2014年08月11日

◆大英帝国を崩壊させた大東亜戦争

伊勢 雅臣


日本との戦いで植民地を失い、大英帝国は崩壊に追い込まれた。

■1.イギリスの田舎に現れたアメリカ戦車

26歳にしてイギリスの「ファイナンシャル・タイムズ」紙の初代東京支局長となり、現在も東京の外国人特派員協会の最古参として健筆をふるっているヘンリー・ストークス氏は、幼い頃、イギリスの片田舎で、アメリカ軍の戦車を見た時の事をこう記している。


「・・・ある日、妹の手をとって幼稚園へ向かって歩いていたら、雷のような音がした。・・・何かが道路の曲がりかどの向こうから、近づいていきた。なんと、それは戦車だった。

戦車が視界に入ってくると、轟音はますます激しくなった。戦車の側面には大きな白色の星が描かれ、アメリカ軍であることを示していた。それが、次々と10輛(りょう)ほど連なって来る姿に、いまにもわれわれに向かって撃ってくるのではないかと恐怖を感じた」。[1,p18]

戦車隊はドーバー海峡を渡って、フランスのノルマンディに上陸する作戦に参加するために、この田舎町を通ったようだ。

先頭の戦車に乗っているアメリカ兵は、手を振りながら、「ハーイ」などと言って、二人に何か小さな物を放り投げた。それはストークス少年が生まれて初めて手にするチューインガムだった。彼は嬉しいというより、複雑な気持ちを抱いた」。


「年端もいかなかったが、私は1944年6月にアメリカの世界支配の時代が来ることを、直感し」た。[1,p22]

米英は連合軍として戦ったが、第2次大戦の持つ意味はそれぞれに違う。アメリカから見れば「太平洋戦争」で日本を打ち破り、中国・アジアへの門戸を広げた戦いであったが、英国にとってはアジアでの植民地を失い、世界の覇権を米国に奪われた戦いであった。


■2.英国の受けた衝撃

英国にとって、日本との戦いは衝撃をもって始まった。

「もっとも衝撃的だったのは、『プリンス・オブ・ウェールズ』と『レパルス』という大英帝国海軍が誇る2隻の戦艦が、日本の航空攻撃によって、わずか4時間で撃沈されてしまったことだった。それまで航空攻撃で、外洋を疾走する戦艦が撃沈された前例がなかった。

・・・イギリスの誇りは陸軍ではなく、海軍にあった。その誇りが、一瞬にして貶(おとし)められた」。[1,p42]

12月8日の真珠湾攻撃のわずか3日後の事であった[a]。陸上戦でも、英国民にとっての衝撃は続いた。


「日本軍が突然、マレー半島に上陸し、まったく次元の違った戦いが始まった。チャーチル首相も、面食らった。

シンガポール防衛軍のパーシバル司令官は、金縛りにでもあったかのように、まったく戦うこともせずに、戦意を喪失し、降伏した。・・・大英帝国にとってシンガポールは、香港や、上海につぐ重要な拠点だった。シンガポール陥落はイギリスにとって、植民地支配の終わりを象徴していた」。[1,p44]

シンガポール陥落は、昭和17(1942)年2月15日、開戦から2ヶ月余りしか経っていなかった。[b]


■3.「日本軍は大英帝国を崩壊させた」

日本から受けた衝撃を、英国民はどのように受けとめたのか。

「日本軍は、大英帝国を崩壊させた。イギリス国民の誰一人として、そのようなことが現実に起ころうなどとは、夢にも思っていなかった。それが現実であると知った時の衝撃と、屈辱は察して余りある」。[1,p44]

「イギリスは数百年間にわたって、負けを知らなかった。大英帝国を建設する過程における侵略戦争は、連戦連勝だった。私はイギリスは戦えば必ず勝つと思っていたし、学校でそのように教えられた。私は一面がピンクだった地球儀によって、教育を受けた。イギリスの領土がピンク色で、示されていた。

ところが、第2次大戦が終わると、植民地が次々と独立して、ピンク色だった世界が、さまざまな色に塗り替えられてしまった。

大英帝国は植民地を徹底的に搾取することで、栄華を保っていた。お人好しの日本人が、台湾、朝鮮の経営に巨大な投資を行って、本国から壮大な持ち出しをしたのと、まったく違っていた。どうして、イギリスが植民地支配なしで、栄華を維持できたことだろう。

日本の手によって、戦争に必ず勝つはずだったイギリスが、大英帝国の版図をすべて失った」。[1,p46]


■4.『猿の惑星』

英国人の感じた「衝撃」と「屈辱」には人種偏見も潜んでいる。

「当時、私は『ロンドン・タイムズ』東京支店長だったが、白人社会では戦後一貫して、日本への憤りが蔓延していた。そこには怨念があった。イギリスは何百年も続いた植民地から、一瞬にして駆逐された。戦闘に敗れたというだけではない。栄華を極めた大英帝国の広大な植民地が、一瞬にして消えたのだ。この屈辱は、そう簡単に忘れられるものではない。

イギリスは1066年にノルマン人の侵略を受け、国土を占領されたが、ナポレオンやヒトラーの侵略を斥けた。だが、その帝国の植民地がなんと有色の日本人によって奪われた。イギリス人にとって、有色人種に領土を奪われ、有色人種が次々と独立国をつくったことは、想像を絶する悔しさだった」。[1,p37]


「『猿の惑星』という映画があったが、まさにそれが現実となったような衝撃だった。・・・

人間−西洋人−の真似をしていた猿が、人間の上に立つ。それが現実となったら、どれくらいの衝撃か、想像できよう」。[1,p45]

『猿の惑星』とは例えではない。原作者ピエール・ブールは、まず『戦場にかける橋』で、自ら日本軍の捕虜になったと称して、残虐で無能な日本軍が英軍捕虜に強制労働させて、タイのクワイ河に橋をかける物語を書いて、大ヒットさせた。

次に、それをSF映画に発展させて、日本人を猿に見立て、人間(白人)が支配されるというシナリオを仕立てたのである。[2] そんな悪意も露知らず、日本でもこの映画は大ヒットした。


■5.「侵略」か「解放」か

しかし、ストークス氏は、日本には日本の見方がある事を知った。

「私の親しい知人である加瀬英明氏をはじめとする保守派と呼ばれる人たちの立場は「日本は侵略戦争をしていない」、アジアを「侵略した」のではなく、「解放した」というものだ。これは日本人の立場に立った主張だ。

私はイギリス人だから、イギリス側の見方に立って考える。イギリス人からすると、「日本は侵略をしてきた」となる。イギリスがアジアに保持していた植民地を、日本が「侵略」してきた。イギリスにしてみれば、「日本は侵略国」だ。

アメリカ側の見方は、また違ったものだろう。私はアメリカ人ではないので、アメリカ側の視点とは異なる。アメリカ人は、「日本人は明確なアメリカ領土のハワイを、攻撃したのだから、日本がアメリカに侵略戦争を仕掛けた」と、主張するだろう」。[1,p26]

先の大戦は、日本にとっては、自らの自存自衛とアジア諸民族の独立のために戦った「大東亜戦争」であったが、アメリカにとっては「太平洋戦争」だった。アメリカが日本占領後に「大東亜戦争」という呼称を禁じ、「太平洋戦争」と呼ばせたのは、アメリカ側の歴史観を強制するためだった。

しかし、同盟国だったアメリカとイギリスでも、その歴史観は異なる。日本によって植民地を奪われたイギリスからの視点に立てば、その対極に「植民地解放」という、もう一つの視点があることが見えてくる。

■6.侵略は『文明化』か『罪』か

植民地の「侵略」か「解放」か、については、さらに議論がありうる。

「日本がアジアの植民地を侵略したのは、悪いことだったろうか。侵略が悪いことなら、世界史で、アジア、アフリカ、オーストラリア、北米、南米を侵略してきたのは、西洋諸国だ。しかし、今日まで、西洋諸国がそうした侵略を謝罪したことはない。

どうして、日本だけが欧米の植民地を侵略したことを、謝罪しなければならないのか。東京裁判では、「世界で侵略戦争をしたのは、どちらだったか」ということに目を瞑(つむ)って、日本を裁いた。

それは侵略戦争が悪いからではなく、「有色人種が、白人様の領地を侵略した」からだった。白人が有色人種を侵略するのは『文明化』で、劣っている有色人種が白人を侵略するのは「犯罪」であり、神の意向に逆らう『罪』であると、正当化した」。[1,p39]

このように異なる歴史観の間でも、論理的な議論はありうる。そこでの有力な武器は、「白人の侵略は良くて、日本人の侵略は悪」という二重基準(ダブル・スタンダード)を突くことである。

■7.アジア侵略に荷担してきた中国

ストークス氏は触れていないが、「植民地解放」という見方は、中国の「日本帝国主義批判」という歴史攻撃に対しても有効である。

そもそもかつての清国は満洲族による帝国であり、漢族はその植民地として支配されていた一民族に過ぎない。日清戦争は、その清国から韓国の独立を維持するための戦いであり、さらに日本は旧態依然とした清朝では欧米からの侵略は防げないと、孫文による革命を支援した。[c,d]

しかし、孫文の後継者の中で、汪兆銘は日本とともに欧米諸国に立ち上がったが、蒋介石は欧米と組んで日本と戦った。毛沢東以下の中国共産党はソ連の手下として、日本と蒋介石政権を戦わせて、両者共倒れを狙ったのである。

マレーシアやインドネシアなどの英領植民地においては、華僑は植民地政府の手先として現地人搾取に荷担し、進攻してきた日本軍に現地人は協力したが、華僑は英軍と共に戦った。

戦後、アジア諸国が独立すると、中国共産党は朝鮮戦争、ベトナム戦争などアジアの共産化を狙って侵略の触手を伸ばした。内陸部ではモンゴル、ウィグル、チベットなど植民地支配を広げ、海洋では南シナ海、尖閣諸島など周辺海域に侵略の手を広げつつある。

中国は戦前は英米やソ連の手先としてそのアジア侵略に荷担し、戦後は自ら周辺諸国を侵略してきた。それと戦ったのが日本だった。「植民地解放」の視点からは、こういう中国の実像が見えてくる。

■8.国民の義務、先人への責務

以上のように日本には日本の歴史観があり、日本人はそれを国際社会で、もっと強く発信すべきだと、ストークス氏は説く。

日本は相手の都合を慮(おもんばか)ったり、阿諛追従する必要はない。アメリカはアメリカの立場で、中国は中国の立場でものを言う。当然、それらは食い違う。だが、それでいいのだ。世界とはそういうものである。日本だけが物わかりのいい顔をしていたら、たちまちつけ込まれてしまう」。[1,p4]

「思いやり」という日本人の民度の高さが、民度の低い国際社会においてはマイナスとして働く。「思いやり」などという言葉を辞書に持たない国には、それなりの対応をしないと、大変な事になる。

「もう一つ私が声を大にして言いたいのは、「南京」にせよ「靖国参拝問題」にせよ「慰安婦問題」にせよ、現在懸案になっている問題のほとんどは、日本人の側から中国や韓国に嗾(けしか)けて、問題にしてもらったのが事実だということだ。この問題をどうするか、それは日本人が自分で考えなければならない」。[1,p5]

弊誌でも取り上げてきたが[e]、近年、日本の一部マスコミが、中朝韓の手先として反日報道をしている実態が明らかになってきた。

まずは我々日本国民一人ひとりが、歴史を自分で勉強して、何が正しくて、何がプロパガンダなのか、判断しうるだけの見識を積まなければならない。そして、他国のためのプロパガンダを流すマスコミに対しては不買運動などで批判の声を上げなければならない。

それが我が国の自由民主主義社会を守るための国民の義務であり、かつ子孫のために自らの生命、生涯を捧げてきた先人への責務である。


■リンク■

a. JOG(270) もう一つの開戦 〜 マレー沖海戦での英国艦隊撃滅
 大東亜戦争開戦劈頭、英国の不沈艦に日本海軍航空部隊が襲いかかった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog270.html

b. JOG(551) 山下奉文、使命に殉じた将軍
 シンガポール攻略の英雄は、使命に忠実にその後の悲運の人生を生き抜
いた。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogdb_h20/jog551.html

c. JOG(043) 孫文と日本の志士達
 中共、台湾の「国父」孫文の革命運動を多くの日本人志士が助けた。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h10_1/jog043.html

d. JOG(319) 山田良政・純三郎兄弟 〜 孫文革命に殉じた日本武士道
 清朝の圧政と列強の収奪に苦しむ民衆を見て、革命支援に立ち上がった
二人の武士道精神。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h15/jog319.html

e. 国際派日本人養成講座「Media Watch」記事一覧
http://blog.jog-net.jp/theme/6658adcf2c.html


■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. ヘンリー・S・ストークス『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』
★★、祥伝社新書、H25
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/439611351X/japanontheg01-22/

2. 高山正之(インタビュー)『米国はなぜ日本と戦争したかったのか』、「日本の息吹」H23.10


2014年08月10日

◆ヘーゲル国防長官がインド入り

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26年(2014)8月9日(土曜日)通巻第4308号 >  

〜モディ首相訪米前、ヘーゲル国防長官がインドへ入った
   武器、ミサイルの共同生産を持ちかけ、中国の軍事力を露骨に牽制へ〜

モディ新インド首相の訪米を前にして、急遽、ヘーゲル国防長官がインドを訪問し、武器、ミサイルの共同生産をもちかけ、中国の軍事力を露骨に牽制する作戦にでた。

2014年8月8日、ヘーゲル国防長官はインド首相モディと会見した。モディは9月に訪米を予定しており、オバマーモディ会談に多大な関心が集まっている。

第一にインドは中国との軍事的対峙を継続しながらも、経済面では中国との貿易を拡大させている。モディはヒンズー至上主義者で、中国を強く批判する政治家だが、同時にリアリストである。

これまでインドの武器は殆どがロシアからの輸入だったが、米国の方針転換にともない原発技術供与を受けるなど劇的な改善がみられてきた。

第二にインドの目前の脅威は中国の代理人であるパキスタンで、このため経済重視のモディ政権と雖も国防費の増大を敢行した。インドの防衛予算は前年比12%増の3兆8000億円に達する。

モディ政権誕生後、インド経済は楽天主義が強まり株価高騰、通貨ルピーの安定、海外企業の進出増大が続いている。これらを「モディノミクス」の成果と自画自賛しているが、とくにモディは選挙公約を忘れ、大型小売店舗のインド展開を認めたほか、防衛産業への外国からの出資上限を49%とした。

第三に米国が新しくインドに供与する兵器システムには対戦車ミサイル「ジェベリン」や対艦ミサイルのハープーン、武装ヘリコプター、無人機などの共同開発と生産が含まれている軍事筋は推測している。

中国はこれらの動きに横やりを入れるため、王毅外相をデリーに派遣し、訪米と訪日前に習近平の電撃的なインド訪問を打診し、また3000億ドルの経済援助をぶち挙げて関心を引いてきたが、モディ首相の対中警戒心を溶くには至らなかった。

   

◆必要な比較文化史からの視点

櫻井よしこ


「国際社会への理解深めるため」

「空気を読むな」「真珠湾攻撃は武士道にかなったものだった」「言うべきことは言わなければならない」

ハッと胸に突き刺さる言葉で、平川?弘(ひらかわ・すけひろ)氏は日本人の覚醒を促す。氏の著書『日本人に生まれて、まあよかった』(新潮新書)は、比較文化史の大家が平易な表現で物した日本人のための教養の書である。

空気を読んで間違い続けて失敗した事例を、氏は、東京大学での教え子だった岡田克也氏らを取り上げて語っている。家永三郎氏が自身の書いた高校の日本史教科書が検定で修正を求められ、司法に訴えたとき、平川氏のクラスでそのことを取り上げた。当時1年生だった岡田氏は「朝日新聞」の社説のような意見を堂々と述べた。

その種の「模範解答」を言い続ければ、世論に支持され、ある程度まで必ず出世できるが、それが落とし穴だと氏は言うのだ。いまや岡田氏も、氏同様に朝日新聞的主張を繰り返した土井たか子氏も福島みずほ氏も日本では通用しなくなった。世界でも通用しない。

次に、真珠湾攻撃は武士道にかなっていたとの主張には意表を突かれたが、氏の理屈はこうだ。

〈日本は宣戦布告前に真珠湾攻撃に踏みきったため、sneaky(卑怯)だと非難されている。確かに日本海軍は戦艦アリゾナを轟沈させ千人余の米将兵が犠牲になったが、日本海軍は攻撃を軍施設に絞ったため、民間人犠牲者は68名にとどまった。

米国は広島、長崎、各都市への攻撃で50万人以上の民間人を殺害した。爆撃が人道的か非人道的かは市民と軍人の死者の比率でわかる。その見地に立てば、真珠湾攻撃はむしろ武士道にかなっていた〉

氏は右の意見を、原爆搭載機エノラ・ゲイの展示をめぐって米国のスミソニアン博物館で議論が持ち上がったとき、英文雑誌「タイム」に投稿したという。無論、氏の主張は激しい議論を呼び起こす性質のものだ。だが、議論する意義は非常に深いのではないだろうか。歴史問題で苦しめられている現代の日本人であれば、この種の議論を提起できなければならないと、氏は説くのだ。

もう一点、靖国神社についての視点もご紹介したい。いわゆるA級戦犯であろうとも、死者は等しく祭るのが良い。英仏でも2013年に、軍紀違反で銃殺した自国の1000人を超す兵士たちをも「苛烈な戦闘におとらぬ苛酷な軍紀の犠牲者」として許すという処置が取られた。

本居宣長が「善神(よきかみ)にこひねぎ……悪神(あしきかみ)をも和(なご)め祭(まつ)」ると書いたように、神道では善人も悪人も神になる。慰霊は善悪を超えて万人に行うからこそ慰霊なのだという主張だ。

そもそも人間による善悪の判断など当てにならない。戦争中、米国は神道と天皇崇拝が日本の軍国主義の元凶だとして、明治神宮を焼夷弾で狙い撃ちにした。だが米国大統領は明治神宮に参拝した。

クリントン国務長官も09年、「日本の歴史と文化に敬意を表するため」と言って明治神宮に参拝した。神道、明治神宮、皇室への誤解が解けたように、靖国神社への誤解も、いつかきっと解けると、氏は言う。

氏の専門である比較文化史から世界を眺めることが、国際社会の事象への理解を深めてくれる。国際社会の国家と人間の営みを豊かな理解力で分析し、その力を土台に日本は世界に発信すれば良いのだ。

なお、氏は日本の国是とすべき大原則として五カ条の御誓文を挙げているが、私は大賛成である。日本の価値観を凝縮した御誓文こそ、世界に広めていくべきものと考えている。

本書の楽しみは、岡田氏らの失敗は「元旦から朝日を拝まずに朝日新聞を拝んでいた」ことだなどという真実を、随所にサラリと書いて笑わせてくれることだ。知的に、クールに皆さんにも読んでいただきたい。『週刊ダイヤモンド』 2014年8月2日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1045

2014年08月09日

◆「核」が日中開戦を抑止する(62)

平井 修一


外交評論家・日高義樹氏(注1)の論考「【世界を斬る】米空軍、中国を標的に核兵器強化 軍事増強を続ける中国に対抗」(夕刊フジ7/23)から――
・・・

「米空軍は、中国を標的とする抑止力としての核攻撃力をグアム島を中心に強化している。AFGNC(地球核戦略司令部)をグアム島に進出させるとともに、核爆弾を投下するステルス爆撃機B2(注2)と最新鋭の装備を搭載したB52H(注3)を計20機以上、常駐させることにした」

退役後、米空軍の支援団体・空軍協会の幹部になっている元空軍司令官がこう言った。

私は長い間、この協会のメンバーとして米空軍の動きを追っている。2008年、オバマ大統領が登場して以来、空軍は大幅な予算削減に直面しただけでなく内部の混乱が続いていた。

無人偵察機を大幅に増強しようとしたゲーツ前国防長官が、「従来の戦闘機、爆撃機を維持するべきである」と主張した空軍長官と空軍総司令官、参謀長を一度にクビにする騒動もあって、米空軍の戦力の低下が懸念されてきた。

そうしたなか、ウェルシュ空軍参謀総長が「効果的な抑止力を強める」との方針を打ち出した。

私が入手した文書によれば、米空軍は、「A10」(注4)と呼ばれる核抑止力の点検を強化する組織をワシントンの空軍司令部に新しく設置し、核兵器の整備や整備員、パイロットの訓練と教育、監督に力を入れることを明らかにしている。この核兵器戦闘計画は、私がグアム島で空軍の訓練を取材していた頃から、すでに準備が始まっていた。

グアム島のアンダーセン空軍基地には、B52HやB2の格納庫が建設されている最中だった。特にB2の格納庫は分厚いコンクリートで作られ、厳重な警戒態勢がとられていた。B52H爆撃機には、実際に乗り込んで取材したが、これまでの古い機種にはなかった爆弾投下機器がずらりと取りつけられていた。

グアム島のなだらかな丘にある4本の滑走路から巨大なB52Hが離着陸を繰り返す一方、三角形の異様な形のステルス爆撃機B2が南洋特有の積乱雲から急降下する。そのはるか先の山あいには、冷戦の間に米軍が作り上げた核兵器の貯蔵庫が見え隠れしていた。

オバマ氏は、中国に対して「戦争はできない」という弱気の姿勢をとっているが、米空軍は予算削減のなかで、最後のより所として核兵器による抑止力の強化に全力を挙げ始めた。

もとより、核爆弾は非人道的な兵器で忌避されるべきもの。だが、中国が国際法を無視して、尖閣諸島や東南アジア諸国の領土である南シナ海の島々を占拠しようとしていることに対抗して、米空軍が、核抑止力を行使しようとしていることは間違いない。

中国は軍事力増強の宣伝を繰り広げ、日本の人々を脅かしている。日本国内には、中国とは戦えないというムードすら強くなっている。

だが、中国は今や米軍が核兵器による抑止力に力を入れ始めたことに気がついているだろう。誇大宣伝を繰り広げてきた中国軍部や政治家は、本心では怯えているに違いない。(以上)

・・・

へたれオバマがトップにいようとも、国防最前線の現場は必死で中共の暴走を抑えようとしている。まさに「核」が日中開戦、アジア大戦を抑止するのだ。
・・・

注1)日高義樹(ひだか・よしき):1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。

注2)B2:アメリカ空軍のステルス戦略爆撃機。開発はノースロップ・グラマン社が担当した。水平尾翼および垂直尾翼がない全翼機という特徴的な形をしており、非常に高価(1機2000億円)で、少数しか生産されていない。

開発は、ステルス性や長い航続距離などの要求の下に1978年から開始された。当初は、ソ連の防空網をかいくぐり、ICBM発射基地や移動式ICBM発射台に短距離核ミサイルにより攻撃を加えることを主目的としていた。

2013年3月27日、2機のB2がホワイトマン空軍基地(ミズーリ州) から無着陸で韓国沖の黄海に飛来、デモ飛行をして北朝鮮を抑止した。

注3)B52H:ボーイング社が開発しアメリカ空軍に採用された戦略爆撃機B52の後期型。B52は技術的には先行するB47で実証された諸要素を踏まえ大陸間爆撃機の航続力と兵装搭載力に亜音速の速度性能を与えた、本質的に堅実な機体である。

ソ連圏内の目標を自由落下型の核爆弾で攻撃するために作られ、戦略核攻撃に使用するため、機体中央部は爆弾倉となっており、大型で大重量の初期の核爆弾を搭載可能になっている。後期のH型においては、空中発射型の巡航核弾頭ミサイルを主要兵装としていた。

注4)A10:日高氏は「核抑止力の点検を強化する組織」と書いているが、よく分からない。A10はもともとは核爆弾投下用の優れた爆撃機だったが退役した。これを組織名にしたのかもしれない。Defence Newsに「US ToSpend Billions 'Modernizing' Nuclear Arsenal」との以下の記事があった(2013/11/6)。

<アメリカは数十年前のソ連侵攻阻止のために設計された核兵器の近代化について数十億ドルの予算計上を計画している。一部の議員や専門家はロシアとの軍縮交渉に逆行するもので、かつ予算の無駄であると反対しているが、 軍側やそれに近い政府関係者は「B61核爆弾」のような“力”を確保し、維持する必要があると主張している。

オバマ大統領の計画では、この核爆弾はより小型で高精度なB61-12にアップデートされ置換される。B61核爆弾が近代化し配備されれば、ロシアも何らかの反応を示すだろう。

ロバート・ケーラー戦略司令部長は公聴会でこう述べている。

「B61核爆弾は製造から25年以上経っており、すでに時代遅れの技術が含まれており、頻繁なメンテナンスも必要です。核の近代化により全体としての核の総量を減らすことができます。ロシアがどのような反応をするかは分かりませんが、少なくとも“肯定的な”反応ではないのは確かです」>

組織としてのA10は上記関連のようだ。ロシアおよび中共、北朝鮮を牽制するのが狙いだろう。(2014/8/9)


◆朝日 随所に自己正当化と責任転嫁

阿比留 瑠比


 ■朝日よ、「歴史から目をそらすまい」

朝日新聞が5、6両日に掲載した特集「慰安婦問題を考える」はいくつか視点の欠落があり、「検証」と言うにはあまりに不十分な内容だった。

朝鮮人女性を強制連行したと証言した自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治氏の証言に関する記事16本を取り消したのはよいが、その他の論点に関しては自己正当化や責任転嫁、他紙の報道をあげつらう姿勢が目立つ。歴史を直視しようとしない朝日新聞の報道姿勢に改めて疑念を抱かざるを得ない。

                  ◇

5月19日、北九州市内のホテルで、朝日新聞社西部本社の旧友会(OB会)が開かれた。OBで北九州市在住の伊藤伉(つよし)氏は手を挙げて来賓に招かれた木村伊量社長にこう訴えた。

「慰安婦と女子挺身隊の混同、吉田清治氏の嘘の2点については訂正・削除して朝日の名ではっきり示してほしい。それを何としてもやるべきではないか」

木村社長は「貴重なご意見をいただいた。詳しいことはここで言えないが、いずれ検証したい」と応じたという。この出来事は、朝日新聞社内でも、自社の慰安婦報道に問題があることが認識されていたことを物語っている。

にもかかわらず、2日間にわたる特集に謝罪の言葉はなく、言い訳に終始した。

              ◆  ◆  ◆

5日の特集では、見開きで「慰安婦問題 どう伝えたか 読者の疑問に答えます」と大見出しを打ち、【強制連行】【「済州島で連行」証言】【軍関与示す資料】【「挺身隊」との混同】【元慰安婦 初の証言】−の5つのテーマを検証している。

ところが、「虚偽」と断じて記事を取り消したのは、吉田氏による強制連行に関わる証言だけだった。

挺身隊と慰安婦の混同については「まったく別」で「誤用」と認めながらも当時の「研究の乏しさ」を理由に釈明を重ね、「1993年(平成5年)以降、両者を混同しないよう努めてきた」とむしろ胸を張った。

果たしてそうなのか。朝日新聞の4年3月7日付のコラム「透視鏡」ではこう記している。

「挺身隊と慰安婦の混同に見られるように、歴史の掘り起こしによる事実関係の正確な把握と、それについての(日韓)両国間の情報交換の欠如が今日の事態を招いた一因」

つまり、この時点で挺身隊と慰安婦が全く別の存在だと把握しながら、自らの誤用を認めることも、訂正することも拒んできたことになる。

産経新聞が今年5月、朝日新聞広報部を通じて、慰安婦と挺身隊の混同や強制連行報道について「今もなお正しい報道という認識か」と質問したところ、こんな回答を得た。

「従軍慰安婦問題は最初から明確な全体像が判明したという性格の問題ではありません。(中略)お尋ねの記事は、そのような全体像が明らかになっていく過程のものです。当社はその後の報道の中で、全体像を伝える努力をしています」

初めは全体像が分からなかったから間違いを書いても訂正しなくてもよいと言わんばかりではないか。しかも、今回の特集まで朝日新聞に慰安婦問題の「全体像を伝える努力」はうかがえなかった。

今回取り消した吉田証言についても、5月の段階で「訂正する考えはあるか」と質問したところ、次のように答えている。

「弊社は1997年(平成9年)3月31日付朝刊特集ページで、証言の真偽が確認できないことを詳細に報じ、証言内容を否定する報道を行っています」

実際はどうだったか。9年3月の特集ページでは、吉田氏について「朝日新聞などいくつかのメディアに登場したが、間もなくこの証言を疑問視する声が上がった。済州島の人たちからも、氏の著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できない」と記しただけだ。

吉田証言を16本もの記事で取り上げておきながら「真偽は確認できない」の一言で済ませ、「証言内容を否定する報道」を行ったとは言えない。むしろ過去記事の過ちを糊塗(こと)しようという意図が浮き上がる。

今回の特集でも、自社が吉田氏のどの証言をどう取り上げてきたかについてはほとんど触れていない。これでは、何のことだか分からない読者も少なくないだろう。

            ◆  ◆  ◆

「強制連行」に関する検証も、朝日は平成3〜4年ごろは自明の前提として報じており、4年1月12日付の社説「歴史から目をそむけまい」では「『挺身隊』の名で勧誘または強制連行」と断じている。

 その後、強制連行説の雲行きが怪しくなってくると、徐々にトーンを弱め、「強制連行の有無は関係ない」というふうに変えていった経緯があるが、そうした事情も説明していない。

今回の特集では「読者のみなさま」に「軍などが組織的に人さらいのように連行したことを示す資料は見つかっていません」と言いながら、こうも書く。

「インドネシアや中国など日本軍の占領下にあった地域では、兵士が現地の女性を無理やり連行し、慰安婦にしたことを示す供述が、連合軍の戦犯裁判などの資料に記されている。インドネシアでは現地のオランダ人も慰安婦にされた」

兵士の個人犯罪や、冤罪(えんざい)の多い戦犯裁判の記録を持ち出し、なおも「日本の軍・官憲による組織的な強制連行」があったかのように印象操作していると受け取られても仕方あるまい。

「軍関与示す資料」とは、朝日新聞が4年1月11日付朝刊で大きく展開した記事「慰安所 軍関与示す資料」を指す。

政府の河野談話の作成過程検証チームは6月20日、この「主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」と事実ではないことを書いた記事についてこう指摘した。

「朝日新聞が報道したことを契機に、韓国国内における対日批判が過熱した」

ところが、朝日新聞の5日の特集では、自社の報道が日韓関係を悪化させたという認識は欠落している。朝日が繰り返し取り上げたことで吉田証言が韓国でも広く知られるようになり、それが対日感情を悪くしたことへの言及もない。

6日付の特集では、わざわざ1ページを割いて「日韓関係 なぜこじれたか」と題する解説記事を載せたが、ここでも自社の報道が両国関係をこじらせたことへの反省はみられない。

「元慰安婦 初の証言」は、元朝日記者の植村隆氏(今年3月退社)が3年8月11日付朝刊で書いた「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」という記事を指す。

韓国メディアより先に、初めて韓国人元慰安婦の証言を伝えたもので、これも「母に40円でキーセン(朝鮮半島の芸妓(げいぎ))に売られた」と別のインタビューなどで語っている金学順氏について「『女子挺身隊』の名で戦場に連行」と記している。

この誤った記事が慰安婦問題に火が付いた大きなきっかけとなったが、朝日は検証で「意図的な事実のねじ曲げなどはありません」と非を認めなかった。少なくとも事実と異なることを流布させたのだから、せめて謝罪や訂正があってしかるべきだが、それもない。

              ◆  ◆  ◆

問題点はほかにもある。朝日新聞は「他紙の報道は」という欄を設け、産経、読売、毎日各紙もかつて吉田証言を取り上げたり、慰安婦と挺身隊を混同したりした例もみられたと指摘した。「お互いさまじゃないか」と言わんばかりなので、朝日新聞の9年3月31日付の慰安婦に関する社説「歴史から目をそらすまい」を引用したい。

「ほかの国は謝っていないからと、済まされる問題でもない」

朝日新聞の慰安婦報道により国際社会での日本の評価がどれだけ失墜したか。国民がどれほど不利益を被ったか。今後も検証していかねばならない。産経ニュース 2014.8.8


◆「世界を動かすものの正体!」

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 


<平成26年(2014)8月8日(金曜日)通巻第4307号>  

<日本文化チャンネル桜 からお知らせ>
◆ 闘論!倒論!討論!2014
テーマ:「世界を動かすものの正体?!」

国際金融資本や石油メジャー等々と現在の世界情勢について、陰謀論ではない真摯な議論を展開する番組です。

放送予定日:8月9日(土)20時00分〜23時00分
日本文化チャンネル桜(スカパー!217チャンネル)
インターネット放送So-TV(http://www.so-tv.jp/
「YouTube」「ニコニコチャンネル」オフィシャルサイト

パネリスト(50音順敬称略)

・片桐勇治(政治アナリスト)
・田中英道(東北大学名誉教授)
・田村秀男(産経新聞社特別記者・編集委員兼論説委員)
・浜田和幸(参議院議員)
・馬渕睦夫(元駐ウクライナ兼モルドバ大使)
・宮崎正弘(作家・評論家)
・渡邉哲也(経済評論家)
・司会:水島総(日本文化チャンネル桜 代表) 

2014年08月08日

◆慰安婦問題、吉田証言に踊った人達

阿比留 瑠比


朝日新聞が5、6両日にわたって朝刊に掲載した同紙の慰安婦報道の検証記事を興味深く読んだ。朝日の検証は中途半端で言い訳じみた内容ではあったが、韓国・済州島で女性を強制連行したと証言した吉田清治氏に関する記事(少なくとも16本)を取り消したことには一定の意味がある。

もちろん、吉田氏を「職業的詐話師」と呼ぶ現代史家の秦郁彦氏がすでに平成4年3月に済州島で現地調査を行い、虚偽性を指摘してきた話であり、遅きに失した点は否めない。

読売新聞の6日付社説「『吉田証言』ようやく取り消し」は、次のように朝日の姿勢を批判した。

「疑問が指摘されながら、20年以上にわたって、放置してきた朝日新 聞の責任は極めて重い」

とはいえ、間違いを改めないよりははるかにマシである。秦氏は6日付朝日に寄稿し、こう書いている。

「前回の検証(1997年3月31日)では吉田証言に関して『真偽は確認 できない』と抑え気味だったが、今回は『虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした』と改めた。

謝罪の言が ないことに不満の人もいようが、画期的だと評価する人も多かろう」

吉田氏のことを「腹がすわっている」などと持ち上げ、国内外に広めた朝日がその証言を否定したのだから、今後は吉田証言に依拠して慰安婦強制連行説を唱える論者はそうそう出てこないだろう。

それにしても慰安婦問題を考えるとき、吉田証言に食いつき、これを利用して日本たたきを展開した識者の多さに気が遠くなる。

吉田氏は、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野談話作成時には政府のヒアリング(聞き取り)対象となったし、国連人権委員会(当時)に提出され、慰安婦を「性奴隷」と認定した8年の「クマラスワミ報告」でも引用されている。

日本に批判的なオーストラリア人ジャーナリスト、ジョージ・ヒックスの事実誤認の多い著書「慰安婦」でも、参考文献として吉田氏の本が記載されている。4年7月の日本弁護士連合会人権部会報告でも吉田氏の著書が引用された。

韓国政府も、同年7月の「日帝下軍隊慰安婦実態調査中間報告書」で吉田氏の著書を強制連行の証拠として採用しているのである。

社民党の福島瑞穂前党首らとともに、韓国で対日賠償訴訟の原告となる元慰安婦を募集し、代理人を務めた高木健一弁護士に至ってはこれとは別の裁判で吉田氏を2回、証人として招いて証言させた。

民主党の仙谷由人元官房長官の大学時代からの友人でもある高木氏は著書「従軍慰安婦と戦後補償」(4年7月刊)で、吉田氏の法廷証言を26ページにわたって紹介している。その中で高木氏は、こう吉田証言を称賛している。

「その証言は歴史的にも非常に大きな意義がある」

「戦時における日本の社会全体がいかに正義と不正義の分別さえ全くできなくなっていたか、その異常な状況を証明して余りある」

朝日をはじめ、当時の言論空間がいかに事実と虚構の分別さえ全くできなくなっていたかが分かる。

当の吉田氏は8年の週刊新潮(5月2・9日合併号)のインタビューでこう開き直っていた。

「事実を隠し、自分の主張を混ぜて書くなんていうのは、新聞だってやっている」

吉田氏は自身の創作話に裏付けもとらずに飛びつき、論調が合うからと恣意(しい)的に垂れ流した新聞報道などのあり方を、実は冷めた目で見ていたのかもしれない。
(政治部編集委員)産経【阿比留瑠比の極言御免】 2014.8.7

◆「宮崎正弘の書評」

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26年(2014)8月7日(木曜日)通巻第4306号>  

(本号はニュース解説がありません)

◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ◎BOOKREVIEW 

日本人の精神がゆがんだ元凶はGHQの占領プログラムである吉田松陰が「偉人」から削除され、ミンシュシュギが自虐的に強調された


山村明義『GHQの日本洗脳』(光文社) 副題に「70年続いた支配システムの呪縛から日本を解放せよ!」とある。

戦後の大混乱の元凶は指摘する必要もないがGHQである。こんにちも継続されている大混乱はすべて占領憲法と、その付随的なプログラムによる。
 
70年前に仕掛けられた日本人弱体化装置はまだ効果的に作用しているのだ。

GHQの一部門は出版を取り締まり、戦前からの伝統的良書7000冊を焚書処分とした。洗脳プログラムの「民主主義」なるものが日本男児を怯懦にした。武道は禁止され、臆病者と卑怯者が輩出されるシステムが確立されたことによって日本の矜持、品格が喪失された。

GHQの手先となって突っ走ったのは教育現場の左翼教師と新聞である。それらに媚びようとした曲学阿世の文化人どもである。

教育プログラムは日本人の精神を脆弱にして、武士道がふたたび復活しないことを目的とした。

山村氏はこういう。

「GHQにとって、第2次世界大戦で米国と戦った日本人を教育によって『無力化』することは至上命令であった。今後も半永久的に日本人を従順にさせ、また『弱体化』にさせるためには、最初に日本人の教師や生徒を洗脳し、幼いことからの教育によって、『心理的側面』、つまり過去の思想を変える方法が一番効果的であると、GHQは考えた」のだ。

かくして教科書の書き直しが命じられ、実行された。

「学校教科書では『終戦に伴う教科書図書取り扱い方に関する件』に基づき、『GHQの下部機関』と化した文部省からの指導で、GHQにとって『不都合な真実』は、異なるものに書き換えられるか、または『黒塗り』されるようになった。

例えば、教科書で教える偉人とされる人物は、戦前までの『楠木正成』『吉田松陰』『東郷平八郎』の3人が『豊田佐吉』『ガリレオ』『野口英世』に書き換えられた」のである。

歌舞伎はかろうじて生き延びたが「忠臣蔵」は外された。映画も同様であった。大東亜戦争が正しいという正統な映画は製作が禁じられた。

しかし歌舞伎は昭和22年から再開を許可されていたが、東宝、松竹などの自主規制により、「忠臣蔵」の上演再開は昭和26年、つまり「晴れて日本全国で上演できるようになったのは、占領末期の昭和26年のことだった」 このほかにも農業、医療、宗教がゆがみ、マスコミは「調教された」。だから自虐的になるのも当然である。

自立心が失われてしまった日本が、ようやくにして自虐史観から脱却しようとしているときに米国は首相の靖国神社参拝に『失望』したと表明した。それを金科玉条のごとく嬉々として伝えた新聞が、朝日新聞だった。筆者山村氏、畢生の労作となった。

◆子供要らない、犬で十分?

平井 修一


散歩中にいろいろな犬を見かけるが、10%はラブラドールのような大型犬、20%はわが家のビーグルや柴犬に代表される中型犬、残りの70%はトイ・ドッグとか玩具犬、おもちゃ犬とか呼ばれている小型犬だ。

オッサンは大型犬、オバサンは中型犬、若い人は小型犬を愛好している。若い人に小型犬はなぜ好まれるのか。必要な運動量を室内で十分得られるから毎日散歩させる必要がないし、食事は少量で、排便、排尿も少ないから面倒があまりかからない。

それでも十分に可愛いから癒しになるし、生き甲斐にもなる。自分の子供を持つとなったら莫大な手間と大変なお金がかかるが、今の世の中、家制度が崩壊する過程にあって、子供が果たして投資に値するリターンをもたらすかどうかは全然分からない。

かくして若いカップルは子供ではなく、その代替におもちゃ犬を1匹、2匹、時には三匹飼うのだ。「子供要らない、犬で十分」ということなのだろう。

かつてはどこの国でも一人前の社会人は結婚して子供を持つのはごく普通のことだったが、どうも普通ではなくなりつつあるようだ。小生は昭和26年(1951)生まれだが、育った環境や就職した当時の社会では、30過ぎで独身の男は「なんか気持ち悪い」などと敬遠され、普通の男女は20代で結婚し、やがて子を持つのが当たり前だった。

今の日本は全然そうではなくなりつつある。多分、世界中、というか特に先進国、中進国がそういう傾向なのだろう。

子供の代わりに犬を飼う、さらには配偶者、恋人、友達の代わりにする人も多いだろう。世紀末的というか亡国的な感じがする。

JBプレス8/5にアン・ヨンヒ氏が「恋愛も結婚も出産も、すべて諦める韓国の若者たち」を書いている。氏は国際会議の同時通訳のかたわら、梨花女子大学、ソウル同時通訳大学院大学で教鞭をとっている。以下、引用。

<韓国は夏休み真っ盛りだ。夏休みになる前に、大学院生たちに夏休みの計画を聞いてみたら、「私たちは『三放世代(サンポセデ)』ですから、勉強さえすればいいのではないでしょうか」という答えが返ってきた。

「三放世代」とは、「3つを放棄する世代」の略語で、日本の「さとり世代」と似たような言葉である。

「三放世代」の特徴は、1つ目は恋愛を放棄し、2つ目は結婚を放棄し、3つ目は出産を放棄することだ。

ちみに日本の「さとり世代」とは、最近の若者が現実を悟っているところから出た言葉で、彼らの特徴は、「欲がない」「恋愛に興味がない」「旅行に行かない」などと何もしないことを言う。

「三放世代」と「さとり世代」は少し観点は違うけれど、「どうせできないし、やっても無駄だ」という観念が大本に流れている。

現在韓国では少子高齢化問題が深刻化しており、出生率はOECD(経済協力開発機構)諸国の中で最下位である。政府は出産奨励金などを出しているというのに、当の若者たちは「三放世代」などと言い、出産から遠のいて
いる。

三放世代が3つを諦めている理由は、経済的理由が最も高く、就職している人とそうでない人とでは恋愛している率が異なる。

また、結婚費用の負担があるので、結婚もできない。結婚式だけでなく、ソウルで住む家を探すにはまとまったお金が必要になるからだ。

出産に関しては、子供は生むだけでいいのではなく養育費がかかる。養育費はそれこそピンからキリまであるので、生んだからには最高の教育を受けさせようと考えたり、韓国の教育環境に辟易していたりするので、やはり出産を躊躇する人が多い。

民主化すれば皆が幸せな国になると思われたが、現在は目に見えない差別が存在する。巧妙に仕組まれた差別を受けると、それを受けとめる側は、元々こんな感じなのかと素直に受けとめてしまう。

民主化され、平等だと言われつつ、実際は巧妙に格差を固定する仕組みに変わっているのだ。

例えば、教育においてどんどん格差が生まれている。昔は、勉強さえできれば名門大学に進学できたが、今の状況では勉強だけでは入れないと言われている。

付加価値をつけなければ名門大学には進学できなくなる仕組みになった。その付加価値こそ、お金がなければつけにくいもので、普通の学校では教えてくれない。私費を使って獲得した子供たちが有利になるようになっているのだ。

名門大学に進学できないと、大企業に就職することが困難になる。大手企業に就職できないと、中産階級にとどまることができない。

現在韓国の大学では、どの大学であれ「経営学部」を最高の学部と考える。以前なら大学によって学風も違い、好まれる科や学部は異なっていたが、現在では軒並み「経営学部」の競争率が高いというのだ。

何でも経営の合理化に基づいて考える、経営学部が優勢になっているせいで、これまでの「成長第一」論が頭をもたげ、結局、現在のような「安全に無頓着な国」になってしまったという意見もある。

三放世代は、最近「五放世代(オポセデ)」とも言われ、ますます韓国の未来を暗くしている。この五放世代とは、恋愛、結婚、出産以外に「人間関係」と「マイホーム購入」を付け加えたものである。

まだ、韓国政府は彼らに対して画期的な政策は打ち出せないでいる>(以上)

日本と状況はかなり似ているのではないか。

同じJBプレス8/5に「結婚・出産は日本人の義務であって権利ではない」を元陸将補の森清勇・星槎大学非常勤講師が書いている。以下引用。

<「サンデー毎日」7/13で「結婚や出産は義務ではなく権利だと思っている」という発言には、特に違和感があった。

この考えは正しく家族や国家を無視した現憲法の結果そのものだ。「権利」というのは唯我独尊で個人至上主義であり、国家という共同体に生きるために最小限必要な共生の概念がすっぽり抜けている。

こうした考えでは少子化は際限なく進むであろうし、当人にはロビンソンクルーソーの世界で生きるよう提言したい。

日本社会の構成員であるからには、個人の主張以前に社会の一員(成員の方が自覚を伴った用語かも知れない)として存在しているという自覚を忘れてはならないと思う。

地域や国の成員であるということは、その成員としての責任があるということではないだろうか。その責任は国家が沈没しないように、また地域社会が存続できるように努める義務を生じさせる。

少子化が最大の問題である時には、それに貢献する行動が義務として権利以上に重く考えるべきことではないだろうか。

日本は共産主義国家ではないが、貧富の差が少なく、社会主義的国家に近い。国家を国民全体が共同して背負う観点からは、健康などの問題がある特殊な場合を除き一義的にはすべての男女が家庭を築き、子供を産み育てる義務があると意識するのが基本であり、公平ではないだろうか>(以上)

まったくの正論だ。ただ、正論をいくら言ったところで「先だつものはカネ」で、ある程度の所得がない、将来も所得が増えそうにない男はなかなか伴侶を持てるものではない。

明治安田生活福祉研究所が2013年2月に実施した調査によると、未婚女性が結婚相手に求める最低年収は「400万円〜500万円」と答えた人が最多で、総務省の家計調査によると、結婚適齢期の30代前半の男性の平均年収は461万円だから、このあたりが「人並み」の年収なのではないか。

だから200万円台とか300万円台とかではとても結婚できない。「年収ラボ」によると大工さんの2013年の平均年収は336万円、土木作業員は345万円、パティシエは295万円、タクシー運転手は297万円、調理師は332万円、ケアマネージャーは367万円、普通トラック運転手は385万円。

20代から50代までの平均年収だから、30歳なら200万円台はざらだろう。女性は相手にしない。

肉体労働系の仕事は概ね収入が低いから、せめて溶接工とか旋盤工とか重機オペレーターとか付加価値の高い専門技術を身に付けないと嫁さんも子供も持てないことになる。

いいか悪いかは別として、この世は競争社会、格差社会だ。漫画にゲームにテレビに赤兵衛48・・・うつつを抜かしていると努力不足とか怠惰の報いを受ける、それどころか現実は過酷で、真面目にシコシコやっていても運が悪ければ結婚できず、種を遺すこともできない。

それでは人間としての義務を果たせないのではないか。犬ではなく子供を持って育ててこそ一人前だ。せめて嫁さんを持てるくらいの市場価値を身に付けろとアドバイスしたい。

聞く耳を持つ人はそんなことは百も承知だし、聞く耳を持たない人にはムダな話だから、まあ年寄りの冷や水、差し出がましいことと笑い飛ばしてくれ。(2014/8/7)

2014年08月07日

◆朝日慰安婦検証 日本の名誉傷つけた

西岡 力


朝日新聞が吉田清治氏の証言を虚偽と判断し、記事を取り消したことは良かった。しかし、評価に値するのはその一点のみだ。朝日新聞が自らの非を認めるまで30年以上かかった。

その間、国際社会に日本の負のイメージがどれだけ浸透し、日本の名誉が傷つけられたことか…。朝日新聞は自らの報道だけでなく、日本が被った損害も併せて検証する責任がある。

また、一見すると反省しているように見える紙面も姑息(こそく)さが随所にうかがえる。例えば、朝日新聞は「挺身隊」と「慰安婦」を“誤用”したという。だが、挺身隊は慰安婦ではない。

事実と異なる報道をすれば、どんな事情があるにせよ“誤報”にほかならない。誤用という言葉の裏に、ごまかしや保身の念が透けてみえる。

朝日新聞は日頃の報道で、舌鋒(ぜっぽう)鋭く政治家の責任を追及する。過ちを犯せば責任を取るのは当然だ。今こそ、その自浄能力を大いに発揮してもらいたい。(談)

朝日新聞検証のポイント

 ▽朝鮮や台湾では軍の意向を受けた業者が女性をだまして集めることができた。インドネシアなどでは、軍が女性を無理やり連行したことを示す資料が確認されている。本人の意に反して慰安婦にされる強制性があった

 ▽吉田清治氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消す。証言を裏付ける話は得られず、証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになった

 ▽朝日新聞が1992(平成4)年1月11日朝刊で報じた「慰安所 軍関与示す資料」の記事は、宮沢喜一首相の訪韓時期を狙ったわけではない

 ▽女子挺身隊は、女性を軍需工場などに動員した「女子勤労挺身隊」を指し、慰安婦とはまったく別。当時は慰安婦問題の研究が進んでおらず、誤用した

 ▽元慰安婦の証言を報じた植村隆元朝日新聞記者の記事に意図的な事実のねじ曲げなどはない
                                 
        (東京基督教大学教授) 
                  産経ニュース2014.8.6

             

◆ストリッパーではありません

馬場 伯明


スクリプターは

「スクリプターはストリッパーではありません」という奇妙な書名の本が出版された。映画・テレビ関係者以外の一般人はスプリクターという言葉を知らず、ストリッパーとの違いもわからないであろう。

著者(語り)は白鳥あかね、企画・編集(聞き書き)は高崎俊夫。発行所:(株)国書刊行会・328頁・3,024円、2014/4/25初版第1刷発行。

スクリプター(scripter)とは、映画の撮影現場で常に監督の傍らに付き随い、映画の全データを記録する係。撮影終了後も、編集、ダビングを経て、作品が完成するまでの全工程に関わる。(scripterは和製英語。英語ではscript supervisor。script girlという呼称もあた:Wikipedia)。

略歴等。《白鳥あかね 1932(昭和7)年東京生まれ81歳。早稲田大学(文)卒。新藤兼人監督「狼」のスクリプター助手を経て1955年日活入社。以後スクリプターとして中平康、斎藤武市、今村昌平、熊井啓、藤田敏八、神代辰巳、根岸吉太郎ら、数多くの監督とその作品に関わる。

1957年に映画監督の白鳥信一と結婚。脚本家としても活躍。1980年日活を退社後フリーに。1992年日本映画・テレビスクリプター協会設立に尽力。あきた十文字映画祭顧問、KAWASAKIしんゆり映画祭代など。

2004年文化庁映画賞(映画功労表彰部門)受賞。2014年第37回日本アカデミー賞協会特別賞受賞。現在、川崎市アートセンター映画・映像事業企画・作品選考委員。》(本書「巻末」より)

5月に購入し一気に読了した。本書の書評や紹介は新聞、雑誌、WEB等でほぼ書き尽くされている。個人的な興味を惹いた箇所だけを記述する。

貴重な記録の本だ。監督に張り付き記録する。監督の女房同然。激動の戦後日本映画史を駆け抜け映画を深く愛した「スクリプター」女の一代記。

白鳥さんには稀有の人徳がある。元気で、明るく、あっけらかん。心はまっすぐ、湿っぽくない。才女で、ユーモア、太っ腹。先輩への敬意と仲間・後輩・周囲への優しさ。映画撮影等の細部を赤裸々に語るが少しも自慢話には聞こえない。何という爽やかな読後感なのだろう。

最も印象に残った箇所。白鳥さんの「人生を変えた」という「濡れた欲情 特出し21人(主演:片桐夕子・1974)」。支店の信州・上山田温泉のストリップ劇場とのタイアップを浅草のロック座のママさんがOKした。

神代(くましろ)辰巳監督を先頭に、映画のロケ隊と現役のストリッパーたちが、混然一体となり、旅芸人一座のような雰囲気で撮影が進行し映画が完成したのだ。

奇妙で刺戟的な書名が生まれた事情、スクリプター(白鳥あかね)がストリッパー(アカネ嬢)になる(!)彼女の心情を書かないわけにはいかない。本書を読まない人のために、長くなるがその箇所全文を転載する。

《(158〜159頁)質問(高崎俊夫)「――そして、撮影終了後の打ち上げで白鳥さんのストリッパー問題が起きたそうですね(笑)」

(白鳥あかね)「そうなんです。最後の打ち上げの日に、私が姫田(真佐久・撮影)さんと相談して、あんなにストリップの人たちが誠心誠意尽くしてくれたんだから、最後の時ぐらいは私たちが踊りましょうということになったわけ(笑)。

舞台の上に薄べりを敷いてテーブルと座布団を並べて、それから打ち上げですよ。最初は姫田さんが頭にカツラをかぶって、スッポンポンになったら、踊り子のお姉さんたちが喜ぶこと、喜ぶこと。その次が神代さんだったけど、黒田節なんか歌ってカッコつけちゃって脱ぎもしないのね。

それで私はムッとして脱いでやれって思って上半身を脱いで踊ったんですよ。そしたら、照明さんが喜んじゃって、照明を当てるから、ますます気持ちよくなってね(笑)。

一緒に踊った外波山文明(俳優)もスッポンポンになって、私も全部脱いじゃおうかなと思ったら、トバ(外波山)さんが「あかねさん、やめてください!」って止めるんですね。私は気持ちが良かったんですよ。あんなにお姉さんたちが泣いて喜んでくれてるしね。

それで意気揚々と撮影所(東京)に帰ったら、(先輩スクリプターで師匠の)秋山みよさんに呼ばれて、「あかねさん、スクリプターはストリッパーではありません」って叱られて(笑)。もう撮影所に私が脱いだっていう噂がバーッと伝わっていたんですね。

でも踊り子さんたちがあんなに涙を流して喜んでくれたから、私は恩返しができたと思ってね。あの時、お姉さんたちから、いつも社会的に一段低く見られていた自分たちをまったく対等に扱ってくれたのはあなた方映画のロケ隊の人々が初めてですと言われたんですね。

それを聞いた時にはほんとうに泣きそうになって、今でも思い出すと泣きそうになります。私にとって最も思い出深い神代さんの映画です。》(138〜139頁、引用終わり)。白鳥さん41歳、豊満熟女の特出し22人目(!)になる寸前だった(笑)。

何回読み返してもいい話(文章)だ。白鳥さんの心がこもっている。また、物事へのいさぎよさ、そして人への温かな思いやりがにじみ出ている。

この後も、宮下順子「四畳半襖の裏張りしのび肌(1974)」、萩原健一「青春の蹉跌(1974)」、谷ナオミ「黒薔薇昇天(1975)」へと仕事は続く。

私事・・。1975年夏、岡山県湯郷温泉で県庁の人たちと総勢6人、水島臨海工業地帯の未来を1泊2日の合宿で議論。深夜、有志は「湯郷ストリップ劇場」へ。客が舞台で共演する最後の「まな板ショー」になった。

客もスッポンポンでストリッパー嬢と69等で互いの凹凸に触れまくる。勢いで「さあ、行くぞ!」と私が身を乗り出したら、県庁のKさんが「馬場さん、やめてください!」と浴衣の袖を強く引っ張った。

本名が劇場内に 響き渡り困った。じつは、過激な湯の郷はガサ入れの常連劇場。岡山県警 が急襲したら自分らに責任が及ぶのを危惧したのだ
(笑)。

本書の装幀・装画は和田誠。表紙は1988年の白鳥さんの写真(23頁)のイ)に縦縞の開襟シャツ、髪はおかっぱで涼やかな笑顔。左脚を上に組む。ストップウォッチを首に掛け、スクリプト用紙と鉛筆を持つ。腕時計、結婚指輪も。薄底のスニーカーで、パイプ腰掛は太いお尻と腿で潰れそう。存在感がある56歳だ。

小林旭に注意する。《「南国土佐を後にして(1959)」の時、(小林)旭が、・・・ひょいと見ると白い靴下をはいているんです。私は、あんた色が違うよ、(前と)つながりがちがうよって言ったら、旭が「そんなとこ、見えやしねえよ」なんて言い返すんですよ、生意気盛りだから。

そこで、私もカーッときて「監督にその場で靴脱いで走れって言われたらあんたどうすんのよ」って言ったら、旭もギャフンとなって、ちゃんとはきかえてきましたけどね。・・・注意もスクリプターの仕事》(22頁)

本書には現場で俳優らとの写真がぎっしり。「峠」白鳥さんと南田洋子(83頁)、小林旭と肩を組む白鳥さん(103頁)、「愛と死を見つめて」の現場での吉永小百合・浜田光夫・白鳥さん・斎藤武市監督(110頁)、「恋人たちは濡れた」中川梨絵(主演)・神代辰巳監督・白鳥さん(149頁)。

「濡れた欲情 特出し21人」の現場、上山田スポーツセンターで、白鳥さん・神代辰巳監督・姫田真佐久(撮影)・片桐夕子(主演)。「もどり川(1983)」で頬を寄せ合う萩原健一と白鳥さん(227頁)・・・他多数。

また、現場での恒例の完成記念写真もいい。仕事が終わり晴れ晴れとした顔が重なる。小中学校の遠足の無邪気な集合写真のよう。全部で17枚。
   
それに白鳥さんは端役で映画に出演している。たとえば「遠雷(1981)」では、猥褻な栃木弁を話すお手伝いさん「ええこと(SEX)するだんべ」。十人並みの器量だからよい。端役が奥様より美人じゃ様にならない。

白鳥さんは語る。《若い時は「働かざる者食うべからず」を人生の鉄則としてがむしゃらに生きて来ました。年齢と共に・・・「人はパンのみにて生くるにあらず(マタイによる福音書4章4節)」という聖書の言葉に辿りついたのです》(295頁)。

最後に書く。《私の願いは唯ひとつ、師匠秋山みよさんが、つつがなく90歳の誕生日を迎えられること。その折に、このささやかな一冊をお渡しすること――。何しろ師匠は、この本のタイトルの名付親なのですから。

そしてもし存命中ならば、信州のあのストリップ劇場で涙を流しながら、私たちスタッフのショーを喜んでくれたお姐さんたちの目にこの本が、触れる機会がありますように――》(295頁)。

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る 額田王(万葉集)

「(神崎)あかね」は母上の命名という。額田王のように恋に生き、あかねさす(茜色に光り輝く)女性に育ち生きてほしいとの願いであろう。

白鳥あかねさん、81歳。その名を体現し、今も生きる。(2014/8/6千葉市在住)

(追記)
「先日スクリプターの大御所であった秋山みよさんが亡くなったのですが・・・」と「(映画監督)金子修介の雑記ESSAY(2014/06/21)」にありました。


2014年08月06日

◆「核」が日中開戦を抑止する(61)

平井 修一



小都元著「核兵器事典」から――

・・・

核弾頭を製造するために核保有国は、研究開発から生産までの一連の活動を行う政府・企業群が総合組織体を形成している。

これらはコンプレクス(あるいはコンビナート)と呼ばれ、各国の総力を挙げての仕事となるために、多数の企業、研究所、大学などが関係し、何万人もの科学者、技術者、工場労働者、管理部門の人々が、国内の広範囲な場所で活動する。

国家予算で行われるために政府が深くかかわり、すべての管理、監督を行う。

核弾頭は、爆弾ケースに収納されると「核爆弾」となり、ミサイルに搭載されると「核ミサイル」になる。

コンプレクスは大まかに次の作業を進める。

*核弾頭の研究、開発、設計
*核物質の生産
*核弾頭の組立、生産
*核実験

「核弾頭の研究、開発、設計」は、核弾頭の設計を最終目標とし、核兵器システムと核エネルギーの軍事利用に関する基礎研究と、その理論を実証する開発などを行う。また核弾頭組み立てに必要な核以外の部品、機器装置などの開発も行う。

さらに核兵器の効果、有効性のアセスメント、安全性、信頼性の研究も欠かせない。

核弾頭は運搬システムで運搬されて初めて役割を果たす。特にミサイルの場合は、その研究、開発、製造のために巨大な企業群が別にあり、そちらで行われる。

「核物質の生産」は、核分裂物質と核融合物質が確保されていることが必須条件である。核分裂物質のウラン235とプルトニウム293、核融合物質の重水素、三重水素、リチウムなどである。これらは天然に存在するものを加工するものもあれば、人工的に生産しなければならないものもある。いずれにせよ国家的な規模でのかなり大掛かりな施設が必要になる。

「核弾頭の組立、生産」は核兵器の中心的存在であり、工業製品的取り扱い、品質、信頼性、コストなどの要素が満たされなければならない。

核弾頭も、核分裂爆弾(原子爆弾)と核融合弾頭(水素爆弾)では、その構造的な複雑さが違う。さらにこの弾頭の中心部にあるピット以外にも、ピットの周囲を取り囲むタンパーや高性能爆薬による爆縮レンズなど細かくいうと相当複雑なシステムである。これらの部品、サブシステムなどが組み立てられて最終の核弾頭ができ上がる。

「核実験」は、核弾頭が設計、仕様どおりに性能を発揮できるかを実際に核爆発させて確認することである。通常の爆薬とは比較にならないほどの威力があるので、核実験場の選定は簡単ではない。核保有国は各国とも特定の核実験施設を持っていた。しかも国内だけでなく国外にその場所を選ぶ場合もある。

米国は冷戦末期の1980年代後半時点で、年間3000〜4000発の核弾頭を生産、改良、廃棄している。核弾頭兵器庫には2万5000〜2万6000発の核弾頭が貯蔵されていた。これらの大部分の仕事は、数千にのぼる中小下請け企業を含む19の施設(13州にまたがる)の政府コンプレクスが実施していた。

米国の核弾頭製造施設は非常に大規模なもので、広範な組織がかかわっている。とりわけコンプレクスは、3か所の国立の核弾頭設計研究所、9カ所の核物質生産施設、7カ所の核弾頭性生産施設、2か所の核実験場から構成されていた。

エネルギー省と国防総省は、核弾頭と運搬システムのための多数の実験エリアを運営し、さらに両省とも核兵器の開発に貢献する多数の研究施設を運営していた。(以上)

・・・

核弾頭開発から生産、実戦配備までは、日本の技術力をもってしても最低10年はかかると言われている。大プロジェクトであり、大勢の研究者、技術者がかかわるし、莫大な費用もかかるから、とてものこと、こっそり秘密裏に作れるものではない。

中共にとって日本の核武装は悪夢であり、のんびり10年待つはずはない。その前に核恫喝をしかけてくるだろう。それに備えて日本はとりあえずは米国から核弾頭ミサイルシステム一式を買うか借りるかするのが一番いいが、米国にとっても日本の核武装は(多分)悪夢だから、うまくいくかどうか。

インド、イスラエル、あるいは中共を牽制したいだろうロシア、北朝鮮から調達することを含めて、とにもかくにも核武装政策を研究すべきだ。

それは中共を挑発するかもしれないし、逆に「日本を挑発すると核武装しかねないから控えよう」となるかもしれない。日本は核武装しない、できっこない、米国の核の傘はまったく有効ではない、と中共が判断すれば、中共は遠慮会釈なく核恫喝を仕掛けてくることは確実だ。

その確実な危険を抑止するためにも核武装の論議を興し、政策を練るべきである。
(2014/8/6、人類初の原爆による無差別大量殺人の日)

◆グレンデール慰安婦像撤去を棄却

中村 将


【ロサンゼルス=中村将】米カリフォルニア州グレンデール市に設置された「慰安婦」像をめぐり、在米日本人の団体が市に撤去を求めた訴訟で、州の連邦地裁が原告側の訴えを棄却する判断を下したことが4日、分かった。原告側関係者が明らかにした。原告側はさらなる訴訟も含め対応を検討するとしている。

連邦地裁は「原告が感じているとする痛みと、市が連邦政府の権限を侵していることの関連性が薄い」などとして、提訴を棄却したという。

原告側は、市は連邦政府が持つ外交権限を越権して像を設置しており、近くの碑文にある「日本軍が強制連行」「性奴隷にした20万人」などの文言は市議会で承認されていないとして今年2月、市を相手取り、像の撤去を求めて提訴した。

これに対し市側は「この問題は外交問題ではなく、人権問題」とし、「像は市民の表現行為で、これを撤去することは表現の自由への挑戦」として、提訴取り下げを求めていた。

訴訟をめぐっては、当初、原告側の代理人を派遣していた法律事務所が、「圧力」を加えられ、訴訟から手を引く騒動もあった。産経ニュース2014.8.5