“シーチン”修一 2.0
「腰」。肉月に要、体でとても大事なところという意味だろうが、ここ数
日、腰痛で立っていても座っていても不快で、キーボードを打つのもシン
ドイ。すぐに疲れる。Mr.お達者クラブのような元気な老人もいて、「あ
あ、老化はなんと個体差が大きいのだろう、70過ぎで山で遭難する人もい
る、子供をなす上原謙みたいな人もいる、すごいなあ」と感動したり呆然
としたりする。
晩秋の病棟日記から。
【2016/11/12】入院以来、下痢が続いて困惑していたが、原因は牛乳だっ
た。病棟ではしょっちゅう牛乳が出る。小生は2003年に胃を切り取ってか
ら牛乳を飲むと下痢をしたので、家ではほとんど飲まなかったし、乳製品
はまずダメ。それが常態化していたのですっかり忘れてしまい、病棟では
飲食していたからひどい目に遭ったわけだ。
ナースにその旨を伝えて乳製品に代わるものを用意してもらうことになっ
た。メデタシメデタシ。
暇つぶしでベランダで柔軟体操をしながら庭の喫煙所を観察すると、2F病
棟の40人(男10人、女30人)中、喫煙率は男30%、女17%。ところがJTや
厚生労働省の調査では、男30.1%、女7.9%で、業界人は「女の喫煙率は
体感や実態よりもずいぶん低いのではないか、信用できない」と以前から
疑問視していた。なぜそうなるのか・・・
アンケートで「吸うか吸わないか」の設問に、女は「1日にピアニシモ3本
だし、そのうち禁煙するから“吸わない”にしておこう」となるのではない
か。女は「失礼ね、私はウンチなんかしたことありません」と言いそうで
ある。(そう言えば入院中の“士族のお嬢様”を誇りにしていた母は排便は
1か月に一度ほどだそうで、病院中の話題になっていたっけ)
精神病患者の中には「私は病気ではない」と服薬しない(で捨てる)人が
珍しくないため、服薬は毎回、ナースステーションでしっかり監視されな
がらする。カウンター前に行列し、自分の番が来ると「修一です、飲みま
す!」と宣言し、ナースが薬をチェックして「はい、どうぞ」と許可を得
てから飲まないと叱られる。
カウンターは3人が同時に使え、左端から飲み終えると去るから、2人は左
に寄り次の人のスペースを作る。そうしないと40人が飲み終えるまでに時
間がかかり過ぎてしまうからだ。一種の“トヨタ流カイゼン”で、これをス
ムースにできないと「こいつ、新人か?」「ビョーキじゃないの」などと
病人から白い目で見られるのだ。
行列を乱して割り込む患者もたまにいるが、ナースから厳しく叱られる。
支那系かもしれない。
飲み終えたら「お世話様です」とか「ありがとうございました」と礼をす
る。ナースは「ご苦労様」と患者をねぎらう。日本人は規則や様式美が大
好きだ。茶道ならぬ薬道。社会生活に慣れるという意味もあるかもしれない。
その服薬の際に女の2/3は自己申告で液状便秘薬を各自のコップに別途も
らっている。若い女の子が堂々と「4日間出ていませんから20滴お願いし
ます」などと目の前で言うのを見ると、小生はちょっとたじろぐ。娑婆で
はない光景だ。
女は本音と建前の乖離が結構大きいのではないか。世論調査などでは自動
電話によるRDD調査が増えているが、多分、暇を持て余した老女しか回答
しないだろうし、精度を上げるために一戸一戸、戸別訪問面接しても、昼
間に家にいるのは老女を筆頭に女が多く、男の標本数はどうしても少なく
なってしまう。そのために日本では昔は調査員が数合わせのために標本を
でっちあげることがあったとか。
今は「1標本で○○円の報酬」というのが普通のようで、このために調査員
が本当に面接したかどうかを管理者が電話で確認するそうだ、「アンケー
トにご協力いただき、ありがとうございました」と。「はいはい」なら
OK、「え、なんのこと?」ならアウト。不正が発覚すると、調査員のその
日のギャラはすべてパーになるという。
小生は学生の頃、交通量調査をしたことがあるが、1時間当たり15分調べ
て4倍にして報告するのが先輩から教えられた“伝統的手法”だった。
というわけで戸別面接の調査員は男の標本集めに四苦八苦しているが、こ
れは米国でも同様だろう。政治に絶望していたり、失業して酒やクスリに
逃避している人も少なくないだろうが、多くのプアホワイトは食うために
昼間は留守がちだから、世論調査の網にかからずサイレントマジョリティ
化する。
リベラルの連中はメインストリームしか見ない。ビバリーヒルズの一本裏
道歩けば、そこはゴミだらけ、舗装はボロボロ・・・現実、リアルを見な
い、見えない、見たくないリベラルは大敗北するしかない。
15時に“マスオさん”こと長男来。カミサンが来秋65歳で退職し、多くの時
間を家で過ごすことになるので、次の「退職後のお勧めメニュー」を提案
することになった。
・犬を飼う(保健所からもらう)
・奄美に帰省する(1〜2か月)
・油絵(サークルに入る)
・美術館巡り
・旅行(仲良し4人組で)
彼女の性格は絶対変わらないから小生が耐えるしかない。思っただけで憂
鬱になる。カミサンにオモチャを与えないと、小生がオモチャにされてし
まう。
カミサンは小生の措置入院受け入れを勤め先の病院にも相談したため多く
の職員に事件が知れ渡り、「もう勤めに出たくない」と言っているとか。
辞めるかもしれない。
家を継ぐ意思のない長男は「N(次女、長男にとっては姉)を家に入れれ
ば(カミサンの話し相手になるから)いいんじゃないか」と言うから、
「それは皆で決めてくれ」と言っておいた。
16時、Dr.と面談。先週カミサンはDr.と面談したが、カミサンは自分の言
い分、自分の解釈、つまり「私は正しい、修一が間違っている」と言い
募っていたようだ。
Dr.は多くの医師同様、健康長寿の信奉者である。小生は「生きることは
手段であり、目的ではないよね、長生きして何をしたいの?」という“長
生き懐疑派”である。両者は永遠に分かり合えない。
午後8時になると各自の部屋に戻り、9時には消灯だ(30Wほどの電球が2つ
点いているからちょっと薄暗い程度)。患者の誰一人として仕事と言える
ようなことは何もしていない。ひたすら一日一日を過ごすだけ。
「療養」と言えばもっともらしいが、無為徒食の日々のようである。仕事
がないと人は堕落する、呆ける、粗大ゴミ化する。本人にも周囲にもいい
わけない。(つづく)2017/3/7