2011年11月09日

◆ETCレーン内での事故

川原 俊明


最近は、ETC割引の効果か、多くの車がETCを搭載しています。そして、それに比例してか、ETCレーンでの交通事故が多発しています。

そこで、ETCレーン内での事故について、判例を踏まえてご紹介したいと思います。

高速道路のETCレーン内でA車が徐行していたところ、その後ろを走っていたB車がETCレーン内で追突したという事故を取り上げます。

ETCシステム利用規程8条1項には、「ETC車線内は徐行して通行すること」「前車が停止することがあるので必要な車間距離を保持すること」とされており、ETCシステム利用規則実施細則4条には、「ETC車線内で前車が停止した場合、開閉棒が開かないもしくは閉じる場合その他通行するに当たり安全が確保できない事情が生じた場合であっても、前車又は開閉棒その他設備に衝突しないよう安全に停止することができるような速度で通行」すべきと規定されています。

裁判例では、上記条項を指摘した上で、追突車両に一方的な過失を認めました(A車:B車=0:100)。

そして、「仮に、開閉棒が開かない場合で、A車が急ブレーキをかけた場合であっても」、これに追突することは上記規定・違反に反するB車の一方的な過失だとして、A車の過失を否定しています。

事例判断ですので、ケースバイケースな面もありますが、裁判所の基本的な考え方は、ETCレーンに侵入した前方車両がある場合、その後方を走る車両は、万が一、開閉棒が開かなかった場合であっても、追突しないよう、高度な注意義務が課せられているということです。

ETCは、渋滞緩和にもつながる便利なものですが、便利ゆえにより一層注意して利用したいですね。

2011年11月02日

◆東京FM放送に出演

川原 俊明

東京FMのラジオ番組「TIME LINE」に10月31日生出演しました。

星浩という政治ジャーナリストの出演する生放送で、ニュースをきっかけに考えるヒントを提供する60分の番組です。

今回の放送は、東日本大震災で、福島、宮城、岩手の3県を支援した自治体が、その経費を3県に請求する手続きを進めている。災害救助法に基づく手続き、ということだが、疑問の声が上がっている。

 
ということで、私が、今年の10月10日に出したブロク「ばかげた被災地支援費請求」が、FM東京の目にとまったのでしょう。


このときのブログの要旨をお伝えします。
 
<震災から半年経った今も、がれきが積まれている東北三県の復興未来が未だに描かれていない。これに輪をかけたバカげた事態が起こっている。被災地に対する全国各自治体の支援活動も、それぞれの地域住民の善意の支援だったはず。

しかるに救護活動費の請求書が回ってくるとすれば、被災地の自治体にとって第二次災害とも言うべき事態である。東日本大震災は、東北三県だけの問題でなく、日本全体の損害だから、各自治体からの被災地支援費請求は撤回すべし>。
 

政治ジャーナリスト星浩さんからは、私に、被災地支援費請求の問題点について、コメントを求めてきました。

そこで私は、次のようなコメントを出しました。

●なぜ被災地支援経費請求をする自治体が現れたのか
  
災害救助法は、災害が発生した場合、国が、地方公共団体や日本赤十字社などの協力の下に、応急的に必要な救助を行い、被災者の保護と社会の秩序を守ろうとする法律です。ただ、この法律は、都道府県知事が、その所轄の範囲内の市町村に発生した災害に対する救助、を想定しているものでした。


今回の東日本大震災のような大規模災害は、法律の想定する範囲外の事態でした。
 

そこで国(所轄の厚生労働省)は、災害救助法を弾力運用しようとして通達を出しました。被害の甚大さを考えて、被災地でない都道府県からも、積極的に被災者の救助にあたって欲しい、と。
 
それだけなら良かったのです。ところが、救助に要した費用について、「被災地の都道府県に全額求償して下さい。」こんなことが通達に書かれていました。

全国の自治体では、費用負担を念頭に置くことなく、人道上の観点から被災三県に対する救援活動を行ってきたのです。にもかかわらず、救助費用を全額請求せよ、という通達だったので、東京や兵庫、鳥取など全国の自治体から、救助費用を被災地の東北三県に全額求償する、という事態が起こったのです。

 
今回のような未曾有の災害に全国の他府県から救助を差し伸べるのは人道上、当然のことです。費用の自己負担を覚悟で出費した都道府県もたくさんありました。


国全体で被災地を応援すべき事態です。そんなときに、なにも壊滅的被害に遭っている東北三県に向けて、救助費用を全額請求されたい、と通知を出す厚生労働省のお役所感覚には疑問があります。

東北三県にとって、復旧すらままならないときに、はやくも他の都道府県から請求書が送られてくるのですから。経済的な負担ばかりか、煩雑な業務負担がかさみ、復旧に足かせとなります。
 

東北三県の被害状況を見れば、各自治体が負担した救助費用は国が全額負担すべきです。 同じ通達を出すなら、救援した他の都道府県の費用負担は、被災県に対してでなく、全額、国に求償できる、とすべきだったと思います。

星浩さんも、厚生労働省の通達には疑問を呈し、私と認識を共有できたのが良かったです。

みなさんは、どうお考えでしょうか。

2011年10月26日

◆交通事故で健康保険を使うには

川原 俊明

交通事故によって生じた傷害の治療を受ける際、病院は「交通事故は健康保険の適用外です」と言ってくることがしばしばあります。

もちろん、加害者が全部の損害を弁償してくれるのであれば、健康保険を使わなくても問題ありません。しかし、相手方の保険会社から治療費の支払いを拒まれているときなどは健康保険が使えるか否かは死活問題です。

病院側としては、保険診療(健康保険を適用した場合の診療)よりも、自由診療(健康保険を適用しない場合の診療)の方が、利益が多いので、健康保険適用を回避するため、「交通事故は健康保険の適用外です」と言ってくるのです。

しかし、保険診療機関(健康保険が使用できる病院等)においては、健康保険適用の申し出があれば、病院がこれを拒むことは法律上できません。 すなわち、交通事故においても健康保険を使うことはできます。

ただし、交通事故において健康保険を使うためには、被害者が1つしなければならない手続きがあります。

それは、「第三者行為による傷病届」を保険機関(市町村、健康保険組合等)に提出することです。 健康保険は治療費の7割を保険機関が病院に支払いますが、実はこれ、立替払いなのです。

すなわち、本来治療費は、加害者が過失の割合に従って払うべきものですから、これを保険機関が支払えば、その分、後で加害者からもらいますよ、というものです(健康保険法57条)。これを、健康機関から加害者へ「求償」すると言います。そして、「第三者行為による傷病届」とは、被害者が、この「求償」をしていいですよと、了解するものなのです。

以上のことを理解したうえで、必要であれば、病院に対し保険診療をきちんと求めていきましょう。

2011年10月23日

◆男性の外貌醜状

川原 俊明

Q 先日、歩行中に乗用車と衝突し引きずられる事故に遭い、そのため顔面、頚部、上腕、胸部など広範囲にケロイド状の瘢痕が残ってしまいました。

私は、工場作業員(21歳、男性)ですが、加害者からは、男性は女性に比べて見た目についての関心が低いので、損害は少ないと主張されています。このような主張が認められますか?

A 認められません。
  

以前は、外貌醜状傷害(外見に醜い傷痕が残ること)について、男女の間で労災保険や自賠責の障害等級に差が設けられていました(差別的取扱い)。そのため、同じ程度の外貌醜状でも、損害賠償額に大きな開きが出る事態がありました。

しかし、労災保険について、京都地裁平成22年5月27日判決は、この差別的取扱いによって損害賠償額に開きが出ることは、合理的理由なく性別による差別的取扱いをするものとして、この差別的取扱いを違憲(憲法14条1項違反)としました。

上記判決は労災保険に関するものですが、これを受けて、交通事故についても平成23年5月2日に自賠法施行令の後遺障害別等級表が改正されました。

この改正により、外貌醜状について男女間の障害等級の差はなくなりました。

もっとも、外貌醜状の内容や程度は多種多様ですので、外貌醜状によってどの程度仕事に制限を受けたのか(労働能力喪失割合)や慰謝料については、被害者ごとの個別事情を踏まえた判断となります。

2011年10月12日

◆馬鹿げた被災地支援費請求

川原 俊明

東日本大震災は、福島、宮城、岩手など東北地方に莫大な被害をもたらしました。震災から半年経った今も、がれきが積まれている東北三県の復興未来図は未だに描かれていません。

政府の無策には、怒りを覚えます。ところが、これに輪をかけたばかげた事態が今起こっているのです。

福島、宮城、岩手の被災地を支援した全国自治体の救援活動には拍手喝采でした。ところが、この救援活動によって生じた経費について、全国の自治体から、被災3県に請求書が回されようとしています。

被災地への義援金は、日本国民をはじめ世界の人々からの善意の結集です。被災地に対する全国各自治体の支援活動も、それぞれの地域住民の善意の支援だったはずです。

しかるに、救援活動費が請求されるとなれば、被災地の自治体にとっては、第二次災害ともいうべき事態です。

日本国民は、そんなに冷たい民族だったのでしょうか。私は怒りを抑えきれません。

ましてや、厚生労働省が、災害救済法に基づく被災地自治体への請求権の存在を理由に救助要請していた、というのです。これは、血も涙もない官僚の発想に、各自治体の政治家が乗っかった、という構図でしょうか。

全国自治体からの被災自治体への支援費請求は、直ちに撤回されるべきです。

仮に、救助した自治体が費用負担に支障を来すなら、当然のことながら国庫負担として解決すべきものです。

今回の被害は、東北三県だけの問題ではありません。日本全体の莫大な損害なのですから。

2011年10月08日

◆子供はすべて平等であるべき

川原 俊明

この世に生を授かった子ども達。

生まれてきた子どもたちは、すべて平等の人生のスタートラインに立たなくてはなりません。

もちろん、それぞれの子どものその後の努力により、才覚を伸ばした人材はこれを尊重する必要があります。

人が、出生後の努力・運命により差違が出るのは、人間社会ではあたりまえのことです。

私は、そのこと自体を非難するものではありません。

自分の出生にあたり結婚している両親の子(嫡出子 ちゃくしゅつし)か、そうでない子ども(非嫡出子 ひちゃくしゅつし)かは、この世に出生した子どもにとって、自分で選択できる場面はありません。 

明治時代からの一夫一婦制度を堅持すべきだとする世論のもとで、婚外子(こんがいし ひちゃくしゅつし)には、一夫一婦制度の破壊とすう見解のもとで、民法は、相続場面で婚外子に対し差異・不平等を設けました。

当時の社会情勢をもとにした立法としては、理解できます。しかし、現代の平等社会のもとでは、そのまま通用すべきではありません。

最近、大阪高等裁判所で判決が出ました。

婚外子の相続差別(相続分に2分の1の差があります 民法900条)は憲法違反だと。

嫡出子に対し、非嫡出子は、その半分しか相続できない、という民法制度は、もはや法律としての用をなさなくなりました。

子どもは、みんな平等のスタートをさせるべきです。そして、努力し、頑張る人にご褒美を上げるのは、当然ではないでしょうか。

2011年10月04日

◆逸失利益って何?

川原 俊明

弁護士:今日は、交通事故の損害賠償請求訴訟で争点の一つとなる「逸失利益」について、お話したいと思います。

 
Aさん:逸失利益って何ですか?

 
弁護士:例えば、交通事故で不幸にも被害者が亡くなったとします。そうすると、その被害者が事故に遭わなければ得られたはずの収入が得られなくなってしまいますね。その本来得られたであろう利益、が逸失利益です。

 
Aさん:被害者が亡くなった場合にのみ問題になるのですか?

 
弁護士:いいえ。後遺症が残ってしまった被害者に対しても、その後遺症の程度に応じて逸失利益が算定されるのです。

 

Aさん:具体的には、どうやって算定されるのですか?
 
 

弁護士:「基礎収入から被害者本人の生活費として一定割合を控除し、これを就労可能年数に応じたライプニッツ係数を乗じて算定する」ことになります。
 
 

Aさん:・・・?
 
 

弁護士:いろいろ専門的な単語も出てきているのですが、要は、被害者の年収から生活費に使う分を引く。その額を就労可能な年齢分足す。そして、将来に渡って少しずつもらえるはずの収入を、今一括してもらえるわけですから、その分の利益を引くという計算になります。
 
 

Aさん:なるほど。でも、今の話は、被害者に収入のあることが前提になっていますよね。例えば、被害者が専業主婦の場合は、逸失利益は0になってしまうのですか?
 
 

弁護士:いいえ。そういうときのために、職種別・年齢別の賃金に関する統計、すなわち「賃金センサス」が参考になります。インターネットでもみることができますよ。これをみれば、自分と同じ年齢、性別、学歴の人の平均収入を知ることができます。そして、これを専業主婦の年収と仮定するわけです。
 
 

Aさん:子供の場合はどうなるのですか。
 
 



弁護士:裁判所では、賃金センサスの女性労働者の平均賃金を基礎収入とすることが多いようです。でも、今は、女の子でも大学進学率や就職率が高くなっていますね。そのため、全労働者の平均賃金を用いるべきだとの裁判例も増えつつあるようです。
 
 

Aさん:無職の人の逸失利益も同じように判断するのですか?
 
 

弁護士:無職であっても、年齢や職歴、勤労能力、勤労意欲をみれば、就職していてもおかしくない、という人もいますよね。そういう場合は、逸失利益が認められることもあります。その場合の基礎収入は、年齢や失業前の実収入額などを参照して、個別に判断されることになります。
 
 

Aさん:私は、仕事もしていて、家に帰れば主婦として家事もしています。基礎収入は、給与所得分と家事労働分の合計額になるんですよね!
 
 

弁護士:残念ながら必ずしもそうではありません。一般論をいえば、実収入が賃金センサスの学歴計・女性全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額により、下回っている
ときは専業主婦の取扱いと同様になります。

 

Aさん:なんだか不公平な感じがしますね・・・。


 弁護士:逸失利益は、言ってしまえば「事故に遭わなければ得られた」という仮定のうえで語られるフィクションに過ぎません。それでもできるだけ実体に合った評価がなされるよう、弁護士も裁判所も日々努力しているところです。


  

2011年10月02日

◆交通事故で健康保険の使い方

川原 俊明

交通事故によって生じた傷害の治療を受ける際、病院は「交通事故は健康保険の適用外です」と言ってくることがしばしばあります。

もちろん、加害者が全部の損害を弁償してくれるのであれば、健康保険を使わなくても問題ありません。

しかし、相手方の保険会社から治療費の支払いを拒まれているときなどは、健康保険が使えるか否かは死活問題です。

病院側としては、保険診療(健康保険を適用した場合の診療)よりも、自由診療(健康保険を適用しない場合の診療)の方が、利益が多いので、健康保険適用を回避するため、「交通事故は健康保険の適用外です」と言ってくるのです。

しかし、保険診療機関(健康保険が使用できる病院等)においては、健康保険適用の申し出があれば、病院がこれを拒むことは法律上できません。 すなわち、交通事故においても健康保険を使うことはできます。

ただし、交通事故において健康保険を使うためには、被害者が1つしなければならない手続きがあります。 それは、「第三者行為による傷病届」を保険機関(市町村、健康保険組合等)に提出することです。

健康保険は治療費の7割を保険機関が病院に支払いますが、実はこれ、立替払いなのです。

すなわち、本来治療費は、加害者が過失の割合に従って払うべきものですから、これを保険機関が支払えば、その分、後で加害者からもらいますよ、というものです(健康保険法57条)。

これを、保険機関から加害者へ「求償」すると言います。そして、「第三者行為による傷病届」とは、被害者が、この「求償」をしていいですよと、了解するものなのです。

 以上のことを理解したうえで、必要であれば、病院に対し保険診療をきちんと求めていきましょう。

2011年09月30日

◆自賠責保険請求権の消滅時効期間2年から3年に

川原 俊明

旧商法に定められていた保険に関する法律が、商法から「保険法」として独立して制定され、平成22年4月1日から施行されました。それに伴い、交通事故の際の自賠責保険の請求権について、2年の消滅時効の期間が設けられていたものについて、事故日が保険法の施行日以後に発生したものについては、3年に変更となりました。

従来、自動車損害賠償保障法第19条において、被害者請求(同法16条1項)や仮渡金請求(17条1項)などの規定による請求権は、2年を経過したときは、時効によって消滅すると定められていました。

他方で、いわゆる自賠責保険金の請求ではなく、加害者らに対して、直接損害賠償請求の裁判をする場合の時効期間は、民法724条で、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年で時効消滅するもの(但し、事故時から20年経過によって消滅する除斥期間という制度もあります。)と定められています。

そのため、私達弁護士も、交通事故の損害賠償の依頼を受けたときには、被害者の代理人として自賠責保険の保険金請求をする場合には、2年で時効にかかるのに対し、加害者らを被告として、裁判所に直接損害賠償請求訴訟をする場合には、その請求権の時効期間は3年と、時効期間が異なるために注意が必要でした。

しかし、今回、保険法の改正に伴い、自賠責保険金の請求権の根拠となる自動車損害賠償保障法も一部改正され、従来2年と定められていた時効消滅期間について、3年へ改められたため、損害賠償請求訴訟をする場合と時効期間を統一的に考えることが可能になりました(保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律の第15条参照)。

但し、交通事故の日が保険法の施行日(平成22年4月1日)より前の場合には、従前のとおり時効期間は2年のままですので、注意が必要です。
(保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律の第16条第1項参照)。


2011年09月07日

◆課税と属地主義

川原 俊明


日本の税制は、古くは律令制のもとでの租庸調に始まり、明治時代の地租改正によって近代的な税制が整えられました。しかし、いつの時代でも、民にとって、税金は重い負担であります。税負担を免れようとする人々と、厳しい税徴収を行おうとする当局とが、知恵比べをしてきました。

さて、現代の日本の税制は、原則として、属地主義という建前が取られています。これは、課税基準時において日本国内に「住所」を有する者に課税するという考え方です。 この属地主義のもとで税負担を免れようとすれば、国内に「住所」がない状態にすればよいと考えるでしょう。

例えば、竹中平蔵氏は、住民税が「1月1日」に住民票の住所地で課税されること(地方税法24条1項1号、2項、39条、294条1項1号、2項)に着目し、「1月1日」の前後を挟み、アメリカへの転出届を出しすぐ日本への転入届を出すという手法で、住民税の負担を免れました。

これは、2002年に雑誌「フライデー」で脱税疑惑と報道されため、竹中氏が名誉毀損されたと提訴し、竹中氏が勝訴しています。

最近では今年2月に、武富士の元会長の長男が、元会長夫妻からの株贈与をめぐり、贈与税など1330億円の追徴課税処分の取消しを訴えた事案で、最高裁が処分取消を認める判決を出しました。

この事案では、長男の「住所」(相続税法1条の2第1号〔H15年改正前〕)が国内か香港のいずれにあるかが争われました。

最高裁は、「住所」の判断は、客観的に生活の本拠たる実態を具備しているか否かにより決すべきものとした上で、長男の生活の本拠が香港にあると認定し、主観的に贈与税回避の目的があったとしても、客観的な生活の実態が消滅するものではないとしています。

これは、相続税法上の「住所」概念は、民法上の「住所」概念(民法22条)の借用概念であることからの帰結とされています。

 なお、長男はもちろん香港への転出届を出しています。 納得できない点もありますが、憲法84条で租税法律主義(法律なくして課税なし)が取られている以上、立法的に解決されるのを待つしかないでしょう(武富士の件は、平成12年法律第13号により立法措置がとられました)。 ちなみに、アメリカのように住民票のない国も多く、IDカードなどで身分を証明する仕組みとなっています。

 日本では、海外転出届を市区町村の住民登録窓口に出せば、住民票がなくなります。 ただし、住民票を移すと選挙人名簿に登録されないなどの不利益もあります。

 もっとも、節税か脱税かの違いは微妙です。税金のことは、税理士だけでなく、弁護士にもご相談下さい。

2011年07月28日

◆大阪府民は、お笑いと政治を区分すべき

川原 俊明

大阪府民は、吉本喜劇、松竹新喜劇などが代表するように、日常的にお笑い文化にどっぷりと浸かっています。私も大阪文化が大好きで、オヤジギャクも連発します。

でもそれは、歴史的に見れば、江戸文化に対抗する浪花文化が背景にあります。お上に対する反抗精神をお笑いで表現するところに、その神髄がくみ取れます。だけど、大阪府民は、選挙など、社会の方向づけを示すべき場面においては、お笑いでごまかしてはいけません。

将来を考え、冷静な判断が必要です。
かつて、横山ノックが大阪府知事に当選しました。その後、彼は、破廉恥罪を契機に引退しましたが・・。おそらく、大阪以外の県民は、大阪府民の選挙感覚を異様に思っているのではないでしょうか。大阪のリーダーは、お笑いの人気者か、と。

しかし政治の選択は、人気投票であってはならないのです。

いま、現代の寵児ともてはやされているかのような橋下徹大阪府知事。彼も、たかが人気テレビタレントにすぎません。彼の人気は。あるテレビ番組で、行列のできる法律相談所のメンバーとして人気を博していた、というだけではないでしょうか。

彼が、知事就任後、府民の生活改善に役に立つ事業がどれほどなされた、というのでしょうか。

WTCの大阪府庁移転論議などは、その最たるものです。府庁移転問題は、東日本大震災を契機に、当然のことながら見直しを求められています。軟らかい埋め立て地盤の上での高層ビルが、大阪の防災拠点になりようがありません。

これも、大阪の将来構想を描いた上での移転論議でなく、彼の一時的な発想での問題提起にすぎません。

いまの大阪府知事は、結局、大阪府民の生活向上に、なんら役に立っていません。知事として、中途半端な役割のまま、今度は、大阪府知事の座を捨て、大阪市長選に出馬しようとしています。

橋下府政の、大阪府改革路線は、一体何だったのでしょうか。何の問題解決もしないまま、大阪府知事職を放棄するのは、無責任といわれても仕方がないと思います。(終)



2011年07月19日

◆なでしこジャパンに乾杯

川原 俊明

サッカーの女子ワールドカップで、日本女子チーム(なでしこジャパン)が初優勝しました。対戦相手は、世界ランクbPのアメリカでした。それも、延長戦後のPK戦で決着をつけ、日本女子チームを優勝に導いたのでした。

日本女性の社会進出。これはすばらしいことです。

基本的に、人類の半数は女性で占められています。にもかかわらず、いままでの人類の歴史を振り返ってみると、余りにも男の都合だけで世の中を動かしていました。

そのあげく、だらしない男性政治家たちが、日本の進路も決められないでいるのが現状です。
そろそろ思い切って、女性の総理大臣を育てていきましょう。

世界の趨勢は、男女平等・男女雇用均等・男女共同参画にあります。日本でも、国際連合で採択された女性差別撤廃条約を批准し、上記各名称の法律が制定されています。

ただ、男女共同参画という意識の広がりが弱いために、実現が遅れているのが現状です。政治が国民を積極的に指導しない。教育機関の意識が薄い。この結果、日本の立ち後れが目立っているのです。

1999年に制定された男女共同参画社会基本法
【前文】
<我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、男女平等の実現に向けた様々な取組が、国際社会における取組とも連動しつつ、着実に進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている。

一方、少子高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等我が国の社会経済情勢の急速な変化に対応していく上で、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、緊要な課題となっている。

このような状況にかんがみ、男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け、社会のあらゆる分野において、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくことが重要である。

ここに、男女共同参画社会の形成についての基本理念を明らかにしてその方向を示し、将来に向かって国、地方公共団体及び国民の男女共同参画社会の形成に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する>。
 
この法律のすばらしい精神を一日でも早く実現しましょう。

評論家は、少子高齢化による日本経済の凋落傾向を最もらしく唱えています。しかし、私はそうは思いません。

若くて元気な女性陣、パートに甘んじている女性陣。彼女たちを、もっともっと社会の中核に組み入れれば、日本経済社会の立て直しは、十分できるはずです。

                  弁護士法人 川原総合法律事務所   

2011年06月18日

◆被災者受領の義捐金は「収入」か

川原 俊明

何とも残酷な国であるか。 税金の無駄遣いばかりしている政治家や役人。

一方では、もともとの困窮者が、津波被害でどん底に陥っていってしまった場面をとらえて、生活保護給付を停止するのは、如何なものか。
 
生活困窮者は、申請により生活保護費が受給できるわけですが、その実態は、最低限の生活維持財源しか交付されません。

その困窮者が東日本大震災の被災ですべてを失い、家族も家財も身の回りの衣服もない、といっているのです。この人たちが、世界の善意で集まった義援金を受給しても、何の天罰も受けるはずがありません。

ところが、国は、義援金を受領した生活保護受給者には、義援金支給の範囲で、生活保護費の支払いを停止する、というのです。

今までも例がありました。
交通事故で怪我をした生活保護費受給中の被害者が、示談により損害賠償金を受けると、生活保護費を停止させられるばかりは、残りの賠償金も国に召し上げられてしまいます。

交通事故などによる損害賠償金の受領は、自分の肉体的、精神的、財産的、損失など、マイナスをカバーしてもらう性質のものにすぎず、全体として資産の増加に繋がる「収入」ではありません。あくまで「損失補填」にすぎません。

そのために、所得税制も、受領した損害賠償金には、税金をかけないのです。
このことを考えれば、義援金の受領により生活の立て直しをしようとしている生活保護費受給者から、義援金受給額に見合う生活保護費の停止は、即刻やめるべきです。

乾いたぞうきんを、さらに締め上げるのが、福祉国家日本国の姿勢なのでしょうか。
とんでもないことです。

また、全世界から2700億円もの義援金が集まっているのに、被災して3か月も経った現在でも、まだ、配布額は15%程度だといわれています。

集まった義援金は、すみやかに配布してこそ値打ちがあります。お役所の主張する形式的平等の壁が、これを阻止しています。

仮に配布の不公平が発生したとすれば、後で調整すればすむことです。
 
未曾有の被害に遭い、すべてを失った人々が、一日も早く未来に目を向け、再出発していただきたい。

そのためには、一日も早く、より多くの義援金を受け取ってもらうしかないではありませんか。

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◆<2295号 目次>
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・佐々木元東大総長が今ごろこんなことを… :阿比留瑠比
・孤島暮らしの喜びと悲しみ:平井修一
・「やませ(山背)」のこと:古澤 襄
・秋田に無いクスノキ(楠):渡部亮次郎
・話 の 福 袋
・反     響
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