2016年08月20日

◆この秋、天使が舞い降りる

石岡 荘十


米NBCのオーディション番組、‘America’sGot Talent’から、1人の天才歌手、それもクラシックオペラのアリア曲を得意とする世界最年少のオペラ歌手が誕生した。

その名はジャッキー・エバンコ(Jackie Evancho)、11歳の少女だ。 ‘America’s Got Talent’は一昨年、スーザン・ボイドを送り出したことで日本でもよく知れれるようになった新人タレント発掘のオーディション番組のアメリカ版である。

まずは、その番組をYou Tubeでご覧頂こう。↓
http://www.youtube.com/watch?v=SKhmFSV-XB0&feature=related

謳い出しから満場騒然、謳い終わると聴衆は総立ちとなりスタンディングオベーションが鳴り止まなかった。審査員の1人が、
‘This is the moment ,you are the star!
と最大級の賛辞を絶叫した。

別の女性審査員は、こんなけいけんははじめてだわ。‘You are little gem, angel!とこれまた興奮気味だ。

こんな金の卵を、アメリカの凄腕プロデューサー、デヴィド・フォスターが見逃すはずがなく、自分の番組に引っ張り込んでティームに引き入れた。↓
http://www.youtube.com/watch?v=lIQTJyIzn2U

おまけは、あのバーブラ・ストライザンドとのデュエッとだ。↓
http://www.youtube.com/watch?v=QfUz4THEgX8

デヴィド・フォスターの力の入れようが窺えようというものだ。

フォスターはマイケル・ジャクソン、バーバラ・ストライサンドらを世に送り出しただけでなく、フランス語しかしゃべれなかったセリーヌ・ディオンに英語の手ほどきをし、映画「タイタニック」(1997年)の主題歌‘My Heart Will Go On’を謳わせた凄腕音楽プロデューサーだ。昨年はフィリピンのこれまた天才少女歌手シャリースを世に送り出している。↓

http://melma.com/backnumber_108241_5084102/

最後にYou Tube 255万アクセスのもう一曲 
http://www.youtube.com/watch?v=iiM9QVdJyVQ

この秋、この天使が東京に舞い降りる。  

2016年08月04日

◆加齢疾病連発に悩まされた夏

石岡 荘十



今日書こう、明日こそはと思いながら、胸や背中を孫の手で掻くのに忙し
くて今日に至ってしまった。何の話か。すでに畏友毛馬一三氏が本誌で報
告しているように帯状疱疹“事件”の経緯についてである。

夏は、典型的な加齢疾病といわれる病につぎつぎと襲われ、悪戦苦闘した
3ヶ月だった。この間、私を襲ったのは帯状疱疹。発症から3ヶ月、やっと
終息にこぎつけたと思ったら今度は、加齢黄班変性といわれる眼球の疾病
である。これについては今なお加療の真っ只中であり、別稿で報告したい。

帯状疱疹の兆しが現れたのは6月の末のことだった。「夏バテ」というの
は夏だけの症状だと思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨時や初夏に
も起こりやすい。

気温の乱高下に老体がついていけず、何もする気がしない。全身がともか
くけだるい。にもかかわらず梅雨明けの7月、以前からの約束もあって、
猛暑の中、秩父盆地のど真ん中にあるゴルフ場に出陣。疲労困憊、這うよ
うにして帰宅した。完全に体力を消耗していた。これが祟った。

思い返すと、その数日前すでに左胸の皮膚に違和感があり肋骨のあたりに
ピリピリ感があった。間もなく胸から左肩甲骨下にかけて赤い斑点がぽつ
ぽつ。ゴルフの後から左側の神経に沿って激痛が走るようになった。

にもかかわらず、まだ帯状疱疹とは気がつかず、市販のかゆみ止め軟膏
(レスタミン)を塗ったり、サロンパスの湿布を患部に張ったりして凌ご
うと試みていた。無知は恐ろしい。

そうこうしているうちに、赤い斑点は水ぶくれとなり、夜はベッドの上で
転々。背中を孫の手で掻きまくったものだから水ぶくれが破れ、かさぶた
へと変わったがかゆみと痛みは治まらなかった。

遂にたまらず、行きつけの病院の皮膚科に駆け込んだのはゴルフから3週
間を過ぎていた。

「帯状疱疹です。ずいぶん我慢強い方ですねぇ。もうかさぶたになり始め
ていますから、ペインクリニックに行きなさい」という。

帯状疱疹は、幼児に経験した水ぼうそうのウイルスが原因だ。ウイルスは
長い間体内の神経節に潜んでいて、加齢(50歳代〜70歳代)やストレス、
過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んで
いたウイルスが再び活動を始める。ウイルスは神経を伝わって皮膚に達
し、帯状疱疹として発症するとされている。

東京女子医大の統計によると、発疹する部位は、一番多いのが私のケー
ス。上肢〜胸背部(31.2%)、次いで腹背部(19.6%)、そして怖いのは
頭部〜顔面(17.6%)などとなっており、高校の友人が右顔面に発症。何
年か前のことだが、今でも顔面の筋肉がこわばっている。

最悪、失明をしたケースも報告されている。頚部〜上肢にも発症する。い
ずれの場合も体の左右どちらか一方に現れるのが特徴だ。

発症してすぐ気づき、すぐ適切な治療を受けた場合でも3週間は皮膚の痛
みや痒みが続く。痛みがやや治まってからも神経の痛みは容易に治まらな
い。数年間、痛みが消えなかったと言う症例もある厄介な加齢疾病である。

まして、私のケースは、初期治療のタイミングを逸した。その祟りで、い
まだにときどき、肋間や背中にピリピリと痛みが走る。

さて治療法である。皮膚科では坑ヘルペスウイルス薬を処方する。ウイル
スの増殖を抑える飲み薬で初期の痛みや痒みを抑える効果があるが、私は
そのチャンスを逃し、我慢強く無為に苦しんだ。

ペインクリニックでは、飲み薬と塗り薬を処方される。

【飲み薬】、

・鎮痛剤リリカプセル:今年4月、保健が適用されることとなった帯状疱
疹の最新特効薬だ。

・セレコックス:リリカカプセルが効かない場合に飲む頓服錠剤。炎症に
よる腫れや痛みを和らげる。
・メチコバール:末梢神経のしびれ、麻痺、痛みを改善する。

【塗り薬】、

・強力レスタミンコーチゾンコーワ(軟膏)

ペインクリニックでの治療5週間。月初旬にくすりの処方が終わった。発
症から3ヶ月の闘病であった。この間体力をつけようと金に糸目をつけず
美食に走った結果、太ってしまった。

毛馬一三氏が先日レポートしたとおりで、初動がこの病気治療の決め手で
ある。他山の石とされたい。





2016年08月01日

◆いまこそ旗幟を鮮明にせよ

石岡 荘十



ねじれ、混迷する政治情勢の真っ只中で起きた天災が思い巡る。日本列島は、終戦直後にも匹敵する未曾有の数々の難問に直面している。いずれもわが70余年の人生の中でも、極めつけの難問である。

70年安保の前後、警備・公安関係の報道の端っこにいた現役時代は仕事柄、全国紙は言うに及ばず、左翼、新左翼、某“新興宗教”の機関紙、果ては永田町界隈でしか読まれていなかったウルトラライト組織のビラに至るまでチェックしなければならない何年かを過ごした。

いまはそうはいかず、ときどき近くの区立図書館で全国紙を中心に各紙の主張をまとめて拾い読みする程度だが、各紙がいまほどひとつの進むべき本流を見定めかねている時代は無かったように思う。一読者としては複数の新聞を読んでもトンネルの先に曙光は見えてこない。

世の中はどう動いているのか、とりあえず、いま私が知りたい当面の問題は3つある。

1.世界の原発、なかんづく日本の採るべき道は? 「賛」か「反」か「減」か。

2.現政権について。「菅は今すぐやめろ」「とりあえず災害対策のメドがつくまで」「任期一杯このまま」

3.即刻、退陣するとして、次は誰?

逐次、精密に検証したいがはっきりいうと、力及ばず、“精査”していないので、ここでは私見を独断で言う。

まず1.三択だが、全国紙の社説はばらばらだ。賛成する石原東京都知事の発言をフレームアップして、暗に賛成の意思をほのめかしてはいるものの、社として一人称で断言するところまでいっていない。

私は「賛」。理由は4月21日、本メルマガで書いた。

http://melma.com/backnumber_108241_5165423/


人類は核エネルギーの恩恵をすでに長く受け過ぎた。だから、いまさら脳に刻み込まれた甘い飴玉の記憶を拭い去ることは無理だろうと考えるからだ。ただその展望の正否は「プロメテウスの第二の火」をどう使いこなすか、これからの人知の成熟にかかっている。

つぎに2.

これも3択にしたが、「菅今すぐヤメロ」という主張は、以前は産経だけの少数意見だったようだが、このところ他紙も、その動きが加速している永田町の事情を伝えている。しかし、最近は全国紙のほとんどが「いましばらくは仕様がないか」という論調が多い。

この時期、仮に、現首相が総辞職したとして、あるいは首相専権の解散をしたとして、「被災者の皆さん、新政権が出来るまでしばらくお待ちくださいと」と言えるだろうか。

十数万人の避難者が待てるか。言いにくいが、季節的に加速する1万人を超える行方不明者の腐敗の進行を看過できるだろうか。「今すぐ」というなら、そのリスクをちゃんと計算・予測して書いてほしい。

「それでもすぐ辞めろ」というなら、「そんなのカンケーねぇ」という読者にたいする説得力のある記事がほしい。

私は、「いま、政局がらみのごたごたをやっている場合ではない」という論調に賛同する。政局より、「1日も早く普通の生活に戻りたい」という被災者の気持ちを最優先にしたい。

で、問題は3.である。

各紙は、人気投票のような世論調査の結果を他人事のように報道して「だから菅は降りるべきだ」という主張の根拠のように書いているだけで、その一方で「自民党も頼りないしなぁ」としか言っていない。

ならばどうするか。各紙を見ても、どこも固有名詞を上げて「この人に任せよう」とは主張していないのである。これでは、誰が適任か、素人の私には判断できかねる。大方の国民もそうだろう。

われわれ無垢な羊の群にとっては、IT情報がどうのといわれる時代になったいまでも、新聞が世論形成に重要な役割を担っていると思ってい
る。

そこで、政治部記者歴が長い某全国紙の主筆に聞いたが、「それがねぇ---」としか言えなかった。「この春の人事異動で代わった部長、局長全員を集めて議論をしたが、結論は出なかった」という。

“国難”だといわれている。だからこそ世論形成に一定の役割を果たそうという自負がおありなら、いまこそ新聞社は社論をまとめ、旗幟を鮮明にすべきではないのか。

戦時、国策に沿った提灯記事しか書けなかった時代があった。その結果は、いうまでもない。新聞社も営利を無視できない企業体だから、社論を決めることで後々、経営的にマイナスになることもあるかもしれない。

だが、何でも書ける、軍部による言論弾圧もないいま、新聞社にとっては、敗戦以来の“国難”に際して、実力と品格を示し、戦時の過ちを雪辱するチャンスではないのか。(再掲)

2016年07月15日

◆基礎疾患に注目しよう

石岡 荘十



「基礎疾患」は医学用語で「病気の大元の原因となる疾患」と定義される。

例えば、よく言われるのが心筋梗塞や脳梗塞の基礎疾患として挙げられる「死の四重奏」。

内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)、高血圧、高脂血症、糖尿病の4つが揃っていることを言い、死亡率は、そうでない人に比べて30倍以上も高くなるという調査結果がある。これにさらに喫煙習慣を加えた五つ揃い文で「死の五重奏」という。

リンゴ型肥満というのは中高年男性の典型的な体型で、写真などで見る金正日氏がその典型的な体型である。女性の場合は、体脂肪が引力に逆らえず臀部に下がってくるので「(西洋)ナシ型肥満」ということになる。


内臓脂肪型肥満の人は動脈硬化になりすく、心臓病や脳卒中へと進んでいくリスクが高まるからだ。

メルマガ「頂門の一針」主宰の渡部氏が治療の経緯を述べておられる。一応、犯人は脳血栓の予防薬プレタールの副作用ということになったようだ。渡部氏は数十年前に禁煙を実行しておられるし、お見掛けしたところ、内臓脂肪もそれほど大量に溜め込んでいる様子はない。しかし糖尿がある。

高血圧、高脂血については伺ったことはないが、もし該当するような疾患の症状があるとすれば、末永く健筆を振るわれるためにも基礎疾患を撃退するよう心がけて頂きたい。

一口に「撃退」といっても、そのほとんどが、長年のいわゆる生活習慣病の結果なのでそう簡単にはいかない。例えば禁煙。簡単に決別できる人もいるが、懲りるような事態、例えば片肺切除に追い込まれてやっと、止めることが出来たという友人もいる。

心臓手術は不整脈の基礎疾患だ。

筆者は、13年前、心臓の大動脈弁が機能しなくなり人工の機械弁に置換する手術を受けた。10歳の頃から大動脈弁がうまく閉じない障害がありながら、手術までの50余年間放置しておいた結果、心臓の筋肉が正常な人の2倍近い厚さ(1.7ミリ)に肥厚し、弾力性を失いかかっていた。

手術後、不整脈の一つである心房細動に悩まされたのは、心臓手術によって傷つけられ弾力性を失った心筋が基礎疾患となって、時々、心臓の細胞があちこちで異常な動きを見せるためだと診断された。そこで、術後8年目(‘07年)、心房細動の根治治療に踏み切った。

カテーテル(ビニールの細い管)を腿の付け根から差し入れて、心臓まで押し進め、異常行動を起こす細胞を捜索・特定し、高周波で焼き切る。

カテーテル・アブレーション(電気焼妁)といわれる最先端の不整脈治療法だ。その上、術後、何種類かの薬の服用を強いられ、辛うじて心房細動の再発を阻止している。

心臓手術を経験すると、心房細動を起こしやすくなる。橋本龍太郎元首相は、心臓の弁(僧帽弁)がうまく閉じなくなり、私と同じように人工の機械弁に取り替える手術を受けた。

その3年後(‘06)、同じように心房細動を起こし、心臓で出来た血栓(血の塊)が飛んで腸に栄養を送る動脈を詰まらせ、どんな鎮痛剤も効かない激痛を訴えながら死亡した、といわれる。

死因は「腸管虚血を原因とする敗血症ショックによる多臓器不全」だが、この場合の基礎疾患は心臓手術→心房細動である。しかし、いまさら手術経験をなかったことには出来ない。

そこで、薬で心房細動を抑え込むことになるのだが、「すべての薬は毒」である。大学の薬学部で教鞭をとっている友人は、学生にまずこのことを教えるという。

だから種類と量の処方にはくれぐれも慎重でなくてはならないのだが、日本では2万種類の薬が使われている。この中からピタリ鍵穴に合う一本の鍵のような薬を処方するのは、至難の技である。

マスターキーはない。そう考えると、副作用が出ないほうがおかしいともいうことが出来る。私もプレタールを服用しているが、渡部氏のような副作用は今のところない。鍵穴の型が異なるということだろう。

アメリカには「5種類以上の薬を処方する医者にはかかるな」というのが常識だそうだが、日本では65歳以上の高齢者は平均して6種類の薬を服用しているといわれる。

が、薬はあくまでその場しのぎの対症療法に過ぎない。その中で一番多いのは複数種の降圧剤だ。ほとんどの降圧剤には性的機能を不能にする副作用があることはあまり知られていない。「そのお歳でもういいでしょう」と、医者はなめて処方しているのかもしれない。なめるな! 

基礎疾患である生活習慣病の克服こそが根治治療法であり、それができれば “毒”をのまなくてよくなる理屈である。“夜明けのテント”も夢ではなくなるかもしれない。        

2016年07月08日

◆歳は足に来る(続)

石岡 荘十


数十メートル歩くと左足がだるくなって歩行困難になる。で、数分立ち止まって休むとまた歩けるようにはなるが、またすぐだるくなる。

このような症状を専門的には「間欠性跛行」という。「跛行」はビッコを引くという意味だ。こうなった経緯については前回述べた。今回はその続編である。

先般、閉塞した足の大動脈にステントを入れる治療を受け、ビッコは解消し、元通り颯爽と歩けるようになった。

はじめ、「これはてっきり腰をやられた」思い込んで、近所の接骨院に駆け込んだら、「典型的な脊柱管狭窄症の症状だ」と断言する。つまり神経の管が腰のところで狭まっている疑いがあるとのことで、電気治療、針を数回やってもらったが、はかばかしくない。

業を煮やして、行きつけの大学病院の整形外科で腰のレントゲン、さらにMRIを撮ってみると、確かに、腰椎のひとつがずれているが、神経には触っていないことが確認できた。脊柱の管にはどこも狭くなっているところはない。ビッコの原因はほかにあるというのが整形外科医の診断だった。

考えられるのは、足に血液を供給する血管、動脈がどこかで狭くなっていて、血液や栄養補給が足の筋肉の運動量に追いつかないのではないか。血管の動脈硬化ではないかというのが循環器内科の医師のお見立てだった。

となると、検査法はPWV(脈波伝達速度)。両腕、両足に幅広のベルト(カフ)を巻いて四肢同時に血圧を測定する検査法である。この検査をすると、動脈の詰まり具合と動脈の硬さ(柔軟性)手足の動脈などの比較的太い動脈の高度狭窄の有無がわかる。

結果は、左足だけが標準値に遠く及ばない。病名は閉塞性動脈硬化症。左足へ行く動脈のどこかが詰まっている疑いが強まった。

血流が詰まる動脈硬化は典型的な加齢疾病だ。脳の血管が詰まれば脳梗塞になるし、心臓の血管(冠動脈)が狭くなると狭心症、詰まると心筋梗塞になる。私の場合は足にきたというわけである。

造影剤を使ったCTで診ると、左足付け根から動脈を15センチほど遡ったところで90パーセント狭窄していることが確認できた。左足へは最大、通常の7割ほどしか血が流れていない。これではビッコになるわけだ。

治療法は、脳梗塞や心臓梗塞と同じだ。血管の狭くなったところにカテーテルを挿し込んでフーセンで拡げるとか、バイパスを作るとか、etc。

8/23、心臓カテーテル室でカテーテル台に横になると、若くて美形の看護婦さんが何の躊躇もなくパラリとT字帯をはずし、左足の付け根周辺の陰毛を電気かみそりで刈る(剃毛という)。慣れたものだ。

局所麻酔の後、この治療では実績も多い腕利きの医師が、モニター画面を見ながらカテーテルを挿入。先端には、中心部に細くすぼめたバルーンを仕込んだステントがある。ステントはステンレスで出来た金網のチューブである。

これを狭窄部分まで持っていってバルーンを膨らますと、すぼめてあったステントの内径も同時に拡がって、狭窄した血管を見事に押し広げた。

ステントは内径8ミリ、長さ40ミリ。心筋梗塞の治療に使うステントは内径2ミリほどだから、それに較べると大型だ。治療時間は1時間ほど、治療費86万円、自己負担9万円ほどだった。

心筋梗塞でステントを使う治療法はよく知られているが、足の大動脈狭窄にステントを使うケースはまだそれほど多くない。

治療を受けた東京女子医大では、ステントを使った心筋梗塞治療が今年すでに数百件に上るのに対して、足に使った症例は筆者でまだ56件目だという。

下肢(足)へ行く動脈が詰まると、下肢が腐ってしまい、痛いだけでなく、命にかかわるケースもある。そうなると「命には代えられない」とやむを得ず下肢を切断しなければならなくなる。日本では毎年1万人以上が足を切断されているという報告もある。高齢化で症例は増えている。

足にもステントを入れるという治療法は、循環器内科ならどこでもやっているわけではない。リスクもある。医師の選択には慎重でありたい。

元京都大学心臓血管外科部長・米田正始(こめだまさし)医師を中心とする研究グループは新しい血管を作って下肢切断を救う「血管再生法」という試みを行なっていて、再生医学のひとつとして注目されている。が、成功症例はまだそれほど多くない。

「なんとなく足の先が冷たい」

これが、アラームだ。接骨院では治らない。歳は足にくる。専門の医師を選んで、治療を受ける必要がある。 (再掲)

2016年07月07日

◆歳は足にくる(前)

石岡 荘十


学生時代から体育会系で足腰には自信があるつもりだったが、古希を過ぎる頃から歳が足にきた。

ことの始まりは、高校の友人と花見がてら玉川浄水伝いの小道を小金井公園まで数キロ歩いたときだった。暫く歩くと左足がだるく、重くなって思うように歩けない。しばらく(数分)休むと回復してまた歩けるようになるのだが、また、だるく重くなる。

こういうのを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といい、腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状だとされている。跛行とはビッコを引くということだ。

人間の脊椎骨は上から頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨(1個)、それに数個の尾骨から成っている。脊椎骨の中心を走る脊柱管の中に神経の柱がある。

一つひとつの脊椎と脊椎の骨の間には椎間板というクッションの役割を果たす軟骨組織がある。そしてさらにこれらは靭帯や背筋などの筋肉で支えられている。

ところが、40代後半になってデスクワークが増えたせいか、足に痺れや傷みが来た。背筋が脊椎を支えきれなくなって5番目の腰椎がずれていると診断された。それから、少なくとも一キロ/週、泳ぐ習慣をつけて今日に至っているので、重い足を引きずってビッコを引くようになろうとは思いもしなかった。

脊柱管狭窄症、つまり神経の管が腰のところで狭まっている疑いがあるとのことで、腰のレントゲン、さらにMRIを撮ってみると、確かに、5番目の腰椎がずれている。が、神経には触っていないことが確認できた。脊柱管はどこも狭くなっているところはない。

しかし、MRIをよく見ると、3番目と4番目、4番目と5番目の間の椎間板がほかの椎間板より白く写っていて、炎症を起こしていると認められ、そのせいでごくわずか椎間板がはみ出して、脊柱管を押している。

治療法としては、腰椎を引っ張る、固定装具を使う、消炎鎮痛剤や飲み薬を使う、重症でそれでもダメなら外科手術をするということになる。みのもんたさんは手術をしたといわれるが、そこまでひどい症状は患者の一割程度だそうだ。

私の場合は軽症で、椎間板の炎症は飲み薬でなおる、ビッコの原因はほかにあるというのが整形外科医の診断だった。

では、ビッコの原因は何か。

考えられるのは、足に血液を供給する血管、動脈がどこかで狭くなっていて、栄養補給が足の筋肉の運動量に追いつかない動脈硬化ではないかと循環器内科の医師は考えた。

これを立証するのが、「血圧波検査」だ。両腕、両足に幅広のベルトを巻いて一斉に血圧を測定する検査法である。この検査をすると、動脈の詰まり具合と動脈の硬さ(柔軟性)がわかる。

結果は、左足だけが標準値に達していない、(専門的には「閉塞性病変の疑い」という)左足の血流は右足の7割しかないことが分かった。左足へ行く動脈のどこかが詰まっていた。

血流が詰まる動脈硬化は典型的な加齢疾病だ。脳の血管が詰まれば脳梗塞になるし、心臓の血管(冠動脈)が狭くなると、狭心症や心筋梗塞になる。私の場合は足にきたというわけである。

治療法は、脳梗塞や心臓梗塞と同じだ。血管の狭くなったところにカテーテルを入れ込んでフーセンで拡げるとか、バイパスを作るとか、などなど。

診療科の選択は大事だ。教訓は、大雑把に言うと、足が「痛むとき」は腰の神経になにかが触っているのだから、整形外科へ、「だるい・重いとき」は循環器内科へ、である。

多くの病気は、原因が分かり適切な治療が行なわれれば治るし、治療が適切でなければ治るものも治らない。癌の多くが治らないのは、原因が分かっていない。原因はわかっても治療法がそこまでいっていないか、誤った治療法がまかり通っているためだ、と私は思っている。

いわゆる「難病」といわれるものは、原因が明らかでなく、従って治療法もわからないものをいう。

と、考えると、足がだるくなる間欠性跛行は難病ではない。脳や心臓の梗塞と同じ加齢疾病だと考えればいい。治療法はあり、医師を選び抜けば高い確率で治る。調べてみて“悲観”は飛んだ。

ただ、このような治療法は対症療法に過ぎない。創造主に逆らって老いを押しとどめる智恵はヒトにもない。例外はない。

ガキは頭にくる、なにかというとキレるらしいが、歳は足にくる。(続く)


2016年07月04日

◆「一病」がもたらす息災

石岡 荘十



本メルマガで毛馬一三氏、渡部亮次郎氏が加齢疾病といえる病を切り抜けた自らの治療体験を、実感をもって生々しく語っておられた。

両氏とも筆者の古くからの友人であるが、治療前は、失礼だが、医療分野についてはそれほど深い関心も造詣も持ってはおられなかった印象であった。

ところが、このたびの2つのリポートは体験したものしか分からない現実感を持って迫ってくる。その上、がん治療とは何か、脳梗塞とはどのような病気で原因は? 治療法は? と微に入り、細を穿った学習結果を披露している。

かくいう筆者も、心臓手術を経験している。全身に血液を送り出す最後の扉ともいえる心臓の大動脈弁が機能しなくなった。そこで、弁を切除、機械で出来た人工弁(100万円)に置き換える大手術だった。大動脈弁置換手術という。

‘99年、当時64歳だった。「心臓手術が必要」と医師に告げられたそのときの衝撃・恐怖、絶望感は今でも忘れることは出来ない。

が、手術後、カルテ(手術記録)を取り寄せ、心臓外科医の話を聞き、専門書を漁ってよくよく検証してみると、現代の医学をもってすれば、それほど、怯える類の手術でないことが明らかになった。この間の経緯については、術後5年目に薦められて、上梓した。(「心臓手術 〜私の生還記〜」 文藝春秋社刊)。

手前味噌になるが、神の手を持つといわれる何人かの心臓血管外科医からは、「プロの医者から言うと生還記は大げさだけど、医者が一番知りたいと思うこと、患者の怖れ・不安・気持ちをよく書き込んでいる」と評価され、この道を目指す研修医の参考書のひとつに推薦して戴いた。

手術する者とされる者との間には、天と地ほどのギャップがある。その原因は病気に対する正しい知識の有無にかかっていることを、学習することが出来た。

日本では年間100万人以上が死ぬ。大雑把に言ってその死因の3割は癌、心臓と脳の疾患が3割だ。それで、この3大疾病は、「死に至る病」と思われている。これらの病を告知された患者が異口同音に発する台詞がある。

「何でまたオレが---、このわたしが---」である。死を宣告されたような衝撃を受けるのだ。この中には一部の癌のように、正しく診断して最高の医者が手術をしようと、放射線を照射しようと、現代の医学が総力を挙げても手に負えない疾病もあるが、一口に癌といっても、転移していない段階で適切な治療が行われれば、天寿を全うすることも夢ではない。

癌といわれるものの中でも転移していないものは、癌ではないという説さえある。これを「がんもどきという」(慶応大学病院 放射線治療・核医学科 近藤誠医師)そうだ。

そのほかのほとんどの病は、原因、治療法、治療に伴うリスクなどについてきちんと学習をすれば、恐れるに足らないものであることが分かる。ただし、正しく診断され、最適のタイミングで最高の治療を受ければ、のことであるが---。

名古屋ハートセンター副院長(元京都大学病院教授心臓血管部長)米田正始医師は、手術実績8000例以上、神の手を持つといわれる名医だが、「ともかく心臓が動いているうちに連れてきなさい。全力を挙げて何とかします」と豪語している。

早期発見、早期治療、つまり適切なタイミングで真のプロの医師に診断と治療を受けること。まかり間違っても、家から近いからとか、大きな病院だからとかで、病院を選んではならない。

病院が手術をするわけではない。患者に触れるのは医者だからである。名医を見つけることが出来るかどうかが生死を分ける。これが、とくに団塊世代以上の高齢者が快適な余生を楽しむための鉄則である。

偉そうなことをいうが、それもこれも病を得た後の学習がもたらした結論だ。乞、寛恕。毛馬氏、渡部氏の両リポートは高齢者にとって貴重な情報といえると思う。一病息災という。「一病」がもたらした果実である。         

なお、都立中央図書館は、医療情報コーナーの中に「闘病記文庫」を設置し、闘病記約1000冊を専用の書架にまとめて置いている。日本の公共図書館では、初の試みとして、自費出版を含む闘病記を、書名からだけでなく、主要な疾患のくわしい病名からも検索できる。
(再掲)                    (ジャーナリスト)

2016年06月26日

◆「4割は死ぬ」手術をクリアした

石岡 荘十



〜心臓手術、怖れるに足らず〜

1 手術予測死亡率とは何か

すべての手術は一定のリスクを伴う。患者が死ぬこともある。一命をとりとめても、重い後遺症に苦しむこともある。しかし、こんな手術のリスクについて、ほとんどの人の認識は漠然とした不安の域を出ない。

手術で患者が死ぬかもしれないリスクのことを、専門的には「手術予測死亡率」という。「手術後30日以内に患者が死亡するパーセンテージ」のことだ。

手術に伴うリスクは、患者の症状や年齢、病歴、併存疾患(*)、懸念・想定される合併症などの危険因子を、手術前に点数化して積算した客観的な数字で表わされる。

*「併存疾患」は、併発している別の病気のこと。

患者にとっては手術死亡だけでなく、術後の重い後遺症もまたリスクであることに変わりはないが、術後30日を超えからの死亡や、死ななくともその後長い間、後遺症に苦しむかもしれないリスクは、この「予測死亡率」には含まれない。ではまず心臓手術のリスクとは、一体どれ程のものなのか。

心臓手術の実績、つまり手術方法が確立している“ありふれた心臓手術、“冠動脈バイパス手術や弁置換手術で患者が死ぬ割合は、大体どこの病院でも、緊急手術を除けば、3%以下だと言われる。1%以下、0.5%というところ(金澤大学病院「チーム・ワタナベ」)もある。

医療技術の進歩で、心臓手術のリスクはよく航空機事故の乗客死亡率に例えられ、限りなくゼロに近づいているといわれる。

ところがそんな中、昨年春、私は突然の体調異変から極めて難度の高い心臓手術を受けなければならない事態に追い込まれた。手術に先立って突きつけられた手術予測死亡率は39.9%という想像を絶する残酷な数字だった。

外科手術では、予測死亡率が20%を超える手術は「手術不適応」、つまりリスクがあまりにも高すぎて手術をする意味がないというのが“常識”だ。

だから、それが39.9%となると、最早、選択肢の一つとして手術を考えること自体、無謀、“非常識”な数字ということになる。それも高齢者の場合、患者はそんな危ない手術に耐えられるのか。

そんなリスクを承知の上で、丁度1年前、敢えて手術に踏み切らざるを得なくなった。72日間の入院治療、9時間に及ぶ大手術。“4割は死ぬ”かもしれない手術だけでも無謀なことなのに、これに加えて、術後6割近い確率で重い後遺症に苦しむことになる可能性が高い、その覚悟をするよう求められた。喜寿の11ヶ月目、高齢者の症例としては文句なしのハイリスク心臓手術だった。

以下、「今度こそやばい」と万一を覚悟して臨んだ手術体験の顛末である。

執筆に先立って、似たケースがほかにないか捜したが、類似の記録は見つからなかった。

2 胃潰瘍で緊急入院

小雪の降る寒々とした朝、足がだるい上、呼吸困難に陥って長男の車でかかりつけの東京女子医大病院(東京・新宿区)に駆け込み、そのまま入院を命じられた。

胃カメラ検査で胃の上部2カ所に胃潰瘍痕があり、それぞれ1×2センチほどの黒々としたかさぶたが確認できた。年末年始、年甲斐もなく調子にのった暴飲暴食が祟った。

<採血にてヘモグロビン量6.8(g/dL)と顕著な低下あり>(カルテ)ヘモグロビン量の通常の基準値は男性で13.0〜18.3(g/dL)とされているが、それが6.8しかない。ということは、基準値の半分から1/3。

体内のどこかで大量の出血があったことを疑わせる。それまで多分、ほぼ1ヶ月の間、胃潰瘍による大量の出血で、酸素を全身に運ぶ血液中のヘモグロビンが通常の半分以下に減少している。

こんなに大量の出血を招いたのには原因があった。毎日飲んでいたワルファリンという薬の影響だ。ワルファリンは、血液をさらさらに保つ薬で、心臓に人工弁を入れた患者にできやすい血栓(小さな血の塊)ができないようにする薬だ。

私は以前大動脈弁を人工弁に置き換える手術(大動脈弁置換術)を受けた結果、心臓内で血栓ができやすくなり、これを防ぐため、ずっと飲み続けている。その影響で血液は常にさらさら状態に保たれている。

で、潰瘍ができたりすると、普通の人以上に容易に出血して止まらない。あらゆる臓器が貧血、酸欠状態に陥ってダメージを受けていると診断された。酸素が足りない! 全身60兆個の細胞が悲鳴を上げている。

酸欠が引き金となって、心不全を発症。その上、心臓の筋肉に酸素と栄養を送る冠動脈が詰まって拍動は弱々しく、全身に充分な血液を送り出すパワーが落ちている。肺には血液が溜まり(うっ血状態)、呼吸困難を起こしている。

直ちにCCU (Coronary Care Unit:冠動脈集中治療室)に運び込まれた。CCUは重篤な心臓病患者に濃密な治療をするための特別な治療部屋だ。

<高度の貧血が心不全の発症に大きく関与している>(レセプト症状詳記)ため、大量の輸血を続けると共に、心臓のパワーアップを図る強心剤の投与。特殊な酸素マスクで、強力な圧力で肺に酸素を吹き込む酸素吸入など、弱った心臓と肺の機能回復のため集中的な治療が行われた。

輸血量は全身の血液、約5000mlの三分の一近い10単位、1400mlにのぼった。急速に激減したヘモグロビンを補給するため、赤血球濃厚液も随時注入された。

酸素マスクはCPAPというフルフェイス型で、ベルトでがっちり頭に装着されている。自分ではずすことはできない、自分で呼吸ができないほど強力な酸素の圧力だ。「苦しい。マスクを取ってくれ」とわめくと、「今マスクをとったら死んでしまいます」と、取り合ってもらえない。精神錯乱状態で苦しさのあまり「死んでもいいからマスクを取れ」と怒鳴りまくる。丸々2日、こんな状態が続いた。

その結果、肺にたまっていた水がかなり少なくなり、自力呼吸ができるようになった。胃潰瘍は2週間ほどでかさぶたもなくなって、もう大丈夫と判断された。

3月1日、春一番が吹いたとポケットラジオで知った。その翌日(2
日)、循環器内科の3階一般病棟に移った。尿道にはカテーテルが突っ込まれたままになっているが、ひとまず虎口を脱したと判断されたらしい。

3月18日、東京にさくら前線が上陸した、らしいが、ベッドはカーテンで仕切られ、シャバの空気は入ってこない。陽射しも見えない。

心臓機能は相変わらず不安定だ。引き続きドブポン(強心剤)を投与しながら本格的な心機能検査が始まった。

2016年06月25日

◆加齢疾病連発に悩まされた夏

石岡 荘十



今日書こう、明日こそはと思いながら、胸や背中を孫の手で掻くのに忙し
くて今日に至ってしまった。何の話か。すでに畏友毛馬一三氏が本誌で報
告しているように帯状疱疹“事件”の経緯についてである。

夏は、典型的な加齢疾病といわれる病につぎつぎと襲われ、悪戦苦闘した
3ヶ月だった。この間、私を襲ったのは帯状疱疹。発症から3ヶ月、やっと
終息にこぎつけたと思ったら今度は、加齢黄班変性といわれる眼球の疾病
である。これについては今なお加療の真っ只中であり、別稿で報告したい。

帯状疱疹の兆しが現れたのは6月の末のことだった。「夏バテ」というの
は夏だけの症状だと思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨時や初夏に
も起こりやすい。

気温の乱高下に老体がついていけず、何もする気がしない。全身がともか
くけだるい。にもかかわらず梅雨明けの7月、以前からの約束もあって、
猛暑の中、秩父盆地のど真ん中にあるゴルフ場に出陣。疲労困憊、這うよ
うにして帰宅した。完全に体力を消耗していた。これが祟った。

思い返すと、その数日前すでに左胸の皮膚に違和感があり肋骨のあたりに
ピリピリ感があった。間もなく胸から左肩甲骨下にかけて赤い斑点がぽつ
ぽつ。ゴルフの後から左側の神経に沿って激痛が走るようになった。

にもかかわらず、まだ帯状疱疹とは気がつかず、市販のかゆみ止め軟膏
(レスタミン)を塗ったり、サロンパスの湿布を患部に張ったりして凌ご
うと試みていた。無知は恐ろしい。

そうこうしているうちに、赤い斑点は水ぶくれとなり、夜はベッドの上で
転々。背中を孫の手で掻きまくったものだから水ぶくれが破れ、かさぶた
へと変わったがかゆみと痛みは治まらなかった。

遂にたまらず、行きつけの病院の皮膚科に駆け込んだのはゴルフから3週
間を過ぎていた。

「帯状疱疹です。ずいぶん我慢強い方ですねぇ。もうかさぶたになり始め
ていますから、ペインクリニックに行きなさい」という。

帯状疱疹は、幼児に経験した水ぼうそうのウイルスが原因だ。ウイルスは
長い間体内の神経節に潜んでいて、加齢(50歳代〜70歳代)やストレス、
過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んで
いたウイルスが再び活動を始める。ウイルスは神経を伝わって皮膚に達
し、帯状疱疹として発症するとされている。

東京女子医大の統計によると、発疹する部位は、一番多いのが私のケー
ス。上肢〜胸背部(31.2%)、次いで腹背部(19.6%)、そして怖いのは
頭部〜顔面(17.6%)などとなっており、高校の友人が右顔面に発症。何
年か前のことだが、今でも顔面の筋肉がこわばっている。

最悪、失明をしたケースも報告されている。頚部〜上肢にも発症する。い
ずれの場合も体の左右どちらか一方に現れるのが特徴だ。

発症してすぐ気づき、すぐ適切な治療を受けた場合でも3週間は皮膚の痛
みや痒みが続く。痛みがやや治まってからも神経の痛みは容易に治まらな
い。数年間、痛みが消えなかったと言う症例もある厄介な加齢疾病である。

まして、私のケースは、初期治療のタイミングを逸した。その祟りで、い
まだにときどき、肋間や背中にピリピリと痛みが走る。

さて治療法である。皮膚科では坑ヘルペスウイルス薬を処方する。ウイル
スの増殖を抑える飲み薬で初期の痛みや痒みを抑える効果があるが、私は
そのチャンスを逃し、我慢強く無為に苦しんだ。

ペインクリニックでは、飲み薬と塗り薬を処方される。

【飲み薬】、

・鎮痛剤リリカプセル:今年4月、保健が適用されることとなった帯状疱
疹の最新特効薬だ。

・セレコックス:リリカカプセルが効かない場合に飲む頓服錠剤。炎症に
よる腫れや痛みを和らげる。
・メチコバール:末梢神経のしびれ、麻痺、痛みを改善する。

【塗り薬】、

・強力レスタミンコーチゾンコーワ(軟膏)

ペインクリニックでの治療5週間。月初旬にくすりの処方が終わった。発
症から3ヶ月の闘病であった。この間体力をつけようと金に糸目をつけず
美食に走った結果、太ってしまった。

毛馬一三氏が以前レポートしたとおりで、初動がこの病気治療の決め手で
ある。他山の石とされたい。



2016年06月22日

◆基礎疾患に注目しよう 

石岡 荘十



「基礎疾患」は医学用語で「病気の大元の原因となる疾患」と定義される。

例えば、よく言われるのが心筋梗塞や脳梗塞の基礎疾患として挙げられる「死の四重奏」。

内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)、高血圧、高脂血症、糖尿病の4つが揃っていることを言い、死亡率は、そうでない人に比べて30倍以上も高くなるという調査結果がある。これにさらに喫煙習慣を加えた五つ揃い文で「死の五重奏」という。

リンゴ型肥満というのは中高年男性の典型的な体型で、写真などで見る金正日氏がその典型的な体型である。女性の場合は、体脂肪が引力に逆らえず臀部に下がってくるので「(西洋)ナシ型肥満」ということになる。


内臓脂肪型肥満の人は動脈硬化になりすく、心臓病や脳卒中へと進んでいくリスクが高まるからだ。

メルマガ「頂門の一針」主宰の渡部氏が治療の経緯を述べておられる。一応、犯人は脳血栓の予防薬プレタールの副作用ということになったようだ。渡部氏は数十年前に禁煙を実行しておられるし、お見掛けしたところ、内臓脂肪もそれほど大量に溜め込んでいる様子はない。しかし糖尿がある。

高血圧、高脂血については伺ったことはないが、もし該当するような疾患の症状があるとすれば、末永く健筆を振るわれるためにも基礎疾患を撃退するよう心がけて頂きたい。

一口に「撃退」といっても、そのほとんどが、長年のいわゆる生活習慣病の結果なのでそう簡単にはいかない。例えば禁煙。簡単に決別できる人もいるが、懲りるような事態、例えば片肺切除に追い込まれてやっと、止めることが出来たという友人もいる。

心臓手術は不整脈の基礎疾患だ。

筆者は、13年前、心臓の大動脈弁が機能しなくなり人工の機械弁に置換する手術を受けた。10歳の頃から大動脈弁がうまく閉じない障害がありながら、手術までの50余年間放置しておいた結果、心臓の筋肉が正常な人の2倍近い厚さ(1.7ミリ)に肥厚し、弾力性を失いかかっていた。

手術後、不整脈の一つである心房細動に悩まされたのは、心臓手術によって傷つけられ弾力性を失った心筋が基礎疾患となって、時々、心臓の細胞があちこちで異常な動きを見せるためだと診断された。そこで、術後8年目(‘07年)、心房細動の根治治療に踏み切った。

カテーテル(ビニールの細い管)を腿の付け根から差し入れて、心臓まで押し進め、異常行動を起こす細胞を捜索・特定し、高周波で焼き切る。

カテーテル・アブレーション(電気焼妁)といわれる最先端の不整脈治療法だ。その上、術後、何種類かの薬の服用を強いられ、辛うじて心房細動の再発を阻止している。

心臓手術を経験すると、心房細動を起こしやすくなる。橋本龍太郎元首相は、心臓の弁(僧帽弁)がうまく閉じなくなり、私と同じように人工の機械弁に取り替える手術を受けた。

その3年後(‘06)、同じように心房細動を起こし、心臓で出来た血栓(血の塊)が飛んで腸に栄養を送る動脈を詰まらせ、どんな鎮痛剤も効かない激痛を訴えながら死亡した、といわれる。

死因は「腸管虚血を原因とする敗血症ショックによる多臓器不全」だが、この場合の基礎疾患は心臓手術→心房細動である。しかし、いまさら手術経験をなかったことには出来ない。

そこで、薬で心房細動を抑え込むことになるのだが、「すべての薬は毒」である。大学の薬学部で教鞭をとっている友人は、学生にまずこのことを教えるという。

だから種類と量の処方にはくれぐれも慎重でなくてはならないのだが、日本では2万種類の薬が使われている。この中からピタリ鍵穴に合う一本の鍵のような薬を処方するのは、至難の技である。

マスターキーはない。そう考えると、副作用が出ないほうがおかしいともいうことが出来る。私もプレタールを服用しているが、渡部氏のような副作用は今のところない。鍵穴の型が異なるということだろう。

アメリカには「5種類以上の薬を処方する医者にはかかるな」というのが常識だそうだが、日本では65歳以上の高齢者は平均して6種類の薬を服用しているといわれる。

が、薬はあくまでその場しのぎの対症療法に過ぎない。その中で一番多いのは複数種の降圧剤だ。ほとんどの降圧剤には性的機能を不能にする副作用があることはあまり知られていない。「そのお歳でもういいでしょう」と、医者はなめて処方しているのかもしれない。なめるな! 

基礎疾患である生活習慣病の克服こそが根治治療法であり、それができれば “毒”をのまなくてよくなる理屈である。“夜明けのテント”も夢ではなくなるかもしれない。        

2016年06月21日

◆大規模な中国のワクチン治験

石岡 荘十



ランセット(Lancet)と並んで世界的に権威のある医学誌だとされるNEJM(The New England Journal of Medicine)が、「さまざまな年代群における新型インフルエンザワクチン」 (A Novel Influenza A (H1N1)Vaccine in Various Age Groups)と題する論文を掲載し、専門家の注目を集めている。(原文は下記)

http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0908535

論文は、中国で3歳から77歳までの2200人を対象に年齢別に4群に分けて、新型インフルエンザワクチンの有効性や安全性を調べた試験(治験)についてだ。具体的には

 ・プラセボ対照のランダム化比較試験
 ・1回接種と2回接種
 ・アジュバンドの有無
などによる抗体価(免疫力)の変化を調べている。

試験の詳細はきわめて専門的なものなので、ここでは、その概要の紹介にとどめる。

まず、「プラセボ対照のランダム化比較試験」というのは、治験に参加する人をランダムに2つのグループに分ける。一方にはワクチンを打つ、もう一方のグループには偽のワクチン(プラセボ)を打つ。その上で、双方を比較する試験のことで、これによってワクチンの効果を確かめることが出来る。

ワクチンに限らず、新薬が開発されたときなどには、相手の同意を得たうえで行われる標準的な治験方法である。

つぎの「1回接種と2回接種」は、2つのグループに分け、一方には1回しか打たない、もう一方には3週間後に2回目の接種を行う。そしてこの双方の効果にどれくらいの違いが出るかを比較する。

これによって、我国でも問題となった1回打ちでいいのか、2回打たなければ充分な効果が出ないのかを判断するデータを得ることが出来る。

最後の「アジュバンド(adjubant)」というのは、ワクチンの免疫力を強める目的でワクチンと一緒に投与される試薬のことで、国内産のものにはこれを使っていない。

しかし欧米から輸入を予定されているワクチンにはこれが含まれている。因みに「ブースター・ロケット」というと、ロケットの推進力を高める2段目の補助推進装置のことをいう。

ところが、厚労省医系技官のなかには、このことを理由に「輸入ワクチンは危ない」と否定的な意見を吐く者が少なくないが、じつは新型インフルエンザについて欧米でも日本でもきちんとしたアジュバンドの試験が行われたことはない。

中国でアジュバンドの有無を比較した治験が行われたとすれば、世界で初めてということになる。

NEJMによれば、研究を実施したのは、中国江蘇省をはじめとする行政機関、Southeast Universityなど。ワクチンを製造したのは、中国のHualan Biological Bacterin Companyだという。

新型インフルエンザワクチンの有効性について、このような大規模な治験は初めてのことだ。日本での治験は20歳から50歳までのわずか健常者200人についてのものだけで、ワクチンの有効性、全体像を評価するデータとしては不足だとされ、他の年代別の治験は先送りになった経緯がある。

ワクチン接種の回数をめぐっては、厚労省内部でごたごたがあり、マスコミを誤報へ追い込んだ。この“事件”については、10/23既報の通りである。
http://www.melma.com/backnumber_108241_4648006/

自治医科大学感染免疫学講座・臨床感染症学部門准教授の森澤雄司氏は「この論文は二重の意味で、衝撃だった。臨床医学のレベルで日本は中国にはるかに及ばないこと、日本のワクチン戦略が世界標準から大幅にずれていることが浮き彫りになった」と述べている。

森澤氏は厚労省の新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会などで、専門家の立場から積極的に発言しているだけでなく、前厚労相に対しても医系技官の施策に批判的な意見を述べてアドバイスしているが、

同氏はさらに「日本では200人という規模で臨床試験をやっただけで、中間結果が報告されたのは10月16日だった。それに対して、中国では(大規模な)臨床試験の結果が既にNEJMに掲載されている。もう率直に言って、話にならない。

また、従来、感染症の領域ではドラックラグ、つまり新開発の薬を患者に投入できるまでの時間差、あるいは、海外での新薬を国内承認できるまでの時間差はあまり問題になっていなかったが、今回の新型インフルエンザでは、急に流行が開始し、早急な対応を求められる事態になり、ドラックラグが強く認識されるようになった。

中国で今回の試験が可能だったのは、ワクチンを海外に売ろうという意識を国策としてきちんと持っているからだ。これに対して、日本ではワクチンを作っているのは小規模のメーカー(4社)。

行政が企業を守り、護送船団でがんばるという発想はもうあり得ないはずなのに、まだやっている。今の状況は、そのようにしか見えない。

ワクチンを作るのであれば、ワクチンを輸出するくらいの心意気、ビジョンが必要なのではないか」。と憤懣やるかたない思いを医療従事者限定のメールマガジン(「m3.com」)で語っている。

「そもそも国産ワクチンと輸入ワクチンを区別して考えているのは、恐らく日本だけ。この考え自体が、世界標準からも大幅にずれている」と批判している。

仰るように、論文が示唆するところは少なくない。ただ、中国の食品問題で痛い目にあっている日本人としては、「エッ、中国製のワクチンだって?それは勘弁してよ」という庶民感覚があってもおかしくない。

治験に参加した人々がどのように集められたのか、重大な副作用がおきた場合の補償はどうなっているのか、NEJMの論文で示された科学的なデータだけではストンと腑に落ちない、別の次元での不信感は拭えないというのが、素人の筆者の正直なところである。

2016年06月19日

◆BNP検査をやってみよう

 
石岡 荘十(ジャーナリスト)



病院に心臓の薬の処方箋をもらいに行ったついでに、馴染みの循環器内科の女医さんの部屋に顔を出して「風邪のせいかなんとなくしんどい」と訴えると、「BNP検査をやってみましょう」とに勧められた。

以前、大動脈弁を人工の機械弁に置き換える心臓手術の経験をして以来、ヒマにあかせて、臓病関連の本を読みまくり、挙句、手術体験記(『心臓手術』 文藝春秋刊)を上梓したりした。

だから、こと循環器系疾病に関しては、人並み以上の知識を持っていると自負していたのだが、「BNP検査」は聞いたことがなかった。

で、詳しく訊いてみると、これはなかなか役に立ちそうなので、日本人の死亡原因第2位の心臓疾患の予備軍である高齢者向けに、聞いた話の受け売りをする。

BNPは「脳性ナトリウム利尿ペプチド」のこと。心臓に負担がかかると心臓の、主として心室から、一部は心房から血液に分泌されるホルモンの一種である。

血液検査で心臓にかかると交感神経を抑制したり、心臓が肥大する異常事態を防いだりする働きがある。

心臓にかかる負担が大きければ大きいほど多量のBNPを分泌するので、その分泌量を測ることで、心臓にかかっている負担の度合いを測定することが出来るというわけだ。

臨床的には、心筋梗塞、心不全の診断や治療・手術の後の判定によく使われる。血液検査で心臓の不具合の程度を測定できる唯一の検査だという。

心疾患の重傷度、つまり心臓がどの程度いかれているかの分類方法にNYHAという分類の仕方がよく知られている。「ニハ分類」、または「ナイハ分類」と読む。ニューヨーク心臓協会が定めた方法だ。4段階に分類してある。

・!)度 日常生活では症状は起こらない

・!)度 安静にしているときには症状は出ないが日常生活をすると疲れ、動悸、呼吸困難、狭心症  の症状が起きる

・!)度 軽い日常生活でも疲れる、動悸、呼吸困難、狭心症の症状が起きる

・!)度 安静にしていても胸に違和感を覚えたり心不全の症状や強心所の症状が起きたりする

このうち、健康診断などで心臓疾患の有無を診る方法で一番一般的な心電図検査だけでは、!)度の発見は困難だとされ、見逃されがちだ。!)度(軽度)もほとんど自覚症状がないこともあって、そのまま進行することが多い。

NYHA 分類は、自分である程度判断できるが手がかりにはなるが、感覚的な分類であるところが弱い。

こに対して、BNP検査で濃度を測定すると!)度、!)度もはっきり検査数値で確認することが出来る。

BNP値100pg/dl以下だと「心疾患なし」(pg/dl:ピコグラム・パー・デシリットル、ピコグラムは1兆分の1グラム)

私の検査結果は77・5でセーフだった。

100を超えると「専門医の診察が必要ですよ」という危険信号だ。
200を超えると治療が必要、500以上では重症心不全と判定される。待ったなしである。

日本人の年間の死者は110万人。死亡原因の第1位は癌で3割、2位の心疾患と3位の脳疾患を併せて3割、この3つで6割の人が亡くなっているが、病名別にではなく臓器別に見ると、心臓疾患による死者(17万3000人余)が一番多い。高齢者は明らかにこの予備軍である。

他の病気と同じように、心臓病も完治を目指すなら、「早期発見、早期治療」が鉄則である。
・なんとなく胸の辺りが重苦しい人
・血圧が高い人
・タバコを吸う人
は、健康診断や人間ドックの折にでも、オプションだが一度、心電図検査と併せて、BNP検査を申し出てみてはどうだろう。

(注) BNP:brain natriuretic peptide
                        

2016年06月18日

◆加齢疾病連発に悩まされた夏

石岡 荘十



今日書こう、明日こそはと思いながら、胸や背中を孫の手で掻くのに忙し
くて今日に至ってしまった。何の話か。すでに畏友毛馬一三氏が本誌で報
告しているように帯状疱疹“事件”の経緯についてである。

夏は、典型的な加齢疾病といわれる病につぎつぎと襲われ、悪戦苦闘した
3ヶ月だった。この間、私を襲ったのは帯状疱疹。発症から3ヶ月、やっと
終息にこぎつけたと思ったら今度は、加齢黄班変性といわれる眼球の疾病
である。これについては今なお加療の真っ只中であり、別稿で報告したい。

帯状疱疹の兆しが現れたのは6月の末のことだった。「夏バテ」というの
は夏だけの症状だと思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨時や初夏に
も起こりやすい。

気温の乱高下に老体がついていけず、何もする気がしない。全身がともか
くけだるい。にもかかわらず梅雨明けの7月、以前からの約束もあって、
猛暑の中、秩父盆地のど真ん中にあるゴルフ場に出陣。疲労困憊、這うよ
うにして帰宅した。完全に体力を消耗していた。これが祟った。

思い返すと、その数日前すでに左胸の皮膚に違和感があり肋骨のあたりに
ピリピリ感があった。間もなく胸から左肩甲骨下にかけて赤い斑点がぽつ
ぽつ。ゴルフの後から左側の神経に沿って激痛が走るようになった。

にもかかわらず、まだ帯状疱疹とは気がつかず、市販のかゆみ止め軟膏
(レスタミン)を塗ったり、サロンパスの湿布を患部に張ったりして凌ご
うと試みていた。無知は恐ろしい。

そうこうしているうちに、赤い斑点は水ぶくれとなり、夜はベッドの上で
転々。背中を孫の手で掻きまくったものだから水ぶくれが破れ、かさぶた
へと変わったがかゆみと痛みは治まらなかった。

遂にたまらず、行きつけの病院の皮膚科に駆け込んだのはゴルフから3週
間を過ぎていた。

「帯状疱疹です。ずいぶん我慢強い方ですねぇ。もうかさぶたになり始め
ていますから、ペインクリニックに行きなさい」という。

帯状疱疹は、幼児に経験した水ぼうそうのウイルスが原因だ。ウイルスは
長い間体内の神経節に潜んでいて、加齢(50歳代〜70歳代)やストレス、
過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んで
いたウイルスが再び活動を始める。ウイルスは神経を伝わって皮膚に達
し、帯状疱疹として発症するとされている。

東京女子医大の統計によると、発疹する部位は、一番多いのが私のケー
ス。上肢〜胸背部(31.2%)、次いで腹背部(19.6%)、そして怖いのは
頭部〜顔面(17.6%)などとなっており、高校の友人が右顔面に発症。何
年か前のことだが、今でも顔面の筋肉がこわばっている。

最悪、失明をしたケースも報告されている。頚部〜上肢にも発症する。い
ずれの場合も体の左右どちらか一方に現れるのが特徴だ。

発症してすぐ気づき、すぐ適切な治療を受けた場合でも3週間は皮膚の痛
みや痒みが続く。痛みがやや治まってからも神経の痛みは容易に治まらな
い。数年間、痛みが消えなかったと言う症例もある厄介な加齢疾病である。

まして、私のケースは、初期治療のタイミングを逸した。その祟りで、い
まだにときどき、肋間や背中にピリピリと痛みが走る。

さて治療法である。皮膚科では坑ヘルペスウイルス薬を処方する。ウイル
スの増殖を抑える飲み薬で初期の痛みや痒みを抑える効果があるが、私は
そのチャンスを逃し、我慢強く無為に苦しんだ。

ペインクリニックでは、飲み薬と塗り薬を処方される。

【飲み薬】、

・鎮痛剤リリカプセル:今年4月、保健が適用されることとなった帯状疱
疹の最新特効薬だ。

・セレコックス:リリカカプセルが効かない場合に飲む頓服錠剤。炎症に
よる腫れや痛みを和らげる。
・メチコバール:末梢神経のしびれ、麻痺、痛みを改善する。

【塗り薬】、

・強力レスタミンコーチゾンコーワ(軟膏)

ペインクリニックでの治療5週間。月初旬にくすりの処方が終わった。発
症から3ヶ月の闘病であった。この間体力をつけようと金に糸目をつけず
美食に走った結果、太ってしまった。

毛馬一三氏が先日レポートしたとおりで、初動がこの病気治療の決め手で
ある。他山の石とされたい。