平井 修一
プーチン・ロシア帝国がよろめいている。西側諸国の封じ込めと原油安で経済はガタガタ、外交では中共以外に友邦はないという孤立無援だ。世界日報1/26のインタビュー「ウクライナ政策 米国の陰謀説から決別を ロシア科学アカデミー主任研究員 アレクサンドル・ツィプコ氏 (下)」から。
<(注:記事の前半は読んでいないが、文脈からすると、ウクライナ紛争は米国の陰謀によって引き起こされているというロシアでの見方を改める動きがあるということらしい)
――そうであるならば、ロシアは思想的に正しい道を進んでいるとの希望がある。
ロシアはウクライナ領土の一体性を認め、ウクライナ東部での戦闘を終結させるため、なんらかの政治的妥協を見つけ出そうとしている。少なくとも、ウクライナ東部の親露独立派による「ノヴォロシア」のロシアへの編入や、新たな沿ドニエストル共和国とするとの考えはない。
しかし、経済的な観点では、状況は極めて悪化している。人々は自らの生活水準の低下を、クリミア併合や対ウクライナ政策と結びつけることができていない。これはすべて、ロシア人の認識の特殊性だ。
国民の実質所得はこの3カ月間に少なくとも30%低下し、さらに悪化しようとしている。投資は行われず、原油価格は下落した。米国がロシアに対する制裁を緩めることはなく、ロシアはさらに困難な状況に陥るだろう。これはすべて、ロシアが自らの過ちを認めようとしないためにもたらされたことだ。
――それは、ロシア国民が、自らの生活水準の低下をプーチン大統領や対ウクライナ政策に起因していると考えているのではなく、すべての原因は外国の敵、簡単に言えばアメリカの陰謀だと考えているということか。
そうだ。しかし、ここに至ってやっと、少しずつではあるが、ロシアの一般庶民の間でも、プーチン大統領とロシアの対外政策―対ウクライナ政策が、ロシアの経済困難をもたらしたとの認識が広がりつつある。
生活水準の大幅な低下に直面した国民が、政治的な抗議活動に進むのか、それとも、ロシア人がソ連時代からよく行ってきたように、国家のために耐え続けるのか。
今年のロシアは国内総生産(GDP)が少なくとも4%低下し、インフレ率が20%に達することはほぼ確実であり、国民生活はさらに窮乏するだろう。
――ドゴールは「国家に真の友人はいない」と語った。ロシアには同盟国、もしくは潜在的なパートナーはいるのか。
これは、新生ロシアの最も基本的な悲劇だ。ロシアは1990年代の初め、欧米が助けてくれると考えていた。それが近年、すべての希望は中国と結びつけられている。
しかし、すでに明らかなように、中国の思考は現実主義であり、ロシアとの友好のために、米中関係から得られる利益を犠牲にしようとはしない。
ロシアは孤独である。誰も、ロシアの過ちを正すために、自らの利益を差し出すことはない。残念ながら、われわれがそれを理解したのはつい最近のことだ。ロシアの指導層がそれを理解していなかったことは、大きな過ちであった。
――ロシアは自らの国際的イメージ向上のために多くを費やしてきた。ソチ冬季五輪の開催もそうだった。
ソチ冬季五輪の成功、そしてロシア選手団の活躍は、国民に大きな喜びを与え、新生ロシアの国際的なイメージを向上させた。しかしそのロシアは、オバマ米大統領の言葉を借りれば、「エボラ出血熱に次ぐ、人類に対する2番目に重大な脅威」になり果てた。
北大西洋条約機構(NATO)はロシアを脅威と再認識した。NATO加盟各国はこれまで、GDPの2%をNATOに拠出したが、これが3.5%に引き上げられた。ロシアのクリミア併合は、欧米の軍産複合体を強化する結果をもたらした。
一方のロシアのシルアノフ財相は少なくとも国防予算を10%削減するよう強く主張している。ロシアは自らの首を絞めつつある。
(聞き手=モスクワ、イリーナ・フロロワ)>(以上)
ロシア科学アカデミー主任研究員というのはロシア学術界の重鎮だろう。こうした発言はプーチンとロシア国民の逆鱗に触れて制裁を受けるのではないか。大丈夫なのか。中共なら速攻で刑務所行きだ。
いよいよプーチン大帝も八方ふさがりのようで泣きが入った。学生との懇談での発言。
「我々はしばしば、ウクライナ軍は、ウクライナの軍隊だと言っている。しかし実際、あそこで戦っているのは誰だろう? あそこにいるのは、確かに正式の武装軍隊だが、戦っているかなりの部分は『民族主義者志願兵大隊』だ。
実のところそれはもう軍隊ではなく、外人部隊であり、もっと言うならNATO外人部隊だ。彼らはもちろん、ウクライナの国益を守るために戦っているのではない。そこにあるのは全く別の動機だ。それらは、ロシア封じ込めという地政学的目的達成と結びついている。
残念ながら、キエフ当局は、紛争の平和的調整に向けた道に沿って進むのを拒否している。
残念だが、平和的な小休止でさえ、軍隊の編成替えに使われ、再び戦闘が始まった。すでに何千もの人々が亡くなった。これは、まさに悲劇というしかない」(ロシアの声1/26)
封じ込めが嫌ならウクライナから手を引くしかない。クリミアも返して、軍事的な干渉をやめるしかない。一人敗けは飲めないだろうから「ウクライナにNATO軍は当面進駐しない」と欧米の譲歩を求めてはどうか。頼みの綱のオランドに相談すべきだ。ぐずぐずしていると支持率がどんどん下がるぞ。(2015/1/27)