2015年05月09日

◆私の「身辺雑記」(218)

平井 修一



■5月6日(水)、朝は室温25.5度、今季最高、快晴、フル散歩。野バラ、野ゲシ、ハルシオン(春紫苑)満開、サクランボは真っ赤かだが、手が届かない。畑ではカブを収穫中。

カブのぬか漬けは旨いが、ぬか床は夏場は毎日手入れが必要で、一時期凝ったが3年前あたりで諦めた。今は時々浅漬けを作るだけ。カミサンは頑張って毎年梅干をつくる。最高級ブランドの「南高梅」。もうすぐその時期になる。

ブランドを創るのは大変な努力がいる。わが街には「多摩川梨」(明治25/1892年〜)、「多摩川桃」(大正5/1916年〜)があるが、桃は1960年代に消えた。

父の実家=本家も桃園を持っていて、朝どりの桃を大八車に載せて東京の市場に運んだという話を父からよく聞いたものだ。坂は大層きつかったという(それをヘルプする商売もあった)。小生は4歳の時にわが街に引っ越してきたが、桃園の中に新築の家があったのには驚いた。

桃栽培が途絶えたのは、桃はデリケートで、ちょっとしたキズでも売り物にならなくなるからだ。やさしく紙にくるんで、そーっと専用の6個用木箱に入れるが、「怒りの葡萄」にも加州での桃の収穫の模様が描かれており、農場主が出稼ぎ人に「そんな乱暴な扱いをしたら売り物にならん」と怒鳴っていたっけ。

台風で落ちた桃は誰も見向きもしないから、子供たちは拾って食ったが、そのうち飽きてしまう。1日1個、1週間で7個食ったらもううんざりする。

梨は結構丈夫だから今でも梨園は残っているが、ほとんどはマンションになった。億のキャッシュが手に入る時代に百姓なんてやってられないというわけだ。川崎(府中)街道沿いでは梨の即売所が結構あるが、金持ち地主の「趣味の園芸」で梨を栽培しているのだろう。

産地なのに即売所は市場でのセリを通していないからスーパーよりかなり高く、地元の人たちは「なんなんだ」と、1回買ってオシマイ。通りすがりの人が買うのだ。

品種は長十郎が多い。全国区ブランドの「新高」という贈答用の巨大で高額な梨を栽培しているお百姓がいるのだが、金持ち地主だからとてもプライドが高く、「売ってやる」という感じ。2回ほど買いに行って終わりにした。

昔は多摩川は清流で、多摩丘陵の北側では清流を導いて田んぼで氷を造り、氷室に保管して夏に東京で売るという「多摩川氷」商売が大いに流行ったという。「多摩川鮎」「多摩川うなぎ」も有名で、小生が子供の頃は料亭や旅館が結構あったが、1960年頃から水質が悪化し、鮎、うなぎが獲れなくなり、河畔の料亭などはマンションやラブホになっていった。

今は鮎は戻ってきたが、釣り人は集まっても、川風に吹かれながら鮎の塩焼き、うなぎの蒲焼を食べる行楽客はいない。料亭がないのだからどうしようもない。

清酒「多摩正宗」「多摩ほまれ」は地方区ブランドだが、醸造元の川崎酒造は1998年に廃業してしまった。結構気に入っていた「多摩川鮎煎餅」も絶滅。

今近隣に自慢できるわが街の名物は「ドラえもんミュージアム」「日本民家園」「桜並木」「岡本太郎美術館」あたりか。太郎は「バクハツ」が売りだから、名物というよりも異物か。

太郎の実の父親は一平ではなく、かの子の愛人(一平公認)だという説がある。愛人は一平と外貌がそっくりだそうだ。太郎は薄々「もしかしたら」と悩んだようだが、「俺は大好きな一平の子だ」と努めて思うようにしていたらしい。まったく岡本家は「バクハツ」的だ。ロシア革命を背景とした容共左派的な大正デモクラシーが不孝、不倫、不幸をばらまいた。

カブから大正デモクラシーへ。随筆はバクハツだ!

女児の2歳誕生日祝い。7人で握り寿司など。要領がよくなってすごいスピードで握れるようになった。いつもは1.5合で足りるが、4合完食、大好評。料理もバクハツだ!

■5月7日(木)、朝は室温22度、薄曇り、半ズボンでフル散歩。

「多摩川に出るにはどう行けばいいでしょうか」

品のいいオッサンに尋ねられた。小生は永年「怪しい奴、危ない感じ」でやってきたが、どうもケンがとれてきたようで、このところよく声をかけられる。近くのガレージに鏡があったので見たら、「人のよさそうなオッサン」が映っていた。ぜんぜん警戒心がない感じ。おっとりしている。いいことなのかどうか。

中央日報5/5「ワシントンに桜が咲く」は振られた人の嫋嫋たる想いを伝えて、ちょっとセンチメンタル。昔の私小説みたいだった。

<桜の花が散る風景は夢幻のようだ。生と死の境界が曇る。カミカゼは桜の花が刻まれた零戦に乗って死と衝突した。

4月末、安倍首相が戦後初めて米上下院合同議会で演説をした日にも、10万本の桜の花が一斉に降り、ワシントンDCを覆ったはずだ。

そのためか起立拍手を10回も受けた。米議会があれほど薄情に思えることはなかった。「不動の軍事同盟」を担保に日本右翼の念願だった「平和憲法改正」に目をつぶったオバマ大統領もそうだった。

世界最強の軍事同盟になったというのに感激しないはずはない。さらに「軍隊のない国」の70年の歳月に終止符を打ったのだから。安倍首相は感慨に浸り、賛辞を惜しまなかった。

米国は日本民主主義の恩師であり、西側世界の一員になったことは正しい選択だったと語った。原爆被爆国であり敗戦国の心情を十分に理解するというように、戦勝国の米国は日本を抱擁した。

真珠湾空襲、レイテ湾海戦は遠のき、あたかも両国が仲良く太平洋を分けていた1919年以前に戻ったようだ・・・>

未練と無念、恨みと嘆き、悔しさと悲しさ・・・クネたちの想いを伝える文章だ。「クネしゃん、前を向いて歩こう」。バックミラーを見て運転していたら事故るぜ。

青瓦台引き篭り、対人関係を上手く結べない不通の人、南北統一は大吉だという占い師のような妄想、周辺は反日=バカばかり、誰も諫言しない。まとも=親日は去っていくから、首相のなり手がない。

明治の初め、朝鮮に行った学者曰く、「こ、こ、これは・・・古代だ、古代がある」。当時のレポートを読むと、糞尿まみれの野生動物のような世界だった(あまりにものすさまじさに転載をためらうほど)。日韓合邦以前はそんな状態が長く続いていたのだろう。

戦後、半島から日本が去ると南北戦争。日本人の血税で造った国土を破壊した。休戦(休戦協定は1953年7月27日に署名)したものの60年たっても講和・終戦にはならず、民度も低いままに南北とも異常な国になった。

自由、民主、人権、法治、理性、知性がないこと、さらに独裁、佞臣、反日という点で南北はそっくりだ。基本的に親中だし、国民が日本に多く寄生しているのも同じ。そっくりさん。

異常な2か国が今更統一したところでまともな国になるはずもない。南北共通の敵である日本にとってメリットは何もない。むしろ飢えた難民が押し寄せるというデメリットの方が多いだろう。

北に圧力、南はシカト。これで行くしかないな。

■5月8日(金)、朝は室温22度、快晴、フル散歩。今日も知らないオッサンに挨拶された。角が取れてきたのか、これは単なる老化なのか・・・

在香港の弁護士/税理士、村尾龍雄氏の論考「騎虎難下、攀龍忽堕天」(5/7)から。

<唐代の詩人李白の「留别廣陵諸公」にある「騎虎難下、攀龍忽堕天」(虎に乗れば降り難く、龍に登れば忽ち天から堕ちる)の言葉は、その出典が李白のこの作品にあることを知らぬ者でも、ビジネスに関わる中国人であれば、およそ誰しもが知るものです。

それはこの言葉の今日的意義が、周永康など失脚した大物政治家という「虎」や「龍」の背に一旦登れば、降りることは到底叶わないことを意味するものとして著名性を獲得するに至っているからです。

これに関して、先般香港富豪と会話したところが面白かったので、以下記します。

富豪:あなたは「騎虎難下、攀龍勿堕天」という言葉を知っていますか?

村尾:もちろんです。著名な言葉ですからね。要するに、大物政治家に貢いだりする関係になれば、一蓮托生となり、そこから勝手に離れることはできない、という意味ですよね?

富豪:そのとおり。ではこの言葉の恐ろしさを知る者が余りに増えたために、有力な国有企業の総経理(社長)が見つからずに中央が困っているというケースが出てきていることを知っていますか?

村尾:いや、それは全然存じ上げません。

富豪:では解説してあげましょう。最近、習近平政権が倹約令と並行して反腐敗政策を徹底的に実施しているのはご存知ですね?

村尾:はい。王岐山を頂点とする中国共産党規律検査委員会の徹底的かつ苛烈な調査振りは日本でもしばしば報道されているほどです。

富豪:そこには多くの国有企業のトップも含まれているでしょう?

村尾:そうですね。日本の著名上場企業の合弁会社でも、合弁当事者の国有企業から任命派遣された董事長(総支配人)が突如身柄拘束をされて大慌てという図式は複数案件で見られましたね。

富豪:まさに彼らは李白の言葉を体験したのです。一旦「虎」や「龍」の背に乗れば、後は別の「虎」である習近平が反腐敗政策を徹底し、「これはやばい!」と思っても、その背から降りることはできなかったわけです。

村尾:なるほど。しかし、反腐敗政策がこれほど徹底しているならば、今後は国有企業の総経理になっても、不合理な要求をする「虎」や「龍」は絶滅種か少なくとも絶滅危惧種になるのではないのですか?

富豪:それは甘い。あなたも性善説が働く日本人の典型ですね。性悪説を本質とする中国人は習近平という巨大な「親虎」の庇護を受けた一部の「子虎」たちは、時期が来ればまた過去と同様の不合理な要求(をします)。

例えば「お前を国有企業の総経理にしてやったのだから、わしの娘が100%株式保有しているヨーロッパの会社(その価値を10とする)を100とか1000で買え」というようなことを平気で突きつけてくるはずだ、と思っているのです。

村尾:また日本人丸出しの性善説に立脚すると揶揄をされるかもしれませんが、習近平はあれほど反腐敗の旗を明確に掲げているのに、そんなことはあり得るのでしょうか?

富豪:もちろんあり得ると私は思います。例えばかつて毛主席は大躍進運動の失敗で多数の人民を餓死させたと言われますが、全国各地で食糧難が蔓延していることなど当の毛主席はまったくご存知なかったのです。全国どこへ視察に出掛けても、あなた方の国でかつてあった「大本営報告」しか上がらなかったのですから。

だから、習近平一人が清廉潔白な政治を目指しても、灯台下暗しで、親虎の庇護を受けた子虎たちが親虎の知らないところで悪さを始めるという図式は中国人であれば誰しもが予想するところなのです。

村尾:なるほど。なので失脚した国有企業の総経理の後釜になってくれと言われても、躊躇する人々が多くなり、結果として総経理の担い手が不足するということになるわけですね?

富豪:そのとおりです。そもそも中央直轄の国有企業の総経理の就任オファーが来るようなレベルの人々は、ストックオプションとしての上場株式をたくさんもらっているので、10億人民元(約200億円)単位の資産は持てなくても、1億人民元(約20億円)単位の資産は形成できているのですから。

一生涯で使い切れないほどの資産を持てても、その後に「虎」や「龍」と共に一族郎党皆が地獄に堕ちるというリスクを背負うことには消極的な人々が増えているわけです。

習近平政権は短期間でこの種の悲劇を余りにもたくさん作り過ぎましたから、多くの国有企業幹部は「明日は我が身」と身構える結果を創出してしまったわけです。

村尾:うーむ、深いですね。でも、習近平の反腐敗政策は、失脚した趙紫陽が述べたように「民主主義的な国民による監視システムを中国でも確立しない限り汚職は決してなくなることはない」というテーゼに真っ向から挑むものです。

ですから、その政策を真の意味で成功裏に推移させるためにも、あなたが教えてくれた国有企業幹部の懸念について先回りした対策を講じることができればいいですね。

富豪:日本人的な美しい考え方ですが、中国人の本質を知る私はいかなる対策をとるとしても、手口が一層狡猾になるだけで、決して私の予想がはずれることはないと思っています。でも果たして今後どうなるか、習近平が為政者である2022年までの推移を一緒に見守りましょう>(以上)

上に政策あれば下に対策あり、か。蓋し名言だ。

習近平はやることなすことすべて裏目に出る。国有企業改革は優秀な経営者抜きにはできないが、優秀なら当然「先富」であり表裏で蓄財をしてい
る。叩けばみな埃が出る。みな拝金主義で、清貧の思想なんてないのだか
ら当然だ。結局人材不足で「毒(メス、悪)を使って毒(企業の腫瘍)を
除く」という手が使えなくなった。

イエスマンしか習の周りにはいないということ。現場の幹部も委縮してい
る。改革には現状分析(診断)が正確になされなくてはならないが、まと
もな数字が上がってくるわけがない。正直に数字を上げたらお縄頂戴にな
るからだ。数字は全部嘘だらけ。

サーチナがその辺の事情を紹介している。

<博客中国のアカウント名「最壊的好人」さんは、冗長かつ新しい情報のない三中全会コミュニケは「言葉の腐敗」の産物であり、「言葉の腐敗」は典型的な中国の特色だと主張した。

最壊的好人の言う「言葉の腐敗」とは、「ウソ」を並べることだ。主張によると、1950年代後半の大躍進政策が「ウソ」のピークだったが、改革開放から30年が経過した現在再び「ウソ」の最盛期を迎えたという。

政治のガンたる「ウソ」は毛沢東、トウ小平から江沢民、胡錦濤へと受け継がれ、拡散され、習近平氏も党の風紀を変えると意気込みながらも結局は「ウソ」から離れたら何も文章が書けなかったとした。

最壊的好人さんは今の中国を「人が人をだまし合う『全民ウソつき時代』」とさえ評した。もちろん中国には正直な人もたくさんいるはずだが、そのような評価を下したくなる背景には、改善されない社会問題や、後を絶たない統計数値のインチキなどがあるのだろう>(以上)

嘘をつかなければ生きていけない中国に「正直な人」がいるとすれば、それは間違いなく汚職の機会のない貧困層だ。しかし「習主席万歳!」、クチパク暗愚の彼らは経営ノウハウをもっているはずもない。結局、改革はその道のプロ、つまりワルの越後屋に委ねるしかないのだが、いつ叩かれるか戦々恐々で誰も総経理になりたがらない。

結局、中共経済(&政治)の無理、無駄、無策、無謀、無茶、無法は改革されることはなく、崩壊へ向かうだけだ。日系企業の諸君は、まずは村尾龍雄氏に相談し、逃げ出す準備をしっかり整え、距離をもって付き合うべし。(2015/5/8)

◆習近平、カザフスタン電撃訪問

宮崎 正弘 


<平成27年(2015)5月8日(金曜日通算第4533号 > 

〜 習近平、カザフスタンを電撃
ロシアは中国の中央アジア接近に不快感と警戒〜

7日、習近平はモスクワ訪問の前座であるかのように、突如、予定になかったカザフスタンを訪問し、ナゼルバエフ大統領と「一帯一路」の枢要やハブともなる物流の問題、シルクロード構想の具体化、AIIB参加を真っ先に表明したカザフスタンとの友誼などを話し合った。

習近平は5月9日にモスクワで開催される「軍事パレード」に臨席するが、8日にプーチン大統領と会見し、軍事パレードのあと、ベラルーシへ飛んでルカシェンコ大統領との会談も決まっている。

カザフスタンは、ナゼルカーンと渾名されるナゼルバエフ大統領が二十七年にわたる独裁、その一族が利権を独占し、民衆の怨嗟の的となっているため、このナゼル王朝が崩壊すると、エジプトのムバラク体制、リビアのカダフィ体制、イラクのサダム体制の崩壊同様に大混乱に陥ることは必至である。

ところがカザフスタンは石油埋蔵も巨大、ウラン埋蔵は世界第二位、レアメタルの豊富に算出する資源大国であり、中国の隣国。トルクメニスタンからのガスパイプラインも、このカザフスタンを通過している。

中国にとってカザフスタンは地政学的にも重要な位置づけにある。

天山山脈の水資源をめぐって中国と揉め続けている一方で、ロシアとは、経済的絆が強かった者の、原油暴落以後のロシア経済の失速の影響を受けて、カザフスタン経済は良好とは言えなくなった。

したがってナゼルバエフ大統領にとっては、中国の「シルクロード構造」に真っ先に飛び乗ることは、目先にぶら下げられたニンジンの如くでもあり、一方、プーチンにとっては、横から外交的成果を習近平に奪われることになる。

モスクワは不快感と警戒を強める。

5月9日、赤の広場で、プーチンと習近平がどのような表情で並ぶのか、見物である。「中ロ蜜月」などというのは所詮、狐と狸の化かし合いなのだから。

2015年05月08日

◆世界史に刻まれる「昭和」の時代

平川 祐弘



大正デモクラシーに引き続く昭和は激動期であった。昭和をどう総括すべきか。近代史を論ずるには複眼が求められる。いま角度をひろげ世界史の中で昭和天皇とヴィクトリア女王を比べてみたい。

 ≪注目すべき二重のドラマ≫

昭和天皇の時代は1926年から足かけ64年続いた。これはヴィクトリア女王の時代が1837年から65年続いたのに匹敵する。女王の時代、英国は植民地をひろげ、世界最初の近代産業国家となり、大英帝国は最盛期を迎えた。それに対し、昭和の日本は惨敗を喫した。だが気がつくと英国を抜く産業大国となっていた。

ヴィクトリア女王は1819年に生まれた。英国がシンガポールを領有した年である。崩御の1901年、ロンドンに居合わせた夏目漱石は1月22日の日記に書いた。「 The Queen is sinking. ほとゝぎす届く 子規尚生きてあり」。陛下の重態が「女王は沈みつつあり」と新聞に報ぜられたとき、大英帝国の人には Queen’s Navy の旗艦沈没の連想が浮かんだことだろう。

その夜、女王は亡くなり、2月2日、白に赤でもって覆われた柩(ひつぎ)がハイドパークを通った。漱石は下宿屋の親爺(おやじ)に肩車してもらって葬列を見た。

ヴィクトリア女王が崩御した年は明治34年だが、その4月29日、昭和天皇は生まれた。昭和には二重のドラマがあった。軍国日本の壊滅と経済大国の蘇生(そせい)である。

注目すべきは、昭和天皇が降伏を余儀なくされながら、その後も君主の地位にとどまり、国民の敬愛を受け、廃虚の復興と繁栄を目のあたりにしたことだろう。

天皇が地位を保全したについて、歴史家はマッカーサー最高司令官が占領を円滑に行うために天皇の権威を利用したからと説明するが、ではなぜ昭和天皇は敗戦後も国民に圧倒的に支持されたのか。それは、天皇の聖断による終戦の決定が玉音放送によって伝えられたからである。

 ≪和平の回復と植民地解放≫

昭和11年、天皇は斎藤実前首相、岡田啓介首相、鈴木貫太郎侍従長らが襲われた二・二六事件の際、激怒し、反軍部ファシズムの態度を内外に示した。

日本は昭和20年、その鈴木首相らの努力によって和平を回復する。その際、日本の終戦意図を察知した米国務省の次官は、かつて二・二六の前夜に米国大使館へ斎藤や鈴木を招いた知日派のグルー大使であった。クーデターの際と終戦の際、日米双方には昭和天皇の意を解する人がそろっていた。それだからこそ平和は回復されたのである。

敗戦国が不死鳥のように蘇(よみがえ)り、経済大国となるに及んで、日本たたきは再開され、昭和天皇に対する戦争責任追及も蒸し返された。しかしヴィクトリア女王に対し、阿片戦争の戦争責任や香港植民地化の責任追及は行われない。立憲君主に法的責任はないからだ。

また日本の植民地支配を問題とするなら、英仏蘭米の植民地支配こそ問題とせねばならない。渡米して英国軍と戦ったフランス人ラファイエットが米国独立を助けた英雄と評価されるなら、シンガポールを落とし、南方から西洋勢力を駆逐し、昭和18年、大東亜会議を開き、アジア各国に独立を約束した日本に植民地解放の功績が全くなかったとはいえまい。

 ≪ヴィクトリア女王時代に匹敵≫

国家には栄枯盛衰がある。今日、世界第一の国はどこかと聞かれるなら、米国と答えるだろう。だが戦前、私は幼稚園で、日本は別格として、世界一は英国で「英米独仏伊露中」の順で習った。七つの海を制した英国だからこそ世界の共通語は英語なのであり、米国が超大国となるに及んで英語の地位はゆるぎないものとなった。

明治維新は日本人が第一外国語を漢文から英語に切り替えた文化史的大転換で、福沢諭吉がその旗振りである。私は「脱漢入英」の福沢の支持者だけに、習近平国家主席が唱える「中国の夢」が実現し、華夷秩序が復活、東アジアの人が中国語を強制される日がきたら、一大事だと思っている。

だが文明の興亡はめまぐるしい。米国と並ぶ超大国と目されたソ連は、昭和前期には社会主義建設の天国のごとく喧伝(けんでん)された。だが実態は逆で、スターリンの少数民族強制移住だけでも千数百万人の犠牲者を出した。中国はさすが大国で、毛沢東の大躍進や文化大革命の際にソ連をも抜いて二千数百万人の死者を出した。私は歴史を直視するからそんな国でなく日本人に生まれて、まあよかったと思っている。

 世界史で昭和天皇のような波乱を経て、天寿を全うされた君主は稀(まれ)である。君民相和すというが、日本人が戦中戦後、天皇を敬愛し誠実な天皇がそれに応えたからで、有難いことである。

平成に安んじる人には、そんな古風なお国柄はわからないかもしれない。戦争世代で不慮の死をとげた人には気の毒だが、敗戦と復興の一身二生の経験は悪くなかった。巨視的に眺めれば、昭和はヴィクトリア女王の時代に匹敵する時代だったのではあるまいか。
(ひらかわ すけひろ・東京大学名誉教授)産経新聞【正論】 2015.5.6
                      (採録:久保田 康文)

◆南北統一は一国二制度で?

平井 修一



井本省吾氏のインタビュー「韓国を助けるな、教えるな、関わるな 古田博司氏に聞く東アジア3カ国との付き合い方」(JBプレス4/4) には大いに共感を覚えた。こういうまっとうな論がマスコミには報じられない。中韓北がそんなに怖いのか? 情けない。

<日韓関係は冷却したまま。中国ともあつれきが絶えず、北朝鮮とは緊張関係が続いている。東アジア3カ国とどう付き合うべきか。左翼・リベラル派の政治家、マスコミ、研究者はもとより、保守派の政治家、外交官、ジャーナリストでも大方は友好関係維持が基本的な考え方だ。極力、対話を続け、譲るところは譲ることが日本の長期的な平和と安全につながる、という意見が多い。

だが、長年、朝鮮半島の歴史や政治を研究してきた筑波大学大学院教授の古田博司氏は「韓国に対しては『助けない、教えない、関わらない』を『非韓三原則』にして日本への甘えを断ち切ることが肝要」と説く。

助けても教えても恩を仇で返すのが彼の国の性格で、関わらないのが日本のためになるという。中国、北朝鮮に対してもほぼ同様に接するのが賢明だと主張する。

「『それでは日本はアジアで孤立する』などと恐れることはない。日本は多くのアジア諸国から支持されている。孤立しているのは東洋的専制国家の東アジア3カ国の方だ。ただ、韓国と手を切る戦略について日本の最大の同盟国である米国を納得させることが肝要だ」

こう主張する古田教授に、韓国を中心に東アジア3カ国との付き合い方を聞いた。

*なぜ「非韓三原則」なのか

井本 「非韓三原則」を説く理由からお聞きします。

古田 助けてもロクなことがないから。教えても感謝せず、むしろ「ちゃんと教えない」などと難癖をつけてさらに要求してくる。

日本は幕末から明治維新にかけて初めて西洋に出会った、とよく言われますが、実は当時、東洋にも初めて出会ったのです。

何も知らないのに、自分も東洋人だから、東洋のことはよく知っていると思い込んでいた。それが間違いのもとだった。

明治期の朝鮮は驚くほど遅れた貧しい国家で、針一本作れない。木を丸くする技術もないので樽もクルマの車輪も作れない。染料がないので、衣服はすべて白衣でした。近世でも中世でもなく、古代に近かった。

清国(中国)は大国ではあったが、古代王朝の世界に沈潜していた。ウソ、ごまかし、裏切り、汚職が横行する。それが東洋であり、実は日本は東洋ではなかった。それなのに、東アジアの現実を何も知らず、「日本は東洋の国々と連携して西洋列強に対抗しなければならない」と考えるアジア主義が広がっていました。それは今でも続いていますが。

戦後は、戦前に中韓に迷惑をかけたという贖罪意識もあって友好第一ということになった。でも、援助しても教えても、反日運動は強まるばかり。プライドが高く、日本を見下しているからです。だから関わらないことが日本にとって一番なんです。

井本 なるほど。話を元に戻すと、2月に金融危機の際に外貨を融通し合う日韓通貨スワップ協定が終了しましたが、韓国の金融事情には不安があり、イザというときは韓国が協定復活を頼みこんでくる可能性があります。これも助けない方がいいと・・・。

古田 韓国は日本の金融支援に対し感謝しないどころか、韓国の金融危機は日本に原因があったような言い方をする。恩を仇で返し、同情すると、すぐにたかってくる国です。関わらないに越したことはない。

韓国が通貨協定終了で強気なのは、イザとなれば中国に助けてもらえると考えているからでしょう。中国も今はその構えですが、でも、そうなれば中国が韓国にたかられ、韓国は中国に首根っこを締め上げられる関係になります。だから、こちらは傍観していればいいんです。

*中国による朝鮮半島支配は恐るるに足らず

井本 でも、中国が朝鮮半島を飲み込む形で支配すれば、日本への脅威が増すのではないですか。

古田 中国は経済的、政治的に朝鮮半島を支配下に置いておけばいいんです。領土として欲しいわけではない。また、朝鮮が政治的に南北統一されるのはいいけれども、DMZ(38度線・非武装中立地帯)がなくなるのは困るのです。

朝鮮半島は北東側に険しい山脈がありますが、西側はほとんど平坦な土地で、いわば「廊下」です。中国の遼東半島から平壌、ソウルを通り半島南西部の海岸まで抜ける廊下。だから、朝鮮戦争では一度韓国軍が半島南部まで一気に追い詰められたものの、南から米軍が上陸し「廊下」を伝わって、これまた一気に押し戻した。これに中国があわてて、参戦してきた。

地政学的に言って、朝鮮半島は中国の弱点なのです。歴史的にも北からモンゴルなどに攻め込まれています。弱点を補強するにはDMZを保持し、廊下に壁を作る必要がある。だから、中国は南北統一があっても38度線が残るように、1国2制度のような形を支持する可能性が高い。

連邦形式にして北、南双方の自治権を残す。この仕組みは北朝鮮、韓国双方にとっても都合がいい。結果として韓国が緩衝地帯となるので、米国にとっても悪くない。だから、中国は「中国優位のもとで南北連合はするけど、1国2制度にして38度線は置いておくという線でどうか」と、米国と交渉するかもしれない。

井本 それは日本にとってもいい?

古田 そうです。第一、中国主導の朝鮮統一が実現したとしても、強大な統一国家にはなり得ません。一緒になったら、朝鮮半島では必ず南北双方で仲違いを起こすとともに、両者で別々に反中国運動が起こります。

歴史的に朝鮮は中国に従属し、様々な経済援助を受けながらも、いろいろと文句をつけ、難題を吹っかけ、もっと援助を寄越せと注文するなど、ゴタゴタが絶えなかった。中国、北朝鮮、韓国の三つ巴の内部争いが続き、疲弊し、日本に脅威を与える余力などほとんどでてきませんね。

だから、3国連合を不安視することはない。ほっておけばいいのです。韓国が中国側に行くように積極的に仕向けて一緒にし、その後のゴタゴタで双方を疲れさせるようにするぐらいでちょうどいい。

井本 貿易など中韓との経済的な関係はどうするのですか。

古田 今まで通り、続ければいい。ただし、過去に迷惑をかけたからなどと変な贖罪意識を持って、こちらが損するような技術・金融支援は一切、行わないこと。つけ込まれて要求水準を高めてきますから。双方が納得いくギブ&テイクの取引を淡々と進めることが肝心です>(以上)

「非韓三原則」は大いに結構だが、中共を宗主国とした1国2制度の朝鮮連邦はどうか。北は金王朝独裁のままの共産主義経済、南は財閥専制自由主義経済で50年間はやる。非武装地帯に経済特区を設けて中共が投資する。南北とも通貨は人民元。外交と軍事は中共がやる・・・

こんな話に中共が乗るかどうか。南北5000万の人口のうち、2000〜3000万は貧民だろう。そんな半島を引き受けても北の鉱物資源と南のハイテク工場くらいしか魅力はないのではないか。ハイテク工場なら中共にもいっぱいあるし。5000万人市場と言っても13.7億人市場から見れば大したものではない。

中共がリスクをしょって朝鮮連邦を引き受けても、これというメリットがない。中共は歴史的には「半島と関わるとろくなことにならない」という教訓があるのではないか。半島を奪われまいと争った日清戦争では大敗北して、結局は清王朝がつぶれてしまった。

中共をおだて、見栄と面子をくすぐっても、中共以上にグロテスクな北、デモと暴動とパクリと反日が大好きな南、この異様な火中の栗である2国を拾うというような愚は冒さないだろう。放っておけば南北は腐って土に帰るのではないか。しばらくは静観するに限る。(2015/5/5)


      

◆従北派が浸透する韓国

西岡 力



ポスト朴槿恵「3年後、日本に最悪のシナリオが現実化するかもしれない」

いま、朝鮮半島情勢は重大な時期を迎えている。日本の運命を左右するかもしれず、その問題意識を提起するため話をしたい。

昨年7月、北朝鮮による日本人拉致被害者らの安否の再調査を行う特別調査委員会の設置が決まり、日朝協議が始まった。だが、北朝鮮は調査報告の回答を遅延させている。

これに先立つ昨年3月に拉致被害者家族会のメンバーで安倍晋三首相と面会したとき、首相はこう言った。

「制裁ばかりしていると話し合いができないという人が多い。しかし日本は世界で一番厳しい制裁を北朝鮮に科している。その結果、話し合いが始まることになる」

家族会も制裁一辺倒の運動方針を変えるべきだと批判を受けたが、首相が言うように制裁圧力と国際連携の圧力によって、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」という主張を取りやめなければならなくなった。

なぜ北朝鮮が追い込まれたのか。答えは外貨がないからだ。北朝鮮の貿易統計をみると、国家財政は毎年10億ドルほどの赤字なのに、ベンツは買う、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記がスキー場をつくれと言ったらリフトを買う。その支払いは現金だ。

1970年代、北朝鮮は日本から数百億円分のブランドを買ったが未払いだった。欧州にも同様の負債が残っている。そんな国とは信用取引ができないのでベンツを買っても現金払いでしか買えない。

国家財政は赤字なのに現金はある。実はここが北朝鮮の一番の弱点だ。社会主義国は計画経済で、政府がすべての経済を管理している。だが、金正日(キム・ジョンイル)総書記は70年代以降、国家予算とは別に海外に数十億ドルといわれる 秘密資金を持つようにした。主な財源が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)からの送金だ。

この弱点を安倍政権がついている。北朝鮮への制裁強化に加えて朝鮮総連に対して厳格な法執行を行い、裏金を送金できないようにした。米国も核開発をや めさせるために北朝鮮との取引があったマカオの銀行などに圧力をかけた。これで北 朝鮮は外貨不足に陥り、日本や米国に対話を求める動きを見せた。北朝鮮は外貨不足 になると対外的に動き出すのだ。

2013年12月に北朝鮮NO2といわれた張成沢(チャン・ソンテク)氏が処 刑されたのも外貨不足が最大の要因だ。張氏が外貨獲得事業を朝鮮労働党に移したこ とから、利権を奪われた軍や国家保衛部という秘密警察が反発した。

張氏処刑は中国との関係悪化を招いた。張氏は中国に対して「改革開放でいきたい」と秘密の手紙を出していた。それを中国共産党の幹部が金第1書記に 通報し、張氏は裏切り者として処刑された。中国の習近平国家主席は言うことを聞く 張氏の処刑に怒った。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領とは面会したのに、金第1 書記とは会わず、北京に来ることすら許していない。

北朝鮮による拉致被害者については、さまざまなルートから確実な生存情報を得ている。北朝鮮がかつて「死亡」とした被害者らについても誰1人として客 観的な証拠がない。つまり拉致被害者らは生きている。日本政府にはもっと具体的な 情報があるという感触を私は持っている。

そんな中、北朝鮮による拉致被害者らの安否を再調査する特別調査委員会の設置が決まった。安倍政権も拉致被害者を帰国させるチャンスとみた。狙いは 金正日総書記が「死亡」とした決済を覆すことだ。代も息子の金第1書記に変わっ た。

首相は拉致被害者の生存情報を持っているからこそ「被害者家族が子供を抱きしめ るまで私の使命は終わらない」と強調。さらに、金第1書記に対し「北朝鮮が誠実な 対応をしない限り、政権の存立ができなくなるような圧力をかけなければならない」 と国会で答弁し、圧力をかけた。

だが、北朝鮮は日本に接近することを決めただけで、拉致被害者らを帰国させることを決めたわけではない。北朝鮮のような独裁国家では独裁者の決済が絶対だ。

トップである金第1書記が拉致被害者を帰国させる決断をしたという保証を得 ないまま、先代の決済を覆させることは困難を極めると思う。

日本政府は拉致被害者らの生存と、帰国させるという保証を取ってから再調査に臨むべきだった。マスコミは秘密警察で構成する特別調査委だからと沸き 立ったが、再調査しても北朝鮮が「すでに死亡していた」と報告したら信じるべきだと いう話になりかねない。

一方で、私は北朝鮮が生きている人を殺して死亡報告書を作ることを検討しているという情報や、北朝鮮が日本のDNA鑑定技術について調べ、欧州の病院で 実験までしたという内部情報も得ている。

「われわれにはしっかりとした生存情報が ある」と言い続け、北朝鮮が偽の死亡報告書を出してきたら、その瞬間に「拉致被害 者を殺した」と叫ぶなど、北朝鮮の嘘を指摘する“情報戦”を展開するべきだ。

昨年9月の日朝協議で、当初は北朝鮮が何らかの調査結果を出してくる とみられたが、結果として通報はなかった。当時、北朝鮮は国連を恐れていた。金第 1書記が国民に対する人権侵害で国際刑事裁判所に訴追される恐れが出てきたため、 北朝鮮はすべての外交力を国連にシフトしたのだ。

追い込まれた北朝鮮にとって2つのカードがある。1つは核開発。パキスタンのカーン博士から指導を受けて開発した。すでに核爆弾はあるが、ミサイルに搭 載できるほどの小型化は完成直前まできているとみられている。米国の介入を防ぐために米国本土まで届く核ミサイルを持とうとしている。米国と戦争する気はないが、 核開発で米国を抑止できると考えている。

もう一つは韓国の各界各層で増え続けている“従北派”と呼ばれる勢力の存在だ。親北派ではない。北朝鮮に自分から従う“従北派”だ。北朝鮮の影響を強く 受けた韓国の国会議員の1人が地下組織に対し、韓国内での武装蜂起を計画した。

そのやりとりのテープが証拠となり昨年12月、憲法裁判所は体制を危うくする活動を しているという理由で、この国会議員が所属する政党の解散を命じた。従北勢力が国 会内にまで浸透していた事例だ。

さらに2012年の韓国大統領選挙で当選した朴大統領の対抗馬は、北朝鮮に融和政策を取った盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の秘書室長だった人物。得票率 は48%で、単純計算で国民の半数近くが従北派に近いとみていい結果だ。

その候補者 が大統領になっていたら、いまごろは韓米同盟の破棄が議論されていただろう。これ も従北派の浸透をうかがわせる事実だと思う。

韓国が北朝鮮による民族主義イデオロギーに染まりだしたのは1980年代だ。その理論は資本家と労働者との間の闘争ではなく、韓国が米国帝国主義に支配さ れているという“植民地”からの解放闘争という位置づけで、その後に社会主義革命を 達成するというものだ。目的達成のために北朝鮮は高学歴の人たちをターゲットに 浸透を図った。

その思想に共鳴して従北派となった人たちは公務員を目指したり、司法やマスコミの世界に入り、民族主義イデオロギーを広げていった。

その典型が韓国版自虐史観だ。韓国の李承晩(イ・スンマン)初代大統領以降、親日派を処分しなかった状態が今も続いていることを民族的に“自虐”する考 え方だ。

金日成(キム・イルソン)主席は朝鮮戦争で、米国を排除したうえで親日派で汚れた韓国の政権を倒して統一を試みた一方、北朝鮮国内には今も中国とソ連の 軍隊を駐留させずに民族主義を貫いているという主張だ。

そこに慰安婦問題がぴったりとはまった。慰安婦を連行したとする日本軍に望んで入った朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領は「売国奴」で、慰安婦問題を 解決しないまま日韓基本条約を締結した民族の敵というだ。それを反日運動とし て利用している。

従北派の人たちは、反日から入って米国、そして韓国を否定する。米国大使を襲う事件が起こるぐらい韓国がおかしくなっている。

韓国は3年後に大統領選挙があり、北朝鮮はもう一度韓国に左翼政権を 作りたいと思っている。朴槿恵大統領の保守政権では南北対話はできず、次の大統領 選まで延命しようと考えているはずだ。逆に日本からすれば3年後には最悪のシナリオが現実化するかもしれない。

日本の歴史は、朝鮮半島が反日勢力で統一されることを避けるという政策をとってきた。白村江の戦いから元寇、日清、日露戦争も同様だ。1965年の日韓基 本条約も日本は韓国を共産主義の国にしないという狙いあった。

いま、日韓関係は最悪な状況にあるといわれるが、問題は歴史認識だけだ。経済や安全保障では関係は維持されている。日本は日米同盟と韓国という存在が あったから共産主義と直面することはなかった。それが、朝鮮半島全体が共産化し、 核兵器を持った反日国家ができることになるかもしれない。

いま韓国と北朝鮮のそれぞれで深刻な体制危機が進行していることをしっかりと認識したうえで、日本は危機感を持って対応を考えないといけない。(3月 30日掲載)

           ◇

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             (にしおか つとむ・東京基督教大学教授)

            産経ニュース【メガプレミアム】2015.5.6

                    (採録:久保田 康文)

2015年05月07日

◆次代の益荒男を育成すべきだ

平井 修一



伊藤努氏(外交評論家)の論考「再認識する国防の基本 露の威嚇と東欧」(朝雲4/23)から。

<ウクライナ東部の政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘は、2月にようやくまとめた停戦合意にもかかわらず収まる気配を見せない。紛争の長期化に伴い、欧米軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間には再び「鉄のカーテン」が下ろされつつあるかのような緊張した雰囲気が漂う。

特に、第2次世界大戦後、長くソ連の支配下に置かれていたバルト諸国と冷戦後に米国の強力な同盟国に転じたポーランドでは、旧ソ連継承国であるロシアが再び侵攻してくるとの危機感が高まる一方で、軍備増大や徴兵制の復活、志願兵による軍事訓練で抑止力強化を図る取り組みに拍車が掛かる。

これに対し、ロシアのプーチン政権はNATOとの領域付近での大規模演習や領空侵犯まがいの戦略爆撃機の飛行を繰り返し、ウクライナの親ロシア派に対する軍事支援と併せ、西側を威嚇する姿勢を崩していない。

昨年3月に併合したウクライナ南部クリミアで進める核配備の動きや最近のプーチン大統領による「核の臨戦態勢検討」発言など、緊張をあおる言動は枚挙に暇(いとま)がない。

米シンクタンクのロシア専門家はモスクワの威嚇戦術の狙いについて、東方拡大を続け28カ国体制となったNATOには決して屈することはなく、欧州での全面戦争を戦う能力があることを誇示すると同時に、手にしたクリミア併合を覆すことは絶対にないという意思表示と指摘する。

西側に対する核兵器使用の脅しは、1950年代のフルシチョフ時代にさかのぼるクレムリンの伝統的戦術だが、この専門家は「核使用を含む威嚇戦術によってロシアが得られるものは小さくなり始めている」と冷静に分析する。

その一例として、NATO諸国はもとより、スウェーデンやフィンランドのような欧州中立国も、軍事的脅しには一致団結して対抗する姿勢を固めていることが挙げられる。ロシアによる核の脅しは、人口がいずれも数百万規模の小国であるバルト3国でのNATO演習を阻止できなかったばかりか、これらの国の軍事力増強も抑止できていない。

米メディアは最近、「ロシアの脅威に直面して軍事訓練を受ける東欧の市民」と題するルポ記事を掲載した。NATO盟主の米国は、ロシア周辺国である東側地域の安全保障を再確約する緊急即応部隊創設や頻繁な合同訓練の実施などのイニシアチブを打ち出したが、ルポ記事は「ポーランドなど東欧諸国の市民は昨今、NATOや米軍に頼り切りになるだけでなく、自国の将来を運に任せない」という決意の下、一般市民の地道な取り組みを紹介している。

予備役の射撃演習や自警団・民兵組織による軍事教練などだが、ロシアの侵略を何度も経験した国々だけに、年齢、職業を問わず普通の人々が真剣に家族や地域を守ろうとする姿勢は国防の基本ではないかと再認識させられた>(以上)

日本人は国防意識が極端に低い。GHQとアカの洗脳のためだが、選挙権を18歳にするのなら、それを契機に2年間の軍事教練を選べるようにし、教練後は予備役としてはどうか。この間に大学1〜2年の教育もする。この間の費用は兵士に準じて国が面倒を見る。

2年間の教練を終えたら大学3年に編入する。試験に合格すれば国が成績に準じて入学金と授業料を補助する。卒業後の進路は自由だが、希望者は自衛隊に迎える。優秀な者は防衛大学で将校教育をする。

小生の経験と愚息の観測からの管見だが、大学生の4年間のうち、学生が真面目に勉強するのは就職試験対策の2年間ほど。大学1〜2年は漫画、ゲーム、サークル、飲み会、バイト、テレビで、学問なんてしやしない。まさに斎藤緑雨の言う「教育の普及は浮薄の普及なり」だ。

就職試験対策で必死に勉強しても、それは学問ではない。大卒でも「え、日本とアメリカは戦争したの!?」、愚息のような若者は珍しくないどころか、ほとんどがこんなものだろう。

こんな東京ネズミーランドのようなところでモラトリアムの4年を過ごさせるよりは軍事教練で体とオツムを鍛えた方がはるかに有意義だ。

少子化で自衛官の募集は年々厳しくなっているとか。甲子園の常連校だったPL学園の野球部は消えてしまったと聞く。有為の人材を育てなければ軍の継承者は「民間企業がはじいた“できない坊主”ばかり」になりかねない。亡国だ。

為政者は正しく危機感をもって次代の益荒男を育成すべきだ。     
                       (2015/5/5)

       

◆井上繁君の紅綬褒章受章

馬場 伯明



「やった、祝受章!」と叫びたい。ふるさと長崎の畏友井上繁君(70)が平成27(2015)年春の紅綬褒章を受章することが決まった。

2013/12/24、深夜02:30頃、長崎県五島市男女群島南南西20海里の海域で操業中の、井上繁船長の漁船第一博洋丸(135トン)は、火災事故の漁船を発見、直ちに急行し乗組員4人全員を救助した。これが評価された。

繁君は雲仙市南串中学校を昭和35年に卒業した同級生である。同市南串山町中ノ場漁港を母港とし、家業を継ぎ近海・遠洋漁業の近代化と発展に貢献し、その指導者としての役割も果たし、生きてきた。

紅綬褒章受章者は2015/4/17に閣議決定。4/29に発令され、TVや新聞などで報じられた。5/15(金)11:00から国土交通省(霞ヶ関)で褒章・章記の伝達、午後には皇居宮殿で天皇陛下に拝謁を賜る。

2015年春の褒章受章者は、紅授(14)・緑授(40)・黄授(177)・紫授(17)・藍授(453)・褒状(26:内数)の合計で701人。その内、紅綬褒章受章は国土交通省海上保安庁関係の5団体(14人)だけである。漁船第一博洋丸の井上船長と乗組員の計5人はここに属する。

紅綬褒章は「自己の危難を顧みず人命の救助に尽力したる者」が対象とされる。受賞者は極めて少ない。2003〜2015年(13年間)春秋の褒章受章者累積総数18,334人の内、わずか148人、年間当たりで11.4人である。2003、2006年には受章者がなかった。

2015年春も受章者は14人。稀少で貴重な褒章なのだ。長崎県での褒章受章者は、今春は黄綬・藍綬褒章受章の13人と、人命救助団体としての第一博洋丸の井上船長と乗組員計5人の紅綬褒賞の1団体だけである。

じつは、第一博洋丸はこの人命救助により他の表彰も受けている。平成26年雲仙市表彰(人命救助功労2014/12/21)と、公益社団法人日本水難救済会・平成26年度名誉総裁章と表彰状の受領である(2014/6/2)。日本水難救済会の名誉総裁は高円宮憲仁親王妃久子殿下である。

同救済会の機関誌「マリンレスキュージャーナル2014/8月号(Vol106No.2)」に掲載されている遭難・救助の概要を、抜粋・転載する。

まず、受章・表彰。《 平成26年度名誉総裁表彰受章者 海難救助功労(個人)(特)長崎県水難救済会 橘湾東部救難所南串山支所 救助員井上繁氏 救助員井上勇喜氏〈協力者〉漁船第一博洋丸外国人技能実習生一同》

次に遭難・救助の概要。《 平成25年12月24日午前2時30分頃、長崎県五島市男女群島の南南西約20海里の海上において、漁船明勇丸が船尾の居住区から出火し、消火を行なうも火勢は衰えず、船首付近に乗組員4名が退避
した。

付近海域において操業中の漁船第一博洋丸(救助員2名及び協力者3名乗組み)は、明勇丸の集魚灯が消灯し、船橋付近にもやもやした光を視認するなど異変に気付き、直ちに明勇丸に向け急行したが、既に後部から前部甲板上に火が回っており、

また、風浪高く荒天のため、船長は同船への接舷は困難と判断し直ちに機関長に指示して救命浮標を投げ入れ、海に飛び込んだ明勇丸乗組員の救助を開始し、救助員及び協力者3人が互いに協力し午前2時55分、全員を救助したもので、極めて抜群の功労があった。》・・転載終わり。

井上船長は冷静沈着に機関長以下に指示。火災の明勇丸から厳寒の海へ飛び込む4人の乗組員に、適切に救命浮標を投げ入れ、全員を救助した。この間、約25分。海の男の心意気を示した。

この人命救助により井上船長らは「時の人」になった。しかし、彼らに偉そうな振る舞いや英雄気取りはまったく見られない。

「何〜〜んてこっちゃなか。遭難し〜よったから、助くっだけ」。あっけらかんとしたものである。「そこに山があるから登る」ように「そこに火災の漁船がいたから救助した」。崇高な行為は単純明快である。

その後、2015/3/17の帰省中、私は繁君の息子が経営する南串山町の「味処 紅屋」で彼と飲んだ。地元で採れた新鮮な魚の活き造りや、焼・煮・揚物などの創作料理が卓に並ぶ。お互いまだ現役、酒と話が進む。

ビールの後の焼酎は、いつも、麦の壱岐焼酎(玄海酒造・壱岐市)と芋の赤霧島(霧島酒造・都城市)である。ほんと、うまかねえ〜〜、紅屋の魚(いお)は・・・。電話:0957-88-2247。

繁君は、その後大型の第一博洋丸(135トン)から小型の漁船に乗り替えた。マグロを追う漁業をやめ、近海の魚を獲り、悠々と堅実な漁を続けている。それも、すべて、健康だからできることである。

さて、2015/5/15(金)の天皇陛下に拝謁の後の夕刻から、ささやかながら、繁君の紅綬褒章受章記念祝賀会を八重洲で行う。集まるのは南串中学校を卒業した関東在住の同級生たち10人余である。

2次会は四谷3丁目の「スナック千々石(ちぢわ)」である。店歴40年の永尾絹子ママは南串中学校の少し先輩である。電話:03-3359-4476。

あの頃、気風の良さで女子中学生に人気が高かった繁君である。5/15にはそこからぐ〜〜んと成長した熟年女性らも参加する(笑)。楽しい祝賀会になりそうだ。5/15の夜が待ち遠しい。(2015/5/6 千葉市在住)


◆安倍首相の英語

MoMotarou


ーーー私ども、残念に思いますのは、ダニエル・イノウエ上院議員がこの場においでにならないことです。日系アメリカ人の栄誉とその達成を、一身に象徴された方でした。

平成27年4月29日  米国連邦議会上下両院合同会議における安倍内閣総理大臣演説  http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0429enzetsu.html

             ★

安倍首相の英語演説“動画”は酷いものだった。発音や切り方等は私の方が上だ。しかし演説の中身は素晴らしかった。反日サヨク・マスコミ等は挙(こぞ)って首相の演説スタイルを酷評するが、それしか文句を付けようがないと云うことです。

■英語検定 安倍さんの英語はアレで良し。日常的会話には問題なさそうだ。ただ外交となるとニュアンスや語句の定義が重要なので専門家の関与が必要でしょう。田中角栄さんが英語にて演説したと聞いておりますが、日本人らしいものだったでしょう。

■ド・ゴール仏大統領の演説(「指導者とは」ニクソン米大統領著 より) <しかし、ドゴールがドゴール将軍の役割を演じおおせたのは、軍服というシンボルや雄弁や演劇的才能によってだけではない。

それは国民の前に立つときの工夫のすべてーー舞台や背景だけではなく、彼の演説の計算し尽くされた余韻、さまざまな国民のためにわざと多種多様な解釈が可能なよう練りぬかれた言葉の効果が大きかった。

ドゴール将軍は、単なる見てくれのイメージだったかもしれないが、それは決して偽りのイメージではない。見てくれの背後には、燃えるような知性と異常なまでの決意があった。同じ外見でも、それはハリウッド映画の大道具のように実体なきものではなく、大聖堂の正面(ファサード)の偉容に似ていた。>(終)

*ファサードは、建築物の正面(デザイン)である。フランス語に由来し、英語のfaceと同根。最も目に付く場所であり、重要視される。(WIKI)

■NHKの報道ぶり 首相の米国訪問を伝える報道と同時に、「日本」を非難する韓国・中国の映像を無批判に垂れ流しました。まるで両国の代理人が如き様子。NHKは事実上の「国営放送」でありますが、全く情けない状況です。

4月30日7時のニュースでは、運転免許証の写真みたいな映像が数秒混ぜられました。風景無しの映像に違和感を覚え翌日調べると「アーリントン墓地」であるように思われました。「靖国神社参拝の正統性」を裏付けしたくなかったという意味でしょう。

「反日」をやっている。

■誰が総理の演説に関与したか。 内容は米政治家及び政府の反応を良く考慮に入れたもので、米広告会社にでも作らせたかのような感じもします。敢えて日本人が関わったとしたら、米国在の伊藤貫さんでありましょう。安倍さんの盟友故中川昭一さんとは東大で一緒だった。今回は小泉総理の訪米とは一味違い、洗練されたものでした。

2015年05月06日

◆大事な「ゲストミックス」

平井 修一


4月8日と9日、天皇皇后両陛下はパラオ共和国をご訪問、慰霊された。1万人の将兵の霊がお迎えしただろう。彼らの奮戦のおかげで日本は滅亡の危機を脱した。英霊に誇れる立派な日本にすることが我々の義務だ。

パラオについて書く。「パラオが困惑する“ありがた迷惑”な中国人観光客」から。

<【4月3日 AFP】中国で経済的に豊かな人が増え、新しい海外旅行先を見つけようという動きが広がる中、大勢の中国人が太平洋の島国パラオを訪れている。しかし必ずしも歓迎されてはいないようだ。

今年2月にパラオを訪れた観光客の62%近くが中国人だった。2014年1月より16%も多い。パラオの人たちはこの急増ぶりに当惑している。

上海から来たチア・イーシンさん(30)は、オンラインで見つけたパラオ6日間の旅に1133ドル(約13万5000円)払うのを少しもためらわなかった。「ここはまるで楽園。上海の空気は汚染されているけど、ここの人たちは環境を大事にしている」と彼女は言う。

皮肉にも、中国人観光客の急増による環境汚染がパラオの多くの住民にとって一番の心配事になっている。

押し寄せる中国人の波を押しとどめようとしているパラオ政府は今年3月、中国からのチャーター便の本数を今年4月は半分にすると発表した。トミー・レメンゲサウ大統領は、観光業が特定の国に依存してしまうことを防ぐための政策であって、特定の国の人を差別するものではないと述べた。

レメンゲサウ大統領は「われわれは成長をコントロールしたいのか、それとも成長にコントロールされたいのか、ということだ」と記者団に語った。「指導者としてこの状態をそのままにしておくのは無責任だろう。私は現在だけを見ているのではなく、指導者として将来のことも考えている」>(以上)

旅行産業、とりわけ宿泊業界は「ゲストミックス」を非常に重要視する。特定の国に依存してしまうと、その国(市場)が何かの事情で海外旅行を抑制すると、途端に経営が困難になるから、いろいろな国からゲストを迎えるようにするのだ。

たとえば日本人50%、アジア人30%(中、台、韓10%ずつ)、欧米人20%と枠をつくる。どこかの市場がこけても修復可能だ。リスクヘッジのためでもあるが、「あのホテルは○○人がやたらと多い」といった評価が広まれば、他の国の人々は利用しなくなるからだ。

ホテルや旅館に限らず、飲食店や小売店も特定市場への依存度を強めると思わぬ反発を招く。高級レストランが○○人に占拠されたようになれば、○○人以外は確実に敬遠する。

ちょっとおしゃれして高級デパートで買い物を楽しもうと一歩入ったら、○○人が○○語を大声でしゃべっている。こんな店には誰も行かなくなる。

経営が苦しい地方の旅館などは○○人専用になっているところも珍しくないだろう。背に腹は代えられないから「ゲストミックス」なんて言っていられないという事情も分かるが、いつまでも来ると思うな○○人で、一蓮托生で経営破綻するリスクは大きい。

<観光庁は3月26日、宿泊旅行統計調査の結果を発表した。2014年の外国人の延べ宿泊者数(速報値)は4482万人泊で前年に比べて33.8%増加した。年間の訪日外国人旅行者数が1341万人に達したことに伴い、過去最高を記録した。

日本人を含めた延べ宿泊者数4億7232万人泊に占める外国人の割合は9.5%に上昇し、約10人に1人が外国人になった。

外国人の延べ宿泊者数では、40都道府県が前年の実績を上回った>(観光経済新聞4/4)

海外市場抜きで日本の宿泊業界は成り立たない。海外市場に振り回されるのではなく、海外市場をコントロールするためには「ゲストミックス」がますます必要になる。

今年の春節には○○人が帝国ホテル東京にも押し寄せたそうで、帝国を定宿にしている海外のビジネスマンが予約を取れずに往生していた。ホテルの品格を保つためにも「ゲストミックス」は大事である。(2015/5/5)

◆学級崩壊の教室か、これが国会本会議

酒井 充



上西小百合衆院議員が国会を「病欠」した前後の行動が問題視されて維新の党を除名されたのは記憶に新しい。上西氏は平成27年度予算案の採決を行った3月13日の本会議を「病気」で欠席した。前夜には複数の飲食店を訪れており、国会議員としての責任感の欠如を白日の下にさらした。

維新幹部に限らず、与野党各党は「けしからん」の一色に染まった。そういう国会議員たちは当然本会議に毎回出席しているのだろう。

ところが、驚くべきことに衆院は本会議の議員の出欠を公式に記録していない。憲法56条1項には「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」とある。

「国民の選良である議員が本会議を休むはずがない」との前提で、「3分の1以上の出席」は目視で判明できるということなのだろう。

一方、衆院のさまざまなルールを定めた衆院規則の第106条には、以下のような記述がある。

「出席議員が総議員の3分の1に充たないときは、議長は、相当の時間を経て、これを計算させる。計算2回に及んでも、なほ、この定数に充たないときは、議長は、延会しなければならない」

これは通常は出席者数を正確には確認していないことを意味する。国会議事堂の入り口には、議員の名前を記した「登院ランプ」がある。ボタンを押すと名前の部分が光り、登院したことを表す。ただ、ランプはあくまで議員の登院を示すだけで、本会議に出席した証拠にはならない。

出席どころか、各議員の法案に対する賛否を確認する術も限られている。 衆院本会議の採決には複数の方法がある。いわゆる重要法案の採決は、議員名が記された白票(賛成)か青票(反対)の札を投じる記名投票で行うので、各議員の行動を把握できる。

ただ、一般的な法案は議長が目視で過半数か否かを確認する「起立採決」か、議長が満場一致と認めた「異議なし採決」で可決されることが大半だ。この場合、個々の議員の賛否はいちいち確認していない。

ちなみに参院は平成10年から「押しボタン」による採決を導入しているので、デジタル化で各議員の法案への賛否は一目瞭然(りょうぜん)だ。議員が自席に着席し、名前を記した「立て札」を立てると出席が確認できる仕組みにもなっている。

では、実際の本会議の出欠、議場での国会議員の振る舞いはどうなっているのか。4月16日午後1時から約2時間行われた衆院本会議を記者席から観察してみた。その実態は、絶句するほかなかった。

(【】内の数字はおおよその時刻/目視で数えた空席の概数)

 【12時55分】

本会議開会5分前。さっそく民主党のベテラン議員が堂々と携帯電話を操作している。衆院規則で携帯電話の本会議での使用は禁じているのに。開会前だからいいということか。机の下で隠れるようにタブレット端末を操作する民主党中堅議員もいる。

 【13時0分/20】

川端達夫副議長が議場に入り、開会を宣告。町村信孝議長(後に辞任)は体調不良で欠席し、川端氏が議事を代行する。衆院規則第104条は「議長が会議を開くことを宣告するまでは、何人も議事について発言することができない」としているが、場内はざわついたままだ。

安倍晋三首相はひな壇席に座る。最初の議題は「都市農業振興基本法案」の採決。農林水産委員会の江藤拓委員長(自民)が委員会の議事結果を報告。全会一致の「異議なし」で可決。

 【13時5分/30】

引き続き、大手電力会社の送配電部門を発電部門から切り離す「発送電分離」を平成32年4月に実施するための「電気事業法改正案」と、29年をめどに都市ガスの小売りを全面自由化することなどを盛り込んだ「ガス事業法改正案」の審議に入る。

宮沢洋一経済産業相による法案の趣旨説明が始まる。それが何かの合図のように10人以上が一斉に離席し始めた。

上西小百合衆院議員が国会を「病欠」した前後の行動が問題視されて維新の党を除名されたのは記憶に新しい。上西氏は平成27年度予算案の採決を行った3月13日の本会議を「病気」で欠席した。前夜には複数の飲食店を訪れており、国会議員としての責任感の欠如を白日の下にさらした。

維新幹部に限らず、与野党各党は「けしからん」の一色に染まった。そういう国会議員たちは当然本会議に毎回出席しているのだろう。

ところが、驚くべきことに衆院は本会議の議員の出欠を公式に記録していない。憲法56条1項には「両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」とある。

「国民の選良である議員が本会議を休むはずがない」との前提で、「3分の1以上の出席」は目視で判明できるということなのだろう。

一方、衆院のさまざまなルールを定めた衆院規則の第106条には、以下のような記述がある。

「出席議員が総議員の3分の1に充たないときは、議長は、相当の時間を経て、これを計算させる。計算2回に及んでも、なほ、この定数に充たないときは、議長は、延会しなければならない」

これは通常は出席者数を正確には確認していないことを意味する。国会議事堂の入り口には、議員の名前を記した「登院ランプ」がある。ボタンを押すと名前の部分が光り、登院したことを表す。ただ、ランプはあくまで議員の登院を示すだけで、本会議に出席した証拠にはならない。

最前列に座る民主党の若手女性議員は、真っ先に自民党議員の席へ。ある自民党議員は野党議員の席を訪ね、書類を片手になにやら話し合いを始める。与野党議員間の立ち話が実に多い。

連れだって外に出ていくケースも多数。本会議は「原則」議員が全員出席するので、約束なしでもその場で直接話し合いができる好機なのか。それにしても、全く場所をわきまえていない。

別の民主党女性議員は、民主党→維新の党→自民党の議員を次々と訪問。自民党国対幹部は所在なさげに議場内をウロウロ。自民党幹部は次々と席を離れはじめる。宮沢氏に対し「元気出せ!」の掛け声がかかり、笑いが起きる。緊張感は全くない。

次第にやじさえ飛ばず、ざわつきだけが議場内に漂う。開会前に机の下でタブレットを操作していた民主党議員は、ついに机の上で堂々と操作を始めた。

 【13時10分/40】

宮沢氏の趣旨説明が終わる。自民党中堅が足を組んで文庫本らしきものを読み始めた。衆院規則は「議事中は参考のためにするものを除いては新聞紙及び書籍等を閲読してはならない」と定めているが…。

自民党の田中良生氏が質問に立つ。このころになると、外に出ていく者がさらに増える。維新若手議員は雑誌を開いたまま、頭を揺らし始めた。何分たってもページはめくられない。

民主党重鎮は明らかに深い眠りに入った。岡田克也代表と枝野幸男幹事長は自席に着席し、じっと聞き入っている。

【13時20分/50】

首相が答弁し、続いて宮沢氏が答弁する。携帯やタブレットを操作する者多数。自民党中堅は「歩きスマホ」のまま外へ。

 【13時25分/60】

民主党の田嶋要氏が質問に立つ。場内を動き回る議員が減り始める。離席を反省したのかと思いきや、今度は眠り出す人が圧倒的に増えた。それに伴い、場内のざわつきも収まる。

少なくとも30人以上が寝ている。先輩たちに比べ、お行儀の良かった当選1回生だが、演壇の目の前の席で舟をこぐ自民党議員も。最前列の民主党女性議員は相変わらず場内を行ったり来たりで、自席にほとんどいない。

 【13時35分/80】

首相と宮沢氏が答弁。複数の自民党幹部も深い眠りにつく。睡眠、読書、スマホ操作と、思い思いの時間を過ごす議員が増える。

この日は週刊文春と週刊新潮の発売日。そのためか、コピーを含め雑誌を読む人が多い。よほど「議事の参考になる記事」が掲載してあったようだ。自民党席の後方(ベテラン勢)に空席が目立つようになる。

 【13時50分/100】

維新の鈴木義弘氏が質問に立つ。いつの間にか岡田、枝野両氏がいない。菅直人元首相の姿も消えた。

開会から約1時間が経過した時点で、一度も「席を立たない」「寝ない」「関係ない本を読まない」「携帯・タブレットを使わない」といった当たり前のことを貫徹している人は早くも100人以下に。

【14時15分/150】

首相が答弁。場外へ消える議員が急上昇。

 【14時20分/180】

公明党の国重徹氏が質問。公明党席から大きな拍手が起きる。これにビクッと体を動かし、驚いたように目覚める者多数。まるで目覚まし時計のよう。

 【14時30分/200】

首相と宮沢氏が答弁。引き続き共産党の藤野保史氏が質問。とうとう谷垣禎一幹事長ら自民党三役席はすべて空席。全議員475人の4割以上が議場にいない状況に。

 【14時50分/190】

首相が答弁。4月14日に福井地裁が関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働を認めない仮処分決定を行ったことについて初めて言及した。

「原子力規制委員会の田中俊一委員長から、いくつかの点で事実誤認があり、新規制基準や審査内容が十分に理解されていないのではないかとの明快な見解が示されている」

「世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発について、その判断を尊重し、再稼働を進めていくのが政府の一貫した方針だ」 この時点で72人(川端氏を除く)の民主党席は約半分が空席。閣僚も数人しかいない。「脱原発」に力を入れる菅元首相の姿もない。

【15時00分/180】

議事が終了し、川端副議長が散会を宣告。終わりぐらいは着席していようとの心理か、空席が少しだけ減る。本当に少しだけ。

川端氏が退席するのを前列の議員の多くは立って見届けるが、後方席の議員はそそくさと退席し始める。衆院規則219条は「散会に際しては、議員は、議長が退席した後でなければ退席してはならない」と明記しているが、ベテランの順法精神は相当低いようだ。

              ◇

以上が、憲法で「国権の最高機関」と位置づけられた国会のごくありふれた日常の一コマだ。記者席からは本会議場を一望できず、移動しながら目視で数えたので欠席数は正確ではない。

ただ、最初から最後まで「席を立たない」「議事と関係のない本を読まない」「携帯電話・タブレットをいじらない」といった当たり前の規則を守った人は、どうみても全体の1割(47人)以下だった。無法者の集まりかと見まごうほどだ。

学校でさえ出欠を確認するのは当たり前だ。授業中に勝手に席を立ってしゃべったり、教室を出ていったり、授業と関係ない本を読んだり、携帯電話をいじったりしている生徒を国会議員はよしとするようだ。

ましてや国会議員には、税金で年間3000万円以上の歳費が支給される。本会議への皆勤出席は最低限の責務であり、重篤な病気や国際会議出席などの外遊などを除いて本会議に出ない選択肢はあり得ない。もし形式的な本会議への出席に意味がないというなら、ルールを変えて別のまともな議論の場を設けたらいい。

後方支援に参加する自衛隊の海外派遣には国会の事前承認が必要だといった議論が行われているが、その肝心の国会の実態は目を覆うばかりだ。国会議員は何かあると「国会の品位」を声高に主張する。悪い冗談にしか聞こえない。(政治部)産経ニュース【政界徒然草】2015.5.5


        

◆真っ直ぐ立てない子供たち

村島 有紀



「まるでゴリラ」…足指に“異変”も 

東京都内の小学校の養護教諭の調査で、足の指先が地に着かない「浮き指」がある子供が8割を超え、体の重心を後部にかける子供たちが急増していることが分かった。バランスを取るために、膝を曲げ、猫背で歩く子供たちは、まるでゴリラのようにも見える。危機感を強めた学校現場では、足型の測定や姿勢体操を取り入れるなどして子供の姿勢改善に取り組んでいる。

全校朝会でふらふら

「姿勢体操、始めまーす!」

3月末の東京都品川区の区立戸越小学校。午前8時20分から始まった 全校朝会は、姿勢体操から始まる。

つま先で立ったり、つま先を持ち上げたり、両手を頭上に上げて立ったり…。片足立ちでバランスを取る体操では、数秒間でもがまんできず、バランスを崩したり、ケンケンを始めたり…。

その後、校長先生の話が始まると、気分が悪くなったのか、途中退場する児童も。20分間の短い朝礼の間に、保健室に運び込まれた児童は3人もいた。真っすぐ立つことが難しいのか、重心をかける足を左右に頻繁に変えたり、上半身をふらふらさせたりする児童もいた。

真っすぐ立っていられない原因の一因は、足指の形も関係しているとみられる。保健室を担当する小澤京子主任養護教諭が平成23年、児童全員分の足型を測定したところ、足の指が床につかない「浮き指」がある児童が81・7%に上った。

同2年に測定した大田区の小学校児童の割合 16・3%と比べ、約5倍以上。浮き指の子供が急激に増えていることが わかった。

浮き指になる原因は、赤ちゃんのときに、つかまり立ちや、つたい歩きをしない▽幼児期や学童期に歩く距離が短い▽足の指を使う雑巾がけなどの運動をしなくなった−などが原因として考えられるという。

「浮き指」があると、足の前方に力が入らないため、かかとに重心がかかり、バランスを取るために、体は膝を曲げ、腰が落ち、肩が前に出る猫背になりがちだ。

「膝を曲げて、手をぶらぶらさせて歩くのは、ゴリラの姿勢。体つきはスリムで手足は長いのに、姿勢はよくない。進化というより類人猿に退化している印象」と小澤教諭。

23年の同小学校の調査では、足の裏のアー チが形成されない扁平(へんぺい)足の疑いがある児童も4人に1人 (24・4%)に上った。

姿勢を正しく

背中を丸め座る猫背の子供たちも増えている。

教室を見学すると、背筋を伸ばして座っている児童がいる一方、椅子に浅く座り、背もたれにだらりと体重を預けたり、背中を丸めてノートを書いたり…とバラバラ。座り姿勢が乱れている子供の足は、つま先立ちをしていたり、上靴を脱いだり、足を組んだり…で、床にきちんと足を置いている子供は少ない。

同小学校では、23年から、児童の健康増進の取り組みのひとつとして「姿勢指導」を始めた。小澤教諭が考案した姿勢体操を毎日行い、姿勢のチェックをするのだ。

姿勢が悪いと、肩こりや腰痛なども引き起こし、長時間落ち着いて立ったり座ったりすることが難しくなる。

昨年から同校で姿勢の指導をしている、虎ノ門カイロプラクティック院の碓田(うすだ)拓磨院長は猫背が増えた一因として「携帯型ゲーム機の普及や子供同士で走り回って遊ぶ環境が減ったために、昔の子供に比べて、猫背になりやすい要因が増えた」と指摘する。

小学生でも、肩が凝った り、首の筋を違えたりすることがある。いかに正しい姿勢を身に付けさせ るかが課題だ。

碓田院長が奨めるのが、骨盤を立てた正しい座り方。「大人でも、立っているときの姿勢はよくても座り姿勢が悪い人が多い。深く腰掛け、椅子の背もたれを利用して、骨盤を立てて座ることが大切。正しい座り姿勢が取れれば、立ち姿勢もおのずとよくなる」とアドバイスする。

また、小澤教諭は、「グー・ペタ・ピン」と呼ばれる姿勢指導を開始。机とおなかの間ににぎりこぶし一つを入れて(グー)、足を地に着け(ペタ)、骨盤を立てた(ピン)姿勢を保つ呼びかけを、児童に行っている。

小澤教諭は「家庭とも協力し、骨盤を立てて座る正しい座り方を指導したい。また、足を鍛えるには、走っていて急に止まる、鬼ごっこのような遊びがいい。子供たちに外で遊ぶよう促し、“良い足型”を持つ子供を増やしたい」と話している。
               産経ニュース【日本の議論】2015.5.5

2015年05月05日

◆中国の蛮行、後手に回り続ける米国

櫻井よしこ



アメリカのシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)のホームページに掲載されている何十枚もの航空写真ほど、中国の本音が透けて見えるものはない。

南シナ海で猛烈な埋め立て工事を進めている中国の蛮行振りは、言葉では中々伝わりづらい。しかし、鮮やかな一群の写真を通して東南アジア諸国だけでなく、日本もインドもオーストラリアも、さらにはアメリカも深い痛手を負うことになりかねない危機的な状況が、実感として伝わってくる。
 
ひと月ほど前の3月19日、ジョン・マケイン上院軍事委員長、ボブ・コーカー上院外交委員長などアメリカの有力上院議員4氏が連名で国務、国防両長官宛に出した書簡には切迫感が溢れていた。南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で、中国が「侵略的」(aggressive)行動を続けており、アメリカと同盟国は「深刻な危機に直面している」という内容である。
 
南シナ海で、中国は周辺諸国の抗議を無視して島々の埋め立てペースを加速中だ。過去1年間で、ガベン礁に11万4000平方・の新たな土地を創り、満潮時には水没していたジョンソン南礁を10万平方・の広い島にした。ファイアリー・クロス礁を昨年8月の11倍の広さに拡大した。
 
これら全て、2002年にアメリカと東南アジア諸国連合(ASEAN)が中国と交わした南シナ海の「関係諸国行動宣言」に違反する。南シナ海の現状維持と一方的侵略行為を慎むとの合意にも拘らず、中国は現状を一方的に変え、南シナ海に「質的転換」を生じさせている、というのがマケイン氏らの主張である。
 
このペースで行けば、同海域は中国漁船、中国海警局の公船、人民解放軍(PLA)海軍の軍艦などが常駐し、空軍戦闘機が飛び、それによPLA全体の兵站能力も向上する。力をつけた中国が南シナ海全体に防空識別圏を設定する可能性が高まるとしている。

米行政府の機能停止
 
これまでは開かれた海として、沿岸諸国も、日米をはじめとする如何なる国も、南シナ海を自由に航行していたのが、中国の領有権が島々における軍事基地建設などの形で具現化されれば、南シナ海は閉ざされた海になり、脅威の温床となる。

アメリカは中国の脅迫(coercion) に明確に対処する戦略を国策として打ち出さなければならないと、4人の上院議員らは主張したのだ。
 
アメリカ議会の危機感は強く、すでに昨年11月20日には、とどまるところを知らない中国の軍事力増強に関して民主、共和両党で構成する「米中経済安保調査委員会」が中国軍の増強で、「米国の対中抑止力、とりわけ日本に関する抑止力が低下しつつある」と警告済みだ。米国がもはや日本を護りきれない可能性を、米議会が超党派で信したことの意味は深刻だ。
 
危機感は米軍も強く共有するところだ。3月31日、米太平洋艦隊司令官、ハリー・ハリス氏がオーストラリアのキャンベラでこう述べた。

「中国は浚渫船とブルドーザーでこの数か月間に(南シナ海で)万里の長城を砂で築いた」
 
中国はかつて、異民族の侵入を防ぐために万里の長城を築いたが、21世紀のいま、最大のライバルと見做すアメリカが南シナ海、さらにその先の西太平洋にアクセス出来ないように、砂の万里の長城を築いたというのである。
 
現場を知る軍の責任者としての率直な感想は核心を突いており、「砂の万里の長城」発言は世界を駆け巡った。CSISがホームページ上に掲載した一群の写真と共に、中国が「サンゴ礁に土砂を入れコンクリートで固め、すでに4平方キロメートル以上の土地を創り出した」実態は広く世界で共有された。
 
ハリス司令官はこうも語っている。20世紀は陸の世紀だったが、21世紀は海洋の世紀である。海洋の世紀において最も重要なのがアジア太平洋であり、アメリカは太平洋国家として存在し続ける。オバマ政権の「アジアピボット」(アジアに軸足を置く政策)はまさにその精神を表しているのであり、アメリカ海軍力の6割を2020年までにアジア太平洋海域に配備する計画が、アメリカのコミットメントを示すものだ、と。
 
しかし、いま、アメリカではオバマ大統領とホワイトハウス、つまり行政府が、事実上、機能停止に陥っていると言ってよい。国防総省や太平洋艦隊司令官がどのような危機的情報を大統領に報告しようが、立法府の有力議員らが警告を発しようが、ホワイトハウスが思い切った対中新戦略を打ち出すことはないのではないか。
 
それでも日本の側から見れば、中国の脅威をアメリカがこれまでになく明確に認識し始めたことを実感できる。にも拘らず、オバマ政権は中国に対して軍事的対抗策を打ち出し得ないのと同じく、経済金融面でも後手の対策に終始している。

AIIBを疑うのは当然
 
アジアインフラ投資銀行(AIIB)で、アメリカは「特別な関係」にあった米英の盟友関係に中国が楔を打ち込むことを回避できなかった。14年秋に、日米欧はG7議長国のドイツのショイブレ財務相を中心にAIIB加盟を見送る方針で一致していたと見られるが、中国の逆転を許してしまった。
 
イギリスが加盟を表明した3月12日、米財務長官ルー氏はイギリスのオズボーン財務相に電話をかけ、30分にわたって「まくしたてた」そうだが、無論、イギリスの決定は覆らず他の欧州諸国も加盟した。つまり国際金融の分野でも、「質的変化」が起きてしまったのだ。
 
金融における質的変化が具体的にどんな結果を生むのかは予断を許さない。中国はいま、AIIBを世界に通用する金融機関として立ち上げるべく、外部から専門家を招いているが、その成果もこれから判断すべきである。
 
中国共産党一党支配政治の下で、国際社会を納得させられる公正かつ透明な融資や資金運用が可能になるのかと疑うのは当然だ。習近平主席が手掛ける目下、最大の仕事のひとつが腐敗撲滅である。自国のお金の管理ができない党もしくは国が、他国政府から出資金を預かって、公正な運用ができるのだろうか。
 
中国は、現在も続けている力任せの領土領海への「侵略」と異民族への弾圧、自由の規制を、AIIBの盟主としてどう説明できるのか。自由を阻害し、国際法を守らない国が、金融では公正に振る舞うと言うのだろうか。

中国がそうした疑問に答えないいま、日米両国がAIIBに入らなかったのは、正解であろう。日米両国の選択をこれからも正解たらしめるためにも、アジア開発銀行(ADB)や世界銀行の改善が急がれる。

『週刊新潮』 2015年4月30日号 日本ルネッサンス 第653号
                      (採録:久保田 康文)

◆「機能性表示食品制度」開始

馬場 伯明



「機能性表示食品制度」が2015/4/1から始まった。事業者(生産・販売者)は、対象となるサプリメント、加工食品、生鮮食料品などについて、国のガイドラインに沿った安全性・機能性の根拠となる情報を揃え国に届出をして受理されれば、60日後に販売できる。届出は順調らしい。

私はこの制度に疑問を持っていたが、始まれば反対しても仕方がない。しかし、「ごまめの歯ぎしり」と揶揄されても、ここで言っておきたい。

この制度の目的は「国民の健康維持・増進に寄与する」ことであるが、その裏面は違うようにも思われる。つまり、国の審査と許可の箍(たが)が外れ、食品の売上は増加するかもしれないが、不確かな(健康)食品が国中に蔓延することが予想される。

産経新聞(「Health」2015/4/30)が、公益社団法人生命科学振興会理事長渡邊昌氏の指摘や助言を引用しこの制度を紹介していた《  》。渡邊氏の次の発言を繰り返し読んでいただきたい。

《 過剰な広告などに惑わされず、科学的根拠をきちんと示しているか見極めるのが重要です。ある程度の期間、情報を収集・精査し、1ヵ月くらいご自身で試した上で続けるかどうか判断するのがいいと思います》。

《・・判断するのがいい》と言われても困る。世間の大方の人(や私)は渡邊氏のような者や専門家ではない。過剰な広告なのか、適正な広告なのかの判断がつかない。科学的根拠の開示も見極めることができるだろうか。私や周辺の素人5人は、そりゃ無理と言う。

成分や栄養素の構成(%)などの表示がある「栄養機能食品」ではなく、国の審査と許可が必要であり限定された機能表示が可能である「特定保健用食品(トクホ)」でもない。

機能性表示食品の急所は国の審査と許可が不要なことだ。食品の機能性の根拠の自社の実験結果や論文を消費者庁に届け出、受理されたら終了。トクホに比べ手続きも格段に簡素化され費用も大幅に安くなる。

しかし、機能性表示食品はあくまでも食品であり医薬品等ではない。だから、特定の疾病に対する治療や予防の効果を記述し、また、効果を暗示する表示はできない。表示の表現の事例としては、役に立つ・緩和する・和らげる・整える・・・などはOKらしい。

ただ、事業者にとり、食品か医薬品かはさておき、重要な目的(真の意図)は、とにかく、不健康な事象に対し、効く・効能がある・役に立つと消費者に思わせ信じてもらうことである。

一方、消費者の希望は明確である。食品の真実の機能性を正確に知りたい。できれば効能も知りたい。しかし、前述したように、一般の消費者にその判断能力はない。♪どうすりゃいいのさ 思案橋!

そこで、恐れながら渡邊氏にお願いする。お身内(素人)のどなたかに、ある機能性表示食品の過剰な広告や科学的根拠の是非を見極めていただきその説明を受けたい。渡邊家の素養があれば可能であろう。

渡邊氏は《ある程度の期間、情報を収集・精査し、1ヵ月くらいご自身で試した上で続けるかどうか判断するのがいい》と話したとあるが、これには、茫然自失、正直言って、あきれた。

全国民(消費者)が多種多様な機能性表示食品をいくつも、1ヶ月食い続けて判断するだって?!そんな膨大な無駄はお断りである。そうしないために国が事前の審査と許可を行ってきたのである。

そもそも、機能性表示食品は1ヶ月摂っただけで効能があるのか。いや、効能の表示は禁止だから、効能の有無はわからない。それでは消費者は困る。やはり、これも賢明なお身内の出番しかないか(!)。

さらに渡邊氏は迫る。《大事なのは消費者自身の判断だ》として、《また、過度の期待をして適量以上に摂取しがちなので注意が必要(記者の聞き書)》などと説教。事業者にではなく消費者に責任を押しつける。

私は渡邊氏には面識もなくまた個人的な恨みなどもない。産経新聞の編集方針かもしれないが、記事の中で氏は事業者の義務と責任にほとんど触れない。氏の発言には違和感を持たざるを得ない。

私的な提案であるが、機能性表示食品制度の開始にあたり、国(消費者庁)に最低限速やかに実施してもらいたいことを記す。

第1に、事業者による情報開示。事業者と消費者の商品(食品)の情報(質と量)には天地の差がある。事業者に、機能性・適正摂取量・副作用(マイナス面)などの詳細な開示を義務付ける(PC・スマホ・紙資料等)。

第2に、消費者の教育。消費者が過剰な広告や科学的根拠の是非を見極めることができるように、消費者への各種レベルの教育を行う。特に高齢者には、オレオレ詐欺に準じた丁寧な対応が必要である。

第3に、違法・不適切な行為をした事業者への厳罰。この制度は被害が発生してから手を打つ事後対処方式である。だから、発生したら、即、厳しい行政処分を執行する。

第4に、上記の対応と合わせ問題点が悪化しないよう総合的な先手の対策をお願いしたい。

実際、足元でも不適切な宣伝・広告が多い。たとえば、TVで芸能人が膝を回し♪ぐるぐる〜グルコサミン〜」などとイメージ宣伝をしている。高齢者の一部はそのまま盲信してしまっているだろう。

産経新聞社にお願いしたい。「大切なのは消費者の賢い選択」も大切かもしれないが、その前に「大切なのは事業者の責任・義務・指導・罰則」がもっと大切である。この制度の第2弾の事業者編を期待したい。(了)

(追記) 
ところで、渡邊氏のお身内による機能性表示食品の広告や科学的根拠等の見極めはいつ済むのだろうか。一刻も早くその賢い選択結果をぜひ拝聴したい。(2015/5/5 千葉市在住)