渡部 亮次郎
アメリカへ行くと、どういうわけか焼き魚とカレーライスが食べたくなっ たものだ。ところがアメリカ人はおしなべてカレーの匂いが大嫌いだそう で、どのレストランでもメニューには無い。
また魚を焼くにおいは人間を焼く匂いだといって厭がる。ロスアンジェル スでは、なんとか、ボイルで勘弁してくれないかといわれた。あれから何 十年、事情は変わったろうか。
先ごろ金沢市のレストランがNYのど真ん中マンハッタンにカレーライス の食堂を進出させたというニュースがあったが、大丈夫だろうかと思って しまう。客は日本人と何国人だろう。匂いが厭だと周囲から文句を付けら れないか。
1970年代の終わりごろからニューヨークでNHK特派員をしていた堀 徹 男君は元はといえば政治部の同僚だった。NYではメイン・ストリートの 五番街に程近いアパートで奥さんと2人暮らしだった。
この奥さんは10年くらい前、東京で急死されたが、早くにNHKを退職し た私だからネット・ワークが及ばず、とうとう葬儀に参列する事はできな かった。それが未だに気がかりであるぐらい、堀夫人には世話になったの である。
何を隠そう、NYでカレーライスを作って戴いたのである。下手をする と、アパートの管理組合に呼び出され、退去を命じられる危険を冒しての 「冒険」を強いたのである。
カレーソースを手軽に作るため、日本では市販の即席カレールーが使われ ている。製品としての粉末の即席カレールーはハウス食品が1926年に(商 品名・「ホームカレー粉」)、固形の即席カレールーは、エスビー食品が 1954年にそれぞれ日本で最初に製造した。
2004年度のカレールー(家庭用即席カレー)国内出荷額は676億円とさ れ、各社のシェアはハウス食品約61%、エスビー食品約28%、江崎グリコ約 10%と推計される(日本経済新聞社)寡占市場である。
しかしNYでは当時、そんな物はどこにも売っていない。堀夫人はどこを どう捜して私にカレーライスを作って下さったのだろうか。今では謎である。
いずれ話はワルドーフ・アストリア・ホテルに滞在中だった園田外務大臣 にばれた。「ナベしゃん、ワシも食いたかったとバイ」とこぼされた。
カレーライス 肉や野菜を、さまざまな香辛料をブレンドしてつくられた カレー粉で調味したカレーソースで煮こみ、米飯にかけて食べる料理。ラ イスカレーともいう。
カレーの語源は、ソースを意味するタミル語のカリだといわれている。も ともとはインド料理であるが、日本へは1859年(安政6)の開港以降イギリ スから伝えられたとされている。国産のカレー粉は1923年(大正12)山崎峯 次郎によりつくられ、発売された。
本場インドのカレーは粘り気がなく、また、ヨーロッパでは米飯は副えも のであるのに対し、日本では米飯が主で、かけるソースもとろみがある (小麦粉=ビタミンB1が多い)という日本独特のものとして発達した。
薬味に福神漬けやラッキョウを副えるのも日本特有である。固形の即席カ レーが1954年(昭和29)ヱスビー食品から初めて売り出されて以来、さまざ まな味の即席カレーが各社から発売され、カレーライスは家庭料理だけで なく、レストランなどのメニューでも定番となっている。
カレーソースに用いる主材料によって、ビーフカレー、ポークカレー、チ キンカレー、野菜カレーなどがある。関西と関東の食肉文化の違いから一 般的にカレーといえば関西では牛肉を使用したビーフカレーが、関東では 豚肉を使用したポークカレーが定番とされている
またカレーライスにカツをそえたカツカレーや、うどんにカレーソースを かけたカレーうどんといったものもある。
カレーライスが全国に広まることとなった経緯として「戦前、普段米を食 べることが少ない農家出身の兵士たちに白米を食べさせることになった海 軍だったが、当初カレーには英国式にパンを供していた。
しかし、これは概して不評だったため白米にカレーを載せたところ好評と なり、調理が手早く出来て肉と野菜の両方がとれるバランスのよい食事と してカレーライスを兵員食に採用した。
その後、除隊した兵士がこのカレーライスを広めたため、全国に知られる ことになった」という説がある。日本の海軍は英国から習得したものだか らである
ただし、陸軍が普及に貢献したとする説もある。いずれにせよ、日本にお いては軍隊がカレーの普及に大きな役割を果たしたとみられる。
日本以外の国のカレーライス
日本のカレーライスの原型となった料理は、世界中に文化的影響圏を広げ たイギリスの食文化のため、現在は世界中の多くの地域で見られる食文化 である。その国でカレーライスの食文化が定着した理由として、「イギリ スの影響」「戦前の日本の影響」「戦後の日本の影響」。
イギリス
日本にカレーライスを伝えた国とされるイギリスには、見た目や味が日本 のカレーライスと酷似した料理「curry and rice」が存在する。パブや学 生食堂で安い値段で気軽に食べられる点でも日本でのカレーライスと共通 する。
イギリスには多くのインド料理店が存在するが、それらの本格的なインド 料理とは別物の大衆料理として親しまれている。
香港
イギリスの統治を長く受けていた香港では、茶餐廳と呼ばれる喫茶レスト ランにカレーライスを揃えている店が少なくない。日本のものと比べる と、若干スープカレーに近い、さらっとしたものが多い。
ハワイ
明治初期から日本人移民の多かったハワイにおいてもカレーは日常食とし て普及しており、日本料理店のみならず大衆的なレストランや伝統的なハ ワイ料理を扱う店のメニューにもカレーライスの名前を見ることができる。
以前は日本人にとっては懐かしい昔ながらのライスカレーを供する店が大 半であったが、近年はタイやベトナムなど東南アジア系移民の増加や、日 本のチェーン店であるCoCo壱番屋の進出などによりさまざまなスタイルの カレーライスが食べられるようになってきた。
台湾
日本統治時代に日本人がカレーライス食べる習慣を持ち込んだとされてい る。そのため台湾では一般的なカレーライスをごく気軽に屋台や食堂など で昔から食べてきた。
「古典的なこれは薄口の黄色いスープに片栗粉などでとろみを付けてお り、日本の昭和24年頃から50年代にかけて食べられていた即席カレーの趣 を残している。
近年では本格的な日本風のカレーライスを提供するレストランも増加して おり、片栗粉でとろみを付けた「古典的な日式」は衰退している。
韓国
日本統治時代からの伝統として軍隊食などとして食されている。家庭で 作ったり大衆食堂で出されるカレーは、台湾の場合と同じく薄口の黄色が 強いカレーが多い。
キムパプ(酢を使わないご飯を用いた韓国風海苔巻き)にカレーをかけて 食べるなど日本では考えられないようなアレンジも存在する。
中国
洋食のひとつとして、ホテルなどでカレーを食べることができたが、一般 の中国人にはあまりなじみのない料理であった。
しかし最近は上海に日本資本のカレーショップも開店し、日本風のカレー ライスの人気も出て来ている。中国語では「珈竰」などと表記される。
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