2014年07月18日

◆パチンコ税創設のまやかし

馬場 伯明


パチンコ(含パチスロ)をしたことはある。しかし、私は日本からパチンコを全廃してほしいと願っている。たとえ、それが非常に困難なことであったとしても・・・

江戸時代TV番組風に言えば、悪い商人と代官が手を組み、百姓や町人らの金銭を巻きあげる悪だくみを実行しようとしている。永田町や霞が関の近くに(現代の)黄門様は現れないのか。

2014/6/22産経新聞。《「パチンコ税」の創設浮上・・・政府・自民党内で、安倍晋三首相の主導で政府が決めた法人税の実効税率の引き下げに伴う税収減の穴を埋める財源の一つとして、パチンコやパチスロの換金時に徴税する「パチンコ税」の創設が浮上していることが21日、分かった。

1%で2千億円の財源が生まれるとの試算もあるギャンブルとして合法化する必要があるため異論もあるが、財源議論が活発化する中、注目が集まりそうだ。・・・》(以下略WEB)。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140622/plc14062209500004-n1.htm

《法人税引き下げの減収を補填するため「パチンコ税」の創設が浮上したという22日の記事には驚きました》(2014/6/23「編集日誌」産経新聞編集局次長兼整理部長村岡繁)でも村岡氏は驚いてみせるが批判はしない。

「パチンコ税創設」は法人税引き下げに便乗した悪だくみ。パチンコは遊技ではなく脱法ギャンブル(賭博)ではないかという疑惑のままに肥大したパチンコを、民間賭博として国が合法化するとは・・!

暴挙である。非生産的なパチンコという遊技→ギャンブル(賭博)という「麻薬」により、日本国民が劣化して行くことを座視してはならない。

そもそも、日本国の刑法は賭博を禁止している。《第185条(賭博)賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

第186条(常習賭博及び賭博場開帳等図利)常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。2 賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する》。

法益(Rechtsgut)は明確だ。「偶然の事情により財物の得喪を決める行為は、国民の射幸心を助長し勤労意欲を減退させ怠惰浪費の弊害を生じさせる。また、賭博に絡むトラブルや賭博に使う金銭を得るために、殺人や強盗などの副次的な犯罪を誘発する危険がある」(「刑法の解説」一橋出版)。

ところが、国(警察庁等)の公権解釈は、パチンコは刑法185条・186条の賭博(場)には該当せず、風俗営業法の遊技(場)であるとする。

PTB(Pachinko-Trusty Board)という団体がある。一般社団法人パチンコ・トラスティ・ボード。「パチンコ遊技場の経営企業が、業界の適正化・健全化を図ることによって、広く社会からの信頼を得ることを目的」とする。(株)ダイナムや第一コーポレーショなどが設立社員である。

公認会計士・弁護士・有識者らが活動しているらしい。パチンコの弊害が噴出する現状に真面目なPTBの人たちは悩みが尽きないのではないか。

パチンコ経営企業等の実態をPTBの(HP)やWikipedia(2014/7/16)からの抜粋・転載等により、以下に記す。パチンコは健全な日本社会にとっては無益であり弊害の方が多いと思われる。

1.経営指標は次のとおり。(1)パチンコ遊技場店舗数:12,149(2012)遊技台数:4,592,036万台(2012)、(3)売上高:19兆660億円(2013「レジャー白書」)、(4)雇用人数:30万9,744人(2009総務省調査)、(5)法人税納税額:1,669億円、巨額である。

2.「三店方式」で換金される。特殊景品は「遊技場→換金所→景品問屋→遊技場」と還流し、決済(お金)は「換金所→遊技場→景品問屋→換金所」と回る。官民合意の事実上の違法:脱法行為である。

《風営法第23条(遊戯場経営者の禁止行為)1.現金又は有価証券を商品として提供すること 2.客に提供した商品を買い取ること 3.遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(遊技球等)を客に営業所外に持ち出させること 5.遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること》

パチンコは事実上第23条に該当している。決め手は2つ。1. 特殊景品にはモノの価値がない(他店舗ではタダ同然、当店換金所では数千円)。2.いったん遊技場から客に渡った特殊景品が再び還流している(遊技場と換金所が同一経営!:多くの従業員らの証言がある)。

ところが、46年も前に、福岡高裁は訴訟対象のパチンコ遊技場の「三店方式」を風営法違反ではないと判決した(1968)。「特殊景品の全部がストレートに遊技場に戻ってくるわけではない」と。この子供騙しの屁理屈判決を覆さなければならない。

3.監督官庁は警察庁でありパチンコ業界の生殺与奪の権を握る。癒着があり天下り(再就職)が常態化している。保安電子通信技術協会(会長:山本鎮彦・前警察庁長官)、パチンコメーカー「アルゼ」の常勤顧問(前田健治・前警視総監)など。警察の所轄レベルも同様といわれる。

4.政党との癒着は、正義や道徳ではなく、結局「金目でしょ」で繋がる。「自民党遊技業振興議員連盟(保岡興治会長)、「民主党娯楽産業健全育成研究会(前田武志副会長)。官直人元首相は在日韓国人オーナーから100万円の違法献金を受け取り問題となった(2011/3)。

5.パチンコ利用者1670万人、依存症(中毒者)447万人という(2010)、日本国民の勤労意欲がマヒ、大問題だ。たとえば、猛暑の車中に置き去り幼児が脱水症で死亡、遊技代金求めサラ金地獄へ、金銭の窃盗・強盗へなど。生活破綻者の増加、家族崩壊など、深刻な弊害が出ている。

6.遊技場の運営にも違法行為がある(という)。出玉確率の遠隔操作、替玉の過少計算操作等による利益操作。また、サブリミナル効果による洗脳の特許が申請取得されている。(「弾球遊戯機・特許番号3029562」、WEB日本人が幸せに暮らせる日本を作る会」より)

7.パチンコ遊技場の経営者は90%が朝鮮半島出身者(南北)。違法に近い脱法行為による取得金銭(日本の財産)が送金等で外国へ流出している。韓国のパチンコ「メダルチギ」は2006に換金行為営業が禁止され15,000店舗と売上3兆円はほぼ壊滅した。

8.パチンコ産業は脱税企業の常連である。約50.3%の企業に脱税の疑いがあり「不正発見の割合が高い業種」「不正申告1件当たりの・・・金額の大きな業種」ともにワースト2位だ(国税庁2004 Wikipediaより)。

9.パチンコ業界が(有力な)CM顧客等のためか・・・、マスメディアは見て見ぬふり。パチンコ業界の問題や弊害をタブー視し、追求しない。

10.法曹界も同様。裁判官、検察官、弁護士、法学者なども、法理論上は解決済み(脱法・・違法!)なので、今さら無意味であるということなのか、真正面から取り上げた事案や論文等は少ないようだ。

縷々記したが、それでは、パチンコの全廃に向け何をすればいいのか。「パチンコ全廃国民会議」を結成し全国的な運動を展開することを提案する。既存の団体等も一緒になる。西村真悟衆議員議員も協力するだろう。「いざ鎌倉!の『鉢の木』精神」はあるので、私も末枝で働ければ・・・

1. 「教育」が最重要である。小中高の学校教育でパチンコの不法(脱法)・不正義・不道徳性と生活破綻・家庭崩壊などの弊害を具体的に徹底的に教え込む。(パチンコはかつての「教育勅語」の精神にも反する)。

2.パチンコ推進議員らの落選運動を展開する。3.マスコミへの宣伝(CM)を禁止させる。4.パチンコの射倖性を大幅に低下させ、法律に則った健全な遊技へと正常化する。高額な事実上の換金制も廃止させる。5パチンコ遊技場の立地をさらに厳しく規制する。全国に賭博場が1万軒以上もある異常な国など世界中で、皆無なのだ。

6.最後に、思い切って、ご提案したい。この活動を産経新聞社にご支援願いたい。「・・景品交換所での現金化は『事実上の賭博』、警察が黙認している(産経新聞2010/4/10)」と正確に指摘した貴社の勇気を買いたい。

貴社がこの活動を支援することにより、良識ある国民は拍手喝采し、「同じ穴の狢」である読売・朝日・日経・毎日・NHK等のメディアとの違いを認識する。他紙読者がこぞって産経新聞の購読へと向かうであろう。

産経新聞社・熊坂?光代表取締役社長の大胆なご英断を期待し、この真っ当な活動へのご支援を衷心よりお願いするものである。(2014/7/16千葉市在住)

2014年07月17日

◆「核」が日中開戦を抑止する(55)

平井 修一


JBプレス6/3に中国出身の経済専門家・柯隆氏(注)が「多発する暴動が“革命”に変わるとき 壊れつつある中国共産党の統治能力」を寄稿している。以下はその要約。

             ・・・

今から25年前の1989年6月4日、北京の天安門広場で民主化を求める学生運動が発生した。それを鎮圧したのは警察ではなく、敵と戦って国を守るべき人民解放軍だった。

中国国内のインターネットの検索エンジンで「天安門事件」を検索すると、まったく違う検索結果が表示されたり、「法律に違反するキーワードが含まれているため検索できない」という表示が出てきたりする。

しかし、歴史の事実を直視しないことで最もダメージを受けるのは、ほかでもない、共産党自身である。この簡単な理屈を今の共産党のトップが分からないわけがない。

では、なぜ直視しないのかというと、仮にここで天安門事件を再評価すれば、最高実力者だったトウ小平の功績の一部が否定されることになり、場合によっては共産党の指導体制も危うくなりかねないからだ。

結局のところ、共産党中央は地雷のような天安門事件をタブーにするしかないのである。

*言論の自由を保障する一方で知識人を弾圧

中国は法治国家ではなく「人治国家」であるとよく指摘される。しかし、中国の法律は新興国の中で最も整備されている国の1つである。それにもかかわらず、なぜ人治国家と言われるのだろうか。

それは政府が法律を守らないからである。今の中国の憲法では言論の自由が保障されている。ところが、天安門事件を回顧する少人数の集会に集まった弁護士らは、騒乱を企てたとして拘束された。

往々にして政府は法律を破る口実として「社会の安定を維持しなければならないから」と説明する。逆に言うと「法律を守っていると社会が不安定化する」ということである。これは明らかに屁理屈である。

政府が法律を破る本当の理由は、社会の安定を維持するためではなく、自らの統治を維持するためであろう。しかし、共産党が自らが作ったルール(法律)を破り続けていると、当然のことながら共産党の存続を脅かすことになる。

かつて毛沢東国家主席が存命していたとき、側近らは毎日のように「毛沢東万歳、万々歳」(毛沢東よ、いつまでも長生きを)と唱えていた。学校や工場などでも唱えさせた。しかし 毛沢東はもちろん不老不死ではなく、83歳で死去した(1976年9月9日)。同じように共産党も万歳ということにはならないだろう。

政党が健全に運営されるためには、批判的な意見や指摘を聞き入れなければならない。批判を拒むのは、自らの統治能力について自信がないからである。胡耀邦元総書記の時代や朱鎔基元総理は、知識人の批判や指摘をある程度聞き入れていた。

だが現在は、共産党に対する批判は即「政府転覆罪」に問われる。これでは政治も社会も安定しない。

*信用を失った政府、その先にあるものは?

今の中国社会の最も恐ろしい点は、国民が政府を信用しなくなったことにある。

浙江省の杭州市で政府が進めるゴミ焼却炉設置に対して、地元住民が大規模な抗議行動を起こした。本来ならば、ゴミは埋め立てるよりも高温で焼却した方が環境に優しいと言われている。

しかし、中国の一般住民はそれを信用しない。ゴミの不完全燃焼で発生する有害物質が環境を害するのではないかと心配しているのである。

なぜ政府は国民からの信用を失ったのだろうか。理由は簡単だ。長い間、政府はマスコミをコントロールして世論を操作してきたが、国民はそれに気づいてしまった。何回も騙されてきた経験から、政府の言うことを鵜呑みにしなくなったのである。

これから中国政府が民主化の政治改革に邁進するとは考えにくいが、社会主義の時代に逆戻りすることはあり得ない。いずれにしろ国民の信用を取り戻すことはできない。結局のところ、現状を維持しながら延命を図るしかない。

では、その先になにが待ち受けているのか。大きな可能性のあるシナリオの1つは「革命」である。延命措置とは問題の解決を先送りすることである。最後には未解決の問題が火を噴き、ビッグバンのような爆発、つまり革命が起きることになる。

現に、中国社会では毎日のように大規模な抗議活動やデモが起きている。少なく見積もっても毎年約10万件もの暴動事件が起きていると言われている。

なぜ暴動が多発しているのに革命が起きないのだろうか。

その理由は、有名な「毛沢東理論」で説明できる。毛沢東理論によると、1つの暴動は1本の箸に例えられる。1本の箸であれば簡単に折れてしまう。つまり、単独の暴動ならば鎮圧しやすい。

しかし、50本または100本の箸を束ねると、たとえ日本の力士でも簡単には折れない。すなわち、暴動が「点」から「面」になったときに革命になるという理論だ。

この理論を踏まえれば、現在、中国社会で多発している暴動はまだ点の状態であって、面にはなっていない。そのため、大きな革命につながる可能性が低いというわけだ。

しかしこれ以上、共産党が民主化の政治改革を拒み続けると、革命が起きるのは時間の問題であろう。

政党の統治能力は、どれほど建設的な批判を聞き入れられるかにもよる。

中国共産党は、国民に少しでも多くの幸福をもたらすために、自ら改革に取り組まなければならない。今の中国社会を見れば、それは習近平政権の使命と言える。(以上)

              ・・・

平井思うに、中共は国民の幸福などは眼中にない。ひたすら中共独裁の延命を図ってのた打ち回っているだけであり、習近平はやることなすことすべて裏目に出て混乱に拍車をかけている。

習は強権一辺倒で、利権を侵された軍は危機感からクーデターを起こすかもしれない。もう末期症状だ。狂気のような「反日」は、国民の不満を日本に向けるために止めるわけにはいかない。ガス抜きなのだ。

何清漣女史が7月1日、「“国外勢力”は失政の便利な雑巾バケツ」を書いている。

<中共の政治を回顧すると中共はいつも自分の失敗を洗い流すためのふたつの「雑巾バケツ」を持っていることがわかります。一つは「党内の路線闘争」、もうひとつが「国外勢力」ということです。

「国外勢力」という雑巾バケツがあれば、国内の経済が悪化しようと、不動産バブルが大きくなりすぎようが、環境汚染がすすもうが ぜんぶ、「国外勢力」に押し付けて、いかなる党や政府への批判もすべて「国外勢力が共産党政権を転覆させようという陰謀」ということにしてしまうことができます。

ただ、グローバル化のすすむ今日「国外勢力」は実際、存在しない所などないので、防ごうとしても防げるものではありません。もっとも徹底しようというのなら毛沢東時代の鎖国状態に戻るしかありません。

そうすれば中国の一般庶民は「世界の3分の2の人民はみな塗炭の苦しみの中で暮らしており、まさに中国人民が彼らを解放し救う日をまっているのだ」と信じる事ができるようになるでしょう>(以上)
・・・

「中国の一般庶民」は、気の毒ながらまったくの無知蒙昧で、「六四天安門」を知っている人はごくわずかだ。習近平の腐敗撲滅が単なる権力闘争であることを知っている人もほとんどいない。残念だが、これが事実だ。

習は「鎖国したい」、でも「膨張したい」、「安定したい」、でも「弾圧しかない」とブレまくっている。習の暴走を止め、革命を一気に促すために中共版の桜田義挙、あるいは安重根の出番だ。毛沢東曰く「政権は銃口から生まれる」。中国の一般庶民は習射殺で覚醒するだろう。出でよ叛逆者。(2014/7/16)
・・・
注)柯 隆(Ka Ryu)氏:富士通総研 経済研究所主席研究員。中国南京市
生まれ。1986年南京金陵科技大学卒業。92年愛知大学法経学部卒業、94年
名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。長銀総合研究所を経て富士
通総研経済研究所の主任研究員に。主な著書に「中国の不良債」

◆習近平がインド電撃訪問の可能性

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26年(2014)7月16日(水曜日)弐:通巻第4295号>   

〜習近平がインドを電撃訪問の可能性と華字紙が報道
  実際にブラジルのBRICSサミットで中印首脳会議開催〜

7月14日から、ワールドカップに湧いたブラジルの北部で,BRICS首脳会議がおこなわれ、プーチン、習近平、モディ(インド首相)が勢揃い。

習は11月の北京APECにモディ(印度)首相を正式に招待した。モディは習近兵に「年内の訪印」を要請した。いまのところ、習の訪印は9月が有力という。

BRICS構成国はブラジル、露西亜、印度、中国、南アの5ヶ国で、中国は「BRICS銀行」を創設し、インフラ整備の大規模な融資をうたって、参加国の歓心を買っている。すでに参加国各100億ドル出資で合意が得られているが、中国はこれをIMFに対抗できるメガバンクとしたい。インドはまっさきにカネを借りる算段。

モディは習近平との首脳会談の議題にチベットと領土係争問題をあえて持ち出さず「中国との国境紛争を電撃的に解決すれば、両国の関係は劇的に進展する」と抽象的な言辞を述べた。

これらは先の王毅外相が印度訪問で地ならしした事柄の確認だったようだ。

しかしインドにおける世論調査では、「中国との領土紛争を恐れる」と回答したインド人が72%と高く、「最大の軍事的脅威はパキスタン」とした62%よりも多い。

ところが、「信頼できる同盟国はどこか」という同ピューリサーチの逃散で過半数が「米国」と答え、次点がロシア(29%)、日本はなんと26%だった。

ちなみに同調査で日本の結果は「中国が好き」と答えた日本人は僅か7%だった。数ヶ月前のTIMEの世論調査でも8%だったから、さらに日本の対中悪感情の度合いは増している。

それはそれとして、華字紙一斉には「モディが訪日、訪米の前に習近平のインド電撃訪問が検討されている」と報じた。

◆「航空優勢」で対中抑止の強化を

森本 敏


今日、国際社会の主たる不安定要因は、ウクライナ問題や南シナ海・東シナ海問題に見られるように、ロシアや中国が周辺地域に勢力拡張を進めて法に基づく秩序を乱していることにある。

他方、米国の最大の脅威は北朝鮮の核・弾道ミサイル開発であり、安全保障の優先課題は本土防衛だ。日本の主要な懸念は北朝鮮だけでなく、中国が軍事力を周辺に押し出して秩序の変更を迫ってくることだ。米国は中国が将来、米国の脅威になると予測しつつも、現在は中国との軍事衝突に巻き込まれるのを避けようとしており、日米間には脅威認識に若干ずれがある。

 ≪国際法無視のオンパレード≫

中国は2012年9月以降、尖閣諸島周辺の領海侵入を常態化させ、同年12月には領空侵犯も行った。08年以降、中国海軍は外洋にも進出し、日本が昨年、中国機にかけたスクランブルは、400回をはるかに超えた。

中国はありもしない尖閣問題の棚上げ合意を口実にして、尖閣領海内で無害でない通航を繰り返している。これは明らかに国際法違反である。

中国は13年11月、東シナ海にADIZ(防空識別圏)を、日本のそれと重複する形で設定した。日本領土の尖閣を含むように設けたのみならず、中国のADIZを飛ぶ外国機は事前に飛行計画を中国当局に提出し、その指示に従わなければ防御的な緊急措置を取る、と警告したことも国際法に合致しておらず、日米は抗議した。

日本が最近、懸念を強めているのはこの5、6月に日本のADIZ内で中国戦闘機が自衛隊機に異常接近してきた背景である。

 ≪異常接近にEP3事件思う≫

中国の SU27戦闘機は、自衛隊のプロペラ機に高速で背後から異常接近する危険行動をとった。こうした行動の理由はよく分からないが、自衛隊機を脅かして東シナ海から締め出し、第1列島線内における航空優勢を確保する意図に基づく行動の可能性はある。

この異常接近は、01年4月に南シナ海の公海上空で、米海軍偵察機EP3に中国戦闘機が急接近し接触した事案を想起させる。

当時の米中関係は、米軍機による在ユーゴスラビア中国大使館誤爆事件が、なお尾を引いていた。そのせいもあってか、中国海軍J8II戦闘機がEP3機に突っかかっていき接触して洋上に墜落し、パイロットは行方不明となって、後に英雄視されるに至った。

EP3機は海南島に緊急着陸したが、米国は拘束された搭乗員と機体を取り返すため大変な苦労を強いられた。米国側が公海上空には航行の自由があると主張したのに対し、中国側は自国の排他的経済水域(EEZ)内を飛行する場合は中国の許可が必要だと反論して譲らなかったからである。

中国は、国際法を恣意的に解釈し、EEZ内での他国の軍事行動や軍事活動を認めない。EP3事案のずっと後の09年3月の米音響測定艦インぺッカブル、そして13年12月の米巡洋艦カウペンスに対する中国艦船の妨害行動、13年の海自艦艇へのレーダー照射、今回のSU27異常接近は、すべてこの理屈から生じているのであろう。SU27の異常接近についても、日本側が抗議しているのに中国側に自制の気配がなく、意図的・計画的行動と考えざるを得ない。

そうであるとするならば、中国側がさらに挑発的、冒険的な行動を試みてくる可能性は排除できない。日中間で協議してきた海上連絡メカニズム(航空事案防止のための連絡手段も含まれる)について、日本側が度重なる要請をしているにもかかわらず、中国が応じてこないのも意図的である。

 ≪航空機、航空基地を増やせ≫

日本側は、中国側の意図にかかわらず、国家の主権と領域を守るため毅然(きぜん)とした対応を取り続けるとともに、中国側の挑発に乗らないよう注意する必要がある。

外交と対話は重要であるが、現実世界はそれですべて解決できるとは限らない。米国が尖閣に対する日本の施政権を認め、日米安保条約第5条の対象になるとの誓約を鮮明にしている点には、意を強くするとしても、中国は米国の介入を防ぐため、武力攻撃と見なされない方法で尖閣に接近したり、東シナ海の軍事優位の確保を図ったりしてくる可能性が高い。

日本は日米同盟だけによるのではなく、自国の抑止力強化によって、断固、領域を守る能力と覚悟を持つことが求められる。何よりも、南西方面における航空優勢確保のため、航空防衛力、特に、戦闘機、空中給油機、早期警戒機を増勢する必要がある。南西方面では、利用可能な航空基地も増やすべきだし、航空輸送力の不足分も埋めるべきである。また、領土を保全するための法体系や、敵の着上陸を阻止するための陸上防衛力の態勢も十分とはいえない。

いずれにしても、南西方面の領域を防衛するためには、防衛大綱・中期防に基づく防衛力や防衛費の増加に、最優先で取り組まなければならない。防衛態勢を含めて対応と抑止の能力を強化することでしか、中国の挑発的な行動は防げない、と知るべきである。 (もりもと さとし)前防衛相、拓殖大学特任教授
産経[正論] 2014.7.16

◆ユニフォームの色

MoMotarou


食っていけない日本が「自衛のために(マッカーサー証言)」開戦した。そうしたらアジアを植民地支配していた英国人もオランダ人も米国人も戦わないで手を挙げたーー高山正之 (政治評論家)

               ★

ワールドカップサッカーを殆ど見ていませんが、羨ましいなぁと思うことがありました。各国の代表が各々の国旗の色を使ったユニホームを着て堂々と戦っている事です。

■マラドーナの「青と白」、ジーコの「黄と緑」

あのマラドーナのアルゼンチンは、英国にはフォークランド戦争で負けたり、債務超過国で大変だったりしていますがユニホームは変わらず。ドイツチームは、赤と黒を使っています。これはナチスドイツの色使いと同じ。日本チームも赤と白を使った時期もあったようですが、負けが続いたのか取りやめ。

私はある時から、今の日本チームの青が「朝鮮ブルー」にしか見えなくなりました。「赤」は配色が難しくテレビで見ると鮮やかさがでないのかも知れません。また国旗や旭日旗をイメージし大日本帝国を思い出させるからかもしれません。

■アジア東洋の「赤と白」

1964年東京オリンピックの日本選手団入場は、緊張を感じさせられるものでした。しかし「赤と白」を堂々とし着こなしていました。朝鮮系は「青と白」。

映画を見て気が付いたのですが、昭和天皇は各国の入場行進中起立されたまま。長年の閲兵経験で鍛えられた姿勢を拝見し今でも感激します。

入場する選手団は西洋白人系が殆どで、当に「日本の孤独」を感じ理解しました。選手団には一人二人という独立間もないアジア・アフリカ系諸国がありました(日本が参加援助)。毛沢東の中国は、開会日に核実験を行い、日本に「核の灰」をお見舞いする"性質(たち)の悪い"国でした。

■西洋の後退

今回のワールドサッカーで、アフリカの普段馴染みのない国々を目にしました。我国の前の戦争の「意味と影響」に感慨を覚えずにはおられません。コートジボワール?(フランス語で「象牙海岸」1960年仏より独立)

いつかは「赤と白」を基調にしたユニホームを着こなした我国チームを決勝で見たいものです。

2014年07月16日

◆「核」が日中開戦を抑止する(54)

平井 修一


JBプレス7/4の、現代史研究家・ジャーナリストの水間政憲氏と、衆議院議員(自民)の中山泰秀氏の対談を紹介する。とても勉強になった。
・・・

*円借款を踏み倒した中国が商船三井に損害賠償を求める不思議

中山 国会では集団的自衛権の行使容認をめぐる与党協議が大詰めを迎えています。

毎日新聞が実施した世論調査によると、集団的自衛権を行使できるようにした場合、「他国の戦争に巻き込まれる恐れがある」と回答した人が71%に上ったそうですが、これについてどう思いますか。

水間 本当は「戦争に巻き込まれないための集団的自衛権」であり、毎日新聞にもその発想はあるはずなんです。にもかかわらずそれを報道しないのはおかしいと思いますね。

フィリピンの事例を見るとよく分かります。かつてフィリピンから米国が撤退した後、ほどなくして南沙群島のミスチーフ環礁が中国に占拠されてしまいました。この例からも日本は、集団的自衛権と日米安全保障条約を一体のものとして考える必要があります。

中山 南シナ海ではベトナムと中国も領有権をめぐって対立しています。中国はこの海域を確保することで、米国本土に対してミサイルの威嚇ができるようになるため、何としても奪取しようとしている。また、中国はゴビ砂漠に軍事基地を設立し、ミサイル発射実験を行っているという情報も耳にします。

こうした周到な準備を進めているのを見ると、日中の友好関係も大事ですが、彼らが片手で握手をしながらもう片手に包丁を持っていることも忘れるべきではありませんね。

水間 自国に利益があると判断したら、たとえ机の下で蹴り合っていても握手を求めてくるのが中国なんです。今後は、中国との経済的な結びつきを徐々に弱めていくことも日本にとって1つの安全保障と言えるのではないでしょうか。

以前、戦後補償をめぐる中国の損害賠償訴訟で、日本の商船三井が上海海事法院(裁判所)に約40億円を供託金として支払いました。船舶の貸出契約は日中戦争前の1936年であり、中国側は対日賠償請求の放棄を盛り込んだ日中共同声明には反さないと主張しています。

では中国は、1933年に日本が貸し付けていた総額約10億円(現在の約3兆円相当)の円借款を踏み倒した事実を、どう説明するのでしょうか。

財務省に確認したところ、その円借款は戦争のドサクサでうやむやにされ、取り返していないそうです。すなわち、日本は中国から正式に取り返せるお金が少なくとも3兆円あるということです。このあたりの内容は『ひと目でわかる「大正・昭和初期」の真実1923-1935』にも書いていますので、ぜひご一読いただければと思います。

1933年に反日官制デモが起きた時と現在の状況はよく似ています。中国向けの円借款の残高は現時点で1兆6000億円ほどありますが、もし今、何か衝突が起きたらそれらはすべて空中分解してしまうかもしれません。それに戦前の例で考えると、デモによって資本を投下したインフラや民間企業などは中国に強奪されかねないと思います。

*一人っ子政策で育った中国の軍人に戦う精神はあるか

中山 集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更は、7月1日にも閣議決定がされる予定です。公明党は地方組織代表者の意見を聞く会合を党本部で開いたところ、慎重論が相次いだと報じられていますが、中国がこれだけ脅威となっている今、時間的な猶予は少ないように思います。

水間 中国や日本の一部マスコミがおかしいのは、この問題を靖国神社問題とすり替えていることです。思想的にも保守化だ、右傾化だ、などと言って。しかし、きっかけは2010年に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件であり、脅威となっているのは日本ではなく中国なんです。そこが完全にすり替えられている。

*ベトナムで過去最大規模の反中デモ、南シナ海での衝突に抗議

水間 南シナ海の西沙諸島近海で起きた中国との衝突をめぐり、ベトナムでは過去最大規模の反中抗議デモが行われた。

中国はベトナムの船舶が中国公船に1000回以上も衝突してきたなどと嘘の主張をしています。日本に関しても、自衛隊機が中国の軍機にわずか10メートルまで接近したと、ありもしないことを言ってきているのですから。

中山 日本ではほとんど報じられていませんが、6月26日から米海軍主催の環太平洋合同演習(リムパック2014)が開催されています。ここに中国海軍が米国に招待されるかたちで参加しているのですが、なぜ米国は仮想敵国と軍事演習を行う必要があるのか。

水間 思うに米国は、中国人民解放軍の力量をチェックするためにわざと招き、監視しているはずです。対立している国同士ほど、こうした軍事的な関係強化は大きな意味を持つのではないでしょうか。

海上に関して中国には実績も経験もありませんから、いざとなったら身を引くと思います。日清戦争の時も、数的優位にありながらそうでした。また、一人っ子政策の影響から、中国軍が本当に戦う精神を持っているかどうかは疑問です。

現に、中国で海洋監視船の船員を募集したところ志願者が集まらなかったそうです。一人っ子政策の後に生まれた子どもたちの多くは今頃現役の軍人になっていると思いますが、もし戦争などの危機的状況になった時に引くのはおそらく中国でしょう。

*中国の地図に記されていた「尖閣諸島」の文字

中山 歴史の研究には情報収集が欠かせないと思いますが、水間さんが大切にしていることは何ですか。

水間 情報には発信能力と受信能力の両方が必要です。情報戦にしても敵を知らなければ戦うことはできませんからね。敵国を知るには敵側の資料を使うのが一番なんです。

例を挙げると、『ひと目でわかる日韓・日中 歴史の真実』にも記しましたが、私が見つけた1960年に北京市地図出版社が発行した『世界地図集』には尖閣諸島が日本名で表記されています。

しかし、1969年から1970年に国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の調査によって石油、天然ガス埋蔵の可能性が公表されると中国は尖閣諸島の領有権を主張し始め、中国の地図も改竄されました。

ところが、このECAFEの調査と同時期の1969年に中国政府が発行した地図では尖閣諸島が日本の領土として認められていたことが、外交雑誌「Foreign Policy」に掲載されているのです。

これは中国政府の公式地図ですから決定的な証拠です。もし外務省がホームページなどで公開すれば、日本は国際的に中国を追い込むことができるでしょう。彼らが尖閣諸島の次に狙っているのはおそらく沖縄本土ですから、危機感を持って備えなければならないと思います。(以上)
・・・

尖閣については、外務省のサイト、
http://www.mofa.go.jp/files/000018519.pdfに1958年の中国政府の公式地図が載っている。

白を黒と言うのは中共の常套手段であり、プロパガンダだから事実かどうかはどうでもよく、声が大きい方、力がある方が勝ちというわけだ。習近平は反日ナショナリズムを煽って、内政への不満をごまかしている。

ロシアの声3/12のアンドレイ・ラニコフ氏の論考「東アジア 記憶の戦争」から。

<東アジアには(歴史の現代活用について)独自のルールと法則が存在し、残念ながら、それは第一次世界大戦以前の欧州で見られたものと似通っているともいえる。もう過ぎ去ったことが現在の政治プリズムを通じて云々され、疾風のような愛国感情を巻き起こすのである。

東アジア諸国においては韓国にせよ、中国にせよ、ベトナムにせよ、ナショナリズムが公式イデオロギーにおいて重要な役割を担っている。高句麗の歴史を巡って最近激しい論争があったように、中国と韓国の間には多くの矛盾が存在している。

ただし、ナショナリズム高揚の材料として中韓両国で共通しているのは日本を悪者扱いしているという点である。

2014年1月、ハルビンでは小さな記念碑が設けられた。これはもう百年以上まえの1909年、安重根が明治元勲の一人である伊藤博文を暗殺した事件を記念するものである。

安重根は韓国でも北朝鮮でも同じく国家的英雄と考えられてきた。韓国は長年にわたってハルビンにおける記念碑設置を求めてきたが、中国はあまり乗り気ではなかった。

第一に最近にいたるまで中国は日本との関係を悪化させることを望んでいなかった。第二に政府高官が武装民族主義者に攻撃されるという事件自体、あまり中国の歓迎するものではなかった。ウイグルやチベットに第二の安重根が出てくることは中国政府が望むことではないからだ。

しかし2014年1月には一転して、ハルビンに安重根のメモリアルが作られ、おそらく韓国人観光客らの人気スポットとなるだろう。

この背景にあるのは日中関係の悪化があり、中国は韓国を味方につけようとしているのは理解できる。特に、韓国は日本と同様に米国の同盟国である。米国は中国の主要な地政学的ライバルだ。東アジアにおいてはこのように歴史が政治的手段のひとつとなる。

多くの場合、ナショナリズム感情というのは実際の地政学的利害の前には意味を成さないが、東アジアにおいては一見たんなるシンボリックな行動であっても、現実的に大きな政治的意味をもつことがある。

2月末、中国政府は南京で朝鮮人慰安婦が働かされていた場所にメモリアルを設ける予定だ。これは決して人道的な考慮によるものではなく、政治的行動であることを忘れてはならない。第二次世界大戦の終わりは未だはるかかなたと言えそうだ>(以上)
・・・

火は吹かないけれど日中戦争は始まっているとも言える。「ウイグルやチベットに第二の安重根が出てくる」、そして習近平を射殺するだろう。そうなれば戦争への流れは変わるはずだ。出でよ安重根!(2014/7/13)

◆周永康は結局何をしたかったのか

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 


<平成26年(2014)7月15日(火曜日) 通巻第4293号 >

 〜周永康は結局何をしたかったのか
  住宅だけで326軒、金塊は42850グラム(2億円弱)、クルマ62両。〜

周永康の犯罪的不正蓄財の全貌が次第に明らかとなってきた。

不動産投資は全国津々浦々に326軒(市場価格17億6000万元=邦貨換算3300億円)。

保有していた金は金塊、コイン、プラチナを含めて42850グラム(日本円にして2億円前後)。絵画骨董書画は55点。市場価格8億元(邦貨136億円相当)。クルマは62両。いずれも家族名義を含む。

隠し持っていた現金は人民元が1億5270 万元(邦貨換算=26億円前後)、米ドル275万ドル(2億8000万円)、ユーロ66万2000ユーロ(9200万円)、英ポンド11万(1900万円)、スイス・フラン55万(6200万円)。合計して邦貨換算で30億円強にもなる。
(隠し場所が大変だろうなぁ)。

そして周永康とその家族、ボディガードらが所持していた武器は中国ピストル5丁、ドイツ、露西亜、英国、ベルギー製拳銃各核1.合計9丁。結局、周永康は何をしたかったのか?

◆中国軍最高幹部の党籍剥奪

茅原 郁生


「浄化」と「闘争」2つの意味

中国国営新華社通信によると、6月30日に中国軍最高指導機関である中央軍事委員会の前副主席である徐才厚氏が収賄などの違法行為で党籍剥奪の処分を受け、検察機関で刑事責任が問われている。

徐才厚氏の最終階級は大将にあたる上将だった。かねて軍上層部の汚職腐敗が問題になっていたが、中国共産党中央政治局員に任じられた軍最高幹部までが摘発された事件は衝撃的であった。

これまで人民解放軍は、革命の功労者とされ、共産党政権を支える「党の柱石」として不可侵的な存在であった。その軍高官が汚職事件で処断されたのには2つの観測がある。

一つは精強であるべき軍の上層部の浄化だ。総後勤部副部長で中将だった谷俊山氏の巨額収賄事件もすでに発覚しており、軍内での反腐敗運動であると考えられる。

もう一つは、習近平国家主席選出にまつわる権力闘争説だ。党中央政治局員で重慶市党委員会書記だった薄煕来氏の失脚事件があり、一連の党幹部摘発が続く中で、徐才厚氏の事件もその一環との見方である。その延長には周永康・前党中央政治局常務委員にまで司直の手が伸びることが視野に入ってくる。

ここでは前者の見方に焦点を絞って実態を紹介してみたい。軍人の汚職事件にはポスト売買の人事汚職と、軍需産業や地方権力との権力・金銭取引による癒着汚職があるが、徐才厚氏は職権乱用による昇任人事が絡む収賄容疑で、昨春から内偵が続いていたとみられる。解放軍内では昇任とポスト売買の常態化がいわれている。

ここで徐才厚氏はどのような人物かみてみたい。ハルビン軍事工程学院を卒業後、陸軍将校として瀋陽軍区内の部隊に入り政治将校の道を歩んだエリート軍人であった。江沢民国家主席の政権下の2002年に軍人事元締めの総政治部主任に就任。

その後中央軍事委員会副主席、中央政治局員となった。制服軍人としてトップに上り詰めたが、現在、がんで入院中という。

ちなみに上将という階級は解放軍の最高位であり、230万人を擁する世界最大規模の軍隊の中の超エリートである。

徐才厚氏の汚職事件は氷山の一角とみられるが、それに対する習近平主席の処断は中国のネット書き込みで「汚職退治の勇気」として称賛された。それは逆に精強、清廉であるべき軍内が腐敗に犯され深刻な状態にあることの証左で、解放軍の恥部がえぐりだされたことになる。

                     (拓殖大学名誉教授)
             (フジサンケイビジネスアイ2014.7.15)



◆実に恐ろしきは有権者!

浅野勝人   (安保政策研究会 理事長)
  

見渡せば 鷹ばかり住む 寒い朝

去年(2013年)元旦、安倍内閣最初の元日。元自民党国会議員、元内閣官房副長官として長期安定政権を願う立場から、政権がいわゆる右寄り政策に前のめりするのを懸念して詠んだ句です。

滋賀県の知事選挙。予想を超える有権者のしっぺ返しの速さに驚きました。いや、驚いてはいけません。予想通りの有権者の反応と受け止めた方が妥当と理解すべきです。

特定秘密保護法、消費税増税、公共料金・保険料実質値上げ、それに伴う巧妙な便乗値上げ、極めつけは集団的自衛権の強権的決定と続くと、自民党に投票した人が「こんなつもりで信任投票したんじゃない」と考え込んでしまうのも無理からぬ思いがいたします。

それにも拘わらず、これまで安部内閣の支持率がさほど落ちなかった理由(わけ)はふたつあります。ひとつは中国と韓国の反日政策。

もうひとつは政権の受け皿がない事。私は「野党の不在に安住するな」とたびたび指摘してきましたが、行き過ぎた中国封じ込め外交政策の主導と強権的政治手法に有権者がイエローカードを突きつけたのが滋賀の結果でしょう。放置するとレッドカードに変質します。

特に集団的自衛権については、私は個人の見解として、かねてから政府案と似た縛りの厳しい限定的容認論「日本型集団的自衛権」構想を明らかにしてまいりました。

政府案は「浅野式元祖限定論」の特許侵害です。従って、安倍首相と同じ立場の見解です。ただ、決定的な違いは、憲法改正を当然の前提としていました。
憲法で「出来ない」と明言してきたことを「出来る」とコペルニクス的転換をするのですから、憲法の規定(96条)に従って、改正案を国民投票か、総選挙に明示して、審判を受けるのが議会制民主主義のノーマルな手順だと思っていました。
それを無視して閣議で決めたから新しい憲法解釈に従いなさいという手法は、国民の目には「危険極まりない独善」と映ります。

安部首相が、戦後のアンジャンレジュームからの脱却を真剣に思ったのなら、はじめから「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と決めつけた9条2項を「自衛権を尊重する」という趣旨のソフトな規定にあらためて、正面から信を問う姿勢を貫いておれば、過半数の国民の支持を得られたのではないでしょうか。
拙速は、せっかくの安定勢力を危うくしかねないことに気付くべきです。

世界で初めて「政党論」( POLITICAL PARTIES )を発表したフランスの政治学者、モールス・デュベルジェ教授は「右寄りの政権の政策は左にぶれ、左寄りの政権は右にぶれる。これが政党政治の最大の利点」といっています。

デュベルジェ教授の正論を無視して、右寄りの政権がいっそう右に振れるのを止める政治勢力が存在しない現状を誰が是正するのか。有権者なのか、政権自らか、滋賀県知事選挙は本質的命題を最初に突き付けました。(2014/7・14)


2014年07月15日

◆最も震えあがった瀋陽軍区に大なた

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26年(2014)7月14日(月曜日)通巻第4292号> 

〜徐才厚失脚で最も震えあがった瀋陽軍区に大なた
   軍区内部、厳重検査を開始、3年以上の勤務幹部170名は配置換え〜

瀋陽軍区に激震が走った。

軍人一人ひとりの履歴を洗い直し、とくに人脈的なつながり、ポストを利用した特権の有無などを調べるという。

「すでに3年以上、瀋陽軍区に勤務する幹部170名には6月末をメドに他の軍区への移動命令が用意されている」(多維新聞、7月12日)。

最大の理由は瀋陽軍区が旧満州の全域をカバーし、近年は北朝鮮対策のため、もっとも先端的な装備を供与され、北朝鮮の暴発に備えて第2軍である「人民武装警察」にかわって人民解放軍が国境警備、入国管理も担ってきた。瀋陽軍区は30万から40万の軍人が配備され、隣が首都防衛の北京軍区、対岸が済南軍区である。

じつは徐才厚は、瀋陽軍区での勤務が長く、人脈のつながりとどろどろした地縁の深さがある。徐才厚は遼寧省互房店市(旧満州奉天)生まれ、ハルビンでエンジニアから出発し、軍に入隊後は長春が拠点の第16集団軍でめきめき頭角を表した。

その後、「第16集団軍」の政治部主任をつとめ、92年には解放軍報社社長兼済南軍区へ。1997年には中央委員に抜擢され、胡錦涛の10年間、徐はまさに「江沢民のお目付役」として軍に睨みをきかせた。

軍事委員会を江沢民色に塗り替える際に、軍隊内でもっとも活躍したのは干永波で1992年に総政治部副主任に抜擢されてのち、この干に引き立てられるかたちで徐才厚は、出席階段をばく進した。同時に汚職にも手を染め、谷俊山から膨大な金塊や香港ドルを現金で受け取っていたという。

1999年に徐才厚は軍事委員会委員(10名の内の1名)にとんとん拍子でまいあがり、中央軍事委員会書記などを経て中央軍事委員会副主任(事実上のナンバー・2)となって江沢民の軍権掌握の右腕として大活躍した。

▲江沢民の軍権掌握の過程で、同時に軍の腐敗も始まった

江沢民は軍の汚職腐敗には目をつむり、ひたすら予算を2桁増加させることで軍隊の中での人気を高め、高級軍人ら軍事委員会を江沢民派で寡占し、これをもって軍権掌握の安直な方法としたわけだが、他方で軍隊の士気低下と天文学的腐敗はとどまることがなかった。

だから午後5時から軍事基地は宴会場と変わり、軍経営のホテルは淫売窟に化けて、軍事訓練は手抜き、サボタージが横行した。

軍事委員会副主任の10年間に徐は出身母体である瀋陽軍区の拡充に力点を置いて、着々と軍区掌握に努めてきた経緯がある。

とくに出身簿他とされる第16軍は長春が拠点だったが、もともと最初の共産党の軍事蜂起{南昌起義}に参加し、やがては朝鮮戦争にも参加したエリート部隊。しかし近年は装備の劣化にともない、第46機甲部隊への改編がなされたという。

ところが古い情報に基って、第16軍が主役となって瀋陽軍区が反旗を翻すなどとする風評が大手を振ってまかりとおるほど、人民解放軍のなかで瀋陽軍区の勢いはつよいものがあった。

現・軍事委員会副主任の氾長龍も1995年から5年間、軍長をつとめている。

今回の瀋陽軍区への大なたは、この徐才厚派を絶滅することに置かれているようだ。

◆中国は世界の大敵

Andy Chang


先週アメリカ東部で行われた台湾同郷会のサンマーキャンプに招かれてPASEAの講演と台湾の危機とアメリカの政策座談会のパネリストを務めたので記事の配信が遅れました。

アメリカの台湾人は毎年の夏に東部、西部、中北部、中南部の4箇所でサンマーキャンプがある。今年は600人以上が参加し、第1世代の他に第2第3世代も参加してかなりの盛会だった。今年の主題は「米国の安全と台湾の自由」であった。

さて、6月25日のFinancial Timesにフランシス・フクヤマが「ISISの脅威はアメリカの主要敵への注意を逸らす」(ISIS risks distractingUSfrom more menacing foes)という論文を発表し、イラク国内の紛争、ISIS(イスラム国)テロより中国とロシアが世界の主要敵であると述べ、ISISテロをアメリカ最も大きな脅威と見なすオバマは間違っていると警告を発した。

●フクヤマ論文の要旨

オバマが今年5月にウエストポイントで講演した際にイラクのISISがアメリカ最大の脅威と述べたのに、フクヤマ氏はオバマ大統領が数年前に発表したアメリカのアジア回帰に言及しなかったことにつき、オバマは世界の主要敵の順序を間違えていると批判した。

世界で起きている紛争のうち、ロシアのクリミア併合、中国の南シナ海や東太平洋におけ小刻みな領土侵略、イラクのISISテログループの三つに分けることが出来るとした。

このうち、イラクの動乱は究極的にはシーアとスンニの部族闘争に過ぎない。しかしロシアのクリミア併合はもっと大きな脅威である。このような領土侵略はモルドバ、カザックスタン、エストニアなどの近隣諸国に対し、ロシアの経済援助と国内のロシア人の活動で領土併呑、侵略を続ける恐れがあるとした。

中国の南シナ海と西太平洋における小刻みな領土侵略で地域への影響力を増し、アメリカをアジアから追い出してアジアの覇権国となる野心があるとした。ロシアの経済力は限度があるが、中国は世界第2の経済大国となり、武力も強大となり近隣諸国を脅かしている。

フクヤマ氏は米国の優先順序は間違っている。まず、NATOに強固な防衛力を持たせ、口先だけのアジア政策を改めてアジア諸国との連合を強めるべきであるとした。最後にフクヤマ氏は「ネオコン保守と孤立主義の両極端は、二つとも間違った政策だ。真っ当な政策
(Real strategy)は常にこの二つの中間にある」と結論付けた。

●テロの脅威

フクヤマ論文ではISISの脅威を単なる部族闘争と見なしているが、ISISの理想はイスラム国を作ることだから、部族闘争が拡大して反米テロと反イスラエル紛争が拡大する恐れがある。オサマ・ビンラディンの911テロのあとアメリカはイラク、アフガンに派兵したが、
エジプト、リビア、シリアなど各国で政変が起きて中東はすっかり反米となった。ISISが増長すればテロが増える恐れがある。

フクヤマ論文は長期的に見て中国が世界最大の脅威であると述べている。経済力と武力で世界有数の大国となった中国は、習近平がオバマとの会見で二つの覇権国で世界を統治すると言った。中国の野心はアジアの覇者として太平洋に進出し、ハワイ、米国西部海岸ま
で中国の勢力を伸ばすことにある。これはアメリカだけでなく世界の脅威である。

一方オバマはアジア、ヨーロッパ、中東などの動乱について民主主義と現状維持のリップサービスだけで介入を避けている。世界各地の紛争に介入しないオバマの「孤立政策」は明らかである。オバマがISISを恐れる理由は、イスラム圏の根強い反米思想がアメリカ国
内で起こすテロ行為、つまりオバマ孤立主義に対する脅威である。

●PASEAのアジア連合と中国の二国間交渉

つまりオバマはアジア各地で起きている中国の領土侵略を放置し、得意な弁論だけで実際行動は皆無である。明らかに米国は南シナ海、台湾併呑、尖閣侵略に対し独力で中国の脅威に対抗することが出来ないのである。

中国の覇権行為に対抗するには欧州諸国とアメリカの連合(NATO)のようにPASEA(Peace Association of South-East Asia)を作って中国の領土侵略を防ぐ必要がある。私が3年来主張してきたPASEA構想がようやく諸国間で認識されるようになったのは嬉しいことである。

中国は明らかに諸国の連合を最も恐れている。南シナ海、尖閣諸島などで中国が勝手な領土占領や武力行使しても、中国は領土問題は二国間の協議で解決すると主張しているが、二国間交渉とは覇権国の言いなりになるだけの結果である。諸国が連合すれば中国の侵略
は止められる。米国が単独で中国を抑止できなくてもアジア諸国とアメリカが連合すれば中国を抑えることが出来る。

PASEAの構想、安倍首相のダイアモンド連合など、明らかに諸国は連合の重要性を認識し始めている。中国は世界で最も嫌われる国だが、中国抑止連合はまだ実際行動に至っていない。

中国と対抗できる実力のあるのは日本だけである。アジア連合を作るには日本が主催国となる必要があり、アメリカも認めるようになっている。アメリカは日本が戦力を持つことに警戒心を抱いていたが、単独で中国の覇権進出を抑止できなくなったので、阿部政権の
集団的自衛権の憲法解釈見直しを歓迎する発言が増えた。

中国が最も恐れるのは日本が自衛権を発動できるようになって、日本と米国がアジア連合を主導することである。日本国内でも憲法改正は戦争になるという議論があるが、自衛権が戦争になる、日本が侵略戦争を起こすという理論はまったく根拠がない。日本の自衛力
が中国覇権を抑止する力となるのである。日本が早く平和聯盟の主導国となることを祈ってやまない。

          

2014年07月14日

◆「中国に裏切られた」北朝鮮

〜本格対立の様相〜

矢板 明夫


中国の習近平国家主席(61)は7月初め、約300人の中国の政財界要人を連れてソウルを訪れ、中韓の蜜月ぶりを演出した。

韓国側との会談では北朝鮮の核放棄で連携を強化することを決定。長年の盟友である中国に裏切られる形となった北朝鮮は、日本海に向けてミサイル発射実験を行い、官製メディアで中国を暗に批判する記事を掲載するなど猛反発した。中国の朝鮮半島専門家は「中朝関係の修復はもはや難しい。これからは本格対立が始まるかもしれない」と話している。

「切り捨てるぞ」と警告

習主席は平壌よりもソウルを先に訪れた初の中国最高指導者となった。中国外務省関係者によると、中国政府は今回の習主席訪韓を、最高レベルの外交行事と位置づけた。

中国が韓国との関係を重視する背景には、米国が主導する中国包囲網の重要な一角である韓国を引き寄せたい思惑が指摘される。同時に、中国から支援を受けながらも最近、中国の意向を無視した行動をとり続ける北朝鮮に対し「切り捨てるぞ」と警告する意味もあるとみられる。

中国は胡錦濤政権まで、北朝鮮との関係を重要視する政策をとり続けた。北朝鮮が核実験をしても、ミサイルを発射しても、中国は口頭で抗議するだけで、援助をやめなかった。戦略的に北朝鮮を中国側に引き寄せる必要があったことが原因と指摘された。

しかし、習近平政権が発足した直後の2013年2月、習主席に近いとされる共産党幹部育成機関の新聞「学習時報」の副編集長が英紙、フィナンシャル・タイムズで「核問題で中国の脅威にもなる北朝鮮を切り捨てるべきだ」という内容の論文を発表し、大きな話題を呼んだ。

共産党関係者によれば、論文は習主席の周辺の意向を反映しており、中国はその頃から対北政策の見直し作業を進め始めたという。

「兵糧攻め」も逆効果に習指導部が対北政策を見直すのは、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題で対立する日本を意識してのことだと指摘される。北朝鮮の核開発を放置すれ
ば、将来的に日本も核兵器保有に向けて動き出す懸念は党内で強いという。

また、5月に上海で開かれた「アジア信頼醸成措置会議」(CICA)で
習主席が「アジアの安全はアジアで解決できる」として「アジアの新安全保障観」を提唱したように、習政権はアジア太平洋地域から米国を排除し、中国を中心として軍事同盟を築きたい思惑がある。

しかし、中国の盟友でありながら、協力的でない態度をとり続ける北朝鮮はいまや中国のこの構想にとってマイナスの存在になったという。

特に、昨年12月に北朝鮮が親中派とされる張成沢(チャン・ソンテク)一派を粛清したあと、中朝間のパイプ役がなくなり、頻繁に行われていた要人往来も実質的に止まった。

中国の北朝鮮に対する影響力はますます低下した。中国の政府関係者によると、中国は今年2月から北朝鮮に提供する石油の量を大幅に減らし、兵糧攻め”の手段に出たが、北朝鮮側の態度をますます硬化させ、期待されていた効果がなかったという。

今回、習主席が国内外に見せた韓国重視の姿勢は、北朝鮮を孤立させる作戦の一環ともいわれる。しかし、北朝鮮は日本と接近するなど、中国に対抗しており、うまく行ったとはいえない。

正男氏担ぐシナリオも

習主席が訪韓する前に、北朝鮮は日本海に向けたミサイル発射実験を行ったほか、労働新聞で「核開発の放棄は永遠に実現することのない荒唐無稽な犬の夢」との内容の記事を掲載した。習政権の政権スローガンは「中国の夢(の実現)」であるため、「犬の夢」とは、習政権への皮肉とも受け止められる。

また、同じ労働新聞には「大国主義者たちの圧力もわれわれ人民を屈服させられない」との表現もあり、「中国」を「大国主義者」と暗に批判したものと指摘される。

中国政府は金正日(キム・ジョンイル)時代から、金正日氏の長男の正男(ジョンナム)氏(43)を保護下に置いている。北朝鮮が中国の言うことを聞かないなら、正男氏を担いで北朝鮮のトップにすげ替えるシナリオがあると言われている。

朝鮮半島問題専門家は、「打つ手がなくなれば、中国は北朝鮮の内政に本格介入することも考えられる。今それは、北朝鮮が最も警戒していることだ」と話している。
(中国総局 やいた・あきお)

産経ニュース【国際情勢分析 矢板明夫の目】2014.7.13



◆平安時代を支えた藤原氏の英智

伊勢 雅臣


平安時代は、藤原氏の専横と国司の人民収奪で乱れた時代だったのか?

■1.うんざりする平安時代の記

中学時代に、平安時代の歴史を学んでいて、うんざりした記憶がある。中央の藤原氏も地方の国司も自分の利益をむさぼるばかりで、そんな俗物ばかりがはびこった時代として描かれていたからだ。多感な中学生が、世の中の悪ばかり見せつけられて、元気が出るわけがない。現在の東京書籍版の歴史教科書の記述も、同様である。

摂関政治と国司

<平安時代になると、藤原氏は、たくみに他の貴族を退けながら、娘を天皇のきさきにし、その子を次の天皇に立てて、勢力をのばしました。そして、9世紀後半には、天皇が幼いときは摂政、成長すると関白という職について、政治の実権をにぎるようになりました。

このような政治のしくみを摂関政治といい、11世紀前半の藤原道長(ふじわらのみちなが)と、その子頼通(よりみち)のころが、最もさかんでした。

 藤原氏は、朝廷の高い地位をほとんど独占し、国司からは、たくさんのおくり物をおくられ、多くの荘園をもつようになりました。

 いっぽう、地方の政治は、ほとんど国司に任されていたので、自分の収入を増やすことにはげんだり、任地には代理を送って、収入だけを得たりする国司が多くなり、地方の政治は乱れていきました。>[1,p41]

コラム欄では、「道長の栄華」として「この世をば わが世と思う 望月(もちづき)の欠けたることも 無しと思えば」という歌を紹介し、さらに「藤原氏の系図」として、一族の娘たちが次々と10代もの天皇の后になった様が図解されている。

■2.律令国家の立て直し

自由社版も、「摂関政治」については同様の記述をしているが、その前に「律令国家の立て直し」という一節を設けている。

<律令国家の立て直し

桓武天皇は、農民にとって大きな負担となっていた兵役の義務を(九州と東北を例外として)廃止し、郡司の子弟による新しい軍隊を作った。これを健児(こんでい)制という。

また、地方政治の乱れを監視するため、勘解由使(かげゆし)を置き、国司や郡司の不正を取りしまった。さらに、6年の1回だった口分田の支給を、実情に合わせて12年に1回とした。>[2,p66]

この結果として、次の「摂関政治」の冒頭で、こう記す。

<摂関政治

 律令国家が建て直され、天皇の権威が確立し、皇位の継承が安定してくると、天皇が直接、政治の場で意見を示す必要がなくなった。一方、藤原氏は・・・>[2,p67]

として、東書版と同様の記述が続く。「摂関政治」は、桓武天皇の立て直し努力の結果、安定した国家ができあがったので、その上に生じた現象なのである。

東書版は、こういう桓武天皇の立て直し努力に一切、触れていない。かろうじて、その前の節で、貴族や僧の間で勢力争いが激しくなったので、桓武天皇が新しい都で政治を立て直そうとして、京都に都を移した、という点に触れているのみである。

混乱した政治を立て直そうとする努力を一切、無視して、金と権力を追求した面のみを教えられたのでは、これから自分の人生を歩もうとする中学生の志気を挫くのみである。

■3.人口増による社会の成長

平安時代とは794年の平安京遷都から、1192年の鎌倉幕府創設までの約4百年間を指す。この間は、末期の源平の戦いを除けば、大半の期間で大規模な革命も内乱も起こらなかった事を考えれば、朝廷の統治は安定していた、と言えるだろう。

その中で、公地公民制が徐々に崩れて、土地の私有化、武士の成長が緩やかに進行して、次の鎌倉幕府に実権が移る。公地公民制が崩れた原因は、人口の増加によって、農民に配分すべき口分田が足りなくなり、新田開発を促進するために、それらの地の私有を認めるようになったからだ。

人口が増加したのは、それまでの朝廷の統治の成果である。したがって、公地公民制の成功が社会を成長させ、その成長の結果、古い制度が綻んで、新しい制度が必要になった。そこを無視して、公地公民制が崩れた、という問題のみを指摘するのは、バランスを欠いている。

歴史学者がその変化の部分に着目して、「摂関政治」や「荘園制」などという概念で説明するのは歴史研究としては良いとしても、歴史教育としては、その大前提である大和朝廷による政治の安定と、その結果としての人口の増加、という面をきちんと教えなければならない。

■4.うち続く天変地異との戦い

もう一つ、最近の歴史研究で明らかになってきた事は、平安時代には天変地異が頻発したことである。平安時代の最初の100年だけでも次のように大規模な天災が続いた。

 ・弘仁9(818)年7月、坂東諸国を大地震が襲った。相模などの諸国では、山崩れが起きて谷が埋まり、圧死した者の数は数え切れないほどだった。[3,p105]

 ・弘仁10(819)年、旱魃(かんばつ)が発生し、人は飢えて危機的状況となり、正倉も空で救民もできないため、朝廷は使者を派遣して強制的に富豪の蓄えを記録させ、困窮者に貸し出させた。[3,p116]

 ・貞観6(864)年、富士山が北西斜面から噴火し、60mほどの火柱が上がった。溶岩流は長さ18キロメートル、幅2〜3キロを埋め尽くした。人々の家も呑み込まれ、一家が死に絶えた家も数知れなかった。[3,p128]

 ・貞観16(874)年3月、鹿児島の開聞岳が爆発し、その煙は天を覆い、火山灰が約3〜15センチほど積もった。農作物はすべて枯れ、川の水も黒く濁り、魚も死んだ。その魚を食べた者は、死んだり病気になった。[3.p103]

 ・同年8月、暴風雨で京は2m以上冠水し、橋は流され、溺死した人・馬・牛は数え切れなかった。[1,p111]

 ・仁和3(887)年7月、大地震が発生し、京では役所や民家が倒壊して下敷きになって亡くなる者が多かった。近畿地方でも津波が押し寄せて数え切れないほどの死者が出た。[1,p108]

 ・仁和4(888)年5月、信濃域を未曾有の大洪水が襲った。山崩れが起きて川をせき止めたため、水が諸郡を貫流し、役所や民家が流された。朝廷は使者を派遣して現地を視察させ、救済策を講じた。[3,p112]

うち続く天変地異の中で、なんとか人民を救おうとした朝廷の努力が垣間見える。

そして、大事なことは、これだけ天災が続いたにも関わらず、大規模な内乱も起こらず、国全体としては人口が増加したという事実である。それは朝廷の政治が基本的には成功したから、と言うほかはない。

こういう大きな流れを無視して、藤原氏の摂関政治や国司の地方搾取など、政治の乱れのみを描くということはマルクス主義的な偏向教育である。

■5.藤原緒嗣の直言

実際に、藤原氏の中にも、乱れ行く世をなんとか正そうとした人々がいた。たとえば、延暦24(805)年、30歳前の若き参議・藤原緒継(おつぐ)は70歳近い桓武天皇の面前で、次のような直言をした。

{いま天下の苦しむところは、軍事(蝦夷征討、[a])と造作(ぞうさ、平安京の都づくり)です。この二つを停止すれば、百姓の生活は安らかになります。}[4,p58]

この直言について、[4]の著者・目崎徳衛・聖心女子大学教授は次のように解説している。


「これは、桓武朝の生命ともいうべき二大事業に対する、まっこうからの否定である。緒継は捨て身の勇気をふるったのだ。この勇気をささえたものは、おそらく貴族層の多数意見であった。さらにその背後には、長年の重い負担にうちひしがれた農民の姿があったにちがいない。

長老の真道(菅野真道、同じく参議)は、緒継の主張に強硬に反論した。しかし、年老いた天皇は緒嗣の批判をすなおに受け入れた。ただちに造宮職(ぞうぐうしき、都の造営にあたる役所)を廃止したのである」。[3,p58]

70歳近い老天皇の生涯の功績を真っ向から否定するような建言をした緒嗣は、天皇の怒りを買って、自分の地位、ことによったら生命までも奪われる恐れがあっただろう。それを顧みずに、真っ向からこのような直言をしたのは、それだけ民を思う気持ちが強かったからに違いない。

それにもまして心を打たれるのは、自分の生涯の業績を否定しかねない緒嗣の直言を容れた老天皇の御心である。緒嗣と同様に、自身のことより、民の幸せを願う大御心が窺われる。

藤原家の摂関政治も歴史の一面ではあるが、藤原氏の中にも緒嗣のような人物もいたことを教えてこそ、中学生の多感な心に訴える歴史の授業となるはずだ。

■6.藤原園人の気骨

上述の参議・藤原緒嗣と並んで、平安時代初期に財政緊縮、民生安定を図ったのが、右大臣・藤原園人(そのひと)である。

たとえば、桓武朝の頃から天皇の鷹狩りや、宮殿の完成などの祝い事に、貴族や国司などが争って「献物(けんもつ)」を行う風習がさかんになっていた。園人は嵯峨天皇の弘仁5(814)年、「国司・郡司は献物を口実にして百姓から余計に税を取り立てる。こういうことはきびしく禁止しなければならない」との意見書を出した。

さらに、この年に園人は驚くべき行動をとった。藤原氏の古くからの特別な勲功に対して与えられ、永久に子孫に相続しても良いとされていた功封(こうふ、私有領地)を朝廷に返還しようとしたのである。

園人に続いて、その同じく藤原北家で甥にあたる冬嗣、上述の式家・緒嗣も同様な申請を行い、結局、藤原氏の所有していた封戸(ふこ)合計1万7千戸すべてが国家に返還された。推定によれば、これは全国の戸数の約12分の1にもあたる。[3]の著者・目崎徳衛教授は、こう述べる。


「このころの藤原氏主流が、鎌足以来の特権を放棄してまでも律令体制維持をつらぬこうとする意識を強く持っていたことは否定できない。それは荘園を多く寄進されて栄華をきわめる後世の藤原氏と、おおいに違っていた。」[4,p89]

■7.藤原氏の英智

藤原園人が意見書を出したのが弘仁5(814)年、藤原道長が「この世をば 我が世と思ふ」の歌を詠んだのが寛仁2(1018)年であるから、2百年もの隔たりがある。平安前期には律令国家維持のために封戸返納までした藤原氏が、2百年も経って、摂関政治で我が世を謳歌するまでに変質したとしても不思議はない。

ただし、いかに藤原氏が堕落しても、決して越えなかった一線がある。渡部昇一氏はこう記す。

「しかし、このときも、道長には自分が皇位につこうという気はさらさらないのである。(JOG注: 娘たちを天皇の后にするという)こんな面倒なことをするくらいなら、自分が皇位についたほうが早い。ほかの国なら、間違いなく王位を奪うところであろう。

しかし、絶対にそうはならない。それは自分たちの一族が神話時代から皇室に仕えるものであるという意識があるからだ。」[5,p176]


天照大神の孫・邇邇芸命(ににぎのみこと)が降臨した際に、随伴した天児屋命(あめのこやねのみこと)が中臣氏の祖神であり、中臣鎌足はその22代目の子孫であった。鎌足が「大化の改新」の大功で、藤原の姓を賜ったのが、藤原氏の始まりである。

「我が一族は天孫降臨の時からの皇室の藩屏(はんぺい、守り)」との誇りと使命感が藤原氏にあったのだろう。鎌足の大化の改新での行動や、上述の緒嗣や園人の国を思う気骨は、そういう精神から出てきたとしか考えられない。

東書版が「藤原氏の系図」として図解しているように、一族の娘たちを10代の天皇の后としても、君臣の別を決して越えなかったのが、藤原氏の伝統的な英智であった。

もし藤原氏が皇位を簒奪していたら、他の皇族や貴族からの反発を受けて、中国のように内乱や革命騒ぎが続いていたろう。藤原氏の英智は、そのような事態を引き起こさず、平安時代の安定を招いたのである。「藤原氏の系図」をわざわざ図解するなら、そこに窺われるわが国の深い国柄も説いて欲しいものだ。


■リンク■

a. JOG(850) 歴史教科書読み比べ(15) :大和朝廷の東北進出と蝦夷の抵抗
大和朝廷が東北地方に国土を広げる過程で、蝦夷はなぜ抵抗したのか。
http://blog.jog-net.jp/201405/article_7.html

b. JOG(799) 歴史教科書読み比べ(9) 〜 大化の改新 権力闘争か、理想国家建設か
聖徳太子の描いた理想国家を具現化しようとしたのが大化の改新だった。
http://blog.jog-net.jp/201305/article_4.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
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1. 五味文彦他『新編 新しい社会 歴史』、東京書籍、H17検定済み

2. 藤岡信勝『新しい歴史教科書―市販本 中学社会』★★★、自由社、H23
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4915237613/japanontheg01-22/

3.川尻秋生『揺れ動く貴族社会 (全集 日本の歴史 4)』★★、小学館、H20
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/409622104X/japanontheg01-22/

4.目崎徳衛『日本の歴史文庫〈4〉平安王朝』★★★、講談社、S50
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B000J9ETG8/japanontheg01-22/