平井 修一
近藤大介氏の論考「2015年の日中関係は、昨年同様、波乱の一年に!? 〜北京訪問記(前編)」(現代ビジネス1/12)からポイントを紹介する。小見出しと[ ]は平井が付けた。
<*報道統制、低劣サービス
北京首都国際空港で周囲の中国人たちが、何やら慌てている。数日後には同じ場所で小規模の爆破事故が発生したが(報道統制がかかって報じられていない)、この時の慌てぶりは、北京市内の地下鉄とバスが(値上げに伴うシステムの入れ替えのために)夜9時をもって一斉にストップしたことによるものだった。
乗客が一週間で最も少ない時間帯に作業するという配慮には進歩を感じるが、それにしても空港には掲示すらない。そのため降り立った人々は困惑するばかりだった。
*ガソリン値下げを喜ぶ、マナー悪いタクシー
仕方なくタクシーに乗って市内へと向かう。北京の運転手は一般にコワモテが多いが、高速道路を疾駆する運転手が、ずっと朗らかな口調で仲間と携帯電話でだべっていた(運転中の通話は禁止されているが、多くの運転手が無視している)。電話を切ったところで、「北京の景気がいいのですか?」と聞いてみた。すると運転手、ニヤッとして次のように答えた。
「北京の景気がよいのではなくて、オレの景気がいいのだ。なぜなら、1リットルあたりガソリンがいまや6.2元なのだから。これで1日20元〜30元の経費削減になる」(1元≒19.1円)
中国のタクシーは、毎月運転手がタクシー会社に一定額を収める仕組みになっている。燃料代は運転手持ちだ。だから原油価格が下がれば、それだけタクシー運転手の収入は増えることになる。
タクシー運転手ばかりでなく、中国全土の車を保有する個人と企業が「原油価格下降効果」にあずかっていることになる。
中国は、世界最大の原油輸入国で、毎月1100万tもの原油を消費している。最新の統計では、2014年10月の輸入量は2409万tで、サウジアラビアからが一番で399万t、ロシアからが二番で331万tとなっている。
このような中国にしてみれば、不動産バブルの崩壊や地方債焦げ付きによる経済失速の埋め合わせを、原油価格下降が補ってくれていることになる。まさに日照りに慈雨のようなものだ。
ついでに言うと、この後計5回タクシーに乗ったが、6人中2人の運転手が、運転中に株式ニュースのラジオをボリューム一杯につけ、ハンドルにスマホをあてがいながら、株式の売買をやっていた(中国のタクシー運転手は、運転中にケータイを持って私用電話もすれば、株の売買もやる)。
*個人投資家で株価上昇
このところ中国株が、にわかに息を吹き返し始めているのである。2014年の一年で、上海総合株価指数は、2115ポイントから3234ポイントへ、52%も上昇した。ここ数年、まったく見なかった「股民」(個人投資家)を、街のそこここで見かけるようになった。久しぶりに、レストランのトイレで小便をしながらスマホで株を操作している男も見た。「股民」の増加も同様に、経済効果は大きい。
*物価高
(スタバの)メニューの中で最も安い「今日のコーヒー」のスモールサイズは17元で、すでに日本より高い。続いてウォルマートで買った1リットルパックの牛乳は21.7元で、こちらも日本より高い。ウォルマートは、かつての「天天平価」(毎日安売り)から「省心価」(節約価格)にキャッチフレーズが変わっていた。習近平主席が唱える「八項規定」(贅沢禁止令)を意識したものに違いない。
セブンイレブンのおむすびは4.2元で、ペットボトルのお茶は4元。こちらもかなり日本の物価に近づいている。こうしたことを見ても、中国に工場を造って安価な製品を製造するという時代は終焉しつつあることが分かる。
*目立つ習近平礼賛記事
1!)近く歩いて、生き残った「報刊亭」(新聞スタンド)で朝刊やニュース週刊誌を一通り買って読んでみた。すると、各紙誌の「人民日報化」がますます進んでいることが、いまさらながらに判明した。「人民日報化」というのは、「習近平礼賛記事」が目立つという意味だ。
例えば、人気週刊誌『看天下』の創刊300号記念号(12月28日号)の表紙は、習近平主席と弟・遠平が父親の習仲勲元副首相と並んで撮った写真だ。「毛沢東と周恩来が重用した若者・習仲勲」というタイトルの習近平一家礼賛特集は、10ページに及んだ。
*大学院出てもいいことない?
一方、北京を代表する朝刊『新京報』のこの日のトップニュースは、「27日に始まった全国の大学院入試で、『習近平講話』の内容がどの大学でもたくさん出た」というものだった。中国では大学院入試に、「思想政治理論」が英語と共に必須科目で、その中で全国164万9000人の受験生たちは、『習近平講話』を熱心に筆記していたという「喜ばしい記事」だった
のだ。
記事をよく読むと、大学院の受験生は前年比で6万5000人も減っている。これは察するに、大学院を出て公務員や国有企業に就職しても、将来に希望が持てないと若者たちが考え始めたからではなかろうか。習近平主席が定めた「八項規定」(贅沢禁止令)によって公務員と国有企業への締め付けが激しくなったことが原因に違いないが、エリート青年たちが敬遠し始めたことが、将来の中国にどんな影響を及ぼすのかは不明だ。
*日中関係は相変わらず厳しそう
この日の『新京報』には、北京駐在の12人の大使へのインタビューが一人1ページずつ載っていて、日本の木寺昌人大使も出ていた。おそらくは新聞社が恣意的に行ったことだと思うが、12人の大使のうち、木寺大使の写真だけ、厳しい顔つきのカットを選んでいた。これをもって2015年の日中関係は相変わらず厳しいと即断することはできないが、何となく察することはできる。
*レストラン以外は閑古鳥
まだ行ったことがなかったショッピングモールの「芳草地」に、北京っ子の友人の車に同乗して行ってみた。完成は2012年9月で、東京ドーム4個分にあたる20万?もの面積を誇り、オフィス棟やショッピングモールなどが建っている。ショッピングモールは、巨大なピラミッドのような三角形で、採光を考えた設計になっている。
たしかに日曜日の「芳草地」は若い家族連れなどで賑わっていた。だが、よく眺めると「人山人海」(人だかり)なのは、地下のレストラン街ばかりだった。日本のトンカツ屋が店を出していて、一番安いトンカツのランチセットが70元(日本の2倍!)もする。それでも「門庭若市」(門前市をなす)。そのすぐ近くでは、博多ラーメンの店が内装工事を行っていて、
まもなくオープンすると書かれていた。
夕刻に、北京最高級デパート「新光天地」に足を延ばしてみた。日曜の夕刻というのに、ガラガラである。入口の巨大なグッチの店は、3年前ほど前には週末ともなると人が押しかけるため、入口で整理券を配っていたほどだが、店内を覗くと客は皆無である。1階奥の化粧品売り場を歩いても、客は私だけ。化粧品売り場で店員さんからあれほど声をかけられたのは初めてだった。
「新光天地」の近くにある庶民的なデパート「新世界」にも行ってみたが、やはりガラガラ。こちらの店員たちは、こっそり自分のスマホでテレビドラマを観ているではないか。
北京っ子たちに聞いたところでは、デパートやショッピングモールの不況は、主に三つの理由があるという。第一に、八項規定により、賄賂の横行が止んだことだ。
3年前に「新光天地」でよくみかけた光景は、若い美女がカードを使って、手に持ちきれないほどのブランド品を買い漁るというものだった。こうした美女はかなりの確率で高級官僚の愛人で、その官僚の認可がほしい業者などが、官僚本人の代わりに愛人にカードを持たせて自由に使わせるということが横行していた。だがいまこれをやれば、官僚も業者も逮捕されるので、すっかり自粛ムードなのである。
二つ目は、中国経済そのものの不況だ。中国もご多聞にもれず格差社会が拡大していて、庶民の買い控えが起こっているのだ。
三つ目は、ネット通販の拡大である。ネット通販の方が商品が豊富で、おまけに値段も安い。気温氷点下でPM2.5飛びまくりの屋外に出なくても済む。
というわけで、デパートやショッピングモールで人が入るのは、レストランだけなのである。数年内に「レストラン以外はゴーストモール」という状況になる予感がする。
*習近平版「文革」再来
北京の旧知のインテリ諸氏とランチ。そこでまず議論になったのは、「武漢模式」は是か非かということだった。
湖北省の省都・武漢市のトップである阮成発党委書記(57歳)は、マルクス主義の専門家で、「習近平思想」に心酔しているという(もしかしたら習近平に媚を売っているだけかもしれないが)。その阮書記が2014年秋から、800万武漢市民に対して、「社会主義の核心的価値観の暗記運動」を始めた。
これは、「富強、民主、文明、和諧、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業、誠信、友善」という、習近平総書記が「中国の社会主義の核心」と定めた24文字を、全市民に暗記させるという運動だ。(できないと懲罰、できればご褒美)
いま、こうした文化大革命の再来のような滑稽な運動が行われているのである。「習近平の24字」の中に「自由」も入っているのならば、「暗記しない自由」もあるのでは? と私が素朴な疑問を問うたら、「それはそうだ」とインテリたちは頷いていた。
「われわれのように従来から政治に関心を持っている者ばかりか、これまで政治に無関心だった家庭の主婦や年金生活者たちまでもが『文革の再来だ』と言い始めた」
「そのうち都市部の大学教授や言論人たちが、農村に下放される時代が来るのではないか」
「この12月に習近平が新たな文化部長(文化大臣)に指名したのは、小学校を4年しか出ていない学歴の?樹剛だった。まさに文化のない文化大革命だ」
北京の街にも、あちこちに「雷鋒に学んで道徳的な人間になろう」「社会主義の価値観を育成しよう」という紅い横断幕が掲げられていて、ギョッとしてしまった。[雷鋒は滅私奉公の模範兵士で毛沢東が盛んに称揚した]。毛沢東の死後、長くこの若者のことは忘れ去られていたが、習近平主席が再び「雷鋒に学べ」と唱え始めたのだ。
次に、私がいたからかもしれないが、「習近平政権の反日」の話題になった。その中に、南京出身の中年男性がいたが、彼はこう述べた。
「私の南京の学生時代は中日友好の時代で、日本軍の大虐殺の一件は、口にすることも禁止されていた。1989年の天安門事件の直後だったと思うが、ある犠牲者の遺族が、日本政府を被告にして訴訟を起こそうとしたら、中国政府に阻止されたくらいだ。
いまや12月13日に習近平主席が南京へ行って追悼集会に参加したり、国の追悼の日に定めたりと隔世の感があるが、反日なんて時の政府の風向きでコロコロ変わるのだ。つまり習近平は反日を御旗にして、国内とアジアの覇権を取ろうとしているに過ぎない」
だがこの意見に、年配の男性は血相を抱えて反論した。[「反省しろ」という中共のクチパク]
*都市でも仕事がない
そこで私は話題を変えて、「中国のいま一番の問題点は何か?」と聞いてみた。すると彼らが異口同音に口にしたのが、「地方の衰退だ」ということだった。
「中国は毎年、冬の春節(旧正月)になると、都市へ出稼ぎに出ていた人々が帰郷し、春節が終わると再び都市へ向かう。ところが2014年の春節に起こったのは、帰郷した農村の人々が仕事がなくて都市へ戻らないという現象だった。そうかといって農村には産業がないので、地方には大量の失業者が溢れている」
「同感だ。2008年のリーマンショック後の過剰投資の手痛いツケがきている。いまの中国は完全な中央集権国家なので、地方の破綻を中央政府からの補助で支えているにすぎない。輸出も伸びず、消費も振るわないこの状態が続けば、『第二のロシア』と化してしまうかもしれない」
「経済問題はマンション問題に行き着く。中国の土地は国家のものなので、国家は土地の使用権をマンション開発業者に売って収入を得ていた。ところが高いマンションを買える一部の人はすでに買い、買えない多く庶民には依然として高嶺の花なので、マンションを買う層がいなくなってきた。それで鉄鋼、電力、家電など多くの産業を支えていたマンション建設ブームが消え、地方政府は大幅な収入減となった」
「中国が資本主義国家なら、多くの地方都市がとっくに破綻している。黒竜江省や安徽省では、学校の教師たちがストライキを始めた。地方財政が悪化したことで教育関連費が削られ、教師の給料を払えなくなったためだ。
それで学校の統廃合と教師のリストラが始まっている。残った学校は遠方に住む子供たちを学校内に住まわせ、家賃と食費を取って何とか教師の給料を工面している状況だ。家賃と食費が払えない家庭の子供は、教育も受けられない。これでは[腹いせに]毒食品を作り出すのも仕方ない」
*インテリは習が嫌い?
最後に、彼らが一様に評価していたのが、「トラもハエも同時に叩く」というキャッチフレーズの習近平主席の汚職追放運動だった。
「今後、どこまでこの方針を貫けるかは未知数だ。?小平、江沢民、胡錦濤の過去3人の時代は、経済が右肩上がりの急成長の時代だったから、国民はある程度の不具合にもついてきた。だがこれからは、右肩下がりの不安定な時代を迎えるのだから、国民がいつまでも習近平を支持するとは限らない」
習近平政権の支持率に関しては、中国のどの機関も統計を取ったことがない。だから私は半年ごとに北京へ行くたびに、友人知人からタクシー運転手、ホテルの掃除婦まで、会う人会う人計30人に聞いて「定点観測」している。その結果、今回は23人が「支持する」と答え、7人が「支持しない」と答えた。政権の支持率は76%である。
一般庶民は全員が「支持ずる」と答え、逆に「支持しない」と答えたのは全員がインテリだった。男女や出身地による偏りは見られなかった。ちなみに過去3回は、いずれも75%〜80%だった。習近平政権は、確かに高支持率を維持しているのである。
*抗日ドラマはおいしい
ある方の紹介で、中国の有名な俳優に会った。以下は私との一問一答だ。
――最近の中国のドラマや映画は、製作者が比較的自由に作れる状態ですか?
「とんでもない。自由闊達だった胡錦濤時代は終わって、いろいろと制約のうるさい時代に入った。殺人、性犯罪、強盗などを描くのはご法度だ。マンション建設のため無理やり自宅を立ち退かされた人などという党・政府の政策に反する設定もダメだ。
逆に、シナリオの段階で、習近平主席が唱える『中国夢』(チャイニー・ドリーム)が主題として描かれていると評価されれば、北京市政府から500万元(1億円弱)もの制作補助費が出る。だがそもそもが『中国夢』とは曖昧な概念で、市当局も何が『中国夢』なのかについては言及していない。
そのためどの制作会社も必ず、『中国夢会議』をやるのだ。中国人の庶民のサクセスストーリーにするかとか、習近平主席が唱える社会主義的価値観を何らかの形で入れるかとか、侃侃諤諤議論する」
――2015年も抗日ドラマは減らないのか?
「中国でテレビドラマを作る際には、シナリオの段階と完成した段階で、それぞれ新聞出版広電総局の許可を得ないといけない。この2段階の許可を得て作られたものが、年間約6000話で、そのうち放映されるのは、半分の約3000話にすぎない。
抗日ドラマにすれば2段階ともほぼフリーパスで、かつ放映もほぼ確実なのだ。正直言って制作者の側からすれば、抗日ドラマほど制作リスクの少ないものはない。
ちなみに2014年は、『8%条項』という不文律があった。これは、ドラマ全体の8%以上を抗日ドラマにするということだ。抗日戦争勝利70周年の2015年は、さらに一層、抗日ドラマが増えることだろう」
*「アジアの盟主」夢想する習
江沢民時代から続く大晦日夜7時の『新聞聯播』恒例の国家主席による「新年の辞」を見る。昨年に続き、中南海にある習近平執務室からのスピーチだ。
なかなか格調高く、かつ自信に満ちていたが、一つだけ気になった箇所があった。それは3つもの抗日記念日を指定したと誇ったくだりだ。ここに習近平主席の2015年の狙いが透けて見える。おそらく習近平主席は、次のようなことを考えているのだ。
古代から清朝まで、アジアは中国を中心とした冊封体制下にあった。ところが1840年のアヘン戦争と1894年の日清戦争で敗北したことで、中国に代わって日本がアジアの盟主となった。それを2015年は、再び中国を中心としたアジアに引き戻す年にするのだ。
そのために、「抗日戦争勝利70周年」という謳い文句を存分に利用する。何といってもわれわれは勝者であり、日本は敗者なのだ。このことをはっきりさせた上で、全力を挙げて日本を貶め、中国が再びアジアの盟主となっていく・・・
日本は「中国の敗者であること」は認めたくないのだから、2015年の日中関係は、昨年同様、波乱の一年になる予感がする>(以上)
習近平暗殺はまだか。「新彊で6人射殺、自爆テロ未遂か」から。
<【大紀元日本1月13日】中国新疆ウイグル自治区カシュガル地区疏勒県中心部で12日午前、警官襲撃や爆発物の起爆などを試みた容疑者6人が相次いで警察当局に射殺された。自治区政府系ニュースサイト「天山網」が伝えた。
それによると、同県中心部のある商業地域で、爆発装置を運ぶ不審者を発見した市民が警察に通報した。現場に駆けつけた警察隊は、斧で襲い掛かってきた1人を射殺した。その後また、爆発装置を起爆させようとする5人を次々と射殺した。市民や警官に、けが人はいないという。
中国国営新華社通信によると、現場の近くで爆発装置が付けられた一台のミニバンが発見された。新華社英語版は、射殺された5人は爆発物を身体に縛りつけていたと報じ、自爆テロを企てた可能性があるとみられる。
同自治区のウルムチ市は昨年12月、公共の場で顔を覆う民族衣装の着用を禁止する規定を発表し、民族紛争を加速させる可能性が指摘されている。
同自治区で過去2年間、当局に「テロ襲撃」と呼ばれる暴力事件が頻繁に発生しており、約400人の犠牲者を出した。海外に亡命したウイグル人組織、「世界ウイグル会議」は当局の宗教や文化活動に対する弾圧がウイグル人の反発を招いたと北京政府を批判している>
ウイグル人の攻撃力は急速に高まっているようだ。(2015/1/14)