杉浦 正章
韓国による妨害工作は“空振り”に終わった
こともあろうに隣国・韓国による“究極の妨害工作”にもかかわらず、圧勝の形で2020年オリンピック開催が決まった。首相・安倍晋三の強運はもちろんのこと、日本の「国運」の強さにまで思いをはせざるを得まい。アベノミクスはさらに一層勢いづき、デフレ脱却への“神風”となり得ることは間違いない。
安倍にとって消費増税8%の4月実施決断に向けて追い風になるものでもある。マラソン銀メダリストの君原健二が「オリンピックは精神的に生きる力を与えてくれる。感動とか夢とか希望とか勇気とか若い青少年に与える影響はとても大きい」と青少年への影響の大きさを涙ながらに語っているとおり、日本は出口なしの閉塞状態からの離脱をはかるチャンスが到来した。
韓国政府は日本の圧勝にあ然として、敗北感をかみ締めているだろう。
そもそも相手が弱すぎた側面が濃厚だ。まさにイスタンブールとマドリードが消去法で消された勝利だった。だが、そうしためぐり合わせになったこと自体も幸運であるとしか言いようがない。
ところが誘致運動が佳境に入った6日の段階で韓国が究極の禁じ手を打ってきた。福島県など日本の計8県の水産物を全面輸入禁止にすると発表したのだ。ただでさえ福島発の風評が投票結果に影響するのではないかという懸念が生じていた時点でのことである。
相変わらず「読めない」日本のマスコミは「何でこの時点で」といぶかる論調が支配的であったが、筆者は即座に「オリンピック妨害」と看破した。まずタイミングが国際オリンピック委員会総会直前である上に、海のない栃木、群馬両県を対象に入れていたからだ。
その狙いは東京が汚染県で囲まれている印象を演出、風評を一気に盛り上げようとしたのだ。結果的には安倍のプレゼンテーションにおける数字を挙げての全面否定が、率直に委員らの胸に響いた。安倍は「福島の近海の汚染の数値は最大でも世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1」とか、「0.3平方キロの湾内でブロックしている」など数字を示して風評のポイントを論破したのだ。
こうして史上まれに見るアンフェアな妨害は失敗に終わった。アラビア半島諸国と同じ半島国家で、大国からいじめられ続けてきた歴史を持つ国の、恐ろしいまでの陰険さと手段を選ばぬ陰謀の根深さをまざまざと思い知らされた形だ。
これにはなんと中国までがあきれかえっており、中国大手検索サイト「百度」の掲示板に「韓国は病気か?全力で東京五輪開催を妨害」というスレッドが立てられた。中国のネットユーザーからは、「一番嫌いなのが韓国だ。バカ国家だ」、「韓国はまともな国じゃない」、「われわれは低俗な生物と言い争う必要はない」などの批判が登場しているという。
「韓国の敗北」は、今後の2020年に向けての日本経済の振興ぶりで一層明らかになるだろう。アベノミクスの登場でただでさえ息も絶え絶えの韓国経済は、「日本が振興すると低迷する」パターンをとりつつある。
両国間にはウインウインの関係はなり立たないのである。なぜなら韓国の技術はすべて日本のそれの模倣で成り立っており、これ以上お人好しの技術移転や過去にあったような金融危機での支援などはまず行われないし、円安も続く方向だからだ。
そこで日本への経済効果だが、まずアベノミクスが予期できなかった相乗効果を得ることになった。これまでアベノミクスの成長戦略と言っても原発再稼働が最大の目玉としてあるほかは、これといった材料はないのが実情だ。
それがオリンピックという「具体的な目標と希望と未来が与えられた」(安倍)のだ。安倍は「15年続いたデフレと縮み志向の経済をオリンピックを起爆剤として払拭する」と言明、チャンスを最大限活用する意思を表明した。
成長戦略が焦点となる秋の臨時国会に向けて、政権にプラス材料になることは言うまでもない。野党が反対しようにもできない「掌中の玉」を得たのだ。
安倍の言うようにはっきりと7年後が見えるようになったことは、企業にも、所得環境にも大きなプラスの効果を生んでいくだろう。東京都の発表した経済波及効果(生産誘発額)は全国総計で約2兆9600億円。施設整備など需要増加額は東京都だけで約9600億円、全国総計で約1兆2200億円となっている。
招致活動のスローガンである「ニッポン復活」にプラスとなる数字が並ぶ。インフラ整備の前倒しなどにより、100兆円を超えると指摘する専門家もいる。
大和証券シニアストラテジスト・木野内栄治は「150兆円くらいの経済効果が出てくる可能性がある。これまで、1年先すらも見通せない経済情勢が続いてきた。7年後が見えるということは、企業にも、所得環境にも大きなプラスの効果を今の段階で生んでくれる」と分析している。
安倍がこのチャンスを利用しないはずはない。まさにアベノミクスにとっては神風の到来だ。安倍はオリンピック招致を消費増税の決断に結びつけることにはまだ慎重だが、4〜6月のGDP2.6%という好材料に加えてのオリンピックである。まさに消費増税の環境は整ったのであり、来月初めの判断は、8%に「ゴー」とならざるを得ない。
故松下幸之助が「日本の国運は不思議に強いものがあるというような感じがする。まさにつぶれんとしてつぶれない」と述べているが、その通りだ。明治以来40年周期で日本の興亡が訪れるという説がある。
維新から日露戦争までの40年は上り坂。以後第2次大戦までの40年は下り坂。戦後の40年は上り坂。1985年のプラザ合意で下り坂に入り2025年までは下り坂というものだ。
しかし2020年のオリンピック招致は、安倍のかじ取り次第で下り坂28年で、上昇に転ずる絶好の好機が生まれてきたことを意味する。それにしても安倍は運がいい。つきがある。
<今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)