2015年05月31日

◆中国は「ミスター潜水艦」を派遣

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015)5月29日(金曜日)参 通算第4558号> 

 〜今年のシャングリラ対話に中国は「ミスター潜水艦」を派遣
  南シナ海に怪しい戦雲、ゴーマン中国の開き直りがまだ続くか?〜

アジアの安全保障を話し合う「シャングリラ対話」は2002年から毎年5月に、シンガポールで開催されている。2007年から中国も参加した。

昨年の基調報告は安倍首相で、「公海のルール厳守、航海の安全」を呼びかけ、米国のヘーゲル国防長官(当時)は、中国を名指しし「現状を変えるいかなる行動にも反対する」と釘を刺した。

猛烈に反発したのは中国代表の王冠中(少将、参謀本部副部長=当時)だった。

王冠中は安倍首相の演説にも猛烈に噛みついた。最近の王毅外相が強気に「中国の領海で何をしようが、中国が決めることであり、介入するな」と傲慢な態度を示したように、南シナ海の岩礁をつぎつぎと埋立てて、軍事施設を建設して秩序を破壊していることに、いささかの反省の色もなかった。
 
昨年のシャングリラ対話は米中の露骨な対決となり、地元の専門家は「中国は夜中にガソリンに火を付けてからルームサービルを依頼したようなもの」と酷評した。

5月29日から、また「シャングリラ対話」が開始され、中国は前回より多い29名の代表団を送り込んだ。

しかし今度の代表は孫建国(総参謀部腹部省、海軍大将)が撰ばれた。孫は「ミスター潜水艦」という異名をとり、入隊後、海軍潜水艦学校を卒業、ひたすら潜水艦に専念し、1985年に中国海軍が初めて90日間の潜水航海を行ったときの「長征?」の艦長だった。

孫建国大将は国際法に通暁しているといわれ、昨年のような四面楚歌の状態から抜け出すことに中国は必死であることがわかる。


▼開き直りの非論理、中国人のDNAは変わらないなぁ

というのも南シナ海を飛行中だった米偵察機に中国の無人機が異常接近し、電子妨害(ジャム)を加えたりしたため、米軍の態度を硬化させており、カーター国防長官は27日、ハワイでの演説で、「係争中の領海における軍事施設の建設はただちに中止すべきだ」とした。また大西洋艦隊司令長官に日系人ハリーが就任した。

カーター米国防長官は続けて、「(中国を)脅威視するアジア諸国の要請で米国は当該海域の防衛に関与を強める方向にあり、あくまで平和的解決を希望するものの同盟国の不安を解消するために、米国は強い関与を続行するであろう」と述べた。

他方、中国は南シナ海のおける侵略行為を正当化して「いかなる行為も当該海域の安全を高めるためである。米国は無責任な発言を慎むべきではないか。米国の介入はアジアを混沌におとしいれるものだ」などと挑発的言辞を繰り返した。

南シナ海の戦雲、広がるか。

◆日独復活で世界の軍事均衡を

平井 修一



冨澤暉(ひかる)氏は元陸上幕僚長。昭和13(1938)年3月、東京生まれ。父は冨澤有為男(芥川賞作家)。妻の父は藤原岩市(戦中、マレーハリマオ工作・インド国民軍工作担当のF機関長、戦後、自衛隊調査学校長・第12師団長・第1師団長)。

岳父が藤原F機関長だなんて、なんと素晴らしいのだろう。それにしてもお懐かしゅう。

<F機関と藤原の最も大きな功績は、インド国民軍の創設である。当時タイに潜伏していた亡命インド人のグループと接触して、彼らを仲介役として藤原は英印軍兵士の懐柔を図った。

藤原は、降伏したインド人兵士をイギリスやオーストラリアの兵士たちから切り離して集め、通訳を通して彼等の民族心に訴える演説を行った。この演説はインド史の一つのトピックである。インド国民軍は最終的に5万人規模の大集団となった>(ウィキ)

情報宣伝・諜報工作の血が自衛隊にも脈々と受け継がれているのだろう。

冨澤氏の論考「自衛隊は強いのか弱いのか、の疑問にお答えしよう 毎年平均して25人の死者を出す過酷な訓練は何のためか」(JBプレス5/25)から。

<自衛隊員は入隊時に「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める」と宣誓している。

現実に、隊員たちは極めて厳しい訓練に参加しており、安全管理に徹しつつも残念ながら、自衛隊発足時から60年間に1500人(年平均25人)を超える訓練死者(殉職者)を出している。

この殉職者方は死ぬつもりはなかったはずだが、この訓練は極めて危険な厳しいものだということを承知のうえでこれに臨み、亡くなった方々である。

帝國陸海軍は当初訓練死者を戦死者と認めなかったが、第2次大戦後半以降、国内における訓練死者をも靖国神社に合祀するようになった。つまり、訓練殉職者は戦死者なのである。

ところで最近の安全保障法制の変更や新ガイドラインの改訂に関連して、これらの質問とは真逆に「これまで戦死者を出さなかった自衛隊から、1人でも犠牲者を出してはいけない」という意見がマスコミ上を賑わしている。

私ども自衛隊員であった者たちに言わせると、これまた誤解に満ちた困った意見である。

*1人の死者も出していない海外派遣

確かにこれまで自衛隊は、国内でもよくあるような事故死の例を除き、海外で1人の犠牲者をも出していない。その間、自衛隊が進出した地域の付近で、何人かの日本人ボランティア・ジャーナリスト・警察官・外交官方がお気の毒にも亡くなっている。

その海外派遣総員数と殉職者の比率を比較するならば、自衛隊がいかに訓練精到な組織であるかがお分かりかと思う。

これまでの自衛隊海外派遣において1人の戦死者も出さなかったことは、むろん幸運に恵まれたということもあるが、何よりも先に述べたような「平時からの覚悟とこれに基づく命がけの訓練」のお陰だということを知ってほしい。

だから自衛隊は、国民の総意を代表する最高指揮官たる内閣総理大臣の出動命令が出た時には「身の危険を顧みず」その命令に従うのである。

*国民が強ければ自衛隊も強くなる

「自衛隊は強いのか」という質問は、実は「国民は強いのか」と言い換えて、国民一人ひとりが自問自答すべきものなのではないか、私は、そう考えている。その意味で徴兵制の有無にかかわらず「国民の国防義務」を明記した多くの諸外国憲法は参考になると思う。

さて、そうしたことをようやくご理解いただいた方でも「我が国防衛のためならそれは仕方ないが、外地に出かけてまで、危険なことをする必要はないだろう」とさらに言われるかもしれない。

実は、これまでに日本に蔓延っていた「一国平和主義」とは、まさにこの考え方であり、極めて利己的なものである。

私どもは「世界の平和」があってはじめて「日本の平和」があることを認識し、「日本の平和」のためにもまず、「世界の平和」に貢献することを目指すべきではないだろうか。

日本と同様に第2次大戦のトラウマを持つドイツは1990年代以降各種の多国籍軍やPKO(平和維持安全活動)に参加しており、犠牲者の数もボスニアでの19人、コソボでの27人などと増大させている。

アフガンでの多国籍軍ISAFでは後方兵站部隊派遣に徹したにもかかわらず55人の戦死者を出して大きな国内問題となった。しかし、平和主義者として高名なアンゲラ・メルケル首相は極めて危険なアフリカ・マリのPKO部隊を、断固として撤退させないでいるということである。

「世界の平和」を守ることは、世界の各国が危険を承知の上で協力し合って初めてできるものなのである>(以上)

国会では中共の走狗が神学論争にうつつを抜かしているが、リアリズムで世界を見れば冨澤氏の主張するとおりである。

バランス・オブ・パワーで見れば、世界は今、日独復活による軍事均衡というリバランスが求められている。

ソ連崩壊、冷戦終結で緊張感が薄れたのだろう、西側諸国の軍事力は弱くなっているようだ。先日、有事の際にフランスが短時日で用意できる兵力は3万人しかないと報じられていたが、西側諸国は似たようなことなのかもしれない。これではロシアや中共、北の急襲に対して後手後手にならざるを得ない。

ブレット・スティーブンズ/WSJ外交問題コラムニスト・論説欄副編集長の論考「冷戦以後、西側諸国は弱体化している? 変わりゆく世界の軍事バランスを考える」(ダイヤモンドオンライン5/19)は示唆に富んでいた。以下全文転載。

<30年前と比較すると、世界の海をパトロールする米軍の艦艇は半減している。社会保障費の増大や、際限のないテロとの戦いに「撤退」ムードを強める米国と、同じように軍縮を続ける欧州。世界の軍事バランスを『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもある、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが分析する。

*弱体化する「西」側国家 NATO諸国の軍事の現状とは

現在のアメリカ軍のプレゼンスは近年で最も縮小している。1964年、アメリカ海軍は859隻の艦艇で世界の海をパトロールしていた。それが1984年には557隻になり、現在は289隻しかない。

1984年と2014年の違いの大部分は、冷戦の終結によって説明できる。だが、いまはもはや冷戦終結後の穏やかな時代ではない。たとえオバマ政権がそうであるかのように振る舞っていても、現実は違う。

アメリカは世界的なテロの脅威と、さまざまな主要国からの新たな挑戦を突きつけられている。さらに悪いことに、世界におけるアメリカ軍のプレゼンスは、第二次世界大戦前の水準まで縮小している。

ペンタゴンはここ数十年、コストや規模や技術的な可能性を忘れて、質的な軍事的優位を確保することばかり考えてきた。このため海軍は、超ハイテクのシーウルフ級原子力潜水艦を29隻調達するはずが3隻しか調達できなかった。

空軍はF22戦闘機650機の調達を計画していたが187機で終わった。宇宙時代に対応するDDG1000ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は、32隻を調達する計画だったが、3隻建設しただけで終わった。多用途性を備えたF35戦闘機の開発の遅れ、開発コストの大幅な上昇、そして保守整備上の課題は、ほとんど伝説となっている。

全部合わせると、ペンタゴンは21世紀に入ってからの10年間で中止プロジェクトに460億ドルも費やした。最終的な配備数が少なすぎてその莫大な開発費用を正当化できないか、実戦に効果がないプログラムにも数十億ドルを費やした。

重要なのは、架空の戦争のために超高額・超最先端・超ハイテク兵器を少量確保することではない。より安価だが、応用範囲が広く、長期間使える兵器を大量に補充することだ。言い換えるとF35は減らして、改良したF15やF18を増やすのだ。ペンタゴンは軍事革命ではなく軍備を進化させる重要性を学び直す必要がある。

割れ窓理論に基づく警察活動を機能させるには、地元の協力が必要だ。NATO憲章は、加盟国にGDP比2%以上の軍事支出を義務づけている。

ところが2014年にこの最低ラインをクリアしたのは、アメリカ、イギリス、ギリシャ、エストニアの4ヵ国だけだった。フランスは1.9%、トルコは1.8%、ドイツは1.3%、ポーランドは1.8%、スペインは0.9%どまりだ。

冷戦終結時、ドイツは36万人の兵力と、装備の整った12師団を有していた。現在、ドイツのGDPは3兆4000億ドルに上るが、兵力は6万2000人、戦車は225両、攻撃ヘリコプターは40機しかない。

*冷戦下の緊張感を失った欧米と危険性を増す「境界線」

NATOの初代事務総長を務めたイギリスのヘイスティングス・イスメイ卿が、NATOの目的は「アメリカを取り込み、ロシアを締め出し、ドイツを押さえ込んでおくことだ」と言ったのはよく知られているが、もはやその目的は書き直す必要がある。「アメリカを取り込み、ロシアを締め出し、ドイツを復活させることだ」と。

ヨーロッパは経済が苦しく、これ以上は国防に予算は割けないという主張があるが、これは眉唾ものだ。イギリスはおそらく第二次世界大戦後最大の不況に見舞われた1979年に、GDPの4.9%相当を国防費に当てていた。同年、フランスもGDP比4%を国防に支出した。

当時でさえ、この予算は脅威の大きさに見合った規模ではなかったが、少なくともその取り組みは真剣だった。もう一度同じように真剣に取り組む必要がある。

アメリカがやるべきなのは、規範を定めてそれを世界で行使することだ。つまり基本的にどのような振る舞いが期待され、どのような行動には是正が求められるかを示すことだ。これは実効性が疑わしい国際「法」を宣言したり認めたりすることとは大きく異なる。またこれはアメリカがずっとやってきたことでもある。

アメリカは1983年にグレナダに侵攻して共産主義革命を転覆し、1989年にはパナマに侵攻して、アメリカへの麻薬輸出に関与していた体制を転覆した。

1991年の湾岸戦争ではクウェートの主権を回復し、1990年代には旧ユーゴスラビア紛争に介入してサラエボ包囲に終止符を打ち、クロアチアの対セルビア戦を支援し、コソボにおける民族浄化を終わらせた。

さらに台湾海峡に空母を派遣して中国の攻撃を阻止し、9.11テロ後にはアフガニスタンのタリバン政権を転覆した。2011年にはリビアの独裁者ムアマル・カダフィの打倒を支援した。

ソマリア内戦への介入は、破綻国家の再建ではなく飢饉の緩和に目的を絞り込んでいれば成功していただろう(そしていまごろ忘れられていたに違いない)。

ヘンリー・ナウ(ジョージ・ワシントン大学教授)は論文『アメリカの国益』で、アメリカの「地球イデオロギー」的な利益として、「自由が最も重要な意味を持つ場所、つまり既存の自由社会(と自由でない社会)の境界線に注目するべきだ」と論じている。

それはアジアの自由な国々と中国や北朝鮮との境界線であり、ヨーロッパの自由な国々とロシアとの境界線、そしてイスラエルとアラブ諸国の境界線だ。

「これらの境界にある国々が脅かされたら、アメリカも脅かされていることになる」と、ナウは主張する。「なぜなら独裁国家の妖怪が民主主義世界の中核に近づいてくると、世界は住みにくい場所になるからだ」

ナウが挙げた場所に加えて、コロンビアとベネズエラの境界線、インドとパキスタンの境界線、そしてイランと近隣諸国すべてとの境界線が、アメリカが注視するべき場所として挙げられるのではないか>(以上)

まことに「世界の平和」があってはじめて「日本の平和」がある。ダチョウのごとく日本列島に閉じこもって「窮状憲法」を拝んでいては中共の攻撃を防げない。ロシアやIS、北の暴挙を抑え込むのは軍事力だ。

わが軍は近隣に遠慮して兵器の攻撃力を弱めているが、これでは勝てない。一国平和主義、専守防衛という時代錯誤の妄想に基づく戦略/戦術を脱し、勝てる軍隊、抑止できる軍隊に強化し、平和のためには地球の裏側だろうと遠征しなければならない(ジェット機でわずか20時間のご近所、地球は狭くなっている!)。

世界は今、日本とドイツに、米国と連携して「世界の警察官になってくれ」と言っている。少なくともアジアは日米が主導して安定させなければ中共の海と化す。防衛費の増加、核ミサイルレンタルなども喫緊の課題だ。

中共は日本が準備不足のうちに戦端を開くはずだ。今日明日にも衝突するかもしれない。時は戦争前夜、軍民ともに常在戦場の覚悟が必要だ。第一列島線死守、中共包囲殲滅戦へ。靖国で会おう! ヂイヂの出番も用意してくれ。戦う権利は国民が等しく持っている自然権だ。参戦権を大いに行使したい。(2015/5/29)

◆日本人の心の清明さはどこから

加瀬 英明



都内は、櫻が満開だった。

私は仕事柄、ワシントンに通っているので、ポトマック河畔で百数十本もの櫻が爛漫と咲いているのを、何回も見たことがある。たしかに美しいが、それだけのことだ。

尾崎行雄東京市長が大正年間に日米友好を願って、贈った櫻だ。だが、同じ桜であっても、心の国である日本に咲いていないと、心の風景にならないのだ。

日本にはどこへ行っても、日本の心が空気のなかを、微粒子のように飛んでいる。

櫻はいさぎよく散るから、日本人の心を表している。清く、すがすがしいさまを、潔(いさぎよ)いという。

神道をひと言(こと)でいえば、心の清明を求めることである。仏教に仏典があり、同じ神を拝んでいるユダヤ・キリスト・イスラム教に聖書と『コーラン』があるが、神道には従うべき戒律も、理論も、教典も、祈祷書も存在していない。神道は宗教だといえない。

 清明な心は櫻と同じ潔さ

だが、清明な心といえば、日本人ならあらためて説明されなくても、誰でも分かる。

日本では人が清明な心を持つことが、期待されている。

神道という言葉が日本語の仲間入りしたのは、かなり最近のことだ。仏教が7世紀に入ってくる以前には、名前がなかった。仏教と区別するために、古道とか、神道と呼ばれた。

キリスト教、イスラム教、仏教が、信徒の数からいって、世界の3大宗教といわれる。

 神道は信じるものでなく感じるもの

神道とどこが違うのかといえば、この3つの宗教は人が文字を知るようになってから、生まれた。そして、文字が論理をもたらした。

宗教は論理であって、教えを信じなければならない。神道は文字がなかった時から存在したから、宗教ではない。神道は信じるものではなく、感じるものだ。

7世紀に日本に仏教と儒教とともに、論理がもたらされた。中東やヨーロッパでは論理が、精霊信仰である多神教を圧倒したが、日本では神道が大きな力を保ち続けた。

 神道は清く正しく美しいを奉ずる

神仏混淆といっても、神道のうえに仏教が加わったのだった。神道は論理ではないから、言挙げしない。そこで今日でも、私たちは国民性として、寡黙で、論争を好まない。

宝塚少女歌劇団のモットーの「清く正しく美しい」から、「正しい」を除くと、神道になる。論理は善と悪、正と邪を分けるが、神道は感性によっているから、清いか、穢(けが)れているかを尺度とする。

だから、自分に都合のよい論理を振り翳(かざ)して、争うことがない。論理は詭弁をもたらすから、危険きわまりない。

 日本は開闢以来女性が優れていた

日本は開闢(かいびゃく)以来、女性が優ってきたという、大きな特徴がある。

天照大御神は女神であられるが、朝鮮半島、中国からヨーロッパまで、神話の最高神がすべて男性神である。

私の母方の祖母の鶴は、会津若松の家老の孫として生まれた。鶴の祖父母は、鶴ヶ城と呼ばれた一の松城が、落城した時に自害した。

 心に心を恥じるとは

私は鶴に可愛いがられて育ったが、今から思うと、日本人としての生きかたを教わった。

鶴は小柄だったが、いつも凛として、会津の武士の志(こころざし)を持っていた。おそらく母から教えられたのだろうが、「心に心を恥じる」「自分の心を証人として、生きなさい」といった言葉を、私に伝えた。

 江戸研究学会の発足 

しばらく前に、江戸開府400年の年が巡ってきた。日光東照宮が記念事業として、江戸研究学会をつくった。私が以前から、江戸270年は庶民が世界でもっとも恵まれた時代だったと書いたり、講演をしたりしていたので、会長を引き受けさせられた。

江戸時代には、各藩にそれぞれ藩校があって、武士階級の息子たちが学んだ。庶民の子のためには、全国にわたって2万あまりの男女共学の寺子屋があった。ところが、武士の娘のためには、学校がなかった。家において母親から躾けや古典を学んだが、教養が高かった。

 心の魂は性別を超えて基盤

鶴は私が女の子をばかにすると、「女であっても、男女形がちがっても、同じ魂を持ちなさいと、教えられて育ちました」といって、たしなめられた。心において、男に負けなかった。

それでいて、鶴はいつも男を立てた。明治の女は、そうやって男を操っていたのだ。

人にやさしくとか、信義信用を守れ、心を証人として生きよという徳目は、武士だけではなく、庶民の1人ひとりが大事にしていた。日本は神々とともに、生きてきた国なのだ。

4月に、学校歴史教科書を取り上げた座談会に、参加した。

 夫が権威で妻が権力を把握

教科書が歴史と天皇をどのように扱うべきか、話題になった。

すると、元文科大臣のN先生が「権威としての天皇と、権力を担う政権に分けた、日本の知恵はすばらしい」といわれた。私が「日本の夫婦がそうです。夫が権威で、妻が権力を握っている」というと、全員が爆笑した。

 母なる言葉に無限の広さと深さあり

日本語では、祖国は母国、主家(おもや)は母屋(おもや)だ。父国、父屋とはいわない。母校、母艦をはじめ、母を連想させる言葉が多い。なぜ、母堂というのに、父堂がないのか。

トラックや、乳母車にかけるホロは「母衣(ほろ)」と書くが、もとは武士が背後から飛んでくる矢から首筋を守るために、兜のうしろにかける鎖網を意味した。戦場に立つ時に、母によって守られている安心感が、あったのだろう。

日本では徳川時代に入るまで、夫婦(めおと)茶碗は女男(めおと)茶碗と書かれた。だが、夫婦を「めおと」と発音できるはずがない。江戸期に入って、男が空威張りをするようになって、夫婦(めおと)と書くようになった。

古典では「女夫」と書いて、「めおつと」と読む。夫婦のことだ。女男(めおと)、妻男(めおと)、女夫(めおと)とも、書かれた。いまでも、和船に使われる釘は、女男釘(めおとくぎ)と呼ばれている。

 強者は耐え弱者が甘えて我儘

西洋は、男上位の社会である。日本で男が我儘なのに対して、西洋では女性が我儘だ。だが、強者は耐え、弱者が甘えて我儘になる。

アメリカとヨーロッパでは、夫が権威と権力の双方を握っている。漫画『ブロンディ』では、妻のブロンディが夫のダグウッドに、やれ何がほしいといって、そのつど金(かね)をせびる。

 真の女性こそ未来への絆

アメリカでは来年の大統領選挙へ向けて、与党の民主党の大きな公約が、「女性のための戦い(ウォア・オン・ウィメン)」だ。女性をDV(家庭内暴力)や、学園のキャンパスにおける男子生徒の性的暴行から、守ろうというものだ。

ユダヤ・キリスト・イスラム教は同じ神を拝む一神教だが、徹底的な女性蔑視が行われている。イエスは母のマリアを一度も「母」と呼ばずに、ただ「女」といっている。女が男装をしたり、男として振る舞うのは、大罪だ。

日本には、静御前、巴御前、北条政子をはじめとして、薙刀(なぎなた)を振って戦う女性が、登場する。ジャンヌ・ダルクはイギリス軍に捕らえられて、男装し、男まさりに戦った罪によって、魔女裁判にかけられて、火焙りに処せられた。

奈良平安時代には、女性で地方長官である国造(くにのみやつこ)が珍しくなかった。

もっとも、西洋では近年に入ってから、「ウーマン・リブ」によって、女性が男に伍して働くようになった。

 和の心こそ女性的な心の国

女が心を用いるのに対して、男は理を弄(もてあそ)ぶ。母親はどの子もやさしく包んで、守るが、父親はできる子と、できない子を競わせる。

日本は女性的な心の国である。女性が暴力を嫌うために、和を大切にしてきた。

縄文時代の遺跡から出土する骨には、他国の同時代の遺跡と較べて、戦い傷のある骨がはるかに少ない。平和な民であってきたのだ。

男が最高神である国は、自分勝手な正義を振りかざして、戦いを好むが、日本は違った。

天照大御神は女神であられた。もし、最高神が男神だったとしたら、日本民族が受け容れたことだろうか。私たちは神々であれ、仏であれ、母性的なやさしさを求める。


2015年05月30日

◆国家主席を悩ます刺客の影

中沢 克二
 


その日、中国国家主席、習近平の表情は疲労の色が濃かった。まぶたは腫れぼったく、睡眠が不足している。年に1度の晴れ舞台が始まるのに、上の空と 言って良い。

「心ここにあらず。別の重大事を考えているように見えた」

習ら最高指導者らがずらりと並ぶ人民大会堂のひな壇に近い席に座っていた中国の代表の声である。

3月初旬から北京で開かれた全国人民代表大会(全人代=国会に相当)と全国政治協商会議。北京に駐在する外国人記者らにとって「チャイナ・セブン」の 表情をじっくり観察できる貴重な機会だ。約2週間の開会中、ひな壇には繰り返し 習、首相の李克強、規律検査担当の王岐山ら政治局常務委員7人が長時間、並ぶ。

■女性スタッフを見つめる鋭い視線

おかしな事は他にもあった。ひな壇の中央に座る習。彼が会議中に飲むお茶用の蓋付き茶わんは、着席する直前に単独で運ばれてくる。他の政治局常務委員 6人とは違う特別扱いだ。大役を担うのは、容姿端麗なえりすぐりの女性サービスス タッフである。

彼女は恭しくお湯を注いでから蓋を閉じ、両手で茶わんを運ぶ。この日、女性スタッフの動きをじっと見つめる鋭い視線があった。2人の黒服の男性要員 が左右から監視したのだ。女性スタッフの一挙手一投足も見逃さないというように。

こうした男性要員が、目立つ形で登場したのは今回が初めてだ。会議の途中、着席している「チャイナ・セブン」が飲む茶のわんに、後ろから湯を足す役割 も、これまでの女性スタッフではなく、男性要員が担った。彼らには、お茶のサービ スだけではない特別の任務があった。

「毒を盛られないように始終、監視する役割だ。万一、壇上に暴漢が現れても訓練された男性なら対処できる」

北京の事情通がささやく。男性要員は身分を隠しているが、習らに極めて近い信頼できる人物である。逆に見れば、お茶くみの女性といえども今の習には信 用できない、ということになる。大量に捕まえた軍、公安・警察などの関係者が紛 れ込んでいる可能性を排除できないのだ。

2週間にわたって日々、ひな壇を観察していると、小さな変化に気が付く。女性スタッフのお茶運びを直接、監視する男性要員は終盤になると2人から1人 に減った。

一連の動きは何を意味するのか。実は3月初旬、全人代の開幕のころ共産党内部で緊張が高まっていた。謎を解くカギは、習らの警備責任者の相次ぐ交代に ある。

習は3月にかけて中国版シークレット・サービスを束ねる共産党中央警衛局長 と、北京市公安局長の交代を決め、実行した。不安に駆られて追い込まれた、と言っ ても良い。

■政敵側の人物が自らを護衛

習ら最高指導部メンバーの北京での執務、居住区は「中南海」と呼ばれる。特別地区の警備、要人の警護を担当するのが中央警衛局だ。中央警衛局は、共産 党中央弁公庁と人民解放軍総参謀部の直属組織で、多数の警護官は軍人である。

ただ、警衛局の人事を仕切るのは中央弁公庁主任になる。この役職には時のトップの側近が就任する慣例がある。日本でいえば内閣官房長官のような立場だ。

 歴代の中央警衛局長で有名なのが文化大革命の「四人組」逮捕で大きな役割を果たした汪東興だ。汪は1976年当時、中央弁公庁主任も兼ねていた。このポス トに信頼できる腹心を据えなければ、いざ政局が動いた際、迅速な措置をとれず、戦 いに敗れてしまう。警衛局長はそれほど権力闘争の現場に近い重職と言える。

今回の問題は、更迭された前任の中央警衛局長らの人事を事実上、取り仕切ったのが、習が先に摘発した前中央弁公庁主任、令計画だった点だ。令は前国家 主席、胡錦濤の側近である。

現在の中央弁公庁主任、栗戦書は習が信頼する側近中の 側近。とはいえ習の安全に責任を持つ現警衛局長が、捕まえた政敵である令と万一つ ながっていれば、夜もおちおち眠れない。

しかも令は「新四人組クーデター」を画策したと噂される。服役している元重慶市党委員会書記の薄熙来、起訴された前最高指導部メンバーの周永康、軍の 元制服組トップ級だった徐才厚(摘発後、3月に死去)と組み、習政権誕生を阻も うとしたと言うのだ。

習は不測の事態を恐れていた。命を狙われる危険を含めてだ。この1年間で習は各地を何回となく視察している。その際、いったん配置した警備要員を信頼 できず、自らが到着する5分前になって突然、数百人を入れ替えた異例のケースも あった。

このほど登用した新しい中央警衛局長、王少軍は昨年12月に習が江蘇省を視察した際、その左右で身辺警護をじかに指揮していた。

■「大虎」は公安の親分

「この数年、習主席は20回近くも命を狙われる可能性を指摘される場面があった。中でも最も危ないのが江蘇省。捕まえた大虎、周永康の本拠地だからだ。 しかも周は公安、武装警察の親分だった」

関係者が懸念していた江蘇省入りで王少軍を用いたのは、習が信頼している証拠である。

警備責任者の交代は当然だったが、摩擦、混乱も大きかった。それは習が中央警衛局長だけではなく、令計画につながる中央弁公庁や警衛局の人員の大量更 迭にも踏み切ったからだ。

党統一戦線部の部長を務めていた令の摘発公表は、昨年12月22日だった。翌年3月の全人代まで2カ月半もなかった。しかも2月には旧正月の長期休暇も あった。

極めて短期間で人員を大量に入れ替える必要がある。異例の事態だった。当 然、仕事は滞る。それは全人代の準備を含めた混乱を生み、習自身に跳ね返ってくる。

自ら仕掛けた「反腐敗」という名の権力闘争。その副作用が身辺の安全への不安だった。晴れ舞台を前に十分眠れない。それは中国トップにとって大きな 負担である。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ) 1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デス クなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14 年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞日本経済新聞 電子版2015/5/20
                 (採録:松本市 久保田 康文)

◆「孤立」憂う韓国 の“独り相撲”

名村 隆寛



安倍晋三首相の訪米と米上下両院合同会議に強い批判や反発を繰り返していた韓国のメディア世論が、ここに来てトーンダウンしている。18日にソウルで行われた米韓外相会談の後は、以前のような“外向きの威勢のよさ”は、やや薄らいだ。

歴史認識をめぐる日本非難を展開した揚げ句に、今度は「韓国の孤立」を自覚。現実を前にして焦っているかのようだ。

■自覚した外交的孤立

安倍首相演説(4月29日)の後、演説内容に「慰安婦への謝罪」などが入っていないと猛反発していた韓国メディア。その裏では、米議会での安倍首相の歓 迎ぶりに見られた日米関係の進展に“韓国孤立”への懸念が、日増しに高まっている。

安倍演説の前にインドネシアで日中首脳会談が行われたこともあり、なおさらのことだろう。米中の首脳とそれぞれ固く握手する安倍首相の姿をながめる韓 国世論には、一種の嫉妬感さえ漂う。メディアの批判はいつの間にか、「孤立を招 いた」と韓国外務省に向かった。

そんな中、ケリー米国務長官をソウルに迎え、韓国の“外交的挽回”への期待は高まった。

「韓国の安全保障に対する米国の姿勢は鉄壁だ」。18日の米韓外相会談後、韓国の尹炳世外相との共同記者会見でケリー氏が強調した“緊密な米韓同盟”に韓 国は安心した。さらに、ケリー氏が慰安婦問題について「甚だしい人権侵害」との 表現を使ったことにも満足していた。

ただし、ケリー氏の言葉からは、日米関係強化の一方で、韓国重視の姿勢を示すことで日本への対抗心やひがみを和らげようとする意図がうかがえる。リッ プサービスなのである。「ジェスチャーのように見えた」(朝鮮日報社説)と認める メディアもあった。

むしろ、ケリー氏は日韓(首脳会談)による直接対話を促し、「未来志向の関係」の必要性を強調の上で。慰安婦問題で悪化した関係の改善を促した。韓国 メディアの中には、ケリー氏が「歴史認識問題で韓国側に理解を示した」と都合のい い解釈も少なくはなかったが、ケリー氏は日本との歴史問題に固執する韓国に日韓関 係改善に向けた努力を促したわけだ。

■もっとやるべきことが…

韓国が日本との歴史にこだわる一方で、北朝鮮からは潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験や、幹部粛清の動きが伝えられている。北東アジアで の現実的な安全保障への対応に、韓国の歴史への固執は妨げとなっており、これに対 する米国政府への苛立ち、懸念をケリー氏は“やんわり”と伝えた。

ケリー氏は同日、朴槿恵大統領とも会談した。朴大統領は米国の胸の内を察していたのか、歴史問題での日本批判はしなかったという。6月に訪米を控え、 米国への無駄な刺激を避けたとみられる。

日本人記者として韓国で見ている限り、少なくとも韓国が孤立しているとは思えない。むしろ、韓国が勝手に“孤立”を感じているようなのだ。「乗り遅れる な」「取り残されるな」と。

もう一つ言えるのは、韓国が勝手に自らを孤立させていること。もちろん日本や米国、中国が韓国を孤立させてはいない。残念なことに、これに気付いてい る韓国メディアはほとんどない。

日中の関係が冷え込んだときは喜び、日本を非難。逆に日中が接近すればガッカリする。最後には「孤立」を憂い、自国(韓国政府)を責める。まさに“独 り芝居”である。

歴史認識問題で日本を非難している間に、もっとエネルギーを注ぐべきことがあるのではないか。日本人ながら、「そんな余裕あるの?」「もっと韓国の国 益を考えてはどうか」とこちらが心配してしまう。知人の韓国メディアの記者も、 会うたびにはっきりと言っている。韓国が直面する現実。経済のことだ。

■「低、減、ダウン、底」とは

最近、韓国紙を読んでいて気付いたことがある。「低」「減」「ダウン」「底」「非常事態」「沈滞」などの文字(すべてハングル表記)が、見出しや記 事に目立つ。いずれも韓国の景気、韓国経済に関する記事に必ずといっていいほど 登場する。

「暮らし向きはどう?」と親しい韓国人に聞くと、たいていが苦笑いを 返してくる。経済に関していい話は全く聞かれない。韓国の今一番の心配事、現実 問題、実は慰安婦問題ではなく、経済、国民生活に集中している。

学生は一流と呼ばれる大学を卒業しても希望する企業に就職できない。日本の現在30代半ばの世代が味わった「就職氷河期」に似ている。経済協力開発機構 (OECD)や韓国統計庁のまとめとして韓国紙が伝えたところでは、29〜15歳の4月の 失業率は10・2%で1996年以降、最悪だった。

今年1〜3月の24〜15歳の失業率が10・9%と上昇傾向にある一方で、日本では同時期で6・1%と改善が進んでいるという。

ウォン高。最大の輸出相手国である中国経済の伸び悩み。輸出不振。投資と内需の低迷…。経済紙によれば、韓国の売り上げ上位500社は昨年、売上総額が前 年比でマイナス4・4%、総営業利益はマイナス10%だった。鉄鋼などを除く輸出業は すべて不振に陥っている。

韓国経済は、長期不況が始まった1990年代前半の日本の状態に似てきている-との見方が今や主流。主要シンクタンクはいずれも、長期不況や低成長、長期 沈滞といった表現で、韓国経済の展望を悲観している。

■現実、無視できず

日本が味わった長期デフレの入り口に似てきていることを自覚し「現実」を知る韓国の財界で、対日関係悪化を懸念する声は根強い。

そんな中、今月中旬にソウルで日韓経済人会議が開かれた。東京から取材に来ていた経済担当の記者によると、会議では圧倒的に韓国側からの前向きな姿勢 や熱気が感じられたという。

また、朴槿恵大統領のあいさつする姿を見た財界人によ ると、朴大統領は終始笑顔を絶やさず、アドリブも交えて熱弁をふるった。日韓経済 協力の重要性をしきりに訴えていたそうだ。

「あの熱意とノリで対日関係改善に取り 組んでもらいたいものだ」(同財界人)との声さえある。

それほど、韓国は今後の経済を不安視しており、同時に、それだけ日本が大事な国だということを身にしみて感じている。経済の実態を知る韓国の財界関係 者や、経済担当の記者と話していると、非常に強く感じる。

今回の会議ほどの規模ではないが、2月にソウルで日韓の某新聞社が共 催するシンポジウムが開かれた。日本側から4人ほどのパネリストが招かれたこの時 も、韓国側の参加者が多く、時間がオーバーし足りなくなるほどの盛況ぶりだった。

歴史認識では反発の声が強いものの、一方で「経済再生には日本との関係改善が必要だ」と強く思う人々も多い。現実を認めざるを得ないのが、韓国の実情 なのだ。

■過剰な期待と落胆

日韓経済人会議での盛り上がりに見られるように、韓国では特に経済面での日本への期待感が強い。ただ、日韓関係が険悪な中、経済人会議が開かれたから といって、どこまで日韓の協力が進むのかは分からない。

韓国では、日本企業を相手取った「徴用工裁判」が進められている。そんな中で、どこの企業が韓国に進出、あるいは第三国での協力をどこまで進めるのだ ろうか。非常に興味深いところである。金もうけ(ビジネス)という現実的な世界で あるからには、ドライでビジネスライクな協力になるのであろう。

同時に韓国側を見ていて不安なことがある。韓国の期待はあらゆる面で常に高い。自分に都合よく解釈するせいか、期待値が高過ぎる。期待に沿わない結果 が出ると、その分、落胆も大きい。

安倍首相演説を批判しつつも「謝罪」を期待。米国が安倍首相に謝罪を促してくれることにも期待。しかし、期待は裏切られ(日米が裏切ったわけではない が)、韓国は大きく落胆した。似たような例は多い。

■尻をたたいたのは誰?

外交での孤立をめぐる“韓国政府バッシング”に話は戻るが、どう見ても自らを孤立に追い詰めたとしか見えない外交に向けて、韓国政府の尻をたたき続け たのは、韓国メディアではないのか。ところが、その点を自省するメディア報道は、 現在のところ確認できない。

「過去、歴史問題に執着し過ぎたあまり、韓国は孤立した」「日本非難を続ける韓国に疲れた米国は、日本により近づいた」などと、韓国政府の外交を批判 するメディアではあるが、つい最近まで、その同じメディアが歴史問題にこだわり、 安倍首相の訪韓と演説を批判し続けていたのだ。安倍演説阻止に向けた韓国政府への 命令的な主張も続出していた。

韓国メディアの2カ月以上にわたる主張は何だったのか。機会があれ ば、筆者に直接聞いてみようと思っている。

■それでも“謝罪”は要求

韓国では今も、米韓外相会談が尾を引いている。会談後にケリー米国務長官がソウルの在韓米軍基地で「北朝鮮の挑発に備えねばならない。高高度ミサイル防衛(THAAD)などについてわれわれが話す理由だ」と語ったことが波紋を広 げている。

韓国外務省では「米韓間でTHAAD配備についての議論はない」と急いで 修正作業に入った。しかし、THAAD配備を警戒する中国に配慮する韓国に対し、米国 のいらだちが聞かれる中でケリー発言は飛び出した。「韓米の温度差」(朝鮮日報社 説)などと、韓国メディアは穏やかではない。

米韓の問題はともかく、日本との歴史にこだわってばかりいる韓国に対し、ケリー長官は「後ろだけじゃない。前を見ろ」と暗に迫った。

それでも、尹外相はケリー氏との共同記者会見で、「明確な歴史認識を示し、関係が好転することを願う」と強調し、相変わらず安倍首相に「反省」を要 求。同時に、対日外交では歴史とそれ以外の問題(経済など)は分離してあたっていく 考えを示した。

自由な政策選択は結構なことだ。ただ、米国の困惑を考えているのか。経済で苦境に立とうが、それほどまでにも韓国は現在も日本に対するメンツにこだ わっている。

産経ニュース【ソウルから 倭人の眼】2015.5・28
                (採録:松本市 久保田 康文)

◆日独復活で世界の軍事均衡を

平井 修一


冨澤暉(ひかる)氏は元陸上幕僚長。昭和13(1938)年3月、東京生まれ。父は冨澤有為男(芥川賞作家)。妻の父は藤原岩市(戦中、マレーハリマオ工作・インド国民軍工作担当のF機関長、戦後、自衛隊調査学校長・第12師団長・第1師団長)。

岳父が藤原F機関長だなんて、なんと素晴らしいのだろう。それにしてもお懐かしゅう。

<F機関と藤原の最も大きな功績は、インド国民軍の創設である。当時タイに潜伏していた亡命インド人のグループと接触して、彼らを仲介役として藤原は英印軍兵士の懐柔を図った。

藤原は、降伏したインド人兵士をイギリスやオーストラリアの兵士たちから切り離して集め、通訳を通して彼等の民族心に訴える演説を行った。この演説はインド史の一つのトピックである。インド国民軍は最終的に5万人規模の大集団となった>(ウィキ)

情報宣伝・諜報工作の血が自衛隊にも脈々と受け継がれているのだろう。

冨澤氏の論考「自衛隊は強いのか弱いのか、の疑問にお答えしよう 毎年平均して25人の死者を出す過酷な訓練は何のためか」(JBプレス5/25)から。

<自衛隊員は入隊時に「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める」と宣誓している。

現実に、隊員たちは極めて厳しい訓練に参加しており、安全管理に徹しつつも残念ながら、自衛隊発足時から60年間に1500人(年平均25人)を超える訓練死者(殉職者)を出している。

この殉職者方は死ぬつもりはなかったはずだが、この訓練は極めて危険な厳しいものだということを承知のうえでこれに臨み、亡くなった方々である。

帝國陸海軍は当初訓練死者を戦死者と認めなかったが、第2次大戦後半以降、国内における訓練死者をも靖国神社に合祀するようになった。つまり、訓練殉職者は戦死者なのである。

ところで最近の安全保障法制の変更や新ガイドラインの改訂に関連して、これらの質問とは真逆に「これまで戦死者を出さなかった自衛隊から、1人でも犠牲者を出してはいけない」という意見がマスコミ上を賑わしている。

私ども自衛隊員であった者たちに言わせると、これまた誤解に満ちた困った意見である。

*1人の死者も出していない海外派遣

確かにこれまで自衛隊は、国内でもよくあるような事故死の例を除き、海外で1人の犠牲者をも出していない。その間、自衛隊が進出した地域の付近で、何人かの日本人ボランティア・ジャーナリスト・警察官・外交官方がお気の毒にも亡くなっている。

その海外派遣総員数と殉職者の比率を比較するならば、自衛隊がいかに訓練精到な組織であるかがお分かりかと思う。

これまでの自衛隊海外派遣において1人の戦死者も出さなかったことは、むろん幸運に恵まれたということもあるが、何よりも先に述べたような「平時からの覚悟とこれに基づく命がけの訓練」のお陰だということを知ってほしい。

だから自衛隊は、国民の総意を代表する最高指揮官たる内閣総理大臣の出動命令が出た時には「身の危険を顧みず」その命令に従うのである。

*国民が強ければ自衛隊も強くなる

「自衛隊は強いのか」という質問は、実は「国民は強いのか」と言い換えて、国民一人ひとりが自問自答すべきものなのではないか、私は、そう考えている。その意味で徴兵制の有無にかかわらず「国民の国防義務」を明記した多くの諸外国憲法は参考になると思う。

さて、そうしたことをようやくご理解いただいた方でも「我が国防衛のためならそれは仕方ないが、外地に出かけてまで、危険なことをする必要はないだろう」とさらに言われるかもしれない。

実は、これまでに日本に蔓延っていた「一国平和主義」とは、まさにこの考え方であり、極めて利己的なものである。

私どもは「世界の平和」があってはじめて「日本の平和」があることを認識し、「日本の平和」のためにもまず、「世界の平和」に貢献することを目指すべきではないだろうか。

日本と同様に第2次大戦のトラウマを持つドイツは1990年代以降各種の多国籍軍やPKO(平和維持安全活動)に参加しており、犠牲者の数もボスニアでの19人、コソボでの27人などと増大させている。

アフガンでの多国籍軍ISAFでは後方兵站部隊派遣に徹したにもかかわらず55人の戦死者を出して大きな国内問題となった。しかし、平和主義者として高名なアンゲラ・メルケル首相は極めて危険なアフリカ・マリのPKO部隊を、断固として撤退させないでいるということである。

「世界の平和」を守ることは、世界の各国が危険を承知の上で協力し合って初めてできるものなのである>(以上)

国会では中共の走狗が神学論争にうつつを抜かしているが、リアリズムで世界を見れば冨澤氏の主張するとおりである。

バランス・オブ・パワーで見れば、世界は今、日独復活による軍事均衡というリバランスが求められている。

ソ連崩壊、冷戦終結で緊張感が薄れたのだろう、西側諸国の軍事力は弱くなっているようだ。先日、有事の際にフランスが短時日で用意できる兵力は3万人しかないと報じられていたが、西側諸国は似たようなことなのかもしれない。これではロシアや中共、北の急襲に対して後手後手にならざるを得ない。

ブレット・スティーブンズ/WSJ外交問題コラムニスト・論説欄副編集長の論考「冷戦以後、西側諸国は弱体化している? 変わりゆく世界の軍事バランスを考える」(ダイヤモンドオンライン5/19)は示唆に富んでいた。以下全文転載。

<30年前と比較すると、世界の海をパトロールする米軍の艦艇は半減している。社会保障費の増大や、際限のないテロとの戦いに「撤退」ムードを強める米国と、同じように軍縮を続ける欧州。世界の軍事バランスを『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもある、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが分析する。

*弱体化する「西」側国家 NATO諸国の軍事の現状とは現在のアメリカ軍のプレゼンスは近年で最も縮小している。1964年、アメリカ海軍は859隻の艦艇で世界の海をパトロールしていた。それが1984年には557隻になり、現在は289隻しかない。

1984年と2014年の違いの大部分は、冷戦の終結によって説明できる。だが、いまはもはや冷戦終結後の穏やかな時代ではない。たとえオバマ政権がそうであるかのように振る舞っていても、現実は違う。

アメリカは世界的なテロの脅威と、さまざまな主要国からの新たな挑戦を突きつけられている。さらに悪いことに、世界におけるアメリカ軍のプレゼンスは、第二次世界大戦前の水準まで縮小している。

ペンタゴンはここ数十年、コストや規模や技術的な可能性を忘れて、質的な軍事的優位を確保することばかり考えてきた。このため海軍は、超ハイテクのシーウルフ級原子力潜水艦を29隻調達するはずが3隻しか調達できなかった。

空軍はF22戦闘機650機の調達を計画していたが187機で終わった。宇宙時代に対応するDDG1000ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は、32隻を調達する計画だったが、3隻建設しただけで終わった。多用途性を備えたF35戦闘機の開発の遅れ、開発コストの大幅な上昇、そして保守整備上の課題は、ほとんど伝説となっている。

全部合わせると、ペンタゴンは21世紀に入ってからの10年間で中止プロジェクトに460億ドルも費やした。最終的な配備数が少なすぎてその莫大な開発費用を正当化できないか、実戦に効果がないプログラムにも数十億ドルを費やした。

重要なのは、架空の戦争のために超高額・超最先端・超ハイテク兵器を少量確保することではない。より安価だが、応用範囲が広く、長期間使える兵器を大量に補充することだ。言い換えるとF35は減らして、改良したF15やF18を増やすのだ。ペンタゴンは軍事革命ではなく軍備を進化させる重要性を学び直す必要がある。

割れ窓理論に基づく警察活動を機能させるには、地元の協力が必要だ。NATO憲章は、加盟国にGDP比2%以上の軍事支出を義務づけている。

ところが2014年にこの最低ラインをクリアしたのは、アメリカ、イギリス、ギリシャ、エストニアの4ヵ国だけだった。フランスは1.9%、トルコは1.8%、ドイツは1.3%、ポーランドは1.8%、スペインは0.9%どまりだ。

冷戦終結時、ドイツは36万人の兵力と、装備の整った12師団を有していた。現在、ドイツのGDPは3兆4000億ドルに上るが、兵力は6万2000人、戦車は225両、攻撃ヘリコプターは40機しかない。

*冷戦下の緊張感を失った欧米と危険性を増す「境界線」

NATOの初代事務総長を務めたイギリスのヘイスティングス・イスメイ卿が、NATOの目的は「アメリカを取り込み、ロシアを締め出し、ドイツを押さえ込んでおくことだ」と言ったのはよく知られているが、もはやその目的は書き直す必要がある。「アメリカを取り込み、ロシアを締め出し、ドイツを復活させることだ」と。

ヨーロッパは経済が苦しく、これ以上は国防に予算は割けないという主張があるが、これは眉唾ものだ。イギリスはおそらく第二次世界大戦後最大の不況に見舞われた1979年に、GDPの4.9%相当を国防費に当てていた。同年、フランスもGDP比4%を国防に支出した。

当時でさえ、この予算は脅威の大きさに見合った規模ではなかったが、少なくともその取り組みは真剣だった。もう一度同じように真剣に取り組む必要がある。

アメリカがやるべきなのは、規範を定めてそれを世界で行使することだ。つまり基本的にどのような振る舞いが期待され、どのような行動には是正が求められるかを示すことだ。これは実効性が疑わしい国際「法」を宣言したり認めたりすることとは大きく異なる。またこれはアメリカがずっとやってきたことでもある。

アメリカは1983年にグレナダに侵攻して共産主義革命を転覆し、1989年にはパナマに侵攻して、アメリカへの麻薬輸出に関与していた体制を転覆した。

1991年の湾岸戦争ではクウェートの主権を回復し、1990年代には旧ユーゴスラビア紛争に介入してサラエボ包囲に終止符を打ち、クロアチアの対セルビア戦を支援し、コソボにおける民族浄化を終わらせた。

さらに台湾海峡に空母を派遣して中国の攻撃を阻止し、9.11テロ後にはアフガニスタンのタリバン政権を転覆した。2011年にはリビアの独裁者ムアマル・カダフィの打倒を支援した。

ソマリア内戦への介入は、破綻国家の再建ではなく飢饉の緩和に目的を絞り込んでいれば成功していただろう(そしていまごろ忘れられていたに違いない)。

ヘンリー・ナウ(ジョージ・ワシントン大学教授)は論文『アメリカの国益』で、アメリカの「地球イデオロギー」的な利益として、「自由が最も重要な意味を持つ場所、つまり既存の自由社会(と自由でない社会)の境界線に注目するべきだ」と論じている。

それはアジアの自由な国々と中国や北朝鮮との境界線であり、ヨーロッパの自由な国々とロシアとの境界線、そしてイスラエルとアラブ諸国の境界線だ。

「これらの境界にある国々が脅かされたら、アメリカも脅かされていることになる」と、ナウは主張する。「なぜなら独裁国家の妖怪が民主主義世界の中核に近づいてくると、世界は住みにくい場所になるからだ」

ナウが挙げた場所に加えて、コロンビアとベネズエラの境界線、インドとパキスタンの境界線、そしてイランと近隣諸国すべてとの境界線が、アメリカが注視するべき場所として挙げられるのではないか>(以上)

まことに「世界の平和」があってはじめて「日本の平和」がある。ダチョウのごとく日本列島に閉じこもって「窮状憲法」を拝んでいては中共の攻撃を防げない。ロシアやIS、北の暴挙を抑え込むのは軍事力だ。

わが軍は近隣に遠慮して兵器の攻撃力を弱めているが、これでは勝てない。一国平和主義、専守防衛という時代錯誤の妄想に基づく戦略/戦術を脱し、勝てる軍隊、抑止できる軍隊に強化し、平和のためには地球の裏側だろうと遠征しなければならない(ジェット機でわずか20時間のご近所、地球は狭くなっている!)。

世界は今、日本とドイツに、米国と連携して「世界の警察官になってくれ」と言っている。少なくともアジアは日米が主導して安定させなければ中共の海と化す。防衛費の増加、核ミサイルレンタルなども喫緊の課題だ。

中共は日本が準備不足のうちに戦端を開くはずだ。今日明日にも衝突するかもしれない。時は戦争前夜、軍民ともに常在戦場の覚悟が必要だ。第一列島線死守、中共包囲殲滅戦へ。靖国で会おう! ヂイヂの出番も用意してくれ。戦う権利は国民が等しく持っている自然権だ。参戦権を大いに行使したい。(2015/5/29)


      

◆温州投機集団の破滅処理が始まった

宮崎 正弘 


<平成27年(2015)5月29日(金曜日)弐 通算第4557号> 


 〜温州投機集団の破滅処理が始まった
          不良債権の激安セール、禿鷹ファンドに秋波〜

『上海日報』(2015年5月29日号)が報じている。

総額70億ドルの不良債権パケッジをファンドなど『投機筋』に売却した。中国の窮余の一策だが、金額は史上最高である。

中国の不良債権の累積は天文学的だ。

政府の政策により、銀行への圧力で審査基準が厳格化され、適当な理由を付けての融資が受けられない状態が続いている。金策つきた企業はつぎつぎと倒産している。

債務処理(債権処理機構のようなもの)専門の会社が中国には四社か五社あるが、なかでも大手がCINDA ASETT MANEGEMENT という会社である。株式を上場している大手。

同社が購入してきた1700件の不良債権のうち、三分の一が温洲関係である。

「温州集団」といえば悪名高く、世界に名をとどろかせた投機集団、中国全土の不動産投機では納まらず、豪、カナダからドバイへ向かって不動産に投資し、とくに後者のドバイバブル破裂で巨額の損出をだした。

日本でマンションを軒ごと購入する派手な投資を繰り広げる中国系投資集団は、たいがいが温州である。

CINDAは、中国の4大国有銀行から不動産担保などを付帯した不良債権を購入し、それらをまとめて次の投機グループに売却するというビジネス。

それも投機集団や新興成金ばかりか、アリババなどのネットオークションでも売却しはじめ、2400万元(邦貨換算2億8000万円)の成約があったという。

バブル崩壊の後遺症現象が顕著になってきた。

2015年05月29日

◆「米中戦争は不可避的になった」か

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015v)5月28日(木曜日)弐 通算第4555号 >

 〜中国『環球時報』は「米中戦争は不可避的になった」と報じたが
  大きく深刻な反応をしたのは英紙『テレグラフ』だった〜


英紙『テレグラフ』(5月27日)は、中国の人民日報系の大衆紙(つまりイエロー・ペーパー)『環球時報』が「南シナ海に偵察機を飛ばして介入する米軍の行動を止めなければ、中国と戦争になることは避けられない」とおどろおどろしいセンセーショナルな記事を掲げたことを報じた。

この人民日報系の新聞は大衆の欲情を直截に煽るメディアとして悪名高く、日本で言えば『日刊ゲンダイ』のようなもの。

『中国の軍拡はいまでは攻撃能力に突出しており、その南シナ海での軍事エスカレートをみていると、近日中に軍事衝突がおこりうる状況といえる。

26日に発表された中国の防衛白書(「国防白書」)に従えば、「接近阻止」という中国の軍事戦略の下に、境界線を越えた『防御』が正当化されており、日本のようにグレーゾーンだとか、集団的自衛権だとか、へのこ等と悠長な議論をしているのとわけが違う。

中国海軍は「沿岸防衛」という従来の基本路線を大きく後退させ、公海での防衛を堂々と謳っているため、「台湾、フィリピンを防衛する建前にある米軍は、行動を取らざるを得なくなるだろう。中国は米軍との衝突が起こりうる」と想定している

米軍の偵察機はスプラトリー諸島の2ケ所に中国が燈台をあらたに建設したと写真を公開したほか、ミスチーフ礁に加えて、フィアリークロス礁にもヘリポートの完成が確認された。

軍事専門家は、このファイアリークロスウ島に中国は3000メートルの滑走路を2017年には完成させるだろうと踏んでいる。

中国国防部の陽宇軍スポークスマンは、「これは中国国内にハイウェイ、駅舎、飛行場をつくるのと同じことであり、問題はない」と言ってのけた。

「このような誤認が中国をして次の行動をおこさせるリスクが高い」と欧米の専門家は口を揃える。
     

◆台湾の選挙とアジアの平和

Andy Chang



来年の1月16日に投票が行われる台湾の総統及び国会議員の選挙があと6カ月余となったが、国民党は有力候補を出せないで焦っている。民進党は蔡英文が立候補したが、民間では民進党の人気がイマイチといった状態である。

しかも57席で国会の過半数を制することが出来る議員選挙では民進党が40区しか有力候補を出せないで困っている。第三勢力と称する民間グループは民進党に協力すると称して民進党が困難な17区に代表を出そうとしたが民進党は協調に乗らない。国会で過半数を
取れなければたとえ蔡英文が当選してもレイムダックとなる。

アメリカは2012年の選挙でダグラス・パールを派遣して投票の二日前に国民党の馬英九支持を明らかにし、内政干渉した。米国の干渉で当選した馬英九は急激な中国接近をはじめた。

やがて中国の領土主張と尖閣諸島や南シナ海における勝手な領土主張と埋め立て多くの島々で基地の建設を始め、アメリカはようやくアジアピボットを唱えるようになった。

台湾は第一列島線の中央に位置している。中国が台湾を統一すればアジアの平和は失われる。台湾の将来はアジアの平和に大きな影響を持つ。中国が台湾接近を続けることは危険、つまり台湾の選挙はアジアの平和に大きな影響を及ぼす。

●民進党が不人気なわけ

国民党は有力候補を出せない。世論調査では国民党の有力候補と言われる朱立倫、王金平と呉敦義の3人で誰が出馬しても蔡英文に勝てないという。つまり国民党に勝ち味はないと言いう。この三人とは別に洪秀柱が出馬したが彼女の人気は低く、国民党は彼女の出馬
に迷惑がっている。

世論調査では蔡英文の当選確実というが、民間では蔡英文と民進党に冷たい。民進党に冷淡な理由は2012年に立候補した蔡英文が「中華民国=台湾、台湾=中華民国」と主張したこと、及び民進党の現状維持、中間路線に反対だからである。

人民は独立を望んでいる、民進党が独立を表明しないから冷淡なのである。民進党を信用しない傾向は海外の台湾人にもっとも顕著で、理由は蔡英文が台湾独立を主張しないからである。

だが蔡英文の懸念は台湾独立を表明したら中国の恫喝を恐れて米国が蔡英文に反対するかもしれないと言うことだ。アメリカは中国の恫喝を恐れる。中国は台湾が独立すれば武力侵攻も辞さないと言っている。

だから彼女は2012年の選挙で「台湾=中華民国」と発言してアメリカを慰撫したにも拘らずアメリカは馬英九を支持した。今回も独立を表明すればアメリカが反対するかもしれない。

だが台湾の政治事情は変わった。ヒマワリ学生運動と中間選挙で台湾人は中国やアメリカを恐れることなく独立願望を表明し、台湾は中国の一部ではないと主張するようになった。世間調査では台湾人の8割は独立を望んでいる。それなのに民進党が独立を表明せず、
民間勢力とも協調しないから不満なのだ。

この状況では蔡英文が当選しても国会で過半数を制することが出来ず、蔡英文はレイムダックになるかもしれない。つまり来年の選挙は総統選挙よりも国会議員の選挙に重点があると言ってもいい。

●アメリカの選挙干渉

今は民進党優勢と言ってもアメリカが蔡英文に反対すれば負ける。2012年の選挙では米国がダグラス・パールを派遣し、投票の2日前に馬英九支持を表明したため蔡英文が落選した。

台湾人はアメリカの支持がなくてはならないと知っているが、心の底ではアメリカの干渉に恨みを持っている。オバマ政権はイスラエルの選挙でもオバマの腹心をイスラエルに送り込んでナタニヤフに反対し、あからさまな干渉を行った。アメリカは台湾の選挙に干渉
するなと警告した人は多い。

だがアメリカの現状維持とは反対に現状は大いに変わった。アメリカは馬英九の中国接近に警戒心を持つようになった。遅まきながら中国の南シナ海における島々の軍事基地建設や、尖閣諸島の領海侵入に警戒心を持ち始めた。

中国はアメリカの衰退とオバマの無能を見越してアメリカの警告を無視した暴言を吐くようになり、米中関係は緊張している。

こんな状況の変化にアメリカが台湾の国民党候補を支持するとは思えないが、それでも民進党が独立主張に警戒心を抱いている。

蔡英文が現状維持を主張すればアメリカは干渉しないだろう。国務院の東アジア太平洋地区事務次官ダニエル・ラッセルは、6月初旬にアメリカを訪問する蔡英文を歓迎し、いろいろな問題について意見を交わしたいと述べた。つまりアメリカは中立路線を取る可能性が高まったが、条件は蔡英文が独立を主張しないことだろう。

また、ラッセル次官は中国の指導者層に対しても台湾の選挙で中立を守るように呼びかけたと言われる。アメリカの呼びかけがどれほどの効力を持つかはわからない。最近の中国は明らかにアメリカを軽視している言動が目立つ。

●中国の出方

中国が台湾の選挙に干渉するのは避けられない。中国で働いている台湾人は50万人以上と言う。前の選挙の時も中国は特別機をチャーター、または格安切符で台湾人を投票させた。もちろん国民党に投票することが条件、監視付きである。

だが去年11月の中間選挙で国民党が大敗したあと、中国の恫喝や国民党の宣伝は威力を失った感がある。どのような干渉を行うかはわからないが、中国の恫喝は逆効果となって国民党が惨敗する可能性は高い。

●総括

以上の状況を総括すれば:

(1)蔡英文は当選するが、国会で過半数を取ることの方が大切。

(2)アメリカは前回のような醜い干渉はしないだろう。

(3)中国の干渉は避けられないが、逆効果になるかもしれない。

台湾の選挙はアジアの平和に大きな影響を持つ。中国の国際法を無視した進出でアメリカも次々と違った方針を打ち出している。来年1月の台湾選挙と、来年11月のアメリカ選挙が大きな変化を齎すに違いない。

◆世界遺産「反日」猛攻の韓国

新井 好典



安倍晋三首相の米議会演説を妨害するため執拗(しつよう)な攻勢を仕掛けてきた韓国が、今度は「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の動きに対して猛烈な反対活動を行っている。

米議会演説では韓国の攻勢をはね返して「外交的勝利を得た」とも言われた安倍政権だが、「官民を挙げて行う韓国の反日ロビー活動力は侮れない」との指摘も根強い。今後も続くであろう韓国の執拗な反日攻勢をどうはね返していくのか?

「ここまで来ると、もはや“いちゃもん”のレベルだよな」

政府関係者の1人はあきれ顔で韓国の対応をこう嘆くが、それもそのはず、韓国の遺産登録反対活動が事実をはき違えて行われているためだ。

もの作り大国日本の原点を伝える産業革命遺産は8県23施設からなるものだが、すでに国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が登録を勧告。最終的に6月下旬からドイツで開かれる世界遺産委員会で判断される。

これに対して韓国側は、長崎県などの7施設で日本の朝鮮半島統治時代に朝鮮人が徴用されたなどと反発。朴槿恵大統領自ら構成国のコロンビアやペルーなどを歴訪して登録反対を訴えたほか、20日にはユネスコのボコバ事務局長と会談して登録に反対する考えを伝えた。さらに、登録を認めないよう求める書簡を構成国に送付するなど活動を活発化させている。

だが、イコモスが「西洋から非西洋国家に初めて産業化の伝播が成功したことを示す」などと評価の対象としたのは1853年から1910年までの期間で、韓国が反対の根拠としている時期や趣旨とは大きく異なっているのが実情だ。

このため日本政府内では「申請を取り下げることはもちろん、イコモスの勧告の内容を変更することは絶対にしない」(政府高官)との認識で一致。韓国からの要請を受けて22日に外務省内で3時間にわたって行われた日韓当局間協議でも、日本は韓国側に理解を求めるだけで、一切妥協はしなかった。

一方で、韓国による切り崩し工作を警戒して韓国以外の構成国に対する働きかけを強化。副大臣や政務官を派遣して直接協力を要請するほか、さまざまなルートを使って日本に対する支持を訴えているという。

まさに先の米議会演説に続く日韓外交ビッグマッチとも言えそうだが、これまで韓国の反日外交に数々の煮え湯を飲まされ続けてきた日本がなぜ米議会演説でいわゆる“外交的勝利”をあげ、また今回の世界遺産問題でも優位な戦いを展開できているのか。

その理由を政府関係者の1人は「日本としてはどんな話し合いや協議でも行うが、理不尽な要求や事実無根の反日プロパガンダには屈しないという意志を安倍政権が貫いているからだ」と解説。さらに、安倍政権が反日プロパガンダに対抗するために強化してきた対外広報戦略が効いてきたことを指摘する声もある。

例えば、政府の国際広報予算は平成25年度は8・5億円だったものが27年度には36億円まで大幅に拡充。外務省の対外発信のための予算も27年度は500億円増額された。

「日本をおとしめようとするキャンペーンが海外で展開されているのは事実だ。現実の日本とは全く違う姿をプロパガンダしている。しっかりとした広報を戦略的に考えていきたい」とする首相の強い意向によって実現したものだが、韓国政府内には「日本が莫大(ばくだい)な金を投じて対米ロビー活動を大展開している」などと警戒する声が出ているという。

とはいえ、これらの予算がすべて米国での韓国との外交戦に使われるわけではないし、安倍政権が誕生する2012年までの日韓の対米ロビー活動費を比べると、韓国は5年間で予算を倍増させ年間約4400万ドル(約52億8000万円)を投入。

年々額を減らして3000万ドルを割り込んだ日本に対し資金面で大きな差をつけてきた実績もある。また、米国に在住する日系人が約130万人なのに対し、韓国系は約170万人とマンパワーによる圧力の差は歴然だ。

それだけに、今後もしばらくは韓国による反日攻勢が続くことが予想されるが、日本としては国際社会に理解される対応をどこまでとり続けていけるかがカギとなりそうだ。
(産経新聞政治部編集委員)

産経ニュース【政治デスクノート】2015.5.28
                 (採録:松本市 久保田 康文

2015年05月28日

◆習 VS 反習は死闘レベルに

平井 修一



在香港弁護士法人キャスト代表弁護士・税理士の村尾龍雄氏の論考「NHKの偏向報道?」5/24から。

<23日に北京・人民大会堂に親中派の大物政治家である二階俊博自民党総務会長の3000人の訪中団が集う会合(日中友好交流大会)が開催され、キャスト北京の仲間が参加してきました。

その見聞録が今朝のパートナー宛のメールで報告されてきたので、抜粋してご紹介します。

《習近平主席が来るとは参加者には事前に知らされていなかったので、30分遅れで始まった会合にサプライズで習主席が登場したときは会場は大盛り上がりでした。

(帰宅後)NHKのニュースを見ると、「抗日戦争勝利の70周年」「歴史の歪曲を許さない」という話をした、というように報道されていましたが、実際は15分ほどのスピーチの中で2分ほど戦争の話をした流れの中では、

「私は福建省にいたときから、阿倍仲麻呂の時代からの交流の歴史を知っており」「戦争のことを忘れないのは平和のためです」「戦争では日本の拡張主義により中国は痛ましい被害を受けたが、日本国民も被害者であると思っています」

というコメントもあり、NHKのニュースを見て「偏向放送だなあ」と思いました。

実際、スピーチ終了後の拍手は、その後に話をされた二階総務会長よりも2倍以上の大きな拍手があり、しかも、会場全体が立ち上がっての拍手がしばらく鳴りやまず、習近平主席が立ち上がって手を挙げて制してようやく拍手が鳴りやむ、というような感じでした》

NHKの報道と比較すると、今朝の日経新聞1面の記事のほうが遥かにフェアな報道です。

私としては中共中央が大事にする二階総務会長の面子を立てるためであったにせよ、身の安全にも危険が及ぶと噂される物騒な情勢下で(日経新聞電子版・5月20日「誰も信じられない 国家主席を悩ます刺客の影」参照)、全体の90%を日中友好のお話をするために習主席が日中友好交流大会に参加してくれたことを素直に感謝してもいいのに、と思った次第です。

全体の10%でしかない戦争のお話を色眼鏡で報道すれば、その影響力から多くの日本国民はまた中国嫌いの方向へ誘導され、それが相互理解を遠ざけます。

影響力の強いマスコミの皆さんは中立を謳いながら、時に私のように日中友好関係の樹立に人生を懸けている人間からすると、どうも風見鶏的に近時の安倍政権のご意向とか国民の嫌中感情に過度に配慮する結果、偏向報道の謗りを免れない場面を多々生じているように思います。

(最初から中国に一貫して厳しい姿勢をとることを言明する?産経新聞はそれはそれで態度がブレないので、大変結構だと思いますが)

当たり前のお話ですが、日本と中国が現在決して良好とは言い難い状況にある原因が専ら中国にあることはあり得ず、日中双方にその責任があることは明らかです。

しかし、日本サイドとしては中国の言いなりになる必要はありませんけれども、歴史的に最もお世話になった国であることについての明確な認識に立脚して、関係是正をする未来を子供に残したいのか、ずっと現在のような緊張関係を引き摺る未来を残したいのかを、親として真剣に考えるべきときが来ていると感じています>(以上)

「日中友好関係の樹立に人生を懸けている」、うーん、あっぱれ。それにしても「身の安全にも危険が及ぶと噂される物騒な情勢下」とはかなりの非常事態だ。習近平は3月の全人代前から暗殺を極度に恐れるようになった印象である。

日本戦略研究フォール政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授/澁谷司氏の論考「習政権による反腐敗運動の行き詰まり」は、権力闘争が血で血を洗う段階になっており、取締りにあたる役人は「60人以上が失踪し、30人以上殺害された」らしい。まさしく死闘だ。以下、氏の論考。

<周知のように、現在、習近平主席(太子党出身)が同志の王岐山(同)と共に“恣意的に政敵を打倒”する「反腐敗運動」を展開している。

だが、習・王以外の政治局常務委員は、共青団出身の李克強首相を除けば、ほぼ江沢民系の上海閥に属する。当然、上海閥の抵抗は凄まじい。失脚すれば一巻の終わりだからである。

そのため反腐敗運動は既に行き詰まりの様相を呈している。特に江沢民元国家主席とその元側近である曾慶紅がスクラムを組んで、反腐敗運動に対し頑強に反抗しているという。

胡錦濤前国家主席の側近である令計劃の弟、令完成が、約2700点にのぼる中国国家機密を持ってアメリカへ逃走した。その上、令完成は党最高幹部(おそらく習や王等)のふしだらな“セックスビデオ”を隠匿していると見られる。

令完成が自らの身の安全(中国公安へ身柄を引き渡さない等)を条件に、米国側に国家機密と最高幹部の“セックスビデオ”を提出したとしよう。

するとオバマ政権は習政権対し、決定的な外交カード(切り札)を握る。“セックスビデオ”については、かりにYouTube等を使って、ネットで全世界に流されれば、習政権は1日として保たない。

また米国在住の郭文貴という中国大富豪は、「反腐敗運動」の先頭に立つ王岐山(北京五輪前には北京市長に就任)と自らの深い関係を暴露した。同時に郭は王岐山と「中国で最も危険な女性」と言われるジャーナリスト胡舒立女史(私生児がいる)の親密な関係も漏洩している。

さらに今年4月下旬、米ニューヨークタイムズ紙は、政商・王健林が太子党等、党最高幹部の子弟ら多数に利益供与していたことを報じた。これら一連の出来事は、「反腐敗運動」の行き詰まりと関係していると思われる。

一方、習政権は中国から米国へ逃走した汚職官僚100人以上のリストを作成し、オバマ政権に逮捕協力を依頼している(キツネ狩り)。けれども、その中の多くはカナダ等へ再逃亡して捕まる気配がない。無論、米中間には「犯罪者引き渡し条約」が締結されていないこともその理由の一つだろう。

ただし中国汚職官僚らが既に米国籍を取得していれば、彼らは米国人である。米国政府としても中国公安が逮捕に至るだけの確証がなければ、彼らを簡単に中国側へ引き渡すわけにはいかない。

実は習近平はキツネ狩りを徹底するため、今年7月、王岐山を訪米させる予定だった。だが最近になって王の訪米はキャンセルされたという。これ一つとっても、反腐敗運動が行き詰っている証だろう。習近平は「トラもハエも一緒に叩く」と意気込んで反腐敗運動を始めた。だが同運動をどこまで展開すれば終息するのだろうか。終わりが見えないのである。

当初、習近平は敵を上海閥に絞っていたが、次第にその範囲を共青団にまで拡大していった。李源潮・現国家副主席もそのターゲットの一人となっている。そのため、習と王の周りは太子党以外、敵だらけになってしまった。

今までに、腐敗・汚職を摘発する党中央紀律検査委員会の検察官は少なくても60人以上が失踪し、30人以上殺害されたという。また、そのトップである王は何度も暗殺の危機に瀕している。

習・王(の太子党)連合は、このままでは進退きわまると思ったのか、(胡錦濤時代末期と同じように)共青団と再び連携して、主敵を上海閥に絞り込んだ節がある。ただ前述の如く、政治局常務委員は上海閥が過半数を占める。

また、習・王連合が事実上の軍トップ、上海閥の徐才厚(今年3月病院で死亡)と郭伯雄を逮捕しても、その部下の大半は彼ら2人の息がかかった軍人らである。2人の部下達は、反腐敗運動に対して陰に陽に抵抗するだ
ろう。

そもそも、太子党自体が上海閥と並んで、腐敗・汚職の双璧だった。一方、クリーンだと思われていた共青団さえも腐敗・汚職に染まっている。その好例が、2012年3月に起きた「黒いフェラーリ事件」だろう。令計劃の息子、令谷が北京でフェラーリに乗っていて事故を起こし死亡したのである。この事件を令計劃はもみ消そうとして、失脚した。

つまり、中国社会全体がトップから庶民に至るまで腐敗・汚職まみれである。自ら腐敗している習や王が今さら反腐敗運動を展開しても、その効果は限定的にならざるを得ない。

結局、習が政敵を叩けば叩くほど、回りまわって自分の身に跳ね返って来る。元々が恣意的な政敵打倒のための反腐敗運動なので、当然の帰結だろう。中国では、未だ共産党内で生き残りを賭けた戦いが密かに行われている>(以上)

魑魅魍魎の世界。郭文貴とは何者か。何清漣女史によると――

<この30年来、中国の商人が政治経済の舞台上で演じた巨富蓄財物語の突拍子もない話の数々たるや、いかなる小説家の想像をも絶するもので、それも数限りなく揚子江の波のようにあとからあとからすごくなってきました。

それでもこうした商人たちがどこまで到達できるか、持ちこたえられるかというのは中国的特色のビジネス界での遊泳能力のほかに、そのバックにどれほどの有力者がいるかどうかにかかっています。 

四川の劉漢(周永康の腹心、2015年2月9日死刑執行)、山東の郭文貴はどちらも「政商同盟」の道を歩みましたが、後者は海外に逃れたばかりか、まだおおっぴらに世間に顔を出して“抗議”しています。

これは当然、そのバックの庇護があったからです。海外のスパイ工作を長年担当してきた国家安全部副部長の馬建の神秘的な権力は確かに「政法界の皇帝」といわれた周永康よりさらにスゴイものがありました>(以上)

まったく三国志や水滸伝の世界だ。

習は熟睡できないのか、このところ疲労感がにじみ出ている。不眠症ではないか。顔色も優れず、白髪も目立ってきた。覇気が感じられない。いろいろ写真を見比べたが、地方視察や外国訪問時には元気そうだ。刺客の恐れがないためかもしれない。

一方、北京にいる時はどうも冴えない。北京は刺客が溢れており、全人代では習のカップに女性がお湯を入れるところを側近が監視していた。毒を盛られることを警戒したのだ。

5月25日には浙江省舟山市を視察したが、ここは東シナ海に浮かぶ1392の大小様々な島からなる舟山群島で構成されている。習は2000年に福建省長になるが、その北が浙江省で、習は2002年11月、49歳で浙江省党委書記に就任している。つまり故郷のようなもの。心身ともにリラックスできるのだろう。舟山群島の南には尖閣諸島がある。強奪の構想でも練ったか。
(2015/5/26)

◆米海軍はリムパック参加賛成

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015)5月27日(水曜日 通算第4553号 >

 〜米国議会の中国強硬派は『リムパックに中国を呼ぶな』と主張している  米海軍はリムパック参加賛成、ホワイトハウスは曖昧、対中外交の腰、定まらず〜

すがに『中国を制裁せよ』という声は米国議会にまだ聞かれないが、懲罰論は広く唱えられている。急先鋒はジョン・マケイン上院議員だ。

マケインは共和党有力議員で、先の大統領選挙では共和党候補として善戦した。かつてベトナム戦争では空軍パイロット、長くベトナムで捕虜生活を送ったが、いまではベトナムに足繁く通うほどにベトナム贔屓となった。

ちなみにジョン・ケリー国務長官もベトナム戦争に参加し、勲章をもらっているが、途中からベトナム反戦運動の闘士になった。

そのケリーとて、ベトナム訪問は数回に及ぶのだから歴史の皮肉である。すべては中国海軍の南シナ海における傍若無人の悪行に立腹したからだ。

米国海軍は空母をベトナムに寄港し、精神的にもベトナム軍を鼓舞している。また同時に米国海軍主体の軍事演習『リムパック』に中国を呼ぶことに反対していない。

次回のリムパックは2016年夏、ハワイ沖で展開され、いまのところ、中国をはじめ21ヶ国が参加する。中国は2014年に初参加、ただし作戦海域にスパイ艦船も派遣したので米国が怒った経緯がある。

南シナ海の諸群島、岩礁にセメントを流し込んで埋立て、滑走路、波止場、軍事設備、海水淡化装置、兵舎を片っ端から建てた。いまやその面積は600エーカーに及ぶ、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、インドネシア、そしてベトナムが強く抗議している。

中国は米国からのクレームに対しても、「当該海域は中国領であり、よけいなことに介入するな」とふんぞり返った。

ハリー・ハリス太平洋艦隊司令官は「砂漠の万里の長城」と比喩したが、偵察機を飛ばすと中国軍が接近してくる状態となっている。まもなく当該海域をふくむ空中に「防空識別圏」を設営するだろうと米国ペンタゴンは見ている。

米国政府部内では中国問題で依然として意見の不一致があり、軍事交流を深化させてすこしでも中国の脅威を減らせというグループから、もはや中国とは距離をおくべきと主張するグループもある。

ホワイトハウスの態度は曖昧のママである。
 
中国海軍との交流を増やすことに賛成なのは海軍作戦本部主任のジョナサン・グリナット提督で、かれは呉勝利(中国党軍事委員会委員。大将)と密に連絡をとってきた。

しかしペンタゴンのトップに立ったカーター国防長官は「米空母の中国寄港は取りやめる」としており、次回リムパックには中国を招待しない方向に傾いているという

米軍関係者のあいだにも、中国の軍事力評価に於いて千差万別があるものの、議会の方向性、ペンタゴントップの考え方は、中国軍との交流を減らすことが望ましいとする意見が多数を占めるようになった。 

◆印中関係に見る本当の外交の姿

櫻井よし子


眼前で進行する世界の外交は、諸国が国益を懸けて激しく戦う実相を見せてくれる。ウクライナからクリミア半島を奪う際、核兵器使用の準備を整えていたとプーチン大統領は語った。
 
同発言は、「武器なき戦い」といわれる外交の背景には、常に軍事力が控えていることを、まるで外交の教科書のように見せてくれた。軍事力が「控えの間」から表に出てくれば、それを私たちは戦争と呼ぶがその手前の外交には、必ずいつも軍事力が付いて回る、外交と軍事は表裏一体ということだ。
 
ロシアほど、あからさまでなくともインドと中国の外交関係も、「両国はまさに戦っている」との実感を抱かせる。
 
インドのモディ首相が5月14日から16日まで中国を訪れる。訪問を前に、インド政府は長年の懸案であるインド北部のジャンム・カシミール州の領有権に関し中国政府に厳しい主張をぶつけている。

インドが領有権を主張し、パキスタンが実効支配を続ける同州に関して、驚くことに中国も領有権を主張しているのだ。のみならず、恒常的に軍を送り込んできた。

中国は、インド北東部の水源の州、アルナチャルプラデシュの領有権も主張している。いずれのケースも、明らかに中国の主張の方が不当に思える。
 
インドを代表する戦略研究家、インド政策研究センター教授のブラーマ・チェラニー氏はこう語る。

「印中首脳会談の前には必ず不吉なことが起きます。中国が対印強硬姿勢を殊更に強めるからです。インドも中国に対して、同じように強く主張しなければ押し切られてしまいます」
 
私は2011年12月のインドにおける印中首脳会談を取材したが、その直前、中国はアルナチャルプラデシュ州に通ずる巨大なトンネルを完成させ、大々的に発表した。トンネルの完成で、中国軍はいつでもアルナチャルプラデシュ州に侵入できるインフラを得た。外交の背景に、強力な軍事力の存在を印象付ける戦術である。
 
今回、インドが強烈に抗議しているのは、前述のインドが自国領だと主張するカシミール地方をパキスタンが実効支配し、そのパキスタンへの援助をシルクロード経済圏構築の一環として、中国が大々的に行うとしている点だ。
 
中国のシルクロード経済圏は中国中央テレビの発表によると、福建省から中央アジアを経てロシア経由で欧州に至るルート、中央アジアまで来た所で南下し、パキスタン経由で地中海に延びるルート、さらに福建省から南に下りてベトナム、パキスタンの要衡を押さえインド洋に出てアフリカ経由で欧州に至るルート、同じく福建省から南シナ海に出て、マラッカ海峡経由でインド洋に出るルート、さらにそのルートは南太平洋までをカバーする形になっているが、これらのルートで網羅される地域・海域を指す。
 
右の地点を地図上に書き込むと、中国が欧州とロシアを含むユーラシア大陸全域、東南アジアおよび南太平洋を含めた西太平洋とインド洋のほぼ全域を、シルクロード経済圏として影響下に置く意図が明らかになる。
 
インドは中国の試みを、直接の脅威と受け止め、危機感を強めているのだ。チェラニー氏の指摘である。

「インドの最大の脅威は中国です。何度も煮え湯を飲まされました。彼らは国境沿いに5万を超える軍を常駐させ、パキスタンに肩入れすることでわれわれに圧力をかけ続けています。シルクロード基金からパキスタンに投資される16億5000万ドル(1980億円)は、インド敵対視の色彩の濃い投資です」
 
インドが中国に強く要求し、中国も国境地帯の軍を引かない中で、両国は一見和やかな外交交渉をする。強い力を基礎にして、国家の意思をあらゆる形で表現する。これが本当の外交の姿であることを学びたい。

『週刊ダイヤモンド』 2015年5月23日号 新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1804 
                 (採録:松本市 久保田 康文)