2014年04月29日

◆核が日中開戦を抑止する H

平井 修一


(承前)平松茂雄氏の論考「日本核武装の緊急性」から――。

               ・・・
■米国を封じ込める中国の核戦力

最初の核実験から40年ばかりを経た平成17年(2005)7月に、中国人民解放軍の最高教育機関である国防大学の高級幹部、朱成虎少将は、外国人記者との会見で、「米国がミサイルや誘導兵器で中国の領土を攻撃するならば、中国は核兵器で反撃する」と答えた。

将軍は「中国の領土には、中国軍の艦艇や航空機も含まれる」中国は西安以東のすべての都市が破壊されることを覚悟しており」「米国も当然、西海岸の100以上、もしくは200以上、さらにはもっと多くの都市が破壊されることを覚悟しなければならない」と述べた。

この発言について、当時わが国には「一部の軍人の跳ね上がった発言」との見方があった。「それはとんでもない見当違いの見方である」と当時筆者は批判した。朱将軍の発言は、例えば中国には台湾軍事統一に際して米国が軍事介入する場合、通常戦力では米国に勝つ能力はないこと、米国との戦争で中国は核兵器を使用することを明確にしたといえる。

中国は核ミサイル戦力がひとまず完成した1980年代に入ると、限定的な通常戦力の現代化を進め、中国周辺地域・海域で起きると想定する局地紛争に即応できる戦力、および台湾海峡を渡海・上陸するための軍事力の構築に全力を投入している。

だが台湾の軍事統一に米軍が介入するならば勝ち目はないから、その場合には、米国本土の主要都市を核攻撃すると威嚇して、軍事介入を断念させるほかない。米国国民を「人質」にする戦略である。

平成8年(1996)3月、台湾で初めて総統選挙が実施された時、「台湾独立」を指向する李登輝総統の再選を妨害する目的で、中国は弾道ミサイルをはじめとする軍事力を誇示して、あからさまに台湾を威嚇したことがあった。

このとき米国は「台湾関係法」にもとづいて、台湾の北部と南部の海域に、航空母艦を派遣した。一隻は横須賀の米海軍基地から出港した「インディペンデント」、もう一隻は中東にいた原子力空母「ニミッツ」がインド洋からマラッカ海峡を通って南シナ海を北上した。緊張は高まったが、それにより台湾海峡の危機は去ったといわれた。

この時台湾はもとより、台湾を支持する日本や米国の人たちは、「台湾は勝った、中国の軍事力はとるに足らない」と勝ち誇った。だが間もなく、このとき中国は米国に対して核攻撃をほのめかしたことが、米国側から明らかにされた。

当時米国・日本などとの交渉を担当していた熊楷光副参謀長は、中国を訪問したフリーマン前国務次官に、次のように伝えたといわれている。

「1950年代に米国は3回、核兵器で中国を攻撃すると公言した。米国がそのようなことができたのは、中国が反撃できなかったからだ。今は反撃できる。米国は台北よりもロサンゼルスについて、もっと心配した方がい
い」と。

当時中国はワシントンやニューヨークに到達できる大陸間弾道ミサイル「東風5号」を配備していた。このミサイルはロケットの推進に液体燃料を使用するので、発射までに時間を要し、その間に偵察衛星で発見され攻撃されてしまうから役に立たないと見られていた。

だがそれより10年ばかり前の昭和60年(1985)5月に、人民解放軍機関紙「解放軍報」は、「十数年の歳月をかけて、刻苦奮闘の末、長城工事と呼ばれる弾道ミサイル基地が完成した」ことを公表していた。

それによると、上空からの偵察で発見されにくい人跡まれなガガたる山岳地帯に、各種・各型の弾道ミサイルを発射できる複数の発射基地、それらを結ぶ数十キロの道路、通信ケーブルが設置され、変電所が地下に建設された。いくつもの囮の発射口が設けられている。

この記事は、中国の大陸間弾道ミサイルが米国の先制攻撃を受けても生き延び、米国を核攻撃できる発射基地が構築されたことを意図的に伝えたと考えられる。

また同じ時期に、中国は射程8000キロの移動式の新型大陸間弾道ミサイルの発射実験を実施した。このミサイルならばロサンゼルスは射程内に入る。発射時間は10分から15分程度、しかも移動式だから、発射してから別の場所に移動して、敵の攻撃から生き残ることができると見られている。

「米国は台北よりもロサンゼルスについて、もっと心配した方がいい」との副参謀長の言葉は、それを踏まえた発言であった。

ロサンゼルスの400万人を含め、その近郊地域の1000万人が脅威にさらされることになれば、日米安保条約に基づく米国の「核の傘」が持つ効力は大きく変質することになるであろう。そうなった場合、米国政府は果たして自国民の安全を危険にさらしてまで、日本人の生命を守るであろうか。

正常な国であれば、自国民が深刻な危険にさらされている時に、それに優先して他国を守ろうとする国はないであろう。どんな国でも自国民を防衛するのが最優先であるし、本国への直接の脅威に直面すれば、他国を守る余裕はなくなる。(つづく)(2014/4/29)

◆尖閣明言に見えた大統領の覚悟

坂元 一哉


米国初の「太平洋系大統領」を自任するバラク・オバマ大統領。ウクライナ問題などで揺らぐ米国の世界指導を立て直し、また、40%台で低迷する政権支持率を立て直すためにも、自らが外交政策の目玉に掲げるアジア・太平洋重視政策(「ピボット」あるいは「リバランス」と呼ばれる)を大きく前進させる必要がある。

 ≪中国に地域覇権は許さない≫

オバマ大統領を国賓として迎えた先週の日米首脳会談は、その前進にかける大統領の覚悟が問われる会談だったといえるだろう。会談後の共同声明は、安倍晋三首相がいうように、日米同盟の発展に画期的な意味を持つものになった。だが、大統領の覚悟はといえば、見えたところもあれば、見えにくいところもあったとしかいえない。

「ピボット」政策は、米国外交・安全保障政策の中心を成長著しいアジア・太平洋に置き、この地域に米国を中心とした、自由と繁栄の新しい国際システムをつくる。急速に台頭する中国については、「平和的発展」を歓迎するが、地域覇権は許さず、新しいシステムへの参加を誘う。そういう政策である。

この政策に関して今回、大統領の覚悟がよく見えたのは、大統領が、この政策の「中心的基盤」と位置づける日米同盟の抑止力強化を一段と明確にしたことだろう。それは中国に地域覇権を許さないための重要な努力でもある。

オバマ大統領は、日米安保条約が「尖閣諸島を含め、日本の施政の下にある全ての領域に及ぶ」(共同声明)ことを確認した。

尖閣諸島に安保条約が適用されることはクリントン前国務長官など、オバマ政権の重要閣僚も確認している。また尖閣諸島は実際に日本の施政権下にあるのだから、米国が日本の尖閣防衛に協力するのは安保条約の条文上、当然でもある。だが、大統領がその当然のことを初めて明言し、共同声明に「尖閣諸島」と書き込んだのは画期的な意味を持つ。

 ≪「警戒と抑止」の比重増す≫

オバマ政権はこれまで、尖閣問題などで中国の行動を警戒し、抑止する姿勢を示しつつも、政治的、経済的に関係を深める中国をなるべく刺激しないよう配慮してきた。その態度は今後も基本的には変わらないだろう。

だが最近は、警戒と抑止の比重が増してきたようである。大統領が尖閣防衛を明言したのもその表れと見てよい。

昨年、中国は、尖閣上空を含む空域に、ADIZ(防空識別圏)を一方的に設定した。また今度のウクライナ問題では、米露の間で漁夫の利を得ようとしているように見える。そうしたことがオバマ政権内に、中国に対するこれまで以上の警戒と抑止の必要性を認識させているのではないだろうか。

今回の会談でオバマ大統領の覚悟がよく見えなかったのは、新しい国際システムの中核になるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関してである。

アジア・太平洋地域に高いレベルの自由貿易と投資のルールを設定しようとするTPPは、地域の経済発展に大きく貢献するだけでなく、中国の経済力がアジア諸国を政治的に取り込んでしまう不当な影響力を持たないようにするための戦略的な政策でもある。経済交流と話し合いが平和を生む、といったオバマ大統領のリベラルな世界観にも合致している。

大統領は今回、そのTPP成功の鍵を握る日米2国間交渉の決着を期待して来日した。

 ≪TPPでは譲歩意思見えず≫

だが、事務レベル、閣僚レベルで何十時間も交渉したにもかかわらず、日米は「大筋での合意」に至らなかった。共同声明の文言は、日米間の重要な課題について「前進する道筋を特定した」とするだけである。

交渉の詳細が明らかではなく、この言葉の意味するところが「大筋での合意」に近いのか、遠いのか私にはわからない。ただ報道などからすると、交渉が異常に長引き、結局まとまらなかったのは、米国側に大きな譲歩をする覚悟がなかったからのように思われる。

首脳会談前日の夕食会で、オバマ大統領は安倍首相に、首相の支持率は60%で自分は45%だから首相に譲ってほしい、と述べたという。むろ ん冗談だろうが、秋に議会の中間選挙を控えるなど、国内事情で自分は大きな譲歩ができないのだとアピールしているようにも見える。

しかし、国内事情があるのは日本も同じで、交渉をまとめるには双方が譲歩して「前進する道筋」を前進するしかない。それに支持率のことをいえば、いまのオバマ大統領が支持率を50%台、あるいは政権初年のような60%台に戻そうと思えば、外交政策で成功をおさめるしかないだろう。

TPPは、米国同様、アジア・太平洋への関心を深めているロシアを経済的に牽制(けんせい)するという意味でも重要性が増している。オバマ大統領は今後、より一段と強い覚悟を持って、TPP問題に取り組むべきだろう。(さかもと かずや)大阪大学大学院教授
産経【正論】2014.4.28


◆“異常”の国、韓国をどう読み解くか

櫻井よしこ


中国と韓国が反日で足並みを揃えている中で、中国の反日の動機を理解することは可能だ。日本を憎悪すべき敵に仕立てて中国共産党の求心力を高め、党への非難を回避するのが最大の目的であろう。

理解し難いのが、朴槿恵大統領の反日である。北朝鮮の軍事的脅威が現実のものとなっているいま、北朝鮮を背後で支援する中国に接近する意味や、北朝鮮有事の際、確実に朝鮮半島を自国の影響下に置こうとする中国に頼る利点があるのか、理解に苦しむ。有事の際、韓国が頼れるのはアメリカと日本しかいない。

その日本に背を向け続ける朴大統領の外交について、元駐日韓国大使館公使で統一日報論説主幹の洪?(ホン・ヒョン)氏と対話した。言論テレビの番組、「君の一歩が朝(あした)を変える!」でのことだ。

洪氏は、朴大統領は国益追求以前の地平で足踏みしており、状況管理しか出来ていないと分析する。つまり、今の状況を悪化させないように管理するのに精一杯だというのだ。

韓国の国益のために為すべき事が山積しているにも拘わらず、朴大統領には適切な対処を期待出来ない。それは朴大統領ひとりの責任ではなく、金泳三、金大中、盧武鉉と3代続いた「左翼的大統領」が残した負の遺産ゆえであり、韓国の融和策で北朝鮮は対韓国戦に絶大な自信を持つに至ったと、洪氏は語る。

「金正恩は対韓戦争準備を終えており、戦争になれば絶対に勝つとの軍事的自信を持っていると思います」

「軍事的」という前提つきではあるが、絶望的に貧しい国家になり果てた北朝鮮が絶対的自信を持つのはなぜか。

「最新の武器や装備を持つ韓国とアメリカに通常戦争を挑めば、イラク戦争やアフガン戦争のように勝ち目がないことは明白です。しかし、米韓同盟と米軍の盲点や弱点を突く非対称戦で先手を打てば勝てると考えていると思います」

2,351対1の闘い

非対称戦とは通常の戦争ではなく、テロやゲリラのような戦いで、北朝鮮の場合、化学兵器や核兵器、サイバーにおける先制攻撃などが考えられる。また韓国全土を戦場とする戦い方も同様だ。この3月、4月にかけて、北朝鮮の無人機3機が韓国内に墜落した。うち1機はソウル市にまで侵入し、青瓦台(大統領府)上空を高度300メートルの低空で飛び、193枚の写真を撮っていた。

仮に無人機に化学兵器を積み込み、上空から投下すれば、韓国は大混乱に陥る。洪氏が指摘した。

「北朝鮮が無人機を飛ばすことを想定した領空防護の体制を韓国がとっていなかったのは確かですが、あの無人機は小型で性能も限られています。ただ、サイバー戦争では北朝鮮は圧倒的に有利です。韓国へのサイバー攻撃は日常茶飯で、先月にも韓国国防科学研究所が北朝鮮にハッキングされました。

同研究所は韓国の新兵器開発などの中心的組織です。そこのコンピュータは勿論、インターネットにつながっていませんが、今回、大量の情報が盗まれました。しかし韓国は北朝鮮に報復出来ません。彼らはコンピュータ社会とは程遠いからです」

非対称戦を基軸とする限り、北朝鮮にとって米韓同盟は「張り子の虎」つまり、脅威ではないというのだ。北朝鮮にはもうひとつ、自信を持つ理由がある。韓国政府中枢に巣くう親北朝鮮勢力の存在である。

立法、行政、司法の三権の内部深くまで北朝鮮シンパが食い込んでいることはすでに広く指摘されてきた。たとえば全国会議員300人中、61名が国家反逆罪などで起訴され有罪になった人々だ。祖国を潰そうと目論み、有罪となった人物が国会議員の20%を占めている。

その内、統合進歩党の李石基議員は北朝鮮有事の際に北朝鮮と呼応して、韓国のどの役所を占拠すべきか、どの武器庫で武器を調達すべきかなどを秘密会合で話し合っていたことが判明し、有罪判決を受けた。だが、祖国攻撃を具体的に企てていたこの議員を韓国国会は処分できていない。李氏は現在も議員資格を有している。

「立法府の奥深くまで、親北朝鮮勢力が浸透しています。司法府も行政府も同様です。その状況下で、いま北朝鮮が目指す3つの目標は、・国家保安法の撤廃、・国家情報院の解体、・在韓米軍の撤退です」と洪氏。

3つの目的が達成されれば、北朝鮮のスパイや工作員にとって、韓国は天国のように活動し易い場所になる。そのことは韓国国民にもわかるはずだ。なぜ、彼らはこのような政治の流れに反対しないのか。洪氏は、それを2,351対1の闘いだと語る。

「大統領が全てではない」

韓国には2,352の高校があり、歴史の教科書は8種類ある。7種類が共産主義や社会主義を讃える内容で、この内のどれかを採用した高校が2,351校だった。

「たったひとつの高校が、8種類の教科書の内、残るひとつのまともな教科書を採択したのです。7種類の教科書は、李承晩大統領を『独裁者』とし、金日成や金正日を正しい指導者と位置づけています。韓国の自由主義経済を非難する一方で、北朝鮮のとんでもない経済体制は批判しないのです。韓国をアメリカの植民地として蔑む一方で、北朝鮮の国家運営は何ら非難しない」

現実を見れば、韓国の方が北朝鮮よりはるかにまともで成功した国であることは容易にわかる。だが、偏向教育が恐ろしい効果を発揮し、わかるはずのものをわからないようにしているのである。

こうした状況下で、冒頭で指摘したように、朴槿恵大統領は状況管理にとどまっている。ただ、洪氏をはじめ、韓国の保守の人々は、状況が変化すれば如何なる政権も変化に対応して決断を下すと考える。

「いざとなれば大決断を下さざるを得ない。きっかけは、北朝鮮の核ミサイル実戦配備のときか、来年に迫る米韓連合軍司令部解体のときか、親北朝鮮勢力による内乱勃発のときか。いずれも遠い将来のことではなく、近未来の危険です。そのときには、朴大統領といえども決断すると思います」

洪氏はこうも語る。

「いま、オバマ大統領は弱腰だと非難されています。けれど、オバマ大統領がアメリカの全てではありません。同様に朴大統領も韓国の全てではありません。ヨーロッパが何十年もかけて冷戦を乗り越えたように、我々も必ずアジアの対立や冷戦を乗り越えるという意思を持つべきです。日韓は互いに同じ側に立つ国です。その意識が大事だと私は思います」

朴大統領の反日は許し難いが、韓国が政治的反日から脱皮出来る日が来るように側面から働きかけることは日本の国益でもあることを忘れたくないと、私は考えている。

『週刊新潮』 2014年4月24日号 日本ルネッサンス 第604回


◆木津川だより 太古の木津川地域

白井 繁夫


「古墳時代の木津川」を取り上げたいと思って、木津川市山城町の椿井大塚山古墳、木津町の大畠遺跡、土師の七つ塚古墳などを散策していた時、ふと次のことが頭に浮かびました。

前方後円墳の椿井大塚山古墳は、日本最古の箸墓古墳を三分の二に縮めた同型の古墳です。そこでは邪馬台国(九州説もあります)女王卑弥呼の三角縁神獣鏡が三十数枚も出土しました。

他方、記紀に記載された崇神天皇の条:「和訶羅河:わからがわ:(泉河:木津川)」を挟むこの地で、天皇の命を受けた四道将軍の大毘古命(おほびこのみこと)の軍と、反乱軍の建波邇安王(たけはにやすのみこ)との大戦もありました。

第10代崇神天皇は、大和の国の王から倭国を統一した大和朝廷の大王であり、(3〜4世紀に実在した大王とも云われている)、古墳時代の人物ではないか、と云う説があります。

ですからこの度は、太古の時代(旧石器時代)から、弥生時代、古墳時代へと、「木津川地域を散策」しながら、大和朝廷と山背(南山城)と、木津川市とのかかわりも見ようと思います。

地球上に人類が誕生したのは洪積世(氷河時代)で、今から200万年前から1万年前です。
氷河期は水が氷結して海水面が下降し、日本列島は大陸と陸続きの状態になりました。人類は大型動物(マンモスやオオツノジカなど)を追って南北から列島に渡ってきました。

氷河がとける温暖な間氷期を経て日本列島は大陸と離れて、大型動物も絶滅しました。
日本列島の旧石器時代の「人類の遺跡」は昭和24年(1949)に発見された群馬県岩宿(いわじゅく)が最初の遺跡です。そこから打製石器が出土しました。

・前期旧石器時代:3万年以前

列島各地でその後、旧石器時代の遺跡が発見されました。宮城県座散乱木(ざざらき)遺跡、同中峯遺跡、同馬場檀遺跡、栃木県星野遺跡、大分県早水台(そうずだい)遺跡など、出土遺品は初歩的な打製石器です。

・後期旧石器時代:3万年前から1万3千年前:

近畿から瀬戸内にはサヌカイト(安山岩)を用いた瀬戸内技法(ナイフ形石器)が広まる。
「南山城の木津川地域」:八幡市の金右衛門垣内(きんえもんかいと)遺跡:ナイフ形石器、
城陽市の芝ヶ原遺跡:ナイフ形石器と舟底形石器、京田辺市:高ヶ峯遺跡:石核など。

木津川市における同時代の遺跡にしては昭和52年(1977)に木津町の東部の丘陵端:岡田国神社の裏山(岡田国遺跡)で、一点の石器が発掘されました。石材はサヌカイトで4.7cm長の不定形のもので、未完成の製作途中の石器でした。

・更新世(洪積世)終期:1万3千〜1万2千年前:

細石器.有茎尖頭器(有舌尖頭器)の時代:細石器の石刃(長さ数センチ、幅数ミリの特小石刃)、有茎尖頭器(槍の穂先をとがらし、柄に付けるために基部には茎「ナカゴ」をもつ)。

近畿地方は有茎尖頭器が主流です。(細石器のナイフや槍は全国に分布していました)。
「木津川地域では井出町上井出遺跡、木津川市山城町千両岩遺跡、同加茂町例幣遺跡、など」。

・縄文時代(新石器時代):1万2千年前〜前3世紀:

加工技術も進歩して狩猟の弓矢、生活用具などへの応用と、目的と用途が拡大しました。特筆しますと、この時代発明された「土器」は、「煮る」という調理の方法への大変革があったことです。食物の種類と範囲が拡大でき、定住性の強い集落が各地に形成されたことが証明されます。

前期縄文時代の「木津川市山城町の涌出宮(わきでのみや)遺跡」、城陽市の丸塚古墳下層遺跡で、北白川下層式土器が出土しました。(前期の標識土器:京都市北白川小倉町遺跡で出土した爪形文の土器)また、涌出宮遺跡からは連続する三型式の土器が出土し、ここの集落はずっと継続してきたと見なされます。

後期縄文時代:西日本の縄文土器は、東日本と異なる発展をし、土器から縄文が消えて、華麗な装飾を施した多様な器形が盛んになりました。

後期縄文人は丘陵地の動物の減少を補うため、低地へ進出して植物栽培を始めたのです。

「木津川地域」も同様だったと思われますが、「木津川」は大変氾濫が多いため、地下深く眠っている遺跡を発掘する本格的な調査は、未だ実施されていません。

・弥生時代: 紀元前3世紀〜後3世紀中頃 水稲農業と金属器使用の新文化時代

九州北部に大陸.半島から渡来した新文化は、端正な姿形の弥生土器と青銅器.鉄器の時代へ2ルート(瀬戸内地方と日本海沿岸)を通じ、東方へと日本列島を大きく変えました。

・遠賀川式(おんかがわしき)土器:福岡県板付遺跡、佐賀県菜畑遺跡

弥生前期の南山城の稲作文化導入期の土器は河内(東大阪市)より伝わっていました。
(木津川市燈籠寺遺跡、京田辺市宮ノ下遺跡の土器は河内の胎土使用)
北山城(乙訓地区の遺跡など)は、淀川経由ルートで伝播されています。

・弥生中期(紀元前1世紀〜後1世紀)の銅鐸と遺跡の発見

昭和57年(1982)6月木津町相楽山の丘陵(現木津川市相楽台)で相楽ニュータウン造成工事中に銅鐸1個が出土しました。(高さ:40.5cm、型式:扁平紐式6区袈裟襷文)
南山城では八幡市(式部谷遺跡の銅鐸)に次いで2番目、20年ぶりの発見です。(京都市の梅ヶ畑遺跡の4個を含め)山城国では合計6個目です。

銅鐸発見場所から東方約200mの場所で、同時代の集落や墓(方形周溝墓:まわりを方形の溝で囲んだ墓)の遺跡(大畠遺跡)も発見されたのです。

当時の銅鐸は祭祀に使用し、複数の集落を束ねる母体の集落が管理していました。近畿地区の山城、大和、河内では各郡に銅鐸1個の割合ですが、摂津、和泉は1郡に複数(2〜3)個の割合でした。

「木津川市大畠遺跡の集落」の勢力は八幡市、京田辺市北部、同南部、山城町〜井出町南部、城陽市、宇治市西部の6集団に並び立つほどのものと云われています。

稲作農業の人々は低湿地や丘陵の谷間を木製の鍬や鋤で耕し、水田に籾を直播しました。
弥生式土器を用いる生活様式になり、煮炊きする甕、食物を蒸す甑(こしき)、貯蔵用の壺、
食物を盛付ける高杯や鉢などの土器も発達しました。

狩猟や戦闘用の鉄鏃や銅鐸用や銅鏃などの他に、鉄の工具で木材を加工したり、農具にも鉄の刃先を取り付けたり、鉄器の活用で生産活動や生活文化も変化、発展を遂げました。

当時の南山城への物流や文化の伝播は河内から神奈備丘陵(現学研都市丘陵)を越えるルートと大和から佐保丘陵を越えるルートが主流でした。北山城へは淀川経由でした。

大畠遺跡は、近くの音乗ヶ谷遺跡、北隣の町(精華町)を含む複数の集落の母村であり、以後も北へ600mの曽根山遺跡、相楽(さがらか)遺跡へと古墳時代から奈良時代へと続きました。

太古の時代から急ぎ弥生まで、端おって綴ってみました。如何だったでしょうか。

次回は、古墳時代の山城について椿井大塚山古墳を中心に散策記を掲載したいと思います。

<参考資料:木津町史  本文編 木津町
   相楽山銅鐸出土地発掘調査、相楽山銅鐸出土地。大畠遺跡、 木津町教育委員会
   大畠遺跡発掘調査、第1次(1982)、第2次(1983) 木津町教育委員会>

2014年04月28日

◆事実上零成長、中国市場幻想を捨てよ

田村 秀男


先の日米首脳会談で中国について、安倍晋三首相が「力による現状変更の動きには明確に反対する」と牽制(けんせい)したのに対し、オバマ米大統領は「平和的な台頭は支持している」と述べた。はからずも日米の間の対中観の食い違いが明らかになったのだが、中国が「力」を振りかざす局面は経済停滞とともに長期化、常態化するだろう。

「えっ、中国はこの第1四半期でも7・4%もの国内総生産(GDP)の実質成長を遂げているじゃないの」と疑問を抱く読者もおられるだろう。だが、中国で言う7%台の成長は景気の低迷を意味する。中国のGDPデータはそれほど、経済実体との乖離(かいり)が激しい。

このことを最初に認めたのが、他ならぬ李克強首相で、首相が2007年3月、遼寧省党書記時代、訪ねてきた米国の駐中国大使に向かって、当国のGDP統計は作為的で信頼できないとし、「重量をもとに運賃を計算する鉄道貨物量はかなり正確にGDPと連動する」と述べた。

そこで、まず鉄道貨物輸送量とGDPの増減率を見てみる。2008年9月の「リーマン・ショック」後、鉄道貨物輸送量はマイナス6%だったのに、GDPデータは6・6%のプラス成長になっている。当時の中国経済を引っ張ってきた輸出が激減したのだから、どちらのデータが現実の経済を反映するのか答えは歴然としている。

2012年以降、GDP公式統計でみる実質成長率は現在まで7%台を保っているが、鉄道貨物データのほうは12年9月から13年6月にかけてマイナスまたは0%の成長を示したあと13年後半に回復したのもつかの間、今年3月にはマイナス3・5%に落ち込んだ。中国の経済不振は今や、リーマン・ショック当時よりも長く厳しい。

グラフには全国不動産平均相場動向を加えた。不動産相場はおおむね、鉄道輸送量の変動を先導していることが読み取れる。言わば中国景気の先行指標である。12年前半には急激に落ち込んだあと、昨年半ばには急速に回復したように見えたが、後半からは再び急落し始めた。鉄道貨物輸送量もその後を追うように減少している。

この関連性は中国経済特有の要因による。中国はリーマン後、北京の党中央が地方政府と国有商業銀行に指令を出して、不動産熱をあおり立てた。不動産開発を中心にした固定資産投資は中国GDPの45%を占めるので、固定資産投資が前年比20%増えるだけで中国のGDPは9%増える計算になる。

中国は党官僚の裁量がきく土地の公有制をとるので、不動産開発は党の意向次第でコントロールできる。地方政府は土地使用権を農民などから強制収容し、デベロッパーに売却する。

不動産相場が上がる中で開発投資が活発になるので鉄道貨物に代表されるモノが動くようになる。逆に不動産相場が下がり出すと地方政府は土地使用権の販売を控えるので開発投資が減り、鉄道貨物輸送量も細る。

他方で、地方政府は主要財源を土地使用権販売収入としているが、不動産相場が下がると財源難に陥る。使用権を乱売せざるをえなくなって不動産相場を崩落させる。

不動産デベロッパーは年利回り10%前後の投資信託である「理財商品」を発行して資金調達するが、単純に考えると不動産相場が10%以上上昇を続けないと、デベロッパーは返済不能になる。理財商品の5割程度は銀行が保証しているので、不動産バブルの崩壊は金融不安を招きかねない。

以上のように、グラフが指し示すのは中国経済モデルの破綻であり、これまでの開発投資主導に代わる経済成長モデルの不在である。鉄道貨物輸送量が中国経済の紛れもない現実だとすれば、正真正銘の経済成長率は0%以下と見るべきだろう。

再浮上させるためには、人民元を大幅に切り下げて輸出にてこ入れするしかないが、そのときは巨額の資本逃避ばかりか、悪性インフレが発生しかねない。

経済不振は出稼ぎ農民の雇用条件悪化や年間710万人にも上る新卒者の就職難を招いている。一党支配を正当化してきた高度成長が不可能になった以上、党中央が若者や農民の不満の矛先を日本など外部に向けさせるのは不可避だ。

沖縄県尖閣諸島をめぐる武力威嚇も、戦時中の問題を根拠に商船三井の船を差し押さえた事件も、第2次大戦中に強制連行されたという元労働者らが日本企業に損害賠償を求める動きも、根は一つなのである。日本企業は中国市場幻想を捨てるべきだ。
産経ニュース【日曜経済講座2014.4.27

◆「小保方会見」とソープオペラ

佐藤 卓己
 

今月9日午後1時から行われた理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーの記者会見中継は、昼のテレビ視聴率では異例の2けたを記録した。

 当日の各紙夕刊も大々的に報じた。朝日夕刊の大見出し「小保方氏『悪意なし』」は特に目を引いた。

 一方で、この内容空疎にして情感あふれる「小保方会見」を翌日の「天声人語」は、「科学にロマンはあっていいが、ロマン主義と科学は相いれない」と批判している。

 だが、1月30日付ウェブ版で「泣き明かした夜も」(朝日)、「かっぽう着の『リケジョ』快挙」(読売)などロマン(物語)化して報じたのは、新聞だったはずだ。

 この「STAP細胞」スキャンダル報道について、新聞社の姿勢を批判することは容易である。むしろここで注目したいのは、読者の「利用と満足」である。

 専門誌を読む研究者とは異なり、一般読者が新聞の科学記事に事実だけを求めているわけではない。いみじくも、先に引いた「天声人語」と同日の朝日夕刊1面に「小保方会見 私は思う」の特集がある。

「こけたほお 涙『うそに見えない』」が見出しのトップで、「『STAP細胞は本当にあるの』」が続く。

小保方会見を見ながら、ソープオペラ(昼の連続ドラマ)に関するヘルタ・ヘルツォークの古典的研究(1944年)を思い出した。代表的な「利用と満足」研究のひとつである。

聴取者が昼メロに求めているのは、ヒロインに共感して得られる「情緒的解放感」、自分の夢と重ねあわせる「代理参加」、トラブルを解決する「日常生活の教科書」だという。

 小保方会見はその意味で上出来のソープオペラだった。官僚的組織に使
い捨てられる「悪意のない」孤独なヒロインの悲劇である。

 新聞の「利用と満足」については、バーナード・ベレルソン「新聞不在
の意味」(1949年)も参照すべきだ。ストライキで新聞が届かなかった読者への聞き取りから、6つの利用タイプの存在を明らかにした。正確なニュースの活用に加えて、番組欄など生活の実用、息抜き、知識自慢などの社会的威信、社会との関係維持、閲読の自己目的化である。

こうした多様な一般読者の「利用と満足」を最大化するビジネスで、科学記事がロマン化されることは避けがたい。

 つまり、ロマン化は「マス」メディアの構造的要請であり、科学担当記者の専門能力をどれほど高めても問題は解決しない。ロマンより事実を優先する知的な読者を多数派に育てる覚悟があるのか、それが新聞に問われている。(京都大学大学院教育学研究科准教授)
                  
【プロフィル】佐藤卓己 さとう・たくみ 昭和35年広島県出身。京都大大学院修了、文学博士。専門はメディア史。産経「新聞に喝」2014.4.27

2014年04月27日

◆尖閣安保適用の真意を読む!

浅野 勝人


 オバマ大統領が、安倍首相との首脳会談で「尖閣」の固有名詞を挙げて、日米安保条約の適用範囲と明言しました。

日米安保条約の適用範囲は、フィリピン以北の日本周辺ですから、もともと尖閣諸島は対象地域です。オバマ大統領が記者会見で「なにも新しいことではない」と繰り返している通り、条約の規定を確認しただけのことではありますが、日中間でこれだけ大きな問題になっている情況の中で、ことさら固有名詞を名指しでアメリカの防衛義務を明示した意味は小さくありません。
 

 安倍首相の就任以来の一連の発言は、首相周辺側近のきわどい右派発言と重なって、ワシントンでの安倍評価が民族主義的危険思想と思われがちでした。

その懸念を払しょくするためにも、節度ある日米同盟の信頼関係の再確認となった両首脳の東京会談は、極めて有意義な出会いでした。もともと尖閣をめぐって日中武力紛争の可能性を予測する向きは存在しませんでしたが、オバマ発言によって偶発的・突発的な衝突の懸念もなくなったと判断していいと考えます。

冷静にみれば、尖閣に対する日米安保条約の適用は、条約上の義務として当然の事柄が指摘されたに過ぎませんが、もし言及を避けていたら日米同盟は存在意義を失います。

だから、逆説的に言えば、アメリカは日中間で武力紛争が発生したら、条約に従って日本を助ける義務を負っていることを公言することによって、一方で米中協調を発展させるため中国との敵対関係は何としても避けたいアメリカを困難な立場に追い込まないよう中国に求めたアメリカの本音の表れです。

従って、日本か、中国か、どちらか一方の選択をアメリカに迫るような愚かな軍事的行動は絶対に避けよというメッセージを日中双方に向かって発出したと読むのが正解でしょう。

首脳会談の中で、オバマ大統領が、尖閣問題を日中間の対話によって平和的に解決することを安倍首相に2度にわたって求めたと念には念を押して記者会見で言及していることがそのことを如実に示しています。

もちろん、中国政府が、中国の領土に対するアメリカの口出しは絶対に認められないと強く抗議するのは当然です。立場を置き変えてみればわかることですから、日本政府は「オバマ発言」の真意を十分理解して下手な言動は慎むべき大事な時期です。

むしろ、オバマが日本の立場に100%答える態度を鮮明にしたことによって、安倍はオバマに対して中国、韓国との関係改善の政治的責務を負ったと受け取るのが妥当でしょう。

特に、オバマが皇室の尊厳を最大限に尊重し、その上、明治神宮に参拝した意味を重視する必要があります。国務長官、国防長官、駐日大使の千鳥ヶ淵墓参と合わせて日本政府首脳の靖国参拝に待ったをかける強烈なメッセージです。

「先の大戦で国家の為に犠牲となった尊い御霊に手を合わせるのは各国リーダーの当然の振る舞い」という点に異論はないけれども、それならば310万人の尊い命を犠牲にしたアジア・太平洋戦争を決断・推進した国家指導者の戦争責任をどう考えるかという視点が決定的に欠落していることをアメリカ政府首脳たちは指摘していると受け止めるべきです。

そして、中韓両国への配慮だけから政府首脳の靖国参拝自重、村山談話・河野談話の継承を求めているのではなくて、日本が欧米社会から国粋主義の疑念を持たれないよう気遣う同盟国・アメリカの忠告と私は理解しています。

強固な日米同盟を背景に米中の絆を強化する動きに劣らない日中関係の再構築へ向けて踏み出すきっかけとなればオバマ来日は歴史的意義を深める結果となります。( 2014/4月25日記 ・安保政策研究会 理事長)



◆大統領 軍事力行使ためらわず

小雲 規生


北核実験念頭、米韓軍司令部で演説

【ソウル=小雲規生】アジア4カ国を歴訪中のオバマ米大統領は26日、米韓連合軍司令部のあるソウルの竜山(ヨンサン)基地で演説し、4回目の核実験をちらつかせている北朝鮮を念頭に「同盟国防衛には、軍事力行使もためらわない」と牽制(けんせい)した。

オバマ氏の司令部訪問には韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領も参加した。オバマ氏は兵士たちを前にした演説で、北朝鮮の核・ミサイル開発は「北朝鮮をさらに孤立させるだけだ」と述べ、「米韓同盟は決して揺らぐことはない」と強調した。

朴氏は25日、北朝鮮が「核実験準備を完了した状態だ」と指摘。両首脳は同日の会談で、北朝鮮に対して挑発的な行為をやめるよう強く促すことで合意した。オバマ氏は朝鮮半島の非核化や民主主義・自由市場主義の理念に基づいた平和的な統一を目指す朴氏の構想に支持を表明した。

米韓連合軍は1978年に創設された。在韓米軍は戦時作戦統制権を保持しており、朝鮮半島で有事が起こった際には韓国軍が在韓米軍の指揮下に入る。戦時作戦統制権は2015年に韓国軍に移管されることになっていたが、両首脳は25日の会談でこの時期が「再考される可能性がある」ことで一致した。

産経新聞 4月26日(土)13時4分配信

◆日常生活のけじめ

馬場 伯明


この頃、日常生活のけじめについて山の神(様)に指摘されることが多くなってきた。

まず、「点(つ)けたら消す!」。相撲番付に例えれば東の横綱級である。「必ず『消して』ください」と。消し忘れるのは「(物事に)けじめがない(男)」ということだ。

それなのに、今日の休日も書斎の電灯を消さないまま、リビングルーム(LR)へひょいひょいと移動した。「消しました?」という追い打ちがばしっと飛んできた。とほほ・・・。

テレビ(TV)を観るために、ダイニングルーム(DR)からLRへ移動したら、あっ、DRのパソコン(PC)画面が点いたままである。あらら〜〜。(新型PCは放置すれば自動的に消えは、する)。

PC操作の椅子に戻り振り返れば、今度はテレビ(TV)がつけっ放しのまま。(今のTV画面は暫くすれば自動的に消え、近寄ればまた点灯するような仕組みになっては、いる。TVメーカーの親切なご配慮だ)。

半世紀以上前の実家のトイレが暗かったからか、その反動で明るい部屋が好きだ。(TVドラマでは)徳川時代の江戸城の廊下などが妙に煌々と明るい。だが、私はこれを(当時の事実と違っていても)好ましく感じる。

「点けたら消す」のもっとも重大な急所は「火の元」である。ガス・電気の火の元は必ず消さなければ、やばい。お湯を沸かしたまま空炊きになりヤカンを焦がした前科がある。

認知症の男性老人が火の元を放置し自宅を全焼させたという悲惨な事故の話を聞いたことがある。自分から遠いところの「他人事」ではない。

次に、指摘される事項の西の横綱は「開けたら閉める!」である。「開けたのに閉め忘れる」事例が増えてきた。洗面所の蛇口。全開のまま放置することはまだないが、ポタポタ洩れていることがある。これも閉まり(締まり)がない(男!)というわけだ。

家の入口のドアは途中から自動的に静かに閉まるようにできている。でも、鍵を閉め忘れたら意味がない。また、・・・部屋の引き戸がわずかに開いている。・・・LRのドアがぴしっと閉まっていない。・・・で、冷暖房の省エネ効果が悪くなる。

では、自分の口元はどうか。こちらはかろうじて閉まっている。ふと、見渡せば、通勤の電車内でポカンと開いている他人の口はけっこう多い。

それもこれも、「(頭では)わかっちゃいるけど・・・」だけれども、忍び寄る加齢により手足への脳の命令が欠落するのだろうか。つらいな。

日常生活で守るべきことを列挙してみた。「点(つ)けたら、消す」:電灯・パソコン アイロン・炬燵・各種のスイッチ。「開けたら閉める」:傘・水道の蛇口・入口のドア、引き戸。「脱いだらしまう・畳む・揃える」:洋服・下着・靴・洗濯物。

「零(こぼ)したら拭く」:醤油・ビール・コーヒー等、おっとっと!零しが増えた。「外したらはめる」:鍵・ねじ。「借りたら返す」:お金・本・CD・・・。「貰ったら御礼を言う・書く」:お土産・手紙。

「汚したら洗う」:手足・服。「破れたら縫う」:服。「脱いだら掛ける・しまう」:帽子・服・コート・・・。「来たら行く」:年末年始の挨拶。「着信には返信する」:電子メール。

当たり前のことを、当たり前に実行する。すべて単なる日常生活のけじめの基礎の行為である。

こうなったら、自覚的・意識的に「パブロフの犬」になりきることだ。「点けたら消す」という条件反射を、自分の頭と体(手足)に刷り込む。昔取った杵柄(きねづか)、そう、「指さし確認!」で行くのもいいな。

「♪あなたと私の合言葉・・・有楽町で逢いましょう!(先日の『すきやばし次郎』かな!?)」、改め、「♪あなたと私の合言葉・・・灯り点けたら消しましょう!」。

「点けたら消す」を厳守していたのに、また「点いちゃった」、つまり「焼けぼっくいに火がついた」知人がいる。「消す、消す、もう消さなきゃ!」と努力したが却ってストレスが溜まり再点火。これは困ったことか、それとも、喜ぶべきことなのか。

家の中には「点けて消す」新しい機器も多い。オイルヒーター・各種の充電器・電動歯ブラシ・(それに)Wii・・・など。

炬燵に入り「消さずに」そのまま眠ってしまうことがあった。炬燵での転寝(うたたね)は「最高にいい気持ち」というのが世間の通り相場である。でも、山の神(様)に許されることは絶対に、ない。

日常生活のけじめでもっとも大切なことは「言ったらやる」:「有言実行」である。だが、それがじわじわと崩れていく。「不言実行」は美談となるが実行すべきことは口に出して言わなければ忘れてしまう恐れがある。

かと言って「不言不実行」の達磨さんの悟りの境地に至るのはおそらく無理だ。「有言不実行・・」と、たまに躓いてもいても、なお、向上心を胸に抱きつつ、ぼちぼち、歩いて行こう。(2014/4/26千葉市在住)

◆核が日中開戦を抑止する G

平井 修一


平松茂雄氏の論考「日本核武装の緊急性」を読んでいこう。氏の論はいくあつか読んだが、常に公表された事実を徹底的に検証し、「だからこうすべきだ、しなければこうなるしかない」と実にクールに分析、提言する。経歴を見たら防衛庁防衛研究所研究室長だったのだ。詳しいわけである。
・・・

■核論議から逃げる「保守」

今(2011年)から十数年前に、ある政府機関がアジア情勢に関する研究プロジェクトを組織したことがある。最初の会合のときに、北朝鮮が核開発に着手しているとの情報が流れ(それが)議題となった。

ところが驚いたことに、筆者(平松)を除く10名近いメンバーが北の核開発に疑問ないし否定的な見方をしたばかりか、北朝鮮は間もなく崩壊するというのである。なかでも、当時日本を代表していた、兵器や軍事技術の専門家は、北のように貧しくて後れた国に核兵器なんか作れないと断言した。

そこで筆者は、次のようなことを述べた。

「私は北朝鮮の専門家ではないが、中国の核開発の時にも同じようなことが言われた。それは当時の日本では一般的な見方であったが、中国は核兵器を開発したばかりか、その後、経済成長を遂げるとともに、英国、フランスを追い抜いて米露に次ぐ核大国に成長した。北はその中国の後を追おうとしている。北が中国のように“世界の大国”にはならないとしても、北の核開発をバカにしてはいけない。おそらく10年もあればできるであろう」

ところがその軍事専門家には「あれは北朝鮮の張ったりだ、張ったりに乗ってはダメだ」と厳しくたしなめられたのである。左派は論外として、わが国の右派・保守といわれる研究者や評論家たちには、核兵器に触れることを敬遠する傾向があるようだ。

何年くらい前になるか覚えていないが、CSテレビ局の「日本文化チャンネル桜」から電話があり、「先生は日本の核武装についてどのように考えますか」という質問を受けた。「もちろん日本は核武装すべきです」と即答したところ、「それならば、日本の核武装の是非に関する討論会に出席してほしい」と依頼された。

そこで筆者は「中国の核開発についてならばある程度論じられるが、専門家でないから、公開の席で日本核武装を論じる能力も資格もない」とお断りしたところ、「日本の右寄り・保守の研究者・評論家の中で、正面から日本の核武装を主張する人がほとんどいないので、是非出てほしい」と再度促された。

これが「チャンネル桜」に筆者が出る最初の機会になったのだが、当時わが国では、多くの研究者や評論活動をしている人の中で、正面から「日本の核武装」を論じていた人といえば、筑波大学の中川八洋教授と京都大学の中西輝政教授の名前が上がるだけで、他の方々は「米国の核の傘があるから必要ない」とか、「日本の核武装は日米関係に影響する」と言っては、「日本の核武装」に反対か、または態度を鮮明にすることを避けていたようである。

現在でも「日本の核武装」を正面から論じられる人は依然としてそれほど多くないようである。「広島、長崎の原爆の呪縛」は容易に消えそうにない。だが我が国が直面している「核の脅威」は無視できないところにまで進んできている。

■国家の命運をかけた中国の核開発

筆者(平松)は昭和35年(1960)4月から中国研究を始めた。ちょうど60年安保の時であり、「中ソ対立」が公然化した時期である。「中ソ対立」は様々な要因が複雑に絡み合って生まれ、発展していったが、その重要な要因の一つは中国の核ミサイル兵器開発であった。ソ連は中国の「核の平和利用」に協力したが、核ミサイル兵器開発には協力しなかった。

ソ連は「中国を含む社会主義陣営はソ連の核ミサイル兵器によって守られている」という前提に立って、ソ連以外の国が核ミサイル兵器を開発し保有することを望まなかった。それでは、ソ連以外の社会主義国家はソ連の「言うがまま」になってしまう。

そこで中国は国家の命運をかけて、国家の総力をあげて核兵器とその運搬手段である弾道ミサイルの開発に集中して、始めてから5年後の昭和39年(1964)10月に核爆発実験に成功した。さらにその後の5年間で核弾頭化とその運搬手段である弾道ミサイルの開発に成功した。

昭和45年(1970)4月のことで、この時は射程2000〜3000キロの中距離ミサイルであったが、日本をはじめとする中国周辺諸国とそこにある米軍基地を「人質」に取ることが可能となった。

1960年代の10年間は、ソ連の援助打ち切りに直面し、さらにそれに続く「文化大革命」による政治の混乱と経済の停滞の時代であった。トウ小平による「改革・開放」の時代が始まると、60年代は「不毛の10年」といわれた。だがこの間に中国は核ミサイル兵器を開発し、初歩的な成果を上げた。

中国は1971年10月の国連総会で蒋介石の中華民国に代わって、国連に加盟して常任理事国となった。これは中国が国際社会で活動するうえで重要な場となった。国連加盟の背後には、60年代の10年間における第三世界、特にアフリカの新興諸国に対する毛沢東の地道な働きかけがあった。ちなみに当時日本はアフリカに対してほとんど無関心であった。

このように1960年代の10年間に、中国は核ミサイル兵器を開発し、国連に加盟した。どうして60年代は「不毛の10年間」なのか、それどころか「実のある10年間」であり、その後の発展の基盤を作ったと筆者は見ている。この二つの出来事が中国を「世界の大国」に押し上げたのである。

それらを達成したのは「バカ者」と言われた毛沢東であり、トウ小平ではない。毛沢東は決して「バカな政治指導者」ではなく、「先見性のある優れた政治指導者である」と私は評価しているが、この決定的に重要な出来事を日本人はまったく分かっていない。

話を元に戻す。核弾頭を搭載する中距離弾道ミサイルの次の目標は、当然のことながら米国に届く大陸間弾道ミサイルの開発であったが、これは予想以上に難しかったようである。1970年代中葉にはできるだろうとのペンタゴンの予想に反して、南太平洋のフィジー島近海に大陸間弾道ミサイルが着弾したのは10年後の昭和55年(1980)5月であった。

中国はさらに弾頭の小型・軽量化および複数化、運搬手段の延伸化・精緻化に努め、他方その間宇宙開発に着手し、核ミサイル兵器開発に着手してから50年を経た現在、それほど遠くない将来、宇宙基地を設置し、宇宙からミサイルばかりか、戦争を指揮するところにまで発展しつつある。(つづく)(2014/4/27)

            

2014年04月26日

◆右派セクター 露を敵視、深まる軋轢

佐々木 正明


混迷を深めるウクライナ情勢をめぐり、ヤヌコビッチ政権打倒運動で頭角を現した過激民族主義勢力「右派セクター」の存在が焦点のひとつとなっている。

ウクライナ至上主義を掲げ、「敵国のロシアと戦う」と宣言する右派セクターの存在を、プーチン露政権は、ウクライナ暫定政権の「非合法性」を非難するプロパガンダ(政治宣伝)に利用。「過激派からロシア系住民を守る」としてクリミア半島へ出兵する口実にも用いられた。

4月20日に東部ドネツク州内で起こり、親露派側に犠牲者3人が出た銃撃戦についても、ロシアは真相解明を待たず、右派セクターの犯行と断定。行政庁舎を占拠する親露派武装勢力も武装解除に応じない理由に、「右派セクターの襲来に備えるため」と述べる。

右派セクター代表は東部出身のドミトロ・ヤロシ氏(42)。民兵組織としてメンバーの訓練を行い、多数の武器を保有していると公表しているが、実態はよく分かっていない。1万人以上のメンバーがいるとの地元メディアの報道や、正規軍や治安部隊にも多くの支持者がいるという情報もある。

右派セクター側は否定しているが、思想信条からネオナチとの関係も指摘されている。

ヤロシ氏は地元メディアのインタビューに「独立後、ウクライナは外国勢力に占領された体制下にあった。祖国の領土一体性を守るために、あらゆる手段を用いる」と主張している。

3月には、他の民族主義勢力や右翼団体を結集して政党登録。ヤロシ氏は5月25日の大統領選への立候補を表明したが、大きな支持は集められていない。

23日には、ドネツク州内に、支持者800人規模の支部を創設することを発表。親露派との軋轢(あつれき)がさらに深まることが懸念されている。産経ニュース【NEWS EYE】 2014.4.25


◆「核」が日中開戦を抑止する F

平井 修一


(承前)栗栖弘臣・元統幕議長の「私の防衛論」(高木書房)から。

――アメリカにとって日本の地位は、現状では地勢的な戦略価値以外には大きな価値はないというような状況だと、安保の信頼性そのものも年々希薄になりかねないわけですね。

<そういうことだと思います。今までの多くの考えでは、アメリカの利益になるから安保があるんだと割り切っていた。

ところが、今のような情勢の変化、あるいは軍事技術の発達――日本は地理的に大陸を封鎖したような格好になっている、したがってソ連の海軍力に対して海峡を押さえるのにちょうどいいということが相当強調されているんですが、これは技術が発達すれば、ソ連の海軍が太平洋に出てきても、簡単に潰せるようになるかもしれない。そうなると、この地理的なメリットは少なくなる。

残るのは工業力、頭脳ということがありますが、中国は今でこそ力はないにしろ、昔から非常に優秀な国ですから、日本にとって代わる、あるいはそれ以上の力を持ち得ないとは考えられない。

そうしてみると、アメリカから見た日本の価値は少なくとも大きくなることはなくて小さくなる可能性があるというふうに見られるんですね。だから、アメリカが必要だから俺たちは乗ってやっているんだという考えは、とうてい通用しなくなってしまうということですね>

――もし自助努力をしなければ、向こうから安保が空洞化されることになるということですね。

<だからこっちでも努力しなければだめだと>

――自助努力にもいろいろ問題があります。実は日本があまり強くなるのも困ると外国は考えているフシもあります。どの限界までアメリカが望んでいるのかという議論がされていますが、アメリカはどの程度まで考えているんですか。

<とにかくアメリカは金を出してくれということでしょうね。日本は金持ちだから金をうんと出せ、そうすればアメリカはなんとかやってやるというのがぎりぎりの線じゃないかと思いますね>

――あまり汗を流しては困るわけですか。

<そうなんでしょうね。その他に、アメリカにとって面倒臭い対潜能力を増やしてくれだとか、日本の防空能力――ということは、アメリカの基地及び後方支援能力を守ってくれということにつながると思うんです。

そういうことは若干ありますが、このいずれも、日本がアメリカあるいは東南アジアにとっての脅威にはならないという範囲というのが腹の中にはあるでしょうから。それ以外のことは本心としてはあまり望んでいないということかもしれません>

――そうすると、NATO諸国に希望していることとは大分違うということになるわけですか。

<根本的には、NATOの諸国は親戚である、血族であるということじゃないでしょうかね。NATOは運命共同体だと思っているでしょうし、日本とアメリは利益共同体と思っているかもしれませんね>

――そこがNATOとの関係と大きく違うところだと思いますね。

<それを日本人が自覚しなければいけない。(日米安保は)当然だと思うところに非常に問題があると思います。(日本人には)日米安保の価値を検討することは、アメリカに対して申し訳ないという気持ちがある。しかし、アメリカといえども国益を考えている、日本でも国益を最優先に考えなければいけない。

しかもこれは長期にわたって国家の大計を考えなければいけないということになると、今の日米安保そのものが持つ日本に対する価値、そういうことも心の底では考えていかなければと思います>

――安保があったから日本はすべてに無責任な態度をとるようになったという・・・

<そういうことはあるかもしれませんね。よく冗談に話が出るんですが、アメリカが「日米安保やーめた」と言ったら、日本人はどういう反応を示すだろうかと思うんです>

――(安保が)自動延長になったとき、日本では1年前の通告によっていつでも破棄できるようになったんだと野党あたりは言っている。逆にアメリカも1年前の通告によって安保条約を破棄できるようになったんだということの認識が非常に薄いんですね。
・・・

栗栖氏の論考はひとまず終えるが、日本が安保条約に期待した最大のものは「核の傘」だった。かつてはソ連の核ミサイルだけだったが、今では中共、北朝鮮の核ミサイルも日本に照準を合わせており、特に中共は年々好戦的になり、最新の国防白書から「核の先制不使用」を消し去った。

日本への明確な恫喝であるが、今の米国は自国民を犠牲にしてまで日本のために中共の核に報復する気力、体力はない。つまり「核の傘」はなくなったのだ。

核戦争で3億人が死んでも構わないという中共に対して、日本が核武装したところで抑止力になるのかという議論はあるだろうが、「10倍返し」で漢民族を抹殺する実力を持てば抑止力になる。

中共は強者にはへつらい、弱者には居丈高になる民族であり、日本が非核であれば攻撃を呼び込むだけである。日本が50年後、100年後も存続したいのであれば中共をはるかに上回る核大国になるしかないのだ。

次回から平松茂雄氏の論考「日本核武装の緊急性」を紹介していく。(つづく)(2014/4/24)

◆流れに棹さすといふ表現について

上西 俊雄


表題のことが二囘つづけて話題になった。

流れに棹をさせば棹は流れにもっていかれやうとするから、流れとの鬪ひのやうでもあるが、流れに逆らって、それを押しとどめんとするのでなく、操船の場合は、その力を利用する、流れに乘ずるといふことになるのだと思ふ。

漱石の『草枕』の冒頭、「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」の場合の解釋としては流れにさからふは間違ひだといふことはよく聽いたものだ。

文化廳が發表した平成24年度「國語に關する世論調査」では、「その發言は流れに棹さすものだ」を、本來の意味である「傾向に乘って、ある事柄の勢ひを増すやうな行爲をする」で使ふ人が23.4%、間違った意味「傾向に逆らって、ある事柄の勢いを失はせるやうな行爲をする」で使ふ人が59.4%と、誤用の方が多いとか。

「ある事柄の勢ひを増すやうな行爲をする」といふのは、流れに乘ずるといふことからすると、誤解を招きかねない強い表現だといふ氣がするが、それはともかく、かういうケースは珍しくないだらうと平井さんも言はれる。

文化廳がかういふ調査をやることにどんな意味があるのか。幼兒を考へてみれば、間違ふも何もない。白紙なのだ。この表現にはじめて出會へば、まづ間違った解釋をするだらう。

それから、さういふ解釋では筋が通らないから考へをあらためたり、辭書でしらべたりする、もしくは先輩から注意されて正しい意味を知っていくのだと思ふ。このことを制度化したものが教育であり、先輩の制度化が教師だと思ふものだ。

だから言語社會全體が教育の場であり、學校はその一部でしかないはずだ。戰後教育はそれを否定してゐると思ふ。誤用があってはならないから、多數の方を正しいとする、もしくは、さういふ表現の使用を禁止することを始めた。だからある程度育ったはずの猿が木から落ちることになる。

擴張ヘボン式を訴へて、1月16日號にローマ字入力と英語力の關係を論じ、4月16日號では國語音韻に變化があったとする論は論點先取ではないかといふことを書いた。しかるべき人に讀んで欲しいと、機會があるたびに「頂門の一針」といふメルマガのことをいふ。しかし、「頂門の一針」といふ語が通じない。この表現を知ってゐる人が皆無に近いといふのは驚くほかない。指導主事クラスでも、議員祕書でも通じない。

4月23日に學力テストの報道があった。小學校國語Aの問題の最初は「(1)から(3)までの文の──部の漢字の讀みを、ひらがなでていねいにかきませう」(假名遣は修正しての引用)

我々の頃であれば、このところは傍線部とあったはずだ。傍は教育漢字ではない。だから小學生相手の問題に使用してはならないことになってゐるわけだ。義務教育を終へた段階でも常用漢字までで間にあふやうに社會全體がなってゐて、新聞もそれ以外の漢字の使用をはばかる。

今の記者はみな、小學校を卒業しただけでも讀めるやうな表記を心掛けるから、漢字の交ぜ書きなどは當り前。

3283號の記事の最後の段落は「さらに中國には23日からのオバマ來日に向けた日米けん制の意圖も感ぜられる」とあって牽といふ字の使用を避けた。牽は牛の鼻綱と音符の玄をあはせた字だと字書にある。

牽が常用漢字でないから使用を憚るなら牽制といふ語全體をつかふべきではないと思ふのだが、常用漢字表はときどき變更になるものだから表外字であるから使用を見合はせるといふことに神經をつかってゐたら、流れに棹さすといふ表現などに氣をつかふ餘裕はない。つい弘法にも筆の誤りとなってしまふのは仕方がないではないか。

3284號の讀者の聲に「言葉を驅使する者としてみっともないのは間違ひない」とある。さはさりながら、言葉を驅使するものが漢字制限や假名字母制限を肯(がへん)じてゐるのが問題だと言ひたい。

我が國が義務教育を終へた段階の語彙だけに國民をとどまらせておかうとしてゐることは間違ひない。英語教育も會話に傾斜して、文法をしっかり教へるといふことが行はれてゐないのではないか。

三木谷氏の發言に「インターネット企業は技術がいちばん重要です。ただ、日本でコンピュータサイエンスを專攻してゐる卒業生は、だいたい年間二萬人しかゐません。

それに對し、アメリカは約6萬人、中國は百萬人、インドは二百萬人ゐるんですよ。だから何百萬人のプールから人を雇ふのか、それとも二萬人のプールから雇ふのかによって、競爭優位が全然變はってきます。」とある。

http://toyokeizai.net/articles/-/33821?page=3

昨日(4月24日)地圖に避難所などを示すために新しい記號を導入するといふことが報じられた。それで鈴木孝夫先生の twitter に「地圖の記號を新しくつくったといふ。漢字を制限し reinvent the wheel をやってゐるやうに思はれる。漢字と異なるのは音がないこと。入力も難しい。音のある名稱にしておかないと、いざといふとき困るのではないか。」と書き込んだ。

折返し「さうなんですよ」と返事があった。

TPPの規制緩和の前に國語規制の撤廢を訴へるものだ。