2013年05月15日

◆大阪は橋下をリコールで失職させよ

杉浦 正章
 

市長の売防法違反発言は許されぬ
 

最大の問題点は弁護士であり、自治体の長である維新共同代表・橋下徹が米軍司令官に公然と売春防止法違反の進言をしたことだ。


この脱法買春発言は世界中で問題として取り上げられ、嘲笑の対象となっており、まさに国辱発言だ。脱法の奨励ばかりは公人としてもっとも慎まなければならない問題であり、大阪市民は市長解職のリコールをすべきであろう。


また日本維新の会は、国会議員団トップの共同代表・石原慎太郎と幹事長・松井一郎が愚かにも擁護に回ったが、これではまるで「日本売春党」だ。党名を変えて、参院選挙に臨んだらどうか。


自らの党を「年末に消滅」と焦りを見せていた橋下が、今度は「自滅」発言だ。橋下の言わんとするところは戦闘中の軍隊に慰安婦制度があることは世界の歴史で共通事項であり、日本が韓国人慰安婦を強制連行したというのは事実でないというところであろう。


この発言だけは確かにその通りだ。現に朝鮮戦争で韓国は北の女性や女性のパルチザンを韓国軍慰安婦として公営の慰安所を作り、それこそ性の奴隷として韓国軍や米兵に提供した事実がある。


日本軍の強制連行は証明されていないが、韓国軍慰安婦は国家が先頭に立った公娼であり、スターリンのレイプ奨励に勝るとも劣らぬ人類の歴史の汚点だ。
 

しかし橋下は公党の党首、大阪市長として発言してはならぬところまで踏み込んでしまった。それは橋下の癖である強者の目線から弱者を見下す発言であり、自分の立場をわきまえぬ法律違反の発言だ。


明らかに女性の尊厳を傷つける発言は「軍隊は銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で、命かけてそこを走っていく猛者集団だ。精神的にも高ぶっている集団はやっぱりどこかで、そういうことをさせてあげようと思ったら慰安婦制度っていうものは必要」というものである。まさに女性を戦争のための「性の道具」として認識している。


さらに国際的にもまずいのは米軍の普天間基地司令官に面と向かって「もっと風俗業を活用してほしい」と海兵隊など部隊ぐるみの買春を勧めたことだ。司令官は凍り付いたような苦笑いになって「米軍では禁止だ」と答えたという。橋下は「そんな建前みたいなことを言うからおかしくなる」と再考を促している。


まさに自治体の長が海兵隊に「買春」を促すという、前代未聞のやり手ばばあのような発言である。売春防止法違反をそそのかしていることになる。


かつて米軍の太平洋軍司令官・リチャード・マッキーは1995年の暴行事件の時に「犯行に使ったレンタカーの代金を払う代わりに女を買うことができた」と発言して更迭されており、買春を勧められた司令官が凍りつくのも無理はない。


それに橋下は弁護士のくせに犯罪者心理を知らない。買春を性的はけ口とすればレイプ事件が減少するというのは短絡であり、因果関係はないのだ。ことは米国防総省の記者会見にまで波及した。同省報道官は13日橋下の買春奨励について、「コメントしないと」と述べながらも「買春拒否は言うまでもない」と述べるに至った。


橋下はその後もツイッターなどで同様の発言を繰り返しており、明らかに“確信犯”である。


問題はこの一連の橋下発言に対する維新内部の反応だ。石原は「軍と売春はつきもので、歴史の原理みたいなものだ。それを踏まえて発言したと思う。彼はそんなに間違ったことは言っていない」と擁護。


幹事長・松井一郎も「橋下さんらしい。うわべだけの議論では全然解決には至らない。後は国民の判断と価値観だ」と述べ、これも全面擁護。党としての反省の色はみじんも見られない。


政党のトップというのは日本の首相を目指す政治家であり、その政治家が米軍に脱法買春を勧め、女性の人権を踏みにじるような言動をすれば、少なくとも戒めなければならない。


普通の政党ならこれだけの発言をすれば、必ず党首は交代させられる。維新はまず党首交代を検討すべきだろう。橋下もここは自発的に辞任すべきところである。維新は女性票の大半を失った。もう橋下を党首として参院選挙は戦えない。石原も老害にすぎない。若手がトップになって党勢を立て直すときだ。


さらに橋下は大阪市のトップであり、このまま市長の座にとどめ置けば国際的にも大阪の恥となる。


大阪市民はリコール運動を開始すべきである。市長の解職については、有権者の3分の1以上の署名を集めて選挙管理委員会に住民投票を請求、これを受けた投票で過半数があれば失職となる。


大阪市民が正常なバランス感覚を持つなら、まず3分の1の署名を実現すべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月14日

◆憲政常道に反する衆参同日選挙はない

杉浦 正章



安倍は“解散様”を大切に扱うのだ
 

ばかばかしいから衆参同日選挙説など書かないでいたら、最近「どうなるんですか」と問い合わせが殺到しだした。


筆者が政界で最初に同日選説を紹介したのは4月18日で、そのときは「97.5%ない」と断定したが、今回はそれに1%付け加えて98.5%ないと断定しておこう。動物的直感による“空想科学的な根拠”からの判断であるが、筆者の解散への直感はこれまで半世紀外れたことがない。ここで度胸と勘の勝負をしておく。
 

週刊誌や駆け出し政治記者達が「ダブルだダブルだ」と騒ぐが、首相・安倍晋三による解散の断行は憲政の常道に反することを知らない。あまりにも党利党略過剰の解散をしては、“解散様”に申し訳が立たないのだ。


解散に一番大切な“大義”が成り立たないのだ。なぜなら昨年末に解散・総選挙が断行されたばかりであり、まだ1年も経過しないうちに伝家の宝刀を抜くにはよほどの理由がなければならない。
 

過去に解散から解散までの期間が1年以内の総選挙は2回ある。吉田茂のバカヤロー解散と大平正芳のハプニング解散だ。


吉田は52年8月の抜き打ち解散のあと翌年3月にバカヤロー解散をしている。戦争直後に社会主義革命を目指す社会党などがめちゃくちゃな要求を繰り返し、吉田を追い込んだ結果であり、堪忍袋の緒が切れて「バカヤロー」と言ってしまったのだ。ハプニング性のある解散だ。


大平の場合も79年9月の増税解散のあと翌年5月に内閣不信任案が可決されて、解散を余儀なくされたのだ。いずれも、ものの弾みで断行された解散である。
 

ところが今度の解散説は「0増5減」に基づく区割り法案の成立を巡って台頭している。またしても民主党の妖怪・輿石東が関与している。同党参院議員会長・輿石は昨年の幹事長時代に「0増5減」法案を人質に取り、成立を先延ばしすることによって解散を回避して、ダブル選挙に持ち込む戦術をとった。


ご都合主義にも今度は真逆だ。ダブルを回避するために区割り法案を人質に取って成立を遅らせようとしているのだ。こんな勝手な男は見たことがない。
 

というのも通常国会が延長されずに26日に閉会する場合、参院選挙は7月4日公示、21日投票となる。これに合わせて衆院選を断行する場合には7月9日公示となるが、区割り法案の成立なしでの解散はやりにくい。区割り法案の施行には1か月かかるから、6月9日までの成立が不可欠だ。


解散を恐れる輿石はこのキーポイントの6月9日より遅らせて成立させようとしているのだ。相変わらずの姑息(こそく)さだが、逆に自民党はこれを“威し”に使っているのだ。「成立を遅らせるなら解散だぞ」と脅しているのだ。
 

自民党も尻が割れていると言えば割れている。区割り法案は4月23日に衆院を通過しており、憲法の60日ルールに基づき、参院で可決されなくても、6月下旬には衆院の3分の2の多数で可決成立できるのだ。その計算の上に衆院通過を図ったのであり、「同月9日までの成立」は“威し”であり、裏は見え見えなのだ。
 

この対野党戦略は、予算が15日に成立して、焦点が区割り法案に移行すると、当面悪い病気のように出たり引っ込んだりするだろう。


しかし、ダブルを言い募る政治家は自分自身の信用がなくなると心得るべきだ。自民党幹事長・石破茂もいいかげんに見え透いた発言を繰り返すべきではない。


確かにいまダブル選挙をやれば、過去2回と同様に自民党が圧勝する可能性がある。安倍の人気は70%台の高支持率に支えられており、自民党支持率も40%台だ。権力亡者ならダブルは絶好のチャンスで、まさに垂涎の政治状況である。


しかし、冒頭述べたようにいくら伝家の宝刀でも“解散様”をおろそかに扱ってはならないのだ。議員になったばかりでまた選挙では、自民党内からも批判が噴出する。公明党も組織票が割れるから恐らく反対だろう。総選挙で2か月の政治空白を作ればせっかくアベノミクスで景気回復の兆しが出たところに水を差す。
 

そこで安倍がどうするかだが、安倍は奇道は歩まない。政治の本道を歩くだろう。そういう政治家だ。


1日に外遊先で「いずれかの時点では国民に信を問わなければいけない。適切な時期をとらえて解散する」と思わせぶりな発言をしたが、10日にはタレント・みのもんたに「参院選じゃないですかね」と他人事のように述べている。この辺りが本音だろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月13日

◆維新に「風」なく「一炊の夢」の危機

杉浦 正章


参院選で幹部が自民候補応援
 
「昨日の大尽今日の乞食」だろうか。共同代表・橋下徹によると維新が「消滅」なのだそうだ。たしかに昨年の夏のようなブームはまったくない。風がソヨとも吹かなくなったのだ。


ポピュリズムだけの政党に「風」が止まればどうなるか。選挙民の忘却の彼方となる。党内には参院選挙で自民党候補を支持する幹部まで現れだした。早くも崩壊現象なのだろうか。
 

とにかく維新の幹部は、開けっぴろげの大阪の風潮丸出しで面白い。際どい自らの党の消長をあっけらかんと語るのだ。維新幹事長・松井一郎が去る4月に「日本維新の会は完全にアゲンスト(逆風)で厳しい状況。大阪以外、どこに行っても負けます」と、参院選の現状を嘆いた。


そうかと思うと橋下は11日「組織が大きくなって、全国各地のいろんな選挙で維新の公認候補を出すことになった途端、維新は選挙屋になってしまった。一歩でも二歩でも前に進むことを肝に銘じないと年内に維新の会は消滅もありうる」と、自らの「消滅」を予言。


この風潮の影響を受けてか共同代表・石原慎太郎までが党の現状について「昇り竜の去年の衆議院選挙と違って、今は、決して、昇り竜の勢いがあるとは言えない。」「維新は賞味期限を迎えつつある」などと発言するに至った。


自分の賞味期限がとっくに切れているにもかかわらず、他人事にしているのだ。時事の定点調査でも支持率は1月4.6%、2月3.3%、3月2.0%、4月1.5%と減少する一方だ。
 

なぜ、こうした風潮が生じているかと言えば、まず根底には橋下の“かっこよさ”だけが頼りのポピュリズム政党の宿命がある。しかしその橋下がワンパターンで露出を繰り返し続けた結果、飽きられてしまったのだ。民衆はもう食傷気味なのだ。


つぎに総選挙と参院選挙の構図の違いがある。総選挙の維新票は「民主党はダメだが、自民党にも懲りた。維新に投票しよう」という図式で獲得した。ところが参院選は、アベノミクスの大当たりで「民主党はダメだから自民党へ投票」の流れに変わり、維新は飛び越されつつあるのだ。


もう一つ言えば、改革の党維新への幻滅だ。なぜ幻滅したかと言えば、“加齢臭”ふんぷんの石原ら太陽の党系との合流だ。これがイメージを壊した。


橋下に石原を押さえる力量がなく、改憲にしても石原ペースで綱領に現憲法を「日本を孤立と軽蔑の対象に貶(おとし)めた」と書かせてしまった。まさにとどめの一撃である。


BBCと読売が世界22か国で実施した好感度調査で日本は58%の支持を得て‘世界に良い影響を与えている国家’1位だ。中国は5位。韓国などどこにあるか分からない。平和憲法が貢献していることは間違いない。「孤立と侮蔑」は石原本人が対象なのであって、日本ではない。


橋下は自民党の憲法改正草案を「危険だ」と述べる前に、「核武装、徴兵制」の「石原改憲」の方がよほど危険なことを弁護士なら理解すべきだ。
 

こうして維新は日本の政治における“立ち位置”が不明になってしまったのだ。橋下は「選挙の焦点は道州制など統治機構改革と大阪首都構想の実現」と述べるが、この方向性も説得力はない。


道州制論議など50年も前からあって、埃にまみれている。大阪都構想などは大阪以外はどの自治体も支持しない。発想が井の中の蛙なのである。従って維新は完全に行き詰まった状態にある。


もともと維新には「風」が頼りの候補しか集まらないとみえて、地道な選挙運動などはそっちのけの候補が多い。橋下も「選挙区でしっかり選挙活動をやらないといけないのに、比例区名簿に乗りたいメンバーしか集まってこないとは情けない」と嘆いていることで実情は十分分かる。候補の質が最悪なのであろう。
 

こうした“難破船”からはネズミが逃げるのが常だが、ネズミどころか、“老虎”が逃げ出しそうな事態が発生した。


朝日によると自民党にとどまっていたら相当なところまでいったはずの切れ者の維新国会議員団幹事長代理・園田博之が地元天草市の後援会会合で、次回の参院選・熊本選挙区では自民党候補を応援する方針を明らかにしたのだ。


既に維新は同選挙区に候補を擁立、みんなの党と選挙協力で一致しているが、おそらく肝心の園田の意向を無視して決定したに違いない。苦し紛れか幹事長・松井一郎は「維新の得票を上げるための手練手管をやっている」と奇妙奇天烈な“分析”をした。


何で他党の候補の応援が維新の得票を上げるのか分かる人はいない。最大の反党行為なのに波風を立てないで臭い物に蓋だ。
 

こうして維新の「全国制覇、橋下首相」などは、人生の栄華のはかなさをあらわす「一炊の夢」に終わらんとしているのだ。参院選挙も先に自民60議席と読んだが、自民は64〜65議席いくかも知れない。維新はせいぜい10議席台前半の12〜14議席にとどまる可能性が出てきた。


民主ではなく自民党が維新を食う構図である。

        <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年05月10日

◆対米宣伝工作で安倍は韓国に完敗した

杉浦 正章


活発なロビー工作、マスコミ対策を復活させよ


豊富な宣伝工作費を背景に議会やマスコミ対策を進めている韓国の対米外交に日本外交完敗の構図が生まれている。大統領・朴槿恵の訪米は対日けん制で大成功に終わったが、その背景にあるものを考え直さなければ、この敗退は継続する。


安倍は対米外交重視を唱えながら、かつて自民党全盛期に行ってきたような対米工作なしに、いきなり歴史認識などで強硬発言を繰り返し、ホワイトハウス、国務省、議会や米主要マスコミ全紙の異例の反発を広げている。


自民党も政府ができない部分を補う工作をすべきだが人脈がいない。小選挙区制で外交など票にならないから人材が育たないのだ。このままでは米中韓の対日包囲網ができかねないことを肝に銘じた方がいい。


安倍がオバマにそっぽを向かれた記者会見は記憶に新しいところだが、これに対して朴の訪米は下にも置かぬ扱いであった。オバマとの会談では恐らく事前に調整済みであったであろう歴史認識を朴がもちだし、これが公表された。

「東北アジア地域の平和のためには、日本が正しい歴史認識を持たなければいけない」と日本を名指しで批判したのだ。8日の上下両院合同会議での演説では、「歴史に目をつぶる者は未来を見ることができない」と発言した。明らかに日本を念頭にした発言だが、議場から拍手がわいた。


筆者がかねてから指摘しているように安倍もできなかった議会演説は、活発な韓国の米議会に対するロビー工作の成果であろう。日本は佐藤政権時代に沖縄返還、繊維交渉という重大マターを抱えて政府・自民党一体のロビー工作が展開された。


それが年月を経るに連れて下火となり、田中真紀子の愚かなる外交経費削減策や鈴木宗男の経費の使途を巡る攻撃がとどめを刺し、外務省の広報文化予算は10年間で33%も減った。外交官はやる気をなくし、事なかれ主義が横行しているのが現状だ。
 

これに対して韓国は外交筋によると「議会にもマスコミにもジャブジャブ使っている」という。とりわけ対マスコミ工作が韓国外交官の“使命”となっているという。


安倍が発言する度にニューヨークタイムズやワシントンポストの有力記者を「食事しませんか」と誘い出し、日本の理不尽さを訴える。これが急速に米国に台頭している従軍慰安婦問題や歴史認識での対日批判となって現れている側面があるのだ。


安倍の「侵略の定義」発言も、「侵略の否定」とばかりに、宣伝工作を行ったようだ。それにしても米紙の安倍批判は異常なほどである。


ニューヨークタイムズは1月3日の社説で安倍の右傾化を厳しく批判したが、これに先立ち年末にはオバマ政権が日本政府に対して非公式に、旧日本軍の従軍慰安婦の強制連行を事実上認めた「河野談話」など過去の歴史認識の見直しに関して慎重な対応を求めていたことがリークされている。


ニューヨークタイムズは明らかに米政府の意図的な個別ブリーフによって社説を書いたに違いない。同紙を“関節外交”に使うことは良くあることだ。
 

とりわけ激しい論調は麻生太郎ら三閣僚と、過去最多の超党派議員による靖国参拝から始まり、米主要紙は安倍袋叩きの様相を示した。ニューヨークタイムズは4月23日、「日本の不必要な国粋主義」と題する社説で靖国参拝について「北朝鮮の核問題を協力して解決すべきときに日本の方から中韓両国の反感をあおったのは著しく無謀な行動だ」と批判した。


ワシントンポストも同月27日、安倍が「侵略の定義は国際的に定まっていない」と発言したことについて「歴史を直視していない」と批判する社説を掲載した。またウォールストリートジャーナルも7日やはりこの発言をとらえて、「韓国および中国当局者は、怒りをもって反応したが、もっともなことだ」と論評した。
 

このように米紙が一致して、「安倍批判、中韓支持」の論調に至ったことは由々しき事態である。日本の主張など全く反映されていないのだ。米議会調査局に至っては報告書で安倍を「侵略の歴史を否定する修正主義者」と断じた。


新聞が報ずる度に大使や総領事が抗議したり、反論を投稿したりしているが後の祭りだ。韓国外交官のせせら笑いが目に見えるようである。


安倍は9日中国共産党機関紙の人民日報が沖縄の領有権は中国にあるとの立場を示唆した論文を掲載したことについて「日本の立場を世界に発信しなくてはいけない」と発言したが、問題はどう発信するかだ。中国の明らかなる対日挑発というか“おちょくり”に対抗して、「世界に発信」する態勢ができているのかと言いたい。


沖縄領有論文などは米極東戦略を直撃する発想であり、対米宣伝工作の絶好の材料だ。また戦後いかに日本が中国と韓国の経済成長に貢献してきたかなど主張すべき材料は山ほどある。


韓国の「恨みの文化」を反映した執拗な民族性が、政権が代わる度に歴史認識を繰り返し、70年たってもまだおさまらない現実をどう訴えるかも重要だ。軍律が世界一厳しい日本の軍隊が売春婦の強制連行することなどあり得ない。トラックで売春業者が女を満載して、転戦する部隊を追いかけ回したのが実情だ。


対米宣伝戦に政府・与党挙げて取り組むときだ。安倍は侵略の定義について8日も「学界的に明確に定義がなされたかについては、そうではない」と発言して、全く撤回する気のないことを明らかにしたが、それはそれでよい。


しかし米国のマスコミに丁寧に説明しなくてはならない。ここは大幅な予算の投入、官邸機密費や人材の投入も含めて、対米宣伝策を根底から練り直すときだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月09日

◆苦悩の議員外交に“解任の報酬”はない

杉浦 正章

 

野党のパフォーマンスは見苦しい
 
故人いわく「鷹が飛べば糞蠅も飛ぶ」だ。参院がまさにその状態に至った。外相経験者として明らかに対中議員外交で国益を守った環境委員長・川口順子を参院の野党がよってたかって解任決議を成立させるという。それも憲政史上初の解任であり、パフォーマンスだ。


参院選挙に向けて民主党をはじめ野党は国民にその存在価値を顕示しようとしているのだろうが、方向が全く違う。与党を3年3か月経験した民主党が、貧すれば鈍するでここまで物事を見えなくなってしまったのかと情けなくなる。
 

川口の手続きに瑕疵(かし)はなかった。北京でのアジア各国の首相・外相経験者の国際会議に日本の政治家として1人だけ参加した川口は、国会の許可を得た2日間で帰国する予定であったが、序列7位の国務委員・楊潔チヤンジエチー(よう・けつち)との会談が急きょ決まり、4月25日まで滞在を1日延長するよう自民党執行部に申請、同党は野党との調整に入った。


ところが野党はこれに応じず、調整がつかないまま川口はあえて楊との会談の方を選んだ。なぜなら国際会議は大半が尖閣問題に費やされており、その流れを見て楊との会談は欠席できないと考えたからである。


川口は帰国後野党に陳謝した上で「私が出席しなかったら日本の立場を代弁できる者がいない。国益を守ることができたと自負している」と述べている。
 

恐らくその通りであっただろう。尖閣問題が起きて以来、日中関係は冷え込みの極致に至り、有効な外交チャンネルも見いだせないままの状況が続いている。会談をしたからと言って問題が一挙に解決出来るものではないが、この時点で中国首脳の生の声を聞いておくことが、いかに重要かは小学生でも分かる。


加えて自国への影響力の大きいアジア各国の政治家を前にして、楊が中国ペースで日本を“欠席裁判”をしたらどうなるかだ。川口が一人いないだけで楊の発言は変わったはずだ。会談の空気も中国ペースで推移することは間違いない。
 

そもそも、民主党は政権当初から議員外交の必要を訴えており、予算委員長の石井一に至っては、昨年の連休に4日間の予定で申請していたフィリピンへの「外遊」を、勝手に11日間に変更して遊びほうけ、委員長を辞任しているではないか。川口は国益を考えたが、石井は何を考えたのか。


民主党国対委員長代行・松原仁は「国会議員の矜持として理解できない。委員長として自分のできることをまずやるというのが正常なセンスだ」と宣うた。矜持とは何か。誇りだ。矜持をもって川口は会談に臨んだのだ。


民主党議員の大半がそうであるようにテレビ意識のパフォーマンスなどではない。正常なセンスとは、「苦悩の選択」(川口)で議員外交を選んだセンスだ。


だいいち委員会などは委員長代理を立てて開催すればできたのである。それをしなかったのはなぜか。参院選向けにあえて平地に波乱を起こすことを狙ったのだ。
 

一番愚かな野党幹部の発言は維新共同代表・橋下徹だ。「中国要人とのアポイントが入るからといって、尻尾を振って喜ぶような姿は情けない」「外交の責任を負っていない議員が中国要人と会う意味がわからない」と発言した。


大阪のタレントレベルでは議員外交の重要性を理解せよといっても無理だろうが、意味が分からないなら「黙っていろ」と言いたい。ここはどうみても「ご苦労様」という度量があってしかるべき場面だ。


政治評論家になれば相当なレベルになれる自民党副総裁、高村正彦の発言が一番妥当だ。「日中関係にいろいろある中でそれに対処するために残ったという国益と、委員会を開けなかった国益とどっちが重いか。委員会は開こうと思えば開くことができた。野党が国益を担った川口氏を裁くことはとんでもない」と述べた。
 

この問題に当たっての自民党の判断は幹事長・石破茂をはじめ適切であった。最初から国民の支持がどこに行くかを見極めた。


一方で鬼の首を取ったようにはしゃいだ民主党代表・海江田万里は「夏の虫」であった。源平盛衰記に「愚人は夏の虫、飛んで火に焼く」とある。これで参院選に勝てると思ったら大間違いだ。新聞論調は朝日の両成敗の社説「不毛な対立にあきれる」よりも、読売の「委員長の解任は行き過ぎだ」の方が急所を突いている。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月08日

◆改憲論議は民主党の終わりの始まりか

杉浦 正章
 

安倍のくさびに執行部が必死の分裂回避策


首相・安倍晋三が唱える改憲の発議条項96条先行処理論が、民主党にくさびとなって重くのしかかっている。護憲派と改憲派分断のくさびだ。


民主党の憲法調査会は96条の改正そのものの賛否は据え置き、先行して改正すること自体には反対するという“苦肉の策”を7日打ち出した。とりあえず“虎口”を辛うじてのがれようというものだが、改憲の是非は棚上げで済まされる問題ではない。改憲論議は民主党の「終わりの始まり」となる可能性を秘めているのだ。
 

そもそも、96条の改憲の発議を議員総数の3分の2から2分の1に緩和する構想は、民主党が打ち出したものだ。2002年の同党憲法調査会が96条の改正で報告書を出している。


同報告書は「発議が各議員総数の過半数であれば国民投票にかける。3分の2の多数であれば国民投票を経ずに改正する」としている。


その後もこの主張は残っており、元代表・前原誠司は11年の読売の座談会で「まずは憲法手続きを定めた96条を改正しないといけない。憲法改正のハードルを低くしなければいけない」と主張している。
 

安倍が96条改正を言い出した狙いの一つは、ここにある。前原を中心とする改憲派を動かそうというものだ。いくら鈍くても代表・海江田万里はさすがにそれくらいは気付いたようだ。党分裂の危機になりかねないからだ。


そして「96条先行反対」を言い張り、憲法調査会を懸命に説得したのだ。幹事長・細野豪志に至っては、改憲派の急先鋒・長島昭久を憲法調査会の副会長に加えてしまった。


取り込んだつもりのようだが、これに先立ち前首相・野田佳彦にも近い長島は、超党派の国会議員らでつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)の「新しい憲法を制定する推進大会」で挨拶に立ち「ここにいる皆さんと全く同じ思いを持つ一人です」と発言して、万雷の拍手を受けている。
 

要するに96条の先行改正反対は、民主党執行部の懸命の党分裂回避策にすぎない。しかし、当面は糊塗できても党内は、非武装中立を標榜した旧社会党左派の流れの護憲勢力と、前原や野田など改憲勢力の対立が今後抜き差しならぬ様相に突入する可能性がある。


もともと水と油の勢力が同居できている方が不思議な政党なのであって、改憲論議は分裂要素として登場しているのだ。基本的に改憲派の中心は前原と野田に収れんされるだろう。


かつて前原は「我々は憲法改正は必要だという立場だ。その中には9条も含まれている。私の従来の意見は9条第2項を削除して自衛権を明記するものだ」とはっきり9条改憲を唱えている。


野田も著書で、「私は新憲法制定論者だ。現行憲法は古い憲法になっている。9条はもちろん、修正することをタブー視してはいけない」と述べている。
 

両者とも最近は刺激的な発言を避けているが、不気味な沈黙とも言える。前原は政界再編志向と言ってもよい発言をしている。「民主党のために政治をやっているわけではない。日本の政治を進めるため、同じ志を持つ人と一緒になるときが来るかもしれない。そのタイミングをどう考えるかに尽きる」と述べている。


維新共同代表・橋下徹との関係は良好であり、前原は事実上の改憲勢力と言っても良い立場にある。こうした状況を見て妥協を目指す動きも民主党内にはある。党最高顧問の江田五月は「96条改正ではなく3分の2で堂々と改憲を行うべきだ。一緒に改正案を模索して作ろうではないか」と自民党に呼びかけている。


しかし安倍政権はあくまで96条先行戦略で突っ張る構えだ。元防衛庁長官で自民党改憲推進本部事務局長を務める中谷元は「民主党の意見集約を待っていたら、何年も無駄にしてしまう。最後は国民投票になるのだから、国民を信用すべきだ」と述べている。


もう民主党の約束は誰も信用出来ないというのが政界の本音だろう。さじを投げたか生活代表の小沢一郎までが4日のインターネット番組で、「民主党がはっきりしない。改憲論者とそうでない人がいる。改憲を大きなテーマにするなら、そっちの人はそっちの人ではっきりすればいい」と発言、分裂を促している。


沖縄に別荘を建てて「隠居半分」の人から言われたくないだろうが、言われてしまってはどうしようもない。絶えず分裂含みで推移するのが、民主党の構造であり、運命だから仕方がない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年05月07日

◆参院勝利なら臨時国会で改憲発議目指す

杉浦 正章


安倍主導で改憲論議新ステージへ
 

連休中の特筆すべき政治情勢は、憲法改正が戦後初めて具体的に首相の政治目標として動き出したことだ。正面切って参院選の争点に改憲を掲げた首相・安倍晋三の発言からは不退転の改憲路線が感じられる。


なぜこの時点かと言えば千載一遇のチャンスが到来したと判断したからであろう。堂々と改憲を訴え、参院選に勝利し、秋に改憲臨時国会を召集して、改憲要件緩和のための憲法改正案を成立させる。


ここにすべてを収れんさせてゆく姿勢だ。この結果連休明けの国会は国民も巻き込んで、改憲論議が新たなステージに到達することになる。


○朝日の世論操作は目に余る

爽やかな連休であったが、一つだけ新聞報道で不愉快千万の記事に遭遇した。朝日の改憲に関する世論調査の報道だ。


毎日も追随したが、その内容は改憲支持の回答が多数であるにもかかわらずこれには見出しで触れず、安倍が目指している改憲要件を衆参両院議員の3分の2の賛成から2分の1に緩和する96条改正についての回答をトップ見出しに掲げたことだ。


内容は96条改正、「反対54%、賛成38% 」(朝日)「反対46%、賛成42%」(毎日)というものだ。これを見た読者はまだ改憲反対が賛成を上回ると受け取るだろう。これは明らかに世論誘導を意図したものである。


なぜなら肝心の改憲への賛否は朝日が「賛成54%、反対37%」、毎日が「賛成60%、反対32%」でいずれも改憲派が大きく上回っているのだ。これを朝日にいたってば何と文末にひとこと触れただけである。改憲の論議はそれぞれ一理あって、最後は超高度な政治判断に委ねられるべきものであり、論議の高まりは民主主義国家の言論の自由とも相まって大いに歓迎すべきところだ。


しかし天下の朝日ともあろうものが、姑息(こそく)な情報操作と世論誘導をしてはいけない。憲法論議はフェアプレーでいくべきではないか。もっとも世論操作は改憲派が追い込まれている証拠でもあろう。


現にNHKの調査は金をかけているだけあってかなり正確だが、96条改正賛成が26%で、反対の24%を上回っている。だいいち国民は緩和策などは知らないのだ。同調査でも45%が知らないと回答している。まだ周知が行き届いていないのだ。


総じて大手マスコミの改憲調査は前述の朝日、毎日に加えてNHKが42%賛成、反対16%。読売が賛成51%と勝負は改憲派に上がっている。安倍は一部マスコミの誘導策に惑わされるべきではない。


振り返れば自民党は立党以来綱領に改憲を掲げてはいたが、歴代首相とも本気で取り組もうとはしてこなかった。それどころではない政局処理や、政策課題を最優先せざるを得なかったからだ。改憲綱領はいわば床の間の天井のようなもので誰も顧みなかったのだ。


それを安倍が「参院選挙では堂々と96条改訂を掲げて戦う」と宣言した背景はどこにあるのだろうか。まず安倍は確信犯的に改憲論者であり、これに政治生命をかける“根性”が出来上がっている。


この安倍の確信を一層高めているのは、中国、韓国、ロシアなどの主権侵害と北朝鮮の核恫喝である。9条をそのままにして解釈で自衛権を行使できるという“解釈改憲論”が現実の極東情勢に全くそぐわなくなっているのだ。


安倍は著書で「我が国の安全保障と憲法の乖離(かいり)を解釈で示すには限界がある」と、最終的には9条改正が到達点であることを明らかにしている。

○衆院通過なら民主分裂の圧力
 
加えて国内政治情勢を見れば、自民党の総選挙圧勝で「1強全弱」の様相が強まっている。とりわけ衆院においては改憲至上主義の維新と組むだけで軽く3分の2をクリアできる。安倍がこの情勢を見逃すことはないと考えてもおかしくない。


参院選では自民党は60議席程度は確保出来そうであり、公明と合わせて242議席の過半数は獲得できる可能性がある。問題は3分の2である161議席に改憲派が達するかどうかだ。みんなの党と維新を加えても微妙な状況ではある。


しかし民主党が割れればクリア可能となる。自民党幹部筋は「安倍さんは与党が過半数に達すれば突っ込む」と漏らす。その原動力はやはり衆院にあるというのだ。同筋は「衆院で圧倒的な多数で憲法改正発議という超重要議案が可決された場合、参院には大変な圧力がかかる」と述べる。
 

要するに参院の共産などを除く野党は、議員個人個人の判断に縛りをかけにくくなるというのだ。もちろん衆院においても同様の事態がとりわけ民主党に生じ得る。民主党は衆院で割れれば参院でも割れるが、衆院で割れない場合でも参院で割れる可能性があるというのだ。


これは安倍が維新との改憲共同歩調で、衆院3分の2議席という決定的なイニシアチブを握っていることになる。公明党が例によって創価学会婦人部の「絶対平和主義」などに踊らされて、どう出るかだが、入り口の96条までは認めるべきだという妥協論も党内では生じている。


政権の蜜の味からは離れがたい政党となってしまっており、必ずしも棒を飲んだような姿勢ではあるまい。このような情勢から政権与党で過半数を参院選で達成、ねじれを解消した場合には、安倍は改憲に動くという見方が強い。


自民党内では「3か月の長期臨時国会」がささやかれている。これまで開店休業状態だった衆院の憲法審査会が9日4年ぶりに開かれ、96条改正を軸に改憲論議の口火が切られる。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年04月26日

◆「円安空襲」が韓国経済を直撃

杉浦 正章
 

輸出産業に致命的ダメージ
 

韓国副首相・玄オ錫(ヒョン・オソク)がよほどこたえているのであろう。「円安は北朝鮮の威嚇よりより大きな韓国経済の障害物」と述べるに至った。韓国メディアは「無制限の円安空襲」「円安は沈黙の殺人者」と大反発。まさに北の威嚇以上に円安が韓国を直撃しているのだ。


しかし首相・安倍晋三は何も韓国狙い撃ちでアベノミクスを展開しているわけではない。自国のデフレ対策をしているだけだ。これまで超円高で対日貿易戦争を半額セール、3割引セールで一人勝ちし続けた輸出一辺倒の韓国経済が、自分のまいた種によって失速寸前の危機に直面しているのだ。


韓国は旧態依然の靖国参拝批判で対日関係を悪化させることが、自らの経済危機の打開にマイナス効果だけをもたらすことを知るべきだ。
 

韓国は円安が自らの経済に及ぼす影響を恐れ、あらゆる国際会議の場などで執拗に「アベノミクスは円安誘導」と主張して、国際社会の同調を得ようとしてきた。


しかしワシントンで18日から19日に開かれた主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議は日本の円安政策を公認した。会議後に発表された共同合意文は日本の量的緩和政策を「デフレを脱却し内需を支持するためのもの」と評価した。韓国の受けた打撃は相当なものがあったことは言うまでもない。


中央日報は「日本だけが笑った」「無制限の円安空襲」と形容し「これで日本は2015年まで思い切り金融緩和ができるようになった」とお手上げの論調を展開するに至った。
 

韓国経済は過去20年間日本製品をコピーした家電、自動車などの輸出に支えられ急成長してきた。08年のリーマンショック後は日本の円高に支えられ、とりわけ民主党政権と白川方明のなすすべを知らない超円高放置策で潤い続けて来た。それはそうだろう。同じものを作れば世界の消費者は安い方を買う。


円高は3割から5割引きセールを世界市場で展開しているのと同じであった。「ウォン安円高」は韓国の株価を引き上げ、日本の株価を下げるという方程式が出来上がって、これに100%依存する構造となっていたのだ。外国人投資家も「韓国売り日本買い」に転じた。
 

韓国政府の一貫した輸出偏重政策は、輸出依存度をどんどん上昇させ、実質GDPに占める割合は52.7%にまで至った。同じ輸出立国の日本が15.6%だからその異常さが分かる。


ところがアベノミクスが、この韓国経済を直撃した。輸出産業が一番恐れていたウォン高に至ったのだ。対ウォン相場が30%も円安となって、日本側は家電も自動車も一挙に息を吹き返す流れとなった。韓国内では「30年代の世界恐慌並みの事態が到来」とメディアが報ずるに至っている。


しかし世界経済がアベノミクスで恐慌の事態に至ったとは聞いたことがない。韓国経済だけが過去20年間に味わったことのない大不況に陥る恐れが出てきたのだ。
 

「隣の不幸は鴨の味」などと不遜なことを言ってはいけない。しかし、外交はあらゆる要素を勘案して展開される。大統領・朴槿恵は就任早々北の威嚇と円安という二重苦に直面したことになる。


おりから閣僚が3人靖国を参拝したくらいで「日韓関係は歴史認識が正しく認識されることが前提にならない限り、過去の傷が悪化して未来志向になりがたい」と反発しているが、大統領が代わる度に国内世論にこびて「歴史認識」を持ち出すのはもうやめた方がいい。


韓国外務省報道官は25日「加害者として、過ちをはっきりと認識し、行動することが必要だ」と批判したが、戦後70年もたって日本国内の“加害者”はもう皆死んでしまっていない。


残る日本国民は世界に冠たる平和愛好主義者ばかりである。はっきり言ってもう時効もいいところであり、なんの罪もない入れ替わった世代に理不尽な非難を繰り返しても、ぬかに釘であることを理解すべきだ。
 

さらに韓国は日本の靖国参拝のステージが大きく変化したことを知らなければならない。尖閣、竹島の領有権を巡る中韓両国の動きが刺激となって、“靖国参拝容認”の空気が国民の間で横溢しているのだ。


安倍の「国のために尊い命を落としたご英霊に尊崇の念をあらわすことは当たり前のこと」という主張が、中国による領海、領空侵犯と戦う自衛隊と、海保の国防努力と重ね合わされるようになったのだ。国民の胸にかってなく響くのだ。


事実、防衛省筋は、「靖国参拝の首相の姿勢は自衛隊員にとって心強い」と漏らしている。安倍が一歩も退かない理由はここにもあるのだ。
 

そこで韓国の円安経済危機に戻るが、過去において日本はたびたび韓国の経済危機を救っている。人が良い国民性だから助けたことはすぐに忘れるが、97年のアジア通貨危機では経済崩壊寸前に至った韓国の借金返済で、各国金融機関を説得して崩壊を救った。


2005年には日韓通貨スワップ協定を締結、通貨危機を救う約束をした。リーマンショックのときもスワップ協定の限度額を2兆円にまで引き上げてウォン暴落を未然に食い止めた。しかし、今回も救いの手が自動的に差し出されるとでも思っているのなら、韓国は甘い。


反日感情を露わにしながら助けてくれといわれても助けようがない。いいかげんに靖国での内政干渉をやめ、「歴史認識」などは研究者に任せて、真の未来志向の関係を打ち立てるべきだ。安倍は譲歩する必要はないし、デフレ脱却と円安維持に専念すべきだ。

★筆者より=連休のため休筆します。再開は5月7日より。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年04月25日

◆安倍政権、専守防衛から能動戦略へ転換

杉浦 正章



安保環境の激変に抑止を強化


中国発と北朝鮮発の二正面の危機に直面して、安倍政権は戦後の安全保障を支配した専守防衛の思想から離脱して、先制攻撃による国の安全保障を可能にする機動的な能動戦略へと大きくかじを切ろうとしている。


安倍政権が年内に策定する新防衛大綱への自民党提言案には敵基地攻撃能力の保有、集団的自衛権の行使、海兵隊機能の整備などが盛り込まれた。首相・安倍晋三がこの提言を受け入れることは確実であり、日本は自縄自縛の専守防衛からようやく離脱、世界に普遍的な安全保障概念を導入することになる。


民主党政権が打ち出した「動的防衛力」という考えをさらに有事即応の機動的なものへとに発展させる。
 

もともと自民党内には専守防衛では安全保障は確保出来ないとする空気が濃厚であった。しかし歴代政権が維持してきた政策の大転換となり、踏み切れない状態が続いた。


こうした日本の足元を見るかのように中国が尖閣へと触手を伸ばし、北朝鮮は日本の都市を名指しで核攻撃をすると威嚇するなど日本を取り巻く環境は一変した。極東の新事態は相手の攻撃を受けて初めて必要最小限の軍事力を行使していたのではとても生き延びられない情勢となった。


安倍政権は今そこにある危機への対応を迫られた。安倍も幹事長・石破茂も早期対応が必要であるとの認識では完全に一致している。


石破は「北朝鮮からミサイルを撃たれて何万人が死んでからでは遅すぎる」として国民の生命財産を守る手段としての敵基地攻撃能力確保を強調。第一撃甘受という受け身の姿勢を妥当としない方針を打ち出した。


安倍も2月の段階では敵基地攻撃の必要を認めながらも、「現段階では考えていない」と述べるにとどまっていたが、22日の国会答弁では大きく踏み込んだ。


具体的な手段を含めて敵基地攻撃能力確保を明言したのだ。安倍は「敵基地攻撃について言えば、Fー35Aにその能力がある。検討しなければならない」と次期主力戦闘機として逐次42機の導入が決まっているFー35Aを使う可能性に言及した。
 

専門家によると同機をプラットホームとして敵基地を攻撃することは十分可能である。Fー35Aはステルス機である。米国でやはりステルス機のFー22編隊と76年に運用開始されたFー15編隊とが模擬訓練の遭遇戦を展開したところ、Fー15はFー22が通り過ぎるまで分からなかったという。


Fー35Aは同水準の性能を持ち、北は言うに及ばず中国の戦闘機にも「圧倒的な優位性を保つ」(前防衛長官・森本敏)という。


中国国営中央テレビによると国家主席・習近平がロシア訪問を前に、ロシアから最新鋭戦闘機Su-35を24機購入する合意文書に署名したと伝えたが、専門家の間では「Su-35もFー35Aの敵ではない」とされる。敵基地攻撃は戦闘機だけでなく巡航ミサイルや弾道ミサイルも使ったものとなる。


もちろん当面は米軍との共同作戦となる。北も中国もミサイル防御能力に欠けており、併用すれば効果は絶大となる。敵基地攻撃に関する政府の見解は古く、56年の首相・鳩山一郎の国会答弁で「敵基地を叩くことは法理的に自衛の範囲に含まれ、可能である」という方針が確立されている。
 

米国の艦船や米本土に対する北のミサイル攻撃などを、日本が防御する集団的自衛権については、国連も認める世界の常識であり、これまで自粛してきた方がおかしい。改憲が必要との見方があるが、時の政権の三百代言の内閣法制局の見解を首相が変えれば済むことだ。


敵基地攻撃も集団的自衛権も即時の対応には間に合わないが、戦時という緊急事態が発生すれば政府は国内世論からも米国からも“超法規”の対応を迫られよう。


自衛隊に海兵隊機能を持たせることは石破のかねてからの持論である。現状では占領された孤島を奪還する能力は自衛隊には乏しく、敵前上陸を可能とするにはどうしても海兵隊機能が必要だ。
 

こうして「安倍・石破安保路線」の上に防衛政策は大転換する流れとなった。かつて秋葉原の暴漢のような国が別々に二つも存在するのだから、近ごろ幼稚園でも備えている刺股(さすまた)ぐらいは供えるべきだと書いたが、核攻撃まで明言されては刺股ではおさまらない。


暴漢がピストルを撃って暴れ出す前に少なくとも電流が流れると、全身の筋肉が硬直したようになって身動きが取れなくなるテーザー銃くらいの備えは必要だ。国民の生命財産を守るためにはおさおさ準備を怠るべきではあるまい。


半狂乱のような国々には、日本を攻撃すればこうなるという姿を見せておくことが抑止力として機能するのだ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年04月24日

◆安倍の外交強気シフトは当然だ

杉浦 正章
 

中韓ともに“歴史の活用”はもうやめよ


痺れを切らしたかのように首相・安倍晋三が強気の外交路線にかじを切った。参院選に向けて封印してきた“右傾化タブー”を次々と、前面に出し始めた。


背景には中国国家主席・習近平の“尖閣活用統治戦略”が当分変わることはないと読み切ったことにある。確かに戦後70年近く憲法の不戦の誓いを忠実に守ってきた平和国家日本に、周辺国との戦争、紛争を続けて来た中国が歴史認識で批判を繰り返し、日本の援助で経済発展を遂げた韓国が“恨みの外交”を前面に出そうとするのはもういいかげんにしたほうがよい。


靖国参拝が財務相・麻生太郎の独断であるかのような批判があるが、そうではない。政府、自民党筋の情報を総合すれば、明らかに安倍路線に沿って政権内部で練りに練った参拝だ。


幹事長・石破茂が初めて明らかにした「中国は首相、外相、官房長官の参拝だけはいけないということだと承知している」という新見解も、政府与党間で密接な調整が行われた結果であることを意味している。23日の史上最多の国会議員による靖国参拝も、その一環である。


ジャーナリストの中には麻生を「外交音痴としか言いようがない」(後藤謙次)と批判する声があるが、浅薄だ。中韓両国の反発も織り込み済みなのである。
 

一方靖国参拝こそしなかったが、ここに来て安倍は躊躇することもなく外交を強気にシフトし始めた。植民地支配へのおわびと反省の村山談話をそのまま継承しないことを明らかにしたかと思うと、中国への封じ込め路線を進め、10日には台湾との間で漁業協定を締結、日台関係を大きく好転させた。


中国に痛烈なる打撃を与えたことは言うまでもない。23日には国会答弁で「尖閣諸島と海域を安定的に維持管理するための具体的な方策として、公務員の駐在や船だまりの建設などの様々な選択肢は常に頭の中にある」とまで言い切った。
 

これは参院選挙までは安全運転とする当初路線を大きく変更したことを意味する。その原因の第一は、習近平の外交路線が、対日強硬方針に貫かれつつあると判断したことが挙げられる。


例えば2年ぶりの中国の国防白書は、臆面もなく「海洋強国」を目指す方針を打ち出し、尖閣を巡る日本の立場を名指しで非難した。この国防白書に基づくかのように、尖閣における領海侵犯はますます頻繁になり、23日には過去最多の8隻もの海洋監視船で“尖閣参拝”を繰り返した。


おりから米統合参謀本部議長・デンプシーが習近平と会談している最中であり、日米同盟を試すかのような狡猾な動きに出ているのだ。習近平に取ってみれば、尖閣問題の発生は自らの国内基盤を固めるための願ってもない好機であり、これを“活用”することで国内に充満する不満のはけ口としているのだ。
 


安倍はこうした習近平の姿勢を読み切ったのだろう。官邸筋は「もう民主党政権のようなおどおどした外交はしない。毅然とした姿勢を貫く」と漏らしている。安倍に強気の外交姿勢をもたらしたものは国内の空気もある。


稚拙な民主党外交は尖閣問題、李明博の竹島上陸など、周辺諸国に「甘く見られる」結果を招き、国民の不満はうっ積した。それが安倍の筋を通す外交姿勢によって、支持率も上昇、これが安倍の自信となって現れているのだ。尖閣、竹島、北方領土は、日本になかった「ごく普通のナショナリズム」を喚起したのだ。これが議員心理にも跳ね返り、かってない数の靖国参拝となって現れた。
 

これに対して日本のマスコミは、相も変わらぬ自虐史観を根底におき、靖国参拝の批判を繰り返している。どうしたことか読売までが、社説で麻生の参拝を「より慎重であるべきだった」と批判している。読売の信頼すべき論説が一瞬朝日の社説かと思った。


その朝日にいたっては2日間にわたり社説で参拝を批判している。中国も、韓国もこの日本の世論を“利用”して、日本の政権に揺さぶりをかけるという、戦後一貫したパターンの繰り返しだ。


朝日は北のミサイル挑発を前にして日中韓が結束して事に当たるべき時に、靖国で事を荒立てるのは方向が逆であると協調している。テレビのコメンテーターたちもこれを真似した“論調”だ。


しかし日中韓が北への外交で結束できたことなど一度もない。北の攻撃を一番懸念すべきは韓国であり、外相が訪日を延期するなどという子供じみた対応をして、いまそこにある国益につながるのか。大統領・朴槿恵も訪日よりも訪中を優先するという説があるが、外交は女の恋の駆け引きではない。


韓国新政権は冷厳に自分の置かれた立場を見極めるべきだ。弱小国韓国が万一朝鮮戦争になれば頼りになるのは米国と日本だけしかない現実を知るべきだ。安倍はこれまで歴代政権が躊躇(ちゅうちょ)していた、強気の外交に出たが、アベノミクスと同じで国民に“やる気”をもたらす効果を生む。内政も外交もいいところを突いている。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年04月23日

◆民主党分断Vs自公連立分断論争の様相

杉浦 正章



改憲めぐる暴走老人の“暴言”が波紋
 
暴走老人石原慎太郎の投げた「自公分断」の一石がこだまを呼んでいる。安倍が改憲の要件緩和の憲法96条改定に踏み込めば、民主党は「自公連立解消を」とくさびを打ち込む。維新共同代表・石原自身は“改憲再編論議”に火が付いて、してやったりとほくそ笑んでいるに違いない。


しかし石原は物事を“認知”できなくなってきているのだろうか。石原の前提条件を満たすには維新が参院選で圧勝して、自民・維新で改憲の条件である3分の2議席を満たさなければならない。これはまずあり得ない。老人性視野狭窄(きょうさく)発言の勇ましさだけでは物事は動かないのだ。


石原の党首討論における自公分断発言は「あえて忠告しますが、公明党は必ずあなた方の足手まといになりますな」というもの。自民党席から「無礼だろ」「失礼だ」とヤジが飛んでも、「本当のことを言ってんだ」と譲らない確信犯だ。マスコミは忘れているが昨年も同様の発言をして、陳謝している。


石原は11月30日の党首討論で、「憲法大幅改正に幹部が反対する公明党は、あまり評価できない」「自民党が公明党と連立している限り、自民党には期待できない」と発言している。


このときは公明との衆院選選挙協力が大阪で行われている最中であり、維新は慌てて、石原慎太郎代表の名前で「公明党と憲法の考え方についての私の発言が、誤解を招いたことは大変遺憾に思います」と陳謝している。
 

ぼけたのか確信犯なのか。恐らく両方であろう。この老人特有の露骨な短絡表現が、本人の目指す極右軍国主義路線の改憲にプラスに働くとでも思っているなら世話はない。「政治家ではない」と言われるゆえんだ。まさに小説家なのだ。


小説家は空想でものを書くが、政治家は実証主義が基本だ。それでは石原の言うように公明党を切って改憲が可能だろうか。


筆者の予測では参院選後の勢力分野は自民が108議席前後、維新がせいぜい10議席程度であり、3分の2議席の162議席にはほど遠い。みんなの党を加えても届かない。民主党が分裂してその改憲勢力が同調してやっと届く程度だ。


つまり改憲は公明党を切って維新と連携しただけでは無理。自、公、維、みんな、民主の一部が恐らく必要になるのだ。


恐らく石原はまだ維新のブームが続くと思っているのだろうが、もう賞味期限はとっくに切れているのだ。維新共同代表・橋下徹が参院選に立候補すればブームが再来すると思っているようだが、それでもブームは生じない。


最近橋下が焦ってテレビへの露出を増やしているが、維新の支持率は減少傾向をたどっている。幹事長・松井一郎は22日パーティーで「今は完全にアゲインスト。大阪以外はどこも負ける」と正直に賞味期限切れを認めた。
 

しかし、改憲に公明党が慎重であることは確かだ。代表・山口那津男は11日の党中央幹事会で「憲法改正問題は連立政権の合意の枠外の話だ」と強い調子で安倍の対応をけん制している。連立合意に言及したのは、改憲問題で合意を破棄する可能性を警告したものとも受け取れる。


こうした動きに対して官房長官・菅義偉は21日のNHKで「自民党は公明党と連立を組んでいる。まずそこが基本だ」と、連立維持への強い姿勢を表明した。しかし同時に菅は「96条改正に賛成していただけるなら、政党は維新だけでなく、民主党も賛成しなければダメ」と述べている。


これは明らかに筆者の読みと合致している。実態はまず民主党分断による改憲実現しかないのだ。


危機感を感じたか民主党幹事長・細野豪志は「憲法改正を参院選で訴えるなら当然公明党との連立を解消したうえでやるべきだ」と逆襲に出た。事態はまさに「民主党分断対自公連立分断の戦い」の様相を示すに至っている。


公明党内の改憲論議は自民党の目指す国防軍の創設と、集団的自衛権の行使容認に至ると、皆一歩退いてしまうのが実態だ。また、憲法ばかりは「政策ごとの部分連合」は通用しない。各党とも立党の原点が改憲か護憲かに集約されている傾向が強く、安倍が9条など本格改憲にまい進するなら公明党も連立解消へと向かわざるを得まい。
 

だが公明党は過去14年で政権参加の“蜜の味”を覚えた。これまでも自民党とは妥協で政権参加を継続してきたのだ。一方自民党は各選挙区で1万から3万票の公明票がなくては、とても当選者数を維持できない。そういう構図となってしまったのだ。


両党は切っても切れない関係にあり、その原点から妥協が生ずる可能性はある。公明党内でも「96条までなら改正してもいいのではないか」との声が幹部の中にはあるのだ。改憲の要件を3分の2から2分の1に緩和するだけで、どぎつい9条などは先送りする。この線が唯一の改憲実現へのあい路かもしれない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年04月22日

◆このままでは確実に短期政権に終わる

杉浦 正章



秘書官は土日に安倍の日程を入れるな
 
首相・安倍晋三は長期戦権どころではない。確実に倒れる。それも政局でなく、病気で倒れる。13年という最長不倒距離の官邸詰め記者だった筆者が言うのだから間違いない。


なぜなら安倍は毎週のように土日を返上の強行スケジュールが続いているのだ。このぺースでは1年と持たないだろう。補佐になれていない秘書官がどんどん日程を詰め込みすぎているのが最大の原因だろう。官邸は何をやってるんだと言いたい。悪いことは言わない。長期政権を目指すなら、スケジュールを半減すべきだ。


日日の首相動静は、政治を予測するための宝庫だ。誰々が首相に会えば「ははーん、あの話しだな」と第六感で分かる。やはり動物的嗅覚の鋭い元官房長官・野中広務も筆者と同様に現在の首相日程の“異様さ”に気付いていた。

野中は21日のテレビで「首相日程のメニューが多すぎる。体が続くかと心配だ。一生懸命やっているのは立派だと思う。しかしこのままではある時突然体を壊す」と心配していた。


たしかに凄まじいスケジュールである。どうも土日の安倍の露出度が多すぎると思って3月16日の土曜日から4月21日まで1か月余りの日程をつぶさに調べた。


週日はいうまでもなく分刻みの日程だ。国会審議も身動き取れないままの激しい質疑が連日だ。ここまではどの首相も同様だが、問題は土日だ。11日間の土日のうち休日は3日だけだった。1か月あまりで休養が3日。


土日は3月16日自民党大会、17日防衛大学卒業式、24日福島視察、30日モンゴル訪問、31日モンゴルから夜帰宅、4月6日盛岡視察、14日硫黄島戦没者追悼式、小笠原視察、20日桜を見る会、山口参院選応援、21日山口遊説といった具合だ。土日の空きに週日に消化できない日程をどんどん埋め込んでいるのだ。


これをみて、「あっ、森田一と同じだな」と思った。大平正芳の娘婿で主席秘書官の森田が、大平の土日の日程をどんどん埋めていたのだ。あまりのきつさに大平も疲れ切った表情をしていた。


筆者が各社キャップ懇談会で大平に「お疲れではないですか」と聞くと、「そうなんだ足の下の方から疲れがわーっと全身に上がってくる」と述べたものだ。後から分かったことだが大平は心臓の持病があり、ニトログリセリンを常用していた。


その大平に娘婿が日程を詰め込んだのだからどうしようもない。そうこうするうちに80年5月30日総選挙の第一声を新宿で上げたが、異常にその声がかん高かった。筆者は仲間の記者らに「ぶっ倒れるぞ」と予言したがその通りになった。心筋梗塞である。選挙の途中で急逝したが、弔い合戦で圧勝した。


安倍は首相・小渕恵三のまねをして福島県郡山市の農園でカブの束を高々と持ち上げて「カブが上がります」とパフォーマンスしてみせた。一瞬悪い予感がよぎった。小渕もやはり休日返上の日程処理を迫られ、公邸に戻ってもおびただしい書類、書籍、新聞の切り抜きに目を通し、徹夜でビデオの録画を見るのが普通だった。


人気のブッチホンを一般人やテレビ局にまでかけて、職務に専念した。しかし小沢一郎の裏切りにあって自由党との連立が決裂、翌日に脳梗塞を発症して、帰らぬ人となった。


まさに2度あることは3度あるのだ。休日返上型首相2人とそっくりな政治日程。おまけに安倍は第1次政権では1年でノイローゼ的な症状となり、持病の大腸炎の悪化で退陣を余儀なくされているのである。


なぜこんな日程ができるかといえば、安倍がアベノミクスの成功と環太平洋経済連携協定(TPP)など主要政策で順調な滑り出しを見せ、本人自身も高揚しているのだろう。日程にクレームをつける者もいないのだろう。


秘書官らは官庁のエリートだが、首相をどう守るかについては全くの素人。次々に出てくる来訪予定や、訪問日程に待ったをかけることなく、どんどん組み込んでしまっているに違いない。秘書官は複数だが首相は1人だ。まったく首相の健康に目が行っていない。本来なら官房長官・菅義偉が気付くべきところだ。


これでは、みんなの党の渡辺喜美が言ったように「3年の長期政権」などまず不可能だ。長期政権の首相は佐藤栄作も休日は鎌倉の前田別邸で過ごすか、ゴルフだ。いまの安倍はまるで戦時下の首相のような日程をこなしている。順風な時は精神的にも高揚感があるが、政治は山あり谷ありだ。谷の時にがっくりくる。


しかし安倍は好むと好まざるとにかかわらず、日本の長期低迷の内政、経済、外交を離脱させるためには不可欠の“人材”なのであり、途中で倒れることは許されない。


官邸は週日はともかく土日に日程を入れない習慣を作るべきだ。そうでなければ、またまた安倍の病気発の政局という嫌な季節が到来してしまう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年04月19日

◆安倍は秋口にも原発再稼働に踏み切れ

杉浦 正章
 

放置すればアベノミクス直撃
 

18日発表の12年度の貿易赤字が過去最大の8.2兆円に達した。最大の理由は円安と原発停止に伴う燃料費輸入の増大だ。経産省の試算では燃料費は3兆円増大しており、この国富流出を放置すれば確実にアベノミクスの成長戦略の足を引っ張る。原発再稼働は急務となった。


おりから原子力規制委員会は原発の新規制基準案を策定、7月から施行される。とりあえず現段階で同規制に適合する原発は半数はある。首相・安倍晋三は安全基準に達した原発の早期稼働を遅くとも秋口には実現すべきであろう。


原発再稼働問題は民主党政権、とりわけ首相・菅直人が確信犯的に再稼働反対路線に踏み込み、再生可能エネルギーへの幻想をばらまいた。野田が大飯原発を再稼働させこれを修正した。


自民党は総選挙最中から再稼働を唱え圧勝した。首相・安倍晋三はオバマとの会談で民主党の原発ゼロ政策の破棄を伝達して、安全が確認された原発から再稼働することが政権の基本方針である。


ところが菅の敷いた脱原発方針の結果、原発50基中48基が、再稼働できないままとなっている。この結果電力会社は燃料費がかさみ、東電が耐えきれずに電気料金に反映させた。近く全国の電力会社も値上げに踏み切る方針である。


家計への圧迫は著しいものとなってきており、企業の海外移転は増加の一途をたどっている。とりわけ太陽光など再生可能エネルギーの電力会社買い入れは、ドイツが事実上破たん状態になっているにもかかわらず、世界でも最も高い価格水準で推進されており、これが電気料金にも跳ね返る。


そもそも全電力の1%にも達さない上に、海の物とも山の物とも分からない再生可能エネルギーを、人気取りで原発に取って変えようとした民主党政権が諸悪の根源であったのだ。


唯一の対処方法は火力発電を増やすことだが、それでは地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出が増えてしまう。国際社会が直面する課題に日本だけ背を向けることはできない。


こうした中で胸のすくような司法判断が出された。大阪地裁が16日、福井県や大阪府などの住民が、大飯原発の運転差し止めを求めた仮処分申請で、申し立てを却下したのだ。住民側の主張はことごとく却下された。


その内容は2基の原発が国の今の基準を満たし、想定を上回る地震が起きても安全は保たれると判断。活断層についても具体的な危険性は認められないとした。「破砕帯」についても現段階の調査では活断層と認めるに至っていないと指摘。安全の限界である11・4メートルを超える大津波が襲来する可能性は認められないとまで言い切った。


東電福島第1原発事故後、原発の安全性を巡る初の司法判断であり、全国の原発訴訟の主張の根幹をことごとく否定したものでもある。総選挙で原発ゼロキャンペーンを行い敗北したマスコミ、とりわけ朝日新聞は司法判断でも敗退したことになる。


さっそく社説で取り上げて「現時点で安全と断言するのは勇み足で期待はずれ」と噛みついているが、一定のイデオロギーの上に立った我田引水の社説だ。同社はもはや不偏不党を社の綱領から外すべきだ。


自民党は再生可能エネルギーの導入に3年間努めて可能性を見極めるとしてきたが、政府部内でも無理との判断が主流を占めつつある。環境相・石原伸晃は経団連会長・米倉弘昌に「再生可能エネルギーは基幹エネルギーに位置づけることはできない」と明言した。


安倍政権は参院選での争点化を避けるかのように見えるが、ここは姑息(こそく)な対応をすべきでない。再稼働を選挙公約として堂々と明言して選挙に臨むべきだ。その上で安倍は規制委基準に適合した原発の最終審査を早期に行い再稼働に踏み切るべきだ。


規制基準に基づけば半数の原発は改善しない限り再稼働できなくなる。東北、東京、中部、北陸、中国、日本原電の計26基は、当面再稼働は難しい状況とみられている。しかし、沸騰水型炉ではない、四国電力伊方原発3号機や九州電力川内原発1、2号機は早期稼働が可能となる。


両電力は7月にも再稼働を申請する予定であり、早期に審査を済ませ遅くとも秋口までには再稼働の許可を出すべきだ。これを皮切りに半数の原発を再稼働させれば、電力事情は確実に好転する。アベノミクスの成長戦略はこの決断なくして達成は不可能と見るべきだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)