〜血液検査って、一体何がわかるのでしょうか?〜
血液は人間の体の隅々まで行き来し、栄養や要らなくなったものをあちらこちらに運んでいるわけですから、血液は体のいろんな部分の情報をもっているわけです。
血液検査をすることで、非常に多くのことがわかるようになってきました。ただし、これも体の部分によって、また病気によって血液に結果が出やすい場合と、とても出にくい、いやほとんど血液検査ではわからない病気もたくさんあります。
たとえば、体の動脈硬化の状態は血液検査ではほとんどわかりませんし、また胃や大腸に癌などのできものができているかどうかも、ほとんど分からないのが現状です(但し癌によっては腫瘍マーカーという血液検査で一部わかることがありますが、あくまで参考データと考えた方がいいくらいです)。
ですから、人間ドックや健康診断では血液検査とともに、血液でわかりにくい部分は胃のレントゲンなどの検査を組み合わせていくことが大事になるわけです。
肝臓はというと、血液にのせて体のあちこちに栄養分を送りつける中心的な存在ですので、肝臓の状態は血液検査でわかりやすいという特徴があります。
ただ、肝臓は働き者でとても多くの仕事をこなしていますから、肝臓の状態を表している血液検査も非常にたくさんあり、ひとつだけをみて状態を考えることはできません。
そこで私は、患者に肝臓の血液検査の説明をするときには、肝臓を緑の多い、川のきれいな山に例え、肝臓の病気を山火事に例えて説明しています。
アルブミンや血液凝固機能:緑(木々)の多さ、ビリルビン:川の透明度、GOT / GPT:山火事の火の大きさ、ヒアルロン酸:緑が無くなってみえてきた地肌の大きさ。アルブミン、凝固機能、ビリルビンという血液検査の組み合わせは、医師が肝臓の働きを評価するときによく使う組み合わせですし、ヒアルロン酸はどのくらい肝硬変に近付いているかを判断する指標です。
肝機能検査として有名なGOT / GPTは、実は肝臓の機能を表しているのでは無く、肝臓の病気の勢いを表しているということが分かっていただけるかと思います。
火の大きい(GPTの高い)山火事は、早く火の勢いを小さくしないといけませんが、その時点での肝臓の元気さ(働き)はまた、別なのです。
このことを踏まえて、一度血液検査を眺めていただけると視野が拡がるのでは?
大阪厚生年金病院