アメリカをよく知る知人たちは落ち目の三度笠GM(ゼネラルモーターズ)こそがアメリカの象徴だという。マッカーサーの作った日本国憲法では日本の象徴は天皇陛下である。するとGMはEmperorなのか。米国のEmperorが薨去遊ばすというのでは大変だ。
ケチな個人感情を言えば大気汚染、地球温暖化、捕鯨反対の影の主役こそGMだった。そのくせ、小回りの利く日本を軽く見て、馬鹿でかいガソリン撒布車ばかりを作り続けて、遂にといおうか、やっとといおうかアゴを出した。『驕れる者 久しからず』と言う諺はアメリカの経営者哲学には存在しない。
2007年の自動車販売台数は、トヨタ自動車グループと僅差で世界一であったが、ガソリン価格の高騰、サブプライムローン問題の顕在化の影響で、北米での売上が大きく落ち込んだ。
その結果、2007年度決算で3兆円という途方もない額の赤字を生むこととなった。また、2008年上半期では販売台数世界一の座も明け渡している。
巨額の年金・退職者医療の債務を抱え2008年現在6兆円を超える債務超過に陥っている。株主配当も停止されており、金融市場から債券発行による資金調達も困難な状態になっている。環境対応車開発を名目にアメリカ政府に低利融資を求めている。
しかし、2008年11月2日のニューヨークタイムズは、「財務省がクライスラーとの合併に必要なリストラ費用100億ドルを2008年金融安定化法から支出することを10月31日に拒否した」と報じた。
2008年10月のGMの新車販売台数が前年同月比45%減になる状況での決定である。他はフォード30%、トヨタ23%、本田25%、日産33%、クライスラー35%減であった。
2008年9月末7―9月期の売上高は前年同期比13%減の379.41億ドル、債務超過額は599億ドルで、6月末の570億ドルよりさらに拡大した。手元資金は6月末の210億ドルから9月末に約160億ドルに減少し、09年上半期には事業継続が難しくなるだろうと見られる。クライスラーとの合併協議を中断した。
格付け会社S&PはB-からCCC+に格下げし、見通しもネガティブとした。
私に強く印象に残るのはオーストリア生まれの経営学者・社会学者ピーター・ドラッカーがGMを研究した好意的な著書「会社という概念」(1946)で書かれた「戦後期には組織・事業・目標を見直す必要がある」という穏健な記述に対してGM内部が憤激で応じたことである。
「GMは世界一なのだから、批判はもってのほか」という理屈。だがドラッガーはGMの最上層部(「14階」)には自動車産業運営の知識と経験と能力がないとも書いている。
また、著名なジャーナリストのデビッド・ハルバースタムは『覇者の驕り―自動車・男たちの産業史』(原著1986年)で、GMをはじめとするビッグスリーが驕り高ぶり、その結果として日本車の攻勢に徐々に敗れていく姿と、それでも改革を拒む姿勢をいきいきと描いている。
学者や識者と言った人たちは企業や経営を長い目で見ているのに、アメリカの経理者は四半期(3ヶ月)でしか判断しないのである。だから学者は将来の倒産が予測できて対策も助言できるが、経営者は目先の利益しか見えないから言う事を聞かない。
残る提携関係の現状
トヨタ自動車―カリフォルニア州での合弁事業(NUMMI)、燃料電池車の開発など。
BMW、ダイムラー ハイブリッドシステム「2モードハイブリッド」の3社共同開発など。
既に手を切った関連企業
富士重工業→資本提携解消。保有株式の一部をトヨタ自動車へ売却。
フィアット(イタリア)→資本提携解消
いすゞ自動車→資本提携解消(のち保有株式の一部を伊藤忠と三菱商事が取得)。ただし業務提携関係は維持。
出典;フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』2008・11・09