渡部亮次郎
<内閣改造が政局にもたらす影響は「両刃の剣」とされ、過去の政権では寿命を縮めた「失敗例」も少なくない。>と以下の読売は指摘している。しかも首相は大規模な改造に前向きだ。仙谷氏の交代も考えているのではないかと受け止められている。危険を知らないのだ。
自民党時代、福田赳夫内閣で初代の官房長官だった園田直氏に聞いたことがある。「内閣改造で首相は何人ぐらいを候補者として挙げるのか」「ずばり80人だ」。私は30人ぐらいと予想していたので驚いたものだ。
実を言えば赳夫内閣発足後、1年経っての改造だったが、当の本人が足元をすくわれて官房長官を更迭され、ただ1人とはいえ横滑りで外務大臣にはなったが、更迭はよほどハラに据えかねたと見え、陰では露骨な反福田になって行った。
園田氏は何をしたか。昔からライバルだった田中角栄氏に急接近、大平正芳政権の樹立に尽力することになる。外務大臣としては懸案だった日中平和友好条約の締結に積極的だったので福田首相も油断していた。
じつは首相の首席秘書官をしていた長男康夫氏が度々私を呼び出して福田氏の総裁再選への園田氏の協力を求めたが、私は園田氏の動きの真実は絶対明らかにしなかった。
園田氏が田中角栄氏と会うのは必ず午前5時の田中邸。記者は一人も張っていなかったから秘密は守られた。田中氏への連絡役は、初めは政務次官(田中派)だったが次からは私と、相手は早坂茂三氏になった。
私は若い頃、田舎の警察周りを勤めた時、警察車庫のパトカー前に寝たことがある。それで実績を挙げても野田が、政治記者も試しにあのころ午前5時の田中邸を見張れば特種が取れたろう。
それで1年後の秋、マスコミの予想を大きく覆して総裁選は大平氏の大勝。赳夫氏は「天の声にもたまには変な声がある」と迷文句を吐いて官邸を後にした。
改造は80人に希望を持たせるが辞めてゆく20人には敵意を抱かせる。古狸は敵意に注意するが、初心者は希望だけを感じてしまって、その後のカジ取りを間違う。
菅氏にその危険を感じる。改造と聞いて近寄ってくる人の多いのに迷ってしまうのだ。飛んでもないチョンボ人事をやってしまったりする。
読売が報じたところに依れば、支持率低迷期に内閣改造を行なって失敗した例は幾つもある。新しいところでは、08年8月、福田康夫首相が伊吹文明幹事長を財務大臣に起用、後任の幹事長に麻生太郎氏を指名し、支持率は27%から41%に上がったものの30日後に退陣せざるを得なかった例。
その前の安倍内閣では官房長官に与謝野馨氏を起用するなどの改造をしたが結局は健康状態の悪化は食い止められず16日後に退陣した。
森喜朗内閣。2000年12月、行政改革相に橋本元首相を起用。支持率は若干回復したが、内閣は力尽き4ヵ月後に退陣を余儀なくされた。
改造は内閣の精力を補強する特効薬に見えて結局、命取りにもなり得るのだ。桑原、桑原。
<改造の風そわそわ、官房長官・法相…飛ぶ憶測
菅首相が来年の通常国会召集前に内閣改造を検討する考えを示したことで、民主党内がざわついてきた。内閣改造が政局にもたらす影響は「両刃の剣」とされ、過去の政権では寿命を縮めた「失敗例」も少なくない。
参院で問責決議が可決された仙谷官房長官や馬淵国土交通相の処遇や、仙谷氏が兼務を続ける法相人事などを含め、様々な観測が飛び交い始めた。
ただ、首相は29日から年末年始の休暇に入った。この日昼には首相公邸に江田五月前参院議長ら菅グループの所属議員約30人を招き、約3時間にわたって懇談。
出席者によると、首相は今後の政権運営について、「いろいろ長期戦になる。一個一個片づけていく。まずは小沢さんの問題だ」と述べ、小沢一郎元代表の国会招致問題の早期決着に最優先で取り組む考えを示した。
出席者の一人は「首相は大規模な改造に前向きだ。仙谷氏の交代も考えているのではないか」と受け止めた。>
(読売新聞 12月30日(木)13時59分配信)