2013年02月19日

◆北制裁の潮流に中国の孤立化目立つ

杉浦 正章
 

日米韓独自制裁の動き強まる


3回目の核実験をした北朝鮮に対して国際社会が一致した制裁措置をとれるかどうかは、中国の出方にかかっているのが実情だ。


その中国は煮え切らない姿勢をとり続けているが、米国を中心とする周辺国への制裁への協調呼びかけは進展しており、ある意味で中国が“孤立の危機”に瀕しているとも言える。


外交筋によると裏舞台における焦点の一つは、中国が「拡散に関する安全保障構想」(PSI)に参加するかどうかにあるという。大量破壊兵器、ミサイル及びそれらの関連物資の拡散を阻止するために、事実上の海上封鎖をしようというもので、これに中国が参加し金融制裁と並行して実行されれば、かってない効果をもたらすものとみられる。


しかし国営新華社通信は「北の核実験は米国に向けられたものである。米国、韓国、日本は政策が失敗したのであり反省すべきだ」と、かってなく厳しい中国政府の姿勢を露呈させており、参加は容易ではあるまい。


一方、共産党総書記・習近平は「北京人」であり、その共通の特性は1にも2にもメンツを大事にすることにあるといわれる。そのメンツに泥を塗ったのが北による第3回核実験だ。


しかし国連安保理における中国の出方を見れば、北非難の報道声明に際して、強制力を持つ国連憲章第7章への言及を拒否するなど、これまで同様の北擁護の姿勢を見せている。


中国外務省の副報道官・洪磊は記者会見でも制裁強化の質問には一切答えないというありさまだ。せいぜい中国共産党機関紙「人民日報」系の国際情報紙「環球時報」が16日付の社説で「中国とつきあう上での譲れない一線を北朝鮮に分からせる必要がある」と、習近平の苛立ちを代弁している程度である。


米国は大統領・オバマが一般教書演説で「断固とした行動にこたえる」と発言した通り、新任の国務長官・ケリーが中心となって制裁への動きを加速させている。


17日ケリーは就任して以来初めてロシアの外相・ラブロフと電話で会談、両外相は「挑発行為に対し、国連安保理で迅速な措置を打ち出すことを目指し、緊密に連携していく」という立場で一致した。もちろん、日本や韓国とは調整済みであり、ケリーは周辺各国を固めた上で、中国への本格的な働きかけを強めるものとみられる。


その焦点は金融制裁とPSIにあるとみられる。いずれも実効性を持たせるには中国の協力が欠かせない措置である。 米国が独自の金融制裁に踏み切ったとしても、カネの流れを完全に遮断するには、北朝鮮との金融取引の関係が深い中国の協力が必要だ。


しかし銀行取引禁止は、米国がミサイル発射を受けて安保理決議に盛り込もうとしたが、中国の反対で断念している。


もっとも北に対する中国の“憤まん”は、何らかの行動として意志表示せざるを得ない側面もある。習近平はその外交の基軸を対米関係重視に置いていると言われ、国家主席への就任を控えて最初から米国と対立するような姿勢は避けたいのが本音であろう。


政府筋によると、PSIによる海上封鎖は米国が検討している安保理決議への挿入案の一つとなっており、中国の対応が注目されているという。自民党の元防衛相・小池百合子はテレビで「中国はPSIぐらいには応じるのではないか」との見通しを述べている。


かねてから北朝鮮は武器密輸に大連港などを中国の港を頻繁に利用しており、中国側も黙認している。いくら国連で決議しても“ダダ漏れ”状態なのであり、中国の協力がなければ海上封鎖も“ぬかにくぎ”なのである。


安保理決議に中国が賛成しないまでも棄権するだけでも効果は生ずるとみられる。


米国は安保理決議のが実現しようとしまいと、独自の制裁として9.11テロを契機に制定された「愛国者法」を発動して、金融制裁を断行。またPSIを軸として海上封鎖に乗り出す可能性が大きい。


首相・安倍晋三は、こうした中で22日にオバマと会談することになるが、国連決議と独自制裁の二段構えによる米国の方針に同調することになるだろう。


中国を巻き込むことができなければ、事態は日米韓を中心に独自制裁に向けて動き出すことになるだろう。日本は北に対する制裁と同時に、尖閣諸島をめぐって中国と緊迫した関係にあり、首脳会談の基調は、かってなく対中けん制をにらんだ日米安保体制の強化・再構築に置かれるものとみられる。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月18日

◆安倍のTPP参加表明は不可避だ

杉浦 正章

 
交渉なくして主張はできない


22日の日米首脳会談に向けて自民党の環太平洋経済連携協定(TPP)慎重派が気勢をあげているが、その実態はといえば進退が極まりつつある。


なぜなら自民党は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」との方針を公約として主張してきたが、交渉の現実は「聖域のある関税撤廃」の流れとなっているからだ。したがって交渉参加そのものに反対をしつづけても根拠が薄れている。


今世界中に自由貿易協定(FTA)や、より幅広い経済連携協定(EPA)締結への潮流が沸きたっており、関税撤廃は歴史的な必然性を帯びてきている。その中で通商国家日本の“孤立”はあり得ない。農協を中心とする反対勢力は、もはや条件闘争しか道は残されていないことを自覚すべきであろう。


首相・安倍晋三の基本的な姿勢はオバマが“聖域”を認めるかどうかを見極めたいという点にある。政府筋によると「その真意を探るための裏での接触が現在日米間に進行中である」という。


その内容は、極秘中の極秘であろうから、知る由もない。しかし米国の実際の行動から見れば「聖域なき」は既に破綻しているのである。オーストラリアとのFTAで、米国は砂糖などの輸入関税を残すことで合意している。また北米自由貿易協定(NAFTA)ではカナダの乳製品が関税撤廃品目から除外されている。


このように米国は、1部品目の除外を認めざるを得なくなる交渉を既に展開しているのである。日本のコメなども例外になり得るのだ。


にもかかわらず自民党内には衆参両院の200人もの議員らが「交渉断固反対」を唱えているが、すべては衆院選挙に当たって農業団体に“固い約束”を強いられた結果である。


しかし考えても見るがよい。日本の農業従事者の平均年齢は66歳に達している。 10年後には76歳になるという現実をどう見極めるのか。政府は、戦後の産業構造が大きく変化する中で農業を守りに守り抜いてきたが、逆に守れば守るほど衰退するというのが現状だ。


ウルグアイ・ラウンドでコメ農家を守るために6兆円もの血税をばらまいたが、その結果は惨憺たるものであったではないか。


みんなの党の幹事長・江田憲司が「コメに778%の関税をかけても、ウルグアイ・ラウンドで血税をばらまいても、岩手県分の農地が失われて埼玉県分の耕作放棄地が出てきた。」と述べる現実を直視しなければならない時に至ったのだ。戦後我が国の政治を大きく動かしてきた農協の命運も高齢化で限界に向かいつつあるというのが実態だ。


国会議員は目先の選挙だけに目を向けず世界的な潮流を見極めるべきである。米国と欧州連合(EU)はFTAに向けての交渉を6月から開始する。場合によっては、世界の貿易ルール作りで米欧が主導権を握る可能性すら出てきている。


これにより関税撤廃の動きは地球規模で進展していく流れとなっている。日本だけがこの潮流に棹さして生きていけるのかということである。言うまでもなく日本は人材と技術を生かす工業・貿易立国で生きていくしかない。


「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の世代を考える」とはその昔米国の上院議員が口にした言葉だが、その選挙すら農村票に依存しているだけでは、成り立っていかないのである。


農家の高齢者だけをあてにして、その子弟の都市型産業従事者の票を無視する選挙が成り立たないのは、目に見えて来ている。自民党が都市部において総選挙に圧勝したのは“ノーキョー票”によるものではない。


誰の目にも明らかであるのは、現状のままでは農業は従事者の超高齢化により衰退する方が、関税撤廃で衰退するより確実で、しかも早くなるということだ。


ここは企業の農業参入への道を広げ、コメなどを輸出産業へと育成することである。構造を抜本から改革することなしに、再びつかみ金をばら撒いて農家を説得するという構図をTPP慎重派が描いているとすれば、これは国家の将来に大きな禍根を残すだけであろう。


したがって交渉への参加すら否定する自民党議員らの主張は、既に成り立たなくなっているのである。安倍は日米首脳会談を絶好の機会として捉え、少なくとも「交渉への参加」は表明すべきである。参加をして20を超える交渉分野一つ一つで利害得失を見極め、日本の主張を堂々と展開していくべきである。


重要な着目点は、参画国第2位の経済大国である日本抜きで“環太平洋の経済連携”とはなり得ないことである。当然世界経済への責任もあるが、譲れないものはどこの国もゆずれない。参加すら否定してはその主張は誰にも届かないし、情報も入ってこない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月15日

◆最近気になる政界三題噺

杉浦 正章



「馬糞」と「大錯誤」と「雪解け」と


最近気になる政治の動きは「馬糞の川流れ」と「時代大錯誤」と「日韓雪解け」だ。個別に解析してみる。


【馬糞の川流れ】

馬糞が川に流されるとバラバラになって、なかなか1つに戻る事は出来ない。これを称して「馬糞の川流れ」という。自民党副総裁の金丸信が派閥について言った言葉だが、今の民主党がそっくりだ。


その馬糞が、馬糞にすり寄るという現象が起きた。代表・海江田万里が予想通り生活の党代表・小沢一郎に大接近しているのだ。


海江田は11日小沢の地元盛岡市で記者団に「小沢氏には平野氏の当選に向けてお力添えをお願いしたい」と語ったのだ。前復興相・平野達男の参院選3選に向け、岩手を地盤とする小沢の選挙協力を求める考えを示した。


かねてから小沢と海江田の仲は極めて親しい。小沢は11年の代表選挙では海江田を応援しているし、衆院選後の首相指名選挙でも参議院での生活の党の投票先を海江田一本に絞った。小沢は新年から自公政権に対抗するため野党の一本化を提唱しているが、実態は笛吹けど踊らずだ。


日本維新の会もみんなの党も総スカンである。民主党内も小沢に対する感情はバラバラだ。旧社会党系の前幹事長・輿石東は小沢と一緒にやりたがっているが、同じ社会党系でも菅直人は首相時代に“小沢潰し”に専念しており、とても一緒にやっていける雰囲気には無い。


前首相・野田佳彦や前原誠司ら松下政経塾系は、小沢復帰と聞いただけでアレルギーが生じる。肝心の幹事長の細野豪志も、とても受け入れる姿勢では無い。 


こうした中で生じたのが“ 輿石の乱”だ。輿石は公正取引委員会の委員長の人事案を巡って、事前報道を理由に、拒否する考えを表明。今後日銀総裁人事など国会承認人事案件の処理に混迷を来すと予想された。さすがに「何でも反対野党」への転落を危惧する執行部の巻き返しで“平定”される結果となった。


しかし、小沢にとっての生きる道は民主党の復帰か民主党に手を入れて分裂、再編を促すかしかあるまい。人の良い海江田は小沢にとって、もってこいのターゲットなのだ。「お力添えを」と擦り寄ってくる海江田を利用して、まずは参院選の選挙協力を手始めに、陰に陽に働きかけて行くのだろう。しかし馬糞の大同団結はない。


【時代大錯誤の石原質問】

80歳の婆さん芸者の流し目のようで薄気味悪かったのが12日に行われた日本維新の会共同代表・石原慎太郎の代表質問。


「浦島太郎のように戻った暴走老人。この質問は国民への遺言だ」と宣うて、質問でなく持論を展開したのは予想通りだったが、首相・安倍晋三へのすり寄り姿勢が鮮明に出た。与党質問でよく自分の意見を述べまくるる議員がいるが、これは首相を休ませるためのごますり質問だ。それとそっくりだった。


加えて焦点の靖国参拝問題で「首相は参拝に行かなくて良い」と表明した。これは明らかに安倍を窮地に陥らせないための配慮である。もともと安倍は首相在任中に靖国参拝をして、対中、対韓関係をぶち壊したくないのが本音だ。


だから自民党総裁就任直後の昨年10月、秋季例大祭に合わせて慌てて参拝を済ませたのだ。春季例大祭にはまず参拝をしない。


それとは逆に石原はなんと天皇陛下の参拝を要求した。「天皇陛下は国民の象徴というだけでなく、祭祀(神道)を司っている。むしろ天皇陛下に靖国神社参拝して欲しい」と述べたのだ。これは天皇の意思などは全く無視した要求だ。


昭和天皇が靖国参拝を中止したのはA級戦犯が合祀されたことが理由であり、今上天皇も受け継いでいるのだ。それを無視する発言は不遜極まりない暴言であり、まるで傍若無人の「石原天皇」による今上天皇への“指示”としか言いようのない発言だった。思い上がるのもいい加減にせよと言いたい。


加えて石原は自らが中国を「シナ」と呼ぶことについて「中国は山口県、岡山県、広島県のことを言う。シナはシナで良いじゃないか」と愚にもつかない理屈を並べ立てて正当化しようとした。しかしこれは世代の変化を巧みに利用した欺瞞と詭弁に過ぎない。


戦前「シナ」の呼称は明らかに中国を蔑視した表現であった。日本人は優越感を持って「シナ人」と呼んでいたのだ。それを知りながら、そして自らも蔑視の意味も込めながら「シナ」と呼び、その呼称の正当性を理屈づけるのは、男の風上にも置けぬ卑怯な言動である。


【日韓雪解け】


何やら日韓関係が、北朝鮮の原爆実験を契機に雪解けムードを呈し始めている。安倍は大統領・李明博と電話で約20分間協議し、国連安全保障理事会での新たな制裁決議に向けて両国が連携していくことで一致した。


国内の汚職捜査の手が自らの親族に及びそうな状況から、国民の目をそらすために行った昨年9月の李による竹島上陸後、日韓両国の首脳が正式に協議するのは初めてだ。


しかし安倍は基本的には李を相手にしていない。25日に大統領に就任する朴槿恵への大接近を展開しようとしている。韓国政府は通常大統領就任式典には各国大使を招いているが、安倍は副総理・麻生太郎を特使として派遣することを考慮している。外相・岸田文雄も同行させる予定だ。これに加えて元首相・森喜朗も出席する。


こうした積み上げを経て安倍は就任間もない朴槿恵と早期に会談し、李のぶち壊した日韓関係を正常な軌道に乗せようとしているようにみえる。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月14日

◆日米欧軸に北への金融制裁推進

杉浦 正章


国連は習近平の“踏絵”の場


北朝鮮の暴走に対する国際社会の潮流は、国連を舞台に展開される流れと、米国、日本、韓国を中心に西欧諸国を巻き込んだ流れに大別される。


最大の焦点である北に対する金融制裁や海上封鎖は恐らく中国が反対して国連安保理決議では全会一致で可決される方向になく、米国を中心に実行段階に移行させるしかあるまい。


中東情勢にかかりっきりの米国は金融制裁に前向きであるものの、“本腰”を入れるかどうか微妙だ。そこで最大の焦点となるのが、来週末の首相・安倍晋三とオバマとの日米首脳会談と、これに先立つ14日朝の電話会談となろう。


遅くても5年後、早ければ3年以内に北は小型化した核弾頭をミサイルに搭載する技術を獲得することになり、事態は新しいステージに入った。まさに“狂人に刃物”の状態が現実のものとなる。これまで国際社会は、北を思いとどまらせるため様々な手段を講じてきた。


北を含めた6者協議では2005年に包括的合意に達したものの、北は06年に核実験。 07年にやはり合意したが09年に核実験。要するに国際社会は北が核ミサイルを製造するための時間稼ぎの場を与えただけということになる。


とりわけ米国は騙され続けている。北が核施設を自ら爆破したのを喜んで援助を送り続け失敗した。金融制裁措置でブッシュ政権は北の息の根を止めつつあったものの、日本等の反対を押しきって08年に制裁措置を解除してしまった。要するに腰が定まっていないのである。


しかし北の大陸間弾道弾がサンフランシスコに到達するとあっては対応を変えざるを得ない。オバマは一般教書演説の中で北を「脅威」と位置づけたのだ。


「北は孤立化を深めるだけだ。我々は同盟国とともに我が国のミサイル防衛を強化し、この脅威に対して断固とした行動をとる」と発言したのである。ようやく米国も事態の深刻さが分かってきたことになる。


米国の基本戦略は、極めて効果の高い金融制裁に焦点が当てられつつある。北への金の流れを遮断するのだから制裁措置の中では最大の効果が期待されるものだ。


これに加えて北朝鮮の船を臨検する事実上の海上封鎖も検討されている米国はこれらの措置を軍事的強制力の伴う国連憲章7章と連動する形で実現するため安保理内部の調整をする方向のようだ。


ところが中国は「北の政権崩壊ー大量難民の流入ー北東アジア情勢の激変」につながるような事態は一切回避する方針である。中国は北のミサイルに対する安保理決議に際しては「核実験をすれば重大な行動をとる」とする内容を認めた上で賛成票を投じた。


しかし核実験後の安保理では国連憲章第7章との連動を拒否している。米国はこうした中国と水面下での接触を続けている。


しかし中国は核実験後は北を窮地に追い詰めるような決議には賛成しないものとみられる。おそらく金融制裁措置や臨検には反対するものとみられる。したがって国連決議において実効性のある措置がとられる可能性は少ないのであろう。


しかし日米韓が結束して中国に制裁を迫る事は、外交的にはかなり重要な意味を持つ。国家主席就任前の習近平にとっては、国際社会への“踏み絵”となる性格のものであるからだ。したがって国連安保理の場は、中国をギリギリまで追い詰めて妥協を引き出す試金石となる性格のものと位置づけられる。


こうした情勢からみて金融制裁は、結局日米韓を中心に西欧諸国を引き込んで金融制裁に踏み切るしかあるまい。


安倍はオバマに対して「金融制裁を働きかけたい」としており、早ければ14日の電話会談でもこれを話し合う可能性がある。いずれにしても安倍にとってはワシントンでの日米首脳会談が時期的に絶好のチャンスとして位置づけられるものとなった。


安倍は、本腰を入れているかどうかまだわからないオバマをなんとしてでも説得し、北の封じ込めを実現しなければなるまい。金融制裁はもちろん臨検についても合意を目指す必要がある。


臨検については明らかにテロ輸出国家になりかねない北朝鮮のイラン、パキスタンやテロリストとの接触、核輸出を阻止するものであり、かなりの効果があるものと思われる。当然海上自衛隊も臨検に参加することにならなければ米国を動かすことにならないだろう。


ここは安倍も腹を決めておくことが求められる。要するに北を相手にして6者協議など話し合いの場を設定しても効果がない事は過去の事例で証明されている。当分の間はミサイル・核実験への代償がいかに高くつくものかを最高指導者・金正恩に骨の髄まで叩き込んでおく必要がある場面だ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月13日

◆敵基地攻撃能力と集団的自衛権は不可避

杉浦 正章


 
金正恩は“教育”しなければ分からない


繁華街で出刃包丁を持って目の据わった刈り上げ頭の兄ちゃんが走り出したら、少なくとも刺又(さすまた)位はないと死傷者が出る一方となる。


北朝鮮にとって国連安保理決議や非難声明などは、毎度のことで“馬耳東風”であろう。世間知らずの最高指導者・金正恩を分からせるためには「常識教育」をしなければならない。つまり、一発でも使用すれば北の国土はアリ1匹ですら、存在し得ない事態になるのだ。


その核報復は米国に任せるとして、日本も敵基地先制攻撃能力を保持すると同時に、米国への核弾頭を撃ち落とすための「集団的自衛権の行使」を早期に是認する必要がある。この意味で21日で調整されている大統領・オバマとの日米首脳会談は極めて重要な意味を持つ流れとなってきた。 


自衛隊の敵基地攻撃能力について既に首相・安倍晋三は2009年の第2回核実験の際に「ミサイル発射基地を攻撃する能力について具体的に検討していくことは当然だ」と反応をしている。


今回も、「政府としては従来から、他の手段がないと認められるものに限り、敵の基地を攻撃することは、憲法が認める自衛の範囲内に含まれるという考えを示している」と、現行法上も攻撃は可能との見解を国会で示した。


さらに安倍は「現時点では、敵基地攻撃能力を保有することは考えていないが、国際情勢がどんどん変化しているので、国民の生命と財産を守るために何をすべきかという観点から、常に検討を行っていくべきだ」と前向きの姿勢を表明した。具体的には海上発射型の巡航ミサイル導入や、戦闘機による攻撃能力拡大などの方法を検討しようということだ。


加えて、米国に向かって打ち上げられた大陸間弾道弾を迎撃するための集団的自衛権の行使も、いよいよ現実味を持ってきている。北の核実験は小型化と高性能化によって、実用段階に相当近づいている状況と見るべきだからだ。


ならず者が門前に集まって侵入しようとしているときに、「おじゃるおじゃる」と公家のように右往左往している場合ではない。


日本が壊滅しては何のための自衛隊かということになる。行使しなくても、その能力を毅然として保持しておくことは緊迫化した極東情勢において不可欠なことと認識すべきである。


安倍はこうした喫緊の課題についてオバマと率直に意見を交換して、日米安保条約を強固なものにしなければならない。アメリカは緊迫した中東情勢も抱えて2正面作戦を強いられることになる。


しかし北の核ミサイルの開発は、ミサイル技術をイランから、核技術をパキスタンから得ていることは確実であり、好むと好まざるとにかかわらず総合戦略を強いられるのだ。北とイラン、パキスタンとの関係を断ち切らない限り、核ミサイルの開発は進展する一方である。


米国は極東情勢がいよいよ一触即発の事態となれば、何らかの軍事行動に出ざるを得なくなる可能性もある。かつて米国はリビアのカダフィーの居宅を狙って空爆する強硬手段を取り、暗殺しようとしたことがある。カダフィーは外出しており危うく難を逃れたが、これにより原爆製造を断念した事は有名な話である。


1981年にはイスラエル空軍機がイラクのタムーズにあった原子力施設を爆撃壊滅させた例もある。情勢次第ではこういった強硬手段も北に対して取らざるを得なくなる可能性も否定できない。


ミサイル発射、核実験に至る金正恩の意図を分析すれば、一般的には、アメリカを交渉のテーブルに引き込むためとの見方がある。しかし、まず第一の狙いは自分自身の体制固めだ。国内的にはまだ不安定な地位を、ミサイルと核を使って確立しようとする思惑がみられる。


もちろんその体制の基盤である軍部を懐柔しようとする意図もある。逆に、軍部は30歳といわれる金正恩を手なづけて思い通りに使おうとしているに違いない。要するに刈り上げ頭の坊ちゃんの“突出”が意味するところのものは、本人が世界情勢に対する判断力や洞察力に全く欠けている事を物語っている。


ひたすら核とミサイルで軍と民心を取り込みたい一心なのだ。ここは、国際社会が、孤立した軍事独裁国家がどうなる運命かを金正恩にあらゆる手段を講じて具体的に思い知らさなければならない時であろう。


当面最大の注目点は中国の出方である。中国は1月にミサイル発射に対する国連の制裁決議になんと賛成して、これに続く核実験をけん制してきた。おそらく習近平は3月の全人代における国家主席就任に先立って、飼い犬に手を噛まれたような怒りを覚えているに違いない。「怒髪天を衝く」思いであろう。


しかし、中国と北とは対米戦を戦った“血の結束”があり、戦略上も見捨てることはできまい。だからといって国連の制裁決議に反対すれば、習近平は国際世論の批判にさらされる。就任早々評判が悪くなるのだ。中国は核実験の結果大きなジレンマを抱えざるを得ない状況になっているのだ。


悪いことは言わない。ここは中国も日米韓に同調して国連の制裁決議容認に動くべき時だ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月12日

◆安倍の“奇襲”に中国狼狽:公表後1週間

杉浦 正章


証拠公表のうえ政治対話を促進せよ


42歳の中国の美人副報道官・華春瑩の5秒間の沈黙が、すべてを物語っている。兵器管制レーダー照射事件で中国政府が首相・安倍晋三の“急襲”を受けた事。人民解放軍と外交部との連絡調整がまったくとれていなかったこと。現場指揮官の判断でやったこと。


などなど重要ポイントは、全て5秒間の沈黙で解析可能だ。12日で事件発生後1週間が経過し、日中双方ともかいた“冷や汗”が消えないうちに「対話路線」への転換を進めていかなければならない。


世界に放映された「華春瑩の沈黙」は、記者団から「中国外務省は日本が抗議するまで事実関係を知らなかったか」と問われ、わずかに苦悩の表情の伴った沈黙後「そう考えていただいて結構」と述べたのだ。デビューしたばかりの報道官はおそらく上から「表情を読まれないよう気をつけよ」と注意を受けたに違いない。


逆にすべての鍵はここにある。まず第一に中国は虚を突かれたのだ。ということは総書記・習近平を始め共産党、外交部首脳らは、この時点では全く事態を掌握していなかったことになる。これを逆からみれば習近平はレーザー照射の指示は出していない証拠となる。


さらに分析すれば、外交部と人民解放軍との間で事前の連絡調整などは全くなかったこともわかる。それでは軍の独走だったかというとそうとは言えない。


なぜならば習近平は11月に共産党とその指揮下にある人民解放軍のトップの座に着いた後、約3カ月にわたって陸・海・空軍と武装警察部隊の視察を念入りに行い、尖閣問題を念頭に置いたとみられる士気高揚を図りにはかっているからである。


その集大成ともみられる発言が7日の中国人民解放軍機関紙・解放軍報に掲載された。「部隊は招集されれば直ちに駆け付け、駆け付ければ戦争できる状態にし、戦えば必ず勝利するよう確保しろ」と確信的に扇動している。


習近平はまず軍の掌握に乗り出し、尖閣問題をフルに活用したのだ。現場の指揮官はこうした発言を真に受けて、はやりにはやってもおかしくない。


したがって、習近平の直接の指示はもちろん、 党中央あるいは人民解放軍の上級司令部や総参謀部からの指示命令ではあるまい。習近平に“鼓舞”された艦長など現場指揮官の判断で行われたに違いない。


さらに5秒間の沈黙は人民開放軍が外交部など、ほとんど相手にしていないことを物語っている。外交部には情報など入れる必要はないと考えているのであろう。これは今後、外交とは別に軍が独走する可能性があることを如実に物語っている。


そして中国側は三日間の沈黙の後ようやく“統一見解”を表明した。華春瑩は打って変わって厳しい表情で8日「日本の発表は完全な捏造だ。わざと虚偽の事実を広め、中国のイメージをおとしめ、中国の脅威をあおっている。小細工をやめて対話解決の道に戻ることを望む」と捏造扱いした。


同時に中国国防省報道局は「一方的に虚偽の状況を発表し、日本政府高官が無責任な発言を行った。『中国脅威論』をあおって、国際世論を誤った方向に導いた」と日本側の虚偽の発表であると断定したのだ。中国は、 3日間かかってようやく事を「ねつ造と虚偽」でごまかす意思統一をしたことになる。


この意思統一が意味するものは、決定的に「サギをカラスと言いくるめる」作戦に乗り出したということになる。中国のこの方針を分析すれば、中国自身が兵器管制レーダーの照射は、国際通念から外れた危険な行動である事を事実上認めたことになる。


頭からこれを否定することにより国際社会に訴えようとしている姿を露呈したものといえる。全面否定は自ら「まずいことをやってしまった」と思っている証拠ということになる。


これに対して防衛相・小野寺五典は、「電波を発する機械で、しかも(周波数などが)特殊なレーダーだ。それもしっかり記録しており、証拠として間違いない」と反論。最初のうちは証拠として提示する意気込みを見せた。


防衛省筋によれば日本の探知能力は照射をした機器のメーカーの名前までわかるほどのものだと言う。加えてヘリの場合は録画していないが、艦船の場合は録画機能を備えており、これを明らかにすれば動かぬ証拠になる。


しかしどこまで公表するか迷っているようだ。その理由として日本の防衛能力の機密に当たる部分が分かってしまうことを挙げているが、これはおかしい。


レーザー機器などはすでに近代兵器でも何でもなくなっている。主要国の艦船や航空機が備えている兵器の情報を公開したからといってそれほど問題は生じまい。機密漏洩が生じない範囲において公開すれば良いことだ。


中国は黙っていれば調子に乗って日本捏造説を言い続けるだろう。ここは、証拠を明示して中国側に釘を刺しておくべきところであろう。


政府が公表を躊躇する背景には、野党対策がある。野党は既に発表までに6日間の空白を作ったことを、問題視しており、公表すれば、過去にさかのぼった照射の実態を明らかにするよう要求することが目に見えている。


これは過去の照射をなぜ見過ごしてきたかと言う批判をさらに巻き起こす恐れがある。しかし民主党政権を含めた過去の政権の問題にまで配慮する必要はない。


こうしてアベノミクスならぬ「アベノキシュウ(奇襲)」は、中国に対して強い牽制球を投げる効果をもたらしている。中国側は明らかに戸惑い、国際的に追い詰められる危険を感じているのが実態であろう。安倍はこの機会をとらえて対中政治対話に踏み切るべきだ。


とりあえずは、自民党副総裁・高村正彦の首相特使としての訪中を早期に実現することが必要だろう。中国も3月末の全人代で習近平を国家主席に選出するの機会に、本格的な外交に乗り出すだろう。対米外交が最重要課題になるとみられるが、そのためにも日米安保体制の再構築が不可欠な情勢だ。


国の安全保障の観点から見れば環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉への参加などは躊躇すべき問題でもない。オバマには交渉参加を表明し、強固な地盤を築くべきだ。


韓国の新政権とも早急に関係改善を図る。その上で韓国で5月に開催される予定の日中韓首脳会談を“手打ちの場”とする方向で調整に全力を傾注すきであろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年02月08日

◆照射公表は練りに練った“対中宣伝戦”

杉浦 正章



習近平に打撃、日米安保再構築にプラス


中国海軍の火器管制レーダーによるヘリ、護衛艦への照射は過去に何度も行われていたことが7日になって判明してきた。恒常化していたという説すらある。それをなぜ安倍政権になって問題視して突如公表に踏み切ったのか。背景には一体何があったのか。


それは1月18日の照射以来、練りに練った首相・安倍晋三の“対中宣伝戦略”があったのだ。国際的に中国の“非常識”さを露呈させ、今月下旬に予定される大統領・オバマとの会談を意識し、日米安保体制再構築への布石を打ったのだ。米国防長官・パネッタの強い中国批判は見事に安倍の狙いが当たったことを意味する。


野党もマスコミも防衛相・小野寺五典に対する突っ込みが足りない。発言をすべてうのみにしている。小野寺は1月19日のヘリへの照射については即日報告があり、官邸にも伝えたことを明らかにした。ところが30日の照射については7日の予算委で「5日に知った」と明言した。


すぐに生ずる疑問は、なぜ19日には直ちに報告を受けて、30日は6日遅れであったのかだ。核心は小野寺もマスコミも火器管制レーダーの仕組みを知らない点にある。


照射を受けると、登載装置は通常の捜索レーダーと識別して即時に警報が鳴るのだ。防衛省幹部は「誤認はあり得ない」という。それはそうだろう誤認するようでは兵器とは言えない。


それにもかかわらず“分析”を続けたという背景には、明らかに政治の“関与”が存在するのだ。「ちょっと待て公表の機会を狙う」という判断だ。


そもそも過去においては2005年から中国戦艦は自衛隊機や艦船に対して照射を続けており、過去に国会でも取り上げられているのだ。05年のケースは哨戒機P3Cに対する照射だ。政府は衆院安保委で、同機への照射について「航空機に対して当然中国艦艇は対空レーダーを用いて照準を合わせる。


それに対して自動的に探知するESM、(エレクトロニック・サポート・メジャー)という装置があって、これで大体照準が合わされたかどうかということについてはわかるようなっている」と答弁している。


また2010年4月の民主党政権時代にも中国海軍の駆逐艦がやはりP3Cに速射砲の照準を合わせた。照準は当然火器管制レーダーによって合わせるから、P3Cはこれを感知している。


さらに加えて自衛隊の元海幕長が、BSフジで6日「中国は、レーダー照射しても日本政府が公表すると思わなかった。なぜかと言えば、いままで3年間は公表してなかったからだ」と過去の照射を明言している。


前首相・野田佳彦が民主党政権時代にも照射があったことについて「事実無根であり、極めて遺憾だ」と怒っているが、自分に報告が上がっていなかっただけのことだ。要するに極めて“日常行為”的に照射をしていた可能性がある。その証拠に艦砲はヘリにも護衛艦にも向けられていなかったのだ。 


こうして安倍は公表を5日と狙いをつけて公表に踏み切った。衆院予算委が7日から始まる時期を狙い、政府ペースで論争を運ぶ意図が見られる。では過去に小泉純一郎も鳩山由紀夫も事実上の無反応であったのに、どうして安倍政権が鬼の首を取ったかのように取り上げたかである。


最大の理由は“タカ派”の首相の意志が働いたことであろう。安倍の姿勢は対中強硬路線であり、強硬姿勢の中で隘路を見出して行くのが基本だ。甘い顔をして3月に国家主席になる習近平に、日本くみしやすしと受け取られまいとする姿勢だ。


さらに尖閣の緊迫した情勢がある。恒常化していても、国際常識ではレーダーの照射は「模擬攻撃」に当たるとされている。戦端の口火を切ることになる行為を無視するわけにはいかなくなったのだ。まかり間違えば偶発戦争になりかねない中で、未然に防止する必要があったのだ。


そして最大に理由はオバマとの会談を前にした、国際世論の形成にある。中国の“悪らつさ”を浮き彫りにして、それにもかかわらず日本は我慢しているという構図を作り上げようとしたのだ。これだけの“総合戦略”を練り上げるには、6日くらいはかかるだろう。見事に図に当たって、米側の反応は中国非難に向かった。


パネッタは講演で「中国は他国を脅かし、領土を追い求め、紛争を生み出すような国になるべきではない」と名指しで中国批判を展開した。


米国にはレーダー照射にもかかわらずよく日本が我慢して反撃に出なかったという信頼感が報じている。国務省のメア元日本部長は「米軍であれば、攻撃と判断して反撃する」と述べている。


こうして安倍は訪米による日米同盟再構築に願ってもない材料を入手した。また国際社会への宣伝戦において中国の傍若無人ぶりを際立たせたことは、大きな成果だろう。


習近平が直接かかわっているか軍の暴走かは別として、軍にしてみれば普通にやっていた敵情偵察のための照射が、これによって不可能になったことを意味する。中国海軍は次に照射をすればそれは、確信的的な照射となり、武力衝突になり得ると感じたはずだからだ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月07日

◆ツイッターで“寸鉄に”刺されてしまった

杉浦 正章



慎太郎の「どこまでやるの」が始まる


江戸時代の戯れ歌に「家康に過ぎたるものの二つあり、唐のかしらに本多平八」がある。唐のかしらとは、中国より渡来してきた「ヤク」の角を配した兜のことだそうだ。


これを現代に当てはめるとさしずめ「日の本に過ぎたるものの二つあり、活断層に石原慎太郎」か。もちろんこの場合の「過ぎたる」は家康の「良すぎる」とは違って「悪過ぎ」のこと。


その慎太郎が12日にいよいよ予算委員会の代表質問に初デビューする。かねてから「若い連中と議論しても怖くねえ。最近は体を張って、殴り合いになってもいいから議論するという風潮がなくなった」と嘆いているが、何を“企んで”いるか興味が湧く。


とにかく去年の4月には「尖閣列島を都で買う」と宣言して、日中関係をここまで毀損した張本人だ。その敵対的なナショナリズムはとどまるところを知らない。


中国では尖閣を巡る日中対立は石原の陰謀によるという見方が定着している。尖閣をネタに米中対立をあおり、その間隙を縫って日本の軍事的な再台頭を狙っているというのだ。


確かに石原の極右国粋主義思想の根源には、憲法破棄・原爆保有・徴兵制実施が厳として存在しており、折に触れてこれが吹き出す。中国の見方は当たらずとも遠からじだ。


「寸鉄人を刺すような文章は俺はうまいんだ」。最近石原はフォロワー100万人の橋下徹のツイッターに刺激されてか、自分でもツイッターを開設した。


1月25日の1回目の書き込みで、「安倍内閣は公明党と肩を組むまま果たして、諸悪の根源の憲法を改正出来るのだろうか」「世界で孤立し軽蔑にさらされている原因の憲法を今変えなければこの国は沈んでしまう」と持論を展開。その主張には石原信者たちがしきりに“おべっかフォロー”をしている。


ところがが、最近こてんぱんの目に遭っている。逆に石原が“寸鉄”で刺されているのだ。石原が「日本は核を持たなきゃだめですよ。もたない限り一人前には絶対扱われない 世界の国際政治を見てごらんなさい。なんだかんだ言いながら、核を持ってる人間は、マージャンでいえば一翻(イーファン)ついてて上がれる」とアップした。


これに対して「ふざけるな核なんて使っていたらまた戦争になるじゃないか。核なんて持ってなくても一人前にはなれる」「何がイーファンだよ!頭が劣化ウランだ!"」といった具合だ。国際政治への無知丸出しの石原の主張に、さすがのネトウヨたちも、ついていけないようである。


そもそも、この石原の思想と維新の理念がマッチするかと言えば、全然マッチしない。原発問題がよい例だ。


石原を信奉する国会議員団代表・平沼赳夫が代表質問で事前に橋下と打ち合わせた内容を、明らかにわざと飛ばしてしまったのだ。事前調整では、「原発の安全基準、安全確認体制を明確に定めることが大前提」などとしていたが、「時間切れ」との理由で割愛した。


橋下らが脱原発依存の立場なのに対し、石原ら旧太陽の党メンバーは原発推進を主張している。こうした路線上の対立は、今後必ず火を噴くだろう。


煽(あお)って火を噴かせようとしているのがみんなの党代表・渡辺喜美だ。総選挙前に維新と合流直前までいったのに、石原にトンビにあぶらげをさらわれて頭にきているのだ。


とりわけ維新と候補者調整ができなかったおかげで、長年かけてようやく仕上げた候補を、どこの馬の骨か分からない維新候補に落とされて恨み骨髄に徹しているのだ。最近合流の条件として石原・平沼らの離党を挙げたと言われている。


その渡辺に国会の廊下で会った石原が「青嵐会では、おまえの父親と一緒に物事に判断を下していた。早く決断しろよ」と合流を促した。渡辺がお茶を濁していると、石原氏に「最近は癖のある政治家がいなくなったが、おまえは癖がありすぎだ」とまで言われてしまった。


だらしのないことに渡辺氏は「はいっ」と答えたのだという。どうも2代目というのは内弁慶が多くて情けない。仮にも国会議員に対して、「お前」呼ばわりとは何事か。


「本当に引っ掻き回すからな。この国会を」と予算委質問に向けてご老体は勢いづいている。しかし平沼の代表質問といい、石原の言動といい、維新のイメージはますます時代錯誤の“保守反動”ペースなって行きそうだ。


橋下が総選挙では庇(ひさし)を貸したが、石原票は全くふるわず大失敗。それにもかかわらす橋下は、石原に母屋を乗っ取られて「踏まれてもついてゆきます下駄の雪」なのだろうか。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)  

2013年02月06日

◆なぜレーダー照射の公表を遅らせたか

杉浦 正章



早急にホットラインの実現を図れ


問題は偶発戦争に発展しかねない事態だというのに、なぜ政府は1週間も護衛艦に対する射撃管制用レーダー照射の公表を遅らせたかと言うことだ。


ヘリへの照射からは18日もたっている。政府は意図的に中国フリゲート艦によるレーダー照射事件を伏せていたとしか思えない。最大級の挑発を国民に知らせなかったのはおかしい。国民の全くあずかり知らぬところで軍事衝突が起きた日中戦争を想起させ、りつ然とせざるを得ない。


野党は国会で経緯の明確化を迫るべきだ。一方政府は既に合意している日中ホットラインの設置を早期に実施に移すべきだ。


まず照射事件に対する政府の対応を分析すると、5日に防衛相・小野寺五典が急きょ発表した内容は、虚偽臭紛紛である。小野寺は発表が遅れた理由について「慎重を期し、正確な分析、検討に時間がかかった。きょう分かったので発表した」と述べたが、射撃管制用レーダーの照射を受けた護衛艦が、1週間もその真偽を検討するわけがない。


即応できる態勢がなければ護衛艦の役目は果たせない。事実、小野寺が語るに落ちた発言をしている。照射を受けて「現場に緊張感が走る事態だったと」述べているではないか。護衛艦はすぐに分かったから緊張が走ったのである。首相官邸には防衛省から照射当日の1月30日にレーダー照射を受けたとの報告があった。


イラク戦争でも米軍戦闘機はレーダー照射を受ければ瞬時に、照射した対象をミサイル攻撃している。戦闘機に即応できる装置を積んでいて、護衛艦が1週間もかかるとは噴飯物だ。ヘリへの照射も数分間にわたるものといわれ、最初から分かっていた可能性が大きい。


防衛省はヘリでのレーダー照射の感知が弱かったため、データ分析に時間がかかったとしているがこれも怪しい。現に前日18日には国務長官・クリントンの尖閣問題で中国の一方的行為に反対する旨の重要発言があったばかりだ。中国海軍が発言へのけん制に出たと見ることは可能だ。


それではなぜ発表を遅らせたかというと、ヘリの場合は、公明党代表・山口那津男の訪中を控えていた。共産党総書記・習近平との会談が予想された時期であり、事実25日には会談が実現、日中雪解けムードが台頭していた。


加えて元首相・村山富市や前衆院議員・加藤紘一ら日中友好協会の訪中が続いた。村山は28日には、北京で中日友好協会会長の唐家センと会談している。こうした一連の外交努力を考慮したのだろう。しかしそれならそれで外交配慮があったと説明すればよいではないか。


こうした中でのフリゲート艦による30日の照射となったが、安倍は同日中にに報告を受けているからか、1日の本会議答弁で尖閣への公務員常駐について「選択肢の一つ」と、首相になって初めて踏み込んだ発言をしている。また沖縄初訪問でも「領土、領海、領空に対する挑発が続いている」と発言した。


照射を知っての発言であり、いずれも強い対中けん制の意味が込められていた可能性が強い。国民はその背後を知らぬままであった。


問題はレーダー照射は中国海軍の暴走によるものなのか、政府や共産党首脳レベルで黙認したものなのかだ。習近平は山口に対しては安倍との首脳会談に前向き姿勢を見せる反面、28日には尖閣について「正当な権益は放棄しない」と発言している。


国内では不満分子が対日弱腰姿勢を口実にナショナリズムを煽り、軍や政府を突き上げている。1月14日には軍機関紙・解放軍報が一面トップで「中国人民解放軍総参謀部は2013年の軍事訓練に関して戦争にしっかり備えよと指示した」と報じた。海軍首脳は習近平の側近で押さえている。


こうしたことを考えれば、海軍はあうんの呼吸で習近平の意向を汲んで行動している可能性が強い。


加えて日本の軍事力偵察がある。最初にヘリで軽く試して、日本側から何ら反応がない。それでは護衛艦で試してやれということになったのだろう。


アメリカの戦艦や最近投入された空中警戒管制機(AWACS)に対して照射したら、すぐに攻撃される可能性が強いから、攻撃しないと分かっている日本に対して行ったのだ。国内向けには「日本を脅してやった」と胸を張れる。こうしてしたたかな習近平の硬軟両様の対日姿勢が浮き彫りとなったことになる。


自衛隊は十分承知だろうが、よほどの攻撃に発展しない限り、挑発に乗ってはならない。ここは一発くらった上で対応するのが最良の戦略だからだ。しかし安倍も山口や村山の訪中を生かすタイミングをつかみかねている。こうした緊迫した事態には歴史に学ぶ必要がある。


米ソ両国は一触即発のキューバ危機の後の1963年、ホワイトハウスとクレムリンとの間に、ホットラインを敷いた。トップ同士が軍の行動が本気なのかどうかを直接話し合う必要があるのだ。


既に昨年3月に民主党幹事長・輿石東と共産党対外連絡部長・王家瑞との間で重大事件や突発事故が発生した際に意思疎通を図るホットラインの創設などを盛り込んだ「交流・協力に関する覚書」が調印されている。これを早期に実現させることが日中危機回避の第一歩だろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月05日

◆安倍はオバマにTPP交渉参加を表明せよ

杉浦 正章



自民党は農協配慮の先祖返りの場合ではない


煎じ詰めれば簡単な話だ。環太平洋経済連携協定(TPP)はまず交渉に参加して「聖域無き関税撤廃」の壁を突き崩し、それができなければ脱退する選択をすればよいだけだ。


交渉参加前から落ち目の農業団体の組織票だけを目当てに、声高に反対するのは古色蒼然の先祖返りにほかならない。自民党は都市部の票がなければ294議席は達成できなかったことを思い起こすべきだ。通商国家としての展望を損ねてはならない。


農業団体に支配される構図が鮮明だ。自民党の反対派がつくる「TPP参加の即時撤回を求める会」の会員は200人を超え、頭から反対を唱えているが、TPPとは何かも知らぬままの付和雷同型議員がほとんどだ。冷静になって日本の産業構造を見てみるがよい。


農業従事者平均年齢でもっとも多いのは70歳以上で、全体のほぼ 4割。60代も3割だ。60歳以上が全体の7割を占めているのだ。30代以下は、わずか5%。要するに農業は爺さん婆さんで、その息子や孫はTPPで利益を受ける仕事に従事しているということだ。その時代錯誤の「即時撤回の会」が安倍訪米を前に8日に会合、気勢を上げるという。


自民党の外交・経済連携調査会(衛藤征士郎会長)は6日に会合を開き、首相訪米前の提言とりまとめを目指す。撤回側はその提言に影響力を行使しようというわけで、自民党内は政権発足後初の重要政治テーマでのバトルが展開されようとしている。


ここで先行国が唱えている「聖域無き関税撤廃」の実態はどうかと言えば、事実上「聖域ある関税撤廃」となりつつあるのだ。そもそもTPP加盟国は昨年中の締結を目指していたが、先延ばしとなった。とりあえずの目標は10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議である。


なぜ延びたかと言えば米国やカナダが自国産業の保護の主張をして集約が不可能となったからだ。従って安倍がお経のように「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉に参加しない」と唱える根拠は薄れているのだ。米国が砂糖を例外として主張するなら、日本は当然コメを例外とすればよいだけだ。


安倍の発言も比重が総選挙前は「参加しない」に重点を置き、今年になってから「参院選前に方向性を示す」に転換、党内から反発が出ると見るやぐらつき始めているのが現状だ。政調会長・高市早苗に至っては日米首脳会談で、安倍首相は参加を表明すべきでないとの考えを示している。


しかし自民・公明両党は総選挙後の連立政権合意書で「自由貿易をこれまで以上に推進する」としたうえ、TPPについて「国益にかなう最善の道を求める」と明記した。明らかに参加に柔軟な方針の表明である。安倍の本音は分かり切っている。交渉の参加はせざるを得ないというところにあるに違いない。


そして下旬のオバマとの会談で少しでも前向きの表現でTPP問題に対処したいのだ。同会談は民主党がぶちこわした日米同盟関係の再構築を目指す重要な会談であり、TPPへの参加は再構築への踏み石になるべき性格のものである。従って避けて通るべきではあるまい。


また苦肉の策で“密約”めいたこともすべきではない。首相というのは、国内の反対を前に追い詰められると、すぐに密約の誘惑に駆られる“習性”がある。


日米繊維交渉での佐藤・ニクソン密約が顕著な例だ。米国が日本に輸出自主規制を求めた日米繊維交渉をめぐり、佐藤栄作とニクソンが69年に年内決着でひそかに大筋合意したのだ。開示された外交文書でも明らかになっている。


この「密約」履行の遅れが日米関係の険悪化を招き「ニクソン訪中」と金ドル交換停止という2つの「ニクソンショック」につながっているのだ。下手に密約をして「オバマ訪中ショック」を招くようなことは日米同盟強化どころではなくなる。密約しても必ずばれる。あらかじめクギを刺しておく。


要するに日本は通商国家と工業立国で生きていくしか道はないのだ。交渉への参加もせずに、農協が怖くて馬鹿の一つ覚えで反対を唱えても得るものはゼロだ。参加をして日本の主張を新たな貿易・投資ルールの秩序にに盛り込まなければ、国家百年の計を誤る。


10月の決着を目指す場合日本も早期に対応を迫られる。米国は日本が参加表明しても議会の承認を得る必要がある。その手続きには3か月かかるとされる。安倍の安全運転が参院選後に急転換しても10月のAPECに間に合わなくなる恐れもがある。


自民党も安倍もここは大局を見て交渉参加の意志表示をオバマにすべきである。

        <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年02月04日

◆石破派旗揚げで“ポスト安倍”がジワリ

杉浦 正章
 

噴飯物の「小泉首相」説


さしずめ<無派閥という名で派閥出来上がり> といったところか。37人の石破派が自民党に誕生した。我慢ができなくなったのだ。


というのも権力者は、古来政界でも企業でもナンバー2を叩くのが常識だが、首相・安倍晋三もその例外ではない。幹事長・石破茂 を「恐るべし」と思うからこそ、遠ざける。党役員も腹心らで構成し、石破包囲網を作る。石破側近らとしては「このままではつぶされる」という危機感があり、それが「無派閥連絡会」の立ち上げにつながった。


かねてから石破が「派閥政治反対」を唱えていたから、奇妙きてれつな“無派閥派”を作ったのだ。石破が“ポスト安倍”狙いへと事実上の旗揚げをしたことになる。


自民党の派閥は総選挙後軒並み拡大した。衆参で町村派80人、額賀派50人、岸田派40人、麻生派33人、二階派28人、石原派15人、大島派12人といったところだ。


この中で37人が集まって石破派はスタートしたのだが、1月31日の初会合の数だけでは勢力は測れない。石破側近は「石破さんに言われてわざと少なめでスタートさせた」と漏らしている。石破の潜在勢力は1位の町村派に次ぐとみられている。


というのも総選挙圧勝は、石破のここ数年の地方行脚が奏功している側面が大きい。119人に達する新人議員の多くが石破と物心両面でのテコ入れによるつながりがあり、“石破チルドレン”的な色彩を帯びる議員も多いのだ。


加えて各派を見渡せば、町村派は町村信孝が脳梗塞で選挙運動もろくろくできなかったことが物語るように、領袖とは名ばかり。額賀福志郎も度々総裁選で失敗して69歳になった。もう出馬と言っても無理だろう。


したがってこの2大派閥は草刈り場だ。衆院議長になった伊吹文明も“一丁上がり”であり、大島理森も弱小派閥では動きようがない。外相・岸田文男はまだ海の物とも山の物とも付かない。環境相の石原伸晃は、総裁選に敗北して以来、何か脂っ気が抜けて小さくなったような印象を受ける。


ただ一人、安倍が首相で復帰できるなら、おれだってと張り切っているのが麻生太郎だ。安倍は石破と仲の悪い麻生を副総理として内閣に入れた。麻生としては病気を抱える安倍が万一退陣となれば、首相臨時代理のまま自民党総裁選で総裁に選出されて、首相に復帰する“夢”を描いていてもおかしくない。


しかし、おかしくないと思っても首相急死で臨時代理になった例は大平のときの官房長官・伊東正義と小渕の時のやはり官房長官・青木幹雄であり、いずれも首相にはなっていない。田中角栄が「伊東君がその気になれば後任になれた」と漏らしていたが、律義な伊東は固辞した。


しかし麻生は狙っているのだ。その総裁選では石破が強敵になることは確実であり、今から叩けるだけ叩いておくというのが麻生の戦術だ。だが72歳の高齢であり、よほどの幸運に恵まれない限り再任の可能性はない。石破は安倍の包囲網に遭っているように見えるが、後継問題では本命中の本命といってよい。


面白いのは「小泉進次カ首相説」だ。永田町の半可通やテレビの評論家までが次は小泉とはやし立てる。なぜかというと青年局長だからだという。評論家の後藤謙次は3日のテレビで「小泉さんは青年局を母体にして総理総裁を目指す。イギリスでもキャメロンが39歳で党首となった」と褒めちぎたうえに、石破と拮抗するかのような分析をしたが、荒唐無稽(むけい)と言いたい。


いくら総選挙圧勝で青年局が82人に急増したからといって、同局は自民党の1組織であり、派閥的集合体ではない。その論理から言えば総務会長だから首相になれる、政調会長だからなれるというのと同じ事だ。


たしかに青年局長経験者は5人が首相になっている。竹下登、宇野宗佑、海部俊樹、安倍晋三、麻生太郎だが、いずれも派閥力学でなったのであり、青年局長だからなったのではない。後継争いともなれば、党の組織としての青年局が小泉擁立で一丸となって戦いに挑むなどと言う光景はマンガでもあり得ない。


もちろん石破は青年局の若手を支持基盤にするだろう。確かに小泉は、優秀な政治家としての素質を備えている。しかし鳩山由紀夫や菅直人が適性に欠ける上に経験不足から失政の上に失政を重ねたように、次を狙うような誤判断をしてはならない。いま31歳だ。あと20年は“ぞうきん掛け”をして党や内閣で勉強を積まなければならない。まさにやせ馬の先走りは大けがのもとだ。


こうしてまだ気が早いが、自民党のポスト安倍問題は、各派の思惑を背景にジワリと動き始めたのだ。


トップができれば候補者は次を目指して切磋琢磨するのは権力闘争の常であり、別に悪いことではない。返って党が活性化するのであり、石破のように「無派閥でござい」と銘打って無派閥派を作る心配など無用だ。スポーツ精神で堂々と権力闘争をすればよい。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年02月01日

◆危険極まりないネット選挙解禁

杉浦 正章



監視態勢なしでは西部劇の場となる


これまで度々実施しようとして実現しなかったネット選挙が夏の参院選挙から解禁となりそうな情勢となってきた。最大の理由は「ネットだけが味方」と訴えて、ネトウヨ(ネット右翼)に支持されてきた首相・安倍晋三が積極的であるからだ。参院選挙でも有利な自陣に引き込もうというわけだ。


しかしそうは問屋が卸さないのがネットの世界。西部劇のように“早撃ち”の悪漢が虎視眈々と狙っている。生き馬の目を抜く世界だ。様々な化け物、魑魅魍魎(ちみもうりょう)も住んでいる。中国あたりからサイバー攻撃を食らう可能性も否定出来ない。


自民党が31日まとめた公職選挙法改正案によると、これまで公示後は禁止されてきたウェブサイトの更新、電子メールの送受信に加え、ソーシャルメディアの利用も認める方向だ。


ソーシャルメディアとはフェイスブックやツイッターなど今流行のウエブサイトだ。2月中に議員立法で法案を提出し、夏の参院選からの適用を目指す。主要政党はおおむね賛成だ。古色蒼然たる選挙法が時代の要請にマッチしたものとなることはご同慶の至りだ。


何度も実現しなかったのはひとえに各党長老らが、若い候補に有利になるとしてつぶしてきたからに他ならない。しかし運用次第では選挙に大混乱を来す“両刃の剣”であることを忘れてはならない。


選挙の要点「カバン(資金)、看板、地盤」のない候補に道を開くものになるというのが法改正のキャッチフレーズだ。ネットの伝搬力は使い方によってはビラやポスターを軽くしのぐものがある。しかし本当にカバンがなくても選挙が出来ると見るのは甘い。


なぜなら閲覧頻度の高いサイトに仕立て上げるには何と言っても資金力が物を言うからだ。安倍のサイトがよく見られるのは、緻密な計算に基づいて莫大な費用をかけて作り上げているからだ。安倍が一人で作っているわけではない。かかりっきりのスタッフがいなければ維持できない。


従ってプロの業者に頼むことが最大の近道だ。ネット選挙解禁が報じられた31日はそのネット関連企業・デジタルガレージの株価が大反発、一時前日比1万8000円(8.7%)高の22万5000円まで上昇した。これが物語るところはソーシャルメディア関連企業や広告業など“業者”が儲かるということであり、金はかかるのだ。


またメール解禁と言うが、これもメルアドをいかに獲得するかで勝負が決まる。それにはやはり資金力だろう。


オバマはネット献金で再選を獲得した。電子メールを大量に送って個人献金を呼びかけた。その結果、総額3億4千万ドルもの個人献金を集めることができたのだ。


日本でもネット献金はある。楽天が運営している政治家や政党への献金サイト「楽天政治LOVE・JAPAN」だ。すでに300人近くの国会議員がアカウント持つており、09年に開始して以来献金額はうなぎ登りだ。といってもオバマの規模にはとても達せず、最多となった衆院選直前の11月で総額約410万円。


サイトを開くとあいうえお順に政治家約300人が、がん首を並べており、名前をクリックしてクレジットカードで献金できる仕組みだ。しかしこれもなりすましで献金をせしめるネット詐欺師を横行させることになりかねない。ネット選挙解禁と並行してネット献金への警察の監視も重要だ。


さらに混乱要素としては候補者のコンピューターへ侵入して情報を操作するハッキング、偽情報の流布、ネガティブキャンペーンの展開、掲示板をめちゃくちゃな書き込みで“炎上”させるなどの行為が横行する可能性がある。


現にオバマは選挙中「イスラム教徒説」が流布されて、防戦にかかり切りとなった。候補同士の攻防などまだ序の口でかわいいものだ。例えばサイバー攻撃の巣窟(そうくつ)である中国から選挙妨害の手が入ったらどうなる。


31日明らかになったところによるとニューヨーク・タイムズは、去年10月に「中国の温家宝首相の親族が1000億円以上に上るばく大な資産を蓄えている」と伝えたころ、中国からのサイバー攻撃を受けてすべての従業員のパスワードが抜き取られた。


同紙は「記事に対する報復で、中国の軍が関わっている可能性がある」としている。中国の特殊機関でも軍でも民間でも選挙でサイバー攻撃を仕掛け、特定の政党や候補に不利になるように操作されたら選挙は成り立たない。


要するに一口にネット選挙解禁といってもクリアしなければならない問題は山積している。法案を早期に成立させても混乱なしに選挙を実施できるかどうかは、実におぼつかないという側面があるのだ。ネットは選挙運動の自由度を広げ、国政への参加の機会を拡大させることは確かだ。


しかし容易に選挙運動ができるということは、容易に選挙妨害ができることでもある。政府がよほど厳重な監視態勢を構築しない限り、選挙が西部劇の場となる。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月31日

◆野党の代表質問は湿った線香花火

杉浦 正章



安倍、憲法・原発など衣の下から鎧
 

駆け出し政治記者の解説記事みたいで、突っ込みが足りないのが民主党代表・海江田万里の質問。年増男のすり寄りみたいで薄気味悪いのが、維新国会議員団長の平沼赳夫のエール。


自公325議席の壮観に圧倒されたか、野党による衆院代表質問は首相・安倍晋三の安全運転の壁を突き破れぬまま、湿った線香花火のようであった。これでは通常国会は与党ペースにはまってしまう。


民主党308議席の時の本会議場はまるで成金のような小沢チルドレンたちが大騒ぎしてみっともなかったが、さすがに自民党は老舗の教育が行き届いていると見える。“丁稚議員”らも紳士的であった。


演壇に立った海江田は議場を見回して、隅っこの学校の一クラスあまりしかない民主党席に意気込みも萎えたに違いない。ひたすら汗をかいて誰が描いたか分からない原稿の棒読みに終始した。その内容は参院議員会長・輿石東がかねてから「経済評論家なのだから、気の利いた一言でアベノミクスを切らないと」と陰で批判していたとおりだった。


海江田は焦点の経済再生に照準を合わせたものの、その質問は“常識的”であり、ひらめきなど感じられなかった。


海江田はアベノミクスを「族議員が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する利益誘導政治、弱肉強食社会を生む新自由主義的な経済政策などが復活しようとしている」と批判。道路特定財源の復活ともとれる古い自民党的体質をクローズアップさせようとした。


しかし安倍から「長引くデフレや円高が、頑張る人が報われるという社会の信頼の基盤を根底から揺るがしている」と大向こううけのする発言で切り返えされてはどうしようもない。


海江田に迫力が生じないのは、議席数だけではない。民主党3年3か月でアベノミクスに匹敵する経済対策は打ち出せず、党内抗争に終始して政策より政局の政治しかできなかったことが負の遺産として重くのしかかっているのだ。


確かにアベノミクスは特効薬か劇薬かはまだ不明だが、内閣支持率は好転、市場が好感して株価上昇と円安局面という展開だ。これを前にしては、海江田も撃つタマがないのが実情だろう。党内の反対を考慮してか環太平洋経済連携協定(TPP)には一言も触れず、所信表明で触れなかった安倍と同様に、TPPが与野党の“鬼門”であることがはっきりした。


安倍は超安全運転に徹したが、さすがに衣の下から鎧が見える答弁もみられた。まず憲法改正に関しては「まずは多くの党派が主張している96条の改正に取り組む」と明言した。過去に首相が国会答弁で憲法改正に具体的に言及した例はない。集団的自衛権の行使に関して「新たな安全保障環境にふさわしい対応を改めて検討する」とこれも持論を表明した。


民主党政権の「30年代に原発ゼロ」方針については「具体的な根拠が伴わない。ゼロベースで見直し、責任あるエネルギー政策を構築する」と、再稼働と新設に改めて前向き姿勢を見せた。


日中関係は、芽生えた対話ムードを評価してか「もっとも重要な2国間関係の一つだ」と形容した。その一方で尖閣問題を巡っては「領土、領海、領空は断固として守る。わが国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、防衛体制の強化の観点から見直す」と中国をけん制している。中国には硬軟両様の構えを見せた。


こうしたタカ派の姿勢に好感してか、平沼の方は海江田と異なりアベノミクスを評価すると共に、安倍の憲法改正や集団的自衛権行使を礼賛した。「日本再生のために頑張って欲しい」 「経済政策での首相の立場に共感を覚える」と度々エールを送った。


平沼は事前に大阪の共同代表・橋下徹にも内容を説明したようだが、党機関の討議を経ての質問ではない。維新支持層は基本的には浮動票だが、傾向としては改革を求める層が多い。保守色の強い平沼の理念と「大阪維新」を含めた、支持層の理念とは必ずしも一致しないだろう。


平沼は石原慎太郎の「憲法破棄」論にも言及して、石原への気配りを見せた。1か月後の施政方針演説では手のつけられない極右国粋主義者の石原が代表質問をするという。憲法に加えて「尖閣で血を流す覚悟」「核保有」「徴兵制」などの発言を繰り返せば、「石原・太陽」グループと「大阪維新」の溝は深まる一方であろう。


せっかく初々しいはずの新党も、石原や老人グループが着々とそのイメージを形成しつつある。橋下が不本意でないはずはない。


こうして通常国会の代表質問は今国会の与野党攻防図を鮮明にさせる形となった。民主党は大筋としては対決路線を進めるものの、社会保障と税の一体改革での3党合意も守らなければならない。何でも反対政党はもう世論に通用しない。従って鋭角でなく鈍角の対決にならざるを得まい。


維新は「第二与党」の色彩を帯びそうな気配だ。だから野党は補正予算案や来年度予算案を人質に取るような国会運営はできないだろう。もっとも半年後に参院選挙が迫っており、自民党にとって安易な国会運営はできないことは確かだ。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

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