2017年08月30日

◆敵基地攻撃能力が不可欠となった

杉浦 正章



安保で全体重を米にかける時ではない
 

領土に落下すれば迎撃した可能性
 

自己完結型の存在価値をレゾンデートルというが、今ほど日本が国家としての有り様(よう)が問われているケースはない。北のミサイルの報に、12の道と県が右往左往してなすすべがない。恐らくその様を見て西欧など世界の国々は唖然としているのではないか。国の安全保障を他国に委ねている結果がそうさせているのだ。


北朝鮮の核ミサイル開発は平和が天から降臨する時代の終焉を意味する。天から降るのは核ミサイルだ。しかもそのミサイルは多弾頭化し始めた可能性すら高い。その意味するものは発射されてからでは迎撃が困難になるということだ。


今後のミサイル対策は、発射を察知した時点で叩く敵基地攻撃能力の保有が不可欠となったことを意味する。政府が国民の生命財産を守るというなら、専守防衛では十分な対応は不可能だ。基本戦略を積極防衛へと転換し、せめて巡航ミサイルや新型戦闘機F35に敵基地攻撃能力を保持させるという抑止力の保持が不可欠なのではないか。


日本もなめられたものである。火星12号をグアム周辺に撃てば米国の攻撃が必至とみて、北の黒電話の受話器ヘアの金正恩は、襟裳岬東方を選んだ。外相河野太郎が指摘したように「北朝鮮はひるんだ」のだ。
 

まず今回のミサイル発射で首相・安倍晋三が「ミサイルの動きを完全に把握しており国民の生命を守るために万全の態勢をとった」と言明していることが何を物語るかだ。明らかに発射の瞬間から軌道を「完全に把握」していたのだろう。そして日本に落下するようなケースでは迎撃命令で破壊する予定であったに違いない。迎撃ミサイルの発射権限のある自衛隊の司令官に対して、安倍はおそらく必要な状況となれば撃墜せよとミサイル破壊の指示を出していたと思われる。


これを受けて司令官はイージス艦や地上配備の迎撃ミサイルにアラートをかけていたのだろう。しかし日本上空を通過するミサイルの高度が高く、迎撃する必要なしと判断したのだろう。
 

こうした判断が出来る背景には、ミサイル発射に関して確たる情報があったからとみられている。政府は28日までに平壌近郊で発射の動きがあることを探知しており、日本列島を越える可能性があることまで掌握していた模様である。このためイージス艦も事前に周辺海域に配備、陸上からはPAC3も対応できる状態であったといわれる。迎撃態勢を整えた上で、ミサイル発射を待ったというのが、実態であったようだ。安倍発言の裏には、相当の対応が進んでいたことをうかがわせるものがあったのだ。日米韓3国が共有の極秘情報であった。
 

しかし、この情報が漏れた以上、北朝鮮は今後ますますミサイル発射を掌握困難な場所から行うことになるだろう。したがって日米韓による情報収集活動が、極めて重要になることは言うまでもない。そこで必要になるのは発射して日本列島に届く前に発射基地を叩く敵基地攻撃能力である。


敵基地攻撃能力の保有については1956年に鳩山一郎内閣が「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」との判断を打ち出している。憲法上の問題はクリアされており、後は政治判断だけだ。既に自民党の安全保障調査会は3月に、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を踏まえ、敵基地攻撃能力の保有を政府に求める提言をまとめ、首相・安倍晋三に提出した。 


調査会の座長を務めた小野寺五典は敵基地攻撃能力が必要な理由について「何発もミサイルを発射されると、弾道ミサイル防衛(BMD)では限りがある。2発目、3発目を撃たせないための無力化の為であり自衛の範囲である」と言明している。安倍はこの小野寺を防衛相に任命した。就任後も小野寺はインタビューで、「提言で示した観点を踏まえ、弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のための検討を進めていきたい」と前向きな姿勢を示している。
 

これに対して安倍は2月の時点では「どのように国民を守るかは常に検討すべきである」と前向きであったものの、最近では「具体的に検討を行う予定はない」と慎重姿勢に転じている。
 

しかし、相次ぐ北の挑発に“無為”で過ごせば、国家としてのレゾンデートルが問われる段階に入る。同じ敗戦国のドイツの場合を例に挙げれば国内には米軍の核ミサイルが20基配備されているとされ、有事に米独どちらかの提案を他方が受け入れれば使用できる、という共同運用体制を取っている。第2次メルケル政権で撤去が議論されたときがあったが、ロシアが配備している戦術核に対抗するためには必要という考え方が優勢を占め、オバマ政権も配備を継続した。


トランプが信用おけないことから最近では保守系有力紙フランクフルター・アルゲマイネが、米国が欧州防衛を欧州自身に委ねることになった場合には、「ドイツ人には全く考えもしないこと、つまり独自の核抑止能力という問題」が起きる可能性もある、と警告している。
 

やはりドイツの場合も対米信頼感が揺らいでいるのであり、日本でも同様だ。8月2日に紹介したように米国内には、米国が北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策を破棄して平和条約を締結し、その際中距離核ミサイルは容認するという“現状凍結”構想が台頭している。事実上の「日本切り捨て論」である。おまけに今回の場合も当初は国防総省の報道官が「北米にとっては脅威にならない」とまるで他人事のようなコメントを出した。大国は基本的にエゴなのであり、安全保障の全体重を米国に委ねるという歴代自民党政権の対応は、ここに来て危うくなってきている。


自国の防衛は主体的に自国で行わざるを得なくなるのではないか。そのささやかなる1歩が敵基地攻撃能力であり、早期に実現に移すべきではないか。実現させれば日米全体の抑止力も高まる。今解散総選挙のテーマとして浮上させれば、国民多数の理解も得られるのではないか。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

◎俳談

【意外性と機知】

これきしはジュラ紀の冬と炎天下 読売俳壇3席
 恐竜の天下であったジュラ紀の平均気温は現在より10度以上も高かったと考えられている。北極圏でも平均気温は15度くらいあった。掲句は頑固爺が、「何だってんだい。これくれいはジュラ紀の冬だい」と炎天下を歩いている姿である。深い科学的な知識(?)に裏付けられた俳句も時には詠むのだ。人の意表を突く意外性と機知がポイントだ。

     <俳談>     (政治評論家)

 

2017年08月29日

◆解散するなら臨時国会冒頭がよい

杉浦 正章
 


アベノミクスの総仕上げで信を問え 


自公協調路線で政権は継続する
 

夏休みボケなのか茨城知事選の自公勝利に対するマスコミの反応が鈍い。「衆院3補選に弾み」などとやっているが、視野狭窄(きょうさく)的反応だ。ここは「早期解散に弾み」と打つべき時だろう。解散戦略の選択肢は大きく広がったのだ。それも臨時国会冒頭が解散のチャンスだ。7月2日の都議選で負け、同月23日の仙台市長選で負けてきた自民党が8月3日の内閣改造を経てようやく勝利を占めたのが茨城知事選だ。「モリとカケ」の軛(くびき)と防衛相・稲田朋美スキャンダルからやっと離脱出来た選挙でもある。解散に踏み切れば政権維持に支障のない270議席前後は取れるのではないか。


現在の293議席などは多すぎる。多いほど弛緩して若手低能議員の不祥事ばかりが目立つ。首相・安倍晋三は絶好調の経済情勢を背景にアベノミクスの総仕上げを問えばよいのだ。与党で改憲発議の3分の2が維持出来るかは微妙だが、野党を巻き込んだ妥協で改憲は可能だ。
 

まずこのチャンスを逃すとどうなるかだが、野党はどっちみち選挙は近いと判断して、臨時国会では安倍とは関係のない森友と加計の疑惑ばかりを追及して、国民の目を欺こうとするだろう。議論をすればするほど何かあるような「印象操作」を展開する。ばかな国民はこれに左右される可能性があり、政府・与党にとって議論すればするほど野党ペースにはまる。


なぜなら朝日、毎日、テレ朝、TBSなど反安倍のマスコミ勢力が全力を挙げてこれをバックアップするからだ。この悪い循環は、再燃する前に解散で断ち切るしかないのだ。国民の審判を仰げばようやく断ち切れるのだ。
 

安倍は9月には外交日程がひしめいている。上旬にはウラジオストクでの東方経済フォーラムがあり、プーチンとの会談も行うことになるだろう。インド訪問も準備している。下旬にニューヨークでの国連総会に出席する。ここで安倍は北朝鮮問題を取り上げ、「世界核戦争の危機」を訴える必要がある。欧米の目を極東に向けさせるのだ。北朝鮮問題は直接選挙のテーマにはなりにくいが、首相の取り組む姿勢が票につながる。外交で露出度を増せばますほど、選挙には有利に働く。
 

最大のプラス材料は経済がまさに絶好調であることだ。まず安倍が政権を担当してから「アベノミクス」で日本経済の潮目が大きく様変わりした。産経によると15年度の企業の経常利益は過去最大の68兆2201億円で、12年度の48兆4611億円から約20兆円増え、景気の拡大が12年12月から今年4月まで53カ月間続いている。これはバブル景気の51か月を抜き、戦後3番目の長さである。17年4〜6月期の名目国内総生産(GDP)は実額で545兆円と、12年年10〜12月期から50兆円以上増えた。


最大の改善は雇用だ。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率は6月は1・51倍で、バブル期の90年7月(1・46倍)を上回った。正社員の有効求人倍率も1・01倍と初めて1倍を超えている。東京では2倍だ。まさにバブル期を凌駕する経済効果であり、選挙では最大の武器となり得る。こうした経済効果を前面に出して徹底的に宣伝する必要がある。経済が停滞し始めてからでは遅い。チャンスは到来しているのだ。
 

さらに有利なのは「小池新党」が、全国的なブームとなる気配が少ないことだ。だいいち中心人物の衆院議員若狭勝の顔が悪い。カリスマ的な容姿とはほど遠く、無精髭だけが目立つ。これで民進党離党者などを糾合しても盛り上がる可能性は少ない。小池は内心困っているのではないか。オリンピック棚上げで政争に走っても国民的な共感は呼びにくいのではないか。だいたい都知事が都政そっちのけで国政選挙の先頭に立って全国を回れば、国民のひんしゅくを買うのが落ちだ。いずれにしても臨時国会冒頭解散なら、準備不十分だろう。 
 

また都議選で裏切った公明党が、もみ手で帰ってきたのは大きい。総選挙を控えて自民と対立して自らも議席を減らしては「損」という判断だろう。茨城補選で総力を挙げて応援した。この政党はどうも選挙に勝てば何でもするという、“選挙アニマル”的傾向が強く、そのうちに仏罰が当たる。自民党にとってはありがたく共闘を組むしかない。
 

加えて冒頭述べた稲田朋美更迭効果だ。更迭してから朝日も社会部中心の政権追及に陰りが生じており、勢いがない。とっかかりを失っているのだ。江崎鉄磨など舌禍事件を起こしそうな、いささかとろい閣僚がいないわけではないが、総じて閣僚の発言には問題がなく、先の改造はベストに近い布陣を達成した。一方民進党は前原誠司が代表になりそうだが、これで党刷新効果が生じるとは思えない。前原は偽メール事件や外国人献金などで代表や閣僚を辞任しており、攻められると弱い。総選挙で反転攻勢に出る勢いはない。
 

こうした情勢を背景にすればまさに解散のチャンスは9月下旬にも招集される臨時国会ということになる。それもカケだのモリだのの議論などに深入りする前の事実上の冒頭解散がよい。安倍が所信表明演説を行い、野党が代表質問をした上で解散を断行する。これが決め手のような気がする。解散すれば言うまでもなく3補選など吹き飛んで埋没する。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

◎俳談

【2物衝撃】
真夜中の天井裏に青大将 毎日俳談入選
 意外な二物の取り合わせの句を二物衝撃句という。真夜中の天井裏とネズミでは日常的。しかし天井裏と青大将となるとゾクゾクとする恐怖感をもたらす。そしてよく考えてやっと旧家には青大将が住みついていることに考えが至る。
露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す 西東三鬼
 妻を亡くした隣人のロシア人が、長いサオを持ち出し叫び声と共に手当り次第にザクロをたたき落していたのを三鬼が描写したものだ。事情を知らない読者はロシア人と石榴の取り合わせの意外感から、様々な空想の世界へといざなわれる。

     


<俳談>       (政治評論家)
 
  

2017年08月20日

◆トランプ、「バノン切り」で穏健現実路線へ

杉浦 正章



白人労働者中心の選挙基盤に打撃
 

ワイトハウス内部抗争にけり
 

2月23日の解説の段階で「バノンをを潰すか、トランプ政権が潰れるか」と、「バノン切り」を予言したが、けりがついた。背景には「陰の大統領」バノンが選挙公約と現実政治のけじめを理解出来ず、公約に固執し続けた結果、自らを窮地に追い込んだことがある。トランプは自説に固執する理念重視型のバノンと対立していた穏健現実路線派に政権の基盤を移行させることになるが、バノンだけでなくトランプ自身も内政的には厳しい状況に立たされる。


というのもバノンが唱えた保護貿易や移民排斥路線は白人の低学歴労働者の支持を狙ったものであり、ただでさえCNNの支持率が過去70年の歴代大統領で最低となる36%にとどまっていることを考えると、バノン更迭で支持率が大幅に好転する可能性は少ない。来年の中間選挙は共和党惨敗をトランプが先導することになりかねない状況でさえある。
 

ウオールストリートジャーナル紙の社説がいみじくも「バノンは自分で自分を解任した」と分析しているが、まさにきっかけは自傷行為であった。左派系ニュースサイト「アメリカン・プロスペクト」とのインタビューでバノンはホワイトハウスの内部抗争を暴露して「トランプ氏の側近らと毎日戦っている。戦いの連続であり、いまだに戦いは続いている」と激しい対立に言及した。これは抗争が終末期に到達して、自らが逃げ場のないほど追い込まれた事を意味する。娘婿の上級顧問クシュナーや安保担当補佐官のマクマスター補佐官らとの対立は抜き差しならぬ段階であったという。


これまでは保護主義的な貿易政策、強硬な移民政策、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱などで強硬路線を取って政権をリードしてきたバノンだが、パリ協定離脱に関しては娘のイバンカら穏健派が反対を唱えたもののバノンは強硬路線で突っ走った。このころから向かうところ敵なしに見えたバノンの力に陰りが見え始め、イスラム圏からの入国禁止措置は司法の大反発で失敗の憂き目を見た。トランプはバノン路線に乗った結果、政治的、法的な敗北を喫したことになる。
 

さらにバノンはインタビューで北朝鮮問題について「北朝鮮関係などは余興に過ぎない。軍事的解決などあり得ない。忘れてよい」 と言い切った。これは軍事的解決を排除しないトランプの北朝鮮政策と真っ向から対立するものである。これに追い打ちをかけたのがシャーロットビルでの騒乱だ。白人至上主義を掲げるグループとこれに抗議するグループとの激突は、だれがみても白人至上主義派に問題があった。


それにもかかわらずトランプはバノンの影響を受けて「双方に非がある」とけんか両成敗的な発言をしてしまったのだ。これには世論が憤ったのみならず、ユダヤ系市民にまで反発が報じた。ユダヤ系の米国家経済会議(NEC)委員長のゲーリー・コーンも激怒して辞任寸前となった。コーンはこれまで通商問題でトランプ政権内の過激な主張を抑え、税制改革でも中心的な役割を担っており、辞任は政権への大打撃となる性格のものである。
 

こうしてさすがのトランプも、政権維持とイメージ回復のためにも 「バノン切り」に踏み切らざるを得なくなったのだ。今後の政権はホワイトハウス内の力関係が一変する。まず、7月末に就任した大統領首席補佐官ケリーを中心に体制再構築に動くだろう。ケリーは、退役海兵隊大将であり、現役の陸軍中将のマクマスター、退役海兵隊大将の国防長官マティスの「軍人トリオ」がホワイトハウスをリードし、外交は実業家の国務長官ティラーソンが担うことになる。


従来通りクシュナーと娘で大統領補佐官イバンカら“親族”も加えて、バノンの強硬路線からホワイトハウスは一挙に穏健現実路線へと形を変えることになる。ホワイトハウスのメディアとの関係は、トランプ本人がメディア敵視政策を変えない限り一挙に好転することは難しいだろう。しかしトランプもバノンの「メディアは野党だ」といった発言を請け売りしていた側面もあり、バノンの辞任はとげの一つが抜けたことは確かであろう。
 

バノンも古巣の右翼メディア「ブライトバード・ニュース」の会長に復帰し、「我々が選挙で勝ち取ったトランプ政権は終わった。大統領周辺のやつらは穏健な道を進めさせようとするだろう」 と述べている。バノンは政権中枢の半年間でスキャンダルも含めた様々な情報を握っている可能性が高く、トランプは敵に回したくない相手であろう。ブライトバードはさっそく「トランプ政権の終わりが始まった」 と酷評している。もっとも、バノンも政権幹部とメディア会長では、影響力が天と地ほど違うことを思い知ることになるのも確かだろう。バノンは大敗を喫したのだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

◎俳談

【写生句の難しさ】

海峡の流れの速し海月過ぐ 東京俳談入選
 関門海峡で潮の流れを眺めていたら、海月が浮遊して流れているのがみえた。海月の流れていくスピードで海峡の流れの速さに気付いたのである。このように自然を描写した句を写生句というが、句作の中でも写生句が一番難しい。子どものお絵かきのような写生句では様にならない。写生の後に残る深みが不可欠だ。海月は夏の季語。

       <俳談>    (政治評論家)
 

2017年08月16日

◆金の“恐怖心”を揺さぶる米外交

杉浦 正章



“モラトリアム”で局面打開狙う
 

金、就任以来初の“譲歩”
 
もともと「小心者の居丈高」と踏んでいたが、今回ばかりは「びびった」ということだろう。北朝鮮の「愚かで哀れな」指導者金正恩が「愚かで哀れなアメリカの行動を少し見守る」のだそうだ。グアム周辺にミサイル4発で包囲射撃をすれば、米国はこれを打ち落として戦争に突入することも辞さないという「本気度」がようやく分かって、「少し見守る」気になったのだ。その発言からは命拾いをした様子すらうかがえる。

この金の就任以来初めての“譲歩”のきっかけは米国務長官ティラーソン、国防長官マティスが共同で米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した一文にある。その内容は挑発行動をしなければ交渉を厭わない方針が明記されたものであり、金は振り上げたこぶしをしばし降ろすことになったのだ。
 

筆者は、トランプとティラーソンとマティスがそれぞれ独自の発言を繰り返していることについて、かねてから“役割分担”があると書いてきた。これを裏付けるようにWSJは、まずティラーソンとマティスの食い違いを「良い警官(good cop)と悪い警官(bad cop)」になぞらえた。いわば “良い警官・悪い警官戦術”だが、よい警官は犯人に対してなだめ役でカツ丼を食べさせる役。悪い警官は「白状しないと泊まってもらう」と脅す役だ。


例えばマティスが潜水艦ケンタッキーの水兵たちへの訓示で「至急何かをしなければならなくなれば、君たちに頼ることになる」と北向けに脅し発言をすれば、ティラーソンは、「米国民は言葉の応酬を心配せずに、安眠していい」と北に猫なで声をする。マティス、ティラーソンはほぼ毎日連絡を取り合い、たいていの場合、両者はコメントを出す前にお互い打ち合わせをするのだそうだ。これに警察署長のトランプが「軍事的解決策は整った」と究極の脅しに入る。


息を潜めて全ての米首脳らの発言に目を通している金正恩は、何が何だか分からなくなり、恐怖心だけが残る。これが巧妙なる米側の心理作戦であるとは気付かない。こうしたなかでティラーソン・マティスの“統一見解”がWSJに投稿されたのだ。このなかで両者は@わが国が平和的に圧力をかける目的は、朝鮮半島の非核化で、米国は体制転換や朝鮮半島統一の加速には関心がないし、米軍が非武装地帯の北側に駐屯するための口実を求めているわけでもない


A長きにわたって苦しんでいる北朝鮮国民は敵対的な政権とは異なる存在であり、彼らに害を与えるつもりもないB北朝鮮の挑発的かつ危険な行動について国際社会の考えが一致しており北朝鮮は止まらなければならないC米国は北朝鮮と交渉する意志があり、外交を通して北朝鮮に方針を改めさせることを優先しているが、その外交は軍事的選択肢に裏打ちされているD北朝鮮は平和への新たな道を選ぶかさらなる孤立の道を選ぶか選択を迫られているーなどと強調している。


要するに金正恩政権を潰さないし、米軍が北に攻め込むこともなく、朝鮮半島統一もしないという大方針を示したのだ。またこれは一種のモラトリアムの提示でもある。モラトリアムには様々な意味があるが、この場合は北が核実験やミサイル実験を「一時停止」か「一定期間の停止」か「凍結」し、米国はそれを見守ることなどを指す。しばらく猶予期間をおいて水面下などで接触を続け、危機回避を考えようというわけだ。このままでは武力衝突に直結しかねないとトランプ以下が考えて、この辺で米国の考え方を統一的に示そうということになったものだ。WSJは発行部数も多く全米で読まれていることから選ばれたのだろう。


ただこのモラトリアムは小休止の感じが濃厚であり、永続性があるかどうかはまだ未定だ。金正恩は「見守る」と述べているのだから、グアムへのミサイル発射は当分止めるのだろうが、いつまでだろうか。米韓両国は21日から合同演習を開始する。これは金にとっては我慢が出来ないものだろうが、ここでグアムに撃てば、演習がそのまま戦争になだれ込むみかねないことくらいは分かるだろう。


現にマティスはグアムへのミサイルに関して「北朝鮮が米国にミサイルを発射すれば一気に戦争へと発展する」と言い切っている。グアム島へ着弾しそうな場合は破壊する方針を初めて明示した。グアムへのミサイルは控えて、従来通り日本海などに撃ち込んで憂さ晴らしをする可能性も否定出来ない。いずれにしてもモラトリアム期間を“活用”して米朝が水面下での接触を強める可能性が強い。ここ数日はまさに正念場となろう。


こうした表向きの動きに平行して、米国はCIA長官が先に示唆したとおり、金正恩を暗殺する機会をうかがっているようである。米海軍特殊精鋭部隊シールズやピンポイントでの攻撃が出来る無人機「グレーイーグル」を活用した暗殺だ。good copとbad copによる対北揺さぶりが続く。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

◎俳談

【俳句の極め言葉】
干し飛魚(あご)の飛ぶがごときを送り来る  産経俳壇入選

俳句の生命は表現だ。掲句は中七の「飛ぶがごとき」ですべてが決まった。俳句は短いフレーズの中で印象を残さなければならない。従って時に大げさになる。干し魚が飛ぶわけがないが、新鮮で飛魚が今空を飛ぶような印象を受けた。それをそのまま句にした。魚介類で「活きているようだ」という表現があるが、「活きているような」ではありきたりで俳句にならない。飛魚が飛ぶから俳句になるのだ。夏の季語。

  <俳談>   (政治評論家)

2017年08月11日

◆キューバ危機を上回る北朝鮮危機だ

杉浦 正章



政府は臨戦・迎撃態勢を整えよ
 

早期の「敵基地反撃能力」の決断を

米ソ核戦争の危険に陥った1962年10月から11月にかけてのキューバ危機は、当時の米大統領ケネディとソ連
首相フルシチョフが書簡でやり取りしながら、最終的にソ連が核ミサイルを撤去して、衝突には至らなかった。それに匹敵するとも劣らない今回の北朝鮮危機は。


トランプと金正恩の間に何らの意思疎通が成立しないままに、一触即発状態になだれ込んでいるように見える。過去数年の事例からみても北がミサイルで方針を宣言した場合は必ず実行に移しており、実行に移せばトランプは90%以上の確率で迎撃して破壊せざるを得ないだろう。これが全面戦争に直結しかねない要素もある。国防長官ジェームズ・マティスは「北の体制崩壊」を警告している。


一方、米軍の攻撃で壊滅寸前になっても北は日本の米軍基地への核ミサイル攻撃を断行、最悪の場合1から2発が大都市に落ちる可能性は否定出来ない。まさにその瀬戸際の状況に陥りつつあると警戒すべきであろう。政府は迎撃など臨戦態勢を整えるしかあるまい。
 

状態を甘く見ない方がよい。北の狂気の指導者金正恩は核ミサイルの誇示で、体制を維持するしかないからだ。この「北の狂気」は中央通信を通じて「中距離弾道ミサイル『火星12号』4発を同時に米領グアム島周辺に向けて発射する計画を検討していると発表した。ミサイルは島根県、広島県、高知県の上空を通過し、グアム島周辺30〜40キロの水域に着弾することになる」とした。


これに対して米軍がどのような対応をするかだが、予想されるのは3段階での破壊だ。まず発射する場所が分かればブーストフェーズでトマホークなどを使って破壊する。飛び上がった段階では日本海からTHAADやイージス艦搭載ミサイルで撃ち落とすことになろう。グアム近海ではグアム配備の対ミサイル防衛網を使うか、イージス艦を急きょグアム周辺に配備して迎撃するなどの対応が取られる可能性が高い。これらの対処を複合的に行う可能性も否定出来ない。今回の場合時期は「中旬」、標的は「グアム周辺」と分かっているので比較的対応がしやすく、かなりの確率で4発全てを破壊できる可能性が高い。
 

トランプの直接的な言及は今日発せられると見られるが、既に北の軍事行動を見越してトランプは、「北はこれ以上アメリカを威嚇しないほうがいい。世界が見たことのないような炎と激しい怒りに直面するだろう」と言明した。NBC放送によれば米軍は「B1爆撃機や巡航ミサイルによる北の発射基地などに対する精密爆撃を実行する準備を整えた。大統領の命令があればいつでも攻撃可能だ」としている。


恐らくトランプは北にグアム周辺攻撃を“宣言”されて、黙っていることはないだろう。だまっていればこれまでの北への強硬姿勢は何であったかということになる。それこそ大統領の威信は地に落ちる。さらに重要なのはグアム周辺への攻撃を看過すれば、今後「北の狂気」はヤクザの脅しのごとく、ハワイ周辺、サンフランシスコ・ロサンジェルス周辺、ニューヨーク周辺への実験へと、どう喝のスケールを確実に拡大するであろうことだ。


既に対北忍耐も限界に達しつつあり、米国務長官ティラーソンの穏健発言でバランスを取る時期も過ぎたのではないか。マティスは「北の指導者は体制の崩壊や国民の破滅につながるような行動を考えるべきではない」と警告している。
 

一方日本は国会で防衛相・小野寺五典が、10日、北朝鮮が日本上空を通過して弾道ミサイルを発射した場合、昨年3月に成立した安全保障関連法に基づき、集団的自衛権を行使して迎撃する可能性があることを表明した。グアム島周辺への攻撃が、日本と密接な関係にある米軍への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」に該当する可能性があるとの認識の上に立っての対応だ。


小野寺は「米側の抑止力、打撃力が欠如することは、日本の存立の危機にあたる可能性がないとも言えない」と語った。相変わらず民共など野党や朝日は反発しているが、至極まっとうな考えだ。
 

さらに時事によると、防衛省は10日、ミサイル通過を予告された中国・四国地方で、地上から迎撃する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開する方向で検討を始めた。北朝鮮のミサイルに不具合があった場合、日本国内に落下する不測の事態も排除できないため、PAC3の展開を検討しているとみられる。ただ日本上空を飛ぶ場合は200キロの宇宙空間となる可能性が高く、領空の概念は大気がある100キロとされているため、実際にPAC3が使用される場合は日本に落下してきた場合などに限られるものとみられる。
 

こうした状況下で日本政府に求められる問題は一刻も早い敵基地反撃能力の保有である。1956年に鳩山一郎内閣が次のように政府見解を示しており、憲法上の問題はない。「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」である。


自民党の安全保障調査会は3月に、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を踏まえ、敵基地を攻撃する「敵基地反撃能力」の保有を政府に求める提言をまとめ、首相・安倍晋三に提出した。調査会の座長を務めた小野寺五典は「何発もミサイルを発射されると、弾道ミサイル防衛(BMD)では限りがある。2発目、3発目を撃たせないための無力化の為であり自衛の範囲である」と言明している。防衛相に就任してからは慎重に言葉を選んで発言しているが、もはや緊急事態である。自民党は一致して対応できる野党との協力体制を早急に整えるべきであろう。
 

そもそも日本が緊急事態の時に米軍が本当に行動を起こすかについても疑問が残るのは否めない。先に伝えたように米国には北と妥協して、米本土に届かない中距離核ミサイルまでは認めるという日本にとっての「悪夢の選択」が妥協案として存在する。いくら緊密でも、独自の「敵基地反撃能力」くらいは保有すべきではないか。まさに専守防衛とはこのことでもある。
 

それにつけても不可解なのは金融市場の動きだ。ウオールストリートジャーナル紙も首を傾げているが、トランプが米大統領が北朝鮮に対して「世界がいまだ目にしたことのないような炎と怒りに直面するだろう」と警告したわずか数時間後に円がドルとユーロに対し上昇したのだ。同紙は「核武装の道をまい進する独裁国家と日本との近距離に対する懸念よりも、安全な逃避先通貨という円の位置づけの方が重要だということだ」としているが、カネのためなら何でもする銭ゲバ達の考え方は理解の範疇を超えている。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)


◎俳談

【言葉を発見したらまず一句】

轢音もなしにうつろふ銀河かな    読売俳壇入選
 
轢音の轢は昔の車がきしむこと。従って轢音は車のきしむ音。掲句はそのきしむ音もなしに大銀河が回っている事を表現した。もちろん真空状態だから音はしない。当たり前のことを読んだのだが、俳句では芸術へと昇華される。大宇宙の営みの不思議を五七五の世界へと切り取ったのだ。ポイントは轢音という言葉の発見にある。そして発見したらその場で一句つくる習慣が必要だ。「星座はめぐる」の中にある名文句「無窮(むきゅう)を指さす北斗の針と きらめき揺れつつ星座はめぐる」を思い浮かべた。

          <俳談>    (政治評論家)

2017年08月04日

◆安倍再起動内閣が「改憲なし解散」にかじ

杉浦 正章
 


年内もあり得る情勢
 

岸田と連合、石破は孤立
 

改造人事から見た首相・安倍晋三の政局運営方針は来年末の任期満了選挙から「改憲なし解散」に大きく舵を切ったことだろう。今年中の解散か遅くても来年夏の「6月解散7月選挙」へと動きそうな雲行きだ。いまだに「解散は来年末」などと公言しているコメンテーターがいるが、信用しない方がいい。党内的には岸田文男を政調会長に据えてより強固な執行部体制を整えたが、野田聖子を閣内に取り込み石破茂を完全に孤立化させる形となった。


岸田は「ポスト安倍」レースのトップを走る勢いとなり、来年9月の総裁選は安倍・岸田連合対石破の構図が強まり、石破の目は極めて困難となった。この内閣を命名すれば「安倍再起動内閣」だろう。パソコンも使いすぎると動きが遅くなるが、再起動で元のスピードを取り戻すのだ。
 

安倍は改造後の記者会見で憲法改正について「スケジュールありきではない。高村さんが『党に任せて』と言うとおりだ」と述べて、改正案を秋の臨時国会に提出する方針を転換させた。この最大の理由はハト派の岸田が「9条改正は直ちに必要ない」と発言するなど消極的であり、政調会長に据える以上その主張に妥協せざるを得なくなったと言える。力の構図を「安倍一強」路線から「安倍岸田連合」による協調路線へと転換せざるを得なくなったことを意味する。
 

当初岸田は、朝日新聞の「岸田外相留任」という7月21日の大誤報を多くのメディアが追随、留任かとみられた。しかし政調会長への流れは7月初旬のブリュッセルにおける安倍・岸田会談で決まっていた。岸田は「どのような立場になっても安倍政権を支える」と言明、安倍は「どんなポストでも選んでください」と述べ、この時点で外相以外のポストの流れが出た。朝日は7月20日の会談で岸田が「外相を外してほしい」と安倍に要請したのに、この会談を誤解して「留任」と打ってしまったのだ。3日の朝日は稲田朋美の防衛相辞任で痛手を負ったことを理由に安倍が方針を変えたなどと書いているが、とんちんかんな言い訳に過ぎない。
 

岸田の戦略は「待ち」に徹する方向に固まった。本人は来年9月の総裁選でも安倍に協力し、4年間待つくらいの気持ちであるようだ。岸田にしてみれば安倍に挑戦してリスクを背負うより、恩を売って安倍の支持を得た方がよいとの判断だろう。基本的に“熟柿作戦”だ。安倍、岸田、石破の3人が立候補すれば、安倍と岸田が食い合いになり、石破に漁夫の利を占めさせる可能性があった。


しかし、岸田の指南役の古賀誠は、安倍が1年しか持たないと踏んでいるフシがあり、その立場から「首相の人事には全てイエスとこたえる方がいい」と入れ知恵しているようだ。権謀術数の権化のような顔をした古賀らしい発想だが、ドロドロとした思惑が水面下では渦巻いているのである。岸田は4年半の外相の重任を解かれ、政調会長として地方行脚などで支持勢力を拡大して、将来に備えることが出来る。
 

党内で反安倍色を強めてきた石破は入閣しなかった。今回の安倍の人事で一番際立っていたのは石破とともに反安倍で騒いでいた野田を閣内に取り込んで石破を孤立させたことだ。朝日によるとこの人事について石破は「受けるとは思わなかった」と漏らしていたというが、切り崩された無念さが伝わってくる。石破派からは3人入閣したがいずれも石破への相談もなく一本釣りの形であり、領袖としての面目も失った。石破は「首相は俺の手足を縛ろうとしている」と漏らしたと言うが、厳しい立場を自認している。
 

一方、もともと安倍と野田は同期会で「私のこと嫌い」と野田が尋ね、安倍が「全然」と答えるような仲であり、「晋ちゃん」「聖子ちゃん」と呼び合っていたのを石破は知らない。しかし、野田は閣議後記者団に「来年の総裁選挙には必ず出る」と息巻いている。「総裁選候補者全てが政策を戦わせ、国民とつながる場面であり、よい習慣だ」と発言。まるで佐藤3選阻止に閣僚として挑んだ外相三木武夫のようなことになりかねないが、安倍は獅子身中に虫を抱えたことになろう。


佐藤は三木出馬に対して「不明の至りであった」と述べたものだが、入閣冒頭からこんな発言をするようでは、首相をなめている。三木より悪い。果たして安倍が野田を懐柔できるかどうかがポイントだ。
 

意外な人事は河野太郎の起用だが、ワシントンのジョージタウン大学を卒業した国際派であり、今回の改造では期待できる。一匹狼の異端児が外相というポストで成長するかどうかが見物だ。憲法や原発で安倍の方針と真逆の発言をしていたが、閣僚になったら発言を控えるだろう。既に安倍内閣で、内閣府特命担当大臣を務めており、問題発言はない。
 

今回の改造人事は安倍が捲土重来、乾坤一擲を賭したもので、これで失敗したらどうしようもなかったが、大成功の部類だろう。支持率が焦点だが、これは新聞によってまちまちの結果が出そうである。総じて上向きの傾向が出れば、早期解散へとつながりうる。少なくとも下落傾向にはよほどのことがない限り歯止めがかかるだろう。安倍が述べる「仕事人内閣」の気迫は国民にも伝わるはずだ。


折から北朝鮮をめぐる極東情勢は一発触発の危機とも言え、野党のカケだのモリだのの追及などにかかわずらっている暇などない。臨時国会などは当面開く必要ない。断末魔のような民進の体たらくなら、293議席維持は無理でも260から70議席はいくだろう。それでも、3選へと動く。

【筆者より=原則として夏休みに入ります】
            <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


◎俳談
【きもいのは主婦】
 驚いた。鰯の頭と腸(わた)がないやつが食膳にでた。小生、鰯や秋刀魚の味は腸があって初めて成り立つと信じていた。ところが生協で売っているのはないのだという。鰯は頭から食らいつく小生としては、食べれば食べるほどまずさが募った。わさびのないマグロよりもっとまずい。醤油のない卵かけご飯よりもっとまずい。ついに一匹食べるのが精一杯であった。
 一体、頭と腸なしの鰯を食べるのは誰だろうと想像してみた。味を知らない若い夫婦だろうか。この人達は、鰯も食べられない貧しい食卓で育ったのだろうか。というより、親が教えなかったのか。生協の魚屋は「気持ち悪いからとって」と言われるらしい。気持ち悪いのは腸が食べられない火星人のような主婦の方だ。もう駄目だ。地球は火星人に占領された。
頭腸なしの鰯の食べ残し       杉の子

            <俳談>    (政治評論家)
 

2017年08月02日

◆米に日本置き去りの対北“現状凍結”構想

杉浦 正章



中距離核ミサイル容認で妥協模索
 

ゲーツが頭越し米中交渉案
 

安全保障分野において米政府の高官としてもっとも経験が豊かな元国防長官ロバート・ゲーツが対北朝鮮政策の大転換を唱えている。内容は米国が北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策を破棄して平和条約を締結するというもので、その際中距離核ミサイルは容認するという“現状凍結”構想だ。背景には米国内に北が1年以内に核搭載のICBM保有に成功するとの見方が強まっており、放置すれば米国にミサイルが到達し、核戦略の転換を根本から迫られるという危機感が存在する。


しかし、その場合日本はどうなるかだ。中距離核ミサイルを認めれば、日本は常に核どう喝の対象になり、脅かされることになる。間違いなく日本には核武装論が台頭し、非核3原則など吹き飛ぶ。ゲーツ構想は如何に危急存亡時においては、米国がエゴイズムを発揮するかを如実に物語るものだ。政府は外務省を通じて米側に懸念を伝達すべきだ。
 

ウオールストリートジャーナル紙とのインタビューで、現在ウィリアム・アンド・メアリー大総長のゲーツは「中国が依然としてカギを握る」として、中国に対して1)旧ソ連とキューバ危機を解決したときと同様に、北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策の破棄を約束する用意がある、2)北朝鮮と平和条約を締結する用意がある、3)韓国内に配備している軍事力の変更を検討してもいい――と提案する。この見返りに、米国は北朝鮮の核・ミサイル開発計画に対して強い制約、つまり基本的には現状での凍結を要求し、国際社会や中国自身が北朝鮮にこれを実施させることを求める必要があることなどを提唱している。


このうちとりわけ重要なのは「現状での凍結」が意味する問題である。詳細は後で述べるが日本や韓国が受け入れられるかどうかを度外視している。加えて「北朝鮮に核兵器をあきらめさせることはできないと思う」「金氏は核兵器を体制存続のために欠かせないと考えている。しかし運搬手段(ミサイル)の射程をごく短距離にとどめさせることはできるかもしれない」などと述べた。
 

さらに米国は中国に対して、「これを受け入れられなければ、われわれは中国が嫌がる手段をアジアで講じる」と、中国をどう喝している。「米中間でこうした合意形成ができない場合、米国は韓国や日本、太平洋の米軍艦上を含め、アジアに多くのミサイル防衛システムを配備し、さらに米国は北朝鮮から発射された大陸間弾道ミサイルと思われるもの全てを撃ち落とすと宣言する。


要するに、外交的な解決策がなければ、この政権を封じ込めるために必要な手段が何であれ、われわれはそれを実施するということだ」と言明している。そしてゲーツは「レックス・ティラーソン国務長官とジム・マティス国防長官がこの計画を中国に示し、中国が支持すれば、その時初めて北朝鮮との直接協議が始まる。」と強調している。
 

この構想は金正恩を小躍りさせるものであり、逆に日韓両国は、米国のエゴイズムに置いてけぼりを食らう形となる。日本にしてみればいくら北朝鮮問題が行き詰まり状態にあるとはいえ、米国が中国との間で日本頭越しの戦略を展開されては、日米同盟の基本を崩しかねない問題へと波及し得るものだ。米国はニクソンの対中頭越し外交の伝統が物語るとおり、行き詰まると日本を度外視して超大国間の直取引に傾きがちな傾向を示す。問題は安保ど素人のトランプを始めティラーソンらが、ゲーツ構想に乗りかねない点であり、日本としては米国にクギを刺す必要がある。そうでもしなければ国会で野党から「それみたことか」と追及を受けるのは安倍となる。
 

もっとも今のところ米政府はゲーツ構想では動いていない。米国内では北が本格的な核搭載のICBMを配備してからでは遅いという立場から「今後1年以内が軍事行動に残されたゴールデンタイムだ」とささやかれている。国連大使ヘイリーは声明を発表し、制裁強化に消極的な中国を名指しで「協議の時は終わりだ」とし、協力するのかどうか決断するよう迫っている。


また中央情報局(CIA)長官マイク・ポンペオは、「朝鮮半島から核兵器を排除し、非核化すれば素晴らしいが、それに関して最も危険なのは現在それらをコントロールしている人物だ」と指摘するとともに「そのために、われわれにできる中で最も重要なのは2つを分けること。能力と、(核開発の)意図を持つ人物を分け、引き離すことだ」と強調した。これは言うまでもなくCIAが金正恩暗殺を狙って動き出していることを意味する。今後斬首作戦の展開は言うまでもなく、クーデターの誘発、各種の方法での宣伝や謀略を北朝鮮国内で展開してゆくことになろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>


◎俳談

【寂しさ】

 残りしか残されゐしか春の鴨    岡本眸
 春深くなって鴨は北辺の地に帰るが、まだ帰らずにいる鴨を「残る鴨」という。春の季語だ。句意は自らの意思で残ったのか、それとも仲間から外されて残されたのだろうか、あの春の鴨は。これから酷暑を生き抜けるのかなぁ。根底に底知れぬ淋しさがある。やはり岡本の句に
 日向ぼこあの世さみしきかも知れぬ
があるが、これと通ずるものがある。

 淋しさも茶柱と呑む炬燵かな  東京俳壇入選

     <俳談>        (政治評論家)
 

2017年08月01日

◆あまりにひどいワイドショーの印象操作

杉浦 正章



反作用で言論の自由を毀損する恐れ
 

民間人によるチェック機構が必要だ
 

端的に言って、内閣支持率を30%台にまで落とした民放ワイドショーに如何に対応するかが、「安倍長期政権」のカギをにぎるとみなければなるまい。防衛大臣の言動をめぐる安倍内閣袋だたきの構図はいったん小康状態となったが、TBSやテレビ朝日のワイドショーは今後、まるで「水に落ちた犬は叩け」 とばかりに、かさにかかって首相・安倍晋三叩きの手をゆるめる気配はないだろう。


朝日、毎日などの論調の“請け売り”といってよいほど新聞記事の強い影響下にあるコメンテーターらは、両紙が「反安倍」を基調とし続ける限り、論拠に事欠かない構図だ。これにどう対処すべきかだが、この新聞、民放“連携の構造”は一筋縄では打開できない。もちろん内閣改造人事くらいで局面突破できる問題ではない。最終的には、ケースごとに訴訟を起こすか、放送法を適用して偏向報道の局の放送免許を停止するくらいの対応が必要になるかも知れない。政権側にそれくらいの腹がないと収まらないだろう。
 

ワイドショーの影響をいちばん受けやすいのは退職後の高齢者層だろう。読売の調査を見てもしょっちゅう家に居てワイドショーを見ている層に安倍アレルギーが強い。読売の内閣支持率を年代別にみると支持は20代65%、30代60%、40代50%、50代45%、60代35%、70代45%と高齢化するほど低下している。これは人口構造で大きな割合を占める高齢者が、朝から晩まで安倍たたきに精を出すワイドショーの影響下にあることを物語る。


年寄りなら分別が付きそうなものだが、政治についての分別が付く判断力を持っている高齢者は少ない。ほとんどの高齢者はもっともらしい数表を並べ立て、根拠レスの根拠を言い立てるコメンテーターらの主張に安易に乗ってしまうのだ。
 

一方若手の支持率が高いのは、まず自らの生活が成り立っている基盤を重視するからだ。給料は安倍内閣になって初めて上昇基調をたどり、経済は活況を呈している。外交安保も安倍に任せておけば安心感がある。若年層はそれがワイドショーのフィルターをかけずに分かるのだ。昼間っからワイドショーを見ている社員は首を切られるのが落ちだ。


だいいち「ワイドショーでこう言っていた」などと主張すれば、自らの知性、人格を疑われる。それほどコメンテーターなるもののレベルは低いのだ。これが分からないのが高齢者、分かるのが若者であり、これが支持率の「断絶」を形成しているのであろう。
 

実際にコメンテーターらの反安倍感情はとどまるところを知らぬほどのたかぶりを示している。例を挙げれば伊藤惇夫は口に出すこと全てが反安倍感情に根ざしているといってよい。安倍が被災地を視察しても「地元に負担をかけている」と批判する。外交日程を終えて最初に駆けつけてもこうした目で批判するのだ。加計疑惑についても「加計さんが友人だから面倒を見ちゃいましたとは言えない」と、名誉毀損すれすれの表現で安倍との関わりを暗示する。


前宮城県知事浅野史郎は挙げ足取りの名人だ。何を言っても揚げ足を取る。挙げ足取りをし過ぎて訴訟事件まで招きそうになった。浅野は7月25日放送の「情報ライブミヤネ屋」で美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が民進党の大西健介、蓮舫らに総額1000万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした裁判についてコメント「高須クリニックを悪徳と言っても事実だから名誉毀損にならない」という発言をした。高須は浅野の発言に警告「提訴する」と息巻いた。結局ミヤネ屋は番組中で公開謝罪した。このレベルの輩がコメンテーターなる存在なのだ。


例えば安倍が秋葉原で「こんな人たちに負けるわけには行かない」という発言を「秋葉原舌禍事件」に仕立て上げてしまったのはコメンテーターらだ。安倍は大音響のスピーカーでがなり立てて選挙演説を妨害する極左暴力集団中核派のメンバーらを指して「こんな人たち」と発言したのだが、コメンテーターらは、連日取り上げてさも一般有権者に対する非難のように仕立て上げた。都議選に致命的な打撃となったのは言うまでもない。フェークニュースを作り上げる印象操作をコメンテーターらはこともなくやり遂げるのだ。それにしても警察当局は大音響の選挙妨害を野放しにしてなぜ取り締まらないのか。怠慢の極みだ。


こうした野放図なコメンテーターらの言いたい放題の発言が、この国を再び全体主義国家に誘導しないかと筆者は心配する。作用には必ず反作用が生ずるのが政治力学の世界である。それを食い止める為の法的措置は既にほどこされている。放送法および電波法に違反した場合には電波法第76条を根拠とした無線局の運用停止や免許の停止・取り消しなどを行うことができると規定されているのだ。


過去に椿事件(1993年)がある。当時テレビ朝日の取締役報道局長であった椿貞良が民放連の会合で「自民党政権の存続を絶対に阻止して、なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」と発言、テレビ朝日は免停寸前にまでいった。しかし、こうした感情が現在のテレビ朝日やTBSにも連綿と受け継がれている感じは濃厚だ。
 

このような規制は新聞にはない。その理由は新聞は読者の“選択”に委ねられており、自らの考えに合致しなければ購読しなければよいからだ。逆に民放は否応なしに視聴者を“洗脳”してしまうほどの影響力を持っている。
 

最近のコメンテーターらの反安倍の言動も、報道に関しては一方的で偏った報道を禁ずる放送法違反の色彩が色濃く浮き出ている。解散・総選挙が接近する中でこのような民放の意図的な反自民戦略を看過、野放しすれば、いずれは反動が生ずる。報道の自由を毀損するような全体主義的な反動は生じさせてはならない。


政府自民党は、悪名高き戦前の検閲の繰り返しのような対応をしてはならない。内調などが番組内容を掌握して、民間有識者らによる組織に提示し、同組織ががチェックして、あまりにひどいものは法的な対応を勧告するようなシステムを作ってはどうか。そうでもしなければ、民放はますますつけあがるだけだ。

           <今朝のニュース解説から抜粋>

◎俳談

【水鉄砲・水遊び】

蒙古斑狙ひて撃ちし水鉄砲    産経俳壇
蒙古斑はモンゴロイドのあかし。日本人は99%にある。庭先できゃっきゃっと逃げる子に水鉄砲。しまいにはホースでかけたりたりして。

これが
兄妹のあれが別れか水遊び    朝日俳談
となると、突然物語性が開ける。俳句はその空想と解釈を読者に委ねる部分が大きい。

        <俳談>     (政治評論家)        

2017年07月28日

◆安倍は持ち直すが民進はメルトダウン

杉浦 正章



ダブル辞任がもたらす衝撃度
 

小池新党が政局のカギ
 

いやはや稲田・蓮舫のダブル辞任とは恐れ入った。二度にわたって辞任の解説を書く手間が省けてありがたいが、このテーマは駆け出し政治記者たちと異なり、老練な評論家らしく大きな俯瞰図から描かなければならない。だから難しい。


まず辞任劇が首相・安倍晋三に痛手か、民進党に痛手かと分かりやすくとらえる。そうすると、見えてくるのが民進党の断末魔の光景だ。対照的に安倍は支持率にはマイナス要素だがしょせんは一閣僚の辞任だ。閣僚が辞任して首相がその責任を取って辞めるなどということは古今東西聞いたことがない。おまけに、民進党は原発で言えばメルトダウン・炉心溶融の段階に入った。もう崩壊しか待っていないかのように見える。


政治論としては安倍はこの野党第一党の崩壊過程をチャンスととらえ、秋以降衆院解散という伝家の宝刀を抜く勝負に出ることが出来る。小池百合子の出方が政治を左右するポイントの一つとなる。
 

それにつけても蓮舫は自ら記者会見で認めたように攻撃型であって、政治家としての総合的な判断に疎い。指導力などかけらも感じられない政治家であった。都議選で2議席減のたったの5議席という大惨敗の責任をとらずに済むと考えたのが甘い。大きな読み違いだ。最初は幹事長・野田佳彦だけの首を切って逃げようと試みたが、甘かった。党内の大反発を受けてやっと自分の置かれている立場を理解するに至ったのだ。


背景にあるのは社会党ー民主党ー民進党と、だましだましで維持してきた政党としての賞味期限が完全に切れたということだろう。とりわけ民主党政権時代の「2馬鹿1利口首相」への国民の反発と落胆が、いくら拭っても拭いきれない汚点となって作用し続けているのだ。ちなみに1利口とは野田だ。
 

一方で安倍は内閣支持率の急落という事態に直面しているが、今後政権を維持するだけで支持率上昇に“活用”できる内政・外交・安保上の課題が山積している。折から北の“馬鹿大将”が、安倍の窮地を救うかのようにICBM 発射の準備を整え、発射しようとしている。1回発射すれば安倍の支持率は数%上昇する。核実験をすればさらに数%上昇する。国民は身の危険を感じて初めて、やはり安倍でなければ対応できない安保上の課題があることが分かるのだ。


野党と左傾メディアが結託したカケだのモリだのの支持率引き下ろし工作より、直面する自らの生命の危機にやっと気付くのだ。衆愚というのはそうしたものなのだ。経済でもアベノミクスの成功で有効求人倍率が何と東京で2倍、地方でも1.5倍前後という状況にあるありがたさにもやがては気付くだろう。就職したいものには全てに職があるなどという状況は、歴代政権でも、世界的に見てもまれであり、財界を敵に回した民主党政権ではあり得ない数字であった。したがって内閣支持率も長い目で見れば上向きとなるだろう。
 

一方で5〜7%と低迷している民進党支持率が上向くかと言えば難しいだろう。蓮舫に代わって代表になり得る人物は前原誠司と枝野幸男だろうが、前原は党内右派だが線が細い。過去に民主党代表を偽メール事件で辞めており、外国人の献金問題で外相を辞任した。一方、枝野は顔が憎々しげで支持率を上げるようなタイプではない。悪名高き革マルの根城となっている東労組などとの交流も過去にあり、これについて安倍は、「鳩山由紀夫内閣の時に、JR総連やJR東労組について革マル派活動家が相当浸透しているとの答弁書を、枝野氏が行政刷新担当相として署名している」、などと指摘している。答弁書は枝野にとって身の証であったかのようだ。


左右どちらが代表になるかだが、前原がなった方が民進党としてはいいのだろう。枝野になれば攻撃材料がありすぎて自民党を喜ばす。若手からは幹事長代理玉木雄一郎を推す声もあるが、玉木はかつて前原グループに所属しており、前原の支援に回る可能性もある。玉木は悪名高き獣医師連盟から100万円の献金を受け取っており、そもそも加計追及の先頭に立てる人物ではない。前原なら共産党との選挙共闘を断ち切るだろうが、枝野は進めるだろう。


まるで難破船からネズミが逃げ出すように、民進党から離党者が続出している。やがて「離党ドミノ」へとつながりかねない状況でもある。民進党内で一るの望みとしてささやかれているのは、小池百合子が新党を作り「国民ファーストの会」などと称して国政進出を決断した場合に、これと連携するか、大挙してなだれ込むかなどが語られているのだ。しかし当面を糊塗する愚策だろうと思う。第一小池にとってはゾンビに抱きつかれるようで、迷惑な話だろう。要するに民進党は八方塞がりということだ。自民党の受け皿になることなど逆立ちしても出来ない。
 

一方自民党内は改造人事を前にして干されてはたまらぬと、表だった反安倍の動きは台頭していない。安倍は来月早々の改造人事で新規まき直しをはかり、今秋以降解散のチャンスをうかがうことになろう。民進党の崩壊現象は自民党を有利に導くことになるが、小池新党が登場すれば打撃を被る可能生はある。しかし、現在の293議席は取り過ぎだ。取り過ぎた結果三流若手議員の不祥事が頻発して、党のたがが外れたような印象を持たれている。昔田中角栄が沖縄返還選挙後に「300議席は取り過ぎた」と漏らしたことがあったが、次期衆院選では260から70台に乗れば十分とみた方がよい。党内が締まるのだ。


いずれにしても改造から解散に至るまでは安倍長期政権にとっての正念場だ。それにつけても安倍は女を見る目がない。辞任した閣僚6人のうち3人が女だ。

            <今朝のニュース解説から抜粋>


◎俳談

【俳句の擬人化】
◆小隼一直線なり一途なり     産経俳壇一席
 擬人法とは、植物や動物や自然などを人に見立てて表現することだ。例えば、鳥が笑う、花が泣く、などといったもの。初心者のうちはついつい使いたがるが、陳腐の極みであることに早く気付いた方がいい。駄句のことを月並み句というが、まずその部類に落ちてしまう。掲句は小隼(ハヤブサ)が一途だと言っている。小隼を己に見立てた。擬人法を使っているから、悪い句であるとは一概には言えない例として挙げた。擬人法は難易度が高く、成功すると良い句になる。

◆海に出て木枯(こがらし)帰るところなし 山口誓子
は木枯らしが帰るところがないと言っているが、これは特攻隊で散った若者を暗喩(あんゆ)で表現しているのだ。しかし、初心者はまず写生から始めるのが無難だ。

       <俳談>     (政治評論家)

2017年07月25日

◆文科省は解体的出直しをするしかない

杉浦 正章



前川とメディア結託で政局化を狙う
 

閉会中審査は平行線
 

左傾メディアは朝日がリードして、「疑惑が強まった」としか報道をしないだろうと予言したとおり、朝日の25日付朝刊の見出しは閉会中審査について「数々の疑念残ったまま」だそうだ。もう見る前から見出しが分かる。はっきり言って首相の前文科事務次官前川喜平の言い分と、全面否定する首相補佐官和泉洋人の主張は平行線をたどった。


いったん「ある」と主張したものを「ない」と否定することは“悪魔の証明”であり、不可能とされるが、あると主張する方に特定の「意図」があるかどうかによって判断することは可能であろう。それでは前川の「意図」はどこにあったかといえば、事態の政局化である。繰り返される前川発言が安倍内閣の信用度を傷つけ、内閣支持率を急降下させたのは紛れもない事実であり、24日の衆院予算委閉会中審査は、前川にとってそれをダメ押しする位置づけであったと言えよう。左傾メディアと“結託”しているのは言うまでもない。
 

これに待ったをかけたのが和泉であった。前川は例によって和泉が「総理は自分の口から言えないから私が言う」と述べたと主張し、「これは加計のことと確信した」と言明した。加計学院獣医学部の今治市への早期開学の手続きを進めるよう迫られたという主張である。この表現から見れば紛れもなく、印象によって事態を操作しようとする意識が濃厚だ。裁判の場では弁護士が裁判長に苦情を呈する場面であろう。和泉は「そういう極端な表現をしていれば記憶があるが、全く記憶がない。言っていない」と全面否定した。どちらを信ずるかの判断には材料がまだ足りない。
 

その判断材料として第一に考慮されるべきは、前川の「狙い」である。文科省は昨年来天下り問題が白日の下に露呈されて、前川は責任を取って辞任せざるを得なくなった。発言の根底にはその辞任劇への「意趣返し」があるとしか思えない。もともと前川は文科省が52年間もの間獣医学部新設を認めず、既得権を擁護したい獣医学会との癒着の構図で愛媛県の申請を拒否し続けてきた路線の継続を内心考えていたのだ。これは官邸主導の岩盤規制突破の方針と真っ向からぶつかる性格のものであった。
 

しかし、最大の問題は前川が次官在職中に一切反対の声を上げなかった事である。前川は辞任後一部マスコミの動きが反安倍へと流れるのを見て、政権の攻撃に取りかかったのだ。邪道の意趣返しであり、そこにはずる賢い人間性しか感じられない。次官を首になって失うものがなくなった者の開き直りでもある。


この前川の動きを見て、一部文部官僚も戦後聞いたこともないような「官僚による政権降ろし」の動きを開始し、疑惑のメモ類をマスコミにリークし始めた。漏れれば安倍を窮地に陥れることになることを知っての上の行為である。こうして左傾メディアが音頭を取り、前川と一部文部官僚の結託の構図が出来上がったのだ。既得権益が失われることに危惧を抱いた獣医師会と、国益そっちのけで省益が狭められることを恐れた文科省が、岩盤規制の突破という国民にとっての至上課題とかけ離れた場所でうごめいたのだ。


問題は日本国民は愚民だと思いたくないが、そこに国民の目が届かず、朝日、毎日、TBS、テレビ朝日などの反政権マスコミの“誘導”のままに支持率を低下させ安倍批判の傾向を見せていることだ。
 

前愛媛県知事加戸守行が文科省のあまりの体たらくについて「橋下徹前大阪市長だったら文科省解体を唱える」とあきれていたが、3流文科官僚の度しがたさはいかんともしがたい。自民党内にも行政改革推進本部長河野太郎のように文科省解体論も台頭している。河野は「文部科学省は、解体して国の教育行政をスリム化すべきだ。初等中等教育は、財源とともに地方自治体へ移行させる。また、高校についても、都道府県に委譲する。大学については、国が管轄するしかないが、文科省からの現役出向は禁じて、本当に必要ならば出向ではなく転籍させる。現在のように、文科省にお伺いを立てなければならないようなシステムは壊し、国立大学法人化したときに目指した原点に立ち返るべきだ」と主張している。この際時期を見て腐れ切った文科省を解体して新たな教育行政の組織を打ち立てる時かも知れない。
 

安倍は支持率低下などに臆することはない。党内野党は少数いるが、何時の世にもこうした輩は存在する。自民党の大勢は安倍を支持している。24日の閉会中審査を見る限り、民新、共産両党も追及の種は尽きた。安倍は内閣改造を断行して、重厚実務型新体制で新規まき直しを展開すべきだ。トランプの真似をせよとは言わないが、どの国も政権というものは、人事を繰り返して体制を強化してゆくものだ。


我が国を取り巻く状況を見れば、北朝鮮が核ミサイルの“仕上げ”段階に突入し、中国が陰に陽に北の政権を支持し続けるという、ゆゆしき事態が生じている。極東における戦略上のパラダイムシフトが起きているのだ。ノーテンキの左傾マスコミや野党が作り上げた加計疑惑のぬかるみに足を取られている時ではあるまい。安倍が率先して日米韓豪印など主要国による「東京会議」を開催して対策を練ってはどうか。

                <今朝のニュース解説から抜粋>

 
◎俳談
【女性観察句】

◆泳ぎ初めパンツに縫いし守り札  東京俳壇3席
 昔はプールなどないから、もっぱら川で泳いだ。田んぼの間を流れている川だから時々馬糞も流れていた。そんなことは気にも留めないのがガキ大将で、頼もしいあんちゃんだった。母親は心配して海水パンツに守り札を縫い付けてくれた。初めての川泳ぎの時は背が立たないにもかかわらず飛び込んで、溺れてしこたま水を飲んだ。ガキ大将がすぐ助けてくれた。
 
学生時代は東京プリンスホテルのプールによく行った。昔はアランドロンに似ていたから、ビギニの女性が「火貸して」と寄って来た。ロンソンのライターでつけてやったりした。観察していたら最初は髪を濡らしたくないのか平泳ぎだったが、濡れてしまうと観念したようにクロールになった。

◆髪濡れてよりクロールで泳ぐかな  産経俳壇入選
 これも一種の観察句。女性観察の句だ

    <俳談>     (政治評論家)

2017年07月22日

◆俳談

(杉浦 正章 (政治評論家) 7月22日) 
  


【さりげない時事句】

◆冷房を贅沢として老いるかな      読売俳壇1席
 早くも冷房の季節が巡ってきた。最近は毎日冷房だ。年をとると暑さ寒さが体にこたえるので、冷暖房はきちんと入れている。これは去年節約論議が激しいので、作ってみたものだが、時期的に新聞の選者の感性と一致した。選者はさりげない時事句ととらえてくれたのだろう。

◆丈夫なり妻と昭和の扇風機       毎日年間俳壇賞
 これもさりげなく節電に触れている。時事句はニュース性を持たせてはならない。持たせた途端に軽くなる。

2017年07月21日

◆超低空飛行のトランプ政権半年

杉浦 正章

 

極東“金縛りの構図”に打つ手なし
 

本人は4年後の再選へ資金集め
 

就任以来半年のトランプ政権における無策ぶりは極東情勢を見れば明白だ。オバマ政権のレガシー(政治的遺産)を次々と壊したトランプは、北朝鮮問題でもオバマ政権の「戦略的忍耐」と決別し、圧力強化にかじを切ったはずであった。しかし朝鮮半島を取り囲んでいた空母「カール・ビンソン」と「ロナルド・レーガン」はいつの間にか姿を消した。「もともと訓練のため」というのがその理由であるが、首をすくめていた金正恩は大喜びするかのように4日にICBM「火星14号」を発射した。そして「今後米国には大小の贈り物を贈り続ける」とトランプをなめきった方針を明らかにした。トランプは金にまるで猿の尻笑いをされているかのようである。


金正恩は米国がICBMとならんでレッドラインとしてきた核実験の準備も着々と整えており、その傍若無人ぶりは佳境に達している。中国も北朝鮮を自らの「属国」で、対米防波堤であるかのような位置づけを鮮明化させ、金を野放しにしている。こうしてトランプの対北政策はデッドロックに乗り上げた形である。
 

トランプは金を「この男は他にやることがないのか」とお手上げのような状態だが、金にしてみればトランプの無策ぶりをあざ笑いたいところだろう。トランプはオバマの批判など出来ない状況であろう。


就任当初は勇ましかった。習近平との会談に合わせてシリアに巡航ミサイルを打ち込み、習の度肝を抜いた上で、対北制裁圧力を求めたのだ。トランプは「中国がやらなければ米国がやる」と勢いづいたものだ。習は最初のうちはトランプの強硬方針に屈するかのごとく、石炭の輸入を一年間凍結するなど対北制裁に乗り出すかに見えた。しかし、その後は逆に北を勢いづかせるかのような貿易量の増加である。


1-3月期の北からの対中貿易は37.4%も増加している。中国と北の貿易は“だだ漏れ”状態なのであり、平壌は好景気を満喫しているという。G20におけるトランプとの会談で習は「中国は対話と協議に基づく問題の解決を主張している」と言いきって、トランプの強硬姿勢を軽くいなしている。
 

要するに習も金もトランプの足元を見ているのである。その背景には極東に確立しつつある戦略的な構図がある。要するに金正恩が核ミサイルに磨きをかけ、東京とソウルを人質に取って、どう喝外交を繰り返し、中国はこれを陰に陽に助長するという構図である。これに対して米国連大使のヘイリーは、「やむを得なければ軍事力を行使する用意がある」としているが、米国防長官マティスは、北朝鮮が戦争を挑発する以外、「戦争はありえない」という立場である。


もちろんマティスは東京に核ミサイルが飛来して爆発すれば、北に壊滅的な報復をしても戦略的には敗北を意味することを知っているからだ。この動くに動けない「極東金縛りの構図」を、トランプは打開する策を持っていないかのようである。逆に言えば就任半年かけてオバマの「戦略的忍耐」の意味が分かったのだろう。
 

こうしてトランプの半年間は環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、パリ協定からの離脱だけは大統領令で実施に移したが、その他の公約は議会の反対にあって大きく頓挫している。オバマケアに代わるる新たな医療保険制度は挫折して内政上のつまずきをみせた。国境にメキシコの資金で壁を作る構想、法人税削減、シリア内戦の終結などは全くめどが立っていない。


対メディア関係も最悪の状況であり、トランプや長男はツイッターなどを通じてCNN戦闘機撃墜やCNNとの格闘など子供だましの映像を放出している。新たにロシア疑惑で登場した長男のジュニアは「ばかの見本」 と国民の間で評判が悪い。
 

政権の基盤になる議会承認人事も全く進展していない。高級官僚569ポストのうち埋まっているのはたったの48であり、如何にトランプ陣営の政権運営能力が欠落しているかの証拠となっている。こうした中で共和党内には来年の中間選挙を戦えるのかという危機感が生じている。政党支持率も民主党が上向きに転じており、共和党の苦戦は必至と予想されている。


4年後の大統領選挙に向けて米政界は動き始めているが、報道によると7月14日に開催された米国全国知事会で会議の議長を務めたバージニア州知事のテリー・マコーリフは「2020年の大統領選挙で誰が候補になるのか大きなトピックスだったが、民主党の知事からも、共和党の知事からもトランプ大統領の名前は一度も出てこなかった。誰一人、トランプ大統領について語ろうとしなかった」と、述べたという。
 

大統領に就任して半年で早くも無視されているような状況だが、本人は全く意に介していない。それどころか何と4年後の大統領選に向けて資金集めを開始しているのだ。就任後100日で数百万ドルを集め、4-6月には800万ドルを集めている。この男の権力欲は飽くことを知らぬものがある。


しかし、トランプとメディアの戦いはまだ端緒に就いたばかりだ。今後の焦点はロシアゲートを捜査している特別検察官ロバート・モラーが、どんな報告を公表するかにかかっている。場合によっては既に議会の一部で生じている弾劾の動きが大きなうねりとなる可能性もないとは言えまい。米政局から目が離せない状況が続く。

       <<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


◎俳談

【さりげない時事句】

◆冷房を贅沢として老いるかな  読売俳壇1席
 早くも冷房の季節が巡ってきた。最近は毎日冷房だ。年をとると暑さ寒さが体にこたえるので、冷暖房はきちんと入れている。これは去年節約論議が激しいので、作ってみたものだが、時期的に新聞の選者の感性と一致した。選者はさりげない時事句ととらえてくれたのだろう。
◆丈夫なり妻と昭和の扇風機  毎日年間俳壇賞
 これもさりげなく節電に触れている。時事句はニュース性を持たせてはならない。持たせた途端に軽くなる。

     <俳談>         (政治評論家)



2017年07月19日

◆実態は保守対左翼メディアのデスマッチだ

杉浦 正章



安易な妥協は保守票まで失う
 

安倍は改憲より解散時期が重要
 

この戦いは保守対革新のデスマッチととらえるべきだろう。安倍一強政権と左翼メディアを率いる朝日との戦いである。根底には左傾化メディアが秘密保護法、安保法制、テロ防止法と連続して敗北した“遺恨試合”がある。加計問題の力を借りて保守本命の安倍政権を揺さぶる戦術とみるべきだろう。


これを自民党反安倍の「輩」は気付いていない。自民党はふんどしを締め直して、“左翼との戦い”に臨むべきなのだ。現状は都議選大敗のショックで安倍が軟化の気配を見せて追い込まれているように見えるが、来週24日にも行われる予算委閉会中審査で踏みとどまれるかがカギだ。首相・安倍晋三はよもや一地方選挙の敗北くらいで鷹から鳩に変貌しようとは思っていまい。変貌すれば、朝日が「許してくれる」とも思ってはいまい。朝日は嵩(かさ)にかかって掃討作戦に入るだけだ。逆に安易な柔軟路線は政権維持の核である保守票喪失につながると心得た方がよい。
 

これまでのところ安倍の考えは都議選の歴史的惨敗について「大変厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければならない。政権奪還した時の初心に立ち返り、全力を傾ける決意だ」として、政策の遂行で政権を立て直す考えを強調している。問題なのは自民党が突っぱねようとした閉会中審査を、安倍自身が開催する方向に舵を切ったことだ。これが安倍の“弱気”から出ているとすれば考えが甘いが、おそらくそうではあるまい。加計疑惑を徹底的に打ち消した上で改造を断行することしか政権を立て直す方策は無いと見ているのだろう。
 

しかし、安倍が閉会中審査で何を言おうと、左傾メディアは朝日がリードして、「疑惑が強まった」としか報道をしないだろう。サソリは刺すのであって、刺さない選択はないのだ。このデスマッチの根源は遠く第一次安倍政権まで遡る。朝日最大の弱点である慰安婦強制連行誤報問題の遠因は第一次安倍内閣が2007年に「政府発見の資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定したことにある。


朝日はこれをを無視し続けたが、第二次安倍政権になって無視の継続が極めて困難となった。この結果、14年になってついに朝日は慰安婦報道をめぐり、朝鮮人女性の強制連行の虚偽報道を認め、記事を取り消した。社長以下が陳謝の記者会見に臨んだ。安倍はその後「閣議決定は批判されたが、改めて間違っていなかったことが証明されたのではないか」と強調した。さらに「報道によって多くの人たちが悲しみ苦しむことになったのだから、そうした結果を招いたことへの自覚と責任感の下、常に検証を行うことが大切ではないか」とも述べた。


まさに第一次対朝日戦は安倍の圧勝に終わったかにみえた。しかし、安倍は14年に国会答弁で「安倍政権打倒は朝日の社是」と発言している。この発言は同社の元朝日新聞主筆の故・若宮啓文が、評論家から「朝日は安倍というといたずらに叩(たた)くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか」と聞かれて「できません。社是だからです」と答えたことに立脚している。
 

昨年11月のトランプとの初会談で、安倍はこう切り出した。「実はあなたと私には共通点がある」。怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」。これを聞いたトランプは右手の親指を突き立ててこう言った「俺も勝った!」と。意気投合した二人だが、トランプはCNNやNYTとの戦いが佳境に入っている。安倍も朝日との戦いは白熱化している。


こうした経緯の中で来週閉会中審査が開かれるが、繰り返すが朝日などは安倍が何を答弁しようと、自分の都合のよいようにしか報道しないだろう。すでに著しい先例がある。それは10日に開かれた閉会中審査における重要発言の無視だ。学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐって前愛媛県知事加戸守行は「ゆがめられた行政が正された」と文科省の過去の対応を批判した。しかしこの発言を、朝日と毎日は無視して報じなかった。まさに報道による印象操作である。
 

まだある、普段は一行も報じない時事通信の世論調査を15日付朝刊で「時事の調査で内閣支持率が29.9%になった」と報じた。しかし時事の調査は、各社の調査に比べて普段から全体的に低めの数字が出るのが特色であり、時には10ポイントくらい低いケースもある。時事の29.9%は報道各社の30%後半であるとみた方がよいのだ。朝日はそんなことは百も承知で、支持率が紛れもなく20%台に落ちたとの印象操作を展開したのだ。
 

朝日および毎日、TBS、テレビ朝日は冒頭挙げた秘密保護法、安保法制、テロ防止法成立への意趣返しに何が何でも内閣支持率を低下させて保守の牙城を崩壊させようとしているのだ。左翼がよく使う陰険なる手段による報復である。正面から攻めずに加計問題のような実態のない脇筋の些細な問題から攻めるのだ。従って安倍は、“軟化”したからといって追及の手が緩むと考えたら甘い。
 

この場をしのぐには内閣改造も重要だが、秋以降通常国会に向けてチャンスを見て解散を断行することしかない。解散を断行した場合には改憲勢力で3分の2議席を維持出来るかどうかは極めて難しいとみなければなるまい。しかし、改憲より優先すべきは政権の継続であり、来年の暮れの解散では確実に三木政権と同様の追い込まれ解散となる。勝負の解散で政権を維持し、来年総裁3選を実現すれば2021年までの間に再度の解散で3分の2を獲得することも不可能ではないのだ。

          <今朝のニュース解説から抜粋>


◎俳談
【ニュースは詠まない】

◆恐ろしき昭和を見たり昼寝醒(ざめ)
 
俳句に時事詠(えい)というジャンルがある。そのときのニュースを詠むのだが、ほとんど成功しないのはなぜか。それは地名を読み込むのと同じでニュースの印象が強すぎて、詩情を壊すからだ。加えて俳句は永遠なる感情を詠むものであり、一過性の感情を詠まない。
 
これと異なり短歌は時事詠を大切にする、俳句より長いから他の言葉で詩情を述べることが可能だからだ。従って俳句で「津波」「福島」はまず成功しない。しかしさすがにプロの句はいい物がある。

◆いくさにもつなみにも生き夕端居(ゆうはしい)  小原啄葉
成功したのは「つなみ」ではなく夕涼みをしている老人を詠んだからだ。

◆命あるものは沈みて冬の水  片山由美子
いつまでも変わらない万古不易を詠んで津波を思わせるからだ。
 掲句「恐ろしき」は時事詠で、戦争、原爆という昭和の有様をよんだ。朝日俳壇1席だ。

    <俳談>       (政治評論家) 
 

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