2013年01月30日

◆野党三つどもえの揺さぶり合戦

杉浦 正章
 

落ち目の民主が最大の標的に 


大げんかはしたがやはり野党連携の焦点は日本維新の会とみんなの党であろう。この2党が脳しんとうを起こして息も絶え絶えの民主党を食いちぎれるかどうかだ。しかし維新、みんな、民主それぞれに分裂要因を抱えており、内情は混沌の極みだ。自民党は「当分様子を見てチャンスが来たら手を入れてゆく」(党幹部)と虎視眈々と動向を注視している。


物事には表と裏が常に存在する。27日のみんなの党の党大会で代表・渡辺喜美が「維新との合流はない。維新には猛省を促したい」とあえて発言、維新共同代表・橋下徹を挑発した思惑はどこにあるのかだ。なぜ党大会の場を選んで維新に喧嘩を売ったかだが、背景には維新との合流を巡る党内の確執がある。


渡辺は合流に前向きな幹事長・江田憲司が煙ったくなってきているのだ。江田は維新幹事長・松井一郎と23日に会談、参院選の1〜3人区で候補者を一本化することで合意。両党の合流も視野に政調会長同士で政策協議を進める方針でも一致している。


27日の北九州市議選でも、選挙区のバッティングを避け、みんなと維新が各3人ずつの候補を擁立して計6人が全員当選を果たすという成果を達成している。


渡辺はこの江田ペースの進展に、党分裂の危機を感じて引き締めを図ったのが、維新に向けてけんかを売った経緯のようだ。渡辺は、総選挙前に橋下が合流を直前でキャンセルして、石原慎太郎の太陽の党と合併した“裏切り”がトラウマとなっているのだ。新党志向の江田をけん制して、党内固めを計ったのだ。


橋下が仲直りの電話をかけても渡辺は出ず、橋下は留守電にメッセージを残している。一方で江田は電話に応じて「双方撃ち方止めとしましょう」と取りなしている。今後も橋下・江田ラインで物事は展開する様相を見せている。


渡辺は、石原が憎くてたまらない様子がありあり。側近には「石原を切らないと3極は伸びない」と漏らしており、石原・太陽グループを橋下が切り捨てるよう陰に陽に働きかけている。身の危険を感じたか石原も渡辺を不倶戴天の敵扱いで、渡辺に対して「ちょっとばかり『おとっつぁん』とはだいぶ違う。自意識がありすぎるんじゃないか」と究極の一発をかましている。


「おとっつあん」とは言うまでもなく昔自民党時代に「青嵐会」で行動を共にした元副総理の渡辺美智男だ。確かにこの親子は政治家の大きさや度量においても格が違う。渡辺はこまっちゃくれているのだ。


いずれにせよ維新とみんなの合流にとって最大の阻害要因が石原であり、橋下は第3極を第2極にするためには、石原と袂を分かつかどうかの決断を迫られるだろう。もともと選挙目当てで石原を担いだが、大失敗に終わったのであり、本心は“老害除去”にあるのだろう。


一方橋下は28日、「みんなの党、民主党の一部と合流して自民・公明両党の勢力に続く「第2極」を目指す新党を結成する」との構想を打ち上げた。政界では「人が良い」と馬鹿は同義語だが、民主党は、その人が極めて良いと言われる代表・海江田万里や幹事長・細野豪志の存在感が薄く、再分裂が常にささやかれている。


民主党政権は、自民党を始め野党各党からピラニアのように食いちぎられる恐れが出ているのだ。生活代表・小沢一郎も自らに近い輿石東を使って、分裂・合流を策しているといわれる。橋下が狙うのはまず民主党政権時代から接触のある前原誠司だ。前原グループは半減したとはいえ衆参約20人を擁している。これに野田グループ約10人が加われば相当の勢力になるだろう。安住淳らとも近い関係にある。


民主党は大失政の上での大敗北であり、予見しうる将来政権に復帰できる見通しはゼロと言ってよい。したがって離党して展望のある政党に移りたいと、うずうずしている議員が多いのが実情だ。海江田では求心力どころか遠心力が働くばかりである。


自分が切られかねないことも棚に上げて石原も28日、「まず民主党を割らせることだ。労働組合に左右される議員と、中選挙区制度なら自民党で出馬するような議員が、水と油で一緒になっているのはおかしい」とくさびを打ち込んでいる。


野田や前原のように、他党の優秀な政治家と比較しても遜色のない判断力を持っている政治家は、本来なら三顧の礼を以て迎える政党があってもおかしくない。しかし野田や前原がが“大阪のあんちゃん”橋下の配下につくことなどは想像しがたいところでもある。むしろ自民党に移った方が展望が開けるかも知れない。


橋下は記者から「民主の一部とは誰か」と問われ、「そんなことを言えるわけないじゃないですか」とけんもほろろの回答をしたが、実際には言えるほど話は進んでいないのだ。橋下も揺さぶりに出ているだけなのだ。


いずれにしても民主党は第3極に押されまくっており、弱肉強食の政界で今後“揺さぶられ”続けてゆく運命にある。自民党はこうした野党の三つどもえの“あがき”を見極めつつ、まずは政策ごとの部分連合などで地歩を固めてゆくことになろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月29日

◆安倍演説は小心なる“炬燵弁慶”だ

杉浦 正章
 

目立つ党利党略の安全運転


「なんだこりゃ」と思わずつぶやいたのが、首相・安倍晋三の所信表明演説であった。所信表明でなく小心表明だ。危機だ危機だと14回も繰り返したのはよいが、尖閣の「せ」の字も、原発の「げ」の字もTPPの「T」もない。就任後初の演説から垣間見えるものは、就任当初から指摘した通り“小心翼翼”ぶりでしかない。


本会議に先立つ両院議員総会では、「この国会は極めて大切な国会だ。まさに日本を取り戻す第一歩となる国会だ」と発言したから、これは相当すごい演説になるぞと思ったら、拍子抜け。家の中では威勢がいいが、外に出ると打って変わる「炬燵(こたつ)弁慶」とはこのことだ。


筆者も長いこと政治記者をやっているが、首相演説の内容より、言わなかったことを列挙するのは初めてだ。聞きたいことは多かった。何と言っても喫緊を要する対中外交にどう臨むかだ。公明党代表・山口那津男が訪中して、中国共産党総書記・習近平と会談、対話への突破口を開いたばかりである。首相の見解は当然出されるべきだった。


石原慎太郎の言うように憲法改正など誰が見ても将来的な課題に言及する必要は全く無い。しかし対中関係は避けて通れぬ課題だ。山口にねぎらいの言葉くらいかけてもおかしくなかった。


原発も環太平洋経済連携協定(TPP)も国論を2分する課題だ。しかも原発は国の命運を左右する問題であり、自民党は総選挙において再稼働を宣言して戦った。勝利を占めるととたんに引っ込めるのは、明らかに公約違反だ。異論のあるテーマは一切避けて、誰も反対しない経済再生など無難なテーマに絞った“逃げ”とも言える演説だった。


自民党内には「思慮深い」という声があるが、果たしてそうか。ことは就任早々の所信表明である。総選挙に圧勝した党の首相発言として固唾をのんで聞くことになる。それが肩透かしだ。「1か月後に施政方針演説があるから重要課題は先に回した」というのが本人とブレーンらの判断らしいが、まさに誤判断だ。


なぜなら一か月たてば国会審議の過程で、すべての課題は掘り尽くされ、施政方針などはもぬけの殻の“二番煎じ演説”にならざるを得ないからだ。就任早々からブレーンの誤判断が目立つ。自民党は安全運転に徹すると言うが、それは国民のための安全運転ではなく、党利党略優先の安全運転ではないか。


演説に先立って、民主党幹事長・細野豪志がいいことをNHK討論で言っていた。「自民党の公約に目を向けると、竹島の日とか、尖閣に公務員を常駐させるとかを掲げた。我々もマニフェストでできなかったことがある。そこは反省する。しかし自民党は初めからやる気がなくて言っていたとしか思えない。そうだとすれば、これは罪深いと思う」と指摘したのだ。


まさに公約違反の“確信犯”だというのだ。民主党のマニフェスト批判を繰り返してきた安倍が、こんどは攻守所を変えてで攻められることになった。


野党の反応も極右・石原から極左の社民党代表・福島瑞穂まで一致して「物足りない」の合唱だ。自民党青年局長・小泉進次カまでから「野球であはいくら守りに徹しても、1点取らなければ勝てない。攻めるところは攻めなければならない」と言われてしまってはどうしようもない。


要するに安倍も自民党幹事長・石破茂も、衆参ねじれ国会を意識するあまりに、超安全運転に徹する姿勢を貫くつもりらしい。もちろん参院選挙での逆転で長期政権を狙ったものであるが、虎穴に入らずんば虎児を得ずである。


断言しておくが、長期政権などは狙って実現できるものではない。懸案に真っ正面から立ち向かってこそ実現可能となるのだ。“水物”のアベノミクスを売るだけで国会を乗り切ろうとする姿勢では、早々に支持層が離反すると心得るべきだ。


唯一目立ったのは安倍の元気さだけだ。演説を聴いていた医者がテレビで「潰瘍性大腸炎は悪化すると貧血が進んで顔色が青白くなってくる。今日の首相は非常に顔色がいいので相当好調であることに間違いない」と太鼓判を押していた。


テレビ出演ではドーランを塗るから分からないが、たしかに選挙中は青白い顔や青黒い顔をしていたことが多かった。今後あの安倍の健康状態を見るポイントは「青白くなったかどうか」であることが分かった。


         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月28日

◆尖閣は日中で30年かけて「研究」せよ

杉浦 正章
 

公明による打開の糸口はできた
 

公明党代表・山口那津男の訪中は、72年の田中角栄による日中国交正常化に先立つ同党委員長・竹入義勝の訪中を彷彿(ほうふつ)とさせる。竹入は復交に突破口を開き、山口は日中危機に打開の糸口を見出した。「共に井戸を掘った人を忘れない」中国の公明党重視の現れだ。



これを“活用”した田中に似て、首相・安倍晋三もフットワークは軽妙なものがある。今後は視野に入った日中首脳会談に向けて、共産党総書記・習近平が「ここに至る環境を整えることが重要」と述べている通り、数々の難関を通り越えなければならない。



現在の日中間には「対話」 そのものが必要なのであり、まず政府はその対話を粘り強く、忍耐強くたとえ30年間でも持続させる。その中で、尖閣問題は「研究」対象にする方向で“妥協”することが望ましいのではないか。



竹入は98年に朝日新聞に寄せた回顧録で「周恩来首相との秘密会談で一番驚いたのは賠償放棄の申し出であった」と述べている。野党党首としては戦後まれに見る重要な外交努力であったことを物語る。また周恩来が「田中さんに恥をかかせませんから、安心して中国に来てください」と田中訪中の受け入を表明したことも明らかにした。



一方41年後、尖閣を巡る偶発戦争も予感される中での山口との会談で習近平は、安倍の親書を受け取って「2006年の第1次安倍内閣の時に中日関係の改善、発展に積極的な貢献をしたことを高く評価している。再び首相になられ、新たな貢献を期待している」と述べた。また安倍が中国政府と確認した戦略的互恵関係について「推進したい」と関係改善に意欲を見せた。習は明らかに野田政権と安倍政権を分けた対応を示したのだ。



これにより日中関係は戦略的互恵関係の原点に向けて回帰の一歩を踏み出したことになる。この中国側の対応には国内経済、対米、対東南アジア外交を見据えた習の戦略上の選択が感知される。野田の尖閣国有化で内外に向けて拳を振り上げたものの、これを“そろり”と降ろさざるを得なくなったのだ。



第1の背景に経済上の問題がある。下がり続けている国内総生産(GDP)が13年ぶりに8%を下回った。危機ゾーンとされる6%を上回らなければ中国経済は構造的に成り立たないとされている。尖閣を巡る暴動で極めて厳しい状況に追い込まれている。日本には打撃であったが、それに劣らぬ打撃を被ったのだ。



対米関係も中国にとってクリントンの「日本の施政権を損なういかなる行為にも反対する」発言は予想外の強さであり、日米安保体制の固さを感じ取ったのだ。領空・領海侵犯を繰り返した事実上の「軍事偵察」も、日米連携の強さを認識せざるを得なかったのであろう。同時に米国は中国に対しても外交ルートを通じて「対話」の必要を促していた。



さらに安倍政権の東南アジア外交は成功裏に展開し、南シナ海で中国の海洋進出にさらされる国々と日本の連携は一層の深まりを見せた。また習にしてみれば、国有化を断行した野田が続いていれば関係改善は困難であったであろうが、安倍政権の実現は渡りに船であった。



その安倍は筆者が前々から明らかにしているように駐日大使・程永華と首相就任前から秘密裏に会談、対中対話に向けた水面下の動きを展開した。これが山口訪中の下準備として奏功したことは言うまでもない。



中国側は、メディアの挑発的な報道を抑制するように新聞・テレビなど報道機関に指示している。“軟化”を象徴させる動きだ。



今後の日中対話の焦点は、尖閣を巡る話し合いをどのような形で実現させるかだ。尖閣問題はいくら日本が「領土問題は存在しない」という立場を変えなくても、何らかの対話を実現させるしか選択肢はないのが現状だ。「存在しない」と「存在する」の180度の違いを埋めてゆかざるを得ない状況になりつつあるのだ。



ここは知恵の出しどころだ。日本の実効支配を前提として、話し合いの接点を探るにはどうすればよいかだ。かつて日米間には「日米貿易経済合同委員会」があった。年に1度首相や閣僚が相互訪問して大局を話し合う場だ。そのために事務当局が懸案事項を事前調整して積み上げた。これと同様に日中間にも「日中外交・経済合同委員会」を設置して、大局を話し合うべきではないか。



その大局協議の中で尖閣問題を取り上げればよいのだ。もちろん普段の接触は下部機関が行い、積み上げる。尖閣は日本が実効支配しているが、外交上の懸案としては間違いなく存在している。その事務レベル外交協議の中で尖閣問題は「研究」すればよい。国際政治の駆け引きではなく、純粋学術的に研究するのだ。冒頭掲げたように30年かけても半世紀かけても研究をし続けるのだ。



もちろん日本による実効支配の構図は変えない。前防衛相・森本敏が「自衛隊は尖閣の実効支配を確実なものにする態勢はとっている。そこは全く心配いらない」と述べている。自衛隊は中国軍の侵攻を想定したあらゆる事態に即応する態勢を確立しているといわれる。普段は公船や航空機が侵入すれば排除し続ける状態を維持し、戦略上絶対に挑発や先制攻撃は避ける。この態勢を話し合いが続く限り維持するのだ。



つまり30年でも半世紀でも忍耐強く続けるのだ。問題の決着は日本がより繁栄して国力を維持できるか、衰退路線を辿るかによっても決まってくる。また中国共産党独裁体制が崩壊して、価値観を共有する民主主義政権が誕生するかによっても左右される。



問題を歴史の判断に委ねるのだ。その意味で共産党対外連絡部長・王家瑞が山口に「今の指導者に知恵がなく解決できないとすれば、後々の世代に解決を託すということもある」と述べたのは傾聴に値する。大局においてトウ小平の判断と同じだからだ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月25日

◆小沢は「油尽きて火の消ゆる如し」

杉浦 正章
 


だがその魂は迷い続ける
 

<とんぼつり今日はどこまで行ったやら>は加賀千代女の句とされているが、シークレットサービスも付かなくなった小沢一郎も、深く潜って行方が分からんのだ。時々水面上に顔を出して鯨のように潮吹きしてまた潜る。結構自由な生活を楽しんでいるかも知れないが、数少ない潮吹きで現れた姿を分析すれば、まだまだ枯れていないことが分かる。



自民党、細川政権、羽田政権、新進党、民主党と政権が変わるたびに陰に陽に主役を演じて、古希まで来た。ところが先の総選挙でチルドレンの大半を失って、完膚なきまでにたたきのめされた。それでも、夢よもう一度と頑張ろうとしている。頑張っても無駄なのに“妄執”がそれを許さないかのように見える。



空元気かも知れないが、小沢は正月から元気。毎年100人前後が小沢詣でをするが、今年は閑古鳥が鳴いてたったの13人。けれども決してめげない。「自民党の一人勝ちを許すわけにはいかない。今夏の参院選が勝負だ」と怪気炎をあげた。地元岩手でも「反攻の第1ステップとして参院選に全力で当たっていきたい」と、まるで大政党の代表のようなお言葉だ。



しかし凋落ぶりは覆うべくもない。琵琶湖周辺の山に潜んでいた欲深山姥(やまんば)を「100議席は当選する」とだまして、乾坤一擲の勝負に出たまではよかった。突然浮上させて、マスコミも大騒ぎ。朝日新聞は“家訓”の脱原発がこれで実現するかのように大げさに取り上げた。マスコミや婆さんをとことんだました小沢のスキルは相当なものであった。



ところがこともあろうに国の生命線であるエネルギー政策を錦の御旗に掲げたのが失敗だった。「卒原発」なる婆さんの訳の分からんキャッチフレーズも空しく響いて、公示前勢力61議席は9議席に激減。国民は原発政策まで政治に利用する小沢流ご都合主義を「愚弄するな」と愛想を尽かしたのだ。
 


ところがそれでもめげないのが小沢流。今度は政党交付金を目当てに、婆さんに何かといちゃもんをつけて分裂を策した。結局だまされ婆さんには国会議員たった一人の日本未来の党だけが残され、小沢は生活の党を結成してごっそり交付金をいただけることになった。



その生活も操り人形・森ゆうこに代表を任せていたが、ついにこらえきれなくなって自ら25日の党大会で代表に就任するのだという。しかし基盤は衆院7人、参院8人のたったの15人。何と世論調査の政党支持率は驚くなかれゼロだ。



この手兵を率いて参院選の中原に駒を進めようというわけだ。「総選挙の結果を見ても野党の分裂が敗因。一つに結束しなければ自公に勝てない」と得意の政党間の“接着剤”を目指す。悪名高き民主党マニフェストが証明したように小沢はもともと政策なんかまるで知らない。政治屋は理念や政策なんかはどうでもいいのだ。



その最初の“手口”は首相指名選挙であった。なんと分裂してぶちこわした民主党代表の海江田万里に参院議員らを投票させたのだ。海江田は代表選挙でも小沢の支持を得て得票を伸ばしており、小沢は2度にわたって“恩”を売ったのだ。ちょっとお人好しの海江田ならだませると思ったのかも知れないが、これが逆効果に出た。



思わぬ小沢の大接近に民主党内に“戦慄”が走ったのだ。「また小沢が来るぅ〜〜」という悲鳴があがったのだ。海江田もとりあえずは小沢を敬遠した形だ。
 


しかし、小沢悪女の深情けはそう簡単には消えそうもない。それどころか深く潜行してストーカーの如くつきまとう。狙いの中心は参院議員会長・輿石東だ。輿石は野田政権で幹事長でありながら、首相・野田佳彦を度々裏切り、小沢の執事役を務めた。政局を小沢の言うとおり任期満了選挙に持って行こうとした。



結果的にはその作戦が大敗北の党内で正しかったことになり、発言の比重を高めたのだ。だから小沢は輿石を民主党内の“感染源”として利用するのだ。参院選前に小沢は必ず輿石を使った動きをしようとするだろう。



もっともそうなれば“旧主流”と呼ばれ臍(ほぞ)をかんでいる野田佳彦や前原誠司も黙っていないだろう。民主党は小沢が手を入れれば入れるほど分裂傾向を強めるのだ。



一方、日本維新の会はどうか。石原慎太郎と橋下徹の両共同代表ともに「ノーモア・オザワ」である。石原はもともと毛嫌いしているし、橋下も小沢にだまされるような馬鹿ではない。こうして小沢の実態は基本的には深い孤立化の中にある。



既に江戸時代の中期の浮世草子「一夜船」が小沢のような人物の行く末を見通しているのだ。「迷魂は火の如く豪力は油の如し。油尽きて火の消ゆる如し」である。しかし小沢の魂の迷いは続く。油が尽きたのも知らぬまま。炎がじりじり断末魔の音を立てているのも知らぬまま。平家物語でも「盛者必衰」と予言している。



もうジタバタしても小沢中心の野党共闘など夢のまた夢だ。ましてや参院選の改選6議席の運命も全く定かでないのだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月24日

◆「景気・安保」に野党の抵抗は困難

杉浦 正章



通常国会は安倍ペースで当面推移
 

28日に開会する通常国会は7月の参院選以降の政局を決定づけるだけに、野党共闘が成立するかどうかが最大の焦点となる。これまでのところ野党の潮流は、日本維新の会とみんなの党の接近による第3極勢力と民主党の主導権争いとなりそうな雲行きを見せており、統一される方向にない。首相・安倍晋三がその分断を狙って維新、みんなに大接近しているというのが鳥瞰図だ。



安倍の“錦の御旗”は景気対策と尖閣問題であり、これは参院選対策としても野党が抵抗しがたい側面を持つ。少なくとも通常国会冒頭からの流れは政権側にあるが、中・終盤にかけては国会には“魔物”が潜んでおり予断を許さない。



総選挙の結果“脳しんとう”状態から脱しきれない野党トップが二人いる。民主党代表の海江田万里と維新の石原慎太郎だ。海江田は誰も実力者が手を挙げない代表選挙で選出されたが、茫洋として鋭さがでてこない。党をどっちに牽引するかの方向性も分からない。



一方で石原は、太陽を維新と結びつけたのはいいが、結果として狙った石原ブームなどは全く起きず、総選挙は何のことはない維新の足を引っ張っただけであった。みんなは石原と組んだ維新を見て合流から外れ、結局自民党に漁夫の利を許した。



民主党は野田佳彦や前原誠司が“旧主流”とされて発言権を失い、選挙に最後まで反対した日教組の参院議員会長・輿石東が力を温存した。維新の会は「石原太陽系」と「橋下大阪系」のあつれきが生じている。こうして石原が民主党を「分裂するだろう」と批判すれば、維新もみんなの代表渡辺喜美から「橋下さんが自民の補完勢力の石原太陽系の上に乗ってしまえば分裂は避けられる」と逆説的に分裂の可能性を指摘される始末だ。



その維新と民主党が共闘を組めるかというと、まず無理だろう。なぜなら橋下は大阪で日教組とデスマッチを繰り返してきており、日教組の輿石が力を持つ民主党とはとても組める状況にはない。それどころか23日には維新とみんなの幹事長会談が選挙後初めて開かれ、夏の参院選で自民、公明両党の「過半数割れ」を目標に、選挙協力を進めることで一致した。ただし維新とみんなの合流は「アジェンダが違う」(渡辺)ため極めて困難だ。



こうして野党は主要政党がそれぞれの思惑を秘めて通常国会では主導権争いを展開しそうな雲行きであり、一致結束して自公政権に立ち向かう流れとはなりにくい。その間隙を狙って安倍は橋下、渡辺と相次いで会談した。橋本との会談の意味するものは「石原外し」であり、今後維新とは安倍・橋下ルートで話し合いが進むことを物語る。渡辺との会談は景気対策でほぼ目的を共有するみんなとの接近を狙ったものだ。



安倍は13日夜には、都内の私邸に旧知の新党改革幹事長・荒井広幸を招いて夕食を共にしている。これらの会談の意図は明白だ。参院対策にある。ねじれている参院では過半数は118で、自公両党の102議席だけでは16議席足りない。維新の3議席、新党改革の2議席、みんなの党の11議席がカギとなるのだ。こうした数合わせの根回しが着々と安倍主導で進められているのだ。



一方で政策面での安倍戦略はもっぱら焦点を景気対策と尖閣問題に絞って展開させる方向だ。安倍はまず日銀を押さえ込んで2%のインフレターゲットを決めさせた。次いで超大型補正予算を2月中には成立させ、公共事業でバックアップを図る。4月には日銀総裁人事を決め、5月には本予算を成立させる。



一連の目標は世論調査でも圧倒的に景気対策を求める声が強いことから、国民や市場の要求にもマッチしたものである。ということは野党が抵抗して審議ストップなどの動きにでれば、批判の矛先は確実に野党に向かう。アベノミクスの成否が分かるのは1年か2年先であり、とりあえずはバブル的であっても景気浮揚感があれば参院選で戦うことが可能だ。安倍はそこを狙っているのだ。



一方、尖閣問題や北朝鮮のミサイル発射、原爆実験などを核とする安保・外交問題も国会審議の焦点となる。しかし安倍は持論の憲法改正、尖閣への船だまり建造と公務員配、原発再稼働など与野党が激突しかねない公約は封じてしまった。すべて参院選後への先送りとする方針だ。



ただ一つ集団的自衛権の行使については2月の訪米でオバマに約束する流れのようだ。同問題は毎日新聞の衆院議員に対するアンケート調査で8割が「容認」と回答している。従って法案提出の形を取るか、政府解釈の変更とするかは別として大きな方向は実現可能であろう。



こう見てくると順風満帆の安倍ペースで通常国会を迎えることになる。しかし高齢者医療を巡る麻生失言が物語るように、いつ閣僚の失言や不祥事が出ないとも限らない。好事魔多しであり、重心をよほど低くして対応しないと野党を反自民で結集させることにもなりかねない危険を内包している。

            <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年01月23日

◆懲りない男の失言癖は直らなかった

杉浦 正章

 

政権の“アリの一穴”となる恐れ
 

危ない危ないと思っていたが、ついにやった。またしても懲りない男・麻生太郎の失言だ。要するに財務相としては高額な終末期医療費は税金で負担したくないと言いたかったのであろう。



そうならそうと理路整然と主張すればよいのだが、発言には一貫して自分の人生哲学を他人に押しつけようとする“おぼっちゃま”型の短絡志向がみられる。後期高齢者問題では3年前の総選挙で廃止を唱えた民主党の圧勝をもたらしたが、今度も「家族の心情」無視の終末期医療をテーマに参院選に臨んでみてはどうか。
 


問題発言は麻生が社会保障制度改革国民会議で、終末期の医療について「私は遺書に『さっさと死ぬからその必要はない』と書いてあるが、そういうことをしておかないと死ぬことができない。『いい加減、死にたいな』と思っても、とにかく『生きられるから』といって生かされちゃかなわない」という部分だ。



「さっさと死ねるように」と報道され、結局麻生の訂正につながったが、マスコミはその前段にある発言を見逃している。麻生は「現実問題として、今経費をどこで節減していくかと言えば、もう答えなんぞ多くの人が知っているわけで。高額医療というものをかけてその後、残存生命期間が何カ月だと、それに掛ける金が月一千何百万円だ、1500万円だっていうような現実を厚生労働省が一番よく知っているはずだ」と述べている。
 


これはどう見ても高額医療は税金で負担すべきではないと主張している。ましてや税と社会保障の一体化を協議する会議の場での発言であり、社会保障費を削減せよという財務省の思惑を端的に反映したものに他ならない。



筆者は財務相に就任して以来の麻生が出演するテレビ番組を見て観察してきた。この政治家が3年間のブランクでどのような変ぼうを遂げたかが見届けたかったかったからだ。ところが、懲りない男丸出しであった。それどころか、マスコミに対して斜に構える傾向が加わっていた。必ず一言か二言マスコミを批判をする。



例えばNHKでは首相・安倍晋三の健康に関連して「『高揚している。高揚している』と、NHKはよくたたいていましたが、どうでしょうかね。選挙中に高揚しないと、『やっぱり体が弱い』と言うのではないか。選挙なんてのは、高揚しているのは当たり前だと」と司会者に噛みついた。



NHKが「高揚していると叩いた」ニュースは見たことがないし、高揚しているとの表現があったとすれば、むしろ褒めているのではないかと思える。麻生政権の時の“袋叩き”への遺恨から、被害妄想に陥っているのではないかとさえ思えた。



山のようにある麻生の失言集を分析すれば、実に“無邪気なお坊ちゃま”ぶりが分かるが、その傾向が度を超して“人格蔑視”につながるケースが多いのだ。対人関係に関する失言が圧倒的に多い。


「七万八千円と一万六千円はどっちが高いか。アルツハイマーの人でも分かる」「東京で美濃部革新都政が誕生したのは婦人が美濃部スマイルに投票したのであって、婦人に参政権を与えたのが最大の失敗だった」「新宿のホームレスを収容所に入れたら、『ここは飯がまずい』と言って出て行く。ホームレスも糖尿病という時代ですから」などなど。高齢者や婦人、弱者を明らかに蔑視している。



「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と優秀なる政治家・野中広務を差別。しまいには日米豪閣僚級安全保障対話が延期されたことに関連し「シャロン首相の容態が極めて悪く、会議途中でそのままお葬式になると意味がないので延期ということになった」と宣うた。よく外交問題に発展しなかったものだ。



その心理を分析すれば根底には、高所から見下す姿勢が濃厚であり、これは育ちによるものだろうか。深層心理的には自分の容貌へのコンプレックスの裏返しがあるかもしれない。もちろんマスコミの言葉狩りは厳に戒めなければならない。



しかし、発言から政治家の人格や能力を分析するのもマスコミに課せられた重要な使命である。麻生もバーや料亭の座談では大笑いになるからといって、同じ発言を一般大衆や政府の会議で繰り返して、うけを狙うのは筋が違うことと心得るべきだ。



尊厳死を選ぶのは自分の勝手だが、既にある高齢者医療制度を、金がかかるからやめよというのは、無駄な公共事業を散々作ってきた自民党政権首脳の言うことでもあるまい。いたずらに社会不安を生じさせるだけである。23日の朝日川柳に<個人的だったら家でそっと言え>とあるとおりだ。



それにつけても、新政権とマスコミのハネムーン期間が従来のように3か月続くかどうかは定かでないが、どうも麻生あたりの失言が、国会審議も含めて“アリの一穴”となりそうな気がしてならない。川柳でも<訂正の後は誤読という不安>と見事に切り込まれている。

         <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年01月22日

◆公明は集団的自衛権行使で孤立

杉浦 正章


容認への転換をすべきときだ 
 

2月の首相・安倍晋三の訪米を控えて、自公連立政権を危うくさせかねないのが集団的自衛権の行使をめぐる問題だ。安倍の積極容認姿勢に対して公明党は難色を示し続けている。このまま安倍がオバマとの会談で行使容認に踏み切れば、メンツ丸つぶれの公明党は連立離脱となりかねない。


ここは事前の調整が不可欠な場面である。公明党も政権右傾化の歯止め役を以て任ずるのもいいが、緊迫する極東情勢下において反対一点張りでは国内的にも孤立する。方向転換すべきだ。
 


公明党のお家芸である平和主義も時と場合による。中国による尖閣諸島周辺の領海、領空侵犯が繰り返され、北朝鮮のミサイルは北米大陸にまで到達可能となった。事態は緊迫の度を加え、いつ領土侵攻などの「周辺事態」が発生してもおかしくない状況にあると言っても過言ではない。



米軍への攻撃に自衛隊の反撃を可能とする集団的自衛権の行使は切迫したものとなっているのだ。最近、中国軍の戦闘機が米海軍のP3C哨戒機と空軍のC130輸送機を執拗(しつよう)に追尾しており、米空軍は、東シナ海上空に空中警戒管制機(AWACS)を投入した。端的にいえばそのAWACSに中国機が攻撃を仕掛けたような場合、自衛隊機はこれを守ることが出来ない。
 


そんな事態となれば、尖閣に安保条約を適用するという米国の同盟重視の姿勢が根底から揺らぎかねない。集団的自衛権の問題など知らないノーテンキな米国の特派員が「ジャップが米軍を見捨てた」と報ずれば、それだけで日米同盟は破たんの危機に瀕するのだ。



公明党は日米安保条約支持を前提にして自民党と政権公約を結んでいるのであり、集団的自衛権行使に反対するのはまずこの基本姿勢と矛盾する。
 


加えて総選挙の結果集団的自衛権の容認に反対する国会勢力は圧倒的に少数派となった。これを現す興味深いデータがある。毎日新聞の当選者に対するアンケート調査だ。



3年前の総選挙直後には容認していない政府見解を「見直す必要がない」が50%を占めていたものが、今回の選挙後には何と当選者の78%が集団的自衛権の行使を容認したのだ。内訳は自民党が98%、維新が100%、みんなが83%。逆に公明は87%が反対。民主党は39%が賛成、反対は45%。


要するに社会党対策で72年に佐藤内閣が決めた政府見解は全く時代遅れとなったことを与野党の大勢が認めているのある。この数字が物語るものは、安倍が決断すれば難なく集団的自衛権に関する政府解釈を「ノー」から「ゴー」へと変更できることになる。



自民党は既に「国家安全保障基本法」を決定しており、提出すれば自民と維新だけで348議席あるから、公明抜きでも成立可能だ。参院で可決されなければ衆院に戻して3分の2の多数で成立できる。また法案によらず従来の内閣法制局の解釈を変更するだけでも可能となる。
 


したがって公明党は国会では孤立していることになる。公明党は平和主義政党に徹するあまり、時としてかつての社会党の非武装中立と同様に時代にマッチしない方針に固執するケースがある。創価学会婦人部など国の安全保障安保など天から降ってくると思っている連中に配慮しているのだろうが、共産、社民両党と同じではまさに時代錯誤路線だ。



それでいながら同党は基本的には“政権の蜜の味大好き政党”なのだ。消費税では迷っていたが昨年夏には自民、民主の税と社会保障一体改革に同調して臆面もなく方向転換した。「自公政権」が目の当たりにきたと感じた結果であろう。
 


こうした孤立化傾向を反映してか代表・山口那津男の発言も微妙に変化してきている。選挙期間中は集団的自衛権について「国民も懸念を持つし、外国にも心配を与える。限界が来るかもしれない」と連立離脱の可能性にまで言及していた。



しかし、最近では「 集団的自衛権の行使を認めるということは、日本領空、領海の外で、武力行使を認めるということになっていく。それに歯止めがなくなるということについての十分な議論が必要だ。にわかに変えるべきではないと思っているが、幅広い検討が必要だ」と条件闘争ともとれる発言になってきている。



歯止めがあればよいという風に受け取れるのだ。憲法解釈の中にはいわゆる「周辺事態」において共同行動している米艦、航空機防護には行使が容認されるというものもある。山口発言を分析すれば周辺事態に限定すれば可能となるという“隘路”が感じられるのである。
 


だいいち公明党は第1次安倍政権における有識者会議での集団的自衛権行使の検討を黙認している。安倍は元駐米大使・柳井俊二を座長とする同会議の答申(1)公海上で自衛隊艦船と並走する米艦船が攻撃された場合の反撃(2)米国を狙った弾道ミサイルに対する日本のミサイル防衛(MD)システムでの迎撃―など4類型をさらに煮詰め、2月のオバマとの会談で前向き対処を表明することになろう。



しかし公明党との協議なしでの、方針表明は連立の基盤を危うくする。国会審議も政権内で別々の見解が表明されては持たない。早急に公明党を説得すべき時であろう。公明党も国連憲章も認める世界の常識である。容認する方向に転換すべき時だ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)

2013年01月21日

◆米の真意は日中軍事衝突回避にある

杉浦 正章



中国をけん制、日本には自制を要求
 

日米同盟が強化されたなどと手放しで喜ぶのは方向音痴もいいところだ。米国務長官クリントンと外相・岸田文男の会談から浮かび上がるものは、逆に何としてでも偶発戦争を阻止したいという米政府の強い決意だ。


東シナ海における日中軍事衝突は、南シナ海に飛び火し、これに米軍がかかり切りになれば、中東情勢にも火が付く。米国は多正面作戦を強いられ、世界情勢は混乱の極みとなるのだ。米国の世界戦略から見れば、クリントンの本音は紛れもなく日中対話路線にあることを見逃してはならない。
 


米国は尖閣問題について当初は同諸島を日米安保条約の適用範囲としながらも、2国間の領土問題には立ち入らないという伝統的な姿勢を堅持してきた。ところがその方針を変え始めたのが中国機による領空侵犯だ。12月13日の中国国家海洋局のプロペラ機による領空侵犯に対して米国は「尖閣に、日米安保条約が適用されると分かっているのか」と中国をにかつてない強い姿勢で警告した。



しかし確実に習近平の後押しがあるとみられる軍部は、テレビメディアを使って対日戦争ムードを煽りにあおり続けている。「尖閣戦争」を想定した番組を連日のように放送しているのだ。習近平は3月に国家主席になる前の国内基盤固めに尖閣問題をフルに活用しているのだ。
 


一方日本にも右傾化志向の安倍政権が誕生して、領空、領海侵犯には断固として対応する姿勢が鮮明になった。防衛相・小野寺五典は領空侵犯機に対する曳光弾発射について、国際法と自衛隊法に基づき対応するとして発射を認める発言をした。



これに対して解放軍少将・彭光謙が「それは開戦の一発を意味する。ただちに反撃し2発目は撃たせない」といきまいた。“雑魚”がいきまいてもたいしたことではないが、メディア上ではまるで軍事衝突前夜、一触即発の様相すら示すに至った。



こうした状況を見て米国政府部内には、にわかに危機感が高まった。その結果のクリントンによる岸田への「日本の施政権を損なういかなる行為にも反対する」発言となったのだ。明らかに米国は、中国側の米国は尖閣紛争に乗り出さないという“誤判断”に警告を与えたのだ。日米同盟のきずなを試そうとしている中国への強いメッセージでもある。
 


しかしクリントンの本音は別の発言にある。岸田に「尖閣を巡る事件事故を防ぐことが大事だ」と強調している点だ。尖閣での偶発的武力衝突など不測の事態を懸念しているのだ。これを裏打ちしてクリントンは「日中の対話で平和的に解決することを求める。緊張を高めるいかなる行為も望まない」と日本政府に強くクギを刺した。



驚くべきことに9月の尖閣国有化以来民主党政権は、対中対話の「た」の字も行おうとしていない。安倍政権になって安倍が中国大使・程永華と秘密裏に会談をし始めた。その一連の動きの中に22日からの公明党代表・山口那津男の訪中が位置づけられる。安倍の習近平宛ての親書を託すのだ。新政権として初の対中瀬踏みが動き出すことになる。
 


筆者がかねてから主張しているように、緊迫した両国関係には対話の開始が不可欠である。このままでは対中戦争論の“大馬鹿路線”と、中国軍部の雑魚たちの“阿呆路線”の激突になるだけであって、まさに馬鹿と阿呆の絡み合いになてしまう。両国関係のみならず世界情勢が危機となるのだ。



だいいち“大馬鹿路線”で日本が対中戦の口火を切ることなど戦略的に見ても論外だ。戦争はあくまで中国側の仕掛けで始まらなければならない。真珠湾攻撃やフセインのクエート侵攻の失敗が物語るものは、戦争勝敗のポイントは国内世論をいかに統一し国際世論の同情を買うかにある。



真珠湾攻撃への米国内の激昂が太平洋戦争のエネルギーとなったように、世界で好感度1位の「不戦の日本」が、中国の侵攻を受けた“構図”をまず作りだすことが第1だ。従って戦略上も日本側から攻撃の端緒を開くことはまずあり得ない。
 


中国もかねてから指摘しているように、日米連合軍に尖閣戦争で敗れれば共産党政権のアイデンティティとレゾンデートル、つまり存在意義と存在理由とが失われ、1党独裁が崩れる危機に陥るのは確実だ。共産党政権の レジティマシー(正統性)が地に落ちるのだ。



従って双方共に拳を振り上げても、その落としどころが全くないのだ。だからここはクリントンがいみじくも指摘したように選択肢は「対話」の早期実現しかあり得ないのだ。対話を実現すればそれが継続している間は、中国側の尖閣占領はありえない。日本側が尖閣に公務員を配置したり、船だまりを作るようなこともできない。対話継続による平和が維持されるのだ。
 


もちろん対話を始めれば中国側は「日本が尖閣に領土問題は存在しないとする従来の主張を取り下げた。尖閣が係争地になった」と宣伝することが可能となるだろう。日本側は意に介する必要は無い。「領土問題は存在しないことを世界に周知するための対話であって交渉ではない」と位置づければよいだけだ。物は言いようなのだ。



要するにここは知恵を出すところだ。おそらく安倍と程永華との一連の秘密会談は、ここがポイントであったと容易に推察できる。その流れを受けての山口訪中となったと見るべきだろう。山口は日中首脳会談を提案することになりそうだが、これが一気に実現するかは全く予断を許さない。しかし今後生ずるであろう様々な接触を通じて、打開を図ろうとする姿勢こそがまず第一に必要な場面である。

            <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月18日

◆安倍政権は日中危機打開で早期対話を

杉浦 正章

 

鳩山など“疝気筋”の排除も不可欠
 


中国のことわざには「井蛙(せいあ)には以て海を語るべからず」がある。カエルに海のことを話しても分からないということだ。しかし、さすがに狡知に長けたお国柄だ。蛙をわざわざ呼び寄せて逆に利用した。


日本では「暗愚大王」でも国際的には元首相だ。鳩山由紀夫が「尖閣諸島は係争地」と言えば、国際宣伝上はそれなりの重みを持って響かせることができる。国論2分を印象づけられるのだ。その言い回しも双方で事前に企んだ形跡が強い。



おりから共産党総書記・習近平は明らかに尖閣問題を内政に活用して自らの地盤固めを展開、軍部の対日戦争論を煽っているフシがある。首相・安倍晋三はそろそろ疝気(せんき)筋に引っかき回されないように公式ルートでの接触、対話を展開すべきではないか。
 


度し難いほど無能である。朝日川柳には「出てきては政治を引っ掻き回す鳩」があった。国内政局での無能ぶりは、お笑いで済むが、こと外交になるとそうはいかない。昨年は政府が挙げて止めるのも聞かずに、イランを訪問して海千山千の大統領・アフマディネジャドとの会談でその無能ぶりを活用された。イスラエルの核兵器保有を黙認するIAEAは不公平だという意味の発言をしたとされてしまった。



懲りない男はこんどは中国で全く同じように利用された。筆者が年初に指摘したように日中外交上の焦点は、「尖閣諸島に領土問題は存在しない」という日本側の主張を日本政府が変更するかどうかに絞られているといわれる。中国は変更させて日本を交渉の場に引きだして、圧力をかけ続けるというのが選択肢の一つだった。



もちろん日本側は領土問題存在せずの方針を変えるつもりはない。
 


その核心部分を鳩山「係争地」発言が毀損したのだ。政府は怒るわけだ。官房長官・菅義偉が「わが国の立場と明らかに反する。総理大臣をした方の発言として、非常に残念で極めて遺憾だ」と批判。あの紳士的な防衛相・小野寺五典までが「日本にとって大きなマイナスだ。中国はこれで係争があると世界に宣伝し、国際世論を作られてしまう。久しぶりに頭の中に『国賊』という言葉がよぎった」と国賊呼ばわりした。



確かに日中危機の根源を作った石原慎太郎と共に国賊であることは間違いない。ところが鳩山本人は全く分かっていない。「係争地だと暗に認めていたからこそ、日中関係は進展してきた。政府はかつての考え方に戻り、早く関係改善への答えを見いだすべきだ」とまさに無知丸出しの国賊ぶりを遺憾なく発揮している。



普天間発言と全く同じで物事を理解できないのだ。この際母親の安子夫人には鳩山御殿に座敷牢でも作って、外に出さないようにしてもらうしかない。
 


沈黙を守っている習近平の出方が最大の焦点だが、3月の国家主席就任前から尖閣問題を国内の地盤固めに活用している様子がありありと分かる。軍部の独走を見て見ぬ振りをしているというか、影で人脈をつかって煽っているフシが濃厚だ。



解放軍報によれば総参謀部は全軍に向けて発した2013年の「軍事訓練に関する指示」の中で、「戦争準備をしっかりと行い、実戦に対応できるよう部隊の訓練の困難度を高めよ」と明らかに対日戦準備ととれる指示を出している。



小野寺が自衛隊機が進入した中国機に対して曳光弾の発射で警告するかどうかについて「これは国際法と自衛隊法で決められた通りにやるだけである」と是認したことにもすぐに反応した。解放軍少将・彭光謙は「日本が曳光(えいこう)弾を1発でも撃てば、それは開戦の一発を意味する。中国はただちに反撃し2発目は撃たせない」といきまいた。
 


中国政府はテレビでも戦争前夜のような番組を放映させて、国民を煽っている。限定戦争か全面戦争かの論争を紹介したり、最近の放送では水上機の超低空訓練の様子を報じ、レーダーにとらえられずに人員や装備を運べると“尖閣占拠”をほのめかしたりしている。こうした宣伝・扇動工作は国民の対日感情をフルに活用して自らの地位を固めようとしていることに他ならない。



おりから国内は報道の自由を求める言論人が様々な動きを見せ、共産党幹部の汚職や、都市と農村の格差を不満とする暴動が絶えない。新指導部としては一番狡猾で、効果的で安易な手法を選択しているのだ。



だが、筆者が指摘しているように、尖閣戦争で日米連合軍に勝てることはまずない。今どき水上機などがいくら頑張っても戦闘ヘリ1機で撃墜できる。米軍は空母数隻で中国沿岸を封鎖する。負ければ内乱が待っており、共産党1党独裁は崩壊の過程に入る。
 


こうした中での安倍の東南アジア歴訪と来月には実現するであろう訪米は、対中けん制の意味合いが濃厚なものとなっている。ゆるやかなる対中包囲網の形成は選択肢としては正しい。しかし習近平の“挑発”に乗ることは避けねばならない。



公明党代表・山口那津男が来週にも訪中する予定だと言うが、これは恐らく安倍の対中瀬踏みの一環ではないかと思われる。さらに自民党副総裁・高村正彦を首相特使として派遣する構想もある。外相・岸田文男も日中外相会談を模索している。



いずれも困難な会談となるだろうが、疝気筋にかき回されるよりはよい。まずは対話すること自体から解きほぐしてゆくことが必要だ。

            <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2013年01月17日

◆安倍政権は原発再稼働を実施に移せ

杉浦 正章

 

規制委は稼働可能な原発を明示せよ
 


原発再稼働を公約に掲げて圧勝したはずの自民党政権が、なぜか発言をトーンダウンさせている。明らかに参院選挙を意識して、争点にするのを避けようとする思惑が見られる。



逆に総選挙で「原発論争」に完敗した朝日新聞など一部マスコミが息を吹き返している。明らかに参院選の争点を再び「原発ゼロ」に絞ろうとしているのだ。自民党はこれに警戒しているわけだが、そこには選挙戦術があって国民がない。自民党総裁・安倍晋三は国民の負託に応えて堂々と再稼働への日程を提示して、実現への道筋を確立すべきである。
 


「原発ゼロ」派の完敗は、滋賀県知事のの嘉田由紀子の見せている醜態がすべてを物語る。嘉田は13日、大失敗に終わった日本未来の党結党のいきさつについて、小沢一郎から「あなたが代表になって出てくれたら100人通ると言われた」と経緯を明かした。そのうえで、「後から思ったら、信じるべきではなかった」などと釈明した。



普通の政治家だったらみっともない泣き言を言わないものだが、嘉田はまるでテレビの三流ドラマで彼氏に捨てられて女が「あなたを信じた私が馬鹿だったのね」と泣く場面を演じ続けている。不快用語だが女の浅知恵とはこのことだ。
 


懲りないのが朝日だ。無い知恵の限りを絞って選挙結果を脱原発派の敗北ではないと言いくるめようとしている。「社説余滴」では「衆院選で脱原発を訴えた党は未来のほか民主、公明、みんな、共産、社民がある。6党の比例票を合計すると約3千万票で、自民の1660万票をゆうに上回る」と宣うた。



しかしその3千万票が議席につながったかというと、逆に確信的にい「入原発」を唱えた自民党に294議席の地滑り的勝利をもたらしている。野党の票を全部集めて論拠にすれば、3年前の民主党圧勝はマニフェストの勝利ではないなどと言うのと変わらない。まさに詭弁中の詭弁だ。
 


朝日は世論調査も味方につけようとしている。自民党が原発問題を10年以内に判断するとしていることについて「評価する」は37%、「評価しない」が46%だったと主張している。しかし読売の調査では原発の運転を再開する安倍内閣の方針について「賛成」46%、「反対」45%と拮抗しているのだ。



世論調査の落とし穴は、我田引水型質問によって左右される。従って意味が無い。ことあるごとに朝日は、エネルギー政策を福島原発事故に結びつける。社説で「避難した16万人の帰還や生活再建はめどが立っていない」などと主張するが、これは国の政治の根幹であるエネルギー問題の本質を感情論にそらそうとする狡猾な手段だ。



16万人には気の毒だが、早期に復旧させるためには、原発を再稼働させて、国力を回復させなければ満足な資金も調達できないことが分かっていない。総じて朝日の論調には、広島、長崎における原爆反対の左翼イデオロギーが紛紛と顔を出してくるが、古色蒼然なのである。
 


しかし、問題はこれに安倍政権がおびえ始めていることだ。選挙に勝った直後は実に威勢がよかった。石原伸晃が、福島県で「原発稼働ゼロは現実的ではない」と批判すれば、経産相・茂木敏充も「原発ゼロは再検討が必要だ」と述べた。



首相・安倍晋三にいたっては「新たにつくっていく原発は事故を起こした東京電力福島第一原発のものとは全然違う。国民的な理解を得ながら新規につくっていくことになるだろうと思う」と堂々と新設を明言していた。
 


しかし年が変わるとこれらの発言が一斉に萎縮し始めた。明らかに申し合わせた上での発言だ。まず安倍が新設について「福島の現場を訪れて避難している方々からお話をうかがいました。あの皆さんの困難な状況のことを思えば、簡単に決定できる話ではないということを改めて認識した。慎重に当然判断していかなければならない」とトーンダウン。



官房長官・菅義偉に至っては「原子力規制委に今安全基準を作っている。安全基準を作っていただいて、3年以内に総点検をしてスタートする」と、まるで大幅先延ばしをしかねないような口ぶりだ。
 


自民党政権は何を血迷っているかと言いたい。原発立地、または隣接する39選挙区で民主党が当選したのは女川原発の安住淳、福島の玄葉光一郎、大飯の前原誠司だけだ。これが民意でなくて何であるか。物欲しげに参院選の議席を横目に、国のエネルギー政策をおろそかにしてはならない。



原子力規制委が7月に安全基準を作ると言うが、なぜもっと早く作らせないのか。選挙目当ての日程としか思えない。
 


規制委は活断層のある原発を調査し、再稼働に「NO」を突きつけることができるなら、稼働可能な原発を明示することが出来るはずだ。「NO」を唱えてマスコミの信用を築くことばかりに専念すべきではない。安倍政権も7月の安全基準を待たずに、原発立地自治体の長や住民と堂々と再稼働に向けての対話を開始すべきだ。



政治にごまかしが出てきては信用失墜で、それこそ選挙に敗退することを肝に銘ずるべきだ。こうしているうちにも化石燃料のために年間3兆円の富が流出する。円高でもっと膨らむ。電気料金の倍増ともなれば、倒産続出、家計は成り立たない。



アベノミクスなどと浮かれていると、足元をすくわれるのだ。ドイツの再生可能エネルギーへの転換が事実上大失敗に終わろうとしていることを見誤ってはならない。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月16日

◆安倍政権はスパイ対策で脇を固めよ

杉浦 正章


民主3年で霞ヶ関はダダ漏れ状態だ
 


要するに民主党政権の政策は中国などのスパイに筒抜けになっていたということだ。今後政権交代によって次々に明らかにされていくだろう。その第一段階が内閣官房参与・飯島勲による“暴露”だ。「左翼」が80人が首相官邸に自由に出入りしていたというのだ。表面化しただけでも首相官邸、外務省、農水相に中国スパイが接近して自由に情報をとっていた公算が強い。


これにサイバー攻撃が加わり環太平洋経済連携協定(TPP)の参加時期などについての前首相・野田佳彦のナマ発言がまるまる漏洩している。まさに民主党政権はスパイ天国であったのであり、3年3か月にわたるカウンターインテリジェンスの脆弱さを立て直すのは容易ではない。
 


まず農水相の林芳正は15日、対中農産物輸出事業を巡って、中国のスパイである大使館一等書記官・李春光と農産省を巡る疑惑について「事業の全体像を確認し、外に対して明らかにしていきたい」と発言、再調査の意向を表明した。


中国の外交官がスパイとして立件された初の事件は、昨年5月に発覚、農水相・鹿野道彦と同副大臣・筒井信隆の事実上の更迭につながっている。李春光は中国の巧みなスパイ植え付け作戦に乗って、99年に松下政経塾に特別塾生として入塾。2005年の海上自衛隊潜水艦のノイズ除去技術に関する機密漏洩で、スパイとしての存在が公安当局に浮かび上がっていた。


李は松下塾の人脈をたぐってついに外相・玄葉光一郎にまで到達している。玄葉の政治秘書と親しい関係となったのだ。その玄葉の秘書が何と昨年9月に北京を訪れ、既に逃げ帰っていた李と会談しているのだ。スパイと断定された人間と時の外相秘書が接触すれば、明らかに機微に渡る国家機密が漏洩されたとみるのが常識であろう。しかも送検された本人と会うとは、なんという国や捜査機関を小馬鹿にした話だろうか。
 


こうして外務、農水両省との関わりがクローズアップされつつあるが、首相官邸も直撃されていたという見方が濃厚である。現に中国のスパイ組織である中国人民解放軍総参謀部第二部の武官が、堂々と名前を述べて出入りしていたという説がある。



首相官邸は民主党政権発足時に筆者が 「民主党がかつての社会党の職員25人を最近内閣官房の専門調査員に押し込んでいる。これらの職員が事務局の主導権を握っている」として、中国や北朝鮮への機密漏洩を警告したとおり、旧社会党員の“巣”であった。文科相も同様に参院議員で元日教組教育政策委員長・那谷屋正義を文部科学政務官に押し込むなど、宿敵日教組に浸透されつつあった。



何も社会党員や日教組がスパイに直結すると即断するわけではないが、政権の中枢にいれば、中国や北朝鮮のスパイが過去のつながりを背景に“好餌”とばかりターゲットにしたことは間違いあるまい。怪しいのだ。
 


こうした中で映画ゴースト・バスターズならぬスパイ・バスターとして登場したのが飯島だ。飯島は民主党政権が作った官邸のありさまについてテレビで「官邸に戻って驚いた。めちゃめちゃで村役場以下」と慨嘆。とりわけ機密漏洩など危機管理対策がなっていないことを強調した。


「官邸に出入りできるカード(入館パス)を全部調べたら発行数は官邸だけで500枚以上。全部で1300人を超えている。私の個人的調査でそうだった。その中で80人ぐらい。左翼的なメンバーが入っていた」と暴露。



「ひどいことには前科一犯のやつまで入っていたりした」という驚がくの事実まで言及した。飯島はすぐに没収したことを明らかにすると共に「内調や警察庁は何をやってたのか。もし外交や安全保障あるいは為替の問題が、外に漏れたら危うく沈没ですよ」と関係機関を批判した。



たしかに民主党政権になってからは内閣情報調査室も、閣僚の経歴の事前洗い出しなどで手抜かりが多く、就任して発覚、即辞任につながるケースが多出した。昔は「北朝鮮情報の内調」であったが、「今はろくな情報を挙げてこない」と民主党政権幹部がぼやいていたものだ。
 


要するに民主党政権は「情報ダダ漏れ政権」であり、おまけに官僚の徹底的軽視策をとった。周りの機関も、こんな政権に情報は上げられないという躊躇(ちゅうちょ)が働いたことは確かであろう。首相・鳩山由紀夫以降の首相の体たらくがそうさせたのだから、自業自得であった。



しかし、国家としての3年3か月が、るる述べてきたようにスパイ天国であったのはゆゆしき問題だ。ここは首相・安倍晋三が、わきをしっかりと固めるときだ。



官邸はスパイ対策はもちろん、中国による露骨なサイバー攻撃をはねつけるシステムを早期に強化すべきだ。どんなウイルスを残しているか分からないから、官邸のパソコンなど電子機器をすべて新たに取り替えることなど常識だ。米国でも機密漏洩事件は多いが、もっと高度なスパイによるものがほとんどだ。



入国した途端にマークされた李春光ほど幼稚なものではない。日本ほどやすやすとスパイが活動できる国はない。民主党政権を米国が信用しなくなったのも、ダダ漏れが原因だ。新たな日米安保体制を築くためにもスパイ対策は焦眉の急である。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2013年01月15日

◆安倍が橋本を“だし”につかった内幕

杉浦 正章

 

辛坊治郎が“10分会談”のいきさつ暴露
 

一体どうして最初の野党首脳とのトップ会談に、日本維新の会代表代行・橋下徹をもってきたのかふに落ちなかったが、ようやく解けた。大阪の読売テレビのニュースキャスター辛坊治郎が来阪の目的は同テレビの収録にあり、その他の日程は“ついで”であったと暴露したのだ。



「1ローカルテレビのために総理大臣たるものの来阪は体裁が悪すぎる」ので、橋下との会談を設定して、それが目的であるかのように装ったのだという。結果的に他党党首をないがしろにした形となり永田町の憶測を呼んだのだが、何のことはない格好づけであったのだ。


しかし、内幕をばらされるとは、内閣官房の誰が作った筋書きか知らないが、上手の手から水が漏れてしまってはどうしようもない。
 

首相官邸の情報操作は巧みであった。まず8日に「安倍が橋下と11日に会談する」方針を新聞にリーク、9日の朝刊に「夏の参院選に向けて野党共闘にくさびを打ち込む狙いだ」と書かせた。同日の記者会見で官房長官・菅義偉が、日程を追認する形を取った。こうして流れを作ったのは記者クラブへの情報操作を知り尽くしたプロの技だろう。その上での会談となった。



日本維新の会代表・石原慎太郎や民主党代表・海江田万里は“無視”されたかたちである。評論家らは「石原代表の面子がつぶれる。頭越しでしかも首相自ら出かけていくということは普通じゃ考えられないことをあえてやった。相当な意味がある。」(岩見隆夫)と“見事”な論評をテレビで加えるものがほとんどだった。



新聞も読売が「首相維新に期待、通常国会での連携狙い」と分析、社説でも取り上げ「首相は憲法改正など国政課題での連携に意欲を示してきた。それを具体化するための一歩とも言える」と高揚した論調。朝日も「参院選に向けた野党共闘にくさびを打つとともに、将来の憲法改正を見据えて距離を縮める狙い」ともっともらしく分析した。


タブロイド紙に至ってはまことしやかに「石原慎太郎外しの思惑」と“深読み”した。官邸もここまでは巧みな情報操作であったと言ってあげよう。
 


ところがこれに対して辛抱が、まるで辛抱しきれなくなったかのように「待った」をかけたのだ。12日の日本放送の「辛坊治郎ズーム」で内情を暴露したのだ。ラジオなど普通の人は聞き流すが、読者のためにラジオまで聞いている“政治ニュースの鬼”である拙者の耳に入っては、ひとたまりもない。だからここに“辛抱の暴露”を暴露することができるのだ。



まず辛抱は「何のために大阪に来たのかの基本認識が朝日も毎日も産経も日経も全部間違った」と主張した。読売だけは外したところなどは、辛抱でも“主筋”は怖いとみえて可愛い。辛抱によると読売テレビへの出演は、総理大臣になったら出席するとの約束が選挙前からあったのだという。来阪の核心はその約束を安倍が守っただけのことであり、「一つ言えることはこのおっさんは義理堅い」のだそうだ。
 


そのおっさんの日程を見れば、たしかに橋本との会談は付けたりだ。読売テレビのそばにあるニューオータニに呼んでの会談である。それも仰々しく官邸がリークまでしたにしては、会談は、歩く時間を入れると実質たったの10分。発表の20分あまりはとてもない。少なくとも1時間は会談しなければ政治家同士が肝胆相照らす事はないのだ。



安倍が橋下発言を「熱心に」メモを取っていたというが、果たしてその長さは一言かそれとも二言か。その直後の読売テレビ訪問は2時間に及んでいる。各社12日付紙面では100行前後の原稿に仕立てているが、よく引き延ばしの“飴細工”が出来たものである。辛抱は「読売テレビの収録の前に橋下さんとの会談をくっつけて、一応これでニュースにしておく形であった」と暴露した。



辛抱は安倍周辺がシナリオを書いた理由について、内閣記者会との関係があると分析する。「1ローカルテレビのために大阪くんだりまで行くとは総理は言えないよなぁ。内閣記者会が普通なら結構怒る」と述べた。


民放キー局の場合、同記者会が仕切って一つの番組だけに総理出演を認めているのだという。ローカル局への出演は異例だ。こうして辛抱の言うとおり、各社はすべて大阪訪問の本筋を見誤ったことになるが、大げさに言えばこうして歴史は出来てゆくのだ。
 


官邸筋は筋書きを書いたのは「Iさんあたりじゃないの」と漏らしているが、本当に内閣官房参与・飯島勲であるかどうかは闇の中だ。


いずれにせよ情報操作を知り尽くしたプロの仕業であることには違いあるまい。それにしても最近の政治記者は2時間の番組のために10分間の会談をしつらえる政権側の意図・思惑にまで考えが及ばないのだろうか。


政治記事はまず推理が大切なのだ。辛抱の指摘はもっともだ。しかし辛坊も軽い。約束を守った「おっさん」が聞いたら怒ることまで考えが及ばないのだろうか。頭はいいが、自己顕示欲の固まりのタレント癖があり、そんなことをばらせば2度と読売テレビに出てもらえないことまで考えが及ばない。

<今朝のニュース解説から抜粋>     (政治評論家)

2013年01月11日

◆電子新聞化で朝日が大きくリード

杉浦 正章

 

フルモデルチェンジで格段の読みやすさ
 

ついに朝日新聞が電子新聞をフルモデルチェンジし、10日から新聞紙のレイアウトで読むことができるようになった。やはりニュースは紙面でその大小を見極めることがもっとも分かりやすく、横書きのWebニュースが縦書きの紙面へと回帰したとも言える。


これで日経、産経と合わせて3紙がWebに紙面を露出させた。電子版化は時代の潮流であり、読売が大きく差をつけられたことは否めない。経営の古さが出遅れの原因だろう。


Webでニュースを見る層は圧倒的に若い世代である。安保、原発推進などせっかくの読売の論調が若年層において朝日に席巻されていくのは国論形成の上でも問題がある。読売は早期に追いつくべきであろう。さもないと年寄りばかりが読む「ジジババ新聞」になってしまう。
 


朝日新聞デジタルは、読者に我が国トップクラスの情報を、「徹底的に味わい尽くさせる」という“思想”を感じさせる。トップページにある「朝刊紙面」ボタンをクリックするだけで朝刊紙面の全ページがサムネイル(小さな画像)で表示される。読みたい面をクリックすれば、紙面ビューアーが飛び出してくる。


サムネイルは小さすぎるため記事の内容までは分からないが、1面、総合面、経済面などの説明がついているために使いやすい。紙面ビューアーの操作は実にスムーズでストレス・フリーの操作ができる。ページめくりも矢印のクリックだけで簡単だ。


とりわけWeb記事の最大のポイントである記事の拡大・縮小がマウスのホイールだけできるのはありがたい。日経は動作が多く、煩雑だ。紙面の記事と横書き記事は日経と同様に連動していて、すぐに切り替えられる。小生の場合記事は横書きで読む癖がついているため、まず紙面を選んでワンクリックして横書きで読む。
 


新聞紙面は午前5時に東京の最終版が更新される。バックナンバーは一週間前までそろっていて、すぐに切り替えられる。2月導入となるが、デジタルに新たに加わる予定の「タイムライン」は、選んだニュースの過去記事を、写真とともに時系列で読める機能だ。


めまぐるしく進展するニュースを過去にさかのぼってビジュアルに見られるというのは、実によいサービスだ。


天声人語には熱烈なフアンがいるとみえて、「天声人語ビューアー」まで登場させた。140人の論説が見られる本来有料のWEBRONZAや、医療、健康の「アピタル」も付録でついている。検索機能も強力だ。1年前にさかのぼって無料で検索できる。受動でなく能動でニュースを知る時代とも言える。
 


最大の問題はWeb紙面が朝刊だけに限られていることだ。日経は朝夕刊が見られるから不満が残る。料金もデジタルコースだけだと3800円だから4000円の日経と比べて割高となる。読売は宅配読者限定の157円。産経は宅配に関係なく350円と安い。全国紙朝日の紙面電子化は新聞の宅配システムにも大きな影響を及ぼすだろう。


北海道で4000円かけてペイしない宅配をしている朝日が、まるまる月額購読料3800円の中に占める配達料がなくなる。過度期は販売店との関係をどのように保つかが最大のネックであり、読売がなかなか本格参入しないのは自慢の1000万部を割ったとは言え、販売店対策があることは言うまでもない。
 


新聞経営への影響だが、2010年にスタートした日経の場合、昨年4月の社告によると有料会員数が20万人を超えた。トップは100万人の会員がいるウオール・ストリート・ジャーナル、これにニューヨーク・タイムズ、英フィナンシャル・タイムズが続いており、日経は世界第4位となっている。


Web版がどの程度影響しているかは不明だが、日経の12年1〜6月期の連結業績は純利益が60%増の63億円と、好調だ。朝日の12年3月期連結決算も、純利益が前年同期の約3倍の163億5千万円と、2期連続の黒字となった。朝日も有料会員数を公表すべきだ。
 


朝日の場合、Web化先進国の米国の影響がかなりあると思われる。NYT紙が急速に電子版に移行していることから影響を受けているのだろう。NYT紙の平日版の総部数は12年9月30日時点で前年比40%増の161万部。内訳は紙媒体が71万部に対して、電子版は紙媒体を大きく上回る89万部だ。
  


読売は昨年、宅配購読者に限って、電子化「読売プレミアム」を実現した。157円は電子版だけ見る読者にとっては購読料金に上乗せの4082円となるから決して安いものではないが、その内容、読みやすさは朝日を上回るものがあった。


しかし、朝日のフルモデルチェンジで再び大きく差をつけられた。圧倒的に一覧性において紙面レイアウトの方が有利に立つ。時代の流れは紙面電子化にある。早期に追随し、朝刊・夕刊両方を電子化すれば、朝日を追い抜ける。


自民党ですらネット選挙の時代だ。新聞のネット戦争に敗れてどうする。

        <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

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