2013年03月08日

◆民主質問、“3者凡退”の様相

杉浦 正章


安倍の“クリアカット”に潜む危険性


「居丈高だ」「いや傲慢だ」と最初から感情論にまで発展、行く先が案ぜられる論戦だった。いよいよ衆院予算委員会を舞台に通常国会の本格論戦が7日スタートを切った。


民主党は代表、幹事長、前副総理と“オールスターキャスト”を並べ、経済、外交・安保、原発などで首相・安倍晋三を追及した。しかし総選挙圧勝を背景にした安倍の“逆襲”に遭い、まるで“三者凡退”の様相であった。


民主党は総選挙大敗の“脳しんとう”からまだ脱却できておらず、安倍のクリアカット答弁が目立ったが、クリア過ぎて今後逆手を取られる危険性を感じた。


まず最初に質問に立った代表・海江田万里は、経済評論家だけあって、アベノミクスの危険性を追及、「デフレの脱却につながらない」と断じた。これに対して安倍は「経済はまさに変わりつつある。民主党は残念ながら3年間やってもできなかったが、我々は2か月で変えようとしている」と反撃。


おりから株価は4年5か月ぶりの高水準に達しており、確かに民主党政権が過去3年3か月の間自らの政策で株価を引き上げたことは一度もない。海江田はテレビではよくしゃべるが、方向性に疑問があるというのが定評。安倍との経済論争は「格」が違う感じを与えた。3人の中では一番お粗末だった。


次いで立ったのが民主党の若手のホープ、幹事長・細野豪志だ。若手のホープといっても、東電事故でマスコミが作った虚像の可能性があるとかねてから思っていたが、勢いが余った感じが濃厚だった。


定数是正問題を取り上げて、大声を張り上げて安倍に噛みついて、「定数是正を今国会でやることを確約せよ。逃げないでいただきたい」と迫った。安倍は「ずいぶんと居丈高な発言だが、0増5減をやらなかったのは民主党ではないか。はっきり言っておく」と切り返した。


カチンときたか細野は「私のことを『なんだ若造が』ということでしょうが、今の発言は傲慢だ」と反論、「居丈高対傲慢」が火花を散らす結果となった。確かに0増5減をたなざらしにしたのは民主党であり、あまり肩を張って言い募ることができる問題ではない。


前副総理・岡田克也は野田政権が尖閣の国有化後に海上自衛隊に15カイリくらい離れて「遠くで警備せよ」と命じたといわれる問題を取り上げた。


安倍が午前中に「過度に中国とのあつれきを恐れるあまり、当然すべき警戒、警備に極度の縛りをかけた」と批判したことについて「何を根拠にしているのか。言いがかりだ」と食いついた。しかし安倍は「確信しているから言った。事実を述べている」と反論した。


具体的根拠は言わなかったが、防衛庁からの報告に基づいていることを明らかにした。岡田が知らなかっただけのことであろう。


さらに岡田は安倍が民主党政権が日米安保体制を毀損したと繰り返している点について「民主党政権はでたらめだというのはわが党だけでなくアメリカに対しても失礼だ」と抗議した。これに対して安倍は「普天間問題では『最低でも県外』と言い、『トラスト・ミー』と言い、実行できずに致命傷を与えたのは事実だ」と指摘した。


民主党政権最大の醜態「鳩山発言」を逆手に取られてはさすがの岡田も反論に窮した。安倍は岡田に対して2度にわたって総選挙敗北の原因に言及した。


日米関係では「国民がこういう政権に任せられないという選挙結果を招いた」と述べたかと思えば、原発に関しては「選挙で国民は民主党は退場せよ。自民党がやれという判断を下した。この民意は重たい」と発言した。


その根底の意識には「敗軍の将には兵を語らせず」とする、“勝者の論理”がみられる。アベノミクスにせよ外交・安保問題にせよ政権発足早々からことごとく物事が順調に運んでいる事への自信の現れであろう。


だが、首相の発言が論理的にクリアカット過ぎると、必ず野党が逆手をとるチャンスが多くなる。昔長期政権が続いた佐藤栄作の答弁は、何を言っているのかまるで判じ物のような言葉の羅列であった。ところが、野党は揚げ足の取りようがなく、追及に手こずった。


安倍の発言は政権が快進撃を続けているからこそ成り立つ答弁方式ではないか。野党に対して噛みつきすぎるのも、必ず報復が待っている。


予算委冒頭質問から見る限り、安倍は国会論戦をはやくも対決ムードに導きそうな気配だ。安倍はマスコミも議会も3か月のハネムーン後は手のひらを返したように厳しくなることを覚えておいた方がいい。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月07日

◆北の“逆ギレ反応”はまずミサイル発射か

杉浦 正章


4回目の核実験も視野に


焦点は逆ギレして休戦協定の「白紙化」を宣言した北朝鮮が、いかなる行動に出るかだ。例によって発言だけは勇ましい。


010年の韓国延坪島砲撃で頭角を現した軍部強硬派の偵察総局長・金英徹が「ワシントンを火の海にする」とすごんでいる。

今週中の国連安保理決議、来週初め11日からの米韓軍事演習と、国際社会の核実験に対する包囲網がひしひしと強まっている中で、北は単なる3流やくざのような威しをしているだけなのか、それとも何らかの軍事行動に出るのか。苦虫をかみ締めながらも国際社会は注視せざるを得ない情勢ではある。


威嚇声明の内容は「朝鮮戦争の休戦協定を白紙化する」とした上で「多様化された精密核攻撃手段で応じる」「任意の時期に任意の対象に、制限なく精密攻撃を加えて祖国統一事業を前倒しする」「米国が核兵器を振り回せば、われわれは精密な核攻撃でソウルのみならずワシントンまで火の海にする」といった内容だ。


「ソウルを火の海にする」と宣言し続けてて半世紀近くたつが、今度はそれを一挙にワシントンまで広げた。この国の“口撃”だけは、民族的特性なのであろう。とどまることを知らない。


しかし休戦協定の白紙化とは穏やかではない。1950年に勃発した朝鮮戦争は53年に北朝鮮軍、中国軍、国連軍の3者によって休戦協定が成立した。「白紙化」は国連決議に反対しない中国に対する“当てこすり”の意味もあるに違いない。


現状はあくまで休戦であって、国際法上は戦争状態が継続している。いつまた戦争が再開してもおかしくない状況にあるのだ。たしかに「ソウルを火の海」にすることは可能だ。休戦ラインからソウルまではわずか57キロであり、通常兵器で十分届く。


北は長距離砲500門を配備してをり、1分間に約3000発の砲弾をソウルに浴びせられると豪語している。注目すべきは中距離ミサイル・ノドンが、過去20年間に完全に実用化されて、照準を韓国と日本に合わせていることだ。核の小型化が完成すれば、これに核弾頭を登載して完璧な核ミサイルとなる。
 

一方長距離ミサイルは、昨年の実験で米国の西海岸までは届く飛行距離を達成した。しかし、ワシントンまでは届かない。だから「ワシントンを火の海」にすることはできない。核保有の独裁国家の特徴は、核ミサイルさえ保有すれば、超大国と対等になるという“一大錯覚”を持っていることだろう。


しかし、たとえ核ミサイルを保有しても発射はできないことが分かっていないのだ。緊迫事態になればミサイル防御網が張り巡らされ、迎撃態勢が取られる。加えてミサイル基地への先制攻撃は確実に行われる。さらにピンポイントで金正恩を巡航ミサイルが狙い撃つ。


一発でも核ミサイルが発射されれば、核ミサイルの報復で瞬時に北朝鮮全域が「火の海」となって、国家は消滅する。韓国参謀本部も6日「北が挑発を強行すれば拠点のみならず、指揮部隊にも報復を加える」と中枢への攻撃を警告している。


したがって刈り上げ頭のぼんぼんが、いくら力んでみても北朝鮮の核戦略はなり立たないのである。ぼんぼんはバスケットのスーパースターと仲良くしていればいいのだ。


こうした中で採択される安保理決議案は、かってなく厳しいものとなる。焦点だった国連憲章第7章の適用が実現する方向となった。「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を定めている同章は、最終的には加盟国の軍事行動をも求めている。


決議はまた船舶、貨物に関して国連加盟国が自国領内で検査をすることを求めており、これは「決定事項」となった。事実上戦時下における「臨検」に近い措置が取られる。核・弾道ミサイル計画に関係する金融取引や金融サービスの停止も義務化される。


よく中国がのんだと思われるほどの決議だが、その中国は全く信用ならない。過去に国連決議があっても国境の鴨緑江にかかる唯一の鉄橋は、物資を運ぶ貨物列車やトラックがひっきりなしに行き来しており、今回もこの流れは止まるまい。


それでは国連決議と米韓軍事演習に対抗して北が何をできるかだが、4回目の核実験とミサイル実験があり得る。このうちまず先行するのは短距離か中距離のミサイル実験だろう。既に北は日本海と黄海に船舶の航行禁止区域を設定した模様である。


北朝鮮はこれまでも、短距離ミサイル発射や海上射撃訓練の前に同区域を設定している。とりわけ注目されるのが昨年4月の軍事パレードで中国製移動用車両に搭載された最新兵器「KN−08」と呼ばれる新型ミサイルの実験が行われるかどうかだ。


追加核実験は、実験準備は完了している模様だが、立て続けの実験はあまりにも国際社会の反発が大きい。まずはミサイル発射か実験、海上射撃訓練などを先行させる可能性が高い。


軍事演習の最中に延坪島砲撃のような行動に出れば、直ちに軍事的報復措置が取られる可能性が高く、北は避けるだろう。もっとも常識が通用する国ではないから、何をするか分からないところがある。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月06日

◆日ロ首脳会談で「領土」の大幅進展は困難

杉浦 正章


アベノミクスにらみ経済拡大に比重


メドベージェフの対日強硬路線と打って変わったロシア大統領・プーチンの“秋波”である。その意味するものは何か。


プーチンは昨年3月に北方領土問題で「引き分け」発言をしたかと思うと、先月の元首相・森喜朗との会談では平和条約に言及して、締結されないことの「異常性」を強調した。あたかも領土で譲歩するかのような“そぶり”を見せている。


こうした中で首相・安倍晋三は5日の国会で、10年ぶりの訪ロを正式表明した。春の連休にも実現しそうだ。しかし4党返還要求を政府が変える方向にはなく、プーチンも妥協することは難しい。唯一合意しうる部分が両国経済関係の発展である。安倍もアベノミクスにはプラスに作用するし、プーチンも切実な国内経済状況を抱える。


森は昨年のプーチンによる「引き分け発言」を前向きの妥協論と捉えていたフシがある。だからさる1月に択捉を除いた、歯舞、色丹、国後の3党返還論に言及したのだろう。


しかし先月の訪ロの際、プーチン発言の真意をただすと、プーチンは「引き分け発言は、勝ち負けなしで双方が受け入れ可能な解決策だ」と説明するにとどまった。この発言が意味するところは、プーチンが依然歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を、領土交渉における原点としていることが分かる。


日本側には麻生太郎の主張した面積での2分割論や、4島の日本帰属を確認した上での2島返還論など様々な妥協論がある。自民党内の、北方領土と平和条約の切り離し論などもしびれを切らした結果の発言だろう。しかし、ロシア側には2島返還以上に踏み出す意図はないというのが大筋の見方だ。


会談でプーチンは森にA4サイズの紙に、柔道場の端で組み合っている人物を矢印で真ん中に移す図を書いて渡した。場外に出そうなところを「待て」といって、中央に引き戻そうということだ。さらにプーチンは「日ロ両国が平和条約をいまだに締結していないのは異常な事態だ」とも強調した。


その姿勢からは首脳会談をまず先行させて、交流の輪を拡大したいという思惑がある。背景にはアメリカのシェールガスのヨーロッパ進出で、LNGなどの販売が落ち込み、ロシア経済が深刻な打撃を受けていることがあるようだ。


加えて日本の経済力と技術でシベリア開発を前進させたい狙いもある。プーチンは10年前の首相・小泉純一郎との会談の結果、日ソ間の貿易量が4倍増と飛躍的に拡大したことを覚えており、そのケースを踏襲したい気持ちがあるに違いない。


さらに重要な点は外交・安保面での問題だ。中ロ関係は良好な状態にあり、中国の躍進は現在のところ海洋進出へと向かっている。しかし長い国境を接しており、警戒を怠るわけにはいかない。


また北朝鮮のミサイル実験と核小型化の成功はロシアにとっても大きな懸念材料である。安倍との首脳会談は両国へのけん制包囲網作りとな得るのだ。


一方、安倍にとっても東南アジア歴訪で対中けん制の動きに出たのに加えて、訪米で日米安保体制を再構築した。訪ロすれば、対中、対北けん制の意味合いが濃厚なものになる。


最大の利点は日ロ経済の活性化はアベノミクスにプラスに作用する。このような事情が双方にあって4月か5月の連休中にも訪ロして日ロ首脳会談に臨む意向を固めたのであろう。


ただ北方領土問題で安倍が4島返還を譲歩する選択肢はまずないとみられる。国内的にも世論上も4島返還で譲歩の空気は大勢となっていない。


そこで先例になるのが小泉訪ロだ。小泉はプーチンとの間で日ロ関係全体を包括的に発展させる「行動計画」をつくり、経済的な結びつきを強める方針を選択した。領土問題は事実上の先送りとなったのだ。


安倍も領土問題では主張すべきは主張する立場を堅持しつつも、経済関係の結びつき強化を図ることに主眼を置く方向だろう。隣国首脳との対話が10年もなかったことが異常であり、北方領土問題は首脳会談を積み重ねる過程で、糸口を見出してゆくしかあるまい。


森はプーチンに領土問題で1年以内に議論しての決着を申し入れたというが、一つの方向であろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月05日

◆自民は拙速に“定数減”でお茶を濁すな

杉浦 正章


中選挙区など制度の抜本改革に取り組め


国政の根幹をなす衆院選挙制度改革が党利党略で決められそうな情勢となって来た。自民党幹事長・石破茂が今月中旬までに「夜を徹して」決めると言い出したのだ。


民主党幹事長・細野豪志に問い詰められての発言だが、あまりにも拙速である。自民党案は比例区の30議席削減で現行制度を維持しようというもののようだが、これでは民意を反映しない「死に票」を出す制度の重大な欠陥は是正されない。


やはり与野党は、日本的選挙制度である中選挙区制も含めた制度改革を目指すべきであり、安倍は早期に第九次選挙制度審議会を発足させ、制度問題に取り組むべきだろう。


昨年末の解散を巡る駆け引きで選挙制度改革は定数削減と絡んで重要テーマとして浮上した。とりあえず定数は「0増5減」を成立させたものの、総選挙には間に合わず、制度改革は今国会に持ち越された。これが自公民3党合意の根幹だ。


民主党はかねてから比例区の80議席削減を主張しており、自民党内では30議席で妥協する案が有力となって来ている。しかし党内には反対論も根強く、これをクリアするのは容易ではない。


3日のNHKでも細野は石破に約束順守を求めたが、これはひたすら3党合意を盾に取った自民党を追い詰めるための術策であり、本質は制度改革の名を借りた党利党略である。これに理路整然としか対応できない傾向にある石破が乗せられた色彩が濃厚だが、二人とも大局を見ていない。


いま政治に必要とされているのは、小選挙区制度の弊害からいかに脱却するかであって、議席減などではない。両党とも「消費税を実行する代わりに自ら身を切るべきだ」という、キャッチ・フレーズにとらわれているが、議席を減らして出てくるメリットは30人削減でたかだか30億円だ。


ことは30億円出すから消費税を認めて欲しいという説得材料に使うべき問題なのか。両党とも根本的部分でピントが外れているとしか思えない。


翻って、選挙制度の現状を見れば、総選挙の度に小選挙区比例代表制の弊害が著しく現れている。今回も小選挙区における自民党の得票率は43%であり、これが294議席と全議席の5分の3を占める結果を招いた。


民意を反映しない死に票は小選挙区で3730万票に達し全体の56%に相当する。民主党が躍進した前回2009年の選挙でも所を変えて全く同様の傾向が見られた。


明らかに選挙制度上の欠陥であり、比例区の議員定数削減の問題とは性格を異にしている。この結果、選挙の度ににチルドレンが多数当選して、その数が政治を左右してきたことでもある。何も新人議員が悪いわけではないが、小沢チルドレンが象徴する、政治の停滞と迷走は度し難いものがあった。


今回も自民党は115人の新人議員を抱えて、その“教育”に腐心しており、政治の能率は低下する一方である。小選挙区制になって、政治、外交、安保のプロフェッショナルとも言うべき議員がいなくなった損失は大きいのだ。政治主導が薄れ、“官僚主導”がはびこる根本原因がこれだ。また議員が小粒になってしまった。


地裁が近く定数訴訟で違憲判断を下す可能性が高いことも“拙速”の理由となっている。もちろん司法の判断は判断として参考にすべきであるが、国権の最高機関の制度に関する問題が裁判結果で拙速に左右されるべきではない。


筆者は日本的政治風土の中では小選挙区制よりも、より民意を反映できる中選挙区制が適切であると思う。よく2大政党制で政権交代ができる制度がよいと言われるが、戦後の自民党の長期政権が民主党に政党の座を譲って大失政に次ぐ大失政を繰り返したことが紛れもない制度上の欠陥を物語っている。


自民党政権は事実上派閥という党内与党と、党内野党との間で政権交代が行われたからこそ長期に続いたのだ。


戦前も1919年に原敬が小選挙区制を導入したが、6年でつぶれ、中選挙区制となった。この結果政友会と民政党との間で2大政党制による政権交代が行われるようになった。中選挙区の下で2大政党制が実現しているのだ。


小選挙区制導入で主要な役割を果たした河野洋平が「導入は失敗だった。不明を恥じる」と述べているが、いまさら不明を恥じてもらっても、こればかりは取り返しがつかないことをしてくれたと言うしかない。導入した議員らの責任は重い。 


公明党など中小政党も拙速な制度改革に反対しており、幸いにも総選挙が終わったばかりで次の選挙までには時間もある。ここはこれまでやってきたように民間有識者で構成する選挙制度審議会を早期に発足させて、安倍が制度改革を諮問すべきであろう。


まさに選挙制度は国家百年の計であり、議論は尽くされなければならない。自民党も民主党もその場しのぎの“姑息(こそく)な改革案”など俎上に載せるべきではない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月04日

◆早期に放射線洗浄目標を再設定せよ



民主政権の1_・シーベルトが帰還の弊害だ


民主党政権が設定した除染1_・シーベルトの目標が、マスコミの作り出した“風評的危機感”扇動と相まって、福島原発の地元住民の帰還の遅れを招いている。これに対して最近二つの大きな動きが生じた。


一つは福島県知事が国に対して目標の再設定を要望。他の一つは世界保険機関(WHO)が、被ばくによるがん発生の恐れを否定したことだ。


原発事故による被害者に明るい展望が開けつつある。政権交代の良い機会である。政府は危機を煽った民主党政権と違って、より緩い基準でも帰還できるよう方針を早急に転換すべきである。


もともと学者など専門家の間では年間積算線量1_・シーベルトの目標設定は、疑問視する空気が強かった。しかし一部マスコミが、放射線にナイーブすぎる国民性を逆手にとって、危機感を煽りにあおった。もちろん朝日新聞などは社是である原発ゼロ実現への思惑がある。


一方で、市民運動は、感情論を利用して運動の拡大を図った。こうした風潮を受けて民主党政権は、ろくろく除染の困難さを科学的に理解しないまま、環境相・細野豪志が世論にこびる傾向を強めはじめた。あちこちで除染の目標を「1_・シーベルト以下にする」と言って回ったのだ。


学者など専門家は反論すれば袋叩きに遭う形となっていた。「物言えば唇寒し」の雰囲気の中で、本来なら主張すべき発言を控えるという、だらしのない状況で推移してきたのだ。この結果「1_・シーベルト」が定着してしまったのだ。


ところが、音を上げ始めたのが自治体だ。いくら亙を一枚一枚洗浄しても2_・シーベルト以下には落ちにくいのが実態であったのだ。もともと専門家の間でも1_・シーベルト以下にするのは雨など自然現象が加わった長期目標でなければ極めて困難とする見解が強かった。


いくら洗っても1_・シーベルトには達さないし、人件費は湯水の如くかかる。住民の帰還は遅れる一方である。


いたたまれなくなった福島県知事・佐藤雄平は2月17日、国に対して「私としてはあくまで1_・シーベルトを目指したいが、正直いって苦慮している。国は達成できる数値を示して欲しい」と要望するに至った。
「国に文句を言うだけでなく、前進したい」と本音を漏らしたのだ。


これを聞いた環境庁長官・石原伸晃は「そうであれば、そのようなことを考えなくてはならない」と、目標変更に前向き姿勢を示した。


もともと国の目標は最初の内は20_・シーベルト未満なら帰還できるというものであった。自治体によっては飯舘村の村長・菅野典雄のように「1_・シーベルトでは10年、20年かかっても帰還できない。国に文句を言っているときではない」として、当面の除染目標を独自に5ミリシーベルトに設定してしまっているトップもいる。


そもそも1_・シーベルトは、レントゲン検査でも浴びる程度の線量であり、大げさにあげつらう方がおかしいのだ。菅野が言うように帰還を10年、20年先で我慢するか、それとも目標を緩和して早期に帰還を実現するかという選択の時期に到達したのだ。


おりからWHOは、東京電力福島第一原子力発電所の事故によってどのような健康影響が予測されるかをまとめた報告書を公表した。


その内容は「最大限に見積もっても被ばくによって住民のがんが増えるおそれは小さい」と指摘するものだった。


具体的には、事故当時、1歳だった女の子が被ばくの影響で生涯にわたって甲状腺がんを発症するリスクは、通常の人が0.77パーセントであるのに対して、福島県浪江町で0.52ポイント、飯舘村では0.32ポイント、それぞれ上昇するとした。


発病の可能性は極めて少ないことを物語っている。加えて、住民が事故の後4か月間にわたって同じ場所に住み続け、汚染食品を食べ続けた場合のケースも表示しているが、そのような住民は一人も居ないのだ。可能性はゼロに近いとも言える。


こうして、洗浄の可能性と被ばくの実態の双方から、政府の政策次第で避難住民の帰還への道が開ける可能性が高まってきたのだ。


政府は、風評や意図的な新聞論調に惑わされることなく、現実的な洗浄目標を設定し直し、住民が安心して帰還できるよう広報宣伝に努めるべきである。沈黙を守っている軟弱学者たちも、良心があるのなら積極的に発言して、早期の帰還を達成できるようにすべきである。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年03月01日

◆維新の内紛が物語る空中分解の予感

杉浦 正章


もうブームの再来はない


江戸っ子流にいえば維新の内紛は「ガキのけんかでもあるめえし」というところだろう。それにしても日銀総裁という最大の人事案件まで得意の“政治的アピール”に使うとは、維新の会共同代表・橋下徹はどういう神経の持ち主なのだろうか。


国会議員団を“下部(しもべ)”とでも考えているのだろうか。もともと総選挙における大阪以外の地方区の壊滅は、橋下維新の虚飾性を露呈するものであった。ブームは幻であったのだ。これでは参院選挙で、再びブームなど起きるはずがない。


かねてから「双頭のヘビ」と指摘してきたところだが、大阪から国会議員団を“遠隔操縦”することなど不可能だ。ましてや、橋下の頭の上がらない石原慎太郎がトップだ。「黒田東彦日銀総裁」人事に異論を唱えたかったら、大阪市長を辞めて自ら衆院議員になるべきであったのだ。維新の国会議員団の判断はまっとうであった。


騒動の発端は、日銀総裁に副総裁候補の岩田規久男を充てるべきだとする橋下の主張に国会議員団側が反発したことにある。国対委員長・小沢鋭仁が「人事はベストに近い」と述べ、橋下の逆転人事を「黒田さんは辞退するだろう」と反対したのは筋が通っている。


橋下は財務省出身だけを問題視しているが、日銀人事は純粋に適材かどうかに絞って判断すべきであって、経歴を問題にするのは不見識のそしりをまぬがれない。「口を出すな」という声ももっともだ。


ところが橋下はこけんに関わると思ったに違いない。国会議員団にメールを送り、方針を覆そうとしたが、議員団の大勢は人事容認に向かっている。


ついに頭にきて「代表に口を出すなと言われたら、どうぞお好きにやってくださいということになる。そんなこと言われて代表のポジションにしがみつくような人生哲学は持っていない」と、お得意のたんかを切るに至った。


記者会見でも議員団を「与党ぼけ」と、とんちんかんな批判をする始末。かねてから橋下の一貫した政治手法は、あらゆる事象を利用して“しゃしゃり出る”というテレビタレント型である。


先の桜宮高校の体罰・自殺問題でも、過激な発言を繰り返し、入試の中止や廃校の可能性にまで言及、心ある人々のひんしゅくを買った。教育の場を一挙に我田引水のアピールの場に変えてしまうのである。


日銀人事も小沢が陳謝してけりがついたが、不思議なことに共同代表の石原慎太郎(80)や副代表の平沼赳夫(73)は関与しないまま。なぜかというと、二人ともメールが出来ないし、チェックもしないからだ。橋下はそれを知っていて下っ端にだけに怒りをぶつけたことになる。


国会議員団は白旗を掲げたが、これもだらしがない。結局人事を容認するなら最後まで突っ張るべきだった。次の選挙でも橋本人気を利用しようという魂胆があるからに違いない。しかし、おそらくその思惑は、無駄に終わるだろう。


一連の橋下の行動で出てきた政治能力は、一部民放コメンテーターたちが「天才」と褒めそやすようなものでは全くない。むしろ「狭量」で「こらえ性」のない性格の露呈である。これでは国政はつかさどれない。


橋下流で国際情勢に対処すれば、尖閣問題ではレーダー照射があった途端に、反撃命令を出すようなことになるだろう。政治とは咀嚼(そしゃく)であり、熟成である。橋下の手法は大阪の市長レベルでは通用しても、国政には通用しない。


総選挙で維新が取った54議席はその数ばかりに目が行っているが、詳細に選挙結果を分析すれば、もう既に維新ブームは陰りを見せていたことが明白だ。


54議席の内実は選挙区では当選者は大阪中心であり、全国的には地方区は壊滅状態であった。立候補者と当選者の割合は自民党が82%当選なのに対して、維新は9.2%にとどまった。大阪以外の当選率はわずかに1.4%だ。


この結果が予感させるるものは参院選挙の不振であろう。今回の内紛は起きるべくして起きた。もともと石原や旧太陽系との合流は実体的には政策抜きの“野合”の色彩が濃厚であり、今後国会審議や具体的政策課題が発生するたびに、双頭のヘビは立木に引っかかって動けなくなる様相を呈するだろう。


原発一つ取っても騒動の要因となる。この実態を度々有権者が目の当たりにすれば、再び維新のブームなどは起きえない。まさに自民党副総裁・高村正彦が「多くの国民が橋下氏を野党ぼけと思っている」と、批判したとおりだろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2013年02月28日

◆麻生が“派閥拡大大将”の様相

杉浦 正章
 

負けずに石破も派閥活動是認
 

麻生太郎の自派拡大路線が止まらない。総選挙後に自民党で発生した新人囲い込み競争でも先頭を走り、12人の弱小派閥が34人となった。さらに大島派(11人)とも近く合併して党内第3派閥を目指している。


狙いは何か。言うまでもない「ポスト安倍」狙いだ。政治家たるもの権力欲がなくなったら終わりだが、72歳の御大は老いてますますさかんだ。かねてから反りが合わない幹事長・石破茂も麻生と互角の「派閥」を結成しており、水面下では麻生Vs石破の対立の構図が次第に鮮明になりそうだ。


とはいうものの、首相・安倍晋三はつきについている。本人も27日、一時的にねじれが解消して補正予算が成立したたことに触れ、「安倍さんは運がいいと言われるが、運も実力のうちですから」と述べているとおりだ。


やることすべてが「怖いようにうまくいく」(官邸筋)という状態だ。アベノミクスは大ブレークして株高・円安を招き、ひょっとしたらデフレ脱却かという希望を生じさせている。日米首脳会談も成功し、超難関であるはずの環太平洋経済連携協定(TPP)も、反対派が腰折れして参加表明への道が開けた。


快進撃を見て、民主党からは難破船からネズミが逃げるように離党者が続出。内閣支持率は奇異なことに軒並みスタート時を上回り、70%前後に達している。


こんな政権を前にして、しかも自ら安倍支持を最初に表明して“主流派”を自認している麻生が、何でここに来て頑張りはじめたかだ。そこには「満たせぬ思い」がある。


せっかく政権を取ったにもかかわらず、誤読と高級バー通いなどという愚にもつかないことでマスコミの批判を浴びて、退陣とは泣くに泣けないのだ。そして長年政治家をやっていれば、政権というものは好事魔多しで、いつ倒れるか分からない水商売であることが分かっている。


安倍には難病があるし、成長戦略が未定のアベノミクスのバブルがはじければ、一挙に快進撃が総崩れになる可能性を秘めているのだ。しかし、アベノミクスがはじければ財務相として一蓮托生の責任を問われるのは麻生であり、戦略は成り立たない。


結局は安倍が再び病気で倒れる事しかチャンスはない。政治家というのはその狭いチャンスでも“狙う”のだ。なぜならそれが商売だからである。


一方、石破も頑張るのだ。かねてから石破は派閥の弊害を公言して、改革派を前面に出していたが、最近では「派閥を否定したことなど一度もない」だそうだ。どうもこのご仁は理路整然と前言を翻す癖がある。


1月に40人で結成した「無派閥連絡会」も明らかに派閥だが、ようやく最近になって石破自身も派閥と認めた。その戦略は何としてでも参院選挙に勝つことだ。現在の石破の地位は、幹事長として総選挙に勝ったことにあることは間違いない。


総裁・谷垣禎一に政調会長を外されて、ここを先途(せんど)とばかりに地方周りを繰り返し、地方組織に基盤を作った。それが総裁選挙でトップの地方票獲得となって現れたのだ。最終的に負けたのは派閥を基盤にしていなかったことだ。その“反省”から無派閥派という派閥を結成したのだ。


石破は最近周辺に「幹事長として参院選に勝ったら好きなことをやらせて貰う。2年後には安倍さんと同じ歳になるし」と漏らしているという。不気味な発言だ。総選挙と参院選挙に勝った幹事長は何と言っても実力ナンバーワンとなる。


こうして「ポスト安倍」にやる気の実力者が二人台頭しつつあるのが自民党内の現状である。それも派閥勢力の上に立っての戦いが始まろうとしているのだが、その他の派閥は軒並み領袖がぱっとしない。


老舗の福田派の流れを汲む町村派(82人)は、町村信孝が脳梗塞から復帰したものの勢いがでない。大勢は安倍に流れている。田中派の流れの額賀派(51人)も額賀福志郎がぱっとしない。


宏池会・池田派の流れの岸田派(旧古賀派・40人)も外相・岸田文男は修行中でポスト安倍をいきなり狙う態勢にない。二階派(32人)も石原派(15人)も党を牽引する力はない。


やはり安倍が町村派の大勢と、派閥横断の安倍支持グループ「創生日本」(100人)を背景に、断トツの勢力を維持している。


ここで傑作なのは党政治制度改革実行本部(逢沢一郎本部長)がまとめた「脱派閥」の党改革答申。派閥の事務所を党本部に移すのだというが、これでは脱派閥どころか党が派閥の存在を公認することになるではないか。


派閥は事務所を持って“コソコソ”やるから面白いのだ。過去に首相・福田赳夫が党本部に「国会議員が派閥事務所ではなく党本部に集まって懇談できるように」とリバティー・クラブと称する部屋をつくって、いまだに存在するが派閥解消には至らなかった。


やはり首相・海部俊樹も党本部活用を提案したが実現せずだ。だいいち麻生が人数が増えて狭くなったとして新事務所を作る方向だという。


派閥政治はカネと大臣ポストという問題で批判の対象となってきたが、情報の共有、新人教育という面で大きな役割を果たしていたのだ。


また田中角栄から三木武夫に政権が移ったように、イデオロギー抜きで対立者への“政権交代”を可能にして、自民党は民主党のような希代の大失政政権を作らずに済んできた。自民党は派閥や個人後援会、族議員などを通じて、多様な要求を汲み上げ、時代の変化に柔軟に対応したからこそ、長期政権を維持できたのだ。


抗争のための派閥でなく、現在程度のゆるやかな結びつきなら自民党は活気が出て何ら問題はない。目くじらを立てることもない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月27日

◆補正成立はねじれ解消への突破口だ

杉浦 正章 


まだまだ民主への“引きはがし”が続く


月面着陸のアームストロング流に言えば「離党の1票は小さな1票だが、日本の政治にとっては大きな飛躍だ」といったところだ。参院選挙を待たずにねじれ解消現象が発生して、補正予算案が成立してしまった。民主党の離党が止まらなくなった結果だ。


自民党幹事長・石破茂が「今日を境に歴史が変わっていく」と述べたとおり、ねじれの本格解消への突破口になるだろう。日銀総裁人事や来年度予算審議にも好影響をもたらすことは確実だ。いまこそ決められない政治を第二院が形作ってきた歴史にとどめを刺す時だ。


自民党は、表向き「おごることなく慎重に野党と調整を進める」(石破)としているが、実態はそんなに甘くない。裏舞台での食うか食われるかの暗闘が続く。言うまでもなくねじれの解消には裏工作と表の正式手続きの二つがある。


裏は多数派工作、表は参院選挙勝利だ。自民党はとりあえず裏を先行させたのだ。みんなの党代表・渡辺喜美が悔し紛れに「与党がアメをばらまいて多数派工作をやった結果」と指摘するように、必死の“裏工作”が進展した結果だ。民主党はもはや“水に落ちた犬”となった。たたかれ続けるのだ。


安倍も「この1票差は『決められない政治』から『決める政治』への大きな第一歩だった」と述べているが、感慨は大きなものがあろう。


過去の逆転国会は1989年の参院選後と1998年の参院選後にも発生しているが、本格的に「ねじれ国会」と称され、参院が政治闘争の舞台となったのは2007年の参院選で自民党が惨敗して以来だ。


安倍首相の時であり、民主党は小沢を中心に政権交代のチャンスとばかりに攻めまくり、安倍の下痢とノイローゼを誘って退陣させた。


続く福田康夫も、麻生太郎もあえない最期をとげ、民主党は政権を獲得した。時代錯誤というか馬鹿の一つ覚えというか、この再現を狙ったのが参院議員会長・輿石東だ。


「抵抗野党に戻る」と宣言して、尊敬する生活代表の小沢一郎と組み、虎視眈々と“ねじれ活用”を狙った。補正予算案反対に生活と、目立つことだけが信条でこのところ一段と軽さを増しているみんなの渡辺を引き込み、補正予算の修正案を踏み台にして反対ムードを盛り上げようとした。


公共事業の大盤振る舞いを取り上げて輿石は「古い自民党の復活」と追及しようとしたのだ。しかし輿石こそ「古い何でも反対の社会党の復活」そのものであり、誤算は足元から生じた。植松恵美子、川崎稔二人の離党である。さらに岩本司も離党予備軍となっている。


参院は民主党が87人、自民党が83人だが、二人の離党でその差は2議席となった。岩本が離党なら1議席となる。自民党の幹事長・溝手顕正が「民主党はさらに流動化する。まだまだ崩れる」と“不気味”な予言をしているとおり、昨年から続く離党減少はとどまるところを知らない。


自民党は国会運営を「丁寧にやる」(石破)方針だが、筆者に言わせれば「丁寧に引っぱがす」のが本音だ。


民主党の国会運営敗北の最大の理由は、安倍がアベノミクスを旗印に、国民の求心力を強め、支持率70%前後を確保、全党的な支持を得ていることであろう。これに対してもともと求心力などない、“人の良い”代表・海江田万里では太刀打ちできない。


そればかりか、外れそうなたがを締められないのだ。国民の人気も政治力もある野田佳彦、前原誠司、岡田克也らを、総選挙敗北の“戦犯”扱いして退けてはアピールもしない。海江田は共同通信の世論調査で民主党の支持率が6%にまで落ちたことに「愕然とした」というが、まだまだ“地獄の底”は見えていない。


こうして通常国会の初戦は自民党の圧勝に終わった。問題は最初のうまさが持続するかどうかだ。次は日銀総裁人事と来年度本予算だが、これも自民党ペースで進む流れだろう。


日銀総裁人事は、「黒田東彦総裁」に愚にもつかない理由を挙げて維新の橋下徹と渡辺が反対を表明しているが、民主党内は容認論が広がっている。官房長官・菅義偉が26日、民主党政調会長・桜井充に人事漏洩を陳謝したが、これも“手続き”であろう。


維新は橋下が反対しても議員団は賛成のムードが強い。橋下は議員団を「与党ぼけ」と切り捨てるが、維新がいつから与党になったのか。言葉は多いが相変わらず切れ味は方向音痴の発言が多い。


維新の国対委員長・小沢鋭仁は「黒田はベスト。橋下さんは政治的な相場観に外れている」と、真っ向から反対する始末。大阪のあんちゃんの中央政治への“相場観”が試されている。


この自民党の攻勢は参院選挙まで続く。昨日も書いたように、参院における“正式な”ねじれ解消は、まず夏の参院選で実現する方向が一段と強まった。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月26日

◆参院選はねじれ解消の公算大

杉浦 正章
 

野党糾合困難、海江田も小沢も出口なし


「船を沈め釜を破る」と中国のことわざで、民主党代表の海江田万里が党大会で党再生への必死の決意を表明した。楚の項羽が秦軍と戦うにあたり船はすべて沈め、釜は壊し3日分の食料のみを持って士卒に必死の覚悟をを示して、秦軍を敗走させた故事に基づく。


しかし民主党にその団結は可能か。「抵抗野党に逆戻りせよ」と社会党への先祖返りを主張する輿石東から、自民党と変わらない保守勢力を抱えている「寄り合い所帯」の現状は変わらない。


「天の時は地の利に如かす、地の利は人の和に如かず」である。その党内の人の和もままならぬのに、ましてや参院選に向けた野党の大同団結などは絵に描いたもちだ。このままでは自公の過半数達成でねじれは解消することになる。


民主党が哀れをとどめたのは、党大会に離党を理由に除名した議員らを来賓として招いたことだ。いくら野党の融和が必要だといって、生活の党や日本維新の会の、後ろ足で砂をかけて去っていったような連中に挨拶までさせたのだ。


連合会長の古賀伸明が「一緒にあいさつをするのはどうも気味が悪い感じがする」と皮肉ったが、このあたりが正常な神経だろう。そんなことをしても参院選に向けての野党共闘が実現するめどなど全く立っていない。


ここで何とか野党共闘を実現して、自らを日の当たる場所に再び置きたいのが生活代表の小沢一郎だ。自分も“後ろ足で砂組”にもかかわらず、いけしゃあしゃあと民主党に“指示”するような発言をしている。口を開けば「野党第1党の民主党が野党の大同団結を呼びかけよ」と言っているのだ。


小沢の当面の戦略は7月の参院選で自公の過半数獲得阻止にある。阻止して政権を揺さぶり、ことあるごとに政局化して、政権交代を実現するところにある。しかし民主党308議席を達成して意気揚々だった小沢も、いまは衆院議員わずか7議席、衆参でたったの15議席の党首に落ちぶれた。


にもかかわらず小沢はめげない。めげない理由は過去にも全く同じ状況におかれて盛り返した“実績”があるからだ。93年には新生党を36議席から55議席に、95年には新進党19議席を40議席にそれぞれ躍進させている。


確かに野党には参院選に向けて候補者調整をしない限り、再び自公に敗れるという危機感が共通の認識として底流にある。小沢にとってみればこれを“活用”して、政策より数を獲得するのが先だとばかりに、得意の分野に野党をひきづり込もうとしているのだ。これを「政局志向型野合」政治という。


しかし小沢も自分が前面に出てはできるものもできないことは理解しているようだ。だからかっての子飼いである海江田をして、糾合せしめようとしているのだ。


海江田が先に小沢の地元の岩手選挙区で、「当選挙区で小沢一郎さんの協力を仰ぎたい」と発言したことで「しめた。選挙協力のチャンスだ」と思ったに違いない。ところが民主党は新潟と広島で生活に対立候補を立てることになった。小沢にしてみれば一挙に舞台は暗転だ。


そもそも小沢の野合戦略は成り立ちにくいのだ。なぜなら自民党はアベノミクスを錦の御旗として、その関連づけの上に日銀人事や環太平洋経済連携協定(TPP)を実現するという巧妙な戦略を描いている。野党も政策を問われており、まだ政権に落ち度がないのに政局化はできないのだ。


日銀人事にしてみても「黒田東彦総裁」で株高・円安となった現実に棹さすことは、景気好転に水を差すようで難しい。


それに、肝心の日本維新の会は共同代表・石原慎太郎が小沢を毛嫌いしている。生活は脱原発、反増税、反TPPだが、これは維新の政策とことごとく反する。


小沢自身も「石原さんはどちらかといえば旧体制の自民党に近い立場にいる。そうすると自民党と対立していこうという枠内には入って来れないかもしれない。そうでないグループでやらざるを得ないと思う」と維新との協力は無理との判断に至っている。


それではみんなの党はどうか。みんなもTPP推進であり、代表・渡辺喜美は「野合はしない」と言いきっている。


こう見てくると、小沢がいくら海江田に“指示”をしても、民主党が野党の大同団結に動くことは困難だし、ましてや小沢が主導権を握れる場面はよほどの大失政や不祥事が生じないと来ないだろう。


小沢は「3年半後にまた参院選挙があるので、3年半後のダブル選挙というのが常識的に考えるとあり得ることだろうと思う。僕はそれを本当に最後の勝負にしたいと思っております。」と述べて、長期戦の構えも見せ始めた。


参院選での野党糾合はよほどの「敵失」がない限り、困難な方向となってきている。3年前に民主党政権が実現したのは自公政権による「敵失」以外の何物でもなかったが、この敵失を民主党も小沢も待つしかないのが実情だ。棚から落ちるぼた餅を当分海江田も小沢も口を開けて待つしかない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月25日

◆「アベノホット」Vs「オバマノクール」

杉浦 正章


オバマの習近平接近が油断できない


「日米同盟の信頼と強い絆は完全に復活した」と首相・安倍晋三は高揚して胸を張った。この一言が言いたくて訪米して、日米首脳会談に臨んだに違いない。しかし筆者に言わせれば、この言葉は言わずもがなであった。


なぜなら安倍の意気込みばかりが目立って、内外記者会見に同席したオバマは終始クール。そっぽを向いている場面も目立った。オバマの発言も官僚作文棒読みの「日米同盟はアジア太平洋地域にとって中心的な礎だ」。


嬉しくも何ともない。当たり前だからだ。これを見たのだろう、中国国営新華社電は「安倍総理大臣はアメリカで『冷たい処遇』を受けた」と報じた。皮相的かつ我田引水的宣伝記事だが、そう見られても無理もない側面がある。


もちろん、日米の場合首脳会談は晩餐会などは不要だし、これがないから冷たいと報じた民放テレビなどは新華社に勝るとも劣らぬ上っ面報道だ。


中国は人民大会堂での豪華な晩餐会で、メシさえ食わせれば良いと思っているようだが、この古い手法こそ飽きられていることに気付かない。実務面では最近になく成果を上げた首脳会談であることは確かだ。


しかし、日米双方の発表をみても、オバマの発言はほとんどない。全くないのが尖閣絡みでの対中批判だ。記者団から尖閣問題での感想を求められても、なんらコメントをせず、無視した。会談ではもっぱら安倍が大統領への“報告会”の如くに、あれもしますこれもしますと言いまくった。


「集団的自衛権について検討を始めた」「普天間飛行場の辺野古への移転を早期に進める」「自衛隊の予算を増額する」「原発ゼロはゼロベースで見直す」ーと言った具合だ。しかしオバマからの発言は出てこない。


政府筋は対中関係では「相当突っ込んだやりとりがあった」と述べている。なぜ表に出せないのかと言えば、「機微に渡る他国の話しを出せるわけがない」のだそうだ。


恐らく習近平の評価・分析やレーダー照射が習の指示によるものなのかどうか。また、習が武力衝突の意志があるかどうか、軍部を押さえているかどうかなど“機微に渡る”情報交換があったのだろう。


場合によっては、オバマが安倍に対して、武力衝突は何としてでも回避するように“クギを刺す”場面があってもおかしくない。


まるで「アベノホット」に対して「オバマノクール」だ。この“温度差”はなぜ生じたのか。それは極東情勢への認識の差と日本の政権交代に対する思いの“落差”がある。


オバマは、基本的には尖閣を巡る日中の武力衝突を全く望んではいない。むしろ日中が激突して、アメリカが日米安保条約を理由に戦争に引き込まれる可能性があることを懸念しているのだ。安保条約は、中国の尖閣占拠などの事態があれば間違いなく発動せざるを得ない。


日本を見捨てれば、アメリカの威信は地に落ち、安保条約は破棄に至る。そんな事態に至ることは極力回避したいのだ。


しかし、対中けん制のためには、日本がかっての日英同盟のイギリスのように“極東の番犬”として存在した方がよい。新華社電が“安倍冷遇”を報じた記事は稚拙だが、中で1行だけ光る分析がある。それは「中日関係を“制御可能な対立状態”にしておくことが米国の最高の利益だ」という部分だ。


したがって、オバマは自らの人気維持のためには、かってニクソンがやったように日本頭越しの訪中で新国家主席となった習近平と会談するような構想を描いていてもおかしくない。「オバマノクール」からは、そこまで窺える側面がある。どうも怪しいのだ。


もう一つの日本の政権交代への思いの“落差”とは、安倍が民主党政権は日米安保関係を毀損したと判断しているのに対して、オバマにその認識が薄いことだ。


日本国内にいれば確かに民主党政権は安保体制を毀損していることがひしひしと分かる。その証拠には毀損の間隙を縫うように中国、ロシア、韓国が領土での攻勢を一斉に仕掛けてきている。日米関係がゆるんだと見れば、ハイエナのように隙を窺うのが隣国であり、国際関係である。その現実をオバマは知るよしもない。


もともと日本にはそれほどの関心がないから、実感が湧かないのだ。おまけに首相・野田佳彦との関係は悪くはなかった。だから安倍が、政権交代によって毀損された日米関係が「復活した」と最大限の表現をしても、そっぽを向いていたのだ。


オバマにしてみれば就任以来入れ代わり立ち代わり5人目の首相だ。いいかげんうんざりしたと思っても、それは大統領としておくびにも出すべきではないが、ちらりと出してしまった感がある。


加えて外相・岸田文男が新国務相・ケリーとの会談でわざわざ1月にクリントンが尖閣問題で「日本の施政権を害そうとする、いかなる一方的な行為にも反対する」と表明したことに“謝意”を示したのはなぜか。


明らかに、上院議員時代から親中国路線を取っているケリーに“ダメ押しの牽制球”を投げざるを得なかったことを意味する。要するに、ケリーが米中融和と関係発展路線を取ることが目に見えているからだ。


焦点のTPPは筆者の予想がピタリと当たった。合い言葉の「ネゴシエート」「センシティブ」「オン・ザ・テーブル」は、すべて日本語訳で「交渉を先行」「重要品目がある事を確認」「全ての品目を交渉のテーブルに乗せる」と書いたとおりとなった。


異例の共同声明まで出したが、これは2011年の野田・オバマ会談で普天間移設問題で「言った」「言わない」の食い違いが生じたことに懲りた結果だろう。共同声明を出して“錦の御旗”を掲げなければ安倍の党内説得と国会乗り切りは危うくなる。


それにしても民主党政権時代の外務官僚はサボタージュだったのだろうか。手のひらを返したように官僚組織が働いた。政治家と官僚のコラボレーションの結果が共同声明となってTPPを動かすことになった。民主党の“政治主導”をいかに官僚が嫌っていたかを物語るものだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月22日

◆野田の解散判断は真っ当だった

杉浦 正章


“失敗の連鎖”は「鳩・菅・小」だ


「バカの知恵は後から出る」というが、24日の党大会で決める民主党の党改革創生案なるものを読んで情けなくなった。このような党に3年3カ月余りも国政を委ねてきたことに慄然とせざるを得ない。


総選挙惨敗の理由を「トップによる失敗の連鎖が期待はずれの政権というイメージを与え続けたため」と、全てを自分たちが選んだ党首の責任にしてしまった。野田佳彦の名前こそ挙げなかったが、野田の解散の判断がすべての原因だと言わんばかりの総括である。これではいまだに離党者が続出しているのもうなずける。


確かに「失敗の連鎖」はあった。しかしそれは鳩山由紀夫と小沢一郎、菅直人につながる連鎖であって、野田になってその連鎖は断ち切られた。あえて党代表として責任を負うべき比率を言えば鳩山が70%、菅が30%とみる。


野田になって、はちゃめちゃの民主党政権が、ようやく“普通の首相による普通の政権”に戻ったのだ。鳩山はその暗愚さが未だに後を引いている。「トラストミー」とブッシュをだまし、「最低でも県外」と沖縄住民をだまし、悪いのはそのだましたことをいまだに理解できないでいることだ。


元首相といえば日本の“顔”となるが、その顔が恥の上塗りを重ねている。イランに行って利用され、中国に行って「尖閣は係争地」発言で利用される。あの紳士的な防衛相・小野寺五典が「国賊」と最大級の表現を使って非難するのも無理からぬ事である。


それでも本人は自分の愚かさに気付いていない。20日には沖縄で、「普天間の海外移転が実現しなかったのは、米国の意向を忖度(そんたく)する外務省と防衛省のせいだ」と宣うた。これは各省の上に立つ首相たるものの心得すら理解していないことを物語る。


鳩山は国中から馬鹿にされた首相であったが、菅は憎まれた首相であった。その発言が憎々しげであるからだけではない。3・11で生じた原子炉事故対策を指導せずに、“介入”して悪化させてしまった。危機の時の指導者の有りようを全く理解していなかったのだ。


この鳩山ー菅とつながる連鎖に、もう1人ぶら下がっていたのが小沢一郎だ。この人物ほど「盛者必衰」を物語る例は珍しい。


選挙圧勝後は小沢ガールズを議員会館の自分の階に集めて悦に入り、まるで大奥の様相を呈していたものだ。いまは尾羽うち枯らして、回りに集まる政治家はほとんどいない。


マニフェストに必要な16兆8千億円の財源を「政権を取ればいくらでも出てくる」と、大法螺(ほら)を吹いたがすぐに馬脚が現れた。いまやマニフェストという言葉すら「不愉快」の代名詞として国民の間に定着したのだ。


その小沢が今になって野田の解散判断に疑問を呈している。

「二百何十人も殺したのに、『これでよかった』と言うのは信じられない。どういう精神構造をしているのか」と批判。野田の解散の意図についても「自民党も過半数に届かないだろう。自分らもほどほど生き残れば連立を組めるという打算だ。


自民党と結ぶことを前提にして政治行動をするというのは、本当にむちゃくちゃで、邪な考え方だ。でも、そうとしか解釈できない。」と分析。野田が選挙後の自民党との連立を意図していたと断じている。


この小沢の判断は、数だけが信条で生きてきた政治家ならぬ政治屋の判断であろう。それでは小沢が主張し、腹心の幹事長・輿石東にも言わせた衆参同日選挙で勝てたかと言うことだが、党内抗争を繰り返し、まるで政党の体をなしていない民主党政権である。


衆参同日選挙をやれば民主党と維新や他の野党との共食いはさらに拡大、民主党は衆参双方で大惨敗の連動を引き起こしただろう。


前原誠司が参院選の見通しについて最近「おそらく自公が勝ち、3年間ねじれのない政権になる。民主党は10議席を上回るぐらいしか取れない」と発言しているとおり、冷静に見ればいつ解散をやっても民主党は敗退する運命にあったのだ。


あと半年も民主党政権の体たらくを見せつけられたら、国民の不満は衆参両院選挙に向けて爆発していたのだ。


首相という立場は、時には自分の支持基盤である政党の利害すら超越した判断を下さなければならなくなるときがある。その判断ができるのは政治家であって政治屋ではない。小沢が「なんで解散をしたのか今もって分からない」と述べているのは、本当の大局を読めないからに過ぎない。


筆者はかねてから「解散は政治の総合芸術」と書いてきたが、野田の解散ほど困難で錯綜していた例を知らない。マスコミや評論家たちが軒並み読み間違え、任期満了選挙説を唱えるものまでいたことからもうなずける。野田の判断は大局を見れば決して間違っていなかったと断言できる。


野田は、自らの政党のありさまを目の当たりにして、この政党では国が持たないという判断に立ち至ったのだ。加えて1内閣1課題で消費税増税も達成した。解散は政党間の公約でもあり、大局から見れば果たさざるを得ないと決断したのだ。


そして野田の判断は、結果として正しかった。なぜなら自民党政権が、ようやく3年3か月の政治の泥沼から抜け出せるという希望をこの国に与えているからだ。野田は明らかに連立よりも自民党へのバトンタッチを意識して解散を断行したのだ。


民主党の大敗は一にかかって欺瞞のマニフェストと、これを取り繕おうとした鳩山、管、小沢の目指した「衆愚の政治」にあるのだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月21日

◆日米安保は片務性から双務性へ大きく転換

杉浦 正章


 安倍は集団的自衛権行使に言及へ


北朝鮮によるミサイル・核実験の実施、中国の海洋進出と激動する極東情勢の中で行われる日米首脳会談は、米ソ冷戦時代の会談に匹敵する緊迫性を帯びる様相を見せている。


日本にとってとりわけ重要なのは、日米安保条約の片務性が集団的自衛権の行使などによって双務性へと大きく変質を迫られていることだ。この安保体制の変質と再構築は日米双方にとって不可避なものとなるだろう。


こうした枠組みの中で日米両首脳はTPP(環太平洋経済連携協定)など摩擦要因を際立たせることは避け、同盟重視の方針を打ち出さざるを得ない情勢となっている。


一口に日米安保体制の再構築といっても、首相・安倍晋三と大統領・オバマが、民主党政権が毀損させた体制の原状回復をすればよいということにとどまるわけにはいくまい。北朝鮮と中国による“攻勢”がそれを許さなくなってきており、“極東冷戦”の構図が紛れもなく反映される。


中国艦船による自衛隊へのレーダー照射、北による飛距離を米国にまで伸ばしたミサイル実験と核小型化の成功は、アメリカにのみ防衛義務を課した日米安保条約第5条解釈の片務性の修正を迫られる事態を招いているからだ。


その象徴的なものが米国に向かう北のミサイルを撃墜させる集団的自衛権の行使と、自衛隊による敵地先制攻撃能力の確立だ。


いずれの問題も、安倍政権が前向きに対応しようとしており、安倍はオバマに対してその方向性を説明することになろう。この結果首脳会談を契機に、日米安保体制は片務性から双務性へと大きく舵を切る性格を帯びることになる。


米国にとっても沖縄から尖閣諸島、フィリピンへとつながる第一列島線で中国を封じ込める戦略は、維持せざるを得ない状況にあり、これは日本の安保上の利害関係とも全く一致する。


したがってオバマは、尖閣諸島への安保条約適用という米政府の基本方針を改めて表明すると同時に、安倍に対して偶発的な衝突は極力回避するよう求めることになろう。


また北に対する制裁措置は国連安保理決議に向けて双方が努力することを確認すると同時に、安保理で有効な決議が採択されない場合には日米韓を中心にヨーロッパなども巻き込んで、金融制裁など独自制裁に踏み切る方針も確認することになろう。


さらに外交筋によると「公表するかどうかは分からない」が、安倍は、日米合意に基づき米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた決意を伝える意向のようだ。


こうした大きな流れの中で、具体的な政策が位置づけられていくことになるが、その焦点は日本の原発政策の転換とTPPだ。安倍は、民主党政権が愚かにも打ち出した、30年代原発ゼロの方針を撤回する意向を表明する。


米政府の最大の懸念は、原発ゼロでは日本に原発開発を委ねてきた基本政策が崩れることにある。原発ゼロは原子力開発技術の維持向上を放棄することを意味し、安保上も極めて重要な意味を持つ日米原子力協定の崩壊につながるからだ。


昨年9月8日の会談で国務長官・クリントンは首相・野田佳彦に対して原発ゼロ政策への強い懸念を表明している。野田はうやむやにしてきたが、青森県六ヶ所村の再処理工場の建設推進は、米国がもっとも期待する課題の1つである。


安倍は安全が確保された原発の再稼働と、核燃料サイクルの推進をオバマに公約することになるだろう。


TPPについて安倍は、米国の参加要請と国内の反対運動の高まりのはざまで、厳しい選択を強いられることになる。しかし、官邸筋は「流れとしては安倍とオバマがトップ同士で激論を戦わせるという場面は最悪でもありえない」と漏らしている。


つまり、両国事務当局間で事前に煮詰めないままトップの“折衝”で物事を決めるような“愚策”は、両国とも避けたい考えであるからだ。おまけに極東情勢は緊迫しており、通商面での亀裂の露呈は安全保障問題にも影響を及ぼしかねない。


従って両首脳はTPPで日本の交渉参加への道筋をつけることを優先させるものとみられる。たとえ全ての品目を交渉のテーブルに乗せることになっても、それに関税を課すかどうかは交渉を先行させた上で判断することになりそうだ。


日本のコメや米国の砂糖を意識して、重要品目がある事を確認する様な方策が検討されているようである。米通商代表のロン・カークが特定分野の保護を前提にした交渉を否定しながらも、コメなどへの特例が設けられることを「排除しない」と述べているあたりが、落としどころだろう。


したがって安倍は、首脳会談を踏まえて、帰国後にTPP参加への決定を判断できることになるだろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月20日

◆川柳を読めば本筋見えてくる

杉浦 正章

 
例によって最近の朝日川柳とよみうり時事川柳で、今の政治と外交を見てみよう。


【支持率】 政権発足早々には朝日に<支持率のカウントダウンが始まった>と揶揄(やゆ)された安倍内閣支持率だが、奇妙なことに2回目や3回目の調査は軒並み上昇している。最初の“ご祝儀相場”が徐々に減少してゆく歴代政権と比べても異例だ。


読売が71%と大台に乗れば、朝日は59%から3ポイント上昇の62% 。時事は7.4ポイント増の61.4%といった具合だ。朝日川柳は“読み”を完全に間違えた。川柳だからいいものの、政治部長だったらクビだ。


各紙の分析は経済政策「アベノミクス」が評価されたというものが多い。確かに株価は上がるし、円相場は下がるし、前政権の“暗くて陰鬱”な 3年3ヶ月を吹き飛ばすような勢いだ。やはりもちはもち屋で、老舗の政党は勘所を押さえている。


しかし各紙の分析は肝心のポイントを外している。支持率上昇は、中国の尖閣強硬姿勢と北朝鮮のミサイル・核実験が大きく寄与している。首相・安倍晋三の毅然とした右寄り姿勢が評価されているのだ。


安倍も<支持率に安倍のみクスリ笑う春>(朝)と駄じゃれを飛ばされて、まんざらでもあるまい。しかしアベノミクスの本質はまだまだバブルの色彩が濃厚。きっかけがあれば相場を押し上げている外人投資家らが、さっさと引き揚げる可能性も除去できない。


支持率を7月の参院選まで持たせられるかどうかが、安倍にとっての最大の関心事だ。そこで読売川柳子からは<参院選今やれぬのが惜しい率>と見事にその心を読まれた。

【アベノミクス】
 
アベノミクスのとばっちりを受けたのが日銀総裁・白川方明。泣く泣く4月の任期切れを待たずに辞任を表明したが、低迷するデフレに打つ手なしで、手をこまねいていたのだから同情する者はいない。安倍は<日銀と相合い傘で行く闇路>(朝)で、誰もやったことのない未知の領域に突入する。


とにかく<大本営発表に似るアベノミクス>(朝)と言われようが、いまは行け行けどんどんしかない。日銀は、言うことを聞かなければ「日銀法を改正するぞ」と脅かされているわけだから、後任総裁も「長い物には巻かれろ」と腹をくくるしかない。


来週中に人事が決まるが、まさに<ままならぬものを引き継ぐ後白川>(朝)となるわけだ。それにしても13兆円の補正予算を成立させるのは良いが、年度内に使い場所があるのだろうか。


手っ取り早く公共事業をどんどん進めて<美しい日本よく見りゃコンクリ製>(朝)ということか。中央高速のトンネル事故もフルに活用して、全国規模で老朽化した公共事業の補修に取りかかる。だから年寄りからは<どうしてくれる我々の老朽化>(朝)というぼやきも出てくる。


【麻生】 ネットでウケのいい財務相・麻生太郎だが、G20に行く際の出で立ちにやんやの喝采だ。1977年にベストドレッサー賞を受賞しただけあって黒のソフトに黒のコート。マフラーは水色というスタイルは粋。並み居る首脳の中でも際だった。


米紙ウォール・ストリート・ジャーナルからは「ギャング・スタイル」とからかわれたが、日本の川柳も負けてはいない。<SPが囲む組長見りゃ大臣>(朝)だそうだ。


【照射】 「隣りに嫌な人が住んでいても引っ越すわけにはいかない」とぼやいたのは、首相・大平正芳。その頃はソ連を指したが、今は中国。なにしろ街を歩いていると、肩からぶつかってくるような連中が人民解放軍だ。


レーダー照射などという危ないことを繰り返す。すれ違いに刀のさやが当たることを“さや当て”というが、昔の武士なら段平を抜いて大げんかだ。ところが自衛隊は我慢の子。


さすがに在日米軍司令官のサム・アンジェレラは、百戦錬磨とみえて的確なコメントをしている。自衛隊側の動きを「プロの対応だ。レーダー照射の仕返しなどしておらず、挑発的ではない」などと評価した。

中国軍レーダーというガン飛ばす(読)

縄張りを狙うヤクザがガン飛ばす(朝)


何もかも発端は石原慎太郎の「東京都による尖閣購入」発言にあるが、本人は反省どころか<元凶の暴走老人知らぬ顔>だ。


【核実験】 やはり隣りの隣りに住んでいる刈り上げ頭の兄ちゃんにも困ったものだ。海外留学の経験もあるから前2代の「偉大なる将軍様」よりはましかと思ったが、これがとんでもない食わせ者。


中国の国際情報紙「環球時報」までから「もし核を持つことが真の安全だとするなら、それは幼稚な考えだ」とこき下ろされた。確かに「幼稚」の一言に尽きる。


日本の新聞も負けてはいない。読売が<迷惑は隣のガキの花火好き>と噛みついた。ヒットラーにせよチャウシェスクにせよカダフィーにせよ独裁者の末路は知れている。どんどん建造しているご先祖様の金ぴかの銅像の列に入れるかどうかもあやしい。


ろくろく食べるものもなく、あえいでいる民衆の力を馬鹿にしてはいけない。いつまでも<爪に火を灯して地下で核をこね>(読)などとやっていられるわけがない。世界中から<ミサイルと核でくわえる高楊枝>(読)と足元を見すかれているのだ。銅像はいつかはひっくり返る。


今朝の朝日川柳が<大器かと待てど暮らせど小器なり>と自分の愚息を詠んでいるが、ピタリ当てはまる。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)