早川 昭三
大阪市では4月27日に、「大阪市地域に於ける特別区の設置に関する法律」に基づき、5月17日に「大阪都構想」の賛否を問う「住民投票」が告示される。これにより、大阪市では「大阪都構想」を巡る議論が過熱し出す。
つまり、「住民投票」とは、大阪府と大阪市を再編して二重行政の無駄をなくし、大阪市に「5特別区」をつくることで、大都市として発展の道を拓くことに賛否を問うもの。住民の賛意を目指すのが、大阪維新の会代表の橋下徹市長の狙いだ。
「大阪都構想」が、橋下徹市長が目指すように「大阪府と大阪市の再編」によって、大阪市民、府民のメリットが本当に向上するかどうかの賛否の判断が、集中している。しかし、橋下氏の説明を聴いた市民からは、「分かり難い」という声を多く聞く。
橋下徹市長は、「特別区設置協定書」をまとめ、その内容の「住民説明会」を、4月14日から26日まで13日連日、午前・午後・夜間の3回、39会場で開催し説明している。勿論維新の会議員も随行。選挙運動なみの積極活動だ。
この「説明会」で橋下氏は、
<「知事の仕事は、大阪全体の仕事を行うこと。一方市長の仕事は、医療・福祉・教育など住民の身近な問題を解決し、きめ細かなサービスをすることはない。しかし市長はこうした本来の仕事以外に、鉄道・高速道路などの知事と同じ仕事をしている。
府と市が大きな「予算」で、似たような「仕事」をしている。この重複で「莫大な無駄を生んでいる。
「どうにかしてこの無駄を止めたい」、「その金を医療・福祉・教育などの住民サービスや、大都市・大阪の発展の為につかいたい」。その思いが「協定書」の原点だ。
そして35万人から70万人までの「5つの特別区」を再編することが、お金の話に加えて大阪が抱える問題を根本的に解決し、次世代の為に新しい大阪を創り上げる唯一の切り札」>と説明する。
筆者は、22日夜に大阪市淀川区で開かれた「都構想反対説明市民集会」に行ってきた。講演者には、野党2党3議員と講師として政令都市・竹山修身堺市長も特別参加し、画像を使っての「協定書の問題点」の説明と、住民投票に反対しようとの呼び掛けが行われた。
竹山堺市長は、先の市長選挙で維新の会を破り当選したが、如何に「都構想」が住民の利益を損ない、特に堺市では「豊かな文化財」を軽視していることに住民は不信を抱いており、「都構想」には賛成すべきではないと力説した。
この「市民集会」が終わった後、参加者の数人に個別に「説明会」での感想を伺ってみた。下記に記す。
<橋下氏が主張する、肝腎の大阪府・特別区に対する「財源の配分・財政の調整」「大阪市の財産の行方」「債務の取り扱い」段取りの「協定書」が、今説明されたが、この「再編」の仕組みは複雑すぎて、なかなか理解出来ない。
さらにややこしいのは、法律に基づいて、信義舞台の中心とする「大阪府と特別区の連絡調整の場」として、第3者機関の「大阪府・特別区協議会」を設営する方針を固めているそうだが、二重行政解体が基本計画の基本だったら、どうして解体した組織に口を挟む新機構を新設するのか。これはすべきではない。
正に、解体ではなく、三重行政機構化が新設されるといっていいだろう。しかもこの「特別区協議会」を牛耳るのは維新の会の狙に間違いない。>
とにかく「分からない都構想説明」と、住民が言うのはもっともだった。筆者も丁寧で詳細な「説明」を聴きながらも、「都構想協定書内容」は、流石にわかり難かった。説明会で「反対投票」への雰囲気が強まってきている様子が分かる。
話は前後するが、この「説明会」では、
<橋下市長が「二重行政の効果」を、当初年間4000億円と言っていたのが、実は大阪市役所の推計で年間1億円程度しかでないことが明らかにされた。訂正がないままだけに、まさに財政効果の見通しは「過ち」のままだ。
そのうえ、僅か1億円のために、大阪市から大阪府へ2200億円もの財源が、毎年「流出」されてしまうという。そうなると、市民にとっては、水道料金の値上げ、家庭ゴミ収集の有料化、保育料・保険料の値上げ・地下鉄敬老パスの廃止等なだは避けられないことになる。>ということだった。
参加者が、「住民投票」で「反対」に回ろうと思うのは、必至だったであろう。
東京のまねをして、大阪の繁栄など在り得るものではない。東京が発展しているのは、首都としての機能に加え、一極集中によるものであり、特別区設置(都区制度)とは無関係だ。
東京の特別区では、東京都に財源や権限が握られており、住民の声に応えるには限界があるので、「市」になりたがっているという。むしろ特別区設置(都区制度)は今や時代錯誤であり、「何故大阪で採用するのか?」の疑問が、東京の特別区長から上がっているという。
今や周辺市も巻き込みたい壮大な構想は、政令都市堺市も入らず、周辺自治体も参加することなく、単に大阪市を廃止・分割し5つの特別区を設置するだけのまさに陳腐そのもの。「都構想」は単なる「夢物語」となるべきではない。
「住民投票」の開催に賛成した公明も、「住民投票」では「反対」に回ることを決めて、「住民投票には反対しよう」と盛んに呼びかけている。勿論自民・民主・共産などの野党すべては「反対投票」することを決めている。
一方、連合大阪は、大阪市内で開催した「大阪都構想」をめぐるシンポジウムで、「市民サービスの低下を招きかない」として、反対運動を強めていく方針を確認している。連合大阪の山崎弦一会長は、大阪維新の会を念頭に、「市民サービスの低下を招きかねない欠陥商品なのに、耳あたりのいいかけ声と、反対する者へのどう喝で、それを覆い隠している」と批判している。
余談ながら、5月17日の「住民投票で賛成」が過半数を獲得して、仮に「大阪都構想」が実現しても、「大阪都」は行政の組み立てであって、「大阪都〇〇区」とは呼称しない。あくまで「大阪府〇〇区」となる。(大阪市都市局 総務企画担当)
大阪の呼称が「大阪都」になることだけを熱望している市民がいたら、ガッカリだろう。
告示日の27日から、5月17日の「住民投票」に向けて、大阪は「都構想賛否」が大いに盛り上がる。(了)