2020年08月09日

◆今月の法律コラム

川原 俊明  弁護士

 「業務委託契約下で働いているアナタへ」

 それって、本当に業務委託契約ですか?雇用契約じゃないの?
 「契約書に業務委託って書いてます!」とおっしゃるソコのアナタ
 ちょっと待ってくださ〜い!
 
 業務委託か雇用かは、契約書の文言よりも、
 労務提供の実態が重要なんです。
 雇用であれば、時間外手当、有給休暇、休業補償、解雇制限、
 労働保険等の法令による保護があるので、お得なことも多いんです。
 
 ちょっと、確認してみましょう!

 概念的には「使用・従属関係の有無」で区別されますが、
 抽象的で判りにくいので、とりあえず、
 以下をチェックしてみましょう。

 イエスなら、使用・従属関係が認められやすくなりますよ!

 ?業務の依頼・従事の指示等に対する「断る」自由がない
 ?業務遂行上の指揮監督の程度が強い
 ?業務遂行の場所と時間が決められている
 ?報酬が時間給や日給によって定められている
 ?業務遂行に必要な機材が相手方負担によって用意されている
 ?専属性がある(その相手方の仕事しかできない)

 「ひょっとすると、雇用かも?」というアナタは、
 専門家にご相談を! 

                    以上

2020年06月13日

◆今月の法律コラム

               川原 俊明  弁護士

 「雇用調整助成金」

 雇用調整助成金とは、景気後退等の経済上の理由により、
 事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない
 事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、
 雇用を維持した場合に、事業主に対して休業手当、
 賃金の一部を助成する制度です。

 厚生労働省は、新型コロナウィルス感染拡大を防止するため、
 令和2年4月1日から同年6月30日まで間、全国ですべての業種の
 事業主に対し、雇用調整助成金の特例措置を設けました。
 主な特例措置の内容は以下のとおりです。

 @ 生産指標(※1)要件の緩和
 (1ヵ月10%以上低下→5%以上低下で対象)、

 A 雇用量(※2)要件の撤廃
 (最近3ヵ月の雇用量が対前年比で増加していても対象)

 B クーリング期間の撤廃
 (前回支給満了日から1年を経過していない場合でも対象)

 C 雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成対象に含める

 D 被保険者期間要件の撤廃
 (雇用後6ヵ月未満の労働者についても対象)

 E 助成率アップ
 (中小企業の場合4/5、解雇等を行わない場合には9/10)

 F 計画届を事後提出できる
 (令和2年6月30日が締切)

 G 休業規模要件の緩和
 
 また、申請にあたり提出する書類の記載事項を大幅に削減・簡略化し、
 添付書類も既存の書類で代用する事を認め、計画書は事後提出でも
 可能とするなど、申請手続の負担軽減と支給の迅速化を
 図っておりますので、事業主の方は是非ご活用ください。

 申請に関する問い合わせは、
 専用の雇用調整助成金コールセンター(0120-60-3999)
 が設けられているのに加え、最寄りの都道府県労働局または
 公共職業安定所(ハローワーク)が窓口となっています。

2020年04月16日

◆今月の法律コラム

  川原 俊明 弁護士

 「協議離婚について」

 1.協議離婚
 @離婚意思があり、A離婚届(必要事項を記載して)
 を届け出ると、離婚が成立します。

 2.離婚意思とは
 婚姻が有効に成立するためには、ただ単に婚姻届を出す意思
 だけでは足りず、夫婦共同生活を営む意思を必要とします。
 他方、離婚が有効に成立するためには、ただ単に離婚届を出す
 意思さえあれば足ります。例えば、強制執行を免れるための離婚や
 生活保護受給を目的とする離婚も有効とされています。

 3.離婚届に記載する内容
 協議離婚においては、未成年の子がいる場合、離婚後に父母のいずれ
 がその子の親権者となるのかについて定めておくことが必要です。
 離婚届にその点に関する欄が用意されており、
 この点の記載がないと受理されません。

 4.合意の存在を確保するため
 仮装の届出を防ぐため、運転免許証やパスポート、マイナンバーカード
 などで、届出をした者が本人であることを確認します。
 また、協議離婚が成立していないにもかかわらず、離婚届が提出される
 ことをあらかじめ防止する手段として、「不受理申出制度」があります。

 例えば、以前相手方に対し、離婚届に署名・捺印して交付してしまったが、
 現在離婚する意思がないという場合、放っておくと、
 相手方から離婚届を提出され、受理されてしまう危険があります。
 そんなとき、この制度が役に立ちます。 

2020年03月19日

◆今月の法律コラム

           川原 俊明  弁護士


「評価損について」

交通事故に逢った場合、民法所定の要件を満たせば、
加害者に損害賠償請求をすることができます。

かかる損害賠償請求においては、逸失利益や代車代等様々な
損害を請求しうるのですが、その損害項目の1つに、
「評価損」というものがあるのはご存じでしょうか。

評価損とは、修理してもなお、機能に欠陥を生じ、あるいは
事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合、
その減少分を損害として認めるということです。

すなわち、事故で車が故障した際、修理をして事故前と同様に乗れる
車になっても、“1度事故を起こして修理した車”
(=「修復歴」がある車)ということで、車の価値が
下がってしまうため、その分を相手方に損害として請求できる訳です。

なお、上記修復歴については,自動車業における表示に関する
公正競争規約11条1項10号、中古車に関する施行規則14条3号
所定に書かれている部品の修理がある場合に認められます。

ただ、上記法令は自動車に関する専門的用語も多い
(例えば、「フロントインサイドパネル」、「ルーフパネル」など)
ため、修復歴があるかどうか気になる場合は、
自動車販売店に問い合わせてみるのもよいでしょう。

2020年02月02日

◆今月の法律コラム

川原 俊明 弁護士


 「弁済による代位」

民法が大幅改正されることは、
この法律コラムでも何度もお知らせしています。

今日は、債務者以外の者からの弁済
(これは「第三者の弁済」と呼ばれます。)
に関する改正の一部をお話しましょう。

債務者のために弁済した者(たとえば保証人)は、
債権者に代位することができます。
「債権者に代位する」というのは、たとえば、当該債権に関して
債権者が有していた抵当権等を、債権者に代わって行使できるという意味です。

これまでは、たとえば保証人は、あらかじめ抵当権に代位の付記登記
をしていなければ、抵当物件の第三取得者に対して主張できませんでした。
しかし今回の改正により、これは不要になりました。

また、一部弁済による代位の場合、一部代位者は債権者から独立して
抵当権を実行できました(実行した後の配当では、債権者は
一部代位者に優先して配当は受けられます。)。

つまり、債権者からすると、抵当権を実行するタイミングは
一部代位者によって決められてしまう可能性がありました。
しかし今回の改正により、一部代位者が抵当権を実行するには、
債権者の同意が必要とされました。

第三者の弁済に関する問題や、弁済による代位に関する問題は、
専門性が高いので、お困りの場合は専門家にご相談されると良いでしょう。

2019年12月29日

◆今月の法律コラム

川原 俊明 弁護士


 「弁護士費用提供サービス」

 弁護士費用提供のサービスとして、法テラスの法律扶助制度、
 各自動車保険の弁護士費用特約があります。
 
 前者は、一定の家計収入以下の場合において、
 勝訴判決の見込みがある案件、破産申立案件について、法テラスが、
 初めに弁護士に着手金、費用を立替払いした後、利用者が、毎月
 5千円〜1万円の範囲内で法テラスへ分割返済していく制度です。
 生活保護受給者の破産申立の場合には、破産申立費用全額が免除
 となり、よく利用されています。
 
 後者は、依頼者が自動車保険を締結した後で、将来事故をしたときに
 弁護士の着手金、費用に対して、保険金が支払われることになります。
 これらは、すべて費用が、依頼者の自己負担となっており、いわゆる
 事前契約型弁護士費用保険にあたります。
 
 このように一時的に、弁護士費用を立て替えてもらえますが、
 敗訴見込みの案件の場合には、法律扶助が受けられず、依頼者が
 弁護士費用を負担しなければなりません。
 
 しかし、最近、このような事前でなく、事後に弁護士費用を保証して
 もらえる契約をする会社が現れました。
 それは、株式会社日本リーガルネットワークという会社で、当社は、
 敗訴してしまった場合、和解・勝訴したが、債務者から十分に現金を
 回収できなかった場合に、当社から保証金が支払われるというものです。
 
 この保険契約の最大のメリットは、敗訴したとしても、
 依頼者に一切の費用負担がないというものです。
 敗訴した場合、立替着手金、当社への保証料の支払いも、
 当社が負担するというものです。

 ただ、気になるのは、当社がすべての契約で敗訴の場合は、誰がその
 負担をするのでしょうか?おそらく、勝訴を得て回収できた案件の
 保証金で当社がカバーする意図だと思いますが。あまりにもいい話
 なので、しばらくは、様子を見ることが必要だと思います。

2019年12月01日

◆今月の法律コラム

                      川原 俊明 弁護士


 「養育費算定表、見直しへ」

 子どもがいる夫婦が離婚する場合には、
 養育費の金額が問題になることがあります。

 養育費については、基本的には「養育費・婚姻費用算定表」として
 裁判所が公表している基準に則って決めています。
 (ただし、この算定表はあくまで目安であり、
 個別具体的な事情によって養育費の金額は異なります。)。
 
 この算定表が見直されることが、
 2019年11月13日までに分かりました。最高裁は、
 新しい算定表を2019年12月23日に公表する予定とのことです。
 
 現行の算定表は、2003年に有志の裁判官により作成したもの
 でしたが、時代の経過に伴い、ひとり親世帯の生活実態に合っていない
 との指摘が出てきたことから、この度見直されることになりました。
 
 新算定表により、養育費がいままでより高額となるケースもあれば、
 変わらないものもあるとみられます。

2019年11月11日

◆今月の法律コラム

川原 俊明 弁護士


「養育費を支払ってもらうための新しい法律」

一度取り決めた養育費を支払ってもらえない場合、
どうすればよいでしょうか。

せっかく離婚するときに養育費を支払ってもらうよう約束したのに、
実際に支払われないまま、相手との連絡がつかなくなってしまう。
強制執行しようとしたが、相手の財産や勤務先がわからず、泣き寝入り。
それでは何のために取り決めたかわかりません。

そのような相手の逃げ得を許さないため、新しく法律が改正されました。
令和元年5月に成立した改正民事執行法によれば、確定判決や調停、
審判、公正証書などに基づいて地方裁判所に申立てをすることによって、
相手の預貯金の口座情報や勤務先の情報を、金融機関や市町村、
年金事務所か ら取得できるようになりました。
 
これまでは、相手の勤務先がわからず、相手がどこの銀行に
口座を持っているかわからないと、差し押さえをすることが
なかなか難しかったのです。
 
ところが、改正民事執行法が施行されると、容易に相手の資産を
差し押さえることができるようになります。
 
@ 相手の預貯金や勤務先の情報を提供してもらうように、
地方裁判所に申し立てる
 ↓
A 申立てを受けた裁判所は、金融機関や市町村、年金事務所等に、
情報提供を命令する
 ↓
B 金融機関や市町村、年金事務所等は、相手方に関する情報を回答する
 ↓
C その情報の通知を受けることで、相手方の資産に対し強制執行
しやすくなる

 それでも、確定判決や調停、審判、公正証書などにおいて、
きちんと養育費に関する取り決めをしておく必要があることは、
以前から同じです。

そして、改正民事執行法は、令和2年4月に施行される予定です。

2019年10月03日

◆今月の法律コラム

                          川原 俊明弁護士

「チケット転売規制法」

みなさんは、野球やサッカーなどのスポーツ観戦やだったり、
お笑い芸人・音楽アーティストのライブ、アイドルのコンサート
に行かれたことはあるでしょうか。人気が高いチケットがなかなか
取れなくて、歯がゆい思いをした人も多いのではないでしょうか。
そんな時に、ネットオークションサイトなどを見ると、定価よりも
高額な金額で売却されていたという経験があるかと思います。

これには、いわゆる転売屋という人々が関係しています。
転売屋とは、チケットを転売目的で大量に購入し、
イベントの主催者とは無関係に定価を超えた額で大量に転売し、
利益を得る人々のことです。

そういった転売屋により、人気のチケットが公式のルートから
通常以上に獲得しにくくなり、コンサートやイベント等に参加する
機会が奪われたり、不適切な金額で購入してしまうなど、純粋に
イベント等を楽しみたい人達が、不当に不利益を被ってしまうのです。

このような不当な転売行為を取り締まるべく、今年の6月14日より
「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通
の確保に関する法律」通称チケット不正転売禁止法が施行されました。

この法律によって、転売屋が従来から行ってきたような、
チケットの不正転売等が禁止されます。
ここにいう不正転売とは、「興行主に事前の同意を得ずに反復継続の
意思をもって行う有償譲渡であって、興行主等の販売価格を超える
価格で特定興行入場券を転売すること」とされています。

つまり、イベントの主催者が販売する価格よりも高い価格で、
その主催者に無断で転売してはいけないとされました。
これに違反した場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
またはその両方が科されます。

運良くチケットが当選したけれども、いざ当日が近づくと、
どうしても外せない用事が出来てしまって、泣く泣く断念した経験も
あるかと思います。こんな場合に、手元に余ってしまったチケットを、
定価で第三者に売ることは、この法律でも許されることになります。
ただし、無用なトラブルを避けるためにも、興行主が定める
公式のリセールサイトを利用しましょう。

2019年09月02日

◆今月の法律コラム

川原 俊明 弁護士


「保釈制度」

 刑事事件の弁護人として活動をしていると、被疑者・被告人から
 「保釈手続をしてほしい」と依頼されることがよくあります。
 保釈とは、裁判所が、保釈保証金の納付を条件として、被告人に
 対する勾留の執行を停止して、その身体拘束を解く制度をいいます。

 裁判所は、保釈を許可するか否かを決定するにあたり、
 いくつかの要件を検討します。例えば、(1)罪証隠滅のおそれがないか、
 (2)被害者や証人等に対する加害のおそれがないか、
 (3)被告人の住居が定まっているか、といった点です。

 これらの要件に加え、裁判所が定める保釈保証金の納付が
 絶対的要件となります。保釈保証金は、保釈された被告人が
 裁判に出頭することを確保することを目的とし、万が一、被告人が
 裁判に出頭しない場合には、没収される可能性があります。

 裁判所は、こうした要件を充たしてはじめて、保釈を許可します。
 我国の刑事司法手続において、長期間の身体拘束による弊害が問題視
 されている中、保釈制度によって早期に身体拘束から
 (たとえ暫定的にであっても)解放されることは、被告人にとって
 非常に重要な意義を有します。近年、保釈が認められる件数が
 増加傾向にあることは、弁護人として活動する弁護士にとっては
 大変ありがたく、励みにもなります。

 他方で、最近、保釈中の被告人が逃走したり、別の事件を起こした
 というニュースが世間を騒がせています。無論、逃走したり、
 別の事件を起こした被告人自身は、非難されるべきであり、
 刑事手続の中で適正に処断される必要があります。
 しかし、一部の被告人の自分勝手な行動によって、保釈制度に対する
 世間の目が厳しくなり、裁判所が保釈許可に対して慎重な姿勢に
 転じることのないようにと考える弁護士は決して少なくないと思います。


「不貞の代償」

 もし、貴方(貴女)が、運良く(?)、魅力的しかし既婚の女性(男性)
 と親しくなって、(首尾良く?)思いを遂げた(肉体関係になった)場合、
 バレなければ「幸せ〜!」で済むかも知れません。
 しかし、バレたら、厄介です。
 今回はその厄介について考えます(倫理上・宗教上の問題は除きます)。

 1.民事上の問題1(相手方配偶者との関係)
 特別の事情(相手方が独身と過失なく信じていた。
既に相手方の婚姻関係が破綻していた。破綻と過失なく信じていた等)
がない限り、貞操権侵害の不法行為として損害賠償を請求される
(民法709条)可能性があります。
  
損害賠償の金額は、不貞関係の期間・回数やそれに至った事情等にも
よりますが、最低でも数十万円になる(これが高いか安いかの評価は、
別れます。)ケースがほとんどです。また、相手方配偶者が厄介な(?)
人の場合は、一層厄介になる可能性があります。

2.民事上の問題2(自分も既婚の場合の自分の配偶者との関係)
 (1)既に婚姻関係が破綻していた等の特別の事情がない限り、
配偶者から、貞操義務違反として、損害賠償を請求される
(民法709条)可能性があります。
 
(2)また、配偶者から、愛想を尽かされて、離婚及び離婚に伴う慰藉料
(裁判では、150万円程度が相場)を請求される(民法709条、
770条1項1号)可能性があります。
その場合、財産分与や年金分割も必要になります。親権を配偶者に
取られて、子どもと一緒に暮らせなくなる可能性もあります。
養育費も当然請求されることになります。

(3)そこまで行かなくても、家に帰り辛くなることは間違いありませんし、
子どもの白い目も覚悟しないといけないかもしれません。
耐えきれずに別居した場合でも、婚姻費用の支払が必要になります。
  なお、逆に、自分から、修復を諦めて、離婚したいと思っても、
有責配偶者からの離婚請求として、原則として、配偶者が同意しない
限り、離婚できません(判例理論)。配偶者の同意をもらうために、
多額の解決金(判つき代)を支払う場合もあります。

3.民事上の問題3(勤務先と関係)
  相手方が同じ職場や取引先に勤務している場合等には、就業規則違反
として、懲戒処分を受ける可能性があります。
  そこまで行かなくても、噂の格好のネタになって居づらくなりそうです。

4.刑事上の問題
  外国では、現在でも犯罪とされている国がありますが、幸か不幸か(?)
  、 現在の日本では、不貞自体は犯罪とはされていません。

5.不貞は、その秘密性等から得られる高揚感が大きく、なかなか
辞められない場合があると言われています。人間の動物らしい面とも
言えますが、上記のとおり、その代償は決して小さいものではありません。

2019年07月01日

◆特別の寄与の制度の新設

川原 俊明 弁護士

例えば、長男(死亡)の嫁が長年義父と一緒に暮らし、義父の世話を一人で献身的にしていたが、義父が亡くなり相続人が長女のみの場合。

 これまでは、何ら世話の一つもしていない長女が義父の遺産を独り占め
 できてしまうという不公平なものでした。

 ところが、この制度の新設により、被相続人(義父)に対して
 無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、
 被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をした
 相続人以外の親族(特別寄与者:長男の嫁)については、
 相続の開始後、相続人(長女)に対して、寄与に応じた額の金銭
 (特別寄与料)の支払いを請求することができることとなりました
 (民法1050条1項)。
 
 ただし、特別の寄与の制度においては、
 労務の提供が無償であることを要件としています。
 そこで、被相続人(義父)が労務の提供をした者(長男の嫁)の
 生活費を負担していた場合に無償性の要件を満たすかどうか
 が問題になります。

 その判断は、個別具体的な事情に基づいてなされるものと考えられます。
 例えば、長男の嫁が、義父が要介護状態になる前から義父と同居
 しており、義父がその生活費を負担していたような場合であれば、
 療養看護開始後も引き続き義父が生活費を負担していても、
 そのことから直ちに無償性が否定されることにはならないと考えられます。

 また、一般に、労務の提供の対価といえるためには、その財産給付の
 内容が労務の提供の程度に応じて決められているという関係にあること
 を要すると考えられるため、例えば、長男の嫁が義父からごく僅かな金銭を
 受け取っていたに過ぎない場合には、対価的な意義がない
 と判断される場合が多いと考えられます。

 この制度にも弱点があります。
 例えば、長男の妻が内縁の妻の場合には、この制度の適用外となります。
 この場合には、生前に義父から特別寄与料に応じた死因贈与を受けておく
 (遺言書に記載してもらう、死因贈与契約書を作成する)方法があります。

2019年06月08日

◆今月の法律コラム「贈与税とは?」

川原 敏明

子どものために子ども名義の預貯金を積み立てている。家を買うとき
に、親に一部援助してもらった。

そういう方は多いのではないでしょうか。
それ、贈与にあたっているかも知れません。そして、贈与税が発生す
るものかも知れません。

<1 贈与税の内容>

贈与をしたとき、贈与を「受けた人」に課税されるのが、贈与税です。
贈与を行った人ではなく、受けた人であることに、注意してください。
贈与税は、次のように計算されます。
税額=(贈与財産の価格−基礎控除110万円)×税率−控除額

<2 贈与とされる行為>

贈与に該当するか否かは、諸事情を考慮の上判断されますが、次のよ
うな行為は、贈与とされるおそれが高いので、ご注意ください。

@不動産を購入する際、夫しか資金を出していないのに、妻の名義にした。
A親から借入れをしたが、返済を免除してもらった。
B親戚から、時価よりも著しく安い価格で不動産を買った。

2019年04月28日

◆法律コラム

川原 俊明 弁護士


「法務局における自筆証書遺言の保管制度」

2018年7月6日、配偶者居住権の創設、遺産分割前における預貯金
債権の行使、遺産の一部分割、自筆証書遺言の方式の緩和、自筆証書遺
言保管制度の創設、遺言執行者の権限の明確化、等の相続関係の法改正
が行われました。

その中でも、私たちに最も身近なものといえば、やはり、2020年7
月10日から施行される自筆遺言書保管制度の創設です。
これは、自筆証書遺言書を法務局で保管することによって相続開始後、
家庭裁判所による検認が不要となるものです。

従来は、公正証書遺言書によるものだけが、家庭裁判所による検認を不
要とされていたものが、自筆証書遺言書の場合にも認められたのです。
ただし、ここで注意しなければならなのは、この制度によって、法務局
が内容まで確認しないので遺言書の有効性が担保されないことです。

内容が無効であれば、せっかくこの制度を利用しても遺言書の内容が実現
されない場合が出てきます。

この点を考えれば、やはり、公証人に内容を確認してもらえる公正証書
遺言書を選択するのが、賢明だと思います。

どれだけの人が、この新しい制度を利用することになるのか楽しみでは
あります。

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