2012年07月12日

◆「落人新党」の展望なき船出

杉浦 正章



壇ノ浦の決戦は消費増税法案の衆院通過で勝負がついているのが「小沢新党」には理解できないのだ。今後は選挙区への「刺客」や他党による“落人狩り”が進む。今は遠巻きにしているが徐々に新党包囲の輪は狭まり、平家の頭領・小沢一郎は祖谷のかずら橋の先に落ち延びるしかないのだ。新党新党と騒がしいが、その実態はお先は真っ暗の展望なき船出なのだ。


頼みの綱は右往左往の公家集団を率いる鳩山由紀夫しかいない。本人は徹夜で考えた「自民党野田派」という“悪たれ口”で首相・野田佳彦をこき下ろすしかない。「おじゃる。おじゃる」がどこにおじゃるかだか、これも明日をも知れぬ身なのだ。
 

何を勘違いしているのか小沢チルドレンが世論調査の新党への期待が「15%もある」と喜んでいるそうだ。政党支持率で民主・自民に匹敵するのだそうだが、全く理解していない。


「新党に期待するか」と聞くから朝日で15%、NHKで14%なのであって期待しないは朝日78%、NHK82%だ。「どの党を支持するか」の政党支持率調査なら新党はコンマ以下で判別不能がいいところだろう。事ほどさように錯誤も錯誤、大時代錯誤なのが新党「国民の生活が第一」なのである。なぜ自分が権力闘争に敗れたのかすら分かっていないのだ。
 

党名が象徴するものは柳の下に泥鰌が2匹いるという誤判断でもある。09年の総選挙に掲げたキャッチフレーズをそのまま使った。しかし誰の目にもマニフェストの破たんは明確であり、野田が消費増税に踏み切らざるを得なかったのもそこにある。その破たんしたマニフェストにすがれば、小沢はもう一度風が吹くとでも思っているのだろうか。国民は「3年前にはだまされた。早く選挙にならないか」と思っているのだ。2度にわたって国民をだませると思っている政治感覚が疑われるのだ。
 

反消費税と脱原発、地域主権改革が旗印だが、まさにポピュリズムそのもので「風よ吹け」とばかりに、“第3極結集”の争点を投げかけたつもりなのだろう。小沢はマニフェスト至上主義だが、政権党にいる間、自らマニフェストを実行しようとしたとは寡聞にして聞かない。


逆に暫定税率廃止をひっくり返して、最初にマニフェストを破ったのは小沢自身ではないか。反消費増税も世論調査で反対が多いからの選択に過ぎない。次世代にツケを回さず、破たん直前の年金、医療を辛うじて支えるのに、他に方法があるのかは示したことがない。


脱原発の首相・菅直人への不信任案で自民党に同調しようとしたのは昨年夏のことではないか。今度は逆に脱原発を“活用”しようとしているのだ。まさに「政治家は次の世代を考え、政治屋は次の選挙を考える」を地で行くお方なのである。
 

地域主権も折から騒がれている地域政党ブームに秋波を送っている姿がありありだが、大年増どころか古希の婆さんの色目のようで背筋が寒くなる。石原慎太郎からは「死ぬほど嫌だ」と嫌われ、頼みの綱は大阪市長・橋下徹だ。


ところが大阪維新の会幹事長の松井一郎は11日、小沢との連携について、「我々の政策とは違う。その可能性はゼロ」ときっぱり絶縁宣言だ。反消費増税、反原発で「民主党政権には代わってもらう」と倒閣宣言をしていた橋下も「やっぱり野田さんはすごいですよ」と一転して野田をベタ褒め。田舎のあんちゃんのような節操の無さを露呈した。永田町では「小沢の秋波から逃げたい一心の発言」という見方が定着している。
 

こうして、小沢は新党結成史上でももっとも高揚感のない新党を発足させたことになる。武器は「野田内閣不信任案」を目指すくらいしかない。しかし、これにもジレンマがある。不信任案が成立すれば野田は当然総辞職でなく解散を選択する。解散となれば小沢新党の候補たちは“草刈り場”になってしまう。寄せ集めながら衆院での野党第2党を誇っていても、解散が早ければ早いほど、新党崩壊も早いということになるのだ。


だから小沢は11日も不信任決議案や問責決議案の提出について「参院議員の良識的な行動を望みたい。それがどうしてもかなわない状況になってから、いろいろなことは考えるべきだ」と煮え切らない発言にとどまっている。よくよく冷静になって考えてみれば不信任案は新党の自殺行為であることが分かってきたのだ。
 

「党を統治できないような状況で、国を統治できるのか」とこれまた徹夜で考えた“名言”で鳩山は不信任案賛成をほのめかす。全国民が鳩山の「統治」がなくなってほっとしていることも分かっていない。ひょっとしたら鳩山は“超然的な超大物”かもしれないと思えてきた。

確かに鳩山ら離党予備軍から15人が加われば不信任案上程が可能となる。野党の賛成で可決できても、自民・公明両党にはチャンス到来だが、「小沢新党」だけは展望は開けない。それどころかつぶれる。鳩山も今度こそ除名となるが、離党すれば選挙も落選だろう。


波乱要因となっても空しいことが遅ればせながら分かってこよう。いや、ルーピーでは最後まで分からないかもしれない。
★俳句 爽やかや稚(やや)の語ってゐるつもり


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年07月11日

◆野田は「尖閣国有化」を迷わず推進せよ

杉浦 正章


なりふり構わぬ直進型右翼政治家と思っていたら、都知事・石原慎太郎も79歳ともなると“老獪”型に変貌したようだ。尖閣列島の東京都による購入に拘泥して譲らない。そればかりか首相・野田佳彦を攻撃し始めた。浅薄にも「選挙対策だ」というのだ。

しかし、永田町には、尖閣購入を最大の旗印に新党を結成しようとしていたのは逆に石原だという見方が支配的だ。アイデアを横取りされかねないから怒っているというのだ。日中間に刺さった棘を、政界への己の見果てぬ夢のために利用しようとしている。そうだとすれば、これこそ国家を危機に陥れかねない野望ではないか。
 
ワシントンでの4月16日の講演で「尖閣は東京都が守る」と暴論を吐いて購入計画を明らかにした後石原は、帰国後に野田と会談している。この後石原は「尖閣問題は話に出なかった」と発言している。筆者は「うそを言うな」と思っていた。購入発言の直後に首相と会ってその話をしないはずはないと思ったからだ。

案の定、今になって「野田に会ったときにあなたに購入の意志があるのなら、2人で念書を交わして東京都が取得したらその後に国に渡す。それでいいじゃないかと言った。そうしたら野田は『はあ』とか言っていた」と重大な事実を明らかにしたのだ。
 
野田は石原の話があったからこそ、国が購入する計画を進め、6日に方針を伝達したのだ。国会で「尖閣諸島を平穏かつ安定的に維持管理するには、どうしたらいいかという観点のなかで、今、さまざまなレベルで、さまざまな接触をしている」とも述べた。

もともと国はかねてから地権者と接触を続けてきたが、埼玉の大地主だった地権者には、国に戦後農地改革で土地を接収されたわだかまりが潜在しているといわれる。よい返事を与えなかったのだ。石原の論理が矛盾しているのは、東京都が買った後国に譲渡するというのなら、なにも最初から国が買ってもおかしくないではないか。地権者が渋るのなら地権者を国に売るように説得すべきではないのか。
 
それが出来ない理由は何かといえば狙っている「石原新党」の結成と、寄付金13億円の処理だ。石原は当初亀井静香の口車に乗って3月にも新党を立ち上げる予定だったが、亀井やたちあがれ日本の平沼赳夫ではいかにもイメージが悪く、動くに動けない状況が続いている。

民主党筋によるとそこで考えたのが地権者との間で話が進行している尖閣購入問題の「石原新党」への活用だという。寄付金が何と13億円も集まる人気を目の当たりにして、尖閣を旗印に新党を立ち上げようと考えたのだ。その矢先の政権による朝日へのリークと、これに次ぐ野田発言であった。

虚を突かれた石原は激怒して口を極めて野田批判を展開した。石原は野田を「選挙を前にした人気稼ぎだ」と決めつけた。おそらく地権者周辺にも吹き込んだと見えて、周辺からは「選挙を前にしたパフォーマンスであり、消費税や原発再稼働をカムフラージュしようとしている」と、明らかに“玄人判断”の発言が飛び出している。
 
まさに、野田が意図したか、しないかは別にして、国による尖閣購入は、「石原新党」へのブレーキとなってしまったのだ。石原は飽くなき政界復帰への野望を捨てきれないまま、ふつふつとした思いにかられているのだ。おまけに国が購入するとなれば独走して集めた13億円もの寄付金の処置に困ることになりかねない。

石原は、もっと寄付金が集まるところを 国有化方針で寄付者がちゅうちょし始めると思っているに違いない。これも怒りを増幅させた原因であろう。国が購入すれば集めた金は宙に浮く。寄付者の目的通りに使われない場合には訴訟が起きかねない。
 
要するに1自治体のトップには、あってはならない国の外交・安保への“しゃしゃり出”が、自らを窮地に起きかねない事態を招いたのだ。もともと尖閣列島の主権は日本にあり、領土問題は存在していない。ことは単なる土地所有権の問題であり、所有権が個人であろうと国であろうと日本の領土であることに変わりはないし、実効支配も継続し続ける。

中国は最初は事の展開を理解できなかったといわれる。というのも中国はすべての土地が国有地であり、土地の売買など考えられないからだ。その中国をあえて意図的に刺激して、波乱材料として、原爆保有にもつながる極右の野望を達成しようというのが石原の意図なのだ。
 
野田はひるむことはない。そもそも領土の保全は国の主権の最たるものであり、1都知事の個人的な思惑で左右されるべきものでもない。このまま都の購入を認めれば、石原は諸島購入をいいことにして政府に対中強硬外交を進めさせるべく揺さぶりを掛けるだろう。

確実に日中間に危険材料を横たえることになる。国に譲渡すると言ってもそれまでに何をしでかすか分からないから問題ななのだ。現に腹心の副知事・猪瀬直樹は、国への譲渡について「リップサービス」とテレビに語っている。全く信用出来ないのだ。

野田の思惑には、石原に尖閣問題を委ねてはコントロールが効かなくなり、対中関係が一段と悪化する事への懸念がある。これは実にまっとうな外交・安保上の考察である。石原の個人的な主義主張や思惑に惑わされることなく、国による購入計画を推進すべきである。

一部国民は石原発言で対中弱腰外交への溜飲を下げるのもいいが、見当違いの石原の思惑にはまる寄付など思いとどまった方がよい。そんなカネがあったら社会福祉施設にでも寄付してはどうか。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年07月10日

◆解散で野田が投げた絶妙な一球

杉浦 正章

 

「淺読み」するか「深読み」するかだが、ここは深読みすべきところだろう。首相・野田佳彦が解散の条件に赤字国債発行のための特例公債法案の成立を挙げたことだ。単純な淺読みをすれば解散へのハードルを上げたことになるが、深読みすれば党内と野党に向けて絶妙な球を投げたことになる。逆に解散をほのめかしつつ、国会運営を図ろうという姿勢だ。


最近の野田の発言は考えに考え抜いたふしがあり、浅薄な読みでは「右だ」「左だ」と判断できない。自民党総裁・谷垣禎一の追及が手ぬるいとの見方も、電話会談での解散密約説と絡めてみれば、別の側面が浮いて出るのだ。
 

10日の予算委は事実上の党首討論の様相だった。谷垣は持ち前の紳士的な性格を前面に出して、絶叫調の追及をしなかった。野田に対して「消費増税法案の党内とりまとめに苦労に苦労を重ねた努力に敬意を表したい」と持ち上げた。それだけにとどまらず、このところにわかに好戦的に転じた鳩山由紀夫ら民主党内反対派の動向について「後ろから鉄砲を撃っている」とこき下ろした。


注目すべきは45分の持ち時間を15分も余らして質問を閉じた点だ。これらをとらえてマスコミは、朝日のように「谷垣氏しぼんだ追及」など“不発”ととらえている。しかし、センセーショナリズムが原点にあるマスコミの「期待」通りに物事が運んだら世話はない。
 

確かに一見手ぬるいように見えるが、谷垣は「首相が十分な覚悟を持って臨む決意がなければ、わが党は参院に重大な決意をもって臨む」と、参院への問責決議上程を示唆するなど、勘所は押さえている。


要するに「“対話”を成立させた上での追及」に手法を変化させたのだ。これが意味するところはいずれも「話し合い解散」に言及した2月の極秘会談、6月の電話極秘会談と続く接触を通じて、野田と谷垣の間には一種の信頼関係のようなものが醸成されていることになる。それが野党特有の金切り声を上げた追及に谷垣を至らしめなかったのだ。だから浅薄に見ると産経のように「度を越した“相思相愛” 早期解散片思い」という表現になる。
 

一方で野田は、谷垣の解散要求に対して「消費増税法案も大切だが、それ以外にも特例公債法案がある。やらねばならぬことをやり抜いた上で解散ということは、一つのテーマだけで申し上げているわけではない」と、これまでの表現を変えた。消費増税法案の成立にめどが立つ前は、あきらかに同法案だけを念頭に置いて「やり抜くことをやり抜いて信を問う」であった。それに特例公債法案を加えたのだ。これが意味するものは何か。二通りの考え方がある。


一つは野田が解散先延ばしに出たという見方だ。党内は、野田への怒りが怨念に変わった鳩山が9日、小沢一郎と会談するなど緊迫の度合いを深めている。幹事長・輿石東は鳩山の6か月の党員資格停止処分を半分の3か月に値切るという醜態をさらす事態に追い込まれている。


あと15人が離党すれば民主党は過半数割れとなり政局は明日をも知れぬ状態となる。したがって、党内を懐柔するために野田は、「早期解散」への党内のいら立ちを沈静化させなければならないのだ。
 

一方で、それでは野党が納まらない。自民党は明らかに消費増税法案成立後は解散・総選挙目指してまっしぐらの路線だ。野田は玄人が分かる方向で球を投げる必要に迫られたのだ。それが「特例法案やり抜き」発言なのだ。野田の発言は、漠然としていた解散の条件を特例法案一本に絞ったものと解釈できるのだ。


谷垣にしてみればもともと特例法案を人質にとって解散に追い込もうとしているのだから、その人質を“解放”すれば解散を勝ち取れるという選択肢が出たことになる。したがって野田の発言はハードルを上げたのでも下げたのでもない。与党内と野党をにらんで絶妙な投球をしたことになるのだ。解散だけが野田のリーダーシップを維持できる伝家の宝刀であり、野田はそれをフル活用し始めたのだ。
 

野田は谷垣には消費増税法案の衆院通過を図るに当たって、電話会談で解散をほのめかしたといわれており、これが話し合い解散密約説となっている。谷垣が質問のトーンをあえて下げたことを斟酌(しんしゃく)すれば、電話密約の存在がいよいよ浮かび上がることになる。


いずれにせよ、野田はこの危機的政局を乗り切るためには解散カードをちらつかせたり、引っ込めたりするしかない。小沢・鳩山一派の揺さぶりと、野党の解散追い込み作戦が“佳境”に到達する8月中旬の修羅場を考えれば、今から「解散が遠のく」だの「解散断念」だのといった浅薄な判断を下せる状況にはない。「解散様」はゆめゆめおろそかに扱ってはいけないのだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
 

2012年07月09日

◆8月政局で確実に追い込まれる構図

杉浦 正章
 

「幹事長がぺらぺらしゃべったら相手に手の内を知らせてしまう」と自民党幹事長・石原伸晃がテレビでしゃべっていたが、何もぺらぺらしゃべったのを聞かなくても、分かる人には十分に分かってしまうのだ。石原や副総裁・大島理森の8日のテレビでの発言を分析すれば、自民党の「8月政局」への戦略はおおむね見えてくる。


自民党が消費増税法案成立後に戦略を対決姿勢に切り替えることは確定的だ。法案自体はよほどのことがない限り8月上旬には成立する。その後は、解散・総選挙を目がけて一直線の路線だ。首相・野田佳彦を「解散か総辞職か」とぎりぎりのところに追い詰める。もちろん赤字国債発行の特例公債法案は人質だ。
 

まず社会保障と税の一体改革関連法案の参院審議の動向だが、11日に本会議で趣旨説明と質疑が行われ、18日から特別委員会での審議に入る。審議時間は90時間を見込んでおり、8月上旬には成立へとこぎ着けるだろう。


自民党はここまではマスコミに褒められた3党協力をほごにして、袋叩きに遭うような対応は取るまい。むしろ消費税は次を狙って内心は審議促進を図りたいくらいだろう。法案成立は解散への「外堀」を埋めることになるからだ。
 

そこでいかにして内堀を埋めるかだが、ここは徳川家康のようにあらゆる手段を講じて“いちゃもん”をつけるのだ。もうつけ始めているが,そのポイントは党内に「鳩山由紀夫ら反対議員34人を抱えているのは三党合意違反」(大島)というものだ。


大島は「非常に政治論として大事だ」と主張するが、まるで方広寺の鐘の「国家安康」の銘文に家康が難癖をつけたのと変わらない。執行部以下大半の議員が賛成に票を投じたことなど眼中にない。まずこれで政権を揺さぶる。9日の谷垣の衆議院予算委員会での質問も、野田が、鳩山由紀夫らの動きにどのように対処するのかに焦点を絞る。
 

次いで、消費増税法案の成立に協力しながら「解散せよ」という“大矛盾”をどう“こじつける”かだ。この点石原は「野田さんは約束してこなかった消費税をやり、約束したマニフェストをやらないのだから国民に信を問う必要がある」と“理論武装”している。

しかし、消費税をやらせておいて、成立すると「成立したから解散せよ」では、まさに“いちゃもん”だ。小沢一郎ですら8日のNHKで「与野党で談合しておきながら不信任案提出では国民には理解できない」と述べるほどのものなのだ。だが、古来敵陣を攻めるのに理屈はいらない。何でもきっかけに出来るのだ。
 

そこで具体的な戦術を自民党がどう取るかだ。大島は司会者に「会期末に不信任案か」と問われて、思わず本音を漏らした。「そんなに遅く重要なことを決断するのはツーレートだ」と口走ったのだ。語るに落ちたことになる。つまり9月8日の会期末に不信任では段取りがつかないのだ。


いくら野党でも自民党は赤字国債法案が成立しなければ10月に国家財政がパンクすることは見通している。それから逆算すれば9月上・中旬には総選挙を終えて、新政権の手で臨時国会を開いて成立を図らなければならないと思っているに違いない。石原は、「首相には混乱を短くするため1か月で選挙を終えるから解散した方がいいと言う」とちゃんと“手の内”をしゃべっているのだ。
 

それには8月解散しかなのだ。いかに野田を8月解散へと追い込むかだが、アメとムチ戦術で臨むのだろう。アメは「赤字国債法案を通すが話し合い解散せよ」をというやりかただ。ムチは衆院に内閣不信任案か、参院に問責決議案を上程する。


今のところは否定しているが、小沢が“小政党”と一緒になって提出する可能性がある。これについて大島は「不信任案という大問題は小沢さんが出したからはいそうしますと言うことにはならない。そのような状況となれば私どもが考えなければならない」と述べている。小沢の“悪印象”に乗っては損するから、自分が出すという考え方だ。
 

不信任案が提出されればどうなるかだが、民主党は依然過半数を持っており、それを8月まで維持できて、団結すれば否決が可能だ。とりわけ消費増税法案に反対した議員らは選挙基盤が弱く、解散を先延ばしにしたいと考えており、「否決」では一致する可能性がある。すぐに通るかどうかは微妙であり簡単ではないのだ。否決されてしまえば一事不再議で自民党の戦略は挫折しかねない。もっとも鳩山一派などが、賛成をしなくても欠席すれば成立は可能となる。また読み切れないのだ。
 

それでは問責決議案はどうなるかというと、これは可決可能だが、法的な拘束力はない。野田は可決されても解散も総辞職もする必要がない。その場合について石原は、「問責が通ることになれば国会は動かなくなる。野田さんはいずれにしてもレームダックになって解散か総辞職しかなくなる」と予測している。たしかに首相問責決議が成立すれば、参院は動きを止める。野党は間違いなく衆院も連動させて止める。国会は空転する。


混乱を見かねてマスコミは、「もはや前の総選挙から3年を過ぎようとしている解散・総選挙で国民に信を問えと」いう論調に転ずるだろう。野田は確実に追い込まれるのだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
 

2012年07月06日

◆川柳で斜めに詠めば見えてくる

杉浦 正章

 

<脱藩の度に家来の質が落ち>ー最近の政治を風刺した読売時事川柳の秀逸句だ。ついに離党して新党を旗揚げすることになったが、小沢一郎の心中もおだやかではあるまい。


家老とも言える代表代行には“疑惑山積”で国家公安委員長を棒に振った山岡賢次。幹事長には目立つのはひげだけの東祥三ではいかんともしがたい。まるで箱根の山中に巣くう山賊一家のような面々だ。チルドレンらは「ついてく」「ついてかない」で右往左往。新党の七割が落選必至のチルドレンでは、正直言って小沢も朝日川柳の<新党首子ども手当が欲しくなり>と言いたくなるだろう。
 

もっともこの川柳は意味深だ。というのも<うるさくて電池抜かれた鳩時計>なのに、<またしても庶民に遠い母の愛>なのだ。鳩山兄弟に母親からの生前贈与が約41億円ずつとは恐れ入る。贈与税で半分持って行かれるが、それでも20億円の臨時収入とは近ごろケタ外れだ。おぼっちゃまだからだまされて<母の愛あらぬところの軍資金>となってもおかしくはあるまい。


母の慈愛の“子ども手当”が、“悪い友達”に皆持って行かれませんようにと国民はみんな祈っているのだ。半年間の党員資格停止処分を食らったことをこれ幸いに、ぽっぽさんは<鳩山ファイナンス半年休業>の張り紙をして、どこかに雲隠れしてくれた方が政界もシロアリがたからなくていい。
 

しかしご本人は<叱られた意味も分からぬ元総理>で「何でわたしだけが6か月」と憤まんやるかたない。野田佳彦から「出て行ってくれて結構」と言われているのが分からない。反対したが離党しない残留組が集まってなにやらすごみ始めた。「不信任案に賛成するぞ〜〜」だそうだ。


離党が怖くて欠席だの一部賛成だのにとどまった連中が、“脅し”をかけようとしているのだから始末に負えない。これを負け犬の遠吠えという。すごみなどかけらもないのだ。同じ政党に属しながら不信任案賛成をあらかじめ公言するなら、離党してから行動を起こすのが憲政の常道であることが分かっていない。


もっとも小沢が離党となると、音より早く急旋回して野田べったりとなった輿石東がまたまた反対組に“揉み手”をしだした。党員資格停止を決めた直後の党役員会で輿石は、「処分期間中であれば、公認候補にはならない」と「鳩山切り」を宣言したものだが、5日になって「公認にならないことはあり得ない」のだそうだ。一党の責任者が180度反対のことを言ってはいけない。
 

輿石の小沢グループへの気の使い方は並大抵ではない。小沢は<国民と言うほど国民遠ざかり>とも知らずに、新会派の名称を「国民の生活が第一」とした。これを、おもんばかって輿石は記者会見場の「国民の生活が第一」という民主党の政策スローガンが印刷されているボードを反転させて党旗に張り替えさせたのだ。


そもそも民主党のスローガンを、小沢が“盗用”したのであって、本家本元が姑息(こそく)にも気を遣うことでもあるまい。本末転倒とはこのことだ。どうも小沢の“執事”の癖が抜けないのだ。
 

自民党は麻生太郎が「国民の生活が第一という新会派だそうだが、『選挙が第一』という名の方がいい」と皮肉れば、古賀誠が「小沢氏グループの生活が第一」とぼろくそだ。まさに<国民とすり寄られても気味悪い>だ。


小沢のプロパガンダは「大増税だけが先行することは国民の皆様への背信行為。我々の主張は大義であり正義であると確信する」の繰り返しだ。これに頂門の一針の川柳がある。朝日の<正義とか大義とか言う顔を見る>だ。


実際「言ってる政治家の顔が見たい」というところだが、本人は近ごろ意識してテレビに顔を出す。そのうちに<正義づら大義づらなど見たくない>となる。国民は<正論を解体工事のたびに聞き>であり、聞かされる方の身になってもらいたい。まったく<壊して作る目指すはギネス>と言いたくなるのも分かる。


<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年07月05日

◆小沢が「同病・同憂」集めに狂奔

杉浦 正章



春秋時代の呉・越両国の興亡を記した「呉越春秋」に「同病相憐れみ、同憂相救う」とある。「驚翔(きょうしょう)する鳥は、相したがいて集い、瀬の下の水は、よりてまたともに流る」と続く。11日に新党を発足させる小沢一郎は、いまその「同病」集めに必死だ。何でも一致する部分があると見れば「仲良くしよう」とばかりに接近する。

しかし、その共通項は「座して死を待つ」「何でも反対」「怨念」だ。そこに「新党」という響きの持つ期待感はなく、政党支持率を世論調査すれば、よくて1〜2%、恐らくコンマ以下だろう。
 

小沢は4日、「新党」を11日に結成することを決めた。これに先立ち新会派を両院に届け出た。衆院で37人の「国民の生活が第一・無所属の 歩 ( あゆみ ) 」、参院では12人の新会派「国民の生活が第一」だ。同じメンバーで49人の新党となる予定だが、怖じ気づいているチルドレンもいて、まだ数は流動的だ。


新会派は衆院では公明党を抜き第3会派となり、参院では第4会派だ。いずれにしても、この数では、衆院で内閣不信任案の提出に必要な51人には遠く及ばず、さすがの「政局の権化」小沢も身動きがとれない。「数は力」をひたすら信奉する小沢としては、寄せ集めと言われようが、かき集めと言われようがとにかく数を集める必要に駆られているのだ。
 

そこでまず小沢が最初に対象としたのが「座して死を待つ」グループの“共闘”だ。先行して民主党を離党した新党きずな9人が対象だ。統一会派を作ることになる。きずなは小沢勉強会に出席するなど所属議員の多くが小沢に近く、もともと「小沢別動隊」みられている。


だから野党扱いしてもらえず、マスコミもNHKが日曜討論から外している。代表・内山晃は「我々は与党と野党の間の“ゆ党”」とぼやいているが、いったん総選挙となれば、小沢一派と同様に返り咲く議員はほとんどいない。
 

それでも不信任案上程には足りずに、小沢は「何でも反対」の社民党にすり寄った。 議会勢力としては、社会党の系統を受け継ぎ、今は全くはやらない極左路線の政党とも手を組もうというわけだ。共闘を組めれば6人“仲間”が増えることになり、ようやく不信任案が上程可能となる。


社民党も小沢路線の「反消費増税・反原発」と軌を一にしており、党首・福島瑞穂も、小沢が内閣不信任案を提出した場合について「反対する理由はない」と述べている。小沢も福島も互いに「魔女」とでも「悪魔」とでも手を組もうという姿勢だ。小沢は4日社民党副党首の又市征治と会談、反消費税と反原発での協力関係を要請している。
 

さらに小沢が1番力を入れそうなのが消費増税法案に反対しながら民主党にとどまった残留組との「怨念同盟」だ。1人だけ党員資格停止6か月を食らって、鳩山由紀夫の野田に対する怨念は日日募るばかりだ。

4日も残留組が衆院議員21人で、政策研究会を立ち上げた。メンバーには小沢鋭仁のように民放番組で「内閣不信任決議案が出て、我々が賛成すれば必ず通る。それだけの人数がいる」と息巻く向きもいる。同日の会合でも不信任案を野党が出した場合の対応についても話題になった。


いわば研究会は「小沢別働隊」になり得るものだ。鳩山も「原発再稼働反対、環太平洋経済連携協定(TPP)反対、反消費税などで小沢さんとは極めて近いし、協力関係もあり得る」と述べている。今後小沢は陰に陽に鳩山の怨念と残留組を“活用”して、政権を内部から揺さぶるよう仕掛けることは間違いない。
 

小沢は4日の新党結成に向けての準備会合であいさつ「皆さんと共に、3年前の国民との約束を何としても貫き、近く行われる衆議院の解散・総選挙で、国民の支持を得て、本来、われわれが目指した政権を作り上げるために一生懸命頑張っていきたい」と“懲りない男”ぶりを示した、しかし、離党に追い詰められて関ヶ原での敗退は誰の目にもあきらかだ。


落ち武者ばかりをかき集めても、手負いの小沢には展望は開けないし、前途には奈落が口を開けて待っている。空しい不毛の戦いを続けざるを得ないのは小沢という政治家の持つ業でもあろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
 

2012年07月04日

◆鳩山“重罪”の意味するもの

杉浦 正章

 

この人は政治家の発言と行動の重みを全く理解していないのだろうと思う。元首相・鳩山由紀夫は、自らの言動が消費増税法案への造反の数を合計73人まで広げたことが分かっていない。


首相・野田佳彦が鳩山1人だけを「党員資格停止6か月」の“重罪”にしたのは、「離党」を公言して反対した民主党元代表・小沢一郎よりも、鳩山の罪が“万死に値する”と判断したからに他ならない。鳩山は「何でわたしだけが」と自分が切られた理由が分からないほどルーピーなのだ。
 

造反議員への処分は野田と幹事長・輿石東に一任されて断行されたが、圧倒的に野田ペースで事は運んだようだ。元代表ら37人を除名としたのは、消費増税法案への反対投票をした上に、離党届を出して新党結成を目指している「反党行動」を重く見た結果だ。


これは「新党きずな」の前例から見ても当然のことだろう。最も注目すべきは離党届を出さなかった衆院議員19人のうち、鳩山だけを「党員資格停止6カ月」とし、残りの18人は党員資格停止2カ月と差をつけた点だ。一方、野田は参院の離党組12人については処分せず、離党を認めた。これだけは参院を刺激してはまずいという輿石の進言を入れている。
 

鳩山は3日「甘んじて受ける」と公言しながらも、夜の会合では「差別だ」と息巻いたと言われるが、言うまでもなくこれは差別である。党員資格停止6か月と2か月はその差が余りにも大きい。


つまり6か月では9月の代表選での出馬はおろか投票権すらない。加えて早期解散・総選挙となれば公認も受けられないからだ。鳩山はこの野田の怒りの真意が分かっていない。首相官邸筋によると、「首相は小沢さんよりも鳩山さんに対して怒っていた」という。その理由は小沢が離党を公言して反対投票を投ずる“確信犯”なのに対して、鳩山は野田にとって“扇動者”と映ったからだ。


つまり、「離党はしないが反対投票の行動に出る」といえば,「小沢にはついて行けないが反対はしたい」という議員らの“模範”になるからだ。処分も軽いという判断を広げてしまったのだ。おまけに鳩山は、増税法案には反対したものの、他の関連法案には賛成するという“奇策”を弄した。


これも厳しい処分を回避したいという議員らをあおる結果を招いたのだ。この結果、小沢一派だけの反対に封じ込めようとしていた、野田らの思惑とは別に合計73人の造反者を出す結果となったのだ。
 

鳩山は「差別」されて当然なのだ。むしろ年内の解散なら公認はされないから、野田の処分は「出て行け」と言っているに等しい。通常の感覚があれば鳩山は当然「出て行く」と言ってもおかしくないが、そこが宇宙人であり、ルーピーであるゆえんだ。最後まで切られたことの意味が分からないのである。


この鳩山を陥れようと虎視眈々(たんたん)と狙っているのが自民党だ。民主党の象徴である「鳩山落選」を目指して刺客を立てるのだ。衆院北海道9区にはとびきり上等の「タマ」を用意している。リレハンメル五輪の男子スピードスケート銅メダリストで道議会議員の堀井学だ。


選挙区では鳩山がもともと落下傘候補であるうえに、「男は恥を知るものだ」と面罵した元官房長官・野中広務のみならず全国民的な侮べつの対象となっていることから、人気が急落している。「元首相落選!」といった事態も十分考えられるのだ。
 

こうして野田は「小沢切り」のついでに「鳩山切り」も成し遂げた。昔田中角栄は沖縄選挙で自民党が300議席を超えたときに「300では多すぎる。党内がまとまらん」とかえって危惧(きぐ)したものだ。


小沢一派の離党が37人にとどまり、民主党が252議席と過半数を確保できたことは、野田にとっては不幸中の幸いだ。活用すれば望外の利を得る見込みのある機会を「奇貨」というが、さすがに野田は言葉の使い方がうまい。「このピンチを奇貨とし、決めることは決める責任政党として今まで以上に一致結束していきたい」と発言した。


前途は多難であるが、思い切った処分は、全党的にかえって締まる要素の方が大きい。真の意味での政党政治“復活”の機運として活用すべきことなのだ。
★俳写:ふくろうのよいやみつれてまいおりる


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年07月03日

◆小沢離党は民主政権崩壊の予兆

杉浦 正章

 

浪曲子守歌ではないが「逃げた女房に未練はないが、お乳ほしがるこの子がかわい」だ。チルドレンを抱えて小沢一郎は国定忠治のように“風雪流れ旅”に出るのだ。ただ、小沢の離党は次に民主党政権に起きる“大雪崩”の予兆に過ぎない。当面は民・自・公協調路線で推移するが、延長国会終盤は解散をめぐって与野党激突が予想される。


早晩首相・野田佳彦が追い込まれるであろう解散・総選挙では民主党激減必至の流れであり、政権の前途は暗いのだ。選挙後の大連立は考えにくく、自民・公明両党を軸に、場合によっては小党が加わる新政権となる可能性が高いだろう。
 

小沢の離党を端的に言えば、要するにうそで塗り固めて取った政権のツケが民主党に回ってきたことになる。しかし、小沢の離党はその利子を払っただけであり、“元金”はこれから支払わなければなるまい。野田にはそれが求められることになる。


小沢は衆院38人では単独での不信任案提出には遙かに及ばず、「よしっ!」の小沢は、筆者の予言が的中し「ヤバッ!」の小沢となった。参院12人はよく集めた方で、問責決議を上程出来るが、大政党が小沢のリードには応じず、みんなの党の問責決議と同様にたなざらしになるだけだろう。要するに、小沢の狙った政局の主導権確保とはほど遠い結果となった。
 

「反消費税と反原発」の旗印で小沢の意図するように選挙に勝てるかだが、とても無理だ。なぜなら世論調査では、国民の8割が「小沢新党」に「ノー」であり、何を掲げても信用されないからだ。総選挙になった場合38人のうち何人が戻れるかだが、まず比例区13人は総崩れだろう。


選挙区25人も、各党の草刈り場となって、消滅に近い。戻れる数は恐らく二ケタには乗るまい。まさに身から出たサビであり、いくらもがいても古希になった小沢が再び政界に大きな影響力を持つ可能性は少ない。


小沢はイタリアの政党の例まで引き合いに出して「オリーブの木みたいな形でやる」と述べている。1996年にイタリアのプローディ政権を誕生させた中道左翼連合の踏襲だ。「悪天候にも強く、たくさん実をつける」ことにちなむが、既に民主党代表の菅直人が98年の参院選でアイデアを“使用済み”であり、賞味期限切れで何の新鮮味もない。


石原慎太郎は「死んでも嫌だ」だし、利口な橋下徹が沈む泥船に乗ることもあるまい。どんなキャッチフレーズを唱えても、土井たか子ではないが「駄目なものは駄目」なのだ。だいいち「シロアリ大王」が巣くうようではオリーブもすぐに枯れる。
 

一方で、野田は数を失ったが、政治的には失ったものばかりではない。小沢の離党は、民主党政権に付着していた滓(おり)を洗い落としたことになるからだ。最後に残った「悪い意味での自民党的な体質」を除去できたとも言える。「小沢切り」は、消費税で3党合意にこぎ着けた野田への信頼度を高めたことになる。少なくとも社会保障と税の一体改革関連法案の成立だけは確実になったと言えよう。


「小沢イズム」がどれだけ民主党政権にとってマイナスであったかは計り知れないものがある。マニフェスト至上主義であり、破たんしたにもかかわらず詭弁によってそれを守り抜けられると考える勢力が去った。民主党が新たな公約を作る絶好のチャンスが訪れたのだ。この際党の綱領も作るべきだろう。
 

さらに、「ダーティー小沢」がいなくなれば、党全体のクリーンイメージを回復出来る。これは来たる選挙戦には有利に働く。野田は「小沢切り」を際立たせれば際立たせるほど、有利なのだ。したがって離党者の除籍処分などは言うに及ばず、小沢新党には刺客を立てて戦う必要があるだろう。幹事長・輿石東は渋るだろうが、ここは争点を鮮明にすべき時なのだ。
 

要するに総選挙となった場合は小沢がいた場合といない場合の、民主党の目減りには雲泥の差が生じるといってよい。しかし冒頭述べたようにそれでも民主党が破れるのはなぜか。それは増税を実行した政権であるからに他ならない。古来増税に賛成する民衆は存在しないのである。


加えて民主党政権、とりわけ鳩山由紀夫と菅直人の繰り返した失政が、有権者の脳裏から離れず、投票行動となって現れることになるだろう。野田は崩壊する堤防の穴に手を突っ込んで食い止めているにすぎない。 
俳句:ばらきればばらのおもたきたなごころ


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
 

2012年07月02日

◆永田町に「赤字国債」人質の解散説

杉浦 正章

 

民主党元代表・小沢一郎の離党で民主党政権は“おんぶお化け”がようやく外れる。一方新党に走る小沢の将来展望はない。お先真っ暗とはこのことだ。こうして政権政党の内部抗争は一段落する方向となった。首相・野田佳彦は当分「脱小沢・自公依存」の流れに乗らざるを得ないだろう。よほどのことがない限り消費増税法案も成立する。


そこで台頭してきたのが「8月解散・9月選挙」説だ。ここに向けての自民党の必死の追い込みが始まる。永田町では野田が「話し合い解散」に応じなければ、自民党が赤字国債発行のための特例公債法案と絡めて、内閣不信任案を上程して、無理矢理解散・総選挙に持ち込むとの説が流れ始めた。
 


君子豹変と言うが、君子でなくとも豹変することが分かった。幹事長・輿石東のNHKにおける1日の発言は大豹変もいいところだ。まず、これまで小沢の意向を忖度(そんたく)して消費増税法案の“継続審議”を図ろうとしていた方針を転換「1日も早く成立に全力を挙げるのがわたし自身の責任」だそうだ。


これまで「衆参同日選挙」を主張してきたことは、とんと忘れたかのように「大震災、消費増税法案、原発再稼働の3つの山を越えて、時期は国民の皆さんがどう考えるかだ」と“解散あり得る”に変わったのだ。これは、明らかに小沢を見事なまでに見限って、野田にピタリと寄り添い始めたように見える。こうして小沢は最後のつっかい棒が外れたことになる。もう「新党」しか道は残っていまい。
 


「小沢新党」に集まる衆院議員の数はせいぜい40人程度とみられている。参院は10人余りだ。この結果衆院では新党きずなの9人と合わせても内閣不信任案を提出できる51人には達さない可能性がある。そうなれば小沢の最後の手段である不信任案での“政局引っかき回し”もできにくいことになる。小沢は世論調査でも8割が支持しない「新党」で、総選挙大敗による「政治的な討ち死に」を待つばかりとなる。


こうして野田は小沢とのデスマッチに勝利を収めたことになるが、一難去ればまた一難というのが実態だ。今度の一難は負けるかも知れない一難であり、小沢問題ほど生やさしくはない。
 


というのも早期解散による政権喪失が前途に口を広げているのだ。党内抗争などとは比較にならぬ厳しさだ。解散・総選挙問題は消費税の与野党協議をまとめるに当たり、野田が電話で自民党総裁・谷垣禎一に協議成立との引き替えで「話し合い解散」をほのめかしたという説がある。


しかし、谷垣の姿勢は、例え密約があったとしても、ゼロから追い込まなければ解散は達成できないという判断であるように見える。1日のNHKでも「特例公債法案解散」に意欲的とも見える姿勢を見せた。明らかに理論武装して準備している発言である。まず谷垣は「自民党提出の予算組み替え動議は一顧だにされなかった。使い道を一顧だにせずに、収入の方は賛成せよと言っても難しい」と同法案に反対する姿勢を明らかにした。


その上で谷垣は「特例公債法案は予算の裏打ちであり、これに内閣の威信と責任をかけるという態勢を民主党が取ってこなかったところに根本的な問題がある。その扱いをめぐっていろいろなことが起きてくる可能性がある」と述べたのだ。
 

「いろいろなこと」とは何かと言えば、この場合内閣不信任案しかないだろう。この点、自民党前政調会長・石破茂はもっと明快だ。「内閣不信任案は提出する」と1日のTBSで断言したのだ。石破の不信任案上程の根拠はマニフェストは破たんしたうえに、マニフェストにない消費増税法案を成立させたのだから国民の信問うのは当然だというものであり、確かにもっともな内容である。


その論理的な支柱の上に立ってどう動くかと言えば、「特例公債法案」の“人質化”であろう。予算は通ったが、特例公債法案が通らなければ財政上の裏打ちが出来ない。野田に解散かどうかを迫るには十分な武器となる。


参院審議を展望すれば、まず消費税法案は順調に成立への運びとなりそうである。また選挙制度改革法案も与野党が一致を見ることが困難な定員大幅削減の部分を残して、違憲状態解消の「0増5減」だけを実現させる流れだろう。そこで残った赤字国債法案が、自民党にとって解散・総選挙への最後に切り札となる可能性が大きいのだ。
 


その場合8月上旬、遅くとも中旬までには消費増税法案が成立するだろうから、その直後に赤字国債法案をめぐって、食うか食われるかの攻防段階に突入することになろう。「話し会い解散」に野田が応じなければ、内閣不信任案の上程、もしくは参院での問責決議案の可決など大波が待ち構えている。


小沢の虎口を脱した野田は、オオカミの群れに取り囲まれる形となるだろう


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年06月29日

◆野田の勝ちだ、きっぱりと小沢を切れ

杉浦 正章


この勝負は首相・野田佳彦が勝った。なぜなら民主党元代表・小沢一郎の離党者は数が増えず、野田政権を「少数与党」に追い込む手立てはなくなったからだ。もう野田は小沢とはきっぱりと袂を分かち、自民、公明両党との部分連合を推進するしか道はない。その道の先には解散・総選挙が待っているが、「小沢切り」が助け船となる。


なぜなら民主党政権支持率減少の99%を担っていた“元凶”小沢を取り除いたうえで、総選挙に臨めるからだ。消費増税法案を片づけ、小沢も片づけた野田のイメージはすっきりして、支持率も好転しよう。
 

政局は透徹した目で見なければならない。最初から指摘しているように小沢の動きに目くらませを受けてはならないのだ。28日も小沢がちょろちょろと出張って輿石と2度も会談、最後には「民主党の枠を越えて国民との約束を実行すべきとの思いを直接国民に訴えねばならない」と離党して選挙で勝負する構えを見せた。


しかし、この場面に到っては迫力はない。「どうぞどうぞ離党してください」と言っても大丈夫な状況になってきた。なぜなら26日の反対投票直後には43人が集まった離党志向の衆院議員らが、28日は35人しか集まらなかった。


どうあがいても離党の衆院議員は40人規模がいいところだ。54人の離党で民主党政権を少数与党に追い込むという「切り札」は、たとえ「離党しない」と言っているルーピー鳩山由紀夫がまたまた転んでも足りないし、方向転換は出来そうもないのだ。小沢戦略は崩れたのが現実だ。
 

加えて「直接国民に訴える」と小沢が言っても、国民はそっぽを向くだろう。朝日、共同に続いて読売の世論調査でも、小沢新党に期待しない人は、民主支持層で82%、自民支持層と無党派層では各78%に上った。国民はもう小沢の口癖である「国民の生活が第一」などは信用しない。家庭の主婦でも最近はテレビの耳学問が発達していて「何言ってんのよ。自分の選挙が第一のくせに」といった反応を示す。


つまり「ともかく増税に反対すれば選挙で有利になる」という小沢の判断は、国民が読み切っていて、甘いのだ。菅直人が政治家になって初めていいことを言っている。ブログでチルドレンに「小沢グループと呼ばれている皆さん、小沢氏の個利個略のために、駒として利用されることがないように、目を覚ましてほしい」と訴えているのだ。
 

加えて国会審議をめぐる環境も好転し始めた。昨日は自民党が小沢の造反を「3党合意への造反だ」と難癖をつけていることに対して、筆者は「自民党よ、おごるな」と筆誅を加えたが、急旋回した。自民党の参院国対委員長・脇雅史は「民主党の造反者への処分を待っていては参院の審議は進まない。逆に審議しない口実に使われる可能性すらある」として、処分に左右されずに審議入りをする方針を明らかにした。


自民党総裁・谷垣禎一も同様の方針を述べた。それはそうだろう。よく考えてみれば自民党にとって「話し合い解散」を勝ち取るためには、消費増税法案の審議を促進させて早期に成立を図る必要があるのだ。遅らせば遅らせるほど、あわよくば継続審議を狙う幹事長・輿石東が喜ぶだけだ。野田にとっては、「解散のツケ」が後からどっと押し寄せることになるが、背に腹は代えられない。当面をしのぐには何よりの“援軍”なのだ。
 

こうして対小沢戦に野田は勝ったと言える状況となった。野田にとって今やるべきことは、小沢の説得などはあきらめて、毅然とした態度を小沢に対して示すことだ。切るなら、ヘビの生殺しではなく、きっぱりと切ることだ。政治的には絶好のチャンスとなるからだ。


なぜなら、幸いにも世論の判断は、虚偽のマニフェストの元凶は小沢であり、「皆小沢が皆やった」ということになってきているからだ。たしかに小沢が「あれも入れちゃえ、これも入れちゃえ」と票になりそうな話しばかりを盛り込み、しまいには「政権を取れば16・8兆円くらいどうにでもなる」と宣うたのだから、ここは全部小沢のせいにしてしまうことが可能だ。


さらに言えば、最近にない巨額の政治資金をめぐる疑惑を小沢1人が抱えてくれていることも重要だ。刑事被告人の小沢が党内でのさばり、1人で民主党のイメージを落とし続けて来たのだ。この小沢を切れば、野田の真摯でクリーンな立ち姿とも相まって、党のイメージは好転する。場合によっては民主党が率先して小沢の証人喚問を実現することが正しい。与野党一致で証人喚問の構図が出来るのだ。


小沢が消費税を選挙に“活用”するなら、野田は小沢を選挙に“活用”すればよいのだ。野田は側近に「いずれにしても参院がねじれている。自公との部分連合しかない」と漏らしているが、たしかにこれしかない。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年06月28日

◆小沢新党に冷水、苦肉の策の会派離脱か

杉浦 正章

 

「これでは小沢について離党する衆院議員は40台を維持できるかどうかだ」との見方が永田町で出始めた。どう見ても袋小路なのである。民主党元代表・小沢一郎が最後の頼みの綱とする「国民の皆様」の「小沢新党」支持率は、朝日も共同もたったの15%。さすがに散々だまされ続けて来ただけあって国民の目も肥え始めた。「小沢新党」へ見事なアッパーカットと“冷水効果”を浴びせた形だ。「よしっ!」の小沢は内心「ヤバッ!」の小沢になりつつある。


このための苦肉の策か、28日付の読売のスクープによると、当面は離党・新党へとは動かないまま、国会内で反対票の43人で「民主党会派」を離脱して新会派を結成するという「奇策」まで浮上してきた。同紙によると「民主党に所属しながら『党中党』として野田首相や党執行部を揺さぶり、離党・新党結成の時期を見極める時間を確保できる利点もある」のだという。
 

消費税政局の小沢戦略は、恐らく参議院議員時代から一貫して小沢一郎と行動を共にし、「小沢の知恵袋」と称される平野貞夫あたりの入れ知恵ではないかと言われている。最初は民主党の「少数与党化」をめざして54人の離党を目標に設定したが、これが実現困難と分かると方向転換。同じ民主党にとどまりながら別会派という「奇策」までひねり出した。


このあたりは議会の駆け引きに精通していないと出て来ないアイデアであろう。しかし、問題はこれらの策に共通しているのが「新党」を目指す“落ち目”の小沢を支える苦肉の策であることだ。
 

大きな潮流の前に、アイデアはしょせんアイデア倒れになるのだ。まず小沢の大誤算は国民がついて行かないことが判明したことだ。世論調査では軒並み小沢新党に「ノー」の反応である。それも「こてんぱんにノー」なのだ。


28日付の朝日の調査では新党について「期待する」は15%で、「期待しない」が78%と大きく上回った。共同の調査でも「期待しない」との回答が79.6%に上り「期待する」は15.9%にとどまっている。


これが意味するものは選挙で「新党」は消滅しかねないということである。小沢は最近ことあるごとに「国民の皆様」を連発、総選挙を意識して有権者へのすり寄り姿勢を強めている。「大増税だけが先行することは国民の皆様への背信行為」がその例だ。「消費税反対と反原発で勝てる」という判断だろうが、調査は逆に出たのだ。これではチルドレンも怖じ気づくだろう。
 


おまけに資金調達がままならない。新党といえば1人1億が相場だ。それも新党で直ちに総選挙に突入するとなると「現ナマ」が必要だ。衆人環視の中で小沢が調達できるか。分党すればそれなりの金は入るが恐らく選挙には間に合わない。選挙で国会に出てきたときは数が一ケタでは政党交付金もわずかだ。銀行から借りると言っても、裁判で公判中の刑事被告人に貸すだろうか。よほどの担保が必要だ。


一時代前なら、奇特な財界人が現れたものだが、筆者と親しい兜町筋は「沈む泥船を支えるようなカネを計算高い財界人が出すかね」と述べている。カネが目当てのチルドレンらも後ずさりするところだろう。
 

さらに数が問題だ。本会議の投票直後から筆者が指摘しているように、出てきた数字の実態は小沢にマイナスだ。「よしっ!」どころではないのだ。民主党の反対票57のうち小沢系は43票。後は鳩山系や中間派で、これらの票は「新党」へとはなびきにくい。おまけに43票も「新党にはついて行けない」という議員が数人いると言われている。同盟からのチルドレンへの圧力も強い。そこでとりあえずまとめておこうというのが「別会派」構想なのだろう。


こうした中で幹事長・輿石東は何とか小沢に救いの手をさしのべようとして懸命だ。28日に予定している小沢との会談でも「野田も除名しないと言っていますから」と言って止めるのだろう。事実、どうも首相・野田佳彦も除名なしで固まったようだ。


鳩山グループと中間派の離党を食い止めることを狙ってののことだ。輿石にとって小沢の振り上げたこぶしをいかにして降ろさせるかが、この場面のポイントなのだ。それでもグループの急進派は明日にでも離党する構えを見せている。
 

一方こうした民主党内の末期症状をはやし立てているのが、自民党だ。副総裁・大島理森が軽い処分に不服で「一体改革の3党合意の信頼が崩れた。民主党内の問題ではない。ケジメをつけないと今後の審議も議論もできない」とすごめば、国対委員長・岸田文彦は「造反は3党合意への造反だ。参院ですんなりと審議を進められない」と注文を付けている。


しかし「自民党よ、おごるな」といいたい。野田以下執行部がいつ3党合意を破ったのか。造反を越える圧倒的な数が賛成に回っているではないか。これだけの大法案なら造反はどの時代でも出る。かって度々生じた自民党の内紛に社会党でもつけなかったような難癖をつけるべきではない。まるでやくざのいちゃもんだ。


野田が「他党から言われる筋合いはない」と反発するのも無理はない。それよりも異常に跳ね上がる山本一太が象徴する参院自民党の“突出”を押さえるのが先だ。まず自分の頭のハエを追えと言いたい。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年06月27日

◆同調者足りず、小沢「新党」にちゅうちょ

杉浦 正章



時に政局は小さな現象が大きな判断の材料になることがある。今回のポイントは造反の頭目・小沢一郎がなぜ本会議場を出るとき、記者団にあえて聞こえよがしに「よし!」と気合いを入れて見せたかだ。その理由を分析すれば、ここは「やる気」を見せなければまずいと判断したからに違いない。「役者やのう」なのだ。マスコミは「造反が多数」と空騒ぎしているが、小沢と共に離党まで考えている議員は40人余りと判明した。


この場合「たったの」と付け加えるのが玄人の判断だ。40人では離党して新党を作っても、狙っていたように民主党を少数与党に追い込めないのだ。逆に、新党を作った直後に「小沢証人喚問」を実現させる動きが出てきた。新聞は、当分「分裂」に「事実上」と「状態」をつけた「事実上の分裂状態」という表現をするしかないのが実情なのだ。
 

過剰な報道に目をくらませされて、見方を誤ってはいけない。追い詰められたのは小沢サイドなのだ。消費増税法案への賛成は365票で反対は96票だ。75%の衆院議員が国論を割る重要法案に賛成するという政党史上でもまれにみる快挙なのである。


反対票のうち民主党の反対は57人で、欠席・棄権が16人。最大限73人の“造反”なのだが、本会議後小沢の下にはせ参じたのは43人にとどまった。問題は反対票を入れた全員が小沢と一緒に離党へと走らないことなのだ。小沢が目指したはずの民主党を少数与党に追い込む54人の離党にはほど遠いのが実態なのだ。
 

さすがに小沢は衆院議員43人、参院議員14人を前にして「今の時点では党を割ったり新党を作ることは全くない」と、ブレーキをかけざるを得なかった。実は同様の例が過去にもある。1993年宮沢内閣不信任案に賛成した小沢はすぐに自民党を離党することを避け、分裂選挙に突入する構えを見せたのだ。


しかし武村正義、鳩山由紀夫などが自民党を離党し「新党さきがけ」を結成したため、小沢も自民党を離党し「新生党」を結成した。今回はどうするかだが、小沢は記者会見でも、意気込みばかりを前面に出したものの、その実態は「近いうちに判断」と全く煮え切らない発言を繰り返した。


煮え切らない理由は十分すぎるほどある。まず、43人以上に数が増えるかどうかだが、これはなかなか難しい。議員一人一人にとって今回の投票行動はぎりぎりの選択肢であり、考え抜いた上での決断である。いくら小沢サイドが働きかけても、なびきにくい議員がほとんどだ。“離党者”拡大の展望は全く開けていないのだ。それに加えて、刀を抜いた親分を「待ってくんねえ。何とか致しやすから」となだめるのが子分の幹事長・輿石東だ。


輿石は明らかに除名処分など全く“想定外の外”に置いている。おまけにいつ処分を下すかも決めないままずるずると政局を引っ張る構えだ。輿石に近い党幹部は「小泉さんですら処分は総選挙後だった」と漏らしているという。


参院で郵政法案を否決され解散した首相・小泉純一郎は何と3か月後に処分をしているのだ。この輿石ペースに首相・野田佳彦も引っ張られる公算が強い。なぜなら野田にとっても事を急いで処分を断行すれば、43人にとどまっている離党組を増やす原因を作ってしまうことになるからだ。様子を見る必要があるのだ。
 

こうして民主党内は当分煮え切らないままに推移する。小沢は虚勢を張って、離党をちらつかせながら多数派工作を展開するだろう。参院の審議は自民党の「関東軍」が待ち構えているから、何が起きるか分からない。小沢が「暴れる」きっかけには事欠かない。新党きずなと組めば、不信任案上程に必要な50人以上の数は集まるだろう。小沢は当分党内にとどまり、多数派工作を展開して、野田を追い詰める構えだろう。
 

ところがそうは問屋が卸さないのが、消費増税法案を可決に導いた3党合意の構図だ。野田が「小沢切り」をちゅうちょする姿勢を示していることについて、自民党幹部は「参院審議に響く」と漏らしている。小沢を切らなければ参院で消費増税法案の審議に影響するというのだ。幹部の間には審議拒否の声も生じている。


自民党総裁・谷垣禎一も26日「重要法案で行動を共に出来ないのなら、党を分けた行動が必要となる。けじめをつけてもらわなければ困る」とけん制した。「事実上の分裂状態」では、自民党にとって不十分なのである。
 

今後自民党は、小沢問題を盾に、野田に対して決断を迫るだろう。早い話が「小沢を取るか3党合意を取るか」の図式となる。もちろん裁判中の「小沢疑惑」も活用する。民主党に対して小沢の証人喚問を要求する構えだ。小沢が新党を作って離党すれば、民主党も真っ先に喚問に応ずるだろうからだ。福島の放射能で誰より早く逃げ出した小沢にとっては2番目に“恐ろしい”のだ証人喚問だ。その実現が一段と現実味を帯びることになる。


こうして消費税政局は一山越えたものの、前途には一段と険しい山脈が連なる流れとなって来た。野田は究極的には自民党との「話し合い解散」を選択して消費税を成立させるか、内閣不信任案の成立を受けて解散するかの2つに1つの選択を迫られることになり得る情勢だ。


この結果、消費増税法案を成立させるには、「話し合い解散」か「あうんの呼吸解散」を結局選択せざるを得ない状況へと追い込まれる公算が大きい。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年06月26日

◆マスコミは小沢の悪あがきに踊らされるな

杉浦 正章

 

歌の文句ではないが「何を荒(すさ)ぶか小夜嵐」だ。たかだか40人の“烏合(うごう)の衆”にマスコミは踊らされ過ぎではないのか。たとえ「新党」に発展しても、何の理念も展望もなく国を担う気概もない。それよりも大きな潮流を見据えるべき時ではないのか。


国の命運を左右する消費増税法案を核に与野党がまがりなりにも政策合意に達して、法案の衆院の通過を図ろうとしているのだ。その後解散・総選挙を経れば、大連立はともかく政策ごとの部分連合も進むだろう。「決められる政治」が芽生えているではないか。マスコミは民主党元代表・小沢一郎の最後の“悪あがき”などに、惑わされるべきではない。
 

先に小沢の行動を「蜘蛛の糸にすがる」と例えたが、その通りとなって来た。自分だけがすがるのならまだ勝手だが、何も知らないチルドレンに「すがれ」とけしかける。しかしさすがの半可通議員らも、正常な感覚を持つものは「これは危ない」と手を離しはじめた。25日夜の段階でグループに集まったのはたったの40人だ。離党・新党を決意している数とほぼ同数とみられている。80人と言われているグループの半分でしかない。


これに国民の誰もが首相でないことを喜んでいる鳩山由紀夫が加わった。象徴的なのは反対にもかかわらずテレビで言を左右して、公明党の斉藤鉄夫から「見苦しい」と面罵された川内博史が、甘い処分と聞いてから突然「反対」と公言し始めたことだ。かれこれ60人あまりが造反することになりそうだが、どうってことはない。法案可決の流れは微動だにしない。
 


こうした動きの元凶は小沢と組んでいる幹事長・輿石東にある。25日の特別委員会でも首相・野田佳彦を前にして元官房長官・町村信孝が「三党合意を少しでも遅らせようとしている輿石幹事長は不愉快だ」など「不愉快」を3度も繰り返した。まったく昭和の「妖怪」が岸信介なら平成の「不愉快」が輿石だ。もちろん輿石は岸のような大業を成し遂げる政治家ではない。小沢の小間使いにすぎない。


輿石はここに来て公然と造反者への甘い処分を発言し始めた。裏でしきりに甘い情報を流し続けて、集まるべき数が集まったから「ころやよし」というわけであろうか。輿石の対応は憲政の常道からいってもおかしい。「政治生命をかける」と時の首相が言う法案に反旗を翻せば、その行動は内閣不信任案賛成の投票行動と同一視すべきことである。普通の法案への反対投票とは明らかに異なり、除名に値する。もっとも方向感覚を持ち合わせない輿石には無い物ねだりかも知れない。
 

なぜなら、分裂を避けて少数与党化を回避するということ自体が無意味なのだ。民主党政権の大樽(だる)はもう“たが”が外れてあちこちから水が噴出し始めているのだ。それをやせ細った骸骨みたいな手で押さえようとしても、こっちを押さえればあちらから噴出してしまうのが実態だ。前途に民主党を待っているのは少数与党化などはまだいい方で、選挙に大敗して“野党化”も十分ある状況なのだ。早かれ遅かれそうなるのであって、政治家にはあきらめが肝心なのに分かっていない。
 

小沢も全く同じだ。小政党を作って、先行して離党させた新党きづなの9議席と合わせて不信任案を上程できる50議席以上を獲得しようとしているのだろうが、それで騒げるのはせいぜい解散・総選挙までと相場が決まっている。「反増税と反原発」を掲げたからといって小沢がトップの政党を国民が支持するわけがない。蜘蛛の糸は切れて、大半が落選するのだ。だいいいち「新党」「新党」と言うのなら、堂々と離党したうえで反対票を投ずべきなのだ。
 

政局は魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)すればするほど面白い。マスコミが面白おかしく政治の「部分」を報道してもよい。しかし朝日も読売も、天下の大新聞が今日の1面の主見出しに「小沢」だの「新党」だのの文字を躍らせるのはいかがなものか。


朝刊はトップで「消費増税法案きょう民自公で衆院可決」が正しい。「与野党合意」の流れは、マスコミも温存して慈しみ育てなければならないのだ。ここで政党政治の軌道を正しいものに乗せなければ、疝気筋がしゃしゃり出て未曾有の混乱となりかねない。


原発再稼働問題で何も知らないことが立証された大阪市長の橋下徹が懲りずにはやりにはやって「維新」とやらの風を吹かせようとしている。晩節を汚すことも知らずに都知事・石原慎太郎が年を忘れて権力への野望をむき出しにしている。何も出来ないことがわかり切っている新種の“チルドレン”を「風」に乗せてまたまた当選させて、「最低でも県外」的な茶番劇を繰り返す余地はもうこの国の政治にはない。
 

こうした中で自民党から部分連合の声が生じていることは注目に値する。自民党総裁・谷垣禎一が25日の講演で「大連立よりも、今度の消費税などでやったようなパーシャル連合を模索する方が現実的ではないか。


民主党はもう少し政策的な純化が必要だ」と発言した。同党内では既に元幹事長・古賀誠も20日に「部分的とか閣内に協力を求めることなどをリーダーが考える状況に来ている」と述べている。野田はこの機運を見逃すべきではない。少数与党になろうが、野党に転落しようが野田の「信念の政治」は消費増税法案で証明されており、再起の機会はいくらでも来るのだ。


<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)