2014年06月16日

◆木村摂津守と桑港の人々

伊勢 雅臣


咸臨丸でやってきた木村摂津守の礼節・謙譲あふれる言動はサンフランシスコの人々に感銘を与えた。

■1.咸臨丸、サンフランシスコ到着

安政7(1860)年2月26日、咸臨丸が37日間の太平洋横断を無事に終えて、サンフランシスコ湾に入った。船から眺めると、東洋の神秘の国・日本から初めてやってきた船を一目見ようと集まった群衆がアリのように見える。

2年前の安政5(1858)年6月19日、品川沖のアメリカ軍艦ポーハタン号上で日米修好通商条約が調印されたが、その際に日本側は、条約の批准書交換をワシントンで行うことを提案した。そして正使はポーハタン号で送り迎えして貰う事になったのだが、副使は日本で別の船を仕立てて送り出すことにした。それが咸臨丸だった。

日本側としては、調印を日本でやったのだから、批准書交換はアメリカで、それも副使用とはいえ独自の船を出す、という形で対等の独立国としての対面を保とうとしたのだった。現代日本とはまったく違った「武士の面目」を、当時の日本は持っていた。


■2.「いきなり太平洋横断ができるわけがない」

咸臨丸派遣には、もうひとつ重要な狙いがあった。独立維持のため強力な海軍を育てようと、幕府は安政2(1855)年に長崎海軍伝習所を作り、オランダ人教官を招いて乗員養成に努めていたが、航海練習は日本近海での経験しかなかった。そこで、この米国への使節派遣という絶好の機会を捉えて、外洋航海の経験を積もうとしたのである。

しかし、当時はアメリカ軍艦でも太平洋を横断するのは難事であった。ペリーの黒船艦隊にしても、大西洋を渡り、アフリカ南端の喜望峰を巡り、インド洋を経て、日本にやってきていたのである。このコースなら、相当部分を港を伝いながら陸地沿いに進める。

太平洋横断は米商船が年に1、2回行っているだけで、軍艦の航行はほとんどなかった。日本近海しか航行したことのない日本軍艦がいきなり太平洋横断を目指すのは、無謀ともいえる企てだった。

米国への日本船派遣は、海軍創設に尽くしてきた軍艦奉行・水野忠徳ら開明派官僚たちが提案したのだが、老中側は、伝習わずか3年も経たない未熟な腕で、いきなり太平洋横断ができるわけがない、と一度は却下された。

それを水野らは「できる」と強引に押し切って、正式決定に持ち込んだのだった。日本国の名誉だけではなく、日本海軍の将来がこの太平洋横断にかかっていた。


■3.起死回生のラスト・ホープ

咸臨丸に乗り組む副使として任命されたのが、水野の後任として軍艦奉行に任じられた木村摂津守(せっつのかみ)良毅(よしたけ)であった。木村家は旗本の家柄ながら、将軍の命により、砂糖や朝鮮人参の栽培・販売などに代々、功績があり、そこで育った良毅は農民や商人、職人たちとも交わり、広い視野を養っていたようだ。

また、当時は30歳にも届かぬ青年であったが、長崎海軍伝習所の取締も3年間、勤めていた。当時、反動派の井伊直弼(なおすけ)が大老となり、開明派官僚を次々と左遷・追放し、また長崎海軍伝習所も閉鎖したが、木村は家柄の良さと温厚な人柄のゆえか、その反動の嵐には巻き込まれていなかった。

咸臨丸の太平洋横断は、虫の息となっていた日本海軍の起死回生のチャンスであり、それを任された木村こそ海軍育成を志す人々のラスト・ホープであった。

軍艦奉行を命ぜられる準備段階として、その2ヶ月前に任じられた「軍艦奉行並」の格は高くなかったが、木村は「海軍の事は当今国家の最大急務にして、余は初めより専心是事に微力を尽くさんとの素志にあれば、毫(ごう)も不足を感ぜず」と言い切っている。

■4.木村の判断

木村がもっとも苦心したのは、乗組員の選定であった。海軍伝習所の教監・勝安芳(海舟)を艦長とし、優秀な伝習生を選ぶことは当然の処置であった。しかし、木村は、同時に老中を通じてアメリカ公使ハリスに適当な案内者を依頼した。本格的な外洋航海を通じて人員を育てるには、良き指導者がいるとも考えたのだろう。

ハリスは海軍大尉ジョン・マーサ−・ブルックを推薦してきた。ブルックは15歳で米海軍に入り、当時33歳のベテラン士官であるばかりでなく、太平洋を2回も横断した米海軍随一の経験者だった。木村と勝はブルックを面接して、その人物、技量を見込んだ。

ブルック大尉はベテラン水兵を中心に10人を引き連れて咸臨丸に乗り込むことになった。日本人だけで航海を、と意気込んでいた乗組員たちは、当初、余計なお世話と反発していた。

しかし、咸臨丸が太平洋に乗り出した途端に、ブルック自身が「こんな時化(しけ)には遭ったことがない」というほどの暴風雨に襲われた時も、彼は冷静に指揮を執り、ベテラン水兵達が真っ暗闇の荒海でも平気でマストに上り、風向きや波のうねりを見て舵をとった。

さらに米人水兵がルールを破って、飲料水を洗濯に使っていたのを見とがめた日本人乗組員たちに、ブルックは「これは共同の敵だから、即刻銃殺してくれ」と言った。その謹厳な姿勢に、日本人乗組員は感激して、以後、ブルックの言に従うようになった。

また、木村は、通訳として中浜万次郎を連れて行くことで、老中の許可を得た。万次郎は土佐の漁師だったが、漂流していた所をアメリカの捕鯨船に救われ、そのまま米国で航海士としての教育を受け、アメリカの捕鯨船の副船長にまでなって、3年間も世界の海を航海した経験を持つ。[a]

万次郎はブルックとも友情を結び、日本人乗員たちとの良き仲介役となった。この2人がいなければ、咸臨丸は暴風雨の中で太平洋の藻屑として消え去ったかも知れない。あるいは、帰りにはブルックたちを下ろして、今度は本当に日本人だけで太平洋を横断したのだが、それほどの技術習得もできなかっただろう。

咸臨丸の乗員が、その後の日本海軍の中心的役割を担っていった事を考えれば、木村の判断が日本海軍の未来を救ったと言える。

もう一つ、木村が優れた人物眼を示したのは、福沢諭吉を乗せたことである。福沢が見ず知らずの木村に会って、従者として連れて行って欲しい、と頼むと、木村はその場で快諾した。福沢の人となりを見抜いたのだろう。福沢はこの渡米経験から、後の文明開化のリーダーとして成長していく。[b]

■5.金の工面

人員と並んで木村が出航前に苦心したのは、金の工面であった。米国が船を出して使節を送り迎えしてくれるのに、なぜ巨額の費用を使って副使のために別の船を出す必要があるのか、という反対が勘定所を中心にくすぶっていた。

その一方で、士官たちは3、4年も長崎海軍伝習所で航海術を学んで腕を上げていても、俸禄は入所の時と変わっていない。その不満を良く知っていた木村は俸禄の増額を請願したが、毫も顧みられなかった。

やむなく木村は、水夫や火焚きも含めて乗員への恩賞と、米国滞在中に日本武士の面目を保つだけの費用を自分で用意することとした。家財道具を処分して3千両を作り、さらに幕府から500両を借りた。100両あれば、土地付きの屋敷が買えた時代である。現在価値で言えば、2桁の億という所だろう。

木村はこの金で、士官や水夫に何度も恩賞を与えたり、サンフランシスコで土産物を買う費用を与えたりした。米国の水兵たちにも十分な謝礼を与えた。帰国した時には、自前で用意した費用はすべて使い切っていた。

幕府からは、別途、邦貨とドル貨が支給されたが、食料品などの経費を切り詰めて、受取額の2割以下しか使っておらず、帰国後に大半を返納している。しかも返納5770両1分31文4分などと、きめ細かく計算している。木村の律儀な性格が窺われる。

■6.「一見しただけで温厚仁慈の風采を備えた人物」

出航前の様々な難題を乗り越え、太平洋で何日も続いた暴風雨・荒波を切り抜けて、ようやくたどり着いた咸臨丸を、サンフランシスコ市民は大いに歓迎した。一つにはアメリカが開国させた日本からの最初の使節を受け入れる、という事は、自分が育てた生徒が成長したという満足感を与えたからだろう。

もう一つは、東部からサンフランシスコに至る大陸横断鉄道がもうすぐ完成し、ここからさらに日本を結ぶ太平洋横断航路が開ければ、同市はアメリカの東洋進出の中心的拠点になる、という期待もあった。

咸臨丸が錨を降ろすと、ただちに新聞記者たちが取材に押しかけてきた。「デーリー・アルタ・カリフォルニア」紙はこう報じた。

<彼(木村)は、一見しただけで温厚仁慈の風采を備えた人物で、40前後と見受けられた。(髷や衣装を整えた後)やがて彼は紳士的な服装で謙恭な態度で現れた。>[1,p101]

日本人は欧米人からは年より若く見られるのが普通だが、木村が反対に10歳も年長に見られたのは、その落ち着いた物腰からであろう。記者たちは咸臨丸を隅々まで見て回り、ブルック等から航海中の様子を聞いて、精しく記事にした。

艦内は「清潔で秩序正しくゆきとどいていた」。水夫たちも「サンフランシスコの支那人より、はるかに教養が高いように思われた」などと報じている。[2,p265]

■7.「こんどは大統領の名前を先に」

3月2日、サンフランシスコ市の正式の歓迎会が催された。当直を除く全員が招待され、市庁を訪れると、17発の祝砲が街を震わせ、周囲の建物の窓ガラスがみな割れるという騒ぎだった。

会場では市の幹部や士官たちと握手したが、室外にも大勢の人がいたので、木村はその人々とも握手させて欲しいと提案して、その後30分も握手が続いた。人々が日本刀と絹の着物に強い好奇心を抱いていたので、握手することでこれらを間近に見せたのである。

次に一行はホテルでの宴席に案内された。ご馳走の山を前に差しつ差されつの賑わいが続いた。頃合いを見計らって、市長が立ち、乾杯の音頭をとった。日本の皇帝と米国大統領、そして日本の提督すなわち木村のためと、3度乾杯した。次に木村が立ち、万次郎の通訳で、提案した。


「今、日本の皇帝のために乾杯していただいたが、その名前が米国大統領の前にあった。こんどは大統領の名前を先に、米国大統領と日本皇帝のために乾杯していただきたい」。[1,p105]

当然、大歓声が起こったに違いない。神秘の国・日本から来た客人が、これほどアメリカ人の心をくすぐるような機転を利かせたことを、市民たちは驚きと喜びをもって迎えただろう。

■8.国際派日本人の先駆け

翌日、咸臨丸は船体修理のため、サンフランシスコの北東40キロほどにあるメア・アイランド海軍造船所へ移った。米側はここでマスト2本の取り替え、帆の新調、ペンキ塗り替えなどの大がかりな補修作業をわずか2ヶ月足らずでやってくれた。

修理が終わって、木村は費用を払いたいと申し出たが、造船所のカニンガム長官は、咸臨丸がはるばる米国まで来てくれた事に対する米国大統領のお礼の気持ちとして、米側が負担するという。結局、サンフランシスコの消防士や船員の未亡人団体に2万5千ドルを寄付する、ということで、ようやく話は落ち着いた。

この修理の最中に、幕府の正使を乗せた米軍艦ポーハタン号がサンフランシスコに着き、咸臨丸を追ってメア・アイランドまでやってきた。米側が正使一行を迎えて、サンフランシスコで盛大な歓迎会をすると言うので、木村は正使たちとともに便船で市内に向かった。

それを見送るポーハタン号の放った礼砲で、たまたま岸壁を通りかかったカニンガム長官が顔面に火傷を負った。サンフランシスコに着いた後、電信でこの事を知った木村は直ちにメア・アイランドに引き返した。

歓迎会はそのまま開催されたが、人々は木村の姿が見えないのを不審に思った。そこでブルックが、カニンガム長官の負傷を気遣って、木村が傍を離れられないために欠席した、と告げると、会場から大喝采が起こった。ここでも木村の振る舞いはアメリカ人に感銘を与えたのである。

日本文学者ドナルド・キーンは次のように語っている。


「咸臨丸が浦賀湾に投錨したのは5月5日であった。長い航海もついに終わったのである。そしてそのことは、今や日本人が船を操って太平洋を横断出来る、という事実を、立派に証明した。

しかし、おそらくこちらのほうがもっと大事なのだが、2百余年にものぼる鎖国のあとにも、木村のような日本人が存在し得た事実をも、それは証明したのである。すなわち外国の土地で、外国人に交じって、日本人としての自己を失わずに易々と、しかも相手に感銘を与えながら振る舞うことの出来た日本人のいたことである」。[2,p281]

江戸時代に日本は世界最高水準の教育[c]と礼節と思いやりに満ちた社会[d,e]を築いていた。その日本文明の粋を身につけていた木村は、そのまま米国でも尊敬される人物として通用したのである。木村摂津守良毅こそ
国際派日本人の先駆けの一人であろう。

■リンク■

a. JOG(252) ジョン万次郎とメリケの恩人アメリカの捕鯨船に救われた漂流少年は、近代術を学び、開国間際の日本に帰っていった。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h14/jog252.html

b. JOG(379) 文明開化の志士、福澤諭吉無数のイギリス軍艦が浮かぶ香港で、諭吉は何を考えたのか。
http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h17/jog379.html

c. JOG(030)江戸日本はボランティア教育大国ボランティアのお師匠さんたちの貢献で、世界でも群を抜く教育水準を実現。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h10_1/jog030.html

d. JOG(506) 花のお江戸の繁盛しぐさ江戸っ子たちは粋なしぐさで、思いやりに満ちた共同体を築いていた。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h19/jog506.html

e. JOG(680) 江戸時代の庶民は幸福だった貧しくとも、思いやりと助け合いの中で人々は幸福に暮らしていた。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h22/jog680.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 土居良三『軍艦奉行木村摂津守―近代海軍誕生の陰の立役者』★★、中公新書、H6
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4121011740/japanontheg01-22/

2. 土居良三『咸臨丸 海を渡る』★★、中公文庫、H10
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4122033128/japanontheg01-22/

◆私が嫌う国語乱すカタカナ語と造語 #3

前田 正晶


和製英語=造語 その2

*イメージチェンジ  makeover、

解説)主語と動詞の順序が入れ替わっているのが特徴で、良くある「単語を並べた形」だ。上手い表現だとは思うが、「誰に対して何を変えるのか」を言わないと。

*ヒーローインタビュー   interviewing the hero、

解説)すでに述べてある。これも単語を日本語の感覚で並べただけという感が深い。主語と目的語を言わないと通じないのが英語だ。

オーヴァードライヴ   outdrive、

解説)これも単語を並べている。ゴルフの言葉である。自分たちの単語帳的感覚だけで作り上げたと解る言葉だ。「オーバーに打った」という意味だろうが「打ち過ぎ」とも取れるのではないか。参考までに "outgrow"と言うと「もうその次元(段階)を卒業した」となる。

*ヴァージンロード   aisle where a bride walks or aisle of
the church、

解説)もうここまで来ると発想の凄さに感心する。如何にもそれらしく作ってある。この造語をハーヴァード出身という漫才師・パックンがテレビで取り上げていたのが面白かった。彼は唯一言”aisle”=「通路」以外無いと。飛行機で通路側を”aisle seat”と言うではないか!

*アフターサーヴィス   service after the sales or aftersales service、

解説)これも語順が違う。だが、意味を上手く表してあり、日本人同士ならば直ぐに解るところが凄いと思う。

*ナイスショット   good shot or excellent shot orbeautiful (golf) shot、

解説)上手く言えないが、こういう場合に使う言葉ではない気がする。"nice" には「心地良い」とか「楽しい」という意味の方が強いだろう。故に "good shot" で良いと思うし、そう言われた、1974年に。

*ガソリンスタンド   gas station or filling station、

解説)何故stationの代わりに "stand" を使ったのだろう?新聞の売店をnewsstand というから、それを真似たのか?

*モーニングコール   wake-up call、

解説)朝の電話と聞けば如何にもそれらしいのだが?外国のホテルでこう言って通じないことはないと思うが「???」となることの方が多くはないか。良く出来た日本語だと思う。

*ランニングマシン   treadmill、

解説)ランニング用のマシンという意味か?だが、これでは「マシンが走っていること」になりはしないか?ランニングスローと同じくらいにおかしい造語だ。だが、これが日本語で戸籍を得ているので、「トレッドミル」と言って解る人もおられる程度の普及率だ。

*ロスタイム   extra time or injury time、

解説)散々言ってきたことだが、lossを形容詞で使ったのだろうが、それならばlostと過去分詞にした方が良かった。だが、それでも英語とは違ってしまう。

*カットソー   cut and sewn、

解説)これなどは初めて見た時には何か新たな編み方の固有名詞かと思った。andを省かれてしまったので、私には何のことか想像できなかった。「縫う」は "sew"というのだ。因みに「カットアンドソーン」である。

*ヴァイキング   Smorgasbord or buffet、

解説)ヴァイキングまたはバイキングは既に日本語になっていると思うが、北欧風の料理の意味でもあるようだ。しかし、Oxfordにはその意味を取り上げられていない。"buffet"を「ビュッフェ」とするのはフランス語だろう。

*ワンコイン         one coin、

解説)全く意味も体も成していないというか、何ものも特定しない一見英語風だ。だが、テレビではほぼ間違いなく「レストラン等で、500円で食べられる食事、特に昼食」を意味すると、視聴者の90%が認識すると疑っている、というか戸籍を得ている悪い例だろう。

何がいけないかと言って、我が国に流通するはコインが1円、10円、50円、100円、500円がある。それなのに「ワンコイン」とだけ言ったのでは、それらの何れに当たるかを特定しない。

しかし、有無相通じる腹芸がある我が国では「500円」と思って貰える。英語というしつこく理屈っぽい言語で重要な点は「言わなくとも解ってくれるだろう」は通用しないのだ。

何度も言ってきたことで、「それで通用しているからそれで良いじゃないか」説は尊重する。しかし、繰り返しだが、「それは英語ではないこと」と「英語にはそういう思考体系がないこと」を覚えておいて貰えれば、これを書いた意図は達成出来るのだ。

*オーダーメード       custom or tailor made、

解説)誂えの服などのことをいうようだが、如何にも英語っぽい造語である。注文生産をそのまま英語にしてみたのだろう。"Made-to-order"という言い方もあるし、"tailor made" という「特別のお好みに合わせて」等という表現もある。

*オッケー OK、

解説)「オーケー」が何故「オッケー」になったか不思議だ。しかも、この方が多用されている。"OK" の語源は“oll korrect”だとの説と“allcorrect”の誤記だとの意見と二つある。以外にも余り上品な表現ではなく、私は万人に勧めない表現だ。何としても使いたければ "all right"と言えと教えられた記憶もある。アメリカ人は "OK" を動詞に使って"OK’d" 等とすることがある。即ち"〜 has been OK’d." という具合だ。

*ハイヒール         high-heeled shoes、

解説)この英語の表現は「こうすれば良いかな」と思っただけで、本当に欧米人が使っているかどうかは保証の限りではない。(失礼)ハイヒールと聞けば誰でも「ハイヒール」を思い浮かべるだろう。しかし、"highheel" だけでは意味を成さないと思う。

*フロントガラス windshield、

解説)見事な造語である。「前にあるガラス」と単語を並べたのだ。自動車の用語も野球用語度と同様に99%は英語ではないのだ。故に採り上げていけば切りがないので、典型的なものを幾つか挙げておくにとどめる。

*ハンドル      steering wheel、

解説)steerとは操縦するとの意味で、そのための輪であり自動車にはハンドルは使わない。自転車ならばハンドルで良いようだが。なお、"steering committee"と言えば運営委員会になる。

*バックミラー rearview mirror、

解説)「後ろを見らー」と語呂合わせになっている辺りに、先人の限りない知恵を見出し尊敬する。リヤカーも同工異曲で、あれは "bicycletrailer" か"bicycle-drawn cart" 等と言うらしいが。

*ベビーカー baby carriage (アメリカ式)、baby
buggy (英国式)、

解説)何でも "car" にすれば良いってもんじゃない。乳母車という古来の日本語は何処に行ったのだろう。


*ブレークする       もしかしてbreakthrough、

解説)嘗て故岡田眞澄がテレビ出演中に、誰かが「大躍進」ないしは「劇的に売れて流行した」と言う意味で「ブレークした」と言ったのを聞いて、「何でそんな言葉を使うの。それは壊れるという意味だよ」と言ったのが忘れられない。

その頃だったか、当方は光栄にも当マンションの有志のご意向を受けて「高級な英会話」とでも言いたい講座を続けていた。その受講者の一人でシニア会(=老人クラブ)の副会長の奥方が「ブレークする」に疑問を呈されたので、「強いて言えばbreakthroughに『躍進』か『進展』や『突破』という意味があるが」と答えた。すると彼女は「それ、頂きで、そのまま“breakする”になっているではないか」と言われて、一同大爆笑で終わったものだった。

*インフル   influenza、

解説)大流行している時に使われるのが昔は「流行性感冒」であり、略して「流感」だったと思う。私には最も気に入らない和製語である。それが何時のことか何のことか直ぐには解らない「インフル」にされてしまった。編集面では4文字に短縮されるのだが。実は英語の略語は"flu"であり、カタカナにすれば「フルー」の3文字である。因みに、普通の風邪は"common cold"とも言う。

*サラ  Sara または Sarah、

解説)近頃花盛りの「キラキラネーム」の中でも「サラ」は多いのでは。ソチ冬季五輪のジャンプで4位に終わった高梨も「沙羅」。近頃の親御さんたちは英語の"Sara"ないしは"Sarah"を素直にローマ字式に読んで「サラ」か「沙羅」のような当て字にしたと推察する。だが、"Sara"はカタカナ語にするのが困難な発音で、「セアラ」か「セァラ」か「セーラ」を混合したような発音になり、最も原語に近いのがもしかして「セィァラ」だろう。これは、"a"と"r"の発音のカタカナ表記は容易ではないことを示している。

因みに、故人であるタレントにSarah Lowellという人がいた。この女性の名前のカタカナ表記は「セーラ」だった。更にこの方の父親はアメリカ人だと聞いている。故に自分たちの発音に近いカタカナ表記を採ったのではないか。高梨沙羅はインターナショナルスクールに通っているそうだから、もしかして"Sara"を「沙羅」とする矛盾に何となく気が付いているのかな、などとおもっている。もしかして「沙羅双樹」から採ったのか。

*リモコン       remote control device、

解説)遠隔操作をする器具のこと。"remote control"だけでは「遠隔操作」に止まってしまう。後ろに器具を意味する何らかの言葉がいるだろう。現実には「リモコン」と言えばテレビ等の器具を指すようになった。面白いことはOxfordには"remote"とは"far away from places wherepeople live"が最初に出てくる。だが、リモコンでは直ぐそこの機器を操作する。

*バイク         bike、

解説)広辞苑にはモーター・バイクが先に出てくるが、普通は自転車を意味すると思う。Oxfordには"bicycle"=自転車となっている。だから「バイクで高速を50キロで突っ走った」と英語で言えば「???」となってしまうだろう。

この項終わり。(続く)

2014年06月15日

◆「尖閣提訴」に6つの利点あり

古森 義久


米アジア専門家が提言

尖閣諸島(沖縄県石垣市)への中国の攻勢がまた一段と激しくなった。毎週のような日本領海への侵犯に加え、最近では戦闘機の異常接近などの軍事的威圧も増してきた。

そんな状況下、尖閣問題を長年研究してきた米国のアジア政策専門家のラリー・ニクシュ氏が、現状では日本がますます劣勢になるとの認識から、日本政府はこの問題を国際司法裁判所(ICJ)に提訴すべきだという提案を公表した。同氏は米議会調査局のアジア専門官を長年務め、いまはワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員である。

日本政府は、尖閣は日本固有の領土であり、紛争はないとの立場から国際提訴に反対する。だがニクシュ氏は、提訴方針の表明が日本を大きく利すると説く。同氏は尖閣問題で日本の主張の正当性を暗に認めてきた研究者だけに、その新提案は紹介に値するだろう。

同氏は、中国の尖閣領域への浸透が軍事衝突を招く危険が日に日に増していると警告したうえで、日本のICJ提訴はそんな情勢を一気に変えうるとして、日本にとっての提訴の利点を6項目あげた。

第1には、提訴表明は尖閣問題での米国全般、とくにオバマ政権の対日支援を強化する。国際紛争の平和的解決はオバマ大統領の主要政策であり、日本の国際機関裁定の求めはそれに合致する。中国がそれでも軍事攻撃に傾けば、米国の日本防衛もより確実となる。また、歴史問題での米側の対日留保も日本の国際提訴で減るだろう。

第2は中国がICJ裁定を拒むことは確実で、その結果、国際社会での中国非難がさらに高まる。中国は領有権問題で2国間交渉だけを求め、フィリピンの国際海洋法裁判所への提訴も撤回を激しく要求した。日本提訴の拒否は中国が歴史を利用してグローバルに展開する反日プロパガンダの効果をも大幅に減殺する。

第3に、提訴は中国の日本に対する軍事力行使の抑止を増大させる。裁定拒否により外交的に孤立する中国が軍事手段に走った場合の米国や欧州、東南アジアの反発は大幅に強くなるという見通しが、中国の軍事行動にブレーキをかける。

第4には、日本自身の尖閣防衛のための軍事力増強をより容易にする。中国が国際調停を拒んで軍事攻勢の姿勢を強めれば、日本の国内でも米国でも日本の防衛力強化への支持が増す。

第5には、東南アジア諸国、とくにフィリピンとの対中連帯を強化できる。フィリピンの提訴に対し国際海洋法裁判所は第三国の意見を求めており、日本がこの役割を果たせる。他の東南アジア諸国との海洋協力や戦略提携も容易になる。

第6には、提訴は日本の法律面での対外姿勢に整合性をもたらす。日本政府は竹島問題ではICJの裁定を求める構えを示したが、韓国側が拒んでいる。尖閣では国際裁定を拒否する日本のいまの政策は一貫性に欠けるという指摘もある。

以上の提案をするニクシュ氏は、日本が尖閣問題で中国の激しいプロパガンダ攻勢に押され、後退していると警告する。そのうえで、日本にもプロパガンダ性を有し、相手の弱点を突く抜け目なさや厚顔さを含む「スマート(賢明)外交」の開始を提唱するのだった。(ワシントン駐在客員特派員)産経ニュース[緯度経度] 2014.6.14


◆「核」が日中開戦を抑止する(37)

平井 修一


尖閣諸島の領有権「棚上げ」合意について日本政府はこう言っている。

<我が国の立場は一貫しており、中国との間で尖閣諸島に関する「棚上げ」について合意したという事実はありません。この点は、公開済みの外交記録等からも明らかです。

また、中国が1992年に尖閣諸島を中国領土と記載した領海法を制定したことや、2008年以降、公船を尖閣諸島沖に派遣して領海にも度々侵入するといった力による現状変更を試みていることは、「棚上げ」合意が存在したとする中国自身の主張ともそもそも相矛盾するものです>

一色正春・元海上保安官は、尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件において、一身を賭して映像をYouTubeへ投稿した憂国・愛国の志士である。氏は「中国の狙いは尖閣だけではない」と、こう書いている。
・・・

日本政府は「尖閣諸島は日本固有の領土で日本が実効支配している」と繰り返し述べているが、自国の国会議員が慰霊祭のために上陸の申請をしても、行政区の首長である石垣市長が固定資産税の調査のために上陸の申請をしても認めない。

東京都が島の買い取りのために調査を行いたいと上陸の申請をしても許可しない。普通、最終買い取り価格がいくらになるかは分からないが、少なくとも何億円かの買い物をする際には十分すぎるほどの調査を行う権利があるはずなのに、日本政府は、それすら認めないのである。

それだけではなく環境保護団体が尖閣諸島にしか生存していない動植物が絶滅の危機に陥っている可能性が高いので調査をしたいと言っても上陸させない。中国に遠慮しているつもりなのか、人間の事情で地球の財産が無くなりそうになっているにもかかわらず、何もしないのである。

かたや中国人が日本の領有に抗議するために、あらかじめ「不法上陸を行う」と宣言しているにもかかわらず上陸を許してしまう。

正当な理由で日本人が上陸しようとしても許可せずに、中国人は犯罪の嫌疑があるにもかかわらず上陸させる。これでは、この島が他国の人間の目には、どちらの国の島だと映るだろうか。

これで本当に「日本の領土である」とか「実効支配している」などということが言えるのだろうか。

確かに尖閣諸島周辺海域には海上保安庁の巡視船が数隻配備されているが、現実には日本政府の命により中国船に対して国内法を執行することは難しく、言わば日本が尖閣諸島を実効支配しているという言い訳のために配備されているといっても良いくらいである。

今は、まだ中国も漁業監視船などの公船が尖閣諸島付近海域を定期的に巡回するだけだが、今後、彼らの装備が充実してくれば日本と同様に漁業監視船や海洋調査船などの公船を配備してくるであろう。

そして、船の数において日本を上回るようになれば、南シナ海のように実力行使に及んでくる可能性が高い。そうなったとき、日本が尖閣諸島を実効支配しているという根拠が、同海域への海上保安庁巡視船の配備だけであるとするならば、日本の主張は成り立たなくなる。

そうなる前に、巡視船の配備だけではなく、他の平和的な方法で日本の実効支配を強化しなければならない。・・・

(東シナ海ガス田問題では)現状、日本が大幅に譲歩した合意すら守らず、中国が、これ以上日本を無視し続けるのであれば、日本も中間線より日本側で開発を始めるべきである。そうしなければ東シナ海は中国の思惑通り中国の海となってしまいかねない。・・・

日本政府は中国との国交樹立以降、東シナ海において中国に対し、ひたすら譲歩を繰り返してきた。その結果、美しい島は荒れ果て、宝の海を失い、日本人の誇りまで失いかけている。

これ以上譲歩すれば東シナ海のすべてを失うだけではなく、沖縄や西太平洋まで中国に押さえられかねない。そうなってしまえば、現在、国内で消費する食料やエネルギーの大半を、外国からの海上輸送に頼る我が国は、中国にその生命線を握られたも同然である。

尖閣諸島の問題は、アメリカに対して日米安保の発動を期待するのではなく、自国の立場を鮮明にさせるべきである。

他にも日本がすべきことは、南シナ海で中国の侵略に苦しむベトナム、フィリピン、インドネシアなどの国やインドとの協力体制を築くことである。

更に、ウィグル、チベット、南モンゴルなどに対する侵略行為を糾弾し、現在、各国(各地)で行われている人権を無視した圧政を止めさせなければいけない。日本が中心となり、各国が互いに連携し国際社会に訴え、中国に国際法を守らせる努力を怠るべきではない。

そして何よりも、我々日本人が自国の領土領海は自分たちで守るという当たり前のことを自覚し、実践していかねばならない。これは、ごく当たり前のことなのであるが、平和ボケした日本人には辛い道のりかもしれない。

今後、日本が中国の言いなりにならなければ、一昨年の漁船体当たり事件の時に見せた中国の横暴や日本の国内外からの圧力が今後も繰り返されることが予想される。

我々日本人は、それに対して耐え抜く覚悟が必要である。今を生きる日本人として、後世、我々の子孫に恥ずることのないよう、日本の領土や誇りを守っていかねばならない。尖閣を守るという事は、沖縄全土や東シナ海を守るという事であり、それは日本を守るという事なのである。(以上)
・・・

日本政府の「尖閣“実効支配”の虚妄」を危惧するいい論考だ。安倍は尖閣に日台の漁民も利用できる港を作り、レーダーを置き、オスプレイおよび垂直離着陸戦闘機用のヘリポートを整備し、ミサイルを配備する。旅順要塞並の鉄壁の防備をすべきだ。“実効支配”とはそういうことだろう。

国防のお役に立ちたい、靖国に祀られたいというヂイヂはいっぱいいる。資金もネットで募ればいい。中共に遠慮していればベトナム、フィリピンのように襲われる。先手必勝で臨むべし。(2014/6/13)

◆天安門事件とヒマワリ学運

Andy Chang


6月4日は天安門事件の25周年記念日だった。89年4月に胡耀邦が亡くなったことを追悼して始まった学生運動はやがて政府の汚職追放、言論自由や政府の腐敗に対する抗議運動となり、一時は百万人が天安門に集まったが、6月4日にトウ小平の武力鎮圧令で軍隊が発砲し大量殺戮となった。学生運動の指導者たちはやがて出国し、中国政府に対する抗議運動は世界に広まった。

あの時から25年経って中国の汚職、政府の腐敗、言論自由は少しも改善していないばかりか25年前より酷くなっている。

天安門事件から25年経って、今年3月に台湾ではヒマワリ学運が起きて政府の民主化、独裁反対、中国統一反対を主張した。台湾でも主張は同じく反腐敗、反汚職、反独裁である。台湾の民主化運動はまだ始まったばかりだが、人民の抗議で独裁を民主化し、汚職腐敗追放は出来ない。天安門事件が証明している。

●習近平の「反貪腐」は尻つぼみ

習近平が就任してまもなく反貪腐(汚職反対)を唱え、虎も蠅も叩く(蒼蠅、老虎、一起打)と宣伝した。だが、周永康はまだ起訴されていないし、薄熙来は無期徒刑の判決を受けたけれどその後の動向が不明である。習近平は司法の公正を強調したが大きな事件(虎)と言えばこの二つだけ。汚職官僚は何十万人も居るはずだ。

共産主義革命とは労働者と金持ちの階級をなくし、人民の平等と富の再分配を推進するはずだった。毛沢東は「黒五類」(地主、富農、反革命者、破壊者、右派)を追放する文化大革命を推進したが、結果として権力が高級官僚に集中し、官僚腐敗は更に酷くなり、貧富の格差は毛沢東時代、89年の天安門事件時代よりもっと酷くなり、今では貧富格差は世界一と言われる。

人民の暮らしを改善する革命が、清朝や明朝、それ以前の皇帝政治時代より酷いなら民主自由は中国人に通用しないのかもしれない。習近平が汚職追放、官僚腐敗追放を唱えても「中国人の性根」を叩きなおす事は出来ない。

●ヒマワリ学運と中華民国独裁

台湾で起きたヒマワリ学運は天安門事件と同じように学生運動で始まったが、人民の高い支持があり、国民党の腐敗と馬英九の独裁に反対する声が高い。

3月の立法院占拠は幸運にも二階の窓が開いていたので学生が立法院内に侵入して大門を開き、会議室を占拠することが出来た。だがこの次の抗議では相手も十分に警戒しているから街頭座り込みをするしかないだろう。50万人のデモがおきても独裁政権が慌てて民主化するかは大きな疑問だ。

天安門事件から25年経っても中国の汚職と腐敗は悪化する一方で、学生の抗議運動は何の効果もなかった。独裁体質を変えるなら人民の総決起が必要だ。

●独裁政権の民主化

天安門事件とヒマワリ学運は両方とも大衆運動である。彼らが求めているのは政府を倒すことではなく、独裁政権が民主化し、汚職と腐敗を改善することだ。これは不可能である。

抗議だけで独裁は改善しない。天安門事件から25年経ってようやく民衆運動で腐敗した政治構造を改造するのは不可能とわかったのである。ヒマワリ学運も同じ運命を辿るかもしれない。

ニューヨークに住む評論家・曹長青は、「中国が民主化するには共産党を倒さなければならない。学生運動が共産党と対話をするのは共産党の合法性を強化するだけだ」と喝破した。曹長青は「中国にはまだ健全な行政体制が残っているから、共産党独裁を無くせば中国はよくなる」と言う。私は中国の行政体制に疑問を持っているし、汚職体質は共産党だけではないのは中国の歴史が証明している。

行政体制とは人間が作ったものである。中国4千年来の汚職腐敗は人間性と中国古来の文化によるものである。中国と同じく台湾に於いても中国人が政治を牛耳る限り民主化は望めない。国民党も中華民国も追放すべきだ。

だが民進党の主張は、国民党と民進党の二党政治で汚職腐敗を追放し民主政府を創ることである。中国人が台湾の政治に関与する限り民主化は出来ない。台湾人の国創りを推進するべきである。

●チャイナ・シンドローム

台湾人には中国人を恐れる心理があるから中国人と平和共存を云々するのである。メディアが中国を「中国」と呼ばず「大陸」と呼ぶのは台湾も大陸の一部と見なしている心理である。台湾の政治関連ニュースは中国のニュースと在台中国人のニュースが大部分で、外国のニュースは殆どない。台湾人は毎日のように中国関係のニュースに汚染され、「中国人恐怖症」に陥っている。

台湾人の論客は台湾独立を主張する代わりにチベットや東トルキスタンの独立を応援する。台湾独立を言う勇気が無いから他人の独立を支持する言論を発表するのだろう。

中華民国は蒋介石率いる中国人が台湾に流亡して作った政権である。中国人が台湾に流亡して65年経っても「外省人」と称し、台湾人ではないと主張している。台湾で生まれた彼らの子孫も「外省人」を名乗っている。そして外省人が中華民国政府の最高階級を占めているのである。諸国は中華民国を認めないから彼らは「タイワン」と称して台湾人を統治している。

台湾人ではない外省人が台湾を統治している限り独立は出来ない。外省人の政府に台湾の民主化を抗議しても無駄である。中国人を排除しなければ独立はできない。ヒマワリ学運の若者たちも天安門事件からこのことを学ぶべきである。



◆健康食品・サプリメント表示規制緩和

馬場 伯明


同級生会の冒頭の挨拶で「今日は病気自慢と子供(孫)自慢はやめよう」と言ったら「それじゃ、話すことがない」とブーイング。病気自慢(体験談)や健康食品・サプリメントに詳しい「にわか博士」がぞろぞろだ。

政府が「健康食品・サプリメント」(以下「サプリ等」という)の表示規制を緩和しようとしている。アベノミクス「第3の矢」の課題の一つらしい。客観的な科学的根拠がなくても「その『効能』を表示できる」と閣議決定した(2013/6)。

私はこれに反対である。経済の規模が拡大しても、大きな意味での国民の健康のためには「百害あって一利なし」であろう。よい効果があるかないかわからないものを効果があるように表示して売られてしまう可能性が非常に高い。

「・・・あなたが十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう」(ナチス・ゲッペルス宣伝相・いわゆる「ウソも百回言えばホントになる」)。今、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・WEBサイト・・・では、サプリ等の宣伝(CM)の大洪水である。

深夜0:00〜04:00〜のテレビの放送を見る。あらあら、芸能人が笑って膝をぐるぐる回している。あるサプリの「効能」の暗喩だ。事実でなくても高齢者らは画像にコロッと参る。「オレオレ詐欺」よりたちが悪い。

サプリ等の「(括弧つきの)効能」を視聴者の頭に刷り込むために反復CMが延々と流される。しつこい。TV会社はCM料さえ貰えればその中身は不問でいいのか。

サプリ等企業は社員の自社サプリ等商品の購入実績(数字)を公表すべきである。なぜなら、他人に購入を迫っているが(「事実」を知る)社員の使用は案外少ないのかもしれない。

代表的な企業であるサントリーウェルネス(株)は商品毎の社員の購入数と購入率を自ら公表してほしい。川崎益功社長(サントリー〈株〉常務執行役員兼務)は自社のサプリ等商品をどれだけ摂取しているのか。その結果、川崎社長はどんな立派な身体を得、健康を維持しているのか。健康診断結果も見せてほしいな。

はっきり言えるのは、サプリ等企業の商法は明らかな「脅迫ビジネス!」であるということだ。健康や体調に弱みがある人の不安につけ込み、その不安を助長し、騙し、脅し、賺(すか)し、巧妙に洗脳する。

現状は規制が厳しくてもあくどいCMがある。サプリ等の表示規制が緩和されたら、専門知識がない高齢者らは(さらに騙され)不要不急の商品を買わされてしまう。刈り取りは野放しであり容易い。サプリ等企業の高笑いが止まらない。

TVでCMが繰り返される。深夜00:00から04:00までの民間TVを見たことがありますか。サプリ等商品のCMを「これでもか!」と流している。寝付きが悪い高齢者らが主なターゲットとされ犠牲者になる。

朝日新聞が書いている(2014/6/11)。《健康食品 狙われる高齢者 嘘の効果 仕入れ値の70倍 名簿買い電話攻勢 甘い規制・・・野放し》であると。でも、朝日は同紙に似た商品のCMは載せている。記事とCMの担当部署が別なのだ(笑える)。

最近「皇潤」のCMが少ない。どうしたのか。八千草薫(83歳)の膝の具合が悪いのか。かつて三国連太郎(故人)はCMで使い捨てられた。

新聞に漫画が載っている。あれっ、あの「やくみつる」だ。「うるさい・・私が『いい』と言うのだから、信用してください。シジミ成分のオルニチン(協和発酵)」だと(2014/5/20朝日新聞)。では、草野仁(70歳)はどこへ行ったのか。体調が悪いのか。70歳でお役御免なのか・・・

新聞のCM欄の端っこに小さな文字がある。「個人の感想です」「『効能』を保証するものではありません」。そのCMの表示に客観的な科学的根拠はない。表示規制が緩和されたら善良な人々は確実に騙される。

現在サプリ等の市場は約1兆5千億円、2倍以上の潜在市場があるという。しかし騙しの商売ではダメ。それを助長する政府の偽っぽく安易な表示規制緩和はもっとダメだ。合法的な「詐欺」がはびこることになる。

親しい友人が言った。「じつは、こっそり飲んどるんや。精がつく言うねん」。酒の席だったので「そうか」と応じ、後日「あれは要注意!」とメールした。「魔法の水や飴玉」などは落ちていない。高名な知性の人も自分の健康のことになったら、赤ちゃん同然なのだ。

別の知人は毎月3万円もサプリ等を摂取しているという。効果はまずまずと言い、自らは否定しない。したくないのだ。あの「オーム現象!」であり、サプリ等企業に完全に洗脳されているとしか思えない。

健康のために重要なことはサプリ等の摂取では断じてない。バランスがとれた食事・運動・睡眠こそ本質的に必要である。さらにそれを遂行する精神と気力の安定が大切である。太古の昔からそうなのだ。

ボケることなく長生きした父(94歳)と母(93歳)から強い体をもらった。ありがたいこと。近く古稀を迎えるが、物心がついて以来入院したことがなく、薬は今も何も飲んでおらず、サプリ等も摂取していない。

BMI=26で「少し太め」以外は健康診断の数値はオールA。胃・腸・肺などの画像検診結果も正常である。飲酒は年365日やっている。

ところで、ある日突然、病気になったら私の考えは変わるだろうか。いや、変わらないだろう。厳しい検証がなされていない健康食品やサプリメント等を安易に摂取する気はない。

結論。基本的にサプリ等は必要不可欠ではない。要は、自然な食事とうまい酒があればいいのである。そして、そのような普通の食事を日々供してくれている妻に心から感謝している。

終わりに・・・、以上は「私見」である。他人に自分の考えを押し付けるつもりはさらさらない。自分の身体と健康は自分の責任で守らなければならない。(2014/6/14千葉市在住)


◆私が嫌う国語乱すカタカナ語と造語 #2

前田 正晶


和製英語=造語:

私はこれから採り上げていくカタカナ語と造語の99%は本当の英語ではないか、誤って使われていると言って誤りではないと思っている。故に外国人と英語で話をされる際には十分に注意される方が良いと申し上げておく。


中には素晴らしい造語もあるが、時には何とも不可思議で且つ面白いなと興味を引く例もあって、それを発見するのが楽しみである。本論に入る前にその面白い例を挙げてみる。

26年前まで住んでいた藤沢市に ”Hand Made Coffee Shop” という看板を掲げた小さなコーヒー屋さんがあるのを発見したことがあった。(現在では店名を変更している)これは「手作りのコーヒーを売る店」で喫茶店ではないことは外から見ても直ぐに解った。だが何処か違和感がある英語表記だった。

何故かと言えば、これでは「コーヒー・ショップ」を手作りしたことになると思ったのである。"handmade"には「手作り」の意味はあるが、それは主として家具や衣服などの用いられる表現なのだ。そこで、これを英語にしてみようと思ったが、意外に難事業だった。

おそらくこの店主が言いたいことは「コーヒー豆を自らの手で炒めて挽いていること」なのだろうが、これを全部訳すと”We roast and grindcoffee beans ourselves here.”とでもなるのだろうか。

だが、こんなに面倒なことを言わなくて”Hand Made Coffee”だけで十分だったとすら思う。因みに、スターバックスもタリーズも "handmade ではなく ”handcrafted” という言葉を使って「手作り」を表している。私ならば大きく”Handcrafted Coffee”という看板を掲げその前に小さく”Enjoy our”と書いただろう。

造語:

*フリーサイズ      one size fits all、

解説)これなどは傑作の一つに入れて良いと思う。「フリー」は確かに「自由に」の意味もあるが、英語では "free" は"admission free" のように入場無料の意味で使われる。この例のように、どの大きさにも合わせられるという意味で使う発想は凄いと思う。

これでは「無料のサイズ」となるのに「誰にも合うサイズ」と解ってしまう受け手の側の直感力もまた素晴らしい。なお、「フリー」は以下に続いて取り上げるように、割合にフリーに使われているようだ。英語の意味は「一つの大きさで誰にも合う」とでも訳しておこうか。

*フリーライター freelance writer、

解説)これも単なる一例。上記のようにフリーランスとするべきだったが、freeだけが残ってしまったと解釈している。思うに”lance”という単語が難しかったので、つい省いたのだろう?フリーアナウンサーも同類。

まだまだある。

*フリーダイヤル toll free dial、

解説)何処かのテレビ通販のCMが聞こえて来そうだ。ここでは "toll" と言う見慣れない言葉が面倒だと思ったのか「省く」ことにしてしまったのだろうと解釈している。因みに、日本では "0120" だが、アメリカでは”1+800” である。これを覚えていても案外アメリカでは使うチャンスは少なかった。私は22年間に2回ほど使ったかな?


*フリーマーケット flea market、

解説)これも傑作である。本来は”free”=「自由」の意味ではなかったのである。このスペルは "flea” であって蚤のこと。この由来は「のみの市」だったらしい。"r" ではなく "l"(エル)なのに、カタカナ表記にすれば発音が「フリー」になるので、何となくfree なmarketのような感覚で捉えていないか?

*フリーバッテイング batting practice、

解説)これはオマケである。野球用語はカタカナ語の宝庫であり余りにも多いので採り上げる気はないが、例外的に一つだけ入れておく。自由に打って良いのか無料で打って良いのか知らないが、自由な発想で作り出されたものと感心している。

野球用語(カタカナ表記のもの)で、本当の英語と連動しているものは数えるほどしかない。高校野球の中継でも、アナウンサー諸氏は何ら躊躇うことなく「速球」または「直球」を「ストレート」などと声高らかに言っているが、あれは歴とした日本語である。英語では”Fast ball”である。

大体からして「投球」は「球」ではないのだから、アメリカ人は”pitch”と言う。”Here comes the pitch.”のように。なお、deliveryも使われることがある。

*オープンカー convertible or soft top、

解説)見た目で決めたか?コンバーティブルはカタカナ表記しにくいし、発音も困難と思ったのか。言葉の誤用に入れても良いかも知れない。

*オープン戦 exhibition game、

解説)主にプロ野球でシーズン前に行われる試合である。「オープン」で置き換えられた "exhibition" が発音しにくかったのか?これも立派な日本語であると思う。アメリカで "practice game" と言うのを聞いたこともあったが。

*ボディーチェック     body search、またはsecurity check、

解説)確かに身体をチェックするのだが、searchの代わりに「チェック」を使ったのは単語帳的知識の適用ような気がする。最近は身体だけではなくベルトや靴までチェックされている時代にはそぐわない造語だ。なお、"security" の発音は断じて「セキュリティ」ではない。辞書を引いて発音記号を見よ。

*プライベートブランド      private label、

解説)”private”という言葉は勝手に使われていることが多い。寧ろ誤用されていると言った方が正確かも知れない。だが、ここに挙げた例などは明らかにbrandの意味までをはき違えていると思う。ここは "label" なのである。屡々使われている略語の "PB" ではなく"PL" とせねばならないのだろう。だが、これだとProduct liability=「製造物責任」と混同されないような配慮があったのか?まさか。



“private”=「プライヴェート」をテレビに登場する芸人やアナウンサーたちが「私生活」のつもりで使っている。彼らが外来語を使って格好良く見せようとするのかどうか知らぬが、privateをどのような辞書で探そうと、外国人がどう言うかを聞こうとしても、そんな意味はない。

「私」に当たる言葉は"personal" であって "private" ではない。どうしても「私生活」と言いたければ”personal affair or life”であろう。

なお、”privacy”は”Webster”によれば "the condition of being apartfrom company or observation" とされている。即ち、「私生活」のことではあるまい。これは飽くまでも日本語であると知るべし。余談だが、外国人が持ち物にイニシャルを入れて個人の持ち物であることを示している。日本語では「お名入れ」だが、これは”personalization”と言われて
いる。

*ピットイン   pit stop、

解説)このように "in"と"out"、"up"と "down" を恣意的に使っている造語が多いのもカタカナ語の特徴であると思う。イメージアップ、イメージダウンもその例になると思う。

*ゴールイン   finish or reach the goal or break the
tape、

解説)これも上の例と同じだが、ゴールアウトと言わないのは何故だろう。

*メインバンク      main financing bank、

解説)昔は「主力銀行」と言っていなかったか?これなどは遍く用いられていて如何にも英語らしい。だが、そうではないので要注意だ。アメリカにはこういう観念というかシステムがないと聞いた。であるから、ここに掲げたものは所謂「意訳」である。

これは本来は”The main bank”とすべきなのだが、それを見たアメリカのビジネスパーソンは”Central bank”、すなわち「中央銀行=日銀」のような意味に取った。面白いが困った現象ではないか?

*スケールメリット    advantage or economy of scale、

解説)これも良くできた造語である。良く「単語」を知った人が単語を並べた結果で出来たものと考えている。「メリット」をここに持ってくる知識があれば、何とか意訳ができたはずだと思う。”merit”とは何か褒められ、賞を貰え、崇拝されることを指すと思う。

この項はまだ続く)

2014年06月14日

◆中国軍が「孫子実践」とは思えない

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年6月13日(金曜日)弐:通巻第4266号> 

 〜中国の硬軟戦法、外交的に敵の分断作戦は「孫子の兵法」だが
  海洋進出の傲慢姿勢をみると中国軍が孫子を実践しているとは思えない〜

孫子はこう書いた。
 
「最良の策とは敵の謀略を看破して心理的ダメージを与え降伏させることであり、次の策は敵の外交関係を分断し孤立化させることによって降伏させることだ。下策は、敵軍を、軍隊を投入し破ることである。「攻城戦」は「下の下策」。したがって攻城戦は止むを得ない場合にのみ行なうものである」

中国はいま、伝統的な「孫子の兵法」を用いて、ベトナム、フィリピンには軍を投入し、米国には謀略でそのアジア戦略を打ち負かそうとし、対日外交では心理戦・宣伝戦・法廷線を駆使し、日本の精神的勃興を食い止め劣位においたままにしようとしている。

つまり対米、対日、対越対策で、中国はそれぞれが異なって策略をもって当たっている。

こう分析するのは香港紙『東方日報』(6月9日)のコラムで表題に「中美伐謀、中日伐交、中越伐兵」とある(「中美」は米中の意味)。

だが中国のやり方を日米越はとうに見透かして、対応しているのではないのか。

国際情勢は日々刻々と変化し、複雑に絡み合い、三国志や戦国春秋時代のような地政学は適応できず、情報の独占も操作も根底から怪しくなってくれば、謀略も策略も十全には機能しないことのほうが多い。

中国は米国の戦略変更、すなわち、『アジア・リバランス』を破壊させようとして、『新しい大国関係』なる曖昧模糊とした語彙を用いて外交攻撃をしかけた。しかしオバマ大統領はだませても連邦議会は承伏せず、国防費は削減されるといえどもアジアへの艦船投入計画に変化はない(「リバランスは米海軍艦船の60%をアジア太平洋に投入する」。
 
米国は日米同盟を強化、フィリピンと安保条約を改め、韓国駐留軍を投げ出さず、ベトナムへは軍事的てこ入れを強化しようとしている。

中国が「養光韜晦」(力を蓄え、それまでは本音を隠せ)を止めて、2007年あたりから覇権への野心を剥き出し、外向的に傲岸不遜になった。その反動として日米の警戒が強まったのだ。


▲中国がいう米中「新しい大国関係」の虚実

『新しい大国関係』とは「G2」に象徴される大がかりな構想だったが、すでにヒラリーは国務長官時代に「G2は存在しない」と高らかに否定し、ヘーゲル国防長官は中国の秩序破壊に不快感を露骨に表明し、「いかなる現状変更にも反対する」とした。

安倍首相は世界各地で「国際法を遵守し、海洋ルールを守る。力による一方的な現状の変更には反対する」と演説し、肯定的に捉えられた。

中国が狙った戦略的な日米分断はかえって逆効果となって、日米同盟進化をいう局面をむかえた。

離島奪回共同作戦、三沢基地への無人機配備、オバマ訪日では「尖閣は安保条約の守備範囲に含まれる」とした。

中国の「伐謀」は途中で見透かされ、頓挫した。

シンガポールで開催されたアジア安保会議(シャングリラ対話)では、中国が四面楚歌の状態で批判の嵐に直面した。中国軍人らは開き直り、傲慢すぎるという印象を世界に与えて孤立した。

つまり中美(米中)関係は壊滅へ向かって走り出した。日本が孤立したのではなかった。いや寧ろ初めて首相が参加した「シャングリラ対話」で、安倍首相には基調演説の機会が与えられたのだ。

アセアンはカンボジアを除いて反中国を鮮明にし、急速に緊密化をつよめてベトナムとフィリピンは日本に近づいた。

欧米でさかんに日本の悪口を言い歩いても、直後に欧州歴訪した安倍首相は暖かく迎えられ、中国の援助を享受してきたアフリカ諸国も、日本で開 催されて日本アフリカ会議にこぞって出席した。

このため対日姿勢を露骨に強めて尖閣諸島強奪の軍事訓練をみせたうえ、突発的な防空識別圏を宣言した。

これら身勝手な中国の動きに日米は共同で対抗し、自衛隊機への異常接近も、それで期待した中国国内におけるナショナリズムへの傾斜は起こらず、種々の行動は目的達成にはるかに及ばず、寧ろ日本にかってない緊張感と危機感をもたらした。なべて策略は裏目にでて中国の孫子の兵法は蹉跌した。
 
   

◆男系を堅持し皇統の危機克服を

大原 康男


5月27日、宮内庁は高円宮家の次女、典子女王のご婚約が内定したと 発表した。典子女王は大正天皇(第123代)の曽孫(ひまご)にあたら れ、女性皇族が結婚で皇籍を離れられるのは、平成17年に結婚された天 皇、皇后両陛下の長女、紀宮清子内親王(現、黒田清子さん)以来のこと であり、また、天皇の曾孫以遠の女性皇族である女王のご結婚は戦後初めてという。

お相手は出雲大社禰宜(ねぎ)の千家国麿(せんげくにまろ)さんである。千家家は代々出雲大社の宮司を務める名家で、今の宮司の長男である国麿さんも、いずれ宮司を継ぐべき責務を負っている。

これまでも公家か ら千家家に嫁がれたことはあったが、皇室からの初めてのお輿入(こし い)れに現地の喜びは一入(ひとしお)のものがあり、全国的にも9年ぶ りの皇室の慶事に各地から祝福の声が沸き上がった。

 ≪惜しまれる桂宮さま薨去≫

ところが、それから10日ちょっとたった今月8日、今度は皇室のご不 幸が出来(しゅったい)した。典子女王の伯父にあたる桂宮宜仁(よしひと)親王が薨去(こうきょ)されたのである。

宜仁親王は三笠宮崇仁(たかひと)親王の次男で、昭和23年2月11日、建国記念の日のお生まれ −いや、建国記念の日の前身である「紀元節」がGHQ(連合国軍総司令 部)の圧力で廃止されたのはこの年の7月だから、最後の「紀元節」の日 のお生まれということになる。享年66というまだまだ惜しまれる急逝 だった。

生前は日・豪・ニュージーランド協会、大日本農会、大日本山林会など多くの公益団体の総裁ないし名誉総裁に就任され、昭和末年に罹(かか)られた難病を4年以上に及ぶリハビリによって克服、後遺症をものともせず、車いすに依りながらご公務をこなされた姿をテレビや雑誌のグラビアで記憶している人もいるだろう。

さて、宜仁親王の薨去によって皇位継承権を有する男子皇族は5方となってしまった。そのうち崇仁親王は98歳というご高齢だ。小泉純一郎首相の下で拙速に進められようとしたものの、悠仁親王のご誕生によって沈静化した感のある皇位継承に関わる論議が再び活発化することは十分予想される。さらに、典子女王の皇籍離脱によって両陛下のご公務をお助けする皇族方のご負担が増すことについても言及されよう。

 ≪悠久の歴史をふまえて≫

そこで、何よりもまず、議論の前提として確認しておかねばならないのは男系主義の原則である。周知のように小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」の報告書(平成17年)の眼目は、(1)皇位継承の資格を女子や女系天皇に拡大すること(「女系導入」)(2)皇位継承の順位を男女問わず年齢順にすること(「長子優先」)であった。

たしかに、歴史上、女性天皇(女帝)は10代8方おられるが、いずれ も男系(父方を通して皇統につながる)に属され、その大半は年少の男性皇族が即位されるまでの「中継ぎ」としての性格が強く、かつ、ご在位中は独身であられて天皇の配偶者(欧州の王室に見られる「王配(コンソート)」)など一度も存在したことはない(もっとも、男系であっても、女性天皇には生理上の理由から天皇の最も重要な本務である祭祀(さいし)面に支障がでることはあるが)。

このような男系主義による皇位継承があってこそ、天皇による国民統合の精神的権威が担保されてきたのである。したがって、前記「有識者会議」の提言はわが国悠久の歴史を根底から覆す革命的な発想といわねばなるまい。

 ≪旧皇族復帰で宮家を拡充≫

もちろん、対案はある。何度も繰り返し述べてきたことなので気がひけるが、昭和22年10月14日、連合国軍の軍事占領という異常事態の下で、GHQの経済的圧力によってやむなく皇籍離脱をされた元皇族ないし、そのご子孫の中から適切な方に皇籍を取得していただくという方策である。

まさしく傍系から皇位継承を支えてきた宮家を拡充することによって男系主義に則(のっと)った皇位継承の安定性を確保しようとするものであり、限られてはいるが過去に前例がある。そのうち皇位に即(つ)かれたのは宇多天皇(第59代)と醍醐天皇(第60代)のお二方である。

このようにして宮家の拡充が実現できれば、もう一つの課題である両陛下のご公務に対する皇族方のご分担の問題も同時に解消されよう。平成24年に野田佳彦首相のときに提唱され、有識者ヒアリングまで実施された「女性宮家」構想など無用の議論であったことをふと想起する。

かつて本欄でも指摘したことだが、「皇室の活動を安定的に維持し、天皇皇后両陛下のご公務の負担を軽減していく」ために、「皇位継承とは切り離し」て「女性宮家」を創設しようとするのは矛盾も甚だしい。皇位継承と無関係な「宮家」など端(はな)から議論に上りようがないではないか。

小泉首相の後継者となるや、直ちに「有識者会議」の提言を事実上白紙に戻した安倍晋三首相に切に望む。今日の皇統の危機を克服するための新立法をできるだけ速やかに講ぜられんことを…。(おおはら やすお国学院大学名誉教授)産経[正論]2014.6.13


◆国語を乱すカタカナ語と造語 #1

前田 正晶


排斥論者の弁:

私はこの手の言葉が余りにも数多く日常的に日本語に登場するのが不思議であった。だが、よく観察してみると漢字・平仮名・片仮名・ローマ字とともに和製英語やカタカナ語が使われている日本語は融通無碍であるという素晴らしさを見出した。それだけに止まらず、外来語を基にして新たな言葉を創造してきた先人と現代人の優れた知恵と創造性を見る思いがするのだ。

このような言葉を「外来語」と呼んだり「和製英語」と称したりするようだが、その多くはすでに日本語として戸籍を得てしまい、今更外国人登録をせよと迫るのは遅すぎるのである。

これまでにこのことを幾度か採り上げて、かなり厳しい反論および反対に出遭った。すなわち「今更それを否定することはない。このまま使い続けよう。最早日本語の一部になっているではないか」という方が多かった。

私の論旨は「これらを使うのは各人の好みと自由裁量であるし、日常会話の中で使っても構わないと思う。だが、実態は純粋な日本製の言葉であり、英語(ないしは外国語)とは全く無関係であるという認識だけは持っていて欲しい」である。

私はこれらの言葉を英語にしてみれば全く別な意味になる例が非常に多いことを知って貰いたかっただけである。

何故この主張をするかと言えば、「言葉は耳から入った場合の影響が強いので、テレビなどに登場するコメンテーター、有識者、学者、スポーツ等の解説者、議員等の社会的に認知されるかあるいは尊敬されている人たちが、無意識に使うかあるいは誤用すると、一般人はそれを素直に受け止めて英語だろうと思って使ってしまう結果になる点を好ましくない」と考えているからである。

更にこの際、「何も知らずに使っているテレビ・タレント(これも造語だろうと思うが)たちの悪影響も無視できないことも言っておきたい」であった。

そこで、本題に入る前に「和製英語(=造語)とカタカナ語」の生い立ちを論ずることにする。そこには英語のように「表音文字」を使っている言語と、漢字のような「表意文字」と「表音文字」のひらがなとカタカナも使っている日本語との違いがある。そこに文法の違いが加わるのである。

さらに日本の学校教育で英語を科学として取り扱い、しかも「生徒を5段階で評価するために教えて、話せるようにすることはその目的ではない」とする方針があることを申し添えておきたい。

さて、具体例を挙げてみよう。

「文法無視」:

その昔にテレビ漫画に「エイトマン」というのがあった。無理矢理に英語で綴れば ”Eight man” となる。これを見たアメリカ人が「8人ならば”men”ではないか?」と疑問を呈した。

すると作者は「8番目の男」という意味であると答えた。アメリカ人は「それならば”8th またはEighth man”ではないか?」と追いかけてきた。すると作者は「もう、これで十分通用しているのだから、どうでも良いのだ」と答えて終わったそうである。

「単語を並べた」:

具体例は「ヒーロー・インタビュー」である。これはテレビのプロ野球中継に屡々出てくる言葉である。これは私の考えでは良く聞く「英語は話せないが、兎に角単語を並べたら何とか通じた」の例に分類したい。

同時に文法無視でもある。だが、日本人で野球中継を見ていて、これが何のことか解らない人はいないだろうと言いたいほど日本語に「戸籍」を得てしまった。"hero" の発音は「ヒアラウ」か「ヒーロウ」に近い。即ち、気を付けないと "heroine" の発音が「ヘロイン」(="heroin" )と同じになってしまう危険性がある。

堅苦しい文法を言えば「目的語であるヒーローが先に出て来る日本語の語順で言葉を並べてしまった例である。強いて英語にすれば”interviewingthe hero”辺りだろう」となる。ここには漢字を幾つか重ねて熟語を作り出す感覚が応用されていないか。

「ローマ字読み」:

いや、それが問題点なのである。嘗て、izaのブログで「ローマ字の功罪」、特に「罪」を論じた際の反響は凄まじかった。「ウルトラマン」という有名なテレビ漫画がある。スペルすれば”Ultra man”である。英語では間違っても「ウルトラ」とは読まずに「アルトゥラ」に近い。特にいけないのが "a" の読み方で、これが素直に「ア」となる例は少ない。

ここで取りあえずまだ採り上げていない例を挙げれば "oasis" (=「オアシス)で、実際は「オウエイシス」と表記するのが近いだろう。

「言葉の誤用」:

これが恐ろしいのである。多くの方は何ら躊躇わすに「無邪気か純真」を「ナイーブ」と言われる。英語ではそういう意味ではない。この言葉を使って”You are naive.”等とうっかり言えば、向かい合っている相手に殴られても仕方がないくらいの誤用である。自分のことを謙遜して言うのなら兎も角、相手を貶している言葉だ、くらいは心得ておくべき。

「発音」:

最後にこの問題を。「お座り下さい」の意味で言う”Sit down, please.”を絶対に「シット・ダウン」のように発音しないことである。「シット」を素直に英語にすれば”shit”となる。これはかの松本清張が誤解・誤認識していた"slang" 「スラング」ではなく「汚い言葉」= ”swearword” に分類されている。

教養ある人が絶対に公共の場では使わない言葉の代表的なものの一つである。こういう発音を教える学校の先生方の猛省を促したい。”shit”が何を意味するかはここには書かないことにする。

その和製英語類の分類であるが、私は“和製英語=造語”、“ローマ字式発音”、“言葉の誤用”の3種類に分けて、これから先に論じていくので宜しくご期待のほどを。(続く)

<「頂門の一針」主宰者より:この記事は前田さんのご了解の下、不連続的に連載します。>


  

2014年06月13日

◆集団的自衛権 公明軟化 山口代表?

〜残る壁は…〜

岡田 浩明


集団的自衛権の行使容認に慎重姿勢の公明党に軟化の兆しがみえてきた。上田勇政調会長代理は11日、行使容認に向け憲法解釈の変更もあり得るとの認識を表明。

自民、公明両党幹部は解釈変更の閣議決定の文案調整を急いだ。政府・自民党は今国会会期末の22日までの与党合意を目指す方向で調整に入っており、公明党の決断が問われる局面に突入している。

「憲法解釈が変わることはある。ただ、慎重な議論の上で国会でも議論しなければならない」

 上田氏は11日のラジオ番組でこう強調した。自民党が主張する集団的自衛権行使の限定容認論についても「どう限定するかまで議論が詰まらないと、その後の法整備の話に行かない」と述べ、限定の線引きが明確になれば行使を容認する意向をにじませた。

すぐさま反応したのは自民党の石破茂幹事長だった。「正確な理解のもとに的確な議論を展開していることに敬意を抱いている」と上田氏を持ち上げた。

上田氏はラジオ番組に出演するにあたり、党側の了承を得ており、党側もこの日程を公表していた。上田氏は行使容認に理解を示していることで知られ、党側は「ああいう発言をするのは織り込み済み」(関係者)。支持者向けの「シグナル」の可能性がある。

そうした中で、自民党の高村正彦副総裁と公明党の北側一雄副代表の会談が行われ、北側氏は公明党の漆原良夫国対委員長、自民党の大島理森前副総裁とも相次いで会談した。

公明党は連立離脱カードを封印しており、責任与党として着地点を模索するしかない。当初は政府が示した事例を時間をかけて議論する「遅延戦術」を展開したが、受け身一辺倒の姿勢には支持者から「じれったい」との声も漏れる。

ただ、党内は集団的自衛権の行使容認は認められないという意見はなお強い。その筆頭が山口那津男代表だ。11日も記者団に「期限にこだわって国民の理解を深めて合意形成する目的が失われては元も子もない」と強気の姿勢をみせた。党首会談で事態の打開を図る案が浮上したのは、安倍晋三首相自らが説得するしかないとの見方が強まっているからだ。

北側氏はこの日、選挙区の堺市産の高級トマトを高村氏に送った。トマトの花言葉は「完成美」。北側氏は周囲に、こう語った。「美しく合意したい」 産経ニュース 2014.6.12


◆アルカィーダ系武装組織の謎

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年6月12日(木曜日)通巻第4264号 > 

 〜ISIL(イラク・レバントのイスラム圏)がバグダッド陥落をめざす
  大油田キルキークを掌握し、首都に迫るアルカィーダ系武装組織の謎〜


新顔「ISIL」(イラク・レバントのイスラム圏)はイスラム原理主義過激派。イラクばかりかシリア、レバノンを含む地中海沿岸に宗教戒律を厳格化する国家建設を目標都市、バグダッド陥落をめざす。

ISILはイラク戦争中にテロを繰り返したアルカィーダに刺戟され、「イラク・イスラム国」を名乗って急激に肥大化してきた武装組織だが、シリア内戦に介入した「外人部隊」である。2011年にいまの組織名に変更した。指導者はアブバクル・アル・バグダディという。

軍事訓練を積み重ねた構成員が急激に増えているのは、各地で刑務所を襲い、囚人らを強制入隊させることも一因だが、基本的にスンニ派である。シーア派に反目する若者の志願兵も目立ち、往時のアルカィーダをしのぐ大勢力となっている。

ISILは、シリア内戦に志願し、スンニ派武装組織を戦闘支援を通じて、いつのまにか吸収し、組織が膨張させたといわれる。

資金の背景は謎だが、胴元サウジアラビア説が有力。しかし真偽のほどは不明。ひとことでいうと民族部族混合の外人部隊だ。

シリア・イラク国境付近から出撃し、モスルを陥落させたISILは、11日までにサダム・フセイン元大統領の出身地(つまり現マリキ政権に反対する住民多数)キルキーク、ファルージャを軍事的に掌握した模様である(ロイター、NYタイムズなどが伝えている)。マリキ政権は反撃能力が稀薄で、政府軍は逃亡しているという情報もある。

マリキ政権はシーア派で背後にイランがあり、旧サダム支配下でスンニ派住民を虐殺しているため、ISILが占領した地域での住民はもともと反政府感情が強かった。皮肉にも「イラク民主化」を掲げてイラクに介入した米国は、「民主主義」のシンボルとして押しつけた「投票箱民主主義」の結果、米国に敵対する組織を政権につかせてしまった。

モスルでISILはトルコ領事館を襲撃し、領事を含む48人を人質に取った。トルコのエルドアン首相は猛烈に抗議した。

また同市から50万人の避難民が発生し、国連が乗り出した。


 ▲かくも中東情勢は魑魅魍魎がうごめく世界だ

この経過と組織の命名ぶりから推測できることがある。

第一にISILはあくまでもイラクが拠点で、イラクをスンニ派原理主義国家に回復させようとしていること。

第二が「レバント」の名前をなぜ付けているのかという謎である。周知のように「レバントの海戦」(1571年)ではトルコが敗北したが、これは「世界三大海戦」のひとつ。(歴史家によって評価が異なるが世界三大海戦はほかに日露戦争の対島沖海戦、トラファルガー海戦)。

つまりスンニ派世俗主義のトルコと敵対している事実である。シリア内戦により、100万以上の難民がトルコに押し寄せている。トルコは中東の盟主を回復しようとしている。

第三が微妙な立ち位置にあるサウジアラビアが、シリアのアサド政権を守護している。

この点で米国と対立しており、オバマが訪問してもサウジ国王は夕食会を蹴飛ばしたほど険悪である。イランをもっとも脅威視するサウジは、イラクがスンニ派国家に戻ることには理解を示す。
 
中東情勢は古都ほど左様に魑魅魍魎、砂漠の蜃気楼のごとく突如出現した武装組織が、いきなりバグダッドに進撃するわけだから、明日どうなるか、誰にも分からないだろう。
 

◆始まった中国経済の「厳冬」

石  平


「氷山に衝突する寸前のタイタニック号」 

今、中国では本欄が一貫して警告してきた不動産市場の崩壊が着実に進んでいる。

まずは不動産が徹底的に売れなくなったことだ。中国では、毎年5月1日のメーデーを中心に数日間の休みがあって、例年では不動産がよく売れる「花の五一楼市(不動産市場)」とされてきた。

だが、今年は惨憺(さんたん)たるものである。中原地産研究センターが観察している全国54の大中都市で「五一楼市」で売れた不動産件数は9887件。昨年同時期と比べると32・5%減という。

首都の北京では期間中の不動産販売件数が前年同期比で約8割も減った。地方都市の保定に至ると、期間中の不動産契約件数はわずか10件、まさに「不動産市場の5月厳冬」と呼ばれる大不況が到来したのである。

不動産が売れなくなると、ついてくるのは価格の下落だ。全国における不動産価格の下落傾向は今年3月からすでに始まっているが、5月後半には一層加速化。

中国経済新聞網が同30日、重慶市最大の不動産開発プロジェクト「恒大山水城」が3割以上値下げして売り出されたと報じれば、同じ日に放送された中央テレビ局の「経済30分」という人気番組は、杭州市にある分譲物件を予定価格の3分の1程度に値下げして売りさばいた事案を取り上げた。

『毎日経済新聞』の報じたところによれば、「値下げラッシュ」が南方の大都会、広州にも広がり、ある業者が史上最高価格で取得した土地に作った「亜運城」という大型不動産物件も3割程度の値下げを余儀なくされたという。

そして、同31」日に中国指数研究院が発表した、全国100の都市での定期調査の結果、100都市の不動産平均価格が5月には前月比で0・32%の下落となったことが分かった。

全国で広がる価格下落の実情を見ると、この下落幅が果たして真実を反映しているかどうかはかなり疑問だが、少なくとも、全国の不動産平均価格は2年ぶりに下落したのである。

もちろん、そういう統計数字よりも、たとえば中国有数の不動産開発大手「中国SOHO」トップの潘石屹氏が発した「中国の不動産市場は今、氷山に衝突するタイタニック号だ」という衝撃発言の方が現在の危機的な状況を如実に反映しているだろう。

この国の不動産市場は確かに「氷山」にぶつかって沈没する寸前である。香港に拠点の一つを持つスタンダードチャータード銀行「大中華区研究主管」の王志浩氏も最近、「今年中に中国一部都市の不動産価格は半分以上も暴落する」との不気味な予言を発している。

不動産市場の崩壊がもたらす経済面の負の効果も大きい。たとえば不動産市場の不況を受け、今年1月から4月までの全国の不動産投資の着工面積は前年同期比で22・1%減となった。

不動産投資がそれほど減ると、今後、鉄鋼やセメントなどの基幹産業から家具・内装などの民需産業まで不況が襲ってくるのは必至だ。対外輸出が4月までマイナス成長が続いた中で非常に苦しんでいる中国経済は今後、さらなる減速と衰退が避けられないであろう。

まさにこのような経済衰退の惨憺たる未来を通して、著名経済学者の許小年氏は5月21日、多くの国内企業家に対して「中国経済の長い冬に備えよう」と語った。台湾出身の経済学者、郎咸平氏も同27日、「中国経済は既に長期的不況に入った」と喝破した。

どうやら中国経済は5月からすでに不況の「厳冬」の時代に突入しているようだ。しかもこの厳冬の先に、「春」がやってくるようなこともないのではないか。

                   ◇
【プロフィル】石平

 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
産経【石平のChina Watchh】2014.6.12