2012年12月17日

◆自民党は勝って兜の緒を締めよ

杉浦 正章
 


「脱原発」政党は軒並み敗北、再稼働へ
 

選挙結果は自民党がやる気になれば総裁・安倍晋三の右傾化路線で突っ走れることを意味する。同党が294議席と300議席に迫り、自公で325議席と320議席の3分の2を突破し、その補完勢力として日本維新の会の54議席が登場したことが意味することは、そういうことだ。


しかし安倍も留任の幹事長・石破茂も当面はドラスティックな動きは控え、“慣らし運転”に徹する構えだ。内政では日銀法改正も含めた大胆な景気対策に全力を傾注して、超大型補正予算をまず1月の通常国会冒頭で成立させる。原発も亡国の「原発ゼロ」政党が軒並み敗北したことを受けて、安全なものから再稼働を進める。


外交ではまず民主党政権が毀損した日米安保体制の再構築に取り組む。安倍の1月訪米も視野に入れる。ただし自民294議席は、百家争鳴で党運営を極めて難しいものにし、公明党との連立も改憲や集団的自衛権確立を進めれば危うくなる危険を内包している。
 

総選挙結果を俯瞰(ふかん)すれば、小選挙区制特有の極端なぶれを示している。前回308議席を獲得した民主党が、その5分の1以下、選挙前の4分の1以下に激減、自民党が3倍増になったことが端的に物語る。


これは極端な政策の変更を招き、日本の政治を常に不安定な状況に置くことを意味する。中選挙区への回帰が不可欠であり、安倍は早期に第九次選挙制度審議会を発足させ、制度問題に取り組むべきだろう。


自公圧勝は参院のねじれを衆院の再可決でカバーできる体制を意味するが、これは憲政の常道からいってよほどの重要法案でもない限り禁じ手である。常には使うべきではない伝家の宝刀として温存すべきであろう。
 

ただし、日本維新の会が第3勢力として登場したことは自民党に新たな選択肢を与えることとなった。安倍が維新と連立を組むことは当面ありえないが、政策が一致すれば自公と維新で379議席に達しており、事実上の“大政翼賛政治”になり得る側面がある。


維新はその信条、保守路線から見て自民党の補完勢力としての役割を果たすことになりそうだが、代表・石原慎太郎の目指したキャスティングボートを握る構図にまでには至っていない。しかし、集団的自衛権の行使への立法措置など維新を活用すれば可能となる。


公明が反対しても自民と維新でも3分の2議席を上回ることが可能であり、やる気になれば安倍はその右傾化の信条の遂行が可能となった。また民主は、半年後の参院選をにらんで野党色を強めるものとみられるが、税と社会保障の一体化などでの自公民路線が選挙後にも継続される可能性があり、何でも反対路線は取りにくい。
 

もっとも安倍は16日夜選挙結果について「有権者は自民党を100%信用してくれたわけではない。3年間の民主党政権の混乱に終止符を打ったのだ」と慎重な分析をしており、姿勢は圧勝で上づっていない。憲法改正についても「国民的議論が必要であり一歩一歩進む」と述べている。


石破も同様の考えを述べており、自民党は重心を低くして政権運営を進める可能性が強い。とりわけ先に安倍を病気にした参院のねじれは解消されておらず、自公では16人が足りない。


みんなの党など小政党を引き込めば過半数を維持できるが、ここはやはり民主党との部分連合を模索することが適切だ。参院民主党が分裂して自民と合流すれば別だ。


常に足かせとなってきた赤字国債発行法案は3党合意で本予算と一体処理を確認しているのも、安倍にとってはプラスの作用をもたらす。


総選挙の焦点であった原発の是非については、原発立地の39選挙区で自民党が数区を除いて圧倒的な勝利を収めており、石破が述べていたように安全を確認した原子炉から再稼働が行われるだろう。
 

自民圧勝に導いたのは民主党の体たらくへの批判に加えて尖閣、竹島、北方領土など領土問題における新事態が大きく作用した。


とりわけ尖閣問題での中国政府の“官製暴動”が、有権者の強い反発を招き、安倍、石破の右寄り路線と響き合ったことが決定的要因となった。しかし安倍が外交・安保で極右の石原と同様の路線をとることは、日中軍事衝突につながる危険を帯びており、慎重な対応が望まれる。


つまり安倍は石原と同様に尖閣に船だまりを作り公務員を常駐させると公言しているが、そのような措置を取れば軍事衝突に直結しうるからだ。


彼我の軍事力は海軍も空軍も日本が優勢であり、これに米軍が支援すれば紛争の段階なら圧倒的に勝つことが出来るが、勝っても日中関係が大きく壊れては無意味で国益と逆行することは言うまでもない。だいいち米国が中国を挑発するような行動には反対するだろう。
 

米国は議会も政府も尖閣への安保条約適用を表明している。先の領空侵犯に対しても中国をけん制する動きに出た。しかし、これは極東で戦争が発生することを望んでいないからこその対応であり、狙いは紛争を起こさないための対中けん制にあることを見誤ってはならない。


安倍は選挙後の最重要外交課題に日米関係の立て直しから取り組む方針を明らかにしている。


民主党政権が毀損した安保関係のすきに乗じて近隣諸国が領土で揺さぶりをかけてきていることは確かであり、日米関係再構築はすべてに優先されるべき課題だろう。安倍は1月にも訪米して大統領・オバマとの関係修復に臨むことになりそうだ。
 

安倍は尖閣問題であえて火中のクリを拾う必要は無いが、米軍への攻撃を阻止する集団的自衛権の行使を可能にすることは別問題だ。これは憲法解釈の問題であり、安倍も16日夜「憲法改正でなく解釈の変更でいく」と述べている。あくまで国内政治の問題であり、中国や北朝鮮が文句を言う筋合いでもあるまい。


自民党は国家安全保障基本法案を作り、集団的自衛権の行使を可能とする方針を公約に明記した。維新もこれに事実上まる乗りの公約を発表した。法案にするか安倍が解釈を変えると表明するかは、むしろ解釈変更の方が格段にやりやすい。


しかし来年の参院選挙までは勝って兜(かぶと)の緒を締める期間と心得て、急激な対処は控えるべきであろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月14日

◆さらば民主政権、10年は復権不要だ

杉浦 正章

 

まさに鉄槌が下されるというのはこのことを言うのだろう。総選挙で民主党は壊滅的な打撃を受け政権の座を離れる。


3年3か月にわたる政権は戦後史上まれに見る政治混乱を作り出し、内政・外交にわたる国家的損失は測りがたいものがある。そこには経験不足では済まされない、国民を欺く“欺瞞の政治”があった。


慚愧(ざんき)に堪えないのは自然災害とはいえ1200年に1度の大震災が民主党政権時代に発生したことである。対応は後手後手に回り、復興は遅々として進んでいない。もう選挙民は10年は民主党政権の顔も見たくないのだ。
 

この体たらくでよく政権が3年3か月も持ったと思われるが、その最大の原因は有権者の誤判断による空前の308議席にある。途方もない議席数はその政権党が何でも出来ることを物語り、容易に交代できないという現実をもたらしたのだ。


まず初代首相が暗愚そのものであっても政権交代などとてもおぼつかない。続く首相が原発事故で致命傷の誤判断をしようが、外交上の大失態をしようが政権は継続する。まともな首相がやっと出来たと思えば、解散という政局最大のポイントでうそをつくし、対中外交で誤判断。


みな「衆愚の浮動票」がもたらした結果である。自民党政権の場合300議席前後は数回あるが、これほどの慢心と失政はなかった。
 

この308議席は首相・鳩山由紀夫と幹事長・小沢一郎をまさに有頂天にさせた。鳩山はまるで何をやっても良い免罪符を獲得したかのごとくに「改革」と称する「愚策」を内政、外交に渡って繰り広げた。


まず外交では、就任早々の国連総会で2020年までにCO2を25%まで削減するなどという虚構をまき散らし、各国代表をあぜんとさせた。日米安保条約を無視するかのごとく日米中正三角形論を説き、米国を離反させた。


それでも懲りずにインド洋での給油支援活動停止、米国抜きの東アジア共同体構想のうち上げとまるで遅れてきた非武装中立の社会党政権のような外交を展開したのだ。暗愚の極致が普天間移転問題で大統領・オバマに言った「トラストミー」である。


要するにそこらの知ったかぶりの床屋談義を、こともあろうに外交の場に持ち込んでしまったのだ。政治主導などというキャッチフレーズに自ら踊り、戦後毎週続いていた外務次官からの国際情勢聴取もやめてしまった。まさに情報ゼロで弱肉強食の外交舞台に躍り出て、国家を翻弄してしまったのだ。9か月でも長すぎる政権であった。
 


引き継いだ首相・菅直人も“第2次欺瞞外交”を展開。尖閣沖漁船衝突事件で、早々と船長を釈放しておきながら、それをこともあろうに地検の判断であるかのように言い逃れようとした。通常国会で菅はまさに窮地に追い詰められる寸前であったが、3.11に救われたのだ。



野田外交も、想像を絶するミスを犯した。中国国家主席・胡錦濤が会談で尖閣国有化に懸念を示したにもかかわらず、翌日に閣議決定をしてしまった。明らかに外交のエキスパートの声を聞いていない判断であった。


中国が大衆を煽って官製デモを暴発させ、日中双方に取り返しのつかない損失をもたらした。総じて言えば民主党政権は中国の海洋進出という地政学的な膨張路線に全く対応できていなかったのだ。
 

内政ではポピュリズムの極みの路線であった。その原点は出来もしない公約を並べたマニフェストにある。その公約があたかも節約と改革で実現できるという幻想をばらまいた。16.8兆円もの財源が「政権に就けば何とでもなる」という小沢の虚言に最後まで引っ張られたのだ。


国会をファッション写真の背景程度にしか心得ていない蓮舫が、事業仕分で工業立国の命運がかかるスパーコンピュータ事業を「なんで2位ではいけないの」と宣ったのがすべてを物語る。まるで「パンがなければケーキを食べたら」と言ったマリーアントワネットのごとき幼さであった。


3兆円捻出するはずの事業仕分けでは半分も引き出せず、それも後の予算編成では復活するという体たらくだ。コンクリートから人へのキャッチフレーズも空理空論に終わった。八ッ場ダム建設中止を前原誠司が国交相就任早々に断言したが、結局継続となった。
 


民主党政権はことあるごとにリーマンショックを経済停滞の原因に挙げるが、過去3年間で先進諸国も中国も韓国もショックを克服しているのに、日本だけが低迷しているのはなぜか。


自民党総裁・安倍晋三が日銀による国債買い上げなど景気対策に言及しただけで株価が「安倍相場」となるのはなぜか。野田は「口先介入」と批判するが、逆にに民主党政権の3年3か月は市場への「口先介入」 すら思いつかない日日であったことを物語るのだ。
 

野田は最後の最後で政権担当者としてはやってはならないタブーに手をつけた。苦し紛れに国家の存亡にかかわるエネルギー政策に救いを求めたのだ。「原発ゼロ」で失地を挽回し、自民党を追い込めると踏んだのだ。これは維新の橋下徹や未来の嘉田由紀子に勝るとも劣らぬ大衆迎合であった。


その結果はあさっての民主党惨敗となって現れるだろう。最初の308議席は3分の1以下に転落するのだ。場合によっては80議席まで落ち込む可能性もあり、そうなれば4分の1だ。この有権者の「ノー」が意味するものは、予見しうる将来にわたる「ノーモア民主政権」なのだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月13日

◆小沢、石原の乱入で第3極失速

杉浦 正章
 


第3極の不振は“政治に疎い”自治体の長が、すれっからしの政治家二人にだまされた構図が浮き上がっている。石原慎太郎と組んだ日本維新の会も、小沢一郎と組んだ日本未来の党も、そのマイナス効果だけが浮き彫りとなり、ひたすら自民圧勝へと導く結果をもたらしている。


一方で起死回生の“野望”を抱いた小沢、石原の二人は、民主党にだまされ続けた有権者の目が肥えて、再起不能の瀬戸際に立たされている。
 

「とんぼ釣り今日は何処まで行ったやら」は加賀の千代女の句だが、「小沢さん」と置き換えても当てはまる。小沢一郎の遊説活動に一貫性がないのだ。


4日の公示日は愛媛の田舎町で演説、得意の川上作戦を展開するかと思ったら、その後は鳴かず飛ばず。各社の世論調査で大敗北が伝えられると、いても立ってもいられないのか10日には急きょ都内6カ所で演説。候補者個人の応援ではなく、比例票の発掘に当たった。そして12日には異例の地元入り。


投票日前まで地元にへばりつくというのだ。地元では「小選挙区で敗れたら引退」とまで口走り、まさに小沢王国背水の陣の様相だ。この揺れる小沢の姿は、まさに第3極の実態を現しているのだ。
 


小沢は秋口から3回に渡って滋賀県知事・嘉田由紀子と秘密会談を持ち、口説きに口説いたようだ。マスコミの脱原発の動きに乗ろうと戦略を立て、知事で1番先鋭的な嘉田を担げば「風」に乗れると考えたのだ。


しかし今度ばかりは小沢のもくろみは大外れにはずれた。脱原発の風などそよとも吹かず、逆に原発推進を公言する自民党が躍進する結果を招いたのだ。
 

嘉田も田舎の知事レベルの“政治能力”しか発揮できなかった。選挙戦は最初から小沢のことでの言い訳だ。言い訳の選挙は必ず負けるというジンクスを知らない。「小沢さんには表に出ないでくださいということで話が付いている」と言われても、誰も信ずるものはいない。現に表に出ているのだ。「小沢さんは使いこなさせていただきます」と演説すればするほど、“冷笑”が返ってきていることも知らない。


衰えたりとは言え海千山千の政界の実力者を「使いこなす」が聞いてあきれるのだ。こうして小沢チルドレンなど61人の候補のうち当選するのは10人台という散々たる結果を招きそうなのだ。
 

一方、維新も石原に抱きつかれて橋下徹の持ち味である鋭角の切れ味が著しく鈍化した。原発推進論の石原の主張で、「原発ゼロ」があいまいとなった。逆に「核シュミレーション」発言や「憲法9条があるから拉致被害者を取り戻せない」という戦争志向の発言など、極右国粋主義者の「鎧(よろい)丸出し」となり、石原ペースの印象が強まった。


その思考能力も老化現象丸出しで、記者会見でもすぐぶち切れる。中国暴動の責任を問われて「そっちの責任だ」と支離滅裂にもメディアに食ってかかる。
 

そもそも石原の登場には本人の自信過剰と橋下の誤算が背景にある。都知事を13年もやると、一国一城の主だから回りは何でも言うことを聞く。こともあろうに尖閣諸島を都が買うと言っても、ろくろく反対論も出ない。やりたい放題の“裸の王様”になってしまったのだ。


おまけに尖閣で募金を募ればすぐに14億円も集まる。これで石原は新党を作れば石原ブームが生じて、首相になれると浅はかにも見誤ったのだ。橋下の誤算も、東京での維新ブームを起こすには石原の力を利用するしかないと判断したことにある。
 

しかし都民の反応は逆だった。名誉職の色彩が強い都知事には向くと判断しても、生活に直結する国政選挙のリーダーとは考えなかった。おまけに新銀行東京の破たんでは都民1人あたり約11000円に達するツケを払わせ、反省の弁はゼロ。


発言はインテリ層が多く、平和志向の強い都民が1番嫌う極右の思想に貫かれている。都民の間にはまさに“拒絶反応”が生じつつあるのだ。その証拠に維新は、石原自らの地盤である東京都で小選挙区は全敗の危機に陥った。小選挙区で出馬していたら石原も落選したかもしれない。


橋下は正直にも「東京では惨敗の状況だ。国民のご判断であれば仕方がない」と東京“落城”を宣言。かくして「石原首相」の目は潰えたのだ。都民は上方落語は好きでも“上方政治”には動かされないということなのだ。
 

こうして漁夫の利を占めるのは自民党という構図となった。維新対みんなの党の食い合いも、自民党を当選させる。42選挙区でつぶし合いをしている民主党と未来の党も自民党を当選させるといった具合だ。


圧勝した自民党は衆院では連立を組む必要もないが、公明とは連立して、参院があるから民主党との部分連合へと動くだろう。維新ともケースバイケースだ。石原の出番は改憲しかないが、改憲達成まで肉体的条件が持つまい。80歳だ。小沢も70歳で、小党のトップになってもせいぜい余生をしのぐ程度。政治への影響力は生じにくい。


      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月12日

◆自民圧勝で原発論争は勝負あった

杉浦 正章
 


「原発戦争」とも言うべき国論分裂の総選挙は、再稼働とベストミックスを主張する自民党の圧勝に終わる見通しとなった。公示前の世論調査より終盤の調査の方がさらに自民党が有利となる傾向を見せ、衆院で常任委員長のすべてを確保する絶対安定多数269議席を突破して300議席に迫る勢いだ。


筆者の指摘したバンドワゴン(勝ち馬)効果が続いており、このまま投票結果となって現れるだろう。今日は各紙が気付いていないことを書く。着眼点はもろに脱原発が争点となった原発立地39選挙区の分析だ。


筆者の予想では少なくとも79%以上の選挙区で自民党が勝利を占める流れだ。朝日、毎日、東京、TBSなど脱原発をあおったマスコミは、今後“敗戦”の虚脱感に覆われ、反省を迫られるものであろう。
 

1番激しく「原発戦争」が展開されたのが原発立地39選挙区だ。筆者が各選挙区ごとに分析した結果、既に自民党が31議席を確保しており、民主党はわずか4議席にとどまっている。


民主党優勢は女川原発の安住淳、福島の玄葉光一郎、大飯の前原誠司ら党幹部で、原発あるなしにかかわらず当選が見込める候補だ。大接戦が柏崎・刈羽の新潟5区で展開されているが、田中真紀子危うしの見方が強い。 
 

この立地選挙区での自民党圧勝が物語るものは、朝日を中心とする「東京目線」での脱原発論議がいかに民衆に根ざしておらず、上滑りのものであったかを物語る。地方だから分かっていないなどと言ってはならない。


原発と常に接してきた地域住民は、日常習慣的に国家とエネルギーを考える大局観が身につき、にわか仕立ての原発ゼロの主張などには動じない傾向を持っていたのだ。


もちろん原発の安全性への信頼も高い。原発に生活がかかっていることも否定は出来ないが、生活がかかっているのは国民全体も同じであろう。空理空論で、しかも広島、長崎の職業的な原爆反対イデオロギー闘争の色彩も混入した「原発ゼロ」派は、かくして大敗北を喫することとなったのだ。


当の朝日の分析でも民主党や日本未来の党など「脱原発」を公約に掲げる党の苦戦が目立つのだ。超党派の「原発ゼロの会」や脱原発基本法案の賛同者に名を連ねた前議員で、朝日新聞の調査で優勢だったのは1割程度にとどまるという。


その朝日が最後の頼みとしたのが原子力規制委員長・田中俊一による、敦賀原発稼働認めずの判断だ。朝日は「活気づく脱原発政党」と見出しを取って、「衆院選で脱原発を訴える政党は活気づいた」とあおった。しかしこの“作文原稿”は何か空しいものを感じる内容であった。


なぜなら自民党圧勝に何の影響も出ていないからだ。読売の調査では比例区の支持が自民党が比例選投票先で大幅に上昇し、無党派層でもトップの優勢を維持している。脱原発派は「活気づく」にはほど遠いのだ。おまけに規制委員長の判断は、逆に活断層が走っていない原発は再稼働ですることへの布石ととらえることが出来る。


委員長は“踏み絵”を演じたのであり、そのまま受け取る朝日は読みが浅いのだ。1つ2つの原発はどうでもいいのだ。
 

脱原発政党も無力感にさいなまれている。官邸筋は「もう勝負あっただ。身辺整理だ」と正直に“落城”を認めている。夏には原発再稼働に動いた野田も、急転換して節操のない原発ゼロを主張したが、まさに糠に釘の効果しか生まれていない。


「原発フェードアウト」の維新副代表・橋下徹に至っては早くも「維新は完全に負けている。自民党が圧勝だ」と敗北宣言をする始末。石原慎太郎の出馬にもかかわらず、東京では壊滅的敗北だ。


小沢一郎の背後霊が見える薄気味悪い日本未来の党代表・嘉田由紀子は、いまマスコミの“よいしょ”と現実との乖離(かいり)にやっと気付いて、内心りつ然たる思いであろう。


筆者が自民党の完勝を強調するのは、他の全党が「脱原発」を前面に押し出した選挙をしたにもかかわらず、自民党だけが「原発問題はスローガンだけで国を誤ることはしたくない。


原発は安全と安心が確保されれば必要なものは再稼働する。受けは悪いがそれを語る勇気を持たないでどうするんだ」(幹事長・石破茂)と果敢にも原発維持を掲げて選挙に臨んだことである。これは完勝以外の何物でも無く、我が国のエネルギー政策は亡国の危機から救われることになるのだ。
 

それにつけても「反原発」各紙の選挙誘導はひどかった。確信犯的かつイデオロギー的に脱原発の朝日は、巧妙なる脱原発への誘導記事を繰り返した。毎日も朝日に追随する傾向を見せた。朝日が社説で脱原発での「工程表作り」を主張すれば、遅れて毎日も「脱原発と再稼働 説得力ある工程表示せ」と追随。よく似ているのだ。


TBSのみのもんたは陳腐な正義感まがいのものを前面に押し出して、毎朝脱原発と怒鳴りまくり、民放全体の品位を落とした。


しかし3年前は衆愚であった浮動票は、今回は“衆賢”の浮動票に変ぼうを遂げつつある。東京は社説で「原発事故後の日本は、一体どんな選択をするのか。どんな未来を築くのか。世界も注視する選挙なのである」と高揚感丸出しの扇動をしている。これは俳句の会では「だからどうした」と言われるフレーズだ。


中日新聞のお膝元の浜岡原発を抱える静岡2区は自民。3区も接戦だが自民党がリードだ。有権者つまり読者の選択から東京の方針は浮いているのではないか。だいいち世界が注目しても何の腹の足しにもならない。中国も韓国も日本が原発ゼロに走って、亡国とならないことを内心残念がっているのだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月11日

◆安倍は「集団的自衛権」確立に取り組め

杉浦 正章

 

選挙終盤戦にいたって自民党が公約に掲げる集団的自衛権の行使をめぐる論議が活発化している。選挙後の政権の枠組みにも絡む問題だ。推進論は自民、日本維新の会の両党。反対は公明党。民主党は首相・野田佳彦個人が賛成だ。自民党総裁・安倍晋三は推進論の急先鋒だ。


しかし当面は自公路線を継続するしかあるまい。強行すれば公明の連立離脱に直結する恐れがあるからだ。マスコミも読売、産経が推進、朝日、毎日が反対と真っ向から対立している。


国論を2分する問題だが、国際的常識は国連憲章も認めているように集団的自衛権の行使が前提となる。日本の立場は非常識というか、国際的には通用しない。ここは長期戦で確立へと動くべきだ。
 

集団的自衛権の行使とは 同盟関係にある国が攻撃されたら、それを自国に対する攻撃とみなし、実力で阻止する行動だ。どの国にもある権利だが、日本には憲法9条があるから行使しないと政府は公式に表明している。「わが国を防衛する必要最小限度の範囲を超えるため、憲法上許されない」(内閣法制局)とする憲法解釈がその根拠だ。


しかし、この法制局の解釈は日米安保体制を累卵の危機に置くものであろう。米軍は若者の生命を代償に日本を守ろうとしているが、日本はその若者を見殺しにするのだから、最初から成り立たない論理だ。内閣法制局は時の政権のために法解釈を論理構成するのが“仕事”であり、三百代言の別名がそれを物語っている。


政府は安保論争華やかなりし頃は、この見解を活用して国会の論戦をしのいできたが、中国との尖閣問題、北朝鮮のミサイル発射という新事態を受けて、三百代言に寄りかかってばかりはいられなくなったのが実情だ。安倍も米軍を見殺しした場合について「その瞬間に日米同盟は危機に陥る」と危機感をあらわにしている。
 

このため自民党は国家安全保障基本法案を作り、集団的自衛権の行使を可能とする方針を公約に明記した。維新もこれに事実上まる乗りの公約を発表した。


これに対して公明党は自民党に対するけん制を続けている。10日も代表・山口那津男が「憲法の柱は守ることが重要だ。どうしてもはみ出したいと言うならば国民も懸念を持つし、外国にも心配を与える。限界が来るかもしれない」と連立離脱の可能性にまで言及している。


一方でマスコミ対政党の議論も白熱化している。毎日が9日の社説で「集団的自衛権 憲法の歯止めが必要だ」と反対を表明したのに対して、維新副代表・橋下徹が噛みついた。それも明かな選挙違反で「ボクは警察に逮捕されるかもしれない」と述べているツイッターで10日、毎日批判を展開したのだ。



橋下は毎日が「政治論だけで憲法論を乗り越えるという手法には違和感が残る」と書いたのに対して「 毎日は、憲法改正は嫌だし、国家安全保障基本法も嫌。それが絶対条件だから、ロジックがむちゃくちゃになった。毎日のこの社説は、大手新聞社の社説では見られないほどのロジック破綻」とまでこき下ろしている。
 

毎日は選挙報道まで共同通信に依存しており、果たして大手新聞社と言えるかかどうかは疑問が残るが、政局記事だけはさすがに老舗だけあって朝日、読売を上回る切れ味を見せることがある。


しかし毎日の社説はレベルが低いケースが多い。今回も「憲法が他国の領土における武力行使も容認していることになってしまうのではないか。


北大西洋条約機構(NATO)加盟の英国は集団的自衛権の行使としてアフガニスタン戦争に参加したが、憲法上は日本も参戦が可能となる」と、反対論者の常道である“拡大解釈”に陥っている。これはおかしい。共産、社民などの主張と同じだ。
 

“歯止め”がかからなくなることが反対の理由だが、アフガニスタンや中東までアメリカに従って参戦するという論理を展開している政党はない。より具体的には領土、領海内とその周辺における戦闘行動に限定する方向を法案に書き込めば良いのだ。問題はその法案に実現性があるかどうかだ。


国会的には極めて難しい。参院がねじれていることと参院選が半年後にあるという二つの事実が困難にするだろう。なぜなら安倍は選挙後の連立を当面自公を軸としたものにする方針である。自公を軸に政策ごとに維新や民主党と組むという部分連合が基本となるだろう。
 


もちろん維新と組めば集団的自衛権に法的根拠を与える国家安全保障基本法の衆院通過は見込める。両党の法案が一致している背景には安倍と橋下の事前調整があったフシもある。今の勢いからいくと場合によっては自民と維新で衆院3分の2の320は確保できるかも知れない。


そうすれば参院で否決されても、衆院での再可決が可能となるが、公明の連立離脱を覚悟しなければならない。参院選での自公選挙協力はねじれ解消には不可欠であり、公明の離脱は何としても避けなければならないのだ。その辺の“調整”がつくかどうかにかかっている。
 

それでは一朝有事の場合どうするかだが、ことは簡単だ。内閣法制局に首相が解釈の変更を求めれば良いのだ。そもそもこのような重大な憲法解釈を内閣法制局に委ねていることの方が問題だ。その上で首相自らが新解釈を打ち出せば良い。


「集団的自衛権の権利は認めるが、行使を認めない」などという“また裂き憲法解釈 ”の方がおかしいのであって、時代即応型解釈に変えれば良いことだ。また戦争というのは常に“超法規”であり、政府が臨機応変に対応して決めれば済むことでもある。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月10日

◆安倍は早期訪米で対中包囲網を築け

杉浦 正章
 


3年3か月ぶりの自民党政権で、総裁・安倍晋三が取り組むべき課題は山積している。太筆で書けば民主党政権によるトリッキーな政治から脱却し、即断即行の政治を回復する必要がある。外交・安保での急務は日米安保関係再構築による対中包囲網の確立だろう。


安倍は1月早々にも訪米して大統領オバマとの首脳会談で、この大戦略をまず実現すべきだ。内政では景気の回復だ。市場は「安倍首相」の登場で株価1万円台乗せは確実視されており、いかに景気回復への期待が大きいかを物語っている。
 

とにかく民主党政権の再来を許さない有権者の判断は正しいと言わざるを得まい。自民党圧勝の流れはよほどの失言が無い限り動かないものと見られる。ただし安倍がこの有権者の支持を誤解または曲解してはならない。極右国粋主義の石原慎太郎が馬脚を現して、維新の支持を喪失させているのを見れば分かる。


国民は極端な右傾化を求めているわけではない。極右路線を取れば民主党政権への支持を首相・鳩山由紀夫が誤解して、内政外交で愚かなる失政を繰り返したことと同じ結果を招くことを指摘しておく。
 

安倍の選挙中の発言からすべきこと、してはならないことを指摘する。まずしてもよいことは「集団的自衛権」の行使を可能とすることだ。簡単に言えば尖閣防衛で出動した米艦を中国戦闘機が急襲した場合に、今までの憲法解釈では自衛隊が戦闘行動を起こして米艦を支援することは出来ない。


その事実を目の当たりにすれば米紙は「ジャップが傍観」と報じて、日米安保関係はサドンデスとなる。内閣法制局の憲法解釈を改めさせて解釈改憲で安倍は対処すべきであろう。法制局などはしょせん三百代言であり政権の言うことは何でも聞く。
 

オバマとはこうした問題を率直に語り合い、民主党政権が崩壊させた日米安保関係を正常な路線に乗せるべきだ。おりから米上院も尖閣への安保条約適用を議決しており、絶好のチャンスでもある。東南アジア諸国、インド、オーストラリアも含めた“緩やかなる”対中包囲網の確立は、遅れてきた帝国主義のごとくに膨張路線を取る中国政府への強いけん制になる。


まずこの大戦略を打ち立てるべきであろう。しかしするべきことはそこまでだ。包囲網の確立により、当面の勝負は付くのであり、中国は尖閣に手を出そうにも出せない状況となる。また改憲が必要な「国防軍」も、将来の自衛隊の在り方を唱えるだけで良い。間違っても石原維新との連立で実現しようなどということを考えてはならない。
 

その上で、対中融和に動くのだが、安倍の公約を見れば石原の進言を受けたかのごとくに「尖閣に船だまりを作る」「公務員を常駐させる」とドラスティックな発言に傾斜している。


徹底した反日愛国の“江沢民教育”を受けて育った世代を、またまた習近平新政権が“活用”して暴動を起こさせる口実を与えることになる。


習近平はこれによって国内で確固とした基盤を固めることが可能となる。自民党が圧勝したからといって、国民は第2、第3の暴動による日本企業攻撃を望んでいるわけではない。大勢は友好なる近隣関係の再構築にある。
 

したがって靖国参拝も同様である。安倍は「前回の首相在任中参拝できなかったことは痛恨の極みだ。国民のために命をかけた英霊に尊崇の念を評することに外国からクレームをつけられることはない」と、就任すればすぐに参拝しかねない姿勢だ。


しかし世代は変わった。首相の靖国参拝に感動する世代はもう翁(おきな)媼(おうな)の世代だ。首相が靖国参拝をあえて国益を代弁する最大の位置に格上げする必要など無いのだ。なぜ第1次安倍政権で参拝しなかったことを「痛恨の極み」などと言う必要があるのか。外交的配慮を優先した正しい判断であったではないか。
 

経済では消費税法案が実現したばかりなのに、早くも「景気条項」の論議が活発化している。安倍が「デフレがどんどん進行する中で消費税は上げない」と語れば、首相・野田佳彦が「選挙の前でおびえているのか」とやりかえす。


しかし景気条項は11年度〜20年度の平均で「名目3%程度、(物価変動を除いた)実質2%程度」という国内総生産(GDP)の成長率を目指すための取り組みを求めているのであり、安倍の言うように来年4月から6月の景気動向を条件にしているわけではない。


おまけに2%のインフレターゲットが4〜6月で実現することなど不可能だ。よほどのデフレ状態に陥らない限り消費増税は実行に移すべきだ。
 

ただし、安倍の主張するインフレターゲットでデフレを脱却するという方向は、重要なるオプションだ。世界的な金融緩和、通貨安競争の中で、民主党政権と日銀はなすすべもなく推移した。リーマンショックから世界が立ち直っているのに、日本だけ置き去り状態だ。日銀のデフレ維持政策はもう限界に来ているのだ。


政権はダイナミックなデフレ脱却への動きを示すべき時だ。株式市場が「安倍政権」をはやすのは、なすすべのなかった民主党政権への反動でもある。「安倍相場」は9500円台に乗っており、自民党圧勝は株価を1万円突破に導くだろう。第1次安倍政権時代の株価は平均1万8千円と言う“実績”もある。


できればどっちみち来年4月で任期が来る日銀総裁・白川方明の早期自発的な退職を求め、後任人事に着手すべきであろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2012年12月07日

◆自民圧勝で民主失政の3年に幕

杉浦 正章

 

安倍は維新との連立に向かうべきでない 。


ここまで来るとアナウンスメント効果はまずないだろう。「大失言」でもない限り自民、公明両党で300議席前後の議席を獲得して、第2次安倍晋三政権が樹立される方向だ。内政外交にわたり失政を続けた民主党政権による空白の3年間は幕を閉じる。


浮動票を狙った第3極は伸び悩み、詭道(きどう)を行く日本維新の会代表の石原慎太郎がキャスティング・ボートを握る事態には至らない。有権者は激動政治より景気回復を軸とした安定を求める選択をしようとしている。


安倍は参院のねじれ対策もあり、民主党との部分連合を考慮すべきだ。維新と連立して3分の2の多数を握り改憲へと動くなど政権不安定の道を選択してはならない。
 

アナウンス効果で1番顕著なのはある候補者が苦戦していると報道されると、激励票や同情票が集まるアンダードッグ効果(負け犬効果)だが、今回負け犬となる民主党に回復の余地があるかというとまずない。


少なくとも同情票をかき集めるには「当落線上」とか、「当選まであと一歩」と報道されることが不可欠だが、つぶさに個別の選挙区を見れば、民主党候補は自民党に挽回不能な状況までリードされているケースが多いのだ。


この状況が意味するものは、自民党への雪崩現象生じようとしていることであり、個人や組織等が優勢候補支持になだれ込むバンドワゴン効果(勝ち馬効果)が生じようとしているのだ。


まず最大の原因は民主党政権の“ていたらく”にある。簡単に言えば、出来もしないマニュフェストで有権者を欺き、想像を絶する無能政治で首相・鳩山由紀夫がつまずき、大震災と原発事故という未曾有の災害に、首相・菅直人が大失策を繰り返した。


最後の野田だけは信念の政治を貫き消費増税を達成したが、党を束ねるリーダーシップに欠け、分裂を招いた。有権者にしてみればこれでもかのダメ押しが相次いだことになる。「いくらなんでも人を馬鹿にするな」という鉄槌(つい)が民主党に下されようとしているのだ。もう民主党政権が復活することは予見しうる将来にわたりない。


この間隙を縫うように、既成政党批判で台頭したのが大阪のポピュリズムであり、最後にはこともあろうに小沢一郎支配の大衆迎合政党まで便乗して出現した。マスコミは新聞、テレビを問わずにこれら第3極をはやしにはやした。しかし民主党ポピュリズムでこりごりした国民は、大勢としてこれに乗ろうとはしていない。


日本維新の会の“風”は大阪を中心とする関西地域でのみ吹くという現象が生じており、全国的な広がりを見せない。


とりわけ橋下徹が極右国粋主義の石原と組んだのは失敗であった。外見の新鮮さがダメージを受け、マイナスに作用したのだ。50議席前後では今後勢いも出ない。参院選までには馬脚が完全に現れる先細りとなるだろう。


滋賀県知事・嘉田由紀子による未来の党も、こともあろうに小沢にオブラートをかけるという“背景”が見え見えとなって、ブームとはほど遠い結果となる。小沢チルドレンらの議員勢力61議席は6分の1に落ち込む。小沢の未来活用の奇策は完全に失敗に終わる。小沢だけが当選しても落城の後始末しか仕事はない。3極について野田が「ごった煮となって輝きを失った」と自分の党を棚に上げて形容している通りだ。
 

さらに何と言っても重要なのは、エネルギー政策だ。朝日、毎日両紙とTBSのみのもんたに代表される露骨な「原発ゼロ」への誘導キャンペーンが、完全なる失敗に終わった。


なぜなら、自民党は安倍や幹事長・石破茂が堂々と「原発再稼働」を表明し、「10年後の原発を含めたベストミックス」を公約した上での選挙に圧勝しようとしているからだ。民主党の野田のように亡国の“ゼロ”でもなければ、維新のような“ごまかし”でもない。また各電力会社の電気料金値上げの動きが、国民を次第に「ゼロ」のもつ「欺瞞性」に目覚めさせているのだ。


有権者も世論調査などでは響きの良い「ゼロ」になびくが、電気料金2倍、企業の海外移転と失業者増大という「亡国のツケ」を前にして、賢明なる選択をしようとしているわけだ。
 

こうして自公連立政権が3年3か月ぶりに復活する方向となったが、肝心の安倍が危なっかしい。自民党支持の国論を誤解または曲解する恐れがあるからだ。とりわけ外交・安保でドラスチックな方向を打ち出す危険性がある。


例えば尖閣問題で、石原の主張に乗って船だまりや、公務員を配置する方針を述べているが、これは中国での第2次暴動、第3次暴動に間違いなく直結する。領有権の問題は米上院による尖閣への日米安保条約適用決議で勝負があったのだ。これを無視して中国が米中直接対決に直結する軍事行動に出ることはあり得ない。したがって安倍政権は関係改善を最大の課題とすべきなのだ。



対韓関係も河野談話の見直しなどは、火に油を注ぐ効果しかもたらさない。急進的な言動は避け、第1次安倍内閣と同じように両国の新政権との融和に動くべきだ。


ましてや維新を利用して自らの政治的野望を達しようともくろんだ石原と結託して改憲に動くようなことをすれば、国論は分裂して収拾が付かなくなる。自らの政権の命を縮めることを良く理解しておくべきだ。


自民党は2度と失敗は許されないと心得るべきだ。ここは自公連立に加えて、民主党と政策ごとの部分連合を志向すべきだ。維新との連立で3分の2を確保して衆院での再議決などの奇策は長続きしない。ゆめゆめ考えるべきではない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月06日

◆橋下“ウエブ選挙”継続が許されるのか

杉浦 正章



自民党単独過半数と維新の伸び悩みが報じられる中で、焦っているのだろうか。日本維新の会代表代行・橋下徹の短文投稿サイト・ツイッターの更新が総選挙公示以降も止まらない。公選法違反の疑いを官房長官・藤村修が指摘しても、“確信犯”のごとく続行している。


カネのある自民党や民主党が「テレビでばんばん宣伝しているのに、カネのないボクはこれしかない」というのが継続の理由だ。しかし、それではやりたくても自粛している1500余人の候補は橋下の言う「馬鹿みたいなルール」にしたがっている馬鹿かということになる。弁護士のくせにこれ以上法律を馬鹿にした事例もない。司法の摘発がマストのケースだ。
 

藤村は5日、橋下のツイッターについて「公職選挙法の規定に抵触する恐れが強い。一般的には更新を自粛している事例が多い」と指摘した。同時に「違法か適法かの判断は関係機関がすることだ」として、適否の最終判断は司法機関などに委ねる考えを示した。公選法は選挙期間中、資金力で運動に差がつかないよう、「文書図画」の頒布・掲示を禁じている。


総務省の解釈ではホームページやブログ、ツイッターなどは指定外の文書図画にあたり、公示後の更新や新たな開設は公選法にふれるおそれがある。文書頒布の一種とみなされ、候補か否かに関わらず公示・告示後は禁じられる。
 

これまで自らをネットで発信してきた候補らは後ろ髪を引かれながらも、法律を順守して自粛している。各候補のウエブ拠点では「公選法により選挙が終わるまで更新をやめます」と表記されている。


ところがまさにツイッター中毒の気がある大阪のポピュリストだけは別だ。法律なっど無きがごときに選挙公示前から「ツイッターを続ける」と公言し、4日以降も「ダイレクトに投票呼びかけ行為はしないけどね」といいながら、維新の政策、主張を展開している。


「公示後の僕のツイッターが、公選法違反かどうか議論されている。結構なことだ。官僚組織がいかに硬直的か、社会的妥当性(常識)より、一度作ったルールを死に物狂いで守る習性がよく現れる」と公選法違反などそっちのけの我田引水論理を展開している。


さすがに藤村の指摘もあり、5日のツイッターでは「公選法での文書制限があり、ネットも文書にあたるという総務省の見解もあるので、バカらしいがそれを踏まえる」と書いた。
 

しかし「どう踏まえる」のかは言及しないまま5日も深夜まで堂々と主張を展開している。「脱原発依存体制の構築と具体的工程表が確定してから、国民の皆さんに宣言するのが、責任ある政治・行政」と原発ゼロを語るかと思えば、「今のテレビのような、事なかれ主義、とりあえず公平性を保ちましたの選挙番組では誰も見なくなるだろう。


ネットのリアル性には負ける。皆競争だ」とネット選挙を礼賛。公然たる公選法への挑戦の理由は「自民や民主はCMをどんどん流す。僕らには金がないから、宣伝方法は僕のせこいツイッターのみ」と述べる。要するに“確信犯”なのである。
 

もちろん筆者も現行公選法そのものがウエブ時代に対応していないことは痛感する。文書図画頒布の禁止なども、もっぱら資金力による不公平を意識したものである。ウエブは無料であり、その発信は資金力には関係がない。


総務省の判断もウエブに弱い守旧派政治家に対する役人根性丸出しの“配慮”の側面があることも否定出来まい。米大統領選を挙げるまでもなく、世界の潮流にさおさすのが半世紀も前の公選法だ。


だからといって、橋下は維新の代表代行たる立場にもかかわらず、法律を馬鹿扱いしてツイッターを継続して良いことにはならない。自分が立候補していないことは理由にならない。「候補か否かにかかわらず禁止」なのだ。選挙後法改正をして初めて可能になる。橋下は弁護士のくせに法治国家の形態も知らないのか。


そもそも橋下の政治手法には“唯我独尊”的なわがままが顕在している。自分の発言は何としてでも押し通す。まるで法律無視の和製ヒットラー台頭そのものである。このままではフェアな選挙戦は展開できない。警察は摘発をためらうべきではない。野放しにすれば御政道が成り立たなくなるのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年12月05日

◆安倍自民が“石原暴走維新”と組む危険性

杉浦 正章 



比較第1党の党首が首相になるのが憲政の常道であり、その意味から言えば自民党が政権に復帰する流れは確かであろう。問題はその“強度”だ。第3極乱立で自公で過半数に達するのか。達すれば参院のねじれ解消のための民主党との部分連合が視野に入る。


達しない場合どこと連立を組むのか。民主党と組むのか日本維新の会と組むのか。民主党なら当面自公民路線の安定政権、維新なら乱気流下の超低空飛行だ。とくに暴走老人・石原慎太郎の入閣とでもなれば暴言・放言ですぐに更迭騒ぎだ。「自公維」は確実に自民党にマイナス効果だけをもたらす。
 

キーワードは241議席だ。自公で過半数を超え得るかどうかの分岐点だ。さらに言えば安定多数の252に達するかどうかだ。これまでのところ自民党が現有議席118を100以上増やす勢いだ。民主党は230を3分の1程度まで減らすだろう。


したがって自民党が、現有の21人以上は獲得する公明党と合わせれば過半数は超える可能性があるが、浮動票が依然5割前後に達しており、その動向によっては政権の枠組みが大きく変化する可能性をはらんでいる。
 

まず自公が過半数を超えた場合には、自民党の選択肢は民主党との連立ではなく、参院のねじれ解消を狙った部分連合を組むかどうかが焦点となる。自民党総裁・安倍晋三は党首討論で「率直に言って野田さんは好きだ。一緒に酒を飲んだら楽しいだろう」と、“粉をかける”発言をしている。


しかし民主党との連立となれば、明らかに安倍の右傾化路線と衝突する。安倍は「民主党は参院では4割が労組出身。日教組も力を持っている。官公労主体の民主党政権とは組めない」と明言しており、自公民連立は否定的だ。おまけに通常国会は半年後の参院選挙を目指して与野党対決基調で推移する。総選挙で激突したあとでもあり、民主党と連立を組むことは極めて難しいだろう。


加えて先の自公民3党合意により、いわく付きの赤字国債発行法案は、本予算と一体処理の方向となった。重要なねじれ解消の理由の1つが消えた事になる。連立より部分連合が流れだろう。
 

幹事長・石破茂も選挙後に自公民の3党合意の枠組み維持について「いいかげんな3党合意ではないので、維持していかなければ参議院選挙までの間のねじれの解消はできない」と言明、自公連立に民主党が政策ごとの部分連合で参加することに期待を表明している。この合意が出来れば政権は1番安定するだろう。問題は安倍が維新と人脈的にも思想的にも近いことだ。


安倍は憲法改正と尖閣問題で石原と極めて近い発想をしている。現に尖閣諸島に船だまりを作り公務員を常駐させるという石原の“対中激突”提案に同意している。安倍が夏頃から維新の橋下徹と接近して、かなり強い人脈を作り上げていることも確かだ。石原は党首討論で憲法改正を条件に自民党との連携に前向きな姿勢を表明している。
 

しかし維新との連携は極めて危険性を伴う。とくに「自公維連立」ともなれば、政権は数合わせは出来るものの、石原と維新チルドレンを抱えて揺れに揺れるだろう。


とりわけ石原が副総理格で入閣ともなれば、尖閣を核とする対中敵視、原爆保有、原発推進の“3大暴言”が政権を直撃する。新党結成でスポットの当たった石原を観察すれば、「原発フェードアウト撤回発言」や「公明党評価せず」発言など、後から訂正や陳謝に追われる発言の繰り返しだ。明らかに政治家としての柔軟性に欠け、“短絡性暴言症”ともいうべき高齢者特有の発言癖が見られる。



都庁の記者クラブ程度を相手にしているうちは無事でも、政治記者の鋭い分析にかかってはすぐに馬脚を現す。閣僚になれば1週間で暴言症が露呈して通常国会は動かず、安倍は石原を罷免せざるを得なくなるだろう。発足早々で政権の枠組みに影響を与えるつまずききとなる。対中関係も回復不能状態に陥る。まず石原入閣は無理だ。
 


それでも安倍が「自公維」に向かうとすれば、平沼赳夫あたりを入閣させるしかあるまいが、危険度は減らない。「自公維」で3分の2議席を占めれば、参院で法案が否決されても憲法の3分の2条項に基づき衆院で再可決が可能だが、この奇策も長続きするものではない。必ず参院選では手痛いしっぺ返しを受ける。


石破が「今度の選挙で勝ってくる民主党議員は風に左右されない人たちだ。第三極は何を言っているのかさっぱり分からないので、そこと一緒にやるのはリスキーだ」と述べている通りだ。維新と組むくらいなら、たとえ労組が多くても「自公連立プラス民主部分連合」が1番適切だろう。


加えて維新のブームは、石原暴走と、橋下の口から出任せ、チルドレンの迷走ですぐに下火となり、参院選挙まで持つまい。維新にだまされて投票した「衆愚の浮動層」が初めて気付くのはその段階である。民主党にだまされたケースと全く同じだ。


したがって安倍が維新に傾くほど、自民党政権の危険度は高まる。石原は背中にくっついて離れない“おんぶお化け”そのものとなる。我が国の政党政治のためにも、もう二度と失敗は許されないことを安倍は自覚しなければならない。


      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)


2012年12月04日

◆朝日は「原発ゼロ」の工程表を明示せよ

杉浦 正章 



総選挙に向けての争点に原発維持の是非が集中している。まるで日本が石油を止められて太平洋戦争に突入したABCD包囲網のごとく、原発ゼロ包囲網が自民党を取り囲んでいる。まるで今度は石油ではなく原発で日本の首根っこを押さえ亡国の道をたどらせようとしているかのようだ。


自民党は「原発再稼働・将来はベストミックス」の立場を表明しているが、責任政党としてもっとも信頼できる態度だ。これに対して、軽佻浮薄な大衆迎合新党をはじめ既成政党も、ゼロへの工程はおろか、新エネルギーの展望も示さないまま、ひたすらゼロを唱える。


そして言論に1番影響力のある朝日新聞がその“音頭”を取っているのだ。まるで「社是」のごとく原発ゼロへと誘導している。本来国家にとって生命線のエネルギー政策をポピュリズムの渦中に置いて議論すべきではないにもかかわらずだ。
 

朝日の脱原発キャンペーンは凄まじいものがある。日米安保反対のキャンペーンや小選挙区導入のキャンペーンに勝るとも劣らないものがある。最近のトップを見れば11月26日の世論調査とトンネル事故などを除いてすべてが原発問題だ。「脱原発自民と維新が慎重」「脱原発競争自民は距離」「がんリスク福島事故の影響」などなど。


さすがに社説では断定できないようだが、その基調は言うまでもなく原発ゼロ志向だ。社説は「原子力・エネルギー政策は、将来の国のかたちを左右する。今度の総選挙で最大の争点のひとつだ」と煽りにあおっている。編集方針は読んだ有権者を原発ゼロに“誘導”するという巧妙な“手口”だ。
 

この原発ゼロのキャンペーンを成功させたら、間違いなく日本は亡国の道をたどる。朝日は「電気料金2倍」に家庭も企業も耐えられるというのか。30年ゼロで太陽光、風力発電などのコストは128兆円増、家庭の電気代月1万1千円増、経済へのマイナス効果45兆円という、日本経済の破たん必至の状態に責任を持てるのか。


朝日は社説で「電力需給の面だけなら、ほとんどの原発が必要ないことが明白になった」と書いているが、エネルギー価格高騰に悲鳴を上げた電力会社の相次ぐ値上げを故意に無視している。社説は政党に対してゼロへの工程表を求めているが、そんなにゼロにしたいのなら、自ら工程表を堂々と明示すべきだ。政党が出来るのなら、朝日に出来ないはずはない。


国際的にも電力料金の差は中国、韓国の国力を伸ばし、相対的に日本の国際競争力を減退させ、亡国の道をたどらせる。国力が衰えれば被災地の復興どころではなくなる。福島の被災者は実に気の毒で同情するが、被災者も日本がつぶれては救済の方法も財源もない。これが現実だ。
 

こうしたキャンペーンに踊らされて、新旧政党が熱いトタン屋根の猫のように飛び跳ねている。その原発政策から大衆迎合度のひどさを図れば、まず1番ひどいのは未来の党の22年原発ゼロだ。もともと代表・嘉田由紀子は大衆迎合の気配が濃厚であったが、今度は究極のポピュリズムだ。「22年ゼロ」に根拠はなく、「財源はいくらでも出てくる」の3年前の民主党そっくりの主張だ。


原発政策への理解度も薄く「原発再稼働あり」と発言して、慌てて引っ込めるという醜態ぶりだ。嘉田は暗く、なにやら突如出現した小沢支配の“妖怪政党”のような感じが濃厚で読売の調査でも「期待しない」が70%だ。
 

日本維新の会代表・石原慎太郎は、全く原発問題を理解していないことがはからずも党首討論で明らかになった。自分が作ったはずの維新公約の核心「30年代にフェードアウト」を知らず、「それは何だ」と宣うた。


おまけに、公約からの除去を明言したが、そのままになっている。首相・野田佳彦が問題なのは、夏の時点では原発再稼働を推進してきたにもかかわらず、選挙対策の蜜に引っ張られて、急速に方針転換して、30年代原発ゼロを言い出したことだ。ポピュリズム政党の先祖返りもいいところだ。
 

共産、社民は「即時ゼロ」だが、“確信犯”であり、こればかりは勝手にお経を唱えていればよい。みんなの党の20年代ゼロも、30年代より早くして目立とうとしているだけであり、その工程も定かではない。


代表・渡辺喜美以下言ってることはまさに口から出任せばかりだ。手に負えないのは理路整然と方向を間違っていることだ。公明も創価学会の意向の反映か「1年でも5年でも10年でも早くゼロ」だが、これで自公連立政権を担う責任政党だろうか。


こう見てくると、大衆迎合路線を取っていないのは自民党だけである。この原発ゼロへの“風圧”の中で立場を変えないのは、さすがに信頼感をもてる。猫も杓子も原発ゼロの中では、返って存在感が出てくる。


NHKの世論調査でも原発問題は「時間を掛けて結論」が35%で最も高い。まさに自民党の路線だ。朝日以外の新聞は毎日が、何と公示日4日のトップで「脱原発、問われる本気度」と露骨なる“ゼロ誘導”を展開し始めた。


読売は同日付で政治部長が「国民に負担となる情報は伏せたまま原発ゼロだけを吹聴するのは無責任」と正論を述べている。日経、産経は原発維持が方針だが、いささか主張が鈍くてパンチ力に欠ける。もっとエネルギー戦略を前面に出した主張を、発行部数など気にせずに展開すべきである。


ことは国家の危機だ。時には朝日の論調の欠陥を直接指摘して論争を挑むくらいでなければ、問題の所在が有権者には理解されない。


      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月30日

◆第3極は小沢と石原の“乗っ取り”状態

杉浦 正章

 

既成政党批判だけで中央政界に食い込もうとする大阪と滋賀のポピュリズム政党は、論争に深入りすればするほど馬脚が現れるという現象を呈するに到っている。日本未来の党は代表・嘉田由紀子の必死の「小沢色」打ち消し発言にもかかわらず、政策も人事構成も「小沢一郎支配」そのものの様相を呈している。


一方日本維新の会は「石原慎太郎支配」の色彩が濃厚となり、選挙公約で自主憲法制定を表明、争点の「脱原発」では「フェードアウト」などとまるで「自然消滅」のような苦肉の表現にとどまった。今後この内部の相克に起因する弱点が一層露呈されてゆくことが予想され、選挙結果にも大きな影響をもたらすだろう。
 

記者団に「小沢新党」を指摘された嘉田は発足早々から防戦一方だ。「そうならないように、女性や若者などの声を反映できるような仕組みを党の中に埋め込んでいきたい」と語るが、女性や若者の声がどうして小沢色払拭なのか意味不明。


29日に発表した衆院選挙向けの政策綱領ではなんと悪名高き「子ども手当」の復活だ。それも月額2万6千円は、09年衆院選マニフェストと同額だ。明らかに小沢が実態は自分が陰のリーダーであることを暗に誇示する意図で挿入したものだ。自民党からばらまき批判を受けて失速した手当を臆面もなく出す小沢も小沢だが、嘉田の政策無知も相当なものがある。
 

肝心の原発政策にしてもドイツのまねをして10年でゼロを目指すとしているが、昨日指摘した通りドイツは頓挫している。野田が「ドイツは2000年から脱原発を進めており、原発も十数基しかない。さらに地続きであり、仮に失敗したり、見通しを誤っても、隣のフランスが助けてくれる。


日本は島国であり、失敗は許されず、着実に進めていかなければならない」と指摘している通りだ。田舎では通用するあいまいな政策も、中央の厳しい視点から洗礼を受ければ破たんは最初から明白だ。


「小沢支配」は人事を見ても明白だ。要所を全部小沢側近で固められてしまった。まず副代表に側近の参院議員・森ゆうこを押し込まれた。金庫を握る財務担当には参院議員・佐藤公治、選挙担当に前衆院議員・川島智太郎だ。要するに未来の首根っこは小沢が完全に押さえた選挙戦となるのだ。


嘉田は「オブラート婆さん」として御輿に担がれるだけの構造だ。元首相・菅直人の「党の実権を小沢さんが握る構造は必ず破綻する」という予言を待つまでもなく、嘉田はやがて小沢に「使い捨て」にされたと悟るときが来るだろう。
 

一方で、維新も石原ペースが著しい。ただ石原の「硬直した中央官僚の支配を壊す」は何か言っているようで、実は何も言っていない。単なるスローガンに過ぎない。


民主党の3年前の主張と同じだが、結局何も出来ず、国にとってはマイナスにだけ作用した。さすがに政権公約には石原の持論の「憲法破棄」は盛り込まれなかったが「自主憲法制定」と文言を変えて挿入された。


肝心の原発では内部で相当なやりとりがあったと見えて、記者会見で「原発ゼロを目標とするのか」と当たり前のことを聞かれただけで石原は、異常なるたかぶりを見せ、ぶち切れた。聞いた記者に「そんなことさんざん言ってきたじゃないか。人の話を何聞いているんだ」と開き直った。


しかし記者は疑問があるから聞くのだ。聞かれて怒るなら記者会見に出てくるなと言いたい。メディアを利用しようとしているのはそっちではないか。はからずも人間の小ささを露呈させた一幕だった。
 

結局原発は「既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトする」などという訳の分からない表現に終わった。フェードアウトとは映画や演劇で、場面が次第に暗くなり消えていくこと。溶暗だ。また、音楽などの音が次第に小さくなっていくことを意味する。そこには自ら積極的にゼロにするという意思表示はない。まるで他人任せである。


石原は小説家のくせいに日本語の語彙がなくなると、英語でごまかす癖があるから、石原の発意による表現だろう。背景には原発推進の石原と、「30年代ゼロ」と言いたくてしょうがない橋下徹との葛藤があるが、原発問題は維新の抱えるアキレス腱だ。


こうして、維新は石原色が前面にでてきており、これがインテリ層や女性票の第3極離反を招くことは間違いない。まるで維新には野蛮人が、未来には旧態依然の寝技師が乱入したようなものだからだ。
 

こうして第3極は急ごしらえの政策を軸に、小沢と石原に乗っ取られる構図がいよいよ鮮明になった。


民主党はどっちにしても食われるが、その反面で自民党の“責任政党色”は一段と際立ちつつある。幹事長・石破茂が勇敢にも脱原発のポピュリズムに真っ向から対決し始めたのだ。石破はなんと「原発問題はスローガンだけで国を誤ることはしたくない。


原発は安全と安心が確保されれば必要なものは再稼働する。受けは悪いがそれを語る勇気を持たないでどうするんだ」と発言したのだ。もう吹っ切れている。堂々と国家にとっての死活問題で正論を述べる。この姿勢こそが大衆迎合政党か責任政党かを分けるキーポイントだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月29日

◆詭弁大王、暴言帝王、甘言老婆が勢揃い

杉浦 正章

 

選挙は弁論で訴えるしかない。したがって政治家の唯一の武器は弁論であるが、この選挙ほど詭弁、暴言、妄言、甘言、迷言がはびこっている例は珍しい。なぜかと分析すれば前回ポピュリズム選挙で成功した民主党の例にならって、第3極が“衆愚”の浮動層を再びだまそうと狙っているからに他ならない。


まさに大衆迎合選挙が展開されているのだ。日本は世界でもめづらしい知的水準の高い国民だが、偽政治家にころっとだまされる点では世界有数の幼児性を兼ね備えている。幼児にさとすように欺瞞(ぎまん)性を解き明かす。
 

まず【口から出任せ大王】は日本維新の会副代表・橋下徹。みんなの党との候補者調整で迷った末「じゃんけんで決めよう」と渡辺喜美に持ちかけた。さすがにアジェンダ渡辺もびっくりしたとみえて「そんなばかなことが許されるのか」と激怒、合流話は立ち消えとなった。代表・石原慎太郎が橋下に「じゃんけんで決めるしかないなぁ」と漏らしたのを、何でもパクってしまう橋下がつい口にしてしまったのが経緯のようだ。


この橋下の発言は維新の特質を物語っている。つまり政策や理念などは必要ない。橋下と石原の人気だけで選挙に勝てるという、有権者を見くびった判断が背景にあるのだ。


橋下は自民、民主の幹部の批判に対して「あーこの人たち、組織のトップとしてギリギリの判断をやったことがない人だなと思った」と反応したが、まさに井の中の蛙大海を知らずだ。自治体のトップの判断などは、政治のぎりぎりの場面の判断と比べれば楽すぎてうたた寝しながらでも出来ることを知らない。


それに、タレント弁護士だけあって、良くしゃべる。しゃべりすぎる。テレビで弁明していたのを聞いたが軽くて長広舌をふるうのには閉口した。寸鉄人を刺すという言葉を知らない。優秀な政治家はすべてこれを信条としているが、橋下にはかけらもない。タレントたるゆえんだ。
  

次に【暴言帝王】は石原だ。「海岸に原発を造ってきたのは基本的な間違い。大津波が来るという指摘もあったのに、政府は聞かなかった」と宣うた。石原の特技は過去の発言をすべて忘れてしまうことにある。高齢者特有のビョーキではないかと思える。


ついこの間まで原発推進の旗振り役を買って出て、「東京湾に立派な原子力発電所を作ってもよいと思っている」と公言し続けて来たのはどこの誰かと言いたい。それとも「東京湾は湾であって海岸ではない」とでも言うのか。


水がなければ冷やせないことぐらい小学生でも知っている。脱原発でなければ人にあらずという誤った風潮の中で「慎太郎よお前もか」と言いたい。ことあるごとに「私は暴走老人。死んでも結構と言うつもりでやっている」と、よわい80を逆手に取った発言を繰り返すが、高齢を理由に同情を買おうとするのは老人特有の“媚び”にすぎない。
 

【迷言大師】は亀井静香。日本未来の党に渡りに船とばかりに飛び乗って「未来は勢力をどんどんでかくする出世魚。ビュンビュン跳ね回って日本の危機、世界の危機を救う」と誇大妄想発言。しかしその実態は行き場なしの自分の危機を救うものに他ならない。政界のつまはじきで膝小僧を抱えていたのに「亀ちゃんとりあえずはよかったなぁ」と褒めてあげたい。
 

何と言っても【甘言老婆】の滋賀県知事・嘉田由紀子の言い回し「このままでは日本は国家としての品格を失う」はひどすぎる。原発ゼロでは2流国になると「第3次アーミテージ・ナイ報告書」が警鐘を鳴らしている。2流国どころか3流国の乞食となって物乞いをすることになる。それで品格が保てるのか。


「ドイツのように2022年にゼロを目指す」と言うが、ドイツのゼロは破たん寸前だ。再生可能エネルギーの技術の壁とコスト高に直面している。


加えて送電網の整備にかかるコストに悲鳴を上げている。2000年に始まった固定価格買い取り制度によって太陽光発電が急速に普及したが、買い取りで財政が成り立たなくなったのだ。また電気料金の高騰で住民生活に大きな影響が及び始めた。日本も電気料金は大幅に上がり、企業も家庭も確実にやっていけなくなる。苦境に立ったメルケルは太陽光発電の買い取り価格を20%から30%引き下げ、3,4年後には中止すると言い出した。


それでもやれるというなら嘉田はまさに亡国の甘言老婆だ。見る人はちゃんと見ている。日経電子版の調査によると未来を66.5%が「政策の違いを無視した野合」と回答。第三極に「失望した」は77.7%だ。
 

【妄言の姫】はみどりの風共同代表の亀井亜紀子。同党から未来の党に移る3人が衆院選で当選したら「みどりの仲間として迎えたい」と、みどりに復帰させる方針を明かにした。いったん未来を名乗らせて当選したら復党するのではまさにヤドカリ。有権者をだますものでもある。未来が選挙互助会であることがはっきりした。
 

それに引き替えて【名言の爺さん】もいる。自民党副総裁・高村正彦だ。未来について「実態を見れば小沢新党」と言い切った。「小沢さんは評判が悪くなると新党を作って目くらましをする。それが生き残りの手段」はまさに当を得ている。嘉田は小沢色を消すのに懸命だ。脱原発だけで時流に乗っている胡散臭い代表代行・飯田哲也に「小沢氏は無役」と言わせて、見え透いた逃げの一手を売っているが、時既に遅しだ。誰が見ても小沢新党と分かってしまうのだ。無役でも裏から手を打つ小沢の怖さを知らない。


おまけに現在73〜4人の候補のうち50人が小沢一派で、会計責任者まで小沢グループでは、小沢への救命ボート以外の何物でもない。これくらいはいくら衆愚の浮動層でも分かるだろう。

            <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月28日

◆3極3分裂で共食い共倒れの構図

杉浦 正章
 


「日本未来の党」を煎じ詰めれば船が難破して溺れかかっている小沢チルドレンを、1自治体の長が救命ボートを出して助けるという図式であろう。これが有権者に理解されるかということだ。それも「脱原発」一本に絞って、浮動票を狙うという究極のポピュリズムだ。そこには経済も外交も安保もない。


折から第3極はみんなの党と日本維新の会の合流が破談となり、維新、みんな、未来に3分裂して“共食い”状態に突入する。未来は脱原発色が薄まった維新のアキレス腱を突くことになる。しかし出遅れの未来と賞味期限が切れつつあるみんなは苦戦を余儀なくされつつある。
 

脱原発の琵琶湖宣言なるものに京セラ名誉会長の稲盛和夫の名前が連なっていたのには驚いた。稲盛は言わずと知れた小沢びいき。どうも滋賀県知事・嘉田由紀子と小沢の間を取り持ったのは元農相・山田正彦に加えて稲盛でもあったようだ。


稲盛はかねてから「原発は必要悪」と唱えており、財界人というのはころころと節操もなく信条を変えてもよいもものなのだろうか。「爺殺し」で有名だった小沢の最後の特技発揮に、まんまと乗せられたのであろう。
 

それにしても嘉田が原発維持について「このままでは日本は国家としての品格を失う」という発言をしたのはあきれて物が言えない。原発を推進している中国や韓国に品格があるかどうかはともかくとして、米欧主要国はすべて品格がないのだろうか。


主要エネルギーを日本だけが失えば、日本は間違いなく乞食となって物乞いをすることになる。それで品位が保てるのか。しょせんは田舎知事の戯言レベルの話しである。橋下と並んでポピュリズムの役者はそろった形だ。
 

小沢一郎は、このままではじり貧となる生活をどう立て直すかだけが焦眉の急であって、もとより政策などはどうでも良いタイプの政治家だ。脱原発などは小沢にもっとも似合わない政策だが、最後の勝負のためにはなりふり構わず活用してしまう。背景にはチルドレンたちの悲鳴がある。


もともと「風」だけで当選した連中だから、国会議員を3年3か月もやれただけで有り難いと思わなくてはならないのに、まだ悪あがきをするのだ。そして「生活の名前では選挙を戦えない」という“わがまま”まで言い出す始末となっていた。この埋没感を打破しようと小沢は、今度も「脱原発の風」を利用しようとしているわけだ。


しかし柳の下にドジョウは二匹いない。ほとんどの党が脱原発をお経のように唱えている中であり、「卒原発」と言っても未来の党に風が吹くかというと、難しい。再び脱原発の中に埋没するだけだ。
 

しかし既成政党に飽き足らない浮動層をどう取り込むかは今回の選挙の焦点であり、石原主導の維新の弱点は突くことが出来る。その弱点とは石原の極右国粋主義路線だ。そしてその石原の主張で橋下が脱原発色を薄めたことだ。ここはまさに維新のアキレス腱であり、これに中道脱原発の嘉田を担ぎ出し、利用するのは第3極内では通用する可能性がある。


つまり既成政党には投票したくないが、極右の石原はいやだという層を狙うのだ。とりわけ女性がターゲットだ。これが未来に流れる可能性がある。
 

一方、第三極では比較的ポピュリズム色の少ないみんなの党は維新と決裂状態に陥った。代表・渡辺喜美は「“二本”維新の会では話が進まない」と断念した。みんなと維新は競合区が増える一方の状態であり、現段階で27選挙区が競合している。


舌戦も橋下対嘉田、橋下対渡辺の図式で展開しており、橋下は3極内で挟撃を受ける形に陥った。これが維新の躍進基調に影響を及ばさないわけがない。まさに共食い、共倒れの流れが生ずる結果となったのだ。面白いのは橋下のコメントだ。


「僕は政治グループを束ねてきた自信があるが、嘉田知事はその経験がない。」だそうだ。数人集まった“雑魚”を束ねても、決して束ねたことにならないことが分かっていない。しかし3極が民主党を蚕食する構図には変化は生じないものとみられる。いずれにしても3年3か月の失政は、有権者の中で「怨念」と化しており、民主惨敗の流れは変わらない。
 

シギとハマグリが争いに夢中になっている間に両方とも漁師に取られたという故事を漁夫の利というが、まさに自民党にとっては思うつぼにはまってきたことになる。同党幹部は「小沢様々だ。民主党を分裂させて弱体化してくれた上に、今度は維新を食ってくれる」と漏らしている。


総裁・安倍晋三が「総裁選挙に勝つだけのための政党では、政治の信頼を失わせることにつながる」と未来を批判するのは的中している。選挙は蓋を開いてみないと分からないが、3極の骨肉の争いは、小沢や石原ら政治家が自らの政治的野望のためにあおっている側面が濃厚となってきた。


             <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)