2014年06月02日

◆木津川だより 古墳時代の木津川地域

白井 繁夫


木津川の右岸で世紀の大発見と騒がれた約1700年前の「椿井大塚山古墳:木津川市山城町椿井」が、昭和28年(1953)3月にJR奈良線の改修工事中に発見されました。

この古墳の前方部と後円部の境目に鉄道が敷かれており、改修工事により崖面の中程の地層の奥から石室を発見して、天井石を取り発掘を進めると、そこから驚くべき事柄。

「邪馬台国女王卑弥呼(ひみこ)の鏡」と推察できる「三角縁神獣鏡」が30数枚を始め、副葬品としての鉄刀、鉄剣などの武器類、武具、農工具類等が大量に出土したのです。

この年の木津川地域は夏から秋にかけて、2度も未曾有の大水害に遭遇しました。木津川左岸の木津町は木津川に架かる国道24号の泉大橋が流失(8月15日)し324町歩が冠水して、人的、物的被害が甚大となり、更に9月には台風13号の暴風雨に追い打ちをかけられました。

局地的集中豪雨による南山城一帯の被災者は死者330人超、重軽傷者1700人超、罹災者は3万人弱の大災害でした。

まさに、「人類による歴史の偉大さと、人類に対する自然の脅威とを同時に眼前に見せられました。」と当時のことを知る、古老が語ってくれました。

弥生時代の大畠遺跡(相楽地域の集落の母村)以降、前方後円墳の前期古墳時代(3世紀末〜4世紀)が始まりますが、地域の首長墓として盛土をした墳丘墓や古墳は、左岸の木津町では発見されていません。

日本最古の前方後円墳は、大和の現桜井市に築かれた3世紀末の「箸墓(はしはか)古墳」(全長280m)です。右岸の山城町には前述の「椿井(つばい)大塚山古墳」が4世紀の初め、箸墓古墳の三分の二の大きさ(全長約190m)の同形古墳として出現したのです。

この古墳の被葬者は大和政権にとって、重要な役割或は絆を持った豪族か首長であったと推察されます。それは、この地域の地形と『記』『紀』の物語(古事記、日本書紀)などからも推察されます。

地形からの推察:大和の国の北の丘陵を越えると、そこの平野部には木津川が流れ、宇治川、淀川経由で西は瀬戸内、北は近江(琵琶湖)から日本海、東は(三重経由)東海道へと、さらに中国大陸から、蝦夷地まで伸ばせる古代の交通の要衝です。

前期古墳時代の各地域の首長の宝物は、銅鏡の中国鏡「三角縁神獣鏡」が絶対的でした。

この椿井大塚山古墳出土の鏡と同形の鏡(同笵鏡)の配布先(分有する古墳)は九州(9)、中四国(10)、近畿(16)、中部(9)、関東(4)にあります。各地域の王(首長)と繋がりを持つ役目を大和政権は、大塚山に与えて全国的な広がりを築いたと思われるのです。

(弥生時代に首長が祭祀に用いる重要物は銅鐸でしたが、前期古墳時代は磨鏡の中国鏡となり、後期古墳時代になると鉄刀、鉄剣などの武器、武具や宝石、装飾品に変化しました。)

古墳時代の木津川地域を古代の律令郡制で云えば三つの地域、久世郡、綴喜郡と相楽郡に
古墳群がありました。

 古墳時代の木津川地域(イラスト)             
                            
             桂川            (近江)   
         乙訓                        
                             木津川の右岸の宇治市か
          巨椋池 宇治        宇治川     ら城陽市にかけて久津川
        樟葉    久世                    古墳群
(摂津)      綴喜    ★久津川古墳群          
   淀川     ★大住車塚古墳                   対岸の八幡市(西車塚)、
             田辺     (山城)          京田辺市(大住車塚古墳)
          羽振苑                     
          祝園  ★椿井大塚山古墳            木津川市(椿井大塚山古墳)
(河内)   相楽 木津     木津川      
             ★佐紀古墳群                 奈良市(佐紀古墳群)
                                  
            (大和)       

大和の大王が全国的な展開をするためには、北の玄関港(泉津)、即ち南山城の木津川市と木津川流域を確保しないと、物流も情報も得られ難くなるのです。(南西の大和川を利用する水上交通では、大量の物資を運ぶ物流ルートに困難な個所があったのです。)

大和政権は、木津川を勢力範囲に組み入れた後(4世紀後半〜5世紀前半)、北部の奈良山丘陵に巨大な前方後円墳の佐紀盾列(さきたたなみ)古墳群を築いています。

「宝来山古墳(伝垂仁陵:227m)、五社神ゴサシ古墳(伝神功皇后陵:275m)、佐紀陵
山サキミササギヤマ古墳(伝日葉酢媛ヒバスヒメ陵:207m)、佐紀石塚山古墳(伝成務陵:218m)」

大和政権は、木津川流域の各首長(豪族)と戦うか、或いは絆を結んで畿内、瀬戸内を掌握しました。それから椿井大塚山から北へと進み、日本海を望む丹波地方の巨大古墳(網野銚子山古墳:約200m、神明山古墳:約180m)の王と縁を結び、山陰から、北陸道諸国も平定したのです。

『記』『紀』の物語(古事記、日本書紀):

<崇神天皇10年、武埴安彦(たけはにやすびこ)の反乱:四道将軍の大彦命(おおびこのみこと)が、北陸道へ平定に行く途中、大和と山代の境、平坂で御間城入彦(ミマキイリヒコ:崇神天皇)の命が狙われている云々の童女の童謡(わざうた:政治等の風刺謌)を聞き、山代の国へ派遣している武埴安彦の謀反を知る。

崇神天皇は、大彦命と彦国葺(ひこくにぶく:和珥氏の祖)を戦場へ派遣。那羅山(現奈良坂)から南山城(山代)へ進軍、輪韓河(わからがわ:→挑河いどみかわ→泉河)で相対峙し、武埴安彦の忌矢(いはひや)は外れたが、彦国葺の矢にあたり戦死する。

反乱軍は総崩れになり北へ敗走するが、官軍に追撃され斬り殺された処が羽振苑(はふりその:現祝園)、更に、彦国葺の軍は伽和羅(かわら)で敗走兵の甲冑を脱がすと、彼らは恐怖で褌に屎を漏らした。(屎褌→久須婆→樟葉:訛ってくずは)>

武埴安彦の妻吾田媛(あたひめ)が固めていた西国道も、やはりその時敗れました。

『記.紀』によると4世紀末:忍熊王の謀反

<忍熊王(おしくまのみこ)と兄の香坂王(かごさかのみこ)が神功.応神に謀反して失敗する。また、大和東北部(佐紀古墳群)に本拠地を持つ和珥氏の伝:応神天皇側の将軍として、和珥氏の祖先(建振熊命:たけふるくまのみこと)が山背(山代)南部を拠点とする忍熊王の軍勢との戦いで、これを打ち破った。


忍熊皇子は、父が仲哀天皇で母は大中姫(おおなかひめ)。だから佐紀西群のヒツギノ皇子に対し、神功.応神をいただく政治集団が反乱をおこして、王権を簒奪(君主の地位を奪い取る)した。>
というのが四世紀末の史実です。

ところで、木津川市の南西で隣接する奈良市の現押熊町は、奈良市西大寺所蔵『京北班田図』の地名由来に記載されている。と云われています。

忍熊王に加担した地域の将軍や地名など簡略して下記に列挙してみました。

忍熊王に味方した将軍:葛野城首(かづのきおびと)の祖熊之凝(おやくまのこり)、
吉師(きし)の祖五十狭芧宿禰(おやいさちのすくね)、難波の吉師部(きしべ)の祖伊佐比宿禰(おやいさひのすくね)等々

軍事的拠点:  木津川(山背)、宇治川(莵道河:ウジカワ.菟道.逢坂)、近江南部(瀬田.田上タナカミ)、淀川(摂津)、住吉、播磨(兵庫)の明石など

大和政権は北の出入口として木津川の泉津を確保し、そこから全国へと勢力範囲を拡大し
たのです。

その後の歴史は神功皇后、応神天皇の体制で展開されますが、私は近くにある押熊町も記
述したくなり、少し長くなりました。 

次回は横道へ反れずに後期古墳時代へと進みます。

参考資料: 木津町史 本文編 木津町、山城町史 本文編 山城町

2014年06月01日

◆維新分党:「第三極」役割果たせず

葛西 大博


日本維新の会は国政政党として発足して約1年半で、分党に至った。自民党、民主党の2大政党とは異なる「第三極」として期待を集めたが、役割を十分には果たすことができなかった。

 ◇「政権の補完勢力」批判も

橋下徹共同代表は29日の記者会見で「自民に対抗する大きな勢力がないとチェックができなくなり、国民のためにならないという思いでずっとやってきた」と述べ、野党第1党の民主が低迷する中で「第三極」としての責務を果たせなかった無念さをのぞかせた。 維新は2012年衆院選で第三極の受け皿を狙い、54議席を獲得した。

しかし、その後は自民党1強下の国会でなかなか成果を上げられず、橋下氏の従軍慰安婦問題を巡る発言も響いて党勢は低迷。13年参院選では、8議席獲得にとどまった。

橋下氏や松井一郎幹事長は安倍晋三首相や菅義偉官房長官ら政権とのパイプをテコに「是々非々」を強調してキャスチングボートを握ろうと図った。

成果の一つは国会改革の議論を先導したことだ。外交などに専念できるよう首相や閣僚の国会出席を軽減するなどの独自案をいち早く提案した。

野党に不利益もあるため、与党からは切り出しにくい提案をあえて打ち出して、「責任政党」をアピールした。

一方で特定秘密保護法の審議では、早い段階で与党と修正協議で合意し、成立を後押しするなど政府に同調する姿勢も目立ち、「政権の補完勢力」という批判も受けた。
毎日新聞 5月31日(土)0時32分配信

◆アメリカのアジア政策

Andy Chang



5月22日、ハドソン研究所(Hudson Institute)で「米台安全関係の現状」(The Current State of US-Taiwan Security Relations)と呼ぶシンポジュウムがあった。

http://www.ustream.tv/recorded/47882757ハドソン研究所はアメリカの独立研究所で、世界の安全、繁栄と自由のための研究機関と呼称している。


主催者はSeth Cropsey, Director of Center for American Sea-powerで研究所のSenior Follow、パネリストは以下の三人である。Michael Pillsbury:Senior Fellow of Hudson InstituteMark Stokes:Executive Director of Project 2049 InstituteMichael Auslin:Director of Japan Studies, AEI

米台関係の現状と呼ぶものの実は台湾を主体としたアジアの現状の討論で、台湾の安全が退化しつつある現状と、台湾がアメリカの安全に及ぼす影響をパネリストが違った角度から発表したのである。

つまり「アメリカのアジア政策討論会」であり、学者たちはアメリカのアジア政策の現状を憂慮し、警告しているのである。

主催者Cropsey氏は冒頭説明で、US-Taiwanの安全と言っても結局は台湾、尖閣、南シナ海などにおける中国の国際法を無視した行動がアメリカの警戒心を喚起し、アジア政策の見直し、米台の政治経済関係、台湾に武器提供などを討論するとした。以下はパネリストの発表内容である。内容が多岐にわたり複雑だが非常に重要なことだから読者が各自このサイトをアップして聴くようお勧めする。

●Michael Pillsbury:台湾政策の混乱は続いている

Pillsbury氏は冒頭、ここに述べるのは評論ではなく歴史的事実を列挙してアメリカの台湾政策が戦後から今まで混乱し続けていた「事実」を述べると述べた。


要約すると:49年、アメリカにとって台湾は戦略的価値がないとした。54年、台湾に核を置かないと決めた。台湾(蒋介石軍)と共同軍事防衛計画を作ったがやがて破棄した。台湾は戦略的に空母10隻に値するという発言もあったが、台湾の地域的重要性と戦略的価値の論争は今も結論がない。キッシンジャー、カーター、クリントンなどの中国宥和論とその反対に中国警戒論もある。中国はアメリカを凌ぐ事はないという主張は間違っていた。中国は世界の秩序を守る国となる、中国は民主化するなども間違いだった。etc.


アメリカには中国を味方にして世界の秩序を保つことが出来ると考える指導者が多かったが、最近は反省と見直しをしている。つまりアメリカのアジア政策は間違いだらけだったし、今でも混乱は続いている。アメリカの誤算は中国が普通の国と同じく平和を追求すると思っていたことで、中国が武力と経済力で覇権進出を企て、諸国を脅かすとは思わなかった。今でも中国の台湾併呑も容認する・否認すると言う論争が続き、混乱を極めている。

●Michael Stokes:台湾の価値と中国の意図


ストークスは今回のシンポの目的は二つ;一つは台湾のアメリカに対する価値、二つ目は中国共産党の意図の研究とした。そして現在の台湾の実情とは:(1)中華民国は実在し、台湾を実質的に統治している。(2)「一国二制度」、つまり二つの違った中国の制度は実在
している。そして両側の中国が一国二制度を推進している。

ストークスは、一国二制度は可能だが中国の台湾統一は難しい、嘗てアメリカは蒋介石の中華民国が国連に残り、二つの中国を実現させようとした。蒋介石は国連の常任理事国の資格を失うことを恐れて反対したため追放された。しかし中華民国が今でも実在するから中華民国が国連に戻る可能性も考えられると言う。


台湾(中華民国)が独立した国を維持し、中国の併呑を防ぐには「台湾が民主的主権国家」であることだと彼は言う。そしてアメリカは現状維持を望み、そのために台湾に武器提供と台湾の安全を維持する。だが、いったん衝突が起きればアメリカは介入しない。武器提供、潜水艦、F16 C/Dの提供が議題になっていると述べた。

●Michael Auslin:台湾はアジアの安定に最重要

オースリン氏はアジア全体の観点から、台湾はアジアの安定に最も重要であり、最近の中国の覇権進出のため不安定要素が増大したと警告した。南シナ海、尖閣諸島、泰国の政変などでリスクが増大した。中国は平和を望んでおらず武器発展、領土侵略で、アジア諸国は反中国意識が強くなり、戦争は起きていないがリスクは増大した。


アメリカはこれまで世界平和を守る主役だったが、今では世界各地に不穏が続き、中東、ウクライナ、シリア、イランなどの対応で一杯だ。アジアピボット、リバランスなどは空約束にすぎない。アジアとヨーロッパ、中東の不安定要素は増大し、アメリカは資源を減少させている。

この状況ではアメリカ、中国とヨーロッパ(ロシア?)の「三覇権分立」になるかもしれないと述べた。結論として中国の出方、敵か友かが将来の方向を決める。リスクが増大するので、今後はアジア諸国の連合が大切になる、と述べた。

●私の感想

目が点になると言うが、私はこの番組を見て真実驚きと失望を覚えた。戦後70年以上たってもアメリカのアジア政策がこれほど混乱と迷走を続けているとは知らなかった。アメリカの中国、中国人に対する理解の浅薄さ、台湾に対する無理解と現状維持の失策など、台湾人の独立意向と決心に対する人権無視などである。


三人のパネリストの討論で明らかになった事は、アメリカの台湾政策には中華民国の台湾支配を認め、アメリカの政策に「台湾人」は存在しないことである。驚くべき無知と人権無視である。台湾人の50年来の独立運動、国民党の暴虐統治を無視してよいのか。台湾に民主自由は存在しないのにアメリカの国会議員はタイワンデモクラシーと独立派の台湾人をおだてて実際は中国人の暴政を認めている。

アメリカは中華民国と国交断絶したあともタイワンと呼んで中華民国が台湾を実効支配していることに便乗し、70数年も台湾独立を無視し、人権無視を続けてきたのである。これが世界一の民主自由国家と威張っているアメリカである。アメリカの偽善に開いた口が塞がらない思いである。


独立を願う台湾人はアメリカに対して抱いていた期待や希望を捨てて新しい路線と独立の戦略を練るべきである。アメリカは中華民国を認める政策を取り続けている。そして国民党政権はアメリカに隠れて中国と台湾併呑を企んでいる。中華民国が存在する限り中国の
併呑計画は続き、アメリカも安閑として居れない。「一国二制度」を容認するバカな政策をやめるべきだ。

台湾人にも責任がある。台湾人の声がアメリカに聞こえていない。台湾人はもっと世界に台湾の声を発表すべきである。中国メディアが台湾人の声を極力抑えているためでもあるが、台湾人の努力が足りないことも確かである。


台湾人の独立論文は殆ど中国語でしかも外国向きでない。日本語で書くのは私と黄文雄ぐらい、英語の独立論文は少ないし、台湾独立の理論が統一性を欠く。外国語で台湾人の声を発表するなら簡単明瞭で文法に間違いがなく、理論が明確でメディアに掲載し図書館や
外交文書として残る文章を書くべきで、仲間の間でやり取りするような乱雑な文章を乱発してはならない。


13億の中華民国と中華人民共和国を相手にして2300万の台湾人が独立運動をしても勝ち味はない。アジア諸国の連合で領土問題の解決を説くのは私一人である。アメリカの曖昧政策や空虚なピボットを知ればPASEAのアジア聯合が必要だとがわかる。台湾人とアジア諸国が聯合して領土問題を解決すれば東亜の平和は達成できる。

◆中国経済はタイタニック号だ

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 


<平成26(2014)年5月29日(木曜日)弐:通巻第4254号>  
 
〜中国経済は「氷山にぶつかる直前のタイタニック号だ」と不動産王
              「黄金時代は終わった」と万科集団CEOも発言〜

中国最大デベロッパーのひとつ「SOHO」集団の播石吃(創設者兼会長)は5月23日に行われた内輪のセミナーで「中国の不動産業界はタイタニック号が氷山にぶつかる直前のごとし」と述べていたことが分かった。ウォールストリートジャーナル(5月26日号)が伝えた。

理由は「第一に今年第1四半期の中国における不動産価格は9・9%下降したが、新しい建築着工はすでに25%落ち込んでいる。第二に不動産価格が20−30%下落するとなれば、業界のみならず金融セクターに悪影響が出るだろう」

播会長は、新聞記者がいないという会合と聞いていたのでつい本音を漏らしたらしい(ちなみに第2四半期の統計は来月末速報される予定だが、30%下落予測である)。

ついで5月28日の香港各紙が報道した。

中国最大の不動産開発企業「VANKE(万科集団)の郁亮総裁は「中国の不動産業界の『黄金時代』はおわった」と発言してことが分かった。
 
SOHOはすでに海外での投資を増やしておりNY,ロンドンで目ぼしいビルを次々と買収してきた。後者の『万科』は、低所得者向けマンションなども着実に手がけてきており、高級別荘や豪邸ばかりか、幅広い投資を拡大してきたことで知られるが、同会長は「いずれにしても「中国に85000社もの不動産会社は不要だ」と不良企業の淘汰と業界の再編を予測しているという。

(注 播石吃の「播」はさんずい、「吃」は山偏)
     

2014年05月31日

◆「核」が日中開戦を抑止する(28)

平井 修一


(承前)松井茂氏の論考「世界軍事学講座」から。
・・・

米国防総省(ペンタゴン)や米軍需産業界は、PGM=精密誘導弾を用いる新型の通常戦争の準備を1970年代後半に強力に推進した。時あたかもマイクロエレクトロニクスの革命期に入り、より高度のPGMの開発に最適となった。また、PGMを運搬する戦術航空機の性能やステルス(隠密)性、戦術ミサイルの性能が大幅に向上した。

これらを背景として1982年8月、ペンタゴンは「エア・ランド・バトル(AirLand Battle)」と呼ばれる新型の戦法を導入した。これは空と地上から、敵地の後方深くまでPGMを送り込み、指揮所、通信所、橋梁、戦闘車両などを一斉にピンポイント攻撃し、戦闘力の骨幹を破壊するというものである。(ソ連同盟軍の)ワルシャワ条約軍と対峙するNATO部隊もこの戦法を採用し、戦闘態勢を整え始めた。

これを知ったソ連は慌てた。「エア・ランド・バトル」が発動されれば、ワルシャワ条約軍の戦車軍団の第一梯団がNATO軍と交戦しているうちに、後続の第二梯団の戦車軍団が航空機やミサイルによって運搬されてきた対戦車PGMによって大量破壊されてしまう。

それのみではなく、ワルシャワ条約軍の後方800キロまでの指揮所、通信所、橋梁、鉄道駅などがピンポイント攻撃を受け、指揮・統制・通信および補給能力を失ってしまう。

ペンタゴンが「エア・ランド・バトル」を導入した2か月後の82年10月、ソ連の政治・軍事の首脳臨席のもとで全軍指揮官会議が開かれ、対策が検討された。だが、ゴルバチョフ政権の登場によるペレストロイカ、東欧諸国の自由化、その後の国内騒乱などで、軍部の「エア・ランド・バトル」への根本的対処は行われずじまいである。

それはまた、マイクロ・エレクトロニクス革命に完全に乗り遅れたソ連の技術力では無理であった。

もともとソ連軍相手に考案された「エア・ランド・バトル」であったが、その威力を十二分にこうむったのが湾岸戦争の(ソ連式軍装備の)イラク軍であった。

なかでも対レーダーミサイル、巡航ミサイル、レーザー誘導爆弾などによる、レーダーサイト、軍司令部、通信所の破壊は、イラク軍の耳目を奪い、受け身一方にさせた。また、補給ルートへの猛爆撃は、前線部隊の水・食糧の不足を呼び、イラク兵士の士気を著しく低下させた。

だが「エア・ランド・バトル」が今後の戦争の主流になるかというと、大きな問題がある。大量のPGM、空軍、ミサイル・砲兵部隊、さらに偵察衛星や電子偵察機などを必要とするため、あまりにも金食い虫である。

そのため「エア・ランド・バトル」の装備と手段を持っているのは米国のみである。その米国にしても湾岸戦争では友好国から多額の軍費の提供を必要とした。(平井:日本は一兵も出さぬかわりに1兆円を供与したが、西側諸国からバカにされた)

また、「エア・ランド・バトル」は、広い範囲に固定配置された相手に対して最も効力を発揮するが、野戦における遭遇戦などのように、状況が流動的な場合には、効力は著しく減少する。湾岸戦争においても移動式のイラクのミサイルランチャーの発見と破壊は容易でなかった。すなわち普遍的な戦法とは言えないのである。

また、技術的にも未完成部分がある。対戦車PGMのアソールト・ブレーカー(Assault Breaker)も未完成である。

以上の理由のため「エア・ランド・バトル」が各国の軍に次々導入される気配はない。だが、湾岸戦争で示されたその威力は、ロシア、中国、北朝鮮などの軍部に大きな衝撃を与え(平井:金正日は数か月間行方をくらました)、パクス・アメリカーナの礎となっている。

今後、各国軍にどのように導入されるか、あるいはその対抗手段がいかに開発されるかが見ものである。(注)(つづく)
・・・

注)現在では米軍の「軍事における革命」(RMA、Revolution inMilitary Affairs)、米軍再編などが進んでいる。「エア・ランド・バトル」は、今は「エア・シー・バトル」になり、米軍のオスプレイや無人航空機が日本にも配備されたが、戦争の形、戦法は急速に変わっているようだ。

兵士を戦場に送らないという、従来のイメージとはまったく異なる戦争も実現しそうだ。以下ウィキから――

1980〜1990年代から進められてきた新たな兵器の開発が、21世紀に入り成果を産みはじめ、無人兵器に代表される従来の兵器とは異なる軍事技術が実用化されるようになってきた。

長距離を無着陸で米本土から世界中を高精度で爆撃できる技術により、従来の戦略爆撃と同様の用兵で戦術爆撃や近接航空支援が行なえるようになっている。

また、無人航空機による偵察や攻撃も実用段階にあり、さらに改良が加えられている。海や空から発射される巡航ミサイルは、GPS誘導だけでなく目標画像による識別能力が備わっている。

現在では人工衛星による通信ネットワークが軍用・民間用ともに充実し、指揮や誘導のために前線に近い場所に居る必要性が薄れていて、偵察衛星による監視能力の向上もこれを支えている。

民主主義世界の先進国では、戦闘によって死亡する兵士が多いと政権の不安定化に結びつくことが多く、戦場での兵士数を最小にしたまま無人兵器によって遠隔攻撃する戦闘形態は、将兵の損耗が避けられ、軍隊と国民の支持が得やすいと考えられる。

また、海外派兵の多くは将兵が家族と長期に渡り引き離される場合が多く、この(無人兵器で代替するという)改善は誰からも喜ばれる。米国の軍需産業も高機能(かつ高価)な兵器の大量使用によって人的損耗を避けるという選択は、冷戦後に急速に減少した兵器需要を支えるものとして歓迎し、軍産複合体を米軍再編(新戦法)へと突き動かす動機となっている。

我が国の防衛省によると、こうした米軍の戦略・戦術の見直しは中共、イランなどのA2/AD戦略に対応したものだ。A2はAnti-Access、紛争戦域に米軍が接近できないように弾道ミサイル攻撃するというもの。ADはArea-Denial、紛争地域における米軍の行動の自由を抑制する攻撃だ。

ゲーツ元・米国防長官のスピーチが多くを示唆している。

「例えば、中国等の軍隊の近代化プログラムを考慮する場合、我々は、米国の行動の自由を奪い、戦略的選択肢を狭める敵の能力を勘案しなければならない。中国のサイバー戦や対衛星戦、対空・対艦兵器、弾道ミサイルへの投資は、太平洋における米国の戦力投射や同盟国支援、特に米国の前方航空基地や空母戦闘グループにとって脅威となっている。地平線の彼方からの攻撃可能性、それを達成する能力を中国は高めている」

脅威を放置してはならない。中共殲滅、支那解放を進めないと日本は、日米同盟は、確実に襲撃される。(2014/5/30)
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◆首相に目算「茶番」承知で打開へ

阿比留 瑠比


「全ての拉致被害者のご家族がご自身の手で、お子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない」

安倍晋三首相は29日夕、首相官邸で北朝鮮が拉致被害者と特定失踪者の包括的全面調査を行うことに関し、記者団に改めてこう決意を表明した。首相はこの後、周囲に「北朝鮮が、拉致被害者らが見つかったら帰すと約束したのは初めてだ」と評価した。

実は首相は今回の日朝外務省局長級協議について、あらかじめ一定の手応えを感じていたようだ。協議が始まる1週間前の19日、岸田文雄外相が自ら記者会見を開いて協議開催を発表したことの意味を周囲にこう明かしていた。

「岸田さんが(事務方ではなく)自身で言ったのは大事だ。これは、北朝鮮側に前向きな動きがあるかもしれないということだ」

北朝鮮による拉致被害者の存在に関する再調査については、もともと「拉致被害者がどこで何をしているか北朝鮮は最初から分かっている」(政府の拉致問題担当者)という。そのため実効性が疑われてきたが、政府高官は「茶番劇なのは承知の上だ」と指摘する。首相自身もこれまで同様の趣旨のことを述べてきた。

それでも北朝鮮の再調査表明を評価するのは、それ自体が拉致問題解決に対する北朝鮮の意欲のバロメーターとなるからだ。

今後は「日朝間で対北制裁部分解除や北朝鮮での日本人遺骨収集などを積み重ね、少しずつ互いが信頼できるか確かめつつ交渉を進める」(日朝外交筋)とみられる。

「安倍政権にとり、拉致問題の全面解決は最重要課題の一つだ」

首相は29日、記者団に対しこうも強調した。父である安倍晋太郎元外相の秘書官時代から拉致問題に取り組み、病でいったん首相の座から退きながら再び再起を目指した理由も「拉致問題は自分でなければ解決できないとの強い思いがあったからだ」(周辺)。

これまで北朝鮮は、核・ミサイル開発問題でも拉致問題でも譲歩をほのめかしては日本をはじめ各国から支援を引き出し、揚げ句、それを裏切ってきた。だが、その経緯、北朝鮮の手法を誰よりも熟知し警鐘を鳴らしてきたのも首相だ。

「平成19年7月の参院選で安倍政権が勝利していれば、拉致被害者は間違いなく帰ってきた。北朝鮮側は安倍政権が長期政権になると思っていたし、拉致被害者を帰国させれば国交正常化までいくわけだから」

第1次安倍政権で首相秘書官を務め、北朝鮮との水面下交渉を担当した井上義行氏(現みんなの党参院議員)は22年7月、産経新聞のインタビューにこう語っていた。今後も事態は予断も楽観も許さない。とはいえ、長く膠着(こうちゃく)していた拉致問題にようやく新たな展開が出てきた。産経ニュース2014.5.30

◆「民主活動家の解放」を要求決議

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年5月30日(金曜日) 通巻第4255号 > 


 〜米国下院本会議、中国に「民主活動家の解放」を要求決議
         中国は基本的人権を尊重せよとの決議に反対が一票でた〜

5月28日、米下院本会議は中国政府に、「天安門事件25周年」を前に拘束している自由民権の活動家、弁護士、ジャーナリストらの開放を要求し、同時に基本的人権の尊重を求めた。賛成379 反対1。
 
また下院委員会は元民主活動家を議会に招き公聴会で証言させる。

米国内では中国政府糾弾の運動が燃え上がっている。日本でも自由民権派の集会が開かれるほか、31日と6月4日には中国大使館への抗議でもが行われる。
      

◆新教皇はバチカンを改革出来るか

池田 元彦


バチカンはカソリックの総本山だが、東京ディズニーランドよりも狭く市民数は800人余り、然も軍隊も持たない世界最小の独立国だ。信者は世界で12億人の世界最大の宗教国でもある。

共産独裁国家やイスラム独裁国家とは国交がないが、世界180か国足らずの国々と国交がある。

昨年600年振りの教皇生前退位を受け、新たに第266代教皇フランシスコに就任したのは、イタリア系アルゼンチン人ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ、77歳だった。フランシスコ教皇は、米大陸初の教皇、かつ史上初のイエスズ会出身ローマ教皇だ。日本に来たフランシスコザビエル同じ会派だ。

欧州圏以外からローマ教皇に就くのは、シリア出身の第90代グレゴリウス3世以来、1272年振りだ。フランシスコ教皇は、社会的弱者の救済と環境保護を掲げる。「真の権力とは奉仕であり、教皇の権力の行使もそう」だと言い切る。彼の目は、貧しい人々、社会的弱者に向けられている。

「国家人民の為に立たる君にて君の為に立たる国家人民にはこれ無く候」と言った、上杉鷹山を彷彿とさせる。バチカンは、過去10年、聖職者による児童性虐待、バチカン銀行の資金洗浄・マフィアとの繋がり等、協会の権威、威光を自ら貶める不祥事を一掃出来ていなかった。

新教皇は、貧しい人々による貧しい人々のための教会を目指す。同時に聖職者の謙虚さを求め、贅沢・華美を戒める。バチカン内の10数室ある教皇専用住居を断り、訪問聖職者の宿泊用ホテルでもあるサンマルタ館にある、2部屋と浴室だけの住居に住んでいる。

それにも拘らず、前法王庁国務長官がサンマルタ館隣接の法王庁所有建物の最上階に、自分と家事に従事する尼僧4人の為に700u(実際は350u)新居を新築中との報道があり、「聖職者の贅沢や見栄」を厳しく戒めた直後にこの件を知り、激しく怒ったと言う。

8年間で11か国訪問の前教皇に比し、新教皇は昨年3月就任以来、既に10ヶ国以上の首脳と会談している。来年は日本、長崎を訪問予定のようだ。教皇は他の宗教にも寛容だが、単なる融和主義者、平和主義者でなく、国益(=教会の利益重視)を追求する現実主義者なのだ。

信長、秀吉の時代、日本に布教に来たカソリックが大勢いた。その内イベリア半島系、特にスペイン人神父達は、武力背景に日本侵略の機会を窺っていたが、ザビエルは別としてもイエスズ会のイタリア人神父、例えばヴァニニャーノ等イタリア系は、日本への純粋な布教と愛着があった。

戦後、マッカーサーが本国より靖国神社破壊を指示された時、上智大学神父ブルーのビッテル等に相談した。キリスト教にとって靖国壊滅は布教のチャンスなので、肯定的回答を期待したが、彼らの答えはNOで、国家に命を捧げた人々に対して、敬意をはらう権利と義務がある、とした。

大平正芳、洗礼名フランシスコの麻生太郎、石破茂、山谷えりこは、皆クリスチャンだが靖国参拝派だ。三浦朱門も、妻曽野綾子も靖国支持派の穏健、見識あるカソリックだ。狂信的に原理主義的に靖国反対と騒ぐキリスト教・仏教徒がいるが、中世の心情を持ち込む排他主義者に過ぎない。

フランシスコ教皇は「労働は人間の尊厳である」とも発言する。働けないなら未だしも、働けるのに働かないのは、自ら尊厳を捨てている、と解釈すべきだ。教皇は、教会設立以来の浩瀚な書籍を読んでいるはずだ。然し儒学者のような字義に囚われ、先達の解釈に囚われず、キリストに直に本質を問い、規を超えない新しい解釈をすると、期待する。

2014年05月30日

◆「核」が日中開戦を抑止する(27)

平井 修一


(承前)松井茂氏の論考「世界軍事学講座」から。
・・・

政治指導者たちは、できることならば自分が核の発射ボタンを最初に押したくない・・・この背景には、広島、長崎の惨劇が世界に広く知られていることが大きくものを言っている。

攻撃地点が途方もない大規模破壊を受けるほか、生存者が無惨なケロイドを負い、原爆症に終生体を蝕まれるのみか、死の灰や放射能雨によって、周辺の広大な地積が汚染され、生物的環境は破壊され、回復は容易ではない。

そのため、いかな好戦主義者といえども、国際世論の反発を恐れて、核兵器を用いる決断が下せなかったのである。

これには冷静な軍事的観点からの動機も働いていた。核兵器によって破壊され、不毛の地と化した土地を占領したところで、なんらの実質的利益も得られない。戦争を行う意味のひとつがなくなるのだ。

一方で何とか核兵器を戦争に使おうとする研究も進められてきた。それは、戦略次元の大規模破壊をもたらす「戦略核兵器」ではなく、ずっと小規模の戦術次元の破壊力をもつ「戦術核兵器」を開発して、局地紛争、限定戦争に用いようというものであった。すなわち核兵器のもたらす被害を限定化しようというのである。

戦術核兵器を使用するという「限定核戦争」の理論がヘンリー・キッシンジャー博士(のちの米国務長官)らによって構築され、米国で採択された。そして多数の戦術核兵器が、その運搬手段とともに製造され、NATO正面や朝鮮半島に配備された。ソ連でも同様なことが行われた。

にも拘らず、ベトナム戦争を経ても、これら小型の戦術核兵器を使用した戦争は起こらず今日に至っている。

この背景には「広島・長崎の呪縛」がある。いくら小型化しても、核兵器は核兵器である。いくら被害範囲が限定されるとはいえ、小型の広島・長崎の惨劇が繰り返されることには変わりはない。いわば、広島・長崎の悲劇へのアレルギーが核戦争を防いできた。両市民の尊い犠牲が、多くの人命を核戦争から救ったといえよう。

全面戦争はもちろんのこと、局地戦にすら使えないとあっては当然、核兵器の(政治的兵器の意味を別にした実戦力としての)価値は下落する。その研究開発及び実戦配備に膨大な金がかかるとあってはなおさらである。

核兵器の軍事的魅力は、従来の通常兵器をいくら大量使用しても及ばない大量破壊力をもつことにある。核兵器を有効に使えば、前章で述べた6つの軍事思想のうち、「野戦軍(あるいは艦隊)主力の撃滅・無力化」「補給ルートの遮断」「策源地の機能喪失」「軍需産業の破壊」「出血の強要」を瞬時に行える。すなわち、強者の戦法であるべき「速戦即決」を行
うのに最適な究極の兵器である。

にも拘らず、相手が核兵器保有国の場合、核による報復があり、相手が非核保有国の場合、「広島・長崎の呪縛」がある。そのため、究極の兵器は使われずじまいとなった。

こうした「核の手詰まり」から脱却するための新しい工夫が1970年代から考えられ始めた。ヒントとなったのはベトナム戦争と第四次中東戦争の戦訓であった。この60年代から70年代の初期までの二つの戦争において、種々のPGM=精密誘導弾が登場した(precision guided munition)


ベトナム戦争では、米軍はスマート爆弾を使用した。爆弾にとりつけられたテレビカメラで、航空機上で目標を見ながら爆弾を目標へと誘導していく。北ベトナム軍は、ソ連から供与された対空ミサイルを用いて、北爆に来襲する米軍機に打撃を与えていた。これらのスマート爆弾や対空ミサイルはPGMであった。

続く第四次中東戦争では、もっと多種多様なPGMが登場した。ソ連がアラブ諸国に供与した対空および対戦車用PGMは、第一次〜第三次の中東戦争で常に快勝を収め、中東で無敵と言われたイスラエルの空軍および機甲部隊に甚大な損害を与えた。

ためにイスラエルは一時、亡国の淵に追いやられ、核兵器を投入して国土を守ろうとした。前述のように、あわや核戦争の一歩手前までいったのである。事態を救ったのは、シャロン将軍によるシナイ半島での反攻作戦が成功したためである。

こうした事情があるだけに、イスラエルを支援する米国や西側諸国は、PGMの成果について深く注目し、その研究を進化させた。

PGMの種類はいろいろあるが、湾岸戦争に登場したハイテク兵器のように、目標にぴたりと命中するピンポイント攻撃ができることにある。

近代的軍隊は、いわば点と線で構築される。各級指揮所、通信所、補給所を点とすれば、これらと部隊との間を、線にあたる通信線、補給交通線が走っている。そこで、これらの点と線とをピンポイント攻撃で破壊すれば、近代的軍隊の生命線ともいうべきC3I(指揮・統制・通信+情報)システム(注)が機能を失い、作戦行動ができなくなる。

人間に例えると、神経をズタズタに切断され、半身不随に陥るのと同じである。

また、近代的軍隊は機甲化され、自動車化されている。地上軍の中核となる機甲師団は250両内外の戦車で構成されており、これらの戦車を破壊されると戦闘力はガタ落ちとなる。

以上の二つの命題をPGMによって遂行できれば、新しい型の戦争が可能となる。

PGMを広範に散布し、敵軍のC3Iシステム、補給ルートおよび補給手段、戦車・装甲車両などを大量破壊すれば、戦術核兵器を用いたのと同様の軍事的効果をあげられる。

しかも、兵員の出血も少なく、核戦争と異なり、その地獄絵図的な悲惨さや核汚染の問題がないため、内外世論の非難も少ない。さらに核汚染がないので、攻撃を受けた敵地域の踏破が容易かつ素早くできるのだ。(つづく)

・・・

注)1970年代まではC3Iシステム(Command Control CommunicationIntelligence system)と呼ばれていた。80年代からはComputerが加わりC4I(Command Control Communication Computer Intelligence system)となった。

これは軍隊における情報処理システムである。指揮官の意思決定を支援して、作戦を計画・指揮・統制するための情報資料を提供し、またこれによって決定された命令を隷下の部隊に伝達する。すなわち、動物における神経系に相当するものであり、部隊の統制や火力の効率的な発揮に必要不可欠である。

この米軍のシステムを日米同盟上、我が国は基本的に導入しているようだ。(2014/5/28)

◆歯止めかからぬデフレ現象

〜「元首相」価値の〜

阿比留 瑠比


本来なら党利党略を離れて個人の利害を度外視し、大所高所に立ってときの政権に助言すべき元首相らの存在価値の「デフレ現象」に歯止めがかからない。位人臣を極めた人たちがこれでは、有権者が政治に無関心でもむべなるかなだ。

村山富市元首相が25日、母校の明大での講演で展開した安倍晋三首相批判には心底あきれた。村山氏は、いけしゃあしゃあとこう語ったのだった。

「(安倍首相は)侵略という言葉は学会的にも国際的にも定義はないと。何を言っているのか分からないが(笑)」

自分が何を言っているのか理解していないのは村山氏の方だろう。今年1月23日付の当欄でも指摘したが、村山氏は首相在任中の平成7年10月、次のように国会で同じことを答弁しているではないか。

「侵略という言葉の定義については、国際法を検討してみても、武力をもって他の国を侵したというような言葉の意味は解説してあるが、侵略というものがどういうものであるかという定義はなかなかない」

旧社会党出身の村山氏が、自らの主義・主張に基づいて安倍首相を批判するのなら当然だし、何ら問題ない。だが、この物言いは天に唾するものである。

村山氏をめぐっては3年前の「3・11」直後、阪神淡路大震災と東日本大震災の双方で被災者対応に当たった省庁幹部から、こんな人柄を聞いたことがある。

「村山さんは『お前たちに任せるから思う通りに全力でやれ。責任はワシが取る』と言ってくれた。そこが、すべてに口をはさんできて、最後は『失敗したらお前のせいだからな』という菅直人さんとは違った」

それだけにがっかりさせられた。村山氏は、過去の植民地支配と侵略を謝罪した村山談話に関して2月には「国是みたいなもの」と自ら持ち上げ、今回の講演では「国際的に一つの定説」と自賛した。大丈夫だろうかと心配になる。

一方、菅元首相も相変わらず野放図な言動で周囲を困らせている。民主党の桜井充政調会長は自身のメールマガジンで2週連続、菅氏を厳しく批判した。

15日付の「何も分かっていない」ではこう書く。

「党の方向性と違う事を得意げに話す無神経さにあきれてしまった」

「菅元総理も後進に道を譲ってこの運動(細川護煕、小泉純一郎両元首相の脱原発運動)に加わったらいかがだろうか」

細川、小泉両氏が巻き添えを食い、まるで菅氏と同類扱いされているが、これが気の毒かどうかは意見が分かれるところだろう。

桜井氏は、22日付の「困ったものだ」では菅氏にこう「離党勧告」している。

「(菅氏の)発言によって多くの仲間が窮地に追いやられている」

「党の方針と異なる運動をするのであれば、党を離れて活動すべきである」

これに対し、菅氏はどこまでも馬耳東風だ。福井地裁が21日に関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を認めない判決を下した際には、自身のツイッターでこう大はしゃぎした。

「勝った、勝った、勝った」「画期的な判決」

元首相の肩書は安くなるばかりだ。一方、米国には大統領経験者らが党派を超えて協力し、国家の難局に立ち向かう組織「プレジデント・クラブ」があり、成果を挙げてきたという。うらやましい話である。    (政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】2014.5.29

◆行き詰まる習政権「悪夢の5月」

石  平


今月22日、中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市の朝市で起きた史上最大の襲撃事件は国内外に大きな衝撃を与えた。それに先立ち5日には広州市でもウイグル人の犯行とされる襲撃事件が発生し、12日には同自治区のホータンで警察署に爆発物が投げ込まれた。

政権発足以来、習近平国家主席が唱える「厳打高圧(厳しく打撃し高圧な姿勢で臨む)政策」の下でウイグル人に対する弾圧は、かつてないほど厳しくなってきたが、それが逆にウイグル人のより一層の激しい抵抗を招いた。弾圧すればするほど、受ける抵抗も激しくなるという強権政治の深いジレンマに、習政権ははまっている。

10万人の武装警察を同自治区に送り込み、事実上の戒厳体制を敷いても22日の大規模な襲撃を防ぐことはできなかった。「厳打高圧政策」は完全に破綻している。

習主席の指導力に対する疑問が政権内で広がることも予想され、彼の政治的威信は大いに傷つくことになろう。ウイグル人との泥沼の戦いでの最大の敗者は習主席自身なのである。

抵抗をしているのはウイグル人だけではない。今月12日、四川省宜賓市では男による放火で路線バスが爆発し、77人の負傷者が出た。4日後の16日、今度は安徽省樅陽県金渡村の共産党委員会の建物に村民が乱入して自爆し、村の党ナンバー2の主任を爆死させた。

政権は「死への恐怖」を民衆に対する抑え付けの最後の手段に使っているが、民衆がもはや死も恐れずに反乱を始めている。これは政権にとって最も恐れるべき事態である。

外交的にも習主席は大変な苦境に立たされている。5月初旬にベトナムとの係争海域で中国側の強行掘削に端を発した中越衝突事件の発生以来、関係諸国の猛反発を受けて中国の孤立化が目立ってきているからだ。

ケリー米国務長官は12日、「中国の攻撃的な行動を深く懸念している」と中国を名指しで批判した。16日、カーニー大統領報道官は記者会見において、中国の一方的な行動は「挑発的だ」とあらためて批判し、領有権争いをめぐるベトナムとの対立激化は中国側に原因があるとの考えを示した。

アメリカは、中国とベトナムとの対立において完全にベトナム側に立つことになった。

10日から開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議は、南シナ海での緊張の高まりに「深刻な懸念」を表明する共同声明を発表した。

ASEAN諸国が結束して中国を牽制(けんせい)する立場を示したといえる。拙速な掘削強行で中国はアメリカとの対立を深めただけでなく、東南アジア諸国から総スカンを食う結果となった。これはどう見ても、習政権の外交的大失敗であろう。

大失敗を何とか挽回すべく、習主席は21日に上海で開かれていたアジア信頼醸成措置会議で「アジアの安全はアジアの人民が守らなければならない」と演説し、アメリカの影響力を排して自国主導の安全保障体制づくりを進める「新アジア安全観」を提唱してみせた。

しかしそれは会議の共同声明に盛り込まれることもなく単なる習主席の一方的な発言に終わった。そして今日に至るまで、「盟友」のロシアを含め、習主席が唱える「新アジア安全観」に同調するような国は一つも現れていない。

アメリカを排除して中国の主導権を確立しようとする習主席の甘すぎるもくろみは見事に外れた。

こうしてみると、終わろうとしているこの5月は習主席にとってまさにショックと失敗の連続の「悪夢の1カ月」である。発足1年半余にして、習政権は早くも行き詰まりの様相を呈している。

時代を逆行するこの政権の異様な強硬路線が長く続くはずもないのである。

                ◇
【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

産経【石平のChina Watch】 2014.5.29

◆中国経済「黄金時代は終わった」と

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年5月29日(木曜日)弐:通巻第4254号>  
 
〜中国経済は「氷山にぶつかる直前のタイタニック号だ」と不動産王
  「黄金時代は終わった」と万科集団CEOも発言〜

中国最大デベロッパーのひとつ「SOHO」集団の播石吃(創設者兼会長)は5月23日に行われた内輪のセミナーで「中国の不動産業界はタイタニック号が氷山にぶつかる直前のごとし」と述べていたことが分かった。ウォールストリートジャーナル(5月26日号)が伝えた。

理由は「第一にことし第1四半期の中国における不動産価格は9・9%下降したが、新しい建築着工はすでに25%落ち込んでいる。第二に不動産価格が20−30%下落するとなれば、業界のみならず金融セクターに悪影響が出るだろう」

播会長は、新聞記者がいないという会合と聞いていたのでつい本音を漏らしたらしい(ちなみに第2四半期の統計は来月末速報される予定だが、30%下落予測である)。

ついで5月28日の香港各紙が報道した。

中国最大の不動産開発企業「VANKE(万科集団)の郁亮総裁は「中国の不動産業界の『黄金時代』はおわった」と発言してことが分かった。
 
SOHOはすでに海外での投資を増やしておりNY,ロンドンでめぼしいビルを次々と買収してきた。後者の『万科』は、低所得者向けマンションなども着実に手がけてきており、高級別荘や豪邸ばかりか、幅広い投資を拡大してきたことで知られるが、同会長は「いずれにしても「中国に85000社もの不動産会社は不要だ」と不良企業の淘汰と業界の再編を予測しているという。

(注 播石吃の「播」はさんずい、「吃」は山偏)
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まさに『中国の時代』が終わるのです
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        △

2014年05月29日

◆裏で「人種差別」が拡大していた

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 

<平成26(2014)年5月28日(水曜日)弐:通巻第4252号>   

 〜英国保守新党の大躍進の裏で「人種差別」が拡大していた
反EU、反移民の新党はなぜEU議会選挙で、トップの得票を得たのか?〜

英紙ガーディアン(5月27日)に拠れば英国内で人種差別のレートが上向きになっていると伝えた。

英国では旧植民地からの移民が奨励された戦後、インド、パキスタン、ナイジェリアなどから大量に移民がおしかけ、くわえて欧州の政治情勢の変化でポーランドやコソボという国々からも移民が増えた。
 
97年香港返還では23万弱の香港市民の移民を受け入れた。このためロンドンは人種の坩堝となり、逆に人種偏見は激減していた。

英国全体をながめると世論調査における人種偏見のレートは2011年9月11日のテロ直後、イスラムへの偏見から26%に上昇、その後も漸増を示して08年金融危機のおりは雇用を外国人に奪われたとして移民反対の声が高まり36%をつけた。

しかしその後、ロンドン五輪までは漸減だった。2012年ロンドン五輪では27%へと激減したが、14年5月の世論調査で、30%を超えていた。

地域差も顕著でロンドンでは人種偏見は低いが、ヨークシャーから南西部、中部では人種差別が強くなり、とりわけ英国の場合はムスリムへの偏見が残存する。

またロンドンなどでは移民が多いため逆に黒人vsアジア系の対立が目立つようになった。

さきのEU議会選挙で「反EU」「反移民」を掲げたUKIP(英国独立党)が勝利を収めた背景に、こうした移民への対応の変化が第一に挙げられるだろう。

ちなみにEUのなかで、反EU、反移民の政党と得票は下記の通り
 
 国名     政党名          得票率   ランク
〜〜〜     〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  〜〜〜   〜〜〜〜
英国      英国独立党(UKIP) 27・5%  第一位
フランス    国民戦線        25・0   第一位
イタリア    五つ星運動       21・2   第二位
ギリシア    黄金の夜明け       9・4%  第三位
ドイツ     ドイツのための選択肢   7・0   第五位