2012年11月22日

◆核武装“石原軍事政権”は戦後最大の悪夢

杉浦 正章
 


昔、山田洋次監督、ハナ肇主演の映画に「馬鹿が戦車(タンク)でやってくる」があった。村中から嫌われた主人公が隠してあった戦車を走らせて、村人たちを恐怖のどん底にたたき込むというのが筋だが、62年のキューバ危機直後であっただけに説得力があった。


その映画そっくりの状況が生まれつつある。憲法破棄、核武装、徴兵制導入を主張する日本維新の会代表・石原慎太郎による軍国主義政権復活路線である。「ヒトラーになりたい」と公言し、「軍事政権を作る」とかねてから主張する石原は、まさに時代錯誤の馬鹿がタンクに乗って走り出した姿そのままだ。


尖閣諸島をめぐる短絡したナショナリズムと結びつきつつあるから、始末に悪い。
 

20日の日本外国特派員協会での発言は、これまでに石原が述べてきた発言からいえば序の口に過ぎない。「いまの世界の中で核を持っていない国は外交的に圧倒的に弱い。核を持っていないと発言力は圧倒的にない。シナは核を持って日本の領土を奪おうとしている。核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいいと思う」というものだが、過去の発言をチェックすればこれは氷山の一角である。


11年6月にはもっとはっきり核保有論の目的まで述べている。「日本は核を持たなければ駄目だ。持たない限り一人前には扱われない。日本が生きていく道は軍事政権を作ること。そうでなければ日本はどこかの属国になる。徴兵制もやったらいい」と発言している。臆面もない「軍事政権を目指すための核保有」である。


この石原の主張は右翼もためらうものであり、これ以上の右傾化はない。21日には「シナ(中国)になめられ、アメリカの妾(めかけ)で甘んじてきたこの日本を、もうちょっと美しい、したたかな国に仕立て直さなかったら私は死んでも死にきれない。だから老人ながら暴走すると決めた」とも述べている。


まさに反米国粋主義も窮まれりというところであり、その下品極まりない表現は、聞く者を不愉快にさせる。


先に紹介したように8月の首相・野田佳彦との会談では、尖閣問題に絡んで「戦争になってもいいじゃないか」と述べた。慌てた野田は東京都に所有させては戦争になりかねないと性急な国有化に走ったのも事実だ。
 

問題は、維新にこのタンクで暴走する異常な老人を止める者がいないことだ。止めるどころか橋下徹もその政治姿勢はミニヒトラー的であり、徴兵制一つを取っても「勝つ為には傭兵制なんだけども、責任を根付かせる為には絶対僕は徴兵制は必要」と述べている。


維新の候補になる元宮崎県知事・東国原英夫までが「徴兵制があってしかるべきだ。若者は1年か2年くらい自衛隊などに入らなくてはいけないと思っている」と徴兵制導入論だ。この維新だからこそ石原は安心して結びついたとも言える。
 

問題はこうした極右国粋主義的な動きを迎え入れる衆愚の浮動層が台頭していることだ。尖閣問題を契機に、テレビでも自衛隊や海上保安庁に入って日本のために戦いたいという若者の発言が目立ち始めている。


こうしたナイーブな愛国心を石原が利用する流れとなっていることだ。戦後初めて政界で孤立していた石原が利用できる右傾化の風潮が生じているのだ。


危険なのは暴力満載の劇画で育った世代が安易に扇動され得ることでもある。しかし、憲法を破棄して徴兵制を実施し、核武装して中国と対決する国家戦略が成り立つだろうか。遅れてきた老人石原は、世界情勢を完全に見誤っている。狂気のごとき誤判断である。


核使用も辞さない米ソ瀬戸際外交は62年のキューバ危機が象徴しているが、半世紀も前の話だ。89年のベルリンの壁崩壊以来、核保有で物事が解決できるなどという指導者のいる国は北朝鮮とイランしかない。核保有を目指すが故に世界中からつまはじきされている国々だ。
 

日本が核を保有した場合どうなるか。極東が間違いなく瀬戸際の危機に陥る。中国はさびた核ミサイルを磨き直し、北朝鮮は東京、名古屋、大阪に向けた核ミサイルの発射準備を整える。当然韓国も所有する。


真珠湾の経験があるアメリカは、反米の石原による核奇襲攻撃を警戒して、同盟を破棄して日本に対峙する。政治・軍事・経済的に日本の孤立は目に見えている。核保有の石原軍事政権はまさに平和日本が戦後初めて見る“悪夢”なのだ。
 

石原は最初に都知事選に出馬した際、当時71歳の美濃部亮吉を追い落とそうとして「もう新旧交代の時期じゃありませんか、美濃部さんのように前頭葉の退化した六十、七十の老人に政治を任せる時代は終わったんじゃないですか」と発言している。


いまの石原の年齢は80歳。前頭葉は石ころのように萎縮して、歩くたびにころころ音がしているのではないか。前頭葉石化の石原を礼賛する衆愚の浮動層は、いいかげんに事態の危うさに気付くべきである。マスコミも甘い。極東のヒトラーの台頭を厳しく戒めるべき時だ。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月21日

◆野田と選挙区に追い詰められた鳩山引退

杉浦 正章

 

新聞川柳で<いつまでも残って消えぬ鳩の糞(ふん)>といわれてきた元首相・鳩山由紀夫が、ついに総選挙出馬を断念した。<うるさくて電池抜かれた鳩時計>となってしまった。最大の理由は“落選”の憂き目を見たくないというという選挙事情だろう。


鳩山はいわば民主党ポピュリズムの象徴的存在であったが、首相・野田佳彦の「出たい奴は出ていけ」という「純化路線」で最大のターゲットでもあった。これにより野田の「自公民路線」への障害物の一つが除去されることになり、選挙後は同路線へと傾斜する可能性が一段と高まった。
 

鳩山は解散後ひしひしと党執行部の“圧力”を感じていたに違いない。17日も地元で「官邸は鳩山を公認しないことで支持率が上がると踏んでいる。小泉さんと同じ事をしようとしている」と述べたが、これは鳩山の自分に対する過大評価だ。


小泉が2003年の総選挙で元首相・中曽根康弘、宮沢喜一の公認をしなかったことを意識しての発言だ。しかし小泉は高齢を理由に両元首相を公認しなかっただけであり、今回の場合とは全く異なる。


また野田は鳩山を切ったからと言って支持率が上昇に転ずるなどとは思っていまい。 野田にとっての最大の理由は鳩山に選挙活動をされては、民主党が分裂選挙をしている印象が強くなり党全体に影響を与えるということだろう。


鳩山は野田が命をかけた消費増税に反対して党員資格停止処分を受けており、最近では野田が推進しようとしている環太平洋経済連携協定(TPP)についても「反対する考えを変えるわけにはいかない」と真っ向から反対している。


最大の争点に対して党内から反対されては野田としても選挙対策にならない。執行部にに命じて公認の前提条件として党の方針に反対しないとの誓約書の署名を求めさせたのだ。
 


その上で野田は「掲げる政策に賛同しその実現のためにも歯を食いしばって戦う同志というのが公認のけじめだ。重たい立場の人でも守っていただく」と、鳩山を意識した発言をしている。また選挙区の北海道9区も自民党による政権奪還の象徴区となっており、元スケート選手で道議の堀井学に追い詰められて落選必至の状況に立ち至っていた。


自民党幹事長代行・菅義偉も「勝てそうだった。もう出馬を断念すると思っていたが、その通りになった」と述べている。こうして野田に追い込まれ、地元でも追い込まれて出馬を断念せざるを得なくなったのが実情だ。
 

一方で、維新の台頭は既成政党間に緊張感を走らせており、自民党から20日、「自公民部分連合」ののろしが上がった。幹事長・石破茂が自公民路線について「連立という話ではないが、政策が合うのならスピーディーに進めていかないと国民のためにならない。基本的には自公民3党だ」と発言した。とりあえず自公連立を実現した上で、政策面での自公民部分連合を推し進めようということだ。


しかしその最大の障害が消費増税反対の鳩山であったのだ。自民党からも敬遠する声が上がっていた。野田が反対者切り捨ての純化路線を目指すのも、横目で「自公民」をにらんでいることなのだろう。鳩山引退はその障害を除去することになる。


石破はさっそく「民主党が純化された集団として政界再編の一つの核になることは望ましい」と鳩山引退歓迎の意向を表明した。
 

そもそも3年前の総選挙でも筆者は鳩山の欺瞞(ぎまん)性を指摘して警鐘を鳴らし続けたが、衆愚の浮動票が圧勝させてしまった。調子に乗って鳩山は外交では愚かにも日米中の正3角形の関係を唱え、普天間では「最低でも県外」と愚鈍な発言を繰り返した。揚げ句の果てに、「トラスト・ミー」とすり寄ったオバマからは全然信用されない状況を作ってしまった。


内政では事務次官会議を廃止して、これが国政に致命傷とも言える影響をもたらした。事業仕分けなる物も欺瞞のポピュリズムに過ぎなかった。それでも幹事長・輿石東の意向が反映してか、民主党は鳩山を外交担当の最高顧問に任命。


自民党副総裁・高村正彦から17日、「日本には1億人以上も人がいるので、鳩山氏みたいな人がいることはそれほど驚くことではないが、政権与党の外交担当最高顧問に復帰するのは大いに驚くべきことだ」と批判されるという始末。元々鳩山は首相退陣に際して不出馬を宣言していたのだから、そもそもの存在が未練がましかったのだ。


これで「サイテーでも国外」にでも去ってくれるともっとすっきりする。宇宙人だから故郷の宇宙に戻ってくれてもいい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年11月20日

◆【自公維】連立が最悪のケースとなる

杉浦 正章

 

衆院選挙序盤戦の情勢を見て日本維新の会代表・石原慎太郎が「第3極ではなく、第2極にならないとダメだ」と大風呂敷を広げている。明らかに選挙後の政権の枠組みをにらんでの発言だ。連立政権に入り込んで政権運営の主導権を握ろうとする姿勢だ。


問題は1か月間の選挙で維新の“馬脚”がどれほど現れるかにかかっており、即断は極めて難しい。現段階で言えることは政権の枠組みが比較第1党になるとみられる自民党を中心の政権となる可能性が濃厚であることだ。しかし、1党だけで241議席の過半数を制することはまず困難だろう。
 

そこでどのような枠組みがあり得るかをシュミレーションするが、まず有権者の期待度を見てみよう。マスコミ各社の世論調査によると序盤では第3局中心の政権への期待度が意外にも大きいことが分かる。「民主、自民以外の政党中心の政権」への支持が毎日35%、朝日34%でトップ。NHKは「民主・自民連立」の30%に次ぐ26%だった。


読売は「自民、公明、維新」枠が16%でトップ、「民主、自民、公明」15%、「自民、公明」13%の順だった。調査結果が示すものは既成政党への拒絶反応が色濃く反映しており、何も知らない「衆愚」の第3局への期待の強さを物語っている。
 

しかしこの期待値が実際の投票行動と連動するかは定かではない。比例区での投票先を聞くと、朝日が自民22%、民主15%、維新6%。読売が、自民26%、民主13%、維新8%となっている。今後1か月間の選挙戦を通じてどう変化するかだが、政策を棚上げにして石原と大阪市長・橋下徹の人気だけに頼る維新が、石原の言う2極への躍進を果たすことは困難だろう。


今後、原発の是非、消費増税、景気対策が論戦の焦点にならざるを得ず、石原の「小異を捨てる」というまやかしの「野合」路線や、橋下の「何から何まで一致する政党はない」などという問題のすり替えが通用するほど甘くはないのだ。
 

では、あり得る政権のパターンだが、自民党が第1党を取り戻す可能性は依然最大とみられる。そこで実現し得るのが【自公連立】だ。この枠組みが3年3か月にわたる民主党政権の“政治の劣化”から政治が蘇生(そせい)するためには最良の組み合わせだろう。政治に落ち着きを取り戻し、俗受けを狙わず、外連味(けれんみ)のない政治がいまほど期待される時はないからだ。


しかし問題は自公で過半数を達成できるかということだ。達成できなければ、乱立した小政党をかき集める方法と、民主党を引き込む方法がある。これは過半数の割り方にもよる。
 

割り込みが少なければかき集めで事足りるが、大きく割れば【自公民連立】の動きが生ずる。民主党がたとえ70〜80議席まで転落しても自公民となれば300議席は達成できる。既に自公民路線は消費増税、赤字国債発行法案、定数是正で実現しており、この流れを継承するのだ。3年余で首相・野田佳彦を始め、前原誠司、細野豪志、仙谷由人など自民党政権になっても使いたいような人材は成長している。


しかし、ささやかれるように鳩山由紀夫や菅直人が落選すればいいのだが、口幅ったい大しゅうとが付いてきては政権もやりにくいに違いない。純化路線をさらに進めて鳩山を公認しなければ1番良いのだ。そこで苦肉の策としては【自公連立】プラス【民】が考えられる。とりあえず【自公】で連立し【民】とは政策中心の部分連合で閣外協力を求める方策である。【自公民】にせよ【自公プラス民】にせよ次善の策としては最良であろう。
 

もっとも危険で日本を逃げ出したくなるような政権が維新参加の【自公維】政権だ。少なくとも民主党政権は政権のプロではないにしても政治のプロが政権を担った。維新は国政ど素人集団の登場となる。それも極右国粋主義者の石原が率いるのだ。「風」で当選した連中は1票の議員票としての価値しかない。石原の演説に拍手し、他党の演説をやじるための最悪のチルドレンの登場だ。


自公は自民党総裁・安倍晋三が維新の橋下とパイプでつながっており、公明は選挙協力で連携している。したがって連立を組もうとすれば、これまた300議席は可能だが、いったん連立を組んだら石原の「最後のご奉公」に引っかき回される。石原は対中戦争論者だから、中国の習近平政権とは最初から対決路線となりかねない。石原は関係改善に向けては決定的な阻害要因なのだ。
 

細川護煕が実現したのが非自民の連立政権であり、石原は政権を獲得するためにはこの細川方式も脳裏に去来しているのだろう。しかし、それには公明、民主両党を引き込み【維公民連立】政権を作らなければならないが、いくら何でも野田も公明党代表・山口那津男も敬遠するだろう。


とりわけ野田は散々維新に民主党議席を食い荒らされた上のことであり、石原の軍門に下ることはまずない。【維公民】は机上の空論に過ぎない。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2012年11月19日

◆石原、橋下の野合の合流は“双頭の蛇”

杉浦 正章

 

石原慎太郎の言う「双頭の鷲」は無敵を意味するローマ皇帝の紋章であり、神聖ローマ帝国からオーストリア帝国へと受け継がれた。ナチス・ドイツもそれにならい、ヒトラーは軍服や建築物の随所に双頭ではないが鷲の意匠を施した。


大阪市長・橋下徹も石原も、全体主義的な危うい政治手法を志向しているが、その政策は水と油である。それを覆い隠してひたすら国政進出を狙って合流の合意文書に署名した。石原は憲法破棄、徴兵制導入、原爆保持の持論を表に出さず、隠ぺいした上での国政挑戦である。原発・消費税もあいまいにしたままだ。


そこには双頭の鷲の豪快さはなく、政界に進出してから浮上させる狡猾(こうかつ)さだけが目立つ。双頭の鷲は現実には存在しないが、双頭の蛇は東南アジアではざらに見られる。その陰湿さからいってむしろ合流はおぞましさが先行する双頭の蛇だろう。
 

双頭の蛇は頭が別々の意思を持って動こうとするため、長くは生きらず、せいぜい数か月の命だ。石原は、いったん決めた減税日本との合流をほごにして維新に付くという破廉恥極まりない行動も意に介せずだ。


何も知らない「維新チルドレン」を大量に選出すれば、その数だけを頼りに石原の無責任極まりない独断政治が国政へと移行される。その主義から言えば国政と日本の外交・安保は危機的状態にに陥るだろう。
 
いったいなぜ橋下が日本維新の会のトップの座を石原に明け渡したかだ。そもそも橋下は本来なら先頭に立って立候補すべきところを、立候補せずに自らは“扇動者”に徹している。代表も石原に譲って、自分は一歩下がった。


これが意味するところは、国政への自信のなさだ。強気のようで弱気が交差する橋下の国政への姿勢が垣間見られるのだ。事実、烏合(うごう)の衆を数人集めて政党を結成したが、出だしから主張はかみ合わない。国政のプロが維新の会には必要だが、太陽の党は賞味期限が切れた議員ばかり。ここはヘッドハンティングの必要に駆られていたのだ。
 

「石原代表」では、まず維新のイメージががらりと変わる。維新の“新鮮”さが石原および太陽の党の「老人ムード」に覆われる。「新鮮から老獪へ」と変身を余儀なくされる。石原の知名度がいくら高くても、その主義主張の外交・安保論や、官僚支配打破論は仏壇の中からはたきを掛けて取りだしたような時代錯誤に満ちている。選挙戦を通じてその石原カラーが前面に出ざるを得ない。


石原は首相を目指さないと言っているが、都政13年で裸の王様になり、石もて政界を追われた過去は全く忘却の彼方だ。一定の議席数を取れば、 非自民・非共産連立政権で首相の座を射止めた細川護煕のごとくにあわよくば政権の座に就こうとしているのだ。


橋下に対して石原は「次回は殴ってでも出馬させる」と、橋下擁立の構えを見せているが、これは石原特有の狡猾なる“たらし込み”だ。まんまと引っかかったのが自分であることを橋下は知らない。役者が上手であるのだ。
 

したがってこの紛れもない「野合」の結果、橋下は庇を貸して母屋を取られることになることが明白だ。「野合」は「小異を捨てる」と臆面もなく言い放つ石原の政治感覚がすべてを物語っている。焦点となるべき原発の是非や消費増税問題も、合意文書からは何も方向性をうかがうことが出来ない。首相・野田佳彦が「混ざったらグレーになった」と名言を吐いたが、その通りだ。


こうして維新の会は石原と橋下の知名度だけの選挙を展開することとなった。候補者などはどうでもいいのだ。その辺のあんちゃんでも何も知らない有象無象でも、橋下と石原が応援に行けば当選すると判断しているのだ。候補者には演説集でも渡して棒読みにさせれば当選してくるとでも思っているに違いない。


要するに有権者を「衆愚」ととらえて、知名度だけで勝負に出たのだ。自民、民主両党は維新叩きを展開しようとしているが、これは難しい側面がある。なぜなら自らを維新と対等の立場に置いてしまうからだ。既成の大政党批判票は返って維新に流れかねない。それよりも党首討論の場などにおいて、石原と橋下の浅薄さを浮き彫りにさせる高等戦術の方が得策ではないか。
 
18日付読売は世論調査の結果「第3極失速傾向」と報じているが、果たしてそうなるか。維新と太陽が合流前の調査で断じられるのか。比例選の投票先は、自民が26%、民主が13%で維新が8%と前回の12%から落ちたことが理由だ。


しかし同じ調査で太陽は5%取っており、単純合計では13%ある。朝日の調査でも自民22%、民主15%なのに対して維新は6%であり、第3党になり得る流れだ。毎日は維新が自民の17%に次いで13%となっている。いずれにしても各種調査で40〜50%に達する浮動票の行方が鍵を握る。


しかし3年前の総選挙で民主党を勝たせたようなブームは沸くまい。3年前の「衆愚の選択」が国政にもたらした結果を、いくら何でも知的水準の高い日本の有権者は反省しているだろう。石原と橋下らポピュリズムが背広を着て歩いているような政治家に再びだまされて、維新チルドレンなどを大量に国政に進出させるべきではない。いまほどガバナビリティを有権者が問われている時はないのだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)

2012年11月16日

◆選挙後は自民中心で再編不可避

杉浦 正章

 

どうみても総選挙後の政界は極めて流動化する様相である。とりわけ自民党の復調がどの程度か、第3極、中でも日本維新の会の台頭が何処まで議席に反映するかなど不確定要素が大きいのだ。しかし自民党が第一党を獲得するのは確実であり、自民党と公明党の連立政権の枠組みにどの党が参加するかが焦点となる。


大きな流れとしては自民党総裁・安倍晋三は自公民路線の民主党を選ぶか、「自公維」路線を選ぶかを迫られるだろう。極右の石原新党を選ぶことは対中関係を考慮すればあり得ないし、あってはならない選択だろう。
 

「離党したい奴は出ていけば言い」と首相・野田佳彦が漏らしているが、いまや野田の本心は民主党を親野田勢力中心に固めたいくらいの心境かも知れない。確かに選挙後の政界再編をにらんだらその方がいい。ところが今のところ寝返って離党するのは雑魚ばかりで、ジブリのアニメの悪漢みたいに顔ばかりがでかい元農相など、どうでもいいのしかいない。


いまや民主党のがんと化している鳩山由紀夫や、支持率低下にだけ貢献している菅直人など肝心な連中がなかなか離党しない。幹事長・輿石東に到っては野田を差し置いて「総選挙の陣頭に立つ」のだそうだ。あの妖怪じみた輿石が陣頭に立ったのでは、ただでさえ減少する票が一層減ることが分かっていない。
 

この民主党内事情が選挙後の政界再編の構図に大きな影響をもたらすのだ。というのも自民党にしてみれば、自公両党で過半数をとれれば問題はないし、赤字国債も3党合意で予算と一体で処理の方向となった。ねじれ国会も前進しつつある。だから自民党にとって自公政権への回帰が1番いいケースなのだ。


しかし自公で241議席を上回れるかというと微妙だ。東京、名古屋、大阪のポピュリズムが衆愚の浮動票をかっさらえば、政権運営安定化のためにもう1党を引き込む必要が出てくるかもしれないのだ。1番良い流れは、自公民で比較第1党が首相を出すことで合意すればよい。政権は1番安定する。


しかし問題は野田に馬鹿丸出しの元首相、市民運動家の前首相、日教組の輿石などがついてくることだ。これらの顔を思い起こす度に、自民党は溜息が出てしまうだろう。連立を組もうにも組めないのだ。消費増税で出来た自公民路線は、野田の解散の約束履行と赤字国債発行、「0増5減」両法案成立で一層強まった側面があるにもかかわらず、それは野田個人との関係と言ってもよい。


民主党政権の迷走を招いた連中が一緒では、大連立も出来たとたんに揺さぶられる。あるとすれば大連立でなく、政策ごとの部分連合の可能性の方が大きいあろう。しかし自公過半数割れの場合には、部分連合では政権基盤が弱い。
 

それでは第3極との連携または連立があるかどうかだ。第3極では維新が世論調査を見ても突出しており、民主、国民の生活が第一などを食い散らかして政界に進出することは間違いない。公明党を上回る勢力となり得る。石原新党も、狙いは尖閣で発生した極右志向の浮動票であり、これに引っかかる衆愚も結構いる可能性があるから、馬鹿には出来ないのだ。


石原は15日には、政界では賞味期限切れの河村たかしが率いる名古屋の減税日本と組む方針を発表したが、まさに政策無視の野合第一号だ。これが橋下徹を怒らせた。橋下は河村と政策の相違で決別状態にあるからだ。


大言壮語の石原は「小異を捨てて大連合」と述べるが、簡単に言えば政界に出てきて「石原首相」に投票してくれと言うことだ。そのための野合路線であり、発言には何一つ核心になる政策がない。官僚支配反対など唱えても、何も言わないのと同じだ。
 

こう見てくると安倍の選択肢には橋下との連携が脳裏に去来しているに違いない。総裁選後は発言を慎重にしているが、水面下では橋下と連絡を取っているといわれる。選挙後に「自公維」路線が浮上する可能性は否定出来ない。橋下が他の第3極と一定の距離を置いているのを見ると、自民との連携が視野にある可能性がある。しかし、究極のポピュリズムの橋下に引っかき回される政権はぞっとする。悪寒が走るのだ。
 

いずれにしても、選挙後の政界は再編含みで推移する可能性が高い。冒頭述べたように安倍は、いくら自分が右寄りでも中国を「シナ」と蔑視し、憲法破棄、核武装、徴兵制に日本を持っていこうとしている石原と組めば、対中関係はくしゃくしゃになることは理解しているだろう。


もちろん中国の習近平政権はより一層の敵対方針を表明、安倍政権は関係打開の糸口を見出すことは不可能となる。新銀行東京の破たんでは都民1人あたり約11000円に達するツケを払わせ、反省の弁はゼロ。尖閣に火をつけて募金までしたが、国有化で宙に浮いたまま。これも責任を取らない。

石原は政界復帰しても陳腐極まりない小説・太陽の季節でナニで障子を破ったような愚行を繰り返すだけだろう。時代錯誤の暴走老人に投票しようとしている衆愚の浮動層は、もう少し真面目に国の将来と政治を考えるべきだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月15日

◆民主落城の野田“電撃自滅解散”

杉浦 正章

 

押している方がつんのめったような電撃的な解散の表明であった。総選挙惨敗覚悟の自滅解散だ。首相・野田佳彦による14日の決意表明により、16日解散で来月16日の選挙が確定した。選挙情勢をあえて分析すれば自民党が第一党になることは確実で、公明党などとの連立で政権に就く流れだ。


2009年9月16日に発足した民主党政権は、内政・外交に混迷をもたらした迷走の末3年3か月で終止符を打つ。新政権は年内に最終的予算編成に着手、通常国会に臨む。
 

首相がいったん解散の腹を固めると、これほど強くなって主導権を握れるものなのだ。歌舞伎で、口論の末に、両方掛け合いで、「さあさあさあ」と調子を高めていくせりふを「繰り上げ」と言う。ところが党首討論では野田が一方的に「さあさあ」というのに、自民党総裁・安倍晋三は狼狽(ろうばい)してオタオタ状態だった。無理もない野田は直前の国民新党代表・自見庄三郎との会談でも「『解散する』などということは申し上げるつもりはない」と大うそをついていたからだ。


安倍はつんのめって事態が理解できず、野田が解散日程を具体的に提示すると言っているのに「私の質問に答えていない」とピントが狂った反応。野田が通常国会での定数削減と引き替えに「16日解散」を口に出しても「今、私と野田さんだけで決めていいはずはない。議論をすり替えている」と、まるで見当違い。自民党席からメモが入って、野田が子供にも分かる表現で説明して、やっと理解できて「それは約束ですね、よろしいですね、よろしいですね」とよろけんばかりの喜び方だった。


乾坤一擲の場面では野田の方が数段上であった。副総理・岡田克也から「政治家の器の大小がはっきりした」と言われてしまってはどうしようもない。


野田が幹事長・輿石東に漏らしたのは党首討論直前であり、輿石をいかに信用していないかの左証だ。閣僚席を観察すれば岡田だけは知っていた感じだが、前原誠司は知らされていなかった。固唾をのんで聞いていた顔を観察するだけで分かる事だ。事実上「1人の決断」であったに違いない。


野田はうそつき呼ばわりが一番こたえていたとみえて、討論でも小学生時代の秘話をあえて明らかにしている。それは成績が悪い通知表を父親が怒るかと思ったら褒められたというエピソードだ。通知表の生活態度の欄には「野田君は正直な上に馬鹿がつく」と書いてあったというのだ。恐らく野田はこれが一番言いたかったことに違いない。
 

こうして電撃解散となったが、実態は筆者が1年前から一切ぶれずに言い続けてきた話し合い解散そのものである。政策上の3条件で話がついて解散を断行するということは、誰が見ても話し合い解散だ。


野田がここに来て解散に踏み切った背景だが、「うそつき批判の解消」に加えて大きな理由が2つある。1つは党内の「野田降ろし」。もう一つは第3極対策だ。


輿石の小沢一郎とつるんだ動きや、公然と野田降ろしが表面化する事態をこのまま放置すれば、野田にとって事態は悪化の一途をたどる。離党者は続出して、不信任案も可決し得る事態となる。そうなれば野党は手っ取り早く不信任可決に動く可能性が高い。解散反対閣僚も辞任するだろう。
 

解散をめぐって多数派工作が始まれば、野田は手足を縛られてしまうのだ。これには電撃解散で切り返すしか手はない。加えて18日からは東南アジア諸国連合(ASEAN)会議でのカンボジア行きが決まっており、解散しなければ留守中に“クーデター”となるのは必至だ。切り返した結果は党内反対派がひるんだ。ひるんでオタオタしている間にもう明日は解散となる。


選挙になれば、議員は選挙区対策でよほどの馬鹿以外は離党など本当はしていられないのだ。離党したければ何人でも勝手に出て行けというのが野田の解散断行決断だ。もっとも議員バッジがなくなった者が離党しても、もうマスコミもはやさない。鳩山由紀夫が離党すればこんなにすっきりすることもない。要するに民主党政権はもう“落城”なのだ。
 

もう一つは第3極だ。第3極などと言う言葉はマスコミが勝手に作った言葉であり、まだ「3,4,5、6極 」と言った方がいい。民主党議席への食い込みを狙う日本維新の会は、まだ全候補者を決めるに到らず、石原新党との候補者調整はおろか政策調整すら難航している。この虚を突くのが電撃解散の狙いでもあるのだ。


加えて今回の選挙ほど小党が乱立する例は珍しい。15党がしのぎを削るわけだから自ずと票も分散する。新党、小政党の態勢が整わないうちの方が民主党にとって負けが少ないのだ。
 

こうして、1票の格差是正の「0増5減」は実現しても、区割りと周知は間に合わず、違憲状態のままの選挙に突入する。選挙後に最高裁が無効判決を出しても、出す方の状況判断が問われる。有権者の信託を得た新政権が出来、政策の歯車が回り、内政・外交が進展している1年か2年後に無効判決を出しても、いたずらに国政を混乱させるだけだ。ここは衆院の意向として「0増5減」が実現して、次々回の改正に間に合えば十分だ。最高裁も観念するしかない。


それにつけても小沢の党首討論での精彩の無さは異常だ。愚にもつかないご託を並べて質問時間を稼いでいるようにしか見えなかった。小沢のお通夜のような質問は、いよいよ終わりの始まりなのだろう。

          <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年11月14日

◆まるで“政権亡者”の悪あがきだ:民主党内

杉浦 正章

 

解散反対の理由で幹事長・輿石東が、「幹事長室に陳情が来なくなる」と強調したのには驚いた。政権党の幹事長の職というのは、“おいしい”ポジションとは聞いていたが、そんなに離れがたい“特典”があるものであったのか。


輿石の扇動で噴出した、民主党内の解散反対論は一言で言えば“政権亡者”の露呈だ。反対論はひたすら国家国民より自分の身分が大切であり、3年あまりにわたる民主党政権の失政に次ぐ失政が解散論の根源にあることに気が付かない。一日でも長く「先生」と呼ばれたいのだ。


一方で民自公路線が赤字国債発行法案をめぐって復活した。野田は消費増税法案の際と同様に党内の反対を押し切り、同路線に乗って解散を断行する構図となってきた。
 

テレビに出て「解散反対」を唱える連中もまさに老いて醜い姿そのものだ。老醜右代表の渡部恒三が任期満了選挙を唱えれば、藤井裕久も任期満了のシュプレヒコールだ。両人とももう高齢で出馬しないのだから、あきらめが肝心であることに思いが到達しない。やはり任期満了論の菅直人の脳裏には原発事故の急場での大失政への責任などはかけらも残っていない。


かねてから一癖あると見ていた中山義活に到っては、公然と「解散するなら代表の頭を代えるべき」と「野田降ろし」を宣言した。「顔」を代えれば選挙が有利に働くという浅はかな考えに、国民がまたまた、だまされるとでも思っているとすれば愚かとしか言いようがない。
 

こうした動きを煽りにあおっているのが隙あらば「野田降ろし」を狙う小沢一郎と連携している平成の妖怪・輿石だ。13日も参院役員会で口火を切って発言し「年内解散をすれば完全に政権を失う。官邸を引き上げて党に戻ることになる。そういう現実が本当に分かっているのか。


幹事長室にも陳情が来なくなる」と強調した。輿石のこの発言も、全く事態を理解していない。世論調査でも明らかなように、「出ると負け」の民主党政権の失政に飽き飽きした国民は、一刻も早い解散による政権交代を望んでいるのであり、3年半も政権の座につけさせてもらえたことが“奇跡”であるのが分かっていない。


いまさら政権にしがみついて何が出来るというのだろうか。確実にこのまま支持率は急落を続け、選挙情勢は悪化するばかりだ。ダブル選挙なら民主党は参院での多数も失う。
 

進むも地獄退くも地獄なら進むしかないのだ。輿石以下民主党幹部は地獄の血の池に落ちてもまだ命乞いをする“政権亡者”そのものの姿となりきっているのだ。永田町では野田が輿石が辞任しなければ「輿石切り」に出たうえで解散を断行する可能性がささやかれている。


野田は消費税でもそうだったがいったん腹を固めると、てこでも動かないところがある。消費税不成立の場合は議員辞職も考えていたことを自ら明らかにしたが、いったん決意したら貫徹するタイプだ。その消費税で実現した民自公協力が解散に向けて再び復活した。民自公3党が13日、赤字国債発行法案の15日衆院通過と、本予算の成立との連動処理で一致したのだ。


今後のねじれ国会の“休戦協定”を意味しており、賢明なる合意だ。野田は、衆院予算委で、「日本の政治にとって大きな前進だ。自公両党の尽力に心から感謝する。解散の環境整備ができるようお互いに努力したい」と言明している。この画期的とも言える民自公路線の復活は、選挙後の自公と民主党“野田支持勢力”との大連立も視野に入れることが可能となるかもしれない。
 


野田は輿石が党内の解散反対を「党の総意」と伝達した会談もたったの17分で切り上げている。会談後輿石が小鬼のような顔つきで出てきたのを見れば内容は明白である。野田は輿石の反対論を一蹴したのだ。もう輿石は年内解散を決めた野田に反旗を翻し続けるなら、幹事長を辞任すべきであろう。こうした政局の動きは解散を遅らせるどころか加速させる傾向を見せている。


野田にしてみれば解散を遅らせるほど、解散反対の包囲網は強まるからだ。やはり老醜の石原慎太郎が、慌ててくだらない極右国粋主義新党を旗揚げしたのも出遅れを懸念してのことだ。石原は旗揚げが新聞のトップで掲載されると予想していたようだが、新聞の扱いの小ささにがっかりしていることだろう。やはり石原主導の「野合新党」ではブームなどは起きない。
 

永田町では「16日解散・12月9日選挙」までささやかれ始めたが、これはいかにも性急だ。少なくとも「0増5減」は、衆院を通過させておかなければなるまい。したがって解散は22日説、またはそれ以降説が有力だが、民主党内の動きによっては一挙に解散となる可能性も否定出来ない。


輿石以下の政権亡者の計算違いは、反対を唱えれば先延ばしできるという甘い考えがあることだ。解散権は首相にある。不信任決議よりも優先されるのだ。


民放テレビ報道ではピントが狂って吠えまくるみのもんたの朝ズバの解散見通しの迷走が一番目立ったが、その張本人の1人が元総務相・片山善博。「同日選挙」と断定を続けて、茶の間レベルの見通しを誤らせた。14日も「会社がつぶれるようなことを平気でやる」と野田に毒づいていたが、自らの判断力の悪さを棚上げにして首相に毒づいてはいけない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
 

2012年11月13日

◆小沢は「必死」で詰み、不死鳥はない

杉浦 正章

 

2審で無罪判決が出ても、国民の生活が第一代表の小沢一郎は将棋で言う「必死」の状況だ。王手と張られて、受けがなく必ず詰む状態なのだ。


これまで数々の修羅場をくぐり抜け、不死鳥のように返り咲いた小沢も、まさにナイヤガラの滝壺に向かって落ちようとしているとうとうたる解散の流れには抗しきれないのだ。首相・野田佳彦が年内解散に打って出るのは、小沢と幹事長・輿石東の連携による「怪しげな動き」も視野の片隅に入れて、巻き返しに出ている側面があるのだ。
 

政局が読めずにハムレットの悩みを続けて来た朝日が12日夕刊でようやく年内解散に踏み切った。今さら報じても、石を見て「これは石だ」というような記事だ。「心の中も明かさない」と解散への言及を避けてきた野田は12日の国会答弁で、心の中をさらけだした。読める人が深く読めば明らかにさらけだしているのだ。


「解散は責任を持って判断する」と発言、ネックになっていた「0増5減」と定数削減との関係について「削減を決着させないことで解散を先送りする考えを持っていない」と述べた。何よりも「消費増税法案が通らなかった場合、将来の国民に申し訳ない、今を生きる皆さんにあすの責任を果たすことができない。議員辞職するつもりだった」という発言は、自公の協力への感謝の言葉に置き換えられる。もう「年内解散する」と言ったのと同様だ。
 

この発言から逆算すれば11日夜の野田・輿石会談の内容がつぶさに分かってくる。野田は解散に反対する輿石をねじ伏せたのだ。もう離党者など出てもよいという考えだろう。国会答弁では「野田おろし」の動きに関連して「内閣不信任決議案が通った場合以外に総辞職があるのか。ちょっと想像がつかない」とも述べた。


一連の発言は、野田が不信任案が通っても総辞職でなく解散で対処する方針を鮮明にさせたものだ。もっともたとえ小沢から不信任案が提出されてても解散を先に断行してしまえば、未決となって成立は不可能だ。


森喜朗と小泉純一郎は不信任案が本会議上程後の趣旨説明前に解散を断行している。したがって永田町で小沢と輿石が狙っているといわれる「野田降ろし」の解散阻止戦略などは、首相の解散権の前にはまず成り立たないことになる。それでもなお輿石は、小沢との関係について「消費税問題では見解を異にしたが、仲間だったのだから一緒にやれる点もあると言った気持ちに変わりはない」と言明した。


裁判の結果について野党が一斉に「小沢氏は説明責任を果たすべきだ」と反応したのとは好対照に、輿石の小沢への忠誠心は不変だ。
 

輿石は12日も「景気対策や外交防衛を考えれば解散で政治空白をつくれるのか」と空しい“抵抗”を繰り返しているが、うつろに響くだけだ。3年半に渡る民主党政権に終止符を打つ解散こそが、政治空白を早期に回避する道であることに考えが及ばないのだ。日教組の視野狭窄(きょうさく)がそのまま露出しているのが輿石だ。


こうして小沢・輿石による一種のクーデターめいた動きは封じられる方向となったが、なお自民党幹事長・石破茂が小沢の動きについて「今後、内閣不信任決議案とか、野田首相に代えて新しい首相を選ぶとか、いろんなことが考えられる」と警戒心を漏らしているように油断は出来ない。
 

しかし冒頭述べたように小沢には「必死」がかかっている。今後いくらあがいても第3極の中核などに躍り出ることはない。日本維新の会もみんなの党も、今日「太陽の党」として発足する石原新党も小沢に対しては「総スカン」の状態だ。石原に到っては「小沢君とだけは絶対に組まない」と述べており、わずかに鈴木宗男の新党大地が接近する様子を見せている。しかし収賄罪、政治資金規正法違反、議院証言法違反(偽証罪)で有罪が確定して公民権を有しない鈴木とまだ刑事被告人の小沢では“説得力”がない。
 

総選挙では落選必至のチルドレンを中心に37人の党員を抱えて、政党交付金も間に合わない。2審の無罪判決と言っても、国会議員に甘い現行政治資金規正法の抜け穴をすり抜けたことは誰でも知っている。事務所では「紙は裏白の紙を使え」と指示するほど細かい小沢が、4億円が動いた収支報告書を「関心は天下国家。収支報告書は見たこともない」と発言しても、信ずるものはいまい。無罪だからといって選挙が勝つ状態など生ずるわけがない。


本人は「消費税反対と脱原発で勝てる」と意気軒昂だが、実態は空元気だろう。恐らく10人が当選するかどうかの状態だろう。よわいは70に達し、もうご隠居さんの年齢だ。「必死」の王手を逃れて不死鳥となるのは無理だ。14日の党首討論が面白い。


<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年11月12日

◆野田の「TPP参加」は争点隠しにすぎない

杉浦 正章

 

いよいよ政局は今週から自民党総裁・安倍晋三のいう「クライマックス」の段階に突入する。大きな潮流は解散へと流れており、これを押しとどめることは極めて困難な情勢にある。なぜなら解散風は首相・野田佳彦本人の主導による側面が強いからだ。あとは幹事長・輿石東ら民主党内反対派を“掃討作戦”で、いかに黙らせるかだけとなってきた。


11日夜の野田・輿石会談は、解散をめぐるぎりぎりのせめぎ合いが行われた公算が強い。今日12日から始まる予算委審議は、事実上選挙選の火ぶたを切るような激しい論戦が展開されるだろう。野田が選挙の争点に環太平洋経済連携協定(TPP)参加を持ち出したのは苦肉の策の争点すり替えだ。野党は対立の焦点にすることを避けるだろう。
 

野田の9月からの幹事長・輿石東への急接近について、筆者は「味方をだます方策」と推論したが、まさにその通りになって来た。野田は当時「1年間献身的に支えてくれた輿石幹事長とは一蓮托生(たくしょう)だと思っている。これからもしっかり力を尽くしてもらえればと思う」と歯の浮くような発言をした。


しかし現状はというと、輿石は2階に上ってはしごを外されつつあることになる。1人で「年内解散は物理的にない」のラッパを吹いてももう信用度がないのだ。


背景には何があったのかというと、やはり小沢の影が色濃く輿石に反映していたのだ。輿石は元首相・鳩山由紀夫と10月10日夜会談して小沢への取りなしを頼むなど関係修復に努めてきた。その後実際に小沢と秘密会談が実現した可能性が大きいといわれている。
 

永田町筋は、「そこで出てきた小沢の“悪知恵”が究極の野田降ろしだった」というのである。小沢の戦略は、いま総選挙をやったら「生活」が一ケタに落ち込みかねない。したがってどうしても解散を先延ばしにして、再起のチャンスをうかがいたいところだ。生活がもらえるはずの政党交付金11億円も、早期解散では借金の担保にもならない。


小沢は野田が解散するなら、野田に総辞職をさせるように輿石にけしかけたとされる。選挙の「顔」を細野豪あたりに変えて、衆参同日選挙に持ち込もうというわけだ。こうして輿石周辺から朝日への「総辞職」リークが始まったという。


朝日が政局記事で度々「総辞職」に触れた結果、党内には総辞職論が本当に生じそうになった。この裏面を知った野田が激怒しないはずがない。野田の武器は解散で切り返すことであり、あえて党内に反対の多いTPPを使っても解散断行することでしのごうとしているのだ。11日の会談後輿石は記者団の質問を無視して、車に乗り込んだが、野田との間で相当激しいやりとりがあった証拠だろう。野田の“優勢勝ち”だったに違いない。
 

まさに政局絡みのTPPだが、果たしてこれが本当に選挙の争点になり得るだろうか。まずなり得ないとみる。野田の争点隠しの苦渋の選択だからだ。なぜなら紛れもなく総選挙の争点はまず第一に3年半にわたる民主党政権の失政がやり玉に挙がるからだ。3代にわたる首相と、その内閣による内政・外交両面に渡る迷走で、国家、国民が被った“被害”を顧みて反省するのが選挙の第1の争点に他ならない。次に公約に反しての消費増税の導入も焦点にならざるを得ない。
 

この2大テーマを差し置いて、他にテーマがないかと考えあぐねた結果、野田が打ち出したのが、TPP参加表明後の解散断行だ。しかし、自民党にとってみればこれほど有り難いことはない。実際、自民党幹部は「消費増税に加えてTPPまでやってくれて野田さん有難う」だという。


自民党政権がやろうとすれば、農村部出身の議員の総スカンを食らいかねないが、野田がやれば話は違う。選挙では「野田がやってしまった」と批判して当選すればいいだけの話しだ。自民党が政権を取った後も、野田の参加決定をわざわざひっくり返すようなことにはまずならないのだ。
 

一方で「0増5減」の定数是正がたとえ成立しても区割りと周知が終了するまで解散は行うべきではないという議論が民主党内には根強い。これは解散引き延ばし派がよりどころとする最後の砦だ。最高裁が違憲判決を出したら、選挙結果がひっくり返ると主張する向きも多い。


しかし首相の統治行為のうちでも解散権は「核」となる性質のものであり、まず誰も侵すことは出来ない。それに国権の最高機関である国会が少なくとも「0増5減」の意思表示をした上の解散であり、たとえ次々回からの実施であれ、最高裁も配慮せざるを得ない。真正面からの違憲判決を出して、根底から国政を覆すことなど出来るわけがない。

したがって、解散反対派の最後の砦は既に崩れているのだ。こうして冒頭述べたように解散反対論者は掃討されつつある。今日からの2日間の衆院予算委、14日の党首討論は、まさに最大の見物となる。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月09日

◆ようやく「年内解散」に“気付いた”マスコミ

杉浦 正章

 

繰り返し「政局観」に欠ける報道を続けて来たマスコミも、遅まきながら「年内解散」に“気付いた”ようだ。


それも慎重なNHKが8日朝から「首相、年内視野に解散時期を探る」と年内解散に踏み切ってから、にわかに追随し始めた。だらしのない「赤信号みんなで渡れば怖くない」の政治記事だ。政局を判断する能力の要諦は「政局観」があるかどうかにかかっている。洞察力のある、また政治記者本能に根ざしたともいえる「政局観」があるなしで、解散の判断が出来るかどうかが左右される。


さすがにNHKはこれまで「解散なし」とは報じなかったが、その他はおおむね「解散なし」ばかりか、幹事長・輿石東の宣伝に乗せられてなんと「衆参同日選挙」の可能性まで報じ、解散の判断は揺れに揺れた。
 

NHKが年内解散と報ずる根拠は判断力に加えて、場合によっては野田自身の懐に飛び込んで聞き出した公算がある。昔の官邸キャップは、政局緊迫の時期は自社の番記者が気付かないうちに首相の居間に忍び込み、直接話を聞いて、素知らぬ顔で記事を書いたものだ。そうした取材が背景にあるに違いない。
 

既に報じられた内容から判断しても早期解散を示唆する材料は多い。8日の本会議では、まず野田が「解散時期を判断する環境整備の中でも、とりわけ急がなければならないテーマとして、赤字国債発行法案の成立や、衆議院の1票の格差の是正と定数削減の問題、社会保障制度改革国民会議を挙げている。環境整備が整ったそのときにおいて、きちっと自分の判断をしていきたいと考えていることにいささかも変更はない」と述べた。


一見過去の言葉の繰り返しのように聞こえるが、NHKの報道を知っての答弁であり「いささかも変更ない」と述べたことがポイントだ。前日の7日には一年生議員との会合で解散を聞かれ「能動的に判断したい」と漏らした。これが「やるぞ」の示唆でなくて何であろうか。
 

さらに重要ポイントがある。それは8日になって12月に予定されていた日ロ首脳会談を延期したことだ。マスコミの多くが同首脳会談があるから「解散はない」と判断してきたが、ロシア側の日程調整がつかなくなったことを理由に延期したのだ。大統領・プーチンが辞める首相と会っても仕方がないと判断した可能性があるが、むしろ解散を意識した延期であろう。
 

8日には野田の掲げる解散3条件のうち赤字国債法案が15日に衆院を通過し、19日か21日にも成立するめどがついた。残る関門は選挙制度に絞られる。民主党内には愚かにも「0増5減」成立を「定数削減」と絡めることで遅らせて、解散の環境を作ろうとしない空気が濃厚だ。だが幹事長代行・安住淳は「0増5減」の先行採決に前向きであり、輿石がネックとなっている。


しかしこのところ輿石の突っ張りもどこか弱々しくなってきている。永田町には「輿石が解散ないと言っているのは、参院のことではないか」というジョークが飛び始めた。確かに参院には解散はない。


一方で輿石は「解散は首相が判断すること」とも述べており、突っ張りは離党防止策の側面が強いのだろう。1票の格差と定数是正は別々の法案で出される可能性が強く、その場合どさくさに紛れて1票の格差だけ先行させれば、解散の条件は整う。国民会議の設置などは半日あればできる。
 

こうして共同通信が「首相、年内解散視野」と報ずれば、読売も「首相年内解散を検討」とトップで踏み切った。日経は「年内解散、緊張高まる」、産経も「年内解散1月選挙浮上」とそれぞれトップだ。民放各社も記者の解説で年内解散の方向を打ち出している。朝日だけが出遅れた。ここまでくると解散への流れは止められない。


民主党内にはこの期に及んでも「離党する」と息巻く議員らがいるが、「もう勝手にしろ」と言いたい。「離党」で解散を食い止めるなどの動きは、あまりにも未練がましい。まるで見苦しい“命乞い”にそのものに見える。


具体的な選挙日程は最短で12月9日だが、いささか日程がきつい、同月16日の都知事選とのダブル選挙や、佐藤栄作がやった年末土曜日の22日選挙、年をまたいで年明け選挙などさまざまなケースが考えられる。いずれになるかなどは断定できる根拠はまだ不十分だ。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年11月08日

◆日米関係改善には早期政権交代しかない

杉浦 正章

 

オバマ政権の継続が決まったが、日本の政局の流動化が日米関係の改善に大きな影を落としている。鳩山政権が危機に陥れた日米同盟関係は辛うじて保たれているが、尖閣・竹島両問題や原発ゼロ政策など民主党政権がもたらした外交・安保上の失政は、オバマ前期の対日政策を3年間にわたり翻弄し続けた。


首相・野田佳彦はオバマとの首脳会談などに意欲を燃やしているが、レームダック政権は積極外交を控えるのが世界的な慣習である。


一方で、次期政権を担うとみられる自民党総裁・安倍晋三は、政権の最重要課題を日米関係の再構築におき、政権獲得後早期にオバマとの会談を実現すべきである。
 

民主党政権の数々の失策のうちでも最大級のものは、元首相・鳩山由紀夫による普天間移設発言と日米中正三角形構造の追求であろう。「最低でも県外」発言は自滅を招いたが、国の安全保障を米国の若者の命をかけた同盟関係に依存しながら正三角形はありえない。外交・安保上の無知がもたらす民主党政権の日米関係毀損の構図は野田政権にまで及んでいる。


「原発ゼロ」政策がその際たるものだ。強固な日米安保体制がもたらした最大の副産物の一つは日米原子力協定であろう。同協定の中核である核燃料サイクルの問題は原発ゼロ政策では成り立たなくなる恐れがある。米政府から危惧の念が表明され、野田は当面を糊塗した。


一方で「原発ゼロ」に警告する知日派有識者による「第3次アーミテージ・ナイ報告書」が発表された。同報告は「日本は一流国であり続けたいのか、それとも二流国になることに甘んじるのか」と鋭い問題提起をして、「日本の包括的な安全保障にとっても安全でクリーンな原子力発電は必須であり、原子力の研究開発に関する日米協力が不可欠である」と指摘している。
 

加えて日米安保の脆弱化は周辺諸国の領土的な野望を惹起(じゃっき)して、メドベージェフ、李明博の北方領土、竹島視察、尖閣諸島をめぐる中国のさまざまなけん制行為を生じさせている。すべてが民主党政権の3年間がもたらしたものである。とりわけ日中関係の悪化は米国の極東政策に影響を及ぼさざるを得ない情勢を招いている。


米国は中国が尖閣諸島をめぐり軍事行動に出た場合には安保条約第5条による日本防衛義務を果たすと中国側をけん制しているが、本音ではない。本音は極東における“日中激突”を望んではいないのだ。早期の関係改善を陰に陽に求めてきているのだ。
 


一部方向音痴の学者の中には対中妥協策の一つとしてに「中国に対して領土問題があることを認めよ」という主張があるが、問題は野田政権がこれに乗りかねないことであろう。安倍もテレビで「野田政権は領土問題の存在を認める方向で検討している。まさしく日本の危機だ。」と暴露、危惧の念を表明している。領土問題でつけいる隙を自ら作ってしまうのが、民主党政権である。
 

問題は沖縄問題にせよ、領土問題にせよオバマ政権側の政策変更で生じてはいないことである。すべては民主党政権に起因している日本の国内問題であることを忘れてはなるまい。オバマ再選でクリントン国務長官と知日派のキャンベル国務次官補が交代する方向であり、防衛相・森本敏は7日、「当面の関心は2期目の政権を支える閣僚や政策遂行の中心的な人物がどう代わるかだ」ともっともらしい解説をしている。



しかし大統領は再任であり、誰になろうと大きな変化はない。むしろ日米関係にとって最重要の問題は日本の政権がいかに早く交代するかの方なのである。したがって12月に開始する「日米防衛協力のための指針」協議も、事務当局だけに任せて野田政権の関与は避けるべきであろう。
 


安倍は自民党が政権を取った場合にはまず民主党政権の3年半がもたらした、外交・安保上の“崩壊現象”を早期に食い止めなければならない。まず国内的には原発ゼロ政策を改め、核燃料サイクルの流れを再び確立させて、安定的なエネルギー供給の路線を明示すべきであろう。その上で早期に訪米してオバマと会談、日米同盟関係を盤石の基板の上に置くことが必要だ。



さらに日米同盟の強化を裏打ちするためにも日中、日韓関係の改善にも取り組むことだ。とりわけ日韓関係はこのまま放置できない。贈収賄事件が身内にまで及んで、対日関係で国民の目をそらそうとした李明博はもう相手にする必要はない。新大統領の就任式典が2月25日にあるが、絶好の関係改善のチャンスとして安倍は訪韓することを検討すべきだ。日本の首相の式典参加は新大統領にとっても大きなプラス材料だ。


中国は3月の全人代で習近平に政権が移行するが、それを待って関係改善に乗り出すべきであろう。日中・日韓関係の改善が日米同盟関係の強化につながる構図であることを意識すべきだ。経済ではTPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題がある。


野田政権はこれ以上の離党者が出るのを懸念して参加表明を避けているのが実情だ。自民党政権では参加の決断に向けて対米交渉を促進すべきであろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月07日

◆野田政権は断末魔、持っても1月までだ

杉浦 正章

 
夏に約束した「近いうち解散」だがもう立党だ。こともあろうに首相が解散でうそをつき、その後の改造ではまさかの「両田中論功行賞人事」で大失態に次ぐ超大失態の連続発生。すべてが自分が掘った穴に自分が落ちた形だ。この首相・野田佳彦の体たらく、そして民主党政権が3代にわたって“立証”した統治能力の欠如。民主党には恩も恨みもないが、公平に見てもう無理だ。末期症状だ。


恐らく国民大多数の願望は政権交代にある。解散・総選挙の日程にばかり目が行くが、発想を転換して政権が持つかどうかをあえて予測すれば、長期の特別国会になるか通常国会になるかは別として、国会審議を伴う次の国会を野田が招集することは80〜90%の確立でない。早ければ年度末、遅くても1月までが政権の限度だ。戦争や天変地異でも発生しない限り継続はない。
 

自民党総裁・安倍晋三がテレビで「今月22日までに解散がないと年内選挙の準備が整わない」と述べたことをとらえて、新聞が22日が年内解散の限界と書きまくっているが本当か。解散という何物にも優先される最高の政治テーマが机上の空論で左右されるのか。


新聞は「遅くても12月4日公示、同16日の投開票の日程が有力。公示までの準備には10日間程度が必要で、解散の期限は今月22日になる」という。しかし、これは安倍が野田を追い詰めるための“戦略”として期限を区切ったことにすぎない。実現すればめでたいことだが、実現しなくてもいくらでも日程は立てられる。
 

過去の歴史を見れば12月下旬から1月にかけての解散の事例は戦後4回ある。吉田茂が12月23日、鳩山一郎が1月24日、佐藤栄作が12月27日、海部俊樹が1月24日だ。事態の進展によってはいくらでもバリエーションが利くのだ。田中角栄による72年の日中解散は11月13日だったが、その後の特別国会は通常国会に代わるものとして召集され、280日間の長期にわたっている。
 

こうした日程を念頭に置けば、ちまちました“安倍日程”に必ずしもこだわる必要はない。もちろん安倍が解散を急ぐのは野党の戦略として当然のことだが、その先にバリエーションがあるのだ。


安倍は野田が「近いうち解散の確約」を「『うそつき』と言われないように頑張りたい」と発言したことを取り上げ、「何をどう頑張るのか、今週中に明らかにすべきだ」と述べ、野田に対し、年内解散に踏み切ることを今週中に確約するよう求めた。しかし安倍の戦い方の欠点は、これを直接野田に申し入れるのではなく、メディアに向けて発信していることだ。もどかしいのだ。
 

このため野田からは「メディアを通じた文通みたいだ。何か聞きたいことがあるのならば、むしろ国会での党首討論で、国民の見える前でやった方がいいと思う」と言われてしまったのだ。民主党の戦略は党首討論で安倍の赤字国債への対応をあぶり出して、法案成立への一里塚にしようというところにある。


また党首討論を14日に設定したのは少しでも遅らせたいという幹事長・輿石東の姑息(こそく)な思惑がある。時期はともかくとして、安倍は躊躇せずに党首討論に応ずるべきだ。
 

こうして安倍の早期確約要求戦略がまさに佳境に達しようとしている。野田が何らかの形で再約束すれば、それでけりがつく。しかしずるずると引っ張れば一定期間は引っ張れる。安倍は今週の確約に拘泥する必要はない。なぜならここまでくれば早期解散日程の選択肢はいくらでもある。


野田政権の「追い詰められ度」は尋常でないところまで来ているのである。田中真紀子の超大失態でとどめを刺される寸前まで来た。世論は、ごうごうたる政権批判の渦だ。


田中はずるがしこくも、自らの大失態を覆い隠すために「新しい基準のもとでもう一回審査をする」と“糊塗策”にでた。まさに誰もが分かる浅知恵であり、人生設計を狂わされる若者の気持ちなどつゆほども考えていない。先延ばしは事態をさらなる悪化に持ち込むことが分かっていない。
 

官房長官・藤村修はこの期に及んでも文科相の専権事項扱いしているが、野田の任命責任が免れるとでも思っているのとしたら甘い。政権は末期のそのまた末期にまで到達した。野田は当面の解散要求をかわしても、もう絶対に外れることのないトラバサミにかかったタヌキであることを認識すべきだ。国のためを思うなら次期政権による予算編成の余裕を残して潔く直ちに解散するのが憲政の常道だ。


臨時国会解散をたとえしのいでも通常国会冒頭解散は避けられない。もちろん野田が招集することになるが、事実上解散のための招集となる。その後の特別国会は次期政権が招集する。いずれにしても退陣が避けられないのなら、現段階で決断することが国民へのせめてもの“おわび”なのだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月06日

◆「暴走婆」田中が民主政権にとどめの一撃

杉浦 正章
 


「暴走馬」ならぬ「暴走婆(ば)」が予想通りの再登場である。思いつきのごとく文科相・田中真紀子が3大学による来年度の新設申請を不認可と裁断した。「学生も職員も人生が大きく変わる」(自民党総裁・安倍晋三)という愚挙だ。


問題は首相・野田佳彦も官房長官・藤村修も事前に報告を受けながら、問題の所在を掌握せず、これを黙認したことだ。当然野党は最大の追及材料が転がり込んだことになる。政権全体の責任問題として野党は追及することになろう。
 

安倍は5日のテレビで珍しく個人攻撃に出た。田中が秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大の新設申請を却下したことに関して「彼女と一緒に仕事をして彼女を褒める人を1人も見たことがない。日日言うことが違うし、平気でうそを言う。性格的な問題に根ざしていて、尋常な人ではない」と切り捨てたのだ。


たしかに立ち居振る舞いは尋常ではない。過去に文科相の諮問手続きを経て何年も検討した揚げ句、認可する直前にまでいっていた問題を根底から覆したのだ。答申が覆された例は、少なくとも過去30年間はない。雨後の竹の子のごとき“駅弁大学”制度を変えたいのなら、制度を中央教育審議会などを経て正面から改革すべきであり、既に文科省が積み上げた個個の新設方針をひっくり返しても制度は改正されない。短絡の極みのパフォーマンス政治である。
 

田中の言動の根底を分析すれば、ファザー・コンプレックスにたどり着く。そこには父・角栄の天才的なひらめきの政治があり、娘として常に比較されるから、これを何とか乗り越えたいという願望が深層心理に存在するのだ。


ひらめきの政治と言うが角栄は、常に人一倍努力をする政治家であった。多忙な昼間を避け、深夜に起きて役所の文書にすべて目を通し、頭に入れた上で物事に対応した。人間関係はとりわけ大切にした。ひとたび接した官僚は、手のひらの玉のごとくいつくしんだ。その上での指導力の発揮であり、今の民主党政権のように頭から官僚を批判し遠ざけてしまっては、政治主導など成り立つわけがないのだ。
 

真紀子を「じゃじゃ馬」と呼びつつも愛していた田中は、何とかこの性格を変えられないかと日日悩んでいた。時には喧嘩して家中追いかけ回すこともあった。ある朝筆者が、朝駆けすると手に包帯を巻いて出てきた。真紀子を追いかけて転んでねんざしたのだ。しかしこの田中の努力は徒労に終わった。真紀子は政治家になると、異常なまでの独善主義に陥った。父親とは似ても似つかぬ鬼っ子になってしまったのだ。


田中でも教育し切れなかったじゃじゃ馬が野に放たれたのだ。外相になれば「外務省は伏魔殿」と、よって立つ基盤を批判。「人間には三種類ある。家族と使用人と敵だ」と、人間関係至上主義の父親とはまるで異なる宇宙の怪獣のごとき政治家となったのだ。
 

一番悪いのは真紀子が、父親の血と汗の努力の上で打ち出す天才的なひらめきの政治のうわべだけを真似するようになったことだ。それも洞察力も展望もなく単純計算でマスコミに売り込めると考えて見当違いの“ひらめき”をするのだ。安倍が「人の人生が変わるような問題は、普通の人なら考えるが、考えないのが田中さんだ」と形容したとおりだ。これが3大学の新設却下の根源にあるのだ。


それにつけても目につくのは事務次官以下官僚のだらしのなさだ。自分が積み上げた政策をひっくり返されても、卑屈に揉み手のお追従を繰り返しているのだろう。職を賭して大臣をいさめるべきところを、それをする官僚はいない。どうせ政権交代ですぐ辞める大臣に、首を切られても仕方がないというのが文部官僚の自己保身の本音であろう。
 

加えて、藤村がはからずも述べた問題がある。それは藤村が、記者会見で事前に田中から新設不許可の方針について野田や藤村に報告があったことを認めた点だ。おそらく問題の所在を把握せず、軽い気持ちで聞き流したのだろう。これは野党の追及のポイントになる。政権ぐるみでの対応への追及となる。


自民党幹事長・石破茂は「いかなる根拠に基づいて審議会と違う見解を示したのか。法的に瑕疵があったのか。思いつきではないということをきちんと述べてもらわない限り、誤った政治主導だ」と発言、追及の構えだ。


3大学の申請については、田中が誤りを認めて撤回して責任を取るしか方法はあるまい。撤回しなければ安倍が認可を認めているように政権交代で認可されることになる。


いずれにしても内政・外交上の失政を繰り返して国民を苦境に追いやる民主党政権は、国内に“北朝鮮”を抱えているようないら立ちを感ずるようになった。首相・野田佳彦は早期に解散して政権交代をしなければ、国家が危機的状態に陥ることを認識すべきだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)