2012年12月10日

◆安倍は早期訪米で対中包囲網を築け

杉浦 正章
 


3年3か月ぶりの自民党政権で、総裁・安倍晋三が取り組むべき課題は山積している。太筆で書けば民主党政権によるトリッキーな政治から脱却し、即断即行の政治を回復する必要がある。外交・安保での急務は日米安保関係再構築による対中包囲網の確立だろう。


安倍は1月早々にも訪米して大統領オバマとの首脳会談で、この大戦略をまず実現すべきだ。内政では景気の回復だ。市場は「安倍首相」の登場で株価1万円台乗せは確実視されており、いかに景気回復への期待が大きいかを物語っている。
 

とにかく民主党政権の再来を許さない有権者の判断は正しいと言わざるを得まい。自民党圧勝の流れはよほどの失言が無い限り動かないものと見られる。ただし安倍がこの有権者の支持を誤解または曲解してはならない。極右国粋主義の石原慎太郎が馬脚を現して、維新の支持を喪失させているのを見れば分かる。


国民は極端な右傾化を求めているわけではない。極右路線を取れば民主党政権への支持を首相・鳩山由紀夫が誤解して、内政外交で愚かなる失政を繰り返したことと同じ結果を招くことを指摘しておく。
 

安倍の選挙中の発言からすべきこと、してはならないことを指摘する。まずしてもよいことは「集団的自衛権」の行使を可能とすることだ。簡単に言えば尖閣防衛で出動した米艦を中国戦闘機が急襲した場合に、今までの憲法解釈では自衛隊が戦闘行動を起こして米艦を支援することは出来ない。


その事実を目の当たりにすれば米紙は「ジャップが傍観」と報じて、日米安保関係はサドンデスとなる。内閣法制局の憲法解釈を改めさせて解釈改憲で安倍は対処すべきであろう。法制局などはしょせん三百代言であり政権の言うことは何でも聞く。
 

オバマとはこうした問題を率直に語り合い、民主党政権が崩壊させた日米安保関係を正常な路線に乗せるべきだ。おりから米上院も尖閣への安保条約適用を議決しており、絶好のチャンスでもある。東南アジア諸国、インド、オーストラリアも含めた“緩やかなる”対中包囲網の確立は、遅れてきた帝国主義のごとくに膨張路線を取る中国政府への強いけん制になる。


まずこの大戦略を打ち立てるべきであろう。しかしするべきことはそこまでだ。包囲網の確立により、当面の勝負は付くのであり、中国は尖閣に手を出そうにも出せない状況となる。また改憲が必要な「国防軍」も、将来の自衛隊の在り方を唱えるだけで良い。間違っても石原維新との連立で実現しようなどということを考えてはならない。
 

その上で、対中融和に動くのだが、安倍の公約を見れば石原の進言を受けたかのごとくに「尖閣に船だまりを作る」「公務員を常駐させる」とドラスティックな発言に傾斜している。


徹底した反日愛国の“江沢民教育”を受けて育った世代を、またまた習近平新政権が“活用”して暴動を起こさせる口実を与えることになる。


習近平はこれによって国内で確固とした基盤を固めることが可能となる。自民党が圧勝したからといって、国民は第2、第3の暴動による日本企業攻撃を望んでいるわけではない。大勢は友好なる近隣関係の再構築にある。
 

したがって靖国参拝も同様である。安倍は「前回の首相在任中参拝できなかったことは痛恨の極みだ。国民のために命をかけた英霊に尊崇の念を評することに外国からクレームをつけられることはない」と、就任すればすぐに参拝しかねない姿勢だ。


しかし世代は変わった。首相の靖国参拝に感動する世代はもう翁(おきな)媼(おうな)の世代だ。首相が靖国参拝をあえて国益を代弁する最大の位置に格上げする必要など無いのだ。なぜ第1次安倍政権で参拝しなかったことを「痛恨の極み」などと言う必要があるのか。外交的配慮を優先した正しい判断であったではないか。
 

経済では消費税法案が実現したばかりなのに、早くも「景気条項」の論議が活発化している。安倍が「デフレがどんどん進行する中で消費税は上げない」と語れば、首相・野田佳彦が「選挙の前でおびえているのか」とやりかえす。


しかし景気条項は11年度〜20年度の平均で「名目3%程度、(物価変動を除いた)実質2%程度」という国内総生産(GDP)の成長率を目指すための取り組みを求めているのであり、安倍の言うように来年4月から6月の景気動向を条件にしているわけではない。


おまけに2%のインフレターゲットが4〜6月で実現することなど不可能だ。よほどのデフレ状態に陥らない限り消費増税は実行に移すべきだ。
 

ただし、安倍の主張するインフレターゲットでデフレを脱却するという方向は、重要なるオプションだ。世界的な金融緩和、通貨安競争の中で、民主党政権と日銀はなすすべもなく推移した。リーマンショックから世界が立ち直っているのに、日本だけ置き去り状態だ。日銀のデフレ維持政策はもう限界に来ているのだ。


政権はダイナミックなデフレ脱却への動きを示すべき時だ。株式市場が「安倍政権」をはやすのは、なすすべのなかった民主党政権への反動でもある。「安倍相場」は9500円台に乗っており、自民党圧勝は株価を1万円突破に導くだろう。第1次安倍政権時代の株価は平均1万8千円と言う“実績”もある。


できればどっちみち来年4月で任期が来る日銀総裁・白川方明の早期自発的な退職を求め、後任人事に着手すべきであろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2012年12月07日

◆自民圧勝で民主失政の3年に幕

杉浦 正章

 

安倍は維新との連立に向かうべきでない 。


ここまで来るとアナウンスメント効果はまずないだろう。「大失言」でもない限り自民、公明両党で300議席前後の議席を獲得して、第2次安倍晋三政権が樹立される方向だ。内政外交にわたり失政を続けた民主党政権による空白の3年間は幕を閉じる。


浮動票を狙った第3極は伸び悩み、詭道(きどう)を行く日本維新の会代表の石原慎太郎がキャスティング・ボートを握る事態には至らない。有権者は激動政治より景気回復を軸とした安定を求める選択をしようとしている。


安倍は参院のねじれ対策もあり、民主党との部分連合を考慮すべきだ。維新と連立して3分の2の多数を握り改憲へと動くなど政権不安定の道を選択してはならない。
 

アナウンス効果で1番顕著なのはある候補者が苦戦していると報道されると、激励票や同情票が集まるアンダードッグ効果(負け犬効果)だが、今回負け犬となる民主党に回復の余地があるかというとまずない。


少なくとも同情票をかき集めるには「当落線上」とか、「当選まであと一歩」と報道されることが不可欠だが、つぶさに個別の選挙区を見れば、民主党候補は自民党に挽回不能な状況までリードされているケースが多いのだ。


この状況が意味するものは、自民党への雪崩現象生じようとしていることであり、個人や組織等が優勢候補支持になだれ込むバンドワゴン効果(勝ち馬効果)が生じようとしているのだ。


まず最大の原因は民主党政権の“ていたらく”にある。簡単に言えば、出来もしないマニュフェストで有権者を欺き、想像を絶する無能政治で首相・鳩山由紀夫がつまずき、大震災と原発事故という未曾有の災害に、首相・菅直人が大失策を繰り返した。


最後の野田だけは信念の政治を貫き消費増税を達成したが、党を束ねるリーダーシップに欠け、分裂を招いた。有権者にしてみればこれでもかのダメ押しが相次いだことになる。「いくらなんでも人を馬鹿にするな」という鉄槌(つい)が民主党に下されようとしているのだ。もう民主党政権が復活することは予見しうる将来にわたりない。


この間隙を縫うように、既成政党批判で台頭したのが大阪のポピュリズムであり、最後にはこともあろうに小沢一郎支配の大衆迎合政党まで便乗して出現した。マスコミは新聞、テレビを問わずにこれら第3極をはやしにはやした。しかし民主党ポピュリズムでこりごりした国民は、大勢としてこれに乗ろうとはしていない。


日本維新の会の“風”は大阪を中心とする関西地域でのみ吹くという現象が生じており、全国的な広がりを見せない。


とりわけ橋下徹が極右国粋主義の石原と組んだのは失敗であった。外見の新鮮さがダメージを受け、マイナスに作用したのだ。50議席前後では今後勢いも出ない。参院選までには馬脚が完全に現れる先細りとなるだろう。


滋賀県知事・嘉田由紀子による未来の党も、こともあろうに小沢にオブラートをかけるという“背景”が見え見えとなって、ブームとはほど遠い結果となる。小沢チルドレンらの議員勢力61議席は6分の1に落ち込む。小沢の未来活用の奇策は完全に失敗に終わる。小沢だけが当選しても落城の後始末しか仕事はない。3極について野田が「ごった煮となって輝きを失った」と自分の党を棚に上げて形容している通りだ。
 

さらに何と言っても重要なのは、エネルギー政策だ。朝日、毎日両紙とTBSのみのもんたに代表される露骨な「原発ゼロ」への誘導キャンペーンが、完全なる失敗に終わった。


なぜなら、自民党は安倍や幹事長・石破茂が堂々と「原発再稼働」を表明し、「10年後の原発を含めたベストミックス」を公約した上での選挙に圧勝しようとしているからだ。民主党の野田のように亡国の“ゼロ”でもなければ、維新のような“ごまかし”でもない。また各電力会社の電気料金値上げの動きが、国民を次第に「ゼロ」のもつ「欺瞞性」に目覚めさせているのだ。


有権者も世論調査などでは響きの良い「ゼロ」になびくが、電気料金2倍、企業の海外移転と失業者増大という「亡国のツケ」を前にして、賢明なる選択をしようとしているわけだ。
 

こうして自公連立政権が3年3か月ぶりに復活する方向となったが、肝心の安倍が危なっかしい。自民党支持の国論を誤解または曲解する恐れがあるからだ。とりわけ外交・安保でドラスチックな方向を打ち出す危険性がある。


例えば尖閣問題で、石原の主張に乗って船だまりや、公務員を配置する方針を述べているが、これは中国での第2次暴動、第3次暴動に間違いなく直結する。領有権の問題は米上院による尖閣への日米安保条約適用決議で勝負があったのだ。これを無視して中国が米中直接対決に直結する軍事行動に出ることはあり得ない。したがって安倍政権は関係改善を最大の課題とすべきなのだ。



対韓関係も河野談話の見直しなどは、火に油を注ぐ効果しかもたらさない。急進的な言動は避け、第1次安倍内閣と同じように両国の新政権との融和に動くべきだ。


ましてや維新を利用して自らの政治的野望を達しようともくろんだ石原と結託して改憲に動くようなことをすれば、国論は分裂して収拾が付かなくなる。自らの政権の命を縮めることを良く理解しておくべきだ。


自民党は2度と失敗は許されないと心得るべきだ。ここは自公連立に加えて、民主党と政策ごとの部分連合を志向すべきだ。維新との連立で3分の2を確保して衆院での再議決などの奇策は長続きしない。ゆめゆめ考えるべきではない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年12月06日

◆橋下“ウエブ選挙”継続が許されるのか

杉浦 正章



自民党単独過半数と維新の伸び悩みが報じられる中で、焦っているのだろうか。日本維新の会代表代行・橋下徹の短文投稿サイト・ツイッターの更新が総選挙公示以降も止まらない。公選法違反の疑いを官房長官・藤村修が指摘しても、“確信犯”のごとく続行している。


カネのある自民党や民主党が「テレビでばんばん宣伝しているのに、カネのないボクはこれしかない」というのが継続の理由だ。しかし、それではやりたくても自粛している1500余人の候補は橋下の言う「馬鹿みたいなルール」にしたがっている馬鹿かということになる。弁護士のくせにこれ以上法律を馬鹿にした事例もない。司法の摘発がマストのケースだ。
 

藤村は5日、橋下のツイッターについて「公職選挙法の規定に抵触する恐れが強い。一般的には更新を自粛している事例が多い」と指摘した。同時に「違法か適法かの判断は関係機関がすることだ」として、適否の最終判断は司法機関などに委ねる考えを示した。公選法は選挙期間中、資金力で運動に差がつかないよう、「文書図画」の頒布・掲示を禁じている。


総務省の解釈ではホームページやブログ、ツイッターなどは指定外の文書図画にあたり、公示後の更新や新たな開設は公選法にふれるおそれがある。文書頒布の一種とみなされ、候補か否かに関わらず公示・告示後は禁じられる。
 

これまで自らをネットで発信してきた候補らは後ろ髪を引かれながらも、法律を順守して自粛している。各候補のウエブ拠点では「公選法により選挙が終わるまで更新をやめます」と表記されている。


ところがまさにツイッター中毒の気がある大阪のポピュリストだけは別だ。法律なっど無きがごときに選挙公示前から「ツイッターを続ける」と公言し、4日以降も「ダイレクトに投票呼びかけ行為はしないけどね」といいながら、維新の政策、主張を展開している。


「公示後の僕のツイッターが、公選法違反かどうか議論されている。結構なことだ。官僚組織がいかに硬直的か、社会的妥当性(常識)より、一度作ったルールを死に物狂いで守る習性がよく現れる」と公選法違反などそっちのけの我田引水論理を展開している。


さすがに藤村の指摘もあり、5日のツイッターでは「公選法での文書制限があり、ネットも文書にあたるという総務省の見解もあるので、バカらしいがそれを踏まえる」と書いた。
 

しかし「どう踏まえる」のかは言及しないまま5日も深夜まで堂々と主張を展開している。「脱原発依存体制の構築と具体的工程表が確定してから、国民の皆さんに宣言するのが、責任ある政治・行政」と原発ゼロを語るかと思えば、「今のテレビのような、事なかれ主義、とりあえず公平性を保ちましたの選挙番組では誰も見なくなるだろう。


ネットのリアル性には負ける。皆競争だ」とネット選挙を礼賛。公然たる公選法への挑戦の理由は「自民や民主はCMをどんどん流す。僕らには金がないから、宣伝方法は僕のせこいツイッターのみ」と述べる。要するに“確信犯”なのである。
 

もちろん筆者も現行公選法そのものがウエブ時代に対応していないことは痛感する。文書図画頒布の禁止なども、もっぱら資金力による不公平を意識したものである。ウエブは無料であり、その発信は資金力には関係がない。


総務省の判断もウエブに弱い守旧派政治家に対する役人根性丸出しの“配慮”の側面があることも否定出来まい。米大統領選を挙げるまでもなく、世界の潮流にさおさすのが半世紀も前の公選法だ。


だからといって、橋下は維新の代表代行たる立場にもかかわらず、法律を馬鹿扱いしてツイッターを継続して良いことにはならない。自分が立候補していないことは理由にならない。「候補か否かにかかわらず禁止」なのだ。選挙後法改正をして初めて可能になる。橋下は弁護士のくせに法治国家の形態も知らないのか。


そもそも橋下の政治手法には“唯我独尊”的なわがままが顕在している。自分の発言は何としてでも押し通す。まるで法律無視の和製ヒットラー台頭そのものである。このままではフェアな選挙戦は展開できない。警察は摘発をためらうべきではない。野放しにすれば御政道が成り立たなくなるのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年12月05日

◆安倍自民が“石原暴走維新”と組む危険性

杉浦 正章 



比較第1党の党首が首相になるのが憲政の常道であり、その意味から言えば自民党が政権に復帰する流れは確かであろう。問題はその“強度”だ。第3極乱立で自公で過半数に達するのか。達すれば参院のねじれ解消のための民主党との部分連合が視野に入る。


達しない場合どこと連立を組むのか。民主党と組むのか日本維新の会と組むのか。民主党なら当面自公民路線の安定政権、維新なら乱気流下の超低空飛行だ。とくに暴走老人・石原慎太郎の入閣とでもなれば暴言・放言ですぐに更迭騒ぎだ。「自公維」は確実に自民党にマイナス効果だけをもたらす。
 

キーワードは241議席だ。自公で過半数を超え得るかどうかの分岐点だ。さらに言えば安定多数の252に達するかどうかだ。これまでのところ自民党が現有議席118を100以上増やす勢いだ。民主党は230を3分の1程度まで減らすだろう。


したがって自民党が、現有の21人以上は獲得する公明党と合わせれば過半数は超える可能性があるが、浮動票が依然5割前後に達しており、その動向によっては政権の枠組みが大きく変化する可能性をはらんでいる。
 

まず自公が過半数を超えた場合には、自民党の選択肢は民主党との連立ではなく、参院のねじれ解消を狙った部分連合を組むかどうかが焦点となる。自民党総裁・安倍晋三は党首討論で「率直に言って野田さんは好きだ。一緒に酒を飲んだら楽しいだろう」と、“粉をかける”発言をしている。


しかし民主党との連立となれば、明らかに安倍の右傾化路線と衝突する。安倍は「民主党は参院では4割が労組出身。日教組も力を持っている。官公労主体の民主党政権とは組めない」と明言しており、自公民連立は否定的だ。おまけに通常国会は半年後の参院選挙を目指して与野党対決基調で推移する。総選挙で激突したあとでもあり、民主党と連立を組むことは極めて難しいだろう。


加えて先の自公民3党合意により、いわく付きの赤字国債発行法案は、本予算と一体処理の方向となった。重要なねじれ解消の理由の1つが消えた事になる。連立より部分連合が流れだろう。
 

幹事長・石破茂も選挙後に自公民の3党合意の枠組み維持について「いいかげんな3党合意ではないので、維持していかなければ参議院選挙までの間のねじれの解消はできない」と言明、自公連立に民主党が政策ごとの部分連合で参加することに期待を表明している。この合意が出来れば政権は1番安定するだろう。問題は安倍が維新と人脈的にも思想的にも近いことだ。


安倍は憲法改正と尖閣問題で石原と極めて近い発想をしている。現に尖閣諸島に船だまりを作り公務員を常駐させるという石原の“対中激突”提案に同意している。安倍が夏頃から維新の橋下徹と接近して、かなり強い人脈を作り上げていることも確かだ。石原は党首討論で憲法改正を条件に自民党との連携に前向きな姿勢を表明している。
 

しかし維新との連携は極めて危険性を伴う。とくに「自公維連立」ともなれば、政権は数合わせは出来るものの、石原と維新チルドレンを抱えて揺れに揺れるだろう。


とりわけ石原が副総理格で入閣ともなれば、尖閣を核とする対中敵視、原爆保有、原発推進の“3大暴言”が政権を直撃する。新党結成でスポットの当たった石原を観察すれば、「原発フェードアウト撤回発言」や「公明党評価せず」発言など、後から訂正や陳謝に追われる発言の繰り返しだ。明らかに政治家としての柔軟性に欠け、“短絡性暴言症”ともいうべき高齢者特有の発言癖が見られる。



都庁の記者クラブ程度を相手にしているうちは無事でも、政治記者の鋭い分析にかかってはすぐに馬脚を現す。閣僚になれば1週間で暴言症が露呈して通常国会は動かず、安倍は石原を罷免せざるを得なくなるだろう。発足早々で政権の枠組みに影響を与えるつまずききとなる。対中関係も回復不能状態に陥る。まず石原入閣は無理だ。
 


それでも安倍が「自公維」に向かうとすれば、平沼赳夫あたりを入閣させるしかあるまいが、危険度は減らない。「自公維」で3分の2議席を占めれば、参院で法案が否決されても憲法の3分の2条項に基づき衆院で再可決が可能だが、この奇策も長続きするものではない。必ず参院選では手痛いしっぺ返しを受ける。


石破が「今度の選挙で勝ってくる民主党議員は風に左右されない人たちだ。第三極は何を言っているのかさっぱり分からないので、そこと一緒にやるのはリスキーだ」と述べている通りだ。維新と組むくらいなら、たとえ労組が多くても「自公連立プラス民主部分連合」が1番適切だろう。


加えて維新のブームは、石原暴走と、橋下の口から出任せ、チルドレンの迷走ですぐに下火となり、参院選挙まで持つまい。維新にだまされて投票した「衆愚の浮動層」が初めて気付くのはその段階である。民主党にだまされたケースと全く同じだ。


したがって安倍が維新に傾くほど、自民党政権の危険度は高まる。石原は背中にくっついて離れない“おんぶお化け”そのものとなる。我が国の政党政治のためにも、もう二度と失敗は許されないことを安倍は自覚しなければならない。


      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)


2012年12月04日

◆朝日は「原発ゼロ」の工程表を明示せよ

杉浦 正章 



総選挙に向けての争点に原発維持の是非が集中している。まるで日本が石油を止められて太平洋戦争に突入したABCD包囲網のごとく、原発ゼロ包囲網が自民党を取り囲んでいる。まるで今度は石油ではなく原発で日本の首根っこを押さえ亡国の道をたどらせようとしているかのようだ。


自民党は「原発再稼働・将来はベストミックス」の立場を表明しているが、責任政党としてもっとも信頼できる態度だ。これに対して、軽佻浮薄な大衆迎合新党をはじめ既成政党も、ゼロへの工程はおろか、新エネルギーの展望も示さないまま、ひたすらゼロを唱える。


そして言論に1番影響力のある朝日新聞がその“音頭”を取っているのだ。まるで「社是」のごとく原発ゼロへと誘導している。本来国家にとって生命線のエネルギー政策をポピュリズムの渦中に置いて議論すべきではないにもかかわらずだ。
 

朝日の脱原発キャンペーンは凄まじいものがある。日米安保反対のキャンペーンや小選挙区導入のキャンペーンに勝るとも劣らないものがある。最近のトップを見れば11月26日の世論調査とトンネル事故などを除いてすべてが原発問題だ。「脱原発自民と維新が慎重」「脱原発競争自民は距離」「がんリスク福島事故の影響」などなど。


さすがに社説では断定できないようだが、その基調は言うまでもなく原発ゼロ志向だ。社説は「原子力・エネルギー政策は、将来の国のかたちを左右する。今度の総選挙で最大の争点のひとつだ」と煽りにあおっている。編集方針は読んだ有権者を原発ゼロに“誘導”するという巧妙な“手口”だ。
 

この原発ゼロのキャンペーンを成功させたら、間違いなく日本は亡国の道をたどる。朝日は「電気料金2倍」に家庭も企業も耐えられるというのか。30年ゼロで太陽光、風力発電などのコストは128兆円増、家庭の電気代月1万1千円増、経済へのマイナス効果45兆円という、日本経済の破たん必至の状態に責任を持てるのか。


朝日は社説で「電力需給の面だけなら、ほとんどの原発が必要ないことが明白になった」と書いているが、エネルギー価格高騰に悲鳴を上げた電力会社の相次ぐ値上げを故意に無視している。社説は政党に対してゼロへの工程表を求めているが、そんなにゼロにしたいのなら、自ら工程表を堂々と明示すべきだ。政党が出来るのなら、朝日に出来ないはずはない。


国際的にも電力料金の差は中国、韓国の国力を伸ばし、相対的に日本の国際競争力を減退させ、亡国の道をたどらせる。国力が衰えれば被災地の復興どころではなくなる。福島の被災者は実に気の毒で同情するが、被災者も日本がつぶれては救済の方法も財源もない。これが現実だ。
 

こうしたキャンペーンに踊らされて、新旧政党が熱いトタン屋根の猫のように飛び跳ねている。その原発政策から大衆迎合度のひどさを図れば、まず1番ひどいのは未来の党の22年原発ゼロだ。もともと代表・嘉田由紀子は大衆迎合の気配が濃厚であったが、今度は究極のポピュリズムだ。「22年ゼロ」に根拠はなく、「財源はいくらでも出てくる」の3年前の民主党そっくりの主張だ。


原発政策への理解度も薄く「原発再稼働あり」と発言して、慌てて引っ込めるという醜態ぶりだ。嘉田は暗く、なにやら突如出現した小沢支配の“妖怪政党”のような感じが濃厚で読売の調査でも「期待しない」が70%だ。
 

日本維新の会代表・石原慎太郎は、全く原発問題を理解していないことがはからずも党首討論で明らかになった。自分が作ったはずの維新公約の核心「30年代にフェードアウト」を知らず、「それは何だ」と宣うた。


おまけに、公約からの除去を明言したが、そのままになっている。首相・野田佳彦が問題なのは、夏の時点では原発再稼働を推進してきたにもかかわらず、選挙対策の蜜に引っ張られて、急速に方針転換して、30年代原発ゼロを言い出したことだ。ポピュリズム政党の先祖返りもいいところだ。
 

共産、社民は「即時ゼロ」だが、“確信犯”であり、こればかりは勝手にお経を唱えていればよい。みんなの党の20年代ゼロも、30年代より早くして目立とうとしているだけであり、その工程も定かではない。


代表・渡辺喜美以下言ってることはまさに口から出任せばかりだ。手に負えないのは理路整然と方向を間違っていることだ。公明も創価学会の意向の反映か「1年でも5年でも10年でも早くゼロ」だが、これで自公連立政権を担う責任政党だろうか。


こう見てくると、大衆迎合路線を取っていないのは自民党だけである。この原発ゼロへの“風圧”の中で立場を変えないのは、さすがに信頼感をもてる。猫も杓子も原発ゼロの中では、返って存在感が出てくる。


NHKの世論調査でも原発問題は「時間を掛けて結論」が35%で最も高い。まさに自民党の路線だ。朝日以外の新聞は毎日が、何と公示日4日のトップで「脱原発、問われる本気度」と露骨なる“ゼロ誘導”を展開し始めた。


読売は同日付で政治部長が「国民に負担となる情報は伏せたまま原発ゼロだけを吹聴するのは無責任」と正論を述べている。日経、産経は原発維持が方針だが、いささか主張が鈍くてパンチ力に欠ける。もっとエネルギー戦略を前面に出した主張を、発行部数など気にせずに展開すべきである。


ことは国家の危機だ。時には朝日の論調の欠陥を直接指摘して論争を挑むくらいでなければ、問題の所在が有権者には理解されない。


      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月30日

◆第3極は小沢と石原の“乗っ取り”状態

杉浦 正章

 

既成政党批判だけで中央政界に食い込もうとする大阪と滋賀のポピュリズム政党は、論争に深入りすればするほど馬脚が現れるという現象を呈するに到っている。日本未来の党は代表・嘉田由紀子の必死の「小沢色」打ち消し発言にもかかわらず、政策も人事構成も「小沢一郎支配」そのものの様相を呈している。


一方日本維新の会は「石原慎太郎支配」の色彩が濃厚となり、選挙公約で自主憲法制定を表明、争点の「脱原発」では「フェードアウト」などとまるで「自然消滅」のような苦肉の表現にとどまった。今後この内部の相克に起因する弱点が一層露呈されてゆくことが予想され、選挙結果にも大きな影響をもたらすだろう。
 

記者団に「小沢新党」を指摘された嘉田は発足早々から防戦一方だ。「そうならないように、女性や若者などの声を反映できるような仕組みを党の中に埋め込んでいきたい」と語るが、女性や若者の声がどうして小沢色払拭なのか意味不明。


29日に発表した衆院選挙向けの政策綱領ではなんと悪名高き「子ども手当」の復活だ。それも月額2万6千円は、09年衆院選マニフェストと同額だ。明らかに小沢が実態は自分が陰のリーダーであることを暗に誇示する意図で挿入したものだ。自民党からばらまき批判を受けて失速した手当を臆面もなく出す小沢も小沢だが、嘉田の政策無知も相当なものがある。
 

肝心の原発政策にしてもドイツのまねをして10年でゼロを目指すとしているが、昨日指摘した通りドイツは頓挫している。野田が「ドイツは2000年から脱原発を進めており、原発も十数基しかない。さらに地続きであり、仮に失敗したり、見通しを誤っても、隣のフランスが助けてくれる。


日本は島国であり、失敗は許されず、着実に進めていかなければならない」と指摘している通りだ。田舎では通用するあいまいな政策も、中央の厳しい視点から洗礼を受ければ破たんは最初から明白だ。


「小沢支配」は人事を見ても明白だ。要所を全部小沢側近で固められてしまった。まず副代表に側近の参院議員・森ゆうこを押し込まれた。金庫を握る財務担当には参院議員・佐藤公治、選挙担当に前衆院議員・川島智太郎だ。要するに未来の首根っこは小沢が完全に押さえた選挙戦となるのだ。


嘉田は「オブラート婆さん」として御輿に担がれるだけの構造だ。元首相・菅直人の「党の実権を小沢さんが握る構造は必ず破綻する」という予言を待つまでもなく、嘉田はやがて小沢に「使い捨て」にされたと悟るときが来るだろう。
 

一方で、維新も石原ペースが著しい。ただ石原の「硬直した中央官僚の支配を壊す」は何か言っているようで、実は何も言っていない。単なるスローガンに過ぎない。


民主党の3年前の主張と同じだが、結局何も出来ず、国にとってはマイナスにだけ作用した。さすがに政権公約には石原の持論の「憲法破棄」は盛り込まれなかったが「自主憲法制定」と文言を変えて挿入された。


肝心の原発では内部で相当なやりとりがあったと見えて、記者会見で「原発ゼロを目標とするのか」と当たり前のことを聞かれただけで石原は、異常なるたかぶりを見せ、ぶち切れた。聞いた記者に「そんなことさんざん言ってきたじゃないか。人の話を何聞いているんだ」と開き直った。


しかし記者は疑問があるから聞くのだ。聞かれて怒るなら記者会見に出てくるなと言いたい。メディアを利用しようとしているのはそっちではないか。はからずも人間の小ささを露呈させた一幕だった。
 

結局原発は「既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトする」などという訳の分からない表現に終わった。フェードアウトとは映画や演劇で、場面が次第に暗くなり消えていくこと。溶暗だ。また、音楽などの音が次第に小さくなっていくことを意味する。そこには自ら積極的にゼロにするという意思表示はない。まるで他人任せである。


石原は小説家のくせいに日本語の語彙がなくなると、英語でごまかす癖があるから、石原の発意による表現だろう。背景には原発推進の石原と、「30年代ゼロ」と言いたくてしょうがない橋下徹との葛藤があるが、原発問題は維新の抱えるアキレス腱だ。


こうして、維新は石原色が前面にでてきており、これがインテリ層や女性票の第3極離反を招くことは間違いない。まるで維新には野蛮人が、未来には旧態依然の寝技師が乱入したようなものだからだ。
 

こうして第3極は急ごしらえの政策を軸に、小沢と石原に乗っ取られる構図がいよいよ鮮明になった。


民主党はどっちにしても食われるが、その反面で自民党の“責任政党色”は一段と際立ちつつある。幹事長・石破茂が勇敢にも脱原発のポピュリズムに真っ向から対決し始めたのだ。石破はなんと「原発問題はスローガンだけで国を誤ることはしたくない。


原発は安全と安心が確保されれば必要なものは再稼働する。受けは悪いがそれを語る勇気を持たないでどうするんだ」と発言したのだ。もう吹っ切れている。堂々と国家にとっての死活問題で正論を述べる。この姿勢こそが大衆迎合政党か責任政党かを分けるキーポイントだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月29日

◆詭弁大王、暴言帝王、甘言老婆が勢揃い

杉浦 正章

 

選挙は弁論で訴えるしかない。したがって政治家の唯一の武器は弁論であるが、この選挙ほど詭弁、暴言、妄言、甘言、迷言がはびこっている例は珍しい。なぜかと分析すれば前回ポピュリズム選挙で成功した民主党の例にならって、第3極が“衆愚”の浮動層を再びだまそうと狙っているからに他ならない。


まさに大衆迎合選挙が展開されているのだ。日本は世界でもめづらしい知的水準の高い国民だが、偽政治家にころっとだまされる点では世界有数の幼児性を兼ね備えている。幼児にさとすように欺瞞(ぎまん)性を解き明かす。
 

まず【口から出任せ大王】は日本維新の会副代表・橋下徹。みんなの党との候補者調整で迷った末「じゃんけんで決めよう」と渡辺喜美に持ちかけた。さすがにアジェンダ渡辺もびっくりしたとみえて「そんなばかなことが許されるのか」と激怒、合流話は立ち消えとなった。代表・石原慎太郎が橋下に「じゃんけんで決めるしかないなぁ」と漏らしたのを、何でもパクってしまう橋下がつい口にしてしまったのが経緯のようだ。


この橋下の発言は維新の特質を物語っている。つまり政策や理念などは必要ない。橋下と石原の人気だけで選挙に勝てるという、有権者を見くびった判断が背景にあるのだ。


橋下は自民、民主の幹部の批判に対して「あーこの人たち、組織のトップとしてギリギリの判断をやったことがない人だなと思った」と反応したが、まさに井の中の蛙大海を知らずだ。自治体のトップの判断などは、政治のぎりぎりの場面の判断と比べれば楽すぎてうたた寝しながらでも出来ることを知らない。


それに、タレント弁護士だけあって、良くしゃべる。しゃべりすぎる。テレビで弁明していたのを聞いたが軽くて長広舌をふるうのには閉口した。寸鉄人を刺すという言葉を知らない。優秀な政治家はすべてこれを信条としているが、橋下にはかけらもない。タレントたるゆえんだ。
  

次に【暴言帝王】は石原だ。「海岸に原発を造ってきたのは基本的な間違い。大津波が来るという指摘もあったのに、政府は聞かなかった」と宣うた。石原の特技は過去の発言をすべて忘れてしまうことにある。高齢者特有のビョーキではないかと思える。


ついこの間まで原発推進の旗振り役を買って出て、「東京湾に立派な原子力発電所を作ってもよいと思っている」と公言し続けて来たのはどこの誰かと言いたい。それとも「東京湾は湾であって海岸ではない」とでも言うのか。


水がなければ冷やせないことぐらい小学生でも知っている。脱原発でなければ人にあらずという誤った風潮の中で「慎太郎よお前もか」と言いたい。ことあるごとに「私は暴走老人。死んでも結構と言うつもりでやっている」と、よわい80を逆手に取った発言を繰り返すが、高齢を理由に同情を買おうとするのは老人特有の“媚び”にすぎない。
 

【迷言大師】は亀井静香。日本未来の党に渡りに船とばかりに飛び乗って「未来は勢力をどんどんでかくする出世魚。ビュンビュン跳ね回って日本の危機、世界の危機を救う」と誇大妄想発言。しかしその実態は行き場なしの自分の危機を救うものに他ならない。政界のつまはじきで膝小僧を抱えていたのに「亀ちゃんとりあえずはよかったなぁ」と褒めてあげたい。
 

何と言っても【甘言老婆】の滋賀県知事・嘉田由紀子の言い回し「このままでは日本は国家としての品格を失う」はひどすぎる。原発ゼロでは2流国になると「第3次アーミテージ・ナイ報告書」が警鐘を鳴らしている。2流国どころか3流国の乞食となって物乞いをすることになる。それで品格が保てるのか。


「ドイツのように2022年にゼロを目指す」と言うが、ドイツのゼロは破たん寸前だ。再生可能エネルギーの技術の壁とコスト高に直面している。


加えて送電網の整備にかかるコストに悲鳴を上げている。2000年に始まった固定価格買い取り制度によって太陽光発電が急速に普及したが、買い取りで財政が成り立たなくなったのだ。また電気料金の高騰で住民生活に大きな影響が及び始めた。日本も電気料金は大幅に上がり、企業も家庭も確実にやっていけなくなる。苦境に立ったメルケルは太陽光発電の買い取り価格を20%から30%引き下げ、3,4年後には中止すると言い出した。


それでもやれるというなら嘉田はまさに亡国の甘言老婆だ。見る人はちゃんと見ている。日経電子版の調査によると未来を66.5%が「政策の違いを無視した野合」と回答。第三極に「失望した」は77.7%だ。
 

【妄言の姫】はみどりの風共同代表の亀井亜紀子。同党から未来の党に移る3人が衆院選で当選したら「みどりの仲間として迎えたい」と、みどりに復帰させる方針を明かにした。いったん未来を名乗らせて当選したら復党するのではまさにヤドカリ。有権者をだますものでもある。未来が選挙互助会であることがはっきりした。
 

それに引き替えて【名言の爺さん】もいる。自民党副総裁・高村正彦だ。未来について「実態を見れば小沢新党」と言い切った。「小沢さんは評判が悪くなると新党を作って目くらましをする。それが生き残りの手段」はまさに当を得ている。嘉田は小沢色を消すのに懸命だ。脱原発だけで時流に乗っている胡散臭い代表代行・飯田哲也に「小沢氏は無役」と言わせて、見え透いた逃げの一手を売っているが、時既に遅しだ。誰が見ても小沢新党と分かってしまうのだ。無役でも裏から手を打つ小沢の怖さを知らない。


おまけに現在73〜4人の候補のうち50人が小沢一派で、会計責任者まで小沢グループでは、小沢への救命ボート以外の何物でもない。これくらいはいくら衆愚の浮動層でも分かるだろう。

            <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月28日

◆3極3分裂で共食い共倒れの構図

杉浦 正章
 


「日本未来の党」を煎じ詰めれば船が難破して溺れかかっている小沢チルドレンを、1自治体の長が救命ボートを出して助けるという図式であろう。これが有権者に理解されるかということだ。それも「脱原発」一本に絞って、浮動票を狙うという究極のポピュリズムだ。そこには経済も外交も安保もない。


折から第3極はみんなの党と日本維新の会の合流が破談となり、維新、みんな、未来に3分裂して“共食い”状態に突入する。未来は脱原発色が薄まった維新のアキレス腱を突くことになる。しかし出遅れの未来と賞味期限が切れつつあるみんなは苦戦を余儀なくされつつある。
 

脱原発の琵琶湖宣言なるものに京セラ名誉会長の稲盛和夫の名前が連なっていたのには驚いた。稲盛は言わずと知れた小沢びいき。どうも滋賀県知事・嘉田由紀子と小沢の間を取り持ったのは元農相・山田正彦に加えて稲盛でもあったようだ。


稲盛はかねてから「原発は必要悪」と唱えており、財界人というのはころころと節操もなく信条を変えてもよいもものなのだろうか。「爺殺し」で有名だった小沢の最後の特技発揮に、まんまと乗せられたのであろう。
 

それにしても嘉田が原発維持について「このままでは日本は国家としての品格を失う」という発言をしたのはあきれて物が言えない。原発を推進している中国や韓国に品格があるかどうかはともかくとして、米欧主要国はすべて品格がないのだろうか。


主要エネルギーを日本だけが失えば、日本は間違いなく乞食となって物乞いをすることになる。それで品位が保てるのか。しょせんは田舎知事の戯言レベルの話しである。橋下と並んでポピュリズムの役者はそろった形だ。
 

小沢一郎は、このままではじり貧となる生活をどう立て直すかだけが焦眉の急であって、もとより政策などはどうでも良いタイプの政治家だ。脱原発などは小沢にもっとも似合わない政策だが、最後の勝負のためにはなりふり構わず活用してしまう。背景にはチルドレンたちの悲鳴がある。


もともと「風」だけで当選した連中だから、国会議員を3年3か月もやれただけで有り難いと思わなくてはならないのに、まだ悪あがきをするのだ。そして「生活の名前では選挙を戦えない」という“わがまま”まで言い出す始末となっていた。この埋没感を打破しようと小沢は、今度も「脱原発の風」を利用しようとしているわけだ。


しかし柳の下にドジョウは二匹いない。ほとんどの党が脱原発をお経のように唱えている中であり、「卒原発」と言っても未来の党に風が吹くかというと、難しい。再び脱原発の中に埋没するだけだ。
 

しかし既成政党に飽き足らない浮動層をどう取り込むかは今回の選挙の焦点であり、石原主導の維新の弱点は突くことが出来る。その弱点とは石原の極右国粋主義路線だ。そしてその石原の主張で橋下が脱原発色を薄めたことだ。ここはまさに維新のアキレス腱であり、これに中道脱原発の嘉田を担ぎ出し、利用するのは第3極内では通用する可能性がある。


つまり既成政党には投票したくないが、極右の石原はいやだという層を狙うのだ。とりわけ女性がターゲットだ。これが未来に流れる可能性がある。
 

一方、第三極では比較的ポピュリズム色の少ないみんなの党は維新と決裂状態に陥った。代表・渡辺喜美は「“二本”維新の会では話が進まない」と断念した。みんなと維新は競合区が増える一方の状態であり、現段階で27選挙区が競合している。


舌戦も橋下対嘉田、橋下対渡辺の図式で展開しており、橋下は3極内で挟撃を受ける形に陥った。これが維新の躍進基調に影響を及ばさないわけがない。まさに共食い、共倒れの流れが生ずる結果となったのだ。面白いのは橋下のコメントだ。


「僕は政治グループを束ねてきた自信があるが、嘉田知事はその経験がない。」だそうだ。数人集まった“雑魚”を束ねても、決して束ねたことにならないことが分かっていない。しかし3極が民主党を蚕食する構図には変化は生じないものとみられる。いずれにしても3年3か月の失政は、有権者の中で「怨念」と化しており、民主惨敗の流れは変わらない。
 

シギとハマグリが争いに夢中になっている間に両方とも漁師に取られたという故事を漁夫の利というが、まさに自民党にとっては思うつぼにはまってきたことになる。同党幹部は「小沢様々だ。民主党を分裂させて弱体化してくれた上に、今度は維新を食ってくれる」と漏らしている。


総裁・安倍晋三が「総裁選挙に勝つだけのための政党では、政治の信頼を失わせることにつながる」と未来を批判するのは的中している。選挙は蓋を開いてみないと分からないが、3極の骨肉の争いは、小沢や石原ら政治家が自らの政治的野望のためにあおっている側面が濃厚となってきた。


             <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家) 

2012年11月27日

◆小沢苦肉の「新党」も所詮は“落穂拾い”

杉浦 正章

 

まるでミレーの絵画シリーズだ。「晩鐘」を聞きながら爺さんと婆さんが「落穂拾ひ」をやっている構図だ。聞いてもすぐ忘れるような政党を集めて、ひたすら選挙向けにまるで水戸黄門の印籠のごとく「脱原発」を掲げて、「これが目に入らぬか」と意気込んでいるが、目に入らんのだ。


名前は「日本未来の党」だそうだが、限りなく疑惑に満ちた「無罪の人」小沢一郎(70)や、政界つまはじきの亀井静香(76)、原発ポピュリズムの滋賀県知事・嘉田由紀子(62)らが集まっても、しょせんは“野合”であり、日本の未来を託すわけにはいかない。直撃を受けるのは同じ第3極の日本維新の会だろう。第3極の分裂・共食いだからだ。
 

それにつけても小沢の“寝技”は冴えていると言えば冴えているが、“回天”の事業にはほど遠い。最近永田町には「小沢が最後の仕掛けをする」という観測がしきりに流されていたが、これだった。嘉田はかねてから日本維新の会副代表・橋下徹が裏切って大飯原発再稼働容認へかじを切ったことに不満があった。2週間前も嘉田は橋下が脱原発に踏み切らないことに対して「仲間を失った感じがする」と記者会見で語った。小沢は抜け目なくこうした“亀裂”に目をつけたのだ。


8月頃からあの手この手で接触を試みた。そうして24日の夜の秘密会談で「嘉田新党」で合意したのだ。「自分の党は解党してもいい」とたらしこんだのだ。嘉田も天下の小沢から持ちかけられては悪い気はしない。それに「無罪だから」と回りにも言い訳が立つ。しかしそこには女性特有の「淺知恵」がある。
 

小沢の狙いが分かっていないのだ。小沢の狙いはとりあえず「卒原発の看板借り」だ。看板借りとは芸者が置屋から、屋号や営業権を借りることが語源だが、表向きの名目、見せかけをさす。嘉田は大飯原発再稼働を“活用”して「卒原発」で名前を挙げたが、政界で埋没した小沢はそれをさらに“活用”して党首に祭り上げ、自分は国会議員団の代表として采配をふるうと言う形だ。


まるで維新の会を乗っ取った石原そっくりの手法だ。橋下を利用して自らの政治的野心を達成しようとしている石原のやり口そのままだ。さすがに中央の政治家の“悪さ”は、並大抵ではない。自治体の長など手玉にとれるのだ。
 

小沢にしてみれば嘉田という女性党首を持ってくることにより、今流行の原発ポピュリズムをフルに活用できることになる。自分が訴えても聞く耳持たぬ有権者が、嘉田なら聞く耳を持つのだ。


自らの胡散(うさん)臭ささを嘉田のオブラートでくるんで、落選必至のチルドレンの選挙対策に役立てようというのだ。こうして小沢は第3極にくさびを打ち込み、維新とは一線を画すことに成功したかに見える。
 

しかしことはそう簡単にはいくまい。だいたい小沢は行き場所なしで膝を抱える亀井とうまくいくのか。クリーンが売り物のみどりの風は小沢のダーティイメージと混ざり合っていいのか。原発以外で消費増税、外交・安保、TPP(環太平洋経済連携協定)など焦点の政策はどうするのか。これらの問題を棚上げにして「脱原発」一点に絞って新党を結成しても、まさに非維新野合新党に他ならないのだ。


そもそも弱小政党が集まってインパクトが生ずるのか。26日放送のNHKの世論調査では政党支持率が小沢の生活0.9%、亀井の減税日本0.1%、みどりの風0%だ。朝日でも生活2%で後は0%。いくら「落穂拾い」をやろうとしても、落ち穂は拾われてしまってないのだ。それに今回は組織ゼロではとても戦えない選挙だ。市民運動を巻き込もうとしても、まず間に合わないだろう。
 

だいいち原発対策は賢明にも自民党が3年間様子を見る方針で、最終的には「ベストミックスで入原発」を図ろうとしている。責任政党として見事な対応だ。


これに対して民主党は脱原発を閣議決定出来ないままであったが、どさくさに紛れて最近閣議決定したようで野田は「閣議決定した」とあちこちで吹聴している。他党は口を開けば脱原発だ。いまさら脱原発を唱えても、有権者には訴えない。嘉田が出張って珍しいだけだが、促成栽培はすぐに飽きが来る。


メディアは朝日が異常にこの脱原発新党をはやしている。今後「原発ゼロ」の“社是”達成のためには悪魔とも手を結びかねない姿勢だ。したがって新党はその実力以上に大きく見える可能性があるが、実態を見間違わない方がいい。


小沢の最終的な狙いは「脱原発政権」にあるから、選挙後あわよくば「反自民脱原発政権」での連立を目指そうするのだろう。いくら衆愚の浮動層でもこれに気付けば投票しまい。おまけに野田や、石原が小沢に乗るわけがない。したがって小沢には「晩鐘」の鐘が鳴っているのだ。おとなしく観念して落日に手を合わせた方がいい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)


2012年11月26日

◆党首討論は右寄り「直球」で安倍が優勢

杉浦 正章

 

解散以来2大政党党首の論戦を観察してきたが、様相は「理屈」の首相・野田佳彦に対して「実戦」の自民党総裁・安倍晋三の立場が浮き彫りだ。そして実戦論の安倍がリードし始めていることが分かる。


その証拠に日銀による国債買いオペ拡大発言は株価を解散直後の8661円から9366円に引き上げ、円相場も79.66円から82.45円へと円安に動いた。野田は「口先介入」と批判するが、これまで口先介入すら出来なかった民主党政権の無策ぶりが返って露わになった。


安倍が「発表してから円は下がり、株価は上がった。『勝負あった』だ」と自賛するのも無理はない。折からのナショナリズム台頭の風潮に安倍の「国防軍」もネットではやされている。街頭演説も安倍には聴衆が集まって沸くが、野田にはヤジが飛んでいる。
 

面白いのは野田の民・自党首討論の呼びかけに安倍が「インターネット番組でやろう」と回答したことだ。野田は「もっと幅広い人たちに見てもらった方がいい」と渋っているが、安倍の狙いは“ネット選挙”にある。いまネットでは「ネトウヨ」でなければ人でないような状況だ。


ネット半可通のために解説すると、ネトウヨとはネット右翼のことで右翼的、保守的、国粋主義的な性向を持つ若者たちをさす。そのネトウヨが安倍や日本維新の会代表・石原慎太郎をはやしにはやしているのだ。そのネット番組でやろうというのは、安倍が野田を自分の土俵に引き込もうという意図があるのだ。


ネトウヨなど視聴者の書き込みもすぐに画面に掲載されるから野田には不利になる。野田は14日の党首討論で勝ったのに味を占めて、これを再現しようとしているが、次回はどんな形式になるにせよまず負ける。
 

そして両党首の主張だが、テレビ朝日が25日野田と安倍の出演による好番組を組んだ。それぞれ別々の出演だが実態は時間差党首討論の形で面白かった。この番組でも安倍が指摘したが、安倍の「建設国債日銀直接引き受け」発言は、経済を知らない政治記者の誤報であったことだ。


別のTV番組で東京新聞論説副主幹の長谷川幸洋が暴露したところによると、「熊本まで安倍に同行した政治部記者が安倍の発言を日銀が直接引き受けることなのか、通常の買いオペレーションのことか分からないまま、『直接引き受け』にしてしまった」のだという。
 

東京新聞は22日付の社説でも取り上げ「安倍総裁は日銀による国債の買いオペ拡大も求めた。これがメディアで『日銀の国債直接引き受け』と推測交じりに報じられ『財政赤字を日銀が賄うのか』という極端な議論に発展した」と誤報を指摘している。


まさに理路整然と反論して「ウルトラCとか禁じ手を使うことは許されない」と批判した野田や、日銀総裁・白川方明の「現実的でない」「悪影響が大きい」「先進国はどこも行っていない」という鬼の首を取ったような反論は、誤報に踊らされたことになる。あとになって新聞は「安倍総裁が軌道修正した」と安倍のせいにしているが、誤報を誤報と認めないのはフェアでない。


小生は「経済を知らない政治記者は駄目だ」と唱えてきたが、その通りとなった。選挙への影響が強いだけに問題の大誤報だ。
 

さらなる問題は、野田の反論も白川の反論もその“資格”がないことだ。なぜなら民主党政権3年3か月の間で、政治家の発言が株価を引き上げ、円安を誘導したことはまずない。素人集団で自分が打つべき手も打てず、手をこまねいて国家財政と景気をここまで落ち込ませたことに対する責任が問われていることが分かっていない。


安倍が野田の反論を聞いて「びっくりした。こういう認識で政権運営をやっていたから、ここまで惨憺(さんさん)たる結果となった」と嘆いたとおりだ。白川もこれまでデフレ脱却策にすべて失敗し続けた日銀総裁としては、誤報に基づいたスジ論を言う前に、自らの進退をどうするかが先であろう。自民党政権になれば当然責任を問われるだろうし、その前に自ら辞表を提出した方がよい。
 

市場は安倍発言を歓迎しており、このままいけば当然選挙情勢にもプラスに作用するだろう。14日の党首討論の時は野田の解散の“奇襲攻撃”にあって、おたおたした安倍だが、党首討論に向けて態勢を完全に立て直したことが分かる。


外交・安保では「国防軍」構想を打ちだした。野田の批判に対して安倍は「野田さんの攻撃はかつての社会党党首が極端な例を持ち出して不安をあおったのと同じだ」と指摘するとともに、「自衛隊が軍隊でないというのは詭弁であり、軍隊としてちゃんと認め交戦の際は交戦規程に沿って行動し、シビリアンコントロールも憲法に明記する」と明言した。要するに唾棄すべき石原の極右国粋主義まではいかないが、正常なる右傾化路線の公然たる主張である。
 


安倍は尖閣問題で台頭しているナショナリズムの風潮を明らかに意識してとらえている。まさに右傾化で“勝負”に出ている姿であろう。


ネットではヤフーがインターネット利用者に対して、「国防軍の保持」の賛否を調査したところ、24日午後4時現在で「賛成」がなんと72%と、「反対」の25%を大きく上回った。若年層のナショナリズム、そして不況にあえぐ中小企業の悲鳴に似た声を安倍が吸い上げる可能性が高い。


安倍による右寄りの“直球”は、民主党をたじろがせている。加えてこの自・民2大政党の論議が党首討論の形で有権者の耳目を集めれば、最大の収穫は石原や橋下徹らのポピュリズムの存在の影を薄くすることだ。それだけでも2大政党の党首討論はやる意義がある。


           <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年11月22日

◆核武装“石原軍事政権”は戦後最大の悪夢

杉浦 正章
 


昔、山田洋次監督、ハナ肇主演の映画に「馬鹿が戦車(タンク)でやってくる」があった。村中から嫌われた主人公が隠してあった戦車を走らせて、村人たちを恐怖のどん底にたたき込むというのが筋だが、62年のキューバ危機直後であっただけに説得力があった。


その映画そっくりの状況が生まれつつある。憲法破棄、核武装、徴兵制導入を主張する日本維新の会代表・石原慎太郎による軍国主義政権復活路線である。「ヒトラーになりたい」と公言し、「軍事政権を作る」とかねてから主張する石原は、まさに時代錯誤の馬鹿がタンクに乗って走り出した姿そのままだ。


尖閣諸島をめぐる短絡したナショナリズムと結びつきつつあるから、始末に悪い。
 

20日の日本外国特派員協会での発言は、これまでに石原が述べてきた発言からいえば序の口に過ぎない。「いまの世界の中で核を持っていない国は外交的に圧倒的に弱い。核を持っていないと発言力は圧倒的にない。シナは核を持って日本の領土を奪おうとしている。核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいいと思う」というものだが、過去の発言をチェックすればこれは氷山の一角である。


11年6月にはもっとはっきり核保有論の目的まで述べている。「日本は核を持たなければ駄目だ。持たない限り一人前には扱われない。日本が生きていく道は軍事政権を作ること。そうでなければ日本はどこかの属国になる。徴兵制もやったらいい」と発言している。臆面もない「軍事政権を目指すための核保有」である。


この石原の主張は右翼もためらうものであり、これ以上の右傾化はない。21日には「シナ(中国)になめられ、アメリカの妾(めかけ)で甘んじてきたこの日本を、もうちょっと美しい、したたかな国に仕立て直さなかったら私は死んでも死にきれない。だから老人ながら暴走すると決めた」とも述べている。


まさに反米国粋主義も窮まれりというところであり、その下品極まりない表現は、聞く者を不愉快にさせる。


先に紹介したように8月の首相・野田佳彦との会談では、尖閣問題に絡んで「戦争になってもいいじゃないか」と述べた。慌てた野田は東京都に所有させては戦争になりかねないと性急な国有化に走ったのも事実だ。
 

問題は、維新にこのタンクで暴走する異常な老人を止める者がいないことだ。止めるどころか橋下徹もその政治姿勢はミニヒトラー的であり、徴兵制一つを取っても「勝つ為には傭兵制なんだけども、責任を根付かせる為には絶対僕は徴兵制は必要」と述べている。


維新の候補になる元宮崎県知事・東国原英夫までが「徴兵制があってしかるべきだ。若者は1年か2年くらい自衛隊などに入らなくてはいけないと思っている」と徴兵制導入論だ。この維新だからこそ石原は安心して結びついたとも言える。
 

問題はこうした極右国粋主義的な動きを迎え入れる衆愚の浮動層が台頭していることだ。尖閣問題を契機に、テレビでも自衛隊や海上保安庁に入って日本のために戦いたいという若者の発言が目立ち始めている。


こうしたナイーブな愛国心を石原が利用する流れとなっていることだ。戦後初めて政界で孤立していた石原が利用できる右傾化の風潮が生じているのだ。


危険なのは暴力満載の劇画で育った世代が安易に扇動され得ることでもある。しかし、憲法を破棄して徴兵制を実施し、核武装して中国と対決する国家戦略が成り立つだろうか。遅れてきた老人石原は、世界情勢を完全に見誤っている。狂気のごとき誤判断である。


核使用も辞さない米ソ瀬戸際外交は62年のキューバ危機が象徴しているが、半世紀も前の話だ。89年のベルリンの壁崩壊以来、核保有で物事が解決できるなどという指導者のいる国は北朝鮮とイランしかない。核保有を目指すが故に世界中からつまはじきされている国々だ。
 

日本が核を保有した場合どうなるか。極東が間違いなく瀬戸際の危機に陥る。中国はさびた核ミサイルを磨き直し、北朝鮮は東京、名古屋、大阪に向けた核ミサイルの発射準備を整える。当然韓国も所有する。


真珠湾の経験があるアメリカは、反米の石原による核奇襲攻撃を警戒して、同盟を破棄して日本に対峙する。政治・軍事・経済的に日本の孤立は目に見えている。核保有の石原軍事政権はまさに平和日本が戦後初めて見る“悪夢”なのだ。
 

石原は最初に都知事選に出馬した際、当時71歳の美濃部亮吉を追い落とそうとして「もう新旧交代の時期じゃありませんか、美濃部さんのように前頭葉の退化した六十、七十の老人に政治を任せる時代は終わったんじゃないですか」と発言している。


いまの石原の年齢は80歳。前頭葉は石ころのように萎縮して、歩くたびにころころ音がしているのではないか。前頭葉石化の石原を礼賛する衆愚の浮動層は、いいかげんに事態の危うさに気付くべきである。マスコミも甘い。極東のヒトラーの台頭を厳しく戒めるべき時だ。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2012年11月21日

◆野田と選挙区に追い詰められた鳩山引退

杉浦 正章

 

新聞川柳で<いつまでも残って消えぬ鳩の糞(ふん)>といわれてきた元首相・鳩山由紀夫が、ついに総選挙出馬を断念した。<うるさくて電池抜かれた鳩時計>となってしまった。最大の理由は“落選”の憂き目を見たくないというという選挙事情だろう。


鳩山はいわば民主党ポピュリズムの象徴的存在であったが、首相・野田佳彦の「出たい奴は出ていけ」という「純化路線」で最大のターゲットでもあった。これにより野田の「自公民路線」への障害物の一つが除去されることになり、選挙後は同路線へと傾斜する可能性が一段と高まった。
 

鳩山は解散後ひしひしと党執行部の“圧力”を感じていたに違いない。17日も地元で「官邸は鳩山を公認しないことで支持率が上がると踏んでいる。小泉さんと同じ事をしようとしている」と述べたが、これは鳩山の自分に対する過大評価だ。


小泉が2003年の総選挙で元首相・中曽根康弘、宮沢喜一の公認をしなかったことを意識しての発言だ。しかし小泉は高齢を理由に両元首相を公認しなかっただけであり、今回の場合とは全く異なる。


また野田は鳩山を切ったからと言って支持率が上昇に転ずるなどとは思っていまい。 野田にとっての最大の理由は鳩山に選挙活動をされては、民主党が分裂選挙をしている印象が強くなり党全体に影響を与えるということだろう。


鳩山は野田が命をかけた消費増税に反対して党員資格停止処分を受けており、最近では野田が推進しようとしている環太平洋経済連携協定(TPP)についても「反対する考えを変えるわけにはいかない」と真っ向から反対している。


最大の争点に対して党内から反対されては野田としても選挙対策にならない。執行部にに命じて公認の前提条件として党の方針に反対しないとの誓約書の署名を求めさせたのだ。
 


その上で野田は「掲げる政策に賛同しその実現のためにも歯を食いしばって戦う同志というのが公認のけじめだ。重たい立場の人でも守っていただく」と、鳩山を意識した発言をしている。また選挙区の北海道9区も自民党による政権奪還の象徴区となっており、元スケート選手で道議の堀井学に追い詰められて落選必至の状況に立ち至っていた。


自民党幹事長代行・菅義偉も「勝てそうだった。もう出馬を断念すると思っていたが、その通りになった」と述べている。こうして野田に追い込まれ、地元でも追い込まれて出馬を断念せざるを得なくなったのが実情だ。
 

一方で、維新の台頭は既成政党間に緊張感を走らせており、自民党から20日、「自公民部分連合」ののろしが上がった。幹事長・石破茂が自公民路線について「連立という話ではないが、政策が合うのならスピーディーに進めていかないと国民のためにならない。基本的には自公民3党だ」と発言した。とりあえず自公連立を実現した上で、政策面での自公民部分連合を推し進めようということだ。


しかしその最大の障害が消費増税反対の鳩山であったのだ。自民党からも敬遠する声が上がっていた。野田が反対者切り捨ての純化路線を目指すのも、横目で「自公民」をにらんでいることなのだろう。鳩山引退はその障害を除去することになる。


石破はさっそく「民主党が純化された集団として政界再編の一つの核になることは望ましい」と鳩山引退歓迎の意向を表明した。
 

そもそも3年前の総選挙でも筆者は鳩山の欺瞞(ぎまん)性を指摘して警鐘を鳴らし続けたが、衆愚の浮動票が圧勝させてしまった。調子に乗って鳩山は外交では愚かにも日米中の正3角形の関係を唱え、普天間では「最低でも県外」と愚鈍な発言を繰り返した。揚げ句の果てに、「トラスト・ミー」とすり寄ったオバマからは全然信用されない状況を作ってしまった。


内政では事務次官会議を廃止して、これが国政に致命傷とも言える影響をもたらした。事業仕分けなる物も欺瞞のポピュリズムに過ぎなかった。それでも幹事長・輿石東の意向が反映してか、民主党は鳩山を外交担当の最高顧問に任命。


自民党副総裁・高村正彦から17日、「日本には1億人以上も人がいるので、鳩山氏みたいな人がいることはそれほど驚くことではないが、政権与党の外交担当最高顧問に復帰するのは大いに驚くべきことだ」と批判されるという始末。元々鳩山は首相退陣に際して不出馬を宣言していたのだから、そもそもの存在が未練がましかったのだ。


これで「サイテーでも国外」にでも去ってくれるともっとすっきりする。宇宙人だから故郷の宇宙に戻ってくれてもいい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2012年11月20日

◆【自公維】連立が最悪のケースとなる

杉浦 正章

 

衆院選挙序盤戦の情勢を見て日本維新の会代表・石原慎太郎が「第3極ではなく、第2極にならないとダメだ」と大風呂敷を広げている。明らかに選挙後の政権の枠組みをにらんでの発言だ。連立政権に入り込んで政権運営の主導権を握ろうとする姿勢だ。


問題は1か月間の選挙で維新の“馬脚”がどれほど現れるかにかかっており、即断は極めて難しい。現段階で言えることは政権の枠組みが比較第1党になるとみられる自民党を中心の政権となる可能性が濃厚であることだ。しかし、1党だけで241議席の過半数を制することはまず困難だろう。
 

そこでどのような枠組みがあり得るかをシュミレーションするが、まず有権者の期待度を見てみよう。マスコミ各社の世論調査によると序盤では第3局中心の政権への期待度が意外にも大きいことが分かる。「民主、自民以外の政党中心の政権」への支持が毎日35%、朝日34%でトップ。NHKは「民主・自民連立」の30%に次ぐ26%だった。


読売は「自民、公明、維新」枠が16%でトップ、「民主、自民、公明」15%、「自民、公明」13%の順だった。調査結果が示すものは既成政党への拒絶反応が色濃く反映しており、何も知らない「衆愚」の第3局への期待の強さを物語っている。
 

しかしこの期待値が実際の投票行動と連動するかは定かではない。比例区での投票先を聞くと、朝日が自民22%、民主15%、維新6%。読売が、自民26%、民主13%、維新8%となっている。今後1か月間の選挙戦を通じてどう変化するかだが、政策を棚上げにして石原と大阪市長・橋下徹の人気だけに頼る維新が、石原の言う2極への躍進を果たすことは困難だろう。


今後、原発の是非、消費増税、景気対策が論戦の焦点にならざるを得ず、石原の「小異を捨てる」というまやかしの「野合」路線や、橋下の「何から何まで一致する政党はない」などという問題のすり替えが通用するほど甘くはないのだ。
 

では、あり得る政権のパターンだが、自民党が第1党を取り戻す可能性は依然最大とみられる。そこで実現し得るのが【自公連立】だ。この枠組みが3年3か月にわたる民主党政権の“政治の劣化”から政治が蘇生(そせい)するためには最良の組み合わせだろう。政治に落ち着きを取り戻し、俗受けを狙わず、外連味(けれんみ)のない政治がいまほど期待される時はないからだ。


しかし問題は自公で過半数を達成できるかということだ。達成できなければ、乱立した小政党をかき集める方法と、民主党を引き込む方法がある。これは過半数の割り方にもよる。
 

割り込みが少なければかき集めで事足りるが、大きく割れば【自公民連立】の動きが生ずる。民主党がたとえ70〜80議席まで転落しても自公民となれば300議席は達成できる。既に自公民路線は消費増税、赤字国債発行法案、定数是正で実現しており、この流れを継承するのだ。3年余で首相・野田佳彦を始め、前原誠司、細野豪志、仙谷由人など自民党政権になっても使いたいような人材は成長している。


しかし、ささやかれるように鳩山由紀夫や菅直人が落選すればいいのだが、口幅ったい大しゅうとが付いてきては政権もやりにくいに違いない。純化路線をさらに進めて鳩山を公認しなければ1番良いのだ。そこで苦肉の策としては【自公連立】プラス【民】が考えられる。とりあえず【自公】で連立し【民】とは政策中心の部分連合で閣外協力を求める方策である。【自公民】にせよ【自公プラス民】にせよ次善の策としては最良であろう。
 

もっとも危険で日本を逃げ出したくなるような政権が維新参加の【自公維】政権だ。少なくとも民主党政権は政権のプロではないにしても政治のプロが政権を担った。維新は国政ど素人集団の登場となる。それも極右国粋主義者の石原が率いるのだ。「風」で当選した連中は1票の議員票としての価値しかない。石原の演説に拍手し、他党の演説をやじるための最悪のチルドレンの登場だ。


自公は自民党総裁・安倍晋三が維新の橋下とパイプでつながっており、公明は選挙協力で連携している。したがって連立を組もうとすれば、これまた300議席は可能だが、いったん連立を組んだら石原の「最後のご奉公」に引っかき回される。石原は対中戦争論者だから、中国の習近平政権とは最初から対決路線となりかねない。石原は関係改善に向けては決定的な阻害要因なのだ。
 

細川護煕が実現したのが非自民の連立政権であり、石原は政権を獲得するためにはこの細川方式も脳裏に去来しているのだろう。しかし、それには公明、民主両党を引き込み【維公民連立】政権を作らなければならないが、いくら何でも野田も公明党代表・山口那津男も敬遠するだろう。


とりわけ野田は散々維新に民主党議席を食い荒らされた上のことであり、石原の軍門に下ることはまずない。【維公民】は机上の空論に過ぎない。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

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