2013年03月15日

◆自民選挙制度は見え見えの辻褄合わせ


成立不可能で結局選挙審への付託が狙いか


「夜を徹して作り上げる」と息巻いた幹事長・石破茂が、公明党優遇で憲法違反の疑いがある選挙制度改革案をなぜ作り上げたかだ。そこには見え透いた“つじつま合わせ”の野党対策があり、もともと成立など期していないことが明白である。


自公以外の全野党が反対する法案を、しかも選挙制度改革法案を強行突破をはかることなどということは憲政の常道としてあり得ないからだ。そこを看破されては、なんでも「きちんと」が口癖の石破も、こんどばかりは“きちんと”間違ったことになる。


選挙制度改革の要諦は、有権者が自分の投票した1票の価値が歴然と分かるものでなければならない。現行小選挙区比例代表制の一大欠陥を象徴するものは、選挙区で落選した議員が比例区との重複立候補でいつの間にか当選していることだ。


選挙区で菅直人を落選させて快哉(かいさい)を叫んだ選挙民が、結局「当選」と判明して落胆するようなケースが多い。今回の自民党案は、その分かりにくい現行制度を、さらに二乗したような分かりにくさだ。


問題は「比例を30議席削減し、削減後の定数150のうち、90議席は従来通りの方式で全党に比例配分する。残りの60議席は2位以下の政党だけで比例配分する」という部分である。


これは明らかに与党公明党への配慮である。石破はかねてから「公明党がのめない案は提示しない」と述べてきたが、そのとおりで公平であるべき選挙制度を公明党との“政治折衝”で決めたような案となった。


「中小政党優遇枠」を自民党は当初30議席としていたが、拡大を求めた公明党に配慮し、60議席まで広げたのだ。その結果自民党の試算では、比例区において自民党が24議席減、公明党は現状維持となる。


トリッキーなのは小選挙区と合わせた与党全体の議席数にある。自公両党では合計で301議席となり、与党が3分の2の議席を占めることに変わりはないのだ。


要するに石破は昨年末の「定数削減については、選挙制度の抜本的な見直しについて検討し、通常国会終了までに結論を得た上で法改正を行う」という与野党合意にとらわれるあまり、「身を切る案」を作ったが、一政党の思惑がありありと出てしまう結果となった。


どうも石破という政治家の特色は、一見すべての方程式を鮮やかに解くように見えるが、1+1が2にならない政治の現実を理解しない傾向がある。理路整然と間違うゆえんである。


そもそも選挙制度改革は一政党が恣意的な思惑で作るべきではない。とりわけ比例区で優遇枠を作ることについては、憲法の命ずる平等選挙と普通選挙の原則に抵触する恐れが濃厚である。


憲法は1票が平等に行使されることを何より求めており、政党が選挙結果を恣意的に“操作”することにより1党に有利になるように導けば、当然違憲となる可能性が大きい。具体的に改革案の違憲性を指摘すれば、比例1位の政党に投票した1票の価値が、2位以下が優遇されることにより低下することだ。


その証拠には衆院議長・伊吹文明も「憲法上の問題があって難しい部分もある」と指摘している。伊吹が衆院法制局の見解を聞いていないはずはない。また民主党幹事長・細野豪志も「投票価値の平等という観点から憲法上許容されるか疑問」と述べている。維新、みんな、共産などもこぞって反対である。


また比例の定員を30人削減することも根拠薄弱だ。いつのまにか消費税対策で政党も身を切ることを、定数削減で実戦しようということになってきたのだ。


民主党が“いい子”になろうとして80人削減を言い出したのが最初だが、国民が求めているのは健全なる議会制度であって、取引でもバナナのたたき売りでもない。方向性が初めから間違っているのだ。


議員にかかる費用は1人年間1億円で、自民案を合計してもたかだか30億円だ。数を減らして、多様な民意の反映ができなくなることの方が問題であろう。


こうした欠陥だらけの制度改革にもかかわらず、首相・安倍晋三と公明党代表・山口那津男は15日に会談、合意して法案提出を図る方針だという。


しかし、冒頭述べたように成立する可能性はなく、「身を切る案」を提出したという世論向けのつじつま合わせと、野党に対するけん制でしかない。要するに選挙制度は国会における駆け引きの道具として使われるのである。


これは国民の失望を買って、順風満帆に見える安倍政権の最初のつまずきになる可能性が大きい。自民党の狙いは国会論議でぐちゃぐちゃにして、成立しないことを国民の前に現出して、それを野党のせいにするとともに、結局は選挙制度を第9次選挙制度審議会に付託するしかないところに持ち込むところにあるとみた。


先の先を読んでずるがしこい手段を講ずる自民党政権の悪い病気がまたまた再発した感じだ。そんな、回りくどい手段を講ずるよりも最初から、選挙制度審議会に付託して現行制度を中選挙区制に戻すことを含めて検討させればよいのだ。
  【筆者より:来週は春休みを取ります。再開は25日からとします】

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月14日

◆維新が安倍政権の補完勢力的色彩強める

杉浦 正章


菅と松井の間に太いパイプ

ようやく日本維新の会が安倍政権の“補完勢力”としての実態を鮮明にし始めた。


太いパイプは維新幹事長・松井一郎と官房長官・菅義偉だ。既に政策では憲法改正、道州制、成長戦略などキーポイントで一致しており、13日には維新共同代表・橋下徹が反対していた日銀総裁人事も賛成に回った。結局大騒ぎした橋下も容認した。


今後維新は参院選で民主党を食って一定数が進出、20人程度の勢力となる可能性がある。改憲を目指す首相・安倍晋三にとってまたとない“援軍”となろう。安倍は公明党と維新をバランスを取りながら政権運営して行くことになる。


筆者はFNNが安倍、菅と維新国会議員団筆頭副幹事長・山田宏、政調会長代理・中田宏との9日夜の極秘会談をスクープして以来、何のための会談か首を傾げていた。


一国の首相が野党のトップならいざ知らず、下っ端役員と長時間会談したのである。会談がばれて無視された国会議員団代表・平沼赳夫から「一国の首相と会うのだから、しかるべき手続きを取るべきだ」とこれまた、やっかみ半分の浅ましい批判が出たほどだ。


会談の真の目的は何だったかというと、維新と安倍官邸との国会におけるパイプ作りだ。というのも山田も中田も松井の腹心と言ってもよいほどの関係であり、松井がこれもまた親しい関係にある菅を通じて設定したのだ。
 


秘密会談では日銀総裁人事に反対している山田と中田を安倍が説得する場面もあったことが予想される。総裁人事は13日維新内部での投票に付され、14対10で賛成に回ることが決まった。結局両者とも反対に回ったが、この見通しも12日に松井が菅との会談で詳細に伝えたのであろう。


橋下が最終的には認める方向であることも説明したようだ。こうした密接な連携の動きは、菅と松井の特殊な関係で成り立っているのだ。


大阪の維新に対する安倍官邸の見方は、「陽動作戦ばかりが目立つ橋下よりも松井の方が信頼が置ける」ということで定着している。“秘め事”などは橋下に漏らしたら、記者会見やツイッターですぐに公表してしまうから、いかんともし難いというのだ。


松井と安倍とは極めて親しい関係にある。というのもまだ安倍が自民党総裁・首相に復帰できるなどという気配がつゆほどもなかった昨年春に、松井は安倍に対して「維新の代表になって欲しい」と要請したほどの仲である。なお自民党での復権に意欲を示す安倍は断ったが、両者はこれで切っても切れない信頼関係が出来上がった。


安倍は腹心菅に松井との接触を継続するように指示して、菅はことあるごとに接触を継続した。接触は、政権成立後も続いた。1月11日に安倍が野党党首では最初に橋下と会談。2月17日に菅・松井会談、3月9日に前述の秘密会談、12日に菅・松井会談と表面化しただけでも極めて頻繁であることが分かる。


ポイントは安倍官邸が共同代表・石原慎太郎や平沼を外していることだろう。石原や平沼はもともと最右翼的な立場にあり、捨てておいても憲法などでは自民党に同調せざるをえないと見ているのだ。それよりも実働部隊重視なのであろう。


安倍官邸の狙いは、改憲、集団的自衛権の行使などをめぐって公明党が慎重姿勢を表明していることから、これをけん制し、補う勢力としての維新票確保であろう。


事実、最近の安倍は改憲の発議要件を定める96条だけでなく、将来的な9条改正にも意欲を示すなど「安倍色」を一段と強め始めている。


これに対して公明党代表・山口那津男は、集団的自衛権ではかねてから反対を基本に据えている。改憲についても予算委質問で安倍に対して「憲法99条で憲法尊重擁護義務を負っている」とけん制する一幕もあった。


「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と言う条項だが、官邸筋は「これにとらわれていては改憲できないということになる。まずは96条だ」と反論している。 
 

一方橋下は、参院選挙で自民党を過半数割れに追い込むことを目標に掲げて、全国的に候補者の擁立を図る方針であり、今後対決色を強めていくことが予想される。


しかし選挙情勢を分析すれば、今のところ1人区では自民党独走態勢が濃厚であり、2人区以上でも1人は押し込める可能性が強い。結局、維新が食うのは複数区で凋落著しい民主党ということになる。


したがって選挙の対立が決定的に選挙後の維新と自民の関係に作用することはないだろう。選挙後は菅と松井ラインが復活して、連携の動きが加速するものとみられる。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月13日

◆田中流アナログ選挙に“逆張り”の勧め

杉浦 正章



ネット過信に潜む“落選”のわな


ネット選挙がいよいよ実現することになって、自民党参院議員を中心に動揺が走っている。推進者の首相・安倍晋三は「自民党に絶対有利」と、参院側を説得しているが果たしてそうか。


筆者はネット選挙に血道を上げたりすれば、落選必至と言っておく。ご先祖様からの固い選挙地盤を受け継いで、選挙に心配の要らないぼんぼん首相の言うことなどを聞いてはならない。ここは逆張りでデジタル選挙などには専念せず、アナログ選挙に徹することだ。


ネットなどへのエネルギー投入は3%でいい。当選したいならネットはポスター程度と心得て、ネットにエネルギーを割く“机上の空論”選挙を展開してはならない。いまこそ田中角栄流の有権者と肌で接する選挙を展開することだ。


自民党は12日、インターネットによる選挙運動を参院選から解禁する公職選挙法改正案を了承した。13日に自民、公明、維新3党で衆院に共同提出、成立は確実である。


これによりホームページ、ツイッター、フェイスブックなどを選挙期間中も利用できるようになるうえに、電子メールによる選挙運動は政党と候補者に限定して実施される。


よく誤解している向きがいるが、あくまでネット上の選挙運動であり、ネット投票ではない。候補にとっては選挙運動の革命であり、自らの意思伝達は無限の可能性を秘めることになる。


逆に、西部劇と同じでネット選挙は無法地帯が現出される側面もあり、なりすましや当て逃げのような誹謗中傷、悪名高き中国軍部などによるサイバー攻撃もあり得ると見なければならない。


政権は安倍が前のめりになってネット選挙推進者である。しかし自らの人気がネトウヨ(ネット右翼)に支えられているからといって、全党的に通用するかといえば、極めて難しいと言わざるをえない。幹事長・石破茂は前々回の総選挙に惨敗したことについて「小沢さんの田中角栄選挙に負けた」と述べている。自らも田中の薫陶を受けたことがあるだけに、見るところを見ている。


田中の選挙は、ネット選挙、つまりデジタル選挙とはほど遠いアナログ選挙である。田中発言からその“極意”とネット選挙の違いを分析すれば次のようになる。


★「戸別訪問は3万軒、辻説法は5万回やれ。2万人と握手をして廻れ」。この発言は選挙の要諦はまずスキンシップであると言うことだ。有権者と直接会うことは、自らの人となり、人柄を伝達する手段であり、これがメールで代用できると思ったら大間違いだ。


最近のメールは動画も送れるし、演説を映像にして送ることも可能だ。ところが致命的欠陥は有権者が、有り難く思わないことだ。他人に話すのと同じ事をメールで送りつけられたからと言って、喜ぶわけはない。筆者なら候補者のメールは自動的に迷惑メールに指定してゴミ箱に捨てる。


★「選挙民が何を一番望んでいるのか、何に一番困っているのかを、他の誰よりも早くつかまなきゃいかん。とにかく歩け、歩いて話を聞け」。要するにフィードバックだ。一方的な伝達だけでは政治家の勤めは果たせない。選挙運動は具体的な選挙民のニーズを取り込む絶好のチャンスと捉えるべきだというのだ。ネットの一方通行では、最先端のニーズを掌握出来ないのだ。


★「選挙区は一軒一軒しらみつぶしに歩け。靴を何足も履きつぶせ。雨の日も風の日も歩け」。田中は人が人と会って弾け飛ぶ感動を何よりも大事にした。いくらフェイスブックやブログやツイッターを活用しても、感動する文章や呼びかけをすることは容易ではない。感動があってこその得票と心得るべきだというのだ。パソコンでしこしこ伝える自己宣伝には感動はない。


★「3分でも5分でも辻立ちして自分の信念を語れ。それを繰り返せ。それしかない。山の向うを見ていても援軍は来ない。聴衆の数で手抜きはするな」。辻立ちとは何かと言えば、選挙民に自らの存在を示すことだ。辻立ちしたからと言って、話を聞いてくれるとは限らない。


田中は「昨日も今日も立っていたなぁと思ってくれるだけでいい」と漏らしていたが、有権者の頭の片隅に残っていればいいのだ。ネットでの演説などは、NHKの候補者演説と同じで、瞬時に切られる。前首相・野田佳彦が忠実に田中の教えを守って辻立ちし、1回の落選もないのがその効果を物語る。


★「いいか、演説というのはな、原稿を読むようなものでは駄目だ。聴衆は、初めから終わりまで集中して聞いていない。きっちりとした起承転結の話をしても、駄目なんだ。聴衆の顔を見て、関心のありそうな話をしろ。30分か1時間の演説の中で、何か一つ印象に残るような話をもって帰ってもらえばいいんだ」。


これも要諦だ。何か一つだけ面白い話しを記憶させる。これも聴衆と接して「顔を見て」こそ分かる話だ。ネット上の理路整然とした“机上の空論”で票が集まると思ったら大間違いだ。


要するに、ネット選挙を過信などしていたら落選間違いないと繰り返しておく。やるなら沖縄担当相・山本一太が前からやっているように、自ら車や電車の中でも休憩時間中でもひまさえあれば書いて書いて書きまくり、常に一定の有権者を引きつけておくことだ。それもあくまでアナログ選挙の補完としての位置づけだ。


米大統領オバマはネット選挙を活用したが、実際には有権者との接触を何よりも重要視しており、ネット選挙がすべてであったわけではない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月12日

◆参院選、自公で過半数確保の勢い

杉浦 正章


民主惨敗、解党の危機


自民党長期政権の鍵を握る参院選挙は、内閣・政党支持率の異常な高まりに支えられて、自民・公明両党で過半数を維持できる可能性が強まった。筆者の分析では自公の勢力分野が過半数の122議席を上回り130議席前後に達する可能性が出てきた。


高支持率が参院選挙まで維持できる可能性は予断できないが、逆に急落する要素も少なく、「高め横ばい」で推移する可能性が高いからだ。この結果、民主党は衆院選に次ぐ大惨敗が予想され、党再分裂も予想される事態となろう。


とにかく発足早々の政権はだいたい“ご祝儀相場”で最初の世論調査だけが高く出るものだが、2回、3回と回を重ねる度に上昇する政権は見たことがない。


11日のNHKの調査でも安倍内閣支持率は、先月より2ポイント上がって66%。読売の先月の調査は何と71%で内閣発足から2回連続して上昇した。驚異的なのは自民党支持率もかってない高まりを示していることだ。


NHKでは自民党が40.1%、読売が42%、朝日が37%といった具合だ。せいぜい10%台で推移していたのと比べると雲泥の感がある。


他党はNHKでは民主党が7%、公明党が4.4%、日本維新の会が3.9%、みんなの党が3.1%と続いており、自民党の一人勝ちの様相を濃くしている。


安倍は「運も実力のうち」と漏らしているが、まさにつきについている感じだ。問題はこの支持率が維持できるかどうかだが、最大の理由であるアベノミクスと株高が象徴する景気高揚感は、そう簡単には急落しないだろう。


なぜなら、アベノミクスの成否判明は1年2年後となるからだ。経済と並んで重要なのは首相・安倍晋三のタカ派姿勢が、中国の尖閣諸島への強硬姿勢、北朝鮮の原爆・ミサイル実験に“支えられ”ている点だ。したがって支持率は高止まりはないものの、高めで推移するものとみられる。


こうした中で参院選挙に突入となれば、選挙にも反映されざるをえまい。参院選挙は定数121議席を選挙区73人、比例区48人に分けて行われる。現在の自民党の非改選議席は58議席であり、過半数には自公で64議席取って122議席以上を確保する必要がある。


まず組織票の公明党は11議席が見込まれる。これは固いと見てもいいだろう。問題は自民党がどの程度議席を伸ばすかだ。


総選挙の結果や、内閣・政党支持率を勘案して分析すれば、選挙区で自民党は47か48議席。比例区で12議席は獲得する公算が大きい。つまり60議席前後だ。そうなれば自公で70議席前後となり、非改選の58議席と合わせれば130議席前後となる。


これをさらに細かくみれば自民党は1人区31議席中、沖縄と岩手を除いて席巻の29議席を獲得する可能性が高い。また2人区、3人区、4人区で各1議席、5人区の東京で2議席を獲得できそうだ。


一方で民主党は厳しい戦いを強いられている。1人区はあきらめるにしても正念場の2人区など複数区で維新、みんななど第3極に追いまくられている構図が現出しているからだ。


自民党に勝つには野党の選挙協力が、極めて重要だがこれも実現しそうもない。維新は民主党参院議員会長・輿石東に代表される日教組の影響を毛嫌いしている。入院中の石原慎太郎が復帰できれば、なおさら民主党とは対決路線で行くだろう。


さすがに選挙の“神様”だけあって、生活の代表・小沢一郎は選挙協力の可能性について「1人区では非常に困難」と分析、2人区でも難しいと判断している。「3人区以上の選挙区で組めるかどうかだ」と述べているが、組めたとしても自民党の勝利を阻むことができるほどのものにはなるまい。


この結果民主党は、改選議席の46を大きく割り込み、選挙区で10議席に達さない公算が出てきている。比例区も5,6議席がいいところであり、総選挙に次ぐ大惨敗となる。逆に維新は太陽の党との合流でイメージダウンしており、総選挙の際の勢いはないものの、民主党に食い込むくらいの力は維持している。


選挙区で7から8議席、比例区で10議席前後は取れるかも知れない。


こうした選挙情勢から判断すれば、参院選挙後は自公政権で過半数に達する公算が強く、長期に政局を混迷させた、衆参のねじれ現象は解消する方向だ。安倍は長期政権の可能性が出てくる。


参院でも維新は自公の補完勢力として存在感を強めるだろう。民主党は遠心力が作用して分裂の危機に瀕する可能性が強い。代表が海江田万里では能力的にたがを締め直すことは難しいだろう。当然新代表人事が俎上(そじょう)にのぼり、これを契機に、党内抗争が再燃する可能性が高い。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月11日

◆習近平は核完成反対、北の体制は維持

杉浦 正章

中国の政策大転換はありえない
 

北朝鮮制裁強化の包囲網が国連安保理決議によって採択されたが、問題は中国の“本音”がどこにあるかだ。

政府筋は「決議に習近平の意思が反映されていることは確かだ」と漏らしている。しかし、それが中国の北擁護の政策転換を意味するかというと、「あり得ない」と否定している。

なぜなら中国が北を見放せば、北の金正恩政権は崩壊するし、北の崩壊は中国共産党1党独裁体制の崩壊に直結しかねないからだ。北の完全核武装は阻止するが、金政権継続は支持する。これが習近平の基本戦略のようだ。
 

安保理決議の要点は法的拘束力を持つ国連憲章第7章が挿入され、「禁輸品の疑いがある場合貨物検査」と「核兵器などの開発につながる金融取引の凍結」が、加盟国に義務づけられた。


これまで06年と09年ののミサイル発射、延坪島砲撃、過去2回の核実験と、ことごとく安保理決議に盾を突いてきた中国は明らかに対応を転換させた。しかし、第7章の適用については最後まで反対して、日米韓3国の多数派工作包囲網の中で孤立の様相を帯びるに至った。


折から中国世論もネットでは北の核実験を批判する書き込みが目立ち始めた。14日に国家主席に就任する習近平としては、国際的印象も考慮する必要がある。こうした事情で第7章も賛成に回ったのだ。


なぜ北の核ミサイル完成反対に踏み切ったかと言えば、中国も核の脅威が現実のものとならざるをえないからだ。核爆弾の小型化と長・中距離ミサイルへの登載が実現すれば、まかり間違えば北京を狙う政権が誕生しかねないことでもある。


ロシアはとっくに北に安保上の脅威を感じ取っており、中国も同盟国だからといって放置できない段階まで到達したのだ。したがって習近平はとりあえず国連決議に同調して、核武装の完成を阻止する動きに出たのだ。こんご決議にそって核武装を完成に向かわせないための対応を取り続けるであろう。


しかしながら、中国新指導部が、核とミサイル以外で北を締め付けるかというと、ことは逆であろう。政府筋によると「米国との同盟関係にある韓国と国境を接するようになることは絶対に避けたいのが基本戦略であり、変えることはない」と漏らす。


中国は、国内各地で生ずる“格差暴動”から、とりあえずは国民の目を尖閣問題に向けることで押さえてきたが、暴動に加えて北の崩壊が生じたらどうなるかだ。1991年のソ連衛星国家の崩壊が、ソ連邦の崩壊に直結したように、北の崩壊がもたらすものは共産党1党独裁にとって致命的だ。


なぜなら北が崩壊すれば、中国が軍事介入して暫定政府でも樹立させない限り、間違いなく韓国に併合される流れであろう。国境は韓国と接することになる。日米、米韓軍事同盟による極東の包囲網が完成することになる。
 

加えて国境の鴨緑江を渡って難民が流入、そのあつれきを受けて中国の国内情勢は大波乱の状態に突入する。とても共産党政権は維持できなくなる要素が国内外に満ちるのだ。


従って、習近平の基本路線は、核武装は阻止するが、北の政権は維持せざるを得ないのた。ある意味で北と中国共産党は密接不可分のもたれ合いなのだ。北にとっての中国は、世界的な孤立の中で最後の頼みの綱。中国にとっての北は、共産党独裁にとって最大の防波堤なのである。
 

国連決議の欠点は、その主要な狙いが核兵器完成阻止にあることであり、金正恩体制の崩壊を狙った経済制裁の意味合いが少ない事であろう。


金融制裁も、マカオのケースのように大きな打撃を与える流れにはなりにくい。なぜなら、マカオで懲りた北は資金の分散を図っているからだ。専門家筋はいま米国の軍事偵察衛星も日本の偵察衛星も鴨緑江にかかる遼寧省丹東の鉄橋近辺に焦点を合わせているという。物資の流れを監視しているのである。


これまでのところ「貨物検査」らしき事が行われているらしく、5日の決議以来トラックの流れが幾分滞っているように見えるという。しかし、完全に物流がストップしている状況にはない。北の経済に影響が出るほどの問題にはならないのだ。


明らかに中国は、食料や、石油など基幹物資の流通に歯止めをかけてはいない。中国は最新ミサイル兵器「KN−08」用の移動用車両を北に向けて輸出したほどの国だ。これまでどおり一定期間を経れば“尻抜け”になる可能性は多分にあるとみなければなるまい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月08日

◆民主質問、“3者凡退”の様相

杉浦 正章


安倍の“クリアカット”に潜む危険性


「居丈高だ」「いや傲慢だ」と最初から感情論にまで発展、行く先が案ぜられる論戦だった。いよいよ衆院予算委員会を舞台に通常国会の本格論戦が7日スタートを切った。


民主党は代表、幹事長、前副総理と“オールスターキャスト”を並べ、経済、外交・安保、原発などで首相・安倍晋三を追及した。しかし総選挙圧勝を背景にした安倍の“逆襲”に遭い、まるで“三者凡退”の様相であった。


民主党は総選挙大敗の“脳しんとう”からまだ脱却できておらず、安倍のクリアカット答弁が目立ったが、クリア過ぎて今後逆手を取られる危険性を感じた。


まず最初に質問に立った代表・海江田万里は、経済評論家だけあって、アベノミクスの危険性を追及、「デフレの脱却につながらない」と断じた。これに対して安倍は「経済はまさに変わりつつある。民主党は残念ながら3年間やってもできなかったが、我々は2か月で変えようとしている」と反撃。


おりから株価は4年5か月ぶりの高水準に達しており、確かに民主党政権が過去3年3か月の間自らの政策で株価を引き上げたことは一度もない。海江田はテレビではよくしゃべるが、方向性に疑問があるというのが定評。安倍との経済論争は「格」が違う感じを与えた。3人の中では一番お粗末だった。


次いで立ったのが民主党の若手のホープ、幹事長・細野豪志だ。若手のホープといっても、東電事故でマスコミが作った虚像の可能性があるとかねてから思っていたが、勢いが余った感じが濃厚だった。


定数是正問題を取り上げて、大声を張り上げて安倍に噛みついて、「定数是正を今国会でやることを確約せよ。逃げないでいただきたい」と迫った。安倍は「ずいぶんと居丈高な発言だが、0増5減をやらなかったのは民主党ではないか。はっきり言っておく」と切り返した。


カチンときたか細野は「私のことを『なんだ若造が』ということでしょうが、今の発言は傲慢だ」と反論、「居丈高対傲慢」が火花を散らす結果となった。確かに0増5減をたなざらしにしたのは民主党であり、あまり肩を張って言い募ることができる問題ではない。


前副総理・岡田克也は野田政権が尖閣の国有化後に海上自衛隊に15カイリくらい離れて「遠くで警備せよ」と命じたといわれる問題を取り上げた。


安倍が午前中に「過度に中国とのあつれきを恐れるあまり、当然すべき警戒、警備に極度の縛りをかけた」と批判したことについて「何を根拠にしているのか。言いがかりだ」と食いついた。しかし安倍は「確信しているから言った。事実を述べている」と反論した。


具体的根拠は言わなかったが、防衛庁からの報告に基づいていることを明らかにした。岡田が知らなかっただけのことであろう。


さらに岡田は安倍が民主党政権が日米安保体制を毀損したと繰り返している点について「民主党政権はでたらめだというのはわが党だけでなくアメリカに対しても失礼だ」と抗議した。これに対して安倍は「普天間問題では『最低でも県外』と言い、『トラスト・ミー』と言い、実行できずに致命傷を与えたのは事実だ」と指摘した。


民主党政権最大の醜態「鳩山発言」を逆手に取られてはさすがの岡田も反論に窮した。安倍は岡田に対して2度にわたって総選挙敗北の原因に言及した。


日米関係では「国民がこういう政権に任せられないという選挙結果を招いた」と述べたかと思えば、原発に関しては「選挙で国民は民主党は退場せよ。自民党がやれという判断を下した。この民意は重たい」と発言した。


その根底の意識には「敗軍の将には兵を語らせず」とする、“勝者の論理”がみられる。アベノミクスにせよ外交・安保問題にせよ政権発足早々からことごとく物事が順調に運んでいる事への自信の現れであろう。


だが、首相の発言が論理的にクリアカット過ぎると、必ず野党が逆手をとるチャンスが多くなる。昔長期政権が続いた佐藤栄作の答弁は、何を言っているのかまるで判じ物のような言葉の羅列であった。ところが、野党は揚げ足の取りようがなく、追及に手こずった。


安倍の発言は政権が快進撃を続けているからこそ成り立つ答弁方式ではないか。野党に対して噛みつきすぎるのも、必ず報復が待っている。


予算委冒頭質問から見る限り、安倍は国会論戦をはやくも対決ムードに導きそうな気配だ。安倍はマスコミも議会も3か月のハネムーン後は手のひらを返したように厳しくなることを覚えておいた方がいい。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月07日

◆北の“逆ギレ反応”はまずミサイル発射か

杉浦 正章


4回目の核実験も視野に


焦点は逆ギレして休戦協定の「白紙化」を宣言した北朝鮮が、いかなる行動に出るかだ。例によって発言だけは勇ましい。


010年の韓国延坪島砲撃で頭角を現した軍部強硬派の偵察総局長・金英徹が「ワシントンを火の海にする」とすごんでいる。

今週中の国連安保理決議、来週初め11日からの米韓軍事演習と、国際社会の核実験に対する包囲網がひしひしと強まっている中で、北は単なる3流やくざのような威しをしているだけなのか、それとも何らかの軍事行動に出るのか。苦虫をかみ締めながらも国際社会は注視せざるを得ない情勢ではある。


威嚇声明の内容は「朝鮮戦争の休戦協定を白紙化する」とした上で「多様化された精密核攻撃手段で応じる」「任意の時期に任意の対象に、制限なく精密攻撃を加えて祖国統一事業を前倒しする」「米国が核兵器を振り回せば、われわれは精密な核攻撃でソウルのみならずワシントンまで火の海にする」といった内容だ。


「ソウルを火の海にする」と宣言し続けてて半世紀近くたつが、今度はそれを一挙にワシントンまで広げた。この国の“口撃”だけは、民族的特性なのであろう。とどまることを知らない。


しかし休戦協定の白紙化とは穏やかではない。1950年に勃発した朝鮮戦争は53年に北朝鮮軍、中国軍、国連軍の3者によって休戦協定が成立した。「白紙化」は国連決議に反対しない中国に対する“当てこすり”の意味もあるに違いない。


現状はあくまで休戦であって、国際法上は戦争状態が継続している。いつまた戦争が再開してもおかしくない状況にあるのだ。たしかに「ソウルを火の海」にすることは可能だ。休戦ラインからソウルまではわずか57キロであり、通常兵器で十分届く。


北は長距離砲500門を配備してをり、1分間に約3000発の砲弾をソウルに浴びせられると豪語している。注目すべきは中距離ミサイル・ノドンが、過去20年間に完全に実用化されて、照準を韓国と日本に合わせていることだ。核の小型化が完成すれば、これに核弾頭を登載して完璧な核ミサイルとなる。
 

一方長距離ミサイルは、昨年の実験で米国の西海岸までは届く飛行距離を達成した。しかし、ワシントンまでは届かない。だから「ワシントンを火の海」にすることはできない。核保有の独裁国家の特徴は、核ミサイルさえ保有すれば、超大国と対等になるという“一大錯覚”を持っていることだろう。


しかし、たとえ核ミサイルを保有しても発射はできないことが分かっていないのだ。緊迫事態になればミサイル防御網が張り巡らされ、迎撃態勢が取られる。加えてミサイル基地への先制攻撃は確実に行われる。さらにピンポイントで金正恩を巡航ミサイルが狙い撃つ。


一発でも核ミサイルが発射されれば、核ミサイルの報復で瞬時に北朝鮮全域が「火の海」となって、国家は消滅する。韓国参謀本部も6日「北が挑発を強行すれば拠点のみならず、指揮部隊にも報復を加える」と中枢への攻撃を警告している。


したがって刈り上げ頭のぼんぼんが、いくら力んでみても北朝鮮の核戦略はなり立たないのである。ぼんぼんはバスケットのスーパースターと仲良くしていればいいのだ。


こうした中で採択される安保理決議案は、かってなく厳しいものとなる。焦点だった国連憲章第7章の適用が実現する方向となった。「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を定めている同章は、最終的には加盟国の軍事行動をも求めている。


決議はまた船舶、貨物に関して国連加盟国が自国領内で検査をすることを求めており、これは「決定事項」となった。事実上戦時下における「臨検」に近い措置が取られる。核・弾道ミサイル計画に関係する金融取引や金融サービスの停止も義務化される。


よく中国がのんだと思われるほどの決議だが、その中国は全く信用ならない。過去に国連決議があっても国境の鴨緑江にかかる唯一の鉄橋は、物資を運ぶ貨物列車やトラックがひっきりなしに行き来しており、今回もこの流れは止まるまい。


それでは国連決議と米韓軍事演習に対抗して北が何をできるかだが、4回目の核実験とミサイル実験があり得る。このうちまず先行するのは短距離か中距離のミサイル実験だろう。既に北は日本海と黄海に船舶の航行禁止区域を設定した模様である。


北朝鮮はこれまでも、短距離ミサイル発射や海上射撃訓練の前に同区域を設定している。とりわけ注目されるのが昨年4月の軍事パレードで中国製移動用車両に搭載された最新兵器「KN−08」と呼ばれる新型ミサイルの実験が行われるかどうかだ。


追加核実験は、実験準備は完了している模様だが、立て続けの実験はあまりにも国際社会の反発が大きい。まずはミサイル発射か実験、海上射撃訓練などを先行させる可能性が高い。


軍事演習の最中に延坪島砲撃のような行動に出れば、直ちに軍事的報復措置が取られる可能性が高く、北は避けるだろう。もっとも常識が通用する国ではないから、何をするか分からないところがある。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月06日

◆日ロ首脳会談で「領土」の大幅進展は困難

杉浦 正章


アベノミクスにらみ経済拡大に比重


メドベージェフの対日強硬路線と打って変わったロシア大統領・プーチンの“秋波”である。その意味するものは何か。


プーチンは昨年3月に北方領土問題で「引き分け」発言をしたかと思うと、先月の元首相・森喜朗との会談では平和条約に言及して、締結されないことの「異常性」を強調した。あたかも領土で譲歩するかのような“そぶり”を見せている。


こうした中で首相・安倍晋三は5日の国会で、10年ぶりの訪ロを正式表明した。春の連休にも実現しそうだ。しかし4党返還要求を政府が変える方向にはなく、プーチンも妥協することは難しい。唯一合意しうる部分が両国経済関係の発展である。安倍もアベノミクスにはプラスに作用するし、プーチンも切実な国内経済状況を抱える。


森は昨年のプーチンによる「引き分け発言」を前向きの妥協論と捉えていたフシがある。だからさる1月に択捉を除いた、歯舞、色丹、国後の3党返還論に言及したのだろう。


しかし先月の訪ロの際、プーチン発言の真意をただすと、プーチンは「引き分け発言は、勝ち負けなしで双方が受け入れ可能な解決策だ」と説明するにとどまった。この発言が意味するところは、プーチンが依然歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を、領土交渉における原点としていることが分かる。


日本側には麻生太郎の主張した面積での2分割論や、4島の日本帰属を確認した上での2島返還論など様々な妥協論がある。自民党内の、北方領土と平和条約の切り離し論などもしびれを切らした結果の発言だろう。しかし、ロシア側には2島返還以上に踏み出す意図はないというのが大筋の見方だ。


会談でプーチンは森にA4サイズの紙に、柔道場の端で組み合っている人物を矢印で真ん中に移す図を書いて渡した。場外に出そうなところを「待て」といって、中央に引き戻そうということだ。さらにプーチンは「日ロ両国が平和条約をいまだに締結していないのは異常な事態だ」とも強調した。


その姿勢からは首脳会談をまず先行させて、交流の輪を拡大したいという思惑がある。背景にはアメリカのシェールガスのヨーロッパ進出で、LNGなどの販売が落ち込み、ロシア経済が深刻な打撃を受けていることがあるようだ。


加えて日本の経済力と技術でシベリア開発を前進させたい狙いもある。プーチンは10年前の首相・小泉純一郎との会談の結果、日ソ間の貿易量が4倍増と飛躍的に拡大したことを覚えており、そのケースを踏襲したい気持ちがあるに違いない。


さらに重要な点は外交・安保面での問題だ。中ロ関係は良好な状態にあり、中国の躍進は現在のところ海洋進出へと向かっている。しかし長い国境を接しており、警戒を怠るわけにはいかない。


また北朝鮮のミサイル実験と核小型化の成功はロシアにとっても大きな懸念材料である。安倍との首脳会談は両国へのけん制包囲網作りとな得るのだ。


一方、安倍にとっても東南アジア歴訪で対中けん制の動きに出たのに加えて、訪米で日米安保体制を再構築した。訪ロすれば、対中、対北けん制の意味合いが濃厚なものになる。


最大の利点は日ロ経済の活性化はアベノミクスにプラスに作用する。このような事情が双方にあって4月か5月の連休中にも訪ロして日ロ首脳会談に臨む意向を固めたのであろう。


ただ北方領土問題で安倍が4島返還を譲歩する選択肢はまずないとみられる。国内的にも世論上も4島返還で譲歩の空気は大勢となっていない。


そこで先例になるのが小泉訪ロだ。小泉はプーチンとの間で日ロ関係全体を包括的に発展させる「行動計画」をつくり、経済的な結びつきを強める方針を選択した。領土問題は事実上の先送りとなったのだ。


安倍も領土問題では主張すべきは主張する立場を堅持しつつも、経済関係の結びつき強化を図ることに主眼を置く方向だろう。隣国首脳との対話が10年もなかったことが異常であり、北方領土問題は首脳会談を積み重ねる過程で、糸口を見出してゆくしかあるまい。


森はプーチンに領土問題で1年以内に議論しての決着を申し入れたというが、一つの方向であろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月05日

◆自民は拙速に“定数減”でお茶を濁すな

杉浦 正章


中選挙区など制度の抜本改革に取り組め


国政の根幹をなす衆院選挙制度改革が党利党略で決められそうな情勢となって来た。自民党幹事長・石破茂が今月中旬までに「夜を徹して」決めると言い出したのだ。


民主党幹事長・細野豪志に問い詰められての発言だが、あまりにも拙速である。自民党案は比例区の30議席削減で現行制度を維持しようというもののようだが、これでは民意を反映しない「死に票」を出す制度の重大な欠陥は是正されない。


やはり与野党は、日本的選挙制度である中選挙区制も含めた制度改革を目指すべきであり、安倍は早期に第九次選挙制度審議会を発足させ、制度問題に取り組むべきだろう。


昨年末の解散を巡る駆け引きで選挙制度改革は定数削減と絡んで重要テーマとして浮上した。とりあえず定数は「0増5減」を成立させたものの、総選挙には間に合わず、制度改革は今国会に持ち越された。これが自公民3党合意の根幹だ。


民主党はかねてから比例区の80議席削減を主張しており、自民党内では30議席で妥協する案が有力となって来ている。しかし党内には反対論も根強く、これをクリアするのは容易ではない。


3日のNHKでも細野は石破に約束順守を求めたが、これはひたすら3党合意を盾に取った自民党を追い詰めるための術策であり、本質は制度改革の名を借りた党利党略である。これに理路整然としか対応できない傾向にある石破が乗せられた色彩が濃厚だが、二人とも大局を見ていない。


いま政治に必要とされているのは、小選挙区制度の弊害からいかに脱却するかであって、議席減などではない。両党とも「消費税を実行する代わりに自ら身を切るべきだ」という、キャッチ・フレーズにとらわれているが、議席を減らして出てくるメリットは30人削減でたかだか30億円だ。


ことは30億円出すから消費税を認めて欲しいという説得材料に使うべき問題なのか。両党とも根本的部分でピントが外れているとしか思えない。


翻って、選挙制度の現状を見れば、総選挙の度に小選挙区比例代表制の弊害が著しく現れている。今回も小選挙区における自民党の得票率は43%であり、これが294議席と全議席の5分の3を占める結果を招いた。


民意を反映しない死に票は小選挙区で3730万票に達し全体の56%に相当する。民主党が躍進した前回2009年の選挙でも所を変えて全く同様の傾向が見られた。


明らかに選挙制度上の欠陥であり、比例区の議員定数削減の問題とは性格を異にしている。この結果、選挙の度ににチルドレンが多数当選して、その数が政治を左右してきたことでもある。何も新人議員が悪いわけではないが、小沢チルドレンが象徴する、政治の停滞と迷走は度し難いものがあった。


今回も自民党は115人の新人議員を抱えて、その“教育”に腐心しており、政治の能率は低下する一方である。小選挙区制になって、政治、外交、安保のプロフェッショナルとも言うべき議員がいなくなった損失は大きいのだ。政治主導が薄れ、“官僚主導”がはびこる根本原因がこれだ。また議員が小粒になってしまった。


地裁が近く定数訴訟で違憲判断を下す可能性が高いことも“拙速”の理由となっている。もちろん司法の判断は判断として参考にすべきであるが、国権の最高機関の制度に関する問題が裁判結果で拙速に左右されるべきではない。


筆者は日本的政治風土の中では小選挙区制よりも、より民意を反映できる中選挙区制が適切であると思う。よく2大政党制で政権交代ができる制度がよいと言われるが、戦後の自民党の長期政権が民主党に政党の座を譲って大失政に次ぐ大失政を繰り返したことが紛れもない制度上の欠陥を物語っている。


自民党政権は事実上派閥という党内与党と、党内野党との間で政権交代が行われたからこそ長期に続いたのだ。


戦前も1919年に原敬が小選挙区制を導入したが、6年でつぶれ、中選挙区制となった。この結果政友会と民政党との間で2大政党制による政権交代が行われるようになった。中選挙区の下で2大政党制が実現しているのだ。


小選挙区制導入で主要な役割を果たした河野洋平が「導入は失敗だった。不明を恥じる」と述べているが、いまさら不明を恥じてもらっても、こればかりは取り返しがつかないことをしてくれたと言うしかない。導入した議員らの責任は重い。 


公明党など中小政党も拙速な制度改革に反対しており、幸いにも総選挙が終わったばかりで次の選挙までには時間もある。ここはこれまでやってきたように民間有識者で構成する選挙制度審議会を早期に発足させて、安倍が制度改革を諮問すべきであろう。


まさに選挙制度は国家百年の計であり、議論は尽くされなければならない。自民党も民主党もその場しのぎの“姑息(こそく)な改革案”など俎上に載せるべきではない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月04日

◆早期に放射線洗浄目標を再設定せよ



民主政権の1_・シーベルトが帰還の弊害だ


民主党政権が設定した除染1_・シーベルトの目標が、マスコミの作り出した“風評的危機感”扇動と相まって、福島原発の地元住民の帰還の遅れを招いている。これに対して最近二つの大きな動きが生じた。


一つは福島県知事が国に対して目標の再設定を要望。他の一つは世界保険機関(WHO)が、被ばくによるがん発生の恐れを否定したことだ。


原発事故による被害者に明るい展望が開けつつある。政権交代の良い機会である。政府は危機を煽った民主党政権と違って、より緩い基準でも帰還できるよう方針を早急に転換すべきである。


もともと学者など専門家の間では年間積算線量1_・シーベルトの目標設定は、疑問視する空気が強かった。しかし一部マスコミが、放射線にナイーブすぎる国民性を逆手にとって、危機感を煽りにあおった。もちろん朝日新聞などは社是である原発ゼロ実現への思惑がある。


一方で、市民運動は、感情論を利用して運動の拡大を図った。こうした風潮を受けて民主党政権は、ろくろく除染の困難さを科学的に理解しないまま、環境相・細野豪志が世論にこびる傾向を強めはじめた。あちこちで除染の目標を「1_・シーベルト以下にする」と言って回ったのだ。


学者など専門家は反論すれば袋叩きに遭う形となっていた。「物言えば唇寒し」の雰囲気の中で、本来なら主張すべき発言を控えるという、だらしのない状況で推移してきたのだ。この結果「1_・シーベルト」が定着してしまったのだ。


ところが、音を上げ始めたのが自治体だ。いくら亙を一枚一枚洗浄しても2_・シーベルト以下には落ちにくいのが実態であったのだ。もともと専門家の間でも1_・シーベルト以下にするのは雨など自然現象が加わった長期目標でなければ極めて困難とする見解が強かった。


いくら洗っても1_・シーベルトには達さないし、人件費は湯水の如くかかる。住民の帰還は遅れる一方である。


いたたまれなくなった福島県知事・佐藤雄平は2月17日、国に対して「私としてはあくまで1_・シーベルトを目指したいが、正直いって苦慮している。国は達成できる数値を示して欲しい」と要望するに至った。
「国に文句を言うだけでなく、前進したい」と本音を漏らしたのだ。


これを聞いた環境庁長官・石原伸晃は「そうであれば、そのようなことを考えなくてはならない」と、目標変更に前向き姿勢を示した。


もともと国の目標は最初の内は20_・シーベルト未満なら帰還できるというものであった。自治体によっては飯舘村の村長・菅野典雄のように「1_・シーベルトでは10年、20年かかっても帰還できない。国に文句を言っているときではない」として、当面の除染目標を独自に5ミリシーベルトに設定してしまっているトップもいる。


そもそも1_・シーベルトは、レントゲン検査でも浴びる程度の線量であり、大げさにあげつらう方がおかしいのだ。菅野が言うように帰還を10年、20年先で我慢するか、それとも目標を緩和して早期に帰還を実現するかという選択の時期に到達したのだ。


おりからWHOは、東京電力福島第一原子力発電所の事故によってどのような健康影響が予測されるかをまとめた報告書を公表した。


その内容は「最大限に見積もっても被ばくによって住民のがんが増えるおそれは小さい」と指摘するものだった。


具体的には、事故当時、1歳だった女の子が被ばくの影響で生涯にわたって甲状腺がんを発症するリスクは、通常の人が0.77パーセントであるのに対して、福島県浪江町で0.52ポイント、飯舘村では0.32ポイント、それぞれ上昇するとした。


発病の可能性は極めて少ないことを物語っている。加えて、住民が事故の後4か月間にわたって同じ場所に住み続け、汚染食品を食べ続けた場合のケースも表示しているが、そのような住民は一人も居ないのだ。可能性はゼロに近いとも言える。


こうして、洗浄の可能性と被ばくの実態の双方から、政府の政策次第で避難住民の帰還への道が開ける可能性が高まってきたのだ。


政府は、風評や意図的な新聞論調に惑わされることなく、現実的な洗浄目標を設定し直し、住民が安心して帰還できるよう広報宣伝に努めるべきである。沈黙を守っている軟弱学者たちも、良心があるのなら積極的に発言して、早期の帰還を達成できるようにすべきである。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月01日

◆維新の内紛が物語る空中分解の予感

杉浦 正章


もうブームの再来はない


江戸っ子流にいえば維新の内紛は「ガキのけんかでもあるめえし」というところだろう。それにしても日銀総裁という最大の人事案件まで得意の“政治的アピール”に使うとは、維新の会共同代表・橋下徹はどういう神経の持ち主なのだろうか。


国会議員団を“下部(しもべ)”とでも考えているのだろうか。もともと総選挙における大阪以外の地方区の壊滅は、橋下維新の虚飾性を露呈するものであった。ブームは幻であったのだ。これでは参院選挙で、再びブームなど起きるはずがない。


かねてから「双頭のヘビ」と指摘してきたところだが、大阪から国会議員団を“遠隔操縦”することなど不可能だ。ましてや、橋下の頭の上がらない石原慎太郎がトップだ。「黒田東彦日銀総裁」人事に異論を唱えたかったら、大阪市長を辞めて自ら衆院議員になるべきであったのだ。維新の国会議員団の判断はまっとうであった。


騒動の発端は、日銀総裁に副総裁候補の岩田規久男を充てるべきだとする橋下の主張に国会議員団側が反発したことにある。国対委員長・小沢鋭仁が「人事はベストに近い」と述べ、橋下の逆転人事を「黒田さんは辞退するだろう」と反対したのは筋が通っている。


橋下は財務省出身だけを問題視しているが、日銀人事は純粋に適材かどうかに絞って判断すべきであって、経歴を問題にするのは不見識のそしりをまぬがれない。「口を出すな」という声ももっともだ。


ところが橋下はこけんに関わると思ったに違いない。国会議員団にメールを送り、方針を覆そうとしたが、議員団の大勢は人事容認に向かっている。


ついに頭にきて「代表に口を出すなと言われたら、どうぞお好きにやってくださいということになる。そんなこと言われて代表のポジションにしがみつくような人生哲学は持っていない」と、お得意のたんかを切るに至った。


記者会見でも議員団を「与党ぼけ」と、とんちんかんな批判をする始末。かねてから橋下の一貫した政治手法は、あらゆる事象を利用して“しゃしゃり出る”というテレビタレント型である。


先の桜宮高校の体罰・自殺問題でも、過激な発言を繰り返し、入試の中止や廃校の可能性にまで言及、心ある人々のひんしゅくを買った。教育の場を一挙に我田引水のアピールの場に変えてしまうのである。


日銀人事も小沢が陳謝してけりがついたが、不思議なことに共同代表の石原慎太郎(80)や副代表の平沼赳夫(73)は関与しないまま。なぜかというと、二人ともメールが出来ないし、チェックもしないからだ。橋下はそれを知っていて下っ端にだけに怒りをぶつけたことになる。


国会議員団は白旗を掲げたが、これもだらしがない。結局人事を容認するなら最後まで突っ張るべきだった。次の選挙でも橋本人気を利用しようという魂胆があるからに違いない。しかし、おそらくその思惑は、無駄に終わるだろう。


一連の橋下の行動で出てきた政治能力は、一部民放コメンテーターたちが「天才」と褒めそやすようなものでは全くない。むしろ「狭量」で「こらえ性」のない性格の露呈である。これでは国政はつかさどれない。


橋下流で国際情勢に対処すれば、尖閣問題ではレーダー照射があった途端に、反撃命令を出すようなことになるだろう。政治とは咀嚼(そしゃく)であり、熟成である。橋下の手法は大阪の市長レベルでは通用しても、国政には通用しない。


総選挙で維新が取った54議席はその数ばかりに目が行っているが、詳細に選挙結果を分析すれば、もう既に維新ブームは陰りを見せていたことが明白だ。


54議席の内実は選挙区では当選者は大阪中心であり、全国的には地方区は壊滅状態であった。立候補者と当選者の割合は自民党が82%当選なのに対して、維新は9.2%にとどまった。大阪以外の当選率はわずかに1.4%だ。


この結果が予感させるるものは参院選挙の不振であろう。今回の内紛は起きるべくして起きた。もともと石原や旧太陽系との合流は実体的には政策抜きの“野合”の色彩が濃厚であり、今後国会審議や具体的政策課題が発生するたびに、双頭のヘビは立木に引っかかって動けなくなる様相を呈するだろう。


原発一つ取っても騒動の要因となる。この実態を度々有権者が目の当たりにすれば、再び維新のブームなどは起きえない。まさに自民党副総裁・高村正彦が「多くの国民が橋下氏を野党ぼけと思っている」と、批判したとおりだろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年02月28日

◆麻生が“派閥拡大大将”の様相

杉浦 正章
 

負けずに石破も派閥活動是認
 

麻生太郎の自派拡大路線が止まらない。総選挙後に自民党で発生した新人囲い込み競争でも先頭を走り、12人の弱小派閥が34人となった。さらに大島派(11人)とも近く合併して党内第3派閥を目指している。


狙いは何か。言うまでもない「ポスト安倍」狙いだ。政治家たるもの権力欲がなくなったら終わりだが、72歳の御大は老いてますますさかんだ。かねてから反りが合わない幹事長・石破茂も麻生と互角の「派閥」を結成しており、水面下では麻生Vs石破の対立の構図が次第に鮮明になりそうだ。


とはいうものの、首相・安倍晋三はつきについている。本人も27日、一時的にねじれが解消して補正予算が成立したたことに触れ、「安倍さんは運がいいと言われるが、運も実力のうちですから」と述べているとおりだ。


やることすべてが「怖いようにうまくいく」(官邸筋)という状態だ。アベノミクスは大ブレークして株高・円安を招き、ひょっとしたらデフレ脱却かという希望を生じさせている。日米首脳会談も成功し、超難関であるはずの環太平洋経済連携協定(TPP)も、反対派が腰折れして参加表明への道が開けた。


快進撃を見て、民主党からは難破船からネズミが逃げるように離党者が続出。内閣支持率は奇異なことに軒並みスタート時を上回り、70%前後に達している。


こんな政権を前にして、しかも自ら安倍支持を最初に表明して“主流派”を自認している麻生が、何でここに来て頑張りはじめたかだ。そこには「満たせぬ思い」がある。


せっかく政権を取ったにもかかわらず、誤読と高級バー通いなどという愚にもつかないことでマスコミの批判を浴びて、退陣とは泣くに泣けないのだ。そして長年政治家をやっていれば、政権というものは好事魔多しで、いつ倒れるか分からない水商売であることが分かっている。


安倍には難病があるし、成長戦略が未定のアベノミクスのバブルがはじければ、一挙に快進撃が総崩れになる可能性を秘めているのだ。しかし、アベノミクスがはじければ財務相として一蓮托生の責任を問われるのは麻生であり、戦略は成り立たない。


結局は安倍が再び病気で倒れる事しかチャンスはない。政治家というのはその狭いチャンスでも“狙う”のだ。なぜならそれが商売だからである。


一方、石破も頑張るのだ。かねてから石破は派閥の弊害を公言して、改革派を前面に出していたが、最近では「派閥を否定したことなど一度もない」だそうだ。どうもこのご仁は理路整然と前言を翻す癖がある。


1月に40人で結成した「無派閥連絡会」も明らかに派閥だが、ようやく最近になって石破自身も派閥と認めた。その戦略は何としてでも参院選挙に勝つことだ。現在の石破の地位は、幹事長として総選挙に勝ったことにあることは間違いない。


総裁・谷垣禎一に政調会長を外されて、ここを先途(せんど)とばかりに地方周りを繰り返し、地方組織に基盤を作った。それが総裁選挙でトップの地方票獲得となって現れたのだ。最終的に負けたのは派閥を基盤にしていなかったことだ。その“反省”から無派閥派という派閥を結成したのだ。


石破は最近周辺に「幹事長として参院選に勝ったら好きなことをやらせて貰う。2年後には安倍さんと同じ歳になるし」と漏らしているという。不気味な発言だ。総選挙と参院選挙に勝った幹事長は何と言っても実力ナンバーワンとなる。


こうして「ポスト安倍」にやる気の実力者が二人台頭しつつあるのが自民党内の現状である。それも派閥勢力の上に立っての戦いが始まろうとしているのだが、その他の派閥は軒並み領袖がぱっとしない。


老舗の福田派の流れを汲む町村派(82人)は、町村信孝が脳梗塞から復帰したものの勢いがでない。大勢は安倍に流れている。田中派の流れの額賀派(51人)も額賀福志郎がぱっとしない。


宏池会・池田派の流れの岸田派(旧古賀派・40人)も外相・岸田文男は修行中でポスト安倍をいきなり狙う態勢にない。二階派(32人)も石原派(15人)も党を牽引する力はない。


やはり安倍が町村派の大勢と、派閥横断の安倍支持グループ「創生日本」(100人)を背景に、断トツの勢力を維持している。


ここで傑作なのは党政治制度改革実行本部(逢沢一郎本部長)がまとめた「脱派閥」の党改革答申。派閥の事務所を党本部に移すのだというが、これでは脱派閥どころか党が派閥の存在を公認することになるではないか。


派閥は事務所を持って“コソコソ”やるから面白いのだ。過去に首相・福田赳夫が党本部に「国会議員が派閥事務所ではなく党本部に集まって懇談できるように」とリバティー・クラブと称する部屋をつくって、いまだに存在するが派閥解消には至らなかった。


やはり首相・海部俊樹も党本部活用を提案したが実現せずだ。だいいち麻生が人数が増えて狭くなったとして新事務所を作る方向だという。


派閥政治はカネと大臣ポストという問題で批判の対象となってきたが、情報の共有、新人教育という面で大きな役割を果たしていたのだ。


また田中角栄から三木武夫に政権が移ったように、イデオロギー抜きで対立者への“政権交代”を可能にして、自民党は民主党のような希代の大失政政権を作らずに済んできた。自民党は派閥や個人後援会、族議員などを通じて、多様な要求を汲み上げ、時代の変化に柔軟に対応したからこそ、長期政権を維持できたのだ。


抗争のための派閥でなく、現在程度のゆるやかな結びつきなら自民党は活気が出て何ら問題はない。目くじらを立てることもない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月27日

◆補正成立はねじれ解消への突破口だ

杉浦 正章 


まだまだ民主への“引きはがし”が続く


月面着陸のアームストロング流に言えば「離党の1票は小さな1票だが、日本の政治にとっては大きな飛躍だ」といったところだ。参院選挙を待たずにねじれ解消現象が発生して、補正予算案が成立してしまった。民主党の離党が止まらなくなった結果だ。


自民党幹事長・石破茂が「今日を境に歴史が変わっていく」と述べたとおり、ねじれの本格解消への突破口になるだろう。日銀総裁人事や来年度予算審議にも好影響をもたらすことは確実だ。いまこそ決められない政治を第二院が形作ってきた歴史にとどめを刺す時だ。


自民党は、表向き「おごることなく慎重に野党と調整を進める」(石破)としているが、実態はそんなに甘くない。裏舞台での食うか食われるかの暗闘が続く。言うまでもなくねじれの解消には裏工作と表の正式手続きの二つがある。


裏は多数派工作、表は参院選挙勝利だ。自民党はとりあえず裏を先行させたのだ。みんなの党代表・渡辺喜美が悔し紛れに「与党がアメをばらまいて多数派工作をやった結果」と指摘するように、必死の“裏工作”が進展した結果だ。民主党はもはや“水に落ちた犬”となった。たたかれ続けるのだ。


安倍も「この1票差は『決められない政治』から『決める政治』への大きな第一歩だった」と述べているが、感慨は大きなものがあろう。


過去の逆転国会は1989年の参院選後と1998年の参院選後にも発生しているが、本格的に「ねじれ国会」と称され、参院が政治闘争の舞台となったのは2007年の参院選で自民党が惨敗して以来だ。


安倍首相の時であり、民主党は小沢を中心に政権交代のチャンスとばかりに攻めまくり、安倍の下痢とノイローゼを誘って退陣させた。


続く福田康夫も、麻生太郎もあえない最期をとげ、民主党は政権を獲得した。時代錯誤というか馬鹿の一つ覚えというか、この再現を狙ったのが参院議員会長・輿石東だ。


「抵抗野党に戻る」と宣言して、尊敬する生活代表の小沢一郎と組み、虎視眈々と“ねじれ活用”を狙った。補正予算案反対に生活と、目立つことだけが信条でこのところ一段と軽さを増しているみんなの渡辺を引き込み、補正予算の修正案を踏み台にして反対ムードを盛り上げようとした。


公共事業の大盤振る舞いを取り上げて輿石は「古い自民党の復活」と追及しようとしたのだ。しかし輿石こそ「古い何でも反対の社会党の復活」そのものであり、誤算は足元から生じた。植松恵美子、川崎稔二人の離党である。さらに岩本司も離党予備軍となっている。


参院は民主党が87人、自民党が83人だが、二人の離党でその差は2議席となった。岩本が離党なら1議席となる。自民党の幹事長・溝手顕正が「民主党はさらに流動化する。まだまだ崩れる」と“不気味”な予言をしているとおり、昨年から続く離党減少はとどまるところを知らない。


自民党は国会運営を「丁寧にやる」(石破)方針だが、筆者に言わせれば「丁寧に引っぱがす」のが本音だ。


民主党の国会運営敗北の最大の理由は、安倍がアベノミクスを旗印に、国民の求心力を強め、支持率70%前後を確保、全党的な支持を得ていることであろう。これに対してもともと求心力などない、“人の良い”代表・海江田万里では太刀打ちできない。


そればかりか、外れそうなたがを締められないのだ。国民の人気も政治力もある野田佳彦、前原誠司、岡田克也らを、総選挙敗北の“戦犯”扱いして退けてはアピールもしない。海江田は共同通信の世論調査で民主党の支持率が6%にまで落ちたことに「愕然とした」というが、まだまだ“地獄の底”は見えていない。


こうして通常国会の初戦は自民党の圧勝に終わった。問題は最初のうまさが持続するかどうかだ。次は日銀総裁人事と来年度本予算だが、これも自民党ペースで進む流れだろう。


日銀総裁人事は、「黒田東彦総裁」に愚にもつかない理由を挙げて維新の橋下徹と渡辺が反対を表明しているが、民主党内は容認論が広がっている。官房長官・菅義偉が26日、民主党政調会長・桜井充に人事漏洩を陳謝したが、これも“手続き”であろう。


維新は橋下が反対しても議員団は賛成のムードが強い。橋下は議員団を「与党ぼけ」と切り捨てるが、維新がいつから与党になったのか。言葉は多いが相変わらず切れ味は方向音痴の発言が多い。


維新の国対委員長・小沢鋭仁は「黒田はベスト。橋下さんは政治的な相場観に外れている」と、真っ向から反対する始末。大阪のあんちゃんの中央政治への“相場観”が試されている。


この自民党の攻勢は参院選挙まで続く。昨日も書いたように、参院における“正式な”ねじれ解消は、まず夏の参院選で実現する方向が一段と強まった。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)