2015年03月16日

◆日印が協力すべきことは

平井 修一


知人のお姉さんの作家・篠田節子氏のインタビューが載っていた。塚田紀史氏の「インドでは『日本の良識』は通じない」(東洋経済オンライン/2/15)から。

<古き因習と最先端ビジネスの狭間でうごめく巨大国家を圧倒的筆力で描き出す。『インドクリスタル』(角川書店)を書いた作家の篠田節子氏に聞いた。

篠田 通訳はデリーのシーク教徒の人で、訪れたオリッサ州に入ると言葉が通じない。オリッサ州でも地域によりまた言葉が通じなくなる。名前の由来を聞きたいのに、同じ州のガイドでも言葉が通じなくてわからないことが多々あった。

──インドについては社会の描写も難しい。

篠田 カースト制度で分断された社会だ。オフィスで同じ釜の飯を食べようと誘っても拒否される。アウトカーストの人を実力があるからと班長にして、バラモン階級の人をその下で働かせたときにとんでもないことが起きた、ということも聞いた。そこは日本人には理解しがたい理由でいろんな壁ができている>(以上)

小生はインドへ行ったことはないが、神秘的というか、複雑な国のようである。将来は日印は軍事同盟化するだろうからインドは大事な国だ。外務省のサイトで調べてみた。

民族:インド・アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族等

言語:連邦公用語はヒンディー語、他に憲法で公認されている州の言語が21

宗教:ヒンドゥー教徒80.5%、イスラム教徒13.4%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.9%、 仏教徒0.8%、ジャイナ教徒0.4%(2001年国勢調査)

識字率:73.0%(2011年国勢調査)

政治:2014年4月から5月に行われた第16回下院議員総選挙では、インド人民党(BJP)が単独過半数を超えて大勝し、インド人民党(BJP)政権(ナレンドラ・モディ首相)が発足。今年1/17に「第8回日印外相間戦略対話」が開催された。岸田外相のスピーチから。

<太平洋とインド洋は,自由の海,繁栄の海として,ダイナミックに結合しつつあり,地域諸国はめざましい発展を遂げています。

一方で,この地域が安全保障上の脆弱性を抱えることも事実です。インド太平洋地域の平和と繁栄が,日印両国のみならず世界にとっても重要なものとなっている。

そのような中,日本とインドの特別なパートナーシップがインド太平洋地域においてどの様な役割を果たすべきなのかについて,私の考えをお話ししたいと思います。

日本は,今後とも国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の旗のもと,インド太平洋地域はもとより,世界の平和と安定のため,一層貢献していきます。

たとえば,今年6月20日に東京で,「アジアの平和構築と国民和解,民主化に関するハイレベル・セミナー」を開催し,アジアにおける平和構築の経験と教訓を共有し,それを世界に発信する考えです。

そして,更に,日印の特別なパートナーシップの下で,インド太平洋地域の新時代を築くために貢献していきたいと考えています。

インド洋から南シナ海を経て太平洋に至るこの地域は海によって繋がれた地域です。共に海洋国家であるインドと日本は,シーレーンの安全に死活的利益を託す国です。

国際法に基づいた主張,主張を通すために「力」を用いない,紛争の平和的解決,という安倍総理が提唱した「海における法の支配の三原則」が徹底されることが,この地域の平和と安定の基盤となることは論をまちません。

日本とインドは,防衛当局間の共同海上訓練,海上保安当局間の対話や連携訓練の実施など,海上安全保障分野での協力を積み重ねてきています。今後,救難飛行艇US−2を含む防衛装備協力や印米マラバール海上訓練への日本の継続的参加など更なる協力強化を進めていくことが重要です。

さらには,ASEAN地域フォーラム(ARF)や東アジアサミット(EAS)などのマルチの枠組みにおける日印協力もますます重要になってくるでしょう。

日印の特別なパートナーシップの下,「開かれ安定した海洋」を守るという私たちに課せられた重責を,より積極的に担っていこうではありませんか。

インド太平洋地域の平和と繁栄は,21世紀の世界の平和と繁栄に大きく貢献するものです。モディ首相が訪日時に述べられたように,日印関係は21世紀のアジアの方向性を決定付ける特別なパートナー関係なのです。

世界で最も可能性を秘める二国間関係を有する日本とインドで,インド太平洋を繋ぐ3本の架け橋を更に強化し,この地域の潜在性を大いに開花させ,地域全体ひいては世界の平和と発展を共に牽引していこうではありませんか。

日印が共に努力すれば,必ずやこの世界に前向きな変化をもたらすことができるでしょう>

日印さらにはアセアン、豪州にとって最大の敵は中共だ。中共からすればこれらの国は敵である。中共はこれらの国を軍事的に包囲するために「真珠の首飾り」作戦を進めてきたが、最大の真珠であったスリランカが政権交代で中共べったりを止めてしまった。

習近平はさぞやがっかりしたろうが、権力の最大の岩盤は軍隊=武力だから春節を前に軍に「いつまでも党の指揮に従い、党の命令を実行しなければならない」と発破をかけた。

<【新華社西安2月18日】春節が間もなく訪れるにあたり、習近平主席は16日に駐西安部隊を視察し、将兵を見舞い、党中央、中央軍事委員会を代表して人民解放軍全軍の指揮官と戦闘員、武装警察の将兵全員、民兵予備役全員に新春の祝福を送った。

習近平主席は次のように強調した。

国防と軍隊の建設目標を既に明確にしたが、着実に実行するには指導幹部という「カギの少数」を掴むことが肝腎だ。

指導幹部は使命感を強化し、「三厳三実」(「三厳」は、厳しく身を修め、厳しく権力を使い、厳しく自分を律すること。「三実」は、切実に事を計画し、切実に起業し、切実に身を持すること)の要求を実行に移し、強大な軍隊の目標実現において模範的かつ率先的な役割を果たさねばならない。

理想信念を率先的に堅守し、軍隊に対する党の絶対の指導権を揺るぎなく堅持し、党の刷新した理論を深く勉強し、延安精神などの優良な伝統を発揚し、政治的な紀律と政治的な規則を厳守し、いつまでも党の指揮に従い、党の命令を実行しなければならない>

「俺の言うことを聞け」というわけだが、利権を取り上げられた幹部にとって習は敵である。面従腹背で、いざという時に「敵は中南海にあり」となるかもしれない。(2015/3/14)

◆当たり前のことを言える時代やっと

阿比留 瑠比



憲法、東京裁判批判、ようやく当たり前のことを言える時代になった…風向き変わり萎縮する左派言論人

ようやく当たり前のことを当たり前に言える時代になってきた。最近、しみじみそう感じている。

「事実を述べたものにすぎず、首相として事実を述べてはならないということではない」
 
安倍晋三首相は6日の衆院予算委員会でこう明言した。過去に産経新聞のインタビューで現行憲法について「連合国軍総司令部(GHQ)の憲法も国際法も全くの素人の人たちが、たった8日間で作り上げた代物だ」と語ったことについて、民主党の逢坂誠二氏の追及を受けてのことだ。

翌日の在京各紙で、この発言を特に問題視したところはなかった。一昔前ならば、地位ある政治家が憲法が米国製の即席産物であるという「本当のこと」を指摘したならば、右翼だの反動だのとメディアの批判にさらされ、袋だたきに遭っていただろう。

また、2月26日の記者会見で東京裁判の法律的問題点について言及した自民党の稲田朋美政調会長はその後、産経新聞の取材に「以前は東京裁判を批判するなどあり得ない、という状況だった」と振り返った。

文芸評論家の江藤淳氏のいう戦後日本を長く覆ってきた「閉された言語空間」はほころび、自由闊達(かったつ)な議論がかなりの程度、可能になってきたようだ。

かつて「国益」も忌避

慰安婦問題もそうだ。かつては「従軍慰安婦」という言葉が戦後の造語であることを指摘するだけで、「慰安婦の存在を否定する人たち」と偏見に満ちたレッテルを貼られた。

軍や官憲による強制連行の証拠は見つかっていないという事実を述べると、元慰安婦の人権を無視する暴論だと反発された。平成8年に早大学園祭のシンポジウムを取材した際には、同様の趣旨を述べた藤岡信勝東大教授(当時)に学生らが「元慰安婦の前でも同じことが言えるのか」「教授の感性が許せない」などと罵声を浴びせ、議論にならなかったことが強く印象に残っている。

さらに現在では、野党議員も含めて国会で普通に外交上の「国益」が論じられているが、これも以前は利己的で自己中心的な用語として忌避されていた。

「国益を考えない援助はあるのか。ODA(政府開発援助)政策の中に国益の視点があるのは当然だ」

平成15年6月の参院決算委員会で、小泉純一郎首相(当時)が中国へのODA見直しに関してこう述べた際には永田町界隈で話題を呼んだ。それまでは国益を堂々と追求することについて、どこかうしろめたく思う風潮があったからだろう。

検閲後遺症から回復

戦後の占領期、GHQはメディアに(1)東京裁判(2)GHQが憲法を起草したこと(3)中国−などへの批判や、「占領軍兵士と日本女性との交渉」などへの言及を禁じ、厳しく検閲していた。

この検閲の後遺症と身に染みついた自己規制から、日本社会は少しずつ回復してきた。ちょっと前までは特に保守系の言論に対し、甚だ不寛容な空気が支配的だったが、随分と自由度が増し、風通しがよくなったものだと実感している。


ところが逆に、左派系言論人、ジャーナリストらがこのところ「政権批判を自粛する空気が広がっている」などと盛んに吹聴している。政権を批判したら、ネット上で激しくバッシングされるのだそうだ。

彼らは、ちょっと風向きが変われば萎縮する程度の覚悟で、これまで言論活動をしてきたのかと少々驚いた。(政治部編集委員)

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】2015.3.12


2015年03月15日

◆神聖さがなくなった生活

加瀬 英明



平成27年が、明けた。妻と徒歩で近所の平河天満宮へ、初参りに出かける。

絵馬と破魔矢を求めて、散歩がてら事務所に寄って、年賀状の束を受け取ったら、日大OB誌『熟年ニュース』の主宰者の中島兄者から2万円の「お年玉」が届いていた。

「お2人で焼肉でも、お楽しみ下さい」という、手紙が添えられていた。お年玉を貰ったのは、もう七十数年振りのことだ。

来年もお年玉にふさわしいように、この1年、精進しなければなるまい。

靖国神社に詣でる。歩いて20分あまりだが、わが家の注連(しめ)の内の行事の1つだ。

毎年のことだが、松の内に友人夫婦が7、8組、訪れてきた。

型通りに、屠蘇、お節料理、日本酒、福茶で歓待する。酒を酌みあって、楽しい時間を過した。

もっとも、年始というよりも、正月は子や孫とともに過すべきところを、核家族化してしまったために、家にいてもどうしようもないので、たずねてくれるのだ。

新宿通りに見渡すかぎり、街灯から日の丸の小旗が下っているのが、目に染みた。

それにしても、毎年、正月らしさが失われてゆくのは、淋しい。

元日といえば、聖なる日だった。初日(はつひ)、初明り、初空、初富士、神参り、手や顔を洗う初手水(はつちょうず)、初湯、初風呂、初化粧、烏(からす)が啼くのを初鴉(はつがらす)、初売り、初買いといったように、新年といえば夥(おびただ)しい数にのぼる言葉があったのに、すっかり忘れられるようになった。

今年も初荷を見ることが、1回もなかった。初荷馬という言葉もあったが、つい50年前までは、都心をゆっくりと牛車が通っていたのを憶えている。

初詣では、近所の鎮守様か、産土神(うぶすながみ)のお社(やしろ)にお参りするものだが、数十万人から100万人以上が、有名神社や、仏閣に集中するようになっている。神社や、仏閣が観光施設化しているのだ。

生活から神聖さがなくなった。1年を通して、年に1回だけの時間から、家族のつながりまで、神聖なものでなくなった。


風雅(ふうが)とは大きな言葉老(おい)の春 高浜虚子(1874年〜1959年)の句だが、「老いの春」は新年のことだ。もし今、虚子が生きていたとしたら、この句が生まれることがなかったろう。風雅という言葉も死語になった。

私が70代なかばを過ぎて、愚痴っぽくなっているのではない。あらゆ るものが均等化されて、私たちの生活から減(め)り張(は)りがなくなった。もとは邦楽の用語で、乙帳(めりは)りとも書く。音の高低や、強弱、抑揚、間(ま)を意味している。

人々がまったく締まりがない、毎日を送るようになっている。

男女の性別も、老若の区別もない。新しいものだけを大切にして、古いものを捨ててゆく。落着きのないアメリカの若者文化が、世界を支配している。

そこで高齢者が老けることも、美しく枯れることもない。だから、私も休むことを許されずに、社会の第一線で働かなければならない。

毎年、近くの道場の武道始式に招かれて、短い挨拶をする。

例年のように、杖道、空手の高段者による組み手、居合道、剣道、警視庁逮捕術師範、琉球古武術の名手による烈迫の演武が、繰りひろげられた。

私は祝辞として、「1月2日の宮中一般参賀に、皇居を8万1千人の国民が訪れたが、日の丸の小旗の波が美しかった。皇室と神道と日本刀は、1つである。このところ、伊勢神宮、出雲大社、石清水八幡宮と、御遷宮が続いた。伊勢神宮の遷宮式に当たっては、刀匠が20振以上の新刀を造って、お納めしなければならない。男子皇族が誕生されるたびに、お護り刀が造られる」と前置きして、つぎのように話した。

「元寇、幕末の2つの大きな国難に当たって、武の心が日本を護った。徳川260年は泰平の世が続いたが、武に携わる者が日々、術(わざ)と精 神を磨き、つねに臨戦態勢にあったことが、幕末の国難を乗り越え、 120年前の日清と、110年前の日露戦争の危機を、克服することがで きた」

そして「アメリカが力を失うなかで、中国の脅威が募っている今こそ、武を振興しなければならない」と、結んだ。

陸上自衛隊の銃剣道の錬士が2手に分かれて、気合の入った型も披露された。木銃が銃剣を装着した三八歩兵銃の長さで、陸上自衛隊が帝国陸軍の伝統を受け継いでいるのが、頼もしかった。

新年の靖国神社の参詣者は、数千人が社頭から長い列をつくっていた。今年は、若い男女が多かった。心強い。

靖国神社を嫌う者がいるが、どうして国を愛して生命を捧げた御英霊を、愛することができないのか。

道場開きが終わってから、大相撲の正月場所が始まった。

大相撲は神々に奉納する神事である。だから力士は、神々しい。マスコミが大相撲をゴルフや、サッカーや、フィギュア・スケートとかわらない、
スポーツとして扱っているのは、嘆かわしいことだ。

正月というと、かつては主婦が竃(かまど)に火を点じる、「初竈(はつ かまど)」という言葉もあった。

お節料理がデパートや、スーパーで売られているのも、嘆かわしい。いまでは、女が拭き掃除や、飯炊きをしなくなった。

年末から新年にかけて、マクドナルドのファストフードに異物が混入しているといって、マスコミによって叩かれた。しかし、マクドナルドだけが悪いわけではない。日々の糧(かて)は工場ではなく、台所でつくられるべきものだ。なぜ、マスコミはそれを詰(なじ)らないか。


◆日本買い物旅行の中国人の裏側

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015)3月14日(土曜日)通巻第4488号>  

人民元高、円安を背景にあれほど嫌いな筈の日本に中国人の観光ブーム。一部に歓迎論もあるようだが、大方は冷ややかに或いは迷惑顔でみている。そのマナーの悪さは日本人の顰蹙を買っている。

買い物の中味は炊飯器、クスリ、粉ミルクが定番。一眼レフのカメラ、ブランド品、子供服などと続くが、隠れたベストセラーは紙おむつだ。

宇宙に人工衛星を打ち上げ、大陸間弾道ミサイルを飛ばす中国が、何故かまっとうな紙おむつを作れないのだ。

中国製玩具、栄養剤、クスリ、粉ミルク、ペットフーズなどに大量の有毒物質が見つかっているが、紙おむつも紙質の悪さ、漏れ、そして有毒物質が含まれているため赤ちゃんの肌に腫れ物が出来る。かぶれる。糞尿が漏れるなどクレームの山となった。そこで日本観光にやってくる中国人は目の色を変えて紙おむつも大量に買い込むのである。

在日華字紙のなかでも、もっと幼稚な反日論を展開する『網博週報』(1月30日号)は、こう書いた。

「マナーの低い中国人商人らが有毒物質を含む原料を使って紙おむつを製造、ひたすら利益をむさぼっている。こうしたビジネスマナーの劣化こそが、日本の紙おむつを中国市場でベストセラーとした原因である」。

中国では毎年新生児が1600万人も増える。ゼロ歳児から3歳児までの紙おむつ市場は7000万人、毎日消費される紙おむつは3000万枚以上という巨大市場である。この魅力的なマーケットが、中国劣化製品のために日本製品が独占的に売れ続けるとは皮肉なことである。

日本のメディアは高級炊飯器などの「爆買い」に熱狂する中国人観光客の免税店での風景を、なんだか楽しそうに伝えた。

しかし買い物に熱中しているのは中国の富裕層でない、彼らは中産階級である。しかも買い物の目的は帰国後の「転売」である。

富裕層、じつは或る事態の変化に鬱勃と日々を過ごしているのだ。

9・11テロ事件以後、米国はスイスに最大の政治圧力をかけつづけた。

「テロリストの資金洗浄に利用されているので、銀行口座の情報を公開せよ」と。ついにスイスは取引に応じた。3年ほどの猶予期間があったためスイスの秘密口座からカネはざっと世界のほかのタクスヘブンへ逃げた。

その多くのリストが今度は「スイスリークス」に漏れ、中には李鵬の娘、李小琳の名前もあった。日本人建築家の名前もあった。

2月下旬、ジュネーブの検察当局はHSBC(香港上海銀行)スイス支店を捜索した。容疑は「脱税、麻薬取引、マネー・ロンダリング、武器輸出入決済の疑いあり」。

2007年からのリストでは世界200ヶ国からおよそ10万人がスイスのプライベートバンクに合計で1000億ドルを秘匿していた。

これから何が飛び出してくるか? 中国の本当の富裕層は買い物どころではないのである。

 (この文章は北国新聞、3月9日付け「北風抄」からの再録です)

◆襲撃されても「韓国を愛する」米大使

秋田 浩之
  


今月5日、韓国人の男に襲撃され、ほおを約80針縫うなどの重傷を負った米国のリッパート駐韓大使(42)。本人はそれでも、韓国への「愛情」は揺らぐ どころか、さらに深まったと強調している。本心はどこにあるのか。

「今回の事件で韓国への愛情はさらに深まり、米韓の絆もより強固になった」。リッパート大使は10日、ソウル市内の病院から退院し、こう力説した。

さらに韓国語で「雨降って、地固まるです」「ともに進みましょう」と呼びかけている。病院内で開いた記者会見での発言であり、外交辞令も含まれている だろう。それでも興味深いのは、襲撃事件の直後から、彼が一貫して韓国への「愛 情」を発信していることだ。

たとえば、病院での療養食。9日付の韓国紙・中央日報によると、リッパート氏は手術後、トーストやサラダなどを軟らかくした洋食を口にしていた。とこ ろが7日の昼からは、韓国料理を出してほしいと病院側に要請。ソウルの米大使館幹 部には「キムチを食べると、力が出る」と話したという。

■大統領の最側近

昨年に着任して以来、リッパート氏はさまざまな形で、韓国への親しみをアピールしてきた。赴任後に生まれた長男に韓国風のミドルネームをつけたほか、 公邸から大使館には歩いて通い、道行く人々とも気軽に交流してきた。

メディアの報道によると、襲撃されても親韓感情を絶やさないリッパート氏に、韓国内では好感が広がり、親米ムードすら高まっているようだ。

そんなリッパート氏とは、いったいどんな人物なのか。歴代の駐韓大使の中でも、「米大統領との関係の近さで、彼は群を抜いている」(米韓関係筋)。

オバマ大統領が上院議員だったころから補佐官を務め、側近中の側近といわれる。政権1期目はホワイトハウスの要職を務め、ソウル赴任前は国防次官補 (アジア・太平洋担当)や、国防長官の首席補佐官を歴任。オバマ政権の安全保障政策 に深くかかわってきた。

筆者も過去に、数回、話す機会があったが、そこで受けた印象は「辣腕のリアリスト」。アジアの専門家ではないが、日米関係の大切さを理解し、同盟の強 化に奔走していた。リッパート氏が国防次官補だった当時、防衛相を務めた森本敏氏 も、彼の手腕を高く評価する。

「自分の大臣在任中に、オスプレイの沖縄配備では、リッパート氏が米国防総省内や海兵隊を説得して、事故調査の提出を急がせたり、配備時期を調整した り、積極的に動いてくれた。いま協議が進んでいる日米ガイドライン(防衛協力のた めの指針)の見直し検討についても、彼が前向きに取り組んでくれたので、当時のパ ネッタ国防長官と良い合意ができた」

■冷徹な目的も?

これらに共通するのは、いったん目標を決めたら、とことんその実現を追求する姿勢だ。だとすれば、彼が韓国に親しみを示すのも、ただの感情だけでな く、冷徹な目的があるのかもしれない。

「日米同盟の強化に携わったリッパート氏にとって、次の目標は日米韓の安保協力を動かすことにある。そのためにも、まず、対中傾斜が指摘される韓国を 米側に引き戻し、米韓同盟を立て直そうとしている」。内情に詳しい韓国の外交専門 家はこうみる。

襲撃事件という「雨」が降ったことで、米韓の「地」は固まるのか。その行方は、日本の安保にもかかわってくる。

秋田浩之(あきた・ひろゆき)
1987年日本経済新聞社入社。政治部、北京、ワシントン支局などを経て政治部編集委員。著書に「暗流 米中日外交三国志」。
日本経済新聞 電子版2015/3/13
                     (採録:久保田 康文)

◆TPP、農業再生の好機とせよ

櫻井よしこ


高原レタスの産地、長野県川上村の農家の平均所得は年収2500万円。後継の人材も育ち、都会から若い女性たちが嫁いでくる。成功の鍵は農協支配から逃れたことだと農協問題に詳しい屋山太郎氏が語る。

「川上村で最初にレタス生産を始めた農家に、農協は指示に従わないなら水を止めると脅したのです。その農家は屈するどころか反対に、『止めてみろ、訴えてやる』と応酬した。いまでは川上村の成功を誰もが認めるでしょう。農家を縛ろうとした農協の敗北ですよ」
 
2月9日に安倍政権が決定した農協改革案は、全国農業協同組合中央会(JA全中)が下位の地域農協に強い監査権限を持ち続けることを許さないという大事な点はきっちりおさえた。4年後、全中は農協法から外れて一般社団法人になり、各農協に対する監査権限を失う。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏が説明した。

「農協法に担保されたこの監査権限こそ、全中は守りたかった。農協組織の末端まで支配できる最重要の手段ですから。安倍首相側が全中を農協法から外すために出した手練手管の策が、農協加盟の准組合員の数を規制するという条件でした」
 
農協の正組合員は467万人、517万人の准組合員のほうが多い。農協は准組合員の給与を預り、保険を扱い、生活用品のあらゆるものを買ってもらっている。地域農協が集める金はJAバンク(JA・信連・農林中金)に預けられ、その預金量は90兆円に達する。三菱東京UFJ銀行に次ぐ日本第2のメガバンクだ。
 
その中からの農家への貸し出しは全体の精々2%程度だ。他方、住宅ローンをはじめ准組合員への貸し出しは全体の約30%、残りの70%は有価証券運用やウォールストリートでの株式投資などだ。

「地域農協にとって准組合員を規制されたら経営が成り立たない。絶対呑めない条件を出された地域農協は、准組合員を取り上げられるくらいなら、全中の特権であり、その下で自分たちも行使している監査権限などを諦めようと考えたのではないでしょうか」

相乗効果を生みだす

農協組織の中央と末端にくさびを打ち込んだ格好である。かつて農水省に籍を置いた山下氏であればこそ、この種の駆け引きを見透かすことができる。実は氏は、改革志向が強すぎて、変化を嫌う農水省と相容れずに退官「させられた」人物だ。
 
このような状況下で、いま一番切実な変化を迫られているのは地域農協でもある。力のある農家は独自の仕入れや販売ルートを開拓できるが、大半の農家は肥料、農薬、タネ、農機具などを農協から買わされ、農産物も農協を通してしか販売できなかった。地域農協は全中の指示の下、農家を縛りつけておく楽な道を歩んできた。しかしいま、全体の流れが変わりつつある。
 
地域農協が生き残るには、全中の方ではなく、個々の農家の方を向いて仕事をし、新しい可能性に挑戦して成功した農家と歩調を揃えるしかない。その点、今回の農協改革案はやる気のある農協とやる気のある農家を結びつけ、相乗効果を生みだすだろう。
 
地域農協の選択肢としてもうひとつ考えられるのが、一般の生活協同組合に近づくことだ。山下氏が語る。

「農協が農業を切り離して地域の協同組合になるのもひとつの道です。農家を助ける本当の農協組織は、専業農家の自主独立の精神を支えてくれる企業があって初めて可能です。それができない農協は、いっそ農業に関わらないほうがいい」
 
農業が遂に変わるとして、5月にもまとまると言われている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に日本の農業は勝ち残り、成長産業になれるのか。山下氏は楽観的だ。

「まず牛肉です。関税率はいま38・5%、これを10年単位の時間をかけて9%から10%に下げます。これで畜産農家が潰れるかと言えば、そうはならないと思います」
 
氏はざっと以下のように説明した。たとえばかつて100円で輸入された牛肉は関税をのせて138・5円で国内に入っていた。ところがいま円は3年前より約5割も下がっている。

100円だった輸入価格が約150円になり、この時点ですでに関税以上の効果が生じている。従って、関税率が10%に下がろうと、畜産農家に大きな損害はないというわけだ。しかも、関税率を下げるのはずっと先のことである。

「日本の和牛産業は90年代以降、驚く程進化しました。和牛の卵子と精子で受精卵を作り、乳牛のホルスタインに移植します。体格の大きなホルスタインにとって体格の小さな和牛のお産は負担が軽くてすみます。

お乳の出がよくなり生まれた和牛も健康に育ちます。優れた技術の確立で和牛をどんどん輸出する。農協改革でエサ代を減らし、和牛生産コストを下げれば、競争力は強化されます。加えてアメリカ産牛肉と和牛は完全な棲み分けが可能なので、TPPは全く心配ないでしょう」

「数字のマジック」 

むしろ複雑なのが豚肉である。アメリカが売りたいのは主として、ハムやソーセージ加工用の、値段は安いが関税率が高い低級部位の豚肉だ。一方、奇妙なことに輸入豚肉にかかっている関税率は、税率の低い高級品と低級品を巧みに組み合わせて、「全体で4・3%」という最低水準の枠組におさまるように輸入業者が調整しているのだ。

「彼らは関税の仕組みをよく研究し極めて賢く対応してきました。ですからいま、書類上で高く設定されている低級部位の豚肉の関税率が何年か先に下げられても、4・3%という十分低い関税率で勝負しているいまと比べてどれだけの影響があるのか、と疑います」
 
最後にコメである。

「数字のマジックに騙されてはならないのです。いま、制度として存在するのはキロ当たり341円の関税だけです。対して日本のコメは卸売価格でキロ当たり200円。

仮に外国米をただで輸入しても関税をのせればキロ341円。日本市場ではどんなに安い外国のコメも日本のものより高くなる仕組みです。加えて質を考えれば日本のコメの競争力は保たれます。ですから、関税を下げるべく方針転換すべきだったのに、関税を守りミニマムアクセスの枠を増やした。コメだけは失敗でした」
 
日本はいまミニマムアクセスとして、毎年77万トンのコメを輸入しているが、さらに5万〜10万トン増やす方向に向かいつつある。コメ余りの日本が輸入を増やすのではなく、関税を下げる方向で勝負する方が得策だとの山下氏の主張は合理的だ。
 
TPPは交渉中だ。合理的多角的に考えて、守りより攻めの農業によって日本の繁栄を実現したい。

『週刊新潮』 2015年3月12日号 日本ルネッサンス 第646回
                     (採録:久保田 康文)

◆「戦艦武蔵」の所有権帰属はどうなる

大亀 将生

 

 米マイクロソフト社の創業者の一人であるポール・アレン氏が率いる調査チームが、フィリピンの領海内の水深1000メートルに沈んでいた「戦艦武蔵」を発見したそうです。

 「戦艦武蔵」と言えば、姉妹艦の「戦艦大和」とともに、第二次世界大戦下で世界最大級の戦艦としてあまりにも有名です。

 ところで、今回、海底で発見された「武蔵の所有権」は、誰に帰属するのでしょうか。

 発見者のポール・アレン氏なのか、もともとの所有者である日本国(当時の大日本帝国)なのか、あるいは、フィリピン国なのか。

 因みに、日本には、「遺失物法」という法律があります。

 同遺失物法は、遺失物の所有権はもともとの所有者に帰属することを原則としながら、同法28条1項は、遺失物が無事に所有者に返還された場合、所有者は、当該物を拾ってくれた者に対して、当該物の価格の100分の5以上100分の20以下に相当する額の報労金を支払わなければならないと規定しています。

 とはいえ、「武蔵」が発見されたのは外国の海底ですので、日本の遺失物法の適用はありません。
 
 今回の場合、適用の可能性のあるのは、フィリピン国の法令のほかに、水中文化遺産保護条約、国際法である海事法などがありますが、「武蔵の所有権の帰属」についての明確な回答は難しそうです。
 
 もっとも、ポール・アレン氏は、仮に同氏が「武蔵の所有権」を取得したとしても、これを日本に寄贈するという意向を示しているそうです。
 
 最終的には、1944年の沈没から70年以上の時を経て、日本が「戦艦武蔵の所有者」として認められることになるかもしれません。
 
 ただし、フィリピンの領海内なので、日本政府が勝手に引き上げたり、撤去したりはできませんし、海底1000メートルなので観光も難しいでしょう。

 個人的には、ぜひ所有権が日本に帰属することを願っています。

 それにしてもロマンのある話なので、ぜひ映画化を期待しますね。題名は「男たちの武蔵」でいかがでしょう? (終) (弁護士)

2015年03月14日

◆中韓の反日宣伝に翻弄される日本

加瀬 英明



今年は、戦後70年になる。開戦の年から70年遡(さかのぼ)ると、明治4年になる。

長い歳月だ。だが、いったい先の戦争から70年がたって、日本にとって戦後が終わっているのだろうか?

1月に、アメリカ国務省報道官が、安倍首相が第2次大戦終結70周年に当たって、談話を発表するのについて、「村山首相談話と河野官房長官談話を継承することを、望む」と、2回にわたって発言した。

これからも、日本は棘(いばら)の冠を戴いて、戦勝国が強いた犯罪国家史観という、十字架を背負って歩まなければ、ならないのだろうか。

村山談話も河野談話も、その時の国民の総意に基いたものでなかった。2人の罪は重い。

アメリカ政府は首相が靖国神社に参拝することにも反対している。一昨年、安倍首相が靖国神社に詣でると、在日アメリカ大使館報道官が非難する談話を発表した。

だが、小泉首相は在任中に靖国神社に6回参拝したが、ブッシュ(子)政権は1度も、不満を唱えなかった。小泉首相が訪米すると、大統領とエルビス・プレスリーがギターを鳴らして歌う、2人で真似をして興じた。

オバマ政権と、その前のブッシュ(子)政権の間に、日本にとって危険な、大きな亀裂が開くようになった。いったい、どうしたのだろうか?

この6年間、中国と韓国がアメリカを舞台として、“南京大虐殺”や、慰安婦が“性奴隷”だったといって、日本が非道きわまりない国家だという宣伝工作に、力を注いできた。中韓両国は巨額の資金と労力を投入して、世論を操ってきた。日本が邪悪な侵略国家だという、汚名をひろめている。

中国は日米同盟に楔(くさび)を打ち込んで、日本を孤立化させようとしており、韓国は日本を辱めるたびに優越感を味わって、快感をえている。

昨年12月4日にニューヨーク・タイムズは、「日本の歴史のごまかし」という社説を載せて、「安倍首相は国粋主義を煽って、歴史修正を求める政治勢力に迎合する、危険な火遊びを行っている」と、非難した。

アメリカでハリウッド映画『アンブロークン』が12月に封切られたが、日本軍によって連合軍の捕虜が虐待されて、その人肉が食べられてしまうという、悪意に満ちた内容である。

今年は、第2次大戦が終結して70周年の節目の年に当たる。中韓両国は反日宣伝活動が相当な成果をあげてきたことから、いっそう攻勢を強めよう。

この間、日本政府と経済界は対応を怠ってきた。

アメリカが日本に対して、村山、河野談話を撤回してはならないとか、靖国参拝は罷りならないと容喙してくるのも、中韓両国の世論工作が功を奏しているからである。
 
ニューヨーク・タイムズ、ロンドン・タイムズ、ファイナンシャル・タイムズの日本支局長を歴任した、ヘンリー・S・ストークス氏の著書『連合国戦勝史観の虚妄』(祥伝社新書)という良書が、一昨年12月に出版されて、10万部以上売れるベストになっている。

本書は、日本は先の大戦を自衛のために戦い、アジアを西洋の植民地支配から解放したが、侵略したのではない、日本は「アジアの光」だった、東京裁判は不正な復讐劇だった、“南京大虐殺”は中国のプロパガンダにすぎない、慰安婦は売春婦で、性奴隷ではなかったなどと、説いている。

ところが、本書を原文で出版しようとしても、尻込みするアメリカの出版社が多い。

日本で英語の本を出版して、アメリカ全国の書店に唯一つ配給していた、講談社インターナショナルは経営が行き詰まって、昨年春に解散を強いられてしまった。これでも、日本は国際大国といえるのだろうか。


加瀬 英明

今年は、戦後70年になる。開戦の年から70年遡(さかのぼ)ると、明治4年になる。

長い歳月だ。だが、いったい先の戦争から70年がたって、日本にとって戦後が終わっているのだろうか?

1月に、アメリカ国務省報道官が、安倍首相が第2次大戦終結70周年に当たって、談話を発表するのについて、「村山首相談話と河野官房長官談話を継承することを、望む」と、2回にわたって発言した。

これからも、日本は棘(いばら)の冠を戴いて、戦勝国が強いた犯罪国家史観という、十字架を背負って歩まなければ、ならないのだろうか。

村山談話も河野談話も、その時の国民の総意に基いたものでなかった。2人の罪は重い。

アメリカ政府は首相が靖国神社に参拝することにも反対している。一昨年、安倍首相が靖国神社に詣でると、在日アメリカ大使館報道官が非難する談話を発表した。

だが、小泉首相は在任中に靖国神社に6回参拝したが、ブッシュ(子)政権は1度も、不満を唱えなかった。小泉首相が訪米すると、大統領とエルビス・プレスリーがギターを鳴らして歌う、2人で真似をして興じた。

オバマ政権と、その前のブッシュ(子)政権の間に、日本にとって危険な、大きな亀裂が開くようになった。いったい、どうしたのだろうか?

この6年間、中国と韓国がアメリカを舞台として、“南京大虐殺”や、慰安婦が“性奴隷”だったといって、日本が非道きわまりない国家だという宣伝工作に、力を注いできた。中韓両国は巨額の資金と労力を投入して、世論を操ってきた。日本が邪悪な侵略国家だという、汚名をひろめている。

中国は日米同盟に楔(くさび)を打ち込んで、日本を孤立化させようとしており、韓国は日本を辱めるたびに優越感を味わって、快感をえている。

昨年12月4日にニューヨーク・タイムズは、「日本の歴史のごまかし」という社説を載せて、「安倍首相は国粋主義を煽って、歴史修正を求める政治勢力に迎合する、危険な火遊びを行っている」と、非難した。

アメリカでハリウッド映画『アンブロークン』が12月に封切られたが、日本軍によって連合軍の捕虜が虐待されて、その人肉が食べられてしまうという、悪意に満ちた内容である。

今年は、第2次大戦が終結して70周年の節目の年に当たる。中韓両国は反日宣伝活動が相当な成果をあげてきたことから、いっそう攻勢を強めよう。

この間、日本政府と経済界は対応を怠ってきた。

アメリカが日本に対して、村山、河野談話を撤回してはならないとか、靖国参拝は罷りならないと容喙してくるのも、中韓両国の世論工作が功を奏しているからである。
 
ニューヨーク・タイムズ、ロンドン・タイムズ、ファイナンシャル・タイムズの日本支局長を歴任した、ヘンリー・S・ストークス氏の著書『連合国戦勝史観の虚妄』(祥伝社新書)という良書が、一昨年12月に出版されて、10万部以上売れるベストになっている。

本書は、日本は先の大戦を自衛のために戦い、アジアを西洋の植民地支配から解放したが、侵略したのではない、日本は「アジアの光」だった、東京裁判は不正な復讐劇だった、“南京大虐殺”は中国のプロパガンダにすぎない、慰安婦は売春婦で、性奴隷ではなかったなどと、説いている。

ところが、本書を原文で出版しようとしても、尻込みするアメリカの出版社が多い。

日本で英語の本を出版して、アメリカ全国の書店に唯一つ配給していた、講談社インターナショナルは経営が行き詰まって、昨年春に解散を強いられてしまった。これでも、日本は国際大国といえるのだろうか。

◆アジアで通貨戦争が再燃

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015)3月13日(金曜日)弐 通巻第4487号>  

〜アジアで通貨戦争が再燃(ウォールストリートジャーナル)
  ロシア「プラウダ」はBRICS銀行が、これからの世界の通貨体制〜

BRICS銀行の最初のアイディアは2012年にブラジルで開催されたG20である。ここで中国、露西亜、インド、ブラジルに南アが正式メンバーとして付け加えられた。BRICsの最後の「s」が大文字の「S」となる。

まだ正式に発足していないBRICS銀行に対してロシアは「今後、IMFに代わり世界の基軸通貨を発行する銀行となる」と突拍子もないことを言い出した。

アジアで通貨戦争が再燃したと「ウォールストリート・ジャーナル」が書いた(3月13日)

ロシアはBRICS銀行の最初の批准国となった。IMF世界銀行に代替する世界的歴史的意義をもつ銀行であるとして、ロシア連邦が2月20日に批准を決議し、プーチン大統領は3月に署名を済ませた。

3月5日、アルゼンチン、メキシコ、ナイジェリア、インドネシアなどが加盟を申請した。

資本金は1000億ドルに上積みされ、加盟国はさらに増大する展望が開けてきた。しかし何故、資本金がドル建てなのかの説明がない。

このBRICS銀行が本当にIMF世界銀行という戦後世界の経済体制をささえるシステムを代替するとなると、いくつかの疑問が湧いてくる。

本気でIMF体制に挑戦するとなると、通貨危機を救援するインフラの改変、ひいては国連の改組が必要となり、それほどの長期的展望をもつ銀行とは考えにくいからだ。

実際にロシアの金融専門家さえ、IMF世銀の代替機構になりうるかという設問には懐疑的で、「相互の危機救済システムが謳われているわけでもなく、せいぜいがEBRD(東欧復興開発銀行)の代替であろう」という(英文プラウダ、2015年3月12日)。

EBRDは、冷戦終了後の東欧の再建のため、儲けられた融資システムである。

▼中国の思惑とロシアなどの狙いに早くも齟齬

中国の思惑はブラジル、露西亜、南アなどのプロジェクトへ中国企業が入札し、そのファイナンスによる経済的影響力の浸透という政治的意図が露骨であり、こうなると、「年末に最初の融資が行われ、5年以内に本格化する」という展望さえ、足下から怪しいのである。

李克強首相の全人代報告は「GDP7%成長が2015年度の目標」としたが、2014年度の経済報告では次の数字が示されたのである。

中国の地方の道路整備は23万キロに及んだ。鉄道は8427キロが新設され、新幹線の営業キロ数は、トータルで16,000キロに及んだ。ならびにハイウエイは112000キロとなり、インターネットのユーザーは7億8000万人、740万戸の新設住宅が公共投資でまかなわれた。

過剰投資による在庫が積み増しされ、太りすぎた設備投資の削減と企業合併による調整が必要とされた。

余剰設備、在庫処理のために、BRICS銀行が使われる?

中国とロシアの思惑がこれほど鮮明に違うわけで、いずれ加盟国の主導権争いと内紛が表面化するのではないのか。

◆ヒラリードットコム・ゲート

Andy Chang



ヒラリー・クリントン元国務長官が公務通信に彼女の個人のメールあるアドレスを使用していたことが問題化したので、ヒラリーは3月10日、ニューヨークで記者会見を開いて釈明した。

ヒラリーは2016年の大統領選挙で民主党の最有力候補とされていたが、このスキャンダルで違法行為を究明されることになったので、たとえ出馬しても当選は無理と言われている。

ヒラリードットコム・ゲート、またはイーメール・ゲートと呼ばれている。ヒラリーは記者会見で問題の鎮静化を図ろうとしたが、その逆にパンドラの箱を開けてしまった感がある。

アメリカ政府の規定では、公務執行中は公務用のメールアドレスを使うことが義務付けられているが、ヒラリーが国務長官に就任した2009年にはまだ規定がなかったという。

しかし規定した後もヒラリーは規定を無視して私用スマホで個人メルアドを使用していたことが去年8月に発覚した。ヒラリーは今年1月になってからようやく5万5千通のメールのコピーを提出した。しかもヒラリーは一般のサーバーでなく、クリントン家の自宅サーバーを使用していた。

●ヒラリーの記者会見で述べたウソ

記者会見でヒラリーは次のような4点の説明をした。


(1)国務長官に就任した時に、公務用と私用のスマートフォン(スマホ)、二つのスマホは面倒だから、一つに絞って私用スマホを使うことにした。当時はこれが許されていた。

(2)私用スマホから発信したメールは受信者の公用アドレスに送信したので、受信者は規定に従って政府に提出され保存された。

(3)引退後、政府は国務長官に在任中のメールの「コピーの」提出を求めた。私は要求に従い55000通のコピーを提出した。しかし、プライベートなメール、例えば娘の結婚式などのメールは提出せず、「消去してしまった」。

(4)更に私は、国務省に提出したメールすべてを公開するよう要求した。私用スマホで国家機密を送信したことはなかった。この4つの声明はみんな嘘の塊である。

(1)ヒラリーは「公用と私用の二つのスマホは面倒だ」と言ったが、実際にはiPhone、Blackberry、iPad二個の計4つの私用スマホを使っていた。更に彼女はヒラリーだけでなく別のメルアドを使っていた可能性もあると言われる。

(2)政府の規定ではメールの提出を義務付けられていたが、受信者側が規定に従って提出したのに、彼女だけが規定に反して提出しなかった。しかもヒラリーは2012年に国務長官の通達として公務員の私用スマホを禁止しただけでなく、私用スマホを使った直属部下
の駐ケニヤ大使を免職処分にしたのである。部下に対して法規に従えと命令し、本人は法を犯したのである。

(3)政府がメール提出を求めたとき、彼女は55000通のメールを「紙にコピーして」提出した。紙に印刷されたメールでは違法行為があったかどうかの調査はできない。メールの提出は電子メールのコピーでなければならない。

また、彼女はプライベートのメールを消去したと説明したが、彼女には公私の「判断する権利」はない。

「不都合メール」を消去した疑いが残る。提出しなかったメールを消去する権利はない。証拠隠滅である。しかもヒラリーは自宅サーバーの提出を拒否した。

オバマ政権は2011年に二つの行政命令を出している。一つ目は公務員の私用スマホの私用を禁止したこと、二つ目は公務メールをすべて政府が保存することである。2009年の就任当時は私用スマホが「許されていた」としても、2011年の命令に従わなかったのは違法行為である。しかも2012年には本人が部下に通達を出している。

●AP通信社が国務省を告訴

記者会見の翌日11日、AP通信は米国の国務省を告訴すると発表した。AP通信はアメリカの情報公開の自由(Freedom of Information Act)でヒラリー在任中のメール提供を国務省に申請していたが、国務省はAP通信の要求を数年間放置したままだった。だからAP通信は遂に国務省を告訴することにしたという。

AP通信だけでなく、国民が最も知りたいことはベンガジ事件と呼ばれるヒラリーの部下だった駐リビア大使ほか三人がリビアのベンガジ市でテロ攻撃を受けて死亡した事件の詳細である。テロ攻撃が始まった際にヒラリーとオバマはホワイトハウスで攻撃の消息一切を
聞きとっていたが、オバマは救援隊を派遣しなかった。そして四人の死亡が確認された後もベンガジ事件をテロ行為ではなく、ある男のビデオに抗議した事件だったと強弁したのである。

ベンガジ事件の調査委員会の主任・トレイ・ガウディ国会議員は、事件当時のメールと自宅サーバーの提出を要求している。

●クリントンスキャンダルの多いこと

クリントンのスキャンダルは私用スマホの使用やメール消去などの一か月ほど前から外国献金問題が問題化していた。ワシントンポストの報道によると、クリントン基金会(ビル、ヒラリー、チェルシーの基金会)が2001年から今日までに20億ドル以上の献金を集め
たことを素っ破抜いたが、この基金会は多くの外国の献金を受け取っていた。

ヒラリーが2009年に国務長官に就任し、基金会はヒラリーが政府の要職に就いたので外国の献金を断ると通達したが、2014年にヒラリーが退職すると同年12月には外国にヒラリーが公務を引退したので再び献金を受け付けると通達したと言う。

報道によるとサウジアラビアの献金は1000万〜2500万ドル、アラブ酋長連合国は100万〜500万ドル、このほかにカタール、アルゼンチン、オーストラリアなども献金リストに入っている。

ヒラリーは大統領選挙に出馬すると言われ、国内国外でも彼女がアメリカ大統領になる可能性を報じている。しかし、たとえ当選した後に外国献金を返還したとしても献金の恩情は残る。大統領が外国の献金を受けたら政治にどんな影響を与えるか。彼女に大統領の野
心があったら初めから外国献金を断るべきだった。それなのに引退したから再び献金を受け付けると言いだしたとは呆れる。

●ウオーターゲートとヒラリーゲート

アメリカのメディアは民主党贔屓で、ヒラリーやビル・クリントンのスキャンダルの報道を避けてきたが、記者会見後は三大テレビが少しだけ報道するようになった。フォックスニュースは共和党系でベンガジ事件やヒラリー献金問題などを追及していたが、AP通信の
告訴で今後はスキャンダル報道がエスカレートすると予想される。

民主党員はヒラリーの「消極的支持」が多く、やがて問題が沈静化して彼女の立候補に影響を及ぼさないことを願っている。だが彼女が本当に立候補すれば共和党候補にとっては願ってもない有利な選挙となるであろう。

ウオーターゲート事件の後、政府がらみのスキャンダルはみんな何とかゲートと呼ばれるようになったが、ヒラリーのメール消去は、ニクソンテープの消去にソックリである。ニクソンはウオーターゲート事件の介入を否定し続けていたが、ホワイトハウスでは常時録
音が設置されていたことがわかり、国会がテープの提出を求めた。するとニクソンは録音テープをタイプした文書を提出し、おまけに秘書が録音テープを18分ほど「間違って消去した」と発表したので、一挙にニクソン罷免問題、ニクソン辞職に発展したのだった。

ヒラリーの個人メールのタイプと部分消去は、ニクソンテープとそっくりである。スキャンダルは始まったばかり、ヒラリードットコム・ゲートはどんどんエスカレートするだろう。

◆大使襲撃事件は戦前にもあった

池田 元彦



リッパート駐韓米国大使が朝食会で暴漢に襲われた。後ろから飛掛り床に大使を押し倒し、上半身に馬乗りになっての犯行だ。右頬長さ11p深さ3cmの切傷と、左手に3pの貫通傷を負った。

犯人金基宗(キム・ギジョン)は、殺害意図がなかったとするが、顔を約80針縫い、破損左手の神経や筋の縫合手術は重傷で、頸動脈に凶器が及ばなかったのが不幸中の幸いだった。大使が死亡していたら、隙間風が吹く米韓関係は、更に非常に厳しい局面を迎えていただろう。

犯人は前科6犯の札付きだ。2006年島根県「竹島の日」制定に反発し、本籍を竹島(独島里(ドクトリ)38番地)に移した。2010年7月には、重家俊範駐韓日本大使の講演会で、予め用意したコンクリート破片2個を大使に近距離から投げつけた。大使は難を逃れたが通訳は負傷した。

検察の求刑懲役4年に対し、裁判所は懲役2年、執行猶予3年と裁定した。ソウル中央地裁の執行猶予論趣は笑わせる。「竹島は韓国領土なので被告の事件の経緯や動機などは情状酌量すべき」だと。今回の米国大使傷害事件では、流石にこんな誤魔化しは出来ないだろう。

 同種の事件が戦前にもあった。日韓併合2年前、日本政府招請により日本保護下の韓国外交顧問であった米国外交官ダーラム・ホワイト・スティーブンスが、ワシントンDCの家族に会う為帰国途上のサンフランシスコで、朝鮮人4名に襲われ射殺される事件があった。

在米韓国人4人は、氏の滞在ホテルで、突然椅子を振り上げて襲いかかり、殴り倒し、頭を床に打付けたりした。その場は周りが取り押えたので一旦落着したものと思われた。

しかし翌日、別場所で再度2名が襲い揉み合う中で狙撃され、病院で射殺死が確認された。

「朝鮮王朝、朝鮮政府は腐敗堕落しており、国民は搾取をされている。その国民は暗愚である。これでは独立国たる資格はなく、先進的な日本の統治を受けなければロシアの植民地となっただろう。

伊藤統監の統治政策は 朝鮮人にとって有益で、朝鮮人は反対していない」とは、ティーブンスの記者会見発言だが、それが犯行の動機だったと犯 人は白状した。

この事件は、ウラジオストックで伊藤博文を暗殺する決意 を安重根にさせた事件でもあった。李氏朝鮮500年は、王族や両班の陰 謀、裏切り、暗殺の繰返しでもあったのだ。

氏の友人も朝鮮を評して「朝鮮は残酷で抑圧的で邪悪な政府しかなく、本当に稀なのだが、知的で献身的な指導者が現れても殆ど例外なく彼自身の国家や自国民から残酷にも破滅させられます。」と朝鮮を評している。正義感ある献身的な指導者がいないのは今も同じだ。

実はスティーブンス氏は、日本が不平等条約撤廃の為の努力を支援する立場にもあり、撤廃の切っ掛けとなった最初の権利義務平等の日墨(日本・メキシコ)修好平和条約締結に大いに貢献した外交官でもあり、日本政府が高く評価した人物でもあったようだ。

リッパ−ト駐韓大使は、大の韓国好きで、だからこそ穏便な声明を発表している。最近生まれた赤ちゃんの名前のミドルネームをセジョン(世宗)と迄命名している程だ。にも拘らず、お見舞いとして犬好きの大使に犬の肉の差入をするのは朝鮮人の底無しの悪意だ。

韓国に好意的な政治家の襲撃犯を英雄視する空気が有り、警備の緩さ、突発時の対応の甘さ、黙認、放置、意図的見逃し、そして判決の歪みが感じられるのは私だけだろうか。


◆交ぜ書きの追放を訴へる

上西 俊雄



3594號の「日本語の話し言葉について」について翌3595號で常連の執筆者前田氏が贊意を寄せられてゐるがまったく同感である。實際、「早く復興して欲しいカナと思ひます」などといふとどっちなのだといひたくなる。條件節でないにもかかはらず、「……とワ考へます。」といふところ、所謂現代假名遣でも「……とハ考へます。」でもいいのではあるまいかと考へたけれど自信がない。

同じ3594號の讀者の聲の「阿生爺のへのへのもへじ」にある「なにおか言わんやである」は小生なら「なにをか言はんやである」と書く。

このヲやハを我らの世代はいっときオもしくはワと書くやうに教はった。そしてローマ字の國際規格 ISO3602 でも、また國會圖書館の Japan Marcがカナの前處理でヲはオ、語中のハはワとみなすことになってゐることからして「なにおか言わんやである」となるのは當然。

しかし、ひょっとしたら所謂現代假名遣では「なにをか言わんやである」と書いてもよいのかもしれない。しかし、さう書くと「なにウォか言わんやである」と讀む人がでて來さうでこはい。とにかく、東先輩(東氏は縣人寮の先輩)の「贊成の方々、早速實行して、廣めていただきたい」の驥尾に附して交ぜ書き追放についても「贊成の方々、早速實行して、廣めていただきたい」と訴へるものだ。

交ぜ書きについて最近2つの經驗をした。一つは米國西部の砂漠化についての米國人による日本語での講演。資料には旱魃が「干ばつ」となってゐた。假名漢字變換で漢字になるものを一字もどって假名に開く手間が不思議であったので訊ねたところ、假名漢字變換プログラムが常用漢字對應なのださうだ。これはまったく知らなかった。

國語辭書など、假名で引いて表記を求めることがあるが、その表記のところで交ぜ書きを與へることなど考へられない。何度かヂャーナリスト杉浦氏の交ぜ書きについて疑問を呈したことがあるけれど、パソコンのソフトのせいだといふことは考へもしなかった。

「干ばつ」と書いた米國人の講演に「ミヅのゲン」といふ表現があった。かういふ表現を我々はしない。いや、我々といっていいのかどうか自信がなくなってきた。ミヅは水の訓(假名字母制限のために今はミズと書く)、音はスイ。ゲンは源の音、訓ならミナモトだ。音と訓との區別を常用漢字表はしない。

水源、旱魃。suigen kambatsu をばらしてみれば ON の韻尾が撥音か促音もしくは純粋の母音(歴史的假名遣でも、つまり擴張ヘボン式でもa i uo)となるもので我らが腦中に於て單獨では觀念と結びつかないやうに思ふのだ。

(e を落としたことについては「國語は金甌無缺であった(6)」(3495號26.11.23)を參照されたい)

だから水源(suigen)ならいいし、ミヅのミナモトならいいけれど、スイのミナモトも、ミヅのゲンも變だと感じるのではあるまいか。ミヅのゲンといふ表現を米國人がしたことは怪しむに足りない。しかし今の若い日本人は大丈夫なのか、それが氣になる。

かつて、和語漢語のつかひわけについて書いたものが活字になったとき、コピーをわたした友人から飮み屋の女將にわたり、日頃感じてゐた問題を書いてくれたと一本つけてくれたことがあったけれど、今ではニンとタリと使ひわけが無くなったといっても共感する人がほとんどない。

女將が共感したといった箇所は次のとほり(教育新聞平成14年11月28日號)。

<昔なら「燒け死んだのは大家」といへば知ってゐるものどうし、報道するなら「家主」である。和語と漢語の使ひ分けもあいまいになった。限定詞なしで夫とか妻といへば、話者の夫であり話者の妻と決まってゐたがこれがさうでもなくなってゐる。>

假名字母制限表記といふのは獨自の表現、一般には現代假名遣とか新假名遣とか呼ばれる。ウィキペディアの現代假名遣の項には「從來からの國語文法において、五十音圖が活用を説明する上で便利であり、そこには表記における正則性が認められた。

活用は必ず同じ「行」に屬する、といふわけであるが、現代かなづかひ以降生じた文法變更の要請によって、その正則性がくずれた。たとへば、ハ行轉呼音によるハ行活用の未然形がワ行になり、それ以外の活用形でのア行と分かれたことである。」として動詞「問ふ」をあげる。

「問ふ」は未然連用終止連體已然命令がハ、ヒ、フ、フ、ヘ、ヘとなるのに對し、「問う」であればワオ、イウ、ウ、ウ、エ、エ、オウとなるといふのだ。未然形と連用形が二つに分かれ、最後のオウは命令形のあとであって、オが志向形でウは音便形とある。

志向形といふのははじめて聞いた。精緻になったのかもしれないけれど、こんなに複雜では國語はなんとむづかしくなったものかとしかいひやうがない。とにかくワ行とア行にまたがって活用してゐるのだから歴史的假名遣のやうにハ行四段活用と簡單にいふことができない。

一字一音であるべきだとした表音原理主義者は多少の不都合があることを、不合理故に我信ずとばかりに一段と信じこんだのではなかったか。

最近讀んだ海音寺潮五郎『海と風と虹と』に「仁愛がすぎては柔弱となる。恩威ならび行われるこそ、然るびょう存ずる」といふ箇所があった。原稿は「仁愛がすぎては柔弱となる。

恩威ならび行はれるこそ、然るベう存ずる」となってゐたに違ひない。版元の編集者が「行はれる」を「行はれる」とし、「然るベう」を「然るびょう」としたのだと思ふ。「ベウ」と書かうと「ビョウ」と書かうと一字一音といふわけにはいかない。

水の訓を「ミヅ」とするか「ミズ」とするか。一字一音で「ミズ」とすることが行はれたわけであるが、かつてズとヅはそれほど違った音であったのだらか。

むしろ、水が瑞々しいであり翠に縁がある語だとして認識が進んだ結果、歌を讀むほどの人であればミヅとしたのではなかったか。「ビョウ」といふ音を活用にもどって「ベウ」としたのではなかったか。

「テトラグラマトン」でヘブライ語が父音しか書かなかったと書いた。母音まで氣にすれば語が同定できなくなるといふ事情がはたらいたに違ひない。假名の場合、二字の組合はせで音便表記をしたといふ可能性をどうして考へないのか。

假名が異る以上、音も異ってゐたはずだとして活用まで複雑にしたのはなんたる倒錯であったことか。「國語は金甌無缺であった(4)」で五十音圖がパラダイムであったと書いたのはその謂である。


      

2015年03月13日

◆越比両国が戦略的パートナーへ前進

宮崎 正弘 


<平成27年(2015)3月12日(木曜日)通巻第4485号>  

  
〜ハノイとマニラ(越比両国)が戦略的パートナーへ前進
        日米豪印の戦略的な枠組みを積極評価、基本方針の転換へ〜


昨秋の北京APECで、フィリピン首脳とベトナム首脳が会談し、両国関係の「戦略的パートナーシップ」の格上げが討議された。

おそらく年内に、両国は外交戦略の「一大転換点」となる協定を締結する展望が開けた、と外交専門誌『ディプロマット』の最新号が報じた。

2015年1月末にはファン・ビン・ミン越外相がマニラを訪問し、ロザリオ比外相と長時間の実質的話し合いをしている。

ベトナム戦争中、米軍支援のためフィリピンは軍隊をベトナムへ派遣した。それゆえ、ベトナムとの復交は遅れ、1976年になってようやく外交関係が再開された。

しかしその後も両国関係はぎくしゃくとして急発展はせず、1994年にようやく科学技術・経済協力協定、留学生の交換プログラムなどが開始された。こうした関係が大々的な転換を迎えた。

2013、両国は海軍高官の協議交流を開始し、海洋に於ける情報の共有、作戦の協同化などの討議へと移り、同時に2014年にフィリピンは米国との安保条約を大胆に改定して、世界戦略的には日米安保体制にオーストラリア、印度がくわわった枠組みの地域内協力を模索し始める。

同時期、南シナ海での中国の恣意的な軍事行動に非難をつよめていたベトナムは、「航行の自由と安全」を主張しアセアン各国との共同歩調に重点をおく。

フィリピンとベトナムは自国領海を侵略されたとして国連に提訴した。またフィリピンは国際裁判所へも提訴した。

ベトナムがこれまでに「戦略的パートナーシップ」を結んだのはロシア、日本、印度など15ケ国あるが、フィリピンとの交流拡大の主目的が将来の軍事的強調の可能性を前提にしていることは明らかである。

またディプロマット誌の観測に拠れば、南シナ海を日本の偵察機が哨戒できないか、どうかも検討シナリオに含まれていると示唆している。