2012年10月04日

◆維新で内ゲバ、タコの共食い状態に

杉浦正章
 

まるで「一夏の恋だったのね維新の会」だ。落ち目というのは哀れなもので支持率が低下し始めると早くも内輪もめだ。築城の最中だというのにに国会議員団が党首の橋下徹に反乱を起こした。「橋下独裁にはしない」と議員がクギを刺せば、橋下は記者会見で「ボクが決める」と世間に主導権争いを公言してしまった。


普通の政治家なら“内紛”は表面化させずに“胆力”で押さえるべきところだが、橋下にはそれが出来ない。これまでの生き様がテレビメディア頼りで、笑って貰ってなんぼのタレント稼業だからだ。何でもメディアに頼るのだ。風が止まれば風車も止まる。後ろ足で砂をかけて既成政党を離脱した議員らもさぞお困りだろう。
 

新党「日本維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)の国会議員団が3日、初めての両院議員総会を開き、松野頼久衆院議員を代表に決めた。衆院議員・松浪健太を幹事長に据えた。きっかけとなったのはその松浪のブログだ。「我々はもはやお客さんではない。言うべきことは忌憚なく言わせてもらう」と述べて橋下を独裁と決めつけた。


松野も「法案の採決は国会議員しかできない。当然、国会のことは議員団で決める」と同調している。発端は橋下の「竹島の日韓共同管理」発言にあるようだ。自らの領土主権を放棄するような荒唐無稽(むけい)さに、さすがの議員団も“切れた”のだ。
 

これに対して橋下も頭から押さえにかかった。「有権者が国会議員についてくるなら別に維新の会に所属しなくてもいいのではないか」と怒りをあらわにした。「変なパフォーマンスに走らないでくれ」と自分がパフォーマンスの権化であることを棚上げに批判した。


その発言には維新の会の“風”を頼りに所属政党を裏切って入党してきたのに、何を言うかという思いがありありとみられる。頼ってきておいて文句を言うなんて本末転倒だというわけだ。橋下は「ボクには拒否権がある」と記者団に主張した。記者団言う前に、議員らを説得するのが先であろうに、その気配は見られない。
 

確かに松浪が言うように維新の会は橋下の独裁体制が敷かれていて国会議員の発言権などない。大阪維新の会と全く同レベルの扱いだ。国会議員はいちいち橋下の判断を仰がなくてはならない形になっている。党規約によると橋下が最高議決機関である「全体会議」を招集し、国会対策を決める「執行役員会」も主宰する。国会議員団は下部組織であり、松野が党副代表として執行役員会に加わる方向だが、議決は過半数となっていて意見は反映されない可能性が高い。


普通の政党はこれではもたない。議会制民主主義の政党としてはあり得ない独裁遠隔操縦体制だ。ヒットラー台頭の基盤となった政党「国家社会主義ドイツ労働者党」を思い起こさせる。
 

要するに橋下にしてみれば自分への風だけで成り立つ政党であるという思いが強いのだろう。橋下を取り除けばろくろく名前も売れていない国会議員と、一旗揚げようと野望を抱く816人もの立候補応募者では正に烏合(うごう)の衆だ。それならば橋下が自ら怖じけつかないで立候補すれば問題は片付くのだが、なぜか手を挙げないと断言している。


大阪からの遠隔操縦が可能だと思っている。ここに「議員の反乱」の核心があるのだ。議員らはたとえ当選しても大阪にいちいちお伺いを立てなければ物事が進まないようでは、国政のテンポに付いていけないと思っているのだろう。駆け出しでもそれくらいのことには気が付く。そのジレンマが浮き彫りになったのがこの「タコの共食い」なのだ。


しかし議員団は重要ポイントを忘れている。それは「橋下なくし維新なし」の現実だ。
 

政党支持率も比例での投票先も失速状態にある。最新の世論調査でも尖閣をめぐる国難を機に有権者の政治を見る“真剣度”が変わった。朝日の調査は政党支持率が自民21%に対して維新2%。比例区投票先も自民30%で維新4%。維新は責任政党とみなされていないのだ。



橋下は「まだまだ下がっていくだろう。実像にだんだん近づいてきているのではないか」と評論家のようなことを言っているが、立候補の300人に最低でも5千万円はかかる選挙費用を負担させて、1990年のオウムと同じで供託金没収ではいかんともしがたい。


朝日川柳には「こんなので選挙に臨む良い度胸」とあるが、真夏の恋は秋風が吹いて冷静になると破れるものなのだ。松浪が見限った自民党復調の流れに焦ってジタバタしているのも無理はない。


★筆者より:明日は秋休みで休筆です。
   <今朝のニュース解説から抜粋>  政治評論家

2012年10月01日

◆維新 自民に食われ“失速”の気配

杉浦正章

維新の会にいち早く乗り換えた9人の議員たちは、“目先”が利くから今度は何処に乗り換えるかを考え始めているかもしれない。「しまった。早まった」ということなのだ。

大阪市長・橋下徹が率いる維新の会が早くも“失速”をささやかれ始めた。最大の原因は橋下が内政・外交を語る度に“馬脚”を現し始めた事にある。加えて自民党総裁選が折からの尖閣・竹島問題で脚光を浴び“右バネ”が利きき始めた点もある。自民党内最右翼の総裁・安倍晋三、幹事長・石破茂といった論客が前面出て、本気で橋下の“稚拙”な発言、未熟な政策を逐一論破し始めたのだ。自民党の存在感が大きくなり、逆に維新がすぼまったのだ。食われるのは民主党という構図だ。

まず橋下は発言の度に自ら“墓穴”を掘る図式が次第に濃厚になって来ている。外交・安保は知らない。内政もデタラメ。要するにすべてが思いつきで付け焼き刃なのである。マスコミがもてはやして何でも報道するのが返って裏目に出ているのだ。

総裁選前は維新に接近していた安倍も、300選挙区で対決することの意味が分かって急速に離れた。安倍は維新の会について「消費税の地方税化やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)、原発政策について考え方が完全一致ではない。選挙の時は戦わざるを得ない」と“離別宣言”をしたのだ。
 
確かに政策を見たらとてもやっていける相手ではないのだ。いままで黙っていた石破も逐一反論に出ている。石破はまず維新の基本姿勢について「私たちはプロの政治家であり、プロならば維新八策のようなスローガンを並べるだけで駄目だ。根拠となる法律、政策の順位その相関性を述べなければ政党としてはなはだ無責任である」と断じた。ついで個個の橋下発言についてすべて反論している。

まず竹島の共同管理発言については「共同管理というのは一体何か。領有権との結びつきはどうなのか。全く意味が分からない」とその“思いつき性”を厳しく指摘している。大阪府知事・松井一郎の「普天間を関西で受け入れる覚悟がある」発言についても、「一分一秒を争う有事の時に朝鮮半島や尖閣、台湾海峡への距離はどうなのか。何処で海兵隊は訓練するのか。覚悟だけで済む問題ではない」と切って捨てた。内政では橋下の「消費税の地方税化」について「自治体間の財政力の格差、税率の違いをどうするのか。実現性のないことを掲げても無駄だ」といった具合だ。

こうして自民党は維新に対して本格的な対決姿勢を取り始めた。これまで橋下の発言だけを一方的に報じてきたマスコミは、安倍、石破の発言を同時に取り上げる傾向を示し始め、有権者の判断に影響を及ぼし始めている。とどめを刺すのは解散後の党首討論だろう。

テレビ各局は橋下、野田、安倍を最重視で討論番組を組むだろう。論客の安倍と野田にかかっては橋下は完膚なきまでに痛めつけられる図式となるだろう。これまで言いたい放題であった橋下は政治家が本気で討論の場に臨んだらどうなるかを知る羽目になるだろう。
 
こうした風潮を反映して世論調査にも陰りが生じ始めている。1番維新の“羽振り”がよかったのが9月上旬だ。産経が1、2両日に実施した合同世論調査で、次期衆院選の比例代表の投票先に維新を選んだ人が23・8%とトップになったのだ。自民党は21・7%、民主党は17・4%にとどまった。

しかしその後は下降傾向をたどっている。フジテレビによる首都圏での維新に対する調査では、9月2日に14.7%だった支持率が、13日に9.4%、30日には5%と何と10ポイントも下がっているのだ。毎日が29、30両日に行った調査では維新が前回調査比3ポイント下がり8%。注目すべきは地域別にみると、近畿では21%を占めているものの、東京ではわずか2%、北海道・東北、南関東でともに4%にとどまっていることだ。

全国規模に波及していないのだ。読売の18日付調査でも維新は前回、地元の「近畿」では29%でトップだったが、今回は27%で、自民(29%)に次ぐ2番目となった。「中国・四国」「九州」でも自民に次ぐ2番目だが、その他のブロックでは自民、民主に続く3番目だった。全体的に、東日本よりも西日本で強い「西高東低」の傾向が表れている。選挙が近づくにつれてじわじわと維新が全国規模で自民に食われる傾向が強まろう。
 
有権者は尖閣をめぐる日中の緊迫化で、真剣に情報を取り始めており、“遊び”で維新を支持するゆとりなどなくなってきたことが背景にあるものとみられる。多くの有権者が安倍・石破の右傾化コンビの発言を傾聴する傾向を見せ、橋下は霞んでしまったのだ。

しかし自治体選挙でみられるように維新が弱りに弱っている民主党を食い散らす目はまだ残っていると見た方がよいだろう。民主の戦う相手は自民よりも維新となるだろう。今後発表される有力紙の調査も自民好調、維新に陰り、民主続落の傾向を見せるに違いない。
<<今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)
  

2012年08月08日

◆野田は党首会談で解散に踏み込むしかない

杉浦 正章

 

事態打開のための民・自・公の党首会談ができるかできないかは、8日未明にかけての水面下の調整に絞られている。首相・野田佳彦周辺と自民党総裁・谷垣禎一周辺の非公式接触で何が生まれるかだ。


自民党側は文書による今国会解散確約を主張、官邸側はこれに難色を示している模様だ。「解散」をどう表現するかはすべては裏舞台での駆け引きの行方にかかっている。まとまれば党首会談開催へと動く。自民党の主張する回答期限は8日だ。野田はまず国対委員長会談などで打診することになりそうだが、妥協が成立しなければ与野党激突のチキンゲームが続く流れだ。
 

民主党政権側は例によって幹事長・輿石東の「抵抗」が顕著になってきている。輿石はあくまで解散の約束などすべきでないという立場を貫こうとしている。衆院通過の際は、野田が消費増税法案の継続審議を狙う輿石を押さえ込んだが。今回は容易ではない。衆院における内閣不信任決議案を否決しなければならないからだ。


野田にしてみれば輿石に開き直られては「粛々と否決」などとてもできない。その輿石は野田が解散の約束をしかねないとして党首会談にも反対している。要するに衆院通過は野田ペース、参院は輿石ペースで事が運んでいるのだ。もちろん輿石はたとえ消費増税法案をほごにしても解散を先延ばしすることを画策しているのだ。
 

このため谷垣サイドはいきおい“輿石飛ばし”で官邸側と接触せざるを得なくなっている。こうした接触を通じて谷垣には首相サイドから「この事態を打開すべく、今、鋭意検討しているのでしばらく待ってくれ」という話が伝わってきているのだ。


自民党筋によると谷垣は文書による解散確約を求めている。しかし過去に首相が伝家の宝刀である解散を文書で約束させられた例はない。野田にしてみれば下手に約束すれば7日に決まった来月21日の代表選挙での再選がおぼつかなくなる可能性がある。



こうした中で元首相・森喜朗が7日打開策を提案した。同日夜の民放番組で「首相は絶対、解散の確約をしてはいけない。(谷垣は)言えないことを言えと言っている。頭がおかしくなっていると思いたくなるぐらいだ」とまず谷垣を批判して野田の肩を持った。


しかし続いて森は「首相が衆院解散を言わなくても、お互いにわかる発言の仕方はある」と述べたのだ。これが意味するものは党首会談で秋の臨時国会冒頭の解散でも“示唆”するしか方法はないという考え方だ。
 

臨時国会解散は野田も谷垣も党首選挙を経た上での解散となるため受け入れやすい側面がある。元官房長官・町村信孝も「10月に臨時国会を召集して解散し、11月に投開票というのが永田町の多数説だ」と述べるに到っている。事実官邸筋によると野田周辺では臨時国会解散示唆も妥協案の一つに上っているようである。谷垣が激怒した野田による来年度予算案の編成をあいまいな表現にする案などがささやかれている。


しかし「今国会解散」にこだわる谷垣がこれに納得するかどうかはまだやぶの中だ。いずれにしても党首会談が開かれて事態打開へと動くには野田のゼロ回答では物事は進まない。
 

というのも焦点は否決が確定的とみられる衆院での不信任案ではなく、参院での問責決議案に移行しているからだ。不信任案についてはさすがの民主党内の消費増税反対論者も解散に直結しては元も子もなくなるという判断に立ち至ったようだ。


したがって、言われているように小林興起ら離党覚悟の造反議員が出ても可決に必要な15人には達さないものとみられる。問責決議は中小野党の決議案と自民党の決議案を一本化する動きが生じており、可決される方向だろう。首相退陣に直結させる法的拘束力はないが、国会審議はすべてストップする。


そうすれば消費増税法案の参院での可決は不可能になる。憲法に基づき衆院での再可決という手があるが、これも野田が解散を確約しない限り自民党は応じまい。自民党が応じなければ必要な3分の2の多数は確保出来ないのだ。
 

したがってあらゆる事態打開策が野田の解散決断にかかってきているのだ。野田は輿石に乗せた体重を、野党側へとずらす必要に迫まられているのだ。消費増税法案に政治生命をかける野田は“輿石離れ”しか生きる道が残されていないのだ。輿石も総選挙で負けるのは、もはや早いか遅いかの段階に入ったことを知るべきだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年08月07日

◆国益忘却の野田と谷垣は顔洗って出直せ

杉浦 正章

 

どう見ても首相・野田佳彦の大誤算だ。自民党の出方を甘く見た。おまけに自民党総裁・谷垣禎一との“解散密約”をほごにした。ガラス細工の上に乗っているのも気付かずに、自民党長老ばかりに片寄る副総理・岡田克也の情報に乗りすぎて、楽観視しすぎたのだ。


この結果、千載一遇のチャンスであった消費増税法案を累卵(るいらん)の危うきに置く結果となった。お盆を前にして与野党の政権亡者達が、ときの声を上げているが、消費税がつぶれて日本売りの機会を虎視眈々(たんたん)と狙っている外国のハゲタカ・ファンドを喜ばせていいのか。


政局一辺倒の小沢一郎を元気づけていいのか。次世代に借金返済をすべて押しつけるのか。与野党の政権亡者達には「国益」の原点に戻り、おみおつけで顔洗って出直せと言いたい。
 

谷垣の野田に対する警告は度々発せられていたが、1番激しかったのは2日の発言だ。「俺にけんか売っているのかという気持ちを正直、持っている」とまで述べたのだ。野田が連合会長の古賀伸明に、平成25年度予算編成に意欲を示したことに対しての発言だ。


この異常に激しい反応の裏には6月中旬に数度行われた秘密電話会談の“約束”がある。野田は早期解散に含みを持たせて谷垣を説得したのだ。谷垣にしてみれば予算編成までやるとなれば年末以降の解散となり、「解散密約」を“こけにされた”ことになる。


野田の新年以来の解散に前向きな発言が、法案の衆院通過と共に消極的となったことと合わせれば、野田が民主大敗退の選挙情勢調査で慄然として方向転換しようとしていることが分かる。
 

この野田の方向転換が事ここに到った事態の最大の原因であろう。これに加えて、野田は自民党内の情勢分析を誤った。「岡田情報」による森喜朗、古賀誠、伊吹文明らの甘い話しばかりに乗って、同党内の厳しい空気を見誤った。


折から自民党内は父親の小泉純一郎にけしかけられたといわれる息子の進次カが、こともあろうに若手を募って「消費税より解散」ののろしを上げ、執行部を揺さぶり始めた。元より「政局最優先」の純一郎はこの機会を解散への絶好の機会ととらえており、消費税など眼中にない。


進次カはもう少し筋を通す男かと思っていたが、「政策」より「政局」を選ぶとは、やはり父親の操り人形的な存在であったことがばれたことになる。3党合意の旗振り役であった伊吹は党内情勢を見て音より早く「解散」を選択した。
 

置いてけぼりを食らったのが公明党だ。支持団体創価学会の反対を押し切って3党合意に参加したために引っ込みが付かない。代表・山口那津男は慌てて自民党の不信任案上程に「一体改革を台無しにする。3党合意を結んだ大義が失われる。国民に説得力の欠ける行為であり、断じて避けるべきだ」と反対の声を上げた。


発言には、いきおい学会対策の側面がある。野田が打開を図る道はこの公明党を抱き込むしかあるまい。野田が7党不信任案を「心ある野党と連携しながら否決する」と述べているのは、公明党抱き込みを意識しているに違いない。


公明党内は7党不信任案は反対で固まっているものの、自民党が出すという「野田自身の不信任」なら賛成せざるを得ないという姑息(こそく)なる主張もあり、ふらついている。 このように永田町は総選挙有利と判断した自民党が、消費増税法案を捨ててまで早期解散へと突き進むという、卑しげな党利党略に凝り固まりつつある。


一方で、民主党は浮動票の「風」で政権を取ったことを忘れて、少しでも解散を遅らせ何が何でもパイを守ろうという“さもしい根性”が前面に出てきた。これも消費増税法案などはどうでもよいのだ。


国会を火遊びの場と心得る小沢一郎主導の7党不信任案などは、不遇をかこつ弱小政党のうっぷん晴らしにすぎない。出番が意外に早く来て喜ぶ小沢の高笑いだけが聞こえるようでもある。そこには消費増税法案という国の存亡にかかわる重要法案への思いなどはかけらも見いだせない。
 

政治家は「政局」に血道をあげる時ではない。ここは「国益」の一点に立って解決するしか道はない。


野田は、解散を遅らせても、構造的な党勢退潮を食い止める道などないことを知るべきだ。「一体改革に政治生命をかける」と言ってきた以上、ここが政治生命のかけどころであることを知るべきだ。幹事長・輿石東らの主張を排して、何よりも優先させて消費増税法案を成立させるべきだ。それには早期解散を約束するしかない。


谷垣も政権亡者か飢えた地獄の餓鬼のように政権復帰を求めずに、解散時期で妥協をせよ。不信任案を上程しても解散を恐れることでは一致する民主党はほぼ結束して否決に回るという流れになって来た。こじれた場合には、衆院での消費税再可決という非常手段を使ってでも、今国会で法案成立を図るべきだ。


両者とも今ほど政治家の矜持が問われる時はないと知るべきだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年08月06日

◆政局緊迫、消費税3党合意が風前の灯

杉浦 正章


政界名物のチキンゲームの様相だ。首相・野田佳彦と自民党総裁・谷垣禎一が互いの車に向かって一直線に走行している。激突を回避する道はただ一つ。野田が解散の確約をするかどうかだ。


しかし永田町に流れる選挙情勢調査は解散イコール民主党の“集団自殺”だ。それでも野田が消費増税法案成立に本当に政治生命をかけ、解散を確約するのか。また内閣不信任案が成立し得るのか。その場合、解散か、それとも内閣総辞職のウルトラCか。事態は緊迫だ。


ここは両者が得意の極秘会談か、電話による極秘会談での打開が不可欠だ。おそらく何らかの接触を試みているいるに違いない。
 

「なめたらいかん」と自民党の幹事長代行・田野瀬良太郎が激怒して開き直るのももっともだ。5日のNHK討論では民主党幹事長代行・樽床伸二が、事態の深刻さを理解しているのかいないのか終始ニヤニヤ笑いながら、消費増税法案の早期採決を全否定。


首相・野田佳彦が10日の採決を指示したことも「マスコミが言っているだけで指示は受けていない」とこれまた否定。あくまで消費増税法案を赤字国債、定数是正の2法案と絡める方針を明らかにしたのだ。明らかに民主党執行部は幹事長・輿石東以下、解散回避で凝り固まったように見える。
 

これでは首相・野田佳彦が5日「輿石幹事長と、柔軟性を持って対応しようということで認識が一致した」と述べても、自民党が信用するはずはない。輿石は消費税より解散回避を選択しているように見えるのだ。野田が執行部を押さえられないという事態がまた発生しているのだ。


輿石は、ロシア帝国崩壊の一因をつくった怪僧ラスプーチンのように陰謀をめぐらせている。何が何でも野田が解散できないような環境を作ろうとしているのだ。ここまで政局が緊迫した以上、小細工は利かないのだがそれを理解しようとしないのだ。したがって自民党サイドの不信感は頂点に達しつつある。輿石を野田が6日中にも完全に押さえ込まない限り、消費増税法案は廃案の瀬戸際にあるように見える。
 

なぜ執拗なまでに輿石が解散回避にこだわるのかだが、それには最近行われた選挙情勢調査の結果がある。新聞の調査も自民党の調査も民主党大敗と出ているのだ。永田町に流れる新聞の選挙予想調査では民主党は現在の250議席から103議席か75議席にまで転落しかねない。


一方自民党は200議席を上回り、別の調査では単独過半数もあり得るという。先に山口知事選の際に筆者が分析したとおりに、3年前に民主党に流れた浮動票は、すべてが維新の会など第3極に流れそうな気配なのだ。


野田は、ちょうど解散を前にした当時の首相・麻生太郎のような状況に置かれたのだ。解散すれば政権を失うことが分かっているのだ。輿石は解散による民主党政権瓦解と消費増税法案をてんびんにかけているのだ。
 

こうして激突のコースに向かっているのだが、今後は、自民党が不信任案を提出すればこれを軸に展開する。先例により不信任案は人数の多い政党が提出したものを先に採決して、その後は一事不再議で採決されない。自民党が提出した場合には野党7党の不信任案は採決に到らない。


したがって自民党案に7党もなだれ込まざるを得まい。生活代表の小沢一郎もなりふり構っていられないところだろう。問題は可決されるかどうかだが、民主党から15人以上が賛成しない限り、すべての野党が賛成しても可決されない。したがって例によって離党予備軍の鳩山由紀夫一派が賛成するかどうかにかかっている。


また棄権が多く出ても可決される。衆院における消費増税法案採決で反対または欠席しながら党にとどまった民主党衆院議員は32人おり、この動向が鍵となる。今のところ不信任案否決説が有力だが、民主党内増税反対勢力は結果的に自民党案でも消費増税法案阻止が可能となればなだれ込む可能性が否定出来ない。


否決の場合、自民党は法的拘束力がないが問責決議で勝負することになる。また、ぎりぎりの奇策がないわけではない。


消費増税法案は衆院から参院に送付後60日が過ぎた場合、つまり今月25日以降は参院の採決がなくとも、衆院の3分の2以上の賛成で再可決が可能となる。自公が賛成に回れば成立可能だが、まだ五里霧中だ。
 

こうした中で焦点は野田と自民党総裁・谷垣禎一とのパイプが生きているかどうかだ。いまのところ自民党は今国会9月8日までの解散確約を要求している。


今後の展開予想は、自民党の言うとおりに解散すれば、野田は確定的となった再選の可能性を打ち消すことになる。半減以下に議席数を激減させた党首を再選させることはまず困難だからだ。不信任案が可決された場合には解散か総辞職を迫られることになる。


野田はまず解散を選ぶとみられるが、ここで永田町でささやかれ始めたのが、野田は解散を選ばず内閣総辞職を選ぶのではないかという説である。内閣総辞職をして、副総理・岡田克也か前原誠司を首班に選出、イメージを刷新した上で通常国会冒頭あたりに解散・総選挙を打つというのだ。


身を挺して党を救うという最後の手段である。しかし、その場合野田が「政治生命をかける」と言った消費増税法案は宙に浮きかねない。何でもあり政局だから可能性は全否定できない。
 

このように野田の選択肢は極めて狭められてきている。ここで重要なのは消費増税法案を成立させること自体は歴史に残る快挙であり、野田は現段階でそれ以上を望むべきではあるまい。野田は早急に谷垣と党首会談を公式または非公式に開いて、今国会か秋の臨時国会冒頭かのいずれかの時点での解散を確約するしか事態打開の道は開けまい。


谷垣も消費増税法案を潰せば“希代の悪役”として歴史に名をとどめることになることを知り、妥協に動くべきだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年08月03日

◆野田は「解散」で名誉ある譲歩をせよ

杉浦 正章

 

まるで人種差別だ。人格、識見、専門知識と3拍子そろっている人物を「原子力ムラ出身」として反対する。なりふり構わず反対の先頭に立つ鳩山由紀夫は「ルーピームラ村長」のくせに国会議員をやっていていいのかと言いたくなる。


原子力規制委員会人事は与野党ともに政局化すべきではない。国のエネルギー政策の根幹を担う人事であり、委員長候補の田中俊一も国会での発言を聞く限り公正な判断力の持ち主である。首相・野田佳彦はここにきてぐらついてはいけない。もはや重要法案も人事も解散覚悟でなければ乗り切れないことを知るべき時だ。
 

規制委人事ではマスコミの対応もくっきりと割れた。社説は読売が「最重視すべきは委員の能力だ」、産経が「良識的なバランス感覚を期待できる人選」と評価した。一方で朝日は「原子力ムラと関係の深い人物が多いとの声が上がっている」「特に経歴を見れば原発の推進側にいたことは間違いない」と疑問を呈した。執念深く社説で2度にわたり、政界の人事反対の動きをあおっている。


毎日に到っては「番人にふさわしいのか」と反対姿勢だ。要するに原発反対の新聞は人事に反対、再稼働推進の社は賛成の方向だ。
 

ここで焦点となるのは、過去の履歴ではなく国のエネルギー政策の生殺与奪をになう委員長人事の公平性だ。そこで田中の国会発言を分析すれば、ポイントは2点に尽きる。


それは「40年を超えた原発は厳格にチェックし、要件を満たさなければ運転させない姿勢で臨むべきだ」「調査の結果、活断層の影響があるとの判断になれば運転停止を求めるべきだ。再稼働した大飯原発についても規制委が調査に加わり、(敷地内に)活断層があれば止めてもらう」だ。


この発言から見れば「原子力ムラ」にどっぷりとつかった感じではない。むしろ原子力発電に関する専門知識を持ちながら、公平性を維持している。「でたらめ」との別名で、首相・菅直人とともに事故深刻化にひたすら“貢献”した原子力安全委員会委員長・班目春樹とは格段の差がある。


読売が社説で「原発で重大な事故が起きれば、規制委が対策の最前線に立つ。委員長が、単独で対処措置を決定しなければならない場合もある。電力会社や関係機関などとの接点がなく、現場の実態も知らない人物では務まるはずがない」と指摘している通りだ。レッテル張りで人事を決めては将来に禍根を残す。
 

この人事に対して先頭に立って反対している鳩山は、田中を「ミスター原子力村の人物。国民の期待に応えるものになっていない」と批判、「再考を求める」との声明を出した。党内でも反原発の急進派議員らが会合を繰り返し、人事案件の撤回を強硬に求めている。明らかに人事を政局に利用しようとしているのである。


人事反対派は「反原発の人間が含まれていない」と主張するが、これこそ語るに落ちた。公平中立であるべき人事を反原発で固め、原発ゼロを目指そうとしているのだ。


これに対して政府・与党は人事を貫く方針を維持している。官房長官・藤村修は2日「ベストの案を国会に提示した」と述べ、原発事故担当相の細野豪志も同様の立場だ。幹事長・輿石東は「原則として、党で決めたことには従ってもらう」と党議拘束をかける考えを示した。しかし、党内は反原発の風潮もあり国会での採決となれば造反者も出かねない状況である。
 

民主党内は消費増税法案と同様に、人事をめぐる内紛が生じているのが現状だ。まさにあらゆる案件に造反が起きるという政権末期の症状を呈し始めたことになる。早期解散戦略をとる野党がこれを見逃さないわけがない。


自民党総裁・谷垣禎一は2日、「与党の中から差し替えるべきだという話が出ており、真剣な提案なのかどうかすら疑いたくなる。論評以前の問題だ」と批判した。国会における同意人事では衆参両院が同意しなければ廃案になるため、参院で多数を占める野党の動向も焦点になっている。過半数で反対すれば実現しない。加えて民主党執行部の消費増税法案採決先延ばし策に業を煮やした自民党は、7日にも首相問責決議案を提出する方針を決めた。そうすれば事態は人事案件どころではなくなる。人事は宙に浮いて政局となるのだ。
 

こうしたなかで首相・野田佳彦の対応がかったるい。1日夜も党所属参院議員らとの会合で「経歴から問題ないと聞いたのだが」と困惑の表情だったという。ここで野田がなすべきことは、菅直人や朝日の主張を聞いて、減少しつつある反原発デモの指導者などと会談などしているときではない。必要なのは早急に谷垣や公明党代表・山口那津男と党首会談を開くことだ。


会談では3党合意に基づく消費増税法案に加えて原子力委人事、赤字国債法案、衆院定数是正法案の4重要案件に絞って話し合い、今国会での処理で合意に達するべきだ。その代償として今国会解散が無理なら秋の臨時国会冒頭解散を確約することだ。


ここは、政局より国家百年の計を念頭に、野田が名誉ある譲歩で事態を切り開くべき時だ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年08月02日

◆消費税成立前の不信任案が政局直撃可能性

杉浦 正章

 

衆院議員たった5人のミニ政党ながら、時には政局直撃の“妙手”を考えることがあるものだ。みんなの党が打ち出した参院での消費増税法案採決「前」の内閣不信任案上程が不気味だ。


51人集まって上程出来れば自民党の「採決後不信任案上程」の解散戦略を根底から覆すおそれがある。採決前ならおそらくみんなの党の思惑とは逆に不信任案否決、消費増税法案成立の流れとなり、今国会での解散はなくなる可能性があるからだ。同党代表・渡辺喜美は利口なようで“とろい”戦術を編み出したことになるが、みんなの“暴発”が、政局方程式を変える可能性も否定出来ない。
 

これまでは内閣不信任案問題は自民・公明両党の専売特許のように展開してきた。ミニ政党では人数が集まらないからだ。だから自公は参院で3党合意に基づき消費増税法案を成立させた上で不信任案を上程、民主党のさらなる造反をさそって可決し、野田を解散に追い込む戦略を立てていた。


ところが、渡辺が31日この戦略に横やりを入れた。渡辺は「消費税率引き上げ法案が参議院で採決される前に、内閣不信任決議案を衆議院に提出すべきだ。みんなの党だけでは、内閣不信任決議案を提出できる議員数を持ち合わせていないので、自民党や公明党以外の野党にも連携を働きかけていきたい」と不信任案の提出に必要な51人の議員を確保するため、自公以外の野党に協力を呼びかけていく考えを表明したのだ。


直ちに同党は、国民の生活が第一、共産党、新党きづな、社民党、みんなの党、新党大地・真民主と国会対策委員会長会談を開いて協力を要請した。
 

これに呼応するかのように社民党党首・福島瑞穂が「消費税率引き上げ法案が成立する前に、国民に信を問う可能性をとことん追求すべきだ」と同調した。焦点は衆院37人の生活が9人のきづなとともに乗るかどうかだが、代表・小沢一郎は1日の記者会見で党の基本政策を発表、この中の柱に「消費税阻止」をうたったのだ。「阻止」となれば採決前の不信任案上程につながり得る姿勢であろう。


しかし早期解散は生活の“早期消滅”につながる側面があり、微妙でもある。もっとも可決されないのなら“揺さぶり”効果はあり、参加する意義はないわけではない。では51人が集まった場合にどうなるかだが、当然上程の運びとなる。そうなれば最短で10日の採決前には国会の動きはすべて止まることになる。不信任案は慣例であらゆる議案に優先して採決されるからだ。
 

そこで自公は直ちに賛否の対応を迫られることになる。公明党は代表・山口那津男が31日の記者会見で、参院採決前の不信任提出に関連して、「基本的に同調しない」と発言している。自民党にも政局絡みで採決前提出論があることに対して、政策優先の姿勢を維持している。


したがって民主党250人プラス公明党21人で、民主党に落ちこぼれや欠席者が出ても241人の過半数は維持できる可能性が高い。否決されてしまえば一事不再議の慣例により、通常国会での不信任案上程はなくなり、野党は首相・野田佳彦を解散に追い込む手段がなくなる。
 

こうして、窮地に陥るのは野田ではなくて自民党総裁・谷垣禎一の方となりそうなのだ。消費増税法案を成立させてから解散の戦略が崩れる恐れが出てきたのだ。折から自民党は小泉進一郎ら若手11人が1日緊急声明を発表し「与党が採決を遅らせ、野党が採決を促す異常事態は、合意の破たんだ」として3党合意破棄を谷垣に申し入れた。


野田に法案成立だけ先食いされる可能性を見越しての対応だ。谷垣は「重く受け止める」と答えているが、3党合意破棄は自らの消費増税に対する政治信条の破棄につながることであり、まさにこちらを立てればあちらが立たずの板挟みに追い込まれる。「政局」か「政策」かの選択を迫られるのだ。
 

選択肢が「前の不信任案」か「後の不信任案」かで天と地の違いが生ずるのである。公明が否決に動いた場合には谷垣も否決へと動かざるを得ないのが流れのように見えるが、その場合、党の対応が割れる恐れもある。また今国会での解散に追い込む手段を喪失することになる。首相問責決議を参院に提出しても法的拘束力がない。とことん追い込まないままでは、野田は秋の臨時国会での「話し合い解散」にも応じないだろう。


こうして谷垣は残る国会を窮地を脱した野田の再選への流れをうらやましげに見守るしかなくなる。もちろん、手をこまねいた罰で自らの再選が危うくなるのは間違いない。渡辺の打った手はこれほどのインパクトを内包しているのだ。本人の意図と違って例え不信任案が可決されなくてもだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年08月01日

◆早期解散なら維新が民主を直撃

杉浦 正章

 

一見「当たらず障らず」のようだが、実際は“水に落ちた犬”をたたき始めているというのが、大阪市長・橋下徹に対する政界の潮流だ。


「当たらず障らず」は、山口県知事選の橋下系候補に対する自公の戦術と与野党7会派提出の大都市地域特別区設置法案提出など“争点回避”となって現れている。


逆に、橋下の女性問題を契機に、公然と批判する声も強まった。要するに政界は橋下への「チヤホヤ扱い」だけでなく、メッキはがしという“両刀遣い”をやるようになってきたのだ。知事選の結果は自公両党より民主党の浮動票を維新の会が奪う流れがくっきりと現れた。
 

6万7000票の大差で自公候補・山本繁太郎が原発反対の橋下系候補・飯田哲也を下した選挙結果は、総選挙を占う上で極めて興味深い。飯田は民主党が候補を擁立できない間隙を突いて立候補したが、その主張はエキセントリックな反原発一筋。山本は自公両党のアドバイスもあって、あえて原発の争点化を避けた。


この結果、飯田にとってのれんに腕押しの結果を招いて、当選に遠く及ばなかった。しかし重要ポイントは他にある。浮動票の流れだ。朝日の出口調査の結果がそれを物語っている。


無党派層の投票動向だけを見ると、飯田が53%に達し、山本が27%と半分にとどまったのだ。これが意味するところは、3年前の総選挙で圧倒的に民主党へと流れ、政権獲得への原動力となった浮動票が第3極に流れる兆候を示しているのだ。しかし、自公両党は、自民が支持層の76%、公明が支持層の85%をまとめており、総選挙の時のような支持層離反傾向が見られなかったことだ。


これが意味するところは浮動票を失った民主党が惨敗し、自公は締まってかかれば支持層をまとめられる流れであろう。恐らく候補を立てれば民主党は3位に終わったであろう。第3極が民主党を食う構図が顕著に浮上したのだ。
 

こうした傾向の反映もあって、橋下の主張する「大阪都構想」を後押しする「大都市地域特別区設置法案」がなんと7会派共同で提出され、31日審議入りした。8月中には成立の運びだ。東京23区のように複数の特別区をつくれるようにする法案だ。


しかし肝心の橋下が掲げた「都」への名称変更は盛り込んでいないため、実際には「大阪都」は実現しない。なぜ7会派がまとまったかだが、民主、自民の狙いは「触らぬ神にたたりなし」だ。対等に戦って相手を大きく見せては損だという、深謀遠慮が背景にある。公明は大阪と兵庫に6選挙区も候補を抱え、維新の会との連携を不可避と考えているのだ。


民主党には「これで維新の会は国政に進出する理由がなくなった」(幹部)という楽観的な見方も出てきているが、これは希望的観測で甘い。反原発にせよ、浮動票を稼ぐテーマには困るまい。
 

自民党幹部は「化けの皮がはがれるまでは、ケンカをしないということだ。やがて馬脚が全部現れる」と見通しを述べる。既に女性問題を契機に橋下批判の合唱が始まりつつある。同幹部は「普通の不倫ならまだしもコスプレはいかん。山崎拓が文春に変態と報じられて、首相の芽を断たれたのと同じだ」とも分析する。


確かにスチュワーデスの制服が、橋下のイメージとダブるようになった。今後もたたり続ける流れだ。裏情報の野中広務はテレビで「報道された女性問題はもっと人気を落とす事件に発展する」と不気味な予言をして「国政のトップに立てる人ではない」とこき下ろす。民主党最高顧問・渡部恒三も「大阪のあんちゃんがいろいろ女性で話題になっているが、これで時間の問題となった。来年になったらそんな人いたかということになる」と切り捨てた。
 

政党幹部も旗幟(きし)鮮明にし始めた。自民党総裁・谷垣禎一が「橋下さんが言うことは私どもとかなり違う」と一線を画したかと思うと、民主党幹事長・輿石東は「橋下さんとどう付き合うかは、あまり積極的に付き合おうとは思っていない」と述べている。政界の橋下に対する見方は大阪における維新の会躍進当初の危機感から、脱しつつあるようである。


橋下自身の政治家としての能力も、反原発から原発再稼働容認へと転換したり、政権を倒すと息巻いたと思ったら、首相・野田佳彦を褒めあげたりで、はちゃめちゃだ。今度の小選挙区制支持発言も、政治への無知をさらけ出した。いまや同制度は政治の停滞の原因であるという見方が支配的になっており、中選挙区に戻る流れが生じているのだ。


推進役であった河野洋平が「反省」して制度改正にその主張を転じたことも理解していないのだ。メッキは確実にはげるが問題はその時期だ。総選挙が迫っており、はげ切らないまま突入という事態も考えられる。


その場合は維新の会が、自公より民主党に壊滅的な打撃を果たす公算が強い。山口知事選はその“走り”なのだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年07月31日

◆朝日よ、安保もエネルギーも天から降らぬ

杉浦 正章

 

30日付の朝日新聞はまさに反原発一色の編集方針で覆われた。社説では、国会を取り巻く前日のデモを「もの言わぬ国民による異議申し立て」と礼賛した。「もの言わぬ国民」は普通サイレントマジョリティでデモに参加しない市民をさすのだが、朝日の用語は特別なのだろうか。


60年安保の時もそうであったが、その圧倒的影響力を使って朝日はデモ扇動の先頭に立っているようにみえる。間接民主主義では原発再稼働の動きを止められず、大衆を煽っての原発再稼働阻止に動き始めたように見える。


しかしこれは、民主主義、議会政治の否定につながりかねない危険な側面を持つものであろう。同紙はオスプレイ配備にも反対姿勢を強めている。朝日に代表される原発、オスプレイ反対の論調には、安全保障とエネルギーは天から降ってくるという、日本独特の甘いイデオロギーに貫かれており、説得力に欠ける。


60年安保に際して朝日は、そのあおりが利きすぎて死人まで出る事態に、読売、毎日に呼びかけて、「共同宣言」をそれぞれの新聞紙上に発表した。「暴力を排し、議会主義を守れ」という宣言である。これを機に引き潮の如くデモの波は収まったが、マスメディアのマッチポンプ性を物語る戦後最大の逸話である。


今回の場合も、30日付社説「民主主義を鍛え直そう」で、国会を取り囲むデモの動きを、デモ参加者の発言を各所にちりばめ、またもやマッチポンプのマッチを刷り続けている。しかし勢い余ってか各所にぼろが目立つ。「抗議の人波が膨れあがるのにあわせて、与野党の議員が行動に加わるようになった」とあたかも国会議員が大量に参加しているような調子で述べている。


だが、参加者はだれかというとルーピー兼宇宙人の鳩山由紀夫、テレビのマイクと見れば飛び付いて発言したがる川内博史、自民党の異端児・河野太郎、社会党左派の流れを後生大事に受け継ぐ福島瑞穂らである。議員ではないが瀬戸内寂聴も金切り声を上げて反原発を唱えるが、いづれも共通項がある。


それは度し難いポピュリズムだ。大衆にこびを呈することに生きがいをもった人々だ。60年安保の時は社会党委員長の浅沼稻次郎委員長は、こびなど売らずにデモの先頭に立ったものだ。規模も参加政治家も迫力が違った。
 

また社説は福島の原発事故を「これは天災ではなく、電力会社や政府による人災だ」と言い切ったが、これほど我田引水の社説を知らない。まぎれもなく1200年に1度の天災が、電源を直撃したことがすべての発端なのであり、東電現場職員は命がけで戦った。事故を止める方法が他にあったなら、提示すべきであろうが、できまい。


また社説は、抗議行動の主催者らと、首相・野田佳彦がみずから「話し合ってはどうか」と提案しているが、これも間接民主主義の否定だ。それでは首相は、原発再稼働論者の声なき声をどう聞くのか。朝日は27日付の社説でも関電社長・八木誠の「原発再稼働は需給ではなく、わが国のエネルギー安全保障を考えてのことだ」と語ったことに対して「本音は自社の安全保障を考えてだろう」と無礼千万の論評をしている。


これこそまっとうな論壇では決して使ってはならない“邪推”を基にしているではないか。ここまで社長を侮辱にされては、関電は朝日に広告を出すべきではない
 

要するに論調を貫くものは無責任な「エネルギーが天から降る」思想である。朝日は今原発を止めて、うなぎ登りに上がるであろう電気料金に責任を持てるのか。料金値上げはすべてに波及する。間違いなく我が国経済の根幹を揺るがす。デモ参加者のミルク代にも影響しかねない。回り回って構造的不況に突入し、参加した老人の医療費、生活保護費、年金にも影響が出かねない。


デモを煽ってその結果招く事態に責任が持てるのか。60年安保のように「ポンプ」で沈静化すればよいとでも思っているのか。また原発のリスクを言うが、火力発電の排気ガスによる死者や発電所ダムの決壊による死亡者の方が圧倒的に多いという米国の調査結果があることも知るべきであろう。日本に原発事故で死者はいない。
 

オスプレイの導入にも社説で「配備強行は米にも不利益」と反対しているが、ここにも「安全保障は天から降る」思想が根底にある。


なぜこのように甘い論調を繰り返すのだろうか。米軍によるオスプレイの配備は安保条約上認められている装備の変更であり、緊張の度を加える北東アジア情勢に対処するものである。風評で事故ばかりが取りざたされるが、海兵隊の重大事故率はオスプレイが1.93であり、他の戦闘機の2.45より低い。


明らかに米国の戦略は尖閣列島も含めた極東全体を俯瞰してのものである。航続距離から見てもオスプレイは中国の尖閣諸島進出への抑止力になるものである。その証拠に中国の新聞はオスプレイを「中国に向けられた剣」と論じている。朝日は中国の空母建造など「尖閣に向けられた青竜刀」には目をつぶり、輸送力増強のための配備に難癖をつけられるのか。
 

海兵隊は輸送ヘリであるオスプレイの導入により、国内災害でも大量の人員や被災者の搬送に役立てるだろう。東日本大震災でめざましい活躍をした海兵隊にオスプレイがあれば、間違いなく救える被災者の数は増したのだ。だから筆者がかねてから言っているように自衛隊も災害対策に主眼を置きオスプレイを配備すればよいのだ。


災害など国難に直面したときだけ海兵隊を“使ってやろう”などという卑しい魂胆では、そのうちに安保体制そのものが崩れかねないことを知るべきであろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)



2012年07月27日

◆多数説となった臨時国会解散説を分析

杉浦 正章

 

なにやら筆者が10日前に書いた“臨時国会解散説”が永田町の多数説となってきたそうだ。元官房長官・町村信孝が言明した。これも常識になりつつある「野田再選」と併せて、2大政党の党首は9月に「野田と谷垣の再選」で秋の解散・総選挙い臨むという潮目が出てきたのだ。


しかし、まだまだ油断はできない。古狸の自民党は時々死んだふりをするからだ。今国会解散の目も否定出来ない。その証拠には自民党総裁・谷垣禎一は8月上旬の消費増税法案成立に固執している。何が何でも今国会での解散に追い込もうとしているのだ。
 

町村は総裁選に手を挙げているのだから、いくら町村派のオーナーでも元首相・森喜朗が引退表明に連動して谷垣再選を支持したことは不満であったはずだ。それがどんな根回しがあったのか森に同調するともとれる発言をしたのだ。25日仙台市で衆院解散・総選挙の時期に関し「10月に臨時国会を召集して解散し、11月に投開票というのが永田町の多数説だ」との見方を示した。


さらに加えて「一番早ければ9月上旬に解散、月末選挙だが、民主党は選挙が一日でも先になればいいと考えている。野田佳彦首相も解散を後ろ倒しにしている」 とも付け加えた。森は谷垣と首相・野田佳彦が再選した上での臨時国会解散を唱えており、軌を一にすると取られてもおかしくない発言だ。  
 

町村も立候補表明はしたものの党内的に支持者の広がりが見られず、9月の総裁選は森と同調して谷垣支持へと動く可能性を視野に入れ始めたことを物語っている。


しかしその一方で町村は26日の派閥会合では、あれだけ明言した森の「谷垣再選容認」を「必ずしも事実でない」と否定したという。揺れる心理状態を見せているが、こちらは派内の求心力がなくなるのを恐れての発言だろう。


「野田再選」の方は、政調会長前原誠司に続いて外相・玄葉光一郎も「外交をやっていて、首相の首をすげ替えることの不毛を感じている。首相がくるくる代わるのは大変な国益の損失であり、首脳間の信頼関係がなければ、北方領土交渉も最終的に結果が得られない」と発言、再選支持に回った。


注目すべきは民主党最大の支持団体である連合会長・古賀伸明も「5年で6人の首相が誕生した政治はよくない。続投すべきだ」と野田の再選を支持したことだ。これでよほどのことがない限り再選への流れは固まってきたと言える。よほどのこととは、早期解散による代表選前の総選挙で民主党が敗退して、野田が党内の支持を一挙に失うケースである。
 

焦点は野田が臨時国会解散を野党に確約できるかどうかであろう。自民党にとっては確約がなければ、野田が党勢後退の現状からいっても遅い方がよいに決まっている解散・総選挙をずるずると先延ばしにしかねない。現に民主党幹事長・輿石東は、大本命であるはずの消費増税法案の採決を先延ばしにしてでも解散・総選挙への流れを押しとどめようとしている。


自民党は激怒して、民主党にねじ込み、結局採決の前提となる中央公聴会を来月6日と7日に行うことで26日合意した。この結果10日前後の採決と成立の目が出てきたことになる。自民党としては採決直後から態度を“豹変”させて、一挙に野田を解散・総選挙に追い込もうとするだろう。したがって8月15日の旧盆休みに入る前に最大の山場を迎えることになる。
 

その手段としては、衆院に内閣不信任案、参院に首相問責決議案の上程がある。消費増税法案採決でさらに15人以上の民主党離党者が出るか、多数の欠席が出れば不信任案は可決され得る。問責の可決は確実だ。谷垣としてはぎりぎりまで野田を追い詰めなければ、解散の目は出ないと思っているに違いない。


ここで可能性として考えられるのは「8月解散9月選挙」「9月解散10月選挙」「10月解散11月選挙」の3択であろう。最初の8月解散は不信任案成立のケースだ。9月解散は同月8日までの会期末ぎりぎりに野田が解散に追い込まれるケースだ。問責決議が通った場合などに考えられる。そして町村が「永田町の多数説」と唱えた10月臨時国会冒頭の解散だ。このケースは民・自・公党首が話し合いで解散時期を野田に誓約させる方式となるだろう。


前提として赤字国債発行法案を冒頭で処理した上での解散となる可能性が高い。9月の党首選挙は民主、自民両党ともクリアした上での解散・総選挙となる。
 

さらに先延ばしして年末解散や来年の通常国会冒頭解散の可能性もゼロではないが、現段階では想定外だ。野田は、消費増税法案を成立させた歴史に残る首相となるが、これだけ国論を2分する大事を成し遂げて、解散をさらに先延ばしするのは憲政の常道に反する。解散作送りはせいぜい臨時国会までが限度だろう。


堂々と消費増税達成で民意を問う事こそが、総仕上げとして不可欠であることを知らなければなるまい。

★筆者より テレビでオリンピックを見なければならないので、月曜日は休みとします。俳句「一打ちで鎌倉の蚊を仕留めたり」


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年07月26日

◆野田は原発で火中のクリを拾った

杉浦 正章

 

心地よい駆動音を立てて大飯原発4号機がフル稼働の段階に入った。我が国のエネルギー危機はようやくその袋小路から脱する光明が見え始めた。国内に異論を残すが、大勢は小異を残して大同につく。もうこの流れが逆行することはなく、時代は火力、水力、原子力を主軸としたベストミックスの時代に移行する。これに自然エネルギーが加わるかどうかは将来の課題だ。


原発再稼働は民主党政権がもたらした最大のエネルギー危機であったが、首相・野田佳彦の愚直なまでの信念が崖っぷちで「エネルギーパニック」を食い止めた。マスコミも原発再稼働で真っ二つに割れたが、朝日新聞を始め、無知をさらして吠えまくったみのもんたのTBSなど民放テレビの反対派は、60年安保における敗退と同じで脱力感があるに違いない。報道の偏向という意味で反省すべき段階に入ったと言える。
 

関西電力社長の八木誠は、今売り出しの大阪市長・橋下徹など歯牙にもかけないサムライであった。“次の再稼働”について25日「高浜3、4号機が最有力」と明言。 時期については「国にはできるだけ審査を早くしてもらいたい」と述べた。


注目すべきは「電力需給ではなく、わが国のエネルギーセキュリティーを考え、安全性を確認できたプラントはできるだけ早く動かしていきたい」と強調した点だ。これは原発再稼働を単なる停電対策ではなく、日本のエネルギー安保全体を考える立場から行うという観点だ。電力会社存立の原点となる思想を堂々と表明したものといえ、注目に値する発言だ。
 

ここに来て電力会社の“巻き返し”が目立つ。政府の公聴会で中電の課長は「個人として意見を述べたい」とした上で、「福島原発事故では放射能の直接的な影響で死亡した人はいない。5年、10年たっても状況は変わらない」と発言した。


確かに推定10万人が死亡した核爆発のチェルノブイリとは根本的に異なる。マスコミ主導の反原発機運が覆う中で勇気ある発言だ。「電気を潤沢に使えないことで実現しない未来もある」と述べた社員もいる。一連の発言は国家経済の中枢をになう電力会社に、その“気
概”が戻ったものと見るべきであろう。気概をなくした国家に将来はない。
 

それにつけても、ここまで原発問題をこじらしたのはすべてが、繰り返すがすべてが前首相・菅直人の責任に帰する問題だ。たかが東工大で“かじった”くらいの知識で、国の原子力政策を根底から覆そうとしたのである。菅は原子力政策の根幹を揺るがす三つの誤判断を犯した。


まず発端は浜岡原発停止だ。福島原発事故への恐怖感を煽って、何の法的根拠もないままに、事実上の命令を発してストップさせた。これがやみくもなる原発反対ムードに火をつけた。次にいったん経産相・海江田万里が保障した九州電力玄海原発の再稼働“阻止”だ。菅は「ストレステスト」を持ち出してストップをかけたのだ。


これに加えて菅は、自然エネルギーで一儲けしようとしたソフトバンク社長・孫正義とつるんで「自然エネルギー活用幻想」を国中にばらまいた。しかし、1年たっても自然エネルギーが原子力に取って代わり得るめどなど立っていない。依然全体の1%以下でしかないのだ。


自然エネルギーなどに過度の期待を繋いだら、日本は亡国の道をたどるしかなかったのだ。菅政治の1年は一市民運動家レベルの政治屋に国の政治を任すとどうなるかが、恐ろしいほど分かった1年であった。
 

野田の“平衡感覚”は消費増税法案へのぶれない姿勢と共に原子力政策でも発揮された。崖っぷちまで行った反原発の流れにさおさして、巻き返しに成功したのだ。閣内には確信犯的に反原発の経産相・枝野幸男がいる。枝野は前述の八木発言をろくろく確かめもしないで「大変不快な発言であるというのが印象だ」とまでこき下ろした。


しかし枝野の常習犯的反原発発言はもう相手にされなくなってきた。枝野は政治的には原発発言で力量の限界を見せた。国家をになう人材ではない。野田は党に獅子身中の虫の幹事長・輿石東、内閣に枝野を抱えて、よくかじ取りができていると思うほどだ。野田は国連で「日本は原発の安全性を世界最高水準に高める」と演説、原子炉輸出にも積極的だ。
 

今後再稼働は四国電力の伊方、北海道電力の泊、東京電力の柏崎刈羽、関電の高浜3、4号機などが焦点となる。これからは先に法案が成立した原子力規制委員会が事実上決定することになる。委員長には高度情報科学技術研究機構顧問・田中俊一が就任することになる。


田中は「原子力ムラ」とは一定の距離を置く立場を取っており、原発再稼働についても「選択型再稼働」論であるようだ。中立性が求められる委員長人事は「ムラ」では駄目だし、「反原発」ではなおさら駄目。その中間を行く人事を野田はよく決めた。おそらく常識的な再稼働が推進されることになろう。


人事は読売のスクープだが、朝日はブンむくれて26日の社説で「候補者の所信を聞きたい」と難癖をつけている。この場合朝日が難癖をつければつけるほど正しい人事であろう。こうして日本のエネルギー危機は、虎口を脱した。自民党ですら選挙意識で逃げまくった火中のクリを野田はあえて拾ったのだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年07月25日

◆森の狙いは谷垣再選と話し合い解散の連動

杉浦 正章

 

イチローの電撃移籍の解説には熱心だが、どの新聞も元首相・森喜朗の“電撃引退表明”を解説できていない。なぜこの時点で表明したかといえば、ある意味で森は身を挺(てい)して「話し合い解散」の流れを推し進めようと言うことだ。


自民党内で消費増税法案否決論が高まりつつある中で、森はこれに水を掛け、総裁・谷垣禎一の再選まで条件に出して、消費増税法案の3党合意路線を進めようとしているのだ。いわば“遺言効果”を狙ったものなのだ。この森の主張は、恐らく首相・野田佳彦の琴線にも響くものだろう。
 

自民党内には、野田の早期解散否定と反比例するかのように3党合意破棄論が台頭し始めている。とりまとめの当事者である元幹事長・伊吹文明が「野田さんが党内を甘やかし、つらい決断をした自公両党の迷惑に気付かないのなら、ドラマは参院で始まる」と“ちゃぶ台返し”の可能性に言及。


谷垣側近の元厚生労働相・川崎二郎も21日、津市での記者会見で「党内は、日に日に関連法案の成立前に不信任案を出しても構わないという議論になっている。必ず解散に追い込む」と述べた。加えて「9月30日投票で準備している」とまで言い切って、あくまで今国会解散に固執する構えを見せた。


谷垣支持派としては解散がないまま9月の代表選挙を迎えては、党内の谷垣批判が拡大して再選が不可能になるとの判断が背景にある。
 

こうした中での森の引退表明である。引退の弁を整理すると、まず「今のところ、どう見ても谷垣さんしかいない。(総裁就任から)3年我慢してやってきたし、 瑕疵 ( かし ) はない」と谷垣再選を明確に支持した。これは事実上の町村派オーナーである森が、同派で総裁選に手を挙げている元官房長官・町村信孝と元首相・安倍晋三を支持しないということであり、大変な決断だ。


さらに森は「消費税率引き上げ法案が成立したあと、民主、自民、公明の3党の党首会談を行い、次の衆議院選挙で第1党になった党にほかの党が協力するという約束をして解散すべきだ。今の日本の政治を変える方法はそれしかない」と話し合い解散を明言した。それも3党のうち、自民党が第一党になれば谷垣を首班に、民主党が第一党になれば野田を首班に据えるという選挙後まで見据えた話し合い解散である。
 

森はこれまで解散強硬路線一点張りの谷垣を批判し、面罵するケースすら見られたが、なぜここで再選支持に急転換したかということだ。森は20日に谷垣と食事を共にして会談している。恐らく森は谷垣が少なくとも消費増税法案は成立させる姿勢であることを確認したのであろう。


森はかねてから消費増税法案での3党合意路線を主張してきており、谷垣の合意への姿勢を評価したに違いない。しかし、最近の自民党は、明治維新で司馬遼太郎がよく書いたように「長州藩の浪人志士団の暴発」のごとく参院の前政審会長・山本一太らの“暴発”の可能性が生じている。消費増税法案の成否など無視して首相問責決議案を上程、可決してぎりぎりの状態に野田を追い詰め、解散を獲得しようという動きだ。


これは衆院側にも波及しており、さすがに対自民党協調路線の公明党代表・山口那津男までが「合意を覆すような動きは国民に対して十分な説得力を持たない」と不満を述べる状況に到っている。
 

森はこのままでは消費増税の千載一遇のチャンスを失いかねないと判断したに違いない。そのためには谷垣支持グループに安堵感を与える必要がある。つまり「谷垣再選」を支持するという、インパクトを与えて、3党合意路線に流れを戻そうとしているのだ。


この森の姿勢は、大局観に根ざしており、森にしては見事な対応の部類に入る。野田はこうした動きを多としなければなるまい。ここは3党党首が話し合って、野田はこの際解散を確約すべきだ。


それも早期解散ではなく、民主、自民両党の党首選挙を終えた後での解散、つまり臨時国会冒頭解散を確約すれば良いではないか。9月の党首選挙をクリアして、」野田代表」、「谷垣総裁」で総選挙に臨むのだ。野党は解散先送りは信用出来ないかも知れないが、いったん約束すればもう流れは止まらない。確実に臨時国会解散へと動くものなのだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年07月24日

◆野田政治とサイレントマジョリティ

杉浦 正章



世の中には道理の分かる人も分からない人もそれぞれ多い。古来「目明き千人盲千人」と言うが、目の見えない人が果たして判断能力に欠けているかというと、下手な「目明き」よりよほど確かである。


したがってこのことわざは「賢者千人盆暗(ぼんくら)千人」と言い直すべきであろう。その盆暗千人を象徴する前元首相二人から首相・野田佳彦が揺さぶられている。元首相・鳩山由紀夫は反原発デモに参加、野田を「シロアリ」と呼び捨てた。前首相・菅直人は野田を面と向かって「国民の怒りの対象になっている」と非難した。オーバーなマスコミ報道で野田は一見孤立風に見えるが孤立しているのだろうか。
 

いま首相が思っていても絶対に口に出してはならないならない言葉を先人が発している。60年安保反対のデモに直面した時の首相・岸信介の発言だ。それは「国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつも通りである。私には“声 なき声”が聞こえる」である。デモ隊を刺激して死者まで出した。結局岸は退陣に追い込まれた。


一方でその10年後の1969年に米大統領・ニクソンは、ベトナム戦争に反対する学生運動の盛り上がりに対して「サイレントマジョリティがいる」と発言。やはり問題になったが、今度は本当にサイレントマジョリティの存在が分かった。ニクソンは72年の大統領選挙で50州中49州を制して再選されたのだ。
 

岸の場合は厳しい冷戦構造の中で、ソ連、中国と通じた左翼勢力とのすさまじい戦いであり、明らかに安保改定は国家100年の計を見据えた見事な決断であった。野田の消費増税と原発再起動の決断は、左翼の思惑に一般国民の素朴な感情が加わって広がりを見せているが、これも10年後20年後には正しさが証明されるだろう。


「声なき声」は多数が、歴然と存在するのだ。米軍のオスプレイ配備も一過性の反対運動とみてよい。災害時に米軍がオスプレイで協力すれば一挙に国民感情は好転する。いまや災害救助隊そのものである自衛隊も災害対策に導入したらどうか。


昔、原子力空母寄港反対のデモが盛りあがったが、東日本大震災における米空母艦隊の「トモダチ作戦」で涙を流さんばかりに喜んだのは大多数の国民である。


安保条約は6条と交換公文で重要な装備の変更は事前協議の対象と定めている。だが両国政府はその範囲を核兵器の搬入に限定しており、米国は条約通りに日本防衛義務を果たそうとしているに過ぎない。マスコミの反対キャンペーンはそこに大きな見間違いがある。
 

そこで前元首相の発言に戻ると、あきれんばかりの大衆迎合である。まず菅だ。「『野田さん、あなたは国民の怒りの対象になっていますよ。分かっていますか』と言うと、野田さんは『え、そんなことになっているの』と言っていた」とのやりとりを明らかにした。

しかし、野田も菅にだけは言われたくない思いであろう。国民の怒りの“対象度”を独断ではかれば菅100に対して野田は0.5だ。事故調査の結果、原発事故も菅の初期対応の悪さが引き起こした部分が大きいことが証明されているではないか。


鳩山の「野田首相はミイラ取りがミイラになるように、シロアリ退治隊がシロアリになってしまった」発言も、これまた鳩山にだけは言われたくない発言だろう。雨合羽を着てデモに参加して元首相たるものが大衆にすり寄り迎合する。「みなさんの新しい民主主義を大事にしたい」と扇動する。馬鹿な発言を繰り返して民主党の土台を食い散らしたシロアリは自分であることに目覚めていない。
 

知識人もあきれんばかりだ。TBSの番組で政治学者の御厨貴が反原発デモを「かってのベ平連」と悪名高きベ平連運動にたとえて礼賛。エコノミストであるはずの浜矩子はまるで虎の皮のふんどしをしたカミナリのような表情で原発再起動を「血も凍る話し。刺客を差し向けたい」と物騒にも野田に刺客を出すと宣うた。あの顔から見ると本当にやりかねないから“怖い”のだ。原発停止でエコノミストたる者が国の経済の根幹を破壊しようというのか。もう何を言っても信用出来ない。
 

こうして「盆暗千人」たちは意気軒昂だが、親身になって野田の身を案じているのが消費税旗振り役の民主党税制調査会長・藤井裕久。23日野田に会って「あまり積極的にいろんなことを言うべきでない。九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)く。消費税一本に絞るべきだ」と“友情ある説得”をした。


確かに野田は最大の課題の消費増税法案に加えて、原発再起動、尖閣国有化、集団的自衛権、オスプレイと次々に重要な決断を続けざまに出している。いきおい多正面作戦となり、それだけ自民党などが突くすきを見せることになりかねないのも確かだ。しかし、方向性が正しい限りどんどん推進したらいい。


その方が政治の停滞を打ち破れる。歯にきぬを着せぬ元官房長官・野中広務が「こんな首相はちょっとおらんなあという気持ちで眺めてきた」とベタ褒めなのも珍しい。自民党の伊吹文明が「ドラマは参院で始まる」と不気味なご託宣をしているが、野田はもとより承知だろう。ここはひるむことはない。自信を持って物事を進めるべきだ。


俳句:かみなりのふんどしつけしじょけつかな


<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)