2008年07月09日

◆道頓堀「くいだおれ」閉店の教訓

    毛馬 一三 (電子雑誌「頂門の一針」7月10日号に掲載)

大阪道頓堀の老舗大衆食堂「くいだおれ」が8日夜閉店し、59年の歴史に幕を閉じた。同時に4月から巻き起こっていた、看板人形「くいだおれ太郎」とのお別れフイバーも、ひとまず終焉した。

「くいだおれ太郎」の現役最後の雄姿を一目見ておこうと、筆者も8日昼過ぎ 、持病の腰痛を押して近くまで出向いてみたが、運悪く梅雨明け直前の豪雨に見舞われて、店先まで近づけず止む無く断念、引き返してきた。

「くいだおれ」では夜9時すぎ顧客を招いた最後の宴会を終えると、店頭に女将の柿木道子会長が現れ、居残っていた黒山の人だかりの見物客に向かって、「大阪名物くいだおれは、日本一幸せな店でございました。おおきに」と言って深々と頭を下げたという。

このあと店の奥に運び込まれた「くいだおれ太郎」も、静かに下りるシャッターと共に、店の奥に姿を消したそうだ。

看板人形「くいだおれ太郎」のこれからの生き方は、まだ決まっていない。当面は近く、顧客との3泊4日の別府温泉旅行に出掛ける予定だという。

本当のところ、大阪道頓堀の老舗大衆食堂「くいだおれお別れフイバー」は、異常だった。店に来たこともない人も、俄に脚光を浴び出した看板人形「くいだおれ太郎」を一目見ようと連れだって押しかけた。

しかしこの騒ぎも、珍しさ・面白さに飛びつく大阪人の気まぐれな、一過性傾向の血のぼり気質が、たまたまこの騒ぎを後押したに過ぎない。

そんな人たちが普段から店にワンさと出向いて食事していたら、「くいだおれ」の経営は傾くこともなかったろうし、「廃業」に追い込まれることにもならなかった筈だ。

道頓堀界隈は、言葉の響きから老舗ばかりが店を連ねる旧態全体の町並みのような印象を受けるが、今や若者達の集客能力を誇るまちに変貌した。若者好みのファーストフード店、お洒落な喫茶店やケーキ屋、最先端IT機器遊技場、自在にテークアウト出来る各種店など、まち全体が魅力溢れる大規模商業区域になっている。

だから昔ながらの老舗品にこだわり、消費者志向のニーズに機敏に応えられない体質の店が取り残される運命にあるのは、時代の流れだ。老舗の「看板」だけにこだわっている店は、どこも苦闘していると聞く。

「くいだおれ」の閉店は、こうした「老舗看板」だけに依存する商売が、もはや通用しにくい教訓を残したといえる。付け加えれば、客寄せパンダに頼る時代でもなく、「味と見栄え」で真剣勝負しなければ、老舗自体も正業として成り立たないことを、この時代を生き抜くビジネスの厳しさと合わせて教えてくれているようだ。時代はここでも急変している。(了)   2008.07.09

■本稿は、全国版電子雑誌「頂門の一針」
7月10日(木)1244号に掲載されました。

<同号の目次>
・米も偽装食品なのか:内田一ノ輔
・原油の高値止まりは好機到来:寺田嘉信
・己を抑えた振舞いが美しい:加瀬英明
・「くいだおれ」閉店:毛馬一三
・ 再就職に年齢の壁:平井修一

・話 の 福 袋
・反     響
・身 辺 雑 記

◆購読申し込みは、下記のホームページで手続きして下さい。(無料)
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2008年07月06日

◆美味い自家製「紫蘇濃縮ジュース」

毛馬 一三
           7月6日「頂門の一針」(夕刊・反響欄に掲載)

ジュースとは、本来「果汁」を指すものだが、今ではコーラなどの炭酸飲料なども含めた甘いソフトドリンクまでも「ジュース」と称している。デパートやスーパーに出掛けると、山ほど陳列されたこの種のジュースが目に付くが、果たして健康にいいかどうか考えると買い求めるのに躊躇してしまう。

そうした折、体にいいから是非と知人に勧められた「紫蘇(しそ)濃縮ジュース」を我が家で作ってみたところ、なんとまあ、風味・舌触りなど美味さ抜群、すっかり嵌ってしまった。

<紫蘇(しそ、学名Perilla frutescens)は、シソ科のシソ属の植物。中国原産。

紫蘇には、こんな由来がある。中国の後漢末、洛陽の若者が蟹を食べすぎて食中毒を起こし死にかけたが、名医・華陀が薬草を煎じ、「紫の薬」を作り、同薬を用いたところ、若者はたちまち健康を取り戻した。「紫」の「蘇る」薬だというので、この薬草を「紫蘇」というようになった>。

品種は以下の2種類がある。「青紫蘇」と「赤紫蘇」である。

<i)青紫蘇は、葉や花を香味野菜として刺身のつまや天ぷらなどにする。青紫蘇の葉は野菜としては「大葉(おおば)」とも呼ばれる。
i)赤紫蘇は、梅干しなどの色づけに使用。また葉を乾燥させたものは香辛料として(特に京都で)味唐辛子に配合され、ふりかけなどにも用いられる>。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

ところで自家製の「紫蘇(しそ)濃縮ジュース」には、「赤紫蘇」を使う。作り方は幾通りもあるが、知人から教えてもらった作り方が過去味わった紫蘇ジュースの中で最高だったので、その作り方をご紹介したい。

<作り方>
(1)紫蘇(350g)を水できれいに洗い、水気をよく切って鍋に入れる。
(2)鍋に水(450cc)を入れ、その中に砂糖(600g)とクエン酸(20g)を加える。
(3)紫蘇を満遍なく混ぜて、鍋をガスの中火で煮出す。
(4)10分ほど沸騰させ、紫蘇の中から泡が出したら火を止める。
(5)鍋で煮だった紫蘇を別のボールに、ザルで濾す。
(6)絞り紫蘇液が自然に冷めたら、その中に「ゆず酢」を大匙2杯弱入れる。これがこの濃縮ジュースの「隠し味」。
(7)真っ赤な紫蘇濃縮ジュースが出来上がったら、氷を入れたコップに濃縮ジュースを好みに応じて注ぎ、水や炭酸水などで4倍に薄めて飲む。

これだけの作り方で、900ccの「紫蘇濃縮ジュース」が出来上がる。冷蔵庫で保存すれば、半年の賞味期限があると知人は教えてくれた。

この「紫蘇ジュース」は、紫蘇の栄養であるビタミン類、ミネラル類が含まれているので薬用効果があり、アレルギー体質、生活習慣病、食中毒予防等に効果があるという。

手前勝手な風味・美味しさ抜群の「紫蘇濃縮ジュース」の作り方を紹介させて頂いたが、このジュースが他の作り方と違う点は、隠し味の「ゆず酢」。興味を感じられたら、いま出荷盛りの赤紫蘇を求めて作ってみられては如何。                    (了)    2008.07.06


2008年06月24日

◆「怖くなった心房細胞」を読んで


                   毛馬 一三

本欄の常連筆者・石岡荘十氏が「新潮45」7月号(6月18日発売)に掲載された「団塊世代に捧げる・なめるとコワい心房細動」を読み、正直言って震撼させられた。

同内容は、九死に一生を得た長嶋茂雄元監督と、亡くなった小渕・橋本両元首相の3人病状の共通点が、「心房細胞による脳梗塞」の可能性が高いと言い切っていることだ。

たしかに長嶋元監督のことは石岡氏が以前に本欄に綴った記述を読んで、それなりに承知していたが、まさか小渕・橋本両元首までもが同種の病気が元で還らぬ人になったとはショックだった。

私事ながら筆者は先月末の夕方、自宅で激しい眩暈と嘔吐に襲われて立ち上がることも叶わず、救急車で大阪私立病院の脳神経外科専門医のもとに搬送された。

実は4年前にも同様症状で入院したことがあり、今度は脳梗塞へでも進行したのかと心配したが、CTとMRI(磁気共鳴画像)等の検査の結果、専門医から「自律神経からの不具合によるもので、脳や心臓には異常なし」との診断を貰い、無事早期退院が出来た。

とはいうものの、やはり「頭の病気」は怖い。ふらつき状態が完治せず「脳梗塞」にでもなった時はどうしたらいいものかと思い巡らしていた矢先に、この石岡氏の記事に出喰わせた。

この中で石岡氏は、難解な医学記事とは思えない平易な文章と、読者を惹きつける明快な論旨を展開して、「心房細動による脳梗塞のコワさと日頃の心構え」を誰にでも分かるように下記のように綴っている。

i)要は、心房の筋肉がぶるぶる震える不整脈の一つである心房細動が起こ  ると、血液が澱んで血栓が出来やすくなる。
i)心房細動について、本人、家族は心臓が発するアラームであることをい  ち早く察知する知識と適切に対応を会得しておく必要がある
i)「胸が何となく重苦しい。脈拍が跳んだり時々途切れたりする。息苦し  いことがある」と感じた時、これがアラームだ。
i)心房細動は、「カテーテル・アプレーション」という最先端の治療法   で、治るのが常識となってきた。

石岡氏は、かの有名人3人の個々の症例を詳細に比較しながら、「心房細動」はコワいよと警告し、長生きするには「不整脈」に十分注意をしなければ、取り返しのつかないことになると、実に分かりやすく詳述している。

ところで知人の大阪市立病院の安井敏裕脳神経外科元部長から、この「心房細胞」に関する最近の医学情勢を、概略以下のように教えてもらった。

<わが国ではカテーテル・アプレーションの治療法が進んでいるが、米国では、1996年から特別な手技や道具が不要で、ただ静脈内注射するだけで詰まった血管の血栓を溶かしてくれるアルテプラーゼ(t-PA)と言う薬の使用が始まった。

これについてわが国では時間がかかったが(drug lag)、米国から遅れること約10年の2005年10月11日に漸く承認された。

この薬は血管に詰まった血栓を溶かしてくれる血栓溶解剤で、発症後3時間以内に静脈内注射するだけで良好な予後が得られる。

t-PAを用いるためには、一定の講習を受ける必要があり、全国で130回以上行われ、8000人以上が受講した。実際に、この薬剤を発症後3時間以内に注射するには、患者には、遅くとも発症後2時間以内に病院へ到着してもらう必要がある。

しかし、この薬剤は両刃の剣で、39項目に渡る使用基準を尊守しないと、脳出血の危険性が著しく増大することが分かっている。従って、厚生労働省も非常に厳しく市販後調査を課している。その意味では現状は、言わば試運転ないしは仮免状態であり、慎重に使用する必要がある>。

「たかが不整脈、心房細動」と舐めてかかるとやばいことになりますよと、と石岡氏は「新潮45」で結んでいるが、心臓に多少の違和感を覚える方は、是非この「新潮45」の石岡氏の記事を一読されるようお勧めしたい。(完)
  20086.22

2008年06月13日

◆今度は大阪地下鉄で「使い回し」


                     毛馬 一三

老舗高級料亭「船場吉兆」が客の食べ残しを別の宴席に「使い回し」して廃業に追い込まれたばかりの大阪で、今度は乗客の使用済みの地下鉄「磁気式乗車券」(プリペードカード式乗車券)を元通りに再生し「使い回し」していた市交通局職員らの不祥事が出た。

市営地下鉄駅員の「使い回しとは何?」といいたいところだが、なんと「船場吉兆」と同類の「倫理感の低さの公務員版」と云えるものだけに、開いた口が塞がらない。

この「使い回し」の発覚は、意外な発端だった。この5月、大阪市営地下鉄御堂筋線の難波駅の改札機に、プリペイド式カード乗車券の忘れものを駅員が発見。確認したところ、乗車券の乗車記録が不正に消去されていたのがわかったのだ。

驚いたことに、このカード乗車券の持ち主が、大阪市交通局の出資会社「交通サービス株式会社」の臨時駅員(65)の持ち物とわかり、同臨時駅員を追求したところ、本人だけでなく同僚の臨時駅員(66)とともに自分たちの乗車記録情報を駅長室内の処理機でを使って不正に消去したり、乗客の使用済みのカード乗車券を持ち出して再生させ、「使い回し」し計6万6000円余りの運賃を支払っていなかった。

それだけでは収まらなかった。大阪市交通局の50歳と52歳の駅員2人も、使用済みのカード乗車券の乗車記録情報を不正に消去して、計2万円余り地下鉄のタダ乗りをする「使い回し」をしていたのである。4人は不正を認めているという。

カード乗車券には、1000円、2000円、3000円の3種がある。乗客がこの使用済みのカード乗車券を改札室横のプラスチック箱に遺棄すると、駅員が回収して駅長室で保管し、サイクル業者に引き取らせる仕組みになっているが、この使用済み乗車券の管理状況は十分とは云えないと関係者は指摘する。

カード乗車券の磁気情報は、乗客が間違って改札を通った場合など、情報を正常に戻す処理機として駅長室や改札事務所に備えているもので、カードの磁気情報を簡単に消したり、再生して利用できることを駅員なら、誰でも承知していると関係者はいう。

その磁気情報の消去と管理不充分に目に付けて不正を行ったのが、今回の市地下鉄「使い回し」だったのだ。しかも「交通サービス株式会社」とは、市交通局のOBの天下り先で、名称は派遣社員でも、「磁気情報のカード乗車券」操作には全員が精通しているという。

大阪市交通局と「交通サービス株式会社」では、全ての駅員と臨時駅員、約2000人を対象とした調査を進め、7月末までには結果をまとめ、関係者の処分を行う方針だそうだ。不正に関与した駅員は、4人だけには止まらず、さらに拡大する可能性があるとの見方がつよい。

大阪市では、部局内の「裏金の総額」が8億円に達し、公金に対する市職員のモラル低下が厳しく問われているが、今回発覚した地下鉄磁気乗車券の「使い回し」も、駅員しか知り得ない操作を駆使して「無賃乗車」の不正行為が組織内では常套化していたのではないかとの懸念も出始めている。

廃業に追い込まれた老舗高級料亭「船場吉兆」の倫理観の欠如になんら変わらないといわれても仕方の無い事態だ。ましてや「公務員の不正行為」だけに、余計に腹が立つ。(了)    20008.5.12

2008年05月29日

◆「船場吉兆廃業」は当然の報い

                     毛馬 一三

食べ残し料理の「使いまわし」を14年間も続けていた高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)が、遂に廃業に追い込まれた。身から出た錆には違いないが、ブランドを売り物にしていた老舗料理屋にしては、「客を馬鹿にしていた当然の報い」だろう。

関西に住む私も、一見客では行けない京都や大阪の超一流料亭の座敷に座し、室内の佇まいの風格を眺めつつ、かつここに出入りした歴史上人物の遊興の場を実感しながら、心尽くしの料理を前に仲間と過ごした歓喜の思い出は、この上ない至福の時間であった。一流料亭への想いとは、誰でもそんなところだ。

それこそが、ブランド料亭がお客に接遇しなければならない「基本的なもてなしの心」であり、そこにだけ出来る「誇り」ではないだろうか。

今回の老舗「船場吉兆」不祥事は、そうした一流料亭で瞬時を過ごしたいと願う顧客の「心と和みの場の提供」を完全に「裏切った」最悪の行為だった。

「船場吉兆」は、07年11月、食品表示偽装に伴い約2ヶ月休業。08年1月営業を再開したが、それもつかの間5月上旬客に客の食べ残した料理を「使いまわし」ていたことが発覚して、客離れが急速に進み、経営が立ち行かなくなったという。

そして28日船場吉兆側は「もはやこのような状況の下で営業することは許されないと考え、28日名称を返上することにした」と「廃業」を宣言した。

その「廃業」の理由を聞いて奇異に感じた人は多い。なぜ「使いまわし」の行為に対する自戒と社会的責任へのけじめが、「廃業」を決意の理由とならないのか。「儲からなくなったから止める」では、心ならずも経営難に迫られて廃業・倒産する、真面目な中小企業の経営者と同じになるでは、おかしいではないか。迷惑千万だと云われてもしかたのないことだ。

しかも、「廃業」を宣言した同日に、客に出した料理の使いまわしが新たに8件も発覚している。その使いまわしの料理は、「下座の客に出すことが多かかった」との従業員の証言も出ている。下座の客なら許されると思ったのだろう。何をかいわんやである。


法律的にはどうなのか、知人の弁護士に問い合わせたところ、「料理が客に供された瞬間に、その料理自体が価値を失する。従って恰も価値ある料理の如く見せ掛け、お品代を取るのは、詐欺罪と受けとられてもしかたがない」という。

問題は、「船場吉兆」が廃業の理由を「倫理違反に違反したことへの自戒」とすべきだった。ほとんどの小料理屋では、客の食べ残しの「アスパラガス、青シソ」の使い回しは常識と、業界関係者から聞いた。もし「船場吉兆」がこの「自戒」を廃業理由に掲げていたら、同店老舗の名誉も些かでも保たれたであろうし、同業者への「使い回し」への警告の一助になったのではないか。

それとも「儲け」には恥も外聞も気にしないといわれる、伝統的な浪速商法の倫理観を揺さぶる迄には、到らないことなのだろうか。(了)  2008.5.29

2008年05月16日

◆永年の「悪習」の果て

                    毛馬 一三

「裏金問題」で大揺れに揺れている大阪市で、新たに「職員の不正行為」が明るみに出て、懲戒免職を含む計121人が大量処分されるという不祥事が起きた。公務員としての「倫理感」はここまで堕ちているのかと非難の的の大阪市だ。

「裏金調査」で同総額が6億4130間円に達したことが表面化した時、平松邦夫新市長は事態の深刻さに動転。報道陣の詰問に答え、その背景を、「前例を踏襲する職場風土と倫理感の欠如」が職員間に介在するためだと指摘した。

ところが今回発覚した不祥事も、まさしく新市長の想定通りのことで、業務現場で長期にわたり繰り返されていた「不正行為」そのものだった。大阪市は「裏金」決着を前に、急遽この処分の方を先行させたのだ。

さてその処分だが、最も重い懲戒免職の対象者は、市建設局の出先・東南公営所の40才の技術職員。勤務中に負った怪我が完治したにも拘らず、「リハビリのため」と称して、03年4月から07年10月まで4年半にわたって1209時間、勤務中に職場を1人抜け出し、近くの公営プールで泳いでいたもの。

また、諭旨免職になったのは、同じ市建設局の出先・南部下水道管理事務所の47才の主任。胴回りが肥満してマンホールの中で汚水内作業が出来ない48才の部下を、ほかの職員同様の作業に従事したように書類を改竄、43日分、3万3110円を不正に受給させていたもの。「肥満」の部下に金銭的便宜を図るという、聞いた事も無い珍事だ。

さらに、信じられないのは、停職2ヶ月の処分を受けた41才の市健康福祉局の係長。「年次休暇より取りやすかった」として、06年3月から07年6月の間に、妻の両親、祖母2人、おじ1人、おば3人が亡くなったことにして、12回の忌引休暇を取ったもの。忌引休暇の不正取得での処分対象者は、この係長の他に4人いる。

以上、今回の不祥事の処分の内訳は、懲戒免職1名、諭旨免職1名、停職3ヶ月3名、停職2ヶ月2名、停職1ヶ月6名、停職10日17名、減給16名、戒告18名、戒告・注意57名―合わせて121人となる。

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2008年04月30日

◆歓迎!「小中学 無料の放課後塾」

毛馬 一三

大阪府橋下知事直轄の政策プロジェクトチームPTが、小中学校での放課後学習の実施など、大掛かりな教育改革案をまとめたと、30日朝日新聞の朝刊が報じた。放課後学習は、東京都杉並区立の夜間授業「夜スペシャル」に次ぐ第2弾ということになる。

<PT案によると、この「放課後塾」は、政令都市の大阪市・堺市、それに中核市の東大阪市・高槻市を除く府内の学校役530校と、指定市を除く中学校約290校が対象。

小学校は平日の放課後に週2回、中学校は平日の放課後と土曜に1回づつ、授業の復習や宿題を教える。教科は小学校が国語と算数、中学校が数学と英語。
東京の和田スペは塾講師が当るので有料だが、大阪では教員OBや大学生が教えるので無料>(朝日新聞)

またPT案では、<このほか進学に実績のある府立高校の強化案が盛り込まれており、基本的には難関大学をめざす生徒が学区を越えて通える府立校の数をふやすとしている。具体には進学実績のある高校4〜10校に文系と理系の進学コースをもうける>という。(同紙)

府議会与党会派の某幹部によると、まだこのPT案は正式に会派には届いてはいないが、知事周辺でそのような教育改革案のとりまとめが進んでいる情報は内々入手していることを明らかにした。

この「放課後塾」は、ゆとり教育に酔いすぎて進められている中学校の行き過ぎた「部活運営」に、なんとか歯止めがかかるのではないかという期待がたかまることは父兄の間で必至だろう。

ある中学校の「部活」は、雨が降ろうが風が吹こうが、放課後毎日7時まで行い、休みの土日は朝の早いときで午前7時半から夕方5時まで。遠征も合宿も日常茶飯事。中学部員は「部活」に入ったばかりに、塾に行くことも事実上不可能。

ところがこの暴走気味のこの「部活」の実情は、政令都市・大阪市立中学校の例であり、残念なことに府PT案からは除外されている。

しかし、この「学習する習慣が出来ていない児童生徒に学習の機会を与える」というPT案が府下の教育現場で先行定着していけば、大阪市もこれに倣わざるを得なくなるだろうと府・市議会会派幹部らは同調する。

1100億円の機械的削減と非難をうけているPT案も、私学助成金削減問題と絡みは残るが、こどもの教育強化に力を入れる姿勢のこの教育改革には、府民は諸手をあげて賛成するに違いない。

個人的嗜好による一教諭の暴走「部活運営」を抑え、放課後・土日学習を阻害され、大学進学の将来を犠牲にさせられている子供たちに学習向上の機会を与えるためにも、まず大阪府からこの教育改革に手を付け、それが大阪全域に広がっていくことを、橋下知事に先鞭を期待したい。(了)2008.04.30


2008年04月18日

◆大阪府知事、「四面楚歌」

                   毛馬 一三

(本稿は、全国版メイルマガジン「頂門の一針」18日号に掲載されたー   ー編集部)

大阪府の橋下知事は、想定外の初体験だったに違いない。17日、満面の笑みを湛えて府庁内会議室に入ってきた知事は、異様な雰囲気に圧倒されたのか、一瞬のうちに表情を強張らせた。

それもその筈1100億円の歳出削減試案の発表を受けて、怒りをブッケたい41市町村の市町村長本人たちが、橋下徹知事を待ち受けていたのだ。協議は冒頭から大荒れ、市町村長から猛烈な批判や罵声が飛びだすなど、会合は修羅場の様相となった。

初協議は、まず橋下知事が叩頭、市町村への補助金を45億円削減することなどを盛り込んだ直参改革プロジェクトPTが作った試案について、「修正の余地が全くないわけではないが、これくらいの目標を設定せざるを得ないと改革はできない。市町村にも少し我慢してもらって大阪府全体の財政再建を果たしていきたい」と協力を呼びかけた。

ところが知事が着席する間もなく、市町村長からいきなり「無責任なPT案は白紙に戻せ」「血も涙も無い」などの罵声が飛び出して、知事の唖然とした様子がひと際目立った。批判はよどみなく続く。

i)医療費の打ち切り案では、患者の負担増は増大。負担を引き上げるならその幅を示せ
i)府庁内部で阿修羅のごとく血を流す改革がなければ、府民に痛みは押し付けられない
i)試案通り実施されたら大阪の道路は穴だらけ、学校もぼろぼろになる。あまりにも現実離れした案で、府政の方向を間違える
i)積み上げてきたものを急にやめるというのでは、双方の信頼関係は崩壊する
i)当初予算を執行中に、削減しろとは明らかな行政のルール違反。一切協力できない

助言する府職員も知事に近寄れる雰囲気ではなく、知事はまさに「四面楚歌」。

「政治経験が長い私たちの声にもしっかり耳を貸して欲しい」とのたしなめにわれに返えった知事は、1時間にわたる批判の嵐に立ち向かうように立ち上がり一転して強気の釈明。「府民に我慢を御願いするのも政治家の使命」と持論を訴えると、感極まったのか落涙。

最後に、「福祉を切る場合もあり、削減案を白紙に戻すことはない」と、知事は当初の話と違い、自信ありげに締めくくった。

その落涙と強気の発言が交錯する知事の姿を見た首長たちは、一様に白け顔。「泣いた知事が善玉で、攻めた首長が悪者か!まるで吉本興業とおなじやな」「泣きたいのは市町村の方。泣いたら話が続けられない」と呆れた顔を返す様子が目立った。

市町村長と橋下知事との対決は今後も簡単に収まるとは思えない。知事は市町村への補助金は45億円削減だから、府下全体としてはさしたるものではと踏んでいるようだが、この認識の違いが大きな紛争の火種になることは避けられそうに無い。

補助金に依存して財政運営をしている市町村にとって、補助金は生きるか死ぬかの問題。まして施設補助や医療補助まで切られたのでは、「夕張の二の舞」にならないとは言い切れない。日々の住民生活に直結しているからだ。

PT職員は「府に合わせて歳出を見直せば、市町村も減らせる筈」とたかを括っているが、「府が止めるからといって、そうですかと従えるものではない」と府下市町の危機に無理解な若い知事に怒りをブッつける首長は多い。

財政削減の戦いは、17日から始まったばかりだが、今のままでは橋下知事が「四面楚歌」から抜け出せそうには中々なさそうだ。(了)      08.04.17

◆メイル・マガジン「頂門の一針」 1158号 平成20(2008)年4月18日(金)

「1158号」目次
・大阪府知事「四面楚歌」:毛馬一三
・自由と民主は中共の鬼門:平井修一
・宮崎正弘のチベット紀行:宮崎正弘
・クローズアップ現代の誤認識:前田正晶
・苺は聖母マリア象徴:渡部亮次郎

 話 の 福 袋
 反     響
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2008年04月16日

◆大阪府知事、「開戦前夜」?

                    毛馬 一三
(本稿は、全国版メイル・マガジン「頂門の一針」1156号に掲載されました                             ー編集部)


橋下徹知事が、特別編成の「改革プロジェクトチーム」(PT)に命じて作らせた1100億円の府財政削減案めぐる攻防が、いま“一触触発”の状態だ。

知事は、就任直後から大阪府の財政危機を救う選挙公約を実現するため、知事直轄組織を設け、30歳代を中心とする選抜職員11人によるプロジェクト・PTを結成した。内外の抵抗勢力の圧力を排除するという名目で、PT職員を外部から隔絶し、担当部局との調整は勿論、上司である部局長との接触さえも禁じる徹底した秘密保持策を貫いた。

その結果、この11日に知事に提出された1100億円の削減PT案は概略下記の通りで、知事はこれを見て開口一番、「2月半ばからの短期間でよくまとめてくれた」と労をねぎらったという。

i)府職員・府警察官の人件費を「10%以上カット」し、380億の削減
i)私学助成費などの事業見直しで440億円削除
i)府単独の医療費助成・府出資法人への委託料の削減
i)市町村施設整備貸付金34億円の削減、12億円の市町村補助金を半減―などがその中味だ。

この秘密裏に作られたPT案は、同日大阪府議会各会派、府下市町村に通知された。また部局長に対してもこの日初めて提示され、この席上橋下知事は「この案はどこまでもPT案であって、自分の考えではなく、あくまで叩き台」だと強調している。

そのことは、おかしな話だ。
<きっと自分は陰に隠れ、世間の批判をかわすための「隠れ蓑」にする気だ。遡上に上げたPT案に対して、突きつけられる批判と変更要求を巧に裁きながら煮詰めていく、仲立ち役の恰好いい「裁判官の役割」を演じたいのではないか。

しかも、いくら部下作成のPT案だとしても、一旦「知事の目」を経て公開された以上、「知事案」であることに違いは無い。だとすれば自ら最重要課題としている削減案の「ご本尊」とに距離を置く姿勢を示すこと自体、無責任な対応ではないか>。

これがいち早く各方面から知事に突きつけられたPT案に対する厳しい批判だが、もっともに聞こえる。

こうした批判に加え、怒りを顕にしているのは、府下市町村。11日の開示当日に府の窓口の市町村課に府下の千早赤坂村から「24億円の一般会計予算の当村に、貸付金や補助金が削減されてしまえば、それこそ府より先にわが町が赤字再建団体になってしまう」との悲痛な訴え。府さえ生き残ればいいのかという訳だ。

府下市町村の府町村長会長は「08年度には既に補助金の歳入を見込んでおり、この案は到底承諾できるものではない」と反発、大阪府市長会長は「補助金や貸付金を削減するなら、対決も辞さない」といきり立った。

また知事選で応援した府議会自民・公明両会派も、事前の調整が一切行われなかったのは与党軽視であり、特に私学助成費、医療費助成、市町村施設整備貸付金などの削減は府政の混迷につながるのは必至だとして、知事に厳しく迫る構えだ。

余談だが、筆者が以前、「大阪船場老舗」の2代目社長から、経営は「1に才覚、2に算用、3に始末」だという名言を聞いたことがある。商いは、計画性、目的を定めて算用を計り、最後に始末(節約)するものだというのだ。

早い話、始末(節約)より、才覚による算用(増益)を先ず考えていくことが経営の基本だとの説法だった。

橋下知事は、PTに「遠慮しないで、やり抜け」と、そう伝えたという。だが肝腎のPT案は、始末(削減)が先行し、才覚による算用(増益)はその中に些かも見当たらない。

一応増収として280億円を計上してはいるが、それも府施設や土地の売却処分に頼っているだけで、本来の増益ではない。つまり企業誘致や育成、観光客誘致による集客事業の推進な事業拡大に伴う府税収入の増加への新規プランは、皆無といっていい。

橋下流によるPT案是非の攻防は、いよいよ「開戦前夜」を迎える。だが「削減」を優先させ、「増収」を後回しにした片手落ちの財政改革方針に、府民はどう判断するだろうか。(了)08.04.15

★全国版メイル・マガジン「頂門の一針」 1156号
平成20(2008)年4月16日(水)

「1156号」目次
・五輪前のバブル崩壊が明瞭:宮崎正弘
・霞ヶ関をいかにせん:平井修一
・大阪府知事、「開戦前夜」?:毛馬一三
・気になる存在・与謝野馨:古澤 襄
・命の恩人高木兼寛:渡部亮次郎

・話 の 福 袋
・反     響
・身 辺 雑 記

「頂門の一針」            
発行周期 不定期(原則日曜日発行)
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2008年04月11日

◆残せる?看板人形「太郎」

                  毛馬 一三

大阪ミナミの観光名物といえば、道頓堀川に向かって手を広げた「グリコの看板」、蟹専門店「カニ道楽」の特大カニの看板、それに飲食店「くいだおれ」の電気仕掛け等身大の人形太郎だと、誰しもが認めるところだ。

ところがそのユーモラスな「人形太郎」を売り物に60年も営業を続けてきた老舗「くいだおれ」が、突然7月8日で店仕舞いすることになった。「建物や設備の老朽化のうえに、若者の客離れで売上げが減少したため」だと、経営者。

道頓堀は、太閤秀吉の命を受けて安井道頓が開鑿したもので、以後この周辺は芝居小屋と食い物屋で繁盛し、大阪のくいだおれのまちの中核を為している。

まちが「くいだおれ」でも、食堂の屋号を「くいだおれ」にするのは、「食って倒れるなんて縁起でもないから、それだけはヤメなはれ」という身内全員の反対を押し切り、創業者が「くいだおれ」屋号のままで昭和24年6月に木造2階建の店を開店したのだそうだ。

その翌年、文楽人形をモチーフに、赤白のストライブの服に、黒縁の眼鏡姿で太鼓をリズミカルに叩く人形を店頭に設えたところ、家族連れや観光団体の来店が相次ぎ出し店は繁盛、そのお陰で昭和34年には鉄筋8階建ての店舗を構えるに至った。飲食店「くいだおれ」にとり、「看板人形・太郎」様々だった訳だ。

昭和64年の昭和天皇の崩御の時に、「太郎」に喪服を着せたことがTVニュースで全国に流れたことから、全国から注目されるようになり、前記の2大看板とともに、道頓堀観光シンボルの座を不動のものにした。                         

ところが、創業から約60年経ち、「店舗ビルや設備の老朽化が目立ち、また周辺地域の飲食業環境の激変などが経営自体を脅かす状況」となってきたことから、閉店に踏み切ることにしたという。

まちのシンボルとなった店名「くいだおれ」と「人形太郎」は、出来れば残したいという気持ちを経営陣は抱いているという。関係者によると、人形を含めたブランドを第三者に売却する方向でも検討しているという。<産経ニュース>

春の小雨が降る中道頓堀に「人形太郎」に会いに出掛けたが、店の前は大勢の人垣で大混雑していて、「太郎」とこれからも再会を願う子供たちのかん高い声が飛び交っていた。その様子を見ていると、これが大阪ミナミの文化への、浪速っ子の心のエールのような気がした。

果たして、店名「くいだおれ」と「人形太郎」を引継いでくれるところがあるだろうか。(了)  08.04.10

◆本稿は、全国版メイル・マガジン「頂門の一針」1151号・4月11日(金)に掲載されました(編集部)

<★「頂門の一針」1151号・目次>
・初の1ドル=6元台へ:宮崎正弘
・ダライ・ラマ14世と面会:阿比留瑠比
・マケイン氏の演説(上):平井修一
・残せる?看板人形:毛馬一三
・ラジオ歌謡の頃:渡部亮次郎


    話 の 福 袋
    反     響
    身 辺 雑 記
    
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2008年04月06日

◆河畔公園の花見の宴

毛馬 一三

桜の満開と好天気が重なり合って、最高の花見日和になったことは、ここ大阪では十数年ぶりのことではないだろうか。

大体、開花が始まっても、折悪しく週末までの間に散ってしまったり、降雨のために土日の花見が出来ない状態がずっと続いてきたが、5日、6日ばかりは、桜の名所・大阪港天保山も旧淀川の大川河畔などでも、早朝から晴天・無風・花冷えもない好天気に、文句ない満開の桜の下で、所狭しと花見宴が開かれた。

仲間からのお声掛かりで、旧淀川の大川河畔側の公園で花見の宴に加わった。十畳位のビニールシートの上にダンボール箱を設え、花びらの重みで垂れた満開の桜の下で、お弁当にビール缶を並べて、ご婦人も加わった11人の宴は始まった。

去年までは火気を使ったバーべキューが宴の主役だったが、今年からはお役所からご法度となり、われわれの酒宴も焼肉の楽しみは急遽中止。

しかし焼肉はなくとも宴は盛り上がるものだ。最近のおつまみは多種多彩、下戸の筆者も、酒量を楽しむ友人たちも、これらを口にほおばりながら思わず酒量は進む。この日の朝梅田の阪神デパートから買い求めてきたお弁当も、おかずの品数、味も予想を超えた出来映えの逸品。食事も最高だ。

11時から始まった宴は、なんと夕方5時前まで続いた。話題は尽きない。橋下府政・平松市政の手ぬるさ批判から騒がしいガソリン税値下げ問題、はたまた足元の地域改善問題にまで、文字通り甲論乙駁。

紙コップ内のお酒やジュースの液の上に、舞い落ちて浮かんだ2〜3片の桜の花びら眺められたことは、人生初めての経験だった。これが花見の醍醐味というのだろうか。

仲間の一人が言った。「こんな花見は、恐らくもう二度と経験出来ませんよ。満開と絶好の花日和、そして心を通わせられる仲間同士の宴。ほとにラッキーでした」。

太閤の「醍醐の花見」の絵巻が脳裏を横切った。太閤秀吉が秀頼、北政所、淀殿、それに大名など約千三百名を従えて催した「醍醐の花見」のことだ。太閤絶頂期の一大行事だが、「桜」を使って「権力の威力と和」を誇示したことには違いは無い。「桜」とはそんな舞台設定にしばしば登場する。
 
花見の宴とは全く無縁な筆者だが、自然とは人の心をなごませ、和を図る不思議な力を、時間と空間を超えてもなお生きているものだとつくづく考えさせられた。仲間と「桜」に感謝しよう。

2008年03月29日

◆復活!水都「八軒家浜船着場」

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毛馬 一三

大阪の桜の開花は例年よりやや早く3月29日だそうだが、水都大阪を東西に流れる大川(旧淀川)河畔沿いの歩道や各公園の桜は、既に五分咲き。天気に恵まれれば、29日の土曜からこの季節を待ち詫びていた花見客がドッと押しかけ、公園の広場では随所で花見の宴が開かれるに違いない。

この大川の桜の名所の河畔を少し下り、大阪三大大橋の「天神橋」の先の左手に水都が誇る「「八軒家浜船着場」に辿り着く。

この「八軒家浜」は、古代から京都と結ぶ水上交通の拠点で、江戸時代になるとこの浜の船着場は、八軒の船宿があったことから「八軒家浜」と呼ばれた。

またここは、世界遺産となった「熊野街道」への起点として知られており、京都などから船でやって来た人々が、この船着場を経由して「熊野詣」に赴いた。

余談ながらこの熊野街道だが、<この「八軒家浜」を起点に、四天王寺(大阪市天王寺区)、住吉大社(大阪市住吉区)、堺、和歌山などを通り、紀州田辺を経て、中辺路または大辺路によって熊野三山へと向かう道筋。

この熊野街道を経て参台する「熊野詣」は、平安時代中期ごろ、熊野三山が阿弥陀信仰の聖地として信仰を集めるようになったのに伴い、法皇・上皇などの皇族、女院らや貴族の参詣が相次ぐようになったのが始まりだった。

室町時代以降は、武士や庶民の参詣が盛んになった。その様子は、蟻の行列する様に例えて、「蟻の熊野詣」と言われるほどの賑わいだったらしい。江戸時代になると伊勢詣と並び、庶民も数多く詣でたといわれる。ただ明治以降は、鉄道や道路の整備により参拝者は少なくなる>。

このように霊場熊野三山まで橋渡しする歴史的街道の起点だった由緒ある「八軒家浜船着場」だが、これを再興して賑わいのある水都大阪再生の起爆剤にしようと、民官協働の水都再生プロジェクトによってこのほど完成、桜開花宣言日にあたる29日午前11時から開港式が行われる。

京阪電車天満橋駅といえば、本欄主宰の渡部亮次郎氏も大阪在任中、毎日乗降された駅だが、その建物の北側の大川沿いに幅約10メートル、長さ約50メートルの3層からなる鋼鉄製の巨大な「船着場」がお目見えした。

新設された同船着場を見学すると、水上バス(アクアライナー)や大型遊覧船が常時2〜3艙停泊可能な、ゆったりとしたスペースがあり、ここから発進する各船で水都の川辺に広がる眺望とクルージングを楽しんでもらおうという意気込みが感じられた。

28日には八軒家浜港で前夜祭があり、午後6時に桜をモチーフにしたイルミネーションの点灯式が行われ、川面に浮かび上がったピンクと白の見事なコントラストに、見学者から歓声が上がった。

29日の開港からは、午前10時10分から水上バスが、淀屋橋、大阪城などをくるりと一周、約60分のコースを1日7便発着させる。華やかな水都大阪が、ここから芽生えるような気がする。

大阪大手企業本社の東京一局集中や、大手企業工場の他府県や外国への移籍が目立つなど、大阪の経済基盤の沈下に歯止めが掛からない中で、こうした歴史を甦らせながら集客を立て直す事業が、少しでも大阪再生に役立つよう願うしかない。(了)08.03.28
参考―フリー百科事典『ウィキペディア

◆本稿は全国版メイル・マガジン「頂門の一針」 1139号
平成20(2008)年3月29日(土)に掲載されました(編集部)

<1139号の目次>
・交渉ごとの極意:古澤 襄
・大阪地裁の不当判決:阿比留瑠比
・中共はうそをついている:大紀元日本
・北朝鮮の核保有を受け入れる?:古澤 襄
・復活!?水都「八軒家浜船着場」:毛馬一三
・横溢する「商品ではない言論」:平井修一
     話 の 福 袋
反     響
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第1139号            
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2008年03月20日

◆笑い殿堂「ワッハ上方」は?

★本原稿は、メイル・マガジン全国版「頂門の一針」
3月24日(月) 1132号に掲載されました。
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        毛馬 一三

ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)が、新生橋下徹大阪府知事の下で、府行財政改革にからみ、「存続」が危ぶまれている。

橋下知事は、破綻同然の府財政を何とか再建するには、「収入の範囲内で予算を組む」しかないと、就任初府議会で宣言。そのためには府職員の人件費の大幅削減は勿論のこと、公共事業の見直しや図書館以外の府立施設の撤廃・売却などの検討をすると言い放った。

歴代知事が手を付けなかった財政改革に大鉈を奮い、明るい大阪府の未来を築きたいという決意表明には、新知事の熱意としてそれなりに伝わってくる。

2月17日、新知事は行動を開始し、早速「ワッハ上方」を視察している。その際、「上方お笑い殿堂」の役割には一応の理解を示したという。だが、<日経新聞「先望鏡」(中沢義則編集委員)によると、超多忙な知事の情報不足もあって、運営の問題点に関する質疑は、とんちんかんだった>という。

大阪府は「ワッハ上方」が入居しているテナントビルの賃借料を年間2億8千万円支払っている。当然知事は「値引き交渉はどうなっているのですか」と訊いたらしいが、賃借値下げ交渉の窓口は大阪府生活文化部なのに、当事者能力のない視察先のワッハに問い質している。

就任ホヤホヤの橋下知事の脳裏の中に「高賃借料」だけが去来し、それ自体が存続可否の判断基準になっているのは分からない訳でもない。

しかしどうしてそんな高額な賃借料を払って「ワッハ上方」を大阪府が開設したのは何故か、その秘めたる経過を、知事が分かった上で結論を出してらいたいと願う府民は増えつつある。

さて筆者は、2006年5月に小説「ワッハ上方を作った男たち」(西日本出版社刊)を出版している。この「ワッハ上方」の発想が芽生えた昭和63年9月から、完成した平成8年11月14日までの10年余の間、この立ち上げに携わった男たちの思いと流した汗の軌跡のドキュメントだ。

そこで、拙著の中で触れた、府の財政に絡む「賃貸料」のことを、ここで改めて触れておきたい。

テナントビルの主・吉本興業は、当時の大阪府の「大阪伝統文化の象徴お笑い資料館」を作りたいとのたっての懇請に共鳴して、投資した金額は、土地取得費約100億円、ビル建設費約50億円の計150億円だった。無借金の健全経営だった吉本興業は、これをなんと自社の転換社債発行で賄っている。大阪府に一切頼らなかったのである。

当時の吉本興業は、営業収入でみると平成5年度160億円、平成6年度191億円、平成7年度212億円と業績を順調に伸ばしているものの、平成4年度148億円の営業成績とほぼ同額の資金をここで調達することは、信じがたい決断だったことは明らかだ。

さらに驚くべきことは、いわば大阪府のオーダーメイドともいうべき新築ビルへの「ワッハ上方」の入居に、「保証金・敷金」を一切要求せず、オフィスビルの家賃以下という破格の条件で、同「笑いの殿堂」を受け入れたことだ。

これは上方文化の保存と振興を図る公的施設としての機能を永続させたいという大阪府首脳の叩頭の姿勢に、吉本興業が深く理解を寄せ、渾身の気概を以って協力を惜しまなかったのが、この経過の真の姿だった。

大阪・難波千日前という繁華街で館を構える以上、それ相当の経費が伴うことは当然であり、しかも今後建物の老朽化にともなうメンテナンスに要する経費が増えることは当然だから、現状の家賃ベースで維持するだけでも相当な負担が、家主側に生じていくことは当たり前のことだ。

拙著の中で触れた国立民族学博物館の石毛直道館長(当時)の言葉が、今でも甦る。
<ちょっと財政が苦しくなると、すぐ打ち出されるのが文化の切捨てなんです。演芸のようなものは、一番下の文化だと思われがちですが、ほんとうは人間の生活文化だけに、他の高尚なものより、もっと大切なものです。

それが都市の個性を作っているわけですが、他の予算に比べて文化予算は微々たるもの。これからは文化というものに力を入れ、すぐには役立たないものの、文化を大切にすることこそが尊敬される国とか自治体と言われるようになる筈です>。

「笑い」をテーマにした博物館は世界に5ヶ所あるが、芸人のビデオテープや遺品を集め、後進のためのホールを設営しているのは、大阪にしかない。しかも大阪府の公共施設だから、遺品を寄付、私蔵品を寄贈したいと願う府民が、この「ワッハ上方」を支えているのである。「ワッハ上方」の収蔵品は、年毎に増え今では5万7千点という。

橋下知事は、極めて合理的な思考回路の持ち主のようだ。財政再建に死活を求める橋下府政には拍手を送ることに躊躇を惜しむものではない。しかし大阪文化が渇望しているこの「ワッハ上方」の存続については、財政改革とは別次元のテーマとして、知事の合理的思考を妨げるものになるとは思わない。そう信じたい。(了)