2013年10月10日

◆このままでは小泉進次カが駄目になる

杉浦 正章



父親の「原発ゼロ」に理解を示し始めた


イスラエルに「父親が酸っぱい葡萄を食べたので子供の歯が浮く」という諺がある。日本の「親の因果が子に報い」だが、自民党期待の星・小泉進次カが、父親・純一郎の発言に理解を表明した。原発は必要と述べてきた信念を転換して、「歯の浮く」ようなおべんちゃらを「原発ゼロ」に対して述べ始めたのだ。


若いうちにに弁が立ってマスコミにチヤホヤされたものの、結局巧言令色が露呈してはしごを外され、その後鳴かず飛ばずになった政治家は5万といる。小泉の「原発ゼロへの傾斜」はまさにその危険を容易に予言できる。


進次カは父親の「酸っぱい葡萄」の重圧に抗して、復興庁の政務官として、いまこそ「脱原発神話」をはねのけるときだ。それなくして、「日本の首相候補」などとはおこがましい。


小泉純一郎の「原発ゼロ」発言に対する政界の反応を分析すると、総じて「無視」が潮流だ。わずかに支持する発言は「3馬鹿大将」とは思っていても言わないが、3人の政治家だけだ。


まず元首相・菅直人だ。小選挙区で落選し比例区でやっと当選したことは、自らの原発ゼロ発言が大きく影響しているなどとはつゆほども思わず、小泉発言を礼賛している。


8日ニューヨークで「小泉発言は脱原発に向け、政府への大きな圧力になりつつある」と、誰も知らないのを幸いに大うそをつき、「原発が供給していた電力は、再生可能な自然エネルギーで代替できる」と科学的無知をさらけだした。


ついで哀れにも栄光の夢が過ぎ去ったことに気付かない小沢一郎。「冷静に日本を考える人であれば行き着く結論」だそうだが、原発ゼロで当選ゼロの深淵を見た日本未来の党の「行き着いた結論」を早くも忘れたようだ。


こまっちゃくれのみんなの党代表・渡辺喜美は、「危機を共有する政治家」と礼賛したが、自分の党の危機的状態は棚上げでは済まない。 


一方政府自民党は官房長官・菅義偉が「言論は自由」、幹事長・石破茂も「再稼働は不動」とまるで純一郎を相手にしていない。これは正しい選択だ。相手にするほど小泉のペースにはまる戦いなのだ。


とりわけ首相・安倍晋三は、カラスが騒いでいる位の反応でいい。まともに反応してはいけない。こうした中で党青年局長から復興政務官になった進次カが7日、父親に理解を示してしまったのだ。まず「私は政務官だから安倍政権の一員」と前置きした。


後に続く発言を見ると、「一員だから再稼働」ではなく「一員だから思っている事を言えない」に比重がかかっている。その上で「日本ってやっぱり変わるときが来たかなと、誰もが思ったと思う。


何か釈然としない気持ちが国民の間で、実は今はまだ景気が回復しそうだから黙っているけども、このままなし崩しにいって本当に良いのか、という声が私は脈々とある気がする。自民党がそれを忘れたら、愛知県で4年前に(衆院選小選挙区で)起きたように、(当選者が)ゼロになりかねない。私の言わんとしているような思いはじわじわと(皆さんが)感じているのではないかなと思う 」と述べたのだ。

明らかすぎるほど父親に同調して「なし崩しの再稼働」への反対を訴えようとしている。


朝日新聞や報道ステーションなど「原発ゼロ」派ががやんやの喝采で報道したのは言うまでもない。しかし進次カはこれまで原発有用論の先頭を切っていたのだ。


「これまで歯を食いしばりながら日本国内で耐えてきた企業が、原発ゼロを機に一気に海外に流出していくだろう。日本の産業は空洞化する。そのような事態を招かないようにするのが政治の責任なのだ」と発言している。


この“変節”の心理状態を読めば、その先には大衆にこびを売るポピュリズムが存在する。父親と全く同じパターンだ。純一郎は「原子力村」から一番頼りにされた首相の1人であり、在任中の原発推進はもちろん、国会答弁でも「日本の全ての原発はいかなる津波が起こっても問題ないように設計されている」と発言している。


まさに親の酸っぱい葡萄で歯を浮かせている姿が進次カだが、やはり自らの発言のように「歯を食いしばり政治の責任を果たす」ところに戻るべきだろう。とりわけ進次カは復興政務官だ。職務として最初に為すべき仕事は16万人の避難者を一刻も早く安定した居住地と仕事に戻す事だ。


それにはマスコミに踊らされて民主党政権が設定した「年間1_・シーベルト」の除染方針の撤回だ。日本人が浴びている放射能は太陽など自然に降り注ぐものが1.5_・シーベルトであり、1_・シーベルト達成などは科学的にも極めて無意味で根拠のない設定だ。


進次カはこうした問題にけりを付ける方向で国民を説得するのが先決であり、愚かな父親に気を遣っているひまはない。


政府自民党の首脳も、このまま進次カを野放しにするのは、やがては手の付けられない段階へと進む。河野洋平に影響を受けた河野太郎並みのエキセントリックな政治家になってしまうだろう。


石破は「小泉進次郎さんがいれば、自民党青年局が光り輝き、小泉さんがいなくなっちゃうと光り輝かないというのはどうにもならない。小泉さんの後の党青年局長は、誰がやったってやりにくい」などと、いまだにチヤホヤしているが、この姿勢は本人のためにならない。厳しく教育すべきなのが幹事長の役目と心得よ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年10月09日

◆安倍のアキレス腱は「復興法人税」だ

杉浦 正章



民主党内も「反対」でまとまる
 

順風満帆に見える安倍政権だが、ようやくアキレス腱が見えてきた。安倍の打ち出した復興法人税1年前倒し廃止の方針が、バラバラだった民主党を結束させる流れとなってきたのだ。加えて、自民党内や公明党にも反対論や慎重論が根強い。


反対論は分かりやすい。「こともあろうに震災復興の財源を切り取るとはどういうことか。それも所得増税はそのままに、優良企業だけを優遇するとは」という1点に絞られる。上げ潮派の陥りがちな弱者しわ寄せ政策の象徴と受け取られてしまうのだ。


当然世論も反発している。ねじれ解消後初の臨時国会も首相・安倍晋三にとって一筋縄ではいかない雰囲気となってきている。
 

他に財源を探せば良いのに、なんで大震災で一番苦しんでいる層を狙い撃ちしたかのように受け取られる政策を打ち出したかといえば、根底には安倍の慢心があるとしか思えない。アベノミクスの大当たりで「上げ潮路線の正当性が証明された。財政再建派は下におろう」という意識である。


これは消費税の3党合意の経緯に当時は参画していなかった安倍の弱点でもある。政治は「経緯」の上に積み重ねられてゆくのであり、これを無視しては成り立たない。


自公民3党は復興財源でも協力関係を作り出し、被災地のために、個人、法人の別なく等しく国民が負担を分かち合おうという「絆」と「連帯」の精神に基づいて、法人、所得両税の増税を決めたのだ。それを所得税だけをそのままに大企業や優良企業だけが払っている法人税に切り込んだのは慢心がもたらす失策であろう。


安倍は安倍で復興法人税前倒し廃止を、上げ潮路線の本丸である法人税実効税率引き下げへの突破口とすることを狙ったものであり、容易に引けない事情がある。


この結果、民主党内に、“結束”の材料を与えてしまった。左派が支配する執行部に対して右派の6人衆がどう出るかが政界再編と絡んで焦点だが、前首相・野田佳彦、前原誠司、岡田克也ら6人衆は当面党の結束を維持する方向だ。


訪米中の野田を除いて5人が3日集まり、今後の対応を話し合ったが、当面政界再編などの動きは慎重に対応して、臨時国会に向けて執行部と結束して対応することになった。臨時国会でも復興法人税前倒しなどに焦点を当てていく方針となった。


6人衆の中心の野田はいまや、前倒し撤廃批判の急先鋒である。訪米中も「復興をまだやっている最中。法人だけ切り離す意味は理解できない」と真正面から安倍を批判した。ブログでも「復興特別法人税の廃止なんて、官邸の一部の考えとしか思えません。ごく少数の法人べったりの声で、政府・与党の重要な意思決定が決まるとは…。おかしな空気が漂っています」と強調している。


こうした野田の批判は党内にも影響を生じさせており、代表・海江田万里は「復興法人税の廃止は復興を全国民で成し遂げると誓った絆の精神に反する」と批判。政調会長・桜井充も「大企業だけ優遇されるのはおかしい。中小企業の大半は法人税を支払っておらず、効力は全くない」と断定した。


民主党は野田を予算委の代表質問に立てるべきであろう。海江田よりよほど効果的だ。


一方で自民党税制調査会にも批判論が依然として存在する。先月26日の税制調査会では「被災地で説明できるのか」とか「法人減税をやっても経営者は簡単に給料を上げられない」との批判が相次いだ。福島県選出の議員らは安倍に、「復興法人税廃止に反対する要望書」を提出したほどだ。


公明党の税制調査会も反対論が一色であった。さらにマスコミの世論調査では反対が圧倒している。朝日の調査では反対が56%、で賛成27%の倍。読売の調査では自民党支持層の60%、民主党支持層の68%、無党派層の70%が反対だ。

さすがの安倍も突出は無理と判断したのか、自民党内をとりあえず復興法人減税撤廃を「検討する」ことでまとめた。経済成長を賃金上昇につなげることを前提に、「復興特別法人税の1年前倒しでの廃止について検討する」とするにとどめたのだ。


12月中に結論を得る方針だが、全く取り下げる意思はない。従って、臨時国会では前倒し撤廃をめぐって激しい論戦が展開されることになろう。


民主党は「前倒し撤廃の撤回」を求める方針であり、この線で与野党の同調者を扇動することになろう。安倍が提出するアベノミクスを支える「産業競争力強化法案」の審議にも影響が出ることは避けられない。


安倍にしてみれば、数を背景に強気で押し切りたいところであろうが、自公両党に反対論を抱える構図では容易ではあるまい。厳しい綱渡りを強いられることになりそうだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年10月08日

◆安倍政権で2度の増税は無理だ

杉浦 正章



費税10%は政局に直結


今回は消費税法通り8%の増税となったが、これが安倍政権で10%に出来るかどうかとなると、至難の技と言うしかない。煎じ詰めれば再来年の再増税で、その翌年の衆参同日選挙での政権維持が可能かどうかに絞られる。


おそらく3%アップまでは、おうように認めた国民も、その痛打が忘れられないうちにさらなる2%の連続パンチを浴びせられては確実に安倍政権を見限るだろう。


首相・安倍晋三が前首相・野田佳彦のように政権交代まで決意してやるかというと、そこまでの信念はないとみる。まず「先送り」しか選択肢はあるまい。首相周辺から早くも「1政権が2度も増税するのはきつすぎる」という“牽制球”が投げられ始めた。


こんなガバナビリティ(被統治能力)のある国民は世界広といえども日本国民だけだろう。驚いたのは来年4月に消費税引き上げを「評価する」が朝日の世論調査で51%、読売で53%と過半数に達した。まだ実感がない事もあろうが、1000兆円達する借金財政改善と社会保障制度の維持に向けての切なる願いが率直に反映されたものであろう。


しかし同じ調査で再来年10月の10%への引き上げは、拒絶反応である。反対が朝日で63%、毎日が65%、産経が61%といった具合だ。要するに今回は大目に見るが次回は許さないという反応が如実に表れている。


さらに来年4月に実施された後に調査すれば、8%を実感した国民の多くは反発、内閣支持率を50%割りにするであろうことは確実だろう。


そこで安倍がどう判断するかだが、「経済は生き物だから、10%に上げるかどうかは、その後の推移を見ながら判断しなければいけない。世界経済のはらんでいる様々なリスクが顕在化するかどうか、というのも重要なポイントだ」と述べている。


さすがに状況の見極めはしっかりしている。とても現段階で判断出来るような状況ではないということだ。その意味でも公明党代表・山口那津男の10%を前提にした軽減税率導入早期決定論などは、政局を全く読めない判断間違えだ。


長期の政治日程をみれば14年4月に8%への引き上げ、15年4月統一地方選挙、秋に自民党総裁選挙、10月に10%への引き上げ、16年夏衆参同日選挙という段取りが描かれている。もちろん10%もダブル選も現段階での予想である。


それでは10%が可能かどうかを見ると、ここで再び消費税法付則18条の「景気条項」が問題となる。


何と書かれているかと言えばその1項で2011年度から2020年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した総合的な施策の実施。2項で消費税率の引上げは、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずるとなっている。


いささか玉虫色だが素直に読めば、消費増税を判断する時点で、景気が目標の成長水準に達していない場合は、増税凍結も含めた見直しを行うことができるというものであろう。


ところがその判断の前提になる14年度の景気動向は生やさしくない。


日本総研の見通しでは4〜6月期は大幅マイナス成長に。その後は、米国景気の堅調な推移や、金融緩和などを通じた円安が引き続き輸出環境の改善に寄与し、回復軌道に復帰。ただし、年度前半の落ち込みをカバーできず、2014年度の実質成長率はほぼゼロ成長となると見ているのだ。


三菱UFJもGDP成長率は前年比+0.2%と小幅プラスを予測している。これは安倍の増税したくないという思いにプラスに作用するものとみられる。今回もアベノミクス腰折れへの影響を考えて最後まで抵抗した安倍である。次回も抵抗する絶好の材料となり得るのだ。
 

そこで政治展望を鳥瞰図で見れば、引き上げが予定される再来年10月は、想定されるダブル選まで一年を切る段階である。選挙戦はとっくに開始されており、10%への増税が自公両党を直撃する。


ちょうど大平正芳が一般消費税を掲げて選挙に突入したのと同じで、有権者が離反して自民にとって選挙にならない事態が想定される。ダブル選挙は自民党に有利に作用してきたが、増税後の選挙は衆参同時敗退が必至のものとなるだろう。敗北傾向が増幅するケースとなり得る。


自民党は衆院で294議席の確保など夢のまた夢であり、240議席台まで落ちるだろう。もっと落ちるかも知れない。参院の過半数割れはさらに拡大して、自公でも過半数を維持できず、再びねじれ現象が生ずる可能性が高い。つまり安倍政権にとって“悪夢”の現出である。


この状態をひたすら望んでいるのが野党であり、小沢一郎が象徴的発言をしている。「消費増税を国民が肌身に感じたとき政治は動く」と述べるとともに、周辺に「10%にすれば確実にダブル選挙の争点は消費税だ」と漏らし、「最後の勝負」の時期到来をひたすら願っている。


こうした情勢を知りながら安倍がやすやすと10%に踏み切るとは思えない。8%でアベノミクスとのバランスを考えたほど消費税に消極的な安倍が、政権を賭けた10%に簡単に踏み切れるわけがないのだ。


首相官邸では早くも「何とか先延ばしするしかない」との声が漏れ聞こえるようになった。たしかにせっかく達成した安定政権を手放すか、先延ばしかとなれば為政者は99%先延ばしを選択するだろう。
 

消費税は法律で定められている限り実施しなければならないが、政権が無理と判断すれば、法改正で実施時期をずらすことも考えられる。ダブル選以降にずらすのだ。ダブル選自体を断念し、消費税を実行して16年12月の任期満了選挙という手もないわけではないが、三木武夫と同じで任期満了は追い込まれて敗れる。


こうした情勢から再来年の通常国会段階から、消費増税法改正問題が浮上する可能性がある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年10月07日

◆山口の自己主張は度が過ぎる

杉浦 正章



いまや狼少年の「連立離脱」


「スピッツが手に負えんなぁ」と自民党幹部が嘆いている。公明党代表・山口那津男の一連の「安倍政治」批判に対してである。最近では憲法改正や集団的自衛権問題に関連して、たびたび連立解消をほのめかすにまでに至っている。その主張も政権内にある政党党首とは思えないほどの食い違いである。


むしろ自社対決時代の何でも反対の社会党のようですらある。15日からの臨時国会では、国家安全保障会議(日本版NSC)創設法案とこれに密接に関連する特定秘密保護法案が焦点となるが、秘密保護法案にも極めて慎重である。


首相・安倍晋三はこのまま「政権内野党」を野放しにしておくことも出来なくなる可能性が出てきた。安倍はノイジー・マイノリティ(声高なる少数派)よりサイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)を選択すべきである。


自公連立政権は、民主党政権時代を除いて1999年から続いているが、今回の連立の最大の欠陥は、自公の力関係と時代背景ががらりと変わったにもかかわらず無条件で継続させたことにある。最大の勢力関係の変化は自民党が衆院で294議席と31議席の公明党の10倍を確保して、衆院での連立が不要になったことだ。


参院自民党は113議席で121の過半数に足りないが、公明党が離れても維新と連立し、その9議席で124議席となり過半数を維持できることだ。時代背景は極東情勢の激変である。この3年間で自民党幹事長・石破茂がいみじくも「米ソ冷戦後の世界はこれであったか」と極東の緊張状態を指摘した通りだ。


中国の海洋進出が尖閣をめぐる厳しい緊張関係をもたらし、北朝鮮は核とミサイルのどう喝を繰り返す。まさに「極東冷戦」の状況の現出だ。


この変化を全く意識しないで、自公両党は過去の“習癖”を踏襲するとばかりに連立を組んだ。連立に先立ち少なくとも極東情勢の変化とその変化への安全保障上の対応が急迫していることくらいは、安倍と山口の間で重要ポイントとして確認すべきであった。


この結果山口は、絶対平和主義の創価学会の言うがままに天から平和が降ってくるとばかりに、およそ時代にそぐわない発言を繰り返すに至ったのだ。その象徴的な例が、集団的自衛権での憲法解釈変更が、「近隣諸国の理解を得る必要がある」などという、驚くべき認識欠如の発言につながる。


すべては近隣諸国による著しい軍事圧力によって触発されての集団的自衛権なのである。国民が衆参両院の選挙で自民党を圧勝させた最大の理由も、民主党がぼろぼろにした安全保障体制の再構築にある。


山口はそこが全く分かっておらず、思考停止状態であるかのように、一時代前の野党の主張を繰り返す。まさに創価学会婦人部のレベルを国政に持ち込んでいるのである。


その何でも反対路線が臨時国会にも反映されかねない状況もある。公明党はNSC設置法案と秘密保護法案の分離審議を主張しだしたのだ。是非の最終判断決定も臨時国会にずれ込ませる方針だ。これは明らかに秘密保護法案をつぶすか、骨抜きにしたい意図がありありと見える。


政権与党であるなら、まず与党間の調整をすべきなのに、それをろくろくせずにわなを仕掛ける。共産党でもしないような陰謀だ。さすがにそれに気付いた安倍と幹事長・石破茂は「両法案一括審議」を決めたが、危ういところであった。


さらに山口は、安倍が8%への引き上げを決めたばかりなのに、今度は「10%引き上げの際の暫定税率導入を現段階で決めよ」と唱え始めた。食料品や新聞などへの課税を軽減する暫定税率の主張の背景には創価学会と新聞首脳の強い働きかけがあるようだ。


安倍は再来年10月の10%への移行が可能となるかどうかを見極めざるを得ない状況にある。来年4月は何とか切り抜けても10%引き上げの連続パンチに、日本経済が耐えられるかどうかは全くの未知数だ。そのような政権全体の浮沈にかかわる問題を支持団体や一部マスコミの思惑などに左右されて主張するのは、まさに国会を村議会並みに考えているとしか思えない。


山口の主張を分析すれば、確かに冒頭紹介したようにスピッツ的である。少なくとも連立政権の一方の政党を代表するのなら、野党のようにマスコミに向けてまず発言して、マスコミの“同意”を求めるポピュリズムに走るべきではない。


自らを「ブレーキ役」と位置づけているが、新幹線のブレーキにバイクのブレーキを取り付けても壊れるだけだ。自らの政党の勢力を顧みてみるべきだ。衆院で自民党の10分の1、参院で5分の1の勢力でしかないではないか。この力関係では自民党の主張を10通した上で、自分は1の主張を慎ましく通すことが正しい。


それが国民の国政選挙における選択でもあるのだ。集団的自衛権にせよ改憲にせよ安倍の政策の1丁目1番地は分かっていたはずだ。これに反対するのなら、最初から連立への参加を拒否すべきだった。


公明党は過去の連立政権ではこれほどの“与党内野党”の姿勢は示さなかった。自らの主張をして最後には妥協へと動いて、政権を長期に維持してきた。これに比べて山口はことあるごとに連立離脱をほのめかしながらのけん制である。集団的自衛権の解釈変更を来春以降に先送りさせたことも、みずからの影響力の強さを誇りたいかのような口ぶりだ。


しかし、政権政党であることの“蜜の味”が、学会絡みの陳情や政策実現にどれほど効果を生じさせているかは、公明党自身が分かっていることである。これがなければ創価学会の勢力は見る影もなく縮小していたという見方が強い。


だから一見、反対のように見せかけて最後は政権につく“意図”が見え見えなのだ。まさに陋劣(ろうれつ)なる性格の側面を保有しているとしか言いようがない。自民党は臨時国会が集団的自衛権と改憲をめぐる公明党との駆け引きの前哨戦と心得るべきである。


秘密保護法案は衆院は難なく通過できるが、参院でもし公明が抵抗すれば、維新と組んででも成立を図るべきだ。数に応じた対応を自信を持って進めればよい。山口の強硬姿勢の背景には「学会票が自民党に回らなくなってもいいのか」というどう喝があるが、集団的自衛権や改憲は、それを覚悟で断行する価値がある。


公明党と創価学会というノイジー・マイノリティにひきづり回されて、サイレント・マジョリティの存在を見失うと災難は自民党に降りかかる。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年10月04日

◆日米同盟、片務から双務へ大転換

杉浦 正章



対中包囲網強化で日米の戦略一致


日本で初めて開かれた日米外務・防衛担当相会議 (2+2)は、米側が「歴史的会議」と位置づけていたとおり、日米安保体制の大転換をもたらすものとなった。首相・安倍晋三の「積極的平和主義」表明が米側からエコーとなって響き、集団的自衛権行使に向けた憲法解釈容認などへの動きを一層強める流れとなった。


日米安保体制は米国の軍事力に軸足を置いた「片務性」から、自衛隊の役割分担拡大の「双務性」へと大きくかじを切った。紛れもない対中共同防衛体制の確立の流れであり、中国は尖閣諸島への軍事圧力強化が、やぶで蛇をつつく結果をもたらしたことになる。
 

世界史の推移を見れば超大国のはざまにある国は、よく「番犬」として使われる。今回の米側の日米同盟積極活用の動きを大喜びするのは人が良すぎる。超大国の冷徹な外交・安保戦略を常に念頭に置く必要があるのだ。1902年の日英同盟が似通っている。


当時イギリスの海軍力は世界第一を誇っていたものの,ドイツ・フランス・ロシアの海軍増強がその優位性を揺るがせていた。ロシアを仮想敵国としていた英国は日本の果たす役割を無視することができなくなり,日本に防壁としての役割を期待して攻守同盟の締結へと進んだのだ。


日本はイギリスのために「極東の番犬」の役割を果たしながら,朝鮮半島支配という独自の利害を実現させようとした。


翻って米国の現状を見れば、中東における長年の戦争継続で国力は落ち、軍事費の大幅削減はオバマ政権が極東重視の方針を表明しながらも実体的には中東の泥沼に軍事予算をそそぎ込まざるを得ない状況を形成している。


台頭著しい中国に対して、米国は現在は圧倒的軍事力を誇るが、中長期的に見れば中国の太平洋への進出に一国で対決するのは苦しくなると判断せざるを得ないのだ。渡りに船となったのが尖閣諸島をめぐる中国の対日軍事圧力と北朝鮮の核とミサイルによるどう喝である。


強く反発した日本の世論は日米安保回帰の動きを見せ、有権者は右寄りの安倍政権を選択した。米国がその政策を見極めれば集団的自衛権問題にせよ敵基地攻撃能力にせよ、自国の極東戦略とマッチするものに他ならない。日本を「番犬」として使おうと判断したのは当然の成り行きだ。


米軍事戦略は日本を軸にオーストラリア、韓国を含めた軍事同盟のトライアングルを形成して中国を「封じ込める」ものであり、安倍の「積極的平和主義」は貴重なる“軍事資源”に他ならない。


しかし「番犬論」には盾の両面がある。日本にしてみれば米海兵隊は願ってもない「番犬」なのである。既に半世紀前からその見方は呼称を含めて確立している。66年に佐藤内閣の外相であった椎名悦三郎は国会で「米軍は日本の番犬であります」と答弁した。


予算委で問題になり再答弁を求められた椎名は「失礼しました。それでは、番犬様です」と答えたことで有名だ。どっちも信頼できる「番犬様」と思っていればいいことでもある。


2+2の共同文書では、中国について「国際的な行動規範を順守し、急速に拡大する軍事上の近代化に関する開放性及び透明性を向上させるよう引き続き促す」と強調。さらに、「海洋における力による安定を損ねる行動」に対処する用意の必要性を確認、尖閣防衛の方針で一致している。


集団的自衛権の行使容認に向けた安倍政権の取り組みなどについては、米側が「歓迎し、日本と緊密に連携していく」と明記した。


この2+2をうけて、今後安倍政権は秋の臨時国会で国家安全保障会議設置法案とこれに連動する特定秘密保護法案の成立を図る。来年の通常国会で予算が成立するのを待って春にも集団的自衛権での解釈改憲に踏み切る。その上で来年末に締結することになった日米防衛協力のためのガイドラインの交渉に入る。


したがってガイドラインの中核となるのは集団的自衛権問題であり、安倍はこれに立ちはだかる公明党との調整を進めなければならない。


同党代表・山口那津男は先の訪米での米側の感触について帰国後「集団的自衛権をやれとは必ずしも言っていない」と報告していたが、事実誤認であった。むしろ2+2の結果は山口の恣意的な発言であったことを明確にしている。


公明党は結局政権にしがみつきたいのであって、政権を降りて日本維新の会にその席を譲る度胸はあるまい。妥協は目に見えている。


一方文書はオスプレイの沖縄における駐留・訓練時間を削減。米海兵隊部隊の沖縄からグアムへの移転を20年代前半に開始するなど沖縄の負担軽減への道も開いた。明らかに普天間移転を意識した沖縄懐柔策である。


知事・仲井間弘多は議会の答弁で辺野古への移転問題について「これは微妙と答えざるを得ない」と答弁した。民主党時代は怒りもあらわに「県外」一点張りだったが、自民党政権になって「微妙」にまで和らいだのは注目すべき変化だ。辺野古埋め立てに向けての年末の判断が注目されるところだ。


尖閣問題について国務長官・ケリーは「当事者に対して一方的な行動を取らないように強く求める。それより対話や外交で解決するべきだ」と日中双方に警告した。これはガードを堅めながらも偶発戦争に巻き込まれることを回避したい米国の立場を物語るものである。


軍事同盟強化の合意と二律背反で一見矛盾しているように見えるがそうではない。結局米ソ冷戦で米国がソ連に勝ったように、総力を挙げて同盟関係を密接にして、相手を追い込むというのがアングロサクソンの巧妙なる習性だ。そのうちに中国も内部矛盾が拡大して共産党1党独裁も崩壊すると見据えているのだろう。


それにつけても朝日の報道はどうしてこうひねくれているのだろうか。一面からだけ光を当てて「日米、同床異夢」と報じている。「同床同夢」の現実から必死で目を背けようとしている。これでは読者まで誤判断に導く。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年10月03日

◆小泉“原発ゼロ院政”は無理筋だ

杉浦 正章



「寂しい老人」は見守ってあげよう



中国のことわざに「騏(きりん=駿馬)も老いては駑(ど)馬に劣る」があるが、仮にも元首相に対してそんな侮辱的なことを言ってはいけない。日本のことわざでは「年寄りの達者は春の雪ですぐに消える」というが、そんな失礼なことも言ってはいけない。


むしろ「年寄りの強情と昼過ぎの雨はたやすくやまぬ」と言ってあげなければならない。「自民党をぶっ壊す」の小泉純一郎が狂ったように今度は「原発ゼロ」を唱え始めたが、71歳の年寄りに一から物の道理を説くのも、気が引ける。


言っていることは元首相・鳩山由紀夫の普天間基地発言「最低でも県外」とそっくりの“空想的理想主義”だが、鳩山は「ルーピーだからしょうがない」で済む。


しかし小泉は、名うてのアジテーターだから馬鹿なマスコミや、みんなの党あたりの政治家が利用しようと同調する。それではどうしたらいいかというと、「年寄りと釘頭は引っ込むがよし」などと言わずに、きっと寂しくなったのだから、静かに見守ってあげるしかない。そのうちに恥ずかしくなって自ずと引っ込む。


小泉は2011年5月頃から「原発の依存度引き下げ」を主張。今年の夏頃から「原発ゼロ」を唱え始めたが、マスコミにはほとんど無視されてきた。この無視に耐えられなくなって思いついたのがフィンランドの世界唯一の放射性廃棄物処分場「オンカロ」の視察だ。


日本では明治以来欧米の現状視察を背景に物を言うと、重みを持って迎えられることが分かっているからだ。案の定毎日のコラムが飛び付いて報道。これに勢いがついて膝小僧を抱えている政治家をアジったり、講演したりの毎日となった。


アジられたみんなの党代表の渡辺喜美は、催眠術にかかったのか大感激で「いますぐ決断しなければ間に合わないという小泉元首相の危機認識は我々も非常によく共有している。みんなの党は原発ゼロをずっと目指してきた。危機認識を共有する偉大な政治家が現れ、大変大きな勇気をいただいた」ともろ手を挙げて礼賛している。


小泉の第1の狙いは「寂しくなった」ので反原発発言で、マスコミや政界反対派にチヤホヤされて、晩年を多忙に暮らそうという魂胆だろう。反原発ならば「ニーズ」があるとにらんだのだ。しかし小泉は最初から政治判断を間違っている。


オンカロ視察に同行した財界人から原発推進の旗頭になるように求められて「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」と述べた。


これは甘すぎる判断だ。とてもバッジのない小泉如きが「院政」に乗り出せる状況にない。「原発戦争」でもあった昨年末の総選挙をもう忘れたかと言いたい。


小泉と同じように「原発ゼロ」で大衆を引き寄せられると判断した小沢一郎が、滋賀県知事・嘉田由紀子をだまして、「日本未来の党」を結成。嘉田は気色の悪い甘ったるい声で聴衆の気を引こうとしたが、選挙民はそれほど馬鹿ではない。


散々の結果であった上に、「原発再稼働」を唱えた自民党が294議席を取って圧勝、同党内で原発ゼロを公言するのはエキセントリックを絵に描いたような河野洋平1人にとどまったではないか。


再び小泉が「原発ゼロだ。この指とまれ」で政界再編を目指しても、与野党を横断した勢力の糾合などは夢のまた夢に過ぎない。出来るものならやってご覧と言いたい。資金など集まるわけがない。小沢の二の舞がいいところだ。


小泉は世界の潮流が見えなくなったのだ。今のところ北欧の小国が世界でただ一国だけ実験的に地下埋蔵を開始しているが、この流れは確実に世界各国に拡大して、より安全な埋蔵方法も合わせて研究され、実現していく流れだ。


見学したのなら同行した財界人が一致したように「この方向しかない。原発は大丈夫だ」と確信しなければならない。核廃棄物は地球に戻せばよいのだ。しかし「寂しい」が原動力になった“邪心”が逆に「原発ゼロ」のアジテーションに向かわせているのだ。


小泉は「原発を経済成長に必要だからといってつくるよりも同じ金を自然エネルギーに使って循環型社会をつくる方が建設的じゃないか」と述べているが、もう少し科学的知識と経済学の初歩を身につけた方がいい。それが不可能だから世界の潮流は「入原発」なのだ。


フィンランドなど視察するひまがあったら、中国やインドの原発建造ブームを視察した方がいい。より安全で災害やテロにも耐える日本製原発が今ほど必要とされているときはないことが分かる。小泉の「政府・自民党が原発ゼロを打ち出せば一気に雰囲気は盛り上がる。


そうすると、官民共同で世界に例のない、原発に依存しない、自然を資源にした循環型社会をつくる夢に向かって、この国は結束できる」発言に至っては、ルーピーの「尖閣中国領」発言レベルであり、舞い上がってしまったとしか言いようがない。夢を食ってこの国の経済は生きて行けないのだ。


政府・自民党は官房長官・菅義偉が「言論は自由」と皮肉ったように、発言をまともに取り上げる必要は無い。幹事長・石破茂も「再稼働は不動」と述べている。「原発ゼロ」で有終の美を飾ろうとするのは勝手だが、後輩が苦心惨憺して、原発回帰で日本の経済力を回復しようとしている事まで邪魔すべきではない。


元首相たるものは小じゅうと根性は捨てよと言いたい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年10月02日

◆消費増税の「賭け」は安倍が勝つだろう

杉浦 正章



支持率低下は避けられない


賽は投げられた。ついに渋渋ながら首相・安倍晋三が消費増税に踏み切った。海外にも大きな反響を呼び、英ファイナンシャルタイムズ紙が「賭け」と分析すれば、AFP通信も「政治的ギャンブル」と報じた。国内でも海外でもアベノミクスが腰折れか、乗り越えられるかの瀬戸際であると見えるからだ。

しかしこの賭けは安倍が7対3で勝つだろう。なぜなら追い風が吹いているからだ。15日からの臨時国会では野党は追及し切れまい。企業も法人税減税を人参としてぶら下げられたら協力せざるを得ない。


しかし、ただでさえ不人気の増税だ。高止まりを続けてきた内閣支持率はまず50%を割り、今後下落傾向に転ずるだろう。
 

安倍の打ち出した経済対策は来年度の消費税の収入5兆円と全く同額である。それも復興法人税の前倒し廃止や、公共事業が含まれ、将来的には法人税実効税率の引き下げも視野に入る。


確かに一見すれば、個人の負担に依存する消費税を引き上げておいて、220兆円も内部留保として貯め込んでいる大企業を優遇する構図に見える。もちろん安倍の目的はアベノミクスでデフレからの脱却を何が何でも成し遂げたいからに他ならない。


最終的には企業減税を給与に回して消費能力を高め、物価を上昇させ、企業の収益をふやすという好循環を達成したいのだ。ところが「庶民の増税、大企業の減税」の構図は国民を感情的にさせ、野党がこれに乗ずる隙を作る。

安倍は消費増税の予定通りの引き上げに難色を示し続けた結果、責任を一身に背負う構図での決断となった。先送りから実施への“翻意”に当たって安倍は周辺に「野田の仕掛けたわなにはまった」と前首相・野田佳彦に対して見当違いの“逆恨み発言”をしているという。


よほど先延ばしできなかったことが悔しかったに違いない。安倍は「増税が賃金に反映しなければ安倍政権は終わる」と漏らすほど思いつめた上での決断だった。


たしかに過去2回消費増税を断行した政権は、あえない最期を遂げている。竹下内閣はNHKの調査で支持率が7%まで下がり、つぶれた。橋本政権も各社の支持率が急落して20%台になり、結局は退陣を余儀なくされた。


安倍は就任以来高支持率を維持し、9月は東京オリンピック招致成功もあって61.3%と60%台を回復している。しかし支持率の順風満帆はこれまでだろう。増税に加えて大企業優遇措置は説明しなければ理解されないから、言い訳めいて政権にとって確実に不利に働く。支持率はまず当初は50%を割るだろう。


それに加えて不人気または国論を2分する政策がひしめいている。臨時国会での秘密保全法案や、年末の法人減税決断などがマイナスに作用する。集団的自衛権問題や憲法改正も国論を2分して、支持率にはマイナスに作用する。しかし高支持率の“貯金”があるから、低支持率には至らぬまま恐らく30〜40%前後の中支持率を維持できる可能性が大きい。


従って中期的には支持率が竹下、橋本政権の例のように政権を直撃する可能性は少ない。


一方野党の動きはどうかと言えば、消費税とこれにつながる経済対策を追及する方向だが、野党第1党の民主党の腰が定まらない。代表・海江田万里は「消費税を上げる場合は、社会保障制度の充実が1丁目1番地だと何度も繰り返してきた。安倍晋三首相が進めている消費増税は、かなり話が違う」として追及の構えだ。


確かに野党が追及するのに大企業優遇批判は通りやすい。しかし一般大衆の感情論をそのまま政治の舞台に上げて追及しても、ポピュリズムとしては成り立つが、経済論議としてはすぐに論破されやすい。焦点の復興特別法人税の前倒し廃止にしても、安倍が25兆円の復興対策予算を崩さないと言っているのだから、批判しにくい。


ましてや安倍は民主党政権時代に17兆円だった復興予算を25兆円に増額しているのだから、民主党も後ろめたいだろう。最大のポイントは民主党が消費増税そのものには賛成しているのであって、どうしても重箱の隅をつつく質問になる。

維新も最終的には消費増税賛成に固まる流れだ。あとはみんなの党や共産党など弱小政党ばかりであり、雑魚が跳ねてもたいしたことにはならない。


安倍の経済対策を成功させる鍵は企業が握っている。法人減税を給与に回すかどうかが焦点だからだ。経済財政担当相・甘利明は「企業に強制はできないが、背中を押すことはできる」と述べた。


甘利は政府、労働界、経済界でつくる「政労使会議」で経営側の理解を求める構えだ。また経済産業省は個別企業の賃金引き上げ状況を監視し、賃金アップにつなげていく方針だ。自民党も賃上げキャンペーンを全国で展開する。


企業がどう出るかだが経団連会長・米倉弘昌が「首相の英断」と発言する以上協力せざるを得まい。賃上げは来年の春闘で結果が出ることだが、企業の業績は相当好転しており、給与引き上げの余力が生じてきている企業も多い。


経団連など経済団体は、この際、悪名高き内部留保を、給与や設備投資に反映するよう働きかけるべき時であろう。過去にあったリーマンショックや山一証券の倒産などが、安倍の経済運営を直撃する可能性がないとは言えないが、総じて消費税の「賭け」は安倍の勝ちで終わるものとみられる。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年10月01日

◆再稼働後は原発新設・リプレーに転換

杉浦 正章



世界の潮流は圧倒的に原発依存だ
 

エキセントリックな原発再稼働阻止の越権行為を繰り返してきた新潟県知事・泉田裕彦がなぜか一変して常識的な「真人間」に戻ったように見える。東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働申請を認め、事態は来年春の再稼働に向けて大きく動き出した。


既に現在停止中の50基中14基が原子力規制委員会に再稼働の申請をしており、冬には再稼働が開始される。


しかし大きな方向としては世界一厳しい安全規制によって、50基の原発は20〜30基に減少せざるを得ない見通しが強まっている。ところが世界の潮流は圧倒的に原発依存の流れであり、日本は他国の原発を製造しているだけでは激しい経済競争に立ち後れる上に、アベノミクスも先細りにならざるを得ない。


現在のところは再稼働達成が最重要課題だが、中期的には筆者がかねてから主張しているように安倍政権は時期を見て原発新設または廃炉原発の新型へのリプレースを断行する方針を打ち出すしかない。


世界の原発市場はアジアを中心に今後20年間で100基を越える新設が予定されている。1基5000億円かかるから、100基で50兆円の大市場だ。既に首相・安倍晋三は成長戦力の柱と位置づけ、昨年前半はトップセールスを展開し、大きな成果を上げてきた。


しかしロシア、韓国、中国などがこの市場を虎視眈々と狙って既に動き出している。問題はその製品の質である。原発業界では「チャイナ・韓国リスク」がささやかれている。それはそうだろう。「墜落穴埋め新幹線事故」の例に見られるように、中国はまだまだ大型精密工業の段階にない。


韓国も売り出しに躍起だが、原発だけは低価格で競争すべきものではない。製品も質も最低の状況にあり、最近では偽造部品による建設が発覚して、国内23基中9基が停止を余儀なくされる事態に至っている。国内原発すら不良品では原発輸出などおこがましいのである。


チャイナ・韓国リスクの原発で東南アジアが席巻されたら、事故が起きれば偏西風で日本は影響をもろにかぶる。


そもそも輸出と言っても原子炉の中核中の中核である圧力容器は、事実上日本しか作る能力がなく、世界の原発市場の8割を制している。日本製鋼所が一手に引きうけているのであり、各国とも日本製圧力容器を使って輸出しようとしているのである。


翻って日本のエネルギー事情を見れば、国民は原発停止による電気料金値上げで青息吐息だ。化石燃料購入のために流出する国富は3.8兆円に達しており、国民1人あたり3万円に相当する。稼働しなければさらなる料金引き上げになり、製品コストは上昇する一方だ。


コストが上昇すれば、安倍がいくら法人税を引き下げて、給与を引き上げようとしても、コストに吸収されてしまい給与には反映しない構図だ。アベノミクスを成功させるためには、国富流出を防ぎ同時にコストを下げる原発を早期に再稼働させるしかないのだ。


このままでは消費税8兆円の半分の国富がアラブの石油成金諸国に吸い取られてしまうだけなのだ。


再稼働で浮かび上がる構図は輸出促進との関連が極めて重要なテーマとなって来ることである。輸出は世界一厳しい規制基準で、世界最高の技術が売りになるのであろう。しかし世界に安全で最高品質の原発を売り続け、日本の原子力発電が旧態依然のままということは中長期的視野に立てば成り立つことではない。


20〜30基が稼働しても、耐用年数40年の規制でやがては死を待つばかりの原発となってしまうのだ。アジア諸国が日本製原発で隆盛し、日本の原発だけが衰退の一途をたどる構図は洒落にもならない。


日本のエネルギー政策の根幹が成り立たないばかりか、アベノミクスの根底が崩れてしまうのだ。これは、政治がリーダーシップを発揮して原発アレルギーの度が“病的”にまで極まって思考停止にある世論を説得、誘導して方針の転換を図るしかない。


太陽光や風力発電など自然エネルギーが理想にしても、コストや稼働率から言って原発の比ではない。ベストミックスは一つの流れだが全エネルギーに占める自然エネルギーは現在1.4%に過ぎず、これが原発に取って代わる展望は現段階でも予見しうる将来でも存在しない。


こうして原発再稼働の先を見据えれば好むと好まざるとにかかわらず、安倍政権は、新設・リプレースの選択しかないのだ。だいいち規制基準に合格した古い原発が稼働を許されるなら、あえて反対派の好きな言葉を使えば「新安全神話」を達成しうる新型原発はなおさら稼働が許されなくてはおかしい。


安倍もかつては新設を語っている。昨年大晦日のどさくさで大きくは報道されなかったが、安倍は12月30日、TBS番組で今後の原発政策をめぐり「新たにつくっていく原発は、事故を起こした東京電力福島第1原発とは全然違う。


国民的理解を得ながら新規につくっていくということになる」と述べ、新規の原発建設を容認する姿勢を示しているのだ。今は発言を控えているが、本音はそこにあるのだろう。技術力はどんどん進歩する。


しかし将来に展望がない産業と若者が見限れば、世界に冠たる原子力製造技術の継承も人材の継続も続かなくなる。汚染水の問題を早急に処理して、再稼働から新設・リプレースへの流れを明示してゆくべきである。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月30日

◆安倍は集団自衛権へルビコンを渡った

杉浦 正章



米国は閣僚協議で「強い日本」支持の方針


国連総会で平和主義に「積極的」とつけて首相・安倍晋三が「積極的平和主義」と表明した狙いはどこにあるのか。明らかに集団的自衛権行使への憲法解釈変更を国際公約とすることによって、もう戻ることのないルビコンを渡ったことを意味する。


総会演説では深い言及を控えたが、タカ派シンクタンクでの演説が強くそれを示唆している。米政府は安倍の日米同盟重視姿勢を“本物”ととらえ、すぐに反応した。来月3日の日米外務・防衛の閣僚協議いわゆる「2+2」を「歴史的会議」と位置づけ、「強い日本を支持」する方針を明らかにしたのだ。


まるで中国国家主席・習近平と韓国大統領・朴槿恵の米国における反日宣伝活動に、半沢直樹ではないが「100倍返し」で応じたかのような訪米であった。安倍は国連総会は言うに及ばず、タカ派シンクタンクや、ニューヨーク証券取引所で思いの丈をぶつける演説を展開した。


日本の首相はNYでの国連演説はだいたい当たり障りのない発言をするので有名であり、歴代ほとんど無視されてきた。安倍の狙いはもちろん中韓両国に対するけん制の意味もあるが、NYタイムズやワシントンポストなどリベラル系マスコミへの「10倍返し」でもある。


ことあるごとに安倍を右傾化と批判してきた両紙などに「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのならどうぞお呼びください」と痛烈な一打を加え、中国の軍事支出と日本のそれを比較して見せたのだ。


さすがに自民党幹事長・石破茂は見るところを見ている。テレビで「首相が国際社会に強いメッセージを発するということは久しくなかった。海外での期待も高い」ともろ手を挙げて賛同した。まさに現在の日本にとって必要不可欠の“宣伝戦”参入であった。


一連の講演のなかで注目すべきは「ハドソン研究所」主催の会合での発言だ。国連演説で軽く触れた「積極的平和主義」発言の内容に踏み込んでいる。


まず安倍は「国連平和維持活動(PKO)の現場で、日本の自衛隊がX国の軍隊と活動していたとする。突然、X軍が攻撃にさらされる。しかし、日本の部隊は助けることができない。日本国憲法の現行解釈によると、憲法違反になるからだ」と述べた。


これまでの発言は米国へ向かうミサイル撃墜と並走する米艦防衛問題に絞ってきたが、PKO活動に踏み込んだのは新展開である。その上で安倍は「一層積極的な参加ができるように図ってまいります」と明言したのだ。


これは明らかに歴代政権が維持してきたPKO参加5原則の「武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られる」の規(のり)を越えている発言である。まさに最近政府が強調している「集団的自衛権行使は地域を限定しない」事にもつながる方向に踏み込んだ発言であろう。


米政府内部には日本のこうした安保上の大転換の動きを“眉唾”で見る空気があったが、どうやら信ずるに足る方針転換と見始めた感じが濃厚となってきた。


ホワイトハウス国家安全保障会議のアジア上級部長・メデイロスは27日記者会見し、3日に東京で開かれる日本とアメリカの外務・防衛の閣僚協議について、「強固な同盟関係を確認するため、日本と緊密に協力できることを楽しみにしている」と言明した。


さらに加えて「同盟関係をよりよくするための日本の取り組みはすべて歓迎する」と集団的自衛権への安倍政権の動きに明快に賛同した。加えて「2+2」協議でまとめられる共同宣言の中に「アメリカは強い日本を支持する」という文言が盛り込まれることを明らかにした。


この結果日本で初めて開かれる国務長官・ケリー、国防長官・ヘーゲル、外相・岸田文男、防衛相・小野寺五典の会談は、尖閣問題や北のミサイル、核実験問題など緊迫した極東情勢の中で、かってなく重要性を帯びてくることになった。


またこの米国の方針は訪米して集団的自衛権への要求が強くなかったとしている、公明党代表・山口那津男の“報告”を、根本から否定するものである。


ただ集団的自衛権の解釈変更の閣議決定は既報のように大幅に遅れる見通しとなってきている。最大の理由は、時局が消費増税や経済対策、アベノミクスの腰折れ防止、NSC設置法案とこれに連動する特定秘密保全法案など超重要課題が押せ押せとなってきており、安全保障上の大転換をするゆとりがないのが実情だ。


自民党内は半数を占める新人議員らへの納得のいく説明も必要だ。石破も29日「あまり早く処理しようとするとあれもこれもとなって、かえって仕損じる恐れがある。いっぺんに全部やると過積載トラックがひっくり返る」として「通常国会で一連の法案や予算成立のめどが立ち、4月の消費税引き上げが一段落した後になる」との見通しを述べた。


公明党の説得にも時間がかかりそうなことも背景にある。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月27日

◆企業には減税分給与反映を“強制”せよ

杉浦 正章



法人減税食い逃げは許されない


景気の腰折れを防ぐために政府・自民党がひねり出した復興法人税廃止はアベノミクスを軌道に乗せるためにもやむを得ないだろう。ただし消費増税を大企業の優遇措置に使うという印象はどうしても残る。これを解消するには、対象企業に一部統制経済的な手法を導入しても減税分の賃上げへの反映を強制するしかあるまい。


賃上げへの反映があって初めて効果が生ずる減税措置であるからだ。企業は抵抗する可能性があるが、血税が企業の内部留保に回っては、経済効果は薄まる一方であり、しっかりした歯止めをかける必要がある。


自民党税調に復興法人税の一年前倒し廃止を要請した政府側が、賃金への反映に疑問を呈したり、廃止を批判しているのだから苦肉の策であることは間違いない。


財務相・麻生太郎が「俺のセンスではない」と述べれば、経産相・甘利明は「減税が本当に賃金に回るかどうかという思いは皆持っている」というのだからどうしようもない。


しかし消費税先延ばし論を自民党から一蹴された首相・安倍晋三は、いまや「デフレ脱却の鬼」(官房長官・菅義偉義)と化してをり、法人減税実行でアベノミクスを死守する構えだ。


ニューヨークの証券取引所での演説でも「投資を喚起するためにも大胆な減税を断行する」と言明した。明らかに投資減税の拡充と復興法人税の廃止をまず実施し、これに続く本丸の法人実効税率の引き下げに攻め込む構えである。


この勢いを受けて自民党税制調査会長・野田毅は既に陥落している。22日に安倍から直接電話による説得を受け、ここで白旗を掲げたようだ。無理もない逆らえば次期内閣改造での入閣のチャンスを確実に逸するからだ。


従って自民党税調が26日野田に取り扱いを一任したということは、前倒し実施をするということにつながる。大局的に見れば確かに今の日本はアベノミクスを推進してゆくしかなく、安倍も民主党政権の時代より増額した25兆円の復興予算枠の堅持を表明しているのだからそれを信ずるしかあるまい。


復興法人税を廃止しても、他から資金をひねり出すならば問題はない。福島選出議員が、閣僚まで含めて異論を唱えているのは、選挙区向けで無理もないが、固執しすぎると日本経済の失速という、復興自体への大打撃に発展することを肝に銘ずるべきだ。


甘えた感情論を唱えているときではない。公明党もブレーキ役ばかり演じている。同党代表・山口那津男は口を開けば「国民の理解」と言うが、国民とは創価学会婦人部のことか。与党なら与党らしくすべきだ。


ただこれまで儲けをどんどん内部留保してきた大企業への減税であることは、政府も心してかかる必要がある。減税対象は企業全体の27%に当たる約71万社。すべて法人税を払える優良企業だ。法人減税は1%で4000億円の減収となり、2%あまりを減税すれば1兆円の減税となる。


企業に対する減税の総額は1兆6000億円規模となることが見込まれる。これをまた企業が貯金に回してしまう懸念がある。麻生は「企業に賃上げをやってくれと言う権限は自由主義経済社会ではあり得ない」と述べているが、そんなスジ論を言っているときではあるまい。


たとえ統制経済的な色彩を帯びても減税分をきっちり給与に回させる必要はあるのだ。


自民党副総裁・高村正彦が経団連会長の米倉弘昌に「賃上げにつながる道筋が見えないと国民の理解を得るのは難しい。一番大切なのは経済界の決意であり、『デフレから脱却するために賃上げする』という強い決意を示してほしい」と要請した。


しかし米倉は、「雇用環境も良くなっており、今後、経済成長によって企業業績が改善されれば、必然的に賃金に反映されると考えている」と答えるにとどめた。「必然的に反映される」ではまるで他人事のようである。認識が足りない。


このため政府・自民党内は具体的な歯止め策の検討に入った。甘利は企業に減税額の使い道を公表させる方針だ。減税分だけ給料が増えているかの公表を義務づけることを検討している。公表させればいくら何でも税金を内部留保しただけの企業はマスコミのやり玉に挙がるだろう。


一方で自民党税調は賃金を増やした企業の法人税を軽減する措置の対象拡大を決めた。現在、従業員の賃金を5%以上増やした企業の法人税を軽減している措置について、その対象を拡大する。


具体的には、昨年度を基準に、従業員の賃金を、今年度と来年度は2%以上、再来年度は3%以上、そのあとの2年間は5%以上を増やした企業の法人税について、賃金の増加分の10%を軽減する。こうした硬軟両様の構えで減税の効果を上げる方針だ。


既に安倍はボーナスアップを企業に求め、これに応じた企業も多く、よほどずるがしこい企業以外は減税を給与に反映させてゆくものとみられる。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月26日

◆機密保全は安全保障のイロハのイだ

杉浦 正章



早期に法案成立を図れ
 

例えばNSC(国家安全保障会議)を運営する米・英・仏の三国が、その機密漏洩の厳罰があるが故に報道の自由が制約されて、民主主義が危機に瀕しているかということだ。三国とも全く健全なる民主主義国家であり、報道の自由は十分保障されている。


共産党や朝日新聞が反対しているNSC設置法案に伴う特定秘密保全法案は遅きに失したというべきものであろう。罰則強化による情報管理は国家にとって当然の責務であり、中国、北朝鮮、テロリストなどの情報が欠如した結果、何万人、何十万人の犠牲者を出してからでは手遅れなのである。
 

米国を始め主要国でとかく言われているのが「日本に機密情報は教えられない。漏れる」ということだ。その例証を挙げれば日本の取材・報道史上の最大の汚点の一つである西山事件であろう。


同事件は第3次佐藤内閣当時、米ニクソン政権との沖縄返還協定に際しての密約を毎日新聞社政治部の西山太吉が非合法に取得して日本社会党議員に漏洩した事件である。その取材方法は外務省高官の秘書と情を通じ「肉体関係があったため被告人の依頼を拒み難い心理状態に陥つたことに乗じて秘密文書を持ち出させた」(最高裁判決)という手口であった。


結局最高裁で有罪が確立した。こうした教唆・そそのかしの罪は刑法61条で罰せられる。今回の秘密保全法案は国家公務員が「特別秘密」を漏らした場合には「10年以下の懲役」とする厳罰化が柱となっているが、取材する側も教唆犯の思想が取り入れられて同様の厳罰があり得る。
 

マスコミなど取材する側はこの点を懸念する論調が多く、読売、産経などは報道の自由を担保した上での実施論だ。朝日は現行法規の厳格な運用で対処すべきという社説を掲載している。政党では共産党が「秘密保全法は軍事体制への流れ」(国対委員長・穀田恵二)と真っ向から反対の構えだ。


連立内部では公明党も慎重姿勢だ。これに対して政府・自民党は、西山型の教唆・そそのかし取材のケースなどは厳罰を適用するものの、法案に「報道の自由を保障する規定を明記する」ことにより通常取材には影響が生じないように配慮する方針だ。


官房長官・菅義偉も報道・取材の自由は「十分に尊重する」としている。幹事長・石破茂も「法案は報道の自由に配慮する。基本的人権を侵害するものにはならない」と述べている。 
 

安倍政権が「特別秘密」にこだわるのは、これがNSC設置法案にとって必要不可欠であるからだ。外交・安保の司令塔となるNSCは米国では1947年に設置され、英国では2010年にキャメロン政権が設置している。いずれも有事に不可欠の存在として機能している。


安倍としては「防衛」「外交」「諜報活動の防止」「テロ活動の防止」の4分野に限ってその機密漏洩に厳罰をかけることにより、米、英、仏などのNSCと連携を取りやすくしたい思惑がある。米国と同じ懲役10年の最高刑を設けるのもそのためだ。


この外国からの機密情報に加えて、省庁の情報もNSCに届きやすくする必要がある。ただでさえ外務省や防衛省は情報管理が厳しく、首相官邸に対してすら情報を出し渋る傾向がある。下部組織が機密漏洩を懸念しているようでは、NSCは全く機能しない屋上屋を重ねるものにならざるを得ない。


従って重大な国家機密の漏洩に対する厳罰化は必要不可欠なのである。これまでのように最高刑が懲役1年では緩みが生じることは避けられまい。国内外の情報をNSCがまず入手できる体制を確立するためには、NSCの情報管理が厳しいという証左を内外に向けて打ち立てる必要があるのだ。


そしてこの機密漏洩の厳罰化は普通の国家が普通のこととして行っているものであり、安倍政権が突出しているケースではない。


共産党は真っ向から反対するが、自らの過去を顧みるがいい。ソ連を初めとする他国の共産主義者と連携を取って情報を流出させ、一時は社会主義革命を起こそうと狙ったではないか。今は猫をかぶっているが、そのような過去のある政党が、「軍事体制への流れ」を指摘する資格はない。


そもそも戦後70年近くなって、日本の民主主義は定着しており、選挙を経て成立した政権が行おうとしていることである。もちろん報道の自由は民主主義の根幹であり、厳しく監視しなければならない。


しかし緊迫する極東情勢や世界中にテロが横行する時代である。情報の掌握度によって国の安全保障の強弱が確定することを肝に銘ずるときだ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月25日

◆安倍が集団自衛権導入を来春に先送り

杉浦 正章



オリンピックへ「極東デタント」を模索


政府自民党筋の情報を総合すると首相・安倍晋三は今秋にもと想定していた集団的自衛権行使容認への憲法解釈変更を、来年春以降に先送りする方針を固めた。


背景には10月中旬の臨時国会では国家安全保障会議(NSC)設置法案など安保関連の重要法案がひしめいており、解釈変更に反対する公明党とのあつれきを拡大させることはまずいとの判断がある。さらに加えて尖閣問題も膠着状態にあり、オリンピック開催に向けて“極東デタント”を模索することを優先させたものとみられる。


集団的自衛権容認に向けて、安倍の当初の構想は、秋にも安保法制懇の報告を受け取り、年末の防衛大綱で解釈の変更を明示して、通常国会に「国家安全保障基本法案」を提出、「解釈改憲」への道筋を確立しようというものであった。


ところが22日になって政府・与党の空気ががらりと変わり始めた。石破がまず国家安全保障基本法案について、国会提出が来年の通常国会以降になるとの見通しを示した。「公明党の理解もなしに、秋の臨時国会に法案を出せるという話にはならないだろう」と述べたのだ。


さらに集団的自衛権の行使容認に向けた公明党との協議について、協議開始は大綱策定後の来年になるとの見方を示した。これと口裏を合わせるように安倍も22日のテレビで、憲法解釈変更の結論を年内に出すかと問われ、「いつまでにということではなく、議論がまとまるのを見守りたい」と述べ、安保法制懇や与党内での議論を踏まえて判断する姿勢を改めて示した。


この先延ばし方針について官邸筋は「あれもこれもと間口を広げすぎては、あぶはち取らずになりかねないので、首相と幹事長が調整したのだろう」と述べている。


確かに臨時国会だけを見てもNSC設置法案と
これに関連する秘密保全法案。さらにはアベノミクスを仕上げる産業競争力強化法案など超重要法案がひしめいている。


同筋は「これだけで年末までかかってしまう」と述べる。加えて絶対平和主義の公明党代表・山口那津男が両手を広げて立ちふさがっており、早期解釈変更に突っ走れば、直ちに法案成立に影響が出かねない側面がある。


さらに加えて中国や北朝鮮、韓国など周辺諸国の動向も、変化の兆しを見せてきている。北の核とミサイルのどう喝は米韓合同演習の終了と共に沈静化した。尖閣問題も一時のレーダー照射ほどの事態はその後発生せず、緊迫は高止まりのまま膠着状態で推移している。韓国との関係も徐々に解きほぐさざるを得ない情勢にある。


安倍政権は内政外交に渡って多方面作戦を強いられてきているのだ。おまけに東京オリンピックの開催が七年後に設定されたことは、政権にとって必然的に「極東デタント」の必要を認識せざるを得ない情勢となった。


周辺諸国と緊張状態を維持したままでオリンピックは開催できない。モスクワオリンピックがソ連のアフガン侵攻でボイコットされたように、オリンピックの成功は周辺諸国との協調が最重要であるからだ。


こうした情勢の変化をもとに安倍は、日本側から周辺諸国を刺激することは当面避けようという判断に傾いたものとみられる。ただ石破は「年末までに防衛計画の大綱は決めなければならない。これが1番急ぐ」と述べている。防衛計画の大綱の中核は集団的自衛権の導入にあり、それがなければ大綱を改正する意味がなくなる。


しかし閣議決定には公明党の賛同が不可欠であり、その説得をどうするかが焦点にならざるを得まい。従って勢い公明党との調整は、公式な協議とは別に水面下に潜らざるを得ないことになるものとみられる。


こうして安倍は内閣最大の看板の一つを、先延ばしせざるを得ない事態となったが、法制局長官を更迭して、安保法制懇をスタートさせ解釈変更への環境は着々と整えており、あとは公明党が納得する“歯止め”をどう調整するかが焦点だ。


政府部内では国家安全保障基本法で「集団的自衛権行使の国会承認」をより一層強調することや、NATOの集団的自衛権のように地域を限定する構想などが妥協案として考えられているようである。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年09月24日

◆先延ばし論で「安倍消費増税」化した

杉浦 正章



責任は一手に安倍にふりかかる


中国のことわざに「よく泳ぐ者は溺れ、よく乗る者は落馬する」があるが、首相・安倍晋三による消費税のハンドリングはまさにそれだ。結果的に憎まれ役の増税役を一手に引きうけてしまった。


政治的に見れば安倍は「三党合意責任」を「自らの責任」に転嫁してしまうという、わざわざしなくてもいい「決断」をせざるを得なくしてしまったのだ。アベノミクスの成功に舞い上がった政治を知らないブレーンの「先延ばし論」に傾斜してしまったのが失敗だった。この結果いわば政治全体の責任であった「3党合意消費増税」は「安倍消費増税」となり、その結果責任もすべて安倍に降りかかる姿に変ぼうしたのだ。



安倍は来月1日に消費税率を来年4月から現在の5%から8%に引き上げることを「決断」する。別に「決断」する必要のなかったことを自ら「決断」する事態に追い込んでしまったのだ。そもそも消費税は昨年8月の3党合意で決着を見ているのであって、首相の最終判断は付けたりであった。


消費増税の附則第18条は「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」とあり、あくまで首相の総合判断のうえでの最終決断を求めるものであったのだ。その総合判断はリーマンショックなど経済動向を左右する重大事態が発生した場合を想定したのだ。万が一の事態発生を懸念した上での「景気条項」であったのだ。


なぜ安倍が極端なまでにこれにこだわったかといえば、アベノミクスの大当たりが紛れもなく背景にあった。無理もない。民主党政権で断末魔のあえぎを見せていた、日本経済がアベノミクスで上昇機運が生じてきたからだ。これをはやす声は国内に満ちあふれ、首相官邸はごますり詣でがひっきりなしとなった。


安倍は天下御免の水戸黄門の印籠を手にしたと思ったのだ。それを掲げる助さん、角さんがブレーンの官房参与・浜田宏一と本田悦朗であった。両者は代わる代わるに印籠を掲げて「これが目に入らぬか」とやったものだ。


ところが政治素人の学者には政治の限界が目に見えなかった。過去政治が消費増税に使うエネルギーは、並大抵のものではなかった。大平正芳が一般消費税導入を口にしただけで選挙に大敗、竹下内閣が吹き飛び、橋本内閣も退陣に追い込まれ、最後に野田内閣も総選挙を経て政権交代になった。


その野田にしてみれば、自分のクビと差し替えの消費増税達成であり、「バッジを外す覚悟があったからこそ、達成できた」と述べているとおりだ。その消費税をいくら「アベノミクス様」であれ、印籠かざしてひざまずかせる事は不可能であったのだ。


安倍は実施すべき消費税を受け継いだのであり、最初から「決断」は宿命的に避けられないものであったのだ。それをブレーンはともかく安倍自身が先延ばしにできるとの判断に傾いたことは、政治家として甘いとしか言いようがないものであった。


普通政治家は既に決着済みの重大事項にあえて固執して、事を荒立てるようなことはしない。そのエネルギーを他に回すのが常だ。野田が「3党合意で法律を作ったのに、そもそも論から始めてはいけない」と述べている通りだ。


ここで重要なポイントは、何も消費増税で経済対策をするのなら、わざわざ消費増税の可否を盾にとって実現させる必要も無かったということだ。首相なのだから実施の判断を10月にしてから、必要な経済対策を財務省に指示すればよいのである。それをしないであわよくばの先延ばしを狙うところに冒頭の「よく乗る者の落馬」があったのだ。


こうして安倍は起こす必要のない事態をわざわざ巻き起こした。安倍自身は消費増税のリスクについて「10月上旬に判断する私の責任だ。結果にも責任を持たないといけない」と述べたが、その責任はいったん先延ばしにぶれたが故に、一身にかかってくることになってしまったのだ。


3党合意のせいにすればよいものを、自分のせいにしてしまったからである。順風満帆の安倍政権が見せた“弱点”はアリの一穴にならないとも限らない。


生活の党代表・小沢一郎のブレーンで元参院議員の平野貞夫はテレビで「4月に消費税を上げた2〜3か月後に政治が動く」と予言をし始めた。これを聞いた元代表・小沢一郎は「いや10月に決定するのだから、その時点で影響する」とより早い「政局」への連動を予言する。


こうして消費増税問題は、臨時国会を皮切りにぶり返しが避けられない見通しだ。とりわけ福祉目的税であった消費税を法人税引き下げで食いつぶすような方針を安倍が掲げていることは最大の弱点となろう。野党の批判は国民に通じやすいのだ。


法律は成立しているから野党の追及にも自ずと限度があるが、消費税法は2段構えであり、15年10月にはさらに2%引き上げて最終的に10%とする。これを安倍が成し遂げる余裕が残っているかは予断を許さない。


安倍自身「経済は生き物だ。(8%に)上げた場合、その後の推移を見ながら判断しないといけない。世界経済のさまざまなリスクが顕在化するかどうかも重要なポイントだ。そういうものもよく見て判断していかないといけない」と、今度は今から及び腰だ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)