2013年05月24日

◆日韓ともにヘイトスピーチは止めよ

杉浦 正章



放置すれば不測の事態に至る


「憎悪発言」や「憎悪表現」をヘイトスピーチ(hate speech)という。最近日本でも東京、大阪のコリアンタウンで「朝鮮人を殺せ」「朝鮮は出て行け」などと連呼する右翼などの動きが顕著だ。


やはりそのヘイトスピーチに満ち満ちているのが韓国3大紙の一つ中央日報の論説コラム「原爆投下は神の懲罰」だ。日本人がもっとも痛がる急所にこれでもかと塩を塗り込んでいる。まさに両国間で「売り言葉に買い言葉」の状況が生じている。


放置しておけば関東大震災の朝鮮人虐殺の悪夢に発展しかねない危険をも内包する。どの国にも跳ね返りは存在するからだ。政治家はコラム批判を展開して溜飲を下げているときではあるまい。


17日の記事で筆者が「諸悪の元凶が韓国のマスコミにある」と指摘した通り、韓国のメディアの扇動的かつ感情的な報道が止まらない。


中央日報は20日、論説委員の署名入りで「安倍、丸太の復讐を忘れたか」とセンセーショナルな見出しの論説コラムを掲載した。


その中で「原爆は神の懲罰であり人間の復讐だった。ドレスデンはナチに虐殺されたユダヤ人の復讐だった。広島と長崎は日本の軍国主義の犠牲になったアジア人の復讐だった。特に731部隊の生体実験に動員された丸太の復讐であった。丸太の悲鳴が天に届いたのか。45年8月に原子爆弾の爆風が広島と長崎を襲った」と言い募っている。


今月12日に首相・安倍晋三が航空自衛隊松島基地を訪れた際、試乗した航空機の番号が731部隊と同じ「731」だったこととこじつける難癖だ。


さらに「安倍はいま幻覚に陥ったようだ。円安による好況と一部極右の熱気に目をふさがれ自身と日本が進むべき道を見られずにいる。自身の短い知識で人類の長く深い知性に挑戦することができると勘違いしている」とアベノミクスを展開する安倍を批判している。


最後に「日本に対する懲罰が足りないと判断するのも神の自由だろう」と締めくくった。再度原爆を日本に落としたいと言わんばかりの“ヘイト”に満ちた表現である。中央日報は「記事は論説委員個人の見解」と逃げを打っているが、やくざでもあるまいし、「子分がやった」はない。論説委員の記事は社を代表する記事そのものであるはずだ。


こうした韓国の新聞の過激かつ感情的な論調は何に由来しているのだろうか。もちろん安倍が就任してからの一連の歴史発言が直接的に刺激しており、これに維新共同代表・橋下徹の慰安婦是認発言が増幅させていることは確かだ。


しかし根底には恨みつくす「恨(はん)の精神」が民族に横溢していることがある。民族的な一大欠陥なのだ。


さらに現実に目を移すと韓国の三大紙朝鮮日報、中央日報、東亜日報は、進む情報革命で発行部数が激減、経営難に直面しているのだ。3紙のうち1紙が近い将来つぶれてもおかしくない状況にあると言われる。これが発行部数獲得の激烈な競争となり、部数を維持するためには「反日報道」がもっとも手っ取り早いのだ。


受け入れる読者の方も、右肩上がりの経済が「アベノミクスの爆撃」による円安で輸出産業を中心に崩壊現象を見せ始めたことへの“逆恨み”が骨髄に達している。現代自動車ですら2ケタの減益だ。運輸、造船、建設、不動産など軒並み業績不安に陥った。20を上回る銀行が倒産、失業者の増大で社会不安も生じている。


大統領・朴槿恵は訪米の際の報道官によるセクハラ事件で痛撃を食らった上に「円安空襲」で就任早々から“内憂外患”に目を奪われた。能力にも欠けるのか、ろくな経済対策も打ち出せないままだ。しかし国民の不満をそらすには当面「反日」でいくしかないと、安易な判断に陥りがちの毎日である。


反日報道にはまず政治家がこびを売り、その政治家に官僚がこびを売り、そして朴槿恵が反日へと傾斜するという悪循環の構図が出来上がってしまっているのだ。これにどうくさびを打ち込んで行くかだが、日本の政治家の対応もなっていない。


官房長官・菅義偉が「誠に不見識」、公明党代表・山口那津男が「非常に許し難い」、維新共同代表・石原慎太郎が「許し難い。腹立たしく思う」と批判しているが、それだけに終わっている。これでは石を見て「石である」と言っているのと変わりない。国民の溜飲を下げる事だけに配慮している。


有能な政治家なら発言はこのヘイトスピーチ合戦をどう解決すべきかを視野に入れなければならない。そろそろ両国とも燃え上がる反感の焰(ほむら)に、水を差すべき時に来ているのだ。


安倍が23日自民党副総裁・高村正彦に「近隣諸国との関係を考えるとこのままにしておいていいというわけでもない」と漏らしているが、本格的に“和解”への道筋を模索しなければならない。

<◆中央日報論説コラム全文>


安倍、丸太の復讐を忘れたか


神は人間の手を借りて人間の悪行を懲罰したりする。最も苛酷な刑罰が大規模空襲だ。歴史には代表的な 神の懲罰が2つある。第2次世界大戦が終結に向かった1945年2月、ドイツのドレスデンが火に焼けた。6カ月後に日本の広島と長崎に原子爆弾が落ちた。これらの爆撃は神の懲罰であり人間の復讐だった。


ドレスデンはナチに虐殺されたユダヤ人の復讐だった。広島と長崎は日本の軍国主義の犠牲になったアジア人の復讐だった。特に731部隊の生体実験に動員された丸太の復讐であった。同じ復讐だったが結果は違う。ドイツは精神を変え新しい国に生まれた。


だが、 日本はまともに変わらずにいる。2006年に私はポーランドのアウシュビッツ収容所遺跡を訪問したことがある。ここでユダヤ人100万人余りがガス室で処刑された。どれもがぞっとしたが、最も衝撃的な記憶が2つある。ひとつはガス室壁面に 残された爪跡だ。毒ガスが広がるとユダヤ人は家族の名前を呼んで死んでいった。苦痛の中で彼らは爪で セメントの壁をかいた。


もうひとつは刑罰房だ。やっとひとり程度が横になれる部屋に4〜5人を閉じ込めた。ユダヤ人は互いに 顔を見つめながら立ち続け死んでいった。彼らは爪で壁面に字を刻みつけた。最も多い単語が「god」(神)だ。


ナチとヒトラーの悪行が絶頂に達した時、英国と米国はドレスデン空襲を決めた。軍需工場があったが ドレスデンは基本的に文化・芸術都市だった。ルネッサンス以後の自由奔放なバロック建築美術が花を咲かせたところだ。3日間に爆撃機5000機が爆弾60万個を投下した。炎と暴風が都市を飲み込んだ。市民は火に焼けた。子どもはひよこのように縮んだ。合わせて3万5000人が死んだ。


満州のハルビンには731部隊の遺跡がある。博物館には生体実験の場面が再現されている。実験対象は丸太と呼ばれた。真空の中でからだがよじれ、細菌注射を打たれて徐々に、縛られたまま爆弾で粉々になり丸太は死んでいった。少なくとも3000人が実験に動員された。中国・ロシア・モンゴル・韓国人だった。 丸太の悲鳴が天に届いたのか。


45年8月に原子爆弾の爆風が広島と長崎を襲った。ガス室のユダヤ人のように、丸太のように、刀で頭を切られた南京の中国人のように、日本人も苦痛の中で死んでいった。放射能被爆まで合わせれば20万人余りが死んだ。神の懲罰は国を改造して歴史を変えた。


ドレスデン空襲から25年後、西ドイツのブラント首相はポーランドのユダヤ人追悼碑の前でひざまずいた。しとしと雨が降る日だった。その後ドイツの大統領と首相は機会があるたびに謝罪し許しを請うた。過去に対する追跡はいまでも続いている。


ドイツ検察は最近アウシュビッツで刑務官を務めた90歳の男性を逮捕した。ところが日本は違う。ある指導者は侵略の歴史を否定し妄言でアジアの傷をうずかせる。新世代の政治の主役という人が慰安婦は必要なものだと堂々と話す。


安倍は笑いながら731という数字が書かれた訓練機に乗った。その数字にどれだけ多くの血と涙があるのか彼はわからないのか。安倍の言動は人類の理性と良心に対する生体実験だ。いまや最初から人類が丸太になってしまった。 安倍はいま幻覚に陥ったようだ。


円安による好況と一部極右の熱気に目をふさがれ自身と日本が進むべき道を見られずにいる。自身の短い知識で人類の長く深い知性に挑戦することができると勘違いしている。 彼の行動は彼の自由だ。だが、神にも自由がある。丸太の寃魂がまだ解けていなかったと、それで日本に対する懲罰が足りないと判断するのも神の自由だろう。
(キム・ジン論説委員・政治専門記者)

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月23日

◆集団自衛と敵基地攻撃は改憲待たず実行

杉浦 正章



一触即発の極東情勢に対処すべきだ
 

中国による「尖閣挑発」と北朝鮮の「核・ミサイル威嚇」は、事態即応型の安保戦略への変更を迫っている。とりわけ集団的自衛権の行使と敵基地攻撃能力の保持は、喫緊の課題としての処理が必要となった。


与野党とも参院選挙に堂々と賛否の公約を掲げて臨むべきだ。選挙の結果は確実に「ゴー」となる。それを受けて首相・安倍晋三は躊躇(ちゅうちょ)することなく、両戦略実行の決断を下すべきだ。


集団的自衛権の行使に関しては最近野党に注目すべき動きが生じた。民主党幹事長・細野豪志が「一緒に行動している米軍が攻撃を受けた場合、日本として当然やるべきことはやる」と語り、米国を標的にした弾道ミサイルの迎撃などのケースに限り、行使を容認すべきだとの考えを表明したのだ。


これをうけて民主党は22日、新設した安全保障調査会の役員会で行使容認に向けての見解をまとめる作業に入った。党内には旧社会党系議員を中心に反対論も根強く、意見集約は容易ではないが、与野党の大勢が一致した動きへの布石となる。


集団的自衛権行使も敵基地攻撃能力も安倍が端的にその必要を表明している。「近くにいる米軍を助けなければ日米同盟は大きな危機に陥る」が集団的自衛権への見解。「日本へのミサイル攻撃が迫っている際に米軍に攻撃してください、と日本が頼む状況でいいのか」が敵基地攻撃能力保持の理由だ。


集団的自衛権については内閣法制局が「保有するが、行使できない」などという荒唐無稽な憲法解釈をしているが、実効あらしめるためには9条改正で明示する方法と、首相が憲法解釈を変更する方法がある。


一方で敵基地攻撃能力についてはかつて鳩山一郎が「座して死を待つわけにはいかない」として可能であると答弁している。敵がミサイルを発射してからの攻撃か、発射する前の先制攻撃かは議論の分かれるところだ。


集団的自衛権行使が実現すれば日米の防衛体制がどう変わるかだが、米海軍トップの解釈が22日示された。グリナート作戦部長は「もし実現すれば、アメリカ海軍と海上自衛隊が米英のように合同で空母機動部隊を構成し、同盟国としてお互いを防衛することができる」と述べ、日米共同の部隊運用への期待感を示した。


これは大西洋では米英同盟、太平洋とりわけ極東では日米同盟が実効的に作動して、米国の世界戦略が確立することを物語るものである。米国にとっても大きなプラスとなるのだ。


集団的自衛権について野党は、検討に入った民主党に加えてみんなの党、維新は賛成の方向である。憲法解釈で実施する場合には政権の交代で解釈が揺れる可能性があり、そのための歯止めとして安全保障基本法の制定などを自民党は考えている。


敵基地について自民党は秋にまとまる政府の防衛計画の大綱への提言案として「敵基地攻撃のための打撃力保持」を求めている。こうして日本の防衛の根幹が大きく変わろうとしているが、世論の動向はどうか。全国紙では読売が推進論だが、朝日は集団的自衛権行使も敵基地攻撃能力も両手を広げて「待った」をかけている。


同紙は社説で集団的自衛権の行使について「日米の防衛体制は深く結びついている。これ以上何を求めようとしているのか」と日米同盟の緊密化に反対している。しかし本当に深く結びついているだろうか。日米安保条約は片務条約であり、世界の安全保障の常識とは全くかけ離れている。


さらに社説は「憲法が求める必要最小限の防衛の原則を一挙に取り払うことになる。国益を損なうだけではないか」と主張している。これも米艦船や米国へのミサイルを、自衛隊が打ち落とせる位置にいながら黙視した場合、それこそ「一挙に」安保体制は崩壊し、国益を直撃する事に考えが及ばない論調だ。


朝日の社説は敵基地攻撃能力については「無用に緊張を高めるな」と主張するが、緊張を高めているのは北朝鮮であり、中国だ。朝日はどこの国の新聞なのだろうか。


「自衛隊が敵基地攻撃能力を持てば周辺諸国が先制攻撃の疑念を抱く」とも述べているが、「疑念」は抱いて貰って結構。これが何よりの周辺諸国への抑止力となるのだ。


だいいち北朝鮮の周辺諸国である日本は、ミサイル攻撃の「疑念」を毎日抱かされているのだ。総じて朝日の論調は「日本は攻撃されて死ね」と憲法に書いてあるような書き方であり、論旨が成り立っていない。


とっくにこの世から駆逐された社会党の「非武装中立」「国の安全は天から降ってくる」という思想の残滓を、坊ちゃん論説委員らがありがたく押し頂いて机上で空論を書いている姿が目に浮かぶ。


安倍はこうした論調に惑わされることなく、改憲に先立って秋の防衛大綱で方針を打ち出し、必要な法改正を早期に実施すべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2013年05月22日

◆橋下自爆選挙で“自公過半数”確定的

杉浦 正章



民主党には“おこぼれ”効果
 

選挙で相手の信用を失わせることで自分を相対的に高めることをネガティブキャンペーンというが、維新共同代表・橋下徹はこれを自らの党維新に向けて行う方向となった。まさに自爆テロならぬ自爆選挙が参院選に向けて展開される。


「慰安婦有用論と米軍慰安婦活用論」を撤回するどころか、開き直って今後も主張し続けるのだ。この結果参院選の動向は、自公両党が固く見積もっても過半数に達して、ねじれを解消できる見通しとなった。


逆に維新の低迷で改憲勢力で3分の2議席への到達は先に指摘した「微妙」から「困難」となろうが、いずれにしても民主党の改憲グループが鍵を握っており、首相・安倍晋三にとってはその取り込みが鍵となる事に変わりはない。


橋下はイメージがアドルフ・ヒトラーと常にダブルが、今回の発言にともなって展開している「慰安婦各国共通論」は、まさにヒトラーが1次大戦で意気消沈したドイツ国民を鼓舞激励して国粋主義勢力を拡大した手法とそっくりである。


しかし、橋下は生まれるのが遅かった。誰も「慰安婦は世界中同じだった」と主張しても、これでナショナリズムが沸き立つことはない。まさに「チャップリンのヒトラー」的な喜劇の主役を演じているに過ぎない。


この現実に気付いたとみえて、みんなの党代表・渡辺喜美が状況を「フル活用」して、維新を切った。幹事長・江田憲司のペースで進められてきた選挙協力を破棄したのだ。これにより第三極は共食い状態に陥るが、橋下の“ネガティブキャンペーン”で維新が決定的に不利な立場となる。


参院選までちょうど2か月となったが、区割り法案が4月23日に衆院を通過、成立は確実な情勢であり、ダブル選の可能性はますます遠のいた。各党とも参院選、都議選に突入する。2か月間という期間は普通なら発言を撤回して陳謝すればマスコミはおさまる期間だ。


ところが橋下は“確信犯”であり、持論の展開をやめようとはしない。24日には慰安婦との会談が予定されているが、こうしたケースも活用するだろう。6月に訪米が予定されているが、恐らくテレビは一挙手一投足を放送しようとするだろう。


まさに橋下のネガティブキャンペーンをいさめることのできない維新は、逆風の中で断末魔というか地獄というか、そうした選挙に直面せざるを得ない。


このみんなの維新切りで選挙の構図ががらりと変わる。自公圧勝の構図はますます強まる。自民党60議席前後、公明11議席程度で非改選と合わせて122の過半数を突破して130議席前後とみた流れは、もっと増える公算がある。


なぜなら自民党が2議席を擁立した東京、千葉で全員当選の可能性が生じているからだ。もちろん1人区で自民党圧勝の構図はまず変わらない。みんなと維新は選挙協力ですみ分けた、千葉、埼玉、愛知で独自候補を立てようとしており共食いの構図だ。


民主党は野党第1党から転落かと見られていたが、2人区で1議席を獲得できる可能性が強まったと言えよう。維新は10議席台後半の議席は可能と予想されたが、10議席に届くまい。


維新票はもともと保守票であり、民主党には流れまい。やはり自民党が有利であろう。しかし第3極の分裂は民主党に“おこぼれ”効果をもたらす可能性がある。みんなとの選挙協力が実現するかどうかもかぎでもある。


ただ162の改憲議席を改憲政党全体で獲得できるかどうかは、維新の自爆選挙で一段と難しくなったことは否めまい。


安倍としてはもともと改憲勢力の確保は民主党の改憲派も意識していたことであり、選挙後は3分の2確保で参院民主党にくさびを打ち込んで行くことになろう。政府・自民党は、橋下発言に閣僚や党幹部が同調しないように、懸命の箝(かん)口令を敷いている。


橋下が「安倍政権の中にいる保守系閣僚は何も言わなくなった」と歯ぎしりしているとおり、同調しては火の粉が自民党にかかることを十分に意識しているのだ。橋下と親しかった安倍も「私も自民党も全く立場が異なる」と突き放し始めた。


安倍、幹事長・石破茂とともに「遊説3本の矢」とされている青年局長・小泉進次カも、いくらテレビがけしかけても「ノーコメント」で押し通している。小泉32歳、橋下43歳といずれも若いが、小泉の方が圧倒的に政治家として成長している。橋下はもともと政治家に不適であったが、もうダメだ。終わった。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)                  

2013年05月21日

◆北への「賠償」を先行することは不可能

杉浦 正章



結局「拉致・核・ミサイル」一体処理に戻る
 

こんなに早く“本音”が出るとは思わなかった。北朝鮮が対日賠償の要求である。内閣官房参与・飯島勲の訪朝はこの一事で成功であったことを物語る。突破口を開けたのである。賠償は中国までが制裁を実行して、四面楚歌の北朝鮮から見れば、まさに垂涎(ぜん)の的である。


しかし現状において下手に「賠償」というより「援助」を実施すれば、北は有り金すべてを核とミサイルに注ぎ込みかねない。従って事は「拉致・各・ミサイル」一体処理へと回帰するのである。米国も韓国も「日本突出」をそう心配することでもあるまい。


安倍は飯島からの報告の場の設定ににもったいつけているが、初めから安倍の指示で訪朝したことは割れているのだから、下手な演技はやめた方がいい。安倍、飯島、官房長官・菅義偉はこのの問題を一体で進めてきた話だ。

それも4月8日には余人を入れずに3人で話し合っている。ここで「外務省はリスクを負わないから独自にやろうと言うことになった」(政府筋)というのが実態だ。


そこで北と飯島との会談の内容だが、徐々にではあるが輪郭が浮かび上がって来ている。飯島は北滞在中北朝鮮ナンバー2の最高人民会議常任委員長・金永南(キムヨンナム)との会談を初め、日朝政府間協議の実務を担当する朝日国交正常化交渉担当大使・宋日昊(ソンイルホ)と数次にわたり会談した。


この中で飯島はまず「安倍首相は自らの在任中に拉致問題を解決したいという強い決意を抱いている」と安倍の強い意向を説明した。同時に飯島は「拉致問題で拉致被害者の即時帰国や真相究明、実行犯の引き渡しが実現しなければ、日本は動かない」との立場も説明した。

さわりはここだが、さらに飯島は第1次安倍政権時代にいったん合意に達した拉致被害者の調査再開を要求したようだ。北側は「日本政府の意向は金正恩(キムジョンウン)第1書記に伝え、回答する」と述べた。


「伝え、回答する」と答えたことは、交渉の継続を意味している。官邸筋は「突破口は開いたから、後は外務省ルートで行う」と漏らしているが、北は飯島に対する信頼が強いようであり、陰に陽に飯島ペースが維持される可能性が強い。


また北側は賠償要求をした可能性がある。労働新聞が20日の論評で「日本は過去の侵略戦争で多大な被害をもたらしたわが国などに、徹底した謝罪と賠償をしなければならない。過去に過ちを犯した国々が誠実に反省して賠償するのは国際的すう勢である。

これとは反対に、破廉恥に行動する国が日本だ。戦犯国が被害国に謝罪と賠償を行うのは、回避できない国家的責任、道徳的義務であり、日本にとって他の選択肢はない」と論じているとおりのことを言及した可能性がある。


ベールの中に入って出てこないのは朝鮮総連ビル売却に関連した話だが、これは事態の進展によって次第に分かる事であろう。北が要求した国家賠償は、いずれは日本が払わなければならないことになる。


しかし1965年の日韓条約では3条で日本は「韓国が朝鮮にある唯一の合法政府であることを確認し、国交を正常化した。また日本の援助に加えて、両国間の財産、請求権一切の完全かつ最終的な解決、それらに基づく関係正常化などの取り決めを行った」とあるとおり、賠償でなく援助で処理している。無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドルの供与及び融資を行った。


当時としては莫大(ばくだい)な援助であり、韓国の近代国家への脱皮の原動力となった。現在では何倍になるか想像もつかない。


米国は「拉致問題の先行」は認めても、平和条約も締結されていない国に、日本が巨額の援助をすることには、極東戦略の要が崩れることを意味しており、絶対反対するに違いない。日本としても拉致が何らかの形で解決しても、平和条約なしに即援助と言う名の賠償を行うことは、国連決議の趣旨にも反するだけに無理であろう。


従って日米関係崩壊の危機につながる賠償は独自に進め得ることではない。ということは「拉致先行」といっても北の賠償要求を棚上げにしての処理であり、極めて困難な道筋だ。隘路(あいろ)が開けるかどうかだが、そう簡単なことでもあるまい。
 

従って安倍が「他の国は拉致などやってくれない」といっても、独自の突出には限界があることであろう。安倍は20日の国会答弁で米韓から飯島訪朝への批判があることについて「米国も韓国もそれぞれすべてを我々に連絡してくれるわけではない」と反論している。


ここから見えて来ることは拉致の名を借りた米韓けん制である。最近事態は大統領・朴槿恵の訪米で「米中韓による日本置き去り外交」の傾向を強めたことに対すしてクギを刺した側面が濃厚である。


まあ飯島の訪朝は極悪非道の“異星人国家”であると思えた北朝鮮が、人の言葉をしゃべる国である事が分かっただけでも良いことだ。極東の緊張緩和にはプラスに作用した。逆に言えば米韓、とりわけ韓国は感謝して然るべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月20日

◆安倍は“橋下三百代言”と一線を画せ

杉浦 正章



沈黙すれば世界は「同根」と見る
 

三百代言という言葉がある。詭弁(きべん)を弄(ろう)する弁護士の別称である。明治前期に資格がないまま訴訟や裁判の弁護を引き受けた者を称したのが始まりで、その基本は訴訟で勝てば良いのだ。


勝つためにはあらゆる弁舌を駆使してしゃべりまくる。しゃべりまくることによりサギをカラスと言いくるめるのが手法だ。その本質をそのまま露呈しているのが維新共同代表・橋下徹だ。


その品性の下劣さは筆舌に尽くしがたい。なぜなら自ら最初の発言を、日がたつにつれて巧妙に歪曲化し、あらぬ方向への論議の誘導をこころみているからだ。三百代言に素人はだまされるが、本物の政治家の目はごまかせない。


自民党幹事長・石破茂は「国政に影響力を持つ党の党首であり、大阪の首長だ。自分がどういう立場でいるのか、それを聞いた人がどう思うのか。公人として十二分な配慮が必要だ」と見切っている。


橋下は、筆者が最初に指摘した「米軍の風俗活用特例発言の違法性」だけは言い逃れられないと思ったか、「国際感覚がなかった」と言い訳した。橋下の言わんとするところは「風俗」が英語では売春業に翻訳されることを知らなかったというが、これがまず第一の詭弁(きべん)だ。


国際感覚の問題ではない。発言の流れが一番重要なのだ。普天間基地の司令官に米兵の性犯罪をなくす方策を語り「もっと風俗業を活用してほしい」と発言すれば、後講釈のいかんを問わずに「買春」の勧めだ。いみじくも“遣り手婆(ばばあ)”と筆者が表現したとおりだ。


花街の遊郭で「旦那、いい娼(こ)がいますよ」と耳元でささやいたあれだ。したがって司令官が買春をそそのかされたと思うのは当然だが、口にするのも汚らわしいと思ったか、橋下が発言するまでは表に出なかった。


自らの発言ですべてを暴露しておいて、あとから言い訳をする。しかも「合法的風俗と言った」と主張するが、インチキの“後付け”であることは見え透いている。あの脈絡は「海兵隊の性的な欲求不満を買春させて解消させよ」というものに他ならないのだ。三流裁判官でも「有罪」判決を下す。
 

第二の詭弁(きべん)は「猛者集団にやっぱりどこかで、そういうことをさせてあげようと思ったら慰安婦制度っていうものは必要」と言う下りを、あらぬ方向に置き換えようとしていることだ。


あらぬ方向とは「世界各国、そして米国も同じだ。日本だけが性奴隷を活用した特殊な国と非難するのは違う」という発言だ。これは慰安婦制度の容認という女性の人権を蹂躙した発言を、「他の国も同じではないか」と置き換えることにより、視点をそらそうとしていることに他ならない。


視点をそらせて、低俗なるナショナリズムを刺激して、自らの同情を買おうとする“根性”が見え見えで、浅ましい限りである。 


最後の詭弁(きべん)は19日共同代表・石原慎太郎に「発言の趣旨が曲解して伝わり、党に迷惑をかけて申し訳なかった」とマスコミのせいにしていることだ。筆者はテレビの発言と新聞の発言をつぶさに比較したが、こんどばかりはこじつけ記事は見当たらなかった。


発言はこじつけるまでもなく、そのままナマで報じただけでインパクトがあるものであったからだ。「曲解」し続けているのは本人であり、マスコミではない。これまで散々マスコミを利用して、都合が悪くなるとマスコミのせいにする。三流政治屋そっくりだ。


こうした事が指摘できるにもかかわらず維新は18日、大阪市内で橋下や幹事長・松井一郎、政調会長・片山虎之助ら幹部が「橋下氏の発言の撤回には応じられない」との点で一致した。橋下は19日「選挙に不利になるというなら維新の皆で僕を引きずり降ろせばいい。僕から辞めることはない」と開き直っている。


石原も「参院選に出よ」と国政への転身まで進めている。これはまさに三百代言ペースが維新内部でまだ続いている事を物語るものである。維新の自浄努力が全く発揮されない事を意味しており、参院選に向けて致命傷になる誤判断である。
 

問題は発言が国際問題に拡大しており、これに対する政府の対応がありきたりである点だ。各国で右翼国粋主義的傾向のある維新の方向を、首相・安倍晋三の右傾化傾向とダブらせて批判の対象になり初めていることだ。


米議会や新聞報道、識者の発言などにその傾向が出てきた。民主党代表・海江田万里も同様のとらえ方をしているが、海江田は何を言っても負け犬の遠吠えだから言わしておけばよい。だが国際的な反応を放置すべきではない。


韓国大統領・朴槿恵は狡猾にも「日本は何度も傷をうずかせ、韓国民を刺激している」と日本全体の責任に置き換えている。中国や米国の反応も同様の傾向がある。


一政治家の発言を、しかも日本の世論や政界から袋叩きに遭っている政治家の発言を、日本の「右代表」扱いされてはたまらない。安倍は橋下と親しいからといって、沈黙を維持すべきではない。橋下発言とはっきり決別する方向を打ち出さなければ、国益を阻害すると心得るべきだ。


どうせ維新などは参院選惨敗必至であり、自民党が維新票を獲得するためにも、この際橋下を切り捨てるしかない。それにしても橋下を褒めそやしてきた評論家やコメンテーターの顔が見たい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月17日

◆ 隣の小舅 いちゃもん国家から離脱せよ

杉浦 正章

 

諸悪の元凶が韓国のマスコミにある
 

「隣の小舅(こじゅうと)はやかましい」というが、韓国政府の“偏狭さ”にはほとほとあきれかえった。

内閣官房参与・飯島勲の訪朝に難癖をつけるかと思えば、首相・安倍晋三が試乗した自衛隊機の番号731を戦中の七三一部隊に関連づけて文句をつける。まるで“いちゃもん国家”の様相だが、その根底にはマスコミに頭が上がらない韓国政府の体質がある。


マスコミ報道が先行して、これにいちいち同調する。悪く言えばこびを売る。そして外交に反映させる。観察すればするほどそのパターンの繰り返しだ。
 

韓国の新聞は、世界のマスコミの中でももっとも感情的で公平感に欠ける傾向を特色とする。まさに葦の髄から天井を覗くような報道ばかりである。それも曲がった葦の髄だからろくろく覗けない。


これで良く読者の信頼を得られるかと疑問を持つが、韓国の民族性がこれを支えているということなのであろう。


最近あきれかえったのが首相・安倍晋三の自衛隊機試乗への報道だ。練習機の機体の番号が731であることに難癖をつけて、夕刊紙・文化日報が何と「生体実験の名誉回復狙う。軍国主義の亡霊を呼び覚ますのか」と報じた。戦時中に日本の陸軍に存在した研究機関のひとつ満州第七三一部隊にこじつけたのだ。


人体実験をしたとうわさされる部隊だが確たる証拠はない。驚いたのは一応まともな中央日報までが「731まで動員した首相・安倍晋三の極右妄動」と報じた。韓国の民度は高学歴でもありそれほど低くないと思うが、この報道に民衆が踊らされるかと思うとりつ然とする。
 

問題は政府の反応だ。駐日大使・ 申珏秀(シン・ガクス)が「731部隊の被害者がどう受け止めるか日本側は考える必要がある」と発言したのだ。あきらかに国内の報道に配慮した発言であろう。しかし満州の731部隊が韓国民を「被害者」にしたなどという事実は聞いたことがない。


大使はもう少し歴史を勉強した方がよい。そもそも日本に滞在していて、国情をつぶさに見ている大使ともあろう者が、安倍がいまどき731部隊などを意識した行動をとるわけがないことを理解できないのであろうか。


大使の発想で言えば9・11テロがあったからスーパーカーのポルシェ911は名称を変更しなければならないことになる。外交官として恥ずかしくないかと言いたい。
 

また成功裏に終わろうとしている飯島訪朝についての報道ぶりは「米韓はもちろん、中国まで北朝鮮に制裁を加えている状況で国際協調を破った」と朝鮮日報が断ずれば、東亜日報は「北朝鮮に対する強力な制裁措置が取られている中、日本の突出した行動により、北朝鮮に状況判断を誤らせる可能性がある」と批判。


朝鮮日報に至っては「7月の参院選をにらみ安倍首相が勝負に出たとの見方も出ている」と邪推。安倍はアベノミクスで勝負しているのであって、北で勝負などするわけがない。


そして韓国政府はやはりこうした“新聞様”の論調を反映して飯島訪朝批判だ。外務省の報道官・趙泰永(チョ・テヨン)は16日の記者会見で、「日米韓の連携はもちろん、国際社会が北朝鮮への対応で緊密に連携することが重要で、その意味では今回の訪問はためにならない」と正面切って批判した。


さすがにカチンときたか官房長官・菅義偉は、午後の記者会見で「言っている意味があまり分からないというのが率直なところだ」と不快感を表明。日米韓の協調を阻害するという懸念についても、「常識的にみて、国と国の関係だから、そこは当たらないと思う」と反論した。


さらに報道官が、「日本側から遺憾の意の表明があった」と述べた点について「外務省の高官同士の話だろうし、本当に言ったかどうかは分からない」と疑問を呈した。温厚な菅にしては珍しい反論だが、よほど腹に据えかねているであろうことが分かる。まさに日韓関係は亀裂が生じた状況だ。
 

一方で、中国は飯島訪朝について洪磊報道官が16日、「朝鮮半島の緊張した情勢を緩和し、平和と安定に役立つことを希望している」と述べ、肯定的に評価している。


中国にしてみれば世界的な北朝鮮批判の中で飯島訪朝をほっとした感じで受け止めているに違いない。めずらしく大局観のある判断をしている。米国も北朝鮮政策特別代表・デービースが不満げだが、「日本無視」で事を進めればこうなることを“学習”したことはよいことだ。


とにかく一連の問題で韓国の偏狭さと、マスコミの「下司の勘ぐり」がますます露呈したことになる。日本も当分このやかましい“隣の小舅”とはほどほどの付き合いにとどめ、円安で経済の対韓逆転有利を維持してゆくことだ。


隣近所のいざこざにかかわずらうより、“いちゃもん”など無視して大きく世界に目を向けた外交の展開が重要だ。世界の国々は大半が日本と友好的である。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月16日

◆飯島キッシンジャーの「唖然」をさぐる

杉浦 正章

 

最低でも拉致問題再調査が欲しい
  

内閣官房参与・飯島勲が平壌国際空港で唖然(あぜん)とした顔をしていたことが物語るものは何か。「唖然」の原因は北のテレビなど報道陣が詰めかけていたことだが、極秘裏のはずの訪朝をなぜ北が公にしたかということが、まず外交的にはひっかかるのだ。


公にしたからには北も拉致問題で何らかの“手土産”を意識している可能性が強いからだ。一方で、米韓を中心に飯島訪朝への不協和音が生じているが、日本にしてみれば核、ミサイル交渉で「日本外しの米、中、韓主導」への強いけん制の意味合いが見て取れる。「外務省外し」の強気の安倍官邸路線でもある。
 

飯島訪朝は、かねてからテレビで公言していた話である。飯島は「日朝間には融和の精神が必要。私がいつか訪朝して根回しをして前に進めば、安倍総理と金正恩第一書記との会談をやらなければならない」と明言している。


また拉致問題の見通しについて「帰ってくる帰ってこないではなく、拉致問題は進展すると見ても良いのではないか」と述べている。


この飯島の自信の背景には2002年、4年の小泉訪朝に深く関与した経緯がある。その過程において飯島は、朝鮮総連幹部とのパイプができ、安倍政権発足以来このルートを通じて訪朝の機会を狙っていたのだ。
 

北の置かれた状況は中国までが金融制裁をするという、完全なる国際的孤立だ。ひしひしと国際包囲網を感ずる中で、過去に使った対日「拉致カード」を使う構想が金正恩政権内に出てきてもおかしくない。


現に野田政権の拉致担当相であった松原仁は「世界的に北朝鮮に厳しいムチが加わっている時に拉致問題が動いた経緯がある。いまの環境は極めて02年の小泉訪朝当時とと類似している。何らかの救いの手が欲しいときに拉致問題で飛び付いてきた状況と似ている」と述べている。
 

飯島は訪朝を極秘裏に進めてきた。まるでニクソン訪中を実現した大統領補佐官・キッシンジャーのように、隠密外交で事を運ぼうとしていたのだ。そして北が吠えまくった米韓軍事演習も終わり、事態は膠着状態に立ち至っている。


核とミサイル関係の交渉は米韓、米中ペースで進められ、安倍の歴史問題発言や領土問題もあって、日韓、日中関係は最悪の状況。安倍の心中を測れば、米、中、韓による日本置き去り交渉は不愉快極まりないと言ってよいだろう。


ここで独自に北との関係改善の手を打とうと決断しても無理はない。韓国はもちろん米国にも連絡しないで飯島派遣を決めたのだ。日本は「拉致」という他国にない問題を抱えており、これを逆手にとって突破口とするため、北への接近を試みたのだ。
 

案の定韓国政府内部には日本の独走を懸念する声が生じ、米国の北朝鮮特別代表デービースからも「何か報告が聞けるのを楽しみにしている」と皮肉めいた発言が生じた。ホワイトハウスもオバマが朴槿恵に「韓国、日本と緊密に調整を続ける」と述べたばかりであり、不満に違いない。


そこで平壌空港での飯島の「唖然」に話は戻るが、まず官邸がなぜ訪朝を極秘にしたかということだが、ここに来て最大の北の関心事が持ち上がっている。朝鮮総連中央本部を落札した北に近い宗教法人が資金難で放棄せざるを得なくなり、再入札が行われる状況となっている。


飯島はこの総連本部の問題をカードに、拉致問題を前進させようと考えてもおかしくない。しかし、確たる事態前進の保障はない。そこでまず極秘裏に訪朝して瀬踏みをする腹だったに違いない。
 

一方、極秘の訪朝を北が暴露して、飯島の動静を大々的に放送している理由は何か。まず第一に国際社会に対して「孤立していない」と宣伝したいのだろう。また日本を拉致問題で取り込めれば、対朝包囲網の分断につながる。加えて「事実上の大使館だ」とする朝総連ビルの問題を何とか打開したいに決まっている。


さらに北にしてみれば、このところ冷たくなった対中けん制の意味合いもある。日本カードを切って日本から将来援助を貰う流れができれば、金正恩にとって大変な成果となる。それに比べれば拉致問題などは、小さいのである。
 

それではどんな“お土産”をもって飯島は帰国できるのだろうか。突然拉致問題が進展して、安倍訪朝による日朝首脳会談などが実現する可能性はあるのだろうか。日朝外交筋の見方によると「中断している拉致問題調査の再開がありうる」という。


飯島は週内には帰国するものとみられ、北朝鮮で会う相手のレベルによって“土産”の内容が分かってくるかも知れない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月15日

◆大阪は橋下をリコールで失職させよ

杉浦 正章
 

市長の売防法違反発言は許されぬ
 

最大の問題点は弁護士であり、自治体の長である維新共同代表・橋下徹が米軍司令官に公然と売春防止法違反の進言をしたことだ。


この脱法買春発言は世界中で問題として取り上げられ、嘲笑の対象となっており、まさに国辱発言だ。脱法の奨励ばかりは公人としてもっとも慎まなければならない問題であり、大阪市民は市長解職のリコールをすべきであろう。


また日本維新の会は、国会議員団トップの共同代表・石原慎太郎と幹事長・松井一郎が愚かにも擁護に回ったが、これではまるで「日本売春党」だ。党名を変えて、参院選挙に臨んだらどうか。


自らの党を「年末に消滅」と焦りを見せていた橋下が、今度は「自滅」発言だ。橋下の言わんとするところは戦闘中の軍隊に慰安婦制度があることは世界の歴史で共通事項であり、日本が韓国人慰安婦を強制連行したというのは事実でないというところであろう。


この発言だけは確かにその通りだ。現に朝鮮戦争で韓国は北の女性や女性のパルチザンを韓国軍慰安婦として公営の慰安所を作り、それこそ性の奴隷として韓国軍や米兵に提供した事実がある。


日本軍の強制連行は証明されていないが、韓国軍慰安婦は国家が先頭に立った公娼であり、スターリンのレイプ奨励に勝るとも劣らぬ人類の歴史の汚点だ。
 

しかし橋下は公党の党首、大阪市長として発言してはならぬところまで踏み込んでしまった。それは橋下の癖である強者の目線から弱者を見下す発言であり、自分の立場をわきまえぬ法律違反の発言だ。


明らかに女性の尊厳を傷つける発言は「軍隊は銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で、命かけてそこを走っていく猛者集団だ。精神的にも高ぶっている集団はやっぱりどこかで、そういうことをさせてあげようと思ったら慰安婦制度っていうものは必要」というものである。まさに女性を戦争のための「性の道具」として認識している。


さらに国際的にもまずいのは米軍の普天間基地司令官に面と向かって「もっと風俗業を活用してほしい」と海兵隊など部隊ぐるみの買春を勧めたことだ。司令官は凍り付いたような苦笑いになって「米軍では禁止だ」と答えたという。橋下は「そんな建前みたいなことを言うからおかしくなる」と再考を促している。


まさに自治体の長が海兵隊に「買春」を促すという、前代未聞のやり手ばばあのような発言である。売春防止法違反をそそのかしていることになる。


かつて米軍の太平洋軍司令官・リチャード・マッキーは1995年の暴行事件の時に「犯行に使ったレンタカーの代金を払う代わりに女を買うことができた」と発言して更迭されており、買春を勧められた司令官が凍りつくのも無理はない。


それに橋下は弁護士のくせに犯罪者心理を知らない。買春を性的はけ口とすればレイプ事件が減少するというのは短絡であり、因果関係はないのだ。ことは米国防総省の記者会見にまで波及した。同省報道官は13日橋下の買春奨励について、「コメントしないと」と述べながらも「買春拒否は言うまでもない」と述べるに至った。


橋下はその後もツイッターなどで同様の発言を繰り返しており、明らかに“確信犯”である。


問題はこの一連の橋下発言に対する維新内部の反応だ。石原は「軍と売春はつきもので、歴史の原理みたいなものだ。それを踏まえて発言したと思う。彼はそんなに間違ったことは言っていない」と擁護。


幹事長・松井一郎も「橋下さんらしい。うわべだけの議論では全然解決には至らない。後は国民の判断と価値観だ」と述べ、これも全面擁護。党としての反省の色はみじんも見られない。


政党のトップというのは日本の首相を目指す政治家であり、その政治家が米軍に脱法買春を勧め、女性の人権を踏みにじるような言動をすれば、少なくとも戒めなければならない。


普通の政党ならこれだけの発言をすれば、必ず党首は交代させられる。維新はまず党首交代を検討すべきだろう。橋下もここは自発的に辞任すべきところである。維新は女性票の大半を失った。もう橋下を党首として参院選挙は戦えない。石原も老害にすぎない。若手がトップになって党勢を立て直すときだ。


さらに橋下は大阪市のトップであり、このまま市長の座にとどめ置けば国際的にも大阪の恥となる。


大阪市民はリコール運動を開始すべきである。市長の解職については、有権者の3分の1以上の署名を集めて選挙管理委員会に住民投票を請求、これを受けた投票で過半数があれば失職となる。


大阪市民が正常なバランス感覚を持つなら、まず3分の1の署名を実現すべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月14日

◆憲政常道に反する衆参同日選挙はない

杉浦 正章



安倍は“解散様”を大切に扱うのだ
 

ばかばかしいから衆参同日選挙説など書かないでいたら、最近「どうなるんですか」と問い合わせが殺到しだした。


筆者が政界で最初に同日選説を紹介したのは4月18日で、そのときは「97.5%ない」と断定したが、今回はそれに1%付け加えて98.5%ないと断定しておこう。動物的直感による“空想科学的な根拠”からの判断であるが、筆者の解散への直感はこれまで半世紀外れたことがない。ここで度胸と勘の勝負をしておく。
 

週刊誌や駆け出し政治記者達が「ダブルだダブルだ」と騒ぐが、首相・安倍晋三による解散の断行は憲政の常道に反することを知らない。あまりにも党利党略過剰の解散をしては、“解散様”に申し訳が立たないのだ。


解散に一番大切な“大義”が成り立たないのだ。なぜなら昨年末に解散・総選挙が断行されたばかりであり、まだ1年も経過しないうちに伝家の宝刀を抜くにはよほどの理由がなければならない。
 

過去に解散から解散までの期間が1年以内の総選挙は2回ある。吉田茂のバカヤロー解散と大平正芳のハプニング解散だ。


吉田は52年8月の抜き打ち解散のあと翌年3月にバカヤロー解散をしている。戦争直後に社会主義革命を目指す社会党などがめちゃくちゃな要求を繰り返し、吉田を追い込んだ結果であり、堪忍袋の緒が切れて「バカヤロー」と言ってしまったのだ。ハプニング性のある解散だ。


大平の場合も79年9月の増税解散のあと翌年5月に内閣不信任案が可決されて、解散を余儀なくされたのだ。いずれも、ものの弾みで断行された解散である。
 

ところが今度の解散説は「0増5減」に基づく区割り法案の成立を巡って台頭している。またしても民主党の妖怪・輿石東が関与している。同党参院議員会長・輿石は昨年の幹事長時代に「0増5減」法案を人質に取り、成立を先延ばしすることによって解散を回避して、ダブル選挙に持ち込む戦術をとった。


ご都合主義にも今度は真逆だ。ダブルを回避するために区割り法案を人質に取って成立を遅らせようとしているのだ。こんな勝手な男は見たことがない。
 

というのも通常国会が延長されずに26日に閉会する場合、参院選挙は7月4日公示、21日投票となる。これに合わせて衆院選を断行する場合には7月9日公示となるが、区割り法案の成立なしでの解散はやりにくい。区割り法案の施行には1か月かかるから、6月9日までの成立が不可欠だ。


解散を恐れる輿石はこのキーポイントの6月9日より遅らせて成立させようとしているのだ。相変わらずの姑息(こそく)さだが、逆に自民党はこれを“威し”に使っているのだ。「成立を遅らせるなら解散だぞ」と脅しているのだ。
 

自民党も尻が割れていると言えば割れている。区割り法案は4月23日に衆院を通過しており、憲法の60日ルールに基づき、参院で可決されなくても、6月下旬には衆院の3分の2の多数で可決成立できるのだ。その計算の上に衆院通過を図ったのであり、「同月9日までの成立」は“威し”であり、裏は見え見えなのだ。
 

この対野党戦略は、予算が15日に成立して、焦点が区割り法案に移行すると、当面悪い病気のように出たり引っ込んだりするだろう。


しかし、ダブルを言い募る政治家は自分自身の信用がなくなると心得るべきだ。自民党幹事長・石破茂もいいかげんに見え透いた発言を繰り返すべきではない。


確かにいまダブル選挙をやれば、過去2回と同様に自民党が圧勝する可能性がある。安倍の人気は70%台の高支持率に支えられており、自民党支持率も40%台だ。権力亡者ならダブルは絶好のチャンスで、まさに垂涎の政治状況である。


しかし、冒頭述べたようにいくら伝家の宝刀でも“解散様”をおろそかに扱ってはならないのだ。議員になったばかりでまた選挙では、自民党内からも批判が噴出する。公明党も組織票が割れるから恐らく反対だろう。総選挙で2か月の政治空白を作ればせっかくアベノミクスで景気回復の兆しが出たところに水を差す。
 

そこで安倍がどうするかだが、安倍は奇道は歩まない。政治の本道を歩くだろう。そういう政治家だ。


1日に外遊先で「いずれかの時点では国民に信を問わなければいけない。適切な時期をとらえて解散する」と思わせぶりな発言をしたが、10日にはタレント・みのもんたに「参院選じゃないですかね」と他人事のように述べている。この辺りが本音だろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月13日

◆維新に「風」なく「一炊の夢」の危機

杉浦 正章


参院選で幹部が自民候補応援
 
「昨日の大尽今日の乞食」だろうか。共同代表・橋下徹によると維新が「消滅」なのだそうだ。たしかに昨年の夏のようなブームはまったくない。風がソヨとも吹かなくなったのだ。


ポピュリズムだけの政党に「風」が止まればどうなるか。選挙民の忘却の彼方となる。党内には参院選挙で自民党候補を支持する幹部まで現れだした。早くも崩壊現象なのだろうか。
 

とにかく維新の幹部は、開けっぴろげの大阪の風潮丸出しで面白い。際どい自らの党の消長をあっけらかんと語るのだ。維新幹事長・松井一郎が去る4月に「日本維新の会は完全にアゲンスト(逆風)で厳しい状況。大阪以外、どこに行っても負けます」と、参院選の現状を嘆いた。


そうかと思うと橋下は11日「組織が大きくなって、全国各地のいろんな選挙で維新の公認候補を出すことになった途端、維新は選挙屋になってしまった。一歩でも二歩でも前に進むことを肝に銘じないと年内に維新の会は消滅もありうる」と、自らの「消滅」を予言。


この風潮の影響を受けてか共同代表・石原慎太郎までが党の現状について「昇り竜の去年の衆議院選挙と違って、今は、決して、昇り竜の勢いがあるとは言えない。」「維新は賞味期限を迎えつつある」などと発言するに至った。


自分の賞味期限がとっくに切れているにもかかわらず、他人事にしているのだ。時事の定点調査でも支持率は1月4.6%、2月3.3%、3月2.0%、4月1.5%と減少する一方だ。
 

なぜ、こうした風潮が生じているかと言えば、まず根底には橋下の“かっこよさ”だけが頼りのポピュリズム政党の宿命がある。しかしその橋下がワンパターンで露出を繰り返し続けた結果、飽きられてしまったのだ。民衆はもう食傷気味なのだ。


つぎに総選挙と参院選挙の構図の違いがある。総選挙の維新票は「民主党はダメだが、自民党にも懲りた。維新に投票しよう」という図式で獲得した。ところが参院選は、アベノミクスの大当たりで「民主党はダメだから自民党へ投票」の流れに変わり、維新は飛び越されつつあるのだ。


もう一つ言えば、改革の党維新への幻滅だ。なぜ幻滅したかと言えば、“加齢臭”ふんぷんの石原ら太陽の党系との合流だ。これがイメージを壊した。


橋下に石原を押さえる力量がなく、改憲にしても石原ペースで綱領に現憲法を「日本を孤立と軽蔑の対象に貶(おとし)めた」と書かせてしまった。まさにとどめの一撃である。


BBCと読売が世界22か国で実施した好感度調査で日本は58%の支持を得て‘世界に良い影響を与えている国家’1位だ。中国は5位。韓国などどこにあるか分からない。平和憲法が貢献していることは間違いない。「孤立と侮蔑」は石原本人が対象なのであって、日本ではない。


橋下は自民党の憲法改正草案を「危険だ」と述べる前に、「核武装、徴兵制」の「石原改憲」の方がよほど危険なことを弁護士なら理解すべきだ。
 

こうして維新は日本の政治における“立ち位置”が不明になってしまったのだ。橋下は「選挙の焦点は道州制など統治機構改革と大阪首都構想の実現」と述べるが、この方向性も説得力はない。


道州制論議など50年も前からあって、埃にまみれている。大阪都構想などは大阪以外はどの自治体も支持しない。発想が井の中の蛙なのである。従って維新は完全に行き詰まった状態にある。


もともと維新には「風」が頼りの候補しか集まらないとみえて、地道な選挙運動などはそっちのけの候補が多い。橋下も「選挙区でしっかり選挙活動をやらないといけないのに、比例区名簿に乗りたいメンバーしか集まってこないとは情けない」と嘆いていることで実情は十分分かる。候補の質が最悪なのであろう。
 

こうした“難破船”からはネズミが逃げるのが常だが、ネズミどころか、“老虎”が逃げ出しそうな事態が発生した。


朝日によると自民党にとどまっていたら相当なところまでいったはずの切れ者の維新国会議員団幹事長代理・園田博之が地元天草市の後援会会合で、次回の参院選・熊本選挙区では自民党候補を応援する方針を明らかにしたのだ。


既に維新は同選挙区に候補を擁立、みんなの党と選挙協力で一致しているが、おそらく肝心の園田の意向を無視して決定したに違いない。苦し紛れか幹事長・松井一郎は「維新の得票を上げるための手練手管をやっている」と奇妙奇天烈な“分析”をした。


何で他党の候補の応援が維新の得票を上げるのか分かる人はいない。最大の反党行為なのに波風を立てないで臭い物に蓋だ。
 

こうして維新の「全国制覇、橋下首相」などは、人生の栄華のはかなさをあらわす「一炊の夢」に終わらんとしているのだ。参院選挙も先に自民60議席と読んだが、自民は64〜65議席いくかも知れない。維新はせいぜい10議席台前半の12〜14議席にとどまる可能性が出てきた。


民主ではなく自民党が維新を食う構図である。

        <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年05月10日

◆対米宣伝工作で安倍は韓国に完敗した

杉浦 正章


活発なロビー工作、マスコミ対策を復活させよ


豊富な宣伝工作費を背景に議会やマスコミ対策を進めている韓国の対米外交に日本外交完敗の構図が生まれている。大統領・朴槿恵の訪米は対日けん制で大成功に終わったが、その背景にあるものを考え直さなければ、この敗退は継続する。


安倍は対米外交重視を唱えながら、かつて自民党全盛期に行ってきたような対米工作なしに、いきなり歴史認識などで強硬発言を繰り返し、ホワイトハウス、国務省、議会や米主要マスコミ全紙の異例の反発を広げている。


自民党も政府ができない部分を補う工作をすべきだが人脈がいない。小選挙区制で外交など票にならないから人材が育たないのだ。このままでは米中韓の対日包囲網ができかねないことを肝に銘じた方がいい。


安倍がオバマにそっぽを向かれた記者会見は記憶に新しいところだが、これに対して朴の訪米は下にも置かぬ扱いであった。オバマとの会談では恐らく事前に調整済みであったであろう歴史認識を朴がもちだし、これが公表された。

「東北アジア地域の平和のためには、日本が正しい歴史認識を持たなければいけない」と日本を名指しで批判したのだ。8日の上下両院合同会議での演説では、「歴史に目をつぶる者は未来を見ることができない」と発言した。明らかに日本を念頭にした発言だが、議場から拍手がわいた。


筆者がかねてから指摘しているように安倍もできなかった議会演説は、活発な韓国の米議会に対するロビー工作の成果であろう。日本は佐藤政権時代に沖縄返還、繊維交渉という重大マターを抱えて政府・自民党一体のロビー工作が展開された。


それが年月を経るに連れて下火となり、田中真紀子の愚かなる外交経費削減策や鈴木宗男の経費の使途を巡る攻撃がとどめを刺し、外務省の広報文化予算は10年間で33%も減った。外交官はやる気をなくし、事なかれ主義が横行しているのが現状だ。
 

これに対して韓国は外交筋によると「議会にもマスコミにもジャブジャブ使っている」という。とりわけ対マスコミ工作が韓国外交官の“使命”となっているという。


安倍が発言する度にニューヨークタイムズやワシントンポストの有力記者を「食事しませんか」と誘い出し、日本の理不尽さを訴える。これが急速に米国に台頭している従軍慰安婦問題や歴史認識での対日批判となって現れている側面があるのだ。


安倍の「侵略の定義」発言も、「侵略の否定」とばかりに、宣伝工作を行ったようだ。それにしても米紙の安倍批判は異常なほどである。


ニューヨークタイムズは1月3日の社説で安倍の右傾化を厳しく批判したが、これに先立ち年末にはオバマ政権が日本政府に対して非公式に、旧日本軍の従軍慰安婦の強制連行を事実上認めた「河野談話」など過去の歴史認識の見直しに関して慎重な対応を求めていたことがリークされている。


ニューヨークタイムズは明らかに米政府の意図的な個別ブリーフによって社説を書いたに違いない。同紙を“関節外交”に使うことは良くあることだ。
 

とりわけ激しい論調は麻生太郎ら三閣僚と、過去最多の超党派議員による靖国参拝から始まり、米主要紙は安倍袋叩きの様相を示した。ニューヨークタイムズは4月23日、「日本の不必要な国粋主義」と題する社説で靖国参拝について「北朝鮮の核問題を協力して解決すべきときに日本の方から中韓両国の反感をあおったのは著しく無謀な行動だ」と批判した。


ワシントンポストも同月27日、安倍が「侵略の定義は国際的に定まっていない」と発言したことについて「歴史を直視していない」と批判する社説を掲載した。またウォールストリートジャーナルも7日やはりこの発言をとらえて、「韓国および中国当局者は、怒りをもって反応したが、もっともなことだ」と論評した。
 

このように米紙が一致して、「安倍批判、中韓支持」の論調に至ったことは由々しき事態である。日本の主張など全く反映されていないのだ。米議会調査局に至っては報告書で安倍を「侵略の歴史を否定する修正主義者」と断じた。


新聞が報ずる度に大使や総領事が抗議したり、反論を投稿したりしているが後の祭りだ。韓国外交官のせせら笑いが目に見えるようである。


安倍は9日中国共産党機関紙の人民日報が沖縄の領有権は中国にあるとの立場を示唆した論文を掲載したことについて「日本の立場を世界に発信しなくてはいけない」と発言したが、問題はどう発信するかだ。中国の明らかなる対日挑発というか“おちょくり”に対抗して、「世界に発信」する態勢ができているのかと言いたい。


沖縄領有論文などは米極東戦略を直撃する発想であり、対米宣伝工作の絶好の材料だ。また戦後いかに日本が中国と韓国の経済成長に貢献してきたかなど主張すべき材料は山ほどある。


韓国の「恨みの文化」を反映した執拗な民族性が、政権が代わる度に歴史認識を繰り返し、70年たってもまだおさまらない現実をどう訴えるかも重要だ。軍律が世界一厳しい日本の軍隊が売春婦の強制連行することなどあり得ない。トラックで売春業者が女を満載して、転戦する部隊を追いかけ回したのが実情だ。


対米宣伝戦に政府・与党挙げて取り組むときだ。安倍は侵略の定義について8日も「学界的に明確に定義がなされたかについては、そうではない」と発言して、全く撤回する気のないことを明らかにしたが、それはそれでよい。


しかし米国のマスコミに丁寧に説明しなくてはならない。ここは大幅な予算の投入、官邸機密費や人材の投入も含めて、対米宣伝策を根底から練り直すときだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月09日

◆苦悩の議員外交に“解任の報酬”はない

杉浦 正章

 

野党のパフォーマンスは見苦しい
 
故人いわく「鷹が飛べば糞蠅も飛ぶ」だ。参院がまさにその状態に至った。外相経験者として明らかに対中議員外交で国益を守った環境委員長・川口順子を参院の野党がよってたかって解任決議を成立させるという。それも憲政史上初の解任であり、パフォーマンスだ。


参院選挙に向けて民主党をはじめ野党は国民にその存在価値を顕示しようとしているのだろうが、方向が全く違う。与党を3年3か月経験した民主党が、貧すれば鈍するでここまで物事を見えなくなってしまったのかと情けなくなる。
 

川口の手続きに瑕疵(かし)はなかった。北京でのアジア各国の首相・外相経験者の国際会議に日本の政治家として1人だけ参加した川口は、国会の許可を得た2日間で帰国する予定であったが、序列7位の国務委員・楊潔チヤンジエチー(よう・けつち)との会談が急きょ決まり、4月25日まで滞在を1日延長するよう自民党執行部に申請、同党は野党との調整に入った。


ところが野党はこれに応じず、調整がつかないまま川口はあえて楊との会談の方を選んだ。なぜなら国際会議は大半が尖閣問題に費やされており、その流れを見て楊との会談は欠席できないと考えたからである。


川口は帰国後野党に陳謝した上で「私が出席しなかったら日本の立場を代弁できる者がいない。国益を守ることができたと自負している」と述べている。
 

恐らくその通りであっただろう。尖閣問題が起きて以来、日中関係は冷え込みの極致に至り、有効な外交チャンネルも見いだせないままの状況が続いている。会談をしたからと言って問題が一挙に解決出来るものではないが、この時点で中国首脳の生の声を聞いておくことが、いかに重要かは小学生でも分かる。


加えて自国への影響力の大きいアジア各国の政治家を前にして、楊が中国ペースで日本を“欠席裁判”をしたらどうなるかだ。川口が一人いないだけで楊の発言は変わったはずだ。会談の空気も中国ペースで推移することは間違いない。
 

そもそも、民主党は政権当初から議員外交の必要を訴えており、予算委員長の石井一に至っては、昨年の連休に4日間の予定で申請していたフィリピンへの「外遊」を、勝手に11日間に変更して遊びほうけ、委員長を辞任しているではないか。川口は国益を考えたが、石井は何を考えたのか。


民主党国対委員長代行・松原仁は「国会議員の矜持として理解できない。委員長として自分のできることをまずやるというのが正常なセンスだ」と宣うた。矜持とは何か。誇りだ。矜持をもって川口は会談に臨んだのだ。


民主党議員の大半がそうであるようにテレビ意識のパフォーマンスなどではない。正常なセンスとは、「苦悩の選択」(川口)で議員外交を選んだセンスだ。


だいいち委員会などは委員長代理を立てて開催すればできたのである。それをしなかったのはなぜか。参院選向けにあえて平地に波乱を起こすことを狙ったのだ。
 

一番愚かな野党幹部の発言は維新共同代表・橋下徹だ。「中国要人とのアポイントが入るからといって、尻尾を振って喜ぶような姿は情けない」「外交の責任を負っていない議員が中国要人と会う意味がわからない」と発言した。


大阪のタレントレベルでは議員外交の重要性を理解せよといっても無理だろうが、意味が分からないなら「黙っていろ」と言いたい。ここはどうみても「ご苦労様」という度量があってしかるべき場面だ。


政治評論家になれば相当なレベルになれる自民党副総裁、高村正彦の発言が一番妥当だ。「日中関係にいろいろある中でそれに対処するために残ったという国益と、委員会を開けなかった国益とどっちが重いか。委員会は開こうと思えば開くことができた。野党が国益を担った川口氏を裁くことはとんでもない」と述べた。
 

この問題に当たっての自民党の判断は幹事長・石破茂をはじめ適切であった。最初から国民の支持がどこに行くかを見極めた。


一方で鬼の首を取ったようにはしゃいだ民主党代表・海江田万里は「夏の虫」であった。源平盛衰記に「愚人は夏の虫、飛んで火に焼く」とある。これで参院選に勝てると思ったら大間違いだ。新聞論調は朝日の両成敗の社説「不毛な対立にあきれる」よりも、読売の「委員長の解任は行き過ぎだ」の方が急所を突いている。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月08日

◆改憲論議は民主党の終わりの始まりか

杉浦 正章
 

安倍のくさびに執行部が必死の分裂回避策


首相・安倍晋三が唱える改憲の発議条項96条先行処理論が、民主党にくさびとなって重くのしかかっている。護憲派と改憲派分断のくさびだ。


民主党の憲法調査会は96条の改正そのものの賛否は据え置き、先行して改正すること自体には反対するという“苦肉の策”を7日打ち出した。とりあえず“虎口”を辛うじてのがれようというものだが、改憲の是非は棚上げで済まされる問題ではない。改憲論議は民主党の「終わりの始まり」となる可能性を秘めているのだ。
 

そもそも、96条の改憲の発議を議員総数の3分の2から2分の1に緩和する構想は、民主党が打ち出したものだ。2002年の同党憲法調査会が96条の改正で報告書を出している。


同報告書は「発議が各議員総数の過半数であれば国民投票にかける。3分の2の多数であれば国民投票を経ずに改正する」としている。


その後もこの主張は残っており、元代表・前原誠司は11年の読売の座談会で「まずは憲法手続きを定めた96条を改正しないといけない。憲法改正のハードルを低くしなければいけない」と主張している。
 

安倍が96条改正を言い出した狙いの一つは、ここにある。前原を中心とする改憲派を動かそうというものだ。いくら鈍くても代表・海江田万里はさすがにそれくらいは気付いたようだ。党分裂の危機になりかねないからだ。


そして「96条先行反対」を言い張り、憲法調査会を懸命に説得したのだ。幹事長・細野豪志に至っては、改憲派の急先鋒・長島昭久を憲法調査会の副会長に加えてしまった。


取り込んだつもりのようだが、これに先立ち前首相・野田佳彦にも近い長島は、超党派の国会議員らでつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)の「新しい憲法を制定する推進大会」で挨拶に立ち「ここにいる皆さんと全く同じ思いを持つ一人です」と発言して、万雷の拍手を受けている。
 

要するに96条の先行改正反対は、民主党執行部の懸命の党分裂回避策にすぎない。しかし、当面は糊塗できても党内は、非武装中立を標榜した旧社会党左派の流れの護憲勢力と、前原や野田など改憲勢力の対立が今後抜き差しならぬ様相に突入する可能性がある。


もともと水と油の勢力が同居できている方が不思議な政党なのであって、改憲論議は分裂要素として登場しているのだ。基本的に改憲派の中心は前原と野田に収れんされるだろう。


かつて前原は「我々は憲法改正は必要だという立場だ。その中には9条も含まれている。私の従来の意見は9条第2項を削除して自衛権を明記するものだ」とはっきり9条改憲を唱えている。


野田も著書で、「私は新憲法制定論者だ。現行憲法は古い憲法になっている。9条はもちろん、修正することをタブー視してはいけない」と述べている。
 

両者とも最近は刺激的な発言を避けているが、不気味な沈黙とも言える。前原は政界再編志向と言ってもよい発言をしている。「民主党のために政治をやっているわけではない。日本の政治を進めるため、同じ志を持つ人と一緒になるときが来るかもしれない。そのタイミングをどう考えるかに尽きる」と述べている。


維新共同代表・橋下徹との関係は良好であり、前原は事実上の改憲勢力と言っても良い立場にある。こうした状況を見て妥協を目指す動きも民主党内にはある。党最高顧問の江田五月は「96条改正ではなく3分の2で堂々と改憲を行うべきだ。一緒に改正案を模索して作ろうではないか」と自民党に呼びかけている。


しかし安倍政権はあくまで96条先行戦略で突っ張る構えだ。元防衛庁長官で自民党改憲推進本部事務局長を務める中谷元は「民主党の意見集約を待っていたら、何年も無駄にしてしまう。最後は国民投票になるのだから、国民を信用すべきだ」と述べている。


もう民主党の約束は誰も信用出来ないというのが政界の本音だろう。さじを投げたか生活代表の小沢一郎までが4日のインターネット番組で、「民主党がはっきりしない。改憲論者とそうでない人がいる。改憲を大きなテーマにするなら、そっちの人はそっちの人ではっきりすればいい」と発言、分裂を促している。


沖縄に別荘を建てて「隠居半分」の人から言われたくないだろうが、言われてしまってはどうしようもない。絶えず分裂含みで推移するのが、民主党の構造であり、運命だから仕方がない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)