川原俊明
1946年制定の日本国憲法。憲法は、前文と、103条からなる日本国の規範(きまり)です。
悲惨な第二次世界大戦の反省の元に生まれた憲法でした。国民主権、基本的人権の保障、永久平和主義など、世界に誇り得る憲法を手にして、60数余年。
憲法の神髄は、すべて「前文」に言い表されています。
《前文》
本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。
われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
この憲法が、制定された時点から、異を唱える論者がいました。現在の、改憲論者につながっています。「マッカーサーの押しつけ憲法だ。自主憲法を制定しよう。」
敗戦直後の混乱期、確かに原案は、GHQ占領軍司令部の手にかかるものです。しかし、敗戦に打ちのめされ、戦争の悲惨さを痛いほど身に感じた日本国民にとって、この憲法は、まさに未来への希望の星だったのです。
自衛隊の海外派兵、自由主義と個人主義の混同など、社会の実情が、憲法の精神に合致していないところがあるとしても、それは、まだ、現状が、憲法の理念に到達していない、ということに過ぎません。憲法の実現は、国民の今からの努力により実現すべきものです。
改憲論者は、現状にあわせて、憲法を改正する必要がある、と主張しています。しかし、2000年の日本の歴史のなかで、はじめて民主主義をうたった憲法が、日本国憲法なのです。これを、低レベルの現実に引き戻す必要はありません。
私たちは、憲法前文の崇高な理念を、もう一度、心に刻み、世界に範をたれるべきです。(完) 20010.05.03