2012年01月24日

◆「むちうち」について

川原 俊明


むち打ちは、交通事故の中では比較的軽い傷害として受け取られているうえに、他覚所見がないことが多いため、被害者救済が充分なされないことがあります。

その上、注意してもらいたいのは、症状が軽いからと言って、被害者が受傷の初期段階で適切な治療を受けなかった場合には、後々、思いもよらず不利な結果を招くことがあります。

すなわち、被害者には、損害を拡大しないように適切に対応する信義則上の義務が課されていますので、被害者が事故後治療を怠り損害を拡大してしまい、加害者がその事実を立証した場合には、過失相殺されてしまうことがあります。

たとえば、被害者が、事故直後に病院にいって医師からなんらかの指示があったにもかかわらず、その指示を無視して治療を続けなかったために治療期間が長引いた場合には、何割か過失相殺され、充分な賠償を受けられません。

もっとも、被害者が、医師から入院を勧められたにもかかわらず、家庭や家業の都合によって通院した事例において、治療期間が多少長引き後遺障害の程度に多少影響があっても、被害者に過失があったとは認められないと判断されています(福岡地裁判決昭和46年1月29日)。

したがって、合理的な理由があれば初期に適切な治療を受けなくても、加害者からきちんと満額の損害賠償を受けることができますが、不用意に医師の指示に従わなかったり、病院に行かなかったりすると、充分な賠償を受けられなくなってしまいます。

交通事故に遭ったら、軽いむち打ちといった症状しか出ていなくても、きちんと病院に行って医師の指示に従いましょう。          
(弁護士)

2012年01月18日

◆JR福知山線脱線事故は無罪か

川原 俊明


早くも7年が経過しました。JR福知山線の尼崎駅近くで、カーブを曲がりきれず脱線し、107人の犠牲者を出しました。何両もの車両が無残な姿をさらけ出していました。当時、テレビがその悲惨な事故現場を何度も繰り返し放映していました。私の脳裏には、その映像が未だに焼き付いています。

これだけの犠牲がありながら、事故当時の社長には、刑事責任を負わせられないのか。

1月11日、神戸地方裁判所は、当時、事故発生の具体的危険性を認識していなかった、という理由で、前社長に無罪判決を言い渡しました。裁判所の無罪判決を聞いた多くの遺族の方々の怒り心頭を想像することができます。納得できない、という多くの声が聞こえてきます。

では、法律家として、この結論をどう見ればいいのでしょうか。

たしかに、運転時間の遅れを取り戻すため超過スピードで運転していた運転手に過失はあったと考えられます。ただ、これをJR全体の組織として、どこまでの範囲で刑事責任が問われるべきか。この観点からは、別の要因を検討する必要があります。

損失補填が目的の民事事件と異なり、刑事事件では、処罰に値する犯罪行為としての過失行為があったのか、という観点から、犯罪の成否が判断されるからです。

要するに、社長たる経営者の立場において、その当時、具体的危険性を認識すべき状況におかれていたか。残念ながら、私が裁判官なら、今の刑事法のもとでは、有罪判定は困難、と結論づけるでしょう。

遺族の方々の怒りを実現するならば、いまの刑事法の改正が必要です。

現行法は個人の犯罪を処罰する刑事法の建前を取っています。重大犯罪に関しては、法人に対しても罰金等の刑事処罰規定を設ける必要があります。

さらには、民事法においても、不法行為という損害賠償事案では法改正が必要かも知れません。
現行民法では、被害を受けた者が、損害発生のみならす、加害者の行為に違法性がある、ということまで立証する必要があるのです。

でも、多くの損害賠償事件では、自分の損害は立証容易でも、相手の行為が違法である、と主張し立証するために、高いハードルにぶち当たってしまうのです。

そこで、今回のような社会的問題となる一定の賠償事案では、立証責任の転換をおこない、加害者側に落ち度(過失)のないことを立証させるようにすると、多くの被害者の被害回復が容易になります。

法律は、弱者救済の場面に効果を発揮されなければなりません。司法が、社会から「判決」への信頼を得るためには、多くの法律の見直しが必要でしょう。
<弁護士>

2012年01月08日

◆変革の時代に

川原 俊明


新年あけましておめでとうございます。

昨年の東日本大震災は、未曾有の被害をもたらしました。私は、多くの人命が失われる中で、自分の人生を見直す契機となりました。

津波にさらわれる直前まで、懸命に築き上げてこられた数十年の人生の営みが一瞬にして失われることを自覚させられました。それならば、せっかく受けた生を思い切り充実させ、一日一日を大切にし、目標に向かってさらに頑張ろうと。

同時に、東日本大震災は、日本の一つの節目とみるべきだと思います。

戦後67年。アメリカをお手本にして成長を続けてきた日本の経済社会構造。これも完全に金属疲労を起こしています。年金問題、雇用問題、教育問題。

肝心のお手本があらゆる面で歪みを来しているのですから、日本人は、もう一度、自分の頭で未来図を描く必要があります。

逆に言えば、社会構造そのものの見直しが必要でしょう。リセットが求められています。

年金問題一つを取ってみても、今の賦課方式にたよっている制度は、完全に制度破綻。もうやめましょう。若者がかわいそうです。若者に未来を与えるべきです。

そのためにも、直ちに各世代、各年代ごとの積み立て方式に発想の転換を図るべきです。赤字国債を刷りまくっていても、その場しのぎにすぎません。日本国の破産を早めるだけです。

戦後の教育システムも間違っています。

運動会で一生懸命に走っても一等賞を与えないようでは、リーダーを生み出せません。今のリーダー不在の日本の低迷政治は、戦後教育の典型的な失敗例です。

人気投票に堕落した選挙に踊らされず、自分たちで新しい社会の仕組みを変える方策を真剣に考えましょう。

私は、今年、「改革」をキーワードに思い切った行動をしたいと思います。

2011年12月30日

◆ラジオ関西に生出演

川原 俊明


ラジオ関西の「寺谷一紀のまいど!まいど!」の放送に生出演しました。12月24日クリスマスイブのAM8:00〜AM10:00の2時間でした。

私が、弁護士を務めながら、一方で学校法人追手門学院の理事長を兼務しているという、特異な対応の特異性を取り上げたいというのが出演の依頼でした。
 
ラジオ関西のスタジオはJR神戸駅近くです。早朝からの生出演ですから、もし遅刻でもしたらご迷惑をかけすることになると考え、前日からスタジオ近くのホテルで泊まり込み、生出演に向かうことにしました。

前の夜、JR学研都市線に乗り、尼崎駅で神戸行きの電車に乗り換えるべきところを、案の上、車内熟睡して乗り換えを忘れて仕舞い、気がついたら終点の宝塚駅に行っていました。あわてて、尼崎駅に引き返し、再び神戸行きの電車に飛び乗る始末。

当日の生放送にこのハプニングが起きず、前夜から下準備は成功でした。

さて、スタジオに入ると、おなじみの寺谷一紀さんがいました。元NHKアナウンサーで、今は「浪速のアナウンサー」。BGMのクリスマスソングが流れる中で、マイクに向かって寺谷アナウンサーの流ちょうなお話しが飛び込んできました。アシスタントは、ヒットミンこと藤田瞳アナウンサー(元ミス京都)。

私は、弁護士の立場で、まず東日本大震災発生後、厚生労働省が災害救助法を弾力解釈して全国の都道府県に被災三県の救済を呼びかけた「通達」を問題にして意見を述べました。

都道府県が出費した支援費請求の宛先を被災三県とする内容は、被災地の心情を無視したお役所感覚を指摘したのです。がれきの山に包まれ、役所が機能していない被災現場で、なにも被災三県を請求の宛先にしなくていいはずです。むしろ、最初から国が受け皿となるべきだ、と主張したのです。

勿論放送では、弁護士が学校法人追手門学院の理事長であることのメリットも尋ねられました。

私は、全国の大学の多くが、「象牙の塔」イメージの旧態依然たる組織であることを批判しました。大学に社会の風を吹き込むべきだ。古い大学は解体すべきだと。その解体作業に法的な力が必要だ。その意味で、法律家の介在は、大学の変革に大きな力を発揮できる。そんな見解を披露したのです。

これだけではありません。聴き役のアナウンサーがクリスマスイブに関する「面白い質問」も投げかけてきました。「サンタさんは住居侵入罪に該当しないのか」という問い掛けです。

私は、「ウエルカム」ゆえに違法性なし、と即、答えました。

ラジオの生放送は初めての経験でしたが、楽しくて、2時間もあっという間に過ぎました。

2011年12月10日

◆増えるPTSDの損害賠償訴訟

川原 俊明


近時、交通事故や事件の被害者が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を負ったとして、その損害の賠償を求める訴訟が増加しています。

訴訟において、被害者はPTSDとの診断書を出すことになりますが、裁判所はそれをそのままPTSDと認定しないことがあります。

その理由の1つとして、訴訟では、事実の有無が厳格に判断されるのに対し、臨床においては、治療の観点から、事実の真偽を追求せずに患者の主観的訴えを支持しているという点が指摘されています。

京都地裁平成15年12月18日判決では、「精神医学的な、あるいは臨床の現場におけるPTSDの概念及び判断基準(例えば、ICD−10やDSM−W)を満たしているか否かという観点のみで、精神的打撃の大きさを測ることが適切かというと、必ずしもそうとはいえない。

PTSDの判断基準を満たさないからといって直ちに何ら精神疾患に罹患していないということにもならない。」としたうえ、「損害の算定に当たっては、原告の症状がいかなるものであり、どのような精神的打撃を被ったかという事実を端的に考察することに重点を置くのが相当である」としています。
 
PTSDに該当しない場合でも、外傷性神経症として損害賠償を認められる場合もありますので、結局、被害者の精神状態、持続期間、発症原因(他原因の可能性)など、損害賠償請求の原則的な判断基準を意識することが肝要です。


2011年12月02日

◆高次脳機能障害と介護費用

川原 俊明


通常の障害の場合、症状固定後に介護費用が出るケースは、後遺障害等級第3級以下であると認められないケースもあります。

交通事故によって、脳に障害を負ったケースで、幸いにも意識を回復し、リハビリで、一定の日常生活が出来るようになったケースで、「高次脳機能障害」が残るものがあります。

その場合にいつも問題となるのが、将来の介護費用です。

日常生活はある程度自分で出来るが、高次脳機能障害が残ったケースというのは、生命の維持に最低限必要な所作は自分でできるけど、火を消し忘れたり、刃物に対して注意を払わなかったり、突然異常行動を起こしてしまうなど、近親者にとっては一人にしておくことが心配になるというケースも多くあります。

その場合の介護の形態は、いわゆる肉体的な介添えではなく、看視、声かけの程度にとどまり、そのような形態が、果たして介護といえるのかという議論があります。

最近は、「高次脳機能障害」に対する理解が高まり、必要な介護費用の全額は認められなくても、一定の割合で将来の介護費用について裁判で認められることもありますが、全額が保障されるケースはまだまだ多くないと思います。

しかし、高次脳機能障害の患者さんは、一定程度自分で行動が出来るために行動範囲も広く、現実に看視、声かけなどをするといっても、自宅で全身介護をする以上の負担がかかることもあります。

そのため、障害の程度が全身介護が必要な人よりも軽く、自分である程度行動が出来るからといって、必ずしも介護の費用及び負担が、全身介護の人よりも安い(軽い)とは限らず、家族の負担、不安は図り知れないことを、もっと広く理解される必要があるのだと思います。

2011年11月20日

◆児童福祉法の改正

川原 俊明


「児童福祉法」が一部改正され、平成24年4月から施行される見通しです。

親権を持つ親は、子を監護教育し、懲戒し、その居所を指定することができます。

そのため、児童虐待の現場で、児童相談所が子どもを一時的に親から引き離そうとしても、親がその親権を根拠に無理やり連れ帰ってしまうケースがありました。

こうした現行の親権制度の問題点を改善し、子ども達を親の虐待から守るために、今回の改正がなされたのです。

具体的には、虐待された児童が入所する児童養護施設などの施設長の権限について強化されることとなりました。

従来は「必要な措置をとれる」という規定しかなかったものが、施設長が子どもの福祉のために必要な措置をとる場合に「親が不当に妨げてはならない」と明記されました。

更に、子の生命や安全を守る緊急時には、「親の意に反しても必要な対応」がとれるようになりました。

児童相談所の所長についても、同様の権限が与えられています。

2011年11月17日

◆なぜ?の論理が通用しない弁護士

川原 俊明

  
サラ金業者に対する過払金返還請求案件が、まだに、続いているようです。それ自体、悪徳サラ金業者に対する社会悪の追求という観点であれば、私も、諸手を挙げて賛意を表します。

でも、いまの若手弁護士、司法書士諸君。ほんとに、社会悪の追求に自分の命を賭けているのでしょうか。

サラ金に対する過払訴訟の実態は、パソコンで利息計算の見直しをするだけで、過払金額が出てくるだけの話です。こんなことを大々的にテレビコマーシャルしたり、街頭看板で宣伝する弁護士・司法書士。

彼らは、債務者の借金返済に対する苦労を理解しようとせず、単に、金儲けの手段としてしか考えていないのではないでしょうか。

これは、サラ金業者からの借金に、一生懸命、高利を返済し続けてきた人に対する冒涜です。弁護士・司法書士も、ほんとに困った人の救済の積もりなら、無茶な報酬を取るな、と言いたい。

私たちのように、何十年も弁護士業務に携わってきた者にとって、弁護士のなすべき目標は決まっていました。

世の中を変える。社会をよくする。このために私たちは弁護士の道を選択したのです。錯綜した一つの案件の中から、ゴミみたいに見える一つの事象をとらえて真実を見い出し、事件の解決につなげるのが弁護士の仕事なのです。

“なぜ?”を追求し、真実の解明につなげるのが弁護士の仕事です。弁護士は、なぜ?の判断をもって、紛争解決のため実現を追求します。

過払訴訟の場面で、一体、どこに本来の弁護士の仕事がある、と思っているのでしょうか。

過払訴訟の目先の高額報酬の確保。これが弁護士の本来の仕事だと思ってもらいたくない。
このことを若手弁護士・司法書士に伝えたいのです。


2011年11月11日

◆逸失利益について

川原 俊明


弁護士:今日は、交通事故の損害賠償請求訴訟で争点の一つとなる「逸失利益」について、お話したいと思います。

Aさん:逸失利益って何ですか?

弁護士:例えば、交通事故で不幸にも被害者が亡くなったとします。そうすると、その被害者が事故に遭わなければ得られたはずの収入が得られなくなってしまいますね。その本来得られたであろう利益、が逸失利益です。

Aさん:被害者が亡くなった場合にのみ問題になるのですか?

弁護士:いいえ。後遺症が残ってしまった被害者に対しても、その後遺症の程度に応じて逸失利益が算定されるのです。

Aさん:具体的には、どうやって算定されるのですか?

弁護士:「基礎収入から被害者本人の生活費として一定割合を控除し、これを就労可能年数に応じたライプニッツ係数を乗じて算定する」ことになります。

Aさん:・・・?

弁護士:いろいろ専門的な単語も出てきているのですが、要は、被害者の年収から生活費に使う分を引く。その額を就労可能な年齢分足す。そして、将来に渡って少しずつもらえるはずの収入を、今一括してもらえるわけですから、その分の利益を引くという計算になります。

Aさん:なるほど。でも、今の話は、被害者に収入のあることが前提になっていますよね。例えば、被害者が専業主婦の場合は、逸失利益は0になってしまうのですか?

弁護士:いいえ。そういうときのために、職種別・年齢別の賃金に関する統計、すなわち「賃金センサス」が参考になります。インターネットでもみることができますよ。これをみれば、自分と同じ年齢、性別、学歴の人の平均収入を知ることができます。そして、これを専業主婦の年収と仮定するわけです。

Aさん:子供の場合はどうなるのですか。

弁護士:裁判所では、賃金センサスの女性労働者の平均賃金を基礎収入とすることが多いようです。でも、今は、女の子でも大学進学率や就職率が高くなっていますね。そのため、全労働者の平均賃金を用いるべきだとの裁判例も増えつつあるようです。

Aさん:無職の人の逸失利益も同じように判断するのですか

弁護士:無職であっても、年齢や職歴、勤労能力、勤労意欲をみれば、就職していてもおかしくない、という人もいますよね。そういう場合は、逸失利益が認められることもあります。その場合の基礎収入は、年齢や失業前の実収入額などを参照して、個別に判断されることになります。

Aさん:私は、仕事もしていて、家に帰れば主婦として家事もしています。基礎収入は、給与所得分と家事労働分の合計額になるんですよね!

弁護士:残念ながら必ずしもそうではありません。一般論をいえば、実収入が賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額により、下回っているときは専業主婦の取扱いと同様になります。

Aさん:なんだか不公平な感じがしますね・・・。

弁護士:逸失利益は、言ってしまえば「事故に遭わなければ得られた」という仮定のうえで語られるフィクションに過ぎません。それでもできるだけ実体に合った評価がなされるよう、弁護士も裁判所も日々努力しているところです。

2011年11月09日

◆ETCレーン内での事故

川原 俊明


最近は、ETC割引の効果か、多くの車がETCを搭載しています。そして、それに比例してか、ETCレーンでの交通事故が多発しています。

そこで、ETCレーン内での事故について、判例を踏まえてご紹介したいと思います。

高速道路のETCレーン内でA車が徐行していたところ、その後ろを走っていたB車がETCレーン内で追突したという事故を取り上げます。

ETCシステム利用規程8条1項には、「ETC車線内は徐行して通行すること」「前車が停止することがあるので必要な車間距離を保持すること」とされており、ETCシステム利用規則実施細則4条には、「ETC車線内で前車が停止した場合、開閉棒が開かないもしくは閉じる場合その他通行するに当たり安全が確保できない事情が生じた場合であっても、前車又は開閉棒その他設備に衝突しないよう安全に停止することができるような速度で通行」すべきと規定されています。

裁判例では、上記条項を指摘した上で、追突車両に一方的な過失を認めました(A車:B車=0:100)。

そして、「仮に、開閉棒が開かない場合で、A車が急ブレーキをかけた場合であっても」、これに追突することは上記規定・違反に反するB車の一方的な過失だとして、A車の過失を否定しています。

事例判断ですので、ケースバイケースな面もありますが、裁判所の基本的な考え方は、ETCレーンに侵入した前方車両がある場合、その後方を走る車両は、万が一、開閉棒が開かなかった場合であっても、追突しないよう、高度な注意義務が課せられているということです。

ETCは、渋滞緩和にもつながる便利なものですが、便利ゆえにより一層注意して利用したいですね。

2011年11月02日

◆東京FM放送に出演

川原 俊明

東京FMのラジオ番組「TIME LINE」に10月31日生出演しました。

星浩という政治ジャーナリストの出演する生放送で、ニュースをきっかけに考えるヒントを提供する60分の番組です。

今回の放送は、東日本大震災で、福島、宮城、岩手の3県を支援した自治体が、その経費を3県に請求する手続きを進めている。災害救助法に基づく手続き、ということだが、疑問の声が上がっている。

 
ということで、私が、今年の10月10日に出したブロク「ばかげた被災地支援費請求」が、FM東京の目にとまったのでしょう。


このときのブログの要旨をお伝えします。
 
<震災から半年経った今も、がれきが積まれている東北三県の復興未来が未だに描かれていない。これに輪をかけたバカげた事態が起こっている。被災地に対する全国各自治体の支援活動も、それぞれの地域住民の善意の支援だったはず。

しかるに救護活動費の請求書が回ってくるとすれば、被災地の自治体にとって第二次災害とも言うべき事態である。東日本大震災は、東北三県だけの問題でなく、日本全体の損害だから、各自治体からの被災地支援費請求は撤回すべし>。
 

政治ジャーナリスト星浩さんからは、私に、被災地支援費請求の問題点について、コメントを求めてきました。

そこで私は、次のようなコメントを出しました。

●なぜ被災地支援経費請求をする自治体が現れたのか
  
災害救助法は、災害が発生した場合、国が、地方公共団体や日本赤十字社などの協力の下に、応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会の秩序を守ろうとする法律です。ただ、この法律は、都道府県知事が、その所轄の範囲内の市町村に発生した災害に対する救助、を想定しているものでした。


今回の東日本大震災のような大規模災害は、法律の想定する範囲外の事態でした。
 

そこで国(所轄の厚生労働省)は、災害救助法を弾力運用しようとして通達を出しました。被害の甚大さを考えて、被災地でない都道府県からも、積極的に被災者の救助にあたって欲しい、と。
 
それだけなら良かったのです。ところが、救助に要した費用について、「被災地の都道府県に全額求償して下さい。」こんなことが通達に書かれていました。

全国の自治体では、費用負担を念頭に置くことなく、人道上の観点から被災三県に対する救援活動を行ってきたのです。にもかかわらず、救助費用を全額請求せよ、という通達だったので、東京や兵庫、鳥取など全国の自治体から、救助費用を被災地の東北三県に全額求償する、という事態が起こったのです。

 
今回のような未曾有の災害に全国の他府県から救助を差し伸べるのは人道上、当然のことです。費用の自己負担を覚悟で出費した都道府県もたくさんありました。


国全体で被災地を応援すべき事態です。そんなときに、なにも壊滅的被害に遭っている東北三県に向けて、救助費用を全額請求されたい、と通知を出す厚生労働省のお役所感覚には疑問があります。

東北三県にとって、復旧すらままならないときに、はやくも他の都道府県から請求書が送られてくるのですから。経済的な負担ばかりか、煩雑な業務負担がかさみ、復旧に足かせとなります。
 

東北三県の被害状況を見れば、各自治体が負担した救助費用は国が全額負担すべきです。 同じ通達を出すなら、救援した他の都道府県の費用負担は、被災県に対してでなく、全額、国に求償できる、とすべきだったと思います。

星浩さんも、厚生労働省の通達には疑問を呈し、私と認識を共有できたのが良かったです。

みなさんは、どうお考えでしょうか。

2011年10月26日

◆交通事故で健康保険を使うには

川原 俊明

交通事故によって生じた傷害の治療を受ける際、病院は「交通事故は健康保険の適用外です」と言ってくることがしばしばあります。

もちろん、加害者が全部の損害を弁償してくれるのであれば、健康保険を使わなくても問題ありません。しかし、相手方の保険会社から治療費の支払いを拒まれているときなどは健康保険が使えるか否かは死活問題です。

病院側としては、保険診療(健康保険を適用した場合の診療)よりも、自由診療(健康保険を適用しない場合の診療)の方が、利益が多いので、健康保険適用を回避するため、「交通事故は健康保険の適用外です」と言ってくるのです。

しかし、保険診療機関(健康保険が使用できる病院等)においては、健康保険適用の申し出があれば、病院がこれを拒むことは法律上できません。 すなわち、交通事故においても健康保険を使うことはできます。

ただし、交通事故において健康保険を使うためには、被害者が1つしなければならない手続きがあります。

それは、「第三者行為による傷病届」を保険機関(市町村、健康保険組合等)に提出することです。 健康保険は治療費の7割を保険機関が病院に支払いますが、実はこれ、立替払いなのです。

すなわち、本来治療費は、加害者が過失の割合に従って払うべきものですから、これを保険機関が支払えば、その分、後で加害者からもらいますよ、というものです(健康保険法57条)。これを、健康機関から加害者へ「求償」すると言います。そして、「第三者行為による傷病届」とは、被害者が、この「求償」をしていいですよと、了解するものなのです。

以上のことを理解したうえで、必要であれば、病院に対し保険診療をきちんと求めていきましょう。

2011年10月23日

◆男性の外貌醜状

川原 俊明

Q 先日、歩行中に乗用車と衝突し引きずられる事故に遭い、そのため顔面、頚部、上腕、胸部など広範囲にケロイド状の瘢痕が残ってしまいました。

私は、工場作業員(21歳、男性)ですが、加害者からは、男性は女性に比べて見た目についての関心が低いので、損害は少ないと主張されています。このような主張が認められますか?

A 認められません。
  

以前は、外貌醜状傷害(外見に醜い傷痕が残ること)について、男女の間で労災保険や自賠責の障害等級に差が設けられていました(差別的取扱い)。そのため、同じ程度の外貌醜状でも、損害賠償額に大きな開きが出る事態がありました。

しかし、労災保険について、京都地裁平成22年5月27日判決は、この差別的取扱いによって損害賠償額に開きが出ることは、合理的理由なく性別による差別的取扱いをするものとして、この差別的取扱いを違憲(憲法14条1項違反)としました。

上記判決は労災保険に関するものですが、これを受けて、交通事故についても平成23年5月2日に自賠法施行令の後遺障害別等級表が改正されました。

この改正により、外貌醜状について男女間の障害等級の差はなくなりました。

もっとも、外貌醜状の内容や程度は多種多様ですので、外貌醜状によってどの程度仕事に制限を受けたのか(労働能力喪失割合)や慰謝料については、被害者ごとの個別事情を踏まえた判断となります。