2007年07月31日

◆今日の友は、明日の敵

毛馬 一三

大阪・枚方市の中司宏市長が、うだるような暑さの中、7月31日午前大阪地検特捜部に談合(競争入札妨害)容疑で逮捕された。同市長は、記者会見や議会での答弁でも「談合には一切関与していない」と何度も開き直っていたが、その強気の姿勢も刎頚の友と信じていた盟友の自供であっけなく崩れた。

「お互い首を刎ねられても悔いはない」とする誓いを結んだ仲が、「刎頚の交わり」「刎頚の友」の故事の由来といわれ、ロッキード事件の小佐野賢治が田中角栄の刎頚の友といわれたことは記憶に新しい。

市長のその友とは、この枚方市発注の清掃工場建設をめぐる談合事件・汚職事件で逮捕された、20年来の友人・大阪府警捜査2課警部補の平原幸史郎被告(47)と元市議で府議会議員・初田豊三郎被告(49)、それに側近の副市長・小堀隆恒被告(61)である。

この人脈がこの事件の裏側で巧妙に動いた。平原被告と初田被告が大手ゼネコン大林組元顧問の森井繁夫被告(64)に市長を引き合わせる仕掛けをした。
副市長・小堀被告は、市長から紹介された上記2被告に受注工作に関する情報や動きを流し、それを掴んだ2被告は勇んで大林組側へ乗り込み発注させる工作をしたとされる。

しかもこの裏工作のあと、大阪市内のホテルや料亭で、市長は初田被告同席のもと大林組元顧問の森井被告と会食、大林組が工事を受注するよう話を持ちかけた。これが市長に対する談合容疑の要件である。

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2007年07月30日

◆党利党略からの回避

毛馬 一三

参院選挙の結果は、年金問題の逆風が与党大敗の原因につながった。閣僚の不規則発言や、閣僚不祥事もこれを後押しした格好だ。

参院大阪選挙区(改選数3)は、民主新人の梅村聡さん(32)が1277501票を獲得してトップ当選。公明前職の白浜一良さん(60)は組織力に支えられて4選。前回の選挙でトップ当選を果たした自民前職の谷川秀善さん(73)は、逆風をもろに受けて苦戦しながらも3選を決めた。

大阪選挙区の投票率は、平成16年の前回を上回る55.81%だった。この投票率のアップは、期日前投票と不在者投票が前回の47万6539人を上回り、66万6755人に達したことも投票率アップの引き金となったのも事実。この背景には、やはり「年金問題」に対する国民の怒りが投票行動を促した結果であろう。

トップ当選した梅村さんは「思い責任を感じ身が引き締まる思いです。この戦いがきっと政権交代の足がかりとなる」と喜びを語った。4選を果たした白浜さんは、「逆風を押し退けて勝利することが出来ました。責任の重大さを痛感している」と述べている。

谷川さんは、一転3位当選。「いかなる逆風が吹いても、大阪自民の議席を守ろうと頑張った。当選できたのは皆さんのお陰。感謝しています」とホッとした表情を覗かせていた。

大阪人の金銭感覚は、商人の街だけに他都市よりいたく敏感だ。長年掛けてきた「年金給付」を得るための証明に「払い込み領収書」をもってこいといわれたのでは、シビアーな浪速っ子が怒らない訳はない。その矛先が今回の選挙で与党批判につながり、大敗させる原因をつくった。

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2007年07月02日

◆けったいな「学歴詐称」

<本稿は、ネットマガ全国版「頂門の一針」7月1日・853号に掲載されました>

                     毛馬 一三

大阪市の關淳一市長が27日の記者会見で明らかにした「学歴詐称」職員
とは、大学卒業直後に市職員の採用試験を受けた者が、「大学卒」の学
歴を「高校卒」と偽ったものだと判断し、市職員採用試験を欺く大学新
卒者の卑劣な行為だとの批判が集まった。

しかしこれには市長のお粗末な記者会見での説明に起因している。

処分を受けるのは、全ての部局にまたがっており、市民サービスを考慮
して、停職の次期は7月に404人、8月に561人に対称に2回に分けて実施す
る。

採用年次で多かったのは、平成10〜14年度の278人、ついで5〜9年度の
246人、昭和63年度〜平成4年度の169人。職種別では、市教委・建設局・
交通局が100人超で、最も多いのがゴミ収集担当の環境局の179人だった。

今回の学歴詐称問題は、神戸市など近隣自治体で同問題が発覚、神戸市
で懲戒・諭旨免職が38人、尼崎市で諭旨免職が2人となり、これを受けて
大阪市で調査していたもの。

大阪市では、自己申告すれば「定職処分」に留めるという緩やかな処分
基準を示して自己申告を促したところ、1141人が申告。精査した結果正
式処分は、965人に絞られた。 1000人近い職員が学歴詐称で集中処分を
受けるのは、大阪市が初めて。 

この問題は、学歴を低く偽って高卒枠の採用試験に受験し採用された965
人の職員を、停職1ヶ月の処分にすることを大阪市の關淳一市長が記者会
見で明らかにしたもので、5月27日のことだ。全国的なニュースとなった。

その席上同市長は、「組織ぐるみではない。学歴を低く偽る受験者の自
己申告を信じる他はなかった」と市の関与と責任を全面的に否定し、あ
くまで当該職員個人の違反行為だと言い切った。

採用年次で多かったのは、平成10〜14年度の278人、ついで5〜9年度の
246人、昭和63年度〜平成4年度の169人。

職種別では、市教委・建設局・交通局が100人超で、最も多いのがゴミ処
理業務担当の環境局の179人だった。

案の定、マスコミは飛びついた。新たな大阪市の不祥事発覚として、
「学歴詐称」の職員に対する批判キャンペーンを繰り広げた。大阪市会
も反発した。

極め付けは、大阪市の元助役だった女性弁護士が、27日に開かれた人事
院の国家公務員倫理審査会の席上、「停職処分は甘すぎる。当然免職に
すべきだ」と述べたことだ。<読売新聞28日朝刊>

確かにこのキャンペーン記事に市民は、またもや怒った。てっきり大学
新卒者が民間会社の入社試験に合格出来ない為、学歴を偽って「高卒」
になりすまし、職員採用試験を潜り抜けたものだと思い込んだ。偽った
こと自体、紛れもない事実だから、批判を免れるものではないことは確
かなことだ。

しかし、市の関与は皆無だと胸を張った市長の釈明会見内容が、ちょっ
と事実と違うことが浮かび上がってきたのだ。

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2007年06月22日

◆「公金」への感覚マヒ

                     毛馬 一三

全国の地方議会を今揺るがせているのが、「議員政務調査費」問題。地方自治体が、議員報酬とは別に「議員個人と会派」に支給している費用のことである。

この「政務調査費」について各自治体では、条例で使途を議員の調査研究目的に限定し、政治活動、後援会活動、交際費への支出は一切認めていない。

ところが問題なのは、交付対象となる支出明細に、領収書添付が義務づけていないために、適正に使用されたか否かの判断がなされないまま見過ごされてきたのが実態。このためこれを追及する市民団体が「政調費」の返還を求める訴訟を起こし、近年これを是認する司法判断が示されるほどになってきている。

「公金」の使途に領収書がなければ、それが純然と公務たる政務調査活動の目的に使われたのかどうか、疑われても仕方があるまい。

そんな中、大阪府議会がこの「政務調査費」返還勧告を巡って、いま大騒動となっている。住民の監査請求で府監査委員が外部監査人(弁護士)の報告を受けて府議会に勧告を突きつけたことに端を発した。

勧告は議会にとり、半端な返還額ではなかった。平成16、17両年度に支出された会派分と議員112人の個人分の両方の「政務調査費」返還額の総計が、なんと計3億4116万円に上り、過去全国の返還勧告額の例とは比べものにならない高額だったのだ。

このうち1人当り毎月49万円支給されている議員個人分についての返還額が、総額で約2億9000万円。対象者112人の大半の89人が100万円以上、500万円以上が10人。最高額は2年分全額の1176万円にも上っている。

目的外で返還を求められたのは、領収書添付がない不明確な支出は言うまでもないが、自宅兼事務所ビルの賃借料や事務員などの人件費、車の購入など公私の区別が曖昧なものなども本来の調査活動ではない、不適正な目的外支出との認定を下した。これが大きく膨らんで異例の高額返還に結びついたのである。

これに府議会各会派が噛み付き、騒ぎが大きくなった。自民、民主、公明、共産の主要4会派が揃った異例の記者会見で、「政務調査の見解に大きな相違がある。納得がいかない」と不満をぶちまけた。



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2007年06月08日

◆新疑惑構図と「市長選挙?」

<当原稿は、日本一メルマガ「頂門の一針」6月8日号に掲載されました。
    http://www.max.hi-ho.ne.jp/azur/ryojiro/chomon.htm
                     
                         毛馬 一三

枚方市の清掃工場建設をめぐる談合事件は、市のナンバー2の副市長や「建設談合のドン」といわれる大手ゼネコン大林組顧問、それに大阪府警2課の現職警察官や市長と刎頚の友といわれる現職府議会議員など、中司宏市長と密接な間柄にある関係者が、相次いで逮捕されるというまことに異常な“構図”を顕にした。

だが異常な事態はそれだけで済まなかった。この4月四選を果たしたばかりの同市長が、華々しい舞台としたいと心積りにしていた6月14日からの定例市議会での「所信表明演説」を、中止させられる羽目になったのである。

というのは、市会議員が出席する全員協議会が7日午後開いた会合で、枚方談合事件の捜査の進展がはっきりしない現段階で、市長が議会冒頭で「所信表明演説」を行うのは妥当ではないとして、「中止」させたのだ。

だいたい、市長が市政運営の新たな方針を誇らしげに表明したいとする当選直後の初議会で、議会側の意思でそれを中止させられること自体、全国の自治体では異例なことだ。選挙中に不祥事を起こして後に辞任する嵌めになった故横山ノック大阪府知事も、当選直後の「所信表明演説」は粛々とおこなっていることをみても、その異例さが分かる。

確かに中司市長は、終始事件との関与を否定しているものの、冒頭に触れたように今回の事件を構成する重要人物との交流も深く、それらの人物との会食や引き合わせ紹介行為が浮上してきたことから、市長の「関与」を疑う機運が議会内で急速に高まってきていることは事実。会派によっては、「市長辞職」を主張するところも出てきている。

だから、談合事件を未然にチェック出来なかった議会側が、地検特捜部の捜査の渦中で関与の噂も浮上している同市長の行政運営の行使に“待った”をかける意味も頷けないではない。

こんな中、新疑惑の構図が明るみに出てきた。今回の談合は、市の清掃工場建設を「一括発注方式」から建物本体とプラント部分を「分離発注」させるよう、逮捕された副市長が大林組などに提案したことから始まっている。

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2007年06月05日

◆枚方談合 大詰めへ

                   毛馬一三

<大阪地検特捜部は、枚方市の清掃工場をめぐる談合で、大阪府議会議員と、関西の建築工事の談合を長年仕切ってきたと大林組の顧問を、4日談合共犯の疑いで逮捕した。

逮捕されたのは、大阪府議会議員の初田豊三郎容疑者(49)と大林組の顧問の山本正明容疑者(71)の2人。

調べによると、初田議員と山本顧問は、枚方市が05年清掃工場の入札をめぐってすでに逮捕されている副市長の小堀隆恒容疑者(60)らとともに談合に関わった疑い。

山本顧問は関西の建築工事の談合を長年仕切ってきたといわれており、すでに逮捕されている大林組の「顧問」森井繁夫容疑者(63)らに業者間の調整に具体的な指示していたといわれている。この事件で合わせて10人が逮捕された。

談合事件が起きるたびにその陰の“仕切り屋大物”といわれながら、事件の表面に中々現れなかった大林組の山本容疑者が今回逮捕されたことで、枚方談合の構図がくっきりと浮かび上がってきた。

これにより今後は大林組の“影の超大物”と談合枠組みを作り上げたと見られる枚方市のトップの関与が焦点となり、捜査はいよいよ大詰めの段階に入ってきた>。

2007年06月01日

◆「思惑はずれ」・枚方談合事件

 <本稿は、全国版メルマガ「頂門の一針」6月1日発刊 820号に掲載されています>                    

                          毛馬 一三

捜査2課の現職警察官が「談合」に関与して大阪地検特捜部に逮捕されるという前代未聞の事件が、大阪府枚方市で起きた。

談合を摘発する立場の大阪府警察本部の面子は丸つぶれだが、事件の端緒が現職知事が逮捕された和歌山県談合事件の押収資料からだったという新事実が、関係者の話で浮かび上がってきた。

今回の談合事件の主役の1人が、競争入札妨害(談合)容疑で逮捕された大阪府警捜査2課の警部補・平原幸史郎容疑者(47)。枚方市発注の清掃工場の建設工事をめぐり、枚方市のトップから「工事入札情報」を入手。かって別の事件で事情聴取し、それがキッカケで親密となった建設会社「国土建設」の社長山田睦司容疑者=同容疑で逮捕=と図って、この情報をネタにゼネコン大林組側と中司宏枚方市長と会談させる会食を設営したといわれる。

さらに平原容疑者は、同工事建設担当の小堀隆恒・副市長(60)に数回にわたって接触、工事計画の進捗状況や入札情報を聞きだし、それを「市の内部情報」としてゼネコン側に伝えていたという。

小堀副市長が平原容疑者を中司市長から紹介されたのは、平成15年ごろで、「(自分が)府会議員時代からの知り合いだから、力になって頂けると思う」と市長から言われたので、「警察官である平原容疑者には何の疑いも持たなかった。むしろ後ろ盾になってもらえる人だと思って安心して話をした」と述べ、平原容疑者との接触は認めたが、事件との関わりは否定していた。

関係者によると、平原容疑者は「談合が行われている」と、恰も情報収集の捜査をしているかのように巧みに持ちかけながら、「入札情報」を聞き出していたと指摘する。

「確かに捜査する場合は、相手の懐に飛び込んで情報収集にあたるのが常道だが、ゼネコン側に流す目的でそうしていたとすれば言語同断、警察官としてあるまじき行為」と、大阪府警捜査2課OBは嘆く。

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2007年05月16日

◆上方漫才 はな寛太さん 逝く

                        毛馬 一三

はな寛太さん(本名西村一文)が、15日午前10時55分食道癌のため、大阪済生会中津病院で亡くなった。61歳だった。喪主は西村康二氏(実弟)。通夜は17日午後7時、告別式は18日共に大阪市北玉泉院(大阪北区長柄西)で行われる。

はな寛太さんは、昭和20年8月30日兵庫県加西市生まれ。松竹新喜劇出身。昭和45年「いま寛大」さんとコンビを結成。平成17年度には「文化庁芸術祭大賞」を受賞。

はな寛太さんとは、2年ほど前、下記に掲載する拙稿「私の生きざま」の取材をきっかけに親交があった。何度も苦難の立ち向かいながら「こびず、おごらず、手をぬかず」を人生訓に生き抜いてきたことを口癖のように語っておられたことを、鮮明に思い出す。

漫才の台本は全て自分が手がけ、コンビのいま寛大さんと絶妙な呼吸で観客を爆笑に誘うことを一番の目標にしていた。舞台に余裕があると、老人クラブに出向き、お年寄りに生き甲斐を感じさせる話を繰り返していたのには、頭が下がる想いだった。

1年余前に最愛のおかんを胃癌で亡くし悲嘆にくれておられたが、今は最愛のおかんとの出会いがあの世で実現しておられるだろうと思う。長い間、沢山の人を楽しませくれたことに感謝の意を奉げます。安らかにお眠りください。 (合掌)

◆ 拙稿・はな寛太さんの「生きざま」  毛馬 一三著

<「病気」が私の転機>

「漫才の神様がおって、ようやく春が来た」と心の底から思うことが起こりました。 昨年10月16日大阪「ワッハ上方」で行った「はな寛太、いま寛大漫才結成35周年記念公演」が、文化庁の04年度芸術祭演芸大賞に選ばれたのです。今年1月19日大阪のホテル・ニューオータニで、私達コンビは身に余る栄誉と歓喜の大賞を文化庁から直に頂戴致しました。長年上方漫才に携わってきた者として、演者冥利に尽きる天にも昇る心地でした。

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2007年01月08日

◆今年の関西は「選挙一色」

                          毛馬一三

今年は、4月に4年に1度の統一地方選挙が実施されるほか、奈良県の柿本知事の辞任を受けの奈良県知事選挙、夏には参院選(7月5日公示、同22日投開票の方向)が行われるなど選挙一色の年だが、注目はなんと言っても大阪市長選挙。

大阪市では一昨年11月に關市長辞任にともなう出直し市長選挙で關市長が再選されたばかりだが、任期が12月18日で任期満了となるため再び市長選挙が行われる。

この選挙に關市長が立候補するのは確実。現職と戦うのは、先の出直し選挙で争った元共産党の市議団長、姫野浄氏。民主党は流動的だ。

中でも關市長は、この4日の仕事初めの職員向けの挨拶で、「改革から創造へ進む環境が出来つつある」と市政改革マニフェストの実行が順調であることを誇らしげにのべ、「創造都市づくりをすすめたい」と早々と市長選出馬の意欲とも取れる発言をした。

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2006年12月29日

◆談合は不滅

               毛馬一三
和歌山県の工事をめぐる談合・汚職事件で収賄罪などで起訴された前知事の木村良樹被告(54)が、先月の逮捕以来、拘留44日目の28日午後5時、夕闇の中を大阪都島区の拘置所から、1500万円の保釈金を支払って保釈された。

木村良樹被告は、県の工事をめぐって談合を調整していたゴルフ場の元代表の井山義一被告(56)から、現金1000万円の賄賂を受け取ったなどとして収賄と談合の罪で、前日の27日追起訴された。これにより同県を舞台とした3ヶ月に亘る一連の官製談合・汚職事件の捜査は、とりあえず終結した。

奇なるかな、前知事が保釈される1時間ほど前の午後4時頃、和歌山県庁では新しい主となった仁坂吉伸和歌山県知事が、仕事納めの恒例の初めての行事に臨んでいた。庁内に課長以上の幹部職員140人を集め、「新しい年は職員のこれまでの努力の蓄積に私のアイデアを入れて、和歌山県にとって巻き返しのスタートの年となるようにしたい」と、勇ましい訓示をしたのである。

県政に空白を作らないという趣旨とはいえ、誠に皮肉な主役の交代劇の一幕だった。だが、その劇的な新知事のこの意気込みを、県民が心の底でどう受け止めただろうか。同調する県民はごく少数で、ほとんどは白けているのが真相だろう。だれも「談合」が直ちに排除され、新知事が息巻く巻き返しの新規レールが直ちに敷かれるなど、いささかも思っていない。

木村前知事の時もそうだった。00年9月の知事就任の直後、支援組織の初会合でこう云っている。「業界として困ったことがあれば、どしどし言って欲しい。ただし1社だけのためになにか、ということはしない」と、県政運営に清廉さを以って臨むことを強調したのだ。

これを聞いたメンバーは、「新知事は利益誘導する人ではないと思い、みんなそこにほれこんだ」とそうだ。<毎日新聞12.28朝刊>。この演説によりそれまで半ば公然と行われてきた「談合」体質との決別を断行してくれる知事が出現したと思い込んだからだ。

ところがそうではなかった。木村前知事は、「改革派」知事としての表の顔と、「談合」を牛耳る裏の顔を巧みに使い分けられるような手練手管の男ではない。所詮坊ちゃん育ち同然のキャリア官僚だったから、「金と人手」を用いて知事の座を与えてくれた男に終始踊らされただけのことだと、県民や友人だった大阪府庁の元幹部たちは、吐き捨てるようにいう。

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2006年12月18日

◆厳しい仁坂新県政の前途


                  毛馬一三

談合事件で逮捕された前の知事が辞職したことに伴う和歌山県知事選挙は、17日の投票の結果、自民・公明両党が推薦する元経済産業省製造産業局次長の仁坂吉伸氏が初めての当選を果たした。が、投票率は35、21%と前回04年知事選の37、29%を下回って過去最低となり、県民の3人中2人が投票を忌避、「出直し選挙」による県政建て直しに不信感と突きつけたのだ。

<開票結果は、
(当) 仁坂吉伸 無新195719
    泉 敏孝 無新 90680>
仁坂氏は記者会見で、「談合の再発が絶対起こらないような仕掛けを作るのが、私の第一の使命」と語り、専門家による「再発防止のシステム」を検討することを力説した。

だが、今回の「出直し選挙」に向けた県民の目は厳しかった。木村良樹容疑者が地元和歌山県民の利益に名実共に反する談合に狂奔する「落下傘官僚知事」だったことから、選挙当初から仁坂吉伸氏の経歴に鋭い目が注がれた。確かに和歌山生まれではあったが、30年間は地元を離れ地元とは何の所縁もない知名度ゼロに等しい候補者だったからだ。所詮木村容疑者と何等変わらない「落下官僚傘官僚」にしか県民の目には映らなかったのだ。

その点を意識したのか、同氏は「全身全霊で和歌山県政を立て直す」と連呼しまくったが、実際「地べたを這い、ひとりで駆けずり回る改革闘士としての熱意と行動力」を見ることはほとんど無く、結局選挙の全面的な取り仕切を行ったのは、自民党関係者だったことが有権者には透けて見えた。

つまるところ木村容疑者と同様、肝心の票固めは政党に「丸抱え」してもらい、木村容疑者時代暗躍した建設業界ですら表面上自粛の格好を取りつつも、水面下では指令が飛ばして仁坂氏支援を積極的に動いていたことが、バレていた。大阪ゼネコン関係者もその事実を肯定する。

今回は、民主党のだらしない立候補見送りで、県民総がかりの「出直し選挙」に仕立てたいという県民の悲願も裏切られ、結果的には木村時代と変わらない県政を再現してしまつたのではないかと悔やむ関係者は多い。

今回の「選挙」は政党の主導と、地元主力産業の建設業界が影で支援するという懲りない構図が繰り返されたが、脇が甘いと極評される官僚出身の新知事が、選挙支援の「見返り」を決然と撥ね付けることが出来るだろうか。

たしかに木村容疑者と違い、野望の度合いも当初から仕組まれた刎頚の友もいないようだ。しかし和歌山で死活を掛け虎視眈々と新知事取り入ろうと狙っている業界有力組織が、摘発された業者以外に依然現存していることは紛れも無い事実だと、先のゼネコン関係者は証言する。

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2006年12月17日

◆仏の顔も3度


               毛馬一三

3知事逮捕の官製談合が摘発されたばかりなのに、今度は大阪府で「裏金」問題が発覚、またもや露呈した自治体の不祥事に眉を顰める人が多い。公金を「裏金」に摩り替えた金額は、15日現在府庁10部局で、既に使われた1338万円を含め約3413万円に上るといわれる。まだ増えることは確実視される。

広辞苑によると「裏金」とは、<取引などを有利にとり運ぶため、表向きとは別につかませる金銭>といわゆる賄賂のことを指しているが、不正な金の運用であることは同義であっても、この場合若干ニュアンスを異にする。つまり府庁各部局に予算化された公金を、カラ出張やカラ残業などの偽装支出で捻出し、秘蔵プールした「影の金」のことだ。

報道各社は、この「裏金」問題を97年度に発覚した13億3300万円に続く2度目の事件としているが、それは違う。本当は3度目なのである。1度目は、80年に府水道部で起きた。市町村から徴収した水道供給料金からカラ出張費名目などで5000〜6000万円近い「裏金」を捻出、概ね幹部職員の飲食代や接待費に供された。

この時出納を担当する総務係員の内部告発で事件にまで発展し、それ以来「裏金」が自治体の不祥事用語として認知される不名誉なキッカケとなった。しかし、最初のこの「裏金」事件は、その職にいた幹部が巧妙に仕組み専ら私的に共用したものだったため、組織としての府の責任を追及される事態に発展はしなかった。

このことが罪悪感を府庁内に定着させない原因に繋がり、その結果先述の2回目の「裏金」事件と結びついていったのである。

2回目の「裏金」事件は、巧妙に仕組まれた。当時存在した府営「国際ホテル」を拠点にして、各部局がカラ出張・カラ残業で捻り出した「裏金」を集められ、ここから出金された。当時は国庫交付金が自治体の財政基盤を支える時代で、このために国の役人接待が行われ、陳情先の各省庁の担当者へ手土産用としてビール券・商品券などが運ばれたと、府庁幹部OBが証言する。

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2006年12月10日

◆奥の奥の談合

毛馬一三

「知事逮捕」が、わずか2ヶ月の間に福島、和歌山、宮崎各県の3人に及んだ。戦後知事在職中の行為で逮捕されたのは、わずか6人。この短期間にその半分に当たる3人もの知事が逮捕された背景は、一体何だったのか。そこにはなるほどとと思える共通点が浮かび上がってくる。

首長の官製談合の防止は、これから無くなるとは談じ難い。「談合決別宣言」を打ち出すことを目標に先日開かれた全国知事会の会合でさえ、総論賛成であっても、本音の部分では表沙汰になる「宣言」の実効性に首をひねる知事の意見が大勢を占めたという。

なぜ実効性に首をひねるのか。答えは簡単。いくら高邁な小理屈を並べ立てようとも、「金」のかかりすぎる首長選挙そのものが、選挙のたび毎に自らの目の前に厳然と立ちはだかるかぎり、大きな声では言えないが、「談合決別」など出来るはずがない、いうのが率直な感慨のようだ。選挙で知事の座を射止めることは、「魔界」に身ごと突っ込むに等しいことだという知事経験者の話を聞いた。

今回逮捕された宮崎県の安藤忠恕前知事(65)も、この知事選挙の罠にトップリ嵌まってしまったといってもいい。もともと「6期に亘る長期県政の澱みを正そう」と再度挑戦した同前知事だった。が、組織の無い選挙態勢は前回と変わらず、敗戦は必至の情勢だった。

その窮地を救ったのが元国会議員の後援会であり、行動部隊が建設界だった。選挙は引退した現職知事の後継候補を破り、安藤前知事は悲願の知事の座に座った。ところがその行動部隊の中に今度の談合事件の中心人物、ヤマト設計(東京)の社長二本木由文容疑者(56)がいた。

元国会議員の元秘書石川鎮雄容疑者(68)が、前知事に引き合わせたものだったが、「仕事をくれ」と迫る二本木容疑者の要請に、県幹部を呼び「天の声」を発したという。選挙に貢献大の二本木容疑者に応えたものだった。情にからんだ脇の甘い「脆さ」がここに出現した。

知事の座に集中する圧倒的な権力の旨味を味わいながら、人事や予算編成に「傲慢さ」を遺憾なく発揮できる県政態勢を確立し始めた同前知事が、己の長期県政維持に夢馳せた瞬間、あの苦渋の選挙から救ってくれた建設界と強固な誼を常時結んでいこうと、心中深く決意したのは頷けなくもない。

しかしこれが自分の決定的な陥し穴になろうとは、権力の頂点にいる「傲慢さ」が見失わせ、自らを律しようという公人たる自覚さえも喪失させる結果をまねいたことになる。

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