2006年8月、京大の山中伸也教授が、人の皮膚から採った細胞に4つの遺伝
子を入れて培養したら、万能細胞ができた。iPS細胞=人工多能性幹細胞
と言うそうだ。
万能細胞から、神経細胞、心臓細胞、臓器細胞、血液細胞、軟骨などが作
られ糖尿病や心臓病に使えるとされている。
自分の皮膚から採った細胞だから、自分の体に入れても拒否反応がない。
ノーベル賞だという声が上がって本当に受賞した。細胞や臓器の再生へ、
万能細胞の研究競争が激化するだろう。
山中教授は、何年かしたら、人工細胞ができると言う。激しい競争がある
からだ。
しかし、4つの遺伝子は、癌細胞から採っているので、人に応用すると思
わぬ事故になる可能性があると言う。
山中氏は、神戸大→大阪市立大→カリフォルニア大と研究を続けて、世界初
の万能細胞を作った。
人工細胞は、糖尿病、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脊髄損傷(せきず
いそんしょう)などの治療に使える。
http://www2.ocn.ne.jp/~norikazu/Epageh3.htm
このうち糖尿病治療への展望について専門家に聞いて見ると、うまくすれ
ばインスリン注射が要らなくなる可能性があるという明るい見通しがある
らしい。
糖尿病は、食べたものを血肉にするホルモン「インスリン」が膵臓から十
分に出てこないため、溢れた栄養(ブドウ糖)が血管を内部から攻撃した
末に小便に混じって出る病気である。小便が甘くなるから糖尿病。
糖尿病それ自体ではなかなか死なないが、内部から血管を糖分で攻撃され
ると、脳梗塞、心筋梗塞、盲目、足の切断、癌多発といった
「合併症」を招いて、寿命より10年は早く死ぬ。
栃木県にある自治医科大学内分泌代謝科の石橋俊教授によると、駄目に
なった膵臓や膵頭を何らかの方法で丈夫なものを移植すれば問題は一挙に
解決し、インスリン注射も要らなくなる。
しかし日本ではドナーが不足し、膵頭を調整する試薬の供給がストップし
たりして、こうした治療を受ける患者は2桁どまりだ。
そこで注目されたのが、インスリン「製造工場」ともいえる膵ベーター細
胞の再生治療だったがヒトの受精卵の仕様に付随する倫理的制約や拒否反
応が壁になって進んでいなかった。
そこへ登場したのが山中教授の万能細胞。ヒトES細胞から膵ベーター細胞
を作る研究は壁に突き当たったが、山中教授のiPS細胞なら、自分の皮膚
から出来た物だから拒否反応も倫理的な問題も起きない。
問題は今回できた4つの遺伝子が、がん細胞からとっているので、人に応
用すると思わぬ事故になる可能性があることだ。石橋教授は「この問題が
解消されれば、実用化は意外に早いかも知れない」と言っている。
資料:(社)日本糖尿病協会関東甲信越地方連絡協議会機関紙「糖友
ニュース」91号(2008・7・1) 執筆 08・06・28