2017年09月13日

◆「北への石油」の陰に中露の極東戦略

杉浦 正章



ぬかに釘の国連制裁決議


「貧者の核」は野放し状態へ


 国連の対北制裁決議を分析すればするほど、極東における“準冷戦”構図の厳しさに帰着する。「日米韓対中露」対峙の構図だ。その中心に位置する北朝鮮の“ばか大将”ならぬ“核大将”金正恩が両者の力関係を見据えるかのように核とミサイルの実験を繰り返す。そのたびに国連もむなしい決議を繰り返す。2006年10月9日に北朝鮮が初めて核実験を行ったことに対し、安保理が、同月14日に核の不拡散と北朝鮮に関する決議を採択して以来、9回にわたり繰り返された決議がミサイルと核実験を止められない。止められないから技術力はどんどん向上して、早ければ半年後には米大陸に届くICBMが実現する。


国連が如何に無力であるかを物語るものにほかならない。もはやオリンピック精神ではないが決議に参加することに意義があるとしか思えない。ぬかに釘なのである。勢いづいた金正恩は今度はICBMに模擬核弾頭を載せた実験などを準備するに違いない。主要国は国連など頼りにせず、独自の制裁を行うしかあるまい。
 

決議のたびに国際社会は「こんどこそ」と一縷(る)の望みを抱くが、今回の決議の一縷の望みは、ガソリンなど石油製品の55%削減と労働者の雇用の全面禁止とされる。40か国に5万人いる北朝鮮労働者と繊維製品の輸出禁止で北の収入を10億ドル削減できるというが、本当に削減が可能か。中露との国境線は長い。万景峰号のロシア航路も始まった。ガソリンくらいは密輸で容易に手に入る。


またシベリア開発に便利な北朝鮮労働者をずる賢いロシアが簡単に手放すだろうか。評論家は石油製品の禁輸でエネルギー系にはじめて踏み込んだ意義を強調するが果たしてそうか。はじめて踏み込んだから次の実験では、石油禁輸が実現するのか。そうではあるまい。逆に言えば中露は石油の禁輸阻止に成功したのであり、予見しうる将来においてこれを守り切るだろう。日本が石油の供給をストップされ、破れかぶれの太平洋戦争に突入したように、中露は北が破れかぶれになるのが極東の「安定」を崩すから嫌なのである。従って、国連における駆け引きにおいて国連大使ヘイリーは中露結託組に紛れもなく敗れたのである。


最初は「最強の制裁決議」と胸を張っていたヘイリーだが、「石油」に踏み込め得なかったことは米国連外交の敗北にほかならない。この結果、制裁が北の核・ミサイル開発に打撃となり得るかは極めて疑問だ。各紙が朝刊で北の輸出産業の9割が制裁対象となったと報じているが、問題は実効性があるか疑問であるということなのだ。
 

中露にとっては北がミサイルと「貧者の核」を完成させても、これが自国に向けられない限りは、米国に対する緩衝国としての役割が拡大するからありがたいのだ。韓国が朝鮮半島を統一して、国境線まで米軍が来ることが最大の懸念材料なのだ。“核大将”は核とミサイルを持ったと威張るが、その本質は中露の準傀儡(かいらい)政権なのである。中露が見放せば崩壊するのだ。よく中国は北の政権が崩壊すれば難民が国境を越えてなだれ込むというが、果たしてそうか。そんな事態になれば中国陸軍と海軍を終結させれば、容易に阻止可能だ。


従って難民押し寄せ論は中国にとっては口実に過ぎない。何のための口実かと言えば、自国の安全保障のための口実なのだ。むしろ中国の本音は、たとえ核とミサイルを持った“核大将”でも、存在し続けてくれることが、極東戦略からみればありがたいことなのだ。たとえ噛みつき犬でも番犬としては役立つのだ。
 

とにかく中国はワルだ。陰の北支援が止まらない。そもそも核兵器を格段と進歩させている最大の理由は科学者の中国留学にある。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、海外留学した北朝鮮の科学者が持ち帰る専門知識が、核とミサイル技術を格段と発展させた理由であると報じている。留学先の筆頭は中国であり、明らかに北に核ミサイルのノウハウを教えること禁じた2016年の国連制裁措置に違反しているケースがあるという。


同紙はここ数年で北朝鮮から数百人の科学者が留学、その多くは国連が北朝鮮の兵器開発に役立つ可能性があると指摘した学問分野だった。同紙は「いまや自国の科学者が核開発を担うとなれば、その野望を封じることは一段と困難にならざるを得ない」とお手上げの状態に至っていることを明らかにしている。


こうした手詰まり状態の中で、生じているのが日韓の核保有論である。韓国の場合は中央日報が「前大統領朴槿恵がオバマに昨年11月に戦術核の再配備を要請していた」ことをすっぱ抜いた。ホワイトハウス関係者は「要請があればトランプ政権が韓国に戦術核を配備する可能性があることを排除しない」 と漏らしているという。日本の場合も元幹事長・石破茂が米軍による核持ち込み推進論である。古くは佐藤栄作がジョンソンに日本の核保有の可能性を述べた。その後佐藤は沖縄返還に関連して「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核3原則に転換しているが、政府見解では答弁書で「核兵器であっても保有することは必ずしも憲法の禁止するところではない」 と明示している。


狂った“核大将” が存在する限り、核アレルギーは崩壊し、核保有論が日韓両国で台頭する可能性がある。

        <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)


<俳談>

【名句の余薫】

下校の子八重撫子に触れてゆく 毎日俳壇入選
 誰にも忘れられない名句がある。私の場合は奥の細道の句だ。と言っても芭蕉の句ではない、弟子の曾良の句だ。那須野が原に足を踏み入れた芭蕉一行を、小さい子供が二人、後を追ってどこまでもついてくる。そのうちの一人は小さい娘で、名を尋ねると「かさね」という。「聞なれぬ名のやさしかりければ」と、曾良が作った句が
かさねとは八重撫子の名成べし
 本当は芭蕉の作という説もあるが、どちらでもよい。小さな女の子が見知らぬ旅人をどこまでも追いかけるという、江戸時代の「安全」と日本人の優しさの原点をそこにある。頭をいっぱい撫でてやったに違いない。その撫子を通学路で見つけて作ったのが掲句だ。

     <俳談>        (政治評論家)

2017年09月08日

◆“北朝鮮効果”で政局は安倍有利の展開

杉浦 正章




支持率は回復基調、長期政権説も復活


民進は出だしでずっこけた


局面が一か月でがらりと変わった。北朝鮮効果だ。北朝鮮問題を国内政局から見れば、「森友と加計」の空虚な疑惑から首相・安倍晋三を解き放った。支持率は上昇基調をたどっており、逆に前原民進党は支持率低迷状態に「山尾不倫疑惑」 が追い打ちをかけ、踏んだり蹴ったりの状況だ。年内結成を目指すという小池新党も、髭ずらの冴えない衆院議員若狭勝では力量不足でブームなど起きない。


最重要ポイントは社会部主導で「モリカケ」を狂ったように追及した朝日が紙面を北朝鮮問題にに一変せざるを得なくなったことだ。社運をかけた“モリカケ倒閣紙面”も、失敗に終わった。このまま対北政策を誤らなければ、安倍には早期解散のチャンスが待っている。
 

一時「危ない危ない」と思ったのは評論家ごときの進言に安倍が乗るのではないかと思われたからだ。田原総一朗が得々として「政治生命をかけた冒険をしないか」と提案したことが「電撃訪朝」であることは分かっていたが、ようやくその内容が「北朝鮮と日米韓中ロで話し合う6者協議の復活を目指した訪朝」であることが分かった。6者協議などという“埋葬”された北説得方式を掲げて訪朝すれば、世界の笑いものになるところであった。乗らなかったのは正解だ。
 

安倍の北朝鮮政策は本筋に乗っている。オバマ政権の戦略的忍耐では局面打開困難と判断、トランプと連携して北朝鮮制裁へと動いている。狂気の指導者には力を見せるしかないのであって、今取り得る最良の道は軍事力行使も辞さぬ構えを見せつつ、交渉の場へとひきづり出す事だ。中国と歩調を合わせるかに見えるプーチンは乗らなかったが、重要なことは安倍が主張し続けることなのだ。安倍官邸は北朝鮮問題では水際立った対応をしている。8月29日のミサイル発射のさいも事前に情報を入手、安倍は公邸に泊まり込み、午前5時58分の発射後6時23分には執務室に現れ、直後に記者会見するという手際の良さだった。
 

自民党内では石破茂が乾坤一擲の勝負に出ている。掲げる政策は、「日本への米軍核兵器持ち込みによって、北への圧力を強める」という構想だ。北のおかげで日本人の核アレルギーは再考を迫られ、徐々に崩れ始めているが、まだ石破構想を多数が是認するところまでにいっていない。もともと事態の成り行きを見て安倍が選択すればいい話であり、石破はやや早計であろう。一時は党内で反安倍の動きが台頭したが、北情勢は安倍を叩けば自分たちが叩かれる状況を生じさせている。
 

政調会長岸田文男も、怪僧ラスプーチンのような岸田派顧問古賀誠の「安倍は1年で倒れる」との予言で外相を辞めたが、これも善し悪しであった。この北朝鮮危機を外相として乗りきれば、国民的な評価も高まったが、評価が高まっているのは河野太郎であり、政調会長では出番がない。来年9月の総裁選では、安倍を助けて禅譲路線を狙うのが一番の得策であろう。
 

稲田朋美を更迭したことも利いて内閣支持率は改造後に跳ね上がった。共同通信の調査で8月初めには44%で8.6ポイントも上昇した。その後北朝鮮情勢を経た日経の8月25-27日の調査でも支持率は46%となり、4ポイント上がった。不支持率は3ポイント低下して46%で、支持、不支持が拮抗した。やがては逆転しそうだ。一方、民進党も小池新党も振るわない。共同の9月の調査でも「前原に期待しない」が51.2%、「期待する」は40.3%だ。小池新党も「期待する」が38.4%で「期待しない」が51%。ブームは去った感じが濃厚だ。


民進党代表戦は白票が8票出て党内では「離党予備軍ではないか」との見方が生じている。党の体たらくを物語る話ばかりが山積だ。おまけに前原の人を見る目のなさは幻の「山尾幹事長」人事で露呈した。おそらく前原は山尾が、主婦の「保育園落ちた日本死ね」発言問題で安倍を追及した手際を評価したのだろうが、見誤った。不倫では離党は当然だ。議員辞職にもつながるべき話だ。
 

朝日のずっこけは安倍にとって天佑というべきものだろう。大体安倍関与の根拠などないモリとカケで倒閣が可能と考えた編集局幹部の考えが甘い。このところの紙面は北朝鮮一辺倒であり、モリとカケは影を潜めた。北への対応に懸命になっている首相をとらえて、あらぬ方向の疑惑にすり替えれば、読者はあきれかえるのが目に見えているから方向転換したのだろう。


朝日にしてみれば一段落したらまたモリとカケで政権を追い詰めようとするだろうが、安倍にしてみればその手は桑名の焼蛤だ。だから党内で臨時国会冒頭解散説が流れているのだ。タイミングよく総選挙になれば、北のおかげで結構自民党は議席を取るかも知れない。現在の293議席維持は困難でも270前後はいくかもしれない。そうなれば「安倍長期政権」が復活する。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


<俳談>

【たまには俳句自慢させてくれ】
毎日俳壇西村和子選2席
 毛糸編む話しかけてはならぬ貌
選者評=編み目を数えている顔つきか。はた目にもその呼吸を読み取って、おかしみの漂う句になった。
産経俳壇寺井谷子選一席
 明眸の負けん気で出すカーリング
選者評=「カーリング」は氷上のチェスと呼ばれる。この競技の終盤、ストーンを滑らせる時の静かに漲る緊張。大きな瞳が迫ってくるようである。
日俳壇西村和子選一席
 春灯娘の部屋に娘たち
選者評=娘さんのへやに娘たちが集まり、笑い声が絶えない。春の宵のはなやかなひととき。季語の春灯が響く。
毎日俳壇大峯あきら選一席
 房総の卯波とどろき月上る
選者評=房総半島に卯波がとどろき、太平洋から月が昇ろうとしている。勇壮な景である。蕪村をも彷彿とさせる。

産経俳壇寺井谷子選一席
 今朝の夏娘の胎児「つつんと蹴る」
選者評=「つつんと蹴る」は娘さんの言葉。男親にとっては分からぬ感覚ながら、胎児=孫の元気さを伝える言葉に頬が緩む。明るく希望に満ちた「今朝の夏」。

<俳談>     (政治評論家)

2017年09月07日

◆日本核武装をめぐってWHが分裂状態

杉浦 正章



トランプは推進論、全上級顧問が現状維持


 WSJ紙が論文掲載
 

既報の「日本の核武装に道を開く北朝鮮の核容認」と題する社説を書いた米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が、再び著名学者による日本の核武装に関する論文を5日掲載した。論文は、日本の核保有をめぐってホワイトハウス内部の意見が割れ、大統領トランプ自身については日本の核保有を「米外交政策にとって敗北ではなく勝利とみなす可能性がある」と報じている。北朝鮮の核とミサイル実験は米政権中枢の見解の分裂を招き「狂っているとされる金正恩政権が米国を窮地に追い込むことに成功している」と分析している。
 

論文の筆者は、ウォルター・ラッセル・ミード。ハーマン・カーンが創設したハドソン研究所フェローでバード大学教授。同論文はまず「金正恩氏は米国内の意見の深い分裂を露呈させ、米政府が近く判断を余儀なくされる可能性のある厳しい選択肢を浮き彫りにしている。」としてトランプ政権が日本の核保有をめぐって判断を迫られていると現状を分析。


次いで「北朝鮮の好戦的態度や核兵器開発計画は、日本を独自の核兵器保有に向かわせているというのが観測筋の長年の理解だ。世界には日本ほど核兵器保有に近い位置にいる非核保有国は他にない。日本が核武装を決断すれば、核兵器を保有するまでにわずか数カ月しかかからないと多くのアナリストはみている。」として日本核保有の可能性に言及。「その後は情勢が混とんとする中で、韓国や台湾も日本に追随する公算が大きく、少なくとも台湾は日本からひそかに支援を受けるだろう」と韓国台湾の追随を予測している。


さらに核武装をめぐる日本国内の論議について「日本のエリートの意見は核武装という選択肢を支持する方向に目に見えて傾いている。保守派のナショナリストたちは、日本は核武装によって第二次大戦後の対米依存状態からようやく解放され、独立した大国としての地位に返り咲くと長年信じている。日本の世論は核武装に極めて懐疑的ではあるが、北朝鮮の脅威とミサイルの上空通過に加え、米国のコミットメントと信頼性に対する疑念の高まりを受け、これまで考えられなかった選択肢を考える人が増えている」と分析している。


注目すべきはホワイトハウス内がこの日本の核武装について分裂状態にあると指摘していることだ。ホワイトハウスの全上級顧問は「太平洋地域で現状を維持することが米国の利益にとって最善だと信じている」としながら「トランプ大統領を含むであろう他の人々は、東アジア諸国の核保有を、米外交政策にとって敗北ではなく勝利とみなす可能性がある。


日本や韓国、そして場合によっては台湾にも核を保有させれば、中国の地政学上の野心を封じ込められるからだ。そうなれば米国は韓国から軍隊を撤退させ、防衛費を削減できる一方で、同盟諸国に中国封じ込めの費用を負担させることができる。」と分裂を指摘した。
 

そして核コミットの現状を維持をした場合の東アジアへの関与について論文は「米国は太平洋地域の対中防衛費の大半を負担し、北朝鮮などの敵対国との戦争のリスクを抱え込むことになる。また、雇用破壊の一因とされる韓国などからの安価な製品の輸入を促すという“賄賂”を贈らなければならなくなる。この選択肢はトランプ氏の「米国第一主義」を支持する有権者にとっては、あまり魅力的には見えない」 とコメントしている。


一方米国が撤退した場合について「東アジアで脇役に回ることは、米国にとって第二次大戦後の戦略的思考と決別することも意味する。米国は持続可能なコストで平和を維持してきた。この長年の戦略を米国の世論が支持するかは、もはや分からない。トランプ氏の考えを支持する共和党議員もバーニー・サンダース上院議員をはじめとする一部民主党議員も、こうした視点で考えているようには見えない」 と世論や議会が変化しつつあることを強調している。


さらに米国が撤退した場合東アジアは「平和的な発展よりも軍拡競争と軍事的対立を招く公算が大きい。中国が南シナ海で抱く野心は日本が依存する貿易ルートの安全保障を脅かす。また、北朝鮮が爆弾の性能強化とそれを飛ばす大陸間横断ミサイル(ICBM)の開発をやめることは決してないだろう。」 と予想している。


そして「北朝鮮危機は極めて望ましくない2つの選択肢を米国に突きつけている。1つは70年にわたる国家戦略を放棄し、アジアの不安定化を促すリスクがある。もう1つは卑劣で無節操な敵と醜く危険な戦争に陥るリスクがある。トランプ政権は容易な逃げ道のない戦略的ジレンマに陥っている。」 と二者択一の厳しい現状を指摘している。 


こうした日本核武装論は日本の論議にもこだまする可能性を秘めている。既に自民党内では石破茂が非核三原則について6日、「持たず、つくらず、持ち込ませず、議論もせずということで本当にいいのか」と指摘したうえで、「アメリカの核の傘で守ってもらうと言っておきながら、日本国内に、それは置きませんというのは本当に正しい議論か。感情的には持ち込ませないほうがいいに決まっているし、国民が反発するのはわかるが、抑止力として十分か、ちゃんと考えないといけない」と述べ、アメリカ軍が核兵器を日本国内に持ち込むことの是非を議論すべきだという考えを示した。しかし日本自体の核武装については否定している。


非核三原則は佐藤内閣が決定して以来、日本の“国是”となっているが、いまや崩壊の兆しが生じている。今後臨時国会や自民党総裁選挙にむけて、議論が活発化するものとみられる。

     <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)


◎俳壇

【外来語対古語】

片蔭のデジャビュの辻を曲がりけり 朝日俳壇選一席

フランス語のデジャビュとは未体験の事柄であるはずが、過去にどこかで体験したことがあるかのような感覚を覚えること。日本語の既視感である。大学生への調査では72%が経験があると答えた。訪れた経験のない浅草のある曲がり角をどうしても過去に見た気がして作った。片蔭は夏の季語で、夏は影を選んで歩くことから派生した。この句のポイントはデジャビュウという洒落た外来語に「辻」という古い余韻のある言葉を合わせたこと。「角」では絶対に入選しなかったであろう。

       <俳談>     (政治評論家)



2017年09月06日

◆中国の本格的な北制裁は不可能

杉浦 正章



日米の「石油輸出規制」論は空転か


韓国にも核武装論が台頭
 

ドキリとさせられた。このような時に国会で冗談でも「包丁一本さらしに巻いて」 と歌って訪朝する神経のばかさ加減を疑うが、アントニオ猪木なら包丁を使わなくても金正恩を殺害できる。しかし、もう殺害しか手段はないとことまで行くかもしれない。事実韓国は国防相宋永武が4日、今年12月1日付で暗殺を目指した「斬首作戦」部隊を創設する方針を発表。陸・海・空合同で、その規模は1000人から2000人だという。


しかし、その前に日米が国連でやろうとしていることもドラスティックだ。中国の対北石油輸出の規制だ。日本が太平洋戦争に突入した歴史を見れば石油の規制が国家にとって存亡の危機になることは明白だが、習近平がこれを本格的にに断行するかと言えば、しないだろう。プーチンも否定的だ。したがって、国連決議などほとんど意味はない。やっても「お茶を濁す」程度だろう。だから金正恩はますます増長して、結局、殺害しかないということになる。
 

昔、ニューヨークで国連を取材したが国際機関というものは、ウィーン会議時代と同様に「会議は踊る」 のであって、まとまらない。国際会議は戦争の代わりに大国が角を突き合わせる場であり、国家エゴがむき出しになるのだ。北朝鮮問題の本質は、中国とロシアが北を使って米国と対峙する準冷戦の構図であり、その基本構図が変わらない限り、金正恩のやりたい放題は続く。もっとも、先進7か国が歩調を合わせて対北制裁を求める現状に中国とロシアは、国際社会の批判をかわさなければならない局面に追い込まれつつある。
 

とりわけ注目されるのは日米が主張している「対北石油輸出規制」に中国がどう出るかだ。昨年3月の決議ではロケット用燃料を含む航空燃料の提供を原則禁止したが、北は何の痛痒も感じていない。国境には密輸がはびこっているのだ。この先例があるから多少の制裁は全く不可能ではないが、中国は国際世論に向けて極めて“ずる賢く”対応するだろう。鴨緑江を渡る石油のパイプラインを全面的にストップすることには徹底的に抵抗するだろう。現に環球時報は「北に対する石油の供給中止と国境の閉鎖は中国の国益と合致しないため、中国はこのような政争の先鋒に立ってはならない」 と主張している。


北の核ミサイルに端を発している安全保障問題を、臆面もなく「政争」と位置づける図々しさである。またプーチンも「制裁は無駄であり効果がない。北が大量破壊兵器を放棄することはない」と制裁に乗る気配はない。
 

中国にしてみれば朝鮮戦争は“休戦”なのであって、北を崩壊させて、中国が米軍と直接国境で対峙することを回避することは戦略的最重要テーマと依然として位置づけている。習近平は金正恩への憎たらしく思う感情を押し殺して、この国家の大計のために我慢し続けるのだ。したがって中国がたとえ譲歩するにしても、せいぜい暫定的かつ部分的な供給制限であろう。“お茶を濁す”程度の対応しかしない。だから北が経済的な困窮に追い込まれることはない。
 

こうした中で筆者がメディアで最初に紹介した米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の、日本核武装論が大きな波紋を投げかけている。社説で「北朝鮮の核武装を放置すれば日本が核武装することになる」と警告したものだが、今度は米ブルームバーグ通信も社説で日本の重武装の可能性を指摘した。ブルームバーグは「日本国民のおよそ4分の3は、北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射すれば、日本が先制攻撃をしたり反撃を加えることに賛成している」と分析し、「中国指導部が北朝鮮の脅威を緩和しない場合、重武装した日本の登場は中国が支払うべき代償の一つだ」と強調した。


国会議員のなかからも日本のこころ幹事長の中野正志が「抑止力としての核兵器を保有することの是非を含めた幅広い議論を始めることを提案する」と正面切って核武装論を展開。自民党内でも石破茂はかねてから原発の廃止反対と絡めて核武装論を述べている。11年に「日本は(核を)作ろうと思えばいつでも作れる。1年以内に作れる。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう。本当に原発を放棄していいですかということは、それこそもっと突き詰めた議論が必要だと思うし、私は放棄すべきだとは思わない。」と発言している。日本の核アレルギーは徐々にその威力を失いつつある。
 

さらに韓国にも飛び火して朝鮮日報は5日「韓国の核武装は2年で可能」と題する記事で「北朝鮮の核の脅威に対抗して韓国が選ぶ“最後のカード”には、独自の核武装がある。北朝鮮が核武装を完了した後、朝米交渉を通して在韓米軍が一方的に撤収するなど最悪の状況が迫った場合には、“最後のとりで”として独自核武装のカードを切るべきだ。専門家らは『決心しさえすれば1年半から2年以内に核兵器を持つことができる』と述べた」と書いている。
 

こうして北による核とミサイル実験は極東安保情勢に、おどろおどろしいインパクトを生じさせており、早期に狂った指導者を排除しなければ混迷の度は増すばかりだろう。北が忘れてはいけないのは米国には東京やドレスデンへの大空襲の経験がある。米軍は@金正恩ら中枢へのピンポイント爆撃A核ミサイル施設全てへの爆撃Bソウルを狙う長距離砲への壊滅的な爆撃ーで韓国や日本の被害を最小限にとどめる空爆作戦を立案しつつあるといわれている。ばかなTVコメンテーターらが断定する攻撃不能論は必ずしも通用しない。

<今朝のニュース解説から抜粋>     (政治評論家)


◎俳談

【台所俳句】

玉葱に涙などして暮らしゐる 産経俳壇1席
 
男といえども退職すれば厨房に入ることも多い。時には本格的な料理にも手を出す。従って台所は句作の材料に事欠かないのだ。掲句はタマネギを切って涙が出たのをとらえた。中村汀女(なかむらていじょ)の句に
秋雨の瓦斯(ガス)が飛びつく燐寸(マッチ)かな
がある。マッチの火にガスが「飛びつく」と表現できるのは並大抵の力量ではない。皆飛び付くのは分かっていても、表現に結びつかないのだ。季語を秋雨と置いて、昔の薄暗い台所の情景を思い起こさせる。男子厨房に入り大いに俳句を作るべし。

     <俳談>    (政治評論家)

2017年09月04日

◆金の“パラノイア治療”を実行の時だ

杉浦 正章



狡猾な中国に対する「圧力」がカギ
 

日本は国際包囲網の主導を                  


とどのつまりは虚勢を張り続ける北朝鮮のパラノイア(偏執病)患者を如何に治療するかということだ。金正恩がパラノイアだという説は今に始まったことではない。近年ミサイル実権や核実権を繰り返すたびに指摘されてきた。米国連大使ヘイリーは金について「パラノイア状態(in a state of paranoia=妄想症、偏執病)だ。彼は、周辺のあらゆることについて非常に心配している。」と発言している。米国国家安全保障局の(NSA)の元首席監察官ジョエル・ブレンナーも「あの国を動かしている若者は狂っている。彼のやり方は破壊的で幼児的、病的だ。戦略がない。3歳児と同じで注目を浴びたいのだ」と分析してその狂気性を強調している。


前韓国大統領朴槿恵も昨年の核実験の後「北朝鮮の核実験は、国際社会に対する挑戦としか言いようがなく、もはや私たちと国際社会の忍耐も限界を越えている。権力を維持するために国際社会と周辺国のいかなる話にも耳を貸そうとしない金正恩の精神状態は統制不能だと見るべきだろう」と発言した。
 

いずれも金正恩が「気違いに刃物」状態にあることを強調している。古くから独裁者の精神状態を分析するとパラノイアに行き着くといわれている。ヒトラーはパラノイアの典型的症状だし、スターリンも、
あらゆる場所に敵の姿を見て、スパイを疑い、部下の部屋を盗聴させ、疑った人間はすぐさま粛清した。いずれも自分の周りの誰もが敵で、自分の命を狙っているのだ、という典型的なパラノイアを発症している。金はそのヒトラーを限りなく信奉しており、幹部らに就任1年目の誕生日の際、贈り物へのお礼として、『わが闘争』を1冊ずつ配っている。


パラノイアの症状は被害妄想、誇大妄想、激しい攻撃性、自己中心的な性格、異常な支配欲、悪魔的なものに美しさを見る悪魔主義などとして表れてくる。金正恩の場合はその症状の全てに当てはまる。まず悪魔主義の姿は、ミサイルを打ち上げるたびに恍惚とした表情で見上げる姿に如実に表れている。打ち上げ後の高笑いは、自分が世界の中心におり、絶対的な存在であると信じ込む自己中心的な性格そのものである。そこには自らが超人、絶対者であるという誇大妄想も見られる。妥協や交渉など一切考えずに攻撃ばかりを考える激しい攻撃性も見られる。叔父の殺害という親族殺人を事もなく行い、昨年までに140人を処刑したのは完全支配を行おうとする異常な支配欲であろう。
 

まさに紛れもないパラノイアの症状全てが当てはまる。そこには深い思慮などはかけらも存在せず、パラノイアの本能のままに自らの行動を委ねる、まさに「3歳児」の姿だけが浮かび上がる。この妄想人間にどう対処するかだが、治療法には挫折を味あわせるやりかたがあるという。金正恩の場合に如何にして挫折を経験させるかだが、経済的挫折と軍事的挫折の二つがある。経済的挫折は全てが中国にかかっている。中国とロシアは北のミサイルが日米韓に向かう限りは何の痛痒も感ぜず、むしろ基本的には北を米国の圧力への間衝地帯と位置づけている。中国はこれまで制裁のそぶりを見せるだけで、その実は狡猾にも「バケツのだだ漏れ対応」を行ってきた。


石油の禁輸しか手段がないことを分かっていながら、それを実施しない。これを実施させるには、日米韓およびサミット加盟の先進諸国が結束して対中圧力をかけるしかない。経済的な対中包囲網をサミット加盟国も含めて実施に移すのだ。中国を動かすには金正恩を「除去」しても、米韓とも北の国家としても存在を危うくしないという“密約”が必要となろう。
 

軍事的対応によるパラノイア治療は、中距離、ICBMなどいかなるミサイルも打ち落とすという「ミサイル実験拒絶」の対応だ。日米韓のミサイルを総動員して、実験のたびに打ち落とす。打ち落とすことによって悪魔主義を断念させる。金正恩がミサイルを打ち落とされたことを口実に、直ちに戦闘状態に突入する“度胸”があるかといえば、ないだろう。金は打ち落とされて初めて日米韓の本気度が分かり「挫折」を味わう事になるのだ。いずれにしても日本は国際的な対北、対中包囲網を主導する必要がある。
 

これらの手段を講じても「治療」が出来ない場合は、金除去の「斬首作戦」を実行するしかあるまい。ピンポイント爆撃か、暗殺を得意とする米CIAが対処するのだ。マスコミの論調は北東アジア情勢を一見行き詰まったように見ているが、打開策はいくらでもあるのだ。

<今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)


◎俳談

【理解不能な季語】

鷹化して鳩となる日の朝寝かな 杉の子
 俳句で訳の分からない3大季語は「鷹化して鳩と為る」「亀鳴く」「雁風呂」だろう。いずれも春の季語だ。

新鳩よ鷹気を出して憎まれな 一茶
は「鷹化して鳩と為る」の季語を崩して使ったものだ。一茶らしく人間にも当てはまる風刺に満ちている。亀は鳴かないが、俳人には春になると亀の鳴く声が聞こえるのだ。聞こえなければ俳人とは言えない。拙者にも聞こえた。だから作った。

この昼は四天王寺の亀鳴けり 毎日俳談2席
 「雁風呂」の由来はややこしいが哀愁のある話だ。

青森県では日本に秋に飛来する雁は、木片を口にくわえ、または足でつかんで運んでくると信じられていた。渡りの途中、海上で水面に木片を浮かべ、その上で休息するためであるという。日本の海岸まで来ると海上で休息する必要はなくなるため、不要となった木片はそこで一旦落とされる。そして春になると、再び落としておいた木片をくわえて海を渡って帰っていくのだと考えられていた。旅立ちの季節が終わりもう雁が来なくなっても海岸にまだ残っている木片があると、それは日本で死んだ雁のものであるとして、供養のために、旅人などに流木で焚いた風呂を振る舞ったという。

雁風呂や海あるる日はたかぬなり 高浜虚子

     <俳談>       (政治評論家)






2017年08月31日

◆米有力紙WSJが日本の核武装に言及

杉浦 正章



「北の核を容認すれば遙かに危険な世界を容認」
 

トランプの極東戦略に影響必至
 

筆者は昨日北の核ミサイル保持で敵基地攻撃能力の必要を書いたが、今度は米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が30日、「日本の核武装に道を開く北朝鮮の核容認」と題する社説を掲載した。米政権が「北の核を容認すれば遙かに危険な世界を容認することになる」と警告を発している。WSJは長年にわたりアメリカ合衆国内での発行部数第1位の高級紙であり、世界80カ国以上、100都市以上に支局を構え、創立以来、経済史のみならず世界史に名を残すようなスクープ記事を度々掲載している。米政府や世界各国に及ぼす影響はニューヨークタイムズやワシントンポスト以上だ。この社説がトランプ政権に影響を与えることは必定であろう。


同紙はまず北のミサイル実験について「日本北部の住民は29日、北朝鮮のミサイル発射を知らせるサイレンや携帯電話のアラートにたたき起こされた。この中距離ミサイル発射実験は、北東アジアの安全保障をめぐる政治を一段と混乱させるだろう。そして、日本に自前の核抑止力を持つことをあらためて促すものだ。」と強調、“日本核武装の可能性”を予測している。
 

次いで「日本の最終的な安保は米国の防衛力と核の傘だ。日本が攻撃を受けた場合は米国が反撃することが、日米安保条約で保障されている。しかし、抑止力の論理は敵が合理的であることを前提とするが、北朝鮮相手に合理性は保障され得ない。米国を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発も、この均衡を変化させている。北朝鮮が東京を攻撃し、これに応じて米国が平壌を攻撃すれば、米国の都市が危険にさらされかねない。」と指摘している。つまり北のICBM開発が終局的には米国の都市攻撃に直結すると読んでいるのである。


そして社説は「日本の指導者たちはこれまで、自ら核兵器を保有することに長らく抵抗してきた。しかし、危機に際して米国が頼りにならないとの結論に至れば、この姿勢が変わるかもしれない。あるいは日本として、たとえ信頼できる同盟国の判断であっても、それに自らの生き残りを託す訳にはいかないと判断することも考えられる。」と日本核武装の“理由”に言及した。


加えて「既に日本の一部の政治家は、独自の核抑止力について話し始めている。世論は今のところ核兵器に反対だが、恐怖で気が変わる可能性もある。日本には民生用原子炉から得た核弾頭1000発分を超えるプルトニウムがあり、数カ月で核弾頭を製造するノウハウもある。」と、日本が保有しようとすればすぐにも核保有国になれると予測している。


そして日本核武装が中国を警戒させ韓国も即座に追随しかねないとして「東アジアが中東に続いて核拡散の新時代を迎えれば、世界の秩序に深刻なリスクをもたらす」と警告、「それもあって、核ミサイルを持つ北朝鮮を黙認することはあまりに危険なのだ。」と強調している。にもかかわらず米国内には北の核ミサイル容認論があるとして社説は、バラク・オバマ前政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたスーザン・ライスと元国家情報長官ジェームズ・クラッパーの名前を挙げて批判。


とりわけ「クラッパーは、『米国が(北朝鮮の核保有を)受け入れ、制限ないし制御することに努め始めなくてはならない』と話している。」ことを明らかにした。「8年にわたって北朝鮮の核は容認できないと話していたはずの両氏が今や、トランプ大統領と安倍晋三首相はそれに慣れた方がいいと言っているのだ。しかし、どうやって『制御』するのか。」と問題を投げかけている。


最後に「北朝鮮は交渉で核計画を放棄する意向がないことを明確に示してきた。米国は「相互確証破壊(MAD)」で脅すことはできるが、日本上空を通過した今回のミサイル実験は、北朝鮮が米国と同盟国を威圧・分断するために核の脅威をいかに利用するかを示している。北朝鮮の核を容認すれば、はるかに危険な世界を容認することになる。」と結論づけた。


この社説は北東アジアの安全保障の構図をよく理解しており、今後トランプの戦略や日本の方針に強い影響をもたらし、世界的に日本核武装の是非論が台頭するだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


◎俳談

【脳裏から引きだす句】

金魚屋を漁師ら囲み秋祭り 読売俳壇1席
 港町の秋祭りで屈強な漁師らが金魚屋を囲み冷やかしている場面に出会った。金魚屋も冗談を言って混ぜ返す。極めて印象的で忘れられない風景であった。何と40年前の風景である。それがふと脳裏によみがえって俳句となった。俳句は眼前のものを観察して詠めと、偉い俳人はおっしゃるが網膜写真に残った風景で十分であると言いたい。人間馬齢を重ねても、大事な風景は脳裏に刻まれている。
年を取ると言うことはそれが強みだ。

     <俳談>     (政治評論家)

2017年08月30日

◆敵基地攻撃能力が不可欠となった

杉浦 正章



安保で全体重を米にかける時ではない
 

領土に落下すれば迎撃した可能性
 

自己完結型の存在価値をレゾンデートルというが、今ほど日本が国家としての有り様(よう)が問われているケースはない。北のミサイルの報に、12の道と県が右往左往してなすすべがない。恐らくその様を見て西欧など世界の国々は唖然としているのではないか。国の安全保障を他国に委ねている結果がそうさせているのだ。


北朝鮮の核ミサイル開発は平和が天から降臨する時代の終焉を意味する。天から降るのは核ミサイルだ。しかもそのミサイルは多弾頭化し始めた可能性すら高い。その意味するものは発射されてからでは迎撃が困難になるということだ。


今後のミサイル対策は、発射を察知した時点で叩く敵基地攻撃能力の保有が不可欠となったことを意味する。政府が国民の生命財産を守るというなら、専守防衛では十分な対応は不可能だ。基本戦略を積極防衛へと転換し、せめて巡航ミサイルや新型戦闘機F35に敵基地攻撃能力を保持させるという抑止力の保持が不可欠なのではないか。


日本もなめられたものである。火星12号をグアム周辺に撃てば米国の攻撃が必至とみて、北の黒電話の受話器ヘアの金正恩は、襟裳岬東方を選んだ。外相河野太郎が指摘したように「北朝鮮はひるんだ」のだ。
 

まず今回のミサイル発射で首相・安倍晋三が「ミサイルの動きを完全に把握しており国民の生命を守るために万全の態勢をとった」と言明していることが何を物語るかだ。明らかに発射の瞬間から軌道を「完全に把握」していたのだろう。そして日本に落下するようなケースでは迎撃命令で破壊する予定であったに違いない。迎撃ミサイルの発射権限のある自衛隊の司令官に対して、安倍はおそらく必要な状況となれば撃墜せよとミサイル破壊の指示を出していたと思われる。


これを受けて司令官はイージス艦や地上配備の迎撃ミサイルにアラートをかけていたのだろう。しかし日本上空を通過するミサイルの高度が高く、迎撃する必要なしと判断したのだろう。
 

こうした判断が出来る背景には、ミサイル発射に関して確たる情報があったからとみられている。政府は28日までに平壌近郊で発射の動きがあることを探知しており、日本列島を越える可能性があることまで掌握していた模様である。このためイージス艦も事前に周辺海域に配備、陸上からはPAC3も対応できる状態であったといわれる。迎撃態勢を整えた上で、ミサイル発射を待ったというのが、実態であったようだ。安倍発言の裏には、相当の対応が進んでいたことをうかがわせるものがあったのだ。日米韓3国が共有の極秘情報であった。
 

しかし、この情報が漏れた以上、北朝鮮は今後ますますミサイル発射を掌握困難な場所から行うことになるだろう。したがって日米韓による情報収集活動が、極めて重要になることは言うまでもない。そこで必要になるのは発射して日本列島に届く前に発射基地を叩く敵基地攻撃能力である。


敵基地攻撃能力の保有については1956年に鳩山一郎内閣が「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」との判断を打ち出している。憲法上の問題はクリアされており、後は政治判断だけだ。既に自民党の安全保障調査会は3月に、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を踏まえ、敵基地攻撃能力の保有を政府に求める提言をまとめ、首相・安倍晋三に提出した。 


調査会の座長を務めた小野寺五典は敵基地攻撃能力が必要な理由について「何発もミサイルを発射されると、弾道ミサイル防衛(BMD)では限りがある。2発目、3発目を撃たせないための無力化の為であり自衛の範囲である」と言明している。安倍はこの小野寺を防衛相に任命した。就任後も小野寺はインタビューで、「提言で示した観点を踏まえ、弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のための検討を進めていきたい」と前向きな姿勢を示している。
 

これに対して安倍は2月の時点では「どのように国民を守るかは常に検討すべきである」と前向きであったものの、最近では「具体的に検討を行う予定はない」と慎重姿勢に転じている。
 

しかし、相次ぐ北の挑発に“無為”で過ごせば、国家としてのレゾンデートルが問われる段階に入る。同じ敗戦国のドイツの場合を例に挙げれば国内には米軍の核ミサイルが20基配備されているとされ、有事に米独どちらかの提案を他方が受け入れれば使用できる、という共同運用体制を取っている。第2次メルケル政権で撤去が議論されたときがあったが、ロシアが配備している戦術核に対抗するためには必要という考え方が優勢を占め、オバマ政権も配備を継続した。


トランプが信用おけないことから最近では保守系有力紙フランクフルター・アルゲマイネが、米国が欧州防衛を欧州自身に委ねることになった場合には、「ドイツ人には全く考えもしないこと、つまり独自の核抑止能力という問題」が起きる可能性もある、と警告している。
 

やはりドイツの場合も対米信頼感が揺らいでいるのであり、日本でも同様だ。8月2日に紹介したように米国内には、米国が北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策を破棄して平和条約を締結し、その際中距離核ミサイルは容認するという“現状凍結”構想が台頭している。事実上の「日本切り捨て論」である。おまけに今回の場合も当初は国防総省の報道官が「北米にとっては脅威にならない」とまるで他人事のようなコメントを出した。大国は基本的にエゴなのであり、安全保障の全体重を米国に委ねるという歴代自民党政権の対応は、ここに来て危うくなってきている。


自国の防衛は主体的に自国で行わざるを得なくなるのではないか。そのささやかなる1歩が敵基地攻撃能力であり、早期に実現に移すべきではないか。実現させれば日米全体の抑止力も高まる。今解散総選挙のテーマとして浮上させれば、国民多数の理解も得られるのではないか。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

◎俳談

【意外性と機知】

これきしはジュラ紀の冬と炎天下 読売俳壇3席
 恐竜の天下であったジュラ紀の平均気温は現在より10度以上も高かったと考えられている。北極圏でも平均気温は15度くらいあった。掲句は頑固爺が、「何だってんだい。これくれいはジュラ紀の冬だい」と炎天下を歩いている姿である。深い科学的な知識(?)に裏付けられた俳句も時には詠むのだ。人の意表を突く意外性と機知がポイントだ。

     <俳談>     (政治評論家)

 

2017年08月29日

◆解散するなら臨時国会冒頭がよい

杉浦 正章
 


アベノミクスの総仕上げで信を問え 


自公協調路線で政権は継続する
 

夏休みボケなのか茨城知事選の自公勝利に対するマスコミの反応が鈍い。「衆院3補選に弾み」などとやっているが、視野狭窄(きょうさく)的反応だ。ここは「早期解散に弾み」と打つべき時だろう。解散戦略の選択肢は大きく広がったのだ。それも臨時国会冒頭が解散のチャンスだ。7月2日の都議選で負け、同月23日の仙台市長選で負けてきた自民党が8月3日の内閣改造を経てようやく勝利を占めたのが茨城知事選だ。「モリとカケ」の軛(くびき)と防衛相・稲田朋美スキャンダルからやっと離脱出来た選挙でもある。解散に踏み切れば政権維持に支障のない270議席前後は取れるのではないか。


現在の293議席などは多すぎる。多いほど弛緩して若手低能議員の不祥事ばかりが目立つ。首相・安倍晋三は絶好調の経済情勢を背景にアベノミクスの総仕上げを問えばよいのだ。与党で改憲発議の3分の2が維持出来るかは微妙だが、野党を巻き込んだ妥協で改憲は可能だ。
 

まずこのチャンスを逃すとどうなるかだが、野党はどっちみち選挙は近いと判断して、臨時国会では安倍とは関係のない森友と加計の疑惑ばかりを追及して、国民の目を欺こうとするだろう。議論をすればするほど何かあるような「印象操作」を展開する。ばかな国民はこれに左右される可能性があり、政府・与党にとって議論すればするほど野党ペースにはまる。


なぜなら朝日、毎日、テレ朝、TBSなど反安倍のマスコミ勢力が全力を挙げてこれをバックアップするからだ。この悪い循環は、再燃する前に解散で断ち切るしかないのだ。国民の審判を仰げばようやく断ち切れるのだ。
 

安倍は9月には外交日程がひしめいている。上旬にはウラジオストクでの東方経済フォーラムがあり、プーチンとの会談も行うことになるだろう。インド訪問も準備している。下旬にニューヨークでの国連総会に出席する。ここで安倍は北朝鮮問題を取り上げ、「世界核戦争の危機」を訴える必要がある。欧米の目を極東に向けさせるのだ。北朝鮮問題は直接選挙のテーマにはなりにくいが、首相の取り組む姿勢が票につながる。外交で露出度を増せばますほど、選挙には有利に働く。
 

最大のプラス材料は経済がまさに絶好調であることだ。まず安倍が政権を担当してから「アベノミクス」で日本経済の潮目が大きく様変わりした。産経によると15年度の企業の経常利益は過去最大の68兆2201億円で、12年度の48兆4611億円から約20兆円増え、景気の拡大が12年12月から今年4月まで53カ月間続いている。これはバブル景気の51か月を抜き、戦後3番目の長さである。17年4〜6月期の名目国内総生産(GDP)は実額で545兆円と、12年年10〜12月期から50兆円以上増えた。


最大の改善は雇用だ。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は6月は1・51倍で、バブル期の90年7月(1・46倍)を上回った。正社員の有効求人倍率も1・01倍と初めて1倍を超えている。東京では2倍だ。まさにバブル期を凌駕する経済効果であり、選挙では最大の武器となり得る。こうした経済効果を前面に出して徹底的に宣伝する必要がある。経済が停滞し始めてからでは遅い。チャンスは到来しているのだ。
 

さらに有利なのは「小池新党」が、全国的なブームとなる気配が少ないことだ。だいいち中心人物の衆院議員若狭勝の顔が悪い。カリスマ的な容姿とはほど遠く、無精髭だけが目立つ。これで民進党離党者などを糾合しても盛り上がる可能性は少ない。小池は内心困っているのではないか。オリンピック棚上げで政争に走っても国民的な共感は呼びにくいのではないか。だいたい都知事が都政そっちのけで国政選挙の先頭に立って全国を回れば、国民のひんしゅくを買うのが落ちだ。いずれにしても臨時国会冒頭解散なら、準備不十分だろう。 
 

また都議選で裏切った公明党が、もみ手で帰ってきたのは大きい。総選挙を控えて自民と対立して自らも議席を減らしては「損」という判断だろう。茨城補選で総力を挙げて応援した。この政党はどうも選挙に勝てば何でもするという、“選挙アニマル”的傾向が強く、そのうちに仏罰が当たる。自民党にとってはありがたく共闘を組むしかない。
 

加えて冒頭述べた稲田朋美更迭効果だ。更迭してから朝日も社会部中心の政権追及に陰りが生じており、勢いがない。とっかかりを失っているのだ。江崎鉄磨など舌禍事件を起こしそうな、いささかとろい閣僚がいないわけではないが、総じて閣僚の発言には問題がなく、先の改造はベストに近い布陣を達成した。一方民進党は前原誠司が代表になりそうだが、これで党刷新効果が生じるとは思えない。前原は偽メール事件や外国人献金などで代表や閣僚を辞任しており、攻められると弱い。総選挙で反転攻勢に出る勢いはない。
 

こうした情勢を背景にすればまさに解散のチャンスは9月下旬にも招集される臨時国会ということになる。それもカケだのモリだのの議論などに深入りする前の事実上の冒頭解散がよい。安倍が所信表明演説を行い、野党が代表質問をした上で解散を断行する。これが決め手のような気がする。解散すれば言うまでもなく3補選など吹き飛んで埋没する。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

◎俳談

【2物衝撃】
真夜中の天井裏に青大将 毎日俳談入選
 意外な二物の取り合わせの句を二物衝撃句という。真夜中の天井裏とネズミでは日常的。しかし天井裏と青大将となるとゾクゾクとする恐怖感をもたらす。そしてよく考えてやっと旧家には青大将が住みついていることに考えが至る。
露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す 西東三鬼
 妻を亡くした隣人のロシア人が、長いサオを持ち出し叫び声と共に手当り次第にザクロをたたき落していたのを三鬼が描写したものだ。事情を知らない読者はロシア人と石榴の取り合わせの意外感から、様々な空想の世界へといざなわれる。

     


<俳談>       (政治評論家)
 
  

2017年08月20日

◆トランプ、「バノン切り」で穏健現実路線へ

杉浦 正章



白人労働者中心の選挙基盤に打撃
 

ワイトハウス内部抗争にけり
 

2月23日の解説の段階で「バノンをを潰すか、トランプ政権が潰れるか」と、「バノン切り」を予言したが、けりがついた。背景には「陰の大統領」バノンが選挙公約と現実政治のけじめを理解出来ず、公約に固執し続けた結果、自らを窮地に追い込んだことがある。トランプは自説に固執する理念重視型のバノンと対立していた穏健現実路線派に政権の基盤を移行させることになるが、バノンだけでなくトランプ自身も内政的には厳しい状況に立たされる。


というのもバノンが唱えた保護貿易や移民排斥路線は白人の低学歴労働者の支持を狙ったものであり、ただでさえCNNの支持率が過去70年の歴代大統領で最低となる36%にとどまっていることを考えると、バノン更迭で支持率が大幅に好転する可能性は少ない。来年の中間選挙は共和党惨敗をトランプが先導することになりかねない状況でさえある。
 

ウオールストリートジャーナル紙の社説がいみじくも「バノンは自分で自分を解任した」と分析しているが、まさにきっかけは自傷行為であった。左派系ニュースサイト「アメリカン・プロスペクト」とのインタビューでバノンはホワイトハウスの内部抗争を暴露して「トランプ氏の側近らと毎日戦っている。戦いの連続であり、いまだに戦いは続いている」と激しい対立に言及した。これは抗争が終末期に到達して、自らが逃げ場のないほど追い込まれた事を意味する。娘婿の上級顧問クシュナーや安保担当補佐官のマクマスター補佐官らとの対立は抜き差しならぬ段階であったという。


これまでは保護主義的な貿易政策、強硬な移民政策、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱などで強硬路線を取って政権をリードしてきたバノンだが、パリ協定離脱に関しては娘のイバンカら穏健派が反対を唱えたもののバノンは強硬路線で突っ走った。このころから向かうところ敵なしに見えたバノンの力に陰りが見え始め、イスラム圏からの入国禁止措置は司法の大反発で失敗の憂き目を見た。トランプはバノン路線に乗った結果、政治的、法的な敗北を喫したことになる。
 

さらにバノンはインタビューで北朝鮮問題について「北朝鮮関係などは余興に過ぎない。軍事的解決などあり得ない。忘れてよい」 と言い切った。これは軍事的解決を排除しないトランプの北朝鮮政策と真っ向から対立するものである。これに追い打ちをかけたのがシャーロットビルでの騒乱だ。白人至上主義を掲げるグループとこれに抗議するグループとの激突は、だれがみても白人至上主義派に問題があった。


それにもかかわらずトランプはバノンの影響を受けて「双方に非がある」とけんか両成敗的な発言をしてしまったのだ。これには世論が憤ったのみならず、ユダヤ系市民にまで反発が報じた。ユダヤ系の米国家経済会議(NEC)委員長のゲーリー・コーンも激怒して辞任寸前となった。コーンはこれまで通商問題でトランプ政権内の過激な主張を抑え、税制改革でも中心的な役割を担っており、辞任は政権への大打撃となる性格のものである。
 

こうしてさすがのトランプも、政権維持とイメージ回復のためにも 「バノン切り」に踏み切らざるを得なくなったのだ。今後の政権はホワイトハウス内の力関係が一変する。まず、7月末に就任した大統領首席補佐官ケリーを中心に体制再構築に動くだろう。ケリーは、退役海兵隊大将であり、現役の陸軍中将のマクマスター、退役海兵隊大将の国防長官マティスの「軍人トリオ」がホワイトハウスをリードし、外交は実業家の国務長官ティラーソンが担うことになる。


従来通りクシュナーと娘で大統領補佐官イバンカら“親族”も加えて、バノンの強硬路線からホワイトハウスは一挙に穏健現実路線へと形を変えることになる。ホワイトハウスのメディアとの関係は、トランプ本人がメディア敵視政策を変えない限り一挙に好転することは難しいだろう。しかしトランプもバノンの「メディアは野党だ」といった発言を請け売りしていた側面もあり、バノンの辞任はとげの一つが抜けたことは確かであろう。
 

バノンも古巣の右翼メディア「ブライトバード・ニュース」の会長に復帰し、「我々が選挙で勝ち取ったトランプ政権は終わった。大統領周辺のやつらは穏健な道を進めさせようとするだろう」 と述べている。バノンは政権中枢の半年間でスキャンダルも含めた様々な情報を握っている可能性が高く、トランプは敵に回したくない相手であろう。ブライトバードはさっそく「トランプ政権の終わりが始まった」 と酷評している。もっとも、バノンも政権幹部とメディア会長では、影響力が天と地ほど違うことを思い知ることになるのも確かだろう。バノンは大敗を喫したのだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

◎俳談

【写生句の難しさ】

海峡の流れの速し海月過ぐ 東京俳談入選
 関門海峡で潮の流れを眺めていたら、海月が浮遊して流れているのがみえた。海月の流れていくスピードで海峡の流れの速さに気付いたのである。このように自然を描写した句を写生句というが、句作の中でも写生句が一番難しい。子どものお絵かきのような写生句では様にならない。写生の後に残る深みが不可欠だ。海月は夏の季語。

       <俳談>    (政治評論家)
 

2017年08月16日

◆金の“恐怖心”を揺さぶる米外交

杉浦 正章



“モラトリアム”で局面打開狙う
 

金、就任以来初の“譲歩”
 
もともと「小心者の居丈高」と踏んでいたが、今回ばかりは「びびった」ということだろう。北朝鮮の「愚かで哀れな」指導者金正恩が「愚かで哀れなアメリカの行動を少し見守る」のだそうだ。グアム周辺にミサイル4発で包囲射撃をすれば、米国はこれを打ち落として戦争に突入することも辞さないという「本気度」がようやく分かって、「少し見守る」気になったのだ。その発言からは命拾いをした様子すらうかがえる。

この金の就任以来初めての“譲歩”のきっかけは米国務長官ティラーソン、国防長官マティスが共同で米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した一文にある。その内容は挑発行動をしなければ交渉を厭わない方針が明記されたものであり、金は振り上げたこぶしをしばし降ろすことになったのだ。
 

筆者は、トランプとティラーソンとマティスがそれぞれ独自の発言を繰り返していることについて、かねてから“役割分担”があると書いてきた。これを裏付けるようにWSJは、まずティラーソンとマティスの食い違いを「良い警官(good cop)と悪い警官(bad cop)」になぞらえた。いわば “良い警官・悪い警官戦術”だが、よい警官は犯人に対してなだめ役でカツ丼を食べさせる役。悪い警官は「白状しないと泊まってもらう」と脅す役だ。


例えばマティスが潜水艦ケンタッキーの水兵たちへの訓示で「至急何かをしなければならなくなれば、君たちに頼ることになる」と北向けに脅し発言をすれば、ティラーソンは、「米国民は言葉の応酬を心配せずに、安眠していい」と北に猫なで声をする。マティス、ティラーソンはほぼ毎日連絡を取り合い、たいていの場合、両者はコメントを出す前にお互い打ち合わせをするのだそうだ。これに警察署長のトランプが「軍事的解決策は整った」と究極の脅しに入る。


息を潜めて全ての米首脳らの発言に目を通している金正恩は、何が何だか分からなくなり、恐怖心だけが残る。これが巧妙なる米側の心理作戦であるとは気付かない。こうしたなかでティラーソン・マティスの“統一見解”がWSJに投稿されたのだ。このなかで両者は@わが国が平和的に圧力をかける目的は、朝鮮半島の非核化で、米国は体制転換や朝鮮半島統一の加速には関心がないし、米軍が非武装地帯の北側に駐屯するための口実を求めているわけでもない


A長きにわたって苦しんでいる北朝鮮国民は敵対的な政権とは異なる存在であり、彼らに害を与えるつもりもないB北朝鮮の挑発的かつ危険な行動について国際社会の考えが一致しており北朝鮮は止まらなければならないC米国は北朝鮮と交渉する意志があり、外交を通して北朝鮮に方針を改めさせることを優先しているが、その外交は軍事的選択肢に裏打ちされているD北朝鮮は平和への新たな道を選ぶかさらなる孤立の道を選ぶか選択を迫られているーなどと強調している。


要するに金正恩政権を潰さないし、米軍が北に攻め込むこともなく、朝鮮半島統一もしないという大方針を示したのだ。またこれは一種のモラトリアムの提示でもある。モラトリアムには様々な意味があるが、この場合は北が核実験やミサイル実験を「一時停止」か「一定期間の停止」か「凍結」し、米国はそれを見守ることなどを指す。しばらく猶予期間をおいて水面下などで接触を続け、危機回避を考えようというわけだ。このままでは武力衝突に直結しかねないとトランプ以下が考えて、この辺で米国の考え方を統一的に示そうということになったものだ。WSJは発行部数も多く全米で読まれていることから選ばれたのだろう。


ただこのモラトリアムは小休止の感じが濃厚であり、永続性があるかどうかはまだ未定だ。金正恩は「見守る」と述べているのだから、グアムへのミサイル発射は当分止めるのだろうが、いつまでだろうか。米韓両国は21日から合同演習を開始する。これは金にとっては我慢が出来ないものだろうが、ここでグアムに撃てば、演習がそのまま戦争になだれ込むみかねないことくらいは分かるだろう。


現にマティスはグアムへのミサイルに関して「北朝鮮が米国にミサイルを発射すれば一気に戦争へと発展する」と言い切っている。グアム島へ着弾しそうな場合は破壊する方針を初めて明示した。グアムへのミサイルは控えて、従来通り日本海などに撃ち込んで憂さ晴らしをする可能性も否定出来ない。いずれにしてもモラトリアム期間を“活用”して米朝が水面下での接触を強める可能性が強い。ここ数日はまさに正念場となろう。


こうした表向きの動きに平行して、米国はCIA長官が先に示唆したとおり、金正恩を暗殺する機会をうかがっているようである。米海軍特殊精鋭部隊シールズやピンポイントでの攻撃が出来る無人機「グレーイーグル」を活用した暗殺だ。good copとbad copによる対北揺さぶりが続く。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

◎俳談

【俳句の極め言葉】
干し飛魚(あご)の飛ぶがごときを送り来る  産経俳壇入選

俳句の生命は表現だ。掲句は中七の「飛ぶがごとき」ですべてが決まった。俳句は短いフレーズの中で印象を残さなければならない。従って時に大げさになる。干し魚が飛ぶわけがないが、新鮮で飛魚が今空を飛ぶような印象を受けた。それをそのまま句にした。魚介類で「活きているようだ」という表現があるが、「活きているような」ではありきたりで俳句にならない。飛魚が飛ぶから俳句になるのだ。夏の季語。

  <俳談>   (政治評論家)

2017年08月11日

◆キューバ危機を上回る北朝鮮危機だ

杉浦 正章



政府は臨戦・迎撃態勢を整えよ
 

早期の「敵基地反撃能力」の決断を

米ソ核戦争の危険に陥った1962年10月から11月にかけてのキューバ危機は、当時の米大統領ケネディとソ連
首相フルシチョフが書簡でやり取りしながら、最終的にソ連が核ミサイルを撤去して、衝突には至らなかった。それに匹敵するとも劣らない今回の北朝鮮危機は。


トランプと金正恩の間に何らの意思疎通が成立しないままに、一触即発状態になだれ込んでいるように見える。過去数年の事例からみても北がミサイルで方針を宣言した場合は必ず実行に移しており、実行に移せばトランプは90%以上の確率で迎撃して破壊せざるを得ないだろう。これが全面戦争に直結しかねない要素もある。国防長官ジェームズ・マティスは「北の体制崩壊」を警告している。


一方、米軍の攻撃で壊滅寸前になっても北は日本の米軍基地への核ミサイル攻撃を断行、最悪の場合1から2発が大都市に落ちる可能性は否定出来ない。まさにその瀬戸際の状況に陥りつつあると警戒すべきであろう。政府は迎撃など臨戦態勢を整えるしかあるまい。
 

状態を甘く見ない方がよい。北の狂気の指導者金正恩は核ミサイルの誇示で、体制を維持するしかないからだ。この「北の狂気」は中央通信を通じて「中距離弾道ミサイル『火星12号』4発を同時に米領グアム島周辺に向けて発射する計画を検討していると発表した。ミサイルは島根県、広島県、高知県の上空を通過し、グアム島周辺30〜40キロの水域に着弾することになる」とした。


これに対して米軍がどのような対応をするかだが、予想されるのは3段階での破壊だ。まず発射する場所が分かればブーストフェーズでトマホークなどを使って破壊する。飛び上がった段階では日本海からTHAADやイージス艦搭載ミサイルで撃ち落とすことになろう。グアム近海ではグアム配備の対ミサイル防衛網を使うか、イージス艦を急きょグアム周辺に配備して迎撃するなどの対応が取られる可能性が高い。これらの対処を複合的に行う可能性も否定出来ない。今回の場合時期は「中旬」、標的は「グアム周辺」と分かっているので比較的対応がしやすく、かなりの確率で4発全てを破壊できる可能性が高い。
 

トランプの直接的な言及は今日発せられると見られるが、既に北の軍事行動を見越してトランプは、「北はこれ以上アメリカを威嚇しないほうがいい。世界が見たことのないような炎と激しい怒りに直面するだろう」と言明した。NBC放送によれば米軍は「B1爆撃機や巡航ミサイルによる北の発射基地などに対する精密爆撃を実行する準備を整えた。大統領の命令があればいつでも攻撃可能だ」としている。


恐らくトランプは北にグアム周辺攻撃を“宣言”されて、黙っていることはないだろう。だまっていればこれまでの北への強硬姿勢は何であったかということになる。それこそ大統領の威信は地に落ちる。さらに重要なのはグアム周辺への攻撃を看過すれば、今後「北の狂気」はヤクザの脅しのごとく、ハワイ周辺、サンフランシスコ・ロサンジェルス周辺、ニューヨーク周辺への実験へと、どう喝のスケールを確実に拡大するであろうことだ。


既に対北忍耐も限界に達しつつあり、米国務長官ティラーソンの穏健発言でバランスを取る時期も過ぎたのではないか。マティスは「北の指導者は体制の崩壊や国民の破滅につながるような行動を考えるべきではない」と警告している。
 

一方日本は国会で防衛相・小野寺五典が、10日、北朝鮮が日本上空を通過して弾道ミサイルを発射した場合、昨年3月に成立した安全保障関連法に基づき、集団的自衛権を行使して迎撃する可能性があることを表明した。グアム島周辺への攻撃が、日本と密接な関係にある米軍への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」に該当する可能性があるとの認識の上に立っての対応だ。


小野寺は「米側の抑止力、打撃力が欠如することは、日本の存立の危機にあたる可能性がないとも言えない」と語った。相変わらず民共など野党や朝日は反発しているが、至極まっとうな考えだ。
 

さらに時事によると、防衛省は10日、ミサイル通過を予告された中国・四国地方で、地上から迎撃する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開する方向で検討を始めた。北朝鮮のミサイルに不具合があった場合、日本国内に落下する不測の事態も排除できないため、PAC3の展開を検討しているとみられる。ただ日本上空を飛ぶ場合は200キロの宇宙空間となる可能性が高く、領空の概念は大気がある100キロとされているため、実際にPAC3が使用される場合は日本に落下してきた場合などに限られるものとみられる。
 

こうした状況下で日本政府に求められる問題は一刻も早い敵基地反撃能力の保有である。1956年に鳩山一郎内閣が次のように政府見解を示しており、憲法上の問題はない。「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」である。


自民党の安全保障調査会は3月に、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を踏まえ、敵基地を攻撃する「敵基地反撃能力」の保有を政府に求める提言をまとめ、首相・安倍晋三に提出した。調査会の座長を務めた小野寺五典は「何発もミサイルを発射されると、弾道ミサイル防衛(BMD)では限りがある。2発目、3発目を撃たせないための無力化の為であり自衛の範囲である」と言明している。防衛相に就任してからは慎重に言葉を選んで発言しているが、もはや緊急事態である。自民党は一致して対応できる野党との協力体制を早急に整えるべきであろう。
 

そもそも日本が緊急事態の時に米軍が本当に行動を起こすかについても疑問が残るのは否めない。先に伝えたように米国には北と妥協して、米本土に届かない中距離核ミサイルまでは認めるという日本にとっての「悪夢の選択」が妥協案として存在する。いくら緊密でも、独自の「敵基地反撃能力」くらいは保有すべきではないか。まさに専守防衛とはこのことでもある。
 

それにつけても不可解なのは金融市場の動きだ。ウオールストリートジャーナル紙も首を傾げているが、トランプが米大統領が北朝鮮に対して「世界がいまだ目にしたことのないような炎と怒りに直面するだろう」と警告したわずか数時間後に円がドルとユーロに対し上昇したのだ。同紙は「核武装の道をまい進する独裁国家と日本との近距離に対する懸念よりも、安全な逃避先通貨という円の位置づけの方が重要だということだ」としているが、カネのためなら何でもする銭ゲバ達の考え方は理解の範疇を超えている。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)


◎俳談

【言葉を発見したらまず一句】

轢音もなしにうつろふ銀河かな    読売俳壇入選
 
轢音の轢は昔の車がきしむこと。従って轢音は車のきしむ音。掲句はそのきしむ音もなしに大銀河が回っている事を表現した。もちろん真空状態だから音はしない。当たり前のことを読んだのだが、俳句では芸術へと昇華される。大宇宙の営みの不思議を五七五の世界へと切り取ったのだ。ポイントは轢音という言葉の発見にある。そして発見したらその場で一句つくる習慣が必要だ。「星座はめぐる」の中にある名文句「無窮(むきゅう)を指さす北斗の針と きらめき揺れつつ星座はめぐる」を思い浮かべた。

          <俳談>    (政治評論家)

2017年08月04日

◆安倍再起動内閣が「改憲なし解散」にかじ

杉浦 正章
 


年内もあり得る情勢
 

岸田と連合、石破は孤立
 

改造人事から見た首相・安倍晋三の政局運営方針は来年末の任期満了選挙から「改憲なし解散」に大きく舵を切ったことだろう。今年中の解散か遅くても来年夏の「6月解散7月選挙」へと動きそうな雲行きだ。いまだに「解散は来年末」などと公言しているコメンテーターがいるが、信用しない方がいい。党内的には岸田文男を政調会長に据えてより強固な執行部体制を整えたが、野田聖子を閣内に取り込み石破茂を完全に孤立化させる形となった。


岸田は「ポスト安倍」レースのトップを走る勢いとなり、来年9月の総裁選は安倍・岸田連合対石破の構図が強まり、石破の目は極めて困難となった。この内閣を命名すれば「安倍再起動内閣」だろう。パソコンも使いすぎると動きが遅くなるが、再起動で元のスピードを取り戻すのだ。
 

安倍は改造後の記者会見で憲法改正について「スケジュールありきではない。高村さんが『党に任せて』と言うとおりだ」と述べて、改正案を秋の臨時国会に提出する方針を転換させた。この最大の理由はハト派の岸田が「9条改正は直ちに必要ない」と発言するなど消極的であり、政調会長に据える以上その主張に妥協せざるを得なくなったと言える。力の構図を「安倍一強」路線から「安倍岸田連合」による協調路線へと転換せざるを得なくなったことを意味する。
 

当初岸田は、朝日新聞の「岸田外相留任」という7月21日の大誤報を多くのメディアが追随、留任かとみられた。しかし政調会長への流れは7月初旬のブリュッセルにおける安倍・岸田会談で決まっていた。岸田は「どのような立場になっても安倍政権を支える」と言明、安倍は「どんなポストでも選んでください」と述べ、この時点で外相以外のポストの流れが出た。朝日は7月20日の会談で岸田が「外相を外してほしい」と安倍に要請したのに、この会談を誤解して「留任」と打ってしまったのだ。3日の朝日は稲田朋美の防衛相辞任で痛手を負ったことを理由に安倍が方針を変えたなどと書いているが、とんちんかんな言い訳に過ぎない。
 

岸田の戦略は「待ち」に徹する方向に固まった。本人は来年9月の総裁選でも安倍に協力し、4年間待つくらいの気持ちであるようだ。岸田にしてみれば安倍に挑戦してリスクを背負うより、恩を売って安倍の支持を得た方がよいとの判断だろう。基本的に“熟柿作戦”だ。安倍、岸田、石破の3人が立候補すれば、安倍と岸田が食い合いになり、石破に漁夫の利を占めさせる可能性があった。


しかし、岸田の指南役の古賀誠は、安倍が1年しか持たないと踏んでいるフシがあり、その立場から「首相の人事には全てイエスとこたえる方がいい」と入れ知恵しているようだ。権謀術数の権化のような顔をした古賀らしい発想だが、ドロドロとした思惑が水面下では渦巻いているのである。岸田は4年半の外相の重任を解かれ、政調会長として地方行脚などで支持勢力を拡大して、将来に備えることが出来る。
 

党内で反安倍色を強めてきた石破は入閣しなかった。今回の安倍の人事で一番際立っていたのは石破とともに反安倍で騒いでいた野田を閣内に取り込んで石破を孤立させたことだ。朝日によるとこの人事について石破は「受けるとは思わなかった」と漏らしていたというが、切り崩された無念さが伝わってくる。石破派からは3人入閣したがいずれも石破への相談もなく一本釣りの形であり、領袖としての面目も失った。石破は「首相は俺の手足を縛ろうとしている」と漏らしたと言うが、厳しい立場を自認している。
 

一方、もともと安倍と野田は同期会で「私のこと嫌い」と野田が尋ね、安倍が「全然」と答えるような仲であり、「晋ちゃん」「聖子ちゃん」と呼び合っていたのを石破は知らない。しかし、野田は閣議後記者団に「来年の総裁選挙には必ず出る」と息巻いている。「総裁選候補者全てが政策を戦わせ、国民とつながる場面であり、よい習慣だ」と発言。まるで佐藤3選阻止に閣僚として挑んだ外相三木武夫のようなことになりかねないが、安倍は獅子身中に虫を抱えたことになろう。


佐藤は三木出馬に対して「不明の至りであった」と述べたものだが、入閣冒頭からこんな発言をするようでは、首相をなめている。三木より悪い。果たして安倍が野田を懐柔できるかどうかがポイントだ。
 

意外な人事は河野太郎の起用だが、ワシントンのジョージタウン大学を卒業した国際派であり、今回の改造では期待できる。一匹狼の異端児が外相というポストで成長するかどうかが見物だ。憲法や原発で安倍の方針と真逆の発言をしていたが、閣僚になったら発言を控えるだろう。既に安倍内閣で、内閣府特命担当大臣を務めており、問題発言はない。
 

今回の改造人事は安倍が捲土重来、乾坤一擲を賭したもので、これで失敗したらどうしようもなかったが、大成功の部類だろう。支持率が焦点だが、これは新聞によってまちまちの結果が出そうである。総じて上向きの傾向が出れば、早期解散へとつながりうる。少なくとも下落傾向にはよほどのことがない限り歯止めがかかるだろう。安倍が述べる「仕事人内閣」の気迫は国民にも伝わるはずだ。


折から北朝鮮をめぐる極東情勢は一発触発の危機とも言え、野党のカケだのモリだのの追及などにかかわずらっている暇などない。臨時国会などは当面開く必要ない。断末魔のような民進の体たらくなら、293議席維持は無理でも260から70議席はいくだろう。それでも、3選へと動く。

【筆者より=原則として夏休みに入ります】
            <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


◎俳談
【きもいのは主婦】
 驚いた。鰯の頭と腸(わた)がないやつが食膳にでた。小生、鰯や秋刀魚の味は腸があって初めて成り立つと信じていた。ところが生協で売っているのはないのだという。鰯は頭から食らいつく小生としては、食べれば食べるほどまずさが募った。わさびのないマグロよりもっとまずい。醤油のない卵かけご飯よりもっとまずい。ついに一匹食べるのが精一杯であった。
 一体、頭と腸なしの鰯を食べるのは誰だろうと想像してみた。味を知らない若い夫婦だろうか。この人達は、鰯も食べられない貧しい食卓で育ったのだろうか。というより、親が教えなかったのか。生協の魚屋は「気持ち悪いからとって」と言われるらしい。気持ち悪いのは腸が食べられない火星人のような主婦の方だ。もう駄目だ。地球は火星人に占領された。
頭腸なしの鰯の食べ残し       杉の子

            <俳談>    (政治評論家)
 

2017年08月02日

◆米に日本置き去りの対北“現状凍結”構想

杉浦 正章



中距離核ミサイル容認で妥協模索
 

ゲーツが頭越し米中交渉案
 

安全保障分野において米政府の高官としてもっとも経験が豊かな元国防長官ロバート・ゲーツが対北朝鮮政策の大転換を唱えている。内容は米国が北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策を破棄して平和条約を締結するというもので、その際中距離核ミサイルは容認するという“現状凍結”構想だ。背景には米国内に北が1年以内に核搭載のICBM保有に成功するとの見方が強まっており、放置すれば米国にミサイルが到達し、核戦略の転換を根本から迫られるという危機感が存在する。


しかし、その場合日本はどうなるかだ。中距離核ミサイルを認めれば、日本は常に核どう喝の対象になり、脅かされることになる。間違いなく日本には核武装論が台頭し、非核3原則など吹き飛ぶ。ゲーツ構想は如何に危急存亡時においては、米国がエゴイズムを発揮するかを如実に物語るものだ。政府は外務省を通じて米側に懸念を伝達すべきだ。
 

ウオールストリートジャーナル紙とのインタビューで、現在ウィリアム・アンド・メアリー大総長のゲーツは「中国が依然としてカギを握る」として、中国に対して1)旧ソ連とキューバ危機を解決したときと同様に、北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策の破棄を約束する用意がある、2)北朝鮮と平和条約を締結する用意がある、3)韓国内に配備している軍事力の変更を検討してもいい――と提案する。この見返りに、米国は北朝鮮の核・ミサイル開発計画に対して強い制約、つまり基本的には現状での凍結を要求し、国際社会や中国自身が北朝鮮にこれを実施させることを求める必要があることなどを提唱している。


このうちとりわけ重要なのは「現状での凍結」が意味する問題である。詳細は後で述べるが日本や韓国が受け入れられるかどうかを度外視している。加えて「北朝鮮に核兵器をあきらめさせることはできないと思う」「金氏は核兵器を体制存続のために欠かせないと考えている。しかし運搬手段(ミサイル)の射程をごく短距離にとどめさせることはできるかもしれない」などと述べた。
 

さらに米国は中国に対して、「これを受け入れられなければ、われわれは中国が嫌がる手段をアジアで講じる」と、中国をどう喝している。「米中間でこうした合意形成ができない場合、米国は韓国や日本、太平洋の米軍艦上を含め、アジアに多くのミサイル防衛システムを配備し、さらに米国は北朝鮮から発射された大陸間弾道ミサイルと思われるもの全てを撃ち落とすと宣言する。


要するに、外交的な解決策がなければ、この政権を封じ込めるために必要な手段が何であれ、われわれはそれを実施するということだ」と言明している。そしてゲーツは「レックス・ティラーソン国務長官とジム・マティス国防長官がこの計画を中国に示し、中国が支持すれば、その時初めて北朝鮮との直接協議が始まる。」と強調している。
 

この構想は金正恩を小躍りさせるものであり、逆に日韓両国は、米国のエゴイズムに置いてけぼりを食らう形となる。日本にしてみればいくら北朝鮮問題が行き詰まり状態にあるとはいえ、米国が中国との間で日本頭越しの戦略を展開されては、日米同盟の基本を崩しかねない問題へと波及し得るものだ。米国はニクソンの対中頭越し外交の伝統が物語るとおり、行き詰まると日本を度外視して超大国間の直取引に傾きがちな傾向を示す。問題は安保ど素人のトランプを始めティラーソンらが、ゲーツ構想に乗りかねない点であり、日本としては米国にクギを刺す必要がある。そうでもしなければ国会で野党から「それみたことか」と追及を受けるのは安倍となる。
 

もっとも今のところ米政府はゲーツ構想では動いていない。米国内では北が本格的な核搭載のICBMを配備してからでは遅いという立場から「今後1年以内が軍事行動に残されたゴールデンタイムだ」とささやかれている。国連大使ヘイリーは声明を発表し、制裁強化に消極的な中国を名指しで「協議の時は終わりだ」とし、協力するのかどうか決断するよう迫っている。


また中央情報局(CIA)長官マイク・ポンペオは、「朝鮮半島から核兵器を排除し、非核化すれば素晴らしいが、それに関して最も危険なのは現在それらをコントロールしている人物だ」と指摘するとともに「そのために、われわれにできる中で最も重要なのは2つを分けること。能力と、(核開発の)意図を持つ人物を分け、引き離すことだ」と強調した。これは言うまでもなくCIAが金正恩暗殺を狙って動き出していることを意味する。今後斬首作戦の展開は言うまでもなく、クーデターの誘発、各種の方法での宣伝や謀略を北朝鮮国内で展開してゆくことになろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>


◎俳談

【寂しさ】

 残りしか残されゐしか春の鴨    岡本眸
 春深くなって鴨は北辺の地に帰るが、まだ帰らずにいる鴨を「残る鴨」という。春の季語だ。句意は自らの意思で残ったのか、それとも仲間から外されて残されたのだろうか、あの春の鴨は。これから酷暑を生き抜けるのかなぁ。根底に底知れぬ淋しさがある。やはり岡本の句に
 日向ぼこあの世さみしきかも知れぬ
があるが、これと通ずるものがある。

 淋しさも茶柱と呑む炬燵かな  東京俳壇入選

     <俳談>        (政治評論家)