2008年07月05日

◆ガソリン値上げと憲法論議

川原俊明(弁護士)

どのように結びつくのか、わからないほどの難問です。

道路財源法案が、先般衆議院で再可決されました。現行憲法制定以来、50数年ぶりとか。衆議院で可決された法案が、参議院で否決された場合、衆議院で3分の2以上の再議決により可決されると、法律となります。これも、憲法上の合法的な手続きです。
 
ねじれ国会でこそ、みられる憲法上の権限行使かもしれません。

このねじれ国会で何を見たか。衆議院の欠席戦術と河野衆議院議長の議場阻止行動。昔の社会党の戦術と何ら代わりがありません。その社会党は、すでに姿も形もないことを理解すべきです。
 
小沢一郎さんには、昔ながらの政治屋の戦術が見え隠れしています。小沢さんは、民主党内で自分の基盤を死守しようとして、強硬路線に出ています。しかし、その姿勢の背後には、国民の姿がまったく見えません。
 
小沢さんの自らの権力欲以外、何者でもありません。国会議員は、国民の立場に立って、大局的に物事を理解し、事物を把握すべきです。今回の「国会議員」たちの行動には、あきれ果てました。
 
未だに政治三流の国家・日本。平和であることはすばらしいことですが、すべての国会議員が、国民のあるべき姿を見ながら、活動すべきでしょう。
 
憲法上の手続きを履行しながら、それを妨害する輩が、私たちの代表であるというのは、きわめて恥ずかしいことです。
 
とはいえ、私は、無条件で与党の対応に賛成しているわけでもありません。世界は、ますます大きく変化を遂げています。日本の政治家は、もっと真剣に世間並びに社会の動きを把握したうえ、世界の動きを見て、健全な社会の構築に全力を挙げて欲しいものです。(完)

2008年06月30日

◆弁護士の役割

川原俊明(弁護士)

鳩山法相に対する朝日新聞の「素粒子」コラムに、「死に神」指摘があったので、私は、マスコミの表現として、明らかに不適切であることを指摘しました。<本欄6月24日号に「鳩山法相は、死神なのか」を掲載>
 
鳩山法相が、現在の日本の法律に従って、法務大臣としての義務を履行している以上、従来の法務大臣と比較して、執行の多さを非難することは、筋違いです。後の朝日新聞が、同じコラムで「執行の多さをチクリと刺した」、というのは、今回の問題を理解していないし、使う言葉を間違えているように思います。
 
これに関連して、私のブログにも、ご意見が殺到しているので、誤解なきよう、私の弁護士としての考え方なり、信念、をお伝えします。
 
私は、一つの新聞社を批判しているのではありません。マスコミの質を問題にしています。全国紙を代表する新聞記事の一行が、どれだけ指摘された人の心を踏みにじむのか。これが理解されていないことを問題にしています。

マスコミは、その道でプロであるべきしょう。安易なペンの暴力は、自らの身を滅ぼすことになります。その意味で、今回、軽率な表現に対する謝罪がなかったことは、新聞社としての姿勢を疑います。
 
もう一つ考えたいのは、刑事弁護における弁護士の役割です。司法に対する一般的な理解として言えることは、公権力を背景に犯罪を糾弾する検察官と、被告人を保護する弁護人、これを中立的な立場から判断する裁判所。

この図式は正しいものがあります。しかし、私が言いたいのは、弁護士の社会的役割をふまえた上で、この図式を運営させる必要があります。

さまざまな欲望と自我を持った人間が、利害を対立させている社会では、残念ながら、犯罪は決してゼロにはなりません。しかし、一旦、発生させた犯罪者に、二度と犯罪をおこさせるべきでない。この姿勢を貫くことによって、世の中が少しでも良くなる、と私は考えています。

司法の中で、弁護士が、検察官と立場を異にすることがあっても、よりよき社会を築くべき役割は、司法の一員として同じことであるはずです。

私は、弁護士が、被告人の更生のため、適切な量刑を求めるのが大切であり、単に被告人の量刑さえ軽くなればいい、と考える刑事弁護は間違っている、と思っています。
どんな刑事事件であろうが、弁護士が、被告人に「刑を軽くしてやった。」と思わせる弁護は、その被告人の、犯罪に対する安易な考えを植え付けることになりかねません。

被告人が、凶悪犯罪にもかかわらず「こんな量刑で済んだ」、と思わせるのは、弁護士が、被告人に、更生どころか、次の犯罪を助長させるようなものでしょう。

私が刑事弁護する場合、絶えず、被告人と向き合い、犯罪が明らかな場合、弁護人の立場から、罪を犯すことのむなしさと、身柄拘束など、犯罪が割に合わないことを説諭します。被告人の更生を望んで、「同じ過ちを犯すな」と、説得するのです。このことにより、社会が少しでも良くなってくれたら、と考えています。 

この観点から、弁護士は、検察と立場を異にしますが、社会を少しでも良くしたい、被告人に立ち直ってもらいたい、と考えて弁護活動すべきでしょう。(完)

2008年06月24日

鳩山法相は「死に神」なのか

                     川原俊明

連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤死刑囚に対するマスコミの評価で、気になる表現がありました。平成20年6月18日付け朝日新聞夕刊「素粒子」欄です。

「永世死刑執行人 鳩山法相 またの名、死に神」。
三流週刊誌の表題なら、軽く受け流す私も、全国紙を代表する新聞社が、こんな表現をしていいのだろうか、と疑問を持っています。
 
鳩山法相が、在任中最多の13人の死刑執行に署名したことをもって、この表現をされたのでしょう。
 
しかし、現在の日本の刑法では、殺人罪などの凶悪犯罪に対し、明らかに死刑に処すことがあることを、明記されています。
 
裁判所は、事件の諸事情を勘案し、相当の勇気を持って死刑判決を言い渡しているのです。死刑判決が確定した死刑囚に対し、死刑執行をするのは、法律に基づいたものであり、時の法務大臣は、死刑執行の義務があります。
 
私は、多くの刑事弁護を手がけておりますが、犯罪に応じた適切な処罰は、当たり前のことです。不適切な処罰に対しては、敢然と検察に立ち向かいます。

しかし、当該犯罪に相応する処罰であるならば、むしろそれが本人の更生につながるのです。それによって社会が良くなると思っています。
 
刑事事件における弁護士の仕事は、適切な量刑を求めることであり、被告人の量刑が単に軽くなればいい、と考えるのは間違っています。
 
そんな勘違いしている弁護士の多いことも問題です。
 
法律に基づいた死刑執行を非難するならば、法律を無視していることと同じです。法律の内容が不適切であれば、法律改正を考えるべきであります。

マスコミの議論は、次元が異なります。

東京の秋葉原での無差別殺人事件を見ても、最近の人の心の中に、相手を思いやる気持ちがなくなっているのではないか、あるいは少なくなっているのではないか、と心配しています。人は、100人いれば、100人とも、その背後に愛する家族があり、その人の過去未来の人生があります。

そんな人の命を簡単に切り捨てる者は、人間の皮を被ったケダモノにすぎません。人の命を無残に奪った者の人権が尊重されて、被害にあった家族の苦しみは、どうして報われるのでしょうか。

朝日新聞の前掲記事は、遺族の心を逆なでするものとしか思えません。                            (完)
                  
                 大阪弁護士会所属 弁護士
                            2008.6.19


2008年04月12日

◆C型肝炎訴訟の終結に向けて

川原俊明(弁護士)

薬害肝炎救済法が国会で成立したのは、平成20年1月11日です。C型肝炎訴訟に関わっている当法律事務所としても、誠に喜ばしい事態と考えています。

昭和49年、血液製剤フィブリノゲン投与を受けたため、C型肝炎に罹患(りかん)し、重篤な状態に陥って入院中の奥さんを抱えるMさん。

今までの勤めを辞め、病状が悪化する奥さんの看護に専念してこられたのでした。

奥さんは、息子さんから生体肝移植を受け、命を取り留めたものの、依然として事態は悪化しています。肝臓ガン、さらには体全体を病巣がむしばもうとするに至っているのです。

Mさんの奥さんは、自らが被害に遭いながらも、訴訟に至らない多くの肝炎患者が全国に散らばって苦しんでいることを知りました。

もともと、国や製薬会社に対する損害賠償請求訴訟という形での責任追及だけでは、究極の解決にならない。そのように考えたMさんと奥さんは、集団原告訴訟団から離脱して、独自の訴訟をめざし、訴訟に及んでいない多数の肝炎患者の救済を図るために、「肝炎家族の会」を発足させたのでした。

そして、多くの肝炎患者に救済の手をさしのべようと、Mさんが中心となり、肝炎に苦しむ多くの患者救済の受け皿となるべく、何度も国会を駆け回って国会議員と折衝を重ねました。

また、厚生労働省にも掛け合い、幅広く肝炎患者救済体制確立の必要性を主張してきたのでした。

当法律事務所は、Mさんの行動を全面的に支援すべく、弁護団から離れたMさんの奥さんの訴訟代理人となりました。その結果、訴訟を遂行する一方、「肝炎家族の会」を支援する体制をとることにしたのです。

今回の薬害肝炎救済法成立にあたっても、Mさんたちの肝炎患者全体救済の考え方が全面的に採用されています。C型肝炎訴訟は、まもなく全面終結の予定です。

Mさんたちは、平成19年12月13日、大阪高裁が提案した和解案についても、いち早く和解受け入れを表明し、訴訟の早期終結を訴えてきました。


Mさんたちの肝炎患者全体に対する救済活動は、今からが本番です。「肝炎家族の会」は、内閣府にNPO(特定非営利活動法人)法人設立申請を行い、さらに力強く救済活動に踏み切ったのです。私たちも、福田首相の決断を大いに評価したいと思います。(完)


★補足―<厚生労働省は4月11日、C型肝炎感染の危険性のある血液製剤フィブリノゲンを原料とする縫合用接着剤「フィブリンのり」を使用していた可能性のある計556医療機関名を公表。「フィブリンのり」は、C型肝炎の原因となったフィブリノゲンが、納入先で他の薬剤と調合された「のり」として止血や縫合に使われていたもの。

肝臓、肺がん、大動脈瘤、心筋梗塞、狭心症などの手術、尿路結石や骨折などにも遣われていた。(朝日新聞4月12号)―ネットモウ編集部>




2008年01月03日

◆「偽」のレッテルを貼られるな

                川原 俊明(弁護士)
明けましておめでとう御座います。

さて、「偽」が、2007年を象徴する漢字だとされました。
確かに、賞味期限改ざんや、食品の内容を偽った食品業界の「偽」がマスコミを騒がせました。
 
それも新進企業に限らず、100年を超える老舗とされる企業ですらも、「偽」が常態化されているのは、何とも弁解の余地がありません。

もちろん、賞味期限の経過により、食品が直ちに毒物に代わることはまれであるにせよ、消費者から見れば、食品あるいは、食品会社に対する信頼を揺るがす大きな問題となりました。
 
しかも、食品会社だけでなく、大手・建設会社でも、高層ビル建築にあたり、鉄骨の数量不足が露見したり、建設資材製造会社が、品質を落としていたりして、「日本製品」への信頼を揺るがす一年でした。
 
この現象は、世界的に見ても、日本が、あらゆる分野で生ぬるい国となり、賞味期限が切れかかった国になりつつあることを示しています。今のうちに手綱をきつく締め直し、精神的にも物質的にも日本の国を立て直すことが不可欠です。
 
弁護士業界も同じことが言えます。
弁護士業界が、いまだに、昔と同じギルド制度でエリートの立場が守られていると固く信じて疑わない老獪弁護士。たかが司法試験を合格したくらいで、そのことを自慢するしか能のない弁護士。社会常識すら分からない弁護士・・・。

これら、老若を問わず、賞味期限切れの弁護士が多い現実を憂います。弁護士業界にも、「偽」のレッテルを貼られないようにしなければなりません。

新年を迎えたのを機会に、我が事務所も心機一転のつもりで、大いにがんばろうと思います。(了)

2007年12月15日

◆知事選挙を芸能人の人気投票にするな

                   川原俊明(弁護士)


太田房江知事の突然の不出馬を受け、知事候補者選びが、難航しています。

その中で、ある政党が、某タレント弁護士を擁立するのではないかとの報道もあります。

太田知事就任の背景には、横山ノック前知事の醜態があったことを忘れられません.

大阪では、吉本などお笑い系のタレントが人気を呼び、お笑いタレントがトップ当選しました。

ノリで投票する大阪人の多いこと。大阪人らしいといえばそうなのでしょうが、擁立する側の政党にも問題があります。参議院議員選挙のときもそうでした。選挙のたびに、集票効果をねらって、各党が、タレントの擁立を模索します。

たしかに、テレビ全盛の今の時代に、マスメデイアを通じて顔が売れている候補が、何かと有利なのは良く理解できます。

しかし、政治は、公共のものです。世界を考え、国全体を見据え、地方自治の発展のため、あるいは生活環境改善のため、公共の目的のために行うものです。

政党は、そのような志を持った人材を擁立すべきであり、安易な票集めの観点から人材を選ぶものではありません。
 
大阪弁護士会でも、役員の選挙活動が始まろうとしています。どのような選挙でも、人材こそ選抜の基準にすべきです。(完)


2007年07月22日

◆人の痛みを理解しない者は


川原俊明(弁護士)


旧聞となりましたが、久間防衛大臣の、「原爆投下は、しょうがない」発言が問題となりましたよね。当の本人は、軽い気持ちで、本心を吐露したのでしょう。

戦後60年を経過し、昭和の歴史が検証される中で、日本が終戦を決断する理由の一つとして、長崎・広島に原爆が投下されたことが、大きな動機となったことは否定しがたいものがあります。

しかし、2発の原爆投下により、2つの都市が焼け野原となり、数十万人の人が一瞬にして死亡し、多くの人が原爆の放射能による後遺症で一生を苦しみ続けてきた現実があります。
日本が、この地球の中で、唯一の原爆被爆国であり、それがゆえに平和国家を標榜してきたことを、忘れてはなりません。
 
日本の防衛大臣は、平和ぼけで、原爆被爆者の存在を忘れたのでしょうか。
防衛庁が防衛省に昇格となり、初の防衛大臣が、この失言騒ぎでは、日本の将来は危ういものです。
 
そんないい加減な人物を大臣に据えた人間も失格でしょう。大臣の、辞任騒ぎ、自殺騒ぎが多すぎます。
 
国際社会は、日本の大臣の馬鹿さ加減、質の悪さを笑っているように思います。 人の上に立つ者は、人格者であるべきです。人間として、人の痛みを理解できないで、人心を掌握できるわけがありません。政治家としても失格でしょう。
 
日本には、本物の政治家が必要とされています。参議院選挙の投票日が迫ってきました。人気投票を期待する与野党の政治家のレベルの低さには、開いた口がふさがりません。

私達は、他人の批判だけにとどまらず、自らを振り返り、他人の痛み、苦しみを理解できているかを胸に手をあてて反省すべきでしょう。平和な社会は、相互の理解から始まります。



2007年04月15日

◆涙の刑事裁判

 
川原 俊明 (弁護士)
被告人を処罰すべき刑事裁判で、被告人も弁護人も涙を流す光景は、めったにありません。ある地方裁判所での、刑事法廷の出来事でした。

被告人が刑事裁判にかけられている罪は、今はやりの詐欺事件。騙されやすい高齢者を相手に、警察官を装い、「某会社に、リフォーム工事を依頼したことがありますね。その会社が不正を働いたので、警察を通じてお金を返すことになりましたが、手続上、あなたから、まずお金をお預かりしないと行けないのです。」といって,お金を騙し取ったというものでした。

犯罪それ自体は、決して容認されるべきものではありません。私達弁護人としても、被告人には、接見(面会)のたびに、二度と罪を犯さないよう厳しく問い詰めて来たのです。

これを担当するK弁護士。
刑事弁護について、一つの信念を持っています。弁護士たるもの、言い渡された刑事判決の量刑の軽さを手柄のごとく自賛するだけでは、かえって被告人の再犯を助長するようなものである。

被告人に、犯罪の重大さと比べて、判決内容が「この程度で済んだ」と勘違いさせるのでは、本来の刑事弁護の目的に反する、と。弁護士は、被告人に有利な事情を引き出すことが当然の職責としても、裁判所、検察庁とともに、司法の一翼を担う立場にあります。

弁護士は、被告人が犯罪者であることに間違いなければ、十分な反省と再犯防止策を講じさせ、更生の決意を抱かせなければなりません。「社会を良くする」「社会から紛争を少しでもなくす」こと信念に、刑事弁護にチャレンジするK弁護士。

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2007年03月13日

◆植物状態からの回帰

<日本一メルマガ「頂門の一針」3月12日737号に掲載されました>
               
                     川原 俊明(弁護士)

交通事故の恐ろしさは、現実に被害を受け、後遺症に苦しんだ人でない
と、なかなか理解できません。車社会では、便利さが優先される反面、
一つ間違うと、車が他人を傷つける凶器ともなり、鉄の棺(ひつぎ)に
もなり得るのです。

予期せぬまま、他人の過ちにより、一瞬にして人生に終止符を打たれ、
あるいは、何十年にわたり精神的肉体的苦痛を負わせられる現実。これ
らが如何に不条理なことか。

現在の法制度の下では、交通事故紛争では、治療費や車両損害など、目
に見える実損害の補填が原則的です。慰謝料という名の精神的損失補填
は、裁判所の基準があるにせよ、欧米に比べれば、まだまだお涙程度で
す。被害者は明らかに損をする。これが現実です。

依頼者のS夫妻には、大学生になった最愛の1人娘がいます。その娘が
こともあろうに交通事故被害者となり、文字どおり、瀕死の重傷を負っ
たのです。娘さんは、一命を取り止めたものの、重度の被害者となりま
した。一時は、意識が全くなく、植物人間として一生を終わりかねない
状態でした。

ベッドの上で、かろうじて息をするだけの娘さん。食事・排泄など、生
存に必要な行動は、一人では、何もできない状態です。ご両親のS夫妻
は、娘さんの現実を突きつけられ、娘さんの介護にその後の人生を賭け
ることを決意。

S夫妻は、今までの職場や仕事をすべて投げ打つことになったのです。
1日24時間の介護なくして生きられない娘さんを前にしたご両親の決断
には、心を打たれるものがありました。

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2007年01月29日

◆最大の供養

川原俊明(弁護士)

事の起こりは、岡山で発生した悲惨な交通事故。
Tさんの妻が自転車で走行中、バックしてきた10トン・ダンプカーに引っかけられて、自転車もろとも転倒。妻の体の一部を後部車輪に巻き込んでしまったのです。

悲壮な女性の悲鳴に、驚いた近所の人たちが異常を察知し、ダンプカーの運転手に事故発生を知らせました。ダンプを降りてきた運転手は、初めて人身事故の発生を知り動転。ダンプカーに引き返すと、ギアをドライブにして、巻き込んだ女性を後部車輪から引き離すべきところを、何と逆に、ギアをバックに入れてしまい、思い切りアクセルを踏んでしまったのです。

 その結果、ダンプの後部車輪が、完全に女性の体に乗り上げてしまって、女性は大量失血。それが原因で死亡に至るという最悪の結果を招いてしまいました。
 
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2006年12月30日

◆「新会社法」の悪用


                  川原俊明(弁護士)

平成18年5月1日から施行された新会社法。
特徴的なことの一つに、最低資本金制度の廃止があります。従前、株式会社の場合、最低1000万円という資本金が必要で、誰でもすぐに株式会社設立、という訳にはいきませんでした。

もちろん、特例法によって、資本金の「1円企業」も可能だったのですが、それでも5年以内に資本金を1000万円にしないと存続させてもらえなかったのです。
 
ところが、新会社法によると、起業家による株式会社設立・利用の促進という観点から、資本金は、まさに1円でもいい、ということになりました。その結果、株式会社の外形を悪用し、財産隠匿、債権者からの追及回避、という法人格を濫用するケースがないわけではありません。

その一例が身近なところにありました。
最近ようやく、景気回復の波に乗り、ゴルフ場にも、ゴルフ人口が少しは戻り始めました。数年前、ゴルフ場の倒産が、日常茶飯事のように報道されていた時代からようやく落ち着きが出てきたように思います。

ちなみに、ゴルフ場のメンバー(会員)は、会員権を購入することによって、当該ゴルフ場の優先的利用権を確保します。その際、預託金なるものをゴルフ場運営会社に預託します。運営会社としては、ゴルフ会員権の販売に伴う預託金で事業を運営するために、預託金の返還を10年以上据え置く場合が多いのです。

K弁護士事務所では、Aゴルフ場のメンバーであるFさんとK弁護士との熱い議論が戦わされていました。

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2006年09月11日

108年前から間違っていた戸籍

              川原俊明(弁護士)

某市役所の住民登録の窓口でのことでした。担当者曰く、「Kさん、住民基本台帳カード申請していただいたのですが、あなたの「原」は、第三画の「点」がない「はら」ですよ。当用漢字にはありません」。Kさん「そんなことはありません」。「生まれたときから、当用漢字の「原」を使ってきました」。「もう一度戸籍を調べてください」。「何かの間違いでしょうから」。

早速、親切な担当者は、戸籍のある○○県に問い合わせてくれました。しかし、調査の結果、Kさんの戸籍には、担当者の言うとおり、当用漢字の「原」から第三画の「点」がない「はら」の文字が、書かれていたのです。
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2006年03月30日

◆承諾殺人をなくすには

            川原俊明(弁護士)

最近の朝日新聞社説に、義母への介護にまつわる悲喜こもごもを映画化した「折り梅」が注目を集めている、との記事が掲載されました。
 
折しも、当法律事務所で取り扱った「承諾殺人罪」の刑事裁判がありました。長年、妻の介護を続けてきたものの、妻の様態に改善が見られず、ますます衰弱していく姿に将来を悲観し、妻とともに無理心中を図ろうとした夫。その夫Iさんが、承諾殺人罪の被告人として刑事裁判に。

刑事弁護の依頼者は、こともあろうに「被害者」である亡き妻Sさんの息子であり、亡き妻の実母や親族でした。ふつうなら、被害者側の親族が、刑事被告人の減刑を求めて弁護士に弁護を依頼するはずがありません。

「この事件の真相は、ここにある」と、K弁護士は考えました。20年の長きにわたり、難病にかかった妻Sさんをささえてきた夫Iさんの愛情は、とても崇高なもので、その愛情に支えられた介護活動は、なかなか真似のできるものではありません。
・・続きのページへ・・