、こうした時代背景などは全く存在しない。単なる選挙戦術の側面が濃厚だ。強い政党に対して、そのすべてを否定するアンチテーゼが議席となって現れているのに過ぎない。


なぜ奏功するかと言えば、反自民党の受け皿がないからである。まず民主党が毛虫のように嫌われて中道への信頼もなくなった。勢い安倍右傾化政権と最左翼の共産党の対立の構図が目立つようになった。共産党はアベノミクスにも原発再稼働にも何でも反対だから、一定の層には通用しやすい主張だ。


一定の層とはもちろん共産主義者ではなく、浮動票でもない層だ。数の上では多くはないが政治には関心が強く棄権はしない。自民党と聞いただけでじんましんが出るといった有権者だ。


この層はこれまで民主党に投票してきたが、誰が見てもダメ政党では、投票先がない。面白かった維新も軽蔑すべき存在となった。従って投票に行くとすれば共産党ということになる。
 

この層の存在が働いた理由が低迷した投票率だ。都議選の投票率は43.5%に過ぎず、前回の54.49%から10%以上も下落し、戦後2番目の低さだった。この結果、低投票率の中で共産党の相対的得票率が高まったのだ。アインシュタインではないが“相対性選挙原理”が働いたのだ。


共産党都議の半数が最下位を争っての当選であったこともこの傾向を物語っている。参院選はどうかというと、これも戦後まれに見る低投票率となりそうである。大阪と神奈川で最下位争いで当選しそうなのも似ている。食われているのは民主党であり、神奈川では共産候補が民主党支持層の8割を固めたと言われている。
 

このように皮相的に見れば「自共対決時代」とか「政治の左右分極化」といった表現が可能となるが、長く定着する流れにはなるまい。今の共産党は躍進自民のアンチテーゼとしての存在でしかない。


しかし、首相・安倍晋三はまさに今が花の盛りであり、今後は徐々に散ってゆく運命をたどる。歴代政権をつぶしてきた消費税の引き上げが来年、再来年と2回連続で行われる。安倍人気はまだ消費税を引き上げていないから維持されているのであって、いったん引き上げればほぼ確定的に政局と連動する。


1回目は逃れても2回目は相当きついだろう。これを契機に野党は息を吹き返すだろう。野党間の離合再編も進むことが予想される。流れは中道新党の糾合を目指す可能性もある。そうした中で共産党が現在のような漁夫の利を維持できる可能性は少ないのだ。従って共産党の一見躍進風に見える流れは一過性であろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年07月10日

◆安倍内閣は終戦日靖国参拝を思い止まれ

杉浦 正章


日韓改善に道筋をつけるときだ
 

予想される参院選挙での安倍政権圧勝が、戦後まれに見るほど悪化した対韓外交にどう作用するかだ。総選挙に次ぐ勝利を背景に首相・安倍晋三が右寄りの持論を展開して関係悪化を招くのか、逆に多数を背景にした余裕をもって抑制的に対応するのか。


安倍自身難しい判断を迫られている場面だが、もうそろそろ本格的に関係改善に取り組むべき時だ。首相としての発言は重い。この際持論を封じて、極右の女性評論家などは遠ざけ、歴史認識は一切発言せず、少なくとも8月15日の靖国参拝は行わないことだ。大統領・朴槿恵が訪日出来るような環境を整えるべき段階に入ったと思う。
 

それにつけても朴槿恵は「長屋のおかみさんか」と思いたくなる。隣の悪口を隣近所に言って回り、まるで日本を歴史認識をてこに「韓中共通の敵」「韓米共通の敵」に仕立て上げようとしているかのようである。


人気韓流ドラマ「百年の遺産」でも韓国の姑(しゅうとめ)の嫁いびりは、陰湿かつ露骨で目を背けたくなるような場面が多かった。日本は「嫁」ではないが、朴槿恵の“いびり”かたは執拗かつ露骨かつ陰険だ。


訪米すればオバマとの会談で、米国の信頼すべき同盟国日本に言及して「日本は正しい歴史認識を持つべきだ」と同調を持ちかけた。余りの外交常識の無さに、さすがのオバマも返答に窮して相づちも打たなかったという。


「大成功」と自画自賛する訪中でも常識逸脱の言動をとった。なんと習近平に旧満州のハルビン駅頭で伊藤博文を暗殺した安重根の記念碑設置を認めてほしいと要請した。韓国にとっては英雄かも知れないが、国際社会から見れば単なるテロリストの銅像を建てさせよと言ったのだ。


すでに銅像は2006年に、韓国人によってハルビン市に4.5メートルのものが建設されたが、中国当局は「外国人の銅像建設は認めない」として撤去した。これをまたぶり返そうとしたのだ。しかし中国政府は、安重根の評価に関しては反日勢力を刺激し、国内の社会不安を増大させるとして、積極的ではない。


実際にはテロリストを評価する銅像を建てれば、国内情勢からみて、いつ習近平ら共産党政府要人に弾が飛んでくるか分からないというのが、本当の理由のようだ。朴槿恵は米中首脳もたじろぐような「反日」の言動を行ったが失敗したのだ。
 

このように朴槿恵は、国内での不人気を対日カードを切りに切って挽回しようとしているように見える。これは、習近平の尖閣活用と似て、余りにも安易な人気取り政策であり、必ず馬脚を現す邪道である。日本も黙ってばかりはいない。


政府は6月24日、韓国と結んだ通貨交換(スワップ)協定に基づく融資枠のうち、7月3日に期限を迎える30億ドル分の契約を打ち切った。韓国経済は円安がたたって息も絶え絶えとなっている中で、金融不安につながりかねないことになった。相当痛い仕打ちであったはずだ。首相官邸主導で踏み切ったと言われる。


官房長官・菅義偉は、「結果として、日韓の外相会談が早まったんじゃないか」と述べ、韓国が困惑して会談に応じたとの見方を示唆した。そもそも根底には韓国は経済や金融危機になると日本が手をさしのべてきたことへの甘えがあるのだ。


韓国外相・尹炳世(ユンビョンセ)は外相・岸田文男との会談で「歴史問題は細心に取り扱われないと、民族の魂を傷つける」と述べたがその通りだ。まず自ら大統領に「安重根の話など持ち出さないように」と説得すべきだ。


確かに歴史認識の問題は、下手に対応すると国の存亡に結びつくことがある。かつて英国とフランスは結託してスペインを歴史認識の問題で追い詰めた。インカを滅ぼしたことを非難し続けたのだ。この論争に敗れて、大国スペインは見る影もなく凋落(ちょうらく)した。


「民族の魂」が失われると、国は滅びるのだ。お互いに歴史認識には深入りしないことがまず重要なのだ。


8月15日の国会議員らによる靖国参拝は、選挙直後ということもあり、また自民党の人数が増えることも相まって、前回の168人を上回るのではないかと思われる。政府がこれにストップをかけることは困難だし、必要ないが、首相はもちろん閣僚の参拝は思いとどまることが適切だろう。


閣僚が年に2度も3度も参拝して、近隣諸国との関係を悪化させて、昔の道をたどるようなことを、若くして特攻で死んだ英霊が喜ぶとでも思ったら大間違いだ。安倍は「英霊に尊崇の念を現すのは当然。わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」などと開き直っているが、英霊は絶対に喜ばない。


辛気くさい宮司などを喜ばせて何になる。ここは国会議員ら靖国マニアに任せ、自らも下野してからの参拝を「楽しみ」にして、関係改善への道筋をつけるべきだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月09日

◆安倍は規制委の人員を増やし効率上げよ

杉浦 正章


〜原発再稼働〜


新潟知事はパフォーマンスせず大局を見よ
 

原子力規制委の新規制基準の施行を受け、4電力会社が計5原発10基の再稼働に向けた安全審査を申請した。いずれも基準合致が有力視される原発ばかりであり、半年後には第一号の再稼働が実現しよう。


福島事故以来2年4か月、反原発運動に阻害されたエネルギー萎縮の風潮を乗り越え、安全配慮の再稼働によるエネルギーミックス時代の幕開けとなる。参院選に不利になるにもかかわらず首相・安倍晋三も幹事長・石破茂もあえて早期再稼働実現を明言しており、選挙結果がすべてを決着させることになる。


しかし規制委の審査方針は逼迫した電力事情を考慮に入れておらず、余りにも遅遅たるものがある。安倍は第三者委員会の性格上審査に一切の関与をすべきではないが、特例措置で支援の専門家の人数を増やし早期再稼働にこぎ着けるべきである。
 

なぜ遅遅たるものかと言えば、1原発の審査に何と半年もかけるのである。80人体制で3チームに分けて審査するから3原発が稼働するのに半年かかる。全原発をクリアするのには8年3か月もかかる計算になる。専門家によると規制委の基準をクリヤ出来そうな原発は50基のうちの3分の2はあるという。


33基前後の原発が再稼働可能となる計算だ。規制委は伊方と玄海の両原発審査を先行させる方針とみられ、トップ合格が最有力視される。規制委はできる限り効率第一を心がけるべきだ。電力会社も規制委も既に大まかな取捨選択の判断は出来る状況と思う。


従って廃炉になりそうな原発は全部後回しにして、クリア出来そうなものから審査にかけるべきことなどは言うまでもない。


それにしても審査に時間がかかりすぎる。経団連会長・米倉弘昌は「もう少し人数を拡充するなど安全審査を行う仕組みが大切」と述べている。


自民党幹部筋も「サボタージュではないか」とまで批判している。年間にアラブなどに流出する国富は4兆円に達しており、電気料金値上げで中小企業や国民はあえいでいる。ここは何としてでも審査の効率化を図るために、専門家を動員する態勢を国が作るべき時ではないか。


これに対して規制委委員長・田中俊一は増員に応じない方針だという。専門性の高い審査を出来る職員が限られていることがその理由のようだ。しかし、専門家は鉦(かね)と太鼓で集めればいくらでもいる。田中は「審査の中で魂が入るかどうかで真価が問われる」と述べているが、規制委の遅延で国のエネルギーが破たんしては、それこそ「仏作って魂入れず」ではないか。


安倍は知恵を絞って専門家をかき集めて規制委に投入すべきだ。年間4兆円の国富流出を思えば人件費などは安いものだ。
 

一方、規制委の厳正なる科学的な判断とは別に、最終的には政治家の判断と、法的には求められていないが自治体の長の判断が必要となる。産経新聞は安倍と官房長官・菅義偉が8日の街頭演説で原発再稼働に触れなかったことを取り上げ、「争点隠し」と批判している。これは産経にしては珍しい誤判断だ。


安倍はテレビでは再稼働を明言しているではないか。NHKでも「再稼働に向けて政府は一丸となって対応し、出来るだけ早期に実現したい」と言い切った。石破も「日本の経済に責任を持とうと思えば安全、安心が確認された原発の再稼働は避けて通れない。我々はそこから逃げることはない」と述べた。


これは昨年の選挙前の発言と同じであり、一貫して安倍政権が姿勢を変えていないことを意味する。おりから8日付日経の参院選序盤ツイッター分析では、「原発問題」が公示前の1日数千件が公示後は1万件前後に増加して各種の政策論議のトップに立った。


筆者が予想したとおり選挙の最先鋭の争点は原発だ。それにもかかわらず総選挙と同じで自民党が敗れる流れは生じていない。原発反対派のマスコミも政党も再び原発政策で敗れることになる。
 

総選挙の際もそうだったが、自治体の長がパフォーマンスで反原発を唱えてしゃしゃり出るケースが多い。政党まで作ってつぶれた滋賀県知事・嘉田由紀子がいい例だが、今回は新潟県知事・泉田裕彦だ。なぜパフォーマンスかと言えば東電社長・広瀬直己とのやりとりをテレビを入れて公開した。


その中で泉田は「年内の黒字を意識した申請か」と尋ね、広瀬が「意識している」と答えると「不安を解消するよりも、お金を意識したのですね」と勝ちほこったように問い詰めた。テレビ向けにはめたのだ。民放テレビは喜んで報道しても、心ある有識者は嫌らしいと看破したのではないか。


泉田に関して元産業省官僚の古賀茂明が、面白い情報をロイターに漏らしている。通産省の後輩である泉田に対して「包囲網が形成されている」というのだ。


「泉田裕彦は経産省で出来が悪くて知事に転出した。省内で出世できなかったことを根に持って抵抗している、というストーリーを経産省がこの1年間、ずっと流している」と述べている。さもありなんである。


泉田はなんと規制委の新規制基準にまで反対している。要するにに経産省絡みのものは皆反対なのである。江戸の敵を長崎で討つという大局欠如の偏狭さだ。知事は反対でも地元の市町村長は賛成派が圧倒的だ。15年の任期切れで4選を目指そうという姿勢がありありだが、市町村長が怒っており本当に包囲網が形成されれば選挙は危うい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年07月08日

◆集団的自衛権反対ボルテージ挙げる公明

杉浦 正章



一方では“妥協の布石”の「改憲言葉遊び」
 

自公で過半数という参院選予想の強まりに正比例するかのように公明党代表・山口那津男のボルテージが上がっている。首相・安倍晋三の安保政策の1丁目1番地である集団的自衛権の行使についても「断固反対」と言い切った。その発言を聞くと昔同党が社会党並みに左傾化していたころを思い出す。


これでは選挙後に連立が維持できるかどうか危ぶまれるが、そこは政権の蜜の味を知ってしまった政党。本心は自民党以上に政権にしがみつきたいのだ。そのための“妥協の布石”を各所にちりばめているように見える。


公明党ほどよく言えば「現実的な妥協政党」、悪く言えば「節操欠如政党」は珍しい。戦後の日本の政党は立党の基盤を日米安保条約の是非に置いてきた。公明党も結党以来一貫して「段階的解消」、「早期解消」を主張。74年には「即時解消」にまで至ったが、81年党大会では一転して、「日米安保条約容認」を表明した。


国会運営でもころころ変わる方針は枚挙にいとまがない。最近の公明党は、そのやり口が狡猾(こうかつ)になってきた。その最たるものが憲法改正について「加憲」なる、“言葉遊び”に等しい造語で対処しようとしていることだ。
 

加憲とは現行憲法は「いい憲法でありそのままにする」(山口)として、条文を書き加えようというのだ。例えば制定の時には思想そのものがなかった「環境権」の問題を付け加えるという。


しかしこの方式は矛盾撞着だらけだ。改憲の焦点9条を例に取れば、山口は「書き加えるとすれば3項だ。自衛隊の国際貢献の任務を書くか、自衛隊をいかに位置づけるかだ」と述べている。しかし現在の改憲論は「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」とする9条2項と、紛れもなく戦力である自衛隊の存在とが大矛盾を発生させて生じている側面が大きい。


これをそのままにして3項を書き加えればますます矛盾は拡大するとしか思えない。子どもでも「うそつき憲法」と批判できる。公明党が妥協のためには荒唐無稽な構想をも主張する証左である。だいたい国民を「加憲」などという言葉で欺いてはいけない。本質は改憲に他ならないからだ。
 

改憲の要件を衆参総議員の3分の2から2分の1に緩和する96条改正についても、最初は棒を飲んだように反対する姿勢だったが、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の憲法3原則を3分の2にすれば、後は柔軟に対処する方針であるという。これも安倍との“激突”は回避したいという思いの表れであろう。


そこで「断固反対」の集団的自衛権の行使だが、山口は「政府は長年集団的自衛権を認めてこなかった。これを変える必要は直ちには無い」と強調した。しかしこの発言ほど極東情勢の現実を認識していない例は珍しい。


中国が公船を次々に領海内に押し出し、北朝鮮が狂ったように核開発と弾道ミサイル製造に専念しているときに、何もしないで丸腰でいろというに等しい。


ひとたび有事となれば、国家間は「何でもあり」の戦いとなる。集団的自衛権の行使などはあり得ないと言うこと自体が机上の空論の最たるものとなる。中途半端なインテリの「平和は天から降ってくる」という議論そのままだ。
 

しかし山口発言にも巧妙かつ隠された“妥協案”があるような気がする。それは「我が国の領土領空領海での武力行使を認められているのが、個別的自衛権だが、集団的自衛権はその外、海外での武力行使を認めようとする考えだ」と強調して「海外」と条件を付けたことだ。


恐らく山口の念頭には中東などにまで自衛隊が米軍に追随して、共同作戦を展開することへの懸念があるのだろう。もともと日米安保条約はその適用範囲を極東としており、国会答弁ではその極東の範囲を「大体においてフィリピン以北、日本及びその周辺地域」と定義している。


この周辺地域には、韓国及び台湾も含まれると解釈されている。尖閣諸島も含まれることは当然だ。公明党は安保条約を認めているわけであるから、山口は気づかないであろうが、極東における日米共同の武力行使を認めることになる。


安保条約はもともと集団的自衛権行使を前提にしているのだから、「断固反対」などとは言っていられないはずだ。だから極東の範囲に限定した集団的自衛権行使の解釈が公明党説得材料になり得るのだ。
 

首相・安倍晋三は極東有事の際を想定すれば、恐らく改憲による集団的自衛権行使などとは言っていられない事態に至る可能性が高い。改憲では時間がかかりすぎるのだ。頻発するであろう中国の“挑発”は、集団的自衛権行使を憲法解釈で対処せざるを得なくなるかもしれない。


首相の決断でできることであり、国連憲章で認められた当然の権利を行使するだけのことだ。既に第1次安倍内閣で安倍の諮問機関「安全保障の法的基盤再構築に関する懇談会」が集団的自衛権行使を答申しているが、病気退陣で前進していない。


同懇談会は秋にもまた同様の答申を出す予定であり、自民党の新防衛計画の大綱に向けた提言と相まって集団的自衛権を解釈によって保有することが選択肢として急浮上する可能性がある。


山口は「そうした際に連立を離脱するのか」と民法テレビで問い詰められて、即答を避け「そのときは自民党を説得する」と苦し紛れの発言した。7日のNHKでも「この一点で連立政権を破壊することは国民の期待にかなうことではない。連立を維持しながら、いろいろ相談していくことは十分可能だ」と妥協の可能性に言及した。


要するに公明党にはお家芸がある。それは一夜にして言ったことを理由を付けて大転換させることだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)