2013年01月16日

◆安倍政権はスパイ対策で脇を固めよ

杉浦 正章


民主3年で霞ヶ関はダダ漏れ状態だ
 


要するに民主党政権の政策は中国などのスパイに筒抜けになっていたということだ。今後政権交代によって次々に明らかにされていくだろう。その第一段階が内閣官房参与・飯島勲による“暴露”だ。「左翼」が80人が首相官邸に自由に出入りしていたというのだ。表面化しただけでも首相官邸、外務省、農水相に中国スパイが接近して自由に情報をとっていた公算が強い。


これにサイバー攻撃が加わり環太平洋経済連携協定(TPP)の参加時期などについての前首相・野田佳彦のナマ発言がまるまる漏洩している。まさに民主党政権はスパイ天国であったのであり、3年3か月にわたるカウンターインテリジェンスの脆弱さを立て直すのは容易ではない。
 


まず農水相の林芳正は15日、対中農産物輸出事業を巡って、中国のスパイである大使館一等書記官・李春光と農産省を巡る疑惑について「事業の全体像を確認し、外に対して明らかにしていきたい」と発言、再調査の意向を表明した。


中国の外交官がスパイとして立件された初の事件は、昨年5月に発覚、農水相・鹿野道彦と同副大臣・筒井信隆の事実上の更迭につながっている。李春光は中国の巧みなスパイ植え付け作戦に乗って、99年に松下政経塾に特別塾生として入塾。2005年の海上自衛隊潜水艦のノイズ除去技術に関する機密漏洩で、スパイとしての存在が公安当局に浮かび上がっていた。


李は松下塾の人脈をたぐってついに外相・玄葉光一郎にまで到達している。玄葉の政治秘書と親しい関係となったのだ。その玄葉の秘書が何と昨年9月に北京を訪れ、既に逃げ帰っていた李と会談しているのだ。スパイと断定された人間と時の外相秘書が接触すれば、明らかに機微に渡る国家機密が漏洩されたとみるのが常識であろう。しかも送検された本人と会うとは、なんという国や捜査機関を小馬鹿にした話だろうか。
 


こうして外務、農水両省との関わりがクローズアップされつつあるが、首相官邸も直撃されていたという見方が濃厚である。現に中国のスパイ組織である中国人民解放軍総参謀部第二部の武官が、堂々と名前を述べて出入りしていたという説がある。



首相官邸は民主党政権発足時に筆者が 「民主党がかつての社会党の職員25人を最近内閣官房の専門調査員に押し込んでいる。これらの職員が事務局の主導権を握っている」として、中国や北朝鮮への機密漏洩を警告したとおり、旧社会党員の“巣”であった。文科相も同様に参院議員で元日教組教育政策委員長・那谷屋正義を文部科学政務官に押し込むなど、宿敵日教組に浸透されつつあった。



何も社会党員や日教組がスパイに直結すると即断するわけではないが、政権の中枢にいれば、中国や北朝鮮のスパイが過去のつながりを背景に“好餌”とばかりターゲットにしたことは間違いあるまい。怪しいのだ。
 


こうした中で映画ゴースト・バスターズならぬスパイ・バスターとして登場したのが飯島だ。飯島は民主党政権が作った官邸のありさまについてテレビで「官邸に戻って驚いた。めちゃめちゃで村役場以下」と慨嘆。とりわけ機密漏洩など危機管理対策がなっていないことを強調した。


「官邸に出入りできるカード(入館パス)を全部調べたら発行数は官邸だけで500枚以上。全部で1300人を超えている。私の個人的調査でそうだった。その中で80人ぐらい。左翼的なメンバーが入っていた」と暴露。



「ひどいことには前科一犯のやつまで入っていたりした」という驚がくの事実まで言及した。飯島はすぐに没収したことを明らかにすると共に「内調や警察庁は何をやってたのか。もし外交や安全保障あるいは為替の問題が、外に漏れたら危うく沈没ですよ」と関係機関を批判した。



たしかに民主党政権になってからは内閣情報調査室も、閣僚の経歴の事前洗い出しなどで手抜かりが多く、就任して発覚、即辞任につながるケースが多出した。昔は「北朝鮮情報の内調」であったが、「今はろくな情報を挙げてこない」と民主党政権幹部がぼやいていたものだ。
 


要するに民主党政権は「情報ダダ漏れ政権」であり、おまけに官僚の徹底的軽視策をとった。周りの機関も、こんな政権に情報は上げられないという躊躇(ちゅうちょ)が働いたことは確かであろう。首相・鳩山由紀夫以降の首相の体たらくがそうさせたのだから、自業自得であった。



しかし、国家としての3年3か月が、るる述べてきたようにスパイ天国であったのはゆゆしき問題だ。ここは首相・安倍晋三が、わきをしっかりと固めるときだ。



官邸はスパイ対策はもちろん、中国による露骨なサイバー攻撃をはねつけるシステムを早期に強化すべきだ。どんなウイルスを残しているか分からないから、官邸のパソコンなど電子機器をすべて新たに取り替えることなど常識だ。米国でも機密漏洩事件は多いが、もっと高度なスパイによるものがほとんどだ。



入国した途端にマークされた李春光ほど幼稚なものではない。日本ほどやすやすとスパイが活動できる国はない。民主党政権を米国が信用しなくなったのも、ダダ漏れが原因だ。新たな日米安保体制を築くためにもスパイ対策は焦眉の急である。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月15日

◆安倍が橋本を“だし”につかった内幕

杉浦 正章

 

辛坊治郎が“10分会談”のいきさつ暴露
 

一体どうして最初の野党首脳とのトップ会談に、日本維新の会代表代行・橋下徹をもってきたのかふに落ちなかったが、ようやく解けた。大阪の読売テレビのニュースキャスター辛坊治郎が来阪の目的は同テレビの収録にあり、その他の日程は“ついで”であったと暴露したのだ。



「1ローカルテレビのために総理大臣たるものの来阪は体裁が悪すぎる」ので、橋下との会談を設定して、それが目的であるかのように装ったのだという。結果的に他党党首をないがしろにした形となり永田町の憶測を呼んだのだが、何のことはない格好づけであったのだ。


しかし、内幕をばらされるとは、内閣官房の誰が作った筋書きか知らないが、上手の手から水が漏れてしまってはどうしようもない。
 

首相官邸の情報操作は巧みであった。まず8日に「安倍が橋下と11日に会談する」方針を新聞にリーク、9日の朝刊に「夏の参院選に向けて野党共闘にくさびを打ち込む狙いだ」と書かせた。同日の記者会見で官房長官・菅義偉が、日程を追認する形を取った。こうして流れを作ったのは記者クラブへの情報操作を知り尽くしたプロの技だろう。その上での会談となった。



日本維新の会代表・石原慎太郎や民主党代表・海江田万里は“無視”されたかたちである。評論家らは「石原代表の面子がつぶれる。頭越しでしかも首相自ら出かけていくということは普通じゃ考えられないことをあえてやった。相当な意味がある。」(岩見隆夫)と“見事”な論評をテレビで加えるものがほとんどだった。



新聞も読売が「首相維新に期待、通常国会での連携狙い」と分析、社説でも取り上げ「首相は憲法改正など国政課題での連携に意欲を示してきた。それを具体化するための一歩とも言える」と高揚した論調。朝日も「参院選に向けた野党共闘にくさびを打つとともに、将来の憲法改正を見据えて距離を縮める狙い」ともっともらしく分析した。


タブロイド紙に至ってはまことしやかに「石原慎太郎外しの思惑」と“深読み”した。官邸もここまでは巧みな情報操作であったと言ってあげよう。
 


ところがこれに対して辛抱が、まるで辛抱しきれなくなったかのように「待った」をかけたのだ。12日の日本放送の「辛坊治郎ズーム」で内情を暴露したのだ。ラジオなど普通の人は聞き流すが、読者のためにラジオまで聞いている“政治ニュースの鬼”である拙者の耳に入っては、ひとたまりもない。だからここに“辛抱の暴露”を暴露することができるのだ。



まず辛抱は「何のために大阪に来たのかの基本認識が朝日も毎日も産経も日経も全部間違った」と主張した。読売だけは外したところなどは、辛抱でも“主筋”は怖いとみえて可愛い。辛抱によると読売テレビへの出演は、総理大臣になったら出席するとの約束が選挙前からあったのだという。来阪の核心はその約束を安倍が守っただけのことであり、「一つ言えることはこのおっさんは義理堅い」のだそうだ。
 


そのおっさんの日程を見れば、たしかに橋本との会談は付けたりだ。読売テレビのそばにあるニューオータニに呼んでの会談である。それも仰々しく官邸がリークまでしたにしては、会談は、歩く時間を入れると実質たったの10分。発表の20分あまりはとてもない。少なくとも1時間は会談しなければ政治家同士が肝胆相照らす事はないのだ。



安倍が橋下発言を「熱心に」メモを取っていたというが、果たしてその長さは一言かそれとも二言か。その直後の読売テレビ訪問は2時間に及んでいる。各社12日付紙面では100行前後の原稿に仕立てているが、よく引き延ばしの“飴細工”が出来たものである。辛抱は「読売テレビの収録の前に橋下さんとの会談をくっつけて、一応これでニュースにしておく形であった」と暴露した。



辛抱は安倍周辺がシナリオを書いた理由について、内閣記者会との関係があると分析する。「1ローカルテレビのために大阪くんだりまで行くとは総理は言えないよなぁ。内閣記者会が普通なら結構怒る」と述べた。


民放キー局の場合、同記者会が仕切って一つの番組だけに総理出演を認めているのだという。ローカル局への出演は異例だ。こうして辛抱の言うとおり、各社はすべて大阪訪問の本筋を見誤ったことになるが、大げさに言えばこうして歴史は出来てゆくのだ。
 


官邸筋は筋書きを書いたのは「Iさんあたりじゃないの」と漏らしているが、本当に内閣官房参与・飯島勲であるかどうかは闇の中だ。


いずれにせよ情報操作を知り尽くしたプロの仕業であることには違いあるまい。それにしても最近の政治記者は2時間の番組のために10分間の会談をしつらえる政権側の意図・思惑にまで考えが及ばないのだろうか。


政治記事はまず推理が大切なのだ。辛抱の指摘はもっともだ。しかし辛坊も軽い。約束を守った「おっさん」が聞いたら怒ることまで考えが及ばないのだろうか。頭はいいが、自己顕示欲の固まりのタレント癖があり、そんなことをばらせば2度と読売テレビに出てもらえないことまで考えが及ばない。

<今朝のニュース解説から抜粋>     (政治評論家)

2013年01月11日

◆電子新聞化で朝日が大きくリード

杉浦 正章

 

フルモデルチェンジで格段の読みやすさ
 

ついに朝日新聞が電子新聞をフルモデルチェンジし、10日から新聞紙のレイアウトで読むことができるようになった。やはりニュースは紙面でその大小を見極めることがもっとも分かりやすく、横書きのWebニュースが縦書きの紙面へと回帰したとも言える。


これで日経、産経と合わせて3紙がWebに紙面を露出させた。電子版化は時代の潮流であり、読売が大きく差をつけられたことは否めない。経営の古さが出遅れの原因だろう。


Webでニュースを見る層は圧倒的に若い世代である。安保、原発推進などせっかくの読売の論調が若年層において朝日に席巻されていくのは国論形成の上でも問題がある。読売は早期に追いつくべきであろう。さもないと年寄りばかりが読む「ジジババ新聞」になってしまう。
 


朝日新聞デジタルは、読者に我が国トップクラスの情報を、「徹底的に味わい尽くさせる」という“思想”を感じさせる。トップページにある「朝刊紙面」ボタンをクリックするだけで朝刊紙面の全ページがサムネイル(小さな画像)で表示される。読みたい面をクリックすれば、紙面ビューアーが飛び出してくる。


サムネイルは小さすぎるため記事の内容までは分からないが、1面、総合面、経済面などの説明がついているために使いやすい。紙面ビューアーの操作は実にスムーズでストレス・フリーの操作ができる。ページめくりも矢印のクリックだけで簡単だ。


とりわけWeb記事の最大のポイントである記事の拡大・縮小がマウスのホイールだけできるのはありがたい。日経は動作が多く、煩雑だ。紙面の記事と横書き記事は日経と同様に連動していて、すぐに切り替えられる。小生の場合記事は横書きで読む癖がついているため、まず紙面を選んでワンクリックして横書きで読む。
 


新聞紙面は午前5時に東京の最終版が更新される。バックナンバーは一週間前までそろっていて、すぐに切り替えられる。2月導入となるが、デジタルに新たに加わる予定の「タイムライン」は、選んだニュースの過去記事を、写真とともに時系列で読める機能だ。


めまぐるしく進展するニュースを過去にさかのぼってビジュアルに見られるというのは、実によいサービスだ。


天声人語には熱烈なフアンがいるとみえて、「天声人語ビューアー」まで登場させた。140人の論説が見られる本来有料のWEBRONZAや、医療、健康の「アピタル」も付録でついている。検索機能も強力だ。1年前にさかのぼって無料で検索できる。受動でなく能動でニュースを知る時代とも言える。
 


最大の問題はWeb紙面が朝刊だけに限られていることだ。日経は朝夕刊が見られるから不満が残る。料金もデジタルコースだけだと3800円だから4000円の日経と比べて割高となる。読売は宅配読者限定の157円。産経は宅配に関係なく350円と安い。全国紙朝日の紙面電子化は新聞の宅配システムにも大きな影響を及ぼすだろう。


北海道で4000円かけてペイしない宅配をしている朝日が、まるまる月額購読料3800円の中に占める配達料がなくなる。過度期は販売店との関係をどのように保つかが最大のネックであり、読売がなかなか本格参入しないのは自慢の1000万部を割ったとは言え、販売店対策があることは言うまでもない。
 


新聞経営への影響だが、2010年にスタートした日経の場合、昨年4月の社告によると有料会員数が20万人を超えた。トップは100万人の会員がいるウオール・ストリート・ジャーナル、これにニューヨーク・タイムズ、英フィナンシャル・タイムズが続いており、日経は世界第4位となっている。


Web版がどの程度影響しているかは不明だが、日経の12年1〜6月期の連結業績は純利益が60%増の63億円と、好調だ。朝日の12年3月期連結決算も、純利益が前年同期の約3倍の163億5千万円と、2期連続の黒字となった。朝日も有料会員数を公表すべきだ。
 


朝日の場合、Web化先進国の米国の影響がかなりあると思われる。NYT紙が急速に電子版に移行していることから影響を受けているのだろう。NYT紙の平日版の総部数は12年9月30日時点で前年比40%増の161万部。内訳は紙媒体が71万部に対して、電子版は紙媒体を大きく上回る89万部だ。
  


読売は昨年、宅配購読者に限って、電子化「読売プレミアム」を実現した。157円は電子版だけ見る読者にとっては購読料金に上乗せの4082円となるから決して安いものではないが、その内容、読みやすさは朝日を上回るものがあった。


しかし、朝日のフルモデルチェンジで再び大きく差をつけられた。圧倒的に一覧性において紙面レイアウトの方が有利に立つ。時代の流れは紙面電子化にある。早期に追随し、朝刊・夕刊両方を電子化すれば、朝日を追い抜ける。


自民党ですらネット選挙の時代だ。新聞のネット戦争に敗れてどうする。

        <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年01月10日

◆参院選まではプチバブルが継続する

杉浦 正章 



“劇薬”アベノミクスの壮大なる賭け

アベノミクスが3年半ぶりに開かれた経済財政諮問会議を機に本格的なスタートを切った。日本経済はデフレ脱却を目指した“最終決戦”に突入する。


タブーの国債増発をあえて断行して財政出動に踏み切り、即効性のある公共事業と金融緩和で景気の底上げを図る。世界の経済史上まれに見る大胆な不況脱出戦略であり、欧米諸国は“壮大なる実験”として注目している。成功すれば欧州連合(EU)の不況脱却の“教材”となるという見方も強い。


しかしアベノミクスは大きな“賭け”であり、一挙に奈落へと落ちかねない危険を常に内包していることを見逃してはなるまい。
 


当面の焦点は、現在のアベノミクスバブルが7月21日の参院選まで継続できるかどうかだが、筆者は実体の伴わない期待値ながらプチバブル的な活況は継続するとみる。アベノミクスは現在のところ口先先行であり、常にバブル性を内包するが、巧妙なる“仕掛け”があるからだ。



緊急経済対策は総額20兆円に達し、補正予算案は事業費ベースで13兆円を越える予定だ。その多くが公共事業に回される。公共事業は景気に即効性があり目先の景気の底上げには最大のカンフル注射に成り得る。加えて金融緩和が追い打ちをかける。消費増税の判断となる4月〜6月の「国内総生産(GDP)速報値」はまず上がるだろうとする見方が濃厚である。


これが有権者の給料に跳ね返るかどうかだが、公共事業の土木建設業などにはすぐに反映するが、一般企業の場合はまず間に合わない。官邸筋によると「ボーナスには少なくとも反映するよう経団連に手を回す」という“作戦”も考えられているようだ。
 


問題は日銀がおとなしく安倍の掲げる経済成長率2%の目標に応ずるかどうかだ。9日の諮問会議では安倍が日銀総裁・白川方明に対して「10年以上デフレが続き、相当なことをしないとマインドが変えられない。日銀総裁とこの場で議論することは極めて重要だ」と厳しくけん制して、2%のターゲット実施を迫った。出席閣僚らからも日銀に対する“圧力”発言が相次ぎ、さながら日銀を金融緩和でねじ伏せるような会議であったようだ。



かつて日銀総裁・速水優が首相・森喜朗による同様の圧力に「金融政策は日銀が決める」と突っぱねた話は有名だが、白川は小粒でとても抵抗し切れまい。しかも市場が好感して円安・株高の動きが定着しつつある中で、日銀がこれに水を差すことはまずできないだろう。



日銀の独立性が脅かされるという議論があるが、それどころか安倍政権は“確信犯”的に独立性を侵犯しているのであり、応じなければ法改正も辞さない構えだ。従って白川は21〜22日の日銀金融政策決定会合で、物価上昇の目標を「2%」に設定して金融緩和を強めることを決めざるを得ないこととなろう。
 


こうして安倍政権は最初の関門をクリアしつつあり、11日には緊急経済対策、15日には補正予算案の閣議決定、2月には補正の成立、4月には新日銀総裁人事決定、5月には来年度予算案成立、6月には骨太の方針と成長戦略を決定して、参院選へとなだれ込んでいくことになる。



国会は厳しい運営が待っているが、景気回復策は水戸黄門の“印籠”の役を果たして、野党もこれに水を差すような抵抗はしにくいとみられる。とりわけ2線級の党首・海江田万里でスタートした民主党は、総選挙大敗北の“脳しんとう”からなかなか立ち直ることは困難だ。
 


従って、冒頭述べたように参院選までは「最初のうまさが持続する」可能性が強く、安倍の「最大の選挙対策は景気対策」とする戦略は参院選でも奏功する可能性がある。しかし問題は中長期の展望だ。まず第1にとどまるところを知らぬ国債発行だ。



自民党は野党時代に民主党の44兆円の上限を口を極めて批判してきた。それを臆面もなく飛び越えて、50兆円にまでする構えだ。副総理・麻生太郎はいけしゃあしゃあと「44兆円越え」を明言しているが、「後世の世代にツケを回すな」と追求してきた過去はほおかむりだ。1000兆円の借金がどこまで拡大するのか、そら恐ろしいものがあるのである。
 



日銀を財布代わりにしてツケをどんどん次世代に回す。公共事業を大盤振る舞いすれば借金はふくらみ、将来の再増税につながる。安倍は来年春の消費税引き上げが先延ばしになることもあり得るとしているが、まずこれは不可能だとみる。



なぜ公共事業復活に全力を傾注するかと言えば、消費税の前提の「GDP速報値アップ」に狙いをつけているのであり、垂涎の財源を手放すことはあり得ないのだ。おまけに今年後半は消費増税への駆け込み需要が期待される。みすみす掌中の玉は手放さないのだ。



しかしアベノミクスは明らかに“劇薬”であり、失敗すれば制御不能の円の暴落、長期金利の暴騰を招き、日本経済はたたきのめされる。もちろんそうなれば安倍政権は、跡形もなく吹き飛ぶ。首相が大ばくちに出た日本丸の行方は全く未知数である。

         <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年01月09日

◆アックネット選挙なら波乱含みの参院選

杉浦 正章

 

与野党合意で早期成立をはかれ
 


首相・安倍晋三がしきりにネット選挙を提唱するわけが分かった。フェイスブックの「安倍晋三ファンのページ」を見れば一目瞭然。他の政治家のホームページなどと比較すればビジュアル性、話題性において圧倒的にリードしている。恐らくプロのジャーナリストを使っているに違いない。相当金もかけている。


安倍は先の総裁選で首相・野田佳彦から党首討論を持ちかけられて、ネットの「ニコニコ動画」でやろうと逆提案。我田引水に成功した。ネット選挙解禁もネットに引き込んで参院選にも勝利しようという魂胆が見え見えだが、そうは問屋が卸さないのがネット世界。西部劇のような弱肉強食性が選挙において強まり、「風」が勝敗を決める傾向が一段と出てくるであろうからだ。
 


確かに戦争直後に出来た公職選挙法は、物資もカネもなく、伝達方法もままならぬ中で、公正なる選挙実現で、戦後の民主主義に大きく貢献してきた。しかしネット情報化社会となって、ネットが出来なければ人類とは言えない時代となっては、明らかに時代の要請に応じていない選挙法となっている。今や古色騒然だ。



だからといって橋下徹のように選挙中に法律違反のツイッターを繰り返してはいけないことは言うまでもない。「もしかしたら、僕は選挙後に逮捕されるかもしれない。その時は助けてください」とおびえたくらいだから、警察は逮捕すればよかったのに何の配慮か逮捕しない。



もっとも過去のケースでは書類送検しても不起訴に終わっており、公選法事態がネット時代にザル法化しているのだ。
 


何と言ってもネット選挙の先進国は米国だ。とりわけ大統領選ではネット選挙が威力を発揮しており、オバマはネット戦で勝利した側面がある。「あなたの50ドルは他の人の50ドルと合わせて100ドルになる」という電子メールを大量に送って個人献金を呼びかけた。



その結果、総額3億4千万ドルもの個人献金を集めることができた。小口献金をした有権者が、選挙が進展するに従って2回3回とクリックした結果だという。
 


しかし、初めてネット選挙をしようというのに、ネット献金まで認めるかというと、現状では不可能に近い。
まず献金の安全性が問題だ。ただでさえネット詐欺が横行している状況下で、まんまと詐欺師に働く場所を提供するだけという結果が予想されるからだ。急がなければ参院選挙に間に合わないこともある。



従って当初の法改正は、現在総務省見解でネットを文書図画の頒布とみなして禁止している方針を撤回する程度しかできまい。つまりホームページ、ブログ、ツイッター、フェイスブックなどに限っての解禁であろう。



参院選は7月21日が有力であり、遅くても5月中、政党や個人への周知期間の徹底を考えるともっと早い段階での成立が不可欠となろう。もちろん政党、候補者は今から準備して態勢を整えなければ間に合わない。
 



ネットで評判になるには何といってもビジュアル化と話題性だ。現在の政治家のホームページを読む気にならないのはこれに欠けるからだ。NHKの政見放送が始まると瞬時にチャンネルが変えられるのと同じで、人を引き留める力が無ければ、いくらネットを活用しようとしても無理だ。



ひとたび評判が立つとあっという間に伝搬して、その候補のサイトが浮かび上がる。ネット選挙は政党にとっても個人にとっても「風」の選挙になるゆえんだ。
 


安倍はネット選挙の低コストを強調するが、よく分かっていない。こればかりは逆ではないかと思う。しょせん素人が話題性のあるサイトを作ることは不可能であるからだ。今でも広告代理店、PR会社、ウエブ製作会社が、政治家のホームページなどを作るケースが多いようだ。



選挙ではこの傾向がさらに強まり、代理業者の能力によって当落が左右されることになり得る。候補が金をいくら払えるかによってサイトの良否が決まる可能性が高い。安倍は自分で高価なサイトを作って置いて、「金がかからない」はない。よきにはからえの殿様か。
 


さらに立法の過程で重視しなければならないのは、「なりすまし」対策だ。候補になりすまして選挙妨害するケースが世界中で見られる。



2010年のイギリス総選挙では保守党党首のデービッド・キャメロンと同じ名前のサイトが出現、ポスターの画像や文字を換えるなどの妨害行為が行われた。巧妙なる便乗型選挙運動の例もある。



2009年のフロリダ州の市長選で、ある候補がグーグルと契約して有権者が別の候補を検索でクリックすると、自分のサイトにジャンプするボタンが現れるようにした例がある。まさに生き馬の目を抜くネット選挙である。
 


安倍の提唱によって恐らく公選法改正案は成立する流れだろう。公明党も賛成だし、他の野党も推進論が圧倒的だ。どうせやるなら与野党は早期に成立させて、混乱を未然に防ぐ必要があろう。



参院選はネット選挙によって波乱含みの様相となるだろう。安倍がいくら先行しているからといって、有利になるとは限らない。一夜にしてどんでん返しもあり得るから恐ろしい。



ここで注意が必要なのは一般人のホームページやブログにも規制がかかりかねない点だ。これは憲法が保障する言論の自由に、真っ向から抵触する恐れがあり、慎重に事を運ぶべきであることは言うまでもない。クギを刺しておく。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月08日

◆中国に“尖閣紛争”の魂胆はない

杉浦 正章



負ければ共産党独裁が揺らぐ
 

今年の日本外交最大の課題は何と言っても尖閣問題だが、9月の反日暴動以降の中国政府の出方を観察すれば、事態を武力紛争に発展させる魂胆はないということだろう。領海・領空侵犯などで“ちょっかい”はだしても、“尖閣紛争”に発展させることはない。今の軍事力ではとても日米連合軍に勝つ能力はない。


一方で、中国国内を見れば、民主化・言論の自由を求める動きが新たに台頭、各地で頻発する“格差暴動”“汚職暴動”などで足元が揺らいでいる。筆者は中国が“尖閣紛争”に出て敗れれば、日露戦争でロシア革命が起きたのと同様に民主化の革命がほぼ確実に発生、共産党独裁体制が危うくなると見る。


従って日本政府が当面なすべきことは、尖閣では譲歩することなく、ゆるやかな対中封じ込めで、包囲網の輪を広げていくことだ。
 


もっとも興味ある事態が、7日発生した。広東省に拠点を置く新聞「南方週末」が、今月3日付けの新年号で、政治の民主化や言論の自由などを求める記事の掲載を予定していたところ、地元当局の指示で、記事の内容を大幅に改ざんさせられたのだ。


これに対する抗議の輪が北京のジャーナリストにまで広がっている。習近平が最高指導者に就任して間もないこの時期に、国内で動揺が広がっているのだ。「南方週末」の本社前では7日、記者たちを支援するなどとして300人を超える群衆が集まて公然と抗議の声を上げた。テレビの前で勇敢にも当局を非難する声が上がったのだ。
 


習近平は弾圧か封じ込めか、放置かの選択を迫られている。当局はネットへの書き込み規制に躍起だが、ネット規制はいたちごっこで効果は上がるまい。ネットには改ざん前の記事が公開された。共産党政権初の公然たる民主化要求の波が立ったのだ。



一方で中国の人口13億人のうち、9億人が農村戸籍であり、都市部の経済発展に反比例するかのように格差が広がっている。党幹部の汚職、不正も目に余るものがあり、不満はマグマとなって噴出を繰り返している。尖閣国有化は中国政府に絶好の不満のはけ口を与える結果となった。この愚を日本政府は繰り返してはならない。


石原慎太郎が船だまりと公務員常駐を主張して、安倍がこれに雷同したが、そんなことをすれば絶好の機会として習近平は活用するだろう。再び官製暴動だ。軍事衝突も視野に入れるかも知れない。
 


それにつけても日本の外交力は落ちた。こともあろうに自由主義圏ナンバー2の日本の新首相が大統領・オバマに会いたいというのに、ワシントンの大使館はアレンジも出来ない。急きょ外務次官を派遣するという体たらくだ。首相・安倍晋三は仕方なく初外遊を米国ではなく東南アジア歴訪に切り替えようとしている。



その米国は、政府も議会も中国の台頭と南シナ海、東シナ海での暴走に手をこまねくつもりはない。米元国務副長官・リチャード・アーミテージは、「中国はアジアの覇権を着実に握ろうとしており、中国の影響力は米国をしのぐ可能性もある」と危惧(きぐ)の念を表明。「アメリカが関与しない限り太平洋は中国の湖になってしまう」と危機感を募らせている。



おそらく米国は沖縄ー尖閣ー台湾ーフィリピンと続く第1列島線で中国の海洋進出を食い止めるため、尖閣を戦略上の重要拠点と位置づけ始めているのだろう。南沙諸島と異なり、日本の軍事力も活用できる。尖閣で中国が軍事衝突に出れば、日本の施政権の及ぶ範囲である尖閣限定の対中戦争も辞さないだろう。日本は好むと好まざるとにかかわらず、「米中冷戦の構図」に組み込まれる流れだ。
 


こうした力関係の中で日本政府は今年の尖閣問題にどう対処すべきだろうか。外交筋によると裏舞台における外交上の焦点は、「尖閣諸島に領土問題は存在しない」という日本側の主張を日本政府が変更するかどうかに絞られているといわれる。中国は変更させて日本を交渉の場に引きだして、圧力をかけ続けるというのが選択肢の一つだというのだ。



安倍周辺によると安倍は中国大使・程永華と秘密裏に会談を続けており、その辺を話し合っているに違いない。しかし尖閣問題で日本は外交的にも軍事的にも優位にあるのであって、国際的にも認められている尖閣領有権問題で譲歩する必要はさらさらない。



トウ小平が棚上げしたことを懐かしがる風潮が日本にはあるが、甘い。トウ小平は日本の経済・技術獲得が尖閣に優先する課題であると判断しただけである。GDPで日本を追い抜いた以上、生きていれば真っ先に尖閣領有権を主張するであろう。
 


中国は世界史的に見ても超大国になる必須条件として自らの海洋国化が不可欠とみており、この路線が今後拡大こそすれ縮小することはない。経済力の拡大が必然的にシーレーンと海洋拠点の確保、エネルギー資源の新規獲得に向かわざるを得ないのだ。そのせめぎ合いの中核に尖閣諸島が位置づけられるのだ。



これに対抗するには筆者がかねてから主張しているように、日米結託してインド、東南アジア諸国、オーストラリアなど自由主義の価値観を共有する諸国との間にゆるやかなる対中包囲網を築き、中国の暴発を封じ込めるしかあるまい。もちろん中国は領海、領空侵犯でちょっかいを仕掛けてくるが、これはあくま国内向けのちょっかいであり、本気ではない。


ハエを追うように追い払えばよいのだ。政治・安保と経済は別次元で考えるべきだ。昔から対中関係は「政経分離」という便利な言葉がある。当面はこれでいくしかない。こうした状況下での安倍の東南アジア歴訪は意義が深い。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年01月07日

◆安倍型・小心翼戦略で危機突破出来るか

杉浦 正章
 

“自重”よりも“打って出る”時だ
 


ちょっと基本戦略が違うのではないかと思えて仕方がないのが、政権に就いた後の首相・安倍晋三だ。選挙期間中の勢いはどこえ消えたのか、ほとんどの公約を“先送り”してしまった。選挙で有権者が示した保守回帰の潮流はまるで無視して、安倍カラーを封印しつつある。


理由は参院選対策の安全運転だというが、これでは有権者はキツネにつままれたようになる。それどころか、民主党政権と同じ「やるやる詐欺」にあったような気分になる。これでは自民党は“固い基礎票”まで失って、参院選に勝てるわけがない。
 

確かに出だしは好調だ。スタートから弾みがついているとも言える。円安・株高がそれを象徴している。閣僚の発言をみてもまさに手だれの安定感がある。


安倍の新年早々の発言も「何より大切なのはスピード感と実行力だ」「喫緊の課題はデフレと円高からの脱却による経済再生だ」「まずは『強い経済の確立。国民一丸となって『強い日本』を取り戻していこうではないか」と言葉が踊る。


市場は本能的に「安倍ならやってくれるかもしれない」と反応しているのだ。老舗の自民党らしさが、久しぶりに市場と呼応した期待感を醸し出している。
 

昔から「景気は気から」と言われてきた。民間に「やる気」が生ずる事が、まず何よりも大切なのである。民主党政権で何をやっても駄目であった実態を見せつけられてきているから、市場はわらをもつかむ思いで「安倍買い」に走っているのだ。「アベノミクス」とはやしているのだ。


しかしこの「アベノミクス」はいつ「アベノバブル」とはじけてしまうか分からない危険な賭けを伴ったものである。野党が「口先介入」と批判するが、まだ実体が伴っていないことは言うまでもない。
 

安倍は「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」の3本の矢で、デフレ脱却を図るとしている。その手始めが日銀を押さえ込んだ2%のインフレターゲットの設定であり、2月に成立させる景気対策の12兆円といわれる巨額の補正予算だ。


一見もろ手を挙げて歓迎しているかに見える市場は民主党が封印してきた“公共事業の復活”に踊らされているのだ。というか、裏では株や為替で差益を引きだしていつでも逃げられるように、酔ったふりして踊っているというのが正しいかも知れない。超大型補正予算と言っても、景気を押し上げる効果は限定的で、財政を一層悪化させる可能性がつきまとう。


しかも効果が数字になって現れるのはとても参院選挙には間に合うまい。早くて1年後だ。加えて本予算は5月成立が最短であり、場合によっては会期末までもつれ込むかも知れない。参院選に間に合うわけがない。
 

したがって景気だけに頼った安倍の「安全運転」なる基本戦略の危険性はここにあるのだ。景気がつかの間のバブルとしてはじけたらどうするのかということだ。参院選挙は目も当てられない結果となるだろう。


ここで先の総選挙を振り返れば、景気回復はもちろん重要な柱であったが、基本的には中国の尖閣暴動に反発した保守化の流れが自民党圧勝に大きく作用した。自民党内やマスコミは自民党の得票が伸びていないことを“反省”材料として指摘し、参院選での揺り戻し警戒論が台頭しているが、何も圧勝して反省する必要はない。


2大政党の票が伸びないままの圧勝は、民主党圧勝の時と何ら変化はないのだ。米大統領選では、勝てば公約は確実に実行が求められるし、大統領はちゅうちょすることなく実行に移す。
 

ところが安倍は、かねてから指摘しているように“小心翼翼”丸出しの安全運転だけに徹しようとしているかに見える。それどころか、まさかやるとは思えないが、与野党首脳が政治生命をかけた消費増税すら封印しかねない姿勢を垣間見せている。


4〜6月の景気指数によって秋に政府が行う増税の最終判断で、14年4月実施の先延ばしがあり得ることをほのめかし続けているのだ。


原発も安全なものから再稼働すると宣言して選挙に臨み、原発立地地域はおろか全国的にもほぼ完勝したにもかかわらず、慎重姿勢に転じた。原発新設に「国民的な理解を得ながら新規につくっていくことになるだろう」と述べていた方針を覆し、「直ちに判断できる問題ではない。安全技術の進歩の動向も見据えながら、ある程度時間をかけて、腰を据えて検討したい」と述べた。


ここは産業空洞化を食い止め、景気回復を促進させるためにも早期再稼働は不可欠なのだ。夢にも電気料金の高騰をインフレターゲット実現に“活用”しようなどと考えるべきではない。それこそ本末転倒となる。
 

安倍が公約に明記させた集団的自衛権行使の確立についても、官房長官・菅義偉は「行使できる環境を整備したい」と述べ、有識者会議で検討する方針を明らかにした。


自民党では集団的自衛権の行使を可能にする「国家安全保障基本法」の制定まで決定しているにもかかわらず、今更「有識者」なる有象無象を集めて何を議論するのかと言いたい。憲法改正が伴う「国防軍」については「こ」の字も言わなくなった。


何も有権者がそっぽを向いた日本維新の会の石原慎太郎のごとき極右路線を取れと言っているのではない。同盟国に対する集団的自衛権などは世界の常識だ。こうして何でもかんでも先延ばしで、まさに触らぬ神に祟(たた)りなしに徹しようとしているのが政治姿勢の実態だ。はっきり言ってこれでは参院選に勝てない。八方美人では勝てないのだ。


なぜなら保守回帰を求めた有権者は自民党圧勝の“核”を構成していたのであり、ネットでは早くも落胆ムードが横溢(おういつ)し始めている。安倍は自らの参院選大敗を回想して、羮(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹いているときではない。ここは“びびって”あちこちに物欲しげな秋波を送っているときでもないのだ。


獲得した294議席を背景に、景気対策以外の公約でも“自重”よりも“打って出る”戦略に転換すべきだ。それこそが道を切り開くのだ。

<<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月21日

◆内閣は安倍・麻生コンビ、党は石破主導

杉浦 正章
 


安倍につきまとう病気の不安
 

安倍新政権の骨格が固まってきた。太筆書きすれば自民党幹事長には総選挙の大功労者である石破茂を留任させ、副総理・財務相には親密な関係にある元首相・麻生太郎を起用して2本柱とする。内閣官房は“お友達”の側近でだけで固めるという構図だ。


総じて自ら名付けた“危機突破内閣”は、挙党態勢を目指して安定感があるといえる。人事の背景を分析すれば、「麻生副総理」は“石破強大化”へのけん制の側面を持ち、潰瘍性大腸炎再発による弱点を補う思惑があろう。
 

26日の組閣に先立って、永田町に様々な人事情報が飛び交っているが、確度の高いものを挙げれば、まず官房は圧倒的に側近で固めて防御ラインを敷いている。官房長官には安倍擁立の立役者の幹事長代行・菅義偉を起用。


同副長官には衆院から総裁特別補佐・加藤勝信、参院から政審会長・世耕弘成を内定。加藤は先の消費増税に関する3党合意をとりまとめた政策通の側近。世耕は第1次安倍内閣でも首相補佐官を勤めており、官房は手堅い布陣だ。
 


一方閣僚人事の目玉はいささか「昔の名前で出ています」気味だが、親しい麻生を副総理兼財務相に起用し、民主党政権で強大になりすぎた財務省に“重し”を乗せた。加えてやはり総裁経験者の谷垣禎一を重要閣僚に起用、親しい石原伸晃を入閣させ、挙党一致色と重厚さを濃厚に打ち出す。



側近の甘利明は景気回復の司令塔となる経済財政諮問会議と、新設の日本経済再生本部を担う「経済再生担当相」に起用する。


加えてやはり側近の下村博文を環境相に、公明党から入閣する前代表・太田昭宏を国交相とすることを検討している。防衛相には国対委員長・浜田靖一が取りざたされている。加えて政調会長・茂木敏充、参院から元副外相・山本一太、山谷えり子が入閣しそうだ。



新政権の内閣側は総じて“お友達色”が濃厚に出ているが、これは安倍の政治姿勢にも通ずる側面がある。つまり“身内”起用で防御の土塁を出来るだけ厚くしようということだ。安倍にはいささか“小心”さが感じられるゆえんであろう。



これには永田町でささやかれている問題が絡んでいる。それは第1次安倍内閣を退陣に発展させた潰瘍性大腸炎の再発である。


安倍は9月の総裁選では「2年前に画期的な新薬ができて、そのおかげですっかり完治いたしました。」と述べていたが、総選挙期間中はトイレに駆け込む場面も目撃されている。最近では説明も「医学的には完治していないが、新しい薬で十分コントロールできている。主治医から太鼓判を押されている」と変化して、再発を認めている。
 


安倍の言う画期的な新薬は「アサコール」のことのようだ。この薬は大腸の炎症を抑え、腹痛、血便などを改善するが、副作用もある。主な副作用として、腹痛、下痢、腹部膨満、吐き気、頭痛、潰瘍性大腸炎の悪化、大腸ポリープなどが報告されているという。下痢がさらに悪化する可能性があるのだ。


選挙戦の激務には耐えられても、首相の激務に耐えられるかどうかだ。選挙戦は“攻め”だが、首相の座はこれに神経をすり減らす“守り”が加わる。
 


こうした事情から安倍は「体調管理を優先し、休養できるところはちゃんと休養するという原則を持ちたい」と、発言しているが、これは言いたくはないが言った発言だろう。そこで最大の目玉である「麻生副総理」人事が「なるほど」と首肯できることになるのだ。「休養」の「補完」的な色彩を帯びるのだ。



加えて麻生人事には冒頭挙げた石破けん制がある。というのも今度の選挙は石破の功績が極めて大きい。石破は谷垣に政調会長をクビになった後、地方の落選候補支援に専念した。総裁選の際、地方党員票でトップに立ったのは、紛れもなくその努力の表れであった。


永田町ではいささか大げさだが自民党294議席中200議席が石破チルドレンとの説もある。石破の発言力は政権最大であろう。



麻生はかねてから石破とはそりが合わず、内閣の重鎮に据えれば党は石破主導型でも、内閣は安倍・麻生主導型で対応できるという算段がある。


しかし麻生は「お坊ちゃま型失言癖」があり、最近の街頭演説でも安倍のいる前で「安倍さんの健康がどうとか言っている人がいるが、言っていた人の方が倒れた。健康というのは、人がとやかく言うものではない。自分が一番分かっているのだ」と安倍がひたすら触れないできた病気に触れてしまった。


政権時代に露呈した漢字の読み違い、高級バー通いなどマスコミが喜びそうな性癖を持っており、記者会見や国会答弁が危惧(きぐ)されるところだ。


こうして様々な問題を抱えながらも安倍政権はスタートを切るが、久しぶりの本格政権であることは確かだ。かじ取りはうまくやってもらいたいものである。


★小生明日から冬休みに入ります。執筆再開は1月7日からとします。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月20日

◆経済は自転車操業、安全運転の外交・安保

杉浦 正章
 


政権の実態は事実上自民党に移行
 

内閣発足前から政権の実権は自民党に移行した。矢継ぎ早に打ち出す総裁・安倍晋三ら執行部の方針は、明らかに景気回復最重視に貫かれており、「アベノミクス」として市場に好感されている。


株価は1万円を突破、為替相場もNY市場で84円台半ばと一時1年8カ月ぶり安値をつけた。10兆円の大型補正、2%の物価上昇目標、10年間200兆の公共事業投資とくれば市場は反応せざるを得ないが、問題は長続きするかだ。


安倍は金利急騰などの危険を避けるためには次々と対策を打ち出さざるを得ず、“自転車操業”的なリスクを伴う。 
 

副総理での入閣が取りざたされている元首相・麻生太郎は最近安倍に「参院選が終わるまでは景気・経済一本でいくべきだ。外交・安保・防衛には一切触れるな」と忠告した。安倍はこの麻生提言を忠実に守りそうな構えだ。選挙圧勝後の安倍は一気に景気対策に向けての動きを加速し始めた。


まず日銀総裁・白川方明と会談。一方で幹事長・石破茂が官房長官・藤村修に話しを通した後、19日には財務省、内閣府、国土庁の次官と会談。指示を連発するなどめまぐるしい動きを見せている。


公明党とも連立の政策協定を結び、10兆円の補正予算が固まった。正式な政権移行後は、小泉政権で重視された経済諮問会議を復活させマクロの経済対策を進める。自民党の公約である「日本経済再生本部」が中小企業支援策や雇用対策などに取り組むのと合わせて、車の両輪体制の「合同会議」で景気対策を推進する。


担当相には政調会長・甘利明を起用する方向だ。総じて安倍執行部の取り組みは、常に危なっかしさが伴った民主党政権に比べて、“手練れの安定感”があることは確かだ。
 

白川との会談の中身は出ていないが、明らかに安倍がさらなる金融緩和で押さえ込んだ形となった。白川はかねてから安倍の路線のリスクを指摘しており抵抗するかに見えたが、選挙圧勝を背景にした安倍の金融緩和路線を認めざるを得ない方向となった。


野田内閣とデフレ脱却への「共同声明」で当面「1%」に物価上昇を目指すとした方針は撤回され、安倍の「物価目標2%を」受け入れる方向となった。新政権や国会を無視できないという政治的妥協に動いたのだ。


これまで日銀はデフレ脱却の実績を全く上げていないだけに、押さえ込まれても無理はないところだろう。既に政界の関心は4月で任期が切れる白川の後任人事に移っており、元財務次官・武藤敏郎、前財務次官・勝栄二郎、元日銀副総裁・岩田一政、元経済財政相・竹中平蔵らの名前が取りざたされている。
 


こうしたアベノミクスを市場ははやしにはやし、筆者が先に予言したように株価は「安倍相場」で1万円台に届き、円安にも誘導されている。しかしこの1万円台乗せは“危うさ”を土台としている。買いの中心は外国人投資家であり、アベノミクスが本当に機能してゆくのかという懐疑論が常につきまとうからだ。


結果を出さない限り外人の投資はすぐに離れてしまうだろう。問題は日銀の金融緩和をメインに据えても限界があることだ。賃金の上昇が伴わない物価の上昇となれば消費はさらに冷え込む。設備投資が連動しなければ大量にカネを放出しても効果は出ない。


石破が19日今年度の新規国債発行額について民主党政権が上限に定めてきた「44兆円」を「超えないと断言できない」と述べたように、財政危機が拡大する副作用が常に伴う。


しかしそれだからと言って、手をこまねいていられないのが実情なのだ。来年夏の参院選までに結果を求められているのだ。ここはリスクがあっても“賭け”に出ざるを得ないのだ。
 

外交・安保でも安倍は圧勝後自らの主張を封じている。確かに尖閣諸島に船だまりを造り、公務員を常駐させるなどの方針をいま実行に移せば、日中軍事衝突もあり得る。石原慎太郎と歩調を合わせることなど百害あって一利なしだ。参院選にもマイナスに作用するし、米国は日中衝突を望んでいない。



1月下旬にも予定される、大統領・オバマとの会談では、同盟関係の強化をうたうことになろうが、日中間をきわどい方向に持って行く流れにはならないだろう。インド、東南アジア、オーストラリアを含めたゆるやかな対中封じ込めを進めることが大切である。オバマとはこの方向での合意を目指すべきだ。


集団的自衛権の確立は基本的に内政問題であり、実行して当然だ。そこで焦点となるのが環太平洋経済連携協定(TPP)だ。これは一種の対中包囲網の側面があり、安保関係にも強い影響をもたらす。


安倍は「聖域なき関税撤廃に反対」と述べてきたが、問題はその「聖域」をどうするかに絞られてくるだろう。地域の経済大国の日本が交渉参加しなければTPPは事実上成り立たず、オバマは強く交渉参加を求めるに違いない。交渉に参加して「聖域」を作る方向が流れだが、参院選前の方針明示が可能かどうかは微妙であろう。


こうして外交・安保では安全運転を余儀なくされるのが流れだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年12月19日

◆敗軍の真紀子に「兵」は語れぬ

杉浦 正章
 


史記に「敗軍の将兵を語らず」とある。戦に負けたものは兵法について意見をの述べる資格はないのだ。ところがこの内閣の落選閣僚は抜けしゃあしゃあと兵を語る。その先頭に立ったのが文科相・田中真紀子だ。


批判の矛先を野田の解散決断に向けた。日本には古来惻隠の情という言葉がある。負け戦の敵の大将を人間として思いやるような心である。その雰囲気が政界にも国民の間にも横溢しているのを、真紀子は読めない。負けたのは「あんたのせいよ」と言わんばかりの発言を繰り返した。


父田中角栄と真逆の性格を臆面もなくさらす。真紀子落選の16日は、角栄の命日であった。もうこれくらいにして生き恥をさらしてくれるなという父親の声が草葉の陰から聞こえるようである。
 


13閣僚のうち8人を落とした野田内閣は人間としても三流ばかりを集めたことになる。田中に加えて財務相・城島光力、郵政相・下地幹郎、厚労相・三井辨雄らの閣議後の陳腐な恨み節を聞くと、民主党というのは本当に人材の居ない政権であったと言うことが改めて知らされる。


とりわけ田中がひどい。野田の解散を「自爆テロ解散」と形容し、「自民党から『辞めなさい』『いつ解散するのか』と、単純な二言をずっと言われて、極めて独りよがりに決断した」とこきおろした。


しかし文科相として常識外れの大学認可取り消しを得意げに発表して、世論のごうごうたる反発を買ったのは誰か。「自爆テロ」の火薬をせっせと詰めていたのは張本人ではないか。


「今まで民主党が発信してきたことを継続するのだったら、党代表を変えるとか、8月の任期いっぱいまでやって成果を出す方法はあったと思う」と首相を代えて解散を先延ばししたなら勝てたと強調した。


しかし勝てる要素は絶対無い。なぜならほぼ確定的に民主党政権は末期症状を呈し、国民に唾棄されているからだ。支持率を上げる材料などはゼロだ。内閣が続けば野党は通常国会で首相と文相への不信任案を提出したであろう。可決も必至であっただろう。


任期満了選挙などしていたら、それこそ社民党と議席を争うような政党になっていたのだ。野田の判断で辛うじて野党第1党にとどまることが可能となったのだ。
 

田中の選挙は負けるべくして負けた。真紀子が自らの宣伝カーのウグイス嬢に「下手だからおりなさい」と、車を降ろしたという話しが選挙区にあっという間に伝わった。これで勝負があったと思ったが、田中真紀子は案の定落選した。


田中角栄健在なりしころ、娘を田中邸にお手伝いに出す地元の親は「あそこには鬼が居るけど、角さんは優しい人だから我慢するんだよ」と因果を含めて送り出したものだが、早い娘は半日で飛び出して帰ってきたという。


それでも真紀子が当選できたのは、田中角栄の「情の政治」の残光があったからだ。今度ばかりは、さすがに我慢強い新潟の有権者も「ノー」を突きつけた。「図に乗るな」ということだろう。
 

どうして人間に優しい父親からこんな娘が出来てしまったのだろうか。真紀子発言はすべて敗者を水に落ちた犬を叩くように叩く。野田批判などはまだいい方で、安倍晋三などはかつて子供が出来ないのを理由に「種なしスイカではないですか。種なしスイカに何が出来る」と攻撃されている。


「かんぞうだか、しんぞうだか」と発言し、「51歳のコピー人間で頭が悪い」とまでこき下ろされている。「人間には、敵か、家族か、使用人の3種類しかいない」という人間不信で成り立っている思考形態は父親とは全く異質のものであり、その人生観には哀れみさえ覚える。


田中は首相時代秘書官に対してもわざわざ毎晩労いの言葉をかけたり、守衛にまで気を遣った。ライバル三木派の渋谷直蔵の妻が死去したのは夏だった。田中はすぐさま生花を贈った。本葬まで一週間あると知ると、「花が枯れている頃だ差し替えよ」と指示したものだ。
 


真紀子は今後の身の振り方について「この地域に責任がある」と述べ、政界引退は否定した。「政治は天命だと思っています。大好きな仕事ですから」と再出馬に含みを持たせた。不屈の精神だけは父親譲りのようだが、残念ながら田中の威光はもうない。


角栄の有名な言葉に「跳ねた鯉が地面に落ちたら干物になるだけだ」がある。もういいかげんにあきらめた方がいい。政治は君を必要としていないのだ。

          <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年12月18日

◆維新と未来に“亀裂”の兆し

杉浦 正章 



維新は参院選までの人気維持不可能
 

早くも第3極の内部矛盾が露呈し始めた。日本維新の会では代表・石原慎太郎と副代表・橋下徹の間で、首班指名の投票先をめぐる確執が表面化。本来なら党分裂に発展する重大事だが、何とか石原に投票することになった。


橋下と石原の「双頭のおろち」が枝に引っかかって動けなくなる兆しであり、今後同党は橋下と石原が我執の摩擦を起こし続けるのは必死だ。


加えて石原がほぼ100%の確立で舌禍事件を起こす。日本未来の党も代表・嘉田由紀子が党役員人事で小沢押さえ込みにかかっているが、甘い。コップの中の嵐ならぬ、ぐい飲みとおちょこの中の嵐が吹き荒れている。
 

ぐい飲みの嵐は維新。橋下が 「日本維新として安倍晋三自民党総裁に投票する」と発言したのには驚いた。自分の党の代表ではなく、他党党首に投票しようというのだから国政への理解度が分かるが、背後に石原との相当な確執があることを物語っている。


怒った石原はマスコミに向かって「政党のプライドというか独自性から言って論外だ。平沼さんが好ましい」と思ってもいない平沼赳夫の名前を挙げた。本来なら内々で調整するべき場面だがマスコミに向かって発言するところがポピュリズム政党たるゆえんだ。


結局石原の思惑通り自分への投票で決着がついたが、これをあえて維新の“崩壊の芽”と呼んでおこう。今後ことあるごとにこの種の摩擦が起きるのだ。
 

国会議員団も一枚岩ではない。東国原英夫が17日のテレビで石原について「顔なんか見たこともないし、今後も見ない」とこき下ろしたのだ。石原と東国原は知る人ぞ知る犬猿の仲。2007年の都知事選で石原が3選を果たした後、東国原がブログで「東京の傲慢が復活した」などと批判。


石原は「田舎モンが東京のことをとやかく言うな!」と記者会見で怒りをあらわにした。両者の“けんか”は依然として続いていることを物語っている。
 

こうしたあつれきの背景には選挙をめぐる確執がある。橋下は石原の口車に乗って、太陽との合流をしたが、これが大失策であったことが選挙結果に如実に表れた。当初は200議席、選挙直前でも100議席と言われてきた維新だが、筆者が夏頃から「せいぜい50議席」予言しているとおり54議席にとどまったからだ。


これははっきり言って橋下が石原の人気を過信した結果だ。「関西は橋下」は一応成功したが、「関東は石原」が惨敗となって現れ決定的に失敗したのだ。しかし苦労して「関西」が獲得した54議席は石原の“支配下”に置かれる図式では、何のことはない、橋下は石原に利用されただけとなる。


それも目標であった自公の過半数阻止は実現せず、「維新旋風」にはほど遠い結果となったのだ。路線も復古調の石原ペースに傾斜してしまった。石原と組んだ自業自得がなせる業である。
 

それでも石原は「これからは第2極となる」と胸を張ったが、庇(ひさし)を借りて母屋を取るのがやっとで、第2極が実現するだろうか。まずしないと思う。


なぜならるる述べてきたあつれきの構図に加えて、石原本人に根ざす欠陥が今後より一層表面化するからだ。それは老人特有のすぐ切ぶちれる短慮と、時代錯誤の極右国粋主義だ。こんご石原は憲法破棄、徴兵制実現、原爆所有発言などをことあるごとに繰り返し、こらえ性なく記者会見でぶち切れるだろう。


当然政治記者は甘くはない。ぶったたく。これが繰り返されて、維新の支持率はどんどん下がる。橋下が夏の参院選挙への出馬を狙っても、その頃は維新は息も絶え絶えではないか。
 

橋下はその参院選出馬に関して、自治体の長との兼職を禁止している地方自治法の改正を唱えているが、これにもあきれた。1自治体の長の“都合”のために法改正が実現するとでも思っているのだろうか。


すべては自分を中心に回す全体主義的な発想が止まらない。自民党幹事長・石破茂は「知事や市長が権力を持ったまま国会議員へ出馬となれば、当選するに決まっている。大阪で人気があるからと調子に乗り過ぎと違うか。そうて思うのは私だけだろうか」とこき下ろした。宜(むべ)なるかなである。
 


一方、おちょこの嵐は未来。読売の編集手帳が見事に嘉田の姿を描ききっている。「日本未来の党が嫌われた理由も分かる。嘉田由紀子代表は名前といい、おっとり典雅な語り口といい、甘ったるい夢物語で聴衆の耳をくすぐる手法といい、“女・鳩山”とでも呼びたいくらい由紀夫元首相にそっくりである。勝てる道理がない」。


その通りだ。まるで「鳩山山姥」(やまんば)の甘言のようで気色が悪いのだ。その嘉田が26日の国会までに未来の役員人事を「自分が責任を持って決める」と述べているが、基本は小沢一郎の押さえ込みにある。


しかしこちらも一知事が、衰えたりとはいえ政界の実力者への押さえ込みが利くと思っている方がおかしいのだ。61人が9人に減ったとはいえ事実上の小沢支配が続かざるを得ないのだ。16日の小沢との会談も思わしくなかったようだ。


滋賀県議会が党首と知事の兼務を問題視して嘉田への辞職勧告決議案の検討に入ったが、もっともだ。むしろこの際、不信任案を可決した方がいいのではないか。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月17日

◆自民党は勝って兜の緒を締めよ

杉浦 正章
 


「脱原発」政党は軒並み敗北、再稼働へ
 

選挙結果は自民党がやる気になれば総裁・安倍晋三の右傾化路線で突っ走れることを意味する。同党が294議席と300議席に迫り、自公で325議席と320議席の3分の2を突破し、その補完勢力として日本維新の会の54議席が登場したことが意味することは、そういうことだ。


しかし安倍も留任の幹事長・石破茂も当面はドラスティックな動きは控え、“慣らし運転”に徹する構えだ。内政では日銀法改正も含めた大胆な景気対策に全力を傾注して、超大型補正予算をまず1月の通常国会冒頭で成立させる。原発も亡国の「原発ゼロ」政党が軒並み敗北したことを受けて、安全なものから再稼働を進める。


外交ではまず民主党政権が毀損した日米安保体制の再構築に取り組む。安倍の1月訪米も視野に入れる。ただし自民294議席は、百家争鳴で党運営を極めて難しいものにし、公明党との連立も改憲や集団的自衛権確立を進めれば危うくなる危険を内包している。
 

総選挙結果を俯瞰(ふかん)すれば、小選挙区制特有の極端なぶれを示している。前回308議席を獲得した民主党が、その5分の1以下、選挙前の4分の1以下に激減、自民党が3倍増になったことが端的に物語る。


これは極端な政策の変更を招き、日本の政治を常に不安定な状況に置くことを意味する。中選挙区への回帰が不可欠であり、安倍は早期に第九次選挙制度審議会を発足させ、制度問題に取り組むべきだろう。


自公圧勝は参院のねじれを衆院の再可決でカバーできる体制を意味するが、これは憲政の常道からいってよほどの重要法案でもない限り禁じ手である。常には使うべきではない伝家の宝刀として温存すべきであろう。
 

ただし、日本維新の会が第3勢力として登場したことは自民党に新たな選択肢を与えることとなった。安倍が維新と連立を組むことは当面ありえないが、政策が一致すれば自公と維新で379議席に達しており、事実上の“大政翼賛政治”になり得る側面がある。


維新はその信条、保守路線から見て自民党の補完勢力としての役割を果たすことになりそうだが、代表・石原慎太郎の目指したキャスティングボートを握る構図にまでには至っていない。しかし、集団的自衛権の行使への立法措置など維新を活用すれば可能となる。


公明が反対しても自民と維新でも3分の2議席を上回ることが可能であり、やる気になれば安倍はその右傾化の信条の遂行が可能となった。また民主は、半年後の参院選をにらんで野党色を強めるものとみられるが、税と社会保障の一体化などでの自公民路線が選挙後にも継続される可能性があり、何でも反対路線は取りにくい。
 

もっとも安倍は16日夜選挙結果について「有権者は自民党を100%信用してくれたわけではない。3年間の民主党政権の混乱に終止符を打ったのだ」と慎重な分析をしており、姿勢は圧勝で上づっていない。憲法改正についても「国民的議論が必要であり一歩一歩進む」と述べている。


石破も同様の考えを述べており、自民党は重心を低くして政権運営を進める可能性が強い。とりわけ先に安倍を病気にした参院のねじれは解消されておらず、自公では16人が足りない。


みんなの党など小政党を引き込めば過半数を維持できるが、ここはやはり民主党との部分連合を模索することが適切だ。参院民主党が分裂して自民と合流すれば別だ。


常に足かせとなってきた赤字国債発行法案は3党合意で本予算と一体処理を確認しているのも、安倍にとってはプラスの作用をもたらす。


総選挙の焦点であった原発の是非については、原発立地の39選挙区で自民党が数区を除いて圧倒的な勝利を収めており、石破が述べていたように安全を確認した原子炉から再稼働が行われるだろう。
 

自民圧勝に導いたのは民主党の体たらくへの批判に加えて尖閣、竹島、北方領土など領土問題における新事態が大きく作用した。


とりわけ尖閣問題での中国政府の“官製暴動”が、有権者の強い反発を招き、安倍、石破の右寄り路線と響き合ったことが決定的要因となった。しかし安倍が外交・安保で極右の石原と同様の路線をとることは、日中軍事衝突につながる危険を帯びており、慎重な対応が望まれる。


つまり安倍は石原と同様に尖閣に船だまりを作り公務員を常駐させると公言しているが、そのような措置を取れば軍事衝突に直結しうるからだ。


彼我の軍事力は海軍も空軍も日本が優勢であり、これに米軍が支援すれば紛争の段階なら圧倒的に勝つことが出来るが、勝っても日中関係が大きく壊れては無意味で国益と逆行することは言うまでもない。だいいち米国が中国を挑発するような行動には反対するだろう。
 

米国は議会も政府も尖閣への安保条約適用を表明している。先の領空侵犯に対しても中国をけん制する動きに出た。しかし、これは極東で戦争が発生することを望んでいないからこその対応であり、狙いは紛争を起こさないための対中けん制にあることを見誤ってはならない。


安倍は選挙後の最重要外交課題に日米関係の立て直しから取り組む方針を明らかにしている。


民主党政権が毀損した安保関係のすきに乗じて近隣諸国が領土で揺さぶりをかけてきていることは確かであり、日米関係再構築はすべてに優先されるべき課題だろう。安倍は1月にも訪米して大統領・オバマとの関係修復に臨むことになりそうだ。
 

安倍は尖閣問題であえて火中のクリを拾う必要は無いが、米軍への攻撃を阻止する集団的自衛権の行使を可能にすることは別問題だ。これは憲法解釈の問題であり、安倍も16日夜「憲法改正でなく解釈の変更でいく」と述べている。あくまで国内政治の問題であり、中国や北朝鮮が文句を言う筋合いでもあるまい。


自民党は国家安全保障基本法案を作り、集団的自衛権の行使を可能とする方針を公約に明記した。維新もこれに事実上まる乗りの公約を発表した。法案にするか安倍が解釈を変えると表明するかは、むしろ解釈変更の方が格段にやりやすい。


しかし来年の参院選挙までは勝って兜(かぶと)の緒を締める期間と心得て、急激な対処は控えるべきであろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月14日

◆さらば民主政権、10年は復権不要だ

杉浦 正章

 

まさに鉄槌が下されるというのはこのことを言うのだろう。総選挙で民主党は壊滅的な打撃を受け政権の座を離れる。


3年3か月にわたる政権は戦後史上まれに見る政治混乱を作り出し、内政・外交にわたる国家的損失は測りがたいものがある。そこには経験不足では済まされない、国民を欺く“欺瞞の政治”があった。


慚愧(ざんき)に堪えないのは自然災害とはいえ1200年に1度の大震災が民主党政権時代に発生したことである。対応は後手後手に回り、復興は遅々として進んでいない。もう選挙民は10年は民主党政権の顔も見たくないのだ。
 

この体たらくでよく政権が3年3か月も持ったと思われるが、その最大の原因は有権者の誤判断による空前の308議席にある。途方もない議席数はその政権党が何でも出来ることを物語り、容易に交代できないという現実をもたらしたのだ。


まず初代首相が暗愚そのものであっても政権交代などとてもおぼつかない。続く首相が原発事故で致命傷の誤判断をしようが、外交上の大失態をしようが政権は継続する。まともな首相がやっと出来たと思えば、解散という政局最大のポイントでうそをつくし、対中外交で誤判断。


みな「衆愚の浮動票」がもたらした結果である。自民党政権の場合300議席前後は数回あるが、これほどの慢心と失政はなかった。
 

この308議席は首相・鳩山由紀夫と幹事長・小沢一郎をまさに有頂天にさせた。鳩山はまるで何をやっても良い免罪符を獲得したかのごとくに「改革」と称する「愚策」を内政、外交に渡って繰り広げた。


まず外交では、就任早々の国連総会で2020年までにCO2を25%まで削減するなどという虚構をまき散らし、各国代表をあぜんとさせた。日米安保条約を無視するかのごとく日米中正三角形論を説き、米国を離反させた。


それでも懲りずにインド洋での給油支援活動停止、米国抜きの東アジア共同体構想のうち上げとまるで遅れてきた非武装中立の社会党政権のような外交を展開したのだ。暗愚の極致が普天間移転問題で大統領・オバマに言った「トラストミー」である。


要するにそこらの知ったかぶりの床屋談義を、こともあろうに外交の場に持ち込んでしまったのだ。政治主導などというキャッチフレーズに自ら踊り、戦後毎週続いていた外務次官からの国際情勢聴取もやめてしまった。まさに情報ゼロで弱肉強食の外交舞台に躍り出て、国家を翻弄してしまったのだ。9か月でも長すぎる政権であった。
 


引き継いだ首相・菅直人も“第2次欺瞞外交”を展開。尖閣沖漁船衝突事件で、早々と船長を釈放しておきながら、それをこともあろうに地検の判断であるかのように言い逃れようとした。通常国会で菅はまさに窮地に追い詰められる寸前であったが、3.11に救われたのだ。



野田外交も、想像を絶するミスを犯した。中国国家主席・胡錦濤が会談で尖閣国有化に懸念を示したにもかかわらず、翌日に閣議決定をしてしまった。明らかに外交のエキスパートの声を聞いていない判断であった。


中国が大衆を煽って官製デモを暴発させ、日中双方に取り返しのつかない損失をもたらした。総じて言えば民主党政権は中国の海洋進出という地政学的な膨張路線に全く対応できていなかったのだ。
 

内政ではポピュリズムの極みの路線であった。その原点は出来もしない公約を並べたマニフェストにある。その公約があたかも節約と改革で実現できるという幻想をばらまいた。16.8兆円もの財源が「政権に就けば何とでもなる」という小沢の虚言に最後まで引っ張られたのだ。


国会をファッション写真の背景程度にしか心得ていない蓮舫が、事業仕分で工業立国の命運がかかるスパーコンピュータ事業を「なんで2位ではいけないの」と宣ったのがすべてを物語る。まるで「パンがなければケーキを食べたら」と言ったマリーアントワネットのごとき幼さであった。


3兆円捻出するはずの事業仕分けでは半分も引き出せず、それも後の予算編成では復活するという体たらくだ。コンクリートから人へのキャッチフレーズも空理空論に終わった。八ッ場ダム建設中止を前原誠司が国交相就任早々に断言したが、結局継続となった。
 


民主党政権はことあるごとにリーマンショックを経済停滞の原因に挙げるが、過去3年間で先進諸国も中国も韓国もショックを克服しているのに、日本だけが低迷しているのはなぜか。


自民党総裁・安倍晋三が日銀による国債買い上げなど景気対策に言及しただけで株価が「安倍相場」となるのはなぜか。野田は「口先介入」と批判するが、逆にに民主党政権の3年3か月は市場への「口先介入」 すら思いつかない日日であったことを物語るのだ。
 

野田は最後の最後で政権担当者としてはやってはならないタブーに手をつけた。苦し紛れに国家の存亡にかかわるエネルギー政策に救いを求めたのだ。「原発ゼロ」で失地を挽回し、自民党を追い込めると踏んだのだ。これは維新の橋下徹や未来の嘉田由紀子に勝るとも劣らぬ大衆迎合であった。


その結果はあさっての民主党惨敗となって現れるだろう。最初の308議席は3分の1以下に転落するのだ。場合によっては80議席まで落ち込む可能性もあり、そうなれば4分の1だ。この有権者の「ノー」が意味するものは、予見しうる将来にわたる「ノーモア民主政権」なのだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)