2015年10月20日

◆米国「ネオコン」復活か

平井 修一



自民党は左派から右派まで玉石混交の緩やかな保守連合だが、米国共和党も実に多彩な保守連合だ。高畑昭男・白鷗大学教授の論考「共和党の外交・安保思想」(日本国際問題研究所10/13)から。

<1. 米共和党の外交・安保思想の類型と系譜

共和党を中心とした米国保守の外交・安全保障をめぐる政策思想は、以下の6つに大別できよう(略)。

第二次大戦期まで共和党では全般的に孤立主義の伝統が強かったが、大戦後〜冷戦中期にかけてニクソン外交のようにリアリストが主流となっていった。

しかし、「強いアメリカ再生」を掲げて登場した1980年代のレーガン政権を機に、保守強硬派と新保守主義の連合が主流派に浮上し、レーガン軍拡、戦略防衛構想(SDI、後のミサイル防衛に発展)等の対ソ強硬外交を経て冷戦勝利をもたらしたといえる。

だが、9/11同時テロ後のG.W.ブッシュ政権によるアフガニスタン、イラク戦争を経て保守強硬派と新保守主義は国民世論の支持を失った。

オバマ民主党政権下の共和党内ではリアリスト、孤立主義者、保守強硬派等が混在する情勢に至り、いずれが主流派とは言い難い状況にある。

2. 共和党・保守のオバマ外交観と2016年大統領選

にもかかわらず、「世界の警察官」役を放棄したオバマ政権の外交・安保路線に対し、共和党内では孤立主義者を除いては「アメリカを弱体化させた」「弱いアメリカはかえって敵を挑発し、危機を呼び込む」といった批判や不満の声が強い。

とりわけシリア危機や「イスラム国」問題が一つのピークを迎えた2014年夏頃を機に、共和党から大統領選をめざす各候補・陣営では保守強硬路線が目立っている。

その背景には、民主党リベラルから共和党保守まで米国全体を含めて「強いアメリカ」と「弱いアメリカ」をめぐる葛藤が指摘できる。

米政治学者ウォルター・ラッセル・ミードらの分析によれば、米国の外交・安保思想には、

1)米国の経済権益を軸とする国際システムに中国などの取り込みを図る
「ハミルトン主義」、

2)自由、人権、法治主義等の価値を軸とする国際システム構築をめざす
「ウィルソン主義」、

3)戦争や介入を忌避し、現実的でコスト最小限の外交をめざす「ジェ
ファソン主義」、

4)国際秩序には無関心で米国の防衛や名誉を重視する「ジャクソン主義」

という4つの伝統的類型があるとする。

共和党からみる限り、オバマ外交は対外関与を最小限にとどめる「ジェファソン主義」的要素と、理想的秩序の建設を求める「ウィルソン主義」的要素が合体した結果、「口では理想を掲げるが、実行手段が伴わず、結果としてアメリカを弱体化させてしまった」とする批判に結びついていると指摘されている。

3. 大統領選に向けた動き

2016年に向けた共和党各陣営にほぼ共通して、対外積極関与を訴える保守強硬主義の色彩が目立っているのは、恐らく上記のような事情から「強いアメリカ」の再生を主張するようになったとみてよいだろう。

また、こうした傾向を支える政策・人材面の重要な要素として、2012年大統領選で敗北したミット・ロムニー共和党大統領候補陣営の外交顧問らが2013年に創設した「ジョン・ヘイ・イニシアチブ」(John HayInitiative)という組織の存在が大きいことを指摘しておきたい。

同イニシアチブの創設者はG・W・ブッシュ政権の要職にあった新保守主義(平井:ネオコン)系の人々で、約200人の外交・安保専門家を擁し、共和党から出馬をめざすジェブ・ブッシュ、マルコ・ルビオ、テッド・クルス、スコット・ウォーカー、カーリー・フィオリーナ等の主だった陣営に政策的助言や演説草稿作成支援等の手厚い支援を差し伸べており、「共和党陣営は外交・安保政策をアウトソーシングしている」とメディアに皮肉られるほどの活況を呈している。

各陣営への助言内容や政策路線をみても、「強いアメリカの再興」「世界の自由を守る戦い」「アメリカの価値と道義の推進」といった新保守主義的な主張が見られるのが大きな特色といえる。

共和党各陣営の外交・安保政策がどうなっていくかを見る上で、同イニシアチブの動向は極めて注目されよう。

ただし、注意すべきは大統領選の現段階では各陣営ともにオバマ外交への対立軸を際立たせる政治的レトリックとして「積極関与、強硬路線」を強調している可能性も考えられることである。

大統領本選に進出する候補が最終的にどのような外交・安保路線を打ち出してくるかは未定であり、有権者・世論の対応も含めて慎重にみていく必要があるのはいうまでもない>(以上)

氏によれば、新保守主義(neo-conservative)は1970年代に民主党タカ派の一部が転向。ユダヤ系が多く、強烈な反全体主義・反専制思想に貫かれ、「力と正義」を掲げて米国型民主主義や自由の敷衍が米国と世界の国益と主張する勢力だという。

「口だけ正義」で外交失点を重ねるオバマが、死んだはずのネオコンを復活させたようだ。一方、オバマは南シナ海で侵略的覇権確立を進める中共を見過ごすのか、それとも押さえつけて国際ルールを守らせるかの岐路にある。毅然とした対応を早急にすれば支持率は上がるが、それをしないとさらに失点を重ね、来年の大統領選では“強面”共和党に敗ける可能性がある。

米国の政治は「内向きと外向きを繰り返し、まるでアコーディオンのよう」と加瀬英明氏が指摘しているが、今現在は内向きから外向きに変わりそうな気配である。(2015/10/19)

◆サイバーの脅威、日本よ発奮せよ

櫻井よしこ



米国務省のラッセル国務次官補が10月2日、ニューヨークで興味深い発言をした。
 
米中首脳会談に先立ち、米国は中国に対して、彼らがサイバー攻撃で米企業から盗み取った通商上の機密を利用し、莫大な利益を上げている実態を突きつけたというのだ。オバマ大統領もケリー国務長官も「容認できない」と強く警告してきたとも述べている。

 
9月末の米中首脳会談で、「中国は米国の懸念を真剣に受け止めた」が、米国側は習近平国家主席に、サイバー攻撃による窃取をやめるという合意を中国が順守するかどうかを厳しく監視し続けると、明確に伝えたという。
 
そこで問題は、果たして習氏は米中政府間の約束を履行できるかという点だ。これは習氏が中国人民解放軍(PLA)を掌握できているか否かという、これまで多くの人々が疑問視してきた問いに直接結びつく。サイバーセキュリティ研究所所長の伊東寛氏は、習氏の軍へのコントロールに疑問を抱く。

「軍の動きと習主席の動きを並べて見ることが大事です。習・オバマ首脳会談は9月25日でした。その直前の22日に、PLAのJH7型戦闘爆撃機が米太平洋軍の電子偵察機RC135の、わずか150b前方を横切ったと報道されました。恐ろしい挑発です。明らかに軍は習主席に、米国に妥協するなというシグナルを送っていると考えられます」
 
この軍の挑発的行動を習氏は事前に把握していたのか。インド政策研究センター教授のブラーマ・チェラニー氏はこう語る。

「昨年9月17日、習氏がインドを訪問したときのことです。習氏の全行程にモディ首相が同行し、友好関係が演出されましたが、際どい場面もあった。習氏の訪印に合わせて、PLAの兵士1000人が国境線を越えてインド領に侵入し攻撃したのです。
 
その日はたまたま、モディ首相の誕生日だった。そこで彼は首脳会談の冒頭、こんなに酷いバースデープレゼントは初めてだと言ったのです。習氏は驚いた様子で、24時間の猶予が欲しい、その間に調査させると言ったそうです」

網電一体戦
 
習氏はPLAの攻撃について何も知らされていなかったと、チェラニー氏は考える。伊東氏も同様の主張を展開する。

「習氏はPLAをコントロールできていないのではないか。そうであればサイバー攻撃の主体はPLAですから、中国による対米サイバー戦は止まないということです」
 
中国のサイバー部隊の実力はどの辺にあるのか。まず、その規模については、最大に見積もって40万人という説もある。戦い方として、10年程前から彼らが研究してきた対米サイバー戦は、網電一体戦という概念で説明されるという。

「網はサイバー、電は電波を妨害したり傍受したりする電子戦のことです」と伊東氏が語る。

「米軍は極めて強力ですが、米国には弱点もあります。コンピューターやネットワークに過度に依存するハイテク社会であることです。中国は、最初の一撃で米社会のハイテクの基盤を破壊するサイバー攻撃で、コンピューターシステムをダウンさせることを狙っています。次に電子戦で無線を妨害し、米軍の指揮統制システムを機能不全に追い込む。しかし興味深いのは、米軍は必ず立ち直ると中国が考えていることです。だから、網電一体攻撃で潰した米軍が立ち直る前に、徹底的に押し潰してしまえとい
う考えなのです」
 
そのようなことは可能なのか。伊東氏は、米国が最も気にしている国内の脆弱性は電力系にあるという。

「発電量と電力消費量のバランスが保たれない場合、大事故につながる可能性もあります。ところが米国は発送電分離の州もあり、しかも州毎にさまざまな企業がバラバラに経営しています。攻撃者からみると、急所は幾つもある。一番弱い所を攻撃して、将棋倒しでやればよいと、考えるのが普通です」
 
米国も当然、対策は講じてきた。10年ほど前から、電力系システムの防衛主目的としたサイバーストームと呼ばれる演習を行ってきた。しかし、前述した発送電分離や州毎に異なる企業が存在するため、未だに有効な防護体制は出来上がっていないのが実情だそうだ。米国のそんな事情をきけば、いま発送電分離へと移ろうとしている日本のことが気にかかる。
 
とは言っても、米国はインターネットを創り出した国で、コンピューターの本拠地でもある。サイバーの分野において米国の水準が世界最高峰であるのは間違いない。中国が盗むのは追いつくためであり、盗む技術がなくなるまで、決してやめないと伊東氏は強調する。
 
氏が興味深い図を示した。2012年作成の標的型攻撃メールを発信国別に示したものだ。中国発が最も多く、全体の31%を占めている。

官からも民からも

「ネットワークでのサイバー攻撃の特色は、犯人が身元を隠せることです。12年段階で中国発の標的型攻撃メールが31%も占めていたことは、それだけ下手な攻撃者が中国に存在したという意味です。13億の人口、6億以上のネットユーザーを考えれば、裾野が広い分、優秀なハッカーもいればそうでない者もいる。レベルの低いハッカーの存在が31%という数字になっていたと思います。しかし、全体のレベルが急速に上がってきています。いま同じ調査をすれば、中国によるサイバー攻撃は殆んど表に出てこないでしょう」
 
日本は中国に少なくとも10年、米国には30年以上の遅れがあるというのが、伊東氏の実感だ。自衛隊にサイバー部隊が創設されたのはわずか10年程前、部隊は100人規模にすぎない。官も民も、最大の問題は、日本がどれ程遅れているかを殆んど意識していないことだ。

「21世紀はサイバーの世紀なのです。にも拘わらず危機意識の欠如で、対策も満足に講じられていません。今年6月、日本年金機構がサイバー攻撃を受けて、約125万件の情報が流出したという報道がありました。日本の情報は官からも民からも、いまも奪われ続けています。それなのに、なぜ年金機構の件だけがニュースになったのか。民間企業が被害を公にしたら、株価は下がり、最悪の場合、倒産に追い込まれかねません。けれど年金機構なら潰れない。日本国民に危機意識も持たせられる。それが年金機構の被害が公表された理由だと思うのは、深読みのしすぎでしょうか」
 
中国の攻撃で技術も個人情報も盗まれ、日本と日本人の弱点が多角的に把握されてしまっている。サイバーでも安保法制でも、日本人の危機意識を呼びさますことこそ大事だと痛感する。

『週刊新潮』 2015年10月15日号:日本ルネッサンス 第675回

2015年10月19日

◆南京記憶遺産は、日中情報戦の一環だ

池田 法彦



RC(=支那)政府による「南京事件」世界記憶遺産登録申請をUNESCOが認定してしまった。今回は首相以下外務省高官迄もかなり抗議したが、日本の名誉と国益が棄損されかねない事案でも、外務省の実務交渉は何事につけても国益よりも、妥協成立を目指しているとしか思えない。

軍艦島等の「明治日本の産業革命遺産」申請に於いても、強制徴用朝鮮半出身被害者の記憶を留めよ、と採択土壇場で韓国が騒ぎ、結果として情報センター設置や遺産現場に強制徴用プレート掲載を妥協すると言う失態を演じたが、日本外交官の国益観点欠如、質の劣化ではないか。

全米9カ所に慰安婦像等が設置されたが、皆片田舎の公園や図書館への設置だ。今回は、観光客が多いサンフランシスコ市内への慰安婦像設置が市議会全会一致で決まった。更に問題は、韓国系団体主体ではなく、中国系が乗り出し主導していることに、注目すべき点がある。

従来日本貶め(Discount Japan)キャンペーンは韓国が国家を挙げて推進してきたが、従軍慰安婦捏造が朝日新聞虚偽報道で世界に拡散し、勢いが止まった韓国に代わり宗主国PRCのお出ましとなった訳だ。尤も、PRCは韓国を助ける為ではなく、日本本格侵略の一環としての参入だ。

宮崎県にある平和の塔(八紘一宇の塔)の礎石の一部が、中国原産で戦時中に日本が強奪して持ち帰ったので、PRCに返せとの運動が有る。「『八紘一宇の塔』を考える会」と称するが、代表者は宮崎9条の会や日中友好協会と密接な関係を持つ御仁で、宮崎県で画家をしている。

問題の塔は1940年の皇紀2600年を記念し、将に八紘一宇を象徴する為、満州・台湾・朝鮮等の日本人会より石を寄贈されたもので、日本軍が強奪したものではない。南京民間抗日戦争博物館は、盗んだものは返せとして、今月下旬にも宮崎県庁に返還申入れの文書を提出すると言う。

タイミングも含め何か胡散臭い。実は、例に漏れずの日中連携マッチポンプの一環で、先に八紘一宇の塔を考える会の会長税田啓一郎氏が、PRCに石の事実を伝え、どう思うかと嗾けたのだ。本人も認めている。

事実関係は別として、高さ36.4mの塔の礎石を抜き取ることは事実上困難だ。

一見すると些細な話のようだが、PRCは着々と攻撃準備をしている。大東亜戦争のレゾンデートルである「八紘一宇」の塔から礎石の一部を抜き取れとのことだが、有体に言えば無理難題を吹掛け、八紘一宇の塔の建立そのものへの非難運動に転化させ、出来れば塔の解体を狙う気なのだ。

本題に戻れば、南京事件は日本の真面な学者は、常識として皆虚構、嘘出鱈目だと承知している。中学生用教科書でも「南京事件はなかった」と文科省検定で合格した自由社版も有る位だ。流石に外務省も、慰安婦問題は別として南京問題等一切掲載していない、国家の立場は明確だ。

毛沢東は戦後、南京事件で1回も抗議していない。南京入城1年足らずの間、300回の記者会見で国民党は1度も虐殺非難をしていない。占領前後の人口が等しく20万人はあり得ない。殺人目撃証言はマギー牧師の1件だけだ。南京虐殺という全ての写真が嘘だ。(証明されていない)

以上は「真実検証会」(略称)加瀬英明会長が、2008年胡錦濤首相に糾した質問状要約だ。勿論胡錦濤は無視し、返信はなかった。日本からも多くの従軍記者が同行した。彼らも虐殺を報道していない。GHQが東京裁判で、原爆投下・東京空襲と均衡を取る為、捏造した虚構に過ぎない。

そもそも支那の人は、弱肉強食、自己中の民族だ。日中情報戦争は、既に仕掛けられている。

◆先進国で唯一とも言える人口増加

伊勢 雅臣



■1.「人種のるつぼ」となりつつあるアメリカ

前号[a]ではアメリカ在住のAさんから聞いた日本人のチームワークの良さを取り上げたが、その時にアメリカの現状にも話が及んだ。

中国経済の行き詰まり、欧州共同体の不安定、ロシアやブラジルなど新興国経済の失速など、多くの国々が問題を抱えている中で、アメリカだけが元気な成長を続けている。車の販売では今年は1700万台超と予測されているが、これは2001年以来、14年ぶりのことだ。

その原因は先進国で唯一とも言える人口増加だ。2000年から2010年までの10年間で、人口は2700人も増えている。日本の5分の1ほどの人口規模が10年で加わった勘定だ。

2700この27oo万人が成人して車や家を買えば、土地はいくらでもあるだけに、経済成長しない方がおかしい。一時、リーマンショックで落ち込んだが、今や完全に立ち直って、本来の成長ペースを取り戻したのである。

米国での人口の増加分を人種別に見ると、白人は45%と過半数を割り、残りはアジアン(中国、韓国、東南アジア)、黒人、スパニッシュ(メキシコ、中南米)などとなっている。このままでいくと、いずれアメリカでは白人が半数以下となり、有色人種国家になる。

非白人の高い出生率と、海外からの移民・難民の流入が、人口増の原因だ。かつてニューヨークは「人種のるつぼ」と呼ばれたが、今や米国全体が「人種のるつぼ」となりつつある。


■2.「友らよ、これがアメリカだ」

米国の保守派と言えば、白人中心主義でこういう多人種化には批判的かと思っていたが、そうでもないようだ。保守派大統領の中で最も高く評価されているレーガン大統領は、1984年のロサンゼルス・オリンピックの聖火リレーに関して、こう語っている。

テキサス州リチャードソンでは車椅子に乗った14歳の少年が聖火を持った。ウェスト・バージニア州では、ランナーが耳の不自由な子供たちに出くわし、それぞれ数メートルずつ聖火を持たせると、子供たちは手話で興奮ぶりを語った。群衆から自然に「アメリカ・ザ・ビューティフル」と「リパブリック賛歌」の歌声が沸き起こった。

サンフランシスコでは、ベトナム移民が子供を肩車して、カメラマンや警察官をかきわけながら、聖火を持って走った。その聖火を受けとったのは、19歳の黒人少年が押す車椅子に乗った88歳の白人婦人だった。

友らよ、これがアメリカだ。[1,p215]

さらに各国から集まった選手団についても、こう語った。

この国に140カ国の選手たちが競技のために集まった。そして、この国の国民はこれら140カ国の人々の血を引いている。合衆国でこそ、このような人種、信条、民族の豊かな混合がありうる。我々の「るつぼ」の中でこそ。[1,p216]

「人種、信条、民族の豊かな混合のためのるつぼ」とは、アメリカの特徴を端的に現している。この点をレーガンは、次のようにも語っている。

アメリカは人間精神に共通する何かを体現している。ある人が次のような手紙を送ってきた。「あなたが日本に行って住んでも、日本人にはなれない。フランスに行って住んでも、フランス人にはなれない。ドイツやトルコに住んでも、ドイツ人やトルコ人にはなれない。」

しかし、手紙はこう続けた。「世界のどこから来た、どんな人でも、アメリカに住んで、アメリカ人になることができる」[1,p401]

日本人や、フランス人、ドイツ人、トルコ人をそれぞれの国民たらしめているのは、それぞれの民族文化であり、移民はそこに住むことはできるが、その民族文化を身につけた国民にはなれない。

しかし、アメリカ人を規定するのは、人種や信条、民族ではない。「人間精神に共通する何か」がアメリカ人をアメリカ人たらしめている、とレーガンはいう。それは何なのか?


■3.「自由に対する特別な愛情」

1986年、ニューヨーク港の自由の女神像が建造100年を記念して修復工事が行われた。その竣工式で、レーガンは工事に参加した大理石工の言葉を引用して、次のようなスピーチを行った。

[ここにいる大理石の修復工、スコット・アーロンセンはこう語っている。「私はブルックリンで生まれたが、自由の女神を見に来た事はなかった。しかし、工事で像を訪れた時、私の祖父たちもこの像を見上げながら、アメリカにやってきたのだと思った」と。我々の曾祖父や曾祖母が、世界の各地からアメリカにやってきて、最初に出会うのが、この像なの
だ。[1,p298]

旧大陸からやってきた人びとを迎えるのが、この「自由の女神」像だった。この像はこれからアメリカ人になろうとする人びとに、ここが「自由を求める人びとの国」であることを教えている。

アメリカが旧大陸からの自由を求める移民で成り立ってきたというのは、建国の由来そのものである。この点に関して、レーガンは一種の宗教的信念を持っていた。

神秘主義と言われるかもしれないが、私は常に、ある神意が働いて、この二つの大洋に挟まれた巨大な土地に、世界のすべての地域からある特別な人々がやってきた、と信じてきた。彼らは自由に対する特別な愛情を持ち、格別の勇気をもって、彼らの友や仲間と別れ、この新しい、未知の大陸に来て、平和で自由な、希望に満ちた新世界を作ったのだ。[1,p300]

前節で「人間精神に共通する何か」と言ったのは、この「自由に対する特別な愛情」であった。それを持つ人々がアメリカ大陸に来て、アメリカ人となり、アメリカ合衆国という国家を作ったのだった。

「国体」という言葉を、「その国のあるべき姿に関する理想」と定義すれば、この「自由を求める人びとの国」こそ、アメリカの国体だ、とレーガンは言っているのである。


■4.人種差別を克服した「アメリカのあるべき姿」

「それではアメリカの黒人はどうなのか」という反論が当然、出てくるだろう。彼らはアフリカの土地で捕らえられ、自由を奪われた奴隷としてアメリカに連れてこられたのだ。

奴隷制と人種差別はアメリカの歴史の汚点だが、公民権運動を通じて、黒人差別解消に尽くしたマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の誕生日を国の祝日にしたのはレーガン政権であった。レーガンは、キング牧師の誕生日にこう語っている。

[マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、アメリカへの信頼と人類の未来への信念を語っていた。彼は現状を否定し、あるべき姿を求めた。その夢のために、人生を捧げた。彼の夢の多くは現実となったが、いまだ達成すべき多くの夢も残っている。キング博士の信念は我々全員に進むべき道を示す希望の灯火となっている。我々は、アメリカのあるべき姿に向かって、ともに努力を続けるのである]。[1,p167]

キング牧師の夢とは、黒人が白人の同胞として共に暮らす社会だった。牧師も同じく「自由を求める人々の国」という国体を信じていた。その国体への信が人種差別というアメリカの歴史の汚点を克服したのである。


■5.「ハロー、アメリカの水兵さん。ハロー、自由の人」

アメリカが「自由を求める人々の国」であろうとすれば、アメリカは自国民だけでなく、世界のすべての自由を求める人々に手を差し伸べなければならない。レーガンはベトナム難民に関して、次のような逸話を語っている。

[80年代のはじめ、ボート・ピープルが最も多かった時期。南シナ海をパトロールしている空母「ミッドウェー」の水兵が熱心に勤務に就いていた。水夫は、ほとんどのアメリカ兵と同様、若く有能で職務に忠実だった。水兵は水平線上に、いまにも沈没しそうな小舟を見つけた。小船は、アメリカ行きを夢見るインドシナからの難民たちで一杯だった。

ミッドウェイは小艦艇を送って、彼らを救出した。難民たちが波立つ海面を横切って、空母に近づくと、甲板の上の水夫を見て叫んだ。「ハロー、アメリカの水兵さん。ハロー、自由の人」

[小さな瞬間が大きな意味を持っている。この手紙をくれた水兵は、この瞬間のことを忘れられない、と記している。私にも忘れられない光景だ。なぜなら、これが1980年代のアメリカ人が体現していたものだからだ。われわれはふたたび、自由のために、立ち上がっている]。[1,p411]

世界中の自由を求める人々のためにアメリカという国は存在する。アメリカの国体を追求すれば、それがアメリカの使命となる。


■6.ベトナム戦争の大義

ベトナム難民は共産主義政権から逃げ出した南ベトナムの人びとであった。ベトナム戦争は、共産主義の拡大を食い止めるためにアメリカが直接参戦した戦いであったが、アメリカにとっては、建国史上初めてと言ってもよい実質的敗戦となった。

おりしも大学紛争などで世界的な左翼的風潮が強まっていた時期でもあり、ベトナム戦争は「アメリカの侵略戦争」であり、べトナムから帰還した父親を「人殺し」などと呼ぶ子供もいたという。アメリカ国民は誇りを傷つけられ、自信を失った。

レーガンはこの傷を癒やすために、ワシントンにベトナム戦争戦没者慰霊碑を建てた。全長75メートル、高さ3メートル、黒い花崗岩で作られた壁に、5万8千余名の戦没者の名前が刻まれている。その除幕式で、レーガンはこう述べた。

「この10年間に、絶望してベトナムから脱出したボート・ピープル、カンボジアの(数百万が殺された)キリング・フィールド、この不幸な一帯で起きたすべての出来事を考えれば、我々の仲間が戦った大義が正しいものであったことを誰が疑えよう」。

それは、結局は自由という大義のためだった。その戦略は不完全だったとしても、彼らはその任務のために尋常でない勇気を示したのだった。

おそらく、すべてが終わった今日、我々が同意できるのは、一つの教訓を得た、ということだろう。それは勝てる見通しのない戦いにアメリカ兵を送ってはならない、ということである」。(拍手喝采)[1,p367]

我々は負けたとは言え、自由の大義のために戦ったのだ、というレーガンの言葉と慰霊碑で、アメリカ人の心中に「自由を求める人びとの国」という国体が蘇り、誇りと自信を回復することができた。

ベトナム難民は自由を求めて共産主義から逃げ出した人々であった。人々の自由を抑圧する共産主義こそ、アメリカの国体と相容れない存在であった。レーガン政権はソ連を「悪の帝国」と呼び、遂にはソ連を崩壊にまで追い込んだ。[b]

「自由を求める人びとの国」というアメリカの国体の理想は、奴隷制と人種差別という白人社会の宿痾を克服し、世界各地の多くの難民を助け、共産主義の脅威から人類を救ったのであった。


■7.「一つ屋根の下の大家族」という国体

近代世界におけるアメリカを見ると、古代の東アジアにおける日本列島も似たような存在ではなかったのか、と思えてくる。古代の日本列島には、北から西から南から様々な民族が流れ込んできた。戦乱の激しかった大陸や朝鮮半島から逃れてきた人びとも多い。

古代の日本は多民族国家であったと言っても良い。それを一つの国家にまとめたのが、皇室を中心とする大和朝廷であった。初代・神武天皇は、大和の地で都を造る際に、次のような詔(みことのり)を出している。

「人々がみな幸せに仲良くくらせるようにつとめましょう。天地四方、八紘(あめのした)にすむものすべてが、一つ屋根(一宇)の下の大家族のように仲よくくらそうではないか」。[c]

アメリカの国体が「自由を求める人びとの国」であるとすれば、日本の国体は「一つ屋根の下の大家族」である。この理想を抱き、皇室のもとで、立派な家庭を築いていこう、という志を抱いた多くの先人たちの努力がわが国を形成してきた。[d,e]

先人の努力の跡を偲び、その志を現代のグローバル社会の中でどのような形で継承していくかを考えることが、国際派日本人の努めである。



■リンク■

a. JOG(921) 国土が育てた日本人
No.921 国土が育てた日本人  日本列島が育てた世界断トツのチームワーク。しかしグローバル社会ではムラ意識からくる不適合も
http://blog.jog-net.jp/201510/article_3.html

b. JOG(889) 対中戦略を対ソ冷戦の歴史から学ぶ
 ソ連消滅はいかに実現されたのか。
http://blog.jog-net.jp/201503/article_1.html

c. JOG(773) 歴史教科書読み比べ(6) 〜 建国の物語
 自国の建国の言われも語れないようでは、国際社会ではまっとうな教養ある人間とは見なされない。
http://blog.jog-net.jp/201211/article_3.html

d.JOG(888) 国史百景(11):仁徳天皇の「民のかまど」 〜『山鹿素行
「中朝事実」を読む』より
 宋の太宗は、日本の天皇の万世一系を知り、「これ蓋(けだ)し古の道なり」と嘆息した。
http://blog.jog-net.jp/201502/article_6.html

e. JOG「歴史教科書 読み比べシリーズ」
http://blog.jog-net.jp/theme/a8f4387c4d.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. Ronald Reagan, "Speaking My Mind: Selected Speeches"★★,Simon &Schuster
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/0743271114/japanontheg01-22/

◆TPPが分けた米中の明暗

渡邉 哲也



先日、中国の習近平国家主席が米国を訪問した。この訪問は半年以上前から予定されていたものであり、米国と中国の関係を占う意味でも大きな意味を持つものであった。

6月中旬から始まった中国株式バブルの崩壊、これは米中の関係にも大きな変化をもたらしたといえるのだろう。米国の中国に対する対応は慇懃無礼なものであったといえる。これは中国と米国との蜜月関係の終焉と決別を世界に宣言するものになってしまったといえよう。

ここ数年、中国と米国が共に世界を支配するG2体制の誕生などと言っている人が居たが、私はこれを常に否定してきた。何故ならば、世界の支配者は一つだけでよく、組織論的にも、他に敵が存在しない限り、2つの権力者が手を取り合うことなどありえないわけである。

既存の王者である米国がその座をすんなりと渡すわけもなく、米国側の利益が少なすぎるわけである。

このような根底がありながら、米国が中国を支援してきた事には大きな理由が存在する。それは米国による中国投資の投資利益である。高い経済成長率=高い配当利益であり、GDPが8%で成長すれば8%の配当が期待できる。

米国の調達金利は低い。低い調達金利で借りたものを成長が望める地域に投資すればその利ざやが稼げるわけである。特に中国の場合、通貨人民元は管理フロート制であり、事実上のドル連動通貨であった。そのため、為替リスク無しで利ざやが稼げる美味しい市場だったわけである。

 また、金融面だけでなく実体経済の面でも、中国の市場の魅力は大かったといえよう。基本的に先進国は物が溢れており、新たに物を販売するには困難が伴う。

それに対して、新興国は物を持たない人がたくさんおり、ものを売りやすい環境があるといえるわけである。かつての日本でも三種の神器(テレビ、冷蔵後、洗濯機)がもてはやされ、それを持つことがあこがれであった時代もあった。

しかし、今の日本で持たない人は限りなく少ない。それに対して、中国にはまだまだこれを持たぬ人がいるわけである。そこに市場があるわけだ。
現在日本で起きている中国人の爆買いも持たぬ人がいるからこそである。

しかし、これは健全な経済成長が維持される前提のものであり、経済成長が低下すればこの前提が大きく変わるわけである。また、米国はサププライム以降の経済の混乱の中で、海外の投資資産を減らし、中国への投資も大きく減らしていたのも事実である。

また、中国の安価な産品が米国の生産者を苦しめ、雇用にマイナスになっている実態もあり、これに対する米国の産業界の批判が強まってきたこともひとつの事実である。すでに米中の間では、中国のコピー商品やダンピングなど貿易摩擦が大きな社会問題になっていたのだった。

政治的にも、AIIBやBRICs銀行など米国と対立する形で世界の中での金融支配を強めようとしており、強い経済力を武器に世界の金融市場での位置づけの拡大と米国の基軸通貨としての地位を貶めようとしていたわけである。これに対して、米国は中国人民元のSDR(IMFの構成通貨)入りに反対するなど、これを抑制する動きを強めていたわけである。

そして、バブルが崩壊した…。

これが中国の成長が減退期に移行する事を意味し、これまでのような中国の振る舞いが困難になることを意味するわけである。そして、世界の中で力をつけてきた中国を叩くにはもっともよいタイミングであるといえる。大量破壊兵器が生まれた今、核を持つ大国間の戦争は地球の破壊を意味し、勝者のいない戦争になる可能性が高い。

だからこそ、今、一番の戦争は経済であり、米国の保つ最大の力がドルによる世界の経済支配なのである。世界の債券の約60%はドル建てであり、世界の資源取引の基本はドル建てである。ドルで借りたものはドルで返さなくてはならず、ドルがなければ資源が買えないわけなのだ。そして、そのドルの供給を一手に握っているのが米国であり、ドルは米国の武器なのである。

中国は今回のバブル崩壊でこれを思い知ることになったともいえる。何故ならば、中国はバブル崩壊による実体経済の悪化を防ぐため、8月11日人民元の切り下げを行った。

中国当局としては、これまでのように政府の意向で通貨をコントロールできると考えていたものと考えられる。しかし、予想以上のキャピタルフライトが発生し、大規模な介入と為替に対する規制をかけなければ為替を維持できなくなってしまったのであった。

また、これに連動する形で中国の外貨準備に対する不安も生まれ始めたのである。中国の外貨準備は額面上世界一であり、その額は約3.5兆ドル程度である。しかし、そのうち米国債は最大でも1.2兆ドルしかなく、その中に企業の返済用や決済用資金が含まれているため、実際に介入に使える資金がどの程度残っているのかわからないという実態が明らかになったわけだ。

米国の当局者や金融関係者はこれを理解していたわけであるが、これが報道に乗り始めた意味は非常に大きいと言える。

米中の首脳会談ということになったわけであるが、習近平の訪米日程とローマ法王の訪米が重なり、習近平はローマ法王の影に隠れる形になってしまったわけである。

また、内容的にも習近平が望んでいた議会演説は拒否され、会談後の共同声明は出されずじまいであり、中国が望んでいたSDR入りへの支援表明も得られなかったのであった。

世界に報じられた共同会見も明確な地球環境保護に対する基金設立程度のものであり、これが米国に対して、ローマ法王が与えた宿題を中国に押し付けたようなものである。これが世界に報じられたわけであり、メンツを重んじる中国にとっては大変屈辱的なものであったといえる。

 このような状況の中国に対して、更に追い打ちを掛けるものがTPPの大筋合意ということになる。米国はTPPによりアジアにおける米国の経済支配を強化しようとしていたわけであり、中国抜きのアジア経済圏の構築というのがTPPの一つの側面である。

中国がTPP加盟国とビジネスを行おうとした場合、TPPに規定されたルールを厳守しなくてはならない。また、ルールを厳守しても関税が撤廃されているわけではないので、加盟国よりも悪い条件でビジネスをしなくてはいけなくなるわけである。

特許や知的財産権だけでなく、インフラや法制度にもこれは関係し、これは金と力で中国式のルールを押し付けてきた中国のこれまでのビジネスを否定するものにもなりかねないわけである。

渡邉 哲也

1969年生まれ。作家・経済評論家。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告しベストセラーになる。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行っている。

産経ニュース(IRONNA発】 2015.10.17
                (採録:松本市 久保田 康文)

◆蔡民主進歩党主席が語る台湾の将来

櫻井よしこ


「史上初となる女性総統の可能性高い蔡民主進歩党主席が語る台湾の将来

0月6日、台湾の最大野党で台湾人の政党である民主進歩党主席、蔡英文氏が来日し、夜の会合でお会いした。
 
氏は目下、来年1月の総統選挙の民進党候補者として与党国民党候補者を抑えてトップを走っており、台湾史上初の女性総統となる可能性が高い。
 
氏には、9月18日にも台北の安全保障協会主催の「両岸関係とアジア太平洋地域国際平和セミナー」でお会いした。氏はセミナー冒頭で「台湾の安全保障」を語ったが、内容は台湾の経済力の強化だった。

中国の脅威も軍事もほとんど語らず、専ら経済問題に集中した。製造業をいかに強化するかという抱負は、現在、過度に中国に依存している台湾経済をいかに中国離れさせるかという思いに他ならない。
 
ジャケットにスラックスといういつものシンプルな装いで語る氏を見詰めながら、私は4年前、氏が総統選挙に挑んだときのことを思い出していた。学者っぽさが抜け切らず、この女性が本当に政治家になり切れるのかと、正直、思ったのが4年前だった。
 
しかし眼前の氏は台湾全土を行脚した月日を感じさせ、逞しいまでに成長していた。

声は以前よりずっと力強く、おなかから出ていた。聴衆を眺めわたす表情には貫禄があった。時折聴衆を笑わせるすべも身に付けていた。

「鍛えられたんだなぁ」という印象を抱いて、私は帰国した。そして、東京で再び氏の講演を聞いたのだ。氏はいきなりこんな表現でスピーチを始めた。

「現在の蔡英文は4年前の蔡英文ではありません」
 
同感である。氏は続けた。

「私はこの4年間、全国を歩きました。雲林県では養豚業者と一緒に豚に餌をやり、台東のトウモロコシ農家ではわらの山に座って語り合いました。中小企業の製造現場では職人と共に機械をいじりました。私の台湾経済強化策は机上の空論でなく、現場感覚に基づくものです」
 
日本での発言だけに、日本の協力がいかに台湾経済の伸長拡大に重要であるかを強調したが、彼女には日本も米国もこれまで以上に台湾を支援するという確信があるのだと思う。

対中関係を友好的に保ちながらも、中国とできるだけ距離を置こうとする民進党の外交政策を、日米両国が全面的に後押しするとの言質を、いかなる形でか、日米両政府から得ているのではないか。
 
蔡氏は5月に米国を訪れ、台湾の政党代表として初めてホワイトハウスに招かれた。今回の来日は安倍晋三首相の実弟、岸信夫氏らの調整による。6日に来日し、8日には首相の地元、山口県を蔡氏は訪れる。同日、再び東京に戻って、翌日帰国し、10日には台北で行われる大会に参加する。
 
声明、契約という形の発表がなくとも、安倍政権との親密ぶりを内外に誇示する日である。7月に来日した李登輝元総統が安倍首相と会談したように、蔡氏との会談もあり得るだろう。
 
日米両国にとって台湾が中国の影響下に入るのは好ましくない。南シナ海との関係で台湾の地政学上の重要性は計り知れない。台湾は事実上の独立国であり、その状態を揺るぎなく保ち続けることが、台湾国民の幸福であり日米両国の国益である。
 
馬英九総統は中国との統一に向けてひた走るかのような印象を与えるが、蔡氏と民進党には「独立」という言葉を用いずに、「独立」を維持する実力を付けてほしいというのが、日米両国の本音であろう。
 
会合の最後に私は蔡氏に尋ねた。台湾がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加する可能性の有無と、馬政権下で各地の歴史遺跡に旧日本軍と日本への口汚い非難が刻まれてきたが、歴史的な事柄への正しい評価と、非難の言葉が不条理であった場合の削除の可能性の有無だ。いずれも、氏は「考えている」「可能だ」と語った。

『週刊ダイヤモンド』 2015年10月17日号 新世紀の風をおこす オピニ
オン縦横無尽 1104
               (採録: 松本市 久保田 康文)

◆民主党候補の弁論大会

Andy Chang



10月13日、CNNの主催で民主党候補の弁論大会がラスベガスで行われた。参加した候補者はヒラリークリントン、バーモント州の上院議員サンダース(Bernie Sanders)、ロードアイランドのリンカン・チェフィー(Lincoln Chafee)、元マリーランド州長オマリー(MartinO'Malley)、元バージニア州長ウエブ(Jim Webb)の5人だった。出馬が期待されているバイデン副大統領は参加しなかった。

2時間に及ぶ討論で明らかになったのは全員がオバマ路線を踏襲し、オバマ社会主義より共産主義に近い黒人優先、社会保障を主張し、ばら撒きで黒人や移民の支持票を獲得する大きな政府を目指している。18兆を超えた政府の歳出赤字の削減には誰も言及しなかった。

2時間の討論では社会主義者を自称するサンダースとヒラリーの対決弁論が多く、他の3人はすっかり霞んでしまった。

●メールゲートとベンガジ事件

今年3月からヒラリーが機密保障のない私有スマホで国家機密を送受信していた疑いと機密保障のない個人のサーバーを使用したことが問題化していたので、ヒラリーの「メールゲート」が弁論会でどのように質問、弁解されるかが聴衆の最も大きな関心だった。

ところが弁論が始まるとまもなくサンダースが突然、「ヒラリーのメールのことは聞き飽きた。政策討論をしよう」と声を荒げたので、ヒラリーは大喜び、弁論会はつまらなくなった。サンダースとヒラリーが弁論の大部分を占め、残る3人は霞んでしまった。

ヒラリーのもう1つの弱点はベンガジ事件である。エジプト東部のベンガジでヒラリー国務長官の直属部下スティーブン大使とCIAの護衛3人がテロ攻撃にあって死亡したが、ヒラリーとオバマはホワイトハウスで刻々入ってくる情報を聞きながら最後まで救援を派遣
しなかった。弁論会でベンガジ事件について一度だけヒラリーが実況を避けた「一般説明」をしただけで終わった。

ヒラリーは候補レースのトップで、サンダースが懸命に追い上げている。それなのにヒラリーを追い落すベストチャンスの弁論大会でヒラリーの弱点、メールゲートとベンガジ事件の追及を放棄し、他の候補者にも討論放棄を要求したのは何故か。なぜ残りの三人もせ
っかくのチャンスを大人しく放棄したのか。

考えてみればこの弁論会は何かしらこの2つの事件を討論しないと言う「狎れあい合意」があったような気がする。ベンガジ事件はヒラリーの犯罪だけでなく、オバマとヒラリーは共犯である。

ヒラリーが個人サーバーから消去したベンガジ関係のメールが復元され公開されたら真相が明らかになる。オバマとヒラリーの死活問題だ。だから弁論会ではメールとベンガジを討論するなと言う「指令」があったのではないか。もちろんこれは憶測で真相は誰もわからない。

●左翼から極左翼へ

弁論会が始まると候補がそれぞれ所信発表をしたが、呆れたことに5人ともオバマケアを支持する、社会保障を拡大して貧乏人と違法移民を援助するなどと述べた。オバマ政権は18兆?の支出赤字を抱えているのに誰も政府の支出削減を言わず、もっとばら撒け、国民
が反対するオバマケアを拡大すると述べたのである。

サンダースは民主党員ではなく、自称社会主義者で無所属である。彼の政策は、黒人層の失業率は51%、ヒスパニック層は36%で、経済は落ち込んでいる。国の富裕層1%が90%の富を握っているから金持ちの所得税を90%にして貧困層に与えるべきだと述べた。

国の経済が衰退したのはオバマの責任だが、オバマの責任に言及せず金持ちから金を奪って貧乏人に与えるのは共産主義である。サンダースは社会主義者と名乗っても実際は共産主義である。

ヒラリーはサンダースのあとに続けて、貧乏人の子女は高校卒業まで学費免除し、違法移民の子女は大学卒業まで学費を免除すべきだと述べた。そして参加者5人とも貧乏人のオバマケア健保を無料にするべきだと主張した。みんな「花咲か爺」だ。

全国の失業率は5%以下だが黒人層の失業率が51%なのは職がないのでなく若者が政府の保障を当てにして働かなくなったからである。共産主義の失敗は国が資産家の金を奪って無産階級に分配すると言い、政府が金持ちから奪った資金の大半をネコババしたからである。ソビエト連邦、中国など、共産主義は失敗しただけでなく政府独裁になったのである。

●黒人とヒスパニックの機嫌取り

オバマが政権を取ってから黒人がのさばるようになり、黒人犯罪者が警察に射殺されてもオバマが犯人を弁護する発言を繰り返したため、今では全国各地で「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」と言うプラカードを掲げてデモ行進をする黒人が増えた。

弁論会で司会者が「黒人の命は大切だ、と、皆の命が大切だ」のどちらを選ぶかと聞いた。

サンダース、ヒラリー、オマリー、チェフィーの4人が順番に、黒人の命が大切だと言い、最後にウエッブだけが、みんなの命が大切だと答えた。5人の候補のうち4人が黒人優先と述べたのである。今のアメリカが容易ならざる事態になっていると思うのは私だけだろうか。

候補者は黒人やヒスパニック系の票を取りたいため、つまり選挙対策として心にもないことを言ったのかもしれない。しかし今のアメリカが黒人層にオベッカを使わなくてはならない社会になった、人種平等を飛び越して黒人優先を言わなくては当選しない国となった
のは由々しい事態だと思う。

●資本主義から共産主義へ

アメリカの繁栄は資本主義で自由競争のおかげである。能力のあるものが努力すれば成功するし金持ちになれる。金持ちは悪ではない。

民主党は大きな政府を目指して国民をコントロールし、福祉国家を目指す。共和党は小さな政府を目指し、自由競争で経済が発展し科学が進歩することを目指す。オバマが政権を取って以来アメリカが衰退したのはオバマ社会主義の責任、民主党の責任である。

今回の民主党候補の弁論大会を見ていると、呆れたりムカムカしたり、民主党に愛想が尽きたりした。こんなバカな奴らが大統領になったらアメリカは滅ぶと実感した。国民の大半が反対するオバマケアを支持し、赤字の増大、金持ちが逃げだす国を推進する候補者は
支持できない。

2015年10月18日

◆中国の「手駒」「手口」

阿比留 瑠比



実に残念… 村山富市氏の孔子平和賞辞退 

いっそ受賞してくれていたら、中国の意図と狙いがはっきりして分かりやすかったのに、と残念極まりない。村山富市元首相が最終選考まで候補として残ったものの、健康上の理由で辞退したという今年度の「孔子平和賞」のことである。

この賞は、ノーベル平和賞に対抗し、「中国の価値観で世界平和に貢献した人物」に贈られる。これまであのロシアのプーチン大統領やキューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長らが受賞しており、今年は腐敗と独裁で悪名高いジンバブエのムガベ大統領の受賞が決まった。

まるで、信号があるから事故が起きる、家に鍵をかけないと宣言したら泥棒は入らない、と信じているかのような珍妙な理屈だ。

このときは、同番組に出演していた石原慎太郎元東京都知事が即、「ナンセンスだ。やめてもらえないかなバカな議論は。現実は現実としてみないといけない。中国は誰が見たって脅威じゃないか」と切って捨てていた。

だが、村山氏の言葉はこの場のただの思いつきではない。同様の見解をあちこちで繰り返している。今年6月の記者会見では「中国は戦争なんてことは全然考えていません」と代弁し、昨年5月の明治大での講演でもこう強調した。

「中国側が私たちに言うのは『中国は覇権を求めない』『どんなことがあっても話し合いで解決したい』と。それは当然だ」

「戦争をしないと宣言して丸裸になっている日本を、どこが攻めてくるか。そんなことはありえない。自信を持っていい」

村山氏はおそらく、中国に武力で併合されたチベットやウイグル、内モンゴルの受難などまともに考えたことがないのだろう。今回の安保関連法をめぐる議論を見ていて強く感じたことは、左派・リベラル派の一定数の人は、日本さえ何もしないでじっとおとなしくしていれば、世界平和は保たれると本気で信じていることへの驚きだった。

稀有な存在

「平和を愛する諸国民の公正と信義」なる絵空事を広めた憲法前文の害毒は、残念ながら日本社会を深くむしばんでいる。

その代表者が首相まで務めた村山氏であり、尖閣諸島(沖縄県石垣市)のみならず、沖縄本島への野心も隠さない中国にとって、これほどありがたい存在は稀有であろう。

中国が、そうした利用価値の高い人物を表彰してさらに取り込もうとしたことは、同様に使い勝手がいい鳩山由紀夫元首相も過去に孔子平和賞の候補とされたことからも明らかである。

結局、村山氏が受賞しなかったためこの件はそれほど話題にならなかった。だが、仮に受賞していれば、中国の思惑とは裏腹に中国の対外工作の手口がもっと注目されていたはずだ。

また、どういう人物が中国の手駒とされているのかも、国民の目に分かりやすく映じただろう。返す返すも村山氏の受賞辞退が惜しまれるところだ。

                 (論説委員兼政治部編集委員)

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】2015.10.15

◆ヒラリー最悪のピンチ

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015)10月17日(土曜日)通算第4688号>    

 
〜ベンガジ米領事館襲撃事件の真相を隠蔽したオバマ政権
 ヒラリー最悪のピンチ。「ベンガジからシリア反政府軍への武器横流し」〜


ヒラリー・クリントン前国務長官が、次期米大統領選挙で、いまのことろ、民主党レースのトップを走っている、と考えられている。

左翼マスコミの意図的なミスリードである。

ヒラリーが現職国務長官のとき、私的メールをふんだんに利用して機密情報のやりとりをしていたことは本人も認め謝罪し、事件の打ち消しに躍起となった。

民主党候補のテレビ討論会では、みなが桜だから、あえてこの事件を蒸し返すことは無かった。

ベンガジで何があったか?

この裏には重大な機密が隠されており、オバマ政権の屋台骨を根底から揺さぶりかねないスキャンダルなのである。

2013年9月11日、リビア東部ベンガジにある米国領事館がテロリストに襲撃され、ステーブン大使ほか大使館員、警備のCIA要員らが殺害されした。

当時はリビアにおける「アラブの春運動はカダフィ大佐の除去により、民主化が実現し、米国の戦略であるアラブ全域の民主化は成功するだろう」などと信じられないほどの楽観論が世を覆っていた。

筆者がニュースを聞いて最初に疑問視したのは、なぜ米国大使はトリポリではなく、ベンガジにいたのか? しかも9月11日とは、NYテロ事件の記念日ではないか。

それらは初歩的な疑問であり、しかも現在にいたるまで満足な回答がでていない。 

現実にはチュニジアが混乱にいたり、リビアは無政府状態となり、エジプトは軍事政権が復活した。

シリアは破壊と混乱と大脱走と、そしてISISの跳梁跋扈、ロシア軍の参戦により、中東の主役はロシア、イランに移行した。米国の中東政策はことごとくが失敗に終わった。
 
時計の針を12年3月11日にもどす。

ベンガジの米国領事館というのは「領事館」と呼べるシロモノではなく、「駐在員事務所」のようなお粗末な建築で、しかも警備が手薄だった。CIAオフィスは、そこから離れた場所にあった。

米国大使は、いったいぜんたい、大使館のトリポリを離れて、なぜベンガジにいたのか。

作戦司令をヒラリーは国務省を通さないで直接、私的なメールでおこなっていたのは何故か。

ずばり、大使の任務はリビアに拡散した米国の最新鋭兵器の回収にあり、しかも、それらの武器をシリアへ輸送し、反アサド政権の武装集団へ引き渡すという危険な任務を帯びていたのだ。


 ▲オバマの中東政策はすべてが裏目にでて失敗した

 そして。
 
米国の秘密通信を傍受したらしい、あるいは米国よりのポーズをとって親米派を偽装したイスラム過激派が、これらの武器の横取りを画策したからではないのか。

武器はISISにも流れ、イラク、ヨルダンの過激派にも流れ、反アサド勢力に渡ったのは半数にも及ばなかったという情報がある。

ベンガジの米国領事館をおそったのはISISではなくシリアの謀略機関、あるいはロシアの代理人ではなかったのか、という声もあがっている。

レーガン政権下、イランコントラ事件では、政府高官の多くが辞任に追い込まれた。ニクソン政権弐期目の折は民主党本部のウォーターゲートに盗聴器をしかけたという「ささいな事件」を左翼ジャーナリズムが大げさに報じ、ついにはニクソン辞任へと追い込んでいった。そのときヒラリーは学生活動家としてニクソン弾劾の隊列にいた。

ところが、このリビアゲートとも言われる最悪のスキャンダルと、ヒラリーの偽証に関して左翼ジャーナリズムは何ほども報道しない。

あたかも安倍打倒を社是として、僅かな反対運動のデモ隊を10万以上と書いて作為的報道を操作した、日本の左翼ジャーナリズムと同質であり、ヒラリーに不都合なことは知っていても知らぬ半兵衛と決め込むのである。

だが米国共和党の保守派の怒りは納まらず、来週10月22日に開催予定のヒラリーへの聴聞会に注目が集まる。ここでもし、彼女が失言したり、別の証拠を見せられたりすれば、大統領選挙に致命傷となるだろう。

◆私の「身辺雑記」(271)

平井 修一


■10月15日(木)、朝は室温21度、快晴、ハーフ散歩。

昨日の散歩は半ズボンとTシャツだったが、体力的にこれは無理だった。ちょっと風邪気味になり、鼻水、嘔吐、下痢。薬を飲んで2時間ほどうつらうつらしたが、疲れがたまっていたこともある。

それでも夕べは義母、義妹の送別会を13人で楽しんだ。カミサンに手伝ってもらいながら、煮込みハンバーグ、ワンタンスープ、ポテトサラダ、フライドポテトは全部手作り。完売。

義母、義妹は明日奄美に帰るので今夜も6人で酢豚、ブリ大根、刺身などを楽しむ。

わが家も地震大国の日本も一応今は安泰だが、世界は震度3〜6で揺れまくっている。日本の野党のことなど世界ではまったくニュースにならないだろうが、英国の場合は世界的な影響力があるから労働党についてはしょっちゅう報道されている。

ついこの間には札付きのアカがサプライズで党首に選ばれたと話題になったが、この男のトンデモ振りは異次元レベルのようだ。在英保育士/ライター・ブレイディみかこ氏の論考「左翼が大政党を率いるのはムリなのか?:ジェレミー・コービンの苦悩」10/15から。

<英労働党の新党首ジェレミー・コービンが早くも苦境に立たされている。

労働党の中でも左端に位置する彼がこの時期に党首になったというのは不幸な巡りあわせだったかもしれない。難民・移民は大挙して欧州に押し寄せているし、シリア情勢はロシアの介入でカオティックだ。怒涛の時代に大政党をまとめるのはそれでなくとも容易ではない。

労働党内部から「シリアに軍隊を送るべき」という声が出ている。

左派紙オブザーヴァー(実質的にはガーディアン紙の日曜版)に労働党議員のジョー・コックス(女性)と保守党議員のアンドリュー・ミッチェルがジョイントで記事を発表した。コックスは元オックスファム(貧困救済団体)幹部であり、人道支援のバックグラウンドから議員になった人だが、その彼女が保守党議員と一緒に「シリアの市民が安全に過ごせるヘイヴン(逃避地)を警護する目的で英軍を派遣すべき」と(以下のように)主張
しているのだ。

《シリアの状況を解決するために軍隊を用いるのは倫理的に間違っているという人もいるだろう。しかし我々は全く反対の立場を取る。シリア政府が爆弾を雨あられのように降らせている時に、それを止めるキャパシティーを持っていながら、ただそれが止んでくれるのを待っているのは倫理的ではない。

空爆による死と恐怖が欧州の難民危機の最大の要因なのだ。ISISの戦闘員が村を荒らし回り、子供たちを性的な奴隷にし、同胞である筈のムスリムを虐殺している時に、彼らを阻止するキャパシティーのある者がただそれを見ているのも倫理的ではない》

2013年にシリアへの武力介入の提出議案を下院で否決されたキャメロンは、再び武力介入を認める議案をかけることを示唆しており、今回は労働党内部でも、少なくとも50人の議員が保守党案に賛成の投票をするだろうと労働党の幹部関係者が英紙ガーディアンに明かしている。

そうなれば、「武力行使反対」の立場を取る新党首ジェレミー・コービンは、自分の党内の議員たちに党首としての主張を無視される形になる。

コービンは、バトル・オブ・ブリテン(対独航空決戦、1940〜41)の記念式典で国歌を歌わず、労働党の新党首として枢密院(女王の諮問機関)に招待されながら出席せず、スコットランドで堂々とハイキングしていた。

こうしたニュースがメディアに大きく取り上げられるたびに、若者を中心とする彼のファンからは「さすがは生粋の左翼」と拍手喝采が贈られる。

が、野党第一党の党首として今後も様々な公式イベントに出席しなければならない彼が国歌を歌わないとなれば、労働党が伝統的に支持層にしてきた地方の年配の労働者たちは反感を抱く。

わたしの居住する街を見てもわかるが、労働者階級には英国軍人のファミリーが多い。地方の下層の白人だらけの街は家々の窓から聖ジョージ旗がだらだら垂れている場所なのだ。こうした街の人々には、バトル・オブ・ブリテン記念式典で国家を歌わなかったコービンの姿勢は共感できるものとしては受け取られていない。

また、枢密院のメンバーだけが国家機密情報のブリーフィングを受け取ることができるので、将来政権を握る可能性もある大政党の党首がそのメンバーシップを持たなくていいのかという議論にもなる。

メンバーになるために跪いて女王の手にキスをすることは彼の主義主張には反するかもしれないが、一国の首相となることを欲する人が国家機密情報を持っていないというのは心もとないし、そういう野党第一党の党首が国会で首相と議論を戦わせる時、その主張にはどれほどの信憑性があるのだという議論にも繋がる。

その一方で、もしコービンが戦争の記念式典で国歌を朗々と歌い、女王の前で跪いたら、彼を熱狂的に支持してきた層からは「コービンは魂を売り飛ばした」と言われてしまうだろう。言行一致の潔癖左派として売って来た彼が、「汚れたもの」になってしまうのだ。

しかし、党首になってしまった以上は党全体を背負っている責任もある。コービンが右派メディアに「党首にはあるまじき」と騒がれる行動をとるたびに、「コービンは次は国歌を歌います」「コービンは枢密院のメンバーシップは戴くつもりです」という声明が労働党から出される。が、いつまでもこうしたことが続けられるわけがない。

また、「デモクラシー」を強く信じるコービンは党内運営でもその理念を優先し、すべて党内の人々の意見を聞いて決めると言っているので、たとえ彼の理念が「反武力行使」や「核兵器廃絶」だとしても、彼に賛同しない人々が多ければ自らの主張を曲げなければならない局面もある。

ここでも、けっして信念を曲げない左派として売って来た彼が、「敗北したもの」になってしまう。が、それを拒否すれば自分の考えを押し通す独裁的リーダーになってしまうし、どっちに転んでも無傷ではいられないリアリティーに直面し、コービンはまだ覚悟を決めていないように見える>(以上)

20世紀のアカは人類の悲劇だったが、21世紀のアカは荒唐無稽だ。習近平とそのお友達のオナガタケシもいささか滑稽だが、コービンの破天荒なアカっぷりには爆笑するしかない。

ドイツのアカは独善的・排他的で危険だが、英国のアカはそれなりに民主的なのだろうが、喜劇役者、漫才のボケ役、寅さんのようである。「おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな」。笑の中のペーソス。

労働党の迷走のお陰で保守党とキャメロンは独立を目指す危険な敵、スコットランド民族党(SNP)叩きを強化できるだろう。民族党のスタージョン党首(女性)は労働党をまとめられないコービンにヤキモキしているそうだ。

■10月16日(金)、朝は室温22度、雨、散歩不可。義母、義妹は奄美へ帰っていった。

「マイナンバー導入で戦々恐々とするのは誰だ!? 元国税調査官・大村大次郎氏に聞く」(ダイヤモンド・オンライン10/16)で大村氏はこう語っている。

<マイナンバーの使用目的は3分野。社会保障(年金や雇用保険、生活保護など)、税分野、そして災害対策分野です。本格運用は2016年からで、18年以降に利用範囲が拡大していくことになります。まだ流動的な部分もありますが、医療分野への拡大や銀行口座との紐付けなどです。

将来、不動産登記や自動車登録、住宅ローンなど、あらゆるお金が動くジャンルで、マイナンバーが使われることになっていくと思われます。

(収入が)把握されて困る人とは、ハッキリ言えば、税金をきちんと支払っていない人です。つまり、あの手この手で脱税をしている富裕層や企業、自営業者などです。(中略)

マイナンバー制度がどんな内容なのか、そして自分の生活にどう影響するのかを冷静に見極めれば、普通に生活をしている限りは、嫌がるものではないことが、すぐに分かると思います。むしろ大きなメリットがあることを、ぜひ知っていただきたいものです>(以上)

「大きなメリットがある」だろうが「大きなデメリットがある」のも知っておくべきだろう。番号の窃取と悪用だとパックン(パトリック・ハーラン)氏の論考「マイナンバー歴44年の僕から一言」10/9は米国での恐ろしいリスクを紹介している。「毎年数百万人ものアメリカ人が被害に遭っている」という。

<あなたのマイナンバーは届いたかな?

実は僕、皆さんより一足先にマイナンバーを持っているんだ。なんと44年前からね。ということで今回は"マイナンバーの先輩"として色々話させてもらいましょう。

もちろん、僕が持っているのはアメリカのものだから、正確にいうと「マイナンバー」ではない。アメリカの場合はSocial Security Number(社会保障番号、略してSSN)と呼ばれている。

時は1936年、大恐慌の真っ最中だった。ニューディール政策の一環として発足した社会保障プログラムに合わせ、SSNは発行された。当時は年金の管理用だったが、徐々に用途が拡大。

税金を払ったり、仕事をしたり、銀行口座を開いたり、クレジットカードを申し込んだり、大学に通ったりする際になど、アメリカの生活上のあらゆる場面でSSNが必要となった。

マイナンバー制度の利便性はわかりやすい。管理がしやすくなるだけではなく、国民が得することも多い。たとえば、厚生労働省と財務省の連携がスムースになったら、脱税の取り締まりが進み、税収が増える見込みとなる。その税金の使い方が正しければ国民が喜ぶ。

また、厚生労働省と法務省の連携によって不法労働者の取り締まりも進むはず。正規に働いている人にとっての雇用条件が良くなれば、また国民が喜ぶ。

マイナンバーの先輩である僕は、利点をよくわかっているつもりだ。しかし、番号制度の暗黒面も痛感している。というのは、アメリカではSSN制度のもとでidentity theft(身元窃盗=成り済まし詐欺)が蔓延しているからだ。

identity theftは、制度が生まれたばかりの頃から始まっている。有名なのは1938年の出来事。ある財布メーカーが、新作財布のカード入れにダミーのSocial Security Cardを入れて販売することにしたのが発端だ。そのカードに載っていた番号は社長の秘書ヒルダさんのSSN。つまり、本物だった!

全国のチェーン店で財布が発売になった瞬間から、詐欺事件が頻発。当時はSSNに対する知識も浅くて、「お財布を買えばこのSSNがもらえるんだ〜」と勘違いした人も含めて、ヒルダさんのSSNを誤使用した人は全部で4万人を超えたらしい。全国各地が偽ヒルダだらけになった。

その後もidentity theftは増える一方だ。詐欺師の手に渡ったら、さまざまな場面でSSNが悪用されてしまう。

たとえば、金融関係。盗んだSSNで銀行口座を開いたり、クレジットカードを作ったりできる。小切手やカードで買い物したあと、請求書はSSNの持ち主、つまり被害者に届く。SSNが盗まれたことに気づくのはそれを見た瞬間のこと。

「あら? 俺、車を買っちゃった? 運転免許もないのに?」とか、「あら、ジャスティン・ビーバー(人気ミュージシャン)のコンサートチケット?」とか、ありえない買い物で初めて発覚するようだ。

また、毎年春には詐欺師が成り済まし確定申告をするのが恒例行事。勝手に住所変更手続きをし、税務署をだまして還付金を受け取るという手口だ。もちろん当該の還付金は被害者に届かない。

また、年金の場合も、本人より先に申し込んで同様に住所変更し、給付を代わりに受け取るという手口がある。素早く手続きや申告を済ませる詐欺師のマメさにもびっくりするが、大変な被害だ。

医療関係でも詐欺が多い。病院で成り済まして治療を受けることもある。もちろん請求は被害者へ。さらに恐ろしいのは、被害者の治療歴が変わってしまうこと。たとえばアレルギーや血液型が記載されてしまったら本当に危険。

identity theftに遭ったら、解決の責任は被害者にあるのも厄介だ。請求先、病院、銀行、政府などとやりとりしなければならない。解決するのに数年かかったりするらしいし、その間、ローンを借りたり、カードを作ったり、家を買ったりするのは大変困難になるという。

アメリカ政府も国民を守れているとはいえない。毎年数百万人ものアメリカ人が被害に遭っている。しかもそのSSNが悪者の手に渡るのが、政府のせいだったりすることも度々。

日本でも6月に日本年金機構のパソコンから125万人分の個人情報が流出したよね。これもひどいけど、ここでもまた、先輩アメリカの方がすごい。7月に政府のデータベースから2100万人のSSNが盗まれた。

「どうしてくれるんだ」って? これが、何もしてくれないんだ。

実際に悪用されたことが証明できるまでは新しい番号を発行してもらえない。こうした実態を受けて、Social Security Number(社会保障番号)をSocial Insecurity Number(社会不安番号)と呼ぶ人もいる。主に駄洒落好きなオヤジだけどね。

日本でのマイナンバー制度導入の前に、先輩としていくつかの疑問を挙げたい。

・国民を管理するのには便利だが、管理している側を誰が管理するのか?
・番号一つでどこまで個人情報を引き出せるようになるのか?
・詐欺に遭った被害者はどう対処されるのか?
・そもそも詐欺防止対策はどうなっているのか?

僕は、この最後の疑問が一番気になる。確かに日本のカードには希望すれば顔写真が載ったり、ICチップが埋め込んであったりして、ちょっとは進化している。だが、今のご時世、番号が書いてある紙一枚を持ち歩くようにするなんて!

プライバシー保護のために、21世紀の技術をもっと使う手はなかったのかな? 暗証番号があってもいいかもしれないし、二次元バーコードやQRコードにできるかもしれない。スマートフォンの中に保管するようにしたらロックをかけることもできるかもしれない。

そもそも「スーパーのレジに提出する」という話が出た時点で、マイナンバーの恐ろしさを理解していないと感じる。

確かに世界に比べれば国民番号制度を導入するのが遅いけど、それはある意味チャンスだ。先輩がいる分、成功例や失敗例の資料がいっぱい揃っている。ちゃんと参考にしてほしい。

世界に倣う前に、習うべきだ(僕も駄洒落好きなオヤジだね)。先輩からは以上です>(以上)

日本人の多くは性善説だから疑うことを知らない。マイナンバーの恐ろしさを理解していないから詐欺防止対策がないのだろう。それとも「圧倒的な利便性>例外的な危険性」ならOKなのか。交通事故で毎年80万人が死傷、うち4000人は24時間以内に死亡していても「車をなくせ」とは誰も言いように。

4000人の死が想定内なら、4万人、40万人が詐欺被害に遭っても想定内、「大したリスクではない」ということなのか。健康保険証に写真がなくても問題になっていないからマイナンバーも大丈夫だろうということか。

大手企業でも組織的に偽造、捏造、改竄する。一種の詐欺、騙しだ。善人でも悪をなすのなら、悪人である詐欺師は手ぐすね引いてあれこれ作戦を練っているかもしれない。それでも精々厳罰で対処するくらいなのだろう。

「オレオレ、俺だけどさー、マイナンバーのカードをなくしちゃって再発行の手続きをしているのよ。そんで親父のマイナンバーを教えてほしいんだけど」

世に泥棒のタネは尽きまじ。

■10月17日(土)、朝は室温21度、雨模様、ハーフ散歩。

夕べは集団的子育て。8人で天ぷらソーメンを楽しんだが、連日家事に追われて疲労が蓄積し、騒々しいこともあってイライラが募っている。今日からはしばらく静かだ。

前衆議院議員・杉田水脈(みお)氏の論考「日本政府は慰安婦強制連行を公式に否定せよ」(国家基本問題研究所10/13)から。

<7月27日に国連欧州本部で行われた女子差別撤廃委員会プレセッション(準備会合)に出席するため、スイスのジュネーブを訪れた。NGO「なでしこアクション」の山本優美子代表と共に日本の保守系団体の代表として初めて発言の機会を得た。

我々に与えられた発言時間は各2分。内容が重ならないようにあらかじめ調整してスピーチに臨んだ。

*国連欧州本部で説明

山本氏は米国各地に建てられた慰安婦像・碑が原因で発生している日本人バッシングについて述べ、「慰安婦問題は女性の人権問題の域を超え、日本人を貶める政治的キャンペーンに利用されている」と英語で訴えた。

私は「慰安婦の強制連行はなかった」という1点に論点を絞り、この問題を世界中に広めた朝日新聞が誤報を認め、訂正記事を出したことを説明した。その上で、「国際社会では未だナチスドイツのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に匹敵する戦争犯罪だと宣伝されているが、事実無根である」とフランス語で主張した。

我々が話し終わった後、出席した委員からいくつか質問があった。

委員「あなた方は政府の関係者か?」
我々「いいえ、違います。全くの民間団体です」
 
委員「我々は慰安婦の強制連行はなかったという意見を本日初めて聞い
た。今まで述べられてきた意見とは全く逆である。にわかに信じがたい
が、慰安婦問題について(今までとは違う)考え方をもっと聞かせてほしい」

この質問に対し、我々は、米国の公開文書(1944年に米軍がビルマ=現ミャンマーのミートキーナで行った朝鮮人慰安婦の尋問報告書NO.49)を用いて、「慰安婦は性奴隷ではなかった」という説明を行った。

最後に議長からは、「慰安婦の強制連行はなかったという意見を初めて聞いた。今後は慰安婦問題には二つの異なる見方があるということを念頭に置いて考えるようにする」という言葉を頂いた。

*委員会からの問い合わせ

実際にこの委員会には、日弁連、「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」といった左翼系の団体が多く出席して発言しており、今回も「従軍慰安婦は日本の重大な戦争犯罪であり、日本は十分に謝罪していない」「教科書から従軍慰安婦の記述が削除された」といった主張を行っていた。

7月30日、委員会から日本政府に提出された質問リストに、これまでになかった新たな項目が加わった。

≪委員会は最近の公開陳述で「慰安婦の強制連行を証明するものはなかった」との説明を受けた。これについて見解を述べてほしい≫

日本政府がこの問い合わせに対し、「慰安婦の強制連行はなかった。それが日本政府の公式見解である」と、毅然とした態度で回答することを強く期待する>(以上)

この件を外務省が担当するのなら「毅然とした態度」はまず期待できない。彼らは高級ワインで乾杯し、外国と仲良くするのが仕事だと思い込んでいるから、波風を立てるような不都合な件は無視するか先延ばしにする。

外務省は獅子身中の虫。「害務省」と心得た方がいい。革マル2代目教祖的佐藤優のような魑魅魍魎が潜む伏魔殿だが、せいぜいアニメの宣伝くらいしかできない、やる気がない。国益よりも友好優先なのだ。

「日本との交渉は外交ではなく日本軍に直接頼った方が速い」

戦前はアジアの人々はそう思っていたろう。命を狙われた皇帝溥儀は日本大使館に庇護を求めたが埒が開かず、日本軍に頼んだら速攻で救出されたという。

「軍部の独走」などとしたり顔で言う奴が多いが、緊急時には自衛隊もそうせざるを得ないこと、昔も今も変わりはない。どこの国の軍隊でも同様だろう。

とっさの判断ができなければ殺される。いちいち政府・外務省、国会の判断を待っていたら全滅だ。火が出たら119番。弾が飛んだら自衛隊へ速攻で Help us! 餅は餅屋。世界の常識だ。

外務省の劣化は河野洋平が大臣になったあたりから激しくなっていったのではないか。田中真紀子、小泉純一郎、岡田克也、前原誠司、枝野幸男。真紀子なんぞはマンガでしかないが、暗愚が多い。外務省の官僚も「神輿は軽くてパーがいい」と思っているから、暗愚大臣は大歓迎だろう。

これまでも、これからも「害務省」。期待するとろくなことにはならないだろう。(2015/10/17)

◆TPP「対米協調」に落とし穴

田村 秀男



TPP「対米協調」に落とし穴あり オバマ政権の対中姿勢は軟化の流れ

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意が成立したが、「日米主導」の言葉に酔っている場合ではない1985年9月の「プラザ合 意」以来30年、日本は「対米協調」という名分のもとに対米追随が習い 性になり、国益最優先の経済戦略が粗略になっている。(夕刊フジ)

TPPについて、安倍晋三首相は、「米国と組んで自由や人権など価値を共有する広大な経済圏をつくる」という。メディア多数も、「開国」におびえる農業をシバキ上げ、合理化や改革を厳しく求める半面で、米自動車ビッグスリーの主力収益源であるライトトラックへの25%もの保護主義関税を30年もかけて撤廃する大幅譲歩を不問に付す。

対中包囲網になるという評価は総論の域を出ない。TPPはあくまでも自由貿易ルールの拡大版であり、対中外交・安全保障面での波及効果は未知数だ。米国はビジネスの利益になると思えば、さっさと中国をTPPに誘い込むだろう。

TPPは知的財産権保護や国有企業の既得権排除、相手国政府との投資紛争処理などを強化しているが、万能ではない。アップル、IBM、デル、マイクロソフト、インテルなどハイテク企業は競い合うように対中投資を増やし、先端技術を国有企業に供与している。米企業は中国市場シェ ア欲しさの余り、情報技術(IT)の中国標準の普及に協力している。

中国の人民元の国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)への組み込みも、これまで反対してきたオバマ政権が、人民元の柔軟な変動や金融・資本の自由化を条件に賛成する態度に軟化しつつある。


11月に開かれるIMF理事会では、来秋から元をSDR構成通貨に加えることを承認する情勢だ。SDR通貨になれば、人民元は各国中央銀行間で現在のSDR構成通貨であるドル、ユーロ、円、ポンドとの交換が保証される正真正銘の国際通貨となる。元は国際決済で日本の円を圧倒し、日本の銀行も企業もドルと同じく、人民元がなくてはビジネスが成り立たなくなる日が近づく。

北京は「国際通貨元」を実現し、低コストのドル資金調達能力に不安があるアジアインフラ投資銀行(AIIB)など中国主導の国際金融機関での人民元資金活用の道を開く。

人民元による基軸通貨ドルへの挑戦ともな るが、金融市場自由化と門戸開放および変動相場制移行のプログラムを習 近平政権が受け入れると、米国はドル基軸のグローバル金融体制に中国を 取り込みやすくなり、ニューヨークとロンドンを拠点とする国際金融資本 は巨大な収益機会を獲得できる。実利面で米中妥協の余地が大きいのだ。

米国の金融市場を支えてきたのが日本である。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は安倍首相に消費税増税を実行させてマイナス成長に舞い戻らせた。異次元緩和で余ったマネーによって日本からの対米投資は増え続けている。「対米協調」は日本の基本路線には違いない。しかし、自国益に執着しないアベノミクスは日本を再生させられないだろう。 (産経新聞特別記者)

産経ニュース【お金は知っている】産経ニュース【お金は知っている】
2015・10・17

◆リハビリって、再び生きること

向市 眞知

「リハビリ」という用語は訳さなくてもよいくらい、いまでは日本の常用語になりました。しかし、この用語は、とても「くせもの」です。皆がこの用語の前向きなところにごまかされ、便利に安易に使ってしまいます。

医師は最後の医療としてリハビリにのぞみをつなげる言い方をします。家族は家にもどるためにはリハビリを頑張ってほしいと期待をかけます。患者もリハビリを頑張れば元どおりになれると思います。リハビリとは「再び生きる」という用語と聞きました。この概念で考えるととても幅広い概念です。

病院にはリハビリテーション科があり、そのスタッフには理学療法士、作業療法士、言語聴覚訓練士という、国家資格をもった専門技師がそろっています。身体機能回復訓練に携わるスタッフです。

医師が「リハビリ」という用語を使う場合には、このようなリハビリテーション科のスタッフによる訓練を指すだけではなく、「再び生きる」心構えを持ちましょうという意味を含んでいる場合が多いのです。

しかし、患者、家族のほうはリハビリは療法士がするものと思い込んでいるケースが多いように思います。よく言われるのに「リハビリが少ない」、「リハビリをしてもらえない」というクレームがあります。療法士がするものだけがリハビリなら、診療報酬上、点数がとれるのは一日20分から180分です。

「リハビリを受けさせたいから入院させてほしい」とよく言われますが、一日の何分の1かの時間のリハビリだけで「再び生きる」道のりを前に進むことはむずかしいものです。あとの時間をベッドに寝ているだけでは何の意味もありません。「リハビリのために入院している」というだけの安心感の意味しかありません。

いくら日本一の理学療法士の訓練をうけたといっても、患者本人が「リハビリをする(再び生きる)」心構えになっていなければ、空振りに終わってしまいます。マヒした身体に対して、拘縮してしまわないように理学療法士が外から力を加え訓練をすることはできます。でも、訓練が終わって身体を動かさなければ“もとのもくあみ”です。

しかし、言語訓練はそうはいきません。本人が声を出そう、話そうとしなければ訓練になりません。「絶対話すものか!」と口をつぐんでいる患者に訓練は意味をなしません。まずは声を出してみよう、話してみようという気持ちになるように心理的にリラックスしてもらうことから訓練を始められると聞きました。

このことからわかるように、リハビリは本人次第なのです。そしてやはりリハビリも療法士と患者様の協同作業です。療法士の訓練の20分が終われば、患者自らがもう一度リハビリのメニューをくりかえしてやってみることや、家族が面会時間に療法士に家族ができるリハビリを教えてもらい、リハビリの協力をしてみるなど、何倍にもふくらませていくことがリハビリの道のりなのです。

療法士まかせにしないこと、繰り返しやっていくこと、退院しても療法士がいなくてもリハビリ、再び生きる道のりは続いていること、それを実行するのは自分であることを忘れないでいてほしいと願っています。

2006年4月の診療報酬改定で更にこの認識が重要になってきています。療法士による機能回復訓練が継続してうけられる回数の上限が疾病により90日〜180日と定められました。これ以上の日数の訓練を続けても保険点数がつかないことになりました。医療機関は保険がきかなくなればリハビリを打ち切らざるをえません。

患者も10割自費で料金を支払ってまでリハビリを続けることはできないでしょう。リハビリは入院の中でしかできないものではなく、退院しても自宅でもリハビリを続けていく意気込みが大切です。
                  (ソーシャルワーカー)

2015年10月17日

◆安倍氏の対露傾斜は危険

平井 修一



国基研企画委員・太田文雄氏の論考「ロシア新型弾道ミサイル原潜の太平洋配備の意味」10/5から。

<9月30日にロシアのボレイ級戦略弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)「アレクサンドル・ネフスキー」がカムチャツカ半島東部(の太平洋艦隊基地)に到着した。

これまで、ロシアの北海艦隊には新型弾道ミサイルのブラバを搭載するボレイ級SSBNが配備されていたものの、太平洋艦隊に配備されていたSSBNはデルタIII級で、最新艦でも1981年の就役であることから既に艦齢が過ぎ、実質的なパトロールはできていなかった。

しかし、ボレイ級の太平洋艦隊への配備は軍事的に見て、冷戦時代のオホーツク海要塞化が再び現実味を帯びてくることを意味する。

*高まる北方領土の戦略的重要性

冷戦終了後、北方領土のロシア軍は削減されたが、それはオホーツク海を要塞化する必要がなくなり、戦略的重要性が低下したからである。しかし今回の新型SSBNの太平洋艦隊配備によって、北方領土の戦略的重要性が再度高まってくる。

こうした背景から、ロシアが北方領土を日本に返還する可能性は遠のいたと見るべきであろう。そうでなくとも、昨今のロシア高官の北方領土訪問や、岸田文雄外相とモスクワで会談した直後のラブロフ・ロシア外相の「北方領土問題は協議しなかった」という頑なな発言(9月21日)を聞けば、ロシアが簡単に北方領土を返還するつもりがないことは明らかである。

*何のためのプーチン来日か

国連総会出席を機会に安倍晋三首相はプーチン・ロシア大統領と会談し、年内の大統領訪日が取りざたされている。駆け足でニコニコしながら大統領に近づく安倍首相に対し、したり顔で迎える大統領が印象的であった。

一方で、ロシアの新型SSBNが太平洋艦隊に配備された翌日の10月1日には、これまでの空母「ジョージ・ワシントン」よりも10年後に建造された「ロナルド・レーガン」が母港の横須賀に入港し、米国のアジア・リバランス(再調整)政策を裏打ちした。

ロシアの一方的なクリミア併合を批判する米国は「現在はロシアと通常の関係に戻る時ではない」(国務省)と警告している。日本が米国との関係を損ねてまで、この時期にプーチン大統領の訪問を実現するメリットは一体何だろうか?

1989年の天安門事件で国際社会から孤立した中国は、日本をくみしやすい相手として1992年に天皇訪中を実現、孤立から脱することに成功した。以後、中国は孤立から脱出させてくれた恩人である日本にどのような仕打ちをしてきたか?

現在、クリミア併合やウクライナ東部への武力介入で国際社会から孤立しているロシアは、孤立から脱しようとして利用しやすい相手を探している。日本は成果が不透明なままプーチン大統領との関係にのめり込むべきではない。1992年の轍を踏んではならない>(以上)

安倍氏のプーチン擦り寄りはロシアでも疑問視されている。スプートニクニュース10/10「今年、プーチン大統領訪日が成功する兆しは見えない」から。

<モスクワで露日外務次官級会談が終了した。モルゲロフ、杉山両次官による話し合いは7時間にも及んだ。菅官房長官は会談を建設的と評価している。菅官房長官はまた、日本外務省はプーチン大統領の訪日の刷り合わせを続けていくと語っている。

有名な東洋学者のアレクサンドル・パノフ元駐日ロシア大使は菅官房長官の楽観主義とは意見を異にしている。

「知る限りではこの交渉の中でそれぞれの側が前々からわかっている自分の立場を語った。これは1980年代末にあった状態へまた戻っていることになる。

非常に悲しいのは、20年後、我々がまた開始した時点に戻ってしまったことだ。どんなに論拠を並べても何もならない。なぜならそれぞれの立場は政治的には矛盾したままだからだ。

問題は政治的解決以外では解きようもないが、今の条件ではそれは不可能だ。もちろん、交渉が成立したというのは悪くはないが、これは全く非生産的なものだったことは間違いない。立場の違いを確認するのに7時間も座り続けることはない」

記者:平和条約の主たる問題で立場が異なるのであれば、日本はなぜ、あんなにもプーチン大統領を待っているのか?

「第1に、安倍氏自身はこの訪問を非常に望んでいる。それはロシア大統領との直接的な対話を目指す自分の路線が成果を出していることを見せるためだ。

日本はなぜか、ロシアの外交政策を決めているのは外務省ではなく、プーチン大統領個人だと思い込んでいる。今ロシアは苦しい立場にあるのだから、大統領から必要な決定を得られるのではないかというわけだ。

これと同じだったのがエリツィン時代だ。だがこれは何の結果も生まなかった。

それでも安倍氏がプーチン大統領と交渉を行わねばならないのはもうひとつ、ロシアと中国が反日というプラットフォームに立って接近することを許さないためだ。こうした事態となれば、日本にとっては悪夢でしかない。

第2に、安倍氏は自分のしいた対露関係の発展路線になんらかの進展があることを本当にアピールせねばならないのだ。

米国がこの路線を良く思っていないことを示す証拠はますます挙げられている。米国務省の論拠のひとつに、我々(米国)はあなた(安倍氏)に「その必要はない」とは言わない。ほら証拠にあなたは何も達成しなかったではないか。ところがあなたの行為は対露関係に関して西側の一枚岩の姿勢を侵食している。

第3に日本は実際にこの地域での孤立を危険視している。日本は対米関係の強化へ向かい、TPP合意を結んでおり、オバマ米大統領も中国がこの地域での貿易ルールを決めることは許さないと明言している。

米国は中国に対する抑止を強化し、スプラトリー諸島に艦隊を派遣しようとしている。

日本にとって見れば、状況は米政策の反中国要素が強化され、非常に憂慮すべき状態となっている。日本がもし中国との関係を築けないのだとすれば、今度はロシアと付き合うしかないというわけだ」>(以上)

ロシアに足元を見られているということ。TPP大筋合意は日本にとって対中包囲網で大きな前進だが、好事魔多し、対露交渉で前のめりにならないよう最大の注意をすべきだ。(2015/10/16)