2013年06月12日

◆安倍「原発推進政権」こそ早期復興の近道

杉浦 正章



世界への原発セールスは佳境に入った
 

「これは原発推進政権だ」と朝日新聞が8日の社説で激怒している。首相・安倍晋三の原発推進路線とセールスマンぶりが佳境に入っているからだ。


安倍は中東、インドへの売り込みに続いて東欧市場に着目、16日にはポーランドでチェコなど東欧諸国首脳と個別に会談、売り込みを展開する。野党、マスコミなど原発反対派は参院選の焦点に再浮上させようとしているが、既に総選挙で「脱原発派」は完敗しており無駄な戦いはやめたほうがいい。


誰も気付いていないが、原発停止で海外へ流失する国富は年間5、6兆円に達し、大震災の復興費となる国民の血税を完全に吹き飛ばしてしまっている。反対派は現実を直視するときだ。
 

安倍は大胆にも参院選を前にして原発推進の動きを鮮明にし始めた。「原子力規制委員会が再稼働を判断した原発は再稼働をできるだけ速く実現する」と国会で答弁したのを皮切りに、トルコ、アラブ首長国連邦、インドなどと原子力協定を軸に原発セールスに成功しつつある。


フランス大統領のオランドとも7日、原発での協力を強化することで一致。日本原燃社長の川井吉彦と仏原子力大手アレバ社の最高経営責任者・リュック・ウルセルが協力強化の覚書に署名するに至った。


安倍によるトルコへの売り込み成功も日仏強力の結果であり、今後も三菱重工業とアレバの合弁会社が造る新型炉「アトメア1」などを「世界最高水準の安全性を持つ原発」として、売り込んで行く構えだ。安倍は「日仏は世界最高のパートナーだ」と胸を張る。
 

先に指摘したように安倍は池田勇人以来のトップセールスを展開しているのだ。ドゴールから「トランジスタのセールスマン」と言われたように池田の商品は極小のトランジスタであったが、時代の変遷で安倍は原発という超大型商品の売り込みである。


その動きは止まらない。今度は東欧諸国の市場に着目している。安倍は17日からのサミットに先立って、ポーランドで東欧諸国首脳会議に出席するとともにチェコ、ハンガリー、ポーランド首脳らと個別に会談する。


既にチェコとはロシアとの激しい受注競争に勝って、東芝傘下の米ウエスチングハウス(WH)が受注する可能性が高まっている。安倍はチェコ大統領・ゼマンとの首脳会談で、原子力技術の相互協力を柱とする覚書(MOU)を交わす予定だ。


東欧諸国への売り込みはロシアや韓国などとの競走が激しいが、同諸国はチェルノブイリ事故で安全性への関心が高まっており、高性能な日本の技術への期待感が強い。


日本メーカーは電源を失っても原子炉を長時間冷やす能力、耐久性に優れた圧力容器など、海外メーカーにはない最新技術を持つ。ロシアや韓国などの怪しげな原発とは安全性において比較にならない。ハンガリー、ポーランドなどへの“拡販”も展開する。


こうした動きについてマスコミの動向は歓迎と反対に真っ二つに割れている。社説等でも読売、日経、産経が輸出賛成で、原発早期再稼働論だ。朝日、東京が絶対反対。毎日が慎重論だ。


これは日仏原発連携をめぐってもピタリと割れた。まず賛成派は読売が8日の社説で「日仏が技術や経験の蓄積を生かして協力する意義は大きい」と絶賛。産経も「政府間連携として評価したい」と強調している。


一方で反対派の社説は、安倍政権の推進策に焦燥感をあらわにして、感情的なものが多い。


東京の社説を例に挙げれば日仏首脳会談を「進むべき方向が違うのではないか」と指摘した上で「凄惨(せいさん)な事故も忘れたかのように原発再稼働を急ぐ安倍政権の姿勢は、明らかに異様だ。避難や仮設住宅住まいがなお続く被災者に思いをはせれば何よりもフクシマの収束を優先させ、それ以前の再稼働や原発輸出などあまりに無神経すぎる」と断じている。


国の存亡の根幹であるエネルギー政策を1200年に一度の事故と“抱き合い心中”させたいような書きぶりだ。東京の社説の方が異様さにおいて格段と上回る。


一方で朝日の8日の社説は怒りの余りか、冒頭から間違っている。


「安倍政権は、総選挙で公約した原発依存を減らす方向とは逆向きに突っ走る」と指摘しているが、総選挙が「脱原発」のポピュリズムと「原発再稼働を言わないままの選挙は国民を欺く」(石破幹事長)と再稼働を主張する自民党との戦いであり、紛れもなく脱原発派が大惨敗した選挙であったことを故意に曲解するものだ。


両紙とも核燃料サイクル事業の行き詰まり打開で日仏が協力することに反対しているが、「もんじゅ」にせよ、六ケ所村の再処理工場にせよ、本格的に核燃料サイクルに取り組んでいるのは日本だけであり、ある意味で人類の希望が託されていることに考えが及ばない。


科学技術の発展は試行錯誤の連続であり、高い理想を設定してこそ進歩するというイロハを学習し直した方がいい。


両紙の論調で一番欠けているのが、エネルギー安保の視点だ。世界が原発推進へと動く中で日本だけが、原水爆禁止運動によって培われたイデオロギー的な「核アレルギー」と、原発問題を意図的に混同させることによってブレーキをかけようとしているのだ。


考えてみるが良い。2011年に成立した復興財源確保法に基づき政府が想定する当初5年間の復興費は19兆円である。年間約4兆円である。これに対して原発が再稼働しないために中東諸国に足元を見られて高い石油や天然ガスを購入させられていることによる国富の流出は年間5〜6兆円に達する。


福島の事故を理由に、再稼働に反対すればするほど、復交は影響を受けるのだ。坊ちゃん論説委員が机上の空論を唱えているときではないのだ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年06月11日

◆自公過半数突破で安定議席も視野に

〜参院選〜

杉浦 正章



改憲勢力糾合で3分の2も可能に


参院選まで残るところ40日となったが、選挙情勢を見るとアベノミクス効果が依然持続して、自公の政権与党で過半数は固い。場合によっては安定多数の129議席も可能となりうる流れが出てきている。焦点は改憲派で3分の2議席を達成できるかどうかだ.恐らく改憲4党だけでは難しいだろう。


しかし、選挙後の公明党との調整や、民主党の改憲派の動きによっては可能だ。共闘ができない野党に敗北ムードがただよっており、首相・安倍晋三は何とか株価を高めに維持して選挙の好調に結びつけようと躍起になっている。


長年の経験から見て選挙前1か月の世論調査の動向が、国政選挙にそのまま反映する可能性が高い。NHKの10日放送の調査によると内閣支持率は62%と高水準を維持。政党支持率も自民党が41.7%と驚異的な数字で断トツ。他党は民主党が5.8%、公明党が5.1%、日本維新の会が1.5%と低迷している。


読売の11日付記事では同様の傾向が見られ、自民44%、民主7%、維新5%だ。長期停滞の経済情勢にアベノミクスが突破口を開けたと好感されたことが最大の理由だ。NHKでは安倍内閣の経済政策評価の回答が69%に達した。参議院選挙で重視したい政策も「景気対策」が83%で圧倒している。


したがって参院選はアベノミクスをなんとか維持したままなだれ込みたい安倍と、ほころびを見つけて突破口を開きたい野党とのせめぎ合いの構図だ。その安倍の心胆を寒からしめたのが5日の成長戦略の発表だ。


何と発表の途中から株価は急落し始めたのだ。法人税減税を期待していた市場は、「規制緩和も踏み込みが足らない」(市場筋)として打ち出した施策に嫌気したものだ。安倍は慌てて9日のNHKで秋の臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置づけ、法人税減税をほのめかした。その影響もあって10日は4年8か月ぶりの上昇に転じた。


安倍も官房長官・菅義偉も「株価に一喜一憂しない」と述べているが、その実一番気にしているのが株価の動向だ。海外のハゲタカファンドの操作もあり、危うい状況が続く。安倍らは何とか40日間この調子を維持してくれるように日日八百万(やおよろず)の神に祈る心境なのだ。


一方で野党は隙あらばアベノミクスに難癖を付けようと虎視眈々と狙っているが、貧すれば鈍するだ。9日のNHKの党首インタビューという絶好の機会で民主党代表・海江田万里と生活代表・小沢一郎が2人ともずっこけた。海江田は「安倍政権が誕生してから日米首脳会談が行われていない」と発言した。


今年2月の会談をはやくも忘れるという“健忘症”ぶりを発揮。小沢は小沢で参院選の当選者見通しについて「複数の当選を果たしたい」と発言した。複数とは2人以上の数を指すのであり、ついつい本音を吐いてしまったのだ。慌てて「二ケタ」と言い換えたが、とても二ケタはいかない。


自称「選挙の神様」小沢は、実際には自民圧勝にお手上げなのが本音である。30日夜も講演で、「自民党はせっかく衆院で多数を取ったので解散しない。次期衆院選は、3年後の参院選とダブル選挙になる。その時に選択肢を用意できれば政権交代は可能だと確信している」と述べている。


小沢はあまりの自民党の好調ぶりにさじを投げていると言ってもよい。3年後のダブル選挙に賭けるしかないのだ。小沢の戦略は、参院選後にあわよくば民主党を改憲派と護憲派に分断して、改憲派は自民党との合流に追いやり、護憲派を率いてリーダーになるところにある。


腹心の参院議員会長・輿石東と日夜復権のシナリオを練りつつあるようだ。 こうして明暗が極端に分かれたまま、参院選に突入することになる。


筆者は既に3月12日の記事で「自民・公明両党で過半数を維持できる可能性が強まった」と分析しているが、この流れは変わるまい。参院での与党の非改選議席は、自民50、公明9の計59。参院選で自公両党合わせ63議席以上を獲得すれば、参院定数242の過半数122に達する。


この流れは、よほどの株価大暴落や閣僚や党幹部の大失言がない限り変わるまい。衆参両院で、いずれも与党が過半数を持つことになり、安倍政権は久しぶりに長期政権の軌道に乗ることになる。幹事長・石破茂はさらなる目標を「安定多数」に置き始めた。「与党で過半数、できれば安定的な議席をいただきたい」と述べている。


「安定的な議席」とは参院の各委員会で与党がすべての委員長を出したうえで、委員の数で野党と同じ数となる129議席だ。これは筆者がやはり「自公の勢力分野が過半数の122議席を上回り130議席前後に達する可能性が出てきた」と指摘している流れである。


さらなる焦点は、参院で憲法改正の発議に必要な3分の2の162議席を改憲勢力で越えられるかどうかだ。


自民、維新にみんなの党、新党改革の4党に無所属の「改正派」議員を加えた非改選組の議席数は63ある。参院選で「改正派」が3分の2に届くには、4党で99議席を得る必要がある。維新が共同代表・橋下徹の慰安婦発言で急降下しており、これを民主党が食う可能性が出てきている。


4党での3分の2は微妙だが、改憲問題は様々な多数派形成方法がある。まず民主党の護憲派を糾合する。さらには「9条に自衛隊の存在を加憲する」と言い出した公明党との調整もある。やり方によっては改憲派が3分の2を越える状況は十分に現出しうる流れと見ても良いだろう。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年06月10日

◆米中首脳会談は同床異夢の色彩濃厚

杉浦 正章



特異の習戦略には日米同盟強化しかない
 

今回の米中首脳会談の意味を、今後10年で米国を越える超大国になるかも知れない中国と、これを何とか押さえ込んでナンバーワンの地位を維持したい米国との葛藤ととらえればすべては片づく。


そして大統領・オバマは米国の世界戦略維持にとって日本が不可欠の存在であることを再認識するに至ったに違いない。日米軍事同盟なしに米国単独で中国の台頭を押さえ込むことができないことは明白であり、逆に日米同盟さえ維持すれば、ナンバーワンの地位を維持できるのだ。


いくら日本を余り好きでないオバマでもその辺は理解したであろう。激突のコースをたどるかも知れない2超大国の未来史の展望のなかで、首脳会談はひとときの緊張緩和だけをもたらす、同床異夢の性格を帯びるものであった。 


既存の超大国が新興の超大国に取って代わろうとされた場合、歴史においては十中八九戦争による決着しかない。しかし、現在は核兵器のブレーキがこの方式による解決を常に否定する。その台頭した中国の国家主席・習近平が何を言うかを世界中が固唾をのんで見守る中で、会談は8時間にわたって行われた。


習の基本的ポジションは就任以来明白である。つまり「中華民族の偉大なる復興」である。全人代後の内外記者会見で、周は「中華民族を世界諸民族の中でさらに強力な存在として自立させる」と述べたのだ。


これはまさに中国の王朝、殷・周・秦・漢・隋・唐・宋・元・明・清の多数がそうであった中華帝国の復活を夢見ていることに他ならないのである。


会談で習近平は、意識的に日本など眼中にないような発言姿勢を維持した。その核心部分が「太平洋には米中を受け入れる十分な空間がある」と述べた点だ。まさに尖閣列島を含めた東シナ海も南シナ海も中国の海域であると言わんとしているのだ。


沖縄ー尖閣ー台湾ーフィリピンと続く第一列島線を突破して太平洋深く進出するという戦略をいみじくも口にしたのだ。尖閣諸島については「国家の主権と領土を断固として守る」と言い切った。あきらかに尖閣を最大限に活用した民族統合戦略である。


日本の存在などは無視して中国と米国で太平洋を2分割しようと日米関係にくさびを打った側面もある。


これに対してオバマは、尖閣問題で「日中両国は話し合いによって両国の緊張を和らげるべきだ」と主張しつつも「アメリカは、主権に関わる問題については、いかなる立場もとらない」と述べた。これは主権に介入しないが、安保条約の義務は履行せざるをえず、そのような事態を招いてくれるなと懇望をした形であろう。


さらに「中国の平和的な台頭を歓迎する。平和的な台頭は中国が世界の問題に対等な立場で取り組むことにつながる」と述べた。「平和的な台頭」とは何かを端的に言えば@南沙諸島、尖閣諸島での海洋膨張主義をやめるべきだA人権を抑圧して国内を押さえるような政策をとるべきでないーの2点に尽きるだろ。


「平和的な台頭」を軸に、米中の経済関係を強化してウインウインの関係を樹立しようということにもつながる。


要するに簡単に言えば、習近平は「中国は大国である。米国は利益を認めよ」であり、オバマは「国際秩序を破壊するような台頭は許さない」というところであろう。これは言いっ放しで方向は出ていない。


また焦点の中国の軍部によるサイバー攻撃の問題についても、「オバマは何も出来ない」という国内の批判を受けて、言及したが、習は「サイバーセキュリティーに関する報道の急増に留意する。中国からの脅威との印象を人々に与えているかもしれない」とまるで報道を誤報と主張。


加えて「中国も被害国だ」と開き直った。これを庶民レベルに翻訳すると「盗人猛々しい」ということになるが、オバマおよび米国民はカチンときたに違いない。


一連のやりとりから浮かび上がるところは習近平のしたたかさであり、容易に米国の圧力には屈しない姿勢である。会談は6対4で習近平ペースで展開したように見える。個人的な力量の差が出た感じが濃厚だ。習は尖閣などでオバマが戦争突入を極端に嫌っていることを見透かしているのだ。


こうして超ヘビー級ボクシングはジャブの応酬で、習の優勢勝ちで終わったが、中国の異質な軍国主義膨張路線と、それを改める気持ちなどさらさらないことが鮮明になった。これに手をこまねく米国の姿が浮かび上がった。


しかしかねてから指摘しているように、首脳会談はすること自体に意義がある。全体的に見て極東の緊張が一時的であるにせよ緩和することへの一助にはなった。


会談結果を見て浅薄な政治家には、ニクソンが行った日本頭越しの米中接近を予想する向きがある。しかし、まず頭越しはあり得ないと思う。なぜなら米ソ冷戦時代の世界情勢の中での中国との関係改善は、ニクソンにとって致命的な重要性を帯びるものであったからだ。


翻って現在台頭する中国に、日本無視の接近をした場合米国の立場はどうなるかだ。日本の離反を招いたら米極東戦略そのものが成り立つまい。GDP1位と3位が手を握ってやっと中国の覇権主義に水を差すことが可能になるのだ。


首相・安倍晋三が9日「日米関係は同盟関係であり、第7艦隊の拠点が日本にあるからこそ米国はアジアでのプレゼンスを守ることができる。米国が上海に基地を移すことはあり得ない」と述べたのは、紛れもなく米国への強いけん制である。


日米同盟は現在のところ世界最強の軍事同盟であり、この基本構図をオバマが無視できるはずがない。一方、習近平は在任10年間に米国を追い抜いてトップの超大国に躍り出る意気込みだが、ことはそう簡単には進まない。


既に国内は紛争やテロで満ちている。国民の不満は充満しており、共産党1党独裁の矛盾は拡大している。これが習近平体制の維持を常に揺るがせ続けるだろう。任期中に独裁政権崩壊がないとは言えまい。これが最大かつ唯一の躍進阻害要因だ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年06月07日

◆なぜここで橋下に“救いの手”なのか

杉浦 正章


安倍官邸の「誤算」を分析する
 

エンガチョは不浄のものを防ぐために囃したてる子供による口遊びのひとつである。参院選を前にして、その「橋下エンガチョ」とは一線を画さなければならない時に、どうして首相・安倍晋三があえて“感染”してしまったのだろうか。


八尾空港でのオスプレイ訓練提唱は、その無責任さと実現性の無さにおいてまるでルーピー鳩山の「普天間基地は最低でも県外」発言に勝るとも劣らぬものがある。


大阪市長・橋下徹のパフォーマンスは毎度のことだが、問題は首相官邸が受け入れたことにある。幹事長・石破茂は反対しており、与党一体となって参院選挙に当たらなければならないときに、維新と“同一視”されるリスクを負う必要は全くないのだ。


「慰安婦発言」で生じた失地回復のための橋下の“悪あがき”は、ここに来て頂点に達した感がある。普天間基地以上の人口密集地にオスプレイの訓練を受け入れるというのだ。


八尾空港周辺約1キロ以内には小中高校などが計11校もある。市民が危険極まりない状態に置かれるのは目に見えている。それを無視した上での独断専行だ。橋下は八尾市長でもなく大阪市長だ。八尾市長・田中誠太は「何の相談もない」と激怒して、反対をしているにもかかわらず、越権行為を断行したのだ。


まさに自分が生き延びるためには、地域住民を犠牲にしてでも手当たり次第にパフォーマンスを繰り返す。橋下の本質がそこにある。しかし“がめつい奴”はもう大阪でも流行らないことを知らない。


“橋下株”は「慰安婦・買春」発言で、10分の1の投げ売りでも誰も買わない事態に陥ったが、ここで安倍官邸があえて“買い”に転じた背景はなにか。


まず第一に安倍には橋下とのしがらみがあり、いつかは救いの手をさしのべたいと考えていたフシがある。安倍は昨年春には橋下から維新の党首への就任を持ちかけられたほどであり、以後は腹心の菅に指示して、接触を維持してきた。今回も菅が動いたことは間違いない。


首相という国のトップが橋下と会談することの意味は、単に会っただけでも地に落ちた政治家としての存在を再認知する性格を帯びる。それだけで維新内部でも“橋下復権”につながる政治性を持つ。参院選後の連携をにらんでいることも間違いない。


橋下にしてみれば慰安婦発言は別として、村山談話や河野談話見直し論を首相になる前の安倍から吹き込まれていた経緯があり、その発言は安倍に強く影響されたものである。慰安婦発言で窮地に陥った橋下は度々自民党政権が歴史認識部分で何も同調しないことに不満を表明している。


こうした事情を背景にする中で、橋下のもとでオスプレイの八尾引きうけの話が進展し始めた。総選挙で落選して、沖縄を拠点とする地域政党そうぞうの代表・下地幹郎が1か月前に橋下に働きかけたのがきっかけだ。


下地は橋下が府知事時代から「普天間空港の大阪空港への移転」を主張していることを知っており、橋下なら引きうけると踏んだのだ。案の定橋下は下地提案に飛び付いた。オスプレイを八尾で引きうけることの利点を橋下は、第一に慰安婦発言で生じた軽蔑と怨嗟の声をそらすことができると考えた。


また米国に対しても維新の政党としての立ち位置を明示することが可能とみたのだ。こうした方針は大阪だけで唱えていても何の効果も生じ得ない。政府に申し入れることによって初めて動き出す。そこで府知事・松井一郎あたりが菅に接触して、事を運んだに違いない。


菅にしてみれば何とか助け船を出したいと思っていた矢先のことでもある。安倍との会談まで設定したのはどちらが提案したか分からない。しかし鐘が鳴ったか撞木が鳴ったか、鐘と撞木の合いが鳴るである。双方の思惑が一致したのだ。


こうして6日の会談が実現、安倍は防衛相・小野寺五典を呼んで、八尾でのオスプレー訓練を指示するにまでに至ったのだ。


しかし官邸が事前に防衛省から可能性を聴取していないわけがない。防衛省の専門家筋は「地元の猛反対が予想される上に、人口密集地では無理がある」と漏らしており、小野寺も同日夜のテレビ番組で「所在地の市からは歓迎の話が出ていない」と浮かぬ顔であった。自民党からも反発の声が上がった。


前副総裁・大島理森は「参院選前にどういう意図があるのだろうか。いささか違和感を率直に感ずる」と疑問を呈した。すでに石破は4日の段階で「軍事合理的にどうかという観点が全く抜けている」と指摘している。


こう見てくるとなぜ安倍が「えんがちょ橋下」に会ったかがくっきりと見えてくる。八尾の実現性はともかくとして、橋下に会談することだけで“義理”を果たしたのだ。八尾の例を引き合いに、全国の自治体にオスプレイ引きうけの機運をみなぎらせるという判断などは“後付け講釈”そのものだ。


しかし首相たるものは、内外から厳しい批判を受けたことを取り繕うための橋下のパフォーマンスに“加担”したと受け取られることは極力避けるべきであった。しかも、慰安婦発言はほとぼりが冷めるどころか、海外でも尾を引いているのだ。


ただでさえ海外からは安倍と橋下は“同根”と見られている。参院選対策上も対外的印象の上でもマイナスとなることは否めない。安倍はこのところ働き過ぎで正常な判断が鈍ってきているとしか思えない。「殿ご乱心に」気をつけた方がよい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年06月06日

◆最後まで“定数”で誤算を重ねた民主党

杉浦 正章



自公ペースで国会閉幕へ
 

終盤国会は26日の会期末まで3週間となったが、最重要法案である衆院の定数を「0増5減」に是正する区割り法案は、参院で審議のめどが立たず、会期末に衆院で再可決により成立する方向となった。


国会運営は総選挙圧勝を背景とする自公ペースで展開、野党はアベノミクスの好調に気おされて突破口を見いだせず、“凡打”も打てないままの不調に終わった。


とりわけ民主党は「0増5減」法案に賛成しながら、その区割り法案に反対するという支離滅裂な戦略を展開して、誤算に次ぐ誤算を重ねた。もはや国会では選挙制度の抜本改革は不可能であることが露呈して、民間有識者による選挙制度審議会に委ねるしか方法がない流れとなった。


自民党の国会対策は、選挙制度改革を巡って“老獪(かい)”とも言える対応をとった。まず幹事長・石破茂が出来もしない定数大幅削減策を昨年の与野党合意案への対案として提示した。比例区を30議席削減した上に公明党を意識して優先枠を設けるという憲法違反につながりかねない“愚案”だ。


これが“呼び水”となってもともと80議席削減を主張していた民主党に加えて、維新が144議席削減、生活が80議席削減とまるで削減競争の様相を呈した。先進国でも下から2番目に議員数が少ない日本の国会を、さらに縮小して“機能不全”に落ち入ることが目に見えている“大愚案”ばかりだ。


石破の狙いは、ごちゃごちゃで訳が分からないようにしてつぶすところにあったのだ。政党間では個利個略が先行して、選挙制度の抜本改革など不可能と判断した上での対応であった。結局選挙制度審議会に委ねざるを得ないと読んでいるフシが濃厚である。
 

一方、民主党は、総選挙大敗で2線級の執行部が成立、代表・海江田万里以下いくらあがいても攻勢の機会をつかめなかった。最初の大誤算はいったん年末の臨時国会で成立させた「0増5減」法に基づく区割り法案の反対に回ったことだ。


きっかけは各地の高裁で衆院の定数の現状に違憲判決が続出したことだ。マスコミが大きく取り上げたことに惑わされたに違いない。いったん賛成した法律に反旗を翻すという前代未聞の対応に出た。いまやマスコミの動向だけが指針となる何でも反対政党に落ちぶれた民主党の姿をいみじくも露呈した。


しかしマスコミの論調は、民主党の意に反して逆であった。すべての全国紙が「0増5減」の区割り先行処理を主張したのだ。中には読売新聞のように高裁の「無効判決」を「乱暴すぎる」と批判するケースまで出てきた。


総選挙を無効とする“エキセントリック判決”は確かに判決の方に無理があるのだ。その後の世論調査でも65%が区割り法案の今国会成立を望んでおり、民主党の法案反対は置いてけぼりを食らった形となったのだ。
 

そして第2の誤算は、自公両党が実行するであろう区割り法案の衆院での再可決を、マスコミが「多数の横暴」と批判すると読んでいることである。「多数の横暴」を主張して参院選に臨めば、劣勢を挽回できるという浅はかな判断だ。


しかしマスコミの論調は前述のようにとりあえず区割り法案を先行処理して、抜本改革は選挙制度審議会に委ねよという方向にある。したがって衆院での再可決はマスコミはやむを得ないものとして黙認する方向だろう。「多数の横暴」と批判することはあるまい。


最後の誤算は民主党は苦し紛れに5日、みんなの党の「18増23減案」という怪しげな定数是正案の参院での同時審議に野党を扇動して乗ったことだ。これも無責任な参院審議の遅延策に他ならない。なぜなら自公は反対だから衆院に回っても絶対成立しないことが目に見えているからである。


よしんば成立したとしても区割りが確定して法案が成立するまでには1年以上かかる。これは早期の定数是正を求めた最高裁の違憲判決を事実上無視することになるのだ。高裁判決を受けて最高裁の判決は秋にも出される方向であり、「0増5減」すら実現しなければ再度違憲または無効判決が出され、国会への不信は抜き差しならぬものとなるだろう。
 

こうして民主党は“一大誤算政党”の様相を呈したまま、参院選に突入することになる。終盤国会の展開は、おそらく参院での区割り法案をめぐり膠着状態が続くだろう。そうこうするうちに4月23日に衆院で可決された同法案が憲法の60日規定により22日以降衆院での再可決が可能となる。


野党が急展開で方針を変更しない限り翌週の24日から会期末の26日までの間に衆院での再可決という流れになるだろう。可決は、与党が「野党は0増5減法案に賛成しながら区割りに反対した」と総選挙で攻撃するプラスの材料となるだろう。


みっともないが民主党は今からでも遅くない。最後の誤算だけは実行せずに区割り法案の賛成に転ずるべきだ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年06月05日

◆尖閣「棚上げ合意」はありえない

杉浦 正章



“臭気ふんぷん”の野中発言を検証する
 

田中・周恩来会談で尖閣問題で「棚上げ合意」があったとする自民党元幹事長・野中広務の誤算は、まだ「生き証人」がいっぱいいることを失念していることであろう。


72年の会談に携わった外交筋は「死人に口なしだと思ったら違う。本筋を知っている人は多い。」と、合意の存在を真っ向から否定する。事実筆者も田中角栄から尖閣への言及について「あのまま帰ったら、右翼に殺されちゃうから触れただけだ」と聞いたことがある。


野中は中国ペースに引きずり込まれたか、自らそのペース乗ったかのいずれかであろう。疝気筋の“ねつ造”は国益を害すること甚だしい。


北京の記者会見における野中発言は、1972年9月の日中国交正常化首脳会談直後に箱根で開かれた自民党田中派の青年研修会で、田中が「尖閣諸島の領有権について日中双方が棚上げを確認したと」語ったというものである。


野中は中国共産党政治局常務委員・劉雲山に対しても「田中氏は双方が棚上げし、そのまま波静かにやっていこうという話をしていた」と伝えた。さらに野中は「当時のことを知る生き証人として、明らかにしたいという思いがあった。私としては、なすべきことをしたという思いだ」と胸を張ったが、一連の発言は直感的に見ても論理上も全く“臭気ふんぷん”たるものである。


まず第一に田中は外務省の中国課長・橋本恕(のち中国大使)の徹底的なレクを受けて、すべてがピシリと頭に入っていた。天才政治家が命がけで行った交渉である。理論武装は完璧であり「棚上げ合意」などという、日本の対中外交にとって致命的な発言をすることはあり得ない。


尖閣は日本固有の領土であり、交渉の対象にはなり得ないのだ。


次ぎに箱根の研修会は議員に対してではなく地方党員向けのものであった。当時野中は京都府会議員であり、その程度のレベルの党員らに対して外交の核心部分を打ち明ける可能性はゼロと言ってもよい。


官房長官・菅義偉が4日午前「自民党を離党された方だ。政府として一個人の発言にいちいちコメントすることは差し控えたい」とまず野中を“軽蔑”する発言をした。


その上で、「中国側との間で、棚上げや現状維持で合意した事実はないし、棚上げすべき問題も存在しないのが政府の公式的な立場だ」と真っ向から否定した。外相・岸田文雄も「わが国外交の記録を見る限りそういった事実はない 」と否定した。


そもそも「棚上げ」という言葉は、72年の首脳会談からかなり後に中国側が使い始めたものであり、顕著な例がトウ小平の発言だ。


トウ小平は1978年に日本記者クラブにおける会見で「一時棚上げにしてもかまわないと思います。十年棚上げにしてもかまいません。我々の、この世代の人間は知恵が足りません。次の世代は、きっと我々よりは賢くなるでしょう。そのときは必ずや、お互いに皆が受け入れられる良い方法を見つけることができるでしょう」と発言している。


従って田中・周会談で出る言葉ではない。岸田が述べる「我が国外交記録」でも全くその発言はない。外務省の記録はねじ曲げられているという学者がいるから、中国側の資料を紹介する。


首脳会談に同席した中国外交部顧問・張香山の回想記は次ぎのようなやりとりを紹介している。会談の最後の場面で田中が切り出した。


田中:一言言いたい。中国の尖閣列島に対する態度如何をうかがいたい。
周恩来:この問題について今回は話したくない。今話しても利益がない。
田中:私が北京に来た以上提起もしないで帰ると困難に遭遇する。今私がちょっと提起しておけば彼らにも申し開きが出来る。


周恩来:もっともだ。そこは海底に石油が発見されたから、台湾はそれを取り上げて問題にする。現在アメリカもこれをあげつらおうとし、この問題を大きくしている。


田中:よしこれ以上は話す必要がなくなった。またにしよう。
周恩来:またにしよう。いくつかの問題は時の推移を待ってから話そう。
田中:国交が正常化すればその他の問題は解決出来ると信ずる。
 

この会談で特筆すべきは田中が冒頭で筆者に語ったように、自民党右派や右翼の動きを気にしていることだ。「私が北京に来た以上提起もしないで帰ると困難に遭遇する。今私がちょっと提起しておけば彼らにも申し開きが出来る」と述べたと言うことの意味は、国内対策で一応触れただけと言うことであろう。従って「棚上げで合意」を目指したような大げさなものではさらさらない。


折から中国は人民解放軍の副総参謀長・戚建国が2日尖閣問題の棚上げを主張しており、野中はこうした中国側の意向を「忖度(そんたく)」して「死人に口なし」発言を“ねつ造”した感じが濃厚である。政府筋も「中国に都合がよいように言わされているだけだ」と指摘している。


野中は帰国後も「私は今回のことを言うために中国に行ったのであって、撤回などしない」と強弁。中国に利用されたという指摘に対し、「利用されたくないし、中国の人も利用しようとは決して思っていない」と発言した。


しかし検証すればするほど、怪しげな姿が浮かび上がってくることは否めない。京都府議レベルよりも田中に格段に近かった筆者も「絶対なかった」と断言しておこう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年06月04日

◆中国のTPP参加に反対する

杉浦 正章



意図は日米戦略へのくさびだ


7日からの米中首脳会談に向けて中国がしきりと融和ムードを演出し始めた。狙いは習近平の国家主席就任以来最重要の首脳会談への地ならしである。


外交・内政で何ら成果を上げていない習近平にとって、首脳会談の成功は今後の政権安定に不可欠の重要ポイントとなる。融和演出の一つは環太平洋経済連携協定(TPP)への参加の可能性をほのめかしていることだ。


経済重視のオバマにとっても極東の緊張緩和と中国との互恵的経済関係の確立は、極めて重要である。しかしオバマは独走的に中国のTPP参加を認めるべきではない。「レアアース禁輸」を指摘するまでもなく、政治戦略のために貿易秩序を平気で破壊する国家である。


その参加は、自由貿易主義の理想に180度背馳(はいち)し、米国の極東戦略にくさびを打つものに他ならない。首相・安倍晋三も3日反対姿勢を鮮明にさせた。
 

今回の米中首脳会談ほど、日本が絡む問題は珍しい。会談のテーマには尖閣問題を避けて通ることはあり得ないからだ。加えて日米による中国封じ込めの意味合いを持つTPPへの中国参加問題は、米国の極東戦略そのものの大転換につながる要素を持つ。


中国商務省の沈丹陽報道官は30日 、同省のウェブサイト上で「中国は慎重な研究および平等と相互利益の原則に基づいて」交渉への参加の是非と可能性を分析するとの方針を明らかにした。


中国のこれまでの態度は共産党機関紙・人民日報が2月に「米国が日本をTPPに取り込もうとしているのはアジア太平洋地域における中国の影響力を抑制するためだ」と日本の参加を強くけん制しており、まさに180度の転換とも言える。


俗に言えば図々しいことをよく言うものである。中国は、2010年に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件後に、レアアースの日本への通関を意図的に遅滞させる事で、事実上の対日禁輸措置に踏み切っている。この「中国危機」で苦汁をなめた日本企業は中国への依存度を減らし、逆にレアアースの価格は暴落する結果を招いた。


TPP交渉は参加国間の貿易・投資の障壁を除去することが第一の目的であり、自国の外交・安保路線を露骨に反映すべきでない事はイロハのイだ。


さすがに安倍も3日の記者会見で 「TPPは開かれた協定であり、いかなる国においてもTPPの要求する高い水準を満たす用意があり、正式に参加表明する場合はTPP参加国が判断することになると思う」と発言した。


「高い水準の用意」とは、とても中国がそのレベルに達していないことを言わんとしたものであり、明らかにに中国の参加には今後反対していく姿勢であろう。中国の転換はTPP参加で日米協調の極東戦略にくさびを打ち込むことに狙いがあることは間違いない。


問題は対中経済関係改善を重視し、国務長官に親中派のケリーを据えたオバマがどう反応するかである。ここは間違っても前向きの発言をすべきでないことを米国にクギを刺しておく場面である。安倍は外務省または米大使館を通じて早急に反対の方針を米国に鮮明化しておく必要がある。


一方、尖閣問題で中国人民解放軍幹部が尖閣諸島の領有権について、1972年の日中国交正常化の際に、問題を棚上げすることで日本と中国双方が了解していると主張した。官房長官・菅義偉が直ちに反論しているが、狙いは対日関係にはない。米中首脳会談への布石だ。中国の得意とする変幻自在の融和策である。


尖閣問題がどのような話になるかだが、オバマは日米安保条約の“しがらみ”で、中国が軍事行動に出て日中軍事衝突となれば、介入せざるを得ない場面に追い込まれている。何とかこの窮地を脱したいというのが本音であり、習近平に対して“自制”を求めることは間違いあるまい。


首脳会談は恐らく2人だけの場面が設定されるものとみられ、ここで機微に渡る問題は話し合われ、外部にその詳細は発表されないだろう。


オバマがカリブ、中米3国を訪問する習近平に招待をしたことが会談実現の経緯とされている。しかし習の方も、3国歴訪を“おとり”に使って米国の招請を導き出した可能性が高いと見る。あうんの呼吸での首脳会談であろう。


オバマは、中国のサイバー攻撃にクギを刺す場面もあるだろうが、招請しておいて会談を失敗に持ち込むようなことはあり得ない。戦時でなく平時の首脳会談の「定理」は常に成功することなのである。


したがって違いは際立たせずに、協調が前面に出る会談となるだろう。大局から見れば極東の緊張緩和にとってプラスに作用することは間違いない。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年06月03日

◆安全性の高い原発輸出は日本の責務だ

杉浦 正章
 


原子力委は安保無視の暴走を止めよ


農家の「所得倍増」といい、原発のトップセールスといい、首相・安倍晋三は池田勇人そっくりだ。池田はフランスの大統領ド・ゴールから「トランジスタのセールスマン」と評されたが、めげずに初心を貫徹して日本の経済を躍動期へと導いた。


国内の原発が稼働しないのに外国へのセールスをする安倍への批判が強まっているが、安倍は全く意に介する必要はない。


捨てておけば粗悪な中国や韓国やロシアの原発が世界中を席巻して、危機的な状況に陥る。国内の原発再稼働も国の安全保障などそっちのけの原子力規制委員会暴走状態に歯止めをかけ、早期に再稼働すべきだ。


安倍の休日返上のセールスにより、原発購入を前提とする原子力協定がトルコやアラブ首長国連邦、インドなどとどんどん締結されつつある。


この動きにいまや民放における“反安倍”への傾斜をあらわにしているTBSのコメンテーターらが口を極めて批判を展開。2日も元官房長官・武村正義が「核兵器や事故の経験のある日本がどんどん輸出すると言うことはいかがなものか」と主張。


昨年、衆院解散はなく同日選挙だと最後まで言い続けて予知能力の無さを露呈した元総務相・片山善博も「汚染処理で右往左往しているのに堂々と世界に売り込むのはよほど神経が図太くなければできない」と皮肉った。二人とも感情論で物を言っており、世界の原発の現状を知らない。 


原発輸出は、実は日本が従来から世界を席巻しているのだ。原子炉の中核中の中核である圧力容器は、事実上日本しか作る能力がなく、世界の原発市場の8割を制している。原子力容器は鋳物の鋳造などでは出来ない。鋼鉄の構造物である。


原子炉の5重の壁の1つとして炉心で発生した放射性物質および放射線が炉外に漏れないように確実に外部と遮断し遮蔽し、高温高圧に耐えて耐食性に優れ、冷却材と化学反応を起こさないことが必要とされている。これを日本製鋼所が一手に引きうけているのだ。従って輸出をするなと言う理論は成り立たない。


とりわけろくろく自前で製造することもできない韓国や中国、そしてチェルノブイリの核爆発を起こしたロシアのセールスが活発化していることに注目する必要がある。


中国の原発はフランスのアレバが作っているが、中国が独自に生半可な知見で作れる構造物ではない。新幹線の事故を想起すればよく分かる。ずさんな国民性で原発を輸出されてはたまらない。韓国も液晶同様に日本のノウハウを真似るつもりのようだが、「原発ばかりは教えない」(政府筋)とさすがの日本も甘くない。


こうした国々が原発をつくって事故を起こせば、ことは一国だけの問題ではない。周辺諸国にも影響する。放射能は偏西風に乗って世界を回る。なぜ福島で事故が発生したのに世界各国の日本への信頼が高いかだが、トルコのケースがすべてを物語っている。トルコは原発事故を経た日本だからこそ、その技術力を信用しているのだ。
 

安倍が1日に日テレのインタビューで「もともと高い技術を持った日本が、事故の経験により安全なものを提供してくれるという判断がある」と述べているのがそれを物語る。安倍は「要望のあるところには輸出していくべきだろう」と述べているがその通りだ。


発展途上諸国ですら日本の技術を信用しているのに、まったく信用しないマスコミ勢力が日本に存在する。いまやイデオロギー的に反原発を唱えている朝日、東京両紙やTBSだ。


総選挙で脱原発派は完敗したのに、時々“病気”が顔を出し、あわよくば参院選で巻き返そうと狙う。そして問題は「原子力村右代表」で委員長になったはずの規制委・田中俊一だ。規制委は田中路線が続く限りドミノ倒し的に原子炉を破棄して行く可能性がある。


「このままでは50原発の内残るのはわずかに10原発」という危惧すら専門家に生じている。規制委は敦賀原発では活断層の存在を認定した。朝日は鬼の首を取ったように「退場勧告は当たり前だ」と勝ち誇った社説を展開した。


しかし読売によると、専門家チームの東京学芸大准教授・藤本光一郎も、「学術論文には到底書けないもの」と述べているずさんさだ。日本原子力発電(原電)が再度調査して6月に報告を出すというのにそれを待たない拙速さだ。


田中は今後事故を起こしたときの責任が自分に回ってくることを恐れていると言われている。一部マスコミにも媚びを売っているとしか思えない、片寄った委員会運営だ。これは原子力規制委員会設置法の1条が「委員長及び委員が専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する」と規定していることと明らかに違反する。


また3条は規制委員会は、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資する」とあることにも反する。原子力政策はまさに安保政策そのものであり、その点を規制委は全く理解していない。


このまま原発が稼働しなければ、国民が電気料金の高騰にあえぎ、企業の国外脱出が加速し、円安とも相まって燃料費輸入で国富は5兆円も損失する。代替可能エネルギーなどはまず先陣を切ったドイツが太陽エネルギー買い入れ政策の失敗で電気料金が高騰、破たんに瀕している。しょせんはまだ砂上の楼閣に過ぎない。


反対派のマスコミも少なくとも発展途上国並みのレベルにまで知見を高める必要がある。亡国の反原発で気勢を上げるようなことは、自らを海外移転してやって欲しい。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月31日

◆川柳で政治を見ればよく分かる

杉浦 正章
 


特賞は<変わるけど最初の言葉が本音でしょ>
 

シコシコと集めた朝日川柳とよみうり時事川柳を一挙大公開して政治を切る。杉の子とあるは自作。
<ミクスより節句働き先つぶれ>(杉の子)


政権発足から五か月を過ぎたが、この間、首相・安倍晋三が終日、自宅で過ごした“完全休養”はわずか3日間だという。筆者がいの一番に指摘したように“異常”さを感ずるほどの安倍のロケットスタートだ。遅ればせながら官邸の首相周辺もそれに気付いて、健康を気遣う声が出始めたが、本人はよほど体調に自信があるのか、意に介さない。


休日を活用して外遊や地方視察などをこなす勢いが止まらない。連休などはほとんど返上だ。官房長官・菅義偉は30日「海外を訪れ、国益のため頑張りたい、という危機感で脇目も振らず働いている」と弁護しながらも「正直言って、週1回は休んでほしいと強く思っている」と本音もぽろり。


株価暴落で、アベノミクスも一休みの感。<暴落は神の戒めでございます> (朝日)と達観して、安倍は休養をとるべきだ。体力を過信すると本当に御身が危ない。極度の疲労でバランス感覚を失い、変な発言をするようになる。
 

そのアベノミクスバブルよりも、やはり先に弾けてしまったのが維新バブル。薄汚い「慰安婦発言」の連発と、これもまた薄汚いマスコミのせいにした撤回の連続。<変わるけど最初の言葉が本音でしょ>(朝日)と本質を見抜かれた。


維新共同代表・橋下徹の人格が疑われるが<「撤回」を「徹回」と書く人が増え>(読売)と親からつけて貰った名前までけなされてしまった。本当に弱者に目が行かない政治家の典型を見せた。<母上が慰安婦だったら何と言う>とまで朝日でこき下ろされて、「あんまりだ」と影で泣いてももう遅い。


その言い訳も反省の色などかけらもなく、しゃべればしゃべるほど恨まれていることを知らない。<傷に塩ふり小僧得々>(朝日)と、「小僧」呼ばわりされてしまったが、ぴったりの形容だ。米国訪問も中止したがその言い分が「メリットがない」ではアメリカもしまいには怒る。<「メリットない」俺のセリフと米が言い>(朝日)だそうだ。


それにつけても大阪のマスコミはレベルが低い。「市議会で問責決議が通る」「市長選と参院選のダブル選挙だ」と大騒ぎしたが、公明党の離反であえなくぽしゃった。<大阪は期待ばかりで記事を書き>(杉の子)をやってはいけない。橋下は最後にとどめを刺された。<これからは自己弁護士と称すべし>(朝日)。


その橋下発言が女性蔑視に敏感な国際オリンピック委員会(IOC)にまで影響を及ぼし、無知極まりない都知事・猪瀬直樹のイスラム批判発言と“増幅”しあっているという。


30日には3都市がプレゼンテーションをしたが、東京招致が風前の灯のようだ。石原慎太郎の「暴走老人」を引き継いで猪瀬が「暴言老人」になってしまった。まったく<言わずもがな石原猪瀬どこか似て>(読売)である。


朝日から<引き継ぎがうまくいってる東京都>と皮肉られるわけだ。もっとも石原には<俺ならばまたかで済んだと前都知事>(朝日)という見方もある。さもありなんだ。安倍が猪瀬を弁護したが<知事の尻拭う人のは誰拭う>(朝日)はいささか下卑ているが、白い犬の尻尾だ。尾も白い。


<変な時期変な国行く変な人>(読売)とやゆされたのが内閣官房参与・飯島勲の北朝鮮訪問だ。キッシンジャー並みの隠密外交のはずだったが、孤立していた北はこれをフルに活用した。<極秘だと行けば待ってたショータイム>(朝日)で、北は空港に報道陣を詰めかけさせて、大々的にPR。


話の内容は全く外に出ていないが、韓国にしてみれば<竹島に加え飯島気に障り>でカチンときたのだろう。散々批判して、お得意の与太情報や謀略情報を新聞に流している。秘密外交はどの国でもやっていることで、韓国などに流したら、あっという間に謀略に使われてしまって、できることもできない。


伝達しないことが100%正解であった。外務省にも知らせない訪朝を、なんで韓国に知らせなければならないかだ。米国は信用出来るから少しは事前に連絡してもよかった。飯島訪朝は緊張緩和には役だった。<ミサイルの春の公開展終わり>(読売)となったからだ。
 

こうして政治は参院選一色となった。支持率が安倍も自民党も高く、自民党が好調であることは間違いあるまい。朝日は<勝たせたくないけど勝てる党がない>と悔しがっているが、これは間違いなく同社の本音だ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月30日

◆県連の“普天間独走”で自民苦境

杉浦 正章



公認を取り消して統制を取れ
 

安倍政権が「ルーピー鳩山」と類似の落とし穴に落ちそうになっている。普天間移設をめぐり自民党沖縄県連が27日、地域版公約に県外移設を明示、党本部に容認を迫っているからだ。


もし容認すれば首相・安倍晋三の外交・安保戦略の1丁目1番地を否定することになる。


元首相・鳩山由紀夫が「最低でも県外」を二転三転させて71%の支持率が17%に急落したのと同じケースだ。ことは一地方選挙区における勝敗の問題ではない。


野党は全国レベルのキャンペーンに使おうと、手ぐすねを引いて待っている。自民党執行部は安易な妥協をすべきではない。公認を取り消してでも、国政の核心を維持すべきだ。


とにかく、沖縄県連は視野狭窄(きょうさく)としか言いようがない。昨年の衆院選挙でも地域版公約で「県外」と書いたから、参院選も「県外」と書かなければ負けるというのだ。昨年の総選挙は自民党が野党としての立場であり、便宜的対応はいわば許容の範囲だ。


しかし安倍政権が成立して普天間の辺野古への移設は最重要政策課題として動き出している。安倍は2月の訪米で大統領・オバマに普天間早期移転を確約。3月には辺野古沿岸部の埋め立てを県知事に申請している。移転へのスケジュールが動き出しているのである。


これに対して沖縄県連は年明けから選挙に勝てないことを理由に県外移転の主張を強め始めた。政府・与党は3月に幹事長・石破茂、4月に官房長官・菅義偉、5月に政調会長・高市早苗を派遣して、説得を試みたが納得を得られないまま。ついに、県連は27日の議員総会で県外移転を決定してしまったのだ。


県連幹事長・照屋守之が上京して党執行部に報告する。このまま党本部が認めれば超重要政策で党本部と県連が決定的にねじれたまま総選挙に突入することになる。


これは政権党として絶対にあってはならない姿だ。なぜなら、自民党は鳩山の選挙公約「最低でも県外」が、オバマへの「トラスト・ミー」に大転換して、さらに二転三転して結局「辺野古移設」へと戻ったことを、倒閣の最大の材料として攻撃した経緯がある。


鳩山は抱える矛盾にひとたまりもなく総辞職する羽目に至ったのだ。まさに因果は巡る火の車で、今度は自民党に降りかかってきたのだ。


このため石破は「調整がつかないまま選挙に突入することはあってはならない」と警戒感を隠さない。もちろん普天間移設推進論の石破にしてみれば県連の“独走”は目に余るものがあり、「基本的に地方の公約は、地方の行い得る権能の範囲内で書くべきだ。外交問題は内閣の専権事項だ」と不快感をあらわにしている。


ところが候補者の社会福祉法人理事長・安里政晃は記者団に「自民党員である前にウチナンチュ(沖縄人)なので、ウチナンチュの声を代弁していくのが当たり前だ」と開き直っている。国際感覚はゼロであり、それならば離党して“ウチナンチュ党”から出れば良いのだが、自民党の組織はフルに活用したいのだ。
 

自民党幹部の中には「沖縄の選挙で勝つためには独自に県外移設を掲げることもやむを得ない」という安易な容認論がある。また自民党の参院選公約そのものを普天間移設に直接的な言及を避け「在日米軍の再編を進める中で抑止力の維持を図る」などといった抽象的表現でお茶を濁す構想もある。


しかし問題を言葉の操作で糊塗しようとしても無理がある。県連は「普天間の辺野古移設反対、県外移設賛成」で選挙を戦うのであり、新聞テレビの焦点はここに集中することは避けられない。本部と県連のねじれはまさにマスコミの“好餌”となってしまうのだ。


これを民主党など野党が見逃すはずはない。野党がこの自民党政権内のねじれを絶好の攻撃材料とすることは確実視されるのだ。問題の核心は沖縄だけの選挙に限定され得ないことなのである。普天間移設問題が国政選挙の争点として浮かび上がるという事を意味するのだ。
 

そうなれば、事は沖縄選挙区の問題にとどまらず、全国規模で自民党圧勝ムードにブレーキをかける要素になり得るのだ。ここは自民党執行部が腹をくくるときではないか。


小の虫を殺して大の虫を助けるのだ。県連が妥協しなければ候補者の公認を取り消してでも、スジを通すときだ。公約に普天間移設の方針を貫徹する方向で統制をとるべきだろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月29日

◆維新“火だるま”で「自公蜜月」へ

杉浦 正章



見直し迫られる「安倍改憲戦略」
 

「浮気されそうだったが戻った」とある公明党幹部が漏らしている。維新の「橋下自爆発言と大失速」の結果、政治の軌道が「自公ペース」へと完全に回帰したというのだ。


いったんは維新寄りに傾いた首相・安倍晋三は“維新離れ”に急転換、参院選はもちろん、政策面でも公明党を重視せざるを得なくなった。憲法改正への動きも公明党の「加憲論」を考慮に入れざるを得なくなってきている。


もちろん公明党の反対する衆参同日選挙の可能性も霧散した。公明党幹事長・井上義久は「よほどのことがない限り自公政権は続く」と胸を張っている。
 

後になって考えれば24日の与党党首会談が決定的な重要性を帯びていたのだ。公明党代表・山口那津男は28日、通常国会の会期に関して「24日の与党党首会談で、延長しないようにする国会運営を目指していこうという基本的な共通認識を得た」と言明している。6月26日までの会期を延長しない事になったというのだ。


党首会談では自公共通公約も作成しないことで一致した。幹事長・石破茂が「共通公約はどうしましょうか」と水を向けると、山口も首相・安倍晋三も「政権合意ができてまだ半年だから、作らなくてもいい」と一致したという。両者とも維新の体たらくが頭をよぎったに違いない。


共通公約づくりは、公明党が自民と維新の連携を意識して作成の方向を打ち出していたものだが、維新失速で作るまでもないということになったのだ。


さらに井上は参院選の日程について「7月4日公示、21日投開票」で一致したことを明らかにすると共に「自公で過半数は確定的だ」との見通しを示した。これに関連して公明党幹部は「参院選単独となる」と漏らしており、ダブル選挙の可能性が完全になくなったことを明らかにした。


その根拠として、自公両党は「0増5減」の衆院区割り法案についても「6月9日」成立にこだわらず、衆院通過の60日後の6月22日以降の衆院再可決・成立で暗黙裏に一致しているというのだ。「6月9日」というのは、ダブルを実現するための1か月間の周知期間を考慮して同日の区割り法案成立、7月9日の衆院選公示を意識した日程だった。
 

7月21日参院選単独実施の日程は、冒頭述べたように自公蜜月時代の復活を意味する。ダブル選では公明党の組織票が割れて、事実上連携不可能となる。この結果、参院選挙での連携も急速に進み始めており、公明党は最近、自民党の参院選候補9人の推薦を新たに決めた。公明党が推薦する自民党候補は計40人となった。


最大の理由は何と言っても橋下の慰安婦問題を巡る一連の発言にある。余りの過激さに自民は全く持て余し、副総裁・高村正彦が28日維新の現状について「火だるまになっている。個人が火だるまになるだけじゃなくて、党としても大変な打撃を負っているようだし、慎重の上にも慎重になって、もって他山の石としてもらいたい」と述べていることが象徴している。火だるまに抱きつかれても抱きついてもいけないというのだ。


産経の世論調査では自民と維新の連携を望む回答が前回4月の20.7%から10.7%へと半減した。逆に「どの政党とも連携すべきでない」との回答が33.5%から41.5%へと8ポイントも増加。


公明党との連立維持を望む意見も18.3%から20.5%に微増した。これが物語るものは有権者の「維新切り捨て」論が圧倒的であることだ。


安倍は維新が17〜18議席取るとの説があったころは、自民・維新・みんなの改憲勢力と民主党の改憲派切り取りで、参院でも3分の2を達成できると判断していたフシがある。維新失速はこの構想をも失速させた。こうしたことから安倍の改憲戦略は大きな転換を迫られる事態に立ち至った。


これを見透かしたように公明党幹部からは、改憲に柔軟ともとれる姿勢が出始めた。公明党はもともと改憲ではなく憲法に加筆する「加憲」論だが、憲法改正論議でも公明党が影響力を発揮する可能性が出てきたのだ。


参院選で維新やみんなの勢力が伸びなければ「改憲発議に必要な衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成」には公明党の協力が重要になってくるからだ。公明党は環境権などの導入を念頭に「国民的議論が熟せば、発議はあり得る」としている。


参院選の公約案にも「加憲」の方針を明示した。注目すべきは憲法9条に「自衛隊の存在」や「国際貢献のあり方」について明記することも加憲の対象としたことである。これは「加憲要素」を含めれば公明党も改憲へと動く可能性があることを物語っており、今後重要な着目点となるだろう。


維新の天国から地獄への墜落は、こうして公明党の存在感を一段と強め、安倍の右傾化傾向を公明党がチェックして軌道修正する流れが強まるだろう。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月28日

◆橋下大誤算で沈静化ならず

杉浦 正章



露呈した品性の欠如


「愚人夏の虫。飛んで火に焼く」というが、維新共同代表・橋下徹の日本特派員協会での弁明は逆効果の一言に尽きる。しゃべればしゃべるほど“三百代言”の本質が浮かび上がる。


民主党の海江田万里までが就任以来初めての名言を吐いた。「多弁を弄しているが火を油紙で包むことはできない」。まさに火に油を注いだ。政府・与党は放置して我関せずを極め込むべきではない。対外的に橋下の“特異性”を発信しなければ、日本の政治家の全体像が危機に瀕する。


橋下の記者クラブでの弁明のポイントは2つに絞られる。1つは米軍司令官に対する「風俗活用の勧め」を「法律上認められている風俗営業と言ったのに買春と誤報された」としたこと。これは文脈から言って絶対に成り立たないのであって、朝日川柳が<変わるけど最初の言葉が本音でしょ>と切っているとおりだ。


他の一つは「慰安婦制度は必要なのは誰だって分かる」を「私が容認していると誤報されてしまった」としたこと。つまり重要ポイントをすべて「誤報」のせいにしたのだ。繰り返しビデオで放映されているとおり、米軍司令官には買春を勧め、慰安婦が必要性を「誰だってわかる」と間違いなく発言している。


言い訳もここまで白々しいとマスコミの方も「あぜん」とするばかりであろう。マスコミをフルに活用して成り上がった政治家が、都合が悪くなるとすべてを「誤報」とする。卑怯極まりない性格である。


発言の根底に存在する橋下の深層心理を分析すれば、どういう育ちかたをしたのか、人間の存在をセックスアニマルとしか見られない精神状態が存在する。まず女性を「性の道具」と扱っている。


司令官に風俗の活用について「真っ正面から活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」と述べたことが如実に物語る。


とりわけ戦場の兵士に至っては「交尾期を迎えた動物」としか見ていない。そこを根源としてすべての発言が構成されており、品性の致命的な欠落が浮かび上がるのだ。これは米軍の兵士への侮辱となるばかりではない。ひたすら祖国の勝利を信じて飛び立っていった若い純真な特攻隊兵士や東南アジアの泥の中で朽ち果てた日本軍兵士らをも侮辱するものだ。


とりわけ「米英も現地の女性を利用した。ドイツも韓国にもそういう施設があった」という主張は、低次元のナショナリズムに立脚した、幼稚な反論である。子どもが「誰々ちゃんもやった」と言い訳するに等しく、国際的な“弁論の場”で通用する論法ではない。


前日の民放テレビでは通用しても、国際的日本ウオッチャーの前では通用しない。ドイツ人特派員がテレビで「ドイツも日本も他国のことを言えない。国際的には誰も納得するものではない」と述べているとおりである。


韓国人特派員が「世界各国の女性の利用を持ち出すことはまさに弁護士だ。論点を変えて自分の立場を有利にしようとしている」と述べるのももっともだ。ただし三流弁護士であり、普通の弁護士ならこんな馬脚は現さない。


外国特派員らに対して、得意の長口舌で丸め込もうとしている姿がありありと出ていたが、人の発言の分析で生きている記者という種族を侮ってはいけない。


米ニューズウイーク誌の特派員が、記事の見出しについて「『橋下氏誠意のない謝罪』とする」と述べていたとおり、既に本質は見破られている。


しかし発言が世界に発信されると、おそらく日本の有力な野党の政治家としての発言となる。国内の人気はがた落ちでも、日本を代表する政治家のようになる可能性が大きく、問題は国家的な損失につながる。たしかに発言を聞いているとまるで、自らが日本の政治を壟断しているかのような“僭越さ”と“厚かましさ”を感じたからである。


外務省は橋下発言の世界各国での反響を集めて、至急分析をする必要があろう。とりわけ韓国の米議会への卑劣なロビー活動などに利用されないか気をつける必要がある。官邸はこれを受けて対策を練らなければならない。


橋下は自らの政治責任を問われて「今回の発言に対して国民がノーと言えば、次の参院選で維新の会は、大きな敗北となる。その選挙結果を受けて党内で私が代表のままでいられるか、代表のままでいいのか論議が生じると思う」と発言した。


まるで評論家のような発言だが、普通の政治家ならこれだけの舌禍事件を引き起こしたら、自ら辞任する。自分の存在自体が、党全体のマイナスに直結するからだ。


しかし維新は共同代表・石原慎太郎が度し難い極右だし、旧太陽系の老政治家達も国粋主義的な色彩が濃い。若手は民主党などを逃げ出した日和見議員が多い。皆橋下に反旗を翻す意気込みもない。橋下がいれば大マイナスだが、どっちにしても参院選は大敗北だ。


産経の世論調査では、橋下の慰安婦発言を女性の79・3%が「不適切だ」と回答。とくに風俗業活用発言は女性の82・4%が嫌悪感を示している。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月27日

◆自民党ハト派が絶滅危惧種となった

杉浦 正章



中国の尖閣進出と北の核がタカ派を支える


「鷹化して鳩と為る」は俳句で春の季語だ。殺意ある鷹が春には温和な鳩に変わるという中国古来の伝承に基づいている。チョー難しい季語で筆者などまだ一句も作っていない。だがさすがに一茶だ。「新鳩よ鷹気を出して憎まれな」というユーモアたっぷりの俳句を作っている。


そのタカ派の首相・安倍晋三が「ヤバイ」と感じたか、「鷹」を封じて「鳩気」を出している。4月には「村山談話はそのまま継承しているわけではない」「侵略の定義は定まっていない」とタカ派丸出しだったのが、5月は「侵略についても植民地支配についても否定したことは一度もない」である。


維新共同代表・橋下徹は置いてけぼりをくらってさぞや恨んでいるだろう。まさに「新鷹よ鳩気を出して恨まれな」である。


そのハトだが、自民党のハト派はまさに絶滅危惧種に指定されそうな状態である。人がいないのだ。元幹事長の古賀誠や加藤紘一が引退、後はハト派にろくな政治家がいない。


外相・岸田文男が池田派以来の名門派閥「宏池会」の会長だが、見たところ外相をこなすのに青息吐息で、とてもハト派の雄の力量はない。まるで「自民党総安倍派」の様相だ。自民党のハト派と言えば、強弱の差はあるが吉田茂系の政治家であり、タカ派の岸信介系の政治家と好一対をなしてきた。


とりわけ岸が安保条約締結で左翼の暴動を引き起こして退陣、これに危機感を覚えた自民党が急きょ吉田系の池田勇人の「低姿勢内閣」でしのいで以来、ハト派首相がタカ派首相を数において圧倒してきた。


吉田学校の流れは池田派と佐藤栄作派に分かれ両派を保守本流と称する。池田系の首相は池田、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一。佐藤系は田中角栄、竹下登、羽田努、橋下龍太郎、小渕恵三と合計10人に達する。これに対してタカ派岸系は福田赳夫、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫の5人だ。


なぜ隆盛を極めたハト派が絶滅状態になったかと言えば、まず背景には国際環境の大きな変化が指摘できる。吉田以来のハト派は国際協調主義が基本であり、安全保障は軽武装で専守防衛に徹してアメリカの傘の下に入る。もっぱら中国など周辺諸国とは協調路線をとり経済成長に専念して国民の支持を集めてきた。
 

しかし周辺国家の軍備拡大、とりわけ中国の臆面もない膨張主義による海洋進出と北朝鮮の核武装とミサイル保持は、冷戦時代のようにソ連の核に米国の核の傘があれば良い時代ではなくなった。日米安保条約はあっても、尖閣問題や、北の核ミサイルの脅威に対しては、まず自分の国は自分で守る体制を作り上げるしか手段はないのだ。


こうした国際環境の激変は国民の意識にも変化をもたらし、旧社会党のような絶対平和主義は影をひそめた。国全体が右傾化の傾向をたどり初め、イデオロギー政党は影をひそめ、いまやハト派が左翼のような立ち位置となってしまっているのである。


こうした風潮を受けて安倍は、憲法改正発言を繰り返し、集団的自衛権の行使を米大統領オバマに約束し、敵基地攻撃能力をF35戦闘機を中心に構築する姿勢を見せる。もはや参院選挙は自民党が改憲を選挙公約に取り上げようが取り上げまいが、与野党の争点となるのは必至の状況だ。


最大のポイントである経済再生についてもアベノミクスで歴代政権がなしえなかったデフレ脱却への希望を生みつつある。国民の支持は圧倒的であり、憲法改正に関しても、世論調査は改正を是とする回答があらゆる調査で反対を上回っている。


こうしてハト派は押しまくられている状態だ。リベラル、中道、護憲の主張は自民党内で鳴りを潜めてしまった。後藤田正晴のような説得力のある論客も今はなく、最近ハト派の重鎮・古賀がテレビによく出始めたと思ったら、元官房長官・野中広務らと6月2〜4日に中国を訪問する予定であるという。


そのための“秋波”を事前に中国に送る必要があるのだろう、古賀はテレビでしきりにハト派の健在を訴える。村山談話に否定的な政調会長・高市早苗発言について「高市さんは本当に分かっているか疑問だ」と軽蔑的な発言をするかと思うと「保守本流と自負して平和憲法、平和主義を貫く」と意気軒昂。


しかし、背広にバッジがついていないのは“フツーの人”だ。迫力に全く欠ける。加藤も「改憲には時間をかけるべきだ」と発言するが、しょせんはバッジがなくては遠吠えになってしまうのだ。


バッジがついていれば慰安婦連行に強制性がみられるとした河野談話を、「証拠なしに作った」と非難の矢面に立ったであろう河野洋平も2009年に引退。こうして自民党内は、幹事長・石破茂が安倍に勝るとも劣らぬ改憲・自衛隊増強論者であり、安倍が右寄りを意識して抜擢した高市とともに、タカ派執行部を形成する。ハト派が動いてバランスをとる流れがなかなか台頭しにくいのである。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)