2016年10月09日

◆対中戦略で重要なTPPに反対

櫻井よしこ



対中戦略で重要なTPPに反対 クリントン氏にも期待できない現実 

9月26日(日本時間27日)の米国大統領候補によるテレビ討論はあらため
て、大変化に備えよという世界各国への警告になったのではないか。
 
討論の勝者は誰か。直後の世論調査ではクリントン氏の勝利とみた人が
62%、トランプ氏は27%だった。
 
一方、米国の保守派の論客、チャールズ・クラウトハマー氏は、「内容
に関しては、どちらも相手を徹底的に追い詰められなかったという点で引
き分け。その場合、挑戦者であるトランプ氏の勝利だ」と分析した。
 
現時点でクリントン氏がやや有利だが、最終的にどちらが勝利するか
は、依然として分からない。しばらく前まで、私はどちらが次期大統領に
なるのか、非常に気になっていた。外交も安全保障も理解しているとは思
えないトランプ氏よりも、親中派だが、経験を積み、中国の実態を冷静に
見詰め、戦略的に思考できるクリントン氏の方が日本にとってふさわしい
と考えていた。
 
しかし、今はそうは思わない。外交や安全保障でクリントン氏にも期待で
きないと感ずる。理由は環太平洋経済連携協定(TPP)についての彼女
の変遷である。彼女は、第1期オバマ政権の国務長官としてTPPの戦略
性を認識し、支持したはずだ。TPPに込められた戦略とは、経済や価値
観を軸にして、中国と対峙する枠組みをつくるということだ。
 
対中関係で軍事と並んで重要なのが経済である。中国はアジアインフラ投
資銀行(AIIB)などを創設して中国主導の不透明な経済・金融の枠組
みをつくった。だが、中国的価値観に主導される世界に、私たちは屈服す
るわけにはいかない。経済活動を支える透明性や法令順守などの価値観を
重視したTPPは、21世紀の中華大帝国とでも呼ぶべき枠組みに対処する
重要な役割を担っていくはずだ。
 
無論、TPPはそのような対中戦略の理念だけで成り立つものではない。
日本企業や農家の舞台を国内1億2700万人の市場から8億人のそれへと拡大
し、必ず、繁栄をもたらすはずだ。
 
こうした中で厳しい交渉を経て、TPPは12カ国間で合意された。それを
クリントン氏は選挙キャンペーンの最中の8月11日、「今も反対だし、大
統領選後も反対する。大統領としても反対だ」と言い切った。さらに、今
回の討論で、「あなたはTPPを貿易における黄金の切り札(gold 
standard)と言ったではないか」と詰め寄られて、彼女はこう切
り返した。

「それは事実とは異なる。私はTPPが良い取引(deal)になること
を願っていると言ったにすぎない。しかし、いざ交渉が始まると、ちなみ
に私はその交渉に何の責任もないが、全く期待に沿わない内容だった」
 
ここには、TPPを対中戦略の枠組みと捉える視点が全くない。何という
ことか。対中戦略の重要性など、彼女の念頭には全くないのである。であ
れば戦略的とは到底思えないののしり言葉で支持を広げるトランプ氏と、
信念も戦略もないという点で、クリントン氏はどう違うのか。
 
日米同盟に関して、トランプ氏は「日本はカネを払っていない。他方で
100万台規模の車を米国に輸出し続けている」と強い不満を表明した。こ
のような考え方は日米同盟の実質的変革につながる。クリントン氏は日米
同盟重視だと語るが、TPPを認めない氏に期待するのも難しいだろう。
 
両氏の討論から、日本の唯一の同盟国が、頼れる相手でなくなりつつあ
ることがより明確に見えてくる。安倍晋三首相は臨時国会の所信表明で、
TPPの早期成立と憲法改正に言及した。日本の地力を強化し、それを
もってアジア・太平洋地域に貢献するのにTPPも憲法改正も必須の条件
だ。国際社会の速い変化の前で、日本も急がなければならない。

『週刊ダイヤモンド』 2016年10月8日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1152


◆平和憲法が作り出す安全という仮想空間

加瀬 英明



リオ・オリンピック大会の閉会式で、和服姿の小池都知事が五輪旗を受け
取った後に、スクリーンにスーパーマリオと、ドラエモンが映しだされた。

映像のマリオが、赤い球を投げた。すると、マリオの縫い包みに入った、
安倍首相がせりあがってきて、衣裳を脱ぐと手にした赤い球を高く掲げ
て、満場の喝采を浴びた。

この寸劇によって、全世界にわたって、安倍首相のイメージが親しみがあ
る、きわめて良いものとなった。

世界のマスコミが、安倍首相を「アベ・マリオ」と、呼ぶようになった。
「アベ・マリオ」は、分かりにくい「アベノミクス」よりも、日本に対す
る好感度を増すのに、大きく役立った。

戦前、日本は「フジヤマ、ゲイシャ、サムライ」と、安物の製品によって
知られていたが、この30年以上、日本のアニメが世界を制するようになっ
ている。

トヨタ、キャノンからソニーまで、夥しい数にのぼる企業名や、カラオ
ケ、スシ、シンカンセン、ゼン(禅)、ゴ(囲碁)、ジュード―、カラテ
をはじめとする多くの日本語が、日常会話の仲間入りするようになった。

中でも、どうして日本発のアニメが世界を制しているのだろうか。マンガ
manga(日本ではコミック)と、エモジemojiが、そのまま日本語で全世界
で通用している。

神道がそのもととなっている。神道は多神教であって、万物に神が宿るこ
とから、アニミズム(精霊信仰)と呼ばれる。

アニミズムはラテン語のアニマ(anima)から、発している。アニマは
息、風、生命を意味している。アニメは、スマホや、テレビ、ハイテクの
ような和製英語だが、「アニメーション」のもとの語源は、アニマだ。

日本生まれのポケモン・ゴーが、全世界で流行している。Pokémon
GOと書かれる。

親しいアメリカの友人が、ニューヨークから来て、ポケモン・ゴーを手に
妖精を追っかけている若者や、中年男女でセントラル公園(パーク)から五
番街(フィフス・アベニュー)まで、いっぱいだといった。

イギリスの新聞が、ロンドン中心の公園のハイドパークから、トラファル
ガー広場(スクエア)まで、ポケモンに興ずる男女によって、埋められてい
ると、報じている。イランではポケモンがイスラムの戒律(ハラル)に反す
るといって、禁じられている。

宮崎駿監督の『もののけ姫』は、神道の世界だ。神があらゆる自然に、ひ
そんでいる。

いま、西洋文明が行き詰るようになった。人間だけが主人公で、自然は征
服されるべき対象である。一神教は自己中心で、歴史を通じて対立と抗争
をもたらしてきた。

日本には人間対自然という、発想がない。だから明治に入るまで、「自
然」という言葉が存在しなかった。明治翻訳語の一つである。

日本文化は人もその一員である自然が、多様だという前提に立っているか
ら、やさしい。人類倫理にかなっている。

 といっても、私はポケモン・ゴーをはじめとする仮想空間――バーチュア
ル・リアリティのゲームは、おぞましいと思う。

 私は子供のころに、お伽話(とぎばなし)を世界の現実を知る手立てとし
て、胸をときめかして読んだものだった。

 だが、ポケモン・ゴーなどのゲームに熱中すると、現実から仮想空間へ
逃避して、世界の主人公となった妄想に、浸ることになる。相模原で19
人の身障者を殺戮した犯人も、人気女優の息子で、強姦事件を起した若い
俳優も、このような仮想空間の主人公だった。

 リオで熱戦が進んでいたあいだに、終戦記念日が巡ってきた。新聞がい
つものように、「平和の誓いあらたに」という見出しを組んだ。

 日本国民の多くが、平和憲法さえあれば日本は安全だという、夢遊病者
のような仮想空間の主人公となっている。



◆英国ポンド、31年ぶりの大暴落だが

宮崎 正弘 



<平成28年(2016)10月8日(土曜日)通算第5053号>  

〜英国ポンド、31年ぶりの大暴落だが
  英国首脳「歓迎すべからざる事態ではない」と楽天的なのだ〜

BREXIT(英国のEU離脱)以来、英国ポンドは弱含みの相場を続
けてきたが、10月7日、とうとう31年ぶりに最安値を記録した。

対米ドルの為替レートは1・2364から1・1841へ。日本円に直 すと、1
ポンド=127円から、122円に。(1年前は180円だったから、い かに英国
通貨が安いか。ロンドンに行くなら今だ)。

為替相場が荒れた直接の原因はオランド仏大統領とメルケル独首相の
「いいとこ取りはさせない」とする英国批判発言だった。

普通なら顔面蒼白となっておろおろするはずの英国の通貨担当トップは
「ポンドはふさわしいレートで落ち着くだろうし、いまのレートは、適切
なレートの範囲にあるといえる。そもそも英国ポンドはこれまでが『高す
ぎた』のだから」と発言した。
 
「歓迎すべからざる事態ではない」と楽天的なのである。

この発言の裏には、英国ポンドが、従来の国際貿易でなしてきた通貨覇 権
国の地位を自ら降りると宣言しているようなもので、英国政界の空気を
それとなく反映していると判断しても良いのかも知れない。

この発言は日本等アジアを歴訪中のマーク・ガーニア貿易次官が、香港
での記者会見で語ったもので、ついでに「香港ならびに中国にとって対英
国投資は絶好のチャンスだ」と付け加えている。香港紙「サウスチャイナ
モーニングポスト」(10月8日)は、一面トップで報じた。
      

2016年10月08日

◆アジア諸国にとっての「トランプ大統領」

宮崎 正弘



<平成28年(2016)10月7日(金曜日)通算第5052号>  

 〜アジア諸国にとって「トランプ大統領」の出現は「未知との遭遇」
  中国、香港などはヒラリーなら「やることが予測できるが。。。。」〜

あと1ヶ月。

全米マスコミは大半がクリントン支持の社説を打った。しかしクリントン
当確を予測するメディアはほとんどない。

それほどの激戦、フロリダ、オハイオ、インディアナなどでは接戦が続い
ており、事前の世論調査による両候補の開きは5%以内。

これは「誤差の範囲」だから、「英国のEU離脱」(BREXIT)のよ
うな、「予測の外れ」、米国政治のハプニングを警戒している。

日本のメディアは、明確にクリントン当選を予測することはないが、ほぼ
クリントン支持とみてよい(産経を含めて)。
日本政府ならびに外務省もトランプだと日米関係に大きな齟齬が生じると
して警戒している。

アジアはどうかと言えば、中国のメディアもしくは香港の新聞を覗く
と、やはりトランプ大統領の出現は戸惑い、困惑、つまり「未知との遭
遇」となると、消極的である。中国の本音もかって知ったる、つまり御し
やすいクリントン歓迎というところだろう。

ラムズフェルト元国防長官がいうように「知っていることを知ってい
る」「知らないということを知っている」「知らないことも知らない」と
三つの認識の段階があるとするなら、トランプ大統領が誕生することは未
知の世界、何が起こるか分からないという情報空間に這入り込むとなる、
などと比喩している。

いずれにしてもあと1ヶ月。
     

◆私の「身辺雑記」(386)

平井 修一



■10月4日(火)、朝6:30は室温23度、晴、ちょっと肌寒い感じ。

ミックスペーパーのゴミ出し、往復300メートル、屈伸運動をしていたら
60歳ほどのご夫婦が急ぎ足、速歩で散歩中。2人とも猫背でデブ。食を含
めて生活が一緒だから・・・余程の生活革命をしないと肥満は直らな
い・・・余計なお世話だが。

2003年、52歳の春に胃袋をちょん切ったことでずいぶんひどい思いをした
が、いいこともあった。父が糖尿病だったので「俺もそうなるんだなあ」
と漠然と覚悟はしていたのだが、胃袋がなくなったので食欲は減退、10キ
ロほど痩せ、しょっちゅう低血糖、低血圧に悩まされたものの、糖尿病に
なりようがなくなったのは結構なことだった。

父は53歳で糖尿病になり、アッチも稼働しなくなったようで、週末にお妾
さんのところへ行ったら座卓にビール瓶と飲みかけのグラスがあったそう
だ。お妾さんに新しい旦那ができたのである。父は黙って帰ると、母に
「おい、手切れ金を持っていけ」。

母はいそいそと100万円を届けた。小生が高2あたり、1967年頃、大卒の初
任給(銀行)が9万円だっだから今なら300万円くらいだろう。

母は一時期は般若のような形相で父を憎んでいたが(士族だからプライド
が高い、高過ぎ)、速攻で「恩讐の彼方に」転じ、お妾さんと手を切った
その晩から父母が数年ぶりに同衾していたのを見て、小生は度肝を抜かれ
た、オーマイゴッド、人生は不可解なり!

父はズボンの尻ポケットに札束を入れていたが、日経の株式ページを見な
がら父が昼寝をすると、時々母がくすねていたようである。父が知らない
わけはないのだが、一言も苦情を言わなかった。皇軍兵士のプライドだっ
たのだろうなあ、内心ではクスクスしていたのではないか。「ま、いい
か、俺もバカをやっているのだから」と。

小生はオマセ、早生(ワセ)である。小3で憲法を読んで「ふーん、大人
の世界は本音と建前があるんだ、ま、そんなものか」、小4で「他山の
石」の意味を知って「母を泣かす父は見本にならんな、女はペロペロ可愛
がった方がいい」、小6で踏切の前に一時間ほどたたずんで「人生は生き
るに値しない、飛び込むか・・・しかし、父母は死ぬまで悲しむだろう
な、それは不本意だ」と思いとどまった。

気の利いた子供は小学生でも人生の機微を学ぶのである、それが子供に
とっていいことかどうかは知らないが。小生は鬱屈した青年、猪突猛進の
女性崇拝の壮年になった。老いても未だに「女はすべからく女神である、
ペロペロ可愛がるべし」と思っている。正解だったかどうかは分からない
が、それしかなかったとは思う。

わが青春は実に悲惨だった。片っ端から振られた。

この9月はやたらと雨が続いて、どっさりと本を置いてある8畳間が古本臭
くなり、放置してあった清浄機を掃除して動かした。その際に24歳のエ
ディタースクール時代のノートが出てきたのだが、こんなことが書かれて
いた。太宰を読みすぎたのか。

<さあ、これから書くのは僕のグチだ。惚れてる世津子への惨めなグチ
だ。モテタためしのない野郎のグチだ。みっともなく、かっこ悪いグチだ。

僕は今酔っている。酒を飲まずにゃいられないよ。お前に会えるからこ
そ、僕は渋谷くんだりまで行ったんだ。

お前が好きなんだよ、惚れているんだよ、結婚してくれよ。(僕は自分の
期待したことがことごとく裏切られることを知っている。だからそんなこ
とは夢のまた夢だ)

僕は君に自分の弱さをさらけ出したい。僕が人より優れているのは弱さの
点においてだ。ミジメなことならヒトには負けないだろう>

なんという鬱屈した青春だったろう。かなり太宰にかぶれていたようだ。
世津子に誘われたら玉川上水に平気で飛び込みそうだ。

世津子は上背もあるとびっきりの美女だった。モデルの撮影会へ一緒に
行ったら、モデルより綺麗だから小生はひたすら世津子を撮影した。世津
子が生まれて初めて無断外泊したのは小生が一緒だった。酒とたばこを教
えたのは間違いだった。いいところに嫁いだが、妊娠中も悪癖が続いてい
たのだろう、子供に障害が出てしまった。

で、まあいろいろあって小生はカミサンに拾われたのだが、カミサン曰く
「アンタと一緒なら一生退屈しないと思ったのよ」。いまでも退屈しない
どころか小生は何をしでかすか分からないから日々、ヒヤヒヤドキドキし
ているのではないか。

カミサンと一緒になって小生の惨めな青春は終わり、ハッピーとラッキー
もついてきた。アゲマンだな。起業した会社は上手く転がり始め、才色兼
備でいじめに遭った女の子が続々と駆け込み寺のような女性崇拝、女性讃
歌のわが社に集まってきた。

なかでも神戸女学院出の玲子ちゃんは音楽系出版社で酷いいじめを受けた
そうで、ときどき会社に手伝いに来るカミサンも「アンタ、玲子ちゃん大
好きでしょ、フフフ」なんて喜んでいた。

聡明な玲子ちゃんはいいところに嫁いだが、手元不如意で満足な退職金を
出せなかったのは小生の無念である。今からでも遅くはない、現金を支給
せよ、だな。

母の晩年に父の浮気というか女遊びについてどう思っているか聞いてみた。

「あの時代はね、食べることだって大変だったのよ。お父さんは必死で頑
張ったの。浮気なんてどうでもいいこと、些細なことよ」

カミサンはジャリンコチエに出てくる父親そっくりの親父さんが大好き
だった。親父さん、つまり義父は奄美の名瀬を拠点に海運業(貨物と旅
客、沖縄=当時は米国との密貿易)を営んでおり、自宅のある秋名にはた
まにしか帰ってこなかった。そしてカネとお土産をどっさりと持ってくる
のだ。

名瀬に女の一人や二人はいただろう、南海のハブと言われた奄美出身の旭
道山そっくりで、鋼のような筋肉と村対抗運動会のエース、そして喧嘩が
強く、カネ回りがいいとなれば、女が放っておくはずがない。

カミサンにとって男は「稼いでナンボ」、聖人君子より聖徳太子。だから
小生の怪しいハーレムにもニコニコしていたのだ。稼ぎの少ない紳士、一
方で酒もあおれば女も泣かすがせっせとカネを持ってくる聖徳太子・・・
母もカミサンもハーレムの平井ガールズも聖徳太子が大好きなのだ。

だから嫉妬心ゼロ。実にいい女房をもらったものだ。小生は、まあ孫悟空
で、カミサンの手の平で好き勝手にしていた(している)だけだろう。晩
年になるといろいろと思い出すものだ。

なお、平井ガールズは小生を気のいい兄貴ぐらいにしか思っていなかっ
た。小生が片想いしていただけではあったなあ。

■10月5日(水)、朝6:00は室温24度、晴/曇。

昨日は昼食後に一気に体調が悪くなり、体を支えるのがやっとというひど
さだった。いつ倒れるか分かったものではない。微熱、くしゃみ、喉の痛
み・・・風邪をひいたようだ。

小生の家事の負担を軽くしようとカミサンとNは食器を洗い、洗濯物も畳
んだくれるようになって大いに助かっているが、食事を作れなくなる日は
近い気がする。主夫失格、廃業だな。末期症状・・・中共みたい。

今朝の産経にもあったが、中共の言論統制はなりふり構わぬ露骨な言論弾
圧になってきた。幹部は人民を激しく恐れているのだ。

風刺マンガ家・辣椒(ラージャオ、王立銘)氏の論考「スマホに潜む『悪
魔』が中国人を脅かす」をじっくり読んでくれ。想像以上のひどさだ。↓
http://www.newsweekjapan.jp/rebelpepper/2016/09/post-31.php

暴君・桀紂(けっちゅう)の古代に戻ったような絶望大陸、支那に未来は
あるのだろうか。「呪われた大地」という印象だ。

「遠藤誉から、大陸へのメッセージ」(ニューズウィーク10/4)から引用
する。

<シンポジウムが行われたのは、ホワイトハウスにほど近い「ナショナ
ル・プレス・クラブ」だ。在米中国研究者やメディアを前に、遠藤はこう
主張した。現在の習近平政権が強硬な対日政策を執るなか、習の基盤であ
る中国共産党と「建国の父」と言われる毛沢東は、実は日本軍と共謀する
ことで中華人民共和国を築き上げた――。

(遠藤の)講演は近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)に基
づいた内容で、その中国語版は今年6月にアメリカでも発売されている。

中国生まれの遠藤は84年の著書『チャーズ――出口なき大地』で自身のルー
ツと向き合いながら中国建国の闇に光を当て、話題を呼んだ。その遠藤
が、今度は「毛沢東と中国共産党の虚構」を暴き、中国の人たちに伝えよ
うとしている。遠藤がそこまでして大陸にメッセージを送るのは何故なの
か。講演翌日、本誌・小暮聡子がワシントンで話を聞いた。

――著書『毛沢東 日本軍と共謀した男』の中で、毛沢東の時代から続く中
国人の精神構造について「大地のトラウマ」という言葉を使って説明している

わずか2万人ほどになっていた中国共産党軍がなぜ勢力を伸ばし、毛沢東
が政権を取ることができたのか。それは毛沢東が、人口の90%ほどを占
め、農奴のように使われていた農民に対して、地主に反抗して自分たちの
自由を取り戻せ、蜂起せよ、立ち上がれ、と呼びかけたからだ。

立ち上がった農民たちは、地主1人に対してみんなで殴ったり蹴ったり石
を投げたり、地主が死ぬまで色々なことをやる。それを思い切りやらない
人間というのは革命の心がない「反革命分子」として逆にみんなにやられ
てしまうし、今度は自分が血祭りにあげられる。

退路をなくさせる――これは毛沢東のすごい戦略だと思う。常に1つの標的
を定めてそれを徹底してやっつけ、やっつけた人間は人格的にも身分的に
もとても高く位置付けられて、良いポジションが与えられ、兵士になった
りする。そういう戦いを繰り返させて、中国全土を覆うように広げていった。

中華人民共和国が誕生する過程がそうだったため、60年代に起きた文化大
革命のときも、標的を作ってみんなで罵倒して殴ってということをやっ
た。それをやらないと、お前は革命の心が強くないと言われてやられてし
まうからだ。

中国の人民はそういう精神文化の中で育ってきて、それが心の中に染みつ
いている。だから反日暴動が起きたときにも、反日を叫ばないとお前は売
国奴だと言われてしまうので、誰かが叫びはじめたら自分も叫ぶ。

中国が誕生する過程で培われてきたこの精神性、精神的な土壌のことを、
私は「大地のトラウマ」と呼んでいる。

――習近平政権は今、そのトラウマに火をつけるようなことをやっているのか

習近平政権には2つの側面がある。1つは、習近平はそうした反日暴動は最
終的には反政府デモに行きつくことを前・胡錦涛政権時代から学んでいる
ので、反日デモを絶対に起こさせないように抑えている。反政府デモが起
きたら今の政権は持たないということを十分に分かっているからだ。

しかし一方で自分が愛国主義教育をやってきた手前、自分が日本に対して
これほどの強硬だということを人民に見せていないと、「お前が売国政府
だ」と必ず言われることになる。あれほど強硬な対日強硬策をやっている
のはそのためだ。

――習近平自身が「大地のトラウマ」を抱えているということか

そうだ。人民の声を一番怖がっている。

――ご自分が7歳のときに戦争が終わった後、満州国の首都だった「新京」
(現在の長春)で飢餓体験をした。その体験は、別の著書『チャーズ』に
も書かれている。この時の強烈な原体験が、自分の毛沢東を観る目に何ら
かの影響を与えていると思うか

そう思う。毛沢東は長春を包囲させて「長春を死城たらしめよ」というこ
とを林彪との往復書簡の中で書いているのだが、その毛沢東という人物
と、その歴史を残させない中国共産党と、私たちが小さいころから「毛沢
東ほど偉大な人物はいない」「中国共産党ほど偉大な党はない」と教育さ
れながら育ってきたことには、感覚的なギャップがあった。

共産党を批判的に言ってはいけない、毛沢東を尊敬しない気持ちになって
はいけないという抑制的な感覚が、小さいころからずっとある。中華人民
共和国で生まれ育った人間でないとなかなか分からない心理だと思うが、
暗黙の抑圧だ。

だが、おかしいじゃないかと。どうして、苦しんでいる人民のために新中
国を建設すると言っておきながら、自国の民を飢え死にさせて知らん顔し
ているのか。建国後には、もう平和になったというのに何千万という自国
の人間の命を犠牲にした。餓死させたり、文化大革命で互いに戦わせた
り、投獄したりという形で死なせてしまった。

平時に自国民をここまで死なせる指導者というのは、いったいどんな人間
なのか。自分の人生の戦いの一環として、毛沢東よ、あなたは何者なん
だ。何をしてきたんだ、なぜこんなことをしたんだ、という問いかけのよ
うなものが心の中にあった。

(毛沢東が日本軍と共謀していた)それが分かったことで、私がずっと生
涯抱えてきた何十万もの人を餓死させた毛沢東に対する非常に複雑な恨
み、私の人生を返してくれ、私の父の苦しみを返せ、という憤りが消えて
しまった。

ここまでのことをやる人間ならば、何十万もの人を餓死させることなど彼
にとっては小さなことに過ぎなかったのだろうと。自分が帝王になるため
ならどんなことでもやる、手段を選ばない人間だ、と。

それを初めて知ることによって、長春で餓死した人たちに対して生涯をか
けて抱いてきたこだわりというのが、初めて消えた。初めてピリオドを打
てたし、初めて楽になった。

自分が国を取るためには日本軍と手を結ぶということさえやる。こんなこ
とまでやる人間であるならば、自国民を殺すくらいなんとも思わないだろ
う、と思うようになった。

――納得したということか

そうだ、納得した>

ここまで書いたらPCがネット接続できなくなってしまった。あれこれやっ
たが全くダメ。そのうちリモートサービスで直してもらうことになるだろ
う。ウイルスなのだろうか。

昼過ぎにパパさんに連れられて3歳女児来。ジャングルジムから転落して
唇を切り、2針縫ったという。カミサンが休みなので助かった。やがて水
を飲んでも吐くようになったが、風邪をひいているようだ。転落したのも
目まいからではないか。夕方に小児科へ。

ゲボ連発で、シーツ、布団カバーなども洗濯。小生も体調不良などとは
言ってられない。子育ては子供も親もヂヂババも命懸け、大変だ。現場を
知らない政治家は「もっと産め、外で働け、輝け」などと戯言(たわご
と)を叫んでいるが、女を殺す気か。数年間の専業主婦を経てから外職
(そとしょく)できるようにしたらいい。

企業が旦那の給料を上げればそれが可能だ。2、3人は産んでもらえるかも
しれない。子供が増えれば消費も拡大してデフレから抜け出せるのではな
いか。ヂヂババへの無意味な社会給付を減らして、子育て世代を支援せよ。

■10月6日(木)、朝6:00は室温25度、台風一過の快晴。今日も集団的子
育て。3歳女児を預かる。

PCは相変わらず通信機能ゼロ。17時に長女がウイスキーを手土産に帰宅し
たら、「私が治す」宣言。サポートセンターとインタバルを含めてあれこ
れやって、21時45分、見事に回復した。有り難いことである。

WIN10に替えた人からの苦情が殺到しているそうだ。小生もWIN10は8割は
評価するが、フリーズが多いのが実に悩ましい。これは致命的な欠陥だ。
容量が限られているのに「アレモコレモ」と機能を拡大するとフリーズし
やすい。

これはアップル・マックの編集ソフトを使っていた時にしょっちゅう悩ま
された。WIN10はユーザーに“お試し”させる前に、基本的なソフトは絶対
的に安定していることを確認すべきだった。怪しいPCはこりごりだ。WIN7
の方が信頼性は高い。

同志諸君、日々警戒が必要だ。「今がチャンス、来月からは有料」なんて
甘言に騙されるな。移民拡大を警戒せよ、ズロースを脱ぐととんでもない
ことになるぞ。(2016/10/6)



◆いま、喫緊の課題は憲法改正とTPP

櫻井よしこ



「憲法はどうあるべきか。日本が、これから、どういう国を目指すのか。
それを決めるのは政府ではありません。国民です。そして、その案を国民
に提示するのは、私たち国会議員の責任であります」
 
安倍晋三首相は9月26日、臨時国会での所信表明演説でこう語り、
「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の早期発効を大きなチャンスと
し」たい、と強調した。
 
夏の参議院議員選挙で大勝し、戦後初めて、衆参両院で憲法改正に必要な
3分の2以上の勢力を獲得した首相は、日本の課題を率直に表明した。い
ま、日本に必要な戦略はまさにTPPの早期発効と憲法改正である。いず
れの課題も実現には強いリーダーシップと国民の強い支持が不可欠だ。首
相の言葉どおり、決めるのは政府ではなく国民だからだ。
 
民主主義国家において、国民の選択が国の運命をどれ程決定的に変える
か。イギリスのEU離脱の決定やアメリカの大統領選挙を見れば明らか
だ。イギリスはEU離脱によって中・長期的に力を落としていくだろう。

アメリカでは大統領候補のクリントン、トランプ両氏が競うが、両氏の主
張からは超大国アメリカが、台頭した中国にどう向き合い、如何なる世界
秩序を維持していくのか、その長期戦略は窺えない。
 
国際法と民主主義を重視する陣営と、それを否定する陣営とのせめぎ合
いの真っ只中に、いま全世界が置かれている。この中で、アメリカの世界
に対する責任は非常に大きいが、両候補は共にTPPを否定する。この1
点だけでも、両氏は世界戦略を担う資格に欠けている。
 
実力があるにも拘らず、アメリカは世界戦略を担う力を自ら打ち捨てよう
としているかのようだ。これでは、アメリカは世界のリーダーシップを中
国に譲り渡して2番手の国になりかねない。しかし、こんな2人を候補者に
選んだのもアメリカ国民である。

新たな世界秩序
 
国際情勢の潮流が大きく変化したいま、その変化が日本にもたらす影響の
深刻さを考えなければならない。
 
所信表明で首相は語った─「決して思考停止に陥ってはなりません」と。
日本の命運は国際社会の情勢と無関係ではあり得ない、大きく目を開い
て、日本が直面する脅威を認識すれば、憲法改正の必要性もわかるはずだ
ということではないのか。
 
だが、民進党の蓮舫代表は、首相の所信表明を、「伝わるものが全くな
い。まさしく総花的」とバッサリ切り捨てた。伝わるものは本当に、全く
ないのか。
 
民進党(当時は民主党)は政権与党当時、菅直人、野田佳彦両首相とも
TPP推進の立場だった。政権を預かる立場で国益を考えたとき、TPP
は重要な戦略だとしたわけだ。それがいまは反対である。
 
ちなみに自民党も野党時代には反対した。だが政権を奪還するや、安倍首
相はTPP参加を決定し、厳しい交渉を経て、最終合意に漕ぎつけ、い
ま、早期発効を目指す。
 
民進党も自民党も政権与党として国の運営に責任を持ち、国益擁護の立場
に身を置いたときはTPPに賛成している。その理由は、台頭した中国が
全く異る価値観で新たな世界秩序を構築しようとするのに対して、日本は
アメリカと共に従来の価値観を共有する国々と連携しなければ、大変なこ
とになると実感するからであろう。
 
3年3か月、政権与党の座にいた民進党であれば、政権を預かる責任の重さ
はわかるはずだ。ここが、社民党や共産党などとの大きな違いである。民
進党が単なる反対のための反対をするのでなく、真に責任ある野党でなけ
ればならないゆえんだ。
 
にも拘らず、民進党はTPPには賛成できないという。理由として輸入米
に関する売買入札で業者が実際より価格を高く見せかけていた可能性があ
り、アメリカの安いコメが日本に流入する懸念を指摘する。
 
的外れの議論だ。TPPの取り決めではコメには778%という高い関税
率が維持される。平均すれば1キロ当たり341円の関税である。日本のコメ
は、安いものはキロ200円、アメリカから入ってくるコメがたとえ0円でも
関税をかければキロ341円になる。競争力は保たれるのだ。
 
こうしたことも理解したうえで、大戦略としてTPPをとらえることだ。
日米を軸に、透明性の高いルールによって維持される国際的枠組みを作る
ことが如何に重要か。それは中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)
をはじめ国際的枠組みを新設して中国中心の新世界を作ろうとしているの
を見れば明らかだ。

世界貿易機関(WTO)に加盟して、その恩恵を他国よりも受けながら、
中国は往々にしてWTOのルールを守らなかった。彼らが主軸となって、
新しい国際組織を作り、多くの国々が吸い込まれるように加盟しつつあ
る。だからこそ、日本もアメリカもより公正でより良い仕組みを作り、そ
こに多くの国々を集めようとしているのである。その具体策がTPPであ
る。TPPの重要性を戦略的にとらえられないのであれば、政権を担う資
格はないとさえ、私は思う。TPPを否定するクリントン、トランプ両氏
を否定するのも、同じ理由からだ。
 
憲法改正についても民進党は国益を考えているのか。蓮舫氏は15日、
「性急すぎる論点整理」などに反対の意向を表明したが、憲法改正は焦眉
の急である。一体何が「性急すぎる」のだろうか。

国民と国を守る責任
 
いま、南シナ海では中国が国際社会の強い反対と抗議にも拘らず、スカボ
ロー礁に手をかけつつある。同礁を押さえれば中国は防空識別圏
(ADIZ)を設け、南シナ海支配を確立させるだろう。
 
東シナ海のわが国の海には中国の武装公船及び軍艦が出没している。東
シナ海上空では人民解放軍の戦闘機がわが国領空に近づいて挑発的な飛行
をしてみせる。平時でも戦時でもないグレーゾーン事態が東シナ海の上空
ではすでに生まれている。
 
だが、わが国はこうした事態に何の法整備もできていない。先の平和安全
法制でもこの分野は置き去りになった。
 
日本の安全保障体制は、いま、この瞬間も欠陥だらけだ。欠陥を補って
いたアメリカも内向きの姿勢を強めている。その分、日本自身が力をつけ
なければならないのは明らかだ。この現実の危機を見れば、安保法制は
「戦争法」だと言って論難したり、憲法改正を遅らせるのは、日本を窮地
に追い込むことになるのだ。
 
民進党も、そして憲法改正を立党の精神とする自民党も歴史の前でい
ま、国民と国を守る責任を果たさなければならない。所信表明を憲法改正
で結んだ首相は、そのような歴史的使命を意識していたと、信じたい。
『週刊新潮』 2016年10月6日号 日本ルネッサンス 第723回

2016年10月07日

◆イラク領内に2000名の兵士が駐屯

宮崎 正弘
 


<平成28年(2016)10月6日(木曜日)通算第5051号 > 

〜トルコ軍、イラク領内に2000名の兵士が駐屯
   イラク政府、大使を召還し、アンカラに厳重抗議〜

ISの跳梁跋扈から2年、アレッポの反アサド武装勢力が劣勢に陥り、米
国ならびにNATOの思惑は大きく後退した。

反アサド勢力を支援してきたのは米国である。とくに反アサド勢力にリビ
アに供与した武器を回送しようとしたのはクリントン国務長官(当時)で
あった。

昨秋からロシアが参戦し、激しい空爆を反アサド勢力に加えたうえ、トル
コが空爆に加わり、ISは後退につぐ後退を余儀なくされた。アレッポは
半ば廃墟と化けた。

シリアをめぐる情勢は大きな転換期を迎えた。

トルコ国会はイラクのモスル北方にあるバシカに2000名のトルコ兵の残留
を決議し、他方、イラク国会は、トルコ軍の即時撤退を決議し、両国は大
使を召還。泥沼の非難合戦に入った。新展開である。

もともとトルコ軍がイラク領内に侵入したのは「クルド自治区地方政府の
マスード・バルザニ『首相』」の要請に拠るものであり、実際にクルド勢
力を(このクルドはアンカラ政権の傀儡)ISの攻撃から守った。

トルコ政府は「もともとISの脅威を増大させたのはイラクの無能による
ものであり、我々は自国民を守るために無政府地帯に作戦上、駐屯してい
るだけであり、バグダッド政府の抗議は受け入れられない」と突っぱねた。

ISが片付くと、次はトルコ vs イラク戦争?
               

◆極東ロシアに流れ込む中国人

坂本 英彰



9月4日、中国・杭州でG20の前に顔を合わせたプーチン露大統領と習近
平国家主席。プーチン氏はアイスクリームを贈って蜜月ぶりを演出したと
いうが…(ロイター)

人口が希薄なロシア極東に中国人が流入し、ロシア人を心理的に圧迫して
いる。ロシアの調査機関は今世紀半ばを待たず、中国人がロシア人を抜い
て極東地域で最大の民族になると予測する。

中国人には19世紀の不平等条約でウラジオストクなど極東の一部を奪われ
たとの思いがあり、ロシア人には不気味だ。欧米に対抗して蜜月ぶりを
演出する両国首脳の足元で、紛争の火だねが広がっている。 

■中国人150万人が違法流入

「中国人がロシアを侵略する-戦車ではなくスーツケースで」

米ABCニュースは7月、ロシア専門家による分析記事を電子版に掲載した。
露メディアによると、国境管理を担当する政府高官の話として、過去1年
半で150万人の中国人が極東に違法流入したという。数字は誇張ぎみだと
しつつも、「国境を越える大きな流れがあることは確かだ」と記す。

カーネギー財団モスクワ・センターによると在ロシアの中国人は1977年に
は25万人にすぎなかったが、いまでは巨大都市に匹敵する200万人に増加
した。移民担当の政府機関は、極東では20〜30年で中国人がロシア人を抜
いて最大の民族グループになるとしている。

インドの2倍近い広さがある極東連邦管区の人口は、兵庫県を少し上回る
630万人ほど。これに対し、国境の南側に接する中国東北部の遼寧、吉
林、黒竜江省はあわせて約1億人を抱える。

国境を流れるアムール川(黒竜江)をはさんだブラゴベシチェンスクと黒
竜江省黒河は、両地域の発展の差を象徴するような光景だ。人口約20万人
の地方都市の対岸には、近代的な高層ビルが立ち並ぶ人口約200万人の大
都市が向き合う。

ABCの記事は「メキシコが過剰な人口を米国にはき出すように、ロシア極
東は中国の人口安全弁のようになってきている」と指摘した。ただし流入
を防ぐために「壁」を築くと米大統領選の候補が宣言するような米・メキ
シコ関係と中露関係は逆だ。中露間では人を送り出す中国の方が、ロシア
に対して優位に立つ。

■20年後の知事は中国人!?

ソ連崩壊後に過疎化が進行した極東で、労働力不足は深刻だ。耕作放棄地
が増え、地元住民だけでは到底、維持しきれない。

米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿したロヨラ大シカゴ校のコダルコフス
キー教授によると、過去10年で日本の面積の2倍超の約80万平方キロの農
地が中国人に安価にリースされた。そこでは大豆やトウモロコシ、養豚な
ど大規模な農業ビジネスが展開されている。

中国と接する極東のザバイカル地方は今年、東京都の半分にあたる1150平
方キロの土地を中国企業に49年間長期リースすることで基本合意した。1
ヘクタールあたり年500円余という格安だ。これに対しては「20年後には
知事が中国人になりかねない」などと、ロシア国内で猛反発も起きた。

ロシア政府はロシア人の移住や定着を促すため土地を無償貸与する法律を
制定したが、ソ連崩壊後の二の舞になる可能性も指摘されている。1990年
代、分配された国有企業の株は瞬く間に買収され、政府とつながる一部特
権層が私腹を肥やす結果となった。

極東は中国なしでは立ちゆかず、結果として中国人の流入を招く。コダル
コフスキー教授は「中国はアムール川沿いのロシア領を事実上の植民地に
してしまった」と指摘した。

■「未回復の領土」

中国人が大量流入する状況で「領土回復運動」に火がつくと、ロシアに
とっては取り返しのつかない結果となりかねない。

欧米列強のひとつだったロシア帝国は1858年と1860年、弱体著しい清帝国
との間で愛琿条約、北京条約をそれぞれ締結し極東地域を獲得した。沿海
州などを含む日本の数倍に匹敵する広大な領域で、これにより清帝国は北
東部で海への開口部を失った。アヘン戦争後に英国領になった香港同様、
清にとって屈辱的な不平等条約だ。

中国と旧ソ連は1960年代の国境紛争で武力衝突まで起こしたが、冷戦終結
後に国境画定交渉を加速し、2008年に最終確定した。現在、公式には両国
に領土問題は存在しない。

にもかかわらず中国のインターネット上には「ロシアに奪われた未回復の
領土」といったコメントが頻出する。

ニューヨーク・タイムズは7月、近年、中国人観光客が急増しているウラ
ジオストクをリポートした。海辺の荒れ地を極東の拠点として開発し、
「東方を支配する」と命名した欧風の町だ。吉林省から来た男性は「ここ
は明らかにわれわれの領土だった。

急いで取り戻そうと思っているわけではないが」と話す。同市にある歴史
研究機関の幹部は「学者や官僚がウラジオストクの領有権について持ち出
すことはないが、不平等条約について教えられてきた多くの一般中国人は
いつか取り返すべきだと信じている」と話した。

■アイスで“蜜月”演出も

台湾やチベット、尖閣諸島や南シナ海などをめぐって歴代政権があおって
きた領土ナショナリズムは、政権の思惑を超えロシアにも矛先が向かう。
極東も「奪われた領土」だとの認識を多くの中国人が共有する。

9月に中国・杭州で行われた首脳会談でプーチン大統領は、習近平国家主
席が好物というロシア製アイスクリームを贈ってまさに蜜月を演出した。
中露はそれぞれクリミア半島や南シナ海などをめぐって欧米と対立し、対
抗軸として連携を強める。

しかし極東の領土問題というパンドラの箱は何とか封印されている状況
だ。ナショナリズムに火がつけば、アイスクリームなどいとも簡単に溶か
してしまうだろう。

産経ニュース【世界を読む】「奪われた領土」極東ロシアに流れ込む中国
人…“スーツケースで侵略”は危険な火ダネ 2016.10.4

                 (採録:松本市 久保田 康文)




◆ゼミ形式授業の成果 ― 優秀な学生論文

〜マスコミと権力の関係を論ぜよ 〜

浅野勝人(安保政策研究会理事長)



国会議員当時の同僚で、とりわけ懇意であった故萩野浩基・前学長のお誘いをいただいて、東北福祉大学特任教授を仰せつかっています。担当は「マスコミュ二ケーション概論」です。もう数年になります。学生に教える知識は持ち合わせていませんが、半世紀の余、彼らより長く生きていますので経験則を話すことはできます。

ですから、一方的に講義をするのはごく基礎的な理論だけに留め、テキストを読んだ感想文を発表して論評し合ったり、時には模擬記者会見をして報道記事を書いたりします。

夏季集中講義ですから3日間、朝8時45分から夕方5時半まで、文科省の規範にしたがってびっしりやります。学生は2単位取得。たったの3日間で学生のセンスもみるみる磨かれます。

今年の修了論文、10人の中から講義内容をよく理解し、ディベートを生かした最優秀のレポートを本人の了解を得て紹介させていただきます。

― 小論文:テーマ ―
マスコミと権力の関係を論ぜよ。
『 報道の自由 』に限界はあるか。
福祉行政学科 2年  原田尚也
マスコミが社会に対して与える影響は極めて大きい。

W.リップマンは、論文「世論」の中で、マスメディアの報道は同じイメージを繰り返すことによって、現実とは異なる疑似環境を形成し、多くの人々を特定の世論に誘導すると述べている。
E.N.ノイマンは「沈黙の螺旋理論」で、メディアがある期間ある問題について一貫した姿勢を示すと、人々の意見もその方向に従う傾向が出てくると述べている。

マッコームスは「議題設定理論」について、マスメディアが特定の問題を取り上げる量が多ければ多いほど、人々はそれが重要なテーマであると思うようになると指摘している。
以上の理論から判断しても、マスコミが社会に与える影響は極めて大きいといえる。

マスコミは社会に対する影響が大きいだけに、時に権力とぶつかる可能性が生じる。一つの例が「西山事件」である。沖縄返還に関するアメリカとの密約を毎日新聞政治部・西山太吉記者が暴いた。密約の内容を世に暴露されたことによって、沖縄返還に泥を塗られたことは許せないとして、政府は西山記者を逮捕、起訴した。西山記者もひるむことなく最高裁判所まで戦い、今日なお闘っている。

 権力と対峙するのがジャーナリズムの役割であり、人々のためになると判断したら、保障されている自由の範囲内で権力に屈することなく報道しなくてはならない。ジャーナリズムは、中立公正を求めて不偏不党をかざし、是々非々で時の政権と対峙しなくてはならないからである。これが今回の授業で学んだ最大のポイントである。

 マスコミ、ジャ―ナリズムは、報道の自由と取材の自由が憲法で保障されている。これらの権利が保障されないと、国民の知る権利を確保できないので、基本的人権も成り立たなくなる恐れが生じる。だから報道、取材の自由は、国民の知る権利に応え、権力と対等に対峙する使命を全うするために何よりも大切な権利として認められている。しかしながら、報道の自由は憲法で保障されている最も重い権利ではあるが、おのずと制限がある。

第1に倫理を犯してはならない。
西山事件では、極秘電報を得るために、西山記者は女性事務官と情を通じた。このことは世論から批判を浴びる結果となり、せっかくの世紀の特ダネが取材の可否という課題にすり替えられてしまった。従って、倫理を犯すような取材方法は、取材相手の人生を狂わせてしまう結果を招く可能性があり、憲法で保障されている自由の範囲を逸脱していると考える。

 第2に、メディアスクラムによるスタンピート現象を起こしてはならない。
松本サリン事件では、被害者であるはずの河野義行さんを犯人だと決めつけた地元新聞の情報にあおられて報道が過熱した。メディアがこぞって河野さんを犯人に仕立てて言いたい放題、書きたい放題のスタンピート報道をしたため、警察を焦らせて誤った捜査結果を出させてしまった。メディアがスクープ合戦に走り、不確かな証言を次々に報道して、被害者として苦しんでいた一家を追い詰めてしまった。取材をあまりに過熱させてしまうことによって、関係者のプライバシーを侵害したり、日常生活を壊したり、時には人権を侵すようなことがあってはならない。

報道の自由が保障されることは、民主社会を維持、発展させていく上で極めて重要だが、その自由に限界がないわけではない。報道、取材の自由は、重い責任感と高い倫理観を担保に保障されていることを忘れてはならない。

以上です。浅野特任教授の評価は優の上の「秀」。
3日間の特訓で、ここまで伸びる糊代を若い学生は持ち合わせています。
もう一つは、先生がいいからです(?)
― <元内閣官房副長官>

2016年10月06日

◆河野洋平元衆院議長の愚説に呆れる

阿比留 瑠比



日韓合意、河野洋平元衆院議長の愚説に呆れる 誰の後始末なのか

のこのことテレビに出てきて、またテキトーなことを得々と語ってい
た。4日のBSフジ番組に出演していた河野洋平元衆院議長のことであ
る。政治家はもともと我(が)が強く、自分が一番だというタイプが多い
ものだが、それにしても「重鎮」「大物」と言われるOBたちに、自身を
全く省みずに現役政治家の足を引っ張りたがる者が目立つ。

 「(合意の)内容の外であり、毛頭考えていない」

安倍晋三首相は3日の衆院予算委員会でこう述べ、慰安婦問題に関する
昨年12月の日韓合意に関連し、韓国の元慰安婦支援財団が求めている首
相の謝罪の手紙を出す考えのないことを表明した。河野氏はこれに対し
て、早速、こんな批判を展開したのである。

「もう少し言い方はあったのではないか。人間性の問題かなと思う。
もっと寄り添った言い方があったかもしれない」

どうしてそこまで韓国側に寄り添わなくてはならないのか、さっぱり理
解できない。人間性まで持ち出す話だろうか。

安倍首相の発言は、韓国お得意の「ゴールポスト移動」にはもう付き合
わないとの日本政府の立場を示したものであり、当然のことである。首相
は合意当時、周囲にこう話していた。

「同情深い者たちにおけるよりも大きな愚行が、この世のどこかで行われ
ただろうか。同情深い者たちの愚行以上に多くの悩みを引き起こしたもの
が、この世に何かあっただろうか」

元慰安婦の女性らの言葉を無批判に垂れ流すことを「良心的」な報道だと
疑わなかったマスコミや、必要以上に彼女たちに寄り添おうとするあま
り、証拠資料も日本側証言もないまま慰安婦募集の強制性を認めた河野談
話のあり方こそが、慰安婦問題の原点である。

河野氏ら「同情することにおいて至福を覚えるような、あわれみ深い者た
ち」(ニーチェ)こそが、慰安婦問題をいたずらに悲劇化し、複雑化させ
て拡大し、その解決を遠ざけてきた。

安倍首相をはじめ現在の政府は今、むしろ河野氏らの後始末に悩み、追わ
れているのである。そこに気づくべきだろう。(論説委員兼政治部編集委員)
産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】2016.10.6




◆日米戦争の責任は一方的に米にある

加瀬 英明



日米戦争の責任は一方的にアメリカにある

8月に、トランプ共和党大統領候補が、「アメリカは日本を守る義務を
負っているのに、日本はアメリカを守る義務を負っていない。日本が攻撃
を蒙った時に、日本国民はソニーのテレビで、われわれの青年たちが血を
流すところを、高見の見物する」と、演説した。

すると、バイデン副大統領が「アメリカは占領下で、日本に軍隊を持つこ
とを禁じる憲法を持たせた。(トランプ氏は)それを、学校で習わなかっ
たのか」と、反論した。

それに対して、ワシントンの日本大使館が「アメリカは現行憲法の原案を
日本に提示したが、帝国議会の十分な審議を経たうえで施行された」とい
う、短いコメントを発表した。

民進党の岡田克也代表も、「アメリカが書いたというのは、副大統領とし
て不適切な発言だ。最終的には、国会で議論して、つくった」と、批判した。

7月に参議院議員選挙が行われたが、明らかに違憲だった。

憲法第7条4項は、国会議員は総選挙によって選ばれると、明記してい
る。参院選挙は総選挙ではなく、半数しか選出しない。

現行憲法には、このような杜撰な誤りが多い。帝国議会で十分な審議が行
われることが、なかったからである。

いったい、日本の憲法学者は、第7条を読んだことがあるのだろうか。護
憲派の国民も、日本国憲法を読んでいない。読んでいるのならば、せめて
第7条だけでも正そうとしたはずだ。

今年も、また夏が巡ってきた。そのたびに、71年前の戦争を戦ったこと
が、大きな誤りだったとして、再び戦争の惨禍を招いてはならないと、誓
うことが行われた。

アメリカが占領下で日本に強要した現憲法は、前文のなかで「政府の行為
によって再び戦争が起ることのないようにするために(略)この憲法を確
定する」と述べることによって、日本に先の戦争の責任をすべて負わせて
いる。

日本国憲法は、東京裁判と並んで、日本国民に日本が戦争犯罪国家である
ことを、刷り込むために、日本に押しつけられた。

天皇陛下が毎年、8月15日の全国戦没者追悼式典のお言葉のなかで、先の
戦争について、「深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返され
ないことを切に願う」と、述べられる。

英霊が犬死したと仰言せられたのに均しいが、昭和天皇の開戦の詔勅を否
定なさらねばならないのは、お痛ましいことである。国民として恐懼
(きょうく)に堪えない。しかし、象徴としてのお立場から、現憲法を遵守
されなければならないから、仕方がなかろう。

 だが、アメリカでも、先の日米戦争が、日本に強いられたのであり、そ
の責任が一方的にアメリカにあるという有力な証言もある。

 その1人が、ルーズベルト大統領の前任者だった、ハーバード・フー
バー大統領だ。回想録のなかで占領下の日本を訪れて、マッカーサー元帥
と3回にわたって会談したが、「日米戦争の責任は、ルーズベルトという
たった1人の狂人(マッドマン)にある」と述べたところ、マッカーサーが
賛成したと、記している。

 私は日本が先の戦争を戦ったことを、肯定している。もし、眉を顰めら
れる読者がおいでならば、『日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルト
の罪状・フーバー大統領回顧録を論ず』(勉誠出版社、2016年)を、
お読みいただきたい。私が序文を寄せている。


◆いまが柔軟政策で拉致解決にあたるとき

櫻井よしこ


9月17日、東京・平河町で拉致問題に関する国民大集会が開かれた。安倍
晋三首相が加藤勝信拉致問題担当大臣らと共に出席、「拉致問題は安倍内
閣で解決する」と改めて強調した。
 
横田めぐみさんの母、早紀江さんは、体調を崩している夫の滋さんを心配
しつつ、国民大集会に参加した。拉致被害者の家族で、いま親御さんが存
命なのは3家族。横田家に加えて有本恵子さんの両親である明弘、嘉代子
夫妻と増元るみ子さんの母、信子さんだけである。
 
早紀江さんが語った。

私たちも年を取りました。めぐみの拉致から39年、子供たちも長い年月、
囚われています。家族会は、有本さんも含めて安倍総理を信じていくとい
う形でまとまっています。けれど、余りにも時間がかかりすぎています。
どうしたら解決できるのか、本当にわかりません」
 
40年間、朝鮮半島情勢を研究し、救う会会長として力を尽してきた西岡力
氏は、いま拉致問題解決のために思い切った方策を取るべきだという。

「日朝双方に時間がありません。拉致被害者のご家族は高齢化していま
す。拉致された人たちが何十年もの間、どうしているのかも心配です。金
正恩も国内事情の危うさを考えれば、早急に対策が必要なはずです。双方
が切迫した状況の中で、金正恩はまたもや核・ミサイル発射の実験をし
て、国際的孤立を深めました。世界中が非難し圧力をかけています。それ
を利用するのです」
 
氏の主張はこうだ。世界が北朝鮮に圧力をかける中、日本は核・ミサイ
ル問題に加えて、拉致問題でも制裁をかけている唯一の国だ。日本政府独
自の制裁には、たとえば在日の朝鮮籍の人物の日本への再入国を許さない
などがある。現在は朝鮮総連中央本部の幹部らに限定している再入国禁止
措置を、政府は朝鮮総連の地方幹部にも広げようとしている。北朝鮮に忠
誠を誓う彼らだが、日本に戻れないことは相当の痛手で、効果は大きい。
日本が科している制裁は、国際社会のそれよりずっと厳しく、国際社会と
日本の制裁のギャップを活用すべきだ、というのだ。

「安倍首相は、制裁はそれを科すときと外すときと2度使えると語ってい
ます。いまは外すことによって北朝鮮を動かすことを考えるときです」

貴重な収入源
 
西岡氏は、北朝鮮への制裁を強めるのでなく、緩和せよといっているわ
けだ。そのために日本は核・ミサイルゆえにかけた制裁と、拉致ゆえにか
けた制裁を分けて考えよ、というのだ。

「国際社会がまとまって北朝鮮の核開発阻止でかけている制裁を日本が解
除することは勿論できません。しかし日本独自の制裁なら解除できる。拉
致被害者全員を日本に返すことを条件に、日本独自の制裁部分を緩和す
る、それを梃子にして拉致問題を先行解決するというのが家族会と私たち
の考えです。これを拒否するよりも受け入れる方が北朝鮮にとってもよい
条件だと思います」
 
拉致被害者全員の帰国という条件を守れば、日本が直ちに解除できる制
裁の具体例のひとつに松茸の輸入がある。松茸の収穫は北朝鮮の方が日本
よりも早く、そろそろ市場に出回る季節だ。だが、わが国はいま、松茸だ
けでなく北朝鮮の全品目の輸出入を独自に禁止している。そのため、北朝
鮮の松茸を日本に輸入することはできない。
 
ところが北朝鮮にとって松茸による収入は貴重である。『産経新聞』矢板
明夫記者が約1年前に詳報したが、日本が世界一高い値段で買う松茸の代
金は、金正恩第1書記の秘密資金を扱う朝鮮労働党39号室傘下の企業が管
理している。禁輸措置があるからといって、39号室は貴重な収入源を諦め
るわけにはいかない。そこで彼らは松茸を中朝国境に近い中国吉林省延吉
市の問屋の手に卸し、中国吉林産という偽装書類を作成して、日本に輸出
するのだ。
 
そのルートが今年も蠢き始めたという確かな情報がある。拉致問題対策本
部長の山谷えり子氏らは、現在、監視を強めさせている。

「このような日本独自の措置は、北朝鮮が拉致被害者全員を返せば緩和で
きます。北朝鮮は堂々と輸出できる。勿論、北朝鮮の核やミサイルに関す
る制裁は、日本も国際社会の責任ある国としてきちんと守ります。解除で
きる制裁と解除できない制裁を彼らに明確に伝えて、金正恩氏に冷静な計
算をさせるように仕向けるのはいまだと考えます」と、西岡氏。
 
9月8日に訪朝した参院議員のアントニオ猪木氏に北朝鮮側は序列2位の金
永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長、それに李洙墉(リ・ス
ヨン)朝鮮労働党副委員長(序列8位)との会談を設けた。西岡氏の解説
である。

核・ミサイルと拉致の分離

「李洙墉氏は金正恩氏がスイス留学中に面倒を見た人物です。金正日がス
イスの銀行に預けていた秘密資金を管理していたのも李氏です。正恩氏は
李氏をスイスから呼び戻して国際担当の党副委員長に任命した。委員長は
正恩氏自身です。正日、正恩と2代続いて信頼されている人物が、無所属
の議員にすぎない猪木さんに会った。正恩氏の最側近の金永南氏も会っ
た。これは、北朝鮮は国際社会と対立しているけれども、日本とは交渉し
たいというメッセージに他ならないと思います」
 
正恩氏は父親の正日氏が小泉訪朝のときに日本から取り損ねた1兆円がい
までも諦めきれていないという。彼は「俺が日本から1兆円を取ってや
る」と語ったそうだ。
 
だが、彼が核開発を諦めない限り、日本が1兆円を渡すなど、できようは
ずがない。一方、彼は自身の生き残りのために核兵器を諦めることは絶対
にないだろう。であれば国連の制裁は続く。日本からの1兆円もあり得な
い。この国際社会の現実を正恩氏に理解させることが一体、誰にできるのか。
 
拉致被害者を取り戻すための、核・ミサイルと拉致、2つの問題の分離戦
略で、拉致問題解決の、細いけれども、希望を持てる一筋の道を切り拓く
には理性と国際社会の現実に対する理解が必要だ。加えて十分な意思の疎
通が欠かせない。それは可能か。加藤氏は、日本が核と拉致の包括的解決
を目指す姿勢に基本的変化はなく、西岡氏の提起する新しい局面を論ずる
にしても、現在日朝間に交渉のパイプはないと、慎重である。
 
早紀江さんが深い吐息と共に語った。

「沢山の不安はあります。けれど、安倍さんでなければ拉致は解決できな
いことを、家族は身にしみて感じています。いま、私たちは土壇場にいま
す。失敗するかもしれませんが、決断してやらなければ拉致問題は動かな
いと思います」
 
如何なる形であれ、核・ミサイルと拉致を別立てにする方向で北朝鮮と
の話し合いに入る道を探るときであろう。

『週刊新潮』 2016年9月29日号 日本ルネッサンス 第722回

2016年10月05日

◆プーチンのシリア空爆の究極の狙い

宮崎 正弘 



<平成28年(2016)10月4日(火曜日)通算第5050号>  


 〜プーチンのシリア空爆の究極の狙いは『チェチェン・モデル』
  シリアの軍事施設を守備するだけでアサド体制を守るのではない〜


ソ連崩壊後、武力紛争に陥った地域のなかで、ロシアが最も手を焼いた
のはチェチェンだった。ジョン・ル・カレは、この戦争を舞台にパワー
ゲームと情報戦の小説を書いた。日本人作家もひとり、この問題に挑戦し
たが、大方の日本人にとってチェチェン紛争なんぞ、何の興味もなかった。

プーチンはなぜ、熱心にアサド体制守護のため、戦うのか?

欧米はアサド独裁政権を打倒するため、反政府軍にテコ入れし、内戦の
過程で「鬼っ子」のISが誕生し、むしろISは反アサド勢力と対峙し、
かつ欧米軍と戦ってきた。反アサド勢力に、リビアから武器を回送する秘
密作戦をヒラリー・クリントン(当時の国務長官)が指示していた。これ
が「ベンガジゲート」といわれるヒラリーの大スキャンダルとなった個人
メール事件にも繋がった。

途中からIS絶滅の空爆にロシア空軍が参加し、さらに最近はクルド武
装勢力を爆撃してきたトルコ軍も参加し、三つ巴の複雑な戦闘状態となっ
て、何時終わるか。誰も予想できない混沌がシリア情勢である。

アレッポ市内東側は反政府武装勢力の地盤だった。激越な戦闘が行わ
れ、壊滅状態となった。このことは米大統領選挙の論点となるほどに深刻
な問題である。

人道援助のためのトラック部隊まで襲われ、病院は破壊され、これらは
アサド政府の仕業とされるが、真相は闇の中である。

かつてソ連時代、中東はソ連の影響力が強く、1970年代にはエジプ トの
アレキサンドリア港にもソ連の軍事拠点が設営されていた。パレスチ ナ
のテロリストらも、ソ連が援助してきた。

その残滓がシリアのタルタス基地で、軍事設備のほか、原油輸出中継に
も使っている。しかし港湾としては規模が小さく、ロシアとしてはもう一
ケ所、中東に拠点が欲しい。それが急激なイランへの接近に繋がる。


 ▼チェチェンの武装勢力は強く、イスラム戦士が応援し、泥沼へ

さてチェチェンは北カフカスのソ連国内に位置し、ロシア領内と設定さ
れたが、1991年に「独立」を宣言した。

エリツィン政権はロシア軍を派遣して、容易に制圧可能と計測し武装ヘ
リなどをとばしたがチェチェンは凶暴無比なうえ、アフガニスタンからア
ルカィーダなどの応援部隊が陸続と這入り込み、かれらは戦闘能力が高
く、一方のロシア兵は厭戦気分濃厚で、戦闘は膠着状態に陥った。

第1次チェチェン戦争は1994年から96年だった。死にものぐるい の汚い
戦闘といわれ、ロシア兵は参加を嫌がるほどにチェチェン人は強桿 だっ
た。しかし、チェチェン側の指導者ドウダエフが戦死した結果、「半 自
治」「半独立」という中途半端な、曖昧な条件で停戦となった。

1999年に第2次チェチェン戦争が勃発した。

プーチンが首相の座に就いていた。かれは容赦なき軍事攻撃を入念に用
意しており、チェチェンの「首都」グロズヌイは半ば廃墟となってしまった。

2007年まで散発的ゲリラの軍事衝突が繰り返されたが、チェチェンの2代
目の指導にラムザン・カドイロフが出てきた、プーチンは、この2 代目
を手なずけ、停戦状態を終戦に持ち込んだ。グロズヌイ政権は、モス ク
ワに忠誠を誓った。これにより無名の指導者プーチンはいきなりロシア
国民の英雄となった。
 
「いまシリアで繰り返されるパターンはまったく『チェチェン・モデル』
である」(ジョン・ロイド、オックスフォード大学「ジャーナリズム研究
所」主任研究員。『エルサレムポスト』、10月3日付け寄稿)