2007年07月22日

◆人の痛みを理解しない者は


川原俊明(弁護士)


旧聞となりましたが、久間防衛大臣の、「原爆投下は、しょうがない」発言が問題となりましたよね。当の本人は、軽い気持ちで、本心を吐露したのでしょう。

戦後60年を経過し、昭和の歴史が検証される中で、日本が終戦を決断する理由の一つとして、長崎・広島に原爆が投下されたことが、大きな動機となったことは否定しがたいものがあります。

しかし、2発の原爆投下により、2つの都市が焼け野原となり、数十万人の人が一瞬にして死亡し、多くの人が原爆の放射能による後遺症で一生を苦しみ続けてきた現実があります。
日本が、この地球の中で、唯一の原爆被爆国であり、それがゆえに平和国家を標榜してきたことを、忘れてはなりません。
 
日本の防衛大臣は、平和ぼけで、原爆被爆者の存在を忘れたのでしょうか。
防衛庁が防衛省に昇格となり、初の防衛大臣が、この失言騒ぎでは、日本の将来は危ういものです。
 
そんないい加減な人物を大臣に据えた人間も失格でしょう。大臣の、辞任騒ぎ、自殺騒ぎが多すぎます。
 
国際社会は、日本の大臣の馬鹿さ加減、質の悪さを笑っているように思います。 人の上に立つ者は、人格者であるべきです。人間として、人の痛みを理解できないで、人心を掌握できるわけがありません。政治家としても失格でしょう。
 
日本には、本物の政治家が必要とされています。参議院選挙の投票日が迫ってきました。人気投票を期待する与野党の政治家のレベルの低さには、開いた口がふさがりません。

私達は、他人の批判だけにとどまらず、自らを振り返り、他人の痛み、苦しみを理解できているかを胸に手をあてて反省すべきでしょう。平和な社会は、相互の理解から始まります。



2007年04月15日

◆涙の刑事裁判

 
川原 俊明 (弁護士)
被告人を処罰すべき刑事裁判で、被告人も弁護人も涙を流す光景は、めったにありません。ある地方裁判所での、刑事法廷の出来事でした。

被告人が刑事裁判にかけられている罪は、今はやりの詐欺事件。騙されやすい高齢者を相手に、警察官を装い、「某会社に、リフォーム工事を依頼したことがありますね。その会社が不正を働いたので、警察を通じてお金を返すことになりましたが、手続上、あなたから、まずお金をお預かりしないと行けないのです。」といって,お金を騙し取ったというものでした。

犯罪それ自体は、決して容認されるべきものではありません。私達弁護人としても、被告人には、接見(面会)のたびに、二度と罪を犯さないよう厳しく問い詰めて来たのです。

これを担当するK弁護士。
刑事弁護について、一つの信念を持っています。弁護士たるもの、言い渡された刑事判決の量刑の軽さを手柄のごとく自賛するだけでは、かえって被告人の再犯を助長するようなものである。

被告人に、犯罪の重大さと比べて、判決内容が「この程度で済んだ」と勘違いさせるのでは、本来の刑事弁護の目的に反する、と。弁護士は、被告人に有利な事情を引き出すことが当然の職責としても、裁判所、検察庁とともに、司法の一翼を担う立場にあります。

弁護士は、被告人が犯罪者であることに間違いなければ、十分な反省と再犯防止策を講じさせ、更生の決意を抱かせなければなりません。「社会を良くする」「社会から紛争を少しでもなくす」こと信念に、刑事弁護にチャレンジするK弁護士。

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2007年03月13日

◆植物状態からの回帰

<日本一メルマガ「頂門の一針」3月12日737号に掲載されました>
               
                     川原 俊明(弁護士)

交通事故の恐ろしさは、現実に被害を受け、後遺症に苦しんだ人でない
と、なかなか理解できません。車社会では、便利さが優先される反面、
一つ間違うと、車が他人を傷つける凶器ともなり、鉄の棺(ひつぎ)に
もなり得るのです。

予期せぬまま、他人の過ちにより、一瞬にして人生に終止符を打たれ、
あるいは、何十年にわたり精神的肉体的苦痛を負わせられる現実。これ
らが如何に不条理なことか。

現在の法制度の下では、交通事故紛争では、治療費や車両損害など、目
に見える実損害の補填が原則的です。慰謝料という名の精神的損失補填
は、裁判所の基準があるにせよ、欧米に比べれば、まだまだお涙程度で
す。被害者は明らかに損をする。これが現実です。

依頼者のS夫妻には、大学生になった最愛の1人娘がいます。その娘が
こともあろうに交通事故被害者となり、文字どおり、瀕死の重傷を負っ
たのです。娘さんは、一命を取り止めたものの、重度の被害者となりま
した。一時は、意識が全くなく、植物人間として一生を終わりかねない
状態でした。

ベッドの上で、かろうじて息をするだけの娘さん。食事・排泄など、生
存に必要な行動は、一人では、何もできない状態です。ご両親のS夫妻
は、娘さんの現実を突きつけられ、娘さんの介護にその後の人生を賭け
ることを決意。

S夫妻は、今までの職場や仕事をすべて投げ打つことになったのです。
1日24時間の介護なくして生きられない娘さんを前にしたご両親の決断
には、心を打たれるものがありました。

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2007年01月29日

◆最大の供養

川原俊明(弁護士)

事の起こりは、岡山で発生した悲惨な交通事故。
Tさんの妻が自転車で走行中、バックしてきた10トン・ダンプカーに引っかけられて、自転車もろとも転倒。妻の体の一部を後部車輪に巻き込んでしまったのです。

悲壮な女性の悲鳴に、驚いた近所の人たちが異常を察知し、ダンプカーの運転手に事故発生を知らせました。ダンプを降りてきた運転手は、初めて人身事故の発生を知り動転。ダンプカーに引き返すと、ギアをドライブにして、巻き込んだ女性を後部車輪から引き離すべきところを、何と逆に、ギアをバックに入れてしまい、思い切りアクセルを踏んでしまったのです。

 その結果、ダンプの後部車輪が、完全に女性の体に乗り上げてしまって、女性は大量失血。それが原因で死亡に至るという最悪の結果を招いてしまいました。
 
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2006年12月30日

◆「新会社法」の悪用


                  川原俊明(弁護士)

平成18年5月1日から施行された新会社法。
特徴的なことの一つに、最低資本金制度の廃止があります。従前、株式会社の場合、最低1000万円という資本金が必要で、誰でもすぐに株式会社設立、という訳にはいきませんでした。

もちろん、特例法によって、資本金の「1円企業」も可能だったのですが、それでも5年以内に資本金を1000万円にしないと存続させてもらえなかったのです。
 
ところが、新会社法によると、起業家による株式会社設立・利用の促進という観点から、資本金は、まさに1円でもいい、ということになりました。その結果、株式会社の外形を悪用し、財産隠匿、債権者からの追及回避、という法人格を濫用するケースがないわけではありません。

その一例が身近なところにありました。
最近ようやく、景気回復の波に乗り、ゴルフ場にも、ゴルフ人口が少しは戻り始めました。数年前、ゴルフ場の倒産が、日常茶飯事のように報道されていた時代からようやく落ち着きが出てきたように思います。

ちなみに、ゴルフ場のメンバー(会員)は、会員権を購入することによって、当該ゴルフ場の優先的利用権を確保します。その際、預託金なるものをゴルフ場運営会社に預託します。運営会社としては、ゴルフ会員権の販売に伴う預託金で事業を運営するために、預託金の返還を10年以上据え置く場合が多いのです。

K弁護士事務所では、Aゴルフ場のメンバーであるFさんとK弁護士との熱い議論が戦わされていました。

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2006年09月11日

108年前から間違っていた戸籍

              川原俊明(弁護士)

某市役所の住民登録の窓口でのことでした。担当者曰く、「Kさん、住民基本台帳カード申請していただいたのですが、あなたの「原」は、第三画の「点」がない「はら」ですよ。当用漢字にはありません」。Kさん「そんなことはありません」。「生まれたときから、当用漢字の「原」を使ってきました」。「もう一度戸籍を調べてください」。「何かの間違いでしょうから」。

早速、親切な担当者は、戸籍のある○○県に問い合わせてくれました。しかし、調査の結果、Kさんの戸籍には、担当者の言うとおり、当用漢字の「原」から第三画の「点」がない「はら」の文字が、書かれていたのです。
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2006年03月30日

◆承諾殺人をなくすには

            川原俊明(弁護士)

最近の朝日新聞社説に、義母への介護にまつわる悲喜こもごもを映画化した「折り梅」が注目を集めている、との記事が掲載されました。
 
折しも、当法律事務所で取り扱った「承諾殺人罪」の刑事裁判がありました。長年、妻の介護を続けてきたものの、妻の様態に改善が見られず、ますます衰弱していく姿に将来を悲観し、妻とともに無理心中を図ろうとした夫。その夫Iさんが、承諾殺人罪の被告人として刑事裁判に。

刑事弁護の依頼者は、こともあろうに「被害者」である亡き妻Sさんの息子であり、亡き妻の実母や親族でした。ふつうなら、被害者側の親族が、刑事被告人の減刑を求めて弁護士に弁護を依頼するはずがありません。

「この事件の真相は、ここにある」と、K弁護士は考えました。20年の長きにわたり、難病にかかった妻Sさんをささえてきた夫Iさんの愛情は、とても崇高なもので、その愛情に支えられた介護活動は、なかなか真似のできるものではありません。
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2006年02月05日

◆脱サラ社長の 勝利

      弁護士   川原俊明

大会社のサラリーマンを辞し、自分の力を信じ一国一城の主となったTさん。満を持して事業を興すことになりました。「いっちょうやったるでぇ。」大阪商人の心意気がここにありました。
Tさんは、長年の実務経験を生かし、家具・家庭用電化製品のリサイクルショップを経営することに・・。

出店にあたり、業界では名の知れたE社とフランチャイズ契約を締結。E社からのノウハウを得て、一気に地元の業界を制覇しようと考えたのでした。「FC」と略称されるフランチャイズ契約。

セブンイレブンやローソンなどのコンビニは、大半がFCです。
明治29年成立の民法には、予測もしなかった契約形態でした。
一定の地域で商標やサービスマークなどで知名度があり、集客力を有する企業(フランチャイザー)が、その経営ノウハウを事業者(フランチャイジー)に提供する、というのがFCの契約形態です。
 
フランチャイザー(E社)にとっては、他の事業者の資金や人材を利用して事業規模を拡大でき、フランチャイジー(Tさん)は、事業経営のため、フランチャイザーの商標・知名度・ブランドなどを使って有形無形の援助を期待できる、というものです。
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