2008年08月18日

◆不滅?大阪市の「裏金」

<本稿は、全国版メルマガ「頂門の一針」・8月19日号に掲載されました>                     

                    毛馬 一三

大阪市で今回発覚した「裏金」は、際まで堕ちて仕舞った市職員の綱紀感覚や倫理観の欠如の実態をまたまた露呈したものだ。というのはこともあろうか、業務委託費の残金を使い切ったように工作して捻出した「裏金」を、職員らが風俗店やスナックの支払いに充てていたのだ。開いた口が塞がらない。

平松大阪市長は、お盆明けの18日から刑事告訴を含めた「裏金」問題の最終対応の検討に入るという。

確かに平松市長に対しては、一連の「裏金」問題は、大阪市が抱えてきた過去の悪慣習であり、就任仕立ての市長にまでその責任を課すのは酷だとの意見が支配的だった。が、ここへきて状況が一変してきた。

市長は、同「裏金」問題が発覚すると、市政改革の重要課題として早期解決を図り、平松新体制の威令を示したいとして、全職員に全ての「裏金」の申告に応じるよう厳命すると共に、市民にもその意向を約束していた。

ところが市長の意思に反し、数次にわたる全庁調査でも「裏金」が組織ぐるみで隠蔽され、かつ申告も無視するという事案が続出、今回発覚した悪質な不祥事に到っては、4回目の調査でやっと突き止められたものだった。

となれば、現市長の職員に対する対応の手ぬるさ・甘さが、職員のモラル違反を容認する雰囲気を継続させ、結局市長が納税者である市民と向かい合う姿勢を見せていないという、市長に対する批判へと市民の声が変わってきたのである。

そこで今回発覚した「裏金」だが、下記のようなことだ。

<大阪市の浪速区役所が外郭団体人権啓発推進協議会などへの委託料(年間約750万円)の一部を使いきったように工作して申告せず、「裏金」にしたものだ。実はこの新「裏金」は、元担当係長(懲戒免職)による668万円の着服が7月末に判明したため、その事実関係を市が支出伝票を1枚ずつ調べていて、偶然にも今回の「裏金」の存在と「流用」を発見したのだ。

そこで問題のふざけた「流用」とは、同区役所に残されていた伝票などによると、職員ら11人は2002年9月、「反省会」と称して焼き肉店で飲食。ラウンジでの2次会の後、うち6人で風俗店へ。6月にスナックで開いた会合などを含め、費用の一部を「打ち合わせ」などとして支出し、02〜03年度で15万3500円を流用したものだ。

同区役所ではこのほかにも「裏金」から、市の事業に協力した町会長への贈答品として茶葉やノリを購入したり、市の外郭団体にビール券を贈ったりしていた。

一方此花区役所では、統計調査員の研修事業などを巡り、世話役の町会役員延べ20人に高級茶葉(計11万7000円)を贈っていた。これも「裏金」として自主申告しておらず、担当者は「汗をかいてくれたお礼だった。裏金に当たらないと思ったが、認識が甘かった」と言い訳をしている>。<読売新聞>

また、西区役所では高齢者の健康診断事業の委託料の中から、関係団体に配る3万4500円分のビール券を購入。淀川区役所では統計調査のための委託料で、町会長らに贈るのり27万円分を購入していた。<アサヒコム>

大阪市の「裏金」は、遂に7億円超に上ることになった。7月15日段階の本欄で「公務員として信じられないほど質が悪い」と、筆者は大阪市の「裏金」問題で暗躍する市職員の倫理観の欠落を厳しく指摘した心算だった。

だが、巧妙に仕組んだ「裏金」を使って風俗店のお遊びまでするなどとは、思いもしなかった。

昔からの慣習だから、分からなければ何をやっても構わないというのは、大阪市役所にだけ蔓延する「公金不感症」なのだろうか。

それにしても平松市長は、この際ここは鬼と化して厳しさの売り物にする「市民代表」の奉仕者に変身して貰いたいものだが、どうだろう。そうでないと、大阪市の「裏金」は不滅だ。(了)20008.08.17


■メイル・マガジン「頂門の一針」 1286号 平成20年8月19日(火)
<同号目次>
・華国鋒元国務院総理 危篤:宮崎正弘
・華国鋒は何処に:渡部亮次郎
・不滅?大阪市の「裏金」:毛馬一三
・息子をドイツの徴兵に送って(1):永冶ベックマン啓子
・変身願望なるか三越:前田正晶

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2008年08月03日

◆大阪府知事 WTC買収を視野に

大阪府の橋下知事は、経営が行き詰まっている大阪市の第3セクター、WTC「大阪ワールドトレードセンタービルディング」を買収し、大阪府全部局と議会を一括して移転する構想を検討していることが、関係筋から明らかになった。

知事は、週明けにも平松大阪市長にこの意向を伝え、事業費や構造上のデーター提供を要請すると共に、府議会に対しては構想素案を9月府議会に提出する方針だという。

大阪府の庁舎は、地上6階、地下1階建て。1926年に建造された全国の都道府県で最も古い本庁舎で老朽化が進み、震度6強以上の地震で倒壊する危険性があると指摘されている。このため大阪府は07年に総額152億円をかけて耐震補強工事計画を打ち出している。

また庁舎内が手狭なため、周辺の民間ビルを借り上げ部局を分散移転し、その賃料に年間約6億円支払っている。

WTCは、経営が行き詰まり、04年2月に特定調停を成立させ再建を進めていたが、大阪市の平松市長は、再建を断念。WTCの土地と建物の資産価値は約160億円で、08年内に高額でビルの購入先を探すなど、処理策を検討中。

この間、WTCをめぐっては、平松市長が市長就任直後に市役所本庁舎をWTCに移転させることを一時打ち上げたが、建物構造や機能性から移転は無理だとして断念したいきさつがある。

橋下知事は、あくまで庁舎整備の選択肢の一つだとしているが、3階程度の広さを有する格式のある府議会本会議場を果たしてWTC内をそのまま開設するには建物の構造上無理があるとの専門家の意見も出ており、この知事構想はまた波乱含みとなることは必至。


2008年08月02日

◆地方公務員法に「抜け穴」?

 <本稿は全国版メイル・マガジン「頂門の一針」8月4日(月)号に掲載されました>                   

                       毛馬 一三

7億円超の「裏金」が見付かった大阪市は7月31日、関係職員351人を同日付で処分した。平松邦夫市長は記者会見で、「処分は一つの節目として、失われた市民の信頼を回復するため、職員一丸となって取り組みたい」と述べ、頭を下げた。

平松市長は、今回の処分で「4度目の正直」となる裏金問題に何とか決着を付けたい腹だったようだが、実は地方公務員法が「抜け穴」となり、今回の処分対象から外れた特別職や退職者が7人もいるなど、不始末を残した。

厳しい処分を期待していた市民にとり、法律の「抜け穴」に嵌まってしまったともみられる市長の姿勢に、不満の声が募っている。
 
地方公務員法による懲戒処分は、停職15人、減給78人、戒告92人の計185人。それに166人を文書訓告や口頭注意とした。 最も重い停職1カ月は、裏金口座の通帳を破棄した経済局課長と2月の全庁調査後も裏金づくりをしていた大正区係長の2人。
 
ところが問題はここからだ。

地方公務員法4条2項によると、<法律に特別の定めがある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。>となっている。つまり、同法は地方公務員一般職すべてに適用されるが、特別職の地方公務員については、法律に特別の定めがある場合を除き適用されないということになる。

となると特別職には、同法29条で懲戒処分としている<戒告、減給、停職または免職処分をする>ことが出来ないことになる。

まして一般職(現職)に限って適用する同法により、08年3月末で公務員資格を失った退職者は当然、処分の対象外となるのである。

この結果今回、地方公務員法の規定により、本来処分対象となる筈の経済局長(当時)が、その後副市長に就任したため、処分の対象から外れ、更に08年の4月まで裏金で備品の購入していた教育委員会の前教育長や元局長、元区長(局長級)5人の退職者も、処分の対象から遁れた恰好だ。

これに対して市民や民間から出ているのが前述の不満だ。関係者によると市長は、「逃げ得」ではないかと記者団の詰問に、「どの時期までの退職した人を対象とするか議論があり、ある時期で区切りを付けるべきだった」と述べ、法の適用に違和感を覚えている印象だったという。

友人の上場会社役員に聞いたところ、「株主から請求があれば以前の役員まで責任が問われるのは上場会社では常識だ。法律の不備がその結果を導いたかもしれないが、民間とは大きな責任認識にギャップがある」と指摘する。

また、ある商店主は「業績不振で喘いでいるのに、役所だけ法律に守られて免責されることにはムカつく。責任は特別職であろうが退職者であろうが、裏金に直接間接関与の事実があるのなら、市独自の処分規定を作って対処すべきだ」という。

4度に亘る全庁調査の結果、悪弊裏金に何とかケジメをつけたかった平松市長だが、まだ裏金隠匿の噂がある中、この免責対象者の処置に何らかの目途をつけない限り、大阪市政への信頼は回復されそうにない。(了) 2008.08.01
参照・フリー百科事典「ウィキぺディア」


★メイル・マガジン「頂門の一針」平成20年8月4日(月)1270号
<1270号 目 次>
・遊んでいた?園田外相:渡部亮次郎
・「反応はすこぶるいい」:岩見隆夫
・地方公務員法に「抜け穴」:毛馬一三
・鼻濁音と英語の発音:前田正晶
・一葉と中嶋歌子:平井修一
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2008年07月31日

◆「忘れられた大阪遺産の活用」

 ◆<本稿は、全国版メルマガ「頂門の一針」1267号・8月1日(金)に掲載されました>                      

                     毛馬 一三
                       
NPO非営利活動法人「近畿フォーラム21」主催の定期セミナーが、7月30日大阪産業創造館で、大阪府立大学特別教授の橋爪紳也氏を講師に迎えて行われた。

橋爪氏は、大阪府橋下徹知事の「府政策アドバイザー」で、いわば知事の右腕的存在。橋下府政の看板指針となっている「大阪維新プログラム」作成に多大に貢献したブレーンの一人。

講演は、「水都大阪2009」を軸とした内容だったが、未来を見つめた「水の都大阪」とからめた大阪再生のためのまちづくりが中心だった。

橋爪氏は、大阪のまちづくりは、「忘れられた遺産を都市の文化遺産として再活用」することが大切だと強調。御堂筋、中ノ島、北船場などにある近代建築物や佇まいなど、大阪人が知恵と技術を結集して創り上げた「文化的景観」を基に、公民協働でこれらの「都市のストック活用」することが重要な課題だと述べた。

その戦略キーワードは、大阪市が「大大阪の時代」を目指して都市基盤の整備に当ることだとも付け加えた。

橋下氏が中心となってまとめた「水都大阪2009」は、
・天神橋、難波橋など3橋のライトアップによる夜景つくり
・北浜の水辺に接する建物に、水を眺める「北浜床」の設置
・ 川沿いの再開発
・ 市長・知事に遊覧船のガイド役を依頼するなど、舟運プログラムの運行
・ 淀川・大川での「水の回廊」の設置
などが盛り込まれ、現在更に検討中だという。

同氏は、シンガポールが、豊かな都心部づくりプログラムを20年ほど前から自ら提起して成功させた例を取り上げ、大阪もこれをモデルにして「水の都大阪」の都市再生を目指し、将来は世界に認められる都市にすべきだと述べて、講演を締めくくった。

流石、府知事側近のアドバイザーである橋下氏の大阪再生プランだけに、具体性と実現性が感じられ、参加者の耳目を惹き付ける内容であった。

「近畿フォーラム21」の定期セミナーの次回開催は、9月末の予定。
2008.07.31

◆橋爪紳也氏のプロフイール
大阪府立大学特別教授/大阪府立大学観光産業戦略研究所長
大阪市立大学都市研究プラザ特任教授
大阪府政策アドバイザー/橋爪総合研究所代表
hashizum@21c.osakafu-u.ac.jp
hashizum.cat@orange.zero.jp


★メイル・マガジン「頂門の一針」1267号・平成20年8月1日(金)
<目次>
・内閣改造って本気か:平井修一
・レモン・ハーブの効用:古澤 襄
・忘れられた大阪遺産の活用:毛馬一三
・物価の優等生「白い紙」:前田正晶
・豆乳のチェコ・チーズ:渡部亮次郎

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2008年07月24日

◆したたかな大阪府知事

 <本稿は。電子雑誌全国版「頂門の一針」25日号に掲載されました。  「頂門の一針」には、著名な筆者の寄稿が寄せられています。購読    (無料)は、下記のホームページで手続きして下さい。
  
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                         毛馬 一三

大阪府の橋下徹知事に対する評価が大きく変わってきた。2月就任直後は、「見栄っ張りのタレント知事、目立ちたがり屋、政策ど素人、強権主義者」などとの冷ややかな見方が大勢を占めていた。ところが今や府議会関係者・府職員によると、「したたかな戦術家、バランス感覚に富んだ人材、信念の人」などと、180度位異なる「評価」へ変わってきている。

まず大阪府の歴代知事経験者を振り返ってみても、知る限りこれ程就任直後に「評価」が激変した知事は、記憶にない。なぜそんなに評価がかわったのか。

まず、知事は就任から4ヶ月目に「大阪維新プログラム」を発表すると、一気に府内43市町村や府立施設、出資法人、学校、福祉施設をくまなく視察して現場の実情を把握する精力的な行動が、府民の眼に留まったことだ。こんなボリュームとスピードをこなした知事は、過去には見当たらないからだ。

また破綻寸前の財政再建を果たすため、事業費と職員人件費削減に挑んだことだ。府職員労働組合との徹夜交渉では、自ら出席して組合人件費削減要求に一歩も譲らず、交渉は決裂という異例の事態で幕を閉じた。組合の主張に歩み寄らなかった知事は過去に例がなかった。

この強硬な軌跡が、結果的には府議会にも波及し、議論百出したとはいえ、議員報酬・政務調査費15%削減に繋がったことは否定できない。要は府議会が、知事の要請に応じた恰好だが、実際は府民に高まる知事の評価の芽生えを無視できない状況に迫られたからだ。

その府議会に対し知事は、水面下で幹部議員と接触しながら、削減策の修正に柔軟に対応する姿勢を匂わせている。その上で最終段階の議会総務委員会で、徹夜気味の33時間に亘って44議員の質疑に応じ、締めくくりに「修正させて頂きます」と議会の顔を立てた形を取って、幕引きをおこなっている。

「政策も駆け引きも“ど素人”と思っていたが、中々議会の思惑を斟酌出来る、したたかなやり手だ」と党幹部は云う。

しかも敢えて修正に応じた予算案が、与野党の反発が最も強かった私立幼稚園の運営経費への助成と、人件費の削減幅の計20億7000万円の圧縮だったことも評価を集めた。

「議会意向の強弱を巧みに感じ取るバランス感覚も兼ね備えて、先手を打ってくる戦術も心得ている」と評する幹部議員もいる。

こうした「評価」の下で、橋下知事が提出した初予算は可決した。大阪府の臨時府議会は会期末の23日午後3時からの本会議で、自民・公明の与党両党だけでなく、野党の民主党までも賛意を示し、賛成多数で可決したのだ。

修正案について与党の自民党は、「予算編成の過程を公開したことや、議会の意見を踏まえ修正した姿勢を高く評価する」とし、野党の民主党ですら「中央と地方の関係に改革の必要性を訴える知事の姿勢は我々と同じだ」と賛意を述べている。

修正案は、一般職基本給の削減当初案の4〜12%を3.5〜11.5%に緩和、また私立幼稚園の振興助成削減率を当初の5%から2.5%に引き上げた。この修正に伴い、08年度の一般会計予算規模は、削減幅を18億圧縮し、2兆9246億円となった。

とは言うのの、知事の「評価」が変わったとは云え、問題が解決したわけではない。歳出削減には一定の成果を上げたことは間違いないが、歳入を図るための具体的な経済再建策は何ら示されていない。また削減策によって低減する「府民サービス」の補完を、如何ように進めるかの道筋が見えない。

敢えて言えば、浪速文化の行く末の配慮が示されていないのにも不安が募る。筆者の拙著「ワッハ上方を作った男たち」の舞台となった上方演芸資料館が、知事が企図する通り府庁建物の片隅に移転された場合、上方演芸の貴重な資料を修学旅行生や外国からの賓客が、進んで訪れるとは思えない。浪速文化保存の衰退に繋がる恐れは十分にある。

こうした府民の不安を解消するため9月19日から開会の9月府議会では、知事が「大阪維新プログラム」の内容の検証審議を徹底的に進めたいと議会筋は言っている。その時にこそ、企業誘致や中小企業育成による歳入を軸とした府経済再生策は始め、浪速文化育成など奥の手を、知事も議会も最大限知恵を絞って欲しいのだが。(了)
                          2008.07.23

2008年07月21日

◆待ったなし?「一斉休漁」

 <本稿は、全国版電子雑誌・渡部亮次郎氏主宰の「頂門の一針」7月22日(火)号に掲載されました。同上欄をご覧になりたい方は 下記からお手続ください。>
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                       毛馬 一三

大阪湾で獲れたての魚を売る市場として知る人ぞ知る大阪府泉佐野市の「青空市場」に向けて急遽、車を疾駆させた。

この「青空市場」には、旬の魚を求めて時折、家族連れで訪れている。新鮮この上もない魚を店頭で「なんぼになる?」とやり取りしながら「値切り値」での買い物出来るのは、大阪都心で経験できない大きな楽しみだ。

とはいえ今回7月19日車を走らせて「青空市場」に向かったのには、わけがあった。

「太刀魚」の年間水揚げ量日本一誇る和歌山県有田地方の漁協が、燃料価格の高騰による漁業者の窮状を強く訴えて、7月15日の全国一斉休漁の日から、以後独自に1週間の連続長期休漁に入っていると、知人が知らせてくれた。そういえば「太刀魚」は、大阪の各スーパーの店頭からすっかり姿を消している。

廃業に追い込まれたくない同抗議行動が、大阪湾漁協等に波及するのは避けられず、大阪湾で水揚げされる旬の魚が食膳から消えるのも時間の問題だと、知人は云う。

この上ない美味い旬の「太刀魚」を買い求めたい気持ちもあったが、それよりそこに行けば、燃料価格の高騰の現場「危機感」を確かめられるのではないかと思ったからだ。

泉佐野漁協に問い合わせたら、セリは午後2時半から行われという。知人と筆者の家族を同乗させて、大阪の「阪神高速」から「阪神高速湾岸線」を経由して、約1時間で降り口の「泉佐野北口インターチェンジ」に着いた。

同インターチェンジから、「セリ市場」と「青空市場」まで道のりは約10分程で、同駐車場に入った。

セリ開始までの間、市場内のレストランで名物料理「穴子丼」を食した後、「青空市場」内の商いぶりを見て回った。カレイ、マダイ、アナゴ、クロダイ、サワラ、スズキ、クルマエビ、マダコ、シャコ、ウナギ、マグロ、アサリなどが、20店余の魚屋の店先にぎっしり並べてある。

並べられた魚介類のうち、シャコやマダコが海水を入れた箱の中でムクムクと動く姿には感激した。しかし「太刀魚」を並べている店は、いつもとは違って数店に限られ、和歌山有田の水揚げのない影響が出ていた様子だった。

「青空市場」に隣接する鉄骨建物の「セリ市場」でセリが始まった。梅雨明けの蒸し暑い中で、昼網といわれる午後に水揚げされた魚介類が、威勢のいい掛け声を掛ける仲買人によってセリに掛けられた。案の定「太刀魚」「アナゴ」は品薄だった。

セリ市場横の岸壁に接岸した漁船の漁師に燃料価格の高騰による苦難の様子を聞いてみた。「燃料の油がどんどん高くなっていっては、出漁すればするだけ赤字ですわ。このままでは廃業しかおまへん」。漁師は、胸につかえた鬱憤を一気に晴らすようにそう吐き出した。

「青空市場」に引き返し、セリのあと運ばれてきた魚貝類を店頭に並び終え、店先に椅子に座っていた顔見知りの老女性経営者に同じ質問をぶっつけた。「漁協から聞く話だけど、燃料が高くて漁が続けられないそうな。漁が出来なければここの市場も全店あがったりよ」。返って来た返事は同じだった。

燃料価格の高騰による漁業関係者の窮状を訴える声は、皆悲痛だった。漁師が言った極め付きの言葉が甦る。「国がなんとかしてくれなければ、漁師は首括るしかない」。

品切れ寸前の「太刀魚」と「マグロ」、「イワシ」だけは買ったが、いつもの買い物の楽しさと満足感は得られず仕舞いのまま、「青空市場」を後にした。

全国漁業関係者の間では、こんな悲痛な窮状は各所でどんどん広がっているのではなかろうか。魚介類が食膳に乗らなくなる日が切迫しているような気も実感として湧いてくる。国の対応は、何事にも遅すぎる感がしてならない。 (了)2008.07.20


◆全国版電子雑誌・渡部亮次郎氏主宰の(「頂門の一針」22日号・目次)
・派遣社員10年の実態:内田一ノ輔
・アフリカの盗まれ放題:平井修一
・国の対応は何事にも遅すぎる:毛馬一三
・ 微妙な関係?日中韓:眞鍋峰松
・ 冷奴も味噌も外国頼み:渡部亮次郎

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2008年07月16日

◆裏切られた大阪市長


                      毛馬 一三

総額7億円の「裏金」が発覚した大阪市で、またまた東住吉区と浪速区の2区役所の旧税務担当で、少なくとも251万円に上る新たな「裏金」が発覚した。ところが今度の「裏金」ばかりは、信じられないほど質が悪い。

大阪市は3回に亘って全庁調査を行い、この6月に上記「裏金」総額を公表し、「忌まわしい悪弊とは決別した」と、平松邦夫市長は胸を張った。ところがその直後にこの事態が起きただけに、「市長も職員からよくも舐められたものだ」と、冷ややかな市民の目が注がれている。

市長の直命による3度の調査も職員から無視され、「裏金」存在の申告がなされなかったことは如何なことか、誰もが首を傾げる不可解な出来事だ。

たしかに調査自体が甘かったと指摘されるところも見逃せない。浪速区の「裏金」については、市は4月に情報をつかみながら、証言が得られないとして解明を打ち切っている。東住吉区の場合、市に「報告」さえ上がってこなかったという。

このほか「裏金」の情報が寄せられながら、裏付けがとれないとして調査を打ち切ったケースだけでも、8件あるという。<読売新聞>この点から見ると 調査が報告に頼りすぎていたことが今回の事態を招いたという感も拭えない。

しかし事実の真相ははそうではなかった。この問題の2区部署では3度の調査とも、意図的に事実をひた隠して、巧みにウソの申告で潜り抜けていたのだ。

しかも、通帳を保管していた東住吉区の職員の証言によると、「全庁調査の時申告しようとしたが、上司から申告しないよう圧力を受けた」そうで、上司の指示による組織ぐるみの隠ぺい工作は、悪質の度を越えている。

平松市長は15日、幹部職員50余人を集め、弁護士らによるコンプライアンス委員会からの勧告を受けて4回目の全庁調査を実施することを指示した。その際「真相を明らかにしないのは市民への裏切りと同じ。本当に市民が納得する結果を出して欲しい」とハッパを掛けたという。

一方で、「4回目の調査でも無理だと思うなら、私にメールで伝えて欲しい。またこれに代わるいい調査方法が他にあるなら、この場で発言してほしい」と、職員の徹底した裏切りに弱気とのとれる本音を覗かせたそうだが、幹部は無言のままだったという。<産経新聞>

無言のままだった幹部職員の一人に尋ねたら、管理した預金口座まで解約するなどの証拠隠滅さえやる旧税務担当が居るならば、真相究明は不可能に近いのではないか。残念だが、告発を待つしか仕方が無いのではないかと云っている。 

調査でウミを出し切らない限り、信頼を回復することはできない平松市長は、同じような調査方法を繰り返すだけでは、市長自ら期待する結果を得ることは難しいのではないか。ますます苦境だけが待って居るだけの様にしか見えない。(了) 08.07.15



2008年07月13日

◆飛び火する「居酒屋タクシー」

                      毛馬 一三

 <◆本稿は、14日全国版電子雑誌・「頂門の一針」に掲載されました。   末尾記載の目次をご高覧下さい。ー編集部>



東京霞ヶ関で缶ビールや金品などの提供を受けて問題化した「居酒屋タクシー」不祥事が、なんと大阪市にまで飛び火した。「裏金」で批判を浴びたばかりの大阪市職員が、なんと「居酒屋タクシー」にもまでも染まっていたのだ。

大阪市が、中央省庁の同上不祥事を受けて、07年4月から08年5月末までの間、職員が利用したタクシー券約7万5千枚の使用状況を、このほど調べた結果、分かったものだ。

「居酒屋タクシー」に関与していたのは、市健康福祉局の50代と40代の2職員で、このうち50代の職員は調査期間外を含めて個人タクシーの運転手から計38回、40代の職員は計10回、それぞれ「居酒屋タクシー」で缶ビールを満喫していたという。

ところがその前に、この大阪版の「居酒屋タクシー」を誘発させた市のタクシー券を、市職員がどうして自在に使用できたのか、その方が先に疑問が湧く。霞ヶ関ではあまり取り上げられなかった肝腎な話だ。

大阪市によると、それは大阪市の内部規則で、終電後に帰宅する時や緊急時に限りタクシー券を使用することができるとされているという。つまり予算編成作業や議会開催時の答弁書作成、災害時の緊急就労等で、終電に間に合わなかった場合にかぎり、市のタクシー券の使用を認めているというのである。

確かに就労が深夜に及ぶことが多々あることは否定しない。しかし市役所から主要鉄道網に直結する近くの市営地下鉄駅に向かうには、7〜8分もあれば十分間に合う距離にある。だとすれば緊急災害就労を除く一般事務については、終電に間に合うよう早々に切り上げ、タクシー券を気楽に使うことは避けるべきだ。

早い話、公務で遅くなれば税金で賄うタクシーを利用する位は当たり前という、市役所組織特有の「驕り」の長い慣習が、今尚息づいている所為であることに間違いはない。

まず民間では考えられない過剰厚遇だ。タクシー券を使って帰宅させると費用が嵩んで経営に響くため、終電車前に必ず帰宅を義務付け、勝手にタクシー帰宅をすれば自己負担させるというのが、民間の規則である。

この市タクシー券利用総額だが、なんと07年度だけで2億7千万円(約6万4千枚)を使っている。上記50代の職員は、終電時刻前にも一度、タクシー券を利用して京都府宇治市の自宅まで帰宅していたという。為すことに事を欠く。

そこで今回発覚したのが、この「傲慢」タクシー券使用の上に更に泥を塗る、東京霞ヶ関「居酒屋タクシー」の飛び火だった訳だ。

<缶ビールを提供していたのは大阪市内の個人タクシー運転手3人。運転手は市職員から電話で呼び出しがあると、まずコンビニで350ml入り缶ビール1本を購入し、市役所に迎えに行く>と言っているらしい。 (アサヒコム)

ある市幹部職員は、「恥ずかしい。タクシー券は仕事で日付が変わった時に使わせてもらうことはあるが、缶ビールの供与を受けるなんて、とても常識では考えられない」という。「個人タクシーを呼ぶ職員がいるということを聞いたことがあったが、このことに繋がっていたとは思いも因らなかった。この際過去からの悪弊は洗い晒しツブそう」と別の幹部職員もいう。

大阪市では、30局や区役所で計6億円を超える裏金や不明朗な金銭が発覚し、課長代理級以上の全管理職、約3000人に対する厳しい対応処分を決めたばかりだった。大阪市の悪の温床は止まるところを知らない恰好だ。

大阪市役所に飛び火したこの「居酒屋タクシー」不祥事に、大阪府の橋下徹知事も、「府庁に同様の不祥事がないかどうか、調査するよう総務部に指示する」と、メディアに話している。

いずれにしても真似しなくてもいい霞ヶ関の「居酒屋タクシー」不祥事は、今後全国の自治体に更に飛び火するのは間違いないのではなかろうか。                    (了)    08.07.12

◆「頂門の一針」 1248号 7月14日(月)刊
<目次>
・先行き不安だらけの日本経済:前田正晶
・飛び火する「居酒屋タクシー」:毛馬一三
・道州制の論議に欠けているもの:花岡信昭
・中国が第二の米国あり得ぬ:宮崎正弘
・ローソクデモに反撃開始:平井修一

  話 の 福 袋
  反     響
  身 辺 雑 記

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2008年07月09日

◆道頓堀「くいだおれ」閉店の教訓

    毛馬 一三 (電子雑誌「頂門の一針」7月10日号に掲載)

大阪道頓堀の老舗大衆食堂「くいだおれ」が8日夜閉店し、59年の歴史に幕を閉じた。同時に4月から巻き起こっていた、看板人形「くいだおれ太郎」とのお別れフイバーも、ひとまず終焉した。

「くいだおれ太郎」の現役最後の雄姿を一目見ておこうと、筆者も8日昼過ぎ 、持病の腰痛を押して近くまで出向いてみたが、運悪く梅雨明け直前の豪雨に見舞われて、店先まで近づけず止む無く断念、引き返してきた。

「くいだおれ」では夜9時すぎ顧客を招いた最後の宴会を終えると、店頭に女将の柿木道子会長が現れ、居残っていた黒山の人だかりの見物客に向かって、「大阪名物くいだおれは、日本一幸せな店でございました。おおきに」と言って深々と頭を下げたという。

このあと店の奥に運び込まれた「くいだおれ太郎」も、静かに下りるシャッターと共に、店の奥に姿を消したそうだ。

看板人形「くいだおれ太郎」のこれからの生き方は、まだ決まっていない。当面は近く、顧客との3泊4日の別府温泉旅行に出掛ける予定だという。

本当のところ、大阪道頓堀の老舗大衆食堂「くいだおれお別れフイバー」は、異常だった。店に来たこともない人も、俄に脚光を浴び出した看板人形「くいだおれ太郎」を一目見ようと連れだって押しかけた。

しかしこの騒ぎも、珍しさ・面白さに飛びつく大阪人の気まぐれな、一過性傾向の血のぼり気質が、たまたまこの騒ぎを後押したに過ぎない。

そんな人たちが普段から店にワンさと出向いて食事していたら、「くいだおれ」の経営は傾くこともなかったろうし、「廃業」に追い込まれることにもならなかった筈だ。

道頓堀界隈は、言葉の響きから老舗ばかりが店を連ねる旧態全体の町並みのような印象を受けるが、今や若者達の集客能力を誇るまちに変貌した。若者好みのファーストフード店、お洒落な喫茶店やケーキ屋、最先端IT機器遊技場、自在にテークアウト出来る各種店など、まち全体が魅力溢れる大規模商業区域になっている。

だから昔ながらの老舗品にこだわり、消費者志向のニーズに機敏に応えられない体質の店が取り残される運命にあるのは、時代の流れだ。老舗の「看板」だけにこだわっている店は、どこも苦闘していると聞く。

「くいだおれ」の閉店は、こうした「老舗看板」だけに依存する商売が、もはや通用しにくい教訓を残したといえる。付け加えれば、客寄せパンダに頼る時代でもなく、「味と見栄え」で真剣勝負しなければ、老舗自体も正業として成り立たないことを、この時代を生き抜くビジネスの厳しさと合わせて教えてくれているようだ。時代はここでも急変している。(了)   2008.07.09

■本稿は、全国版電子雑誌「頂門の一針」
7月10日(木)1244号に掲載されました。

<同号の目次>
・米も偽装食品なのか:内田一ノ輔
・原油の高値止まりは好機到来:寺田嘉信
・己を抑えた振舞いが美しい:加瀬英明
・「くいだおれ」閉店:毛馬一三
・ 再就職に年齢の壁:平井修一

・話 の 福 袋
・反     響
・身 辺 雑 記

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2008年07月06日

◆美味い自家製「紫蘇濃縮ジュース」

毛馬 一三
           7月6日「頂門の一針」(夕刊・反響欄に掲載)

ジュースとは、本来「果汁」を指すものだが、今ではコーラなどの炭酸飲料なども含めた甘いソフトドリンクまでも「ジュース」と称している。デパートやスーパーに出掛けると、山ほど陳列されたこの種のジュースが目に付くが、果たして健康にいいかどうか考えると買い求めるのに躊躇してしまう。

そうした折、体にいいから是非と知人に勧められた「紫蘇(しそ)濃縮ジュース」を我が家で作ってみたところ、なんとまあ、風味・舌触りなど美味さ抜群、すっかり嵌ってしまった。

<紫蘇(しそ、学名Perilla frutescens)は、シソ科のシソ属の植物。中国原産。

紫蘇には、こんな由来がある。中国の後漢末、洛陽の若者が蟹を食べすぎて食中毒を起こし死にかけたが、名医・華陀が薬草を煎じ、「紫の薬」を作り、同薬を用いたところ、若者はたちまち健康を取り戻した。「紫」の「蘇る」薬だというので、この薬草を「紫蘇」というようになった>。

品種は以下の2種類がある。「青紫蘇」と「赤紫蘇」である。

<i)青紫蘇は、葉や花を香味野菜として刺身のつまや天ぷらなどにする。青紫蘇の葉は野菜としては「大葉(おおば)」とも呼ばれる。
i)赤紫蘇は、梅干しなどの色づけに使用。また葉を乾燥させたものは香辛料として(特に京都で)味唐辛子に配合され、ふりかけなどにも用いられる>。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

ところで自家製の「紫蘇(しそ)濃縮ジュース」には、「赤紫蘇」を使う。作り方は幾通りもあるが、知人から教えてもらった作り方が過去味わった紫蘇ジュースの中で最高だったので、その作り方をご紹介したい。

<作り方>
(1)紫蘇(350g)を水できれいに洗い、水気をよく切って鍋に入れる。
(2)鍋に水(450cc)を入れ、その中に砂糖(600g)とクエン酸(20g)を加える。
(3)紫蘇を満遍なく混ぜて、鍋をガスの中火で煮出す。
(4)10分ほど沸騰させ、紫蘇の中から泡が出したら火を止める。
(5)鍋で煮だった紫蘇を別のボールに、ザルで濾す。
(6)絞り紫蘇液が自然に冷めたら、その中に「ゆず酢」を大匙2杯弱入れる。これがこの濃縮ジュースの「隠し味」。
(7)真っ赤な紫蘇濃縮ジュースが出来上がったら、氷を入れたコップに濃縮ジュースを好みに応じて注ぎ、水や炭酸水などで4倍に薄めて飲む。

これだけの作り方で、900ccの「紫蘇濃縮ジュース」が出来上がる。冷蔵庫で保存すれば、半年の賞味期限があると知人は教えてくれた。

この「紫蘇ジュース」は、紫蘇の栄養であるビタミン類、ミネラル類が含まれているので薬用効果があり、アレルギー体質、生活習慣病、食中毒予防等に効果があるという。

手前勝手な風味・美味しさ抜群の「紫蘇濃縮ジュース」の作り方を紹介させて頂いたが、このジュースが他の作り方と違う点は、隠し味の「ゆず酢」。興味を感じられたら、いま出荷盛りの赤紫蘇を求めて作ってみられては如何。                    (了)    2008.07.06


2008年06月24日

◆「怖くなった心房細胞」を読んで


                   毛馬 一三

本欄の常連筆者・石岡荘十氏が「新潮45」7月号(6月18日発売)に掲載された「団塊世代に捧げる・なめるとコワい心房細動」を読み、正直言って震撼させられた。

同内容は、九死に一生を得た長嶋茂雄元監督と、亡くなった小渕・橋本両元首相の3人病状の共通点が、「心房細胞による脳梗塞」の可能性が高いと言い切っていることだ。

たしかに長嶋元監督のことは石岡氏が以前に本欄に綴った記述を読んで、それなりに承知していたが、まさか小渕・橋本両元首までもが同種の病気が元で還らぬ人になったとはショックだった。

私事ながら筆者は先月末の夕方、自宅で激しい眩暈と嘔吐に襲われて立ち上がることも叶わず、救急車で大阪私立病院の脳神経外科専門医のもとに搬送された。

実は4年前にも同様症状で入院したことがあり、今度は脳梗塞へでも進行したのかと心配したが、CTとMRI(磁気共鳴画像)等の検査の結果、専門医から「自律神経からの不具合によるもので、脳や心臓には異常なし」との診断を貰い、無事早期退院が出来た。

とはいうものの、やはり「頭の病気」は怖い。ふらつき状態が完治せず「脳梗塞」にでもなった時はどうしたらいいものかと思い巡らしていた矢先に、この石岡氏の記事に出喰わせた。

この中で石岡氏は、難解な医学記事とは思えない平易な文章と、読者を惹きつける明快な論旨を展開して、「心房細動による脳梗塞のコワさと日頃の心構え」を誰にでも分かるように下記のように綴っている。

i)要は、心房の筋肉がぶるぶる震える不整脈の一つである心房細動が起こ  ると、血液が澱んで血栓が出来やすくなる。
i)心房細動について、本人、家族は心臓が発するアラームであることをい  ち早く察知する知識と適切に対応を会得しておく必要がある
i)「胸が何となく重苦しい。脈拍が跳んだり時々途切れたりする。息苦し  いことがある」と感じた時、これがアラームだ。
i)心房細動は、「カテーテル・アプレーション」という最先端の治療法   で、治るのが常識となってきた。

石岡氏は、かの有名人3人の個々の症例を詳細に比較しながら、「心房細動」はコワいよと警告し、長生きするには「不整脈」に十分注意をしなければ、取り返しのつかないことになると、実に分かりやすく詳述している。

ところで知人の大阪市立病院の安井敏裕脳神経外科元部長から、この「心房細胞」に関する最近の医学情勢を、概略以下のように教えてもらった。

<わが国ではカテーテル・アプレーションの治療法が進んでいるが、米国では、1996年から特別な手技や道具が不要で、ただ静脈内注射するだけで詰まった血管の血栓を溶かしてくれるアルテプラーゼ(t-PA)と言う薬の使用が始まった。

これについてわが国では時間がかかったが(drug lag)、米国から遅れること約10年の2005年10月11日に漸く承認された。

この薬は血管に詰まった血栓を溶かしてくれる血栓溶解剤で、発症後3時間以内に静脈内注射するだけで良好な予後が得られる。

t-PAを用いるためには、一定の講習を受ける必要があり、全国で130回以上行われ、8000人以上が受講した。実際に、この薬剤を発症後3時間以内に注射するには、患者には、遅くとも発症後2時間以内に病院へ到着してもらう必要がある。

しかし、この薬剤は両刃の剣で、39項目に渡る使用基準を尊守しないと、脳出血の危険性が著しく増大することが分かっている。従って、厚生労働省も非常に厳しく市販後調査を課している。その意味では現状は、言わば試運転ないしは仮免状態であり、慎重に使用する必要がある>。

「たかが不整脈、心房細動」と舐めてかかるとやばいことになりますよと、と石岡氏は「新潮45」で結んでいるが、心臓に多少の違和感を覚える方は、是非この「新潮45」の石岡氏の記事を一読されるようお勧めしたい。(完)
  20086.22

2008年06月13日

◆今度は大阪地下鉄で「使い回し」


                     毛馬 一三

老舗高級料亭「船場吉兆」が客の食べ残しを別の宴席に「使い回し」して廃業に追い込まれたばかりの大阪で、今度は乗客の使用済みの地下鉄「磁気式乗車券」(プリペードカード式乗車券)を元通りに再生し「使い回し」していた市交通局職員らの不祥事が出た。

市営地下鉄駅員の「使い回しとは何?」といいたいところだが、なんと「船場吉兆」と同類の「倫理感の低さの公務員版」と云えるものだけに、開いた口が塞がらない。

この「使い回し」の発覚は、意外な発端だった。この5月、大阪市営地下鉄御堂筋線の難波駅の改札機に、プリペイド式カード乗車券の忘れものを駅員が発見。確認したところ、乗車券の乗車記録が不正に消去されていたのがわかったのだ。

驚いたことに、このカード乗車券の持ち主が、大阪市交通局の出資会社「交通サービス株式会社」の臨時駅員(65)の持ち物とわかり、同臨時駅員を追求したところ、本人だけでなく同僚の臨時駅員(66)とともに自分たちの乗車記録情報を駅長室内の処理機でを使って不正に消去したり、乗客の使用済みのカード乗車券を持ち出して再生させ、「使い回し」し計6万6000円余りの運賃を支払っていなかった。

それだけでは収まらなかった。大阪市交通局の50歳と52歳の駅員2人も、使用済みのカード乗車券の乗車記録情報を不正に消去して、計2万円余り地下鉄のタダ乗りをする「使い回し」をしていたのである。4人は不正を認めているという。

カード乗車券には、1000円、2000円、3000円の3種がある。乗客がこの使用済みのカード乗車券を改札室横のプラスチック箱に遺棄すると、駅員が回収して駅長室で保管し、サイクル業者に引き取らせる仕組みになっているが、この使用済み乗車券の管理状況は十分とは云えないと関係者は指摘する。

カード乗車券の磁気情報は、乗客が間違って改札を通った場合など、情報を正常に戻す処理機として駅長室や改札事務所に備えているもので、カードの磁気情報を簡単に消したり、再生して利用できることを駅員なら、誰でも承知していると関係者はいう。

その磁気情報の消去と管理不充分に目に付けて不正を行ったのが、今回の市地下鉄「使い回し」だったのだ。しかも「交通サービス株式会社」とは、市交通局のOBの天下り先で、名称は派遣社員でも、「磁気情報のカード乗車券」操作には全員が精通しているという。

大阪市交通局と「交通サービス株式会社」では、全ての駅員と臨時駅員、約2000人を対象とした調査を進め、7月末までには結果をまとめ、関係者の処分を行う方針だそうだ。不正に関与した駅員は、4人だけには止まらず、さらに拡大する可能性があるとの見方がつよい。

大阪市では、部局内の「裏金の総額」が8億円に達し、公金に対する市職員のモラル低下が厳しく問われているが、今回発覚した地下鉄磁気乗車券の「使い回し」も、駅員しか知り得ない操作を駆使して「無賃乗車」の不正行為が組織内では常套化していたのではないかとの懸念も出始めている。

廃業に追い込まれた老舗高級料亭「船場吉兆」の倫理観の欠如になんら変わらないといわれても仕方の無い事態だ。ましてや「公務員の不正行為」だけに、余計に腹が立つ。(了)    20008.5.12

2008年05月29日

◆「船場吉兆廃業」は当然の報い

                     毛馬 一三

食べ残し料理の「使いまわし」を14年間も続けていた高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)が、遂に廃業に追い込まれた。身から出た錆には違いないが、ブランドを売り物にしていた老舗料理屋にしては、「客を馬鹿にしていた当然の報い」だろう。

関西に住む私も、一見客では行けない京都や大阪の超一流料亭の座敷に座し、室内の佇まいの風格を眺めつつ、かつここに出入りした歴史上人物の遊興の場を実感しながら、心尽くしの料理を前に仲間と過ごした歓喜の思い出は、この上ない至福の時間であった。一流料亭への想いとは、誰でもそんなところだ。

それこそが、ブランド料亭がお客に接遇しなければならない「基本的なもてなしの心」であり、そこにだけ出来る「誇り」ではないだろうか。

今回の老舗「船場吉兆」不祥事は、そうした一流料亭で瞬時を過ごしたいと願う顧客の「心と和みの場の提供」を完全に「裏切った」最悪の行為だった。

「船場吉兆」は、07年11月、食品表示偽装に伴い約2ヶ月休業。08年1月営業を再開したが、それもつかの間5月上旬客に客の食べ残した料理を「使いまわし」ていたことが発覚して、客離れが急速に進み、経営が立ち行かなくなったという。

そして28日船場吉兆側は「もはやこのような状況の下で営業することは許されないと考え、28日名称を返上することにした」と「廃業」を宣言した。

その「廃業」の理由を聞いて奇異に感じた人は多い。なぜ「使いまわし」の行為に対する自戒と社会的責任へのけじめが、「廃業」を決意の理由とならないのか。「儲からなくなったから止める」では、心ならずも経営難に迫られて廃業・倒産する、真面目な中小企業の経営者と同じになるでは、おかしいではないか。迷惑千万だと云われてもしかたのないことだ。

しかも、「廃業」を宣言した同日に、客に出した料理の使いまわしが新たに8件も発覚している。その使いまわしの料理は、「下座の客に出すことが多かかった」との従業員の証言も出ている。下座の客なら許されると思ったのだろう。何をかいわんやである。


法律的にはどうなのか、知人の弁護士に問い合わせたところ、「料理が客に供された瞬間に、その料理自体が価値を失する。従って恰も価値ある料理の如く見せ掛け、お品代を取るのは、詐欺罪と受けとられてもしかたがない」という。

問題は、「船場吉兆」が廃業の理由を「倫理違反に違反したことへの自戒」とすべきだった。ほとんどの小料理屋では、客の食べ残しの「アスパラガス、青シソ」の使い回しは常識と、業界関係者から聞いた。もし「船場吉兆」がこの「自戒」を廃業理由に掲げていたら、同店老舗の名誉も些かでも保たれたであろうし、同業者への「使い回し」への警告の一助になったのではないか。

それとも「儲け」には恥も外聞も気にしないといわれる、伝統的な浪速商法の倫理観を揺さぶる迄には、到らないことなのだろうか。(了)  2008.5.29