2013年03月29日

◆石原入院長期化で維新“きしみ”増大

杉浦 正章

 

政界流動化・再編の兆しも
 
まだどうなるかは断定できないが、石原慎太郎が共同代表としての機能を果たせなくなると言うことは、日本維新の会の国会におけるたがが外れるということだ。


たがが外れれば共同代表・橋下徹の大阪系と国会議員団代表・平沼赳夫中心の旧太陽系の亀裂が強まり、逆に民主党の前原誠司らとの合流の流れも出てきやすくなる。


永田町では政界は維新を軸に再編含みで推移しかねないとの見方が広がっている。その場合、民主党元代表の前原誠司の動きが一番注目される。石原の長期入院がもたらす影響は大きい。
 

慎太郎の入院の経過を見ると、政界大物の最後の入院劇と同じパターンを辿っている。たいていが風邪で入院だ。池田勇人の場合は「前がん症状」だったが、咽喉がん。大平正芳の場合は不整脈だったが心筋梗塞といった具合だ。発表などはまるで当てにならない。


石原の場合怪しいのは2月22日に入院して、分かったのは3月2日だ。風邪なら隠すことはないのにひた隠しにしていた証拠だ。その後3月4日に橋下が電話して通常に会話している。


同19日に平沼が「近々復帰される」と22日の本会議に出席する方針を明らかにしたが、実現せず。最近は「今週いっぱい入院。30日の党大会に出席」が「党大会出席延期」だ。この大阪での党大会に出席出来ないことは、今後の石原の病状を占うキーポイントであるかもしれない。
 

このように揺れに揺れているのはなぜか。まず確かなのは、冗談だが「まだ生きている」ことだろう。いくら「石原天皇」でもいまどき秦の始皇帝のように1か月も死亡を隠せるはずはない。


しかし永田町には脳梗塞説や膵臓がん説といった際どい情報が流れている。元首相・菅直人が小ずるいことに「脳梗塞だってぇ」と、尋ねるようにして情報を流布したという説もある。


だが、病気の詮索などはどうでもよい。まず政治家は動けるかどうかで判断することが先だ。それではどのような状況下で「生きている」かだが、強気と弱気のまだら状態ではないか。「よし、出かけるぞ」と言ったかと思うと「やっぱりやめた」の繰り返しだ。


これが情報を錯綜させているのだ。2月12日の衆院予算委の代表質問を最後に「精神的に燃え尽きた」可能性がある。
 

80歳の石原はかねてから「命ある限り暴走老人でいく」と述べ、しきりに寿命が長くないことを自ら示唆するとも受け取れる発言を繰り返している。


維新の前宮崎県知事・東国原英夫に至っては「石原さんが最初に銛(もり)先になって行く、死んでも行くとおっしゃったから、たぶん、あと数年の命だと思う。」と、いくら石原が嫌いでも“失礼”すぎる発言をしているが、何か情報があったのかも知れない。


週刊新潮が28日報じた中で一番信用出来る部分は、親友で首都大学学長・高橋宏の発言だ。高橋は3月10日に電話して、石原と話をした。石原は「気の合う何人かで酒飲んで学生時代の歌でも歌いたい」と述べていたという。極めて弱気になっていることが浮き彫りとなる。


高橋は「あいつは落ち込んでいて『都知事を辞めたのは間違いだった』と述べていた」「いまは男の美学というか引き際のタイミングを計っているのではないか」とまで述べている。要するに石原は親友には初めて本音で“泣き”を見せたのだ。
 

こうした報道が明らかになった28日、永田町では維新分裂説や政界再編説が一挙に流布し始めた。もともと維新には大阪系と旧太陽系の構造的な対立がある。橋下が内弁慶で大阪にとどまっているから、締まりが利かないのだ。


総選挙後も維新の要職は旧太陽系がほぼ独占した。最近では日銀総裁人事で橋下が反対を唱えて、国会議員団と衝突。もっと深刻なのは選挙制度をめぐって、橋下が小選挙区制を主張しているにもかかわらず、太陽系の園田博が中選挙区案を決定して、抜き差しならぬ対立の側面を見せ始めている。
 

橋下にしてみれば、「西は橋下、東は石原」で選挙をやってみたものの、石原効果は全く生ぜず、大きな誤算を経験した。しかし国会議員団を束ねるには石原の“重し”が不可欠であった。その石原が“男の美学”で引き際を模索しているようでは、たがを一から締め直さなければならない。


永田町ではいまドラスティックな再編構想がささやかれている。橋下が太陽系を切って、民主党の前原系を取り込もうとしているというのだ。前原が手勢を連れて維新と合流するというのだ。


これに前首相・野田佳彦も乗るかも知れないという説までがまことしやかに語られている。前原は否定しているが、棺桶に片足を突っ込んでいる民主党にいては展望は開けない。橋下が呼びかける以上、踏み切った方がいいことは間違いない。
 

いま維新は衆参で57人、このうち太陽系は17人。太陽系は老人ばかりでイメージが暗く、維新の革新気風とは全く相容れないが、前原が合流すれば、イメージが一新される可能性がある。


このような情報が流れる背景には、石原が政治的には“死に体”とみなされ始めた証拠である。落ち目になると風雲児石原が懐かしくなるが、毎度繰り返すとおり、尖閣の火付け役で晩節を汚した。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年03月28日

◆区割り理想主義は政治を壊す

杉浦 正章



民主は0増5減から逃げるな
 
広島高裁の無効判決を即時に「恣意的な突出判決」と書いて孤軍奮闘しようと思っていたら、百万の援軍が来た。読売が27日付社説で無効判決を「無責任」、即時無効判決を「乱暴すぎる」と真っ向から批判した。


さすがにナベツネ王国だけあって、バランスのある判断をする。そもそもマスコミの裁判所担当は社会部であり、社会部は「政治家は悪」の思い込みが激しく、逆に裁判官の声は「天の声」と無批判に押し頂き崇拝する習癖がある。


だから編集局長が愚鈍だと社会部席巻の紙面となる。ほとんどの新聞・テレビがこの傾向を見せたが、さすがに読売は平衡感覚がある。
 

自民党からも判決を下した二人の裁判官に対して「時々おかしな判断をする種族だから」という声が漏れ聞こえる。たしかに、裁判官は時に“法匪”となる傾向がある。法匪とは法律を詭弁的に解釈して、自分に都合のいい結果を得ようとする者だ。


裁判所も一時これを反省して、マスコミに判事を「研修」に出したことがあった。しかしおかしな判断の「種族」が違憲判決を出した14人中2人もいることは、一般社会のおかしな人の割合より格段に高い。困ったものだ。
 

最大の注目点は14の違憲判決の中で1票の格差について何倍までが合憲かときっちり指摘できたケースがない事だ。うやむやのままどんぶり勘定で判断を出せることだろうか。


先に指摘したように76年と85年の最高裁の違憲判決では格差が4倍から6倍もあったのに、「無効」判決はなかった。司法は国権の最高機関たる国会に対して抑制的であったのだ。


「100万の援軍」には山梨県知事・横内正明も参加してくれた。法務副大臣の経験もある横内は「地方は人材を育成して大都市に送っている。大都市が存続するためにも地方は必要不可欠で、地方を大切にするべきだ」と述べている。まさに至言である。我が国の政治にとって地方はまさに人材の宝庫である。


明治以降62人の首相のうち人口密集の大都会出身の政治家は人口比で見て極めて少ない。単純に多い順で山口8人、東京5人、岩手4人、鹿児島3人、大阪2人といった具合だ。首相の出ていない県は、兵庫、奈良、和歌山、鳥取で、その他の県は一人は出している。東京は戦後は菅直人しか出していない。


大震災への対応を間違え、“偉大なる”鳩山由紀夫に次ぐ失政連発首相である。狡っ辛い大都市は、狡っ辛い政治家を生み、大政治家の養成に適さないのだ。従って格差を1倍などにしようものなら、東京や大阪、名古屋出身の馬鹿政治家ばかりが輩出して、我が国政界は手の施しようがなくなる。区割り理想主義は政治を壊すのだ。
 

裁判官はこうした政治のイロハを身につけて、バランスある判断をすべきであり、「1倍」達成を意識した「無責任」判決を出してマスコミにはやされて悦に入っているときではない。


従って、政治の対応は、昨年暮れの与野党合意に基づく「0増5減」で、格差を2倍以下に抑えることで十分だ。28日に政権与党は0増5減法案の提出と早期成立の方針を決める。野党もこれに賛同すべきである。


判断力のない政党はマスコミの“顔色”を見て、方針を決めるが、民主党がその筆頭になりつつある。前副総理・岡田克也がはやくも0増5減に反対ののろしを上げている。正式な与野党合意を踏みにじってまでも、マスコミの顔色をうかがう姿勢は卑しい。


自民党総務会長・野田聖子が「理想を言い出せば切りがない。限られた国会の日程の中でできることをしっかり果たす」と、述べている姿勢が正しい。
 

ただ幹事長・石破茂の選挙制度改革に関する発言には引っかかる。比例30減の案についてテレビで「わが党が一番減る。それでもやるというのは自民党は変わった。自分たちがたとえ損してもやるという案は見識だ」と自画自賛している。


何も知らない国民はだまされる。自民党案などは野党の反対で成立するわけがない。それを承知の上での発言なのだ。ぐちゃぐちゃになって、結局選挙制度審議会任せにする所が落ちだろう。石破や公明党がいつ本音を吐くかが見物だ。


ぐちゃぐちゃになったあと必ず本音を吐く。おまけにここは定数減競争で、バナナのたたき売りをする場面ではない。格差の是正が求められているのであり、場当たり的な定数減とは基本的な方向が違うのだ。


さらなる問題は自民党案が公明党優遇を狙って比例区1位への投票の一部をを2位以下に回すことだ。かねてから指摘しているように、優遇枠の設定は、「1票の価値の平等」という観点から憲法違反の疑いが濃い。


まるで違憲判決に違憲選挙制度で対処する様相であり、誰が見ても噴飯物なのだ。石破は政治をごまかしてはいけない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月27日

◆仲井間は普天間移転の原点に戻れ

杉浦 正章

 
マスコミの感情論に流されるな


もともと沖縄県知事・仲井間弘多は、焦点の普天間移転に賛成であった。それがなぜ豹変したかと言えば、一にかかって愚かなる鳩山由紀夫の「海外、最低でも県外」発言にある。これを活用する形で仲井間は10年に再選を果たしたのだ。


しかし、極東情勢は尖閣問題と北の核実験で急変しつつある。日米安保体制に揺らぎが生ずることはいまや危険極まりないものとなっており、一自治体の長であっても、大局を見逃してはならない。


原点は普天間の危険から住民を守ることにあったはずだ。仲井間は要求を拡大せず、感情論でなく時代を見据えた対応を取るべきであり、すべてを「鳩山以前」に戻して、埋め立てに同意すべきだ。
 

防衛省が22日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う公有水面埋め立てを沖縄県に申請した。これを受けて仲井間は今後10か月前後で容認かどうかの結論を出す。


仲井間は県外移転を主張しているものの、即座に反対の発言はせず、「内容をチェックして判断するには8カ月から10カ月かかる。それを経て承認するか、しないかということになる」と一応賛否には踏み込まない姿勢を示している。


だが、現実には仲井間は身動き不能状態に置かれているのであり、いかに鳩山の“放火”が罪深いものであるかを物語るものとなっている。


しかし、仲井間は本当の政治家ならここは原点に立ち返る努力をすべき時である。原点とはまずそもそもの仲井間の立ち位置は普天間移転で当選してきているのだ。


2006年の沖縄県知事選挙に、自民・公明の推薦で当選。2010年11月の知事選は、自民党、公明党・みんなの党の推薦を受け当選している。支持母体が長年普天間移転で沖縄に根回しを続け、民主党政権が打ち壊さなければ、知事も国も移設容認寸前までいっていたはずの話しなのである。


2008年に米軍兵士が暴行・強姦容疑で逮捕された事件でも、仲井間は普天間移設計画には「全く影響しない」と語っているのだ。
 

仲井間の当初の判断の背景には、明らかに沖縄全体の負担減があった。なぜなら普天間移設構想は人口密集地から少ない地域への移設であり、沖縄の悲願でもある。移設と連動して海兵隊の一部のグアム移転が進められ、加えて嘉手納以南の米軍施設の統合整理が実現する。


浦添市の牧港などの先行返還も期待される。紛れもない負担減が沖縄全体で実現するのであり、大きな利益となるものだ。繰り返すがそれをぶちこわしたのが無責任極まりない鳩山発言である。これが感情論を呼び起こし、マスコミに付け入る隙を作った。


もともと現地の琉球新報と沖縄タイムズは、住民への“扇動競争”で生き延びてきている。元防衛相・小池百合子が26日、「戦っている相手は沖縄のメディア。むしろ沖縄のメディアの言っていることが本当に県民をすべて代表しているとは、私ははっきり言って思いません」と述べているが、まさに勇気ある至言だ。


これに朝日新聞が加わっている。その論調は感情論をかき立て、日本のよって立つ基盤である日米安保体制などは眼中にない。
 

著しい例が23日付の朝日社説だ。これこそ感情論の権化のような稚拙な社説であった。さわりを紹介すれば「安倍政権は米国への配慮を重ねながら、沖縄の人々の心情を軽視しているとしか思えない」と感情論を臆面もなく打ち出した。


加えて「政府の小手先の対応で県民が容認に転じるとは考えにくい。知事が『ノー』と言ったとき、その責任を、首相は自ら取る覚悟はあるのか」と開き直りの恫喝だ。怒りを臆面もなく前面に出しているが、そこには説得力がない。


なぜないかと言えば、あえて触れない重要ポイントがあるからだ。尖閣や北の核実験をめぐる極東の危機、かつての仲井間の容認論、民主党政権の大失政、普天間自体の危機的状態の解決策、嘉手納以南の返還の利益、漁協など地元の賛成論など都合が悪いものには一切触れていない。


失敗したときの首相に退陣を迫っているが、朝日は原発ゼロを煽ったものの、総選挙で有権者が逆の原発容認の選択をしたことをあいまいのまま放置している。その責任を取って社長が辞任したかと言いたい。


要するに、沖縄は地政学上の軍事要衝なのであり、何をしでかすか分からない隣国が複数存在する限りにおいては、自治体の長も住民も甘受せざるをえない宿命を負っている。一朝有事の際に本土から出撃していては間に合わないのである。国家あっての自治体であり、いまこそこれを直視しなければならない時なのである。


72歳の仲井間は軽い脳溢血を起こしたり、胆石の手術をしたり、その心身の疲労は耐えがたいものがあるのだろう。立場は同情してもあまりある。


しかし、自ら選んで知事に再選された以上は、矮小(わいしょう)な感情論を排して中央の政治家でも困難な大局的な判断をすべき時だ。


まず最初に原点の「普天間移転ありき」の判断でことを一歩前進させ、歴史に名をとどめるべきである。国と自治体の将来に向けて私利私欲なしの“最後のご奉公”をするときだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月26日

◆広島高裁判決は最高裁では維持されない

杉浦 正章

 

恣意的な突出無効判断

いやはや訴訟を起こした弁護士も「勝訴」の垂れ幕も用意せず、「無効のときのコメントは用意していなかった」と述べるほどの 予想外の判決であった。


「違憲かつ無効」とは、まるで昨年の総選挙がクーデターであったとい言わんばかりである。この判決を下した広島高裁裁判長・筏津(いかだつ)順子の顔が見たくなって、ネットを検索したが、ヒステリーとも思えない顔をしていた。ごついが温和そうなフツーのおばさんであった。


しかし戦後初の無効判決は、明らかに突出している。したがって最高裁判決では維持されないだろう。判決は1高裁の「警告」でしかない。それも恣意的な目立ちたがり判決の性格を持つ。政府・与党は、0増5減法案を早く成立させるだけだ。


政治的に見れば広島1区と2区の該当議員は明らかにとばっちりを受けた。両区とも1票の格差は最高裁の判決で違憲とされた2.3倍より遙かに低く、外相・岸田文男の1区で1.54倍、2区は1.92倍だ。合憲の範囲内で選挙をやって「無効」にされたのではたまるまい。


最高裁がこれまで76年と85年の違憲判決で「無効」と断じなかったのは、違憲性は区割り自体にあり、当該選挙区の議員だけが割を食うのは避けたいという判断があったからだ。2区の平口洋が「無効というのはちょっと踏み込みすぎではないか」と不満を述べるのももっともだ。


それどころか自民党内には「 到底受け入れられない不当判決」「国会の独立性を揺るがしかねない行為だ」という批判が生じている。このあたりが本音だ。


最高裁がこれまで「無効」と判断しなかったのは、裁判官の間で司法は国権の最高機関たる国会に対して抑制的に対処すべきと言う思想が定着していたからに他ならない。当時は中選挙区制だったが格差は4倍から5倍もあり、計算方法によっては6倍に達した例もあった。にもかかわらず抑制的であったのだ。


今回の場合、たかがとは言わないが、2.3倍であり、それも昨年末の与野党合意で0増5減法案が成立、これに基づき28日には衆院議員選挙区画定審議会から区割り見直し案が勧告される予定だ。これに基づいて政府・与党は法案を早期に提出、成立を図る段取りになっている。


高裁判決に対して最高裁がどう出るかだが、「突出判決」を維持する流れではない。最高裁が無効判決を出す場合は、1選挙区の違憲性の判断ではなく、区割り全体の違憲性を判断するから、訴訟全選挙区を無効にするというのが一般的な見方だ。


そうなれば、安倍は解散に踏み切らざるを得ないことになり、せっかく安定軌道に乗ろうとしている国政が大渋滞する。さすがに地方の裁判官の近視眼的な判断ではなく、最高裁判事ともなれば“偉い”のだ。正確に言うと総合判断力があるのだ。だから「広島踏み込みすぎ判決」はまず99%維持されない。


政府・与党はもたもたしているときではない。“偉い”最高裁判事の心証を良くするためにはとりあえず、0増5減を早く成立させることが肝要だ。


面白いのは、小沢一郎が、一連の違憲判決を見て首相・安倍晋三が「好機ととらえて夏に衆参ダブル選挙があり得る」という情報を流していたかと思ったら、また党首で発言する者が出てきた。みんなの代表・渡辺喜美が「衆参ダブル選挙も考えなくてはいけない」と述べているという。


自民党支持率40%。内閣支持率70%。いまダブルをやれば自民党単独で300議席突破。相乗効果で参院のねじれも一挙に解消する。まさに絶好の機会ではあるが政治は奇道を選んではならない。


大道を選ぶべきだ。渡辺の軽さは広島高裁の判決に勝るとも劣らない。まさに鴻毛のごとしだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年03月25日

◆「安倍長期政権」の予感

杉浦 正章


破竹の勢いVs馬糞の川流れ
 

首相・安倍晋三の「野党は10年待て」発言が、早くも自民党政権の“増長の兆し”を示しているが、まだ当分その反動が表だって生じる気配にはない。総じて政権は破竹の勢いである。民主党は脳しんとうのまま、意識は回復しないかもしれない。


野党は馬糞の川流れでばらばらである。マスコミは朝日新聞などが隙あらばと狙っているが、経済が上り調子の政権にはその隙がない。石の上にも3年とはよく言った。臥薪嘗胆3年3か月の歳月が長期政権への基盤を醸成していたのだ。
 

安倍は「運も実力のうち」と述べているが、たしかにアベノミクスは大当たりに当たった。なぜ当たったかといえば、国民が20年ものデフレに飽き飽きしていたからだ。


とりわけ3年3か月の民主党政権は経済への無知蒙昧(もうまい)ぶりをさらけだし、極左政党でも考える“景気の好転”などという文字は自らの辞書から消去してしまっていた。そこに安倍が一年間かけて準備をした景気対策を打ち出したのだ。あの懐かしい自民党の景気対策だ。市場には干天の慈雨のごとくに映った。


「嘘でもいい。“上げ”が欲しい」と市場は飛び付いた。そして嘘から出た誠のように現状が推移しているのだ。民主党の元官房長官・枝野幸男をして「われわれなりに蓄積をしてきた部分はあるけれども、自民党の蓄積とは比べものにならない。自民党はうまい。」と驚嘆したのももっともだ。


経済に加えて安倍がラッキーなのは、悪役を演ずる“外国”の存在である。国家主席に就任した習近平は、就任前から外なる敵を日本に設定して軍部を引き締める動きを展開した。愚昧の見本である右翼・石原慎太郎が火をつけた結果、尖閣問題をフルに活用させてしまったのだ。


習にしてみれば汚職蔓延、貧富の格差拡大、国民の不満爆発寸前の共産党1党独裁体制の“危機”を救ってくれる由一無二の手段が尖閣問題であったのだ。こうして主席となった習は今後ことあるごとに国内向けに「尖閣カード」を切り札に使うだろう。しかし本格戦争には乗り出さない。


現在の中国の海軍力では、自衛隊を相手にしただけでも壊滅的打撃を食らうからだ。一時的にせよ負ければ、それこそ体制の危機が訪れる。だから尖閣問題は「叫べども戦わず」が基本なのだ。
 

この習の基本姿勢は、保守化路線をひた走る安倍にとってはすべてプラスに“逆用”できる。減少し続けた自衛隊予算の増加、憲法改正、集団的自衛権の行使、普天間基地の辺野古への移転など、重要懸案にはことごとくプラスに働くのだ。


そして破竹の勢いが一番顕著な部分は、支持率になって現れる。内閣支持率70%だけでも大変なものだが、自民党支持率が40%というのは驚がくの数字である。いうまでもなくアベノミクスと尖閣問題が国民世論にプラスの反映をもたらしていることになる。“嫌な外国”の存在が国民の憎悪感を外部に向かわせているのだ。
 

問題は経済と外交・安保におけるこのペースが長続きするかどうかだが、予見しうる将来にわたって崩壊する芽は生じていない。民主党政権があの体たらくで首相を代えながらも3年3か月持ったのは、最初に取った308議席の“貯金”があったからだ。


過去の自民党政権では沖縄返還選挙での佐藤栄作、死んだふり解散の中曽根康弘、郵政解散の小泉純一郎などいずれも300議席前後を取った宰相が、長期政権を達成している。安倍は294議席を獲得した。政権維持にとっての決定的要素は「300議席前後」がキーワードになると言ってもよい。


加えてかつて安倍が自ら作った衆参ねじれを7月の参院選挙で解消すれば、破竹の勢いは継続することになる。党内的にも「安倍降ろし」は生じようがない。


さらに民主党政権が反面教師になって、国民のガバナビリティ(被統治能力)を向上させた側面が大きい。この政党を選べば、このように国民生活に跳ね返るという政治の本質を国民が“学習”したのだ。


かねてから国民は馬鹿な民放ニュース番組、タブロイド版や週刊誌などへの対応はそれなりに軽蔑を伴った目で一段と軽く見るようにはなっている。しかし、今回の学習効果は朝日新聞などもろ手を挙げて民主党政権を礼賛、政権交代を煽った“高級メディア”に対しても発揮される傾向が大きいと見る。


原発反対の朝日の主張が、選挙結果にまるで反映せず惨憺たる結果に終わったことが顕著に物語る。国民の見る目が養われれば、安易な政権交代は控える流れが主流となり、安倍政権にはプラスに作用するのだ。いま一番危険なのは冒頭指摘したように政権の“慢心”だけであろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年03月15日

◆自民選挙制度は見え見えの辻褄合わせ


成立不可能で結局選挙審への付託が狙いか


「夜を徹して作り上げる」と息巻いた幹事長・石破茂が、公明党優遇で憲法違反の疑いがある選挙制度改革案をなぜ作り上げたかだ。そこには見え透いた“つじつま合わせ”の野党対策があり、もともと成立など期していないことが明白である。


自公以外の全野党が反対する法案を、しかも選挙制度改革法案を強行突破をはかることなどということは憲政の常道としてあり得ないからだ。そこを看破されては、なんでも「きちんと」が口癖の石破も、こんどばかりは“きちんと”間違ったことになる。


選挙制度改革の要諦は、有権者が自分の投票した1票の価値が歴然と分かるものでなければならない。現行小選挙区比例代表制の一大欠陥を象徴するものは、選挙区で落選した議員が比例区との重複立候補でいつの間にか当選していることだ。


選挙区で菅直人を落選させて快哉(かいさい)を叫んだ選挙民が、結局「当選」と判明して落胆するようなケースが多い。今回の自民党案は、その分かりにくい現行制度を、さらに二乗したような分かりにくさだ。


問題は「比例を30議席削減し、削減後の定数150のうち、90議席は従来通りの方式で全党に比例配分する。残りの60議席は2位以下の政党だけで比例配分する」という部分である。


これは明らかに与党公明党への配慮である。石破はかねてから「公明党がのめない案は提示しない」と述べてきたが、そのとおりで公平であるべき選挙制度を公明党との“政治折衝”で決めたような案となった。


「中小政党優遇枠」を自民党は当初30議席としていたが、拡大を求めた公明党に配慮し、60議席まで広げたのだ。その結果自民党の試算では、比例区において自民党が24議席減、公明党は現状維持となる。


トリッキーなのは小選挙区と合わせた与党全体の議席数にある。自公両党では合計で301議席となり、与党が3分の2の議席を占めることに変わりはないのだ。


要するに石破は昨年末の「定数削減については、選挙制度の抜本的な見直しについて検討し、通常国会終了までに結論を得た上で法改正を行う」という与野党合意にとらわれるあまり、「身を切る案」を作ったが、一政党の思惑がありありと出てしまう結果となった。


どうも石破という政治家の特色は、一見すべての方程式を鮮やかに解くように見えるが、1+1が2にならない政治の現実を理解しない傾向がある。理路整然と間違うゆえんである。


そもそも選挙制度改革は一政党が恣意的な思惑で作るべきではない。とりわけ比例区で優遇枠を作ることについては、憲法の命ずる平等選挙と普通選挙の原則に抵触する恐れが濃厚である。


憲法は1票が平等に行使されることを何より求めており、政党が選挙結果を恣意的に“操作”することにより1党に有利になるように導けば、当然違憲となる可能性が大きい。具体的に改革案の違憲性を指摘すれば、比例1位の政党に投票した1票の価値が、2位以下が優遇されることにより低下することだ。


その証拠には衆院議長・伊吹文明も「憲法上の問題があって難しい部分もある」と指摘している。伊吹が衆院法制局の見解を聞いていないはずはない。また民主党幹事長・細野豪志も「投票価値の平等という観点から憲法上許容されるか疑問」と述べている。維新、みんな、共産などもこぞって反対である。


また比例の定員を30人削減することも根拠薄弱だ。いつのまにか消費税対策で政党も身を切ることを、定数削減で実戦しようということになってきたのだ。


民主党が“いい子”になろうとして80人削減を言い出したのが最初だが、国民が求めているのは健全なる議会制度であって、取引でもバナナのたたき売りでもない。方向性が初めから間違っているのだ。


議員にかかる費用は1人年間1億円で、自民案を合計してもたかだか30億円だ。数を減らして、多様な民意の反映ができなくなることの方が問題であろう。


こうした欠陥だらけの制度改革にもかかわらず、首相・安倍晋三と公明党代表・山口那津男は15日に会談、合意して法案提出を図る方針だという。


しかし、冒頭述べたように成立する可能性はなく、「身を切る案」を提出したという世論向けのつじつま合わせと、野党に対するけん制でしかない。要するに選挙制度は国会における駆け引きの道具として使われるのである。


これは国民の失望を買って、順風満帆に見える安倍政権の最初のつまずきになる可能性が大きい。自民党の狙いは国会論議でぐちゃぐちゃにして、成立しないことを国民の前に現出して、それを野党のせいにするとともに、結局は選挙制度を第9次選挙制度審議会に付託するしかないところに持ち込むところにあるとみた。


先の先を読んでずるがしこい手段を講ずる自民党政権の悪い病気がまたまた再発した感じだ。そんな、回りくどい手段を講ずるよりも最初から、選挙制度審議会に付託して現行制度を中選挙区制に戻すことを含めて検討させればよいのだ。
  【筆者より:来週は春休みを取ります。再開は25日からとします】

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月14日

◆維新が安倍政権の補完勢力的色彩強める

杉浦 正章


菅と松井の間に太いパイプ

ようやく日本維新の会が安倍政権の“補完勢力”としての実態を鮮明にし始めた。


太いパイプは維新幹事長・松井一郎と官房長官・菅義偉だ。既に政策では憲法改正、道州制、成長戦略などキーポイントで一致しており、13日には維新共同代表・橋下徹が反対していた日銀総裁人事も賛成に回った。結局大騒ぎした橋下も容認した。


今後維新は参院選で民主党を食って一定数が進出、20人程度の勢力となる可能性がある。改憲を目指す首相・安倍晋三にとってまたとない“援軍”となろう。安倍は公明党と維新をバランスを取りながら政権運営して行くことになる。


筆者はFNNが安倍、菅と維新国会議員団筆頭副幹事長・山田宏、政調会長代理・中田宏との9日夜の極秘会談をスクープして以来、何のための会談か首を傾げていた。


一国の首相が野党のトップならいざ知らず、下っ端役員と長時間会談したのである。会談がばれて無視された国会議員団代表・平沼赳夫から「一国の首相と会うのだから、しかるべき手続きを取るべきだ」とこれまた、やっかみ半分の浅ましい批判が出たほどだ。


会談の真の目的は何だったかというと、維新と安倍官邸との国会におけるパイプ作りだ。というのも山田も中田も松井の腹心と言ってもよいほどの関係であり、松井がこれもまた親しい関係にある菅を通じて設定したのだ。
 


秘密会談では日銀総裁人事に反対している山田と中田を安倍が説得する場面もあったことが予想される。総裁人事は13日維新内部での投票に付され、14対10で賛成に回ることが決まった。結局両者とも反対に回ったが、この見通しも12日に松井が菅との会談で詳細に伝えたのであろう。


橋下が最終的には認める方向であることも説明したようだ。こうした密接な連携の動きは、菅と松井の特殊な関係で成り立っているのだ。


大阪の維新に対する安倍官邸の見方は、「陽動作戦ばかりが目立つ橋下よりも松井の方が信頼が置ける」ということで定着している。“秘め事”などは橋下に漏らしたら、記者会見やツイッターですぐに公表してしまうから、いかんともし難いというのだ。


松井と安倍とは極めて親しい関係にある。というのもまだ安倍が自民党総裁・首相に復帰できるなどという気配がつゆほどもなかった昨年春に、松井は安倍に対して「維新の代表になって欲しい」と要請したほどの仲である。なお自民党での復権に意欲を示す安倍は断ったが、両者はこれで切っても切れない信頼関係が出来上がった。


安倍は腹心菅に松井との接触を継続するように指示して、菅はことあるごとに接触を継続した。接触は、政権成立後も続いた。1月11日に安倍が野党党首では最初に橋下と会談。2月17日に菅・松井会談、3月9日に前述の秘密会談、12日に菅・松井会談と表面化しただけでも極めて頻繁であることが分かる。


ポイントは安倍官邸が共同代表・石原慎太郎や平沼を外していることだろう。石原や平沼はもともと最右翼的な立場にあり、捨てておいても憲法などでは自民党に同調せざるをえないと見ているのだ。それよりも実働部隊重視なのであろう。


安倍官邸の狙いは、改憲、集団的自衛権の行使などをめぐって公明党が慎重姿勢を表明していることから、これをけん制し、補う勢力としての維新票確保であろう。


事実、最近の安倍は改憲の発議要件を定める96条だけでなく、将来的な9条改正にも意欲を示すなど「安倍色」を一段と強め始めている。


これに対して公明党代表・山口那津男は、集団的自衛権ではかねてから反対を基本に据えている。改憲についても予算委質問で安倍に対して「憲法99条で憲法尊重擁護義務を負っている」とけん制する一幕もあった。


「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と言う条項だが、官邸筋は「これにとらわれていては改憲できないということになる。まずは96条だ」と反論している。 
 

一方橋下は、参院選挙で自民党を過半数割れに追い込むことを目標に掲げて、全国的に候補者の擁立を図る方針であり、今後対決色を強めていくことが予想される。


しかし選挙情勢を分析すれば、今のところ1人区では自民党独走態勢が濃厚であり、2人区以上でも1人は押し込める可能性が強い。結局、維新が食うのは複数区で凋落著しい民主党ということになる。


したがって選挙の対立が決定的に選挙後の維新と自民の関係に作用することはないだろう。選挙後は菅と松井ラインが復活して、連携の動きが加速するものとみられる。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月13日

◆田中流アナログ選挙に“逆張り”の勧め

杉浦 正章



ネット過信に潜む“落選”のわな


ネット選挙がいよいよ実現することになって、自民党参院議員を中心に動揺が走っている。推進者の首相・安倍晋三は「自民党に絶対有利」と、参院側を説得しているが果たしてそうか。


筆者はネット選挙に血道を上げたりすれば、落選必至と言っておく。ご先祖様からの固い選挙地盤を受け継いで、選挙に心配の要らないぼんぼん首相の言うことなどを聞いてはならない。ここは逆張りでデジタル選挙などには専念せず、アナログ選挙に徹することだ。


ネットなどへのエネルギー投入は3%でいい。当選したいならネットはポスター程度と心得て、ネットにエネルギーを割く“机上の空論”選挙を展開してはならない。いまこそ田中角栄流の有権者と肌で接する選挙を展開することだ。


自民党は12日、インターネットによる選挙運動を参院選から解禁する公職選挙法改正案を了承した。13日に自民、公明、維新3党で衆院に共同提出、成立は確実である。


これによりホームページ、ツイッター、フェイスブックなどを選挙期間中も利用できるようになるうえに、電子メールによる選挙運動は政党と候補者に限定して実施される。


よく誤解している向きがいるが、あくまでネット上の選挙運動であり、ネット投票ではない。候補にとっては選挙運動の革命であり、自らの意思伝達は無限の可能性を秘めることになる。


逆に、西部劇と同じでネット選挙は無法地帯が現出される側面もあり、なりすましや当て逃げのような誹謗中傷、悪名高き中国軍部などによるサイバー攻撃もあり得ると見なければならない。


政権は安倍が前のめりになってネット選挙推進者である。しかし自らの人気がネトウヨ(ネット右翼)に支えられているからといって、全党的に通用するかといえば、極めて難しいと言わざるをえない。幹事長・石破茂は前々回の総選挙に惨敗したことについて「小沢さんの田中角栄選挙に負けた」と述べている。自らも田中の薫陶を受けたことがあるだけに、見るところを見ている。


田中の選挙は、ネット選挙、つまりデジタル選挙とはほど遠いアナログ選挙である。田中発言からその“極意”とネット選挙の違いを分析すれば次のようになる。


★「戸別訪問は3万軒、辻説法は5万回やれ。2万人と握手をして廻れ」。この発言は選挙の要諦はまずスキンシップであると言うことだ。有権者と直接会うことは、自らの人となり、人柄を伝達する手段であり、これがメールで代用できると思ったら大間違いだ。


最近のメールは動画も送れるし、演説を映像にして送ることも可能だ。ところが致命的欠陥は有権者が、有り難く思わないことだ。他人に話すのと同じ事をメールで送りつけられたからと言って、喜ぶわけはない。筆者なら候補者のメールは自動的に迷惑メールに指定してゴミ箱に捨てる。


★「選挙民が何を一番望んでいるのか、何に一番困っているのかを、他の誰よりも早くつかまなきゃいかん。とにかく歩け、歩いて話を聞け」。要するにフィードバックだ。一方的な伝達だけでは政治家の勤めは果たせない。選挙運動は具体的な選挙民のニーズを取り込む絶好のチャンスと捉えるべきだというのだ。ネットの一方通行では、最先端のニーズを掌握出来ないのだ。


★「選挙区は一軒一軒しらみつぶしに歩け。靴を何足も履きつぶせ。雨の日も風の日も歩け」。田中は人が人と会って弾け飛ぶ感動を何よりも大事にした。いくらフェイスブックやブログやツイッターを活用しても、感動する文章や呼びかけをすることは容易ではない。感動があってこその得票と心得るべきだというのだ。パソコンでしこしこ伝える自己宣伝には感動はない。


★「3分でも5分でも辻立ちして自分の信念を語れ。それを繰り返せ。それしかない。山の向うを見ていても援軍は来ない。聴衆の数で手抜きはするな」。辻立ちとは何かと言えば、選挙民に自らの存在を示すことだ。辻立ちしたからと言って、話を聞いてくれるとは限らない。


田中は「昨日も今日も立っていたなぁと思ってくれるだけでいい」と漏らしていたが、有権者の頭の片隅に残っていればいいのだ。ネットでの演説などは、NHKの候補者演説と同じで、瞬時に切られる。前首相・野田佳彦が忠実に田中の教えを守って辻立ちし、1回の落選もないのがその効果を物語る。


★「いいか、演説というのはな、原稿を読むようなものでは駄目だ。聴衆は、初めから終わりまで集中して聞いていない。きっちりとした起承転結の話をしても、駄目なんだ。聴衆の顔を見て、関心のありそうな話をしろ。30分か1時間の演説の中で、何か一つ印象に残るような話をもって帰ってもらえばいいんだ」。


これも要諦だ。何か一つだけ面白い話しを記憶させる。これも聴衆と接して「顔を見て」こそ分かる話だ。ネット上の理路整然とした“机上の空論”で票が集まると思ったら大間違いだ。


要するに、ネット選挙を過信などしていたら落選間違いないと繰り返しておく。やるなら沖縄担当相・山本一太が前からやっているように、自ら車や電車の中でも休憩時間中でもひまさえあれば書いて書いて書きまくり、常に一定の有権者を引きつけておくことだ。それもあくまでアナログ選挙の補完としての位置づけだ。


米大統領オバマはネット選挙を活用したが、実際には有権者との接触を何よりも重要視しており、ネット選挙がすべてであったわけではない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月12日

◆参院選、自公で過半数確保の勢い

杉浦 正章


民主惨敗、解党の危機


自民党長期政権の鍵を握る参院選挙は、内閣・政党支持率の異常な高まりに支えられて、自民・公明両党で過半数を維持できる可能性が強まった。筆者の分析では自公の勢力分野が過半数の122議席を上回り130議席前後に達する可能性が出てきた。


高支持率が参院選挙まで維持できる可能性は予断できないが、逆に急落する要素も少なく、「高め横ばい」で推移する可能性が高いからだ。この結果、民主党は衆院選に次ぐ大惨敗が予想され、党再分裂も予想される事態となろう。


とにかく発足早々の政権はだいたい“ご祝儀相場”で最初の世論調査だけが高く出るものだが、2回、3回と回を重ねる度に上昇する政権は見たことがない。


11日のNHKの調査でも安倍内閣支持率は、先月より2ポイント上がって66%。読売の先月の調査は何と71%で内閣発足から2回連続して上昇した。驚異的なのは自民党支持率もかってない高まりを示していることだ。


NHKでは自民党が40.1%、読売が42%、朝日が37%といった具合だ。せいぜい10%台で推移していたのと比べると雲泥の感がある。


他党はNHKでは民主党が7%、公明党が4.4%、日本維新の会が3.9%、みんなの党が3.1%と続いており、自民党の一人勝ちの様相を濃くしている。


安倍は「運も実力のうち」と漏らしているが、まさにつきについている感じだ。問題はこの支持率が維持できるかどうかだが、最大の理由であるアベノミクスと株高が象徴する景気高揚感は、そう簡単には急落しないだろう。


なぜなら、アベノミクスの成否判明は1年2年後となるからだ。経済と並んで重要なのは首相・安倍晋三のタカ派姿勢が、中国の尖閣諸島への強硬姿勢、北朝鮮の原爆・ミサイル実験に“支えられ”ている点だ。したがって支持率は高止まりはないものの、高めで推移するものとみられる。


こうした中で参院選挙に突入となれば、選挙にも反映されざるをえまい。参院選挙は定数121議席を選挙区73人、比例区48人に分けて行われる。現在の自民党の非改選議席は58議席であり、過半数には自公で64議席取って122議席以上を確保する必要がある。


まず組織票の公明党は11議席が見込まれる。これは固いと見てもいいだろう。問題は自民党がどの程度議席を伸ばすかだ。


総選挙の結果や、内閣・政党支持率を勘案して分析すれば、選挙区で自民党は47か48議席。比例区で12議席は獲得する公算が大きい。つまり60議席前後だ。そうなれば自公で70議席前後となり、非改選の58議席と合わせれば130議席前後となる。


これをさらに細かくみれば自民党は1人区31議席中、沖縄と岩手を除いて席巻の29議席を獲得する可能性が高い。また2人区、3人区、4人区で各1議席、5人区の東京で2議席を獲得できそうだ。


一方で民主党は厳しい戦いを強いられている。1人区はあきらめるにしても正念場の2人区など複数区で維新、みんななど第3極に追いまくられている構図が現出しているからだ。


自民党に勝つには野党の選挙協力が、極めて重要だがこれも実現しそうもない。維新は民主党参院議員会長・輿石東に代表される日教組の影響を毛嫌いしている。入院中の石原慎太郎が復帰できれば、なおさら民主党とは対決路線で行くだろう。


さすがに選挙の“神様”だけあって、生活の代表・小沢一郎は選挙協力の可能性について「1人区では非常に困難」と分析、2人区でも難しいと判断している。「3人区以上の選挙区で組めるかどうかだ」と述べているが、組めたとしても自民党の勝利を阻むことができるほどのものにはなるまい。


この結果民主党は、改選議席の46を大きく割り込み、選挙区で10議席に達さない公算が出てきている。比例区も5,6議席がいいところであり、総選挙に次ぐ大惨敗となる。逆に維新は太陽の党との合流でイメージダウンしており、総選挙の際の勢いはないものの、民主党に食い込むくらいの力は維持している。


選挙区で7から8議席、比例区で10議席前後は取れるかも知れない。


こうした選挙情勢から判断すれば、参院選挙後は自公政権で過半数に達する公算が強く、長期に政局を混迷させた、衆参のねじれ現象は解消する方向だ。安倍は長期政権の可能性が出てくる。


参院でも維新は自公の補完勢力として存在感を強めるだろう。民主党は遠心力が作用して分裂の危機に瀕する可能性が強い。代表が海江田万里では能力的にたがを締め直すことは難しいだろう。当然新代表人事が俎上(そじょう)にのぼり、これを契機に、党内抗争が再燃する可能性が高い。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月11日

◆習近平は核完成反対、北の体制は維持

杉浦 正章

中国の政策大転換はありえない
 

北朝鮮制裁強化の包囲網が国連安保理決議によって採択されたが、問題は中国の“本音”がどこにあるかだ。

政府筋は「決議に習近平の意思が反映されていることは確かだ」と漏らしている。しかし、それが中国の北擁護の政策転換を意味するかというと、「あり得ない」と否定している。

なぜなら中国が北を見放せば、北の金正恩政権は崩壊するし、北の崩壊は中国共産党1党独裁体制の崩壊に直結しかねないからだ。北の完全核武装は阻止するが、金政権継続は支持する。これが習近平の基本戦略のようだ。
 

安保理決議の要点は法的拘束力を持つ国連憲章第7章が挿入され、「禁輸品の疑いがある場合貨物検査」と「核兵器などの開発につながる金融取引の凍結」が、加盟国に義務づけられた。


これまで06年と09年ののミサイル発射、延坪島砲撃、過去2回の核実験と、ことごとく安保理決議に盾を突いてきた中国は明らかに対応を転換させた。しかし、第7章の適用については最後まで反対して、日米韓3国の多数派工作包囲網の中で孤立の様相を帯びるに至った。


折から中国世論もネットでは北の核実験を批判する書き込みが目立ち始めた。14日に国家主席に就任する習近平としては、国際的印象も考慮する必要がある。こうした事情で第7章も賛成に回ったのだ。


なぜ北の核ミサイル完成反対に踏み切ったかと言えば、中国も核の脅威が現実のものとならざるをえないからだ。核爆弾の小型化と長・中距離ミサイルへの登載が実現すれば、まかり間違えば北京を狙う政権が誕生しかねないことでもある。


ロシアはとっくに北に安保上の脅威を感じ取っており、中国も同盟国だからといって放置できない段階まで到達したのだ。したがって習近平はとりあえず国連決議に同調して、核武装の完成を阻止する動きに出たのだ。こんご決議にそって核武装を完成に向かわせないための対応を取り続けるであろう。


しかしながら、中国新指導部が、核とミサイル以外で北を締め付けるかというと、ことは逆であろう。政府筋によると「米国との同盟関係にある韓国と国境を接するようになることは絶対に避けたいのが基本戦略であり、変えることはない」と漏らす。


中国は、国内各地で生ずる“格差暴動”から、とりあえずは国民の目を尖閣問題に向けることで押さえてきたが、暴動に加えて北の崩壊が生じたらどうなるかだ。1991年のソ連衛星国家の崩壊が、ソ連邦の崩壊に直結したように、北の崩壊がもたらすものは共産党1党独裁にとって致命的だ。


なぜなら北が崩壊すれば、中国が軍事介入して暫定政府でも樹立させない限り、間違いなく韓国に併合される流れであろう。国境は韓国と接することになる。日米、米韓軍事同盟による極東の包囲網が完成することになる。
 

加えて国境の鴨緑江を渡って難民が流入、そのあつれきを受けて中国の国内情勢は大波乱の状態に突入する。とても共産党政権は維持できなくなる要素が国内外に満ちるのだ。


従って、習近平の基本路線は、核武装は阻止するが、北の政権は維持せざるを得ないのた。ある意味で北と中国共産党は密接不可分のもたれ合いなのだ。北にとっての中国は、世界的な孤立の中で最後の頼みの綱。中国にとっての北は、共産党独裁にとって最大の防波堤なのである。
 

国連決議の欠点は、その主要な狙いが核兵器完成阻止にあることであり、金正恩体制の崩壊を狙った経済制裁の意味合いが少ない事であろう。


金融制裁も、マカオのケースのように大きな打撃を与える流れにはなりにくい。なぜなら、マカオで懲りた北は資金の分散を図っているからだ。専門家筋はいま米国の軍事偵察衛星も日本の偵察衛星も鴨緑江にかかる遼寧省丹東の鉄橋近辺に焦点を合わせているという。物資の流れを監視しているのである。


これまでのところ「貨物検査」らしき事が行われているらしく、5日の決議以来トラックの流れが幾分滞っているように見えるという。しかし、完全に物流がストップしている状況にはない。北の経済に影響が出るほどの問題にはならないのだ。


明らかに中国は、食料や、石油など基幹物資の流通に歯止めをかけてはいない。中国は最新ミサイル兵器「KN−08」用の移動用車両を北に向けて輸出したほどの国だ。これまでどおり一定期間を経れば“尻抜け”になる可能性は多分にあるとみなければなるまい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月08日

◆民主質問、“3者凡退”の様相

杉浦 正章


安倍の“クリアカット”に潜む危険性


「居丈高だ」「いや傲慢だ」と最初から感情論にまで発展、行く先が案ぜられる論戦だった。いよいよ衆院予算委員会を舞台に通常国会の本格論戦が7日スタートを切った。


民主党は代表、幹事長、前副総理と“オールスターキャスト”を並べ、経済、外交・安保、原発などで首相・安倍晋三を追及した。しかし総選挙圧勝を背景にした安倍の“逆襲”に遭い、まるで“三者凡退”の様相であった。


民主党は総選挙大敗の“脳しんとう”からまだ脱却できておらず、安倍のクリアカット答弁が目立ったが、クリア過ぎて今後逆手を取られる危険性を感じた。


まず最初に質問に立った代表・海江田万里は、経済評論家だけあって、アベノミクスの危険性を追及、「デフレの脱却につながらない」と断じた。これに対して安倍は「経済はまさに変わりつつある。民主党は残念ながら3年間やってもできなかったが、我々は2か月で変えようとしている」と反撃。


おりから株価は4年5か月ぶりの高水準に達しており、確かに民主党政権が過去3年3か月の間自らの政策で株価を引き上げたことは一度もない。海江田はテレビではよくしゃべるが、方向性に疑問があるというのが定評。安倍との経済論争は「格」が違う感じを与えた。3人の中では一番お粗末だった。


次いで立ったのが民主党の若手のホープ、幹事長・細野豪志だ。若手のホープといっても、東電事故でマスコミが作った虚像の可能性があるとかねてから思っていたが、勢いが余った感じが濃厚だった。


定数是正問題を取り上げて、大声を張り上げて安倍に噛みついて、「定数是正を今国会でやることを確約せよ。逃げないでいただきたい」と迫った。安倍は「ずいぶんと居丈高な発言だが、0増5減をやらなかったのは民主党ではないか。はっきり言っておく」と切り返した。


カチンときたか細野は「私のことを『なんだ若造が』ということでしょうが、今の発言は傲慢だ」と反論、「居丈高対傲慢」が火花を散らす結果となった。確かに0増5減をたなざらしにしたのは民主党であり、あまり肩を張って言い募ることができる問題ではない。


前副総理・岡田克也は野田政権が尖閣の国有化後に海上自衛隊に15カイリくらい離れて「遠くで警備せよ」と命じたといわれる問題を取り上げた。


安倍が午前中に「過度に中国とのあつれきを恐れるあまり、当然すべき警戒、警備に極度の縛りをかけた」と批判したことについて「何を根拠にしているのか。言いがかりだ」と食いついた。しかし安倍は「確信しているから言った。事実を述べている」と反論した。


具体的根拠は言わなかったが、防衛庁からの報告に基づいていることを明らかにした。岡田が知らなかっただけのことであろう。


さらに岡田は安倍が民主党政権が日米安保体制を毀損したと繰り返している点について「民主党政権はでたらめだというのはわが党だけでなくアメリカに対しても失礼だ」と抗議した。これに対して安倍は「普天間問題では『最低でも県外』と言い、『トラスト・ミー』と言い、実行できずに致命傷を与えたのは事実だ」と指摘した。


民主党政権最大の醜態「鳩山発言」を逆手に取られてはさすがの岡田も反論に窮した。安倍は岡田に対して2度にわたって総選挙敗北の原因に言及した。


日米関係では「国民がこういう政権に任せられないという選挙結果を招いた」と述べたかと思えば、原発に関しては「選挙で国民は民主党は退場せよ。自民党がやれという判断を下した。この民意は重たい」と発言した。


その根底の意識には「敗軍の将には兵を語らせず」とする、“勝者の論理”がみられる。アベノミクスにせよ外交・安保問題にせよ政権発足早々からことごとく物事が順調に運んでいる事への自信の現れであろう。


だが、首相の発言が論理的にクリアカット過ぎると、必ず野党が逆手をとるチャンスが多くなる。昔長期政権が続いた佐藤栄作の答弁は、何を言っているのかまるで判じ物のような言葉の羅列であった。ところが、野党は揚げ足の取りようがなく、追及に手こずった。


安倍の発言は政権が快進撃を続けているからこそ成り立つ答弁方式ではないか。野党に対して噛みつきすぎるのも、必ず報復が待っている。


予算委冒頭質問から見る限り、安倍は国会論戦をはやくも対決ムードに導きそうな気配だ。安倍はマスコミも議会も3か月のハネムーン後は手のひらを返したように厳しくなることを覚えておいた方がいい。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月07日

◆北の“逆ギレ反応”はまずミサイル発射か

杉浦 正章


4回目の核実験も視野に


焦点は逆ギレして休戦協定の「白紙化」を宣言した北朝鮮が、いかなる行動に出るかだ。例によって発言だけは勇ましい。


010年の韓国延坪島砲撃で頭角を現した軍部強硬派の偵察総局長・金英徹が「ワシントンを火の海にする」とすごんでいる。

今週中の国連安保理決議、来週初め11日からの米韓軍事演習と、国際社会の核実験に対する包囲網がひしひしと強まっている中で、北は単なる3流やくざのような威しをしているだけなのか、それとも何らかの軍事行動に出るのか。苦虫をかみ締めながらも国際社会は注視せざるを得ない情勢ではある。


威嚇声明の内容は「朝鮮戦争の休戦協定を白紙化する」とした上で「多様化された精密核攻撃手段で応じる」「任意の時期に任意の対象に、制限なく精密攻撃を加えて祖国統一事業を前倒しする」「米国が核兵器を振り回せば、われわれは精密な核攻撃でソウルのみならずワシントンまで火の海にする」といった内容だ。


「ソウルを火の海にする」と宣言し続けてて半世紀近くたつが、今度はそれを一挙にワシントンまで広げた。この国の“口撃”だけは、民族的特性なのであろう。とどまることを知らない。


しかし休戦協定の白紙化とは穏やかではない。1950年に勃発した朝鮮戦争は53年に北朝鮮軍、中国軍、国連軍の3者によって休戦協定が成立した。「白紙化」は国連決議に反対しない中国に対する“当てこすり”の意味もあるに違いない。


現状はあくまで休戦であって、国際法上は戦争状態が継続している。いつまた戦争が再開してもおかしくない状況にあるのだ。たしかに「ソウルを火の海」にすることは可能だ。休戦ラインからソウルまではわずか57キロであり、通常兵器で十分届く。


北は長距離砲500門を配備してをり、1分間に約3000発の砲弾をソウルに浴びせられると豪語している。注目すべきは中距離ミサイル・ノドンが、過去20年間に完全に実用化されて、照準を韓国と日本に合わせていることだ。核の小型化が完成すれば、これに核弾頭を登載して完璧な核ミサイルとなる。
 

一方長距離ミサイルは、昨年の実験で米国の西海岸までは届く飛行距離を達成した。しかし、ワシントンまでは届かない。だから「ワシントンを火の海」にすることはできない。核保有の独裁国家の特徴は、核ミサイルさえ保有すれば、超大国と対等になるという“一大錯覚”を持っていることだろう。


しかし、たとえ核ミサイルを保有しても発射はできないことが分かっていないのだ。緊迫事態になればミサイル防御網が張り巡らされ、迎撃態勢が取られる。加えてミサイル基地への先制攻撃は確実に行われる。さらにピンポイントで金正恩を巡航ミサイルが狙い撃つ。


一発でも核ミサイルが発射されれば、核ミサイルの報復で瞬時に北朝鮮全域が「火の海」となって、国家は消滅する。韓国参謀本部も6日「北が挑発を強行すれば拠点のみならず、指揮部隊にも報復を加える」と中枢への攻撃を警告している。


したがって刈り上げ頭のぼんぼんが、いくら力んでみても北朝鮮の核戦略はなり立たないのである。ぼんぼんはバスケットのスーパースターと仲良くしていればいいのだ。


こうした中で採択される安保理決議案は、かってなく厳しいものとなる。焦点だった国連憲章第7章の適用が実現する方向となった。「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を定めている同章は、最終的には加盟国の軍事行動をも求めている。


決議はまた船舶、貨物に関して国連加盟国が自国領内で検査をすることを求めており、これは「決定事項」となった。事実上戦時下における「臨検」に近い措置が取られる。核・弾道ミサイル計画に関係する金融取引や金融サービスの停止も義務化される。


よく中国がのんだと思われるほどの決議だが、その中国は全く信用ならない。過去に国連決議があっても国境の鴨緑江にかかる唯一の鉄橋は、物資を運ぶ貨物列車やトラックがひっきりなしに行き来しており、今回もこの流れは止まるまい。


それでは国連決議と米韓軍事演習に対抗して北が何をできるかだが、4回目の核実験とミサイル実験があり得る。このうちまず先行するのは短距離か中距離のミサイル実験だろう。既に北は日本海と黄海に船舶の航行禁止区域を設定した模様である。


北朝鮮はこれまでも、短距離ミサイル発射や海上射撃訓練の前に同区域を設定している。とりわけ注目されるのが昨年4月の軍事パレードで中国製移動用車両に搭載された最新兵器「KN−08」と呼ばれる新型ミサイルの実験が行われるかどうかだ。


追加核実験は、実験準備は完了している模様だが、立て続けの実験はあまりにも国際社会の反発が大きい。まずはミサイル発射か実験、海上射撃訓練などを先行させる可能性が高い。


軍事演習の最中に延坪島砲撃のような行動に出れば、直ちに軍事的報復措置が取られる可能性が高く、北は避けるだろう。もっとも常識が通用する国ではないから、何をするか分からないところがある。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月06日

◆日ロ首脳会談で「領土」の大幅進展は困難

杉浦 正章


アベノミクスにらみ経済拡大に比重


メドベージェフの対日強硬路線と打って変わったロシア大統領・プーチンの“秋波”である。その意味するものは何か。


プーチンは昨年3月に北方領土問題で「引き分け」発言をしたかと思うと、先月の元首相・森喜朗との会談では平和条約に言及して、締結されないことの「異常性」を強調した。あたかも領土で譲歩するかのような“そぶり”を見せている。


こうした中で首相・安倍晋三は5日の国会で、10年ぶりの訪ロを正式表明した。春の連休にも実現しそうだ。しかし4党返還要求を政府が変える方向にはなく、プーチンも妥協することは難しい。唯一合意しうる部分が両国経済関係の発展である。安倍もアベノミクスにはプラスに作用するし、プーチンも切実な国内経済状況を抱える。


森は昨年のプーチンによる「引き分け発言」を前向きの妥協論と捉えていたフシがある。だからさる1月に択捉を除いた、歯舞、色丹、国後の3党返還論に言及したのだろう。


しかし先月の訪ロの際、プーチン発言の真意をただすと、プーチンは「引き分け発言は、勝ち負けなしで双方が受け入れ可能な解決策だ」と説明するにとどまった。この発言が意味するところは、プーチンが依然歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を、領土交渉における原点としていることが分かる。


日本側には麻生太郎の主張した面積での2分割論や、4島の日本帰属を確認した上での2島返還論など様々な妥協論がある。自民党内の、北方領土と平和条約の切り離し論などもしびれを切らした結果の発言だろう。しかし、ロシア側には2島返還以上に踏み出す意図はないというのが大筋の見方だ。


会談でプーチンは森にA4サイズの紙に、柔道場の端で組み合っている人物を矢印で真ん中に移す図を書いて渡した。場外に出そうなところを「待て」といって、中央に引き戻そうということだ。さらにプーチンは「日ロ両国が平和条約をいまだに締結していないのは異常な事態だ」とも強調した。


その姿勢からは首脳会談をまず先行させて、交流の輪を拡大したいという思惑がある。背景にはアメリカのシェールガスのヨーロッパ進出で、LNGなどの販売が落ち込み、ロシア経済が深刻な打撃を受けていることがあるようだ。


加えて日本の経済力と技術でシベリア開発を前進させたい狙いもある。プーチンは10年前の首相・小泉純一郎との会談の結果、日ソ間の貿易量が4倍増と飛躍的に拡大したことを覚えており、そのケースを踏襲したい気持ちがあるに違いない。


さらに重要な点は外交・安保面での問題だ。中ロ関係は良好な状態にあり、中国の躍進は現在のところ海洋進出へと向かっている。しかし長い国境を接しており、警戒を怠るわけにはいかない。


また北朝鮮のミサイル実験と核小型化の成功はロシアにとっても大きな懸念材料である。安倍との首脳会談は両国へのけん制包囲網作りとな得るのだ。


一方、安倍にとっても東南アジア歴訪で対中けん制の動きに出たのに加えて、訪米で日米安保体制を再構築した。訪ロすれば、対中、対北けん制の意味合いが濃厚なものになる。


最大の利点は日ロ経済の活性化はアベノミクスにプラスに作用する。このような事情が双方にあって4月か5月の連休中にも訪ロして日ロ首脳会談に臨む意向を固めたのであろう。


ただ北方領土問題で安倍が4島返還を譲歩する選択肢はまずないとみられる。国内的にも世論上も4島返還で譲歩の空気は大勢となっていない。


そこで先例になるのが小泉訪ロだ。小泉はプーチンとの間で日ロ関係全体を包括的に発展させる「行動計画」をつくり、経済的な結びつきを強める方針を選択した。領土問題は事実上の先送りとなったのだ。


安倍も領土問題では主張すべきは主張する立場を堅持しつつも、経済関係の結びつき強化を図ることに主眼を置く方向だろう。隣国首脳との対話が10年もなかったことが異常であり、北方領土問題は首脳会談を積み重ねる過程で、糸口を見出してゆくしかあるまい。


森はプーチンに領土問題で1年以内に議論しての決着を申し入れたというが、一つの方向であろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)