2014年02月03日

◆第2次小泉劇場は細川大敗北で幕

杉浦 正章



原発ゼロ争点化に失敗


「仁王経」に「盛者必衰、実者必虚」とある。盛んな者はやがて衰え、満ちている者はやがてからっぽになるという教えである。『平家物語』の冒頭「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」はこの仁王経にに基づいたものである。


日本人は70歳以上の高齢者ともなれば多かれ少なかれこの哲学に気付くものが多いが、どうしても気付かない種類の人間がいる。その典型は小泉純一郎、細川護煕、籾井勝人だ。これを称して「平成3莫迦(ばか)大将」という。


元首相も含まれているから「馬鹿」と称するにはお恐れ多いから莫迦としたが、莫迦はもともとは仏教用語で道理を知らぬ迷妄等の意味がある。馬鹿は当て字だ。


なぜ莫迦かといえば自分がまだ「盛者」だと思い込んでいるからだ。若いころ、とりわけ首相時代の“栄光”が今でも光り輝くと錯覚しているのである。「必衰」と続く運命を理解できないのだ。そしてその錯覚を二乗しているのが、原発でポピュリズムを起動できるという誤判断であった。


脱原発は、衆院選では小沢一郎の日本未来の党の大敗北。参院選では原発再稼働を主張した自民党だけが勝ったのにまだ分かっていないのだ。懲りず、「原発ゼロ」で勝てると思ったが、こたびも「必衰の理」が現実のものとなったのだ。


慌てて細川は演説から脱原発色を薄め他の課題に移そうとしているが、選挙直前での方向転換は悪あがきとしか言いようがない。50年も政治記者を真剣にやっているとなぜか政界から人に見えない信号を受け取ることができるようになるとみえて、自分ながら予測が全て的中することが恐ろしい。


また今度も当たってしまうのだ。都知事選の勝負は舛添要一で決まりなのだ。1月23日の時点で舛添有利と伝えた流れに変化はなく、毎日、朝日、日経などの調査もこれを裏付け、そして読売の2日付の調査結果も舛添リードだ。  


読売の調査の特色は、都知事選を左右してきた浮動票の行方を重視している点である。同紙によれば無党派層は舛添支持が3割強でトップに立っており、細川への支持は1割強にとどまり、宇都宮にも後れをとって3番手にとどまっているのだ。


これが意味するところは何かといえば、小泉ドンキホーテが細川サンチョパンサをおだてて、無党派層の風を巻き起こそうとして、風車に馬ごとはね飛ばされた構図である。


小泉は民度の低い都民なら「原発ゼロ」でだませると踏んで間違ったのだ。今回の都知事選は無党派の風が起こらない珍しい選挙となるのだ。それではなぜ無党派の風が生じないのだろうか。


まず第一に都民は猪瀬直樹の「裏切り」にあったと考えているのだ。猪瀬の本質を見誤り投票して400万票もとらせてしまったことを民度が低いなりに反省しているのだ。 いくらなんでも国政選挙、地方選挙を含めて史上最高の票数を、なんであんな男に与えてしまったのかと悔やんでいるのだ。


その悔やみが浮動票の縮小効果をもたらしているのだ。わずか1年後の選挙なのだから、まだ失敗を忘れないのだ。さらに加えて、細川、小泉の“老い”が予想以上に著しかったことも挙げられる。テレビに出る細川をつぶさに観察すれば、その“弱り目”は相当なものがある。


かつて細川政権を樹立して政権を担当したときは少なくとも殿様なりに覇気があった。その覇気がカリスマのようなものを醸し出していた。しかしいまはひからびた秋刀魚のように脂っ気が全く失せてしまって、食べてもぱさぱさするだけという感じを視聴者に与えてしまうのだ。


一方、郵政選挙の夢が忘れられぬ小泉は、身振り手振りも郵政選挙そのままに、まるで場末の婆さん芸者のように晴れの舞台に躍り出た。原発ゼロ一点集中選挙で勝てると判断したのだ。しかしその踊りをみれば、カリスマ政治家が持つ色気は全く感じられない。踊りの達人は老いても品のよい色気があるものだが、小泉は品がない。


そして首相を経験したものとも思えない軽率さが目立つ。殿はもともと莫迦で乗せられたから仕方がない側面があるが、小泉の原発発言にはことをねじ曲げる“邪心”が見られる。元首相が国家を紛れもなく衰亡に導く「原発ゼロ」を臆面もなく主張するのは莫迦でなくて何であろうか。


原発問題の理解もないまま“気合い”で勝負に勝てると踏んだのだ。


読売の調査は小泉の「都知事選は原発ゼロで国が発展できるというグループと、原発なしでは発展できないというグループの戦い」という発言を、真っ向から否定してしまった。争点を「医療や福祉政策」とした人が84%で最多。「地震などの防災対策」、「景気や雇用対策」、「防犯や治安対策」と続き、「原発などエネルギー問題」を選んだ人は61%で5位にとどまったのだ。


いまや小泉のトイレなきマンション論は、むしろ化石燃料による発電のほうがトイレなきマンションであるという事実によって世界中で駆逐されつつある。CO2の際限なき垂れ流しが、既に地球温暖化と気候大変動となって現れている。このまま放置すれば地球の温度が今世紀中に4度上昇、人類が住める状態ではなくなる。


世界の潮流は原発新設がブームとなっているのだ。原発エネルギーは、地中から得たものを地中に戻すだけであり、その管理を確立すれば全く地球を汚すことがない。科学の発展は確実に完全管理へと導く。科学的な根拠に無知なまま、都民をだまそうとしても、無理なのだ。


こうして第2次小泉劇場は細川大敗北となって、どんちょうが下がりつつあるのだ。同じ脱原発で宇都宮健児と脱原発票が分かれたのも失敗だった。一本化すればいい勝負になった可能性はあるが、ここまで来たら無理だ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月31日

◆山口は安倍との暗闘で敗色濃い

杉浦 正章



集団自衛権は妥協の流れだろう


暗闘は暗闘のまま終わって政権分裂というような事態には至らないのではないか。首相・安倍晋三と公明党代表・山口那津男の関係である。集団的自衛権や教育改革をめぐって政権成立以来の“確執”が春以降最終局面を迎えるが、どうも山口の旗色が悪い。本人も妥協的な発言をするに至っている。


なぜ変わってきたかと言えば、負けそうであるからだ。安倍がみんなと維新両党に大接近した結果、公明党が置いてけぼりを食らいそうな局面が出てきているからだ。


安倍・山口のバトルの原因は、理念の違いをそのままに数合わせだけの連立を組んだところが大きいが、山口に対する抜きがたい不信があることも否めない。民主党政権ができて自民党が野に下り、一番苦しいときに山口が「裏切った」(自民党幹部)からだ。


山口は民主党政権が長期に続くと誤判断し、首相・鳩山由紀夫にすり寄ったのだ。小沢一郎と仲のよい市川雄一を常任顧問に起用、「一・一ライン」による連立を視野に裏で動いた。


結局、首相・鳩山由紀夫がずっこけて、山口も民主党政権が長くないと気付いて方針転換したが、これが意味することは公明党の「飽くなき政権意欲」である。また政権党であることがどのくらい創価学会の役に立っているかを物語る。


ひとたび政権の“密の味”を覚えた公明党には、野党色などとっくに薄れ、なりふり構わぬ権力執着の習癖が出来上がっているのだ。


加えて山口の政治理念は絶対平和主義の学会婦人部の路線を重視し、かつての社会党並みのイデオロギーが根底にあるような気がしてならない。これが安倍の保守路線とどうしても相いれない側面がある。ぶつかり合いは政権発足時からあった。


山口は発足早々に安倍の持論である集団的自衛権の容認に食いついた。憲法解釈を変更するなら「連立を離脱する」とまで言い切ったのだ。これが参院選まで続いて「断固反対」を言明した。山口は連立離脱を軸に安倍を揺さぶったのだ。


安倍政権のいわば1丁目1番地の安保政策に真っ向から食いついたのだ。しかし、この山口の姿勢は「飽くなき政権意欲」とは矛盾する。


こうした中で安倍は山口に対する暗闘を一層鮮明化させる動きを見せた。その手段が意外に得意であることが分かった宴席政治である。昨年11月にはみんなの党代表・渡辺喜美と会食して秘密保護法成立の流れを作り、12月には維新共同代表の橋下徹と約3時間にわたって会食した。この流れが両党との政策連合への動きを加速させている。


維新幹事長代行・松野頼久は代表質問で「責任野党として、外交・安保、憲法改正については協力する」と言明、集団的自衛権容認の構えを見せた。


一方安倍は渡辺に対して施政方針演説の直後に電話して政策協議を提案、これを渡辺は受諾した。渡辺は「首相の戦う覚悟と戦略が我々と共通のものなら真摯(しんし)かつ柔軟な協力を惜しまない」と発言したのだ。


この維新とみんなと安倍との大接近は、山口の発言の変化を誘った。「政権離脱」の大転換である。山口はなんといけしゃあしゃあと「政策的な意見の違いだけで連立離脱とは到底考えられない。意見の違う部分があっても知恵を出し、合意形勢に努力する姿勢で臨む」と発言したのだ。


筆者はかねてから公明党の変節ぶりを指摘してきた。公明党ほど変わり身の早い政党はないからだ。自社対決時代には「中道政党」として中立を維持。93年に「非自民」の細川政権で与党入りしたが、これで“密の味”を覚え、99年に一転した。自民党との連立に踏み切っている。豹変は公明党のお家芸なのだ。


それにしても山口は「離脱は到底考えられない」とはよく言ったものだ。永田町では発言の大変化には創価学会首脳からの“お達し”があったからではないかという見方があるが、その可能性は否定出来ない。加えて山口は安倍が施政方針演説で初めて「集団的自衛権」の言葉を使ったことなどから、安倍の本気度を感じ取った。


そして、固執しすぎると“密の味”を手放さなければならなくなると感じたに違いない。事実、連立を公明党が解消しても、衆院では自民党単独で過半数。参院でも維新かみんなとの連携で過半数は達成でき、ねじれは生じないのだ。国会対策上公明党が必要不可欠の存在ではなくなっている構図があるのだ。


しかしまだ一つ強力なカードが公明党には残っている。それは選挙協力だ。今や自民党はこの“媚薬”なしには国政選挙を戦えない体になってしまっているのだ。だから幹事長・石破茂が「公明党とは一致点を見いだす努力をしなければならない」と述べているのも実態を反映している。


ここは安倍の本気を受けて石破が公明党をどう説得するかだが、有事法制やインド洋の給油支援活動、自衛隊のイラク派遣などで結局公明党が妥協に転じたことから、その説得には自信を深めている。


説得の重要ポイントは、集団的自衛権が一般的権利であって、使うか使わないかは政策判断であるという点と、地球の裏側まで米軍について行って戦争することではない点の保障であろう。閣議決定はしても、その行使に“歯止め”をかければ、公明党もお家芸の妥協に転ずる可能性がある。


説得には時間がかかるが、必ずしも通常国会で達成する必要はあるまい。基本的には年末に予定される日米防衛協力のための指針( ガイドライン)の再改定に間に合わせることが目的であるからだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2014年01月30日

◆北朝鮮の“軟化”が目立ち始めた

杉浦 正章



米国も極東外交に本腰


極東情勢の焦点は北朝鮮の“軟化”をどう見るかだ。金正恩はまるで張成沢処刑に伴う対外的な悪印象の軽減をはかるかのように、対話攻勢を強め始めた。これに対して米国も高官を次々に極東に派遣、何をするか分からない金正恩の出方を探るとともに、極東の同盟態勢を再構築するための動きを強めている。


オバマにとって4月の訪日およびアジア諸国歴訪はシリア問題で落ちた権威回復の機会として位置づけられ、極東の緊張緩和の枠組みを何としてでも達成したい考えだろう。極東情勢は米、中、韓、日の思惑に北の“変化の兆し”が絡んで春に向けて正念場の展開を見せそうである。


金正恩にとって張処刑が、極めて厳しい中国の反応を呼ぶとは想定外であったようだ。親中派の張の処刑に加えて、「中国のスパイ狩り」を国内で展開、これが習近平の激怒を買った。


中国は何と北朝鮮国境で大規模な軍事演習を展開、露骨な圧力を北にかけはじめたのだ。北は38度線ばかり向いていられなくなったのだ。前門の虎後門の狼の両面作戦を強いられる結果となっているのが実情だ。初めて金正恩は北の置かれた厳しい立場に直面したに違いない。


1月1日には「新年の辞」で韓国との関係改善に異例の言及、国防委員会名で南北和解を訴えた。この金の姿勢が北特有の“揺さぶり外交”かどうかは予断を許さないが、ボディーランゲージだけは真剣に見える。


と言うのも、具体的な動きも見せ始めているのである。北京大使の池在竜は29日北朝鮮大使館に外国メディアを集めて記者会見し、「韓国との関係改善は一日も早く進めなければならない」と訴えた。


北は極秘裏に日本にも接近、外交当局が、ベトナムの首都ハノイで日本側と協議した。25日から26日にかけて行われた接触は、外務省アジア大洋州局長・伊原純一らと北朝鮮外務省課長の劉成日(リュソンイル)課長らとの間で行われた。拉致問題や公式協議の再開などについて話し合ったとみられる。


当然首相・安倍晋三の許可を得てのことであろうが、安倍にしてみれば中韓外交が完全に行き詰まっている中で、北カードをちらつかせるのは韓国に対して極めて効き目のあるけん制となることである。


韓国中央日報は最近「日本との国交正常化のカードは北朝鮮にとっても魅力的で、植民地賠償金だけでも200〜300億ドルとされ、過去18年間に韓国が北朝鮮に支援した規模の10倍に当たる」と警戒をあらわにし、「大統領は安倍首相との日韓首脳会談をいつまでも拒否すべきではない。突然会談に応じるのも手だ」と社説で述べるに至っている。


こうした北の対話攻勢の狙いは、金正恩が国内的な立場を強化するためには経済基盤の確立が欠かせないことに思い至ったからにほかならない。


しかし、ここで問題となっているのは2月下旬に米韓が予定している軍事演習だ。昨年春の軍事演習の際には金正恩が狂ったように強硬路線を突っ走り、挑発行為を繰り返した。休戦協定の破棄を宣言、日本の都市の名前を挙げて核ミサイルのどう喝まで行った。


米韓は軍事演習を中止する気配がないが、金正恩は今年も昨年と同様に狂気に満ちた対応をせざるを得なくなることを躊躇しているに違いない。


こうした極東の火中に手を突っ込んでクリを拾わなければならないのが米国だ。大統領一般教書を聞いてワシントンの特派員らが、「また日本の名前を挙げなかった」などと“ひがみ根性”丸出しの報道をしているが、もういいかげんにこうした記事は書かない方がいい。


オバマはアジア・太平洋地域に関して「同盟国を支援しながら地域の安全と繁栄を確保していく」と述べており、現在ではこれが日本を指すことは明白ではないか。米国は好むと好まざるとにかかわらず、極東を重視せざるを得ないのだ。


米国は昨年12月に副大統領バイデンが日、中、韓の3国を訪問、関係調整の動きを見せた。しかし事態は安倍の靖国参拝で元のもくあみに戻った形となり、バイデンは激怒したと言われる。


米国は今月国務副長官バーンズ、国務次官補ラッセル、北朝鮮担当特別代表・デービスらを次々に極東3国に送り込んだ。米国の駐日大使ケネディ、駐中国大使ロック、駐韓国大使ソン・キムが27日にソウルで秘密裏に協議するという異例の展開も見せた。

また国務長官・ケリーは2月中旬に中韓両国を訪問する。日本を訪問しないのは嫌がらせではなく、昨年10月に訪問しているからのようだが、慌てた外相・岸田文男が急きょ訪米、2月7日にワシントンでケリーと会談することになったようだ。


日経だけが報じているがオバマは、3月下旬にオランダ・ハーグでの核安全保障サミットの機会を利用して習近平との首脳会談を開く方向のようだ。東アジアの緊張緩和を探るオバマと、今秋の北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を成功させたい習近平が“妥協”を見出せるかどうか注目される。


こうした米国の極東外交の最終着地点が4月のオバマのアジア諸国訪問と位置づけられるのは言うまでもない。これを成功させるための下準備が展開されているのである。オバマの狙いは緊張の度を増す極東情勢緩和へ向けての枠組みを示して、成果を持ち帰りたいところにあるのだろう。


訪日が実現すれば安倍にも当然歴史認識などでの譲歩を求めることになろう。複雑に絡む極東情勢の糸をほぐすことができるか。安倍はできうる限りオバマに協力して緊張緩和を達成するべきであることは言うまでもない。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月29日

◆通常国会は「責任野党」との連携が軸

杉浦 正章



民主党は孤立化の様相


論戦の火ぶたを切った代表質問を通じて出てきたキーワードは「責任野党」だ。通常国会はこのキーワードを軸に展開する。その構図は自公連立を軸に、維新、みんな両党との部分連合の流れであり、主要野党で民主党の孤立化は明白となった。


首相・安倍晋三の答弁からは高支持率とアベノミクスの好調に支えられた自信が強くうかがえた。その象徴が原発再稼働への明言であり、集団的自衛権への意欲であった。とりわけ原発再稼働については安倍も幹事長・石破茂も都知事選で焦点となっているにもかかわらず再稼働を断言するという大胆不敵さであった。


与野党の強弱がこれほど際立った代表質問も珍しい。安倍が答弁の冒頭で海江田の質問を「全部で46問ご質問をいただきました」と述べたのは、野党第1党党首としての代表質問の貧相さを皮肉ったのだ。


確かに質問は総花的でまるで民法テレビの駆け出しコメンテーターのインタビューのようであった。政党の党首としての理念や理想の表明とはほど遠いものでもあった。質問内容に隙がありすぎて安倍に完膚なきまでに切り返された。


海江田が「最近の首相の路線は立憲主義と平和主義を軽んじて格差と貧困を放置し、暴れ馬の感がある」と決めつければ、安倍は「格差と貧困を放置する人がこの本会議場に一人として存在するか。存在しない」と切り返し、与党席の爆笑と拍手を誘った。


都知事選で原発ゼロが焦点の一つになっていることをとらえて海江田は再稼働への見解をただしたが、安倍は「海外からの化石燃料への依存度が高くなっている現実を考えると、『原発はもうやめる』というわけにはいかない」とぶれない姿勢を表明した。


石破も質問で「原発ゼロはスローガンであっても政策ではない」と小泉純一郎と細川護煕の主張を袈裟懸けに切った。都知事選でも舛添要一が有利になっていることへの自信の表れと言える。


注目すべき点は安倍がさきの所信表明演説で「政策実現を目指す責任野党とは政策協議を行ってゆく」と呼びかけたのに対して、維新の国会議員団幹事長・松野頼久が質問で「責任野党として外交、安保、憲法改正については前向きの議論を進めてゆきたい」と応じたことである。


さらに松野は集団的自衛権問題について「集団的自衛権は独立国であれば当然持っている。権利はあるが行使できないという、訳の分からない解釈は見直しの時期に来ている」と、安倍の安保路線の核心部分を支持した。


みんなの党代表・渡辺喜美は既に「自民党渡辺派」と述べるほど前のめりになっている。これはとりもなおさず主要野党が分断されたことを意味している。マスコミうけを狙って、民主党と共産党が特定秘密保護法の廃止法案を提出しても、野党がまとまらないことを意味している。


さらに安倍にとって有利なのは「責任野党」論が集団的自衛権容認の閣議決定に向けてこれに難色を示す公明党への強いけん制になることである。


安倍は4月の安保法制懇の答申を受けて公明党との調整に入り、遅くとも秋までには閣議決定して、年末の日米防衛協力の指針(ガイドライン)改訂へと結びつける方針だ。公明党は一段と追い込まれる情勢となっている。


民主党の代表質問が湿った線香花火に終わったのに比較して、石破の質問が精彩を放った。安倍に負けるとも劣らぬ自信を見せたのだ。本会議場を一番湧かせたのは石破であった。


「嫌われると票が減るとか、人気が落ちるとかの理由で国民に真実を語る勇気を持たないのは政治家の自己保身だ。国民を信じて真実を語らない政治が国民に信じてもらえるはずがない」と締めくくると、与党ばかりか一部野党までから万雷の拍手が生じた。


野党が理念を語らない「インタビュー質問」であったのに対して、理念を語ったからだ。石破は明らかにポスト安倍の有力候補を意識し始めている。


こうして初戦は安倍政権側の圧勝に終わったが、通常国会は半年ある。この間4月には消費増税が現実のものになる。


集団的自衛権の行使をめぐる論議、普天間移設、環太平洋経済連携協定(TPP)、中韓両国とのあつれき、夏以降の原発再稼働など超難問が前途に山積している。いつ爆発してもおかしくない地雷原を行く如しであることは確かだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月28日

◆舌禍の籾井に公共放送トップは無理だ

NHK幹部には“失言期待”があったのか


論語に「一言を持って知と為し、一言を持って不知と為す」がある。一言だけで智者とも愚者とも見られることを言う。その愚者の典型を見せたのがNHK新会長・籾井勝人による慰安婦発言だ。


「慰安婦は戦争地域ではどこでもあった」と言っている内容は至極妥当だが、愚者とみられるのは言うべき場所と時をわきまえていないからだ。


前会長の左傾化路線に懲りた首相・安倍晋三は、羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹き、職員数1万人余の世界的大報道機関のトップとしてもっとも不適格な人物を据えてしまった。


だいたい自分の発言を後から「個人的意見としても言うべきではなかった。非常に不適当だったと思う」などと、弁明するなら最初から言うべきではない。国論を割るような発言内容は、これを支持する層と反発する層にくっきり分けられる。


発言直後は「よく言った」という層が、弁明で置いてけぼりをくらい、怒りを発言者に向けるからだ。したがって籾井は就任早々味方がいなくなったことになる。


発言内容は(1)慰安婦そのものが良いか悪いかと言われれば、今のモラルでは悪い(2)従軍慰安婦が韓国だけにあって、他になかったという証拠があるか、ドイツにもフランスにもあった(3)韓国が、日本だけが強制連行をしたみたいなことを言って、お金寄越せと言っているわけで、そういうことは全て、日韓条約で国際的には解決しているわけだ、ということで至極もっともな事実関係だ。


しかしこれを仮にも公共放送のトップが記者会見でしゃべるとどうなるかということくらい分からないようでは、まさにその資格がないと言うしかない
 

籾井は当然、記者会見の有様(ありよう)くらいは事前に聞いておくべきだった。プロ中のプロがいっぱいいるNHKで、事前打ち合わせで慰安婦問題などへの対応がなかったことは驚きに値する。左傾化メディアが虎視眈々と、なれない会長の失言を狙い撃ちにするくらいのことは常識である。


放送用語で滑らかにしゃべることを滑舌(かつぜつ)と言うが、その滑舌だけで生きてきたような人物に思ったことをしゃべらせるとどうなるかくらいは幹部が分かっていたはずだ。記者会見で諸井は完全にはめられたのだ。


周りが注意しないのはNHKに籾井人事に対するある種の“構え”があったことを意味する。素人の籾井にしゃべらせておけばつぶれるという「深謀遠慮」かもしれない。


確かにNHKの左傾化は目に余るものがあったし、現在もある。原発問題では夜を日に継いで再稼働に批判的な論調を展開し、放射能汚染問題でも煽りにあおって避難者の数を増大させた。


本来なら専門家の声を取り上げて、一部地域を除けば放射能汚染の危険性がないことを特集を組んで報道し、民心を落ち着かせるべきことが公共放送としての役割であるはずが、逆コースを走った。特定秘密保護法案の成立の過程においても、批判的論調を繰り返した。


衆院を通過した11月26日午後7時のニュースはあまりにもひどすぎた。国民の反響は反対論しか報道しないのだ。まさに公共放送の不偏不党が問われる問題であった。安倍内閣が課題とする集団的自衛権の行使問題についても論調は反対だ。


日曜討論の司会をする解説委員の島田敏男は、公平なようで実は一定の思惑をもとにリードする不公平さが目立つようになった。


島田は新年の解説番組・持論公論で集団的自衛権問題を論評、そのマイナス要因を列挙した上に「日本側から東アジアの安定にくさびを打つことにならないように、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の見直しは慎重に議論を重ね急ぐべきではない」と反対の立場を明らかにしている。


26日の討論でもその傾向が感じられたが、その上に普天間移設に関して「丁寧さに欠けている」と発言、自民党幹事長・石破茂が「そんなことはない」と色をなして反論する場面が多出した。


こうした傾向は公共放送としてあるべき姿を明らかに逸脱しているが、ある種の“伏魔殿”の様相を呈するNHKの会長の座に、あっけらかんとした滑舌の徒が座ったのでは、ことは深刻だ。報道機関のトップは世論を分断する問題を偏向から正常軌道に乗せようと思ったら、発言よりも、ボディランゲージで時々示せばよい。


NHKは一種の記者官僚が多く、徹底した反骨の記者精神を持った者などいない。したがって直接的に言わなくても態度や人事でじわじわ締めてゆくのが正解なのだ。謀(はかりごと)は密なるを持ってよしとする機構なのだ。トップの胆力とか社内政治力が問われるポジションである。


それを馬鹿が戦車で走るような発言で突撃したかと思うと、すぐに取り消しだ。最初から手の内を全て見せてしまっては、ポーカーには勝てない。


今後国会に呼ばれて、左傾化民主党や共産党が舌なめずりするような発言を繰り返しては、いずれは政府も面倒見切れないということになる。安倍や官房長官・菅義偉が裏では苦虫をかみ締めている様子が見なくても分かる。


早々にマスコミのトップには適さないと悟り、自ら辞任するのが一番の解決策かも知れない。安倍も予算案の成立を遅らせてまで固執する人事ではあるまい。

          <今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)

2014年01月27日

◆原発ゼロで現れた細川・小泉の馬脚

杉浦 正章



笛吹けど踊らず、争点化せず:世論調査


国家の最高指導者が政権を長い間離れると、政治判断もそこいらの床屋談義のおっさんレベルになることを都民は知りつつあるのではないか。細川護煕も小泉純一郎も「原発即ゼロ」への道筋を示さないどころか、示すことができないのだ。


だから二人とも候補者討論会などを拒否する。突っ込まれてしどろもどろの醜態を見せてはマイナスになるからにほかならない。選挙は逃げては駄目だ。その発言内容は、戦後一時期を風靡(ふうび)した社会党の「非武装中立論」そっくりで、聞けば聞くほど空しくなる。


筆者があらゆる報道機関に先立って自民党世論調査で舛添要一リードを報じたのに続き、毎日、朝日、日経などの調査もこれを裏付けて舛添が勝ちそうな様相が出てきた。二人の元首相は戦後政治史に残る大恥をかきそうだ。


「スローガンだけの選挙はさすがに都民もうんざりしている」と官房長官・菅義偉が述べているが、恐らく新聞の世論調査の情報は裏からとっくにごますり記者が伝えているから、背景には自信があるのだろう。


たしかに選挙告示以来の二人の「原発ゼロ」発言を分析すれば、実現への工程はそれこそ「ゼロ」であり、無責任の極みであることが分かる。


細川は26日「原発が止まっていてもこれだけ経済が回っているわけだから、原発再稼働をやめて自然エネルギーに切り替え、自然エネルギー大国の先頭を東京が進まなければならない。自然エネルギーによって成長を進め、その果実を雇用や福祉にふりむけていけば、日本は多くの国からすばらしい国だと評価されると思う」と訴えた。


さすがに殿様は衣食住に何の心配も無い生活を送っておられるものとみえて、電気料金の大幅アップであえぐ庶民や中小企業の実情などご存じないようだ。マリーアントワネットの「パンがなければケーキを食べよ」というレベルに等しい。


「これだけ経済は回っている」というが、細川は実態はアベノミクスで無理して回しているという初歩的経済知識すら持ち合わせていないのだ。アベノミクスはすべて原発の早期再稼働が前提の構図なのだ。電気代は原発が即時ゼロとなれば韓国や中国の3倍になるという試算がある。これでは経済は「回らない」のだ。


現にドイツは太陽エネルギー買い上げで電気料金が高騰、買い上げ制度は破たんしつつある。世界の潮流は死亡者ゼロの福島事故などどこ吹く風であり、原発新設ブームだ。現在420基が動いているが、これが近い将来600基になる。


日本は原発の寿命を考えると2030年で現在の半分、2049年には本当にゼロとなる。捨てておけば原発ブームに乗り遅れ、安価な電力を確保出来ない構図なのだ。それを「即ゼロ」にしたらどうなるか。そうなればただでさえ低下している産業競争力などは吹き飛び、まずスーダン並みの「最貧国」が待っている。


小泉も「原発ゼロで日本は発展できる。まずゼロにして後は知恵者が知恵を出す」と発言した。「知恵者が知恵を出す」は首相がよく使う言葉だ。問題を下に回すのに便利だからだ。


この発言の本質は小泉が首相時代に使った言葉だけを覚えていて、自らの原発推進路線の寄って立つところを知らないまま政権運営をしていたということだ。「即ゼロ」は日本経済に大打撃となり、株価は一転して暴落、「平成の原発大恐慌」の事態になるのは火を見るより明らかだ。


小泉は「日本人は大きな目標を掲げると達成しちゃう」と強調する。達成するかも知れないが問題は達成までの期間だ。最短20年かかるとして、即ゼロでその間食って行けるかのと言うことだ。絶対に無理であり、無責任だ。極右・石原慎太郎は大嫌いだが、生涯に一つだけいいことを言った。それは「暇を持て余した小泉が馬鹿なことを言い出した」だ。


小泉の演説方法をつぶさに分析すれば、かつて自民党を「敵」と位置づけ自らを際立たせたのと同じで、「原発推進」を敵に位置づけて一点突破を図ろうとしている姿が浮き彫りにされる。


しかし、マスコミは朝日を含めて社説で脱原発一点集中選挙に反対している。紙面構成も原発は各種政策のうちのワン・オブ・ゼムの扱いだ。


27日付の朝日の世論調査では最も重視する政策は、「景気や雇用」29%と「医療や福祉」25%が多く、ほかは「原発やエネルギー」14%、「教育や子育て」12%といった順番である。まさに小泉劇場は笛吹けど踊らずで、最大の焦点になっていない。


日経でも同様の傾向が出ている。小泉は郵政選挙の時のあの芝居じみた身振り手振りで人を引き寄せようと懸命だが、まさに老醜をさらしているだけだ。誰か止めてやらないと懲りずに“踊りを続ける。


こうした二人の元首相の発言を見てくると、エネルギー政策の本質を理解しないまま、都民の低い民度、言い換えれば浮動票によって左右される民度を狙って弾を撃っていることになる。


戦後社会党が河上丈太郎も成田知巳も土井たか子も、日本人の戦争アレルギーと平和は天から降ってくるという安易な安保感覚を狙って「非武装中立」などという荒唐無稽な構想を打ち出し、結局党をつぶしたのとそっくりだ。


元首相二人の発言はいくら言いっ放しの街頭演説とは言え「空想性虚言」に満ちており、無責任の極みであり、国を潰す妄想でしかない。


幸いにも今回の選挙は、かつて内閣官房副長官を長年務め、7人もの内閣総理大臣を補佐した石原信雄を、世界都市博覧会中止を公約にしただけで下したタレント青島幸男のような事態は起きにくいとみる。


朝日の調査も舛添がリードし、これを細川と宇都宮健児、田母神俊雄らが追う構図だ。これはとりもなおさず「即原発ゼロ」が当否を分けるテーマとなっていないことを物語る。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月24日

◆世界中で“日中大使戦争”の様相

杉浦 正章



躊躇せず「倍返し」で臨め


まるで首相・安倍晋三の靖国参拝をめぐって“日中大使戦争”の様相を呈している。外務省によると約50か国で中国大使が新聞や講演で対日批判を展開、これに日本大使が徹底した反論をするという事態だ。


中国の批判の特徴は安倍に焦点を絞っている点であり、その狙いは地球規模でのプロパガンダで安倍の孤立化を図るという紛れもない心理戦である。


最終的狙いは日本に音を上げさせて「尖閣譲歩」に転じるところにあることは言うまでもない。日本は安倍自身の外交努力では足りない。無視は萎縮に通ずる。売られたけんかは倍返しで買わなければなるまい。


まず論争はロンドンとワシントンで始まった。ロンドンでは中国大使が安倍を人気小説「ハリー・ポッター」の闇の帝王「ヴォルデモート卿」に例えて悪の権化のように批判。これに対して日本大使が「既に存在しない軍国主義の亡霊を持ち出し続けることをやめよ」と戒めた。


ワシントンでは駐米大使が、靖国神社に参拝した安倍を「近隣国との対話の扉を閉ざした」と批判、駐米大使・佐々江賢一郎が「中国の指導者は国際世論を明らかに読み間違えている。アジアの大部分と国際社会が懸念しているのは日本ではなく、中国だ」と反論した。


中国は執拗で、駐仏大使はフィガロ紙上で靖国神社をヒトラーの墓に例え、安倍がこれに献花した姿を想像するよう訴えた。


アフリカや中近東ではエチオピアの中国大使が安倍を「アジア最大のトラブルメーカー」と呼び、イスラエルでは大使が靖国神社に祭られている東条英機を「アジアのヒトラー」だと述べ、これに参拝する安倍を非難した。明らかに中国の大使らは本国からのマニュアルに基づいて統制された対日非難を展開している。


中国の狙いは筆者がたびたび指摘しているように、その基本戦略を尖閣での軍事圧力に加えて心理戦も展開、安倍を世界的にも、国内的にも孤立化させるところにある。


加えて韓国大統領・朴槿恵を安重根記念館開設で取り込み「プロパガンダ同盟」で日本を追い込み、弱らせ尖閣での譲歩を取り付けるところにある。


しかしこの中国の地球規模のネガティブキャンペーンには限界がある。まず対外的には日本が反論を展開する限り、少なくとも相打ちか日本優勢で終わるからだ。なぜなら佐々江が「中国と異なり、日本は戦後、戦闘で一発も弾を撃っていない」と反論したとおり、「不戦の日本」への理解度は高まっている。


英国のBBC放送が行っている世界各国の好感度調査では日本は常に1位から4位までの上位を占め続け、中国や韓国はそれぞれ9位や10位にとどまっている。


戦後の歴史を見ても68年間、日本は戦争に参加しない唯一の大国である。中国は朝鮮戦争、中ソ国境紛争、中越戦争、チベット紛争などを繰り返し、韓国も朝鮮戦争やベトナム戦争を経験している。とりわけ韓国は朝鮮戦争では北の女性を性奴隷として米軍将校に提供、ベトナム戦争では一般市民に対する暴行、強姦など残虐行為を繰り返したことで有名だ。


両国とも自分のしたことを棚に上げて、戦後一発のタマも撃たず、一人の外国人も殺傷していない日本を批判しても説得力は無い。新しい世代は“無実の罪”で非難されていることになり、その反動がネット右翼として台頭していることの方が中韓にとって恐ろしいことにつながると知るべきだ。


さらに加えて日本は中韓が非難するように好戦的な国家に転換しようとはしていない。行っていること、または行おうとしていることは「防衛態勢の充実」であり、「攻撃態勢の強化」などではさらさら無い。集団的自衛権の行使容認は、攻撃があった場合の同盟国防御であり、これは国連憲章の要である。


韓国が批判するのは全く見当違いだ。韓国のような小国が大国のはざまでなり立って行けるのは集団的自衛権が認められているからにほかならない。


戦後の日本は国際協調を旨として生きてきたのであり、その不断の努力をないがしろにした中韓の反日プロパガンダ同盟は、平和志向の国民にとって受け入れがたいものであることを両国は知らねばならない。


こうして中韓の目指す日本の国際的孤立キャンペーンは徒労に終わることが目に見えている。


一方で安倍を国内的に孤立させることにも無理がある。中韓は一部の左傾化新聞の論調だけを見ると見誤る。安倍を観察するかぎり、中韓が宣伝するようにヒトラーの再来でも軍国主義者でもない。安倍がある日突然中韓の領土を1センチでもかすめ取ろうとするだろうか。そんな気配など全く存在しない。


それは国民がよく知っており、自民党の秘密保護法強行で下がった内閣支持率は一か月で完全に回復して60%前後という驚くべき高さを維持している。


かつて人気が沸かずに大野伴睦の人気にあやかりたくて「伴ちゃんと呼ばれたい」と述べた佐藤栄作が今生きていれば、「安倍ちゃんと呼ばれたい」と言うだろう。まさに「安倍ちゃん」人気なのであり、世界の世論はアジアのトラブルメーカーが海洋進出の膨張路線にまい進する中国国家主席・習近平であることを知るべきだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月23日

◆自民党秘密調査では舛添が断トツ

杉浦 正章



隙(すき)だらけだった殿様会見


長老政治家というのは普通は枯れて、ポピュリズムには流れないものが多いが、細川護煕の会見を聞いて御年76歳がなぜここまで大衆迎合に走るのか首を傾げた。おそらく「昔の名前で出ています」ではないが、首相に担ぎ上げられた瞬間の高揚感が心奥(しんおう)から本能を突き動かすのだろう。


だから“厚塗り”してシワを隠して「原発ゼロ」を高らかに唱え、都知事選では過去最高齢の出馬となったのだ。しかし、「猪瀬の5000万」の“倍返し”となる、「佐川の1億円」は、オリンピック返上論とともにかなり細川にマイナスに作用している。


首相・安倍晋三が22日のテレビのインタビューで、小泉純一郎が細川の支援に回ったことに関し「議論を活発にする意味で有益ではないか」と余裕綽々(しゃくしゃく)の発言をした。これが気になって調べてみたら、まああの“民度”の低い都民が何と自民党の選挙情勢調査では、圧倒的に舛添支持となっているのだ。さすがに大衆迎合には嫌気がさしてきたのかも知れない。


かねて指摘したようにマスコミは最初に持ち上げて、後になって落とす性癖がある。細川の記者会見でも佐川急便からの借入金問題やオリンピック返上論をめぐって厳しい質問が相次いだ。小泉の見え見えの戦術・一点集中選挙は、まさに揺らぎ始めたのだ。そして殿様の会見は隙だらけとなったのだ。


細川は焦点の原発政策について「原発ゼロの方向を明確に打ち出さないと50年100年たっても原発依存の状況から抜け出すことは不可能」と高らかに「ゼロ」に踏み切った。小泉と完全に歩調を合わせたのだ。


しかし即ゼロへの道筋を聞かれるとしどろもどろで「有識者会議で検討する」である。まさに都合が悪くなると政治家が逃げの一手の先延ばしで持ち出す「審議会方式」そのままだ。だいいち都知事になったからと言って、国のエネルギー政策に横やりを入れることなど不可能だ。都は東電の株式を1.34%しか保有していなくて、過半数を保有する政府に対抗などできるものではない。


要するに小泉も細川も実行可能なビジョンなどさらさら持ち合わせていないのだ。言ってみれば小沢にだまされて脱原発の日本未来の党なるものを作って、総選挙で大敗北した滋賀県知事・嘉田由紀子のレベルの低さとそっくりなのだ。加えて原発ゼロは舛添らの主張する脱原発と比較すれば実現性に乏しい。また即ゼロと脱原発では争点がぼけて先鋭化しないのだ。


昨年末に雑誌に語ったオリンピック返上論に対しても、「思い直した」のだそうだ。殿様だから「思い直した」で済むのだろうか。言い訳も論理破たんしている。


「当初は原発事故からの復興にめどがつかない段階で、招致に賛成する気になれなかった」と弁明したが、昨年末にめどがつかないと言いながら、1か月もたたないうちにめどがついたのだろうか。


「東北の皆さんに協力してもらい、『東京・東北五輪』にできないかと考えている」と述べたが、IOCは「東京オリンピック」を決めたのであり、床屋談義のおっさんのような発想を支持したわけではないし、覆せるわけがない。東北と言えば国民の同情を買って、注目を集めて票になる段階はもう過ぎたことが分かっていない。


佐川急便からの1億円借入にしても「改めておわびする」と述べたが、おわびで疑惑が消えれば世話はない。土地建物の抵当権が抹消されていることが佐川への返却の根拠だが、本当に返済した上で抹消されたのかは霧の中だ。


猪瀬の5千万円はその後仲介者に500万円を渡していたことが判明、使わずに返したという主張が崩れてにわかに事件性を帯びているが、その最中での佐川疑惑の蒸し返しがマイナスに働くのは確実である。


こうした中で注目の世論調査の結果がちらほらと出始めている。自民党幹部によると同党が秘密裏に行った情勢調査では舛添要一が細川を大きくリードしてトップだ。倍以上の差があるというのだ。


しかもその差は拡大傾向をたどっているのだそうだ。これを裏付けるように日経のアンケート調査でも、舛添支持が45.3%で断トツ。これに田母神俊雄の26.4%が続き、細川は17%にとどまっている。


東京都の場合膨大な浮動票があり、これが選挙の帰趨を左右してきたからまだ即断はできないが、注目すべき情勢ではある。このままいけば当初細川側近が懸念していたとおり「殿が晩節を汚す」流れとなりそうだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月22日

◆安重根記念館は中韓反日心理戦様相

杉浦 正章


米国は一線を越えた朴に警告せよ


中国が安重根(アンジュングン)の記念館を中国・ハルビン駅に開館したことが意味するものは、国家主席・習近平が韓国大統領・朴槿恵を完全に取り込んだことを意味する。その狙いは独自に展開してきた「反日心理戦」を「中韓反日心理戦同盟」にまで発展させるところにある。


この習近平戦略は、北朝鮮と対峙する米国の極東戦略にくさびを打ち込む結果となり得ることである。米国はことの深刻さを理解する必要がある。朴槿恵の度が過ぎた反日路線は自らの安全保障を危うくするものであることを気付かせる必要があり、米政府は早期に朴の“対中大接近”を戒める必要がある。


日本政府もこれ以上の中韓心理戦拡大を阻止しなければならない。もはや場当たり的対応をしているときではない。


記念館開館は世界中に「反日言いつけ外交」を展開している朴の昨年6月に習に対して行った「言いつけと懇願」が成功した結果となった。それも要請した安重根の肖像ばかりではなく記念館の開設という朴にとって願ってもないプレゼントとなった。


かねてから中国政府内部には安重根がテロリストであり、これを祭ることはテロリスト礼賛となり、国内の不穏な動きを増幅するという慎重論があった。それにもかかわらず習が格上げの開館に踏み切った背景は、いうまでもなく首相・安倍晋三の靖国参拝に対する報復である。


これに加えて習には極東戦略を念頭に置いた深い思惑がある。それは膠着状態に陥っている尖閣をめぐる日中のせめぎあいを心理戦で日本を追い込むことによって打開を図ろうという戦術である。


ロシアがスパイを東京や北京において日中戦争の可能性に探りを入れていることは常識だが、そのロシアの軍事専門家の間では、日中戦争が勃発すれば日本単独でも中国に勝つという見方が強い。兵器の質と自衛隊の練度が違うというのだ。


ましてや中国が日米同盟を相手に戦争することになれば「屈辱的な敗北になる」というのがロシア軍事専門家の分析である。また対日戦争を引き起こせば、これを機に抑圧された少数民族が各地で反乱を起こし、中国国内は内乱状態に落ちいるという見方も有力だ。ロシア革命の中国版となりかねないのだ。


このため習は現在のところもっぱら心理戦で日本を追い込む選択しか方法がないのである。その大きな布石が一方的な防空識別圏の設定である。海からの公船の領海侵犯でゆさぶり、識別圏では空からの侵入で日本を追い込む。


これで領土問題は存在しないとしている日本政府を「存在している」に方向転換させることを狙うのだ。もう一つが外交安保の常識を全く知らない朴の接近を飛んで火に入る夏の虫のごとく“活用”することにある。幸いにも朴の「反日」は徹底しており、中国とは歴史認識において共通する部分が多い。


極東の戦略地図を読めば38度線で米国と対峙しているのは北朝鮮ばかりではなく中国でもあるのが常識である。中国は米国と国境で対峙することは何が何でも避けたいのであり、北のクッションは必要不可欠の存在である。しかし米韓同盟と日米同盟の圧力をひしひしと感じないわけにはいかない。


この日米韓のトライアングルにくさびを打ち込めるかどうかが最大のポイントなのだが、朴の存在はまさに地殻変動を生じさせているのだ。


朴の対中接近の度が強まれば強まるほど、相対的にトライアングルの結束は弱まるのであり、安重根記念館は習のくさびが見事に成功したことを意味するのだ。国家間の心理戦とは情報の計画的な活用・操作・宣伝などの行為により、政治的目的あるいは軍事的な目標の達成に寄与することを狙った戦術の形態である。


心理戦における主要な手段は政治的なプロパガンダであり、日本はプロパガンダ戦において、常に受け身の態勢となっている。米国が小泉純一郎の靖国参拝に異を唱えず、首相・安倍晋三の参拝に「失望」したのは小泉以後8年間でいかに中韓の対米ロビー工作とプロパガンダが利いたかを物語っている。


両国ともロビー工作に莫大(ばくだい)なカネを注ぎ込んでおり、逆に日本は外相・田中真紀子の誤判断で縮んでしまったままだ。


中韓の攻勢に対して日本はせいぜい大使が講演するか現地紙に反論を投稿するくらいだが、もはや中韓心理戦同盟はそのような場当たり的な対応では対処しきれなくなっている。まさに国家安全保障会議(NSC)マターとして心理戦問題を取り上げ、統合的に対処すべき段階に入った。


米国も「失望した」などと言っているときではない。極東戦略が朴を中国に取り込まれて危うくなっているのだ。スーダンで自衛隊が善意の弾薬譲渡を韓国軍に対して行ったにもかかわらず、韓国は謝意も表さずに突っ返してきたが、これでは極東の安全保障は維持できない。


朴はいつ発生するか分からない北の軍事攻勢に日本の支援がなくて勝てるとでも思っているに違いない。まさに習近平の思うつぼにはまってしまった朴を、引き戻すには米国が警告するしかないのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月21日

◆細川が「言い訳選挙」になってきた

杉浦 正章


「原発即ゼロ」でオリンピックは無理


清和源氏の流れを汲むだけあって自分の方が偉いと思っているのだろう。同じ殿様の、秋田県知事の佐竹敬久が東京の「ご乱心の殿」の批判を展開した。記者会見で「細川さんはそんなに古い大名じゃない。たかだか700年くらいだ。うちの方が400年くらい先輩だ」と“格”の違いを強調。


その上で生活の党代表・小沢一郎が細川支持に回ったことをとらえて「殿様に悪代官が付いた。小沢一郎さんとか色々付録が付いてきた。孤高の戦いならいいが変なのが付くとあいまいになる」と真っ向幹竹割り。


あらぬ方向から弾が飛んできた細川護煕は22日になってようやく正式記者会見をすることになったが、ここに来て「原発ゼロ」のプラス要因より、「オリンピック返上」などのマイナス要因が目立ち始め、選挙はワンフレーズ・ポリティックの小泉戦略が利かなくなってきたことは確かだ。


都知事選をめぐる政策論議の構図は、どんどん変化をしている。小泉が打ち出した「原発ゼロ一点集中」戦略が“蚕食”されてきているのだ。


小泉の「原発はゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なしで日本は発展できないというグループの戦いだ」というセリフは、主要候補がみな「私も脱原発」と唱え始めて、あえなくつぶれる気配となってきている。


小泉の神通力は2度も効かないのだ。そうした傾向もあってか、殿様はどうも最初の勢いが鈍ってきているような気がする。記者会見を2度も先延ばしにした上に、日本記者クラブが主催する共同会見も断った。どうやらマイナス要因のクローズアップが“怖い”に違いない。


そのマイナス要因とは何かと言えば冒頭の小沢悪代官説はさておいて、佐川急便からの一億円借入問題、オリンピック返上・反対論、連合東京の舛添要一支持、宇都宮健次との一本化断念などひしめいている。佐川急便問題は22日の会見の焦点になるが、結局これまで主張してきた「自宅の塀の修理に使った」などあいまい答弁の域を出ないだろう。


したがってこの問題は投票日まで引きずるだろう。ジャーナリストの池上彰の著書のインタビューで細川が「安部さんが『オリンピックは原発問題があるから辞退する』と言ったら、日本に対する世界の評価が格段に違ったものになっていた」と語ったオリンピック反対・返上論も焦点となる。


細川周辺は選挙に打撃になることが避けられないとみて、弥縫策(びほうさく)を講ずるのに懸命だ。マラソンの東北開催などの案が出ているが、オリンピック委員会を無視してできる話ではない。


原発問題も小泉と歩調を合わせて「即ゼロ」を打ち出すのだという。都知事選挙を左右する浮動票を狙ってのポピュリズムの極致のような愚策だが、果たしてこれだけで戦えるか。既に大きな打撃が生じている。連合東京が民主党の方針と真逆の舛添支持に回ったのだ。

連合東京は原発推進の東電労組の力が大きく、会長の大野博も同労組出身だ。大野は「連合は、自然エネルギーなどと組み合わせて徐々に原発を減らす考え。すぐに原発をなくす立場ではない」と正面から細川にチャレンジしている。


加えて自民党は「原発即ゼロ」とオリンピックを絡めて批判を強めている。元首相・森喜朗は「6年先の五輪にはもっともっと電気が必要。今から原発をゼロにしたら、五輪を遠慮するしかなくなる。世界に対してご迷惑おかけすることになる」と発言している。


確かに「原発即ゼロ」は細川の「オリンピック反対」と確実に絡む形で選挙戦に突入することになるだろう。したがって、オリンピックで弥縫策を打ち出しても、効果は薄くなるというジレンマを抱えることになるのだ。


そもそも東電は柏崎刈羽原発の再稼働を申請しており、早ければ夏か遅くても秋には再稼働にこぎつける流れだ。その原発が作る電力を都知事が都民に「使うな」と言う権限はない。知事室も朝日新聞も使わざるを得ない。「原発ゼロ」は初めから絵に描いたもちに過ぎないのだ。


このような流れはマスコミの論調にも如実に表れ始めている。最初に一面トップで持ち上げてあとではしごを外すのはマスコミの習癖であり、最近では「卒原発」を主張した日本未来の党のケースがそうであった。最後まで細川を熱烈に支援する新聞は限られるだろう。


1995年の都知事選挙でタレントの青島幸男に敗れた元内閣官房副長官・石原信雄が、毎日新聞で切実に訴えている。地方自治のエキスパートであるだけに傾聴に値する。


「都民は猪瀬さんに434万票も与えた揚げ句に裏切られたのを奇貨として、もっと切実に都政に目を向けてほしい。何しろ首都直下地震が迫っている。高齢化が進む巨大都市の被害を減らすには、国や近隣自治体と緊密な関係を築き、危機管理ができるリーダーを選ばないといけない。いたずらに中央政府を敵視して対抗軸を探しているような人物では都民を救えない」。


くだらない知事ばかりを選択してきた都民は、確かに目を覚ますべき時だ。途中で投げ出す性癖のある知事では極めて危険だ。



◎盟友浅野勝人氏の著書を、毎日新聞の「余録」が紹介しています。是非ご一読ください。以下全文。

「西洋覇道か、それとも東洋王道か」。三民主義を唱え中国の国父とも呼ばれる孫文が日本国民に対し、どちらの道を歩むのか慎重に考えてもらいたい、と訴えたのは、1924年11月。大アジア主義の理念を説いた神戸での著名な演説だった▲日本がこの警告に耳を傾けず、日中、太平洋戦争へと破滅の道を歩んだのは歴史の教えるところだ。

それから90年後、中国の最高学府・北京大学で「日本を中国に置き換えて読み返すと、孫文の演説が今に蘇る」と逆転させ、大国化した中国に自覚と責任を求める日本人がいる▲浅野勝人(あさの・かつひと)元衆院議員(75)。

NHK政治記者から政界に転じ第1次安倍内閣では副外相をつとめた。記者時代、日中国交正常化を取材して以来40年にわたり関係改善に尽力、中国側からの要請で2011年11月から13年9月まで7回同大学で日中関係について連続講義を行った▲尖閣問題で日中が冷え切った時期だったが、階段教室には毎回300人の学生が詰めかけた。

浅野氏も、孫文の引用のみならず、中国の反日教育に注文をつけるなど、将来の中国を背負うエリートに対し率直な持論を展開した▲質疑も活発だった。学生たちは浅野氏が中国政府の施策に厳しい指摘をした時も拍手で応え、

ある女子学生は「相手を許すことができないままでは共に発展することはかなわないと悟りました」との感想をくれた▲そんな講義録と学生の反応をこのほど「日中反目の連鎖を断とう」(NHK出版)にまとめた。

いわば中国版白熱教室だ。アカデミックな自由さがしこりを解く。尖閣、靖国で凝り固まる両国だが、まだやるべきことがある


          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月20日

◆普天間移設は粛々と進めよ

杉浦 正章



ヘリ活用大作戦で激突を回避せよ


一自治体の選挙にどうだろうこのマスコミの仰々しさは。朝日など一部全国紙は名護市長選の名を借りて自己のイデオロギーを主張しているとしか思えない。それも時代遅れの反米思想が根底にあって、極東を取り巻く安保情勢の緊迫化などさらさら念頭にはない。


朝日の那覇総局長は「私たち民主主義社会は投票で意志を示すというルールで動いていると教えられてきた」と勝ち誇ったような論調を展開しているが、ピントが大きくずれている。または意図的にずらしている。普天間移転は日米同盟の要であり、国の安全保障は国政の専権事項である。


その国政の有りようは国政選挙で決まるのであり、一市長選が帰趨を左右すべき問題ではない。ましてや移設反対が日本国民の“民意”などではさらさらない。政府は粛々と移設工事を推進すべきである。


選挙結果は4000票の開きがあり、自民党が完敗したことは確かだ。辺野古への移設派が3連勝してきた選挙が、前回以降連敗となったのは紛れもなく鳩山由紀夫の「最低でも県外」発言が影響している。ひとたび無能な首相をいただくとその祟りは何年たっても続くのだ。


加えて創価学会婦人部の絶対平和主義が公明投票を分断した。公明党代表・山口那津男は連立政権であるにもかかわらず、恐らく意図的に自民党候補へ票をまとめることを回避した可能性がある。自民党幹部の言う「出遅れ」など言い訳にもならない。


当選した稲嶺進はかさにかかって埋め立て協議など、市政にかかわる問題への「拒否権」行使を明言した。政府が埋め立てを実行するに当たって市側との調整を必要とする事項は約10項目にのぼると言われているが、稲嶺は次々に拒否を打ち出して、工事の妨害にでる作戦である。恐らく妨害の座り込みなどにも先頭に立つ構えであろう。
 

その実力行使は政府のハンドリングがまずいと本土の応援部隊も参入して成田闘争並みの広がりを見せる可能性がある。加えて11月には沖縄知事選があるが、焦点は普天間移設になるに決まっている。これに敗れると仲井真弘多の辺野古移転容認の決断が覆される可能性がある。


したがってずるずる工事を引き延ばせば事態は悪化しこそすれ好転はしまい。官房長官・菅義偉が「仲井真知事が辺野古埋め立ての判断を下した。そこは決定している」と述べ、市長選結果に左右されることなく、知事の埋め立て承認を根拠に辺野古移設を推進していく考えを強調したが当然であろう。


菅は同時に「普天間飛行場の固定化があってはならない。地元の皆さんの理解を得ながら粛々と進めていきたい」と述べているが、大義はまさにそこにある。市街地の真ん中でいつ事故があってもおかしくない普天間の固定化は何としても避けなければならないのであって、仲井真も全く同様の考えから承認しているのだ。


一方で稲嶺を主軸にして反対闘争は盛りあがる方向にある。一部マスコミや特に現地紙の沖縄タイムズと琉球新報があおりにあおることは目に見えている。扇動者が市長であるから、とどめようもなく暴力化する可能性も否定出来ない。


かつて04年には掘削地質調査を反対派が妨害するためカヌーで近づき、足場にしがみついて抵抗したケースがある。反対派の実力行使はエスカレートの一途をたどるだろう。問題は座り込みを見れば分かるように老人が多いことだ。これらの老人を警察が排除に出て、死傷者でも出したらたいへんだ。それこそ移設自体が頓挫しかねない問題に発展する。


どう対応するかだが、政府は頭を使うことだ。幸いにも移設先のキャンプ・シュワブは塀で囲まれている。しかし道路を経由した運搬は座り込みで難しい。


これを解決するには「史上最大のヘリコプター作戦」を展開することだ。知られていないが自衛隊のヘリの輸送能力は世界最大規模であり、大震災でも大変な活躍ぶりを見せた。自衛隊は輸送用中型ヘリ「UH―60ブラックホーク」を28機、大型の「CH-47チヌーク」を70機保有している。


ブラックホークは積載量1.2トンであり、チヌークは9トンも運べる。機体下面の吊り下げ装置で吊り下げて、移動することが可能だ。空飛ぶ10トントラックだ。輸送艦「おおすみ」やヘリコプター護衛艦「ひゅうが」などの貨物用のデッキや航空機の格納デッキなどを利用すれば、大量の貨物を運べるのだ。


事前に別の場所で作っておいた構造物をどんどん空輸するのだ。トラックで資材を運べば、身を投げ出すような過激派が出てくる。このような反対運動の実力行使に肩透かしを食らわせ、死傷者を出さない最良の方策だ。いわば豊臣秀吉の墨俣城(すのまたじょう)の現代版だ。辺野古ヘリ作戦だ。


首相・安倍晋三は仲井真に5年以内の普天間運用停止と早期返還で対米交渉をすることを約した。運用停止を実現するためには早期着工と早期完工しかない。


工事が遅れれば普天間の継続が続くだけだ。政府は今月中にも設計を発注するとともに、ボーリング調査などの工事に入る。知事のお墨付きは出ているのであり、市長選の結果に関わりなく粛々と工事を進めるべきである。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月17日

◆朴の対中接近阻止は日米共通の課題

杉浦 正章



動き出す米国の極東外交


首相・安倍晋三の靖国参拝は極東の緊張を岩盤化して、これを解きほぐすのは容易でない事態に立ち至った。対米関係については事態沈静化の流れが出てきており、安倍は春に予定される大統領オバマの来日でこれを確定して日米同盟の再構築を目指すことになろう。


ここにきて米国の最大の懸念は最悪の日韓関係の修復に絞られつつある。北朝鮮の恐怖政治がいつ外に向けて暴発するか分からない中で、日韓のいがみ合いが、米極東戦略の最大の支障となっているからだ。安倍も大統領・朴槿恵も今年は「岩盤溶解」に向けて小異を残して大同につくべき時だ。


新年になって安倍の意を受けたものなのであろう、中曽根弘文ら自民党日米議連や外務副大臣・岸信夫による靖国参拝収拾工作がワシントンで活発化した。参拝に「失望」した米国に対する説明行脚だ。この結果元国務副長官・アーミテージは安倍の参拝について「選挙公約を実行したまでで、もう終わったことだ」と述べ、ことをこれ以上問題化する方向にはないという見通しを明らかにした。


もっとも米国サイドでは日米関係の専門家である「ジャパン・ハンド」からなお反発が上がっている。前米国務次官補キャンベルのように「参拝で日中間で緊張のレベルが高まり、ともに米国の緊密な友邦である日本と韓国の間でも緊張が高まっている。それを米政府は懸念している」と指摘する空気も依然存在している。


元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長マイケル・グリーンに至っては「失望を表明したのは正しい反応だった」と述べている。米国は完全に納得したわけではなく、知日派外交官らは2度目の参拝のけん制の意味も込めて発言しているのだ。


したがって安倍が再度参拝すれば日米関係は抜き差しならぬ段階に突入すると心得るべきだ。首相周辺には「こちらも失望した」などと軽佻浮薄(けいちょうふはく)な発言する者がいるが、こういった側近は即刻遠ざけるべきであろう。


安倍は参拝による失点の大きさに気付いて、大局を見据えた極東外交に取り組まなければなるまい。その対応は対韓“個別撃破”に尽きる。


安倍外交に対する米国の最大の懸念は、中国による同盟の分断に利用されることである。日米同盟と米韓同盟のトライアングルで極東の安全を確保する戦略が、成り立たなくなっては極東戦略にとって壊滅的なダメージとなる。韓国の中国接近にはくさびを打ち込まなければならないのだ。


朴の習近平へのすりよりは、中国にとってなによりの対日、対米けん制材料なのであり、習は訪韓を年内に実現させてより一層の中韓蜜月を演出しようとしているのだ。その構図はまさに「反日同盟」の様相であり、捨てておけば朴は中韓安保関係の樹立にまでゆきかねない側面がある。


こうした構図の中でオバマが来日することになる。これに先立って米国の極東外交も足踏み状態から離脱しそうな気配だ。その手始めとして米国務副長官・バーンズが来週、韓国、中国、日本を訪問する。


日本にとっては安倍の靖国参拝以来、最初の米政府高官の訪日となる。バーンズは当然日本に対韓自制を求めるだろう。韓国に対しても度を過ごした対中接近をけん制することになろう。米国は何をするか分からない北朝鮮に対する、同盟国の体制再構築が急務と感じているのだ。


こうした根回しの上でオバマのアジア諸国歴訪があるのだが、訪日は大統領の極東戦略にとって好むと好まざるとにかかわらず最重要のポイントとなる。靖国参拝を除けば日本の外交安保路線は米国にとってもっとも好ましい流れを見せている。


国家安全保障会議(NSC)を発足させ、秘密保護法を作り、普天間の辺野古移転にメドを付け、今や対米公約となっている集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更は通常国会中に実現する流れだ。安倍はオバマとの会談でこうした状況を説明して、同盟強化を確認することになるだろう。


オバマにしてみれば日本が突出して対中軍事衝突を巻き起こすことが最大の懸念材料なのであり、日本が中国の海洋進出の防波堤としての役割にとどまる限りにおいては、これ以上にありがたい存在はないのだ。


GDP1位の米国と3位の日本が組むと言うことは、考えられる最強の対中同盟であり、日本は米国の「失望」くらいで動揺したり反発したりする必要は無い。国力衰退の兆候が見られる米国にとって、極東における日本の存在は安保戦略上不可欠であることは言を待たない。


集団的自衛権に関しては首相補佐官・礒崎陽輔が通常国会中の閣議決定で踏み切るとの見通し述べている。確かに閉会してからの閣議決定では論議から逃げる印象をもたらす。


国民世論の動向もNHKの世論調査で注目すべき傾向が出た。集団的自衛権の行使をできるようにすべきだと「思う」と答えた人は27%、「思わない」と答えた人は21%で行使容認が上回ったのだ。


迷わずに容認に踏み切るべきであろう。そして年末に予定されている日米防衛協力の指針(ガイドライン)改訂へと結びつけるのだ。これで初めて対中抑止力は完成することになり、中国の軍事挑発は一層困難になる。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年01月16日

◆小泉“原発集中選挙”が早くも頓挫

杉浦 正章



細川の「五輪返上論」の焦点化確実


不偏不党を標榜しているのが全国紙各社だが、細川護煕立候補の都知事選をめぐってなりふり構わぬアンフェアぶりを示し始めた。そのトップを走るのが朝日新聞であり、社説で原発ゼロの争点化をもろ手を挙げて歓迎。これに毎日と東京が追随する。


朝日は紙面構成の照準を明らかに「細川寄り」に定めており、16日付の朝刊でも巧妙な世論誘導ぶりを展開している。


一方読売は新たに細川が五輪返上論であることを暴露して、細川陣営に痛烈な打撃を与えた。産経も反細川だ。細川をめぐるマスコミのバトルが選挙選の帰趨を左右しかねない状況だが、主要紙は原発一点集中選挙だけは一致して反対している。
 

まあ朝日が臆面もなく反安倍政権を露出するのは、特定秘密法案をめぐっての一連の“風評”報道など毎度のことで、今度も驚かない。しかし、16日の紙面はいかにも異様だ。いくら人気があるとは言え復興政務官・小泉進次カの発言を一面4段でデカデカと報じたのだ。


内容は自民党の支持する舛添要一に対して「私は応援しない。応援する大義はない」と述べた点だ。後ろ足で砂をかけて離党した舛添を支援する自民党もだらしがない極みだが、まだ雑巾がけの身であり、当選2回の陣がさ議員の発言を鬼の首を取ったように報道して、恣意的紙面を作成しているのだ。


朝日の狙いは細川を知事に祭り上げて、「原発ゼロ」を唱えさせ、安倍政権を揺さぶろうというところにあるのは言うまでもないが、いくら何でも「自民党をかき回す小泉親子」の表現はないだろう。小泉純一郎は自民党への裏切り行為に出たが、進次カは朝日の期待とは別に“スジ論”を言っているにすぎないからだ。


一方これに対して読売も黙ってはいない。2面トップで「細川叩き」を展開している。細川陣営が公約作りに当たって、佐川急便からの1億円借入問題と「5輪返上発言」で一貫性に苦慮していると言う内容だ。


借入問題は間違いなく問題化して焦点になるが、5輪返上論は国民的祝賀ムードに水を差すだけでなく、細川に5輪対応を委ねて大丈夫かという選挙戦の重要ポイントを惹起(じゃっき)する。


その内容は細川が親しいジャーナリストの池上彰の著書のインタビューで「安部さんが『オリンピックは原発問題があるから辞退する』と言ったら、日本に対する世界の評価が格段に違ったものになっていた」と語ったというものだ。これは脱原発よりもインパクトが大きい。


なぜなら脱原発は各候補が一様に唱え始めているのに対し、5輪反対は一人だけであるからだ。舛添はじめ他の候補が佐川疑惑とともに追及することは確実であり、小泉純一郎も真っ青の焦点浮上だ。


総じて、朝日が「世論誘導の陰謀」の臭気をふんぷんとさせているのに対して、読売は事実関係を淡淡と報じており、その意味では選挙報道の王道を行っている。


社説でも主要紙の論調はくっきりと分かれている。まず「脱原発の争点化」については読売と、産経が都知事選とそぐわないと主張しているのに対して、焦点になるのは当然とするのが朝日、毎日、東京の3紙だ。


読売は「そもそも原子力発電は、国のエネルギー政策の根幹にかかわる問題だ。脱原発を都知事選の争点にしようとするのは疑問である」と主張。産経も「都知事選をてこに脱原発の世論を一気に拡大する狙いだろうが、原発というエネルギー政策の根幹を決めるのは国の役割である。どうしても原発ゼロを実現したいなら、今一度国政に打って出て問うべきだ」と述べている。


両社とも「原発ポピュリズム選挙」の否定であり、まっとうな姿勢だ。


これに対して朝日は「都民が当事者として考えるにふさわしいテーマ」、毎日「国政の大きなテーマである原発問題も主要な争点」、東京「国の原子力政策は間違いなく主要な争点」と焦点化を当然のことと主張している。脱原発を何が何でも知事選に持ち込みたい姿勢だ。


この分裂傾向は原発推進か脱原発かという各社の従来からの主張をくっきり反映したものであって事新しいものではない。


しかし賛成派、反対派に共通した一致点が一つだけある。それは小泉の狙う原発シングルイシュウでの一点突破選挙への反対である。読売、産経はもとより反対だが、朝日と毎日が小泉戦術に真っ向から反対論を展開しているのだ。


朝日は「選挙を原発にイエスかノーかの一色に染め上げ、スローガンの争いにすることには賛成できない」ときっぱり反対。毎日も「細川氏に望むのはワンフレーズ的に脱原発を主張せず、電力供給や使用済み核燃料の最終処分問題などエネルギー政策の具体像を論じることだ」と反対だ。


こうした新聞論調の傾向を分析すれば、小泉が郵政改革選挙の再来を狙ってもマスコミは同調しないということだ。まさに敵味方峻別方式の一点集中選挙は頓挫した。


年を取って頭が固くなると、昔取ったきねづかへの郷愁が湧き、まだ自分ならやれるととんでもない誤算に陥るものだが、マスコミは小泉劇場に2度も3度も踊らされるほど甘くはないということだ。


それにつけても主要紙はこれだけくっきりと支持不支持を鮮明にするなら、不偏不党の綱領などやめて、米国のように支持政党をはっきりさせるべきではないか。支持政党をはっきりさせないまま朝日のように世論誘導を計るのは、森喜朗が小泉を評したのと同様に「卑怯」であろう。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

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